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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】小麦ふすま含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20230307BHJP
   A21D 13/02 20060101ALI20230307BHJP
   A23L 7/135 20160101ALI20230307BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A21D13/02
A23L7/135
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018198543
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2020065458
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】横羽 安規奈
(72)【発明者】
【氏名】新居 賢紀
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-026485(JP,A)
【文献】特開昭56-023877(JP,A)
【文献】特表2009-517041(JP,A)
【文献】国際公開第2015/199080(WO,A1)
【文献】カルビー フルグラ お豆とおさつ黒蜜きなこ味 700g×6袋,amazon[online],[検索日2022年7月6日],2018年09月21日,https://www.amazon.co.jp/dp/B07H3DLP53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)小麦ふすま、
(B)高甘味度甘味料、及び
(C)小麦ふすまに由来しないビタミンB類
を含有し、
成分(A)の含有量が5~99質量%であり、
成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量が、質量比で0.005×10-3~15×10-3であり、
成分(A)の含有量に対する成分(C)の含有量が、質量比で0.02×10-3~3.0×10-3である、小麦ふすま含有組成物。
【請求項2】
前記組成物中の含水率が1.0~5.0質量%である、請求項1記載の小麦ふすま含有組成物。
【請求項3】
前記組成物中、前記成分(B)の含有量が0.0005~2.0質量%である、請求項1又は2記載の小麦ふすま含有組成物。
【請求項4】
前記組成物中、前記成分(C)の含有量が0.002~0.3質量%である、請求項1~3のいずれか1項記載の小麦ふすま含有組成物。
【請求項5】
前記組成物中、前記成分(A)、(B)及び(C)の各含有量が、下記式を満たす、請求項1~4のいずれか1項記載の小麦ふすま含有組成物。

〔0.165(B)+(C)〕/(A)≦0.0033
【請求項6】
前記組成物中の前記成分(A)の含有量が95~99質量%である、請求項1~5のいずれか1項記載の小麦ふすま含有組成物。
【請求項7】
食品の穀粉原料として用いる、請求項1~6のいずれか1項記載の小麦ふすま含有組成物。
【請求項8】
小麦ふすま含有組成物が焼き菓子である、請求項1~5のいずれか1項記載の小麦ふすま含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦ふすま含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦ふすまは主に粉砕された小麦の外皮からなり、不溶性食物繊維、ビタミン、ミネラルを豊富に含むことから、近年、健康食品素材として注目されている。しかし小麦ふすまは特有の臭気を有し、また後味のエグみも強く、小麦ふすま配合食品は一般に食味に劣る。
【0003】
小麦ふすまの食味を改善するための種々の方法が開発されてきている。例えば、特許文献1には、小麦ふすまにフェルラ酸、p-クマル酸を添加することにより小麦ふすま特有の臭気と酸味が共に低減され、風味を改善したことが記載されている。
また、特許文献2には、焙煎ふすまと、小麦たんぱくと、失活処理を施した大豆粉と、増粘安定剤としてのペクチンとを含有することを特徴とする食品素材が記載されている。特許文献2には、この食品素材にトレハロース、全卵、エリスリトール、ステビア、バター、及び塩を加えてミキシングして生地を調製したこと、得られたパンは、しっとり、かつ、もちもちとした食感を有していたことなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-26485号公報
【文献】特開2016-101115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、小麦ふすま特有の臭気と後味のエグみが共に抑えられ、まろやかで食べやすい小麦ふすま含有組成物の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた。その結果、小麦ふすまに対し、高甘味度甘味料とビタミンB類とを各特定量組み合わせて配合することにより得られる小麦ふすま含有組成物は、小麦ふすま特有の臭気が低減され、小麦ふすまが有する後味のエグみも抑えられ、さらにまろやかさも付与され、高甘味度甘味料やビタミンB類由来の苦味の発現も抑えられること、その結果、小麦ふすまの食べやすさが格段に向上することを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成させるに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)小麦ふすま、(B)高甘味度甘味料、及び(C)小麦ふすまに由来しないビタミンB類、を含有し、成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量が、質量比で0.005×10-3~15×10-3であり、成分(A)の含有量に対する成分(C)の含有量が、質量比で0.02×10-3~3.0×10-3である、小麦ふすま含有組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の小麦ふすま含有組成物は、小麦ふすま特有の臭気と後味のエグみが共に抑えられ、また、まろやかさも付与され、さらに、ビタミンB類や高甘味度甘味料を含有しながらもこれらの苦味の発現も抑えられ、食べやすい風味ないし食味へと改質された組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のふすま含有組成物は、成分(A)として小麦ふすまを含有する。
本発明に用いる小麦ふすまは、小麦の外皮を主成分とするものであれば特に制限はなく、小麦の外皮を粉砕したものを用いることが好ましい。小麦ふすまは、例えば、通常の方法により、小麦の外皮を焙煎し、粉砕することにより得ることができる。また、小麦ふすまは商業的に入手可能であり、例えば、ウィートブランDF(日清ファルマ社製)、ブランエース粉状P(日本製粉社製)を用いることができる。さらに、これらの小麦ふすまを脱脂処理したものを用いてもよく、これらの小麦ふすまを蒸煮処理したものを用いてもよい。このように脱脂処理や蒸煮処理に付された小麦ふすまも、本発明で規定する小麦ふすまとして好適である。
蒸煮処理をした小麦ふすま(以下、蒸煮処理小麦ふすま)は、小麦ふすまと水とを共存させた状態で熱処理に付したものを意味する。例えば、小麦ふすまをオートクレーブにより処理したり、小麦ふすまと水とを混合してエクストルーダーにより混練処理したり、小麦ふすまと水とを混合してニーダーを用いて混練処理したりして、その後、乾燥し、蒸煮処理小麦ふすまを得ることができる。小麦ふすま特有の臭気、舌上に感じるざらつき感、唾液の吸収感等を改善し、小麦ふすまを食べやすい性状に改質することができる観点から、蒸煮処理したものを用いることが好ましい。
【0010】
また、原料の小麦ふすまは脱脂処理により脂質含有量を低減させたものであることも好ましい。原料の小麦ふすまに含まれる脂質含有量は、風味、加工性、保存性の観点から、1.0~10.0質量%であることが好ましく、2.0~9.0質量%であることがより好ましく、3.0~8.5質量%であることがさらに好ましく、3.0~5.0質量%であることがよりさらに好ましい。
【0011】
本発明の小麦ふすま含有組成物は、食品原料として用いることができ、また、食品そのものとして食する形態とすることもできる。目的の形態に応じて、組成物中の小麦ふすまの含有量は適宜設定することができる。
小麦ふすま含有組成物中の小麦ふすまの含有量は、栄養成分、食物繊維を豊富に摂取することができる観点から、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。食品原料として用いる場合(例えば焼き菓子の原料穀粉として用いる場合)には、小麦ふすま含有組成物中の小麦ふすまの含有量は80質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましく、95質量%以上とすることがさらに好ましく、96質量%以上であることがさらに好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましい。
本発明の小麦ふすま含有組成物中の小麦ふすまの含有量は、当該組成物を食品原料として用いる場合は、小麦ふすま特有の臭気と後味のエグみを抑える観点、処方の自由度を確保する観点から、通常は99質量%以下であり、98質量%以下とすることも好ましい。また、本発明の小麦ふすま含有組成物が食品そのもの(例えば焼き菓子)である場合、組成物中の小麦ふすまの含有量は、焼菓子の加工特性、生地の成型し易さの観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
したがって、本発明の小麦ふすま含有組成物中の小麦ふすまの含有量は、5~99質量%が好ましく、10~98質量%とすることがより好ましい。また、当該組成物を食品原料として用いる場合、該組成物中の小麦ふすまの含有量は95~99質量%であることが好ましく、96~99質量%であることがより好ましく、97~98質量%であることがさらに好ましい。
本発明の小麦ふすま含有組成物中、小麦ふすま以外の残部は、上記成分(B)及び(C)を含み、さらに種々の食品原料や水分等で構成することができる。
本発明において組成物の各成分の含有量を規定し又は説明する場合、当該含有量は水分を除いたものである。例えば、含水率1質量%の小麦ふすまを100g含有する組成物は、小麦ふすまの含有量が99gとなる。
【0012】
本発明の小麦ふすま含有組成物は、成分(B)として1種又は2種以上の高甘味度甘味料を含有する。ここで、本明細書において「高甘味度甘味料」とは、ショ糖と比べて十倍から千倍の甘味を有し、微量の添加によって飲食品に甘味を付与することができる天然又は人工の甘味料を意味する。高甘味度甘味料の甘味度は、小麦ふすま特有の後味のエグみを低減させる観点から、ショ糖の50~700倍が好ましく、100~400倍がより好ましい。
【0013】
高甘味度甘味料としては、例えば、天然甘味料として、ステビア(レバウディオサイド、ステビオサイド、ショ糖を1としたときの甘味度(以下も同様):150~300)、グリチルリチン(300)、甘草(30~50)、羅漢果(300)、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(1000)、ソーマチン(2000)、モネリン(3000)、ブラゼイン(2000)、マビンリン(100~400)、ネオクリン(25000)、リゾチーム(20)、また人工甘味料として、アスパルテーム(200)、アセスルファムカリウム(200)、スクラロース(600)、サッカリン(300~500)、サッカリンナトリウム(500)、チクロ(30~50)、ネオテーム(10000)、アリテーム(2000)、ズルチン(250)等を挙げることができる。これら高甘味度甘味料の中でも、風味上の観点から、ステビア、スクラロース、アセスルファムカリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0014】
本発明の小麦ふすま含有組成物中、成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量((B)/(A))は、質量比で(以下も同様)、0.005×10-3以上である。後味のエグみをより低減する観点から、(B)/(A)は0.01×10-3以上であることが好ましく、0.03×10-3以上であることがより好ましく、0.05×10-3以上であることがさらに好ましく、0.1×10-3以上であることがさらに好ましく、0.5×10-3以上であることがさらに好ましく、1×10-3以上であることがさらに好ましい。また、本発明の小麦ふすま含有組成物中、(B)/(A)は15×10-3以下である。苦味の発現をより抑制する観点から、(B)/(A)は10×10-3以下であることが好ましく、5×10-3以下であることがより好ましく、3×10-3以下であることがさらに好ましく、2×10-3以下であることがさらに好ましい。
したがって、本発明の小麦ふすま含有組成物中、(B)/(A)は0.005×10-3~15×10-3であり、好ましくは0.01×10-3~10×10-3であり、より好ましくは0.03×10-3~5×10-3であり、さらに好ましくは0.05×10-3~3×10-3であり、さらに好ましくは0.1×10-3~3×10-3であり、さらに好ましくは0.5×10-3~3×10-3であり、さらに好ましくは1×10-3~2×10-3である。
【0015】
本発明の小麦ふすま含有組成物に含まれる成分(B)の含有量は、例えば、この組成物を食品原料(原料穀粉)として用いる場合には、後味のエグみ低減及びふすま臭低減の観点から、0.0005質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましく、0.003質量%以上であることがさらに好ましく、0.005質量%以上であることがさらに好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましい。また、本発明の小麦ふすま含有組成物に含まれる成分(B)の含有量は、この組成物を食品原料として用いる場合において、苦味の発現抑制の観点から、2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましく、0.6質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の小麦ふすま含有組成物における成分(B)の含有量の好ましい範囲は、この組成物を食品原料として用いる場合において、0.0005~2.0質量%であり、より好ましくは0.0005~1.5質量%であり、さらに好ましくは0.001~1.0質量%であり、さらに好ましくは0.001~0.6質量%であり、さらに好ましくは0.003~0.5質量%であり、さらに好ましくは0.003~0.3質量%であり、さらに好ましくは0.005~0.2質量%である。
なお、本発明の小麦ふすま含有組成物を食品原料として得られる食品においては、食品中の上記成分(B)の含有量は、小麦ふすま含有組成物中の成分(B)の含有量や、小麦ふすま含有組成物の使用量に応じて必然的に定まる。このことは、後述する成分(C)等についても同じである。
【0016】
本発明の小麦ふすま含有組成物は、成分(C)として1種又は2種以上のビタミンB類を含有する。ビタミンB類とは、水溶性の物質であり、生体内において補酵素として機能することが知られている。本発明で用いることができるビタミンB類としては、チアミン塩酸塩などのビタミンB、リボフラビンなどのビタミンB、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンなどのビタミンB、アデノシルコバラミン、メチルコバラミン、スルフィトコバラミン、ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミンなどのビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、及びビオチン等が挙げられる。ビタミンB類は、口中で味わうと尖ったような苦味を感じるという共通性がある。ビタミンB類それ自体は、口中でまろやかさ等の食べやすさを感じるものではない。
また、ビタミンB類のなかでもビタミンB、B、B、及びB12は、苦味等の食味の共通性がより高い。その理由は定かではないが、分子構造中に含窒素ヘテロ環を有することなどに起因するものと考えられる。
本発明で規定する成分(C)の含有量、配合比には、小麦ふすまが本来的に含有するビタミンB類は含まないものとする。小麦ふすまが含有しているビタミンB類は、その量が少ないためか、味覚にはほとんど影響しない。小麦ふすまに対し、小麦ふすまとは別にビタミンB類を独立して配合することにより、小麦ふすまの後味のエグみを低減し、また、小麦ふすまをまろやかな食味へと改質することができる。その作用機序は、配合したビタミンB類が小麦ふすまの成分に作用すると考えられる。ビタミンB類が有する水酸基は、リン酸と可逆的な弱い結合を生じる性質を持つ。小麦ふすまに含有されるタンパク質にはリン酸基が含有されており、当該リン酸基とビタミンB類が弱く結合することにより、当該タンパク質の構造が変化し、「まろやかさ」を付与すると共に、特有の「エグみ」を低減すると考えられる。なお、これはあくまで推定であり、本発明が上記の作用機序に限定されるわけではない。本発明の効果の発現には、上記の他、ビタミンB類に共通する苦味等も複合的に作用しているものと考えられる。
なお、ビタミンB類は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル 第3章ビタミン p108~139を参照して測定することができる。
【0017】
本発明の小麦ふすま含有組成物中、成分(A)の含有量に対する成分(C)の含有量((C)/(A))は、質量比で(以下も同様)、0.02×10-3以上である。まろやかさをより高める観点から、(C)/(A)は0.025×10-3以上であることが好ましく、0.05×10-3以上であることがより好ましく、0.1×10-3以上であることがさらに好ましく、0.3×10-3以上であることがさらに好ましく、0.5×10-3以上であることがさらに好ましく、0.7×10-3以上であることがさらに好ましい。
また、本発明の小麦ふすま含有組成物中、(C)/(A)は3.0×10-3以下である。苦味の発現をより抑制する観点から、(C)/(A)は2.5×10-3以下であることが好ましく、1.7×10-3以下であることがより好ましく、1.5×10-3以下であることがさらに好ましく、1.0×10-3以下であることがさらに好ましい。
したがって、本発明の小麦ふすま含有組成物中、(C)/(A)は、0.02×10-3~3.0×10-3であり、好ましくは0.025×10-3~2.5×10-3であり、より好ましくは0.05×10-3~2.5×10-3であり、さらに好ましくは0.1×10-3~1.7×10-3であり、さらに好ましくは0.3×10-3~1.5×10-3であり、さらに好ましくは0.5×10-3~1.0×10-3であり、さらに好ましくは0.7×10-3~1.0×10-3である。
【0018】
また、本発明の小麦ふすま含有組成物に含まれる成分(C)の含有量は、例えば、この組成物を食品原料(原料穀粉)として用いる場合には、後味のエグみの低減及びまろやかさ付与の観点から、0.002質量%以上であることが好ましく、0.003質量%以上であることがより好ましく、0.005質量%以上であることがさらに好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましい。
また、本発明の小麦ふすま含有組成物に含まれる成分(C)の含有量は、この組成物を食品原料として用いる場合において、苦味の発現抑制の観点から、0.3質量%以下であることが好ましく、0.25質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の小麦ふすま含有組成物における成分(C)の含有量の好ましい範囲は、この組成物を食品原料として用いる場合において、0.002~0.3質量%であり、より好ましくは0.003~0.3質量%であり、さらに好ましくは0.005~0.25質量%であり、さらに好ましくは0.01~0.2質量%である。
【0019】
さらに本発明において、成分(A)の含有量に対する、成分(B)と成分(C)の総含有量([(B)+(C)]/(A))は、後味のエグみ低減やまろやかさ付与の観点から、質量比で(以下も同様)、0.1×10-3以上であることが好ましく、0.15×10-3以上であることがより好ましく、0.17×10-3以上であることがさらに好ましく、0.2×10-3以上であることがさらに好ましい。
また、本発明において、[(B)+(C)]/(A)は、苦みの発現抑制の観点から、13×10-3以下であることが好ましく、10×10-3以下であることがより好ましく、6×10-3以下であることがさらに好ましく、5×10-3以下であることがさらに好ましく、4×10-3以下であることがさらに好ましく、3×10-3以下であることがさらに好ましい。
また、本発明において、[(B)+(C)]/(A)の好ましい範囲は、0.1×10-3~13×10-3であり、より好ましくは0.1×10-3~10×10-3であり、さらに好ましくは0.15×10-3~6×10-3であり、さらに好ましくは0.17×10-3~5×10-3であり、さらに好ましくは0.2×10-3~4×10-3であり、さらに好ましくは0.2×10-3~3×10-3である。
【0020】
さらに本発明において、成分(B)の含有量に対する成分(C)の含有量((C)/(B))は、まろやかさ付与の観点から、質量比で(以下も同様)、0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。
また、本発明において、(C)/(B)は、苦味の発現抑制の観点から、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、4以下であることがさらに好ましく、3以下であることがさらに好ましく、2以下であることがさらに好ましい。
また、本発明において、(C)/(B)の好ましい範囲は、0.01~15であり、より好ましくは0.01~10であり、さらに好ましくは0.05~5であり、さらに好ましくは0.05~4であり、さらに好ましくは0.1~3であり、さらに好ましくは0.1~2である。
【0021】
また、本発明の小麦ふすま含有組成物中の成分(A)、(B)及び(C)は、苦味の発現抑制の観点から、以下の(式1)を満たすことが好ましい。

X=〔(B)+(C)〕/(A)
Y=(C)/(B)
Y≦0.005/(X-0.00029) (式1)
(X:0.0005~0.015、Y:0.01以上)
【0022】
また、本発明の小麦ふすま含有組成物中の成分(A)、(B)及び(C)は、苦味の発現抑制の観点から、以下の(式2)を満たすことがより好ましい。

〔0.165(B)+(C)〕/(A)≦0.0033 (式2)
【0023】
さらに、本発明の小麦ふすま含有組成物中の成分(A)、(B)及び(C)は、苦味の発現抑制の観点から、以下の(式3)を満たすことがさらに好ましい。

〔0.2(B)+(C)〕/(A)≦0.002 (式3)
【0024】
さらに本発明の小麦ふすま含有組成物は、成分(D)として水分を含むことが好ましい。本発明の小麦ふすま含有組成物における成分(D)の含有量(含水率)は、風味向上の観点から、1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましい。
また、本発明の小麦ふすま含有組成物における成分(D)の含有量は、ふすま臭の低減の観点から、5.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましい。
したがって、本発明の小麦ふすま含有組成物における成分(D)の含有量は、風味向上及びふすま臭の低減の観点から、1.0~5.0質量%であることが好ましく、1.0~4.0質量%であることがより好ましく、1.5~4.0質量%であることがさらに好ましく、2.0~3.0質量%であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明の小麦ふすま含有組成物の用途は特に制限されず、種々の食品の原料として用いることができる。また、本発明の規定を満たす限り、食品そのものも本発明の小麦ふすま含有組成物に包含される。例えば、本発明の小麦ふすま含有組成物は焼き菓子の穀粉原料として好適に用いることができる。また、本発明の小麦ふすま含有組成物を穀粉原料として得られる焼き菓子それ自体も、本発明の規定を満たす限り、本発明の小麦ふすま含有組成物に包含される。
上記焼き菓子は、好ましくは、「製菓辞典」、初版、1981年10月30日、第204頁に記載のビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツェル、パイ、カットパン又はショートブレッドにおいて、特定量の小麦ふすま、高甘味度甘味料、及びビタミンB類を含有させた形態が好ましい。また、いわゆるカロリーバーの形態であってもよい。焼き菓子は、常法により製造することができる。
【0026】
また、本発明の小麦ふすま含有組成物は、シリアル食品の製造に用いることができる。シリアル食品は、一般的に朝食シリアル(Ready to eat,Breakfast cereal)とも称される。通常は、穀類原料を蒸煮し、冷却後に圧扁し、成形した後に膨張させ、次いで乾燥後に焙焼することで得られるフレーク状の食品である。牛乳等の液状食品を加えて食されることが多い。なお、本発明においてシリアル食品とは、牛乳等を加える前の状態、すなわち、シリアル食品として販売される形態を意味する。
【実施例
【0027】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
〔小麦ふすま含有組成物の調製〕
実施例1~33、比較例1~18
表1に示す組成に従って、小麦ふすまと高甘味度甘味料、ビタミンB類を秤量し、十分に混合した。
なお、調製後の小麦ふすま含有組成物の水分率はいずれも2.5%であった。
【0029】
〔ふすま含有組成物の評価方法〕
上記で調製した小麦ふすま含有組成物について、粉末状で口に入れた時の後味のエグみ、ふすま臭、まろやかさ、苦味を下記評価基準に基づき評価した。本評価において、後味の「エグみ」とは、小麦ふすま由来の渋味ないし酸味を指す。また、「ふすま臭」とは、喫食時に鼻を通過する小麦ふすまに特有の香りを指す。また、「まろやかさ」とは、口当たりの良い温和な味であり、刺激性が少なく穏やかな味を意味する。さらに、「苦味」とは、甘味料及び/又はビタミンB類由来の苦味を指す。上記のいずれの風味も、他の風味とは独立して知覚でき、評価することができるものである。
「後味のエグみ」、「ふすま臭」及び「まろやかさ」の各評価については、小麦ふすまのみ(高甘味度甘味料とビタミンB類のいずれも配合していない)の比較例1の評価を「1」とした。「後味のエグみ」と「ふすま臭」についてはこれらを全く感じない場合を「5」とし、「まろやかさ」を強く感じる場合を「5」とし、下記基準にて相対評価を行った。「苦味」については成分(B)並びに(C)由来のものについて評価し、成分(B)及び(C)を、本発明の規定を満たさないような過剰量配合した場合(比較例17)の評価を「1」とし、苦味を全く感じない場合を「5」とし、下記基準にて相対評価を行った。評価1、2、3、4、5の順に、段階的に評価が良いことを意味する。各評価は専門パネル2名により行った。
【0030】
―後味のエグみの評価基準―
5:後味のエグみを全く感じない
4:後味のエグみをほとんど感じない
3:後味のエグみを感じる
2:後味のエグみをやや強く感じる
1:後味のエグみを強く感じる
【0031】
―ふすま臭の評価基準―
5:ふすま臭を全く感じない
4:ふすま臭をほとんど感じない
3:ふすま臭を感じる
2:ふすま臭をやや強く感じる
1:ふすま臭を強く感じる
【0032】
―まろやかさの評価基準―
5:まろやかさを強く感じる
4:まろやかさをやや強く感じる
3:まろやかさを感じる
2:まろやかさをほとんど感じない
1:まろやかさを全く感じない
【0033】
―苦味の評価基準―
5:苦味を全く感じない
4:苦味をほとんど感じない
3:苦味を感じる
2:苦味をやや強く感じる
1:苦味を強く感じる
結果を下記表1に示す。なお、2名のパネルの評価結果はすべて同じであった。
【0034】
【表1-1】
【0035】
【表1-2】
【0036】
【表1-3】
【0037】
【表1-4】
【0038】
【表1-5】
【0039】
上記表1から明らかなように、小麦ふすまに高甘味度甘味料及びビタミンB類を加えない場合は、後味のエグみ、ふすま臭を強く感じ、かつまろやかさを全く感じない結果となった(比較例1)。また、小麦ふすまに高甘味度甘味料のみを加えた場合、後味のエグみ、ふすま臭が改善され、さらに高甘味度甘味料由来の苦味も感じないが、まろやかさを全く感じない結果となった(比較例2~5)。同様に、小麦ふすまにビタミンB類のみを本発明の規定の範囲内で加えた場合は、後味のエグみ、まろやかさは改善されたものの、ふすま臭は改善されず、さらにビタミンB類の配合量が高まるにつれてビタミンB類由来の苦味を感じる結果となった(比較例6~11)。さらに、小麦ふすまに高甘味度甘味料及びビタミンB類を共に添加した場合であっても、小麦ふすまの含有量に対する、高甘味度甘味料又はビタミンB類の添加量が本発明の規定の範囲を超える場合、後味のエグみ、ふすま臭、まろやかさは改善されたものの、高甘味度甘味料若しくはビタミンB類由来の苦味を感じる結果となった(比較例12~17)。さらに、高甘味度甘味料の代わりにショ糖を用いた場合であっても、後味のエグみ、ふすま臭の改善は見られなかった(比較例18)。
一方で実施例1~33に示される本発明のふすま含有組成物は、後味のエグみ、ふすま臭、及び苦味を感じないか、感じても強くは感じない程度であった。さらに、本発明のふすま含有組成物は全て、まろやかさを感じるものであった。
よってふすま含有組成物における各成分を本発明の規定の範囲内とすることによって、まろやかさが付与され、ふすま臭とエグ味が低減し、かつビタミンB類若しくは高甘味度甘味料由来の苦味も抑えられた、風味の良好なふすま含有組成物を得ることができた。
【0040】
[製造例] 焼き菓子の製造
下記表2に記載の配合量で各原料を混合して生地を調製し、この生地を焼成して焼き菓子を製造した。具体的な製造方法を以下に詳述する。
【0041】
ホバート社製のホバートミキサー(型式:N-50)に、油脂としてチェリカゴールドE(花王株式会社製マーガリン)、膨張剤として炭酸アンモニウム及び重曹を秤量して加え、低速で30秒間ミキシングした後、中速で30秒間ミキシングを行った。
さらに低速で30秒間撹拌しながら、鶏卵の全卵を溶いたものを2分割して加えた。最初の卵の添加後、低速30秒間攪拌を行い、次いで2回目の卵を添加し、低速30秒間攪拌を行った。ミキサーの壁に付着した油をかき落とした後、低速30秒間攪拌した。
続いて、小麦粉、小麦ふすまである成分(A)、高甘味度甘味料である成分(B)、及びビタミンB類である成分(C)を均一に分散させた混合物を配合し、低速にて90秒間撹拌した。
上記で得られた生地を、長方形の焼型に詰め、剥離紙を敷いた天板にならべた。なお、焼型は金属製で、縦×横×高さ:80mm×20mm×15mmのものを用いた。型内に生地20gを計量し、成型した。
続いて、下記の焼成条件において焼成して焼き菓子を得た。
焼成温度:上火 180℃/下火 180℃
焼成時間:11分
【0042】
上記製造例で製造した焼き菓子について、焼き菓子を口に入れた時の後味のエグみ、ふすま臭、まろやかさ、苦味を前記評価基準に基づき評価した。「後味のエグみ」、「ふすま臭」及び「まろやかさ」の各評価については、小麦ふすまのみの比較例1を原料として用いた比較例19の評価を「1」とした。「後味のエグみ」と「ふすま臭」についてはこれらを全く感じない場合を「5」とし、「まろやかさ」を強く感じる場合を「5」とし、前記基準にて相対評価を行った。「苦味」については高甘味度甘味料並びにビタミンB類由来のものについて評価し、小麦ふすまの含有量に対する高甘味度甘味料及びビタミンB類の添加量が、本発明の規定の範囲を上回るように過剰量配合した比較例17を原料として用いた比較例20の評価を「1」とし、苦味を全く感じない場合を「5」とし、前記評価基準と同様の基準にて相対評価を行った。評価1、2、3、4、5の順に、段階的に評価が良いことを意味する。各評価は専門パネル2名により行った。
結果を下記表2に示す。なお、2名のパネルの評価結果はすべて同じであった。
【0043】
【表2】
【0044】
上記表2から明らかなように、小麦ふすまに高甘味度甘味料及びビタミンB類を加えない組成物(比較例1)を用いた焼き菓子は、後味のエグみ、ふすま臭を強く感じ、かつまろやかさを全く感じない結果となった(比較例19)。また、小麦ふすまの含有量に対し、高甘味度甘味料及びビタミンB類を本発明で規定する範囲を上回るような過剰量配合した組成物(比較例17)を用いた焼き菓子は、後味のエグみ、ふすま臭、まろやかさが改善されたものの、高甘味度甘味料若しくはビタミンB類由来の苦味を強く感じる結果となった(比較例20)。
一方で本発明のふすま含有組成物(実施例2)を含む焼き菓子は、小麦ふすま由来の後味のエグみ、ふすま臭をほとんど感じず、さらにまろやかさを感じ、高甘味度甘味料若しくはビタミンB類由来の苦味を全く感じない結果となった(実施例34)。このことから、本発明のふすま含有組成物は、焼き菓子の製造にも適していることが示された。