(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】銀ナノワイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/24 20060101AFI20230307BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230307BHJP
【FI】
B22F9/24 E
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2018198719
(22)【出願日】2018-10-22
【審査請求日】2021-09-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー、産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】山下 征士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正秀
(72)【発明者】
【氏名】小笹 悦輝
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-066512(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057326(WO,A1)
【文献】特開2018-095905(JP,A)
【文献】国際公開第2014/189149(WO,A1)
【文献】特開2009-215573(JP,A)
【文献】特開2018-095962(JP,A)
【文献】特開2014-189888(JP,A)
【文献】特開2017-218667(JP,A)
【文献】特開2011-137226(JP,A)
【文献】特開2017-082305(JP,A)
【文献】特表2014-505787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00-9/30
B82Y 5/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、アルカリ金属臭化物、第1のポリビニルピロリドン、及びポリオールを混合して、A液を調製すること、
少なくとも、銀塩、第2のポリビニルピロリドン、及びポリオールを混合して、B液を調製すること、
前記A液と前記B液とを混合してC液を調製すること、及び
前記C液を加熱して銀ナノワイヤを生成すること、
を含み、
前記第1のポリビニルピロリドンの数平均分子量が、300,000以上1,500,000以下であり、
前記第2のポリビニルピロリドンの数平均分子量が、
前記第1のポリビニルピロリドンの数平均分子量よりも小さく、1,000以上200,000未満であり、
前記B液が、前記銀塩に由来する銀イオンと前記第2のポリビニルピロリドンとの錯体を含む、
銀ナノワイヤの製造方法。
【請求項2】
前記第2のポリビニルピロリドンの数平均分子量が、5,000以上100,000以下である、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属臭化物が、臭化ナトリウムであり、
前記ポリオールが、エチレングリコールであり、
前記銀塩が、硝酸銀である、
請求項1
または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、銀ナノワイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノワイヤは、直径が通常20nm以下、アスペクト比(すなわち長さ/直径の比)が通常100以上という極めて微細な細長素材であり、その優れた導電性及び熱伝導性から、透明導電膜、導電性インク(電子回路用インク等)、自動車用高熱伝導率冷媒等の用途で利用されている。金属ナノワイヤの中でも、銀ナノワイヤは、導電性が特に高いという利点を有する。
【0003】
特許文献1は、精製処理を経た銀ナノ粒子を核粒子として、還元性を有する化合物と形態制御剤とを含む溶液中で銀イオンを還元することを特徴とする銀ナノワイヤの製造方法を記載する。
【0004】
特許文献2は、水銀圧入法による平均細孔直径が1.0μm以上である多孔質セラミックフィルタを流路壁面に有する管状流路内に、液状媒体の流れに随伴して金属ナノワイヤを流し、流れている一部の金属ナノワイヤを一部の液状媒体とともに前記多孔質セラミックフィルタを通して前記管状流路の外に排出させ、前記管状流路の外に排出されずに当該流路を流れ進んだ金属ナノワイヤを回収する、金属ナノワイヤの製造方法を記載する。
【0005】
特許文献3は、水溶媒中で銀錯体を該水溶媒の沸点以下の温度で加熱することを特徴とする銀ナノワイヤーの製造方法を記載する。
【0006】
特許文献4は、塩化銀を含む前駆体と、単糖類からなる還元剤とを、水媒体中において、130~200℃の温度で加熱処理する銀ナノワイヤーの製造方法であって、前記の塩化銀を含む前駆体が、濃度0.01~0.10モル/Lの銀塩水溶液と、濃度0.10~0.70モル/Lの塩素含有物水溶液とを、銀塩と塩素含有物のモル比が1:1~1:7になるように用い、かつ、前記の銀塩水溶液と塩素含有物水溶液との合計量に対して、新たに水媒体を3~10体積倍加えることにより得られたものであることを特徴とする、銀ナノワイヤーの製造方法を記載する。
【0007】
特許文献5は、ポリ(N-ビニル-ε-カプロラクタム)、ポリ(N-ビニル-2-オキサゾリドン)、ポリ(N-ビニルアセトアミド)及びポリ(N-メチル-N-ビニルアセトアミド)から選ばれる1種以上のポリマーの存在下で、銀化合物を加熱する工程を含むことを特徴とする銀ナノワイヤーの製造方法を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-132082号公報
【文献】特開2016-55283号公報
【文献】特開2009-242880号公報
【文献】特開2010-261090号公報
【文献】特開2014-189888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
銀ナノワイヤ製品中には、通常、所望の銀ナノワイヤ以外に、粒状又は低アスペクト比の銀結晶等の不純物が存在する。この不純物は、銀ナノワイヤ製品の導電性能を低下させる原因になり得ることから、不純物の少ない銀ナノワイヤ製品を得る方法が望まれている。
【0010】
例えば特許文献1及び2に記載される方法は、高純度の金属ナノワイヤ製品の提供に関するものであるが、特許文献1に記載される方法では、銀イオン源とは別に核粒子を用いる必要があり、特許文献2に記載される方法では、所望の金属ナノワイヤを高純度で含む金属結晶を得るために不純物除去工程が必要であるため、いずれの方法もプロセスが複雑であるという問題を有する。
【0011】
また特許文献2に記載される方法では、不所望の金属結晶(すなわち粒状又は低アスペクト比の金属結晶)が不純物除去工程によって除去されるため、金属ナノワイヤの収率(すなわち原料として用いた金属の量に対する金属ナノワイヤの量の比率)が低いという問題もある。
【0012】
一方、特許文献3~5に記載される方法は、プロセスが比較的簡便ではあるものの、不所望の銀結晶の生成を抑制して高純度の(すなわち生成した銀結晶中の所望の銀ナノワイヤの比率が高い)製品を得るという点で改善の余地がある。
【0013】
したがって、本開示は、簡便なプロセスでありながら銀ナノワイヤを高収率及び高純度で製造することが可能な、銀ナノワイヤの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の態様としては、下記の態様を挙げることができる。
【0015】
〈態様1〉
少なくとも、アルカリ金属臭化物、第1のポリビニルピロリドン、及びポリオールを混合して、A液を調製すること、
少なくとも、銀塩、第2のポリビニルピロリドン、及びポリオールを混合して、B液を調製すること、
A液とB液とを混合してC液を調製すること、及び
C液を加熱して銀ナノワイヤを生成すること、
を含み、
第2のポリビニルピロリドンの数平均分子量が、1,000以上200,000以下であり、
B液が、銀塩に由来する銀イオンと第2のポリビニルピロリドンとの錯体を含む、
銀ナノワイヤの製造方法。
〈態様2〉
第2のポリビニルピロリドンの数平均分子量が、第1のポリビニルピロリドンの数平均分子量よりも小さい、上記態様1に記載の方法。
〈態様3〉
第1のポリビニルピロリドンの数平均分子量が、300,000以上1,500,000以下である、上記態様2に記載の方法。
〈態様4〉
第2のポリビニルピロリドンの数平均分子量が、5,000以上100,000以下である、上記態様1~3のいずれかに記載の方法。
〈態様5〉
アルカリ金属臭化物が、臭化ナトリウムであり、
ポリオールが、エチレングリコールであり、
銀塩が、硝酸銀である、
上記態様1~4のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、簡便なプロセスでありながら、銀ナノワイヤを高収率及び高純度で製造することが可能な、銀ナノワイヤの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1及び2並びに比較例1で得た銀結晶の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【
図2】比較例2及び3で得た銀結晶の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【
図3】比較例4及び実施例3~5で得た銀結晶の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の例示の態様について説明するが、本開示は以下の態様に限定されない。
【0019】
本開示の一態様は、
少なくとも、アルカリ金属臭化物、第1のポリビニルピロリドン(本開示で、第1のPVPともいう。)、及びポリオールを混合して、A液を調製すること、
少なくとも、銀塩、第2のポリビニルピロリドン(本開示で、第2のPVPともいう。)、及びポリオールを混合して、B液を調製すること、
A液とB液とを混合してC液を調製すること、及び
C液を加熱して銀ナノワイヤを生成すること、
を含み、
第2のポリビニルピロリドンの数平均分子量が、1,000以上200,000未満であり、
B液が、銀塩に由来する銀イオンと第2のポリビニルピロリドンとの錯体を含む、銀ナノワイヤの製造方法を提供する。
【0020】
銀ナノワイヤの生成機構は以下のように考えられている。すなわち、銀の結晶核に対して、還元剤及び形態制御剤(これは銀の[100]面に選択的に吸着する物質である)の存在下で銀イオンを適用すると、銀イオンが還元されて結晶核上に銀が析出することによって結晶成長が生じる際に、形態制御剤の寄与によって異方性粒子として多重双晶粒子を成長させることができる。この多重双晶粒子は、銀イオンの更なる還元析出によってナノワイヤに成長する。銀ナノワイヤの高収率かつ高純度での生成のためには、還元反応時の結晶核の過度の生成を防止することが有利であり、銀を予め錯体化しておくことは結晶核の過度の生成抑制に有用である。
【0021】
本発明者らは、銀錯体の形成、次いで形態制御剤存在下での銀イオンの還元析出によって銀ナノワイヤを得る方法において、形態制御剤として用いるポリマー(すなわち第1のPVP)と同種のポリマー(すなわち第2のPVP)を錯体の配位子として用いることで、配位子と形態制御剤との親和性が良好になり、銀の[110]面に対する形態制御剤の付着(より具体的には吸着)が促進されることを見出した。すなわち、銀と第2のPVPとの錯体の形成は、錯体形成による結晶核の過度の生成の防止という利点のみでなく、第1のPVPの[110]面に対するより良好な付着による所望のナノワイヤ形状へのより選択的な成長という利点をも与える。
【0022】
したがって、本開示の方法は、別途製造された結晶核の使用、生成物から不純物を分離する工程の実施、等を必須としない簡便なプロセスでありながら、所望の銀ナノワイヤを高収率及び高純度で生成し得るという利点を有する。
【0023】
以下、一態様に係る方法の各工程について説明する。
【0024】
〈A液の調製〉
A液は、少なくとも、アルカリ金属臭化物、第1のPVP、及びポリオールを混合して得られる。典型的な態様において、A液は銀を含まない。
【0025】
本開示の方法において、アルカリ金属臭化物は、形状調整剤として機能する。アルカリ金属臭化物は、好ましくは臭化ナトリウム又は臭化カリウムであり、より好ましくは臭化ナトリウムである。A液とB液との混合によって生じたC液中でアルカリ金属臭化物と銀塩とが共存すると、これらは急速に反応して臭化銀を生成する。臭化銀は、C液中で難溶性であるが、C液の加熱によって銀イオンの還元が進行して銀イオン濃度が低下すると再溶解して銀イオンを系中に供給する。再溶解の進行は臭化銀の生成と比べて遅いため、結晶成長面には銀イオンが徐々に供給されることになる。このように、アルカリ金属臭化物は、C液中の銀イオン濃度の制御、したがって所望の銀ナノワイヤの高純度での生成に寄与する。
【0026】
A液中のアルカリ金属臭化物の量は、C液において、銀に対するアルカリ金属臭化物のモル比(アルカリ金属臭化物のモル数/銀のモル数の比)が、好ましくは1×10-7~1、1×10-6~1×10-1、1×10-4~1×10-2、又は1×10-3~1×10-2となるように調整される。
【0027】
第1のPVPは、形態制御剤として機能する。第1のPVPの数平均分子量は、当該第1のPVPを形態制御剤として良好に機能させる観点から、好ましくは100,000以上、200,000以上、300,000以上、350,000以上、又は360,000以上であり、極性分子であるPVP分子同士での過度な相互作用を回避してC液中で含有成分の良好な分散性を保持する観点から、好ましくは、2,000,000以下、1,500,000以下、又は1,300,000以下である。
【0028】
本開示で、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用い、標準ポリスチレン換算で測定される値である。
【0029】
A液中の第1のPVPの量は、C液中で銀に対する第1のPVPのモル比が所望の範囲となるように調整される。C液中、銀に対する第1のPVPのモル比(第1のPVPのモル数/銀のモル数の比)は、所望の銀ナノワイヤを良好に成長させる観点から、好ましくは0.5以上、1.0以上、又は1.5以上であり、C液の過度な粘度上昇を回避してC液中の含有成分の良好な分散を保持する観点から、好ましくは100以下、50以下、30以下、10以下、5.0以下、又は3.0以下である。
【0030】
ポリオールは、還元剤と溶媒との両者として機能する。ポリオールは、還元剤及び溶媒としての良好な機能の観点から好ましくはジオールである。一態様において、ジオールは、アルキレングリコールであり、又は炭素数2~5のジオールである。ジオールは、特に好ましくはエチレングリコールである。
【0031】
A液は、少なくとも上記成分を、例えば室温にて撹拌下で混合することで調製できる。本発明の効果を損なわない範囲でA液が上記成分以外に任意成分を含むことは排除されない。
【0032】
〈B液の調製〉
B液は、少なくとも、銀塩、第2のPVP、及びポリオールを混合して得られる。
【0033】
銀塩としては、硝酸銀、カルボン酸銀(酢酸銀、シュウ酸銀等)、硫酸銀、炭酸銀等が挙げられ、還元反応の良好な進行の点で硝酸銀が好ましい。B液中の銀塩濃度は、例えば、C液中での銀塩濃度が1mmol/L~1000mmol/L、又は10mmol/L~100mmol/Lとなるように調整される。
【0034】
第2のPVPは、銀イオンとの錯体を形成するための配位子として機能する。第2のPVPの数平均分子量は、第1のPVPの数平均分子量よりも小さいことが好ましい。この場合、第1のPVPは、数平均分子量が比較的大きいことによって形態制御剤として良好に機能する一方、第2のPVPは、数平均分子量が比較的小さいことによって銀イオンとの錯体形成能に優れる。
【0035】
一態様において、第2のPVPの数平均分子量は、錯体を安定的に存在させる観点から1,000以上であり、好ましくは、3,000以上、5,000以上、又は8,000以上であり、銀イオンとの錯体形成能の観点から200,000未満であり、好ましくは、100,000以下、80,000以下、60,000以下、又は55,000以下である。
【0036】
B液中、銀に対する第2のPVPのモル比(第2のPVPのモル数/銀のモル数の比)は、所望量の錯体を容易に形成させる観点から、好ましくは0.001以上、0.005以上、又は0.008以上であり、C液中での[100]面に対する第1のPVPの良好な付着を維持する観点から、好ましくは0.1以下、0.05以下、0.03以下、0.02以下、又は0.012以下である。
【0037】
また、B液中、銀に対するN-ビニル-2-ピロリドン単位のモル比(N-ビニル-2-ピロリドン単位のモル数/銀のモル数の比)は、所望量の錯体を容易に形成させる観点から、好ましくは0.1以上、0.5以上、又は0.8であり、C液中での[100]面に対する第1のPVPの良好な付着を維持する観点から、好ましくは10以下、5.0以下、3.0以下、2.0以下、又は1.2以下である。
【0038】
B液中のポリオールとしては、A液に用いるのと同様のものを好ましく使用でき、特にエチレングリコールが好ましい。
【0039】
B液は、少なくとも上記成分を、例えば室温にて撹拌下で混合することで調製できる。本発明の効果を損なわない範囲でB液が上記成分以外に任意成分を含むことは排除されない。
【0040】
〈C液の調製〉
次いで、調製されたA液とB液とを混合してC液を調製する。一態様においては、A液とB液とを撹拌混合することでC液を調製する。A液:B液の体積比率は、好ましくは1:1~30:1、又は5:1~20:1、又は10:1~15:1である。一態様において、混合温度は、室温から、後述の銀ナノワイヤ生成時の温度までの間に設定してよく、一態様において、混合温度は、銀ナノワイヤ生成時の温度に設定される。
【0041】
〈銀ナノワイヤの生成〉
次いで、C液の加熱によって銀ナノワイヤを生成する。加熱は、例えばマイクロ波加熱にて、加熱温度を好ましくは150~250℃、又は180~200℃、加熱時間を好ましくは1~10分間、又は1~5分間として実施してよい。生じた銀結晶を冷却し、脱イオン水及びヘキサン等で洗浄し、目的の銀ナノワイヤを得ることができる。
【0042】
典型的な態様において、銀ナノワイヤは、直径20nm以下、アスペクト比(長さ/直径の比)100以上である。銀ナノワイヤのアスペクト比(長さ/直径の比)は、優れた導電性能を得る観点から、好ましくは150以上、200以上、500以上、又は1000以上であり、製造容易性の観点から、好ましくは10000以下、5000以下、又は3000以下である。一態様において、上記洗浄後の銀結晶の総数に対する直径20nm以下かつアスペクト比100以上の銀結晶の数の比率は、特段の不純物除去処理を伴わずに、例えば70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、又は90%以上であることができる。銀結晶の数及びサイズは走査型電子顕微鏡(SEM)画像上で計測できる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本開示を更に具体的に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されない。
【0044】
〈A液、B液及びC液の調製〉
C液中で、銀イオンモル濃度[Ag+]=42mM、及び臭化物イオンモル濃度[Br-]/銀イオンモル濃度[Ag+]=4.2×10-3となるように、A液及びB液を調製した。
【0045】
エチレングリコール14mLに、臭化ナトリウム2.65mmol、及びC液中で表1に示すPVPモル濃度[PVP]/銀イオンモル濃度[Ag+]比となる量の第1のPVPを室温で撹拌混合して、A液を得た。
【0046】
エチレングリコール1mLに、硝酸銀630mmol、及びC液中で表1に示すPVPモル濃度[PVP]/銀イオンモル濃度[Ag+]比となる量の第2のPVPを室温で撹拌混合して、B液を得た。
【0047】
マイクロ波加熱装置に上記A液を入れ、設定温度175℃まで30秒間かけて昇温した後1分間保持した。次いで、175℃にて上記B液を添加してC液を得るとともにC液中で還元反応を進行させた。反応終了後、冷却、遠心分離洗浄(エタノール2回、純水で1回)を経て、銀結晶を得た。
【0048】
〈走査型電子顕微鏡(SEM)観察〉
銀結晶の形態を、走査型電子顕微鏡(SEM)にて加速電圧15kVで観察し、
図1~3に示す形態像を得た。形態像から銀結晶のアスペクト比を計測し、アスペクト比100以上のものをナノワイヤと判定した。計測視野内の銀結晶の総数のうち、ナノワイヤと判定されたものの数の比率をナノワイヤ比率(%)とし、100%からナノワイヤ比率(%)を差し引いた値を不純物比率(%)とした。結果を表1に示す。
【0049】
図1は、比較例1、実施例1及び2で得た銀結晶のSEM画像を示す図であり、
図2は、比較例2及び3で得た銀結晶のSEM画像を示す図であり、
図3は、比較例4、実施例3及び4で得た銀結晶のSEM画像を示す図である。
図1~3に示すように、各実施例では、ナノワイヤの量が多く、不純物の量が少なかったのに対し、各比較例では、ワイヤの量が少なく、不純物が多かった。
【0050】