(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】1-フェニル-2-フェニルエタン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07C 39/06 20060101AFI20230307BHJP
C07C 39/16 20060101ALI20230307BHJP
C07C 39/21 20060101ALI20230307BHJP
C07C 39/367 20060101ALI20230307BHJP
C07C 215/76 20060101ALI20230307BHJP
C07C 205/22 20060101ALI20230307BHJP
C07C 255/53 20060101ALI20230307BHJP
A61K 31/055 20060101ALI20230307BHJP
A61K 31/06 20060101ALI20230307BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20230307BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230307BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20230307BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230307BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C07C39/06
C07C39/16
C07C39/21
C07C39/367 CSP
C07C215/76
C07C205/22
C07C255/53
A61K31/055
A61K31/06
A61K31/05
A61P17/00
A61P17/10
A61K8/34
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018232874
(22)【出願日】2018-12-12
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三沢 憲佑
(72)【発明者】
【氏名】角田 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 高良
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-528719(JP,A)
【文献】特開2000-159681(JP,A)
【文献】特開平06-206805(JP,A)
【文献】特開平05-221845(JP,A)
【文献】特開2002-145802(JP,A)
【文献】米国特許第02496968(US,A)
【文献】特表2014-527046(JP,A)
【文献】特開2016-079152(JP,A)
【文献】国際公開第2010/030787(WO,A1)
【文献】Percec, V.; Zuber, M.,Liquid-crystalline polyethers based on conformational isomerism. XIX. Synthesis and characterization of flexible polyethers based on 1-(4-hydroxyphenyl)-2-(2-R-4-hydroxyphenyl)ethane with H, F, CH3, Br, Cl, and CF3 as R groups,Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry,1992年,Vol.30(6),p.997-1016
【文献】Moon, Byung Seok; Carlson, Kathryn E.; Katzenellenbogen, John A.; Choi, Tae Hyun; Chi, Dae Yoon; Kim, Jung Young; Cheon, Gi Jeong; Koh, Hun Yeong; Lee, Kyo Chul; An, Gwangil,Synthesis and evaluation of aryl-substituted diarylpropionitriles, selective ligands for estrogen receptor β, as positron-emission tomographic imaging agents,Bioorganic & Medicinal Chemistry,2009年,Vol.17(9),p.3479-3488
【文献】Yonekubo, Shigeru; Fushimi, Nobuhiko; Miyagi, Takashi; Nakanishi, Osamu; Katsuno, Kenji; Ozawa, Motoyasu; Handa, Chiaki; Furuya, Noritaka; Muranaka, Hideyuki,Synthesis and structure-activity relationships of 1-benzylindan derivatives as selective agonists for estrogen receptor beta,Bioorganic & Medicinal Chemistry ,2016年,Vol.24(22),p.5895-5910
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
A61P
A61Q
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
〔請求項1〕
下記式(1):
【化1】
〔式中、Xは水素原子又は基R
1(ここで、R
1は塩素原子、臭素原子又はニトロ基を示す)を示し、Yは水素原子又は基R
2(ここで、R
2は
エチル基、イソプロピル基、炭素数2~6のアルケニルキ基、フッ素原子
又はニトロ
基を示す)を示し、W及びZはそれぞれ水素原子又はフッ素原子を示す。但し、X及びYはいずれか一方が水素原子で他方が基R
1又は基R
2であり、Yがフッ素原
子である場合、X及びZは同時に水素原子ではない。〕
で示される化合物又はその塩。
【請求項2】
下記式(1’):
【化2】
〔式中、Xは水素原子又は基R
1(ここで、R
1は塩素原子、臭素原子又はニトロ基を示す)を示し、Yは水素原子又は基R
2(ここで、R
2は
エチル基、イソプロピル基、炭素数2~6のアルケニルキ基、フッ素原子、臭素原子
又はニトロ
基を示す)を示し、W及びZはそれぞれ水素原子又はフッ素原子を示す。但し、X及びYはいずれか一方が水素原子で他方が基R
1又は基R
2である。〕
で表される化合物又はその塩を有効成分とする
皮膚のシワ、タルミ及び皮膚の弾力性又はハリの低下から選ばれる皮膚老化予防又は改善剤。
【請求項3】
下記式(1’):
【化3】
〔式中、Xは水素原子又は基R
1(ここで、R
1は塩素原子、臭素原子又はニトロ基を示す)を示し、Yは水素原子又は基R
2(ここで、R
2は
エチル基、イソプロピル基、炭素数2~6のアルケニルキ基、フッ素原子、臭素原子
又はニトロ
基を示す)を示し、W及びZはそれぞれ水素原子又はフッ素原子を示す。但し、X及びYはいずれか一方が水素原子で他方が基R
1又は基R
2である。〕
で表される化合物又はその塩を有効成分とする皮脂分泌抑制剤。
【請求項4】
下記式(1’):
【化4】
〔式中、Xは水素原子又は基R
1(ここで、R
1は塩素原子、臭素原子又はニトロ基を示す)を示し、Yは水素原子又は基R
2(ここで、R
2は
エチル基、イソプロピル基、炭素数2~6のアルケニルキ基、フッ素原子、臭素原子
又はニトロ
基を示す)を示し、W及びZはそれぞれ水素原子又はフッ素原子を示す。但し、X及びYはいずれか一方が水素原子で他方が基R
1又は基R
2である。〕
で表される化合物又はその塩を有効成分とするニキビ予防又は改善剤。
【請求項5】
下記式(1’):
【化5】
〔式中、Xは水素原子又は基R
1(ここで、R
1は塩素原子、臭素原子又はニトロ基を示す)を示し、Yは水素原子又は基R
2(ここで、R
2は
エチル基、イソプロピル基、炭素数2~6のアルケニルキ基、フッ素原子、臭素原子
又はニトロ
基を示す)を示し、W及びZはそれぞれ水素原子又はフッ素原子を示す。但し、X及びYはいずれか一方が水素原子で他方が基R
1又は基R
2である。〕
で表される化合物又はその塩を有効成分とするホットフラッシュ予防又は改善剤。
【請求項6】
下記式(1’):
【化6】
〔式中、Xは水素原子又は基R
1
(ここで、R
1
は塩素原子、臭素原子又はニトロ基を示す)を示し、Yは水素原子又は基R
2
(ここで、R
2
はエチル基、イソプロピル基、炭素数2~6のアルケニルキ基、フッ素原子、臭素原子又はニトロ基を示す)を示し、W及びZはそれぞれ水素原子又はフッ素原子を示す。但し、X及びYはいずれか一方が水素原子で他方が基R
1
又は基R
2
である。〕
で表される化合物又はその塩を有効成分とするエストロゲン受容体β活性化剤。
【請求項7】
Xが水素原子で、Yが基R
2(ここで、R
2は、ニトロ基
、エチル基、イソプロピル基、炭素数2~6のアルケニル基、又はフッ素原子を示す。)であり、W及びZが共に水素原子である、請求項1の化合物又はその
塩。
【請求項8】
Xが水素原子で、Yが基R
2
(ここで、R
2
は、ニトロ基、エチル基、イソプロピル基、炭素数2~6のアルケニル基、又はフッ素原子を示す。)であり、W及びZが共に水素原子である、請求項2~6のいずれか1項記載の剤。
【請求項9】
Yで示される基R
2がフッ素原子であり、W及びZのいずれか一方がフッ素原子である、請求項1の化合物又はその
塩。
【請求項10】
Yで示される基R
2
がフッ素原子であり、W及びZのいずれか一方がフッ素原子である、請求項2~6のいずれか1項記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エストロゲン受容体βに対して選択性の高い化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
エストロゲンは、卵胞ホルモンとも呼ばれ、黄体ホルモンであるプロゲステロンと協同的に女性ホルモンとして生殖関係の機能調節を行う。エストロゲンには斯かる機能の他に、皮膚の線維芽細胞に作用し、コラーゲンとヒアルロン酸の生合成を促進する作用、男性ホルモンと拮抗作用を示し、男性ホルモンが活性化する皮脂腺の機能亢進を抑制する作用、紫外線ストレスを軽減する作用、があることが報告されている。したがって、エストロゲンの分泌能が低下すると、皮膚の張りの低下やシワの増加等の皮膚老化の進行促進や、皮脂の過剰分泌に基づくニキビの発生や紫外線ストレスや皮膚のバリア機能の低下に基づく肌荒れ等の皮膚疾患の発生頻度が増大する。
例えば、女性が閉経を迎え、血液中のエストロゲン濃度が著しく減少すると、皮膚全体の機能に変化が生じる。特に、真皮においてはコラーゲン線維が著しく減少し、その結果しわやたるみといった皮膚老化現象が目立つようになる(非特許文献1、2)。また、血液中のエストロゲン濃度の減少は、種々の更年期障害を引き起こす。その中でも代表的な症状の一つに、突然顔や体が熱くなり、心拍数の上昇や、大量の発汗を起こす、ホットフラッシュがある(非特許文献3)。
【0003】
一方、閉経後の女性に対して女性ホルモン補充療法(HRT)を行うとしわ、血行が改善すること、エストロゲンを塗布するとしわ、弾力性、水分量が改善することが報告されている(非特許文献4、5)。また、エストロゲンを塗布すると皮脂腺からの皮脂の分泌が抑制されることが報告されている(非特許文献6)。また、大豆等に含まれる植物エストロゲンの一種であるイソフラボンの摂取によりホットフラッシュの症状が顕著に改善することが報告されている(非特許文献7)。
【0004】
エストロゲンは2種類のエストロゲン受容体(ERα、ERβ)に結合し、これらが協調して働くことでその作用を発揮することが知られている。エストロゲンは初めに、ERα、ERβのligand binding domain(LBD)に結合して立体構造を変化させ、それに続いて二量体(ERα/α、ERβ/β、ERα/βの三種類の組み合わせ)を形成する(非特許文献8、9)。二量体を形成したERは核内へ移行し、ゲノム上に存在するエストロゲン応答配列に結合し、そこで様々な共役因子をリクルートした後に、標的遺伝子の転写活性を制御する(非特許文献10、11)。
ERαとERβの標的遺伝子は、大部分が同一であることが報告されている(非特許文献12)。ところが最近になって、いくつかの相違する標的遺伝子の組み合わせに起因して、ERαとERβがそれぞれ異なる生理機能を有していることが示唆されている(非特許文献12)。例えば、ERαは、乳癌細胞の増殖を活性化する一方で、ERβは、その増殖を抑制するといった正反対の役割を果たしていることが報告されている(非特許文献13)。また、ERβは、皮膚の光老化を防御する機能を有することが報告されている(非特許文献14)。
このようなことから、ERβは安全にエストロゲンの作用を発揮できる理想的な分子であり、ERβを選択的に活性化できれば、エストロゲン減少に起因する皮膚老化症状やホットフラッシュ等の更年期障害の予防・改善等に有用であると考えられる。
【0005】
1-フェニル-2-フェニルエタン誘導体は、炭素鎖及びファニル環上に様々な置換基を有する化合物が合成され、エストロゲン受容体の活性化、紫外線により誘発される酸化ストレス保護作用等の薬理作用を有することが報告されている(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献15)。しかしながら、エストロゲン受容体βを選択的に活性化する化合物は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2010/030787号
【文献】国際公開第2016/102472号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Nicholas et al(2003)Am J Clin Dermatol 4:371-378
【文献】Hall et al(2005)J Am Acad Dermatol 53:555-68
【文献】Rendall MJ et al et al(2008) Maturitas 60:158-69
【文献】Sator et al(2001)Maturitas 39:43-55
【文献】PiCrard-Franchimon et al(1995) Maturitas 22:151-154
【文献】Peter et al(1974)J Invest Dermatol 62:191-201
【文献】van de Weijer PH et al(2002) Maturitas 42:187-93
【文献】Mukherjee et al(2010)Pharm Res 27:1439-1468
【文献】Powell et al(2008)Proc Natl Acad Sci U S A 105:19012-19017
【文献】Kulakosky et al(2002)J Mol Endocrinol 29:137-152
【文献】Michael et al(2006) Genes Dev 2006 20 : 1405-1428
【文献】Liu et al(2008) Proc Natl Acad Sci USA 105:2604-2609
【文献】Helguero et al(2005)Oncogene 24 : 6605-6616
【文献】Chang et al(2010)Mol Pharmacol 77:744-750
【文献】Meyers et al (2001)J Med Chem 44:4230-4251
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、エストロゲン受容体βに対して選択性の高い化合物、当該化合物のエストロゲン受容体β活性化剤としての利用を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、エストロゲン受容体のうちERβの活性を選択的に高める物質について研究したところ、特定の1-フェニル-2-フェニルエタン誘導体に、ERαを活性化せずに、ERβの活性を特異的に高める作用があることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、次の(1)~(6)に係るものである。
(1)下記式(1)で示される化合物又はその塩。
(2)下記式(1’)で表される化合物又はその塩を有効成分とするエストロゲン受容体β活性化剤。
(3)下記式(1’)で示される化合物又はその塩を有効成分とする皮膚老化予防又は改善剤。
(4)下記式(1’)で示される化合物又はその塩を有効成分とする皮脂分泌抑制剤。
(5)下記式(1’)で示される化合物又はその塩を有効成分とするニキビ予防又は改善剤。
(6)下記式(1’)で示される化合物又はその塩を有効成分とするホットフラッシュ予防又は改善剤。
【0011】
【0012】
〔式中、Xは水素原子又は基R1(ここで、R1は塩素原子、臭素原子又はニトロ基を示す)を示し、Yは水素原子又は基R2(ここで、R2は炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニルキ基、フッ素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、又は炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す)を示し、W及びZはそれぞれ水素原子又はフッ素原子を示す。但し、X及びYはいずれか一方が水素原子で他方が基R1又は基R2であり、Yがフッ素原子又はメチル基である場合、X及びZは同時に水素原子ではない。〕
【0013】
【0014】
〔式中、Xは水素原子又は基R1(ここで、R1は塩素原子、臭素原子又はニトロ基を示す)を示し、Yは水素原子又は基R2(ここで、R2は炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニルキ基、フッ素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、又は炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す)を示し、W及びZはそれぞれ水素原子又はフッ素原子を示す。但し、X及びYはいずれか一方が水素原子で他方が基R1又は基R2である。〕
【発明の効果】
【0015】
本発明のエストロゲン受容体β活性化剤等は、エストロゲン受容体βを選択的に活性化し、また、乳癌発症・悪化の危険性がなく安全であることから、皮膚の老化症状の予防又は改善、皮脂腺からの皮脂分泌の抑制、ニキビの予防又は改善、ホットフラッシュ等の更年期障害の予防又は改善等を発揮し得る医薬品、医薬部外品或いはこれらへ配合するための素材又は製剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処理行為を含まない概念である。
【0017】
本明細書において、「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転、疾患、症状又は状態の悪化の防止又は遅延、あるいは疾患又は症状の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
【0018】
本明細書において、「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止又は遅延、あるいは個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
【0019】
本明細書において、「置換されていてもよい」とは、対象となる基の水素原子が他の基に置換されていてもよいことを意味し、当該置換基の数は、1若しくはそれ以上であり得、置換基を2以上有する場合、当該置換基は同一又は異なっていてもよい。
【0020】
以下に、式(1)において使用した記号について説明する。
Xは、水素原子又は基R1を示すが、水素原子であるのが好ましい。
【0021】
Yで示される基R2の「炭素数1~6のアルキル基」としては、直鎖又は分岐鎖の何れでもよく、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基であり、さらに好ましくはエチル基、イソプロピル基であり、よりさらに好ましくはエチル基である。
【0022】
Yで示される基R2の「炭素数2~6のアルケニル基」としては、直鎖又は分岐鎖の何れでもよく、炭素数2~4のアルケニル基が好ましい。例えば、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチルエテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、3-ブテニル基等が挙げられ、好ましくはエテニル基、1-プロペニル基、1-メチルエテニル基等が挙げられ、より好ましくは1-メチルエテニル基である。
【0023】
Yで示される基R2の「炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基」における炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基であり、より好ましくはメチル基である。
炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基としては、好ましくは、アミノ基の他、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等の上記アルキル基で1又は2置換されたアミノ基が挙げられ、より好ましくはジメチルアミノ基である。
【0024】
Yで示される基R2としては、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、フッ素原子であるのが好ましく、ニトロ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、フッ素原子であるのがより好ましく、ニトロ基、エチル基、イソプロピル基、1-メチルエテニル基、フッ素原子であるのがさらに好ましい。
【0025】
X及びYは、いずれか一方が水素原子で他方が基R1又は基R2である。すなわち、XとYが共に水素原子、Xが基R1でYが基R2であることはない。
【0026】
ERβ選択性の点から、式(1)で表される化合物は、Xが水素原子で、Yが基R2であり、W及びZは共に水素原子であるのが好ましい(下記式(1a))。この場合、基R2としては、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~3のアルキル基で置換されたアミノ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基であるのが好ましく、ニトロ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基であるのがより好ましく、ニトロ基、エチル基、イソプロピル基、1-メチルエテニル基であるのがさらに好ましい。
【0027】
また、ERβ選択性の点から、式(1)で表される化合物は、Yで示される基R2がフッ素原子である場合は、W及びZのいずれか一方がフッ素原子で他方が水素原子(下記式(1b))であるのが好ましく、Wが水素原子でZがフッ素原子であるのがより好ましい。
【0028】
【0029】
〔式中、R2は前記と同じものを示す。〕
【0030】
上記式(1)で表される化合物は、Yがフッ素原子又はメチル基で、X及びZが共に水素原子である化合物を除き、新規化合物である。
【0031】
本発明の式(1)で表される化合物(以下、「本発明の化合物」と称する)の好適な塩は、薬理的に許容される塩であって、例えば、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)等の金属塩、アンモニウム塩、炭酸アルカリ金属(例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等)、炭酸水素アルカリ金属(例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等)等の無機塩基の塩;例えば、トリ(低級)アルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N-エチルジイソプロピルアミン等)、ピリジン、キノリン、ピペリジン、イミダゾール、ピコリン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリン、N-(低級)アルキル-モルホリン(例えば、N-メチルモルホリン等)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等の有機塩基の塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩;ギ酸、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩、ピクリン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、グルタミン酸塩等の有機酸の塩等が挙げられる。
【0032】
本発明の化合物体又はその塩は、未溶媒和型のみならず、水和物又は溶媒和物としても存在することができる。従って、本発明の化合物又はその塩は、そのすべての結晶型及び水和若しくは溶媒和物を含むものである。
【0033】
また、本発明の化合物には、幾何異性体、立体異性体、光学異性体等の異性体も当然に包含される。
【0034】
本発明の化合物又はその塩は、基本的には下記の合成例1~4の方法により製造することができ、置換基の種類等によって適宜改変し、それにあった任意の方法によって製造することができる。
<合成例1>
式(1)中、Yが水素原子、フッ素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基又はシアノ基である化合物は、以下の反応工程により製造できる。
【0035】
【0036】
〔式中、Yaは水素原子又は基R2a(ここで、R2aはフッ素原子、臭素原子、OZ1基、アミノ基、ニトロ基又はシアノ基を示す。)を示し、Ybは水素原子又は基R2b(ここで、R2bはフッ素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基又はシアノ基を示す。)を示し、Z1及びZ2はヒドロキシ保護基を示し、X及びZは前記と同じものを示す。〕
【0037】
ここで、Z1及びZ2で示されるヒドロキシ保護基としては、例えばアルキル基(メチル基、エチル基、t-ブチル等)、アラルキル基(トリフェニルメチル基、ベンジル基)、トリアルキルシリル基(t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等)、アルキルジアリールシリル基(t-ブチルジフェニルシリル等)等が挙げられる。
【0038】
化合物1と化合物2に対して、溶媒中Horner-Wadworth-Emmons反応により、化合物3を得る。
本反応は通常溶液中で行われる。溶媒としては反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、t-ブチルメチルエーテル、ジグリムなどのエーテル類やジメルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略す)、N-メチルピロリドンなどが使用できる。また、塩基としてはリチウムジイソプロピルアミドやt-ブトキシカリウム(以下、t-BuOKと記載)、n-ブチルリチウム などを用いることができる。反応温度としては、特に制限はないが、特に-78℃から用いる溶媒の還流温度までの範囲が好ましい。
【0039】
化合物3に対して、溶媒中オレフィンの還元反応により、化合物4を得る。
本反応は通常溶液中で行われる。溶媒としては反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、例えば、エタノールやメタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す)、水あるいはこれら2種以上を混合して使用することができる。用いる触媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、例えば、パラジウム炭素などが使用できる。還元剤としては、特に限定されてないが、例えば水素ガスやp-トルエンスルホニルヒドラジドなどを使用できる。また、必要に応じて、酢酸ナトリウムなどを加えることもできる。反応温度としては、特に制限はないが、特に0℃から用いる溶媒の還流温度までの範囲が好ましい。
【0040】
化合物4に対して、溶媒中脱保護反応により、化合物5を得る。
本反応は通常溶液中で行われる。溶媒としては反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、例えば、ジクロロメタンやジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類やメタノールやエタノールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、t-ブチルメチルエーテル、ジグリムなどのエーテル類、酢酸エチル、DMF、DMSOなどが使用できる。脱保護反応に用いる試薬としては特に制限がないが、例えば三フッ化ホウ素・ジメチルスルフィドなどのルイス酸やトリフルオロ酢酸などのプロトン酸、水酸化ナトリウムなどの塩基、水素ガス、フッ化水素やフッ化テトラブチルアンモニウムなどのフッ化物イオン源剤などが使用できる。また、必要に応じて、パラジウム炭素などの触媒を加えてもよい。反応温度としては、特に制限はないが、特に0℃から用いる溶媒の還流温度までの範囲が好ましい。
【0041】
<合成例2>
式(1)中、Yが炭素数1~6のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基である化合物は、以下の反応工程により製造できる。
【0042】
【0043】
〔式中、Yc1は炭素数1~6のアルキル基、Yc2は炭素数2~6のアルケニル基、Yc3は炭素数2~6のアルキル基、Z1、Z2はヒドロキシ保護基を示す。〕
【0044】
ここで、Z1及びZ2で示されるヒドロキシ保護基としては、例えばアルキル基(メチル基、エチル基、t-ブチル等)、アラルキル基(トリフェニルメチル基、ベンジル基)、トリアルキルシリル基(t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等)、アルキルジアリールシリル基(t-ブチルジフェニルシリル等)等が挙げられる。
また化合物1は合成例1で示した経路にて合成可能である。
【0045】
化合物4eに対して、溶媒中鈴木カップリング反応により、化合物6a又は6bを得る。
本反応は通常溶液中で行われる。試薬としては、対応するホウ素試薬を用い、溶媒としては反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、t-ブチルメチルエーテル、ジグリムなどのエーテル類やトルエンなどの芳香族炭化水素類、水、あるいはこれら2種以上を混合して使用することができる。また、塩基としてはトリエチルアミンやt-BuOK、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることができる。触媒としては、二塩化1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウムやテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどのパラジウム系触媒を使用することができる。反応温度としては、特に制限はないが、特に-78℃から用いる溶媒の還流温度までの範囲が好ましい。
【0046】
化合物6a又は6bを、合成例1で示したものと同様の脱保護反応を実施することで、化合物7a又は7bを得る。
【0047】
化合物6bを、合成例1で示したものと同様の還元反応を実施することで、化合物8を得る。
【0048】
化合物8を、合成例1で示したものと同様の脱保護反応を実施することで、化合物9を得る。
【0049】
その他、Yが炭素数1~3のアルキル基で置換されたアミノ基である化合物は下記合成例3に示す方法、Y及びWがフッ素原子である化合物は下記合成例4に示す方法により製造することができる。具体的には対応する製造例4及び5に記載の方法及びこれに準じる方法により製造できる。
【0050】
【0051】
〔式中、R3及びR4は同一又は異なっていてもよい炭素数1~3のアルキル基を示す。〕
【0052】
【0053】
本発明の化合物又はその塩は、医薬品や医薬部外品として許容し得る規格に適合し本発明の効果を発揮するものであれば粗精製物であってもよく、さらに得られた粗精製物を公知の分離精製方法を適宜組み合わせてこれらの純度を高めてもよい。精製手段としては、有機溶剤沈殿、遠心分離、限界濾過膜、高速液体クロマトグラフやカラムクロマトグラフ等が挙げられる。
【0054】
後記実施例で示すとおり、本発明の化合物は、ERβの分子構造内にあるligand binding domain(LBD)を利用したin vitro評価系において優れたエストロゲン受容体β活性化作用を示した。当該評価系は、ERαとERβのligand binding domain(LBD)の配列の違い(J Endocrinol 163:379-383(1999))を利用した系であって、リガンドのLBDへの結合、ERの活性化を判別することによりERβの選択的な活性化評価を可能にしたものである。
よって、本発明におけるエストロゲン受容体β活性化とは、ERβへの親和性がERαへの親和性に対して高いこと、すなわちERβ選択的な活性化を意味する。具体的にはERαとERβに対する結合比であるERβ/ERαが、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、より好ましくは3以上、より好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。そして好ましくは300以下、より好ましくは200以下である。また好ましくは1~300、より好ましくは2~300、より好ましくは3~300、より好ましくは5~300、より好ましくは10~200の範囲である。
【0055】
また、本発明の化合物は、エストロゲン応答配列(Estrogen Response Element:ERE、AGGTCAnnnTGACCT)を利用したエストロゲン受容体(ERs)を介する転写活性化能評価系において、ERβについて標的遺伝子の転写を活性化させる作用を示した。
【0056】
したがって、本発明の化合物又はその塩は、エストロゲン減少に起因する皮膚老化症状(皮膚のシワ、タルミ(弛緩)、皮膚の弾力性やハリの低下)の予防又は改善やホットフラッシュ等の更年期障害の予防又は改善、皮脂分泌の抑制、特に、ERβを活性化することが有用と考えられる各種疾病や症状の予防、改善又は治療に有効である。
ここで、皮膚のシワやタルミの改善には、シワやタルミの発生抑制又はシワの外観を薄くする、シワやタルミを減少させる又は消失させる、シワやタルミを目立たなくする等の効果が包含される。
ホットフラッシュとは、女性ホルモンの減少に伴い自立神経が乱れ、体温調節機能が低下することに起因する症状であり、体表面温度の局所的な上昇、及びそれに伴うほてり、のぼせ、紅潮、及び多汗といった症状を意味する。
【0057】
従って、本発明の化合物又はその塩は、エストロゲン受容体β活性剤、皮膚外用剤、皮膚老化予防又は改善剤、皮脂分泌抑制剤、ニキビの予防又は改善剤、ホットフラッシュの予防又は改善剤(以下、エストロゲン受容体β活性剤等)となり得、また、エストロゲン受容体β活性剤等を製造するために使用することができる。
【0058】
また、本発明の化合物又はその塩は、ヒトに対して、ERβの選択的な活性化、皮膚の老化症状の予防、改善又は治療、皮脂の分泌抑制、ニキビの予防又は改善、或いはホットフラッシュ等の更年期障害の予防又は改善のために使用することができる。ここで、ヒトに対する使用は、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。「非治療的」とは、医療行為を含まない概念、すなわち人間を手術、治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には医師又は医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
【0059】
当該エストロゲン受容体β活性剤等は、ERβの選択的活性化、皮膚の老化症状の予防、改善又は治療、皮脂の分泌抑制、ニキビの予防又は改善、ホットフラッシュの予防又は改善効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の医薬品、医薬部外品であってもよく、又は当該医薬品等に配合して使用される素材又は製剤であってもよい。
【0060】
上記医薬品の剤形は、例えば注射剤、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤、各種外用剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等の何れでもよく、また投与形態も、経口投与(内用)、非経口投与(外用、注射)の何れであってもよい。
このような種々の剤型の医薬製剤を調製するには、本発明の化合物又はその塩を単独で、又は他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤等を適宜組み合わせて用いることができる。
【0061】
これらの投与形態のうち、好ましい形態は経口又は外用投与であり、製剤中の本発明の化合物又はその塩の含有量は、一般的に0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上、そして10質量%以下、好ましくは5質量%以下が挙げられる。また、0.00001~10質量%、好ましくは0.0001~5質量%である。
【0062】
上記医薬部外品は、皮膚外用剤、洗浄剤等の形態とするのが好ましく、使用方法に応じて、ローション、乳液、ゲル、クリーム、軟膏剤、粉末、顆粒等の種々の剤型で提供することができる。このような種々の剤型の医薬部外品は、本発明の化合物又はその塩と、皮膚外用剤に配合され得る、油性成分、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬剤(例えば、抗炎症剤、殺菌剤、酸化防止剤、ビタミン類)、香料、樹脂、防菌防黴剤、植物抽出物、アルコール類等を適宜組み合わせることにより調製することができる。
【0063】
当該医薬部外品中の、本発明の化合物又はその塩の含有量は、通常0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、そして20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下が挙げられる。また、0.0001~20質量%、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
【0064】
上記製剤、特に医薬品又は医薬部外品の適用量は、対象者の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って変動し得るが、経口投与又は摂取の場合成人1人当たり、本発明の化合物又はその塩として、1日あたり0.01mg/kg以上、好ましくは0.1mg/kg以上であり、そして100mg/kg以下、好ましくは10mg/kg以下である。また、好ましくは0.01mg~100mg/kg、より好ましくは0.1mg~10mg/kgである。
本発明のエストロゲン受容体β活性剤等の適用対象は、エストロゲンが減少することにより現れる諸症状、例えば皮膚のシワ、タルミ(弛緩)、皮膚の弾力性やハリの低下等の皮膚老化症状、ホットフラッシュ等の更年期障害、皮脂の過剰分泌やニキビ等の予防又は改善を求めるヒトが挙げられる。
【0065】
上述した実施形態に関し、本発明においては以下の態様が開示される。
<1>下記式(1)で示される化合物又はその塩。
<2>下記式(1’)で表される化合物又はその塩を有効成分とする皮膚老化予防又は改善剤。
<3>下記式(1’)で表される化合物又はその塩を有効成分とする皮脂分泌抑制剤。
<4>下記式(1’)で表される化合物又はその塩を有効成分とするニキビ予防又は改善剤。
<5>下記式(1’)で表される化合物又はその塩を有効成分とするホットフラッシュ予防又は改善剤。
<6>Xが水素原子で、Yが基R2(ここで、R2は、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~3のアルキル基で置換されたアミノ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又はフッ素原子を示す。)であり、W及びZが共に水素原子である、<1>の化合物又はその塩、又は<2>~<5>のいずれかの剤。
<7>Yで示される基R2がフッ素原子であり、W及びZのいずれか一方がフッ素原子である、<1>の化合物又はその塩、又は<2>~<5>のいずれかの剤。
【0066】
<8>皮膚老化予防又は改善剤を製造するための、下記式(1’)で表される化合物又はその塩の使用。
<9>皮脂分泌抑制剤を製造するための、下記式(1’)で表される化合物又はその塩の使用。
<10>ニキビ予防又は改善剤を製造するための、下記式(1’)で表される化合物又はその塩の使用。
<11>ホットフラッシュ予防又は改善剤を製造するための、下記式(1’)で表される化合物又はその塩の使用。
【0067】
<12>皮膚老化予防又は改善に使用するための、下記式(1’)で表される化合物又はその塩。
<13>皮脂分泌抑制に使用するための、下記式(1’)で表される化合物又はその塩。
<14>ニキビ予防又は改善に使用するための、下記式(1’)で表される化合物又はその塩。
<15>ホットフラッシュ予防又は改善に使用するための、下記式(1’)で表される化合物又はその塩。
【0068】
<16>皮膚老化を予防又は改善するための、下記式(1’)で表される化合物又はその塩の非治療的使用。
<17>皮脂分泌を抑制するための、下記式(1’)で表される化合物又はその塩の非治療的使用。
<18>ニキビを予防又は改善するための、下記式(1’)で表される化合物又はその塩の非治療的使用。
<19>ホットフラッシュを予防又は改善するための、下記式(1’)で表される化合物又はその塩の非治療的使用。
【0069】
<20>下記式(1’)で表される化合物又はその塩をそれらを必要とする対象に有効量で投与又は摂取する皮膚老化予防又は改善方法。
<21>下記式(1’)で表される化合物又はその塩をそれらを必要とする対象に有効量で投与又は摂取する皮脂分泌抑制方法。
<22>下記式(1’)で表される化合物又はその塩をそれらを必要とする対象に有効量で投与又は摂取するニキビ予防又は改善方法。
<23>下記式(1’)で表される化合物又はその塩をそれらを必要とする対象に有効量で投与又は摂取するホットフラッシュ予防又は改善方法。
【0070】
【0071】
〔式中、Xは水素原子又は基R1(ここで、R1は塩素原子、臭素原子又はニトロ基を示す)を示し、Yは水素原子又は基R2(ここで、R2は炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニルキ基、フッ素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、又は炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す)を示し、W及びZはそれぞれ水素原子又はフッ素原子を示す。但し、X及びYはいずれか一方が水素原子で他方が基R1又は基R2であり、Yがフッ素原子又はメチル基である場合、X及びZは同時に水素原子ではない。〕
【0072】
【0073】
〔式中、Xは水素原子又は基R1(ここで、R1は塩素原子、臭素原子又はニトロ基を示す)を示し、Yは水素原子又は基R2(ここで、R2は炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニルキ基、フッ素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、又は炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を示す)を示し、W及びZはそれぞれ水素原子又はフッ素原子を示す。但し、X及びYはいずれか一方が水素原子で他方が基R1又は基R2である。〕
【実施例】
【0074】
製造例1
2-クロロ-4-(4-ヒドロキシフェネチル)フェノール(化合物5a)、2-ブロモ-4-(4-ヒドロキシフェネチル)フェノール(化合物5b)、4-(4-ヒドロキシフェネチル)-2-ニトロフェノール(化合物5c)、4-(4-ヒドロキシフェネチル)-3-メチルフェノール(化合物5d)、3-ブロモ-4-(4-ヒドロキシフェネチル)フェノール(化合物5e)、4-(4-ヒドロキシフェネチル)ベンゼン-1,3-ジオール(化合物5f)、4-(4-ヒドロキシフェネチル)-3-ニトロフェノール(化合物5g)、5-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェネチル)ベンゾニトリル(化合物5h)、3,5-ジフルオロ-4-(4-ヒドロキシフェネチル)フェノール(化合物5i)、3-アミノ-4-(4-ヒドロキシフェネチル)フェノール(化合物5j)の合成
【0075】
【0076】
(工程A)
1当量のt-BuOKにアルゴン雰囲気下、室温にて、DMF((4-メトキシベンジル)ホスホン酸ジエチル(化合物1)に対して0.1Mとなるように調製)、1.5当量の化合物1を加え、20分間撹拌した。続いて、1当量の化合物2a-iを加えた後、室温にて、4時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液で中和、反応を停止させた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで脱水、濾過し、濾液を濃縮した。得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル)で精製して濃縮後、化合物3a-iを得た。
【0077】
化合物3a:Xa=Cl,Ya=H,Z=H
白色固体(1.32g、収率:82%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.54 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.33 (dd, J = 8.5, 2.2 Hz, 1H), 6.98 - 6.82 (m, 5H), 3.93 (s, 3H), 3.84 (s, 3H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 159.2, 154.0, 131.4, 129.9, 127.6, 127.5, 127.4, 125.8, 124.7, 122.6, 114.1, 112.0, 56.2, 55.3.
【0078】
化合物3b:Xa=Br,Ya=H,Z=H
黄白色固体(1.05g、収率:71%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.72 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.46 - 7.41 (m, 2H), 7.37 (dd, J = 8.5, 2.2 Hz, 1H), 6.95 - 6.84 (m, 5H), 3.92 (s, 3H), 3.84 (s, 3H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 159.2, 154.9, 131.9, 130.6, 129.9, 127.6, 127.4, 126.6, 124.6, 114.1, 111.9, 111.8, 56.3, 55.3.
【0079】
化合物3c:Xa=NO2,Ya=H,Z=H
305mg、収率:19%
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.99 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.65 (dd, J = 2.2, 8.6 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.08 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.01 (d, J = 16.3 Hz, 1H), 6.91 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.89 (d, J = 16.4 Hz, 1H), 3.99 (s, 3H), 3.84 (s, 3H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 159.5, 151.8, 139.7, 131.7, 130.6, 129.3, 129.0, 127.8, 123.5, 122.9, 114.2, 113.6, 56.6, 55.3.
【0080】
化合物3d:Xa=H,Ya=Me,Z=H
白色固体(1.75g、収率:93%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.51 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.45 - 7.41 (m, 2H), 7.13 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.91 - 6.88 (m, 2H), 6.85 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 6.76 (dd, J = 8.6, 2.8 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 3.81 (s, 3H), 2.40 (s, 3H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 159.0, 158.8, 137.1, 130.8, 129.4, 127.6, 127.5, 126.3, 124.0, 115.6, 114.1, 111.7, 55.3, 55.2, 20.2.
【0081】
化合物3e:Xa=H,Ya=Br,Z=H
白色固体(869mg、収率:73%)
1H NMR (600 MHz, CDCl3) : δ 7.57 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.26 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 7.12 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 6.87 (dd, J = 7.4, 2.6 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 16.9 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 3.81 (s, 3H).
【0082】
化合物3f:Xa=H,Ya=OMe,Z=H
黄色油状物(581mg、収率:96%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.48 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.25 (d, J = 14.6 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 16.4 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.51 (dd, J = 8.5, 2.4 Hz, 1H), 6.47 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.83 (s, 3H), 3.82 (s, 3H).
【0083】
化合物3g:Xa=H,Ya=NO2,Z=H
橙色固体(120mg、収率:8%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.67 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.45 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.42 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 7.15 (dd, J = 8.6, 2.5 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 6.91 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 3.89 (s, 3H), 3.84 (s, 3H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 159.8, 158.7, 148.2, 131.8, 129.6, 128.9, 128.2, 125.9, 121.0, 120.4, 114.2, 108.7, 55.9, 55.4.
【0084】
化合物3h:Xa=H,Ya=CN,Z=H
茶褐色固体 (547mg, 収率:42%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.69 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.49 (m, 2H), 7.28 - 7.24 (m, 1H), 7.11 - 7.08 (m, 3H), 6.91 (m, 2H), 3.85 (s, 3H), 3.84 (s, 3H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 159.9, 158.3, 133.9, 130.8, 129.3, 128.2, 126.4, 121.6, 120.4, 118.0, 116.4, 114.3, 111.5, 55.7, 55.4.
【0085】
化合物3i:Xa=H,Ya=F,Z=F
白色固体 (370mg, 収率:46%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.47 - 7.42 (m, 2H), 7.26 (d, J = 16.7 Hz, 1H), 6.93- 6.88 (m, 3H), 6.51 - 6.46 (m, 2H), 3.83 (s, 3H), 3.80 (s, 3H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 161.5 (d, J = 249.8 Hz), 161.4 (d, J = 249.5 Hz), 159.4, 159.0 (dd, J = 14.3, 14.3 Hz), 132.1 (dd, J = 16.5, 16.5 Hz), 130.7, 127.6, 127.4, 114.1, 114.0, 113.1, 107.9 (dd, J = 16.2, 16.2 Hz), 98.22 (d, J = 24.2 Hz), 98.18 (d, J = 24.2 Hz), 55.8, 55.3.
【0086】
(工程B)
化合物3a-b、d-f,h-i、gにアルゴン雰囲気下、室温にて、エタノール(化合物に対して0.1Mとなるように調製)、 0.02当量の10%パラジウム炭素 (55%水湿潤品、東京化成)を順次加えた後、水素雰囲気下、室温にて90分間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(以下、TLCと略す)にて反応終了を確認後、アルゴン雰囲気へと置換し反応を停止させた。反応系をセライト濾過した後、濾液を濃縮し、粗精製物を得た。得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、濃縮後、それぞれ化合物4a-b,d-f,h-jを得た。
【0087】
化合物4a:Xa=Cl,Ya=H,Z=H
白色固体 (326mg, 収率:54%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.26 (d, J = 3.4 Hz, 1H), 7.19 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.98 (dd, J = 8.3, 2.3 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 3.88 (s, 3H), 3.80 (s, 3H), 2.86 - 2.78 (m, 4H).
【0088】
化合物4b:Xa=Br,Ya=H,Z=H
黄白色固体(449mg、収率:74%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.37 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.11 - 7.05 (m, 2H), 7.03 (dd, J = 8.4, 2.1 Hz, 1H), 6.85 - 6.81 (m, 2H), 6.80 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 3.88 (s, 3H), 3.80 (s, 3H), 2.83 - 2.79 (m, 4H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 157.9, 154.0, 135.5, 133.4, 133.2, 129.4, 128.4, 113.7, 111.7, 111.3, 56.2, 55.3, 37.0, 36.9.
【0089】
化合物4d:Xa=H,Ya=Me,Z=H
白色固体(960mg、収率:95%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.09 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.03 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.71 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.68 (dd, J = 8.3, 2.8 Hz, 1H), 3.79 (s, 3H), 3.78 (s, 3H), 2.83-2.75 (m, 4H), 2.26 (s, 3H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 157.8, 157.7, 137.2, 134.2, 132.3, 129.8, 129.3, 115.8, 113.7, 111.0, 55.3, 55.2, 36.2, 34.9, 19.5.
【0090】
化合物4e:Xa=H,Ya=Br,Z=H
Xa=Ya=Z=Hと1:1の混合物として得られた。
白色固体(476mg、収率:79%)
【0091】
化合物4f:Xa=H,Ya=OMe,Z=H
黄色油状物(581mg, 収率:96%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.10 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.97 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.45 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.39 (dd, J = 8.1, 2.3 Hz, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 2.83 - 2.76 (m, 4H).
【0092】
化合物4h:Xa=H,Ya=CN,Z=H
白色固体 (175mg, 収率:87%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.12 - 7.07 (m, 4H), 7.01 (dd, J = 8.5, 2.8 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 3.81 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 3.03 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 2.87 (t, J = 7.9 Hz, 2H).
【0093】
化合物4i:Xa=H,Ya=F,Z=F
白色固体 (128mg, 収率:73%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.14 - 7.07 (m, 2H), 6.84 - 6.80 (m, 2H), 6.43 - 6.38 (m, 2H), 3.79 (s, 3H), 3.76 (s, 3H), 2.85 - 2.75 (m, 4H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 161.9 (d, J = 244.8 Hz), 161.8 (d, J = 244.3 Hz), 158.9 (dd, J = 14.2, 14.2 Hz), 157.8, 133.5, 129.4, 113.6, 109.1 (dd, J = 21.5, 21.5 Hz), 97.6 (d, J = 6.6 Hz), 97.4 (d, J = 7.2 Hz), 55.7, 55.2, 37.3, 35.1.
【0094】
化合物4j:Xa=H,Ya=NH2,Z=H
白色固体 (64.8mg, 収率:77%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.10 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.93 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.31 (dd, J = 8.3, 2.5 Hz, 1H), 6.24 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.75 (s, 3H), 3.51 (brs, 2H), 2.83 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 2.69 (t, J = 7.9 Hz, 2H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 158.9, 157.8, 144.8, 133.9, 130.2, 129.3, 118.9, 113.7, 104.1, 101.5, 55.2, 55.1, 34.7, 32.9.
【0095】
(工程C)
化合物3c(または3g)にアルゴン雰囲気下、室温にて5当量の酢酸ナトリウム、エタノール(化合物に対して0.1Mとなるように調製)、4当量のp-トシルヒドラジンを順次加え、還流下一昼夜撹拌した後、4当量のp-トシルヒドラジンを加えた。6時間後、更に6.2当量のp-トシルヒドラジンを加え、2時間半撹拌した。放冷後、水を加え反応を停止させ、酢酸エチルを少量加えた後、濃縮した。反応系を酢酸エチルにて3回抽出した後、有機層を飽和重曹水、水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過、濃縮し、粗精製物を得た。得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、濃縮後、化合物 4c(または4g)を得た。
【0096】
化合物4c:Xa=NO2,Ya=H,Z=H
20.3mg、収率:34%
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.64 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.26 (dd, J = 8.6, 2.2 Hz, 1H), 7.04 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.97 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 3.93 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 2.90 - 2.82 (m, 4H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 158.0, 151.3, 139.4, 134.4, 134.1, 132.8, 129.4, 125.4, 113.9, 113.4, 56.5, 55.3, 36.7, 36.6.
【0097】
化合物4g:Xa=H,Ya=NO2,Z=H
黄色固体(38.5mg、収率:78%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.45 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 7.13 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.11 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.04 (dd, J = 8.6, 2.8 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 3.85 (s, 3H), 3.80 (s, 3H), 3.08 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 2.86 (t, J = 8.0 Hz, 2H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 158.2, 158.0, 149.5, 133.2, 133.1, 129.5, 128.7, 119.8, 113.8, 109.1, 55.8, 55.3, 36.2, 35.1.
【0098】
(工程D)
化合物4a-jに対して、室温、アルゴン雰囲気下、ジクロロメタン(化合物に対して0.2Mとなるように調製)と20当量のジメチルスルフィド-トリフルオロボランを加え、終夜撹拌させた。TLCにて反応終了を確認後、氷冷下、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。次に酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄後に無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過後、ろ液を濃縮し、得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)または高速液体クロマトグラフィー(L-column 2、0.1%ギ酸水溶液/アセトニトリル)で精製して、化合物5a-jを得た。
【0099】
化合物5a:Xa=Cl,Ya=H,Z=H
白色固体 (109mg, 収率:94%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.10 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 6.94 (dd, J = 8.3, 1.9 Hz, 1H), 6.91 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.74 (dt, J = 8.6, 2.0 Hz, 2H), 5.38 (s, 1H), 4.61 (s, 1H), 2.81 - 2.78 (m, 4H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 153.7, 149.4, 135.0, 133.6, 129.6, 128.7, 128.5, 119.4, 115.9, 115.1, 37.04, 37.00.
HRMS (ESI, negative mode) calc : 247.0531 [M-H]-; found : 247.0541
【0100】
化合物5b:Xa=Br,Ya=H,Z=H
白色固体 (70.6mg, 収率:43%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.25 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.98 (dd, J = 8.3, 1.9 Hz, 1H), 6.91 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 5.37 (s, 1H), 4.66 (s, 1H), 2.82 - 2.76 (m, 4H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 153.7, 150.3, 135.5, 133.5, 131.6, 129.6, 129.3, 115.8, 115.1, 109.9, 37.04, 36.96.
HRMS (ESI, negative mode) calc : 291.0021 [M-H]-; found : 291.0026
【0101】
化合物5c:Xa=NO2,Ya=H,Z=H
黄色固体 (8.3mg, 収率:45%)。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 10.5 (s, 1H), 7.86 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.32 (dd, J =8.6, 2.2 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.01 - 6.96 (m, 2H), 6.76 - 6.73 (m, 2H), 4.59 (s, 1H), 2.90 - 2.82 (m, 4H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 153.9, 153.5, 138.3, 134.0, 132.8, 129.6, 124.1, 119.7, 115.3, 115.2, 36.8, 36.6.
HRMS (ESI, negative mode) calc : 258.0767 [M-H]- ; found : 258.0779
【0102】
化合物5d:Xa=H,Ya=Me,Z=H
白色固体(350mg、収率:98%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.03 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.96 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.64 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 6.60 (dd, J = 8.2, 2.7 Hz, 1H), 4.60 (s, 1H), 4.52 (s, 1H), 2.80-2.74 (m, 4H), 2.23 (s, 3H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 153.7, 153.6, 137.5, 134.3, 132.3, 130.0, 129.6, 116.9, 115.1, 112.6, 36.1, 34.8, 19.4.
HRMS (ESI, negative mode) calc : 227.1078 [M-H]-; found ; 227.1081
【0103】
化合物5e:Xa=H,Ya=Br,Z=H
白色固体(3.3mg、収率:7%)
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): δ 7.07 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.96 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.69 (dd, J = 8.4, 2.5 Hz, 1H), 6.66 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 2.79 - 2.75 (m, 2H), 2.69 - 2.64 (m, 2H).
HRMS (ESI, negative mode) calc : 291.0021 [M-H]-; found : 291.0027
【0104】
化合物5f:Xa=H,Ya=OH,Z=H
白色固体(145mg, 収率:quant.)
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): δ 9.07 (brs, 2H), 8.92 (brs, 1H), 6.96 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.75 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.64 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 6.26 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 2.63 - 2.58 (m, 4H).
13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6): δ 156.2, 155.7, 155.2, 132.4, 130.0, 129.0, 118.4, 114.9, 105.8, 102.4, 35.1, 31.6.
HRMS (ESI, negative mode) calc : 229.0865 [M-H]-; found : 229.0868
【0105】
化合物5g:Xa=H,Ya=NO2,Z=H
白色固体 (9.5mg, 収率:71%)
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): δ 10.22 (brs, 1H), 9.21 (brs, 1H), 7.26 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.24 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.02 (dd, J = 8.5, 2.6 Hz, 1H), 6.98 - 6.94 (m, 2H), 6.67 - 6.63 (m, 2H), 2.93 - 2.88 (m, 2H), 2.71 - 2.66 (m, 2H).
13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6): δ 156.3, 155.5, 149.3, 133.1, 131.1, 129.2, 125.9, 120.8, 115.1, 110.4, 35.8, 34.0.
HRMS (ESI, negative mode) calc : 258.0767 [M-H]- ; found : 258.0769
【0106】
化合物5h:Xa=H,Ya=CN,Z=H
白色固体 (63.2mg, 収率:quant.)
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): δ 9.99 (brs, 1H), 9.18 (brs, 1H), 7.21 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.04 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 6.99 (dd, J = 8.6, 2.6 Hz, 1H), 6.97 - 6.94 (m, 2H), 6.67 - 6.62 (m, 2H), 2.90 - 2.83 (m, 2H), 2.75 - 2.69 (m, 2H).
HRMS (ESI, negative mode) calc : 238.0868 [M-H]-; found : 238.0872
【0107】
化合物5i:Xa=H,Ya=F,Z=F
白色固体 (15.2mg, 収率:71%)
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): δ 10.23 (brs, 1H), 9.17 (s, 1H), 6.93 - 6.88 (m, 2H), 6.64 - 6.60 (m, 2H), 6.41 - 6.35 (m, 2H), 2.71 - 2.66 (m, 2H), 2.65 - 2.60 (m, 2H).
13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6): δ 161.3 (d, J = 242.6 Hz), 161.2 (d, J = 242.4 Hz), 157.3 (dd, J = 14.7, 14.7 Hz), 155.5, 131.0, 129.1, 115.0, 106.4 (dd, J = 21.5, 21.5 Hz), 98.9 (d, J = 5.8 Hz), 98.8 (d, J = 6.6 Hz), 34.7, 23.9.
HRMS (ESI, negative mode) calc : 249.0727 [M-H]-; found : 249.0738
【0108】
化合物5j:Xa=H,Ya=NH2,Z=H
白色固体 (5.6mg, 収率:39%)
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6) : δ 9.11 (s, 1H), 8.67 (s, 1H), 7.03 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.70 - 6.63 (m, 3H), 6.06 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 5.90 (dd, J = 8.0, 2.4 Hz, 1H), 4.69 (brs, 2H), 2.64 - 2.59 (m, 3H), 2.53 - 2.48 (m, 1H).
HRMS (ESI, positive mode) : calc : 230.1181 [M+H]+; found: 230.1176
【0109】
製造例2
3-エチル-(4-ヒドロキシフェネチル)フェノール(化合物7a)、4-(4-ヒドロキシフェネチル)-3-(プロパ-1-エン-2-イル)フェノール(化合物7b)の合成
【0110】
【0111】
(工程A)
0.06当量の二塩化1,1´-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム、テトラヒドロフラン (化合物に対して0.16Mとなるように調製)、5当量の3N 水酸化ナトリウム水溶液を加えた。続いて1当量の化合物4eをアルゴン雰囲気下、室温にて加えた後、2.2当量の1N トリエチルボラン (テトラヒドロフラン溶液)またはイソプロペニルボロン酸ピナコールエステルを加え、70℃に昇温した。2昼夜加熱還流後、水で反応系を希釈し酢酸エチルで抽出した後、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過後、濃縮し、得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、濃縮後、化合物7a-bを得た。
【0112】
化合物6a:Ya=Et
Ya=Hと1:1の混合物(化合物6c)として得られた。
白色固体(39.0mg、収率:77%)
化合物6b:Ya=プロパ-1-エン-2-イル
化合物6cとの1:1の混合物として得られた。
白色固体(107mg、収率:quant.)
【0113】
(工程B)
製造例1の工程Dと同様にして、化合物7a-bを得た。
【0114】
化合物7a:Ya=Et
白色固体 (3.1mg, 収率:35%)
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.06 - 7.02 (m, 2H), 6.98 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.76 -6.73 (m, 2H), 6.67 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 6.60 (dd, J = 8.1, 2.8 Hz, 1H), 2.81 - 2.74 (m, 4H), 2.58 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 1.20 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 154.0, 153.9, 143.6, 134.3, 131.7, 130.4, 129.6, 115.3, 115.2, 112.7, 37.0, 34.4, 25.6, 15.3.
HRMS (ESI, negative mode) : calc : 241.1229 [M-H]- ;found : 241.1238
【0115】
化合物7b:Ya=プロパ-1-エン-2-イル
白色固体 (3.4mg, 収率:29%)
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): δ 9.18 (brs, 1H), 9.14 (brs, 1H), 7.04 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.96 - 6.92 (m, 2H), 6.66 - 6.62 (m, 2H), 6.58 (dd, J = 8.3, 2.7 Hz, 1H), 6.46 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 5.16 - 5.14 (m, 1H), 4.76 - 4.74 (m, 1H), 2.69 - 2.60 (m, 4H), 1.94 (s, 3H).
13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6): δ 155.4, 155.0, 145.3, 144.0, 132.0, 130.1, 129.1, 128.2, 115.0, 114.4, 114.3, 113.9, 37.0, 34.3, 25.0.
HRMS (ESI, negative mode) : calc : 253.1229 [M-H]- ; found : 253.1232
【0116】
製造例3
4-(4-ヒドロキシフェネチル)-3-イソプロピルフェノール(化合物9)の合成
【0117】
【0118】
(工程A)
製造例2で合成した化合物6b(化合物6cと1:1の混合物、53.2mg)にアルゴン雰囲気下、室温にて、エタノール(1.9mL)、10%パラジウム炭素 (55%水湿潤品、9.0mg、東京化成)を順次加えた後、水素雰囲気下、室温にて90分間撹拌した。アルゴン雰囲気へと置換し反応を停止させた。反応系をセライト濾過した後、濾液を濃縮し、粗精製物を得た。得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、濃縮後、白色固体(37.9mg、収率:71%、化合物6cと1:1の混合物)を得た。
【0119】
(工程B)
製造例1の工程Dと同様にして、工程Aで得た混合物(19.0mg)を原料として、白色固体(3.5mg, 収率:40%)を得た。
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): δ 9.13 (s, 1H), 9.02 (s, 1H), 7.00 - 6.96 (m, 2H), 6.90 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.67 - 6.64 (m, 2H), 6.62 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.47 (dd, J = 8.2, 2.5 Hz, 1H), 3.04 (hep, J = 6.9 Hz, 1H), 2.69 (dd, J = 10.1, 5.9 Hz, 2H), 2.61 (dd, J = 10.1, 5.9 Hz, 2H), 1.12 (d, J = 6.9 Hz, 6H).
13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6): δ 155.7, 155.4, 147.2, 131.9, 130.2, 129.2, 128.6, 115.0, 112.6, 111.8, 37.2, 34.0, 28.2, 24.0.
HRMS (ESI, negative mode) : calc:255.1385 [M-H]- ; found : 255.1394
【0120】
製造例4
3-(ジメチルアミノ)-4-(4-ヒドロキシフェネチル)フェノール(化合物11)の合成
【0121】
【0122】
(工程A)
製造例1で合成した化合物4j (32.4mg)にアルゴン雰囲気下、室温にて、DMF(0.63mL)、3当量のヨウ化メチル(23.5μL)、2当量の炭酸カリウム (34.8mg)を順次加えた後、一昼夜撹拌した。その後、6当量のヨウ化メチル(47.0μL)、4当量の炭酸カリウム(69.6mg)を加え、更に4時間撹拌後、3当量のヨウ化メチル(23.5μL)、2当量の炭酸カリウム(34.8mg)を加えた。2時間撹拌後、水で反応系を希釈し、酢酸エチルで抽出した後、有機層を水、飽和食塩水で洗浄した。有機層に硫酸マグネシウムを加え乾燥させた後、濾過、濃縮し、得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、濃縮後、黄色油状物 (19.1mg, 収率:53%)を得た。
【0123】
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.15 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.12 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.84 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.67 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.56 (dd, J = 8.3, 2.6 Hz, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 2.89 - 2.86 (m, 4H), 2.67 (s, 6H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3): δ 158.4, 157.7, 153.9, 134.7, 130.1, 129.3, 128.7, 113.6, 107.4, 106.2, 55.3, 55.2, 45.0, 36.0, 32.5.
【0124】
(工程B)
製造例1の工程Dと同様にして、化合物11(4.0mg, 収率:47%)を得た。
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): δ 6.99 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.98 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.65 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.49 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.38 (dd, J = 8.2, 2.3 Hz, 1H), 2.74 - 2.68 (m, 4H), 2.55 (s, 6H).
13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6): δ 156.0, 155.3, 153.4, 132.4, 129.9, 129.1, 126.0, 115.0, 109.9, 106.4, 44.8, 35.5, 32.1.
HRMS (ESI, positive mode) : calc : 258.1494 [M+H]+; found : 258.1495
【0125】
製造例5
4,4’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(3-フルオロフェノール)(化合物16)の合成
【0126】
【0127】
(工程A)
1当量の4-ブロモ-3-フルオロアニソール(化合物12)(640mg)と0.55当量のアセチレン-1,2-ジイルビス(ボロン酸ピナコールエステル(化合物13)(477mg)を用いて、製造例2の工程Aと同様の手法により、黄色油状物(75.1mg, 収率:18%)を得た。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.43 (dd, J = 8.3, 8.3 Hz, 2H), 6.69 - 6.65 (m, 4H), 3.82 (s, 6H).
13C-NMR (150 MHz,CDCl3): δ 163.4 (d, J = 250.9 Hz), 161.0 (d, J = 10.7 Hz), 133.9 (d, J = 3.3 Hz), 110.2 (d, J = 3.3 Hz), 103.9 (d, J = 16.5 Hz), 101.7 (d, J = 24.2 Hz), 86.2 (d, J = 3.0 Hz), 55.7.
【0128】
(工程B)
化合物14(45.0mg)に対して、製造例1の工程Bと同様の手法により、白色固体 (29.1mg, 収率:64%)を得た。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ 6.99 (dd, J = 8.6, 8.6 Hz, 2H), 6.61 - 6.56 (m, 4H), 3.77 (s, 6H), 2.82 (s, 4H).
13C-NMR (150 MHz,CDCl3): δ 161.5 (d, J = 245.1 Hz), 159.1 (d, J = 10.5 Hz), 130.9 (d, J = 6.6 Hz), 120.2 (d, J = 16.5 Hz), 109.4 (d, J = 3.0 Hz), 101.4 (d, J = 25.3 Hz), 55.5, 29.3.
【0129】
(工程C)
化合物15(14.5mg)に対して、製造例1の工程Dと同様の手法により、白色固体 (11.1mg, 収率:86%)を得た。
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): δ 9.64 (s, 2H), 6.97 (dd, J = 8.9, 8.9 Hz, 2H), 6.50 - 6.45 (m, 4H), 2.68 (s, 4H).
13C-NMR (150 MHz,DMSO-d6): δ 160.9 (d, J = 242.1 Hz), 157.1 (d, J = 11.0 Hz), 131.1 (d, J = 7.7 Hz), 117.6 (d, J = 7.7 Hz), 111.2 (d, J = 16.5 Hz), 102.3 (d, J = 24.2 Hz), 28.8.
【0130】
実施例1 化合物のERα、及びERβへの結合能の評価
1)細胞培養
ヒト腎臓由来の細胞株であるHEK293は、10%(v/v)Fetal Bovine Serum (FBS)、ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM中で培養した(37℃、5% CO2)。
【0131】
2)ERs結合活性の測定
本測定は、特許第5990058号の記載の方法に従い実施した。具体的にはHEK293細胞を96-whell plateに4.0×104 cells/wellの細胞密度で播種した。その12時間後に培養液(5%(v/v)のチャコール処理血清を含むDMEM)を交換し、ERαのLBDを発現するpBIND―ERαもしくはERβのLBDを発現するpBIND―ERβ(Promega社)をpGL4.35[luc2P/9XGAL4UAS/Hygro](Promega社)と共に、Lipofectamine 2000(Invtrogen社)を用いて、製品添付のプロトコールに従い細胞に導入した。導入24時間後に、被験品を含む培養液に交換し、さらに24時間培養を行った。ホタルルシフェラーゼ(ERのリガンド結合活性の指標)及びウミシイタケルシフェラーゼ(plasmidの導入効率の指標)の活性測定には、Dual-GloTM Luciferase Assay System(Promega社)を用い、添付のプロトコールに従って実施した。ホタルルシフェラーゼの発光強度をウミシイタケルシフェラーゼの発光強度で除したものを、Relative Light Unit(RLU)として算出した。
【0132】
3)結果
陽性対照としてEstradiol(E2)を用い、化合物5d、5g-i,7a-b,9,11,16についてERα及びERβへの結合能について評価を実施した。いずれの化合物もいずれかの濃度において陰性コントロールよりもRLU値が高かったことからERβへの結合能が存在することが確認された(表1)。また、表1から、同濃度でのERα、ERβのRLU値を比較することで、E2以外の化合物はいずれもERβ選択性があることが示された。
【表1】