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  • 特許-車両用シートパッド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】車両用シートパッド
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/00 20060101AFI20230307BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B60N2/00
A47C27/14 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018234520
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020093744
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】津川 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】米澤 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佳之
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-056078(JP,A)
【文献】特開平08-238141(JP,A)
【文献】特表2009-513297(JP,A)
【文献】実開昭63-163654(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
A47C 27/14
A47C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡体から形成され、着座者を支持するための着座部を有する、車両用シートパッドにおいて、
前記着座部のうち、前記着座部の最前端位置から前記着座部の前後方向の全長の45%の長さだけ離れた前後方向位置よりも、後側の部分を、尻下部とし、前記着座部のうち、前記前後方向位置よりも、前側の部分を腿下部とし、
前記尻下部のうち、前記着座部の左右方向中心に位置する左右方向中心線から前記尻下部の左右方向の全長の15%の長さだけ左右方向両外側に離れた一対の第1左右方向位置よりも、左右方向内側の部分を、尻下センター部とし、
前記一対の第1左右方向位置と、前記左右方向中心線から前記尻下部の左右方向の全長の35%の長さだけ左右方向両外側に離れた一対の第2左右方向位置との間の部分を、一対の尻下中間部とし、
前記一対の第2左右方向位置より左右方向両外側の部分を一対の尻下サイド部としたとき、
前記尻下部は、無底又は有底の、複数の穴を有し、
前記複数の穴のうち、前記尻下センター部に配置されている第1穴の上下方向の平均長さは、前記一対の尻下中間部に配置されている第2穴の上下方向の平均長さより長く、前記一対の尻下中間部に配置されている前記第2穴の上下方向の平均長さは、前記一対の尻下サイド部に配置されている第3穴の上下方向の平均長さより長い又は等しく、
前記第1穴は、少なくとも1つの無底の穴を含
前記腿下部は、無底又は有底の穴を有し、
前記腿下部における穴のピッチ間隔は、前記尻下部における穴のピッチ間隔より長い、
車両用シートパッド。
【請求項2】
前記第1穴は、前記尻下センター部の上面又は下面に開口する有底の穴を含み、前記第2穴は、前記一対の尻下中間部の上面に開口する有底の穴であり、前記第3穴は、前記一対の尻下サイド部の上面に開口する有底の穴である、請求項1に記載の車両用シートパッド。
【請求項3】
前記第2穴の前記上下方向の平均長さは30~75mmであり、前記第3穴の前記上下方向の平均長さは20~50mmである、請求項1又は2に記載の車両用シートパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用シートパッドとして、着座者を支持するための着座部に、複数の穴部を設けたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-56879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両用シートパッドにおいては、穴部が設けられたことにより着座者を柔らかく支えて乗り心地を向上できるものの、着座者が揺れたときの左右からの支持が弱くなり、着座者がぐらつくことがあった。
【0005】
本発明は、乗り心地を向上しつつ、ぐらつきを低減することが可能な、車両用シートパッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用シートパッドは、
樹脂発泡体から形成され、着座者を支持するための着座部を有する、車両用シートパッドにおいて、
前記着座部のうち、前記着座部の最前端位置から前記着座部の前後方向の全長の45%の長さだけ離れた前後方向位置よりも、後側の部分を、尻下部とし、
前記尻下部のうち、前記着座部の左右方向中心に位置する左右方向中心線から前記尻下部の左右方向の全長の15%の長さだけ左右方向両外側に離れた一対の第1左右方向位置よりも、左右方向内側の部分を、尻下センター部とし、
前記一対の第1左右方向位置と、前記左右方向中心線から前記尻下部の左右方向の全長の35%の長さだけ左右方向両外側に離れた一対の第2左右方向位置との間の部分を、一対の尻下中間部とし、
前記一対の第2左右方向位置より左右方向両外側の部分を、一対の尻下サイド部としたとき、
前記尻下部は、無底又は有底の、複数の穴を有し、
前記複数の穴のうち、前記尻下センター部に配置されている第1穴の上下方向の平均長さは、前記尻下中間部に配置されている第2穴の上下方向の平均長さより長く、前記第2穴の上下方向の平均長さは、前記尻下サイド部に配置されている第3穴の上下方向の平均長さより長い又は等しく、
前記第1穴は、少なくとも1つの無底の穴を含む。
本発明の車両用シートパッドによれば、乗り心地を向上しつつ、ぐらつきを低減することができる。
【0007】
本発明の車両用シートパッドにおいては、
前記第1穴は、前記尻下センター部の上面又は下面に開口する有底の穴を含み、前記第2穴は、前記一対の尻下中間部の上面に開口する有底の穴であり、前記第3穴は、前記一対の尻下サイド部の上面に開口する有底の穴であると、好適である。
これにより、乗り心地をより向上しつつ、ぐらつきを低減することができる。
【0008】
本発明の車両用シートパッドにおいては、
前記第2穴の前記上下方向の平均長さは30~75mmであり、前記第3穴の前記上下方向の平均長さは20~50mmであると、好適である。
これにより、乗り心地とぐらつきの低減とのバランスを適切にすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乗り心地を向上しつつ、ぐらつきを低減することが可能な、車両用シートパッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用シートパッドを備えた、車両用シートを示す、斜視図である。
図2図1のクッションパッドを上側から観たときの様子を示す、平面図である。
図3図2のクッションパッドを、図2のA-A線に沿う断面により示す、A-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の車両用シートパッドは、任意の種類の車両の座席に利用できる。
以下、本発明に係る車両用シートパッドの実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。以下では、車両用シートパッドを、単に「シートパッド」ともいう。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用シートパッド1を備えた、車両用シート100を示している。図1に破線で示すように、本実施形態のシートパッド1は、着座者が着座するためのクッションパッド1aと、着座者の背中を支持するためのバックパッド1bと、を備えている。車両用シート100は、シートパッド1に加え、例えば、シートパッド1の表側(着座者側)を覆う表皮101と、クッションパッド1aを下から支持するフレーム(図示せず)と、バックパッド1bの裏側に設置されるフレーム(図示せず)と、バックパッド1bの上側に設置され、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト102と、を備える。表皮101は、例えば、通気性のよい材料(布等)から構成される。クッションパッド1aとバックパッド1bとは、それぞれ樹脂発泡体から形成されている。クッションパッド1aとバックパッド1bとを構成する樹脂発泡体は、軟質樹脂発泡体が好ましく、軟質ポリウレタンフォームがより好ましい。クッションパッド1aとバックパッド1bとは、互いに別体に構成されることができる。
本明細書では、各図面に表記するとおり、シートパッド1に着座した着座者から観たときの「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の各方向を、それぞれ単に「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」などという。
以下では、シートパッド1のうち、バックパッド1bではなくクッションパッド1aについて説明する。そのため、クッションパッド1aのことを、単に「シートパッド1」ということがある。
【0013】
図2は、図1のシートパッド1のクッションパッド1aを上側から観たときの様子を示す平面図であり、言い換えれば、シートパッド1(クッションパッド1a)を水平投影面に投影させた様子を示す水平投影図でもある。図1及び図2に示すように、クッションパッド1aは、着座者を下から支持するように構成された着座部(「メインパッド部」とも呼ばれる。)10と、着座部10の左右両側に位置し、着座部10よりも上側へ盛り上がり、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部20と、着座部10よりも後側に位置し、バックパッド1bと上下方向に対向配置するように構成された、バックパッド対向部30と、を有している。
図2の例において、クッションパッド1aの上面(表面)USには、着座部10とサイドパッド部20との間において略前後方向に延びる溝40aと、着座部10とバックパッド対向部30との間において略左右方向に延びる溝40bと、着座部10の内部において略左右方向に延びる溝40cとが、それぞれ設けられている。これらの溝40a、40b、40cの内部には、例えば、表皮101(図1)をクッションパッド1aに取り付けるための取付具(図示せず)が配置される。図2の例では、水平投影面において、着座部10とサイドパッド部20との境界線が、両者間の溝40aの溝幅中心線であり、また、着座部10とバックパッド対向部30との境界線が、両者間の溝40bの溝幅中心線である。
ただし、溝40a、40bは、着座部10とサイドパッド部20との境界線や、着座部10とバックパッド対向部30との境界線とは、異なる位置にあってもよい。また、クッションパッド1aの上面USには、溝40a~40cが設けられていなくてもよい。
着座部10は、着座者の大腿部を下から支持するように構成された、腿下部11と、腿下部11に対し後側に位置し、着座者の尻部を下から支持するように構成された尻下部12と、からなる。本明細書では、図2に示すように、水平投影面において、着座部10のうち、着座部10の最前端位置Tから着座部10の前後方向の全長L1の45%の長さL2だけ離れた前後境界位置Bよりも、前側の部分を、腿下部11とし、前後境界位置Bよりも後側の部分を、尻下部12とする。すなわち、図2の例のように着座部10の内部に溝40cが配置されている場合であっても、腿下部11と尻下部12との前後境界位置Bは、この溝40cの位置に依らずに、規定される。
【0014】
尻下部12は、尻下センター部12Cと、一対の尻下中間部12Mと、一対の尻下サイド部12Sとからなる。
尻下センター部12Cは、尻下部12のうち、着座部10の左右方向中心に位置する左右方向中心線Cから尻下部12の左右方向の全長L3の15%の長さL4だけ左右方向両外側に離れた一対の第1左右方向位置C1よりも、左右方向内側の部分である。一対の尻下中間部12Mは、一対の第1左右方向位置C1と、左右方向中心線Cから左右方向における全長L3の35%の長さL5だけ左右方向両外側に離れた一対の第2左右方向位置C2との間の部分である。一対の尻下サイド部12Sは、一対の第2左右方向位置C2より左右方向両外側の部分である。
【0015】
図3は、図2のクッションパッド1aを、図2のA-A線に沿う鉛直方向(上下方向)の断面により示している。図2及び図3に示すように、尻下部12は、無底の穴51と、上面US又は下面BSに開口する有底の穴51とを含む複数の穴51を有している(図3の例では、尻下部12は無底の穴51と上面USに開口する有底の穴51を有している)。穴51に関して「無底」とは、穴51が貫通孔であることを指しており、すなわち、穴51が尻下部12を貫通していることを指している。また、穴51に関し、「有底」とは、穴51が窪みであることを指しており、すなわち、穴51の一端が、尻下部12のいずれかの面(上面US又は下面BS)に開口するとともに、穴51の他端(底部)が、尻下部12の開口している面とは反対側の面で開口しておらず、尻下部12の内部で終端していることを指す。
このように、尻下部12は、無底、もしくは上面US又は下面BSに開口する有底の、複数の穴51を有しているので、仮に穴51を有していない場合に比べて、着座者が着座したときに尻部に沿って撓みやすいため、尻部を柔らかく支えることができ、乗り心地が向上できる。
また、尻下部12は、無底の穴51と、上面US又は下面BSに開口する有底の穴51とを含む複数の穴51を有しているので、仮に穴51を有していない場合に比べて、シートパッド1(クッションパッド1a)の軽量化が可能である。シートパッド1(クッションパッド1a)の軽量化は、車両の燃費の向上、ひいては、省エネに繋がる。また、尻下部12は無底の穴51を有しているため、無底の穴51を有していない場合に比べて、通気性の向上、蓄熱性の低減が可能である。シートパッド1(クッションパッド1a)の通気性の向上や蓄熱性の低減は、車両内のエアコンの効き具合の向上、ひいては、省エネに繋がる。また、穴51が有底であって上面USに開口する場合、下面BSに開口を有する場合に比べて尻下部12における着座者の尻部に当接する部分が撓みやすく、尻部が感じる堅さが低減されるため、着座者は快適に着座することができる。
【0016】
ここで、尻下部12に配置されている穴51について詳細に説明する。穴51は、第1穴511、第2穴512、及び第3穴513を含む。
第1穴511は、尻下センター部12Cに配置され、少なくとも1つの無底の穴51を含む。また、第1穴511は、尻下センター部12Cの上面US又は下面BSに開口する有底の穴51を含んでもよい(図3の例では、第1穴511は、全て無底である)。図2の例では、尻下センター部12Cには、3列6行に配列された18個の第1穴511が配置されている。
第2穴512は、一対の尻下中間部12Mに配置されている、上面USに開口する有底の穴51である。尻下部12における左右方向中心線Cから左右方向のそれぞれの端部までの領域を半部12hとし、具体的には、尻下部12における左右方向中心線Cから左方向の端部までの領域を左半部12hl、尻下部12における左右方向中心線Cから右方向の端部までの領域を右半部12hrとするとき、図2の例では、左半部12hl及び右半部12hrそれぞれの尻下中間部12Mには、1列6行に配列された6個の第2穴512が配置されている。
第3穴513は、一対の尻下サイド部12Sに配置されている、上面USに開口する有底の穴51である。図2の例では、左半部12hl及び右半部12hrそれぞれの尻下サイド部12Sには、1列6行に配列された6個の第3穴513が配置されている。
【0017】
本実施形態において、尻下センター部12Cに配置されている第1穴511の上下方向の平均長さL51は、一対の尻下中間部12Mに配置されている第2穴512の上下方向の平均長さL52より長い。「第1穴511の上下方向の平均長さL51」は、尻下センター部12Cに配置されている1つ又は複数の第1穴511の上下方向の長さの平均値である。「第2穴512の上下方向の平均長さL52」は、一対の尻下中間部12Mに配置されている1つ又は複数の第2穴512の上下方向の長さの平均値である。
図3の例では、1つ又は複数(本例では図2に示すように複数)の第1穴511の上下方向の平均長さL51は、一方側の半部12h(左半部12hl)における尻下中間部12Mに配置されている1つ又は複数(本例では図2に示すように複数)の第2穴512の上下方向の平均長さL52より長い。また、第1穴511の上下方向の平均長さL51は、他方側の半部12h(右半部12hr)における尻下中間部12Mに配置されている1つ又は複数(本例では図2に示すように複数)の第2穴512の上下方向の平均長さL52より長い。この結果、尻下センター部12Cに配置されている第1穴511の上下方向の平均長さL51は、一対の尻下中間部12Mに配置されている第2穴512の上下方向の平均長さL52より長くなっている。
図3の例では、複数の第1穴511の上下方向の長さは互いに同一であり、そのため、第1穴511の上下方向の平均長さL51は各第1穴511の上下方向の長さである。なお、図3の例では、各第1穴511はそれぞれ無底の穴であるため、各第1穴511の上下方向の長さは、着座部10の上下方向の長さである。
ただし、図3の例に限られず、複数の第1穴511の上下方向の長さは互いに異なっていてもよい。例えば、複数の第1穴511のうち、左右方向中心線Cに最も近い第1穴511の上下方向の長さが最も長く、左右方向中心線Cから左右方向両外側に離れるにつれて第1穴511の上下方向の長さが短くなっていてもよい。
また、図3の例では、複数の第1穴511は3列で配置されているが、この限りではなく、1列、2列、又は4列以上で配置されていてもよい。
【0018】
一対の尻下中間部12Mに配置されている第2穴512の上下方向の平均長さL52は、一対の尻下サイド部に配置されている第3穴513の上下方向の平均長さL53より長い又は等しい。「第3穴513の上下方向の平均長さL53」は、1つ又は複数の第3穴513の上下方向の長さの平均値である。
図3の例では、左右方向中心線Cから一方側の半部12h(左半部12hl)における尻下中間部12Mに配置されている1つ又は複数(本例では図2に示すように複数)の第2穴512の上下方向の平均長さL52は、該半部12h(左半部12hl)における尻下サイド部12Sに配置されている1つ又は複数(本例では複数)の第3穴513の上下方向の平均長さL53より長い又は等しい(本例では、L52>L53)。また、左右方向中心線Cから他方側の半部12h(右半部12hr)における尻下中間部12Mに配置されている1つ又は複数(本例では複数)の第2穴512の上下方向の平均長さL52は、該半部12h(右半部12hr)における尻下サイド部12Sに配置されている1つ又は複数(本例では複数)の第3穴513の上下方向の平均長さL53より長い又は等しい(本例では、L52>L53)。この結果、上述したように、一対の尻下中間部12Mに配置されている第2穴512の上下方向の平均長さL52は、一対の尻下サイド部12Sに配置されている1つ又は複数の第3穴513の上下方向の平均長さL53より長い又は等しく(本例では、L52>L53)なっている。
図3の例では、一対の尻下中間部12Mに配置されている複数の第2穴512の上下方向の長さは互いに同一であり、そのため、第2穴512の上下方向の平均長さL52は各第2穴512の上下方向の長さである。同様に、一対の尻下サイド部12Sに配置されている複数の第3穴513の上下方向の長さは互いに同一であり、そのため、第3穴513の上下方向の平均長さL53は各第3穴513の上下方向の長さである。ただし、図3の例に限られず、複数の第2穴512の上下方向の長さは互いに異なっていてもよいし、複数の第3穴513の上下方向の長さは互いに異なっていてもよい。
また、図2の例では、複数の第2穴512は各半部12hrの尻下中間部12Mにそれぞれ1列で配置されているが、この限りではなく、一方側又は両方側の半部12hrの尻下中間部12Mに左右方向に2列以上で配置されていてもよい。この場合、左右方向に2列以上で配置されている複数の第2穴512の上下方向の長さは互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。左右方向に2列以上で配置されている複数の第2穴512の上下方向の長さが互いに異なる場合、複数の第2穴512のうち、第1左右方向位置C1に最も近い第2穴512の上下方向の長さが最も長く、第1左右方向位置C1から左右方向両外側に離れるにつれて第2穴512の上下方向の長さが短くなってもよい。
同様に複数の第3穴513は各半部12hrの尻下サイド部12Sにそれぞれ1列で配置されているが、この限りではなく、一方側又は両方側の半部12hrの尻下サイド部12Sに左右方向に2列以上で配置されていてもよい。
なお、第2穴512は、尻下中間部12Mに配置されていなくてもよく、その場合、第2穴512の上下方向の平均長さL52は0である。また、第3穴513は、尻下サイド部12Sに配置されていなくてもよく、その場合、第3穴513の上下方向の平均長さL53は0である。
【0019】
このように、第1穴511の上下方向の平均長さL51は、第2穴512の上下方向の平均長さL52より長く、第2穴512の上下方向の平均長さL52は、第3穴513の上下方向の平均長さL53より長い又は等しいため、尻下部12において、着座者が着座しているときに車両の走行状態に応じて横揺れが発生した際に着座者を左右方向にしっかり支えることができ、ひいては着座者のホールド性が高くなり、着座者のぐらつきを低減することができる。
さらに、第2穴512及び第3穴513は、上面USに開口を有するため、尻下部12において左右方向中心線Cから左右方向の両外側に向かうにつれて、上面US側にて穴51が占める割合が高く、下面BS側にて穴51が占める割合が低くなる。これにより、尻下部12において、着座者の尻部が左右方向外側にずれたときに、上面US側の部分において着座者の尻部に沿って撓むやすいため、尻部が急激に硬さを感じることを抑制することにより、より乗り心地を向上しつつ、下面BS側の部分が撓みにくいことによって着座者をしっかり支えることができ、ひいては着座者のホールド性が高くなり、着座者のぐらつきを低減することができる。
【0020】
図2の例では、水平投影面において、複数の第1穴511の面積どうしは略同一であり、複数の第2穴512の面積どうしは略同一であり、複数の第3穴513の面積どうしは略同一である。また、第1穴511の面積と、第2穴512の面積と、第3穴513の面積とは、互いに略同一である。第1穴511の前後方向の複数のピッチ間隔p51どうしは互いに略同一であり、第2穴512の前後方向の複数のピッチ間隔p52どうしは互いに略同一であり、第3穴513の前後方向の複数のピッチ間隔p51どうしは互いに略同一である。また、第1穴511の前後方向のピッチ間隔p51と、第2穴512の前後方向のピッチ間隔p52と、第3穴513の前後方向のピッチ間隔p53とは、互いに略同一である。ここで、「前後方向のピッチ間隔」は、水平投影面において、前後方向で互いに隣接する一対の穴のそれぞれの中心どうしの間隔である。
図2及び図3の例では、尻下センター部12Cの体積に対する、第1穴511の総体積の比率は、一対の尻下中間部12Mの総体積に対する、第2穴512の総体積の比率より高く、一対の尻下中間部12Mの総体積に対する、第2穴512の総体積の比率は、一対の尻下サイド部51Sの総体積に対する第3穴513の総体積の比率より大きく又は等しく(本例では、一対の尻下中間部12Mの総体積に対する、第2穴512の総体積の比率は、一対の尻下サイド部51Sの総体積に対する第3穴513の総体積の比率より大きい)なっている。
これにより、より確実に、乗り心地を向上しつつ、ぐらつきを低減することができる。
ここで、「尻下センター部12Cの体積」は、尻下センター部12Cの外縁により区画された領域全体の体積を指しており、第1穴511の占める体積も含んでいる。同様に、「一対の尻下中間部12Mの総体積」は、一対の尻下中間部12Mのそれぞれの外縁により区画された領域全体の体積の合計、すなわち左半部12hlにおける尻下中間部12Mの体積と右半部12hrにおける尻下中間部12Mの体積との合計を指しており、左半部12hl及び右半部12hrのそれぞれの尻下中間部12Mの第2穴512の占める体積も含んでいる。同様に、「一対の尻下サイド部12Sの総体積」は、一対の尻下サイド部12Sのそれぞれの外縁により区画された領域全体の体積の合計、すなわち左半部12hlにおける尻下サイド部12Sの体積と右半部12hrにおける尻下サイド部12Sの体積との合計を指しており、左半部12hl及び右半部12hrのそれぞれの尻下サイド部12Sの第3穴513の占める体積も含んでいる。
「第1穴511の総体積」は、尻下センター部11Cに配置されている各第1穴511の体積の合計である。同様に、「第2穴512の総体積」は、一対の尻下中間部11Mに配置されている各第2穴512の体積の合計である。同様に、「第3穴513の総体積」は、一対の尻下サイド部11Sに配置されている各第3穴513の体積の合計である。
なお、複数の第1穴511の面積は互いに異なっていてもよく、複数の第2穴512の面積は互いに異なっていてもよく、複数の第3穴513の面積は互いに異なっていてもよい。また、第1穴511と、第2穴512と、第3穴513との面積は互いに異なっていてもよい。また、複数のピッチ間隔p51どうしは互いに異なっていてもよく、複数のピッチ間隔p52どうしは互いに異なっていてもよく、複数のピッチ間隔p53どうしは互いに異なっていてもよい。また、前後方向のピッチ間隔p51と、ピッチ間隔p52と、ピッチ間隔p53とは、互いに異なっていてもよい。
【0021】
第1穴511の上下方向の平均長さL51は30~90mmであり、第2穴512の上下方向の平均長さL51は30~75mmであり、第3穴513の上下方向の平均長さL53は20~50mmであると好適である。
これにより、平均長さL51が30mmより短く、平均長さL52が30mmより短く、平均長さL53が20mmより短い場合に比べて、シートパッド1(クッションパッド1a)は、着座者が着座したときに尻部に沿って撓みやすいため、尻部を柔らかく支えることができ、乗り心地が向上できる。さらに、平均長さL51が90mmより長く、平均長さL52が90mmより長く、平均長さL53が50mmより長い場合に比べて、着座者が着座しているときに車両の走行状態に応じて横揺れが発生した際に着座者をしっかり支えることができ、ひいては着座者のホールド性が高くなり、着座者のぐらつきを低減することができる。すなわち、平均長さL51、L52、L53がそれぞれ上述の範囲にある場合、乗り心地とぐらつきの低減とのバランスを適切にすることができる。
また、図2の例では、水平投影面において、第1穴511、第2穴512、及び第3穴513それぞれの直径は、10~40mmであり、13~37mmであるとより好適である。また、水平投影面において、第1穴511、第2穴512、及び第3穴513それぞれの面積は、78~1256mm2であり、132~1075mm2であるとより好適である。
【0022】
着座部10の腿下部11にも、1つ又は複数の、無底、もしくは腿下部11の上面US又は下面BSに開口する有底の穴52が配置されていてもよい。腿下部11には、穴52が配置されていなくてもよい。腿下部11に穴52が配置されている場合、穴52の、配置、上下方向の長さ、及び水平投影面における面積は任意である。穴52に関して「無底」とは、穴52が貫通孔であることを指しており、すなわち、穴52が腿下部11を貫通していることを指している。また、穴52に関し、「有底」とは、穴52が窪みであることを指しており、すなわち、穴52の一端が、腿下部11のいずれかの面(上面US又は下面BS)に開口するとともに、穴52の他端(底部)が、腿下部11の開口している面とは反対側の面で開口しておらず、腿下部11の内部で終端していることを指す。
腿下部11に穴52が配置されている場合、腿下部11に穴52が配置されていない場合に比べて、着座者が着座した際に、着座者の大腿部に沿って変形しやすく乗り心地を向上することができる。また、特に、シートパッド1を運転席に用いた場合に、着座者は、自身の大腿部を容易に動かすことができるようになり、運転の操作がし易くなる。よって、シートパッド1の操作性を向上できる。また、腿下部11に穴52が配置されている場合、腿下部11に穴52が配置されていない場合に比べて、クッションパッド1aの軽量化が可能である。また、腿下部11に配置された穴52が無底である場合、腿下部11に穴52が配置されない場合、又は穴52が有底である場合に比べて、クッションパッド1aの通気性の向上、蓄熱性の低減などが可能である。また、穴52が有底であって上面USに開口する場合、下面BSに開口を有する場合に比べて腿下部11における着座者の大腿部に当接する部分が撓みやすく、大腿部が感じる堅さが低減されるため、着座者は快適に着座することができる。
【0023】
乗り心地の観点から、第1穴511、第2穴512、及び第3穴513の水平投影面における形状、及び/又は配置パターンは、左右方向中心線Cに対し、対称であると、好適である。
第1穴511、第2穴512、及び第3穴513それぞれの水平投影面における形状は、図の例では円形(正円)であるが、それ以外にも、例えば、楕円形や、三角形、四角形、ひし形、台形等の多角形状等であってもよい。
【0024】
着座部10に第1穴511、第2穴512、及び第3穴513を形成する手法としては、例えば、シートパッド1(クッションパッド1a)を発泡成形するための金型における、シートパッド1の下面BSを成形するための上型と、シートパッド1の上面USを成形するための下型とのうち、少なくともいずれか一方の成形面に、突起を設けておき、上型及び下型が合わせられた状態で、突起の周面によって第1穴511、第2穴512、及び第3穴513が形成されるようにする手法が、好適である。
ただし、これとは異なる手法によって、第1穴511、第2穴512、及び第3穴513を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の車両用シートパッドは、任意の種類の車両の座席に利用できる。
【符号の説明】
【0026】
1:車両用シートパッド(シートパッド)、
1a:クッションパッド、1b:バックパッド、
10:着座部(メインパッド部)、 11:腿下部、 12:尻下部、
12h:半部、 12hl:左半部、12hr:右半部、
12C:尻下センター部、 12M:尻下中間部、 12S:尻下サイド部、
20:サイドパッド部、 30:バックパッド対向部、 40a、40b、40c:溝、
51、52:穴、
L1:着座部の前後方向の全長、 L2:全長L1の45%の長さ、
L3:尻下部の左右方向の全長、 L4:全長L3の15%の長さ、
L5:全長L3の35%の長さ、
L51、L52、L53:平均長さ、 p51、p52、p53:ピッチ間隔、
100:車両用シート、 101:表皮、 102:ヘッドレスト、
511:第1穴、 512:第2穴、 513:第3穴
B:前後境界位置、 T:最前端位置、US:上面、 BS:下面、
C:左右方向中心線、 C1:第1左右方向位置、 C2:第2左右方向位置、
図1
図2
図3