(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】車両用ミラー装置
(51)【国際特許分類】
B60R 1/06 20060101AFI20230307BHJP
F16B 35/04 20060101ALI20230307BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B60R1/06 D
F16B35/04 T
F16B5/02 E
(21)【出願番号】P 2018245098
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】永岡 浩如
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-117565(JP,A)
【文献】特開2016-070327(JP,A)
【文献】特開平06-207699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0253008(US,A1)
【文献】特開2002-356130(JP,A)
【文献】特開2016-050597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06-1/078
F16B 5/00-5/12
F16B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーおよびハウジングを含むミラーユニットと、
前記ミラーユニットを回転可能に支持する金属製の支持軸と、
車両側部に固定される樹脂製のベースと、
一端部が前記支持軸に固定され、他端部が前記ベースを貫通して
おり、前記一端部と前記他端部との間に、前記ベースを貫通する部分の前記他端部の外周面より外側に張り出すフランジ部が一体に形成されているボルトと、
前記ボルトの前記他端部と螺合し、前記ボルト
の前記フランジ部との間に前記ベースを挟持しているナットと、
を備え、
前記フランジ部と前記ナットとに挟持された部分の前記ベースは中実の板状であり、
前記ベースは、前記ナットと対向する部分に当該ナットに向けて突き出す突起を有する車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記突起は前記ボルトの軸心に直交する方向へ延びるリブ形状である請求項1に記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
前記突起は前記ボルトの軸心まわりに点在している請求項1または2に記載の車両用ミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ミラー装置は、ミラーユニットを支持する金属製の支持軸を、樹脂製のベース、またはベースに固定された樹脂部材に締結固定することで、車体に固定されている。例えば、特許文献1に開示された車両用ミラー装置では、支持軸と樹脂部材とがスクリューを用いて締結固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発明者は、金属製支持軸にスタッドボルトの一端部を固定するとともにスタッドボルトの他端部を樹脂製ベースに挿通させ、スタッドボルトのフランジ部とナットとの間にベースを挟み込むことにより支持軸をベースに固定することを考えている。しかしながら、ベースの経時的な塑性変形量増加により、締結力が低下する虞がある。
【0005】
そこで、スタッドボルトのベース挿入部分をねじ部より太くして、当該挿入部分にナットが当接するまで締め込むことで、ベースの経時的な塑性変形量増加の影響をなくすことが考えられる。しかし、ナットが当該挿入部分に当接するまでベースを潰すには非常に高いトルクが必要である。この高いトルクに耐えるためには特殊なボルトを設定する必要があり、製造コストがかかる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、製造コストを抑えつつ、金属製支持軸と樹脂製ベースとの締結力低下を抑制した車両用ミラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両用ミラー装置であって、ミラーユニット、支持軸、ベース、ボルトおよびナットを備える。ミラーユニットは、ミラーおよびハウジングを含む。金属製の支持軸は、ミラーユニットを回転可能に支持する。樹脂製のベースは、車両側部に固定される。ボルトは、一端部が支持軸に固定され、他端部がベースを貫通している。ボルトは、一端部と他端部との間に、ベースを貫通する部分の他端部の外周面より外側に張り出すフランジ部が一体に形成されている。ナットはボルトの他端部と螺合し、当該ボルトのフランジ部との間にベースを挟持している。さらに、フランジ部とナットとに挟持された部分のベースは中実の板状である。ベースは、ナットと対向する部分に当該ナットに向けて突き出す突起を有する。
【0008】
本発明によれば、ベースのうちナットと対向する部分を突起にすることによって、ナットを締め込むときベースが潰れやすくなる。そのため、高いトルクに耐えうる特殊なボルトを使用することなく、ボルトのベース挿入部分にナットが当接するまで締め込むことを可能にする。これにより、ミラーユニットとベースとの締結構造は、金属製のボルトとナットとが当接する金属締結構造となり、経時的なねじ緩みが発生しにくい構造となる。したがって、製造コストを抑えつつ、金属製支持軸と樹脂製ベースとの締結力低下を抑制した車両用ミラー装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態に係る車両用ミラー装置の外観を示す平面図。
【
図2】
図1のII部分を拡大して断面で示す断面図。
【
図3】
図2のベースとスタッドボルトのIII-III線断面図。
【
図4】
図2に対応する図であって、ナット締め込み前の状態を示す断面図。
【
図5】第二実施形態による車両用ミラー装置の締結部を示す断面図。
【
図6】
図5のベースとスタッドボルトのVI-VI線断面図。
【
図7】
図5に対応する図であって、ナット締め込み前の状態を示す断面図。
【
図8】第三実施形態による車両用ミラー装置のベースとスタッドボルトを示す断面図。
【
図9】第四実施形態による車両用ミラー装置のベースとスタッドボルトを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0011】
(第一実施形態)
第一実施形態に係る車両用ミラー装置の平面図を
図1に示す。第一実施形態による車両用ミラー装置10は、車体ドアパネル1に装着される。車両用ミラー装置10は、電動式でも手動式でもよい。
【0012】
車両用ミラー装置10は、ミラーユニット20、ベース30、支持軸40、スタッドボルト50およびナット60を備える。
【0013】
ミラーユニット20は、ミラーハウジング22、ミラーハウジング22の内部に装着されたミラー21を備える。ミラーハウジング22は、使用状態において車両後方に向かって開口するカップ状に形成されている。ミラーハウジング22内には、ミラー21、ミラー21の鏡面角度を変更可能な図示しない鏡面角度調整機構などが設けられている。
【0014】
車両用ミラー装置10が電動式の場合、ミラーユニット20を使用位置と格納位置との間で移動可能な図示しない電動格納機構がミラーハウジング22内に設けられる。この場合、支持軸40は、上記電動格納機構を構成する電動格納シャフトとなる。
【0015】
ベース30は、樹脂製であり、車両側部の車体ドアパネル1に固定される。支持軸40は、金属製であり、ミラーユニット20を回転可能に支持する。支持軸40は、スタッドボルト50とナット60によりベース30に固定される。
【0016】
図2に示すように、スタッドボルト50は、支持軸40側から順に、一端部51、フランジ部52、および他端部53を有する。一端部51は支持軸40に固定され、他端部53はベース30のボルト孔31を挿通している。他端部53は段付き形状である。他端部53は、ベース挿入部分である大径部531と、ベース30から突き出すねじ部532とを有する。ナット60は、他端部53と螺合し、フランジ部52との間にベース30を挟持している。
【0017】
図2および
図3に示すように、ベース30は、ナット60と対向する部分にナット60に向けて突き出す複数の突起32を有している。ベース30のナット60との対向壁部には、ベース30の基準面70からナット60とは反対側に凹む複数の凹部34が形成されている。突起32は、2つの凹部34の間に形成されている。
図3では、ナット60を仮想線で示している。ナット60のベース30との当接箇所は、突起32のみである。
【0018】
図3に示すように、突起32は、スタッドボルト50の軸心AX1に直交する方向へ延びるリブ形状である。突起32は、ナット60を安定して受けるために3つ以上設けられるとよい。本実施形態では突起32は8つ設けられている。各突起32は、軸心AX1まわりに点在しており、等間隔に配置されている。
【0019】
図4に示すように、ナット60の締め込み前の状態では、スタッドボルト50軸方向において、突起32を含むベース30の長さL1は、大径部531の長さL2よりも長くなっている。大径部531とナット60との間には間隙61が存在する。
図4の状態から突起32を潰しながらナット60が締め込まれ、間隙61が無くなるようにナット60が大径部531に当接する
図2の状態まで締め込まれることによって、ミラーユニット20とベース30との締結が完了する。
【0020】
(効果)
以上説明したように、第一実施形態では、車両用ミラー装置10は、ミラーユニット20、ベース30、支持軸40、スタッドボルト50およびナット60を備える。支持軸40はミラーユニット20を回転可能に支持する。ベース30は、樹脂製であり、車体ドアパネル1に固定される。スタッドボルト50は、一端部51が支持軸40に固定され、他端部53がベース30を貫通している。ナット60は、スタッドボルト50の他端部53と螺合し、スタッドボルト50との間にベース30を挟持している。ベース30は、ナット60と対向する部分に当該ナット60に向けて突き出す突起32を有する。
【0021】
このようにベース30のうちナット60と対向する部分を突起32にすることによって、ナット60を締め込むときベース30が潰れやすくなる。そのため、高いトルクに耐えうる特殊なボルトを使用することなく、スタッドボルト50のベース挿入部分にナット60が当接するまで締め込むことを可能にする。これにより、ミラーユニット20とベース30との締結構造は、金属製のスタッドボルト50とナット60とが当接する金属締結構造となり、経時的なねじ緩みが発生しにくい構造となる。したがって、製造コストを抑えつつ、金属製支持軸40と樹脂製ベース30との締結力低下を抑制することができる。
【0022】
また、第一実施形態では、ナット60のベース30との当接箇所は、突起32のみである。これにより、ナット60を締め込むときベース30の突起32だけを潰す構成となり、必要締結トルクが大幅に抑えられる。
【0023】
また、第一実施形態では、突起32はスタッドボルト50の軸心AX1に直交する方向へ延びるリブ形状である。ベース30のナット受け部(すなわち突起32)の強度を確保しつつ、必要締結トルクを大幅に抑えることができる。
【0024】
また、第一実施形態では、突起32はスタッドボルト50の軸心AX1まわりに点在している。そのため、ベース30がナット60を安定して受けつつ、必要締結トルクを大幅に抑えることができる。
【0025】
(第二実施形態)
図5に示すように、第二実施形態では、ベース100の突起102は、基準面70から突き出すように形成されている。
図6に示すように、突起102は、軸心AX1に直交する方向へ延びるリブ形状である。突起102は、軸心AX1まわりの等間隔に8つ設けられている。ナット60のベース30との当接箇所は、突起102のみである。
【0026】
図7に示すように、ナット60の締め込み前の状態では、スタッドボルト50軸方向において、突起102を含むベース100の長さL1は、大径部531の長さL2よりも長くなっている。大径部531とナット60との間には間隙62が存在する。
図7の状態から突起102を潰しながらナット60が締め込まれ、間隙62が無くなるようにナット60が大径部531に当接する
図5の状態まで締め込まれることによって、ミラーユニット20とベース30との締結が完了する。
【0027】
以上のように突起102を構成する第二実施形態においても、ナット60の締め込み時にベース30が潰れやすくなり、金属製のスタッドボルト50とナット60とが当接する金属締結構造となる。そのため、第一実施形態と同様に、製造コストを抑えつつ、金属製支持軸40と樹脂製ベース30との締結力低下を抑制することができる。
【0028】
(第三実施形態)
図8に示すように、第三実施形態では、突起112は、スタッドボルト50の軸心AX1まわりに点在する柱状突起である。各突起112は、凹部114の底面から突き出すように形成され、軸心AX1に直交する方向へ並ぶように配置されている。ナット60のベース30との当接箇所は、突起112のみである。このように突起112が柱状突起であっても第一実施形態と同様の効果が得られる。
【0029】
(第四実施形態)
図9に示すように、第四実施形態では、突起122は、スタッドボルト50の軸心AX1まわりに点在する柱状突起である。各突起122は、基準面70から突き出すように形成され、軸心AX1に直交する方向へ並ぶように配置されている。ナット60のベース100との当接箇所は、突起122のみである。このように突起122が柱状突起であっても第二実施形態と同様の効果が得られる。
【0030】
(他の実施形態)
他の実施形態では、ベースの突起は、上述した実施形態の形状とは異なる形状であってもよい。例えば、突起は、リブ形状である場合、ボルト軸心に対して直交しない方向へ延びていてもよいし、曲線状に延びていてもよい。また、突起は、柱状突起である場合、断面形状が円、または矩形以外の多角形などであってもよい。また、突起は、ボルト軸心まわりの間隔が等間隔でなくてもよい。また、複数の突起は互いに異なる形状であってもよい。
【0031】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0032】
1・・・ドアパネル、
10・・・車両用ミラー装置、
20・・・ミラーユニット、
21・・・ミラー、
22・・・ミラーハウジング、
30、100・・・ベース、
31・・・ボルト孔、
32、102、112、122・・・突起、
34、114・・・凹部、
40・・・支持軸、
50・・・スタッドボルト、
51・・・一端部、
52・・・フランジ部、
53・・・他端部、
531・・・大径部、
532・・・ねじ部、
60・・・ナット、
61、62・・・間隙、
70・・・基準面。