(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】タイヤ製造装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/26 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
B29D30/26
(21)【出願番号】P 2019000605
(22)【出願日】2019-01-07
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 謙介
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-055663(JP,A)
【文献】特開2006-076093(JP,A)
【文献】特開2011-102023(JP,A)
【文献】特開2018-043389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00- 30/72
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成され、外周部がゴム材に押し当てられる複数の回転部と、
前記複数の回転部の内部に挿入される軸部と、
内部に圧力媒体が入れられ、前記軸部と前記回転部との間に配置される変形可能な袋部
と、を備え
、
前記軸部の軸方向の端部に配置される前記回転部の幅寸法は、前記軸部の前記軸方向の中央部に配置される前記回転部の幅寸法よりも、小さい、タイヤ製造装置。
【請求項2】
前記袋部に対して前記圧力媒体を出し入れするための出入口部と、
前記出入口部を開閉する開閉部と、を備える、請求項1に記載のタイヤ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、タイヤ製造装置は、外周部がゴム材に押し当てられる複数の回転部と、複数の回転部の内部に挿入される軸部とを備えている(例えば、特許文献1)。そして、複数の回転部は、弾性部を介して、軸部に回転可能に接続されている。これにより、弾性部が弾性変形することによって、複数の回転部は、軸部に対して、軸部の径方向に変位可能である。
【0003】
ところで、特許文献1に係るタイヤ製造装置においては、弾性部の弾性力は、不変である。したがって、回転部がゴム材に押し当てられた際に、軸部に対する回転部の変位量が同じである場合には、弾性部の変形量が同じであるため、ゴム材に押し当てられる力も、同じとなる。しかしながら、軸部に対する回転部の変位量が同じである場合でも、例えば、ゴム材の形状に応じて、ゴム材に押し当てられる力を変えたい場合が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、課題は、軸部に対する回転部の変位量が同じである場合でも、回転部がゴム材に押し当てられる力が変更可能であるタイヤ製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
タイヤ製造装置は、環状に形成されて且つ外周部がゴム材に押し当てられる複数の回転部と、前記複数の回転部の内部に挿入される軸部と、内部に圧力媒体が入れられ、前記軸部と前記回転部との間に配置される変形可能な袋部と、を備える。
【0007】
また、タイヤ製造装置は、前記袋部に対して前記圧力媒体を出し入れするための出入口部と、前記出入口部を開閉する開閉部と、を備える、という構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るタイヤ製造装置の模式図であって、斜視図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係るタイヤ製造装置の模式図であって、側面図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係るタイヤ製造装置の要部概要図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態に係るタイヤ製造装置の要部概要図である。
【
図7】
図7は、さらに他の実施形態に係るタイヤ製造装置の要部概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、タイヤ製造装置における一実施形態について、
図1~
図5を参照しながら説明する。なお、各図(
図6及び
図7も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0010】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るタイヤ製造装置1は、ゴム材X1,X2を支持する支持装置2を備えている。また、タイヤ製造装置1は、支持装置2に支持されるゴム材X1,X2に押し当てられる押当装置3を備えている。
【0011】
支持装置2は、円筒状に形成され、回転可能に構成されている。そして、帯状のゴム材X1,X2が、回転する支持装置2の外周に巻き付けられることによって、支持装置2は、ゴム材X1,X2を支持している。このとき、押当装置3がゴム材X1,X2に押し当てられることによって、ゴム材X1,X2同士が密着する。
【0012】
なお、支持装置2は、斯かる構成に限られない。例えば、支持装置2が平面状に形成され、ゴム材X1,X2が支持装置2に載置されることによって、支持装置2は、ゴム材X1,X2を支持している、という構成でもよい。斯かる構成においては、支持装置2と押当装置3とがゴム材X1,X2の長手方向に沿って相対的に変位する。
【0013】
図3~
図5に示すように、押当装置3は、環状に形成される複数の回転部4と、複数の回転部4の内部に挿入される軸部5と、軸部5と回転部4との間に配置される変形可能な袋部6とを備えている。複数の回転部4は、軸部5の軸方向に並列されている。また、全ての回転部4の幅寸法は、同じである。
【0014】
回転部4の幅寸法は、特に限定されないが、例えば、2mm~5mmとすることができる。そして、回転部4の外径は、特に限定されないが、例えば、10mm~20mmとすることができる。また、回転部4,4同士の隙間は、特に限定されないが、例えば、0~0.5mmとすることができる。
【0015】
そして、押当装置3は、軸部5の軸方向に並列されている複数の回転部4を、軸部5に対して保持させる保持部7を備えている。保持部7は、複数の回転部4を軸部5の軸方向で挟む一対の挟持部7a,7aと、一対の挟持部7a,7aをそれぞれ軸部5に固定する固定部7bとを備えている。
【0016】
また、押当装置3は、回転部4が軸部5に対して円滑に回転可能となるように、回転部4の内周部に固定される軸受部8を備えている。軸受部8は、回転部4の内周部に固定される外環部8aと、外環部8aの内部に配置される内環部8bと、外環部8aと内環部8bとの間に配置される複数の転動部8cとを備えている。
【0017】
これにより、外環部8aが、内環部8bに対して回転することができるため、回転部4は、軸部5に対して回転することができる。したがって、回転部4の外周部がゴム材X1,X2に押し当てられて、且つ、支持装置2が回転することによって、回転部4は、軸部5周りを回転する。
【0018】
軸部5は、軸受部8の内環部8bの内部に配置されている。軸部5の断面形状においては、第1径方向D1の幅寸法は、第1径方向D1と直交する第2径方向D2の幅寸法よりも、小さくなっている。本実施形態においては、軸部5の断面形状は、長方形状である。即ち、軸部5は、第1径方向D1で離れている第1平面5a,5aと、第2径方向D2で離れている第2平面5b、5bとを備えている。なお、軸部5の断面形状は、特に限定されない。
【0019】
袋部6は、二つ設けられており、軸部5と軸受部8との間にそれぞれ配置されている。具体的には、二つの袋部6は、軸部5の第1面5aと軸受部8の内環部8bとの間にそれぞれ配置されている。そして、押当装置3は、軸部5とゴム材X1,X2との間に一方の袋部6を配置するように、支持装置2に対して位置決めされている。
【0020】
袋部6の内部には、圧力媒体が入れられている。なお、圧力媒体は、特に限定されず、例えば、気体(例えば、空気、窒素ガス)又は液体(例えば、油、水)とすることができるが、本実施形態においては、圧力媒体は、圧縮空気としている。また、袋部6は、変形可能であればよく、袋部6の材質は、特に限定されず、例えば、布又はゴムとすることができる。
【0021】
そして、
図5に示すように、ゴム材X1,X2の表面に凹凸がある場合には、回転部4の外周部がゴム材X1,X2に押し当てられることによって、袋部6が変形する。これにより、複数の回転部4が、軸部5に対して、軸部5の第1径方向D1に変位する。したがって、ゴム材X1,X2の表面に凹凸がある場合でも、ゴム材X1,X2同士が確実に密着する。
【0022】
図3に戻り、タイヤ製造装置1は、袋部6に圧力媒体を供給する媒体源9と、袋部6に対して圧力媒体を出し入れするための出入口部10と、出入口部10を開閉する開閉部11とを備えている。なお、出入口部10は、袋部6の内部に圧力媒体を入れるための入口部10aと、袋部6の内部から圧力媒体を出すための出口部10bとを備えている。
【0023】
開閉部11は、媒体源9からの圧力媒体を入口部10aに流入させる流入部11aと、出口部10bからの圧力媒体を外部に流出させる流出部11bとを備えている。そして、流入部11aは、入口部10aを開閉する入口弁11cを備え、流出部11bは、出口部10bを開閉する出口弁11dを備えている。
【0024】
これにより、開閉部11の入口弁11c及び出口弁11dを開閉することによって、入口部10a及び出口部10bが開閉されるため、袋部6の内部の圧力を変更することができる。したがって、軸部5に対する回転部4の変位量が同じである場合でも、ゴム材X1,X2に押し当てられる力を変更することができるため、回転部4がゴム材X1,X2に押し当てられる力を適正に設定することができる。
【0025】
また、本実施形態においては、一対の袋部6,6の内部の圧力は、それぞれ個別に変更可能に、構成されている。即ち、タイヤ製造装置1は、二つの袋部6,6に対して、それぞれ出入口部10及び開閉部11を備えている。なお、一対の袋部6,6の内部の圧力が同じとなるように、一対の袋部6,6は、連通している、という構成でもよい。また、タイヤ製造装置1は、袋部6の内部の圧力の変更を容易にするために、袋部6の内部の圧力を検出する圧力検出部12を備えていてもよい。
【0026】
以上より、本実施形態に係るタイヤ製造装置1は、環状に形成されて且つ外周部がゴム材X1,X2に押し当てられる複数の回転部4と、前記複数の回転部4の内部に挿入される軸部5と、内部に圧力媒体が入れられ、前記軸部5と前記回転部4との間に配置される変形可能な袋部6と、を備える。
【0027】
斯かる構成によれば、袋部6は、軸部5と回転部4との間に配置されている。そして、袋部6が変形することによって、複数の回転部4は、軸部5に対して、軸部5の径方向D1に変位可能である。しかも、袋部6の内部の圧力が変更されることによって、軸部5に対する回転部4の変位量が同じである場合でも、回転部4がゴム材X1,X2に押し当てられる力が、変更可能である。
【0028】
また、本実施形態に係るタイヤ製造装置1は、前記袋部6に対して前記圧力媒体を出し入れするための出入口部10と、前記出入口部10を開閉する開閉部11と、を備える、という構成である。
【0029】
斯かる構成によれば、開閉部11が出入口部10を開閉することによって、袋部6の内部から圧力媒体を出したり、袋部6の内部に圧力媒体を入れたり、袋部6の内部に圧力媒体を封入したりすることができる。これにより、袋部6の内部の圧力を変更することができる。
【0030】
なお、タイヤ製造装置1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、タイヤ製造装置1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0031】
(1)上記実施形態に係るタイヤ製造装置1においては、全ての回転部4の幅寸法は、同じである、という構成である。しかしながら、タイヤ製造装置1は、斯かる構成に限られない。例えば、
図6に示すように、回転部4の幅寸法は、異なる、という構成でもよい。
【0032】
図6に係るタイヤ製造装置1においては、軸部5の軸方向の端部に配置される回転部4の幅寸法は、軸部5の軸方向の中央部に配置される回転部4の幅寸法よりも、小さい、という構成である。斯かる構成によれば、ゴム材X1,X2の端部に凹凸が存在することが多い(
図5参照)ことに対して、ゴム材X1,X2に回転部4を適切に押し当てることができる。なお、軸部5の軸方向の端部に配置される回転部4の幅寸法は、軸部5の軸方向の中央部に配置される回転部4の幅寸法よりも、大きい、という構成でもよい。
【0033】
(2)また、上記実施形態に係るタイヤ製造装置1においては、出入口部10は、袋部6の内部に圧力媒体を入れるための入口部10aと、袋部6の内部から圧力媒体を出すための出口部10bとを備えている、という構成である。しかしながら、タイヤ製造装置1は、斯かる構成に限られない。
【0034】
例えば、
図7に示すように、出入口部10は、袋部6の内部に圧力媒体を入れる口部と、袋部6の内部から圧力媒体を出す口部とが、共通である、という構成でもよい。
図7に係る開閉部11は、出入口部10を開閉する出入口弁11eと、出入口弁11eと媒体源9とを接続する三方弁11fとを備えている。そして、以下のようにして、袋部6の内部の圧力が変更される。
【0035】
出入口弁11eが開放され、且つ、三方弁11fが媒体源9と出入口弁11eとを連通することによって、袋部6の内部に圧力媒体が流入される。また、出入口弁11eが開放され、且つ、三方弁11fが出入口弁11eと外部とを連通することによって、袋部6の内部から圧力媒体が流出される。そして、出入口弁11eが閉鎖されることによって、袋部6の内部に圧力媒体が封入される。
【0036】
(3)また、上記実施形態に係るタイヤ製造装置1においては、袋部6は、二つ備えられている、という構成である。しかしながら、タイヤ製造装置1は、斯かる構成に限られない。例えば、袋部6は、一つ備えられている、という構成でもよく、また、三つ以上備えられている、という構成でもよい。
【0037】
(4)また、上記実施形態に係るタイヤ製造装置1においては、袋部6の内部の体積が一定で、且つ、袋部6に対して圧力媒体が出し入れされることによって、袋部6の内部の圧力が変更される、という構成である。しかしながら、タイヤ製造装置1は、斯かる構成に限られない。例えば、袋部6に対して圧力媒体が出し入れされることなく、袋部6の内部の体積が変更されることによって、袋部6の内部の圧力が変更される、という構成でもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…タイヤ製造装置、2…支持装置、3…押当装置、4…回転部、5…軸部、5a…第1平面、5b…第2平面、6…袋部、7…保持部、7a…挟持部、7b…固定部、8…軸受部、8a…外環部、8b…内環部、8c…転動部、9…媒体源、10…出入口部、10a…入口部、10b…出口部、11…開閉部、11a…流入部、11b…流出部、11c…入口弁、11d…出口弁、11e…出入口弁、11f…三方弁、12…圧力検出部、D1…第1径方向、D2…第2径方向、X1…ゴム材、X2…ゴム材