(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ウォーム、および回転機器
(51)【国際特許分類】
F16H 55/06 20060101AFI20230307BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20230307BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
F16H55/06
F16H1/16 Z
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2019005212
(22)【出願日】2019-01-16
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】平林 晃一郎
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-265169(JP,A)
【文献】特開2005-094919(JP,A)
【文献】国際公開第2009/022524(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/06
F16H 1/16
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形によって形成される樹脂製のウォームであって、
前記ウォームの長軸を軸とする空洞
と、
当該長軸の方向において開口した一方の端部および他方の端部を有する歯車
部と、
を備え、
前記長軸の方向において、前記歯車部の他方の端部には頂部が形成され、
前記頂部には、
径方向において、前記空洞よりも前記歯車部の外周部側であり、かつ前記空洞に連通する孔部を有する凹部が複数形成され
、
複数の前記凹部は、それぞれ複数の壁部を備え、
前記複数の壁部は、径方向に延在する壁部と、前記長軸の方向に延在する壁部とを備え、
前記長軸の方向に延在する壁部には前記孔部が形成され、
前記長軸の方向において、前記空洞に対向する前記頂部の面と、前記径方向に延在する壁部との間に前記孔部があり、
前記長軸の方向において、前記径方向に延在する壁部は、前記空洞に対向する前記頂部の面に対して前記歯車部の前記一方の端部側にあり、
径方向において、前記孔部は前記空洞から前記歯車部の外周部に向かう方向に開口している
、
ウォーム。
【請求項2】
前記頂部は、
他の部材により支持される外面を備え、
前記外面が前記他の部材と接触した状態で、前記頂部の周方向を回転方向として回転する
請求項
1に記載のウォーム。
【請求項3】
複数の前記凹部は、
周方向において、前記頂部に等間隔に形成される
請求項1
又は2に記載のウォーム。
【請求項4】
長軸を有する空洞を形成する内周部と、
歯が螺旋状に形成された外周部と、
を有する樹脂部材を備え、
前記長軸の方向において、前記樹脂部材は開口した一方の端部
と他方の端部とを備え、
前記外周部の軸は前記長軸であり、
前記長軸の方向において、前記樹脂部材の他方の端部の外面には3以上の凹部が形成されており、
前記3以上の凹部は、前記空洞につながる孔部を備え
、
前記3以上の凹部は、それぞれ複数の壁部を備え、
前記複数の壁部は、径方向に延在する壁部と、前記長軸の方向に延在する壁部とを備え、
前記長軸の方向に延在する壁部には前記孔部が形成され、
前記長軸の方向において、前記空洞に対向する前記他方の端部の面と、前記径方向に延在する壁部との間に前記孔部があり、
前記長軸の方向において、前記径方向に延在する壁部は、前記空洞に対向する前記他方の端部の面に対して前記樹脂部材の前記一方の端部側にあり、
径方向において、前記孔部は前記空洞から前記樹脂部材の外周部に向かう方向に開口している
、
ウォーム。
【請求項5】
前記樹脂部材は、
他の部材により支持される前記外面を備え、
前記外面が前記他の部材と接触した状態で、前記樹脂部材の周方向を回転方向として回転する
請求項
4に記載のウォーム。
【請求項6】
前記3以上の凹部はそれぞれ、
周方向において等間隔に形成される
請求項
4又は5に記載のウォーム。
【請求項7】
請求項1
乃至6のいずれか一つに記載のウォームと、前記ウォームに噛み合うギアとを有し、
前記空洞に配置される出力軸を有するモータと、
前記モータ、前記ギア、および前記ウォームを収容する筐体と
を備え、
前記ウォームは、前記ウォームの他方の端部が前記筐体と接触した状態で、前記ウォームの周方向を回転方向として回転する
回転機器。
【請求項8】
径方向において、前記孔部は前記モータの出力軸に対向する位置にある
請求項
7に記載の回転機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーム、および回転機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、挿入孔にシャフトが挿入された場合に、挿入孔内で圧縮された空気によってシャフトが挿入孔から抜けることを抑制するために、挿入孔と外部とを連通させ、挿入孔内の空気を逃がす孔を有するウォームが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂の射出成形により上記ウォームを製造する場合には、シャフトの挿入孔を形成する金型のピンの先端をシャフトの径方向から支持することができない場合がある。すなわち、金型のピンが片持ち支持となり、樹脂の射出圧によって金型のピンが傾いた状態で成形が行われる場合がある。このような金型のピンが傾いた状態で成形されたウォームを用いれば、上記ウォームがウォームホイール又はヘリカルギアと噛み合った場合に、振動又は異音が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記を課題の一例とするものであり、振動又は異音の発生を抑止可能なウォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るウォームは、射出成形によって形成される樹脂製のウォームである。ウォームは、ウォームの長軸を軸とする空洞と、当該長軸の方向において開口した一方の端部および他方の端部を有する歯車部と、を備える。長軸の方向において、歯車部の他方の端部には頂部が形成される。頂部には、径方向において、空洞よりも歯車部の外周部側であり、かつ空洞に連通する孔部を有する凹部が複数形成される。複数の凹部は、それぞれ複数の壁部を備える。複数の壁部は、径方向に延在する壁部と、長軸の方向に延在する壁部とを備える。長軸の方向に延在する壁部には孔部が形成される。長軸の方向において、空洞に対向する頂部の面と、径方向に延在する壁部との間に孔部がある。長軸の方向において、径方向に延在する壁部は、空洞に対向する頂部の面に対して歯車部の一方の端部側にある。径方向において、孔部は空洞から歯車部の外周部に向かう方向に開口している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る回転機器の平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る回転機器の底面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る回転機器の第1筐体を取り外した斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る回転機器の第1筐体を取り外した平面図である。
【
図6】
図6は、ウォームを先端側から見た正面図である。
【
図8】
図8は、ウォームの断面の一部を示す斜視図である。
【
図9A】
図9Aは、ウォームの成形方法を説明する図(その1)である。
【
図9B】
図9Bは、ウォームの成形方法を説明する図(その2)である。
【
図9C】
図9Cは、ウォームの成形方法を説明する図(その3)である。
【
図9D】
図9Dは、ウォームの成形方法を説明する図(その4)である。
【
図10】
図10は、比較例に係るウォームの成形方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係るウォーム、およびモータについて図面を参照して説明する。実施形態に係るウォームは、モータに設けられる。また、モータは、回転機器に設けられる。
【0009】
なお、以下に説明する実施形態によりウォーム、およびモータの用途が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0010】
実施形態に係る回転機器1について
図1~
図4を参照し説明する。
図1は、実施形態に係る回転機器1の平面図である。
図2は、実施形態に係る回転機器1の底面図である。
図3は、実施形態に係る回転機器1の第1筐体2Aを取り外した斜視図である。
図4は、実施形態に係る回転機器1の第1筐体2Aを取り外した平面図である。
【0011】
回転機器1は、例えば、車両用の空調システムなどに用いられるアクチュエータとして好適に用いることができ、風量等を制御するためのルーバーの回動動作を制御することができる。
【0012】
回転機器1は、筐体2と、モータ3と、ギア群4(ギア機構)と、回転角度検出センサ5とを備える。
【0013】
筐体2は、第1筐体2Aと、第2筐体2Bとを備える。筐体2は、モータ3と、ギア群4と、回転角度検出センサ5とを収容する。
【0014】
第1筐体2Aは、筐体2の天面部となる第1面部20と、第1面部20の外周部に設けられた第1側壁部21とを備える。第1筐体2Aには、第1側壁部21によって囲まれた開口部(不図示)が第1面部20と対向するように形成される。また、第1筐体2Aの第1側壁部21には、外部コネクタ(不図示)が差し込まれる第1差し込み部22が形成される。
【0015】
第2筐体2Bは、筐体2の底面部となる第2面部23と、第2面部23の外周部に設けられた第2側壁部24とを備える。第2筐体2Bには、第2側壁部24によって囲まれた開口部25が第2面部23と対向するように形成される。また、第2筐体2Bの第2側壁部24には、外部コネクタ(不図示)が差し込まれる第2差し込み部26が形成される。
【0016】
筐体2は、第1筐体2Aの開口部と、第2筐体2Bの開口部25とを付き合わせた状態で、第1筐体2Aと第2筐体2Bとを連結して構成される。第1差し込み部22と第2差し込み部26とが連結して、外部コネクタを収容するコネクタが構成される。なお、筐体2は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS等の樹脂材料で形成される。
【0017】
また、第1筐体2Aには、第2筐体2B側に延出する複数の係合部200が、第1側壁部21の外周部に一体に形成されている。そして、係合部200には係合凹部201が設けられている。一方、第2筐体2Bには、第1筐体2Aの複数の係合部200にそれぞれに対応する複数の突起202(以下、係合突起202と呼称する。)が第2側壁部24に一体に形成されている。係合突起202は係合部200の係合凹部201に係合する。
【0018】
なお、本実施形態では、第1筐体2Aに係合部200を設け、第2筐体2Bに係合突起202を設けるようにしているが、第2筐体2Bに係合部を設け、第1筐体2Aに係合突起を設けるようにしてもよい。
【0019】
また、第1筐体2A、および第2筐体2Bにおける一側辺の両端部には、それぞれ外方へ突出する片210(以下、接合片210と称する。)が形成される。接合片210には、所定の緊締具(不図示)が挿通される連結孔211が設けられており、第1筐体2Aと第2筐体2Bとは、4つの連結孔211を介して所定の緊締具により強固に連結される。
【0020】
また、第1筐体2Aには、例えば、ボルトやビスなどの締結具(不図示)を挿通可能な第1貫通孔220を有する円筒状の突出部221が第1面部20から突出して形成されている。そして、第2筐体2Bには、突出部221が嵌合する第2貫通孔222が設けられる。
【0021】
モータ3は、ステッピングモータ、ブラシレスモータなど公知のモータで構わないが、図示の例ではDCモータであり、モータ3の回転軸311には、ギア群4に含まれるウォーム40が装着される。モータ3には、第1筐体2Aの第1差し込み部22と第2筐体2Bの第2差し込み部26とによって構成される差し込み口27に設けられた接続端子8、およびフレキシブル基板7を介して外部コネクタから電力が供給される。
【0022】
ギア群4は、ウォーム40と、第1伝達ギア41と、第2伝達ギア42と、出力ギア43(回転体)とを備える。ウォーム40は、モータ3の回転軸311とともに回転する。ウォーム40は、モータ3とは反対側の頂部40bが第2筐体2Bによって回転自在に支持される。
【0023】
ウォーム40の回転は、第1伝達ギア41のヘリカルギア41aに伝達されるとともに、ヘリカルギア41aと同軸上に設けられた、ヘリカルギア41aよりも相対的に小径の小径ギア41bを介して第2伝達ギア42に伝達される。そして、第2伝達ギア42の回転は、出力ギア43に伝達される。また、出力ギア43には、出力軸44が連接されている。モータ3の回転は、所定の減速比で減速されて、出力軸44から外部へ出力される。
【0024】
回転角度検出センサ5は、出力ギア43の回転角を制御するために、出力ギア43の回転角を検出する。
【0025】
次に、ウォーム40について
図5~
図8を参照し説明する。
図5は、ウォーム40の斜視図である。
図6は、ウォーム40を先端側から見た正面図である。
図7は、
図4のVII-VII断面図である。
図8は、ウォーム40の断面の一部を示す斜視図である。
【0026】
ウォーム40は、長軸40dを有する空洞(以降の段落では孔と呼称する。)40cを形成する内周部40hと、歯40kが螺旋状に形成された外周部40iと、を有する樹脂部材を備える。樹脂部材は筒状である。
【0027】
長軸40dはモータ3の出力軸44がウォーム40に装着された際には、回転軸311となる。長軸40dの方向において、樹脂部材又は孔40cは開口した一方の端部40c1と閉じた他方の端部(以降の段落では、モータ3とは反対側の歯車部40aの端部と呼称する。)40c2を備える。外周部40iの軸は長軸40dである。長軸40dの方向において、樹脂部材のモータ3とは反対側の歯車部40aの端部40c2の外面には3以上の凹部40eが形成されている。これら3以上の凹部40eはそれぞれ孔40cにつながる孔部(以降の段落では連通孔と呼称する。)40gを備えている。
【0028】
ウォーム40は、樹脂製であり、例えば射出成形によって形成される。ウォーム40は、内周部40hと螺旋状の歯40kが形成された外周部40iとを有する歯車部40aと、他方の端部(以下、頂部と呼称する。)40bとを備える。
【0029】
歯車部40aは、筒状である。歯車部40aには、モータ3の回転軸311が装着される孔40cが形成される。孔40cは、ウォーム40の長軸40dと同軸に形成される。すなわち、孔40cは、開口した一方の端部40c1とモータ3とは反対側の歯車部40aの端部40c2とを備えている。なお、孔40cは、頂部40bの一部まで形成されるが、モータ3とは反対側のウォーム40の先端(他方の端部40c2側における先端)までは形成されていない。すなわち、孔40cは、ウォーム40を貫通しない。
【0030】
頂部40bは、モータ3とは反対側において歯車部40aに連続して形成される。長軸40dにおいて、頂部40bの先端、すなわち、モータ3とは反対側の先端は、長軸40dに沿った断面の形状が湾曲した形状(例:円弧状)となるように形成される。具体的には、頂部40bの先端側は、半球状に形成される。頂部40bは、周方向を回転方向として、他の部材である第2筐体2Bによって回転可能に支持される外面を備える。すなわち、ウォーム40は、外面が第2筐体2Bと接触した状態で、周方向を回転方向として回転する。
【0031】
頂部40bには、歯車部40aの孔40cよりも孔40cの径方向において外側(樹脂部材の外周部40i側)、すなわちモータ3の回転軸311の径方向において外側に設けられ、かつ歯車部40aの孔40cに連通する凹部40eが3つ形成される。なお、凹部40eは、複数であればよい。
【0032】
凹部40eは、ウォーム40の長軸40d、すなわちモータ3の回転軸311の軸方向に沿って延びるように形成される。凹部40eを構成する4つの壁部40f1、40f2、40f3、40f4のうち壁部40f1、40f2には、歯車部40aの孔40cに連通する連通孔40gが形成される。連通孔40gは、径方向において、孔40cに対向する位置に形成される。
【0033】
凹部40eは、頂部40bの周方向、すなわちウォーム40の回転方向である周方向に沿って等間隔に形成される。
【0034】
次に、ウォーム40の成形方法について
図9A~
図9Dを参照し説明する。
図9A~
図9Dは、ウォーム40の成形方法を説明する図(その1~その4)である。
【0035】
ウォーム40は、固定金型50、第1可動金型51、および第2可動金型52を用いた射出成形によって形成される。
【0036】
固定金型50には、歯車部40a、および頂部40bの一部に孔40cを形成するピン50aが形成される。
【0037】
第1可動金型51には、歯車部40aの外形状を形成する成形面51aが形成される。また、第1可動金型51には、第2可動金型52が挿入される孔51bが形成される。
【0038】
第2可動金型52には、頂部40bの外形状(外周部40i)を形成する成形面52aが形成される。なお、第2可動金型52は、頂部40bに、連通孔40gを有する凹部40eを形成する突出部52bを3つ備える。突出部52bは、凹部40eの数に応じて設けられる。
【0039】
ウォーム40を成形する場合には、
図9Aに示すように、第2可動金型52を第1可動金型51の孔51bに挿入した状態で、第1可動金型51、および第2可動金型52を所定の成形位置に移動させる。これにより、固定金型50、第1可動金型51、および第2可動金型52によってウォーム40を成形する隙間であるキャビティ55が形成される。
【0040】
3つの突出部52bは、固定金型50のピン50aに接触する。これにより、突出部52bによって第2可動金型52側の先端が支持された状態となる。
【0041】
そして、加熱して溶融させた樹脂をキャビティ55内に高圧で射出する。これにより、
図9Bに示すように、キャビティ55に樹脂が充填され、ウォーム40が成形される。なお、固定金型50のピン50aは、突出部52bによって支持されているため、樹脂が高圧で射出された場合でも、固定金型50のピン50aの先端が撓むことが抑制される。
【0042】
そして、樹脂を冷却させた後に、
図9Cに示すように、第1可動金型51、および第2可動金型52を移動させて、固定金型50からウォーム40を離間させる。
【0043】
さらに、例えば、第2可動金型52を固定した状態で、第1可動金型51を回転させることで、
図9Dに示すように、ウォーム40が第2可動金型52から取り出される。ウォーム40には、孔40c、および孔40cに連通する連通孔40gが形成される。
【0044】
ウォーム40は、ウォーム40の長軸40dと同軸の孔40cが形成された歯車部40aと、長軸40dにおいて、歯車部40aの一方の端部に形成される頂部40bとを備える。頂部40bには、径方向において、孔40cよりも歯車部40aの外周部40i側であり、かつ孔40cに連通する連通孔40gを有する凹部40eが形成される。
【0045】
これにより、ウォーム40を射出成形する場合に、凹部40eを形成する第2可動金型52の突出部52bによって固定金型50のピン50aを支持することができる。そのため、モータ3の回転軸311が装着されるウォーム40の孔40cを形成する固定金型50のピン50aが射出成形時に撓むことを抑制することができる。従って、ウォーム40は、ウォーム40の孔40cの精度を向上させることができ、ウォーム40の長軸40dとモータ3の回転軸311との位置精度を向上させることができる。このようなウォーム40は、第1伝達ギア41のヘリカルギア41aと噛み合った場合に、振動又は騒音が発生することを抑制することができる。また、ウォーム40は、第1伝達ギア41のヘリカルギア41aと噛み合った場合に、動力の伝達効率を向上させることができる。
【0046】
なお、
図10に示すように、固定金型500のピン500aを第2可動金型501に形成した凹部501aに挿入させて、固定金型500のピン500aの撓みを抑制することも考えられる。
図10は、比較例に係るウォーム400の成形方法を示す図である。
【0047】
しかし、この場合、ウォーム400に頂部を形成することができず、モータとは反対側のウォーム400の先端を、例えば、筐体によって支持することができない。そのため、ウォーム400は、モータとは反対側のウォーム400の先端が撓み、振動又は騒音が発生し、また動力の伝達効率が低下するおそれがある。
【0048】
これに対し、実施形態に係るウォーム40は、モータ3とは反対側に頂部40bを形成することができ、ウォーム40の頂部40bの外面が第2筐体2Bと接触した状態で、頂部40bの周方向を回転方向として回転することができる。そのため、ウォーム40は、モータ3とは反対側のウォーム40の先端が撓むことを抑制し、振動又は騒音の発生を抑制することができ、また動力の伝達効率を向上させることができる。
【0049】
また、ウォーム40の孔40cと外部とが凹部40eの連通孔40gによって連通することで、モータ3の回転軸311をウォーム40の孔40cに装着する場合に、ウォーム40の孔40c内の空気を連通孔40gから逃がすことができる。そのため、モータ3の回転軸311をウォーム40に容易に装着することができる。
【0050】
また、凹部40eは、周方向において、頂部40bに等間隔に形成される。
【0051】
これにより、固定金型50のピン50aをピン50aの周方向に沿って均一に支持することができ、固定金型50のピン50aが射出成形時に撓むことを抑制することができる。そのため、ウォーム40の孔40cの精度を向上させることができ、ウォーム40の長軸40dとモータ3の回転軸311との位置精度を向上させることができる。従って、ウォーム40は、第1伝達ギア41のヘリカルギア41aと噛み合った場合に、振動又は騒音が発生することを抑制することができ、また動力の伝達効率を向上させることができる。
【0052】
なお、ウォーム40は、
図11および
図12に示すように、固定金型60、第1可動金型61、第2可動金型62およびコマ63を用いて形成されてもよい。
図11は、ウォームの他の成形方法を示す図である。
図12は、
図11のXII-XII断面図である。
【0053】
固定金型60には、ピン60aの先端に2つの凹部60bが形成される。2つの凹部60bは、向かい合うようにピン60aの先端に形成される。すなわち、2つの凹部60bは、周方向において、180度異なる位置に形成される。
【0054】
第2可動金型62には、第1可動金型61に挿入された場合に、固定金型60の凹部60bと連通する2つの凹部62aが形成される。すなわち、2つの凹部62aは、周方向において、180度異なる位置に形成される。
【0055】
第1可動金型61には、2つの貫通孔61aが形成される。貫通孔61aは、固定金型60の凹部60b、および第2可動金型62の凹部62aに対応する位置に形成される。2つの貫通孔61aは、向かい合うように形成される。
【0056】
固定金型60、第1可動金型61、および第2可動金型62には、第1可動金型61、および第2可動金型62を所定の成形位置に移動させた場合に、外部からコマ63を挿入可能となるように、凹部60b、62a、および貫通孔61aが形成される。
【0057】
コマ63は、貫通孔61aに挿入され、凹部60b、62aに係合する。すなわち、固定金型60のピン60aは、2つのコマ63が凹部60bに係合することで固定される。このような状態で、加熱して溶融させた樹脂が高圧で射出され、ウォーム40が形成される。この場合、ウォーム40には、2つの凹部40eが形成される。ウォーム40には、孔40cに連通する連通孔40gを有する2つの凹部40eが、周方向において180度異なる位置に形成される。連通孔40gは、径方向において、孔40cに対向する位置に形成される。
【0058】
このような、金型を用い成形されたウォーム40は、上記実施形態と同様に、動力の伝達効率を向上させ、振動又は騒音が発生することを抑制することができる。
【0059】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 回転機器、2 筐体、2A 第1筐体、2B 第2筐体、3 モータ、4 ギア群(ギア機構)、40 ウォーム、40a 歯車部、40b 頂部、40c 孔(空洞)、40c1 開口した一方の端部、40c2 閉じた他方の端部、40d 長軸、40e 凹部、40g 連通孔(孔部)、40h 内周部、40i 外周部、41a ヘリカルギア、50 固定金型、51 第1可動金型、52 第2可動金型、60 固定金型、61 第1可動金型、62 第2可動金型、63 コマ