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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】カバーフィルム移送治具
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230307BHJP
   B65B 41/06 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C12M1/00 A
B65B41/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019052720
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020150855
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000116828
【氏名又は名称】旭化成パックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100178685
【弁理士】
【氏名又は名称】田浦 弘達
(72)【発明者】
【氏名】大野 俊明
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-006375(JP,A)
【文献】特開2017-132509(JP,A)
【文献】特開2013-116065(JP,A)
【文献】河合優著, 自動化設計のための治具・位置決め入門, 日刊工業新聞社発行, 2014, pp.2-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
B65B 41/00-41/18
B65B 7/00- 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーフィルムを容器上へ移送する移送部を備える、カバーフィルム移送治具であって、
前記移送部は、
前記カバーフィルムを吸着可能な平面部を有する吸着部と、
当該平面部に設けた孔から気体を吸入可能な吸気部と、
当該吸着部と連結する把持部と、
前記カバーフィルムを前記容器へ貼り合せる際の状態を、当該カバーフィルムを前記容器へ貼り付ける貼合せ方向から見たとき、前記吸着部に対する前記容器の位置が重なり合うように位置決め可能な第1位置決め部と、
を備え、
前記移送部は、前記吸着部、前記吸気部、および前記把持部を有する移送本体部と組み合わせ可能であって、当該移送本体部と組み合わされた状態で前記把持部が前記貼合せ方向に挿通可能である外枠部をさらに備え、
前記外枠部の貼合せ方向端部は、前記第1位置決め部を有するとともに、前記移送本体部を当該外枠部に対して貼合せ方向逆側に相対変位させた状態で、当該移送本体部の前記吸着部の貼合せ方向端部よりも、貼合せ方向側に位置し、
前記カバーフィルムを前記容器へ貼り合せる際、前記第1位置決め部が前記容器の側面に沿うことで位置決めする、
ることを特徴とする、カバーフィルム移送治具。
【請求項2】
前記移送部の前記吸気部は樹脂で形成されるジャバラ式ポンプを有し、当該ジャバラ式ポンプの圧縮後の復元力により当該吸気部による吸入が行われる、請求項に記載のカバーフィルム移送治具。
【請求項3】
前記吸気部は、前記ジャバラ式ポンプの圧縮状態を維持可能な維持部を有する、請求項に記載のカバーフィルム移送治具。
【請求項4】
前記カバーフィルム移送治具は樹脂製である、請求項1~のいずれかに記載のカバーフィルム移送治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーフィルム移送治具に関する。
【背景技術】
【0002】
生物・バイオテクノロジーの分野において、細胞、スフェロイド、組織等の培養に用いられる培養プレートが広く用いられている。培養プレートを用いる際には、通常、培養プレートのウエルに細胞等の培養物と培地等を加え、ウエルをカバーフィルム(特許文献1等)で被覆し、その後、培養プレートを細胞培養器に静置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-42551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、培養プレート内で細胞等を培養する際、培養プレートの表面に粘着性を有するカバーフィルムを貼り合わせた状態でおこなわれている。そして、当該カバーフィルムを培養プレートに貼り付ける際には、細菌等の混入を防ぐために、カバーフィルムの剥離フィルム(カバーフィルムの保護フィルム)からの剥離、カバーフィルムの移送や貼付け等の作業は、ピンセットを用いて行われている。さらに、これらの作業は、グローブボックス内で行われている上、使用者の手等から培養プレートへ細菌等が落下して混入することを確実に防ぐため、使用者の手等がカバーフィルムや培養プレートの上方に来るのを避けるようにして取り扱われている。したがって、カバーフィルムを培養プレートの表面に貼り合わせる作業は、特に、カバーフィルムを剥離フィルムから剥がし、移送し、そして、培養プレートに対して位置合わせする際に、細心の注意が払われるとともに、作業性が低い状況下で行われており、使用者に大きな負担をかけていた。
したがって、従来、上記のようなカバーフィルムを培養プレート上に貼り合わせることは容易ではなく、より簡便に行えることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、カバーフィルムを容器上へ容易に移送することが可能なカバーフィルム移送治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記の通りである。
〔1〕カバーフィルムを容器上へ移送する移送部を備える、カバーフィルム移送治具であって、
前記移送部は、
前記カバーフィルムを吸着可能な平面部を有する吸着部と、
当該平面部に設けた孔から気体を吸入可能な吸気部と、
当該吸着部と連結する把持部と、
前記カバーフィルムを前記容器へ貼り合せる際の状態を、当該カバーフィルムを前記容器へ貼り付ける貼合せ方向から見たとき、前記吸着部に対する前記容器の位置が重なり合うように位置決め可能な第1位置決め部と、
を備えることを特徴とする、カバーフィルム移送治具。
〔2〕前記移送部は、前記吸着部、前記吸気部、および前記把持部を有する移送本体部と組み合わせ可能であって、当該移送本体部と組み合わされた状態で前記把持部が前記貼合せ方向に挿通可能である外枠部をさらに備え、
前記外枠部の貼合せ方向端部は、前記第1位置決め部を有するとともに、前記移送本体部を当該外枠部に対して貼合せ方向逆側に相対変位させた状態で、当該移送本体部の前記吸着部の貼合せ方向端部よりも、貼合せ方向側に位置し、
前記カバーフィルムを前記容器へ貼り合せる際、前記第1位置決め部が前記容器の側面に沿うことで位置決めする、上記〔1〕のカバーフィルム移送冶具。
〔3〕前記移送部は、前記移送本体部と前記外枠部とを組み合わせた際の、前記移送本体部と前記外枠部との貼合せ方向に直交する方向への相対変位、および、前記移送本体部と前記外枠部との貼合せ方向周りの回転を、抑えることができる防止機構を有する、上記〔2〕のカバーフィルム移送冶具。
〔4〕前記カバーフィルム移送冶具は、前記カバーフィルムに剥離フィルムが貼り合わされた状態の積層フィルムが配置される底面を有する受け部をさらに備え、
前記受け部は、前記底面上に、前記積層フィルムの形状に対応する第1領域内に前記積層フィルムが配置されるように位置決め可能な第2位置決め部を有し、
前記受け部は、前記移送部と組み合わせ可能であり、組み合わせた状態を貼合せ方向から見たとき、前記吸着部が、前記第1領域に配置される前記積層フィルム中の前記カバーフィルムが存在することとなる第2領域に位置するように、前記移送部を位置決めする第3位置決め部を有する、上記〔1〕~〔3〕のいずれかのカバーフィルム移送治具。
〔5〕前記移送部の前記吸気部は樹脂で形成されるジャバラ式ポンプを有し、当該ジャバラ式ポンプの圧縮後の復元力により当該吸気部による吸入が行われる、上記〔1〕~〔4〕のいずれかのカバーフィルム移送治具。
〔6〕前記吸気部は、前記ジャバラ式ポンプの圧縮状態を維持可能な維持部を有する、上記〔5〕のカバーフィルム移送治具。
〔7〕前記カバーフィルム移送治具は樹脂製である、上記〔1〕~〔6〕のいずれかのカバーフィルム移送治具。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カバーフィルムを容器上へ容易に移送することが可能なカバーフィルム移送治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係るカバーフィルム移送治具を示す、斜視図である。
図2図1に示すカバーフィルム移送治具の移送部を示す、斜視図である。
図3図1に示すカバーフィルム移送治具を、図1のa-a線に沿う断面で示す、一部断面図である。
図4図1に示すカバーフィルム移送治具の移送部を、貼合せ方向の逆側から見たときの図である。
図5図1に示すカバーフィルム移送治具の外枠部を示す、斜視図である。
図6図1に示すカバーフィルム移送治具を用いてカバーフィルムを容器へ貼り合せる際について、カバーフィルム移送治具を、図1のa-a線に沿う断面で示す、一部断面図である。
図7図1に示すカバーフィルム移送治具を用いてカバーフィルムを容器へ貼り合せる際について、貼合せ方向から見たときのカバーフィルム移送治具を、一部透過させて示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係るカバーフィルム移送治具の受け部を示す、斜視図である。
図9図8に示すカバーフィルム移送治具の受け部を示す、平面図である。
図10図8に示すカバーフィルム移送治具を、移送部および受け部を組み合わせつつある状態で示す、斜視図である。
図11】カバーフィルムおよび容器を示す、斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について例示説明する。
《第1の実施形態》
図1は、本発明の第1の実施形態に係るカバーフィルム移送治具を示す、斜視図である。
第1の実施形態のカバーフィルム移送治具1は、例えば培養プレート等の容器5の表面上を覆う(特に開口部を覆う)カバーフィルムを、当該容器5上へ移送するために用いることができる。
第1の実施形態におけるカバーフィルム移送治具1は、カバーフィルムを容器5上へ移送する移送部11を備える。また、当該移送部11は、カバーフィルムを吸着可能な平面部13を有する吸着部14と、当該平面部13に設けた孔131から気体を吸入可能な吸気部15と、当該吸着部14と連結する把持部16と、カバーフィルムを容器5へ貼り合せる際の状態を貼合せ方向Dから見たとき、吸着部14に対する容器5の位置が重なり合うように位置決め可能な第1位置決め部17と、を備えている。第1の実施形態のカバーフィルム移送治具1によれば、カバーフィルムを容器5上へ容易に移送することができる。
なお、本明細書において、「貼合せ方向D」とは、移送部11を用いてカバーフィルムを容器5上へ貼り合せる際の、移送部11に対する容器5の方向(移送部11の進行方向)であり、また、貼合せ方向Dとは逆側の向きを貼合せ方向逆側とする。
【0010】
第1の実施形態において、移送部11は、図1に示すように、吸着部14、吸気部15、把持部16、および第1位置決め部17を備えている。具体的には、移送部11は、吸着部14、吸気部15、および把持部16を有する移送本体部12と、当該移送本体部12と組み合わせ可能であって、当該移送本体部12と組み合わされた状態で把持部16が貼合せ方向Dに挿通可能である外枠部18と、を備えている。また、外枠部18の貼合せ方向端部186が、第1位置決め部17を有している。
【0011】
ここで、移送本体部12の吸着部14は、図2に示すように、移送本体部12の貼合せ方向端部側に位置しており、特に限定されないが平板状になっている。また、吸着部14は、貼合せ方向D下端にカバーフィルムを吸着可能な平面部13を有しており、当該平面部13には、図3、4に示すように、孔131が複数設けられている。吸着部14の平面部13に設けられた孔131の数は、任意にすることができるが、カバーフィルムを吸着させる観点から、平面部13に広く設けられていることが好ましい。また、カバーフィルムの全面を均一に吸着するため、好ましくはカバーフィルム表面内の中央部よりも縁部をより強く吸引するようにするために、孔131が平面部13の中央部よりも縁部側で数が多く、および/または、孔が大きくなることがより好ましい。孔131の形状は、真円、楕円、正方形、長方形、三角形、星形等任意の形状でよいが、真円又は楕円が好ましい。孔131の最大径は1mm以下が好ましく、0.001~0.1mmが更に好ましい。尚、孔131の最大径は平面部13において均一であってもよいが、平面部13の中央部から縁部に向けて最大径を大きくしたり小さくしたりしてもよく、任意に調整することができる。
また、吸着部14の平面部13の形状は、カバーフィルムと同様な形状とすることができ、具体的には例えば矩形状とすることができる。また、平面部13の大きさは、移送するためのカバーフィルムと同等の大きさ、またはカバーフィルムの面積に対して90~1110%程度の面積であることが好ましい。より好ましくは98~105%である。カバーフィルムをより確実に吸着しやすくするためである。
【0012】
吸着部14の内部には、平面部13の各孔131と連通する空洞部141が形成されており(図示の例では、当該空洞部141は吸着部14と把持部16の内部に形成されている)、当該空洞部141が把持部16の内部に設けられた吸気部15と連通している。当該空洞部141の存在により、後述する吸気部15による吸気が各孔131において均等に行うことができる。
【0013】
移送本体部12の吸気部15は、図2に示すように、平面部13に設けた孔131から気体を吸入可能なものであり、具体的には、空洞部141を介して当該孔131から吸入する。また、吸気部15は、気体の吸入だけでなく、孔131からの排気も可能にすることができる。具体的な吸気部15としては、特に限定されないが、樹脂で形成されるポンプ151を有するものとすることができ、吸気部15による吸気は、当該ポンプ151の圧縮後の復元力により行うことができる。また、吸気部15としては、ポンプの中でもジャバラ式ポンプ、袋状ポンプ、または、シリンジも用いることができる。
【0014】
ポンプ151は、圧縮してもその復元力により吸気しながら復元するものであれば特に限定されない。また、吸気部15が孔131からの排気も可能である場合には、当該吸気部15による吸気はポンプ151の圧縮により行うことができる。
吸気部15は、把持部16の貼合せ方向逆側の端部に設けた押ボタン152を介して操作を行うことができる。具体的には、当該押ボタン152を押圧することにより、押ボタン152が把持部16の内側の空洞を摺動して移動し(図示の例では貼合せ方向Dに移動し)、ポンプ151を圧縮することができる。
【0015】
また、吸気部15は、ポンプ151を有する場合には、ポンプ151の圧縮状態を維持可能な維持部を有することができる(図示は省略)。維持部としては、ノック式とすることができる。
維持部をノック式にする場合には、具体的には、図示を省略するが、ポンプ151を貼合せ方向Dから見たときに円筒状とし、また、ポンプ151が設けられる空間を円筒状とする。さらに、把持部16の内側に筒状のカム本体と、回転子とを取り付け、押ボタン152の先端部にギザギザ部を形成する。当該カム本体は、その内壁に、先端が一方向に傾斜した段状の係止部と、回転子が上下移動できる溝部とを有する。また、回転子は、押ボタン152側に押ボタン152の先端部のギザギザ部とかみ合う係止部を有する。そして、維持部をノック式とすることにより、押ボタン152をノックすると、押ボタン152のギザギザ部と回転子の係止部がかみ合い、回転子が押ボタン152の先端部のギザギザ部を滑り所定角度だけ回転して係止され、ポンプ151の復元力に対抗した回転子の係止状態が維持される。次いで押ボタン152を再度貼合せ方向Dに押し下げると、回転子の係止部が回転子のギザギザ部との係止が解除され、押ボタン152の押圧をやめると、ポンプ151の復元力によって、回転子が貼合せ方向逆側にカム本体の溝部に沿って移動して、ポンプ151が復元状態になる。さらに、押ボタン152を貼合せ方向Dに押し下げると、その溝部に沿って回転子も貼合せ方向Dに移動し、カム本体の溝部から押し出された回転子が、押ボタン152のギザギザ部上を滑り回転し、回転子の係止部がカム本体の係止部に係止する。これにより、ポンプ151の復元力に対抗した回転子の係止状態が維持される。
【0016】
また、維持部は、上記のノック式に替えて、押ボタン152の側壁に設けた突出部と、押ボタン152を押圧した状態で突出部が係合する、把持部16の側壁に設けた穴部と、で形成することができる。このようにすることにより、ポンプ151の圧縮状態を突出部と穴部との係合により維持することができ、また、当該係合を例えば突出部を把持部16の内側に向けて押すことにより、圧縮状態を解除することができる。
【0017】
なお、吸気部15による吸気量は、カバーフィルムを吸着部14に十分に吸着させとともに、大きくなりすぎるのを防止する観点からは、吸着部14の内部の空洞部141の容積の1~10倍であることが好ましく、より好ましくは2~5倍である。また、十分に吸引する観点からは、吸気部15は1~100kPaの吸引力を有することが好ましく、10~60kPaであるとより好ましい。
また、図示の例では、吸気部15は、把持部16の内部に設けているが、把持部16の外部に設けてもよい。
【0018】
移送本体部12の把持部16は、吸着部14と連結するとともに、カバーフィルム移送治具1の使用者が把持することができる部分である。
把持部16は、図2に示すように、特に限定されないが、吸着部14の、貼合せ方向Dから見て中央部に設けることができる。また、把持部16の軸線は、吸着部14の平面部13に対して垂直であり、また、貼合せ方向Dと同じ方向となっている。
【0019】
把持部16の形状は、特に限定されないが例えば、図2に示すような長方形状、円柱状、楕円柱状にすることができ、また、そのような柱状となりつつ、使用者が把持しやすいように加工された形状とすることもできる。
把持部16の内部は、図3に示すように中空にすることができ、上記のように、吸気部15を配置することができる。具体的には、把持部16の内部に吸着部14の内部に形成される空洞部141と吸気部15が配置される空間とを区画するための仕切板が設けられている。
【0020】
本実施形態において、移送部11の外枠部18は、図1、5に示すように、上記の移送本体部12と組み合わせ可能に形成されており、移送本体部12と組み合わせた状態で把持部16が貼合せ方向Dに挿通可能になっている。具体的には、図5に示すように、外枠部18を貼合せ方向Dから見て、中央部に挿通口181が設けられており、当該挿通口181に把持部16が挿入される。また、挿通口181と把持部16を貼合せ方向Dから見たときの、挿通口181の内側輪郭と把持部16の外周面の輪郭とは同様な形状となるとともに、挿通口181の内側輪郭が把持部16の外周面の輪郭よりもわずかに大きくなっている。それにより、外枠部18と移送本体部12とを貼合せ方向Dに相対変位させた際、それぞれの、貼合せ方向Dに直交する方向への変位を抑えることができる(すなわち、移送部11は、移送本体部12と外枠部18との貼合せ方向Dに直交する方向への変位を抑えることができる変位防止機構を有する)。
なお、本実施形態において、変位防止機構は、上記の例に限らず、挿通口181の内側輪郭を把持部16の外周面の輪郭に対して異なる形状または大きさとした場合であっても、例えば、挿通口181の内側に設けた突出部等とすることにより、把持部16の相対変位を規制することができる。
【0021】
外枠部18は、図5、6に示すように、外枠部18と移送本体部12とを組み合わせて、移送本体部12に対して外枠部18を貼合せ方向Dに相対変位させた状態で見て、内側に空間を有する蓋状の形状となっており、より具体的には、挿通口181を有する蓋面部182と、蓋面部182の縁に連結する側面部183とを有している。
このような形状と有するので、移送部11は、外枠部18の貼合せ方向端部186が、移送部11の吸着部14の平面部13よりも貼合せ方向Dに位置する場合と、移送部11の吸着部14の平面部13よりも貼合せ方向逆側に位置する場合とを有することができる。換言すれば、外枠部18の貼合せ方向端部186が、移送本体部12を外枠部18に対して貼合せ方向逆側に相対変位させた状態で、移送本体部12の吸着部14の貼合せ方向端部よりも、貼合せ方向側に位置する。
なお、外枠部18の形状は限定されず、図5、6に示すような、吸着部14(や容器5)をその内側の空間に収容し、吸着部14の側面の全てを囲うような形状ではなく、図示は省略するが外枠部18の側面部183が、側面部183の周方向に連続しておらず(吸着部14の側面の一部に沿い)、全体として吸着部14の側面を囲うような形状であってもよい。また、外枠部18としては、挿通口181から、吸着部14の貼合せ方向逆側の表面、吸着部14の側面(縁)、そして、吸着部14の平面部13よりも貼合せ方向Dに延びる複数の棒状または板状の枠としてもよい。
【0022】
また本実施形態において、移送部11は、カバーフィルムを容器5へ貼り合せる際の状態を貼合せ方向Dから見たとき、吸着部14に対する容器5の位置が重なり合うように位置決めする第1位置決め部17を有している。具体的には、図示の例では、外枠部18は、当該外枠部18の貼合せ方向端部186において、第1位置決め部17を有している。
そして、図6、7に示す例では、移送本体部12を外枠部18に対して貼合せ方向逆側に相対変位させた状態で、外枠部18の貼合せ方向端部186が、移送本体部12の吸着部14の貼合せ方向端部よりも貼合せ方向側に位置し、また、外枠部18の貼合せ方向端部186の内表面が、容器5の側面に沿うように位置している。これにより、カバーフィルムを容器5へ貼り合せる際の状態を貼合せ方向Dから見たときに、吸着部14に対する容器5の位置が重なり合うようになっている。したがって、図示の例では、第1位置決め部17は、外枠部18の貼合せ方向端部186の内表面であり、当該内側面が容器5の側面の輪郭に合わせた形状を有している。
【0023】
なお、図示の例では、第1位置決め部17は、外枠部18の貼合せ方向端部186の内表面であるが、例えば、外枠部18を容器5に対して比較的大きくし、その貼合せ方向端部186の内表面上に突起等を設けることで、当該突起を第1位置決め部17とすることもできる。
また、第1位置決め部17は、カバーフィルムを容器5に貼り合わせる際に、容器5に対する吸着部14の姿勢が特定の姿勢となるように容器5と吸着部14とを位置決めするものだけではなく、使用者が容器5に対する吸着部14の姿勢を特定の姿勢にしやすくするためのもの(位置合わせのガイドや印)も含むことができる。
さらに、第1位置決め部17による「吸着部14に対する容器5の位置が重なり合う」状態とは、カバーフィルムを容器5へ貼り合せる際の状態を貼合せ方向Dから見たときに、吸着部14と容器5との重なりが最大となる場合の最大面積の95%以上の面積となる場合であることが好ましい。
【0024】
また、本実施形態において、移送部11は、移送本体部12と外枠部18とが組合せ方向に相対変位する際、貼合せ方向Dに直交する方向に回転することを防止する回転防止機構を有している。具体的には、防止機構は、移送本体部12の把持部16の外周面の輪郭および外枠部18の挿通口181の内側輪郭がそれぞれ真円以外の形状である。または、防止機構は、それらの輪郭が真円である場合には、例えば、把持部16の外周面に設けた、貼合せ方向Dに延びる突起または溝と、外枠部18の挿通口181の内側面に設けた、当該突起がスライドする溝または当該溝をスライド可能な突起とで構成することができる。
【0025】
ところで、本実施形態において、移送部11の材料は特に限定されない。例えば、吸気部15は、上述のように樹脂製のポンプ151が好ましいが、吸気可能であれば金属を有する例えば機械式のものも用いることができる。しかし、離脱物が少なく、また、カバーフィルム移送治具1を容易に滅菌する観点からは、全体として、樹脂製であることが好ましい。また、吸着部14の平面部13の材料は、その中でも軟質ゴムであることがより好ましい。軟質ゴムにより平面部13を形成することで、よりカバーフィルムを貼り付きやすくすることができる。
また、カバーフィルムが確実に移送できているか視認しやすくする観点からは、移送部11は透明な樹脂が用いられていることが好ましい。
さらに、本実施形態において、移送部11の構造、形状、寸法等は、カバーフィルム、容器5、および、カバーフィルムに貼り合わせする剥離フィルムの形状、寸法等によって、任意に変更することができる。
【0026】
ここで、第1の実施形態のカバーフィルム移送治具1により移送可能なカバーフィルムは、特に限定されないが例えば、図11に示すような培養プレートをカバーするためのものであり、当該培養プレートの上面の大きさおよび形状と略同じである。具体的にはカバーフィルム3の平面視形状としては、特に限定されることなく、真円、楕円形、矩形等が挙げられ、通常、矩形としてよい。矩形は、角に丸みを帯びていてもよい。
また、カバーフィルム3は、図示は省略するが、複数の貫通孔を有しており、培養プレートを覆った際に、培養プレート内の細胞等の培養物が呼吸できるようになっている。
【0027】
カバーフィルム3としては、特に限定されないが、培養プレートの表面と密着する密着層と、基材層とを有する多層フィルムを用いることができる。このような多層フィルムにおいて、密着層を形成する樹脂としては、低密度ポリエチレン(ベリーローデンシティポリエチレン、ウルトラローデンシティポリエチレンを含む)、エチレン-プロピレン共重合体(ランダム又はブロック共重合体)、エチレン-αオレフィン共重合体(ランダム又はブロック共重合体)、プロピレン-αオレフィン共重合体(ランダム又はブロック共重合体)、エチレン-プロピレン-αオレフィン共重合体(ランダム又はブロック共重合体)、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-スチレンランダム共重合体、ポリイソプレン、天然ゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体及びその水添物、スチレン-イソプレンブロック共重合体、ポリウレタン、ポリシロキサンを用いることができる。
また、基材層を形成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、環状ポリオレフィン(COC)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン(PS)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン、ポリシロキサン等の樹脂、紙、木、不織布、織布等のシート又はフィルム;金属又はその箔;等を用いることができる。
カバーフィルム3としてより具体的には、例えば特開2018-42551等に記載のカバーフィルム3を用いることができる。
【0028】
また、上記のカバーフィルム3は、容器5に貼り合わせる前までは、通常、カバーフィルム3に剥離フィルム4が貼り合わされた積層フィルムの状態で取り扱われる。具体的には、図11に示すように、剥離フィルム4は、カバーフィルム3よりも一回り大きく、矩形状のフィルムとなっている。また、積層フィルムは、カバーフィルム3の密着層が当該剥離フィルム4と貼り合わされた状態となっており、これにより、カバーフィルム3の密着層が保護されている。
剥離フィルム4としては、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、環状ポリオレフィン(COC)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン(PS)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)等の樹脂、紙、木、不織布、織布等のシート又はフィルム;金属又はその箔;これらにシリコーンコートやフッ素コート、粗面化処理等を行ったもの等が挙げられ、取扱い性の観点から、カバーフィルム3よりもこしのあるフィルムが好ましく、具体的には、ポリエステル系樹脂やポリスチレン(PS)製のシート又はフィルムが好ましい。
【0029】
また、第1の実施形態のカバーフィルム移送治具1によりカバーフィルム3を移送し貼り付ける容器5は、特に限定されないが、生物・バイオテクノロジーの分野において、細胞、スフェロイド、組織等の培養に用いられる培養プレートとすることができる。当該培養プレートとしては、その上面に1つ又は複数(例えば、6、24、96、384等)のウエルが設けられた培養プレートとしてよい。
容器5としては、上面のうちの開口部以外の部分が、同一平面部13上に位置していることが、容器5とカバーフィルム3との接着性を高める観点から、好ましい。
【0030】
また、容器5の材料としては、特に限定されないが、樹脂製であることが好ましい。樹脂としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブテン、ポリカーボネート、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)等が挙げられ、必要に応じて各種添加剤を含むことができる。
【0031】
ここで、第1の実施形態のカバーフィルム移送治具1を用いたカバーフィルムの移送方法について説明する。
まず、カバーフィルムに剥離フィルムが貼り合わされた状態の積層フィルムを、平面上に剥離フィルムが下方になるように載置する。次いで、積層フィルムの上方より(貼合せ方向Dから)、カバーフィルム移送治具1を近づけ、吸着部14の平面部13とカバーフィルムとを接触させる。このカバーフィルム移送治具1を近づける際、吸気部15が吸入可能な状態にする。
続いて、吸着部14の平面部13に接触させた後、吸気部15で吸引して当該平面部13に積層フィルム(カバーフィルム)を吸着させる。積層フィルムのカバーフィルムに粘着性があれば、当該吸引力とともにカバーフィルムの粘着力により吸着部14に貼り付く(吸着する)。
このように吸着部14にカバーフィルムが貼り付いている状態で、カバーフィルムに貼り合わされている剥離フィルムを剥ぎ取る。ここで、吸着部14の吸引力が十分高く且つ剥離フィルムに腰がある場合、移送部11を持ち上げると外枠部18に押された剥離フィルムは平面部13に吸着されたカバーフィルムから剥がれるので、作業者が剥がさなくてもよい。なお、上述のように、カバーフィルムが複数の貫通孔を有する場合には、吸引力が徐々に低下する可能性があるが、カバーフィルムに粘着性があれば、カバーフィルムの吸着部14への貼り付きをより確保することができる。
そして、カバーフィルム移送治具1を、被着体である容器5上に移動させ、カバーフィルム移送治具1を、第1位置決め部17により位置決めしつつ、容器5上に配置する。具体的には、カバーフィルム移送治具1の把持部16を把持しつつ、吸着部14が、貼合せ方向Dから見たとき、容器5の位置が重なり合うように第1位置決め部17により位置決めして、吸着部14を容器5上に配置する。また、吸着部14が排気も可能である場合には、吸着部14を容器5上に配置した際、吸着部14より排気することにより、より確実にカバーフィルムを貼り合わせすることができる。
【0032】
なお、上述のように、本実施形態のカバーフィルム移送治具1は、外枠部18の貼合せ方向端部186が、第1位置決め部17を有するとともに、移送本体部12を外枠部18に対して貼合せ方向逆側に相対変位させた状態で、外枠部18の貼合せ方向端部186が吸着部14の貼合せ方向端部よりも、貼合せ方向側に位置し、さらに、カバーフィルムを容器5へ貼り合せる際、第1位置決め部17が容器5の側面に沿うことで位置決めすることができる。そして、カバーフィルムの移送方法において、この場合、吸着部14にカバーフィルムを吸着した状態を貼合せ方向Dから見て、第1位置決め部17が、カバーフィルムの外側であって剥離フィルムの内側に位置することとなる。したがって、吸着部14にカバーフィルムが貼り付いた後、移送部11を持ち上げると、外枠部18の貼合せ方向端部186が吸着部14の貼合せ方向端部よりも、貼合せ方向側に位置して、第1位置決め部17(外枠部18の貼合せ方向端部186)がカバーフィルムから剥離フィルムを剥ぎ取ることができる。
【0033】
ここで、第1の実施形態による作用効果を以下説明する。
本実施形態のカバーフィルム移送治具1は、剥離フィルムを貼り付けた状態のカバーフィルムを、移送部11の吸着部14の平面部13に吸引部の吸引によって吸着させることができるので、例えば使用者の手や腕等がカバーフィルムの上方に直接位置しないので(カバーフィルムの上方に手等が位置しても吸着部14が遮るので)、落下菌等の混入を防ぐことができる。また、カバーフィルム移送治具1は第1位置決め部17を有するので、カバーフィルムを容器5上に貼り合わせる際、カバーフィルムを容器5へ適切に貼り合せることができる。したがって、第1の実施形態によれば、カバーフィルムを容器5上へ容易に移送することができる。
【0034】
また、本実施形態のカバーフィルム移送治具1において、外枠部18の貼合せ方向端部186が、第1位置決め部17を有するとともに、移送本体部12を外枠部18に対して貼合せ方向逆側に相対変位させた状態で、外枠部18の貼合せ方向端部186が吸着部14の貼合せ方向端部よりも、貼合せ方向側に位置し、さらに、カバーフィルムを容器5へ貼り合せる際、第1位置決め部17が容器5の側面に沿うことで位置決めすることが好ましい。この構成によれば、吸着部14にカバーフィルムが貼り付いた後、移送部11を持ち上げると、第1位置決め部17(外枠部18の貼合せ方向端部186)がカバーフィルムから剥離フィルムを剥ぎ取ることができる。また、カバーフィルムを容器5へ貼り合せる際、第1位置決め部17が容器5の側面に沿うことで位置決めするので、より確実に、吸着部14に対する容器5の位置を位置決めすることができ、カバーフィルムを容器5上へより容易に移送することができる。
【0035】
さらに、本実施形態のカバーフィルム移送治具1において、移送部11は、移送本体部12と外枠部18とを組み合わせた際の、移送本体部12と外枠部18との貼合せ方向Dに直交する方向への相対変位、および、移送本体部12と外枠部18との貼合せ方向D周りの回転を、抑えることができる防止機構(変位防止機構および回転防止機構)を有することが好ましい。この構成によれば、カバーフィルムを容器5へ貼り合せる際、第1位置決め部17による位置合わせをより容易に行うことができる。
【0036】
《第2の実施形態》
続いて、第2の実施形態に係るカバーフィルム移送治具2を、図面を参照しつつ説明する。なお、第1の実施形態に係るカバーフィルム移送治具1と同じ構成要素については、その説明を省略する。
【0037】
第2の実施形態に係るカバーフィルム移送治具2は、第1の実施形態に係るカバーフィルム移送治具1と比較し、図10に示すように、さらにカバーフィルムに剥離フィルムが貼り合わされた状態の積層フィルムが配置される底面22を有する受け部21をさらに備えている。第2の実施形態のカバーフィルム移送治具2によれば、カバーフィルムを容器5上へ容易に移送することができる。
【0038】
ここで、受け部21は、図8、9に示すように、カバーフィルムに剥離フィルムが貼り合わされた状態の積層フィルムが配置される底面22を有し、さらに、積層フィルムの形状に対応する第1領域R1内に前記積層フィルムが配置されるように位置決め可能な第2位置決め部23を有する。
具体的には、受け部21は、図8に示すように底部と、相対的に長い第1側壁部24と、相対的に短い第2側壁部25とを備え、それによりトレイ状となっている。受け部21は、底部の表面上に積層フィルムが配置される底面22を有している。受け部21の第1側壁部24と第2側壁部25とにより形成される4つ角において、図8~10に示すように、突出部26が形成されており、より具体的には、突出部26は、第1側壁部24に隣接する第1突出面261と、第2側壁部25に隣接する第2突出面262とを有している。また、突出部26は、底部の底面22から各側壁部の上端まで延びている。突出部26は、第1突出面261と第2突出面262とが、受け部21の平面視で(上方から見たときに)、直交している。
【0039】
また、受け部21の底面22には、図9に示すように、その中に積層フィルムの形状に対応する第1領域R1が存在している。具体的には、第1領域R1が矩形状をしているところ、その長手方向が第1側壁部24に沿う方向となっており、第1領域R1の長手方向両側の境界が、底面22の中でも第2側壁部25と交わる箇所に位置している。また、第1領域R1の短手方向両側の境界が第1側壁部24より離間するとともに、突出部26の第2突出面262と交わる箇所に位置している。
そして、第1領域R1の境界が上記のように位置し、積層フィルムが底面22に配置された際に、第2側壁部25の内側面および突出部26の第2突出面262によって、積層フィルムが第1領域R1に配置される。すなわち、図示の例では、第2側壁部25の内側面および突出部26の第2突出面262が、積層フィルムが第1領域R1に配置されるように位置決めする第2位置決め部23となっている。
【0040】
なお、第2の実施形態において、第2位置決め部23は、図示の例には限定されず、例えば、受け部21の底面22に設けた突起としたり、または、底面22のうちの第1領域R1に対応する部分を窪ませる等することができる。
【0041】
また、本実施形態において、受け部21は、図9に示すように、第1領域R1の内側に、第1領域R1に積層フィルムが配置された場合に積層フィルム中のカバーフィルムが存在することとなる第2領域R2を有している。また、受け部21は、移送部11と組み合わせ可能であり、組み合わせた状態を貼合せ方向Dから見たとき、吸着部14が、第2領域R2に位置するように、移送部11を位置決めする第3位置決め部27を有する。
【0042】
具体的には、図10に示す例では、移送部11の中でも外枠部18が、貼合せ方向Dから見たときに(上方から見たときに)、受け部21の第1側壁の内側面と、突出部26の第1突出面261とで規制される領域に位置するように、受け部21と移送部11が組み合わされている。より具体的には、外枠部18が、外枠部18の長手方向が受け部21の第1側壁部24に沿う方向になる姿勢で、受け部21と移送部11が組み合わされている。また、組み合わせた状態で、外枠部18の長手方向の側面部184と受け部21の第1側壁部24とが隣り合い、外枠部18の短手方向の側面部185と受け部21の突出部26(第1突出面261)と隣り合うようになっている。
そして、図示の例では、移送部11と受け部21とが上記のように組み合わされることにより、移送部11の吸着部14が第2領域R2に位置する。具体的には、図示の例では、組み合わされることにより、受け部21に対する移送部11の外枠部18の姿勢が規制され、それに伴って、移送本体部12の吸着部14の位置を定めることができる。
【0043】
したがって、図示の例では、第3位置決め部27は、受け部21の第1側壁の内側面と、突出部26の第1突出面261とにより、移送部11を位置決めしており、位置決めした結果、組み合わせた状態を貼合せ方向Dから見たとき、吸着部14を、第2領域R2に位置させることができる。
なお、第2の実施形態において、第3位置決め部27は、図示の例には限定されず、例えば、受け部21の底面22または側壁部24、25の内側面に設けた突起等することができる。
また、第3位置決め部27は、受け部21と移送部11とを組み合わせる際、吸着部14に対する第2領域R2の姿勢が特定の姿勢となるように移送部14を位置決めするものだけではなく、使用者が吸着部14に対する第2領域R2の姿勢を特定の姿勢にしやすくするためのもの(位置合わせのガイドや印)も含むことができる。
【0044】
ところで、本実施形態において、受け部21の材料は特に限定されないが、離脱物が少なく、また、カバーフィルム移送治具2を容易に滅菌する観点からは、全体として、樹脂製であることが好ましい。
また、カバーフィルムが確実に移送できているか視認しやすくする観点からは、移送部11は透明な樹脂が用いられていることが好ましい。
さらに、本実施形態において、受け部21の構造、形状、寸法等は、カバーフィルム、容器5、および、カバーフィルムに貼り合わせする剥離フィルムの形状、寸法等によって、任意に変更することができる
【0045】
ここで、第2の実施形態のカバーフィルム移送治具2を用いたカバーフィルムの移送方法について説明する。
まず、カバーフィルムに剥離フィルムが貼り合わされた状態の積層フィルムを、受け部21の底面22のうちの第1領域R1に、剥離フィルムが下方になるように載置する。この際、第2位置決め部23を利用する。
次いで、受け部21に対して、積層フィルムの上方より(貼合せ方向Dから)、移送部11を組み合わせ、また、吸着部14を貼合せ方向Dに移動し、吸着部14の平面部13部とカバーフィルムとを接触させる。このカバーフィルム移送治具2を近づける際、第3位置決め部27を利用して受け部21と移送部11を組み合わせる。また、吸気部15が吸入可能な状態にする。
続いて、吸着部14の平面部13に接触させた後、吸気部15で吸引して当該平面部13に積層フィルム(カバーフィルム)を吸着させる。積層フィルムのカバーフィルムに粘着性があれば、当該吸引力とともにカバーフィルムの粘着力により吸着部14に貼り付く(吸着する)。
このように吸着部14にカバーフィルムが貼り付いている状態で、カバーフィルムに貼り合わされている剥離フィルムを剥ぎ取る。
そして、カバーフィルム移送治具2を、被着体である容器5上に移動させ、カバーフィルム移送治具2を、第1位置決め部17により位置決めしつつ、容器5上に配置する。具体的には、カバーフィルム移送治具2の把持部16を把持しつつ、吸着部14が、貼合せ方向Dから見たとき、容器5の位置が重なり合うように第1位置決め部17により位置決めして、吸着部14を容器5上に配置する。また、吸着部14が排気も可能である場合には、吸着部14を容器5上に配置した際、吸着部14より排気することにより、より確実にカバーフィルムを貼り合わせすることができる。
【0046】
なお、上述の第1の実施形態ように、本実施形態のカバーフィルム移送治具2は、外枠部18の貼合せ方向端部186が、第1位置決め部17を有するとともに、移送本体部12を外枠部18に対して貼合せ方向逆側に相対変位させた状態で、外枠部18の貼合せ方向端部186が吸着部14の貼合せ方向端部よりも、貼合せ方向側に位置し、さらに、カバーフィルムを容器5へ貼り合せる際、第1位置決め部17が容器5の側面に沿うことで位置決めすることができる。そして、カバーフィルムの移送方法において、この場合、吸着部14にカバーフィルムを吸着した状態を貼合せ方向Dから見て、第1位置決め部17が、カバーフィルムの外側であって剥離フィルムの内側に位置することとなる。したがって、吸着部14にカバーフィルムが貼り付いた後、移送部11を持ち上げると、外枠部18の貼合せ方向端部186が吸着部14の貼合せ方向端部よりも、貼合せ方向側に位置して、第1位置決め部17(外枠部18の貼合せ方向端部186)がカバーフィルムから剥離フィルムを剥ぎ取ることができる。
【0047】
ここで、第2の実施形態による、上記の第1の実施形態に比較した作用効果を以下説明する。
本実施形態のカバーフィルム移送治具2は、受け部21を備えることにより、カバーフィルムを吸着部14に対して適切な位置により簡易に吸着させることができ、それゆえに、容器5の表面にカバーフィルムをより容易に貼り付けることができる。具体的には、本実施形態のカバーフィルム移送治具2によれば、剥離フィルムを貼り付けた状態のカバーフィルムを、受け部21の第1領域R1に第2位置決め部23により適切に配置することができるので、受け部21内においてカバーフィルムを所定の位置に配置することができる。そして、受け部21の第3位置決め部27は、受け部21と移送部11とを組み合わせたときに、吸着部14がカバーフィルムが位置することとなる第2領域R2に位置するように、移送部11を位置決めするので、受け部21と移送部11とを組み合わせることで、第2位置決め部23により位置決めされた積層フィルム中のカバーフィルムに対して、吸着部14を所定の位置に配置させることができる。したがって、容器5の表面にカバーフィルムを貼り付ける際には、移送部11が有する第1位置決め部17によって、吸着部14に対する容器5の位置を所定の位置に配置することができるので、カバーフィルムの吸着部14への吸着および吸着部14に吸着させているカバーフィルムの容器5の表面への貼り合わせを、それぞれ所期の姿勢で行いやすくすることができる。すなわち、本実施形態のカバーフィルム移送治具2によれば、容器5の表面にカバーフィルムをより容易に貼り付けることができる。
【0048】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明のカバーフィルム移送治具は、上記一例に限定されることは無く、適宜変更を加えることができる。また、本発明のカバーフィルム移送治具の第1~第3位置決め部による位置決め等は、本発明の効果を損なわない程度の位置のずれは許容される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、カバーフィルムを容器上へ容易に移送することが可能なカバーフィルム移送治具を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:カバーフィルム移送治具
11:移送部
12:移送本体部
13:平面部
131:孔
14:吸着部
141:空洞部
15:吸気部
151:ポンプ
152:押ボタン
16:把持部
17:第1位置決め部
18:外枠部
186:外枠部の貼合せ方向端部
181:挿通口
182:蓋面部
183:側面部
184:外枠部の長手方向の側面部
185:外枠部の短手方向の側面部
2:カバーフィルム移送治具
21:受け部
22:底面
23:第2位置決め部
24:第1側壁部
25:第2側壁部
26:突出部
261:第1突出面
262:第2突出面
27:第3位置決め部
3:カバーフィルム
4:剥離フィルム
5:容器
D:貼合せ方向
R1:第1領域
R2:第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11