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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】コンデンサモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01G 2/02 20060101AFI20230307BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20230307BHJP
   H01G 4/224 20060101ALI20230307BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20230307BHJP
   H01R 13/66 20060101ALI20230307BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
H01G2/02 101E
H01G4/228 S
H01G4/224 200
H01G4/32 301F
H01G4/32 540
H01G4/32 531
H01R13/66
H01G4/38 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019063649
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020126991
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019015578
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藁科 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】富田 幸光
(72)【発明者】
【氏名】松井 宏将
(72)【発明者】
【氏名】三浦 寿久
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-269101(JP,A)
【文献】特開2002-124431(JP,A)
【文献】特開2012-54468(JP,A)
【文献】特開2014-207427(JP,A)
【文献】特開2018-170410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/02
H01G 4/228
H01G 4/224
H01G 4/32
H01R 13/66
H01G 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに収容されているコンデンサ素子と、
前記ケース内で前記コンデンサ素子の周囲に充填されている樹脂と、
前記コンデンサ素子と導通している導通部材と、
前記導通部材に導通している端子ピンと、
基板を前記樹脂から露出した状態で保持する保持板と、を備え、
前記基板が前記保持板の上に載置されたときに、前記端子ピンが前記基板に形成された接続孔に挿入され、前記導通部材が前記基板と電気的に接続される、
コンデンサモジュール。
【請求項2】
ケースと、
前記ケースに収容されているコンデンサ素子と、
前記ケース内で前記コンデンサ素子の周囲に充填されている樹脂と、
前記コンデンサ素子と導通している導通部材と、
基板を前記樹脂から露出した状態で保持する保持板と、を備えており、
前記導通部材は、ピン状に加工された端子ピンを含み、
前記基板が前記保持板の上に載置されたときに、前記端子ピンが前記基板に形成された接続孔に挿入され、前記導通部材が前記基板と電気的に接続される、コンデンサモジュール。
【請求項3】
前記保持板には、前記基板が前記保持板に保持された状態において前記接続孔と整合し、前記端子ピンが前記接続孔に挿入される前に貫通する位置決め孔が形成されている、請求項1または請求項2に記載のコンデンサモジュール。
【請求項4】
前記保持板には、前記位置決め孔における前記端子ピンが貫通するときの入口側に、前記端子ピンを前記位置決め孔へ誘導するための誘導部が設けられており、
前記誘導部は、その径が前記位置決め孔の孔径よりも大きな状態から前記位置決め孔に向かうに従って小さくなる形状を有している、請求項3に記載のコンデンサモジュール。
【請求項5】
前記保持板には、前記位置決め孔における前記端子ピンが貫通するときの出口側に貯蔵部が設けられており、
前記貯蔵部は、その径が前記位置決め孔の孔径よりも大きい、請求項3または請求項4に記載のコンデンサモジュール。
【請求項6】
前記保持板に保持された前記基板をさらに備えている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のコンデンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、ケースにコンデンサ素子が収容されているコンデンサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ケースにコンデンサ素子が収容されているコンデンサモジュールが開示されている。コンデンサ素子を収容したケースは保持部材で開口が閉じられており、ケース内部には樹脂(ポッティング材)が充填されている。保持部材のおもて側には放電抵抗を備えた基板が取り付けられている。ケース内部のコンデンサ素子と基板は電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-207427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書は、従来よりも優れたコンデンサモジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するコンデンサモジュールの一態様は、ケースと、ケースに収容されているコンデンサ素子と、ケース内でコンデンサ素子の周囲に充填されている樹脂と、コンデンサ素子と導通している導通部材と、導通部材に導通している端子ピンと、基板を樹脂から露出した状態で保持する保持板と、を備えている。基板が保持板の上に載置されたときに、端子ピンが基板に形成された接続孔に挿入され、導通部材が基板と電気的に接続される。
【0006】
本明細書が開示するコンデンサモジュールの別の態様は、ケースと、ケースに収容されているコンデンサ素子と、ケース内でコンデンサ素子の周囲に充填されている樹脂と、コンデンサ素子と導通している導通部材と、基板を樹脂から露出した状態で保持する保持板と、を備えている。導通部材は、ピン状に加工された端子ピンを含んでいる。基板が保持板の上に載置されたときに、端子ピンが基板に形成された接続孔に挿入され、導通部材が前記基板と電気的に接続される。端子ピンは、導通部材と別部品であってよいし、導通部材と一体であってもよい。
【0007】
上記態様によれば、基板が保持板の上に載置されたときに、端子ピンが基板に形成された接続孔に挿入され、導通部材が前記基板と電気的に接続される。この構造は、コンデンサモジュールの組み立て性に優れている。
【0008】
また、ポッティング材と保持板の状態を確認した後に保持板に基板を取り付けることができる。基板を取り付ける前にポッティング材が保持板の上まで進出していた場合には、そのような半完成品は製造ラインから除去するか、あるいは、保持板の上のポッティング材を除去してから基板を取り付けることによって、基板にポッティング材が付着したコンデンサモジュールが完成品として使われることを防止することができる。
【0009】
保持板には、基板が保持板に保持された状態において接続孔と整合し、端子ピンが接続孔に挿入される前に貫通する位置決め孔が形成されていてもよい。位置決め孔によって端子ピンの位置が正確に定まるので、端子ピンが確実に基板の接続孔に挿通される。
【0010】
保持板には、位置決め孔における端子ピンが貫通するときの入口側に、端子ピンを位置決め孔へ誘導するための誘導部が設けられていてよい。誘導部は、その径が位置決め孔の孔径よりも大きな状態から位置決め孔に向かうに従って小さくなる形状を有している。誘導部を備えることによって、保持板に挿通前の端子ピンの位置と位置決め孔の位置が相違していても、端子ピンが誘導部を通過することで端子ピンの先端の位置を位置決め孔の位置にあわせることができる。端子ピンがスムーズに位置決め孔に挿通される。
【0011】
保持板には、位置決め孔における端子ピンが貫通するときの出口側に貯蔵部が設けられていてもよい。貯蔵部は、その径が位置決め孔の孔径よりも大きい。保持板を取り付ける際に位置決め孔に侵入したポッティング材は、位置決め孔の孔径よりも大きい孔径を有する貯蔵部に貯留する。このことにより、ポッティング材が保持板の表面(基板と対向する面)まで溢れることが防止される。
【0012】
保持板に取り付けられた基板は、保持板に保持される。
【0013】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】コンデンサモジュールの斜視図である。
図2図2のII-II線に沿った拡大断面図である。
図3】基板を取り付ける前のコンデンサモジュールの一部拡大断面図である。
図4】変形例のコンデンサモジュールの一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して実施例のコンデンサモジュール2を説明する。図1に、コンデンサモジュール2の斜視図を示す。図2に、図1のII-II線に沿った断面図を示す。図1の下方には、端子ピン3(後述)の周囲の拡大図が示されており、図2は、端子ピン3を通る断面を示している。コンデンサモジュール2は、電気自動車に搭載されるデバイスである。電気自動車は、バッテリの直流電力を走行用モータの駆動電力に変換する電力変換器を備えており、コンデンサモジュール2は、その電力変換器に組み込まれている。コンデンサモジュール2は、バッテリの直流電力が流れる正極線と負極線の間に接続され、電力変換回路のパワートランジスタが発するリプルを抑制する。
【0016】
コンデンサモジュール2は、ケース10と、コンデンサ素子40と、保持板20と、端子ピン3、4と、正極バスバ5、及び、負極バスバ6を備えている。コンデンサ素子40は、ケース10に収容されている。ケース10の材料には、PPS(ポリフェニレンスルフィド)など、硬質の樹脂が選定される。
【0017】
ケース10の内部にてコンデンサ素子40の周囲には樹脂製のポッティング材7が充填されており、図1ではコンデンサ素子40は見えていない。ポッティング材7は、初期には流動性を有しており、ケース10に充填された後に硬化する。ポッティング材7には、例えば、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂など、耐湿性と絶縁性がともに高い材料が選定される。図2では、ポッティング材7をグレーで示してある。
【0018】
コンデンサ素子40には、金属を蒸着させた樹脂フィルムを巻回したフィルムコンデンサが用いられる。コンデンサ素子40は、フィルムの巻回体41の巻回軸線方向の両端にメタリコン電極42を備えている(図2参照)。なお、図2は、コンデンサモジュール2の部分断面図であり、一方のメタリコン電極42のみが描かれており、他方のメタリコン電極は図示が省略されている。また、図2では、巻回体41の断面を簡略化して模式的に表してある。
【0019】
ケース10の内部(ポッティング材7の内部)にて、メタリコン電極42には、正極バスバ5が接続されている。正極バスバ5の一端は、ポッティング材7の外へと延びている。図示は省略されているが、負極バスバ6も、ケース10の内部(ポッティング材7の内部)で他方のメタリコン電極に接続されているとともに、一端がポッティング材7の外へと延びている。正極バスバ5及び負極バスバ6は、コンデンサ素子40を、バッテリの電力を伝送する正極線及び負極線に電気的に接続するための導通部材である。
【0020】
図2に示されているように、正極バスバ5には、端子ピン3が接合されている。端子ピン3は、ケース10の内部(ポッティング材7の内部)で正極バスバ5に接続されているとともに、ケース10の開口11に向けて延びている。端子ピン3は、正極バスバ5と別体であり、ハンダ等により正極バスバ5に接合される。端子ピン3の先端は、ポッティング材7の外まで延びている。図示は省略しているが、ケース10の内部(ポッティング材7の内部)にて、負極バスバ6にも端子ピン4が接合されており、端子ピン4は、ケース10の開口11へ向けて延びている。端子ピン4もポッティング材7の外まで延びている。
【0021】
ケース10の開口11には保持板20が固定されている。保持板20の一端は、ケース10の内側の開口11の近傍に設けられている溝12に嵌合している(図2参照)。図示は省略されているが、保持板20の他端も、開口11の近傍に設けられている溝に嵌合している。保持板20は、ケース10の開口の近傍に保持され、一方の幅広面がポッティング材7に接している。図2に示されているように、保持板20は、厚み方向の一部がポッティング材7に埋まっている。ただし、保持板20の上面は、ポッティング材7から露出している。保持板20は、その上に基板30を保持する部材である。
【0022】
保持板20に保持される基板30には、多数の放電抵抗35が取り付けられている。多数の放電抵抗35は、基板30の表面に配置された配線パターン36によって直列に接続されている。多数の放電抵抗35の直列接続の一方の端が、配線パターン36を介して端子ピン3に接続されている。図示は省略されているが、直列接続の他方の端は、端子ピン4に接続されている。すなわち、多数の放電抵抗35の直列接続は、コンデンサ素子40に対して並列に接続される。放電抵抗35は、コンデンサ素子40がバッテリから切り離された後、コンデンサ素子40の電荷を除去するために備えられている。例えば、コンデンサモジュール2が電気自動車の電力変換器に用いられる場合、電気自動車が走行中は、コンデンサ素子40は常に満充電の状態にある。放電抵抗35は、電気自動車のメインスイッチがオフされた後に、コンデンサ素子40から電荷を除去する。
【0023】
基板30は、ポッティング材7の外に位置するように保持される。別言すれば、基板30は、コンデンサモジュール2の外側に露出するように保持板20に保持される。さらに別言すれば、基板30は、コンデンサモジュール2において外気に露出するように保持板20に保持される。先に述べたように、基板30には多数の放電抵抗35が取り付けられている。放電抵抗35は、通電されると発熱する。基板30を外気に露出するように取り付けることで、放電抵抗35の熱を外気へ放出することができる。
【0024】
図2に示されているように、コンデンサ素子40の上を正極バスバ5が通っており、ポッティング材7の中で正極バスバ5に接続されている端子ピン3が、ケース10の開口11に向けて延びている。ポッティング材7の表面に保持板20が接しており、その一部はポッティング材7に埋設されている。別言すれば、正極バスバ5の上方に保持板20が配置されており、保持板20の上に基板30が配置されている。なお、本明細書では、ケース10の開口11が向いている側を「上」と定義している。これは、流動性を有する初期ポッティング材を注入する際に開口11を上に向けるからである。図中の座標系の+Z方向が「上」に対応する。ただし、ポッティング材が硬化した後、コンデンサモジュール2が電力変換器に組み込まれたときには、開口11が下あるいは水平方向を向くこともあり得る。
【0025】
保持板20には、端子ピン3が通る貫通孔21が設けられており、基板30には、端子ピン3が通る接続孔31が設けられている。基板30の上の配線パターン36は接続孔31の周囲まで延びており、端子ピン3と配線パターン36は、接続孔31の周囲にて、ハンダ37によって電気的に物理的に接続されている。図1の下方の拡大図では、ハンダ材の図示は省略されている。
【0026】
図3に、基板30を取り付ける前のコンデンサモジュール2の拡大断面図を示す。図3の断面は、図2の断面に対応する。図3では、取り付け後の基板30は仮想線で示してある。図2、3に示すように、基板30が保持板20の上に載置されたときに、端子ピン3が基板30に形成された接続孔31に挿入され、端子ピン3がハンダ37で接続孔31に接合されることで、正極バスバ5が基板30と電気的に接続される。
【0027】
保持板20は樹脂で作られている。具体的には保持板20も、PPSなどの硬質樹脂で作られている。端子ピン3が通過する保持板20の貫通孔21は、保持板20の厚み方向で3個の部位に分かれている。貫通孔21は、コンデンサ素子40の側に設けられている誘導部21aと、基板30の側に設けられている貯蔵部21cと、誘導部21aと貯蔵部21cの間に設けられている位置決め孔21bで構成される。貯蔵部21cと位置決め孔21bは、円筒形の空洞である。誘導部21aは、コンデンサ素子40の側から位置決め孔21bに向かって先細りになっている空洞である。保持板20をケース10に取り付ける際、端子ピン3は誘導部21aの側から貫通孔21に挿通される。誘導部21aの先細り形状は、端子ピン3を円滑に位置決め孔21bに通すのに役立つ。
【0028】
誘導部21aは、位置決め孔21bとの境界で直径が最も小さくなっている。誘導部21aの直径は、保持板20の厚み方向で変化しているが、その平均直径は、位置決め孔21bの直径よりも大きい。
【0029】
位置決め孔21b(貫通孔21)は、その位置が、基板30が保持板20に保持された状態において接続孔31の位置と整合する。別言すれば、基板30が保持板20に保持された状態において、位置決め孔21b(貫通孔21)と接続孔31が重なる。基板30を保持板20に取り付ける際、端子ピン3は、接続孔31に挿入される前に位置決め孔21b(貫通孔21)を貫通する。
【0030】
誘導部21aは、位置決め孔21bにおける端子ピン3が貫通するときの入口側(ポッティング材7の側)に設けられている。誘導部21aは、端子ピン3を位置決め孔21bへ誘導する。誘導部21aは、その径が位置決め孔21bの孔径よりも大きな状態から位置決め孔21bに向かうに従って小さくなる形状を有している。
【0031】
貯蔵部21cは、位置決め孔21bにおける端子ピン3が貫通するときの出口側(基板20の側)に設けられている。貯蔵部21cの直径も、位置決め孔21bの直径よりも大きくなっている。図2に示されているように、ポッティング材7は、貯蔵部21cに達している。別言すれば、ケース10は、保持板20の貫通孔21の位置決め孔21bより上までポッティング材7で充填されている。ただし、ポッティング材7は、保持板20の上面に達していない。すなわち、ケース10は、貫通孔21の位置決め孔21bの上端と保持板20の上面との間までポッティング材7で充填されている。図2から明らかなとおり、ポッティング材7が保持板20の上面に達してしまうと、基板30の接続孔31にもポッティング材7が侵入してしまうおそれがある。基板30の接続孔31にまでポッティング材7が侵入してしまうと、端子ピン3と基板30(配線パターン36)との接合に影響がおよぶ。ポッティング材7が保持板20の上面に達していないので、ポッティング材7が端子ピン3の接合に影響を与えることがない。
【0032】
位置決め孔21bの直径が小さいと、流動性を有しているポッティング材7が保持板20に触れたとき、ポッティング材7が位置決め孔21bを急速に流れ、ポッティング材7が保持板20の上面へ流出するおそれがある。位置決め孔21bの基板30の側に直径の大きい貯蔵部21cを設けることで、ポッティング材7の通過速度が緩和され、保持板20の上面への流出が防げる。なお、貯蔵部21cの直径と深さには、端子ピン3を基板30に接合するハンダ37が拡がる範囲よりも大きい値が設定される。ハンダ37が基板30の裏側へ拡がったときに、ハンダ37が貯蔵部21cの内面や底面に干渉しないようにするためである。
【0033】
一方、貯蔵部21cや誘導部21aよりも小径の位置決め孔21bを設けることで、貫通孔21の中心に対する端子ピン3の位置のばらつきが小さくなる。このことは、端子ピン3を基板30の接続孔31に通し易くなるといる利点を与える。また、位置決め孔21bでは、端子ピン3の周囲で比較的に柔軟なポッティング材7の厚みが小さくなる。このことによって、コンデンサモジュール2の完成後に端子ピン3が安定する。なお、端子ピン3と位置決め孔21bとの間の隙間(クリアランス)は、0.1[mm]程度が好ましい。
【0034】
図示と説明は省略するが、負極バスバ6と接続されている端子ピン4も、保持板20に設けられた別の貫通孔を通過しており、その貫通孔も、上記した貫通孔21と同じ構造を有している。
【0035】
(変形例)図4に、変形例のコンデンサモジュール2aの拡大断面図を示す。図4は、図2の断面図に対応する。コンデンサモジュール2aは、正極バスバ105と端子ピン103が実施例のコンデンサモジュール2の正極バスバ5と端子ピン3と相違する。その他の部品は実施例のコンデンサモジュール2の部品と同じであり、同じ符号を付してある。変形例のコンデンサモジュール2aの部品のうち、実施例のコンデンサモジュール2の部品と同じものについては説明を省略する。
【0036】
端子ピン103は、正極バスバ105に一体に作られている。端子ピン103は、プレス加工などにより、金属板から正極バスバ105が作られるときに同時に一体に作られる。端子ピン103は、ピン状に加工されている。
【0037】
実施例のコンデンサモジュール2、2aのいくつかの利点について説明する。
【0038】
基板30が保持板20の上に載置されたときに、端子ピン3が基板30に形成された接続孔31に挿入され、正極バスバ5が基板30と電気的に接続される。端子ピン3は、正極バスバ5と別部品であってよいし、正極バスバ105の一部であってもよい。
【0039】
上記態様によれば、基板30が保持板20の上に載置されたときに、端子ピン3が基板30に形成された接続孔31に挿入され、正極バスバ5が基板30と電気的に接続される。この構造は、コンデンサモジュール2の組み立て性に優れている。
【0040】
また、ポッティング材7と保持板20の状態を確認した後に保持板20に基板30を取り付けることができる。基板30を取り付ける前にポッティング材7が保持板20の上まで進出していた場合には、そのような半完成品は製造ラインから除去するか、あるいは、保持板20の上のポッティング材を除去してから基板30を取り付けることによって、基板にポッティング材が付着したコンデンサモジュールが完成品として使われることを防止することができる。
【0041】
保持板20には、基板30が保持板20に保持された状態において接続孔31と整合し、端子ピン3が接続孔31に挿入される前に貫通する貫通孔21(位置決め孔21b)が形成されている。位置決め孔21bによって端子ピン3の位置が正確に定まるので、端子ピン3が確実に基板20の接続孔21に挿通される。
【0042】
保持板20には、位置決め孔21bにおける端子ピン3が貫通するときの入口側に、端子ピン3を位置決め孔21bへ誘導するための誘導部21aが設けられている。誘導部21aは、その径が位置決め孔21bの孔径よりも大きな状態から位置決め孔21bに向かうに従って小さくなる形状を有している。誘導部21aを備えることによって、保持板20に挿通前の端子ピン3の位置と位置決め孔21bの位置が相違していても、端子ピン3が誘導部21aを通過することで端子ピン3の先端の位置を位置決め孔21bの位置にあわせることができる。端子ピン3がスムーズに位置決め孔21bに挿通される。
【0043】
保持板20には、位置決め孔21bにおける端子ピン3が貫通するときの出口側に貯蔵部21cが設けられていてもよい。貯蔵部21cは、その径が位置決め孔21bの孔径よりも大きい。保持板20を取り付ける際に位置決め孔21bに侵入したポッティング材は、位置決め孔21bの孔径よりも大きい孔径を有する貯蔵部21cに貯留する。このことにより、ポッティング材が保持板20の表面(基板30と対向する面)まで溢れることが防止される。
【0044】
従来のコンデンサモジュールには次の課題もあった。コンデンサモジュールでは、コンデンサ素子と基板を接続する接続部品(例えば端子ピン)が保持部材を通ることになる。保持部材には接続部品が通る貫通孔が必要になる。ポッティング材は当初は流動性を有しているので、ケースにコンデンサ素子と接続部品を収容し、保持部材を取り付けた後にポッティング材を注入すると(あるいは、ポッティング材が硬化する前に保持部材をポッティング材に押し付けると)、保持部材の貫通孔を通じてポッティング材が保持部材のおもて側へ流出するおそれがある。ポッティング材が保持部材のおもて側に流出すると、接続部品と基板との接合に支障を生じるおそれがある。ポッティング材が硬化する前に基板を取り付けてしまうと、接続部品と基板の接合予定箇所にポッティング材が付着してしまう。実施例の技術は、ケースにコンデンサ素子が収容されているとともに基板が取り付けられている保持部材より下方でケースに樹脂(ポッティング材)が充填されているコンデンサモジュールに関し、保持部材のおもて側に樹脂が流出しない構造を提供する。
【0045】
実施例のコンデンサモジュールは、ケースと、コンデンサ素子と、導通部材と、端子ピンと、保持板と、基板を備えている。コンデンサ素子はケースに収容されている。ケース内でコンデンサ素子の周囲には樹脂(ポッティング材)が充填されている。導通部材は、樹脂の中でコンデンサ素子と導通しているとともに、樹脂の外へ延びている。端子ピンは、樹脂の中で導通部材に導通しているとともに樹脂の外へ延びている。保持板は、樹脂の表面に接している。保持板には、端子ピンが通る貫通孔が設けられている。基板は、保持板の上に取り付けられている。基板には、端子ピンが通る接続孔が設けられている。基板の接続孔の周囲にて端子ピンが接合されている。保持板の貫通孔は、コンデンサ素子の側に設けられている第1直径の誘導部と、基板側に設けられている第2直径の貯蔵部と、誘導部と貯留部の間に設けられており、第1直径と第2直径のいずれよりも短い第3直径の位置決め孔(中間部)を備えている。そして、ケースは、位置決め孔(中間部)よりも上まで樹脂が充填されている。
【0046】
実施例のコンデンサモジュールによれば、保持板を取り付けてから流動性を有する樹脂(ポッティング材)を充填すると、樹脂は保持板の貫通孔の誘導部と位置決め孔(中間部)を通り貯蔵部に達する。また、ポッティング材を先に充填する場合であっても、ポッティング材の表面に保持板を押し付けると樹脂は誘導部と位置決め孔(中間部)を通り貯蔵部に達する。貯蔵部の直径(第2直径)は位置決め孔(中間部)の直径(第3直径)よりも大きいので、樹脂は貯蔵部に溜まり、保持板のおもて面までは流出しない。また、端子ピンは直径の小さい位置決め孔(中間部)を通ることで、保持板の貫通孔の中心に対する位置のばらつきが小さくなる。このことは、端子ピンを基板の接続孔に通し易くする。貫通孔の上記の構造により、端子ピンを基板に取り付けることが容易になる。
【0047】
なお、誘導部、貯留部、位置決め孔(中間部)は円筒形の孔でなくともよい。誘導部、貯蔵部、位置決め孔(中間部)は、楕円孔や先細り形状であってもよい。孔が円筒形でない場合は、平均直径で他の部位の直径と比較し、第1直径>第3直径<第2直径が成立していればよい。
【0048】
誘導部は、導通部材側の開口から位置決め孔(中間部)に向けて先細り形状を有しているとよい。保持板の位置決め孔(中間部)へ端子ピンを挿入し易くなる。
【0049】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。貫通孔21の位置決め孔21b、貯蔵部21cは、円筒形の空間に限られない。位置決め孔21b、貯蔵部21c(及び誘導部21a)は、断面が楕円や多角形であったり、深さ方向に断面積が変化する形状であってもよい。そのような場合でも、位置決め孔21bの平均直径が、誘導部21aの平均直径よりも小さく、かつ、貯蔵部21cの平均直径よりも小さければよい。
【0050】
先細り形状を有している誘導部21aの深さ方向の平均直径が第1直径の一例である。貯留部21cの直径が第2直径の一例である。中間部21bの直径が第3直径の一例である。ポッティング材7が、ケース10に充填される樹脂の一例である。
【0051】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0052】
2:コンデンサモジュール 3、4、103:端子ピン 5、105:正極バスバ 6:負極バスバ 7:ポッティング材 10:ケース 11:開口 12:溝 20:保持板 21:貫通孔 21a:誘導部 21b:位置決め孔(中間部) 21c:貯蔵部 30:基板 31:接続孔 35:放電抵抗 36:配線パターン 37:ハンダ 40:コンデンサ素子 41:巻回体 42:メタリコン電極
図1
図2
図3
図4