(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ブームスプレーヤ
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20230307BHJP
B05B 17/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A01M7/00 C
B05B17/00 101
(21)【出願番号】P 2019101575
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】小山内 悠平
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143768(JP,A)
【文献】特開2008-200005(JP,A)
【文献】特開2014-093977(JP,A)
【文献】特開2017-000082(JP,A)
【文献】特開2012-100579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
B05B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)と、前記車両(1)に設けられ車両左右方向に延びる水平制御フレーム(18)と、前記水平制御フレーム(18)に対して車両左右方向に振り子状に揺動可能に支持され、重力により水平となるセンターブーム(19)と、を備えたブームスプレーヤ(100)において、
前記水平制御フレーム(18)に設けられ、車両左右方向両側にそれぞれ配置されたセンターブーム押圧ロック部材(26)を備え、
前記センターブーム押圧ロック部材(26)に接続されたプルワイヤ(29)が引っ張られることによる前記センターブーム押圧ロック部材(26)のそれぞれの前記センターブーム(19)に対する均等な押圧により、前記センターブーム(19)が車両左右方向と平行となった状態で、前記センターブーム(19)が固定されることを特徴とするブームスプレーヤ(100)。
【請求項2】
前記センターブーム押圧ロック部材(26)は、
その上部が、車両前後方向に軸心を有し前記水平制御フレーム(18)に対し回動可能に支持され、
その下部に、車両前後方向に軸心を有し前記センターブーム(19)を押圧するためのローラ(27)を備えることを特徴とする請求項1記載のブームスプレーヤ(100)。
【請求項3】
前記センターブーム押圧ロック部材(26)の前記上部と前記下部との間の中間部(28)が、
前記プルワイヤ(29)を介して運転席レバー(30)に接続されており、
前記運転席レバー(30)の操作による前記プルワイヤ(29)の引っ張りにより、前記センターブーム押圧ロック部材(26)が前記センターブーム(19)を押圧することを特徴とする請求項2記載のブームスプレーヤ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームスプレーヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液散布を行うブームスプレーヤとして、以下の特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載のブームスプレーヤでは、車両前部に4節リンク装置を備え、4節リンク装置の前側リンクに前部フレームが連結されている。前部フレームの車両左右方向両側には、上下方向に延びる縦部材がそれぞれ固定され、車両左右方向一方側の縦部材の上部には、リンクロッドの一端が回動可能に連結されている。また、車両左右方向他方側の縦部材の上部には、傾斜シリンダの固定子が回動可能に連結されている。車両前方には車両左右方向に延びるセンターブームが配置され、リンクロッドの他端は、センターブームの中央部の車両左右方向一方側に回動可能に連結されている。傾斜シリンダの移動子は、センターブームの中央部の車両左右方向他方側に回動可能に連結され、リンクロッド及び傾斜シリンダにより車両前後方向視においてハの字が形成されている。すなわち、上辺を構成する前部フレームの上部、斜辺を構成するリンクロッド及び傾斜シリンダ、下辺を構成するセンターブームにより4辺(4節)リンク構造が形成され、センターブームが前部フレームに対して車両左右方向に振り子状に揺動可能に支持されており、4辺リンク構造による水平制御によって、センターブームが重力により水平となるようになっている。この水平状態では、傾斜シリンダの移動子は縮退した位置に位置している。なお、水平とは、地球の重力の方向と直角に交わる方向のことである。
【0003】
このようなブームスプレーヤにあっては、平地(水平圃場)を走行し作業する場合には、車両は傾かず水平で、センターブームは、車両左右方向と平行となり、水平となっている。一方、圃場が傾斜している傾斜圃場の場合には、車両は傾く一方で、センターブームは、重力による水平制御により車両左右方向に揺動し水平となる。この場合には、傾斜シリンダの移動子が伸長され、センターブームは、傾いている車両左右方向と平行となる。この状態で、車両左右方向両側に配置され、センターブームに固定子が固定されたロックシリンダの移動子がそれぞれ伸長し、前部フレームの左右の縦部材にそれぞれ当接することにより、センターブームが揺動不能となり、固定(ロック)される。すなわち、傾斜圃場の場合には、傾斜シリンダの移動子の伸長により、センターブームが、傾いている車両の車両左右方向と平行になると共に傾斜圃場と平行となり、振り子によるセンターブームの水平制御が停止されることにより、センターブームが農地や作物に接触しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、引用文献1のブームスプレーヤにおいては、センターブームの水平制御を停止し、センターブームが車両左右方向と平行な状態に固定するのに、傾斜シリンダ及びロックシリンダが必要であり、部品点数の削減及び重量の軽量化が求められている。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、センターブームの水平制御を停止しセンターブームを傾斜、固定するために従来用いられていた傾斜シリンダ及びロックシリンダを不要にでき、部品点数を削減できると共に重量を軽量化できるブームスプレーヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両(1)と、車両(1)に設けられ車両左右方向に延びる水平制御フレーム(18)と、水平制御フレーム(18)に対して車両左右方向に振り子状に揺動可能に支持され、重力により水平となるセンターブーム(19)と、を備えたブームスプレーヤ(100)において、水平制御フレーム(18)に設けられ、車両左右方向両側にそれぞれ配置されたセンターブーム押圧ロック部材(26)を備え、センターブーム押圧ロック部材(26)のそれぞれのセンターブーム(19)に対する均等な押圧により、センターブーム(19)が車両左右方向と平行となった状態で、センターブーム(19)が固定されることを特徴としている。
【0008】
このようなブームスプレーヤ(100)によれば、ブームスプレーヤ(100)が例えば傾斜圃場等を走行・作業する際に、水平に対して傾く車両(1)及び水平制御フレーム(18)に対し水平となろうとするセンターブーム(19)は、水平制御フレーム(18)に設けられ車両左右方向両側にそれぞれ配置されたセンターブーム押圧ロック部材(26)の均等な押圧により車両左右方向と平行となった状態で固定される。このため、センターブーム(19)の水平制御を停止しセンターブーム(19)を傾斜、固定するために従来用いられていた傾斜シリンダ及びロックシリンダが不要となり、部品点数を削減できると共に重量を軽量化できる。
【0009】
ここで、センターブーム押圧ロック部材(26)は、その上部が、車両前後方向に軸心を有し水平制御フレーム(18)に対し回動可能に支持され、その下部に、車両前後方向に軸心を有しセンターブーム(19)を押圧するためのローラ(27)を備えていると、センターブーム(19)が傾きながら車両左右方向と平行となる場合、ローラ(27)が回転しながらセンターブーム(19)を押圧するため、円滑にセンターブーム(19)を押圧できる。
【0010】
また、センターブーム押圧ロック部材(26)の上部と下部との間の中間部(28)が、プルワイヤ(29)を介して運転席レバー(30)に接続されており、運転席レバー(30)の操作によるプルワイヤ(29)の引っ張りにより、センターブーム押圧ロック部材(26)がセンターブーム(19)を押圧する構成であると、振り子によるセンターブーム(19)の水平制御の停止を、運転席レバー(30)の操作により容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、センターブームの水平制御を停止しセンターブームを傾斜、固定するために従来用いられていた傾斜シリンダ及びロックシリンダを不要にでき、部品点数を削減できると共に重量を軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るブームスプレーヤを前方斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】
図1中の水平制御装置及びロック装置を示す概略斜視図である。
【
図3】
図2中の水平制御装置、ロック装置を構成するローラを含むセンターブーム押圧ロック部材及びプルワイヤを拡大して示す図である。
【
図4】
図3中のローラを含むセンターブーム押圧ロック部材及びプルワイヤを拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るブームスプレーヤの好適な実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るブームスプレーヤを前方斜め上方から見た斜視図、
図2は、
図1中の水平制御装置及びロック装置を示す概略斜視図、
図3は、水平制御装置、ロック装置を構成するローラを含むセンターブーム押圧ロック部材及びプルワイヤを拡大して示す図、
図4は、ローラを含むセンターブーム押圧ロック部材及びプルワイヤを拡大して示す図である。本実施形態のブームスプレーヤは、例えば圃場において走行しながら例えば作物に薬液散布を行うものである。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」は、ブームスプレーヤを基準とした方向とする。
【0014】
図1に示すように、ブームスプレーヤ100は自走式であり、車両1と、車両1から薬液を散布するためのブーム装置2と、を備えている。
【0015】
車両1の前部には、作業者が着座する空間を形成しハンドル3による運転操作や薬液散布操作や、後述のレバー操作等を行うための運転席4が設けられている。運転席4は屋根5により上方から覆われている。屋根5は、車両1の車両左右方向両側で運転席4の側方からそれぞれ立設された屋根柱6により支持されている。ハンドル3の前方には、粒剤散布装置7が設けられている。粒剤散布装置7は、薬剤としての粒剤を収容する粒剤タンク8を備え、散布口9から粒剤タンク8内の粒剤を前方へ散布する。
【0016】
車両1の後部には、エンジンを収容するエンジンルーム10が設けられている。運転席4とエンジンルーム10との間には、ブーム装置2から散布される薬液を収容する薬液タンク11が搭載されている。薬液タンク11の上部には、車両左右方向に延びるブーム受け12が固定されている。車両1は、一対の前輪13と、一対の後輪14と、を備えている。前輪13、後輪14は、エンジンの駆動により回転する。本実施形態では4輪駆動のため、前輪13及び後輪14が回転するが、前輪駆動、後輪駆動であっても良い。
【0017】
車両1の運転席4より前方には、車両左右方向に対をなす4節リンク機構15が前方に延びるようにそれぞれ配設されている。上記ブーム装置2は、4節リンク機構15を介して車両1に支持されている。この4節リンク機構15が、電動油圧シリンダ(アクチュエータ)16の伸縮動作により作動することによって、4節リンク機構15の上下方向に延びる前側リンク17が上下動する。
【0018】
ブーム装置2は、
図1~
図3に示すように、車両左右方向に延び上記前側リンク17に固定された水平制御フレーム18と、水平制御フレーム18の下方に配設され水平制御フレーム18より車両左右方向に長いセンターブーム19と、水平制御フレーム18とセンターブーム19とを連結する左右一対のリンクロッド20と、センターブーム19の両端に連結された一対のサイドブーム21と、を備えている(
図1参照)。
【0019】
図1に示すように、センターブーム19及びサイドブーム21には、それぞれノズルパイプ22が取り付けられており、各ノズルパイプ22には、薬液噴霧用のノズル23が長手方向に沿って複数設けられている。サイドブーム21は、薬液散布を行うときには、
図1に示す状態からセンターブーム19に対して一直線状となるように広げられる。そして、エンジンの駆動により走行しながら薬液圧送ポンプが駆動され、薬液タンク11の薬液は、センターブーム19及びサイドブーム21のノズルパイプ22を介してノズル23から噴霧される。サイドブーム21は、薬液散布を行わないときには
図1に示すように折り畳まれ、車両1の側方位置において斜め後ろ上がりの状態で格納される。サイドブーム21は、格納された状態では、ブーム受け12の両端に納められている。
【0020】
図3及び
図4に示すように、水平制御フレーム18は、矩形筒状に構成されている。
図2及び
図3に示すように、一対のリンクロッド20は、車両左右方向の中央寄りで、水平制御フレーム18に固定された前側リンク17より車両左右方向内側に配置され、車両前後方向視においてハの字を呈している。リンクロッド20は、その上端部が、水平制御フレーム18の前側及び後側に回動可能に連結され、その下端部が、センターブーム19の前側及び後側に回動可能に連結されている。
【0021】
すなわち、水平制御フレーム18を上辺とし、センターブーム19を下辺とし、一対のリンクロッド20を斜辺とした4節リンク機構の一種である台形リンク24が構成されている。このように水平制御フレーム18にリンクロッド20を介して支持されたセンターブーム19は、車両左右方向に振り子状に揺動可能とされ、重力による水平制御により水平となる。すなわち、台形リンク24によりセンターブーム19を水平とする水平制御装置が構成されている。ここで、水平とは、前述したように、地球の重力の方向と直角に交わる方向のことである。
【0022】
従って、圃場が傾斜している傾斜圃場の場合、車両1は傾く一方で、センターブーム19は、重力により車両左右方向に揺動する水平制御によって水平となる。すなわち、センターブーム19は、車両左右方向とは平行にならない。一方、平地(水平圃場)の場合には、車両1は傾かず、センターブーム19は、車両左右方向と平行となり、水平となる。
【0023】
また、特に本実施形態においては、
図2~
図4に示すように、水平制御フレーム18において前側リンク17より車両左右方向外側の両端部には、軸部25が車両前後方向に貫通し、水平制御フレーム18に回動可能に支持されている。軸部25の両端部には、水平制御フレーム18を車両前後方向から挟むようにしてセンターブーム押圧ロック部材としての平板状のロックプレート26の上部が固定されている。ロックプレート26の下部同士の間には、車両前後方向に軸心を有し車両前後方向に延びるローラ27が配置され、ローラ27の両端側の軸部はロックプレート26をそれぞれ貫通し回動可能に支持されている。ローラ27は、センターブーム19の車両左右方向両側の上面にそれぞれ当接する。
【0024】
車両左右方向両側の前側のロックプレート26の上部と下部との間の中間には、車両前方へ突出する中間部としての突出部28が設けられている。突出部28には、プルワイヤ29が接続され、プルワイヤ29は、運転席4の前横に配置された運転席レバー30に接続されている。(
図2参照)。運転席レバー30の操作によりプルワイヤ29を引っ張ると、ロックプレート26は、軸部25を支点として回動し、ローラ27がセンターブーム19を押圧し、センターブーム19は車両1の車両左右方向と平行となった状態で、その動きが停止し固定される。そして、水平制御装置として機能する台形リンク24、ローラ27を備えたロックプレート26、プルワイヤ29及び運転席レバー30により、センターブーム19の水平制御を停止するロック装置31が構成されている(
図2参照)。
【0025】
このように構成されたブームスプレーヤ100によれば、ブームスプレーヤが、例えば傾斜圃場等を走行・作業する際に、運転手は、運転席レバー30を操作しプルワイヤ29を引っ張る。すると、水平に対して傾く車両1及び水平制御フレーム18に対し水平となろうとするセンターブーム19は、水平制御フレーム18の車両左右方向両側にそれぞれ配置されたロックプレート26により均等に押圧されセンターブーム19が車両左右方向と平行となった状態で固定される。すなわち、ロックプレート26によるセンターブーム19に対する押圧により、振り子によるセンターブーム19の水平制御が強制的に停止され、センターブーム19が車両左右方向と平行とされ固定された状態で、センターブームが農地や作物に接触することなく、傾斜圃場での走行・作業を行うことができる。このため、センターブーム19の水平制御を停止しセンターブーム19を傾斜、固定するために従来用いられていた傾斜シリンダ及びロックシリンダが不要となり、部品点数を削減できると共に重量を軽量化できる。
【0026】
また、センターブーム19が傾きながら車両左右方向と平行となる場合、ローラ27が回転しながらセンターブーム19を押圧するため、円滑にセンターブーム19を押圧できる。
【0027】
また、運転席レバー30の操作によるプルワイヤ29の引っ張りにより、ロックプレート26がセンターブーム19を押圧するため、振り子によるセンターブーム19の水平制御の停止を、運転席レバー30の操作により容易に行うことができる。
【0028】
また、常にセンターブーム19を車両左右方向と平行にできるため、サイドブーム21の格納時に、サイドブーム21がブーム受け12に確実に納まり、外れてしまう虞がない。また、サイドブーム21の格納時に、サイドブーム21を車両1へぶつけて破損させる虞がない。
【0029】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、センターブーム押圧ロック部材を平板状のロックプレート26としているが、棒状の部材や、先端がコの字状を呈してローラを回転可能に支持するロッド等としても良い。
【0030】
また、上記実施形態においては、自走式のブームスプレーヤに対する適用を述べているが、牽引式のブームスプレーヤに対しても適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1…車両、18…水平制御フレーム、19…センターブーム、26…ロックプレート(センターブーム押圧ロック部材)、27…ローラ、28…突出部(中間部)、29…プルワイヤ、30…運転席レバー、100…ブームスプレーヤ。