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  • 特許-セメント用添加剤の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】セメント用添加剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/06 20060101AFI20230307BHJP
   C04B 24/00 20060101ALI20230307BHJP
   C04B 103/22 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
C04B24/06 Z
C04B24/00
C04B103:22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019105928
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020200200
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503044237
【氏名又は名称】株式会社フローリック
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 亮
(72)【発明者】
【氏名】東 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】石井 智大
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-289718(JP,A)
【文献】特開2001-322851(JP,A)
【文献】特開平10-081552(JP,A)
【文献】特開2000-327382(JP,A)
【文献】特開2015-214432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)~(3)を有するセメント用添加剤の製造方法。
工程(1):セメント用凝結遅延剤を、5~50℃の水に対して不溶性又は難溶性の被覆剤で被覆し、被覆体を得る工程。
工程(2):前記被覆体を、水を含みかつ被覆剤を溶解しない洗浄液にて洗浄する工程。
工程(3):洗浄した前記被覆体を乾燥して固形化し、セメント用添加剤を得る工程。
【請求項2】
前記セメント用凝結遅延剤が、固形状物である請求項1に記載のセメント用添加剤の製造方法。
【請求項3】
前記被覆剤が、その溶融温度が60℃以上の有機化合物である請求項1又は2に記載のセメント用添加剤の製造方法。
【請求項4】
前記工程(2)において、洗浄時間が1~30分である請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント用添加剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント用添加剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダムや橋脚など大容量のコンクリート(マスコンクリート)を構築する場合、セメントの水和反応による発熱のため、コンクリートの内部と外部とで温度差が生じ、コンクリートにひび割れが発生することがある。
【0003】
従来、この水和熱の制御方法として、使用材料の冷却、セメントコンクリート打設後のパイプクーリング、フライアッシュ等の混和材の使用、吸熱剤やセメントの水和反応抑制剤等の混和剤の使用が知られている。
【0004】
これら水和熱の制御方法のうち、水和反応抑制剤としては、例えば、微小カプセルに液状の凝結遅延剤を含浸して適当な融点を有するワックスでコーティングした水和熱抑制カプセルが提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-81552号公報
【文献】特開2000-327382号公報
【文献】特開2005-289718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3に開示された水和熱抑制カプセルは、その製造過程からカプセルの外側にも水和熱抑制剤が一部付着している。そのため、水和熱抑制カプセルを用いた場合であっても、水和反応の開始時間を遅らせる場合がある。従って、コンクリート構造物の硬化及び強度発現に時間を要する場合がある。
【0007】
本発明の課題は、水和反応の開始時間(凝結時間)が無添加の場合とほぼ同じであり、水和反応による温度上昇の最高到達温度を低下し得るセメント用添加剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、セメント用凝結遅延剤を被覆化し、洗浄液で洗浄した後、乾燥することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕~〔4〕を提供する。
〔1〕下記工程(1)~(3)を有するセメント用添加剤の製造方法。
工程(1):セメント用凝結遅延剤を、5~50℃の水に対して不溶性又は難溶性の被覆剤で被覆し、被覆体を得る工程。
工程(2):前記被覆体を、水を含む洗浄液にて洗浄する工程。
工程(3):洗浄した前記被覆体を乾燥して固形化し、セメント用添加剤を得る工程。
〔2〕前記セメント用凝結遅延剤が、固形状物である上記〔1〕に記載のセメント用添加剤の製造方法。
〔3〕前記被覆剤が、その溶融温度が60℃以上の有機化合物である上記〔1〕又は〔2〕に記載のセメント用添加剤の製造方法。
〔4〕前記工程(2)において、洗浄時間が1~30分である上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のセメント用添加剤の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水和反応の開始時間(凝結時間)が無添加の場合とほぼ同じであり、水和反応による温度上昇の最高到達温度を低下し得るセメント用添加剤の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、注水からの経過時間と温度上昇の関係を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書中、「AA~BB」との表記は、AA以上BB以下を示すものとする。
【0012】
[1.セメント用添加剤の製造方法]
本発明のセメント用添加剤の製造方法は、下記工程(1)~(3)を有する。
工程(1):セメント用凝結遅延剤を、5~50℃の水に対して不溶性又は難溶性の被覆剤で被覆し、被覆体を得る工程。
工程(2):被覆体を、水を含む洗浄液にて洗浄する工程。
工程(3):洗浄した被覆体を乾燥して固形化し、セメント用添加剤を得る工程。
以下、各工程の詳細を説明する。
【0013】
[1-1.工程(1)]
工程(1)は、セメント用凝結遅延剤を、5~50℃の水に対して不溶性又は難溶性の被覆剤で被覆し、被覆体を得る工程である。セメント用凝結遅延剤を、被覆剤で被覆し、被覆体を得ることで、セメント調製時の水和反応の開始時間(凝結時間)の遅延を抑制し得る。
【0014】
(セメント用凝結遅延剤)
セメント用凝結遅延剤としては、例えば、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム等のグルコン酸塩;リグニンスルホン酸塩、セルロース系誘導体、ポリビニルアルコール、デキストリン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子;クエン酸、2ケトグルタル酸等の水酸基、カルボキシ基、カルボニル基を有する有機酸;グルコース、ソルビトール等の糖類;ケイフッ化物、リン酸塩が挙げられる。
セメント用凝結遅延剤は、固形状物、液状物があり、被覆剤で被覆する観点から固形状物が好ましく、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、セルロース系誘導体、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましく、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウムがさらに好ましい。
【0015】
(被覆剤)
被覆剤は、5~50℃の水に対して不溶性又は難溶性の化合物であり、溶融温度が60℃以上の有機化合物が好ましい。5~50℃の水に対して不溶性又は難溶性の化合物であると、セメントに投入直後は、セメント用凝結遅延剤を内包したままであり、水和反応の開始時間(凝結時間)の遅延を抑制し得る。また、溶融温度が60℃以上の有機化合物であると、水和反応が進行して水和熱によりセメント温度が上昇した際、被覆剤が溶融してセメント用凝結遅延剤を放出し、セメントの温度を低減し得る。なお、溶融温度の上限は、水和反応の最高到達温度以下であればよく、通常80℃以下である。
ここで、「5~50℃の水に対して不溶性又は難溶性」とは、5~50℃の水100mLに対して、1gの被覆剤を浸漬し、1日静置した後、回収して乾燥した被覆剤の質量が、水に浸漬する前の被覆剤の質量と比較して90%以上であることをいう。
【0016】
被覆剤として、より詳細には、ロウ、パラフィンワックス、マイクロワックス、油脂、脂肪酸、脂肪酸エステル、金属石鹸、高級アルコール、熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの中でも、融点の制御が容易な、ロウやパラフィンワックスが好ましい。
【0017】
(被覆方法)
被覆剤で被覆する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法で行い得る。例えば、界面重合法、In-Situ法、不溶化反応法、コアセルベーション法、液中乾燥法、噴霧乾燥法、流動床法、超音波法が挙げられる。より詳細には、予め加温したセメント用凝結遅延剤を、溶融した被覆剤に添加し、ホバートミキサー等で混練しながら徐冷することで行い得る。徐冷後、篩分けにより過大な粒子を除外してもよい。
【0018】
セメント用凝結遅延剤と被覆剤の使用量比(セメント用凝結遅延剤:被覆剤)は、70~95:30~5が好ましい。斯かる範囲であると、セメント用凝結遅延剤を被覆剤に内包した被覆体を調製し得る。
【0019】
[1-2.工程(2)]
工程(2)は、工程(1)で得た被覆体を、水を含む洗浄液にて洗浄する工程である。被覆体を洗浄液にて洗浄することで、被覆体の外部に付着したセメント用凝結遅延剤を洗浄し得る。そのため、被覆体の外部に付着したセメント用凝結遅延剤による水和反応の開始時間(凝結時間)の遅延を抑制し、無添加の場合とほぼ同じ水和反応の開始時間(凝結時間)とし得る。加えて、無添加の場合や従来の水和熱抑制カプセルを配合した場合と比較して、水和反応によるセメント中の最高温度を低減し得る。これは、被覆体の外部にセメント用凝結遅延剤が付着していない場合、被覆体近傍と他の箇所で、水和反応による温度ムラが生じることを抑制し、その結果、セメント全体で均一な温度上昇の抑制を期待し得るからと推察される。さらに、被覆体外部にセメント用凝結遅延剤が付着していない場合、初期の水和反応による凝結遅延が起こらないため、全体が均一に温度上昇して被覆材の溶融温度に達する。そのため、遅延剤の効果が均一に発現し、その結果、水和反応温度を抑制し得ることが期待できる。
一方、従来の水和熱抑制カプセルでは、カプセル表面に付着又はカプセルから一部露出している水和熱抑制剤が、添加直後に水和反応に影響を及ぼし始め、凝結遅延を誘発する懸念がある。また、カプセル近傍と比較して、他の箇所では水和熱により温度が上昇しており、水和熱抑制カプセルが溶解して水和熱抑制剤を放出しても、カプセル近傍ではない箇所の水和熱を抑制するのには不十分である懸念がある。そのため、均一な温度上昇の抑制が得られにくく、硬化後の初期強度が低下する懸念がある。さらに、従来の水和熱抑制カプセルでは、カプセルの付着又は表面に露出している遅延剤が、初期の水和反応に影響して凝結遅延を生じる可能性がある。そのため、硬化体の初期強度低下に影響するため望ましくない。
従って、本発明のセメント用添加剤の製造方法により製造したセメント用添加剤は、被覆体の外部に付着したセメント用凝結抑制剤の作用による水和反応の開始時間(凝結時間)の低下を抑制するとともに、水和反応による温度上昇の最高到達温度を低下し得るという予想し得ない有利な効果を奏する。
【0020】
(洗浄液)
洗浄液は、水を含む洗浄液であればよく、水を主成分とする洗浄液が好ましく、水がより好ましい。水は、水道水、工業用水、イオン交換水等のいずれを用いてもよい。但し、コストや被覆体の外部に付着したセメント用凝結抑制剤を洗浄するという目的に鑑み、工業用水が好ましい。
洗浄液は、被覆剤を溶解しない限り、水以外にも、メタノール、エタノール等の低級アルコール、アセトン等を含んでもよい。この場合、洗浄液中の水の含有量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0021】
(洗浄方法)
洗浄方法は、被覆体の外部に付着したセメント用凝結抑制剤を洗浄することができる限り特に限定されるものではない。例えば、洗浄液を充填した容器の中に被覆体を浸漬して洗浄してもよく、洗浄液をシャワーにして被覆体にかけることで洗浄してもよい。洗浄方法は、工業的に再現性よく被覆体の外部に付着したセメント用凝結抑制剤を洗浄するという点に鑑み、洗浄液を充填した容器の中に被覆体を浸漬する方法が好ましい。この際、洗浄液を撹拌するとともに、洗浄液を流水(給水とともに排水する)してもよい。但し、このような方法で洗浄を行う場合、撹拌のスターラーバーとの接触による被覆体の破損や、被覆体が流水とともに放出されることを防止する観点で、被覆体を網かごの中に入れておくことが好ましい。
【0022】
洗浄時間は、被覆体の外部に付着したセメント用凝結抑制剤を洗浄することができる限り特に限定されるものではない。例えば、洗浄液を充填した容器の中に被覆体を浸漬する方法であれば、10秒~30分が好ましく、1~30分がより好ましい。洗浄時間が10秒~30分であると、被覆体の外部に付着したセメント用凝結抑制剤の洗浄をし得るとともに、過剰量の水の使用によるコスト増加を抑制し得る。
洗浄液の温度は、被覆剤を溶融しない温度であればよく、常温が好ましい。
【0023】
[1-3.工程(3)]
工程(3)は、洗浄した被覆体を乾燥して固形化し、セメント用添加剤を得る工程である。工程(3)で得られたセメント用添加剤は、被覆体の外部にセメント用凝結剤が付着しておらず、本発明の効果を奏する。
【0024】
乾燥方法は、被覆剤が溶解しない限り特に限定されるものではない。例えば、減圧下で乾燥してもよく、空気中で自然乾燥してもよい。
【0025】
[2.水和熱抑制方法]
以下、本発明のセメント用添加剤の製造方法を用いた水和熱抑制方法を説明する。水和熱抑制方法は、少なくともセメントと、水と、を含むセメント材料に、[1.セメント用添加剤]に記載のセメント用添加剤を添加する方法である。水和熱抑制方法は、上記のセメント用添加剤を用いるので、通常のコンクリート配合に適用でき、水和反応の開始時間(凝結時間)が無添加の場合とほぼ同じであり、水和反応による温度上昇の最高到達温度を低下し得、高強度なコンクリートを製造し得る。
【0026】
[2-1.セメント材料]
セメント材料は、少なくともセメントと、水と、を含むものであり、骨材を含むものであってもよい。また、[1.セメント用添加剤]に記載のセメント用添加剤を除く他のセメント用添加剤(以下、「他の混和剤」ともいう)を含むものであってもよい。
セメントとしては、特に限定はない。例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)が挙げられる。セメントには、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体、石膏等が添加されていてもよい。
【0027】
セメント材料に使用できる水は特に限定されず、例えば、上水道水、上水道水以外の水(河川水、湖沼水、井戸水等)、回収水が挙げられる。
【0028】
骨材としては、例えば、砂、砂利、砕石;水砕スラグ;再生骨材等;珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が挙げられる。
【0029】
水和熱抑制方法において、水とセメントの比(水/セメント)(質量比)は特に限定されず、貧配合から富配合まで幅広く使用可能である。単位水量は、好ましくは135~195kg/mであり、より好ましくは145~185kg/mである。使用セメント量は、好ましくは220~1200kg/mであり、より好ましくは270~700kg/mである。水/セメント比(質量比)は、好ましくは0.15~0.7であり、より好ましくは0.25~0.65である。
【0030】
セメント用添加剤の含有割合は、セメントの全量に対して、通常は0.01~0.50質量%であり、好ましくは0.02~0.30質量%であり、より好ましくは0.04~0.20質量%である。この添加量とすることにより、水和反応による温度上昇の最高到達温度を低下し得、高強度なコンクリートを製造し得る。
なお、本明細書中、「セメント全量」とは、セメント(結合材を含む)の質量のみを指し、水、骨材等結合材以外の質量は含まれない。
【0031】
セメント材料の製造方法、運搬方法、打設方法、養生方法、管理方法等について特に制限はなく、通常の方法を採用することができる。
【0032】
他の混和剤としては、例えば、セメント分散剤、水溶性高分子、高分子エマルジョン、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、消泡剤、AE剤、界面活性剤、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、圧送助剤、低チキソトロピー性助剤等の公知のセメント用添加剤が挙げられる。
なお、他の混和剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上の他の混和剤を任意の比率で組み合わせて用いもよい。
【0033】
セメント分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の分散剤が挙げられる。
【0034】
水溶性高分子としては、例えば、ポリアルキレングリコールが挙げられる。より詳細には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリブチレングリコール等が挙げられる。
【0035】
硬化促進剤としては、例えば、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩類が挙げられる。
【0036】
増粘剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、公知のセルロースナノファイバー、公知のセルロースナノクリスタルが挙げられる。
【0037】
消泡剤としては、市販品を用いてもよい。例えば、フローリック社製の「フローリックDF753」が挙げられる。
【0038】
低チキソトロピー性助剤としては、フローリック社製の「フローリックFBL-200」が挙げられる。
【0039】
高性能AE減水剤としては、フローリック社製の「フローリックSF500S」が挙げられる。
【実施例
【0040】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、物性値等の測定方法は、別途記載がない限り、上記に記載した測定方法である。
【0041】
[融解温度(℃)]:MP-80(METTLER TOLEDO社製)を用いて融解温度を測定した。
【0042】
(実施例1)
予め70℃程度に加温したグルコン酸ナトリウムに、100℃に加温して液状にしたパラフィン(融解温度70℃)を添加(グルコン酸ナトリウム:パラフィン=86:14)し、ホバートミキサーにて混練しながら室温まで徐冷して被覆体を得た。徐冷後、篩(佐藤式振動ふるい機、晃栄産業社製)により約1mm以上の粗大な被覆体を除外した。
【0043】
約1mm以上の粗大な被覆体を除外した後、常温の工業用水を充填した容器の中に、被覆体を入れた網かごを15分間浸漬した。この際、マグネチックスターラーを用いて容器中の工業用水を撹拌するとともに、工業用水を流水(給水とともに排水)し続けた。
15分後、網かごを容器から取り出し、風通しの良いところに放置して乾燥し、セメント用添加剤(1)を製造した。
【0044】
(比較例1)
予め70℃程度に加温したグルコン酸ナトリウムに、100℃に加温して液状にしたパラフィン(融解温度70℃)を添加(グルコン酸ナトリウム:パラフィン=86:14)し、ホバートミキサーにて混練しながら室温まで徐冷して被覆体を得た。徐冷後、篩(佐藤式振動ふるい機、晃栄産業社製)により約1mm以上の粗大な被覆体を除外した。このようにして、セメント用添加剤(2)を製造した。
【0045】
なお、実施例及び比較例に用いたパラフィンは、パラフィン(融点68~70℃)(富士フィルム和光純薬社製)であり、5~50℃の水に対して不溶性又は難溶性である。
【0046】
(性能検証)
環境温度(20℃)において、表1記載の各処方となるようにセメント(結合材)、水、及び骨材を混合し、高性能AE減水剤を投入した。その後、モルタルミキサによる機械練りにより、低速60秒間、高速90秒間練り混ぜて、セメント組成物を得た。比較例2は当該セメント組成物を用いて温度上昇を測定した。実施例1及び比較例1については、セメント組成物に対して別途、セメント用添加剤(1)又は(2)を添加して温度上昇を測定した。
なお、温度上昇は、セメント組成物を1辺40cmの立方体試料とし、試料中心の温度で測定した。この際、試料の周りは断熱材にて被覆した。
【0047】
【表1】
【0048】
なお、表1中、セメント用添加剤の量は、セメント重量に対する割合を示す。また、略号を下記の通り示す。
C:早強ポルトランドセメント 太平洋セメント社製(d=3.14g/cm
骨材:S 高質砂岩砕砂 (d=2.61g/cm
G 高質砂岩砕石 (d=2.62g/cm
Ad:高性能AE減水剤 「フローリックSF500S」フローリック社製
s/a:全骨材中の細骨材の割合を示す。
【0049】
実施例1及び比較例1,2の測定結果を図1に示す。
図1から、本発明のセメント用添加剤(1)を添加した場合、水和反応の開始時間(凝結時間)が無添加の場合とほぼ同じであり、水和反応による温度上昇の最高到達温度を低下し得ることがわかる。一方、従来のセメント用添加剤(2)を添加した場合、水和反応の開始時間(凝結時間)が遅れることに加え、水和反応による温度上昇の最高到達温度を無添加の場合と比較して低下し得ないことがわかる。
図1