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  • 特許-ビナフタレン骨格を有する化合物 図1
  • 特許-ビナフタレン骨格を有する化合物 図2
  • 特許-ビナフタレン骨格を有する化合物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ビナフタレン骨格を有する化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/23 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
C07C43/23 C CSP
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019129894
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021014426
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】布目 和徳
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-505145(JP,A)
【文献】特開2001-072872(JP,A)
【文献】特開2003-066201(JP,A)
【文献】国際公開第2019/043060(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 43/23
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1-A)で表される化合物。
【化1】
【請求項2】
120~190℃の範囲に示差走査熱量分析による吸熱ピークを有する請求項記載の化合物の結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビナフタレン骨格を有する化合物およびその結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(BN2EOと省略することがある)に代表されるビナフタレン骨格を有するアルコールを原料としたポリカーボネート、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂材料は、光学特性、耐熱性、成形性などに優れることから、光学レンズや光学シートなどの光学部材として注目されている。例えば、特許文献1には、BN2EOからなるポリカーボネート樹脂の屈折率は1.668であることが開示されている。また、特許文献2には、6,6’-ジフェニル-2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンからなるポリカーボネート樹脂の屈折率は1.697であることが開示されている。しかしながら、近年の急速な技術革新に伴い、屈折率のさらなる向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/073496号パンフレット
【文献】国際公開第2019/043060号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高屈折率の新規なビナフタレン化合物およびその結晶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
【0006】
《態様1》
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
(式中、X~Xはそれぞれ独立にハロゲン原子、または炭素原子数4~36の置換基を有していても良く、ヘテロ原子を含んでいても良い芳香族基であり、Y、Yはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキレン基または炭素原子数1~4のアルキレンカルボニル基であり、n1、n2はそれぞれ独立に1~4の整数であり、n3、n4はそれぞれ独立に1~2の整数である。)
《態様2》
式(1)中のYおよびYが、炭素原子数1~4のアルキレン基である態様1に記載の化合物。
《態様3》
式(1)中のn1~n4が、すべて1である態様1~2のいずれかに記載の化合物。
《態様4》
式(1)中のX~Xが、炭素原子数4~36の置換基を有していても良く、ヘテロ原子を含んでいても良い芳香族基である態様1~3のいずれかに記載の化合物。
《態様5》
式(1)が、式(1-A)である態様1~4のいずれかに記載の化合物。
【化2】
《態様6》
120~190℃の範囲に示差走査熱量分析による吸熱ピークを有する態様5記載の化合物の結晶。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高屈折率である新規なビナフタレン化合物を提供することができる。また、加工性、生産性に優れる新規なビナフタレン化合物の結晶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1で得られた2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-4,4’,6,6’-テトラブロモ-1,1’-ビナフタレン化合物のNMRチャートを示す図である。
図2】実施例1で得られた2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-4,4’,6,6’-テトラフェニル-1,1’-ビナフタレン化合物のNMRチャートを示す図である。
図3】実施例1で得られた2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-4,4’,6,6’-テトラフェニル-1,1’-ビナフタレン化合物の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《ビナフタレン化合物》
本発明における新規なビナフタレン化合物は下記式(1)で表される。
【化3】
【0010】
(式中、X~Xはそれぞれ独立にハロゲン原子、または炭素原子数4~36の置換基を有していても良く、ヘテロ原子を含んでいても良い芳香族基であり、Y、Yはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキレン基または炭素原子数1~4のアルキレンカルボニル基であり、n1、n2はそれぞれ独立に1~4の整数であり、n3、n4はそれぞれ独立に1~2の整数である。)
式(1)中のX~Xはそれぞれ独立にハロゲン原子、または炭素原子数4~36の置換基を有していても良く、ヘテロ原子を含んでいても良い芳香族基である。
【0011】
ハロゲン原子として、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、臭素原子が特に好ましい。
【0012】
炭素原子数4~36、好ましくは炭素原子数5~24、より好ましくは炭素原子数6~18の置換基を有していても良く、ヘテロ原子を含んでいても良い芳香族基として、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アセナフテチレニル基、アセナフテニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、ピリジル基、ピロリジニル基、チエニル基などが挙げられ、フェニル基、ナフチル基が特に好ましい。
【0013】
本発明において、式(1)中のY、Yはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキレン基または炭素原子数1~4のアルキレンカルボニル基である。
【0014】
炭素原子数1~4のアルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン、ブチレン基などが挙げられ、エチレン基が特に好ましい。
【0015】
炭素原子数1~4のアルキレンカルボニル基として、メチレンカルボニル基、エチレンカルボニル基、プロピレンカルボニル基、イソプロピレンカルボニル基などが挙げられ、メチレンカルボニル基が特に好ましい。
【0016】
本発明において、式(1)中のn1、n2はそれぞれ独立に1~4の整数であり、n3、n4はそれぞれ独立に1~2の整数であり、n1~n4はすべて1が好ましい。式(1)で表される化合物は、特に、下記式(1-A)で表される化合物であることが好ましい。
【0017】
【化4】
【0018】
《ビナフタレン化合物の結晶》
本発明で得られる上記式(1-A)で表される化合物の結晶は、示差走査熱量分析による吸熱ピークを120~190℃の範囲に有することが好ましい。式(1-A)で表される化合物の結晶は、取扱性に優れ、かつ、色相、純度ともに良好である。
【0019】
《ビナフタレン化合物の製造方法》
本発明のビナフタレン化合物の製造方法は特に限定されるものではないが、式(1)中のn1~n4が0である化合物と所定量のハロゲン分子とを反応させ、式(1)中のX~Xがハロゲン原子である化合物を得ることが好ましい(以下、工程1と省略することがある)。
【0020】
本発明の工程1において、ハロゲン分子として、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、臭素が特に好ましい。
【0021】
本発明の工程1において、式(1)中のn1~n4が0である化合物とハロゲン分子の使用量(モル比)は、好ましくは1:4~1:15であり、より好ましくは1:4~1:13であり、特に好ましくは1:4~1:11である。臭素の使用量が1:4より少ないと反応時間が長くなることや純度や収率が低下することがある。臭素の使用量が1:15より多いと純度や収率が低下することがある。
【0022】
本発明の工程1において、反応時に所定量の非反応性溶媒を共存させることが好ましい。非反応性溶媒とは反応を阻害しないものであれば特に限定されるものではなく、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、酢酸、蒸留水などが挙げられ、特に、ハロゲン化脂肪族炭化水素が好ましい。所定量の非反応性溶媒が共存しない場合、攪拌困難となり反応が進行しないか、反応が著しく遅延する場合がある。
【0023】
本発明の工程1において、反応時に共存させる非反応性溶媒の使用量は式(1)中のn1~n4が0である化合物に対して0.1~50重量倍、好ましくは0.5~30重量倍である。溶媒の使用量が0.1重量倍より少ないと式(1)中のn1~n4が0である化合物が攪拌困難となることがある。溶媒の使用量が50重量倍より多いと反応時間の遅延や容積効率が低下するなど、生産効率が悪化し経済的に不利になることがある。また、長期の加熱操作は副反応物の増加や着色原因となることがある。また、式(1)中のn1~n4が0である化合物を非反応性溶媒に溶解させた溶液で反応させても良く、または攪拌可能なスラリー状態で反応させても良い。
【0024】
本発明の工程1において、式(1)中のn1~n4が0である化合物と所定量のハロゲン分子とを反応させる方法は、通常、式(1)中のn1~n4が0である化合物および溶媒を反応容器に仕込み、空気中又は窒素、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下、攪拌し、臭素を反応容器に滴下することにより行うことができる。反応は液体クロマトグラフィーなどの分析手段で追跡することができる。反応温度は、-40~120℃であると好ましく、-20~80℃であるとより好ましい。反応温度が高すぎると副反応物の増加による収率低下や色相悪化の原因となることがある。反応温度が低すぎると反応が速やかに進行しない場合がある。
【0025】
本発明において、式(1)中のX~Xがハロゲン原子である化合物を得た後、式(1)中のX~Xがハロゲン原子である化合物と芳香族ボロン酸類とを反応溶媒中、塩基およびパラジウム系触媒の存在下反応させ、式(1)中のX~Xが炭素原子数4~36の置換基を有していても良く、ヘテロ原子を含んでいても良い芳香族基である化合物を得ることができる(以下、工程2と省略することがある)。また、得られた化合物は、活性炭処理あるいはそれと酷似した金属の除去処理をして、パラジウム系触媒を除去することが好ましい。
【0026】
本発明の工程2において、式(1)中のX~Xがハロゲン原子である化合物と芳香族ボロン酸類の使用量(モル比)は、好ましくは1:3.9~1:5.0であり、より好ましくは1:4.0~1:4.7であり、よりいっそう好ましくは1:4.0~1:4.5である。芳香族ボロン酸類の使用量が3.9より少ないと、純度や収率が低下することがある。芳香族ボロン酸類の使用量が5.0より多いと、純度や収率が低下することがある。
【0027】
本発明の工程2において、反応時に所定量の非反応性溶媒を共存させることが好ましい。非反応性溶媒とは反応を阻害しないものであれば特に限定されるものではなく、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどの脂肪族アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性溶媒などが挙げられる。これら溶媒は単独で用いても良く、また、2種以上併用して用いても良い。本発明では、トルエンとエタノールとの混合溶媒が特に好ましい。
【0028】
反応時に共存させる非反応性溶媒の使用量は式(1)中のX~Xがハロゲン原子である化合物である化合物に対して0.1~50重量倍、好ましくは0.5~30重量倍である。溶媒の使用量が0.1重量倍より少ないと式(1)中のX~Xがハロゲン原子である化合物が攪拌困難となることがある。溶媒の使用量が50重量倍より多いと反応時間の遅延や容積効率が低下するなど、生産効率が悪化し経済的に不利になることがある。また、式(1)中のn1~n4が0である化合物を非反応性溶媒に溶解させた溶液で反応させても良く、または攪拌可能なスラリー状態で反応させても良い。
【0029】
本発明の工程2において、反応時に所定量の塩基を共存させることが好ましい。塩基として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどの炭酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどのリン酸塩などの無機塩、トリエチルアミン類、ピリジン、モルホリン、キノリン、ピペリジン、アニリン類、テトラnブチルアンモニウムアセテートなどのアンモニウム塩などの有機塩などが挙げられる。なかでも、炭酸塩が好ましく用いられ、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが好ましい。このような塩基は、単独で用いても良く、また、2種類以上併用して用いても良い。塩基の使用量は特に限定されないが、ボロン酸類1モルに対して、好ましくは1~30モル、より好ましくは1~10モル添加される。塩基の使用量が1モルより少ないと反応時間が遅延する場合がある。塩基の使用量が30モルより多いと純度や収率が低下することがある。
【0030】
本発明の工程2において、反応時に所定量のパラジウム系触媒を共存させることが好ましい。パラジウム系触媒として、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、酢酸パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィンパラジウムジクロリド、ビス(ジ-tert-ブチルプレニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ-tert-クロチルホスフィン)パラジウムジクロリド、Pd/SiOで表されるパラジウム系触媒などが挙げられる。なかでも、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムおよび/またはPd/SiOで表されるパラジウム系触媒が好ましい。このようなパラジウム系触媒は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用して用いることもできる。
【0031】
パラジウム系触媒の使用量は特に限定されないが、式(1)中のX~Xがハロゲン原子である化合物1モルに対して、パラジウム金属原子換算で好ましくは0.001~0.1モルであり、より好ましくは0.002~0.05モルであり、さらに好ましくは0.003~0.02モルである。パラジウム触媒の使用量が0.001モルより少ない場合、反応時間が遅延する場合がある。パラジウム触媒の使用量が0.1モルより多い場合、純度や収率が低下することや色相が悪化することがある。
【0032】
本発明の工程2において、反応温度は好ましくは50~150℃、より好ましくは60~130℃、さらに好ましくは70~120℃である。反応は液体クロマトグラフィーなどの分析手段で追跡することができる。
【0033】
《ビナフタレン化合物の結晶の製造方法》
本発明の工程2において、反応終了後、ろ過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、再沈殿、活性炭処理あるいはそれと酷似した金属の除去処理、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製することが好ましい。例えば、慣用の方法(アルカリ水溶液を加えて水溶性の複合体を形成させる方法など)によりボロン酸類を除去し、活性炭処理あるいはそれと酷似した金属の除去処理をしてパラジウム化合物を除去したのち、再結晶溶媒を添加して冷却して再結晶化させ、次いでろ過分離することにより精製しても良い。
【0034】
本発明において、式(1)中のX~Xが炭素原子数4~36の置換基を有していても良く、ヘテロ原子を含んでいても良い芳香族基である化合物を晶析精製するなどしてさらに純度を高くすることが好ましい。
【0035】
晶析精製に用いられる有機溶媒は、特に限定されるものではないが、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これら有機溶媒は単独または二種類以上の組み合わせで使用できる。有機溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、経済性の点から、通常、式(1)中のX~Xが炭素原子数4~36の置換基を有していても良く、ヘテロ原子を含んでいても良い芳香族基である化合物に対して、1重量倍以上、好ましくは1~50重量倍、より好ましくは3~20重量倍程度である。
【0036】
晶析精製は一般的な方法で実施可能であり特に限定されないが、通常、晶析を行う混合物中の結晶が溶解する温度、例えば60℃以上、好ましくは80℃以上に加熱した後、この溶液を適当な温度、例えば-10~30℃に冷却することにより目的物の結晶を得ることができる。析出した結晶は濾過などにより回収され、必要により洗浄し、乾燥することにより単離できる。また必要に応じて、単離された結晶を精製してもよい。精製方法としては、再晶析(再結晶)や活性炭等の吸着剤を用いた不純物除去処理を挙げることができる。
【実施例
【0037】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、各種測定は以下のように行った。
(1)HPLC測定
日立製高速液体クロマトグラフL-2350を用い、表1の測定条件で測定した。実施例中、特に断らない限り%はHPLCにおける溶媒を除いて補正した面積百分率値である。
【0038】
【表1】
【0039】
(2)NMR測定
実施例で得られた化合物をCDClに溶解させ、日本電子社製JNM-AL400(400MHz)を用い測定した。
溶媒:CDCl
(3)示差走査熱量測定(DSC)
TA Instruments製Discovery DSC25を用い、窒素フロー下、昇温速度:20℃/minで測定した。
(4)屈折率(nD)
実施例で得られた化合物をジメチルスルホキシドに溶解させ、所定濃度の溶液を作成し、各濃度の溶液の屈折率をATAGO社製DR-M2アッベ屈折計を用い、25℃におけるD線屈折率を測定した。各濃度の測定結果から濃度100%に外挿した値を実施例で得られた化合物の屈折率(nD)とした。
【0040】
[実施例1]
<工程1>
撹拌機、冷却器、温度計、滴下漏斗を備え付けたフラスコにクロロホルム90mlを加え、室温、窒素雰囲気下で撹拌しながら2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(以下、BN2EOと省略することがある)5.86gを仕込み溶解させた。次に、滴下漏斗に臭素25g、及びクロロホルム10mlを加え、この溶液を30分かけて系内に滴下した。滴下後、4時間撹拌し反応を終了した。反応後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加え反応液をクエンチした。反応液を分液漏斗に移し、中性になるまで水洗を繰り返した後、クロロホルム層にヘキサンを添加し再結晶した。得られた結晶をテトラヒドロフラン:ヘキサン=1:1でカラム精製し、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-4,4’,6,6’-テトラブロモ-1,1’-ビナフタレン(以下、BN2EO-4,6Brと略記することがある)の白色結晶を5g(純度99.42%)得た。BN2EO-4,6BrのNMRチャートを図1に示した。
【0041】
<工程2>
窒素雰囲気下、撹拌機、冷却器、さらには温度計を備え付けたフラスコに工程1で得られたBN2EO-4,6Brを4.00g、フェニルボロン酸3.11g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム67mg、2M炭酸カリウム水溶液14mL、トルエン29mL、エタノール10mLを仕込み、80℃で4時間反応した。得られた反応液を濃縮し、クロロホルムに溶解させた後、1M水酸化ナトリウム水溶液を加え、分液漏斗で洗浄した。その後、中性になるまで水洗を繰り返した。次に、クロロホルム層に活性炭を加え2時間撹拌した後、活性炭を濾別した。その後、有機層を濃縮し、ヘキサンを加え再結晶し、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-4,4’,6,6’-テトラフェニル-1,1’-ビナフタレン(以下、BN2EO-4,6Phと略記することがある)の白色結晶を3g(純度98.17%)得た。BN2EO-4,6PhのNMRチャートを図2に、DSCチャートを図3に示した。また、屈折率は1.712、DSC分析による吸熱ピークは139℃であった。
【0042】
[実施例2]
Journal of Organic Chemistry 66,2358-2367(2001)に記載の方法で、2,2’-ヒドロキシ-4,4’,6,6’-テトラフェニル-1,1’-ビナフタレン(以下、BN-4,6Phと略記することがある)を得た。
【0043】
窒素雰囲気下、撹拌機、冷却器、温度計を備え付けたフラスコに上記で得たBN-4,6Phを5.00g、エチレンカーボネート1.71g、炭酸カリウム0.12g、ジメチルホルムアミド10mlを仕込み、120℃で7時間反応した。得られた反応混合物にジメチルホルムアミド10ml、及び10%水酸化ナトリウム水溶液1ml加え、110℃で3時間撹拌した。得られた反応混合物を500mlの純水中に滴下し、析出物をろ過回収し、BN2EO-4,6Phの白色結晶を5g(純度97.50%)得た。
【0044】
[比較例1]
BN2EOの屈折率を測定した結果、1.655であった。
【0045】
[比較例2]
2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフタレンの屈折率を測定した結果、1.694であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明で得られる新規なビナフタレン化合物は高屈折率であることから、光学レンズや光学フィルムに代表される光学部材を構成する樹脂を形成するモノマーとして好適である。
図1
図2
図3