(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】組込用通信基板、通信端末、及びファームウェア更新方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/042 20060101AFI20230307BHJP
G06F 8/65 20180101ALI20230307BHJP
G06F 8/656 20180101ALI20230307BHJP
【FI】
G05B19/042
G06F8/65
G06F8/656
(21)【出願番号】P 2019133067
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 理樹
(72)【発明者】
【氏名】白根 一登
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-101028(JP,A)
【文献】特開2016-206853(JP,A)
【文献】特開2011-204267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/042
G06F 8/65
G06F 8/656
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機器によって電力の供給が制御され
、前記産業機器から供給される電力によって動作する組込用通信基板であって、
サーバ及び前記産業機器と通信する通信機能を有する処理装置と、
ファームウェアを記録する不揮発性の記憶装置と、
を備え、
前記処理装置は、
前記産業機器の状態を示すステータスデータを前記産業機器から取得し、
前記ファームウェアを更新するための更新用ファームウェアを前記サーバから取得し、
前記ステータスデータが前記産業機器の電源断が行われない所定の状況を判別する特定の条件を満たす場合に、
前記産業機器による前記組込用通信基板への電力の供給の制御の変更を要することなく、前記更新用ファームウェアを用いて前記不揮発性の記憶装置に記録された前記ファームウェアを更新する
ことを特徴とする組込用通信基板。
【請求項2】
前記処理装置が前記サーバから取得した前記更新用ファームウェアを一時的に記憶する揮発性の記憶装置をさらに備え、
前記ステータスデータが前記特定の条件を満たす場合に、前記処理装置は、前
記揮発性の記憶装置に
一時的に記憶された前記更新用ファームウェアを用いて、前記不揮発性の記憶装置に記録された前記ファームウェアを更新する
ことを特徴とする請求項1に記載の組込用通信基板。
【請求項3】
前記処理装置は、前記ステータスデータが前記特定の条件を満たさない場合には、前記サーバから前記更新用ファームウェアを取得しない
ことを特徴とする請求項1に記載の組込用通信基板。
【請求項4】
前記不揮発性の記憶装置を二重化する第1及び第2の記憶部を有し、
前記第1及び前記第2の記憶部は、一方が稼働系で使用される場合に他方が待機系に割り当てられ、
前記処理装置は、前記ステータスデータが前記特定の条件を満たす場合に、前記更新用ファームウェアを用いて、前記待機系に割り当てられている前記記憶部に記録された前記ファームウェアを更新する
ことを特徴とする請求項1に記載の組込用通信基板。
【請求項5】
産業機器によって電力の供給が制御され
、前記産業機器から供給される電力によって動作する通信端末であって、
サーバ及び前記産業機器と通信する通信機能を有する処理装置と、
ファームウェアを記録する不揮発性の記憶装置と、
を備え、
前記処理装置は、
前記産業機器の状態を示すステータスデータを前記産業機器から取得し、
前記ファームウェアを更新するための更新用ファームウェアを前記サーバから取得し、
前記ステータスデータが前記産業機器の電源断が行われない所定の状況を判別する特定の条件を満たす場合に、
前記産業機器による前記通信端末への電力の供給の制御の変更を要することなく、前記更新用ファームウェアを用いて前記不揮発性の記憶装置に記録された前記ファームウェアを更新する
することを特徴とする通信端末。
【請求項6】
前記処理装置が前記サーバから取得した前記更新用ファームウェアを一時的に記憶する揮発性の記憶装置をさらに備え、
前記ステータスデータが前記特定の条件を満たす場合に、前記処理装置は、前
記揮発性の記憶装置に
一時的に記憶された前記更新用ファームウェアを用いて、前記不揮発性の記憶装置に記録された前記ファームウェアを更新する
ことを特徴とする請求項
5に記載の通信端末。
【請求項7】
前記ステータスデータが前記特定の条件を満たさない場合には、前記処理装置は、前記サーバから前記更新用ファームウェアを取得しない
ことを特徴とする請求項
5に記載の通信端末。
【請求項8】
前記不揮発性の記憶装置を二重化する第1及び第2の記憶部を有し、
前記第1及び前記第2の記憶部は、一方が稼働系で使用される場合に他方が待機系に割り当てられ、
前記処理装置は、前記ステータスデータが前記特定の条件を満たす場合に、前記更新用ファームウェアを用いて、前記待機系に割り当てられている前記記憶部に記録された前記ファームウェアを更新する
ことを特徴とする請求項
5に記載の通信端末。
【請求項9】
産業機器によって電力の供給が制御され
、前記産業機器から供給される電力によって動作する組込用通信基板または通信
端末におけるファームウェア更新方法であって、
前記組込用通信基板または前記通信
端末は、
サーバ及び前記産業機器と通信する通信機能を有する処理装置と、
ファームウェアを記録する不揮発性の記憶装置と、
を有し、
前記処理装置が、前記産業機器の状態を示すステータスデータを前記産業機器から取得するデータ取得ステップと、
前記処理装置が、前記ファームウェアを更新するための更新用ファームウェアを前記サーバから取得する更新用ファームウェア取得ステップと、
前記処理装置が、前記データ取得ステップで取得された前記ステータスデータが前記産業機器の電源断が行われない所定の状況を判別する特定の条件を満たす場合に、
前記産業機器による前記組込用通信基板または前記通信端末への電力の供給の制御の変更を要することなく、前記更新用ファームウェア取得ステップで取得された前記更新用ファームウェアを用いて、前記不揮発性の記憶装置に記録された前記ファームウェアを更新するファームウェア更新ステップと、
を備えることを特徴とするファームウェア更新方法。
【請求項10】
前記組込用通信基板または前記通信
端末は、揮発性の記憶装置をさらに有し、
前記更新用ファームウェア取得ステップにおいて、前記処理装置は、前記サーバから取得した前記更新用ファームウェアを前記揮発性の記憶装置に一時的に記憶し、
前記ファームウェア更新ステップにおいて、前記ステータスデータが前記特定の条件を満たす場合に、前記処理装置は、前記更新用ファームウェア取得ステップで前
記揮発性の記憶装置に
一時的に記憶した前記更新用ファームウェアを用いて、前記不揮発性の記憶装置に記録された前記ファームウェアを更新する
ことを特徴とする請求項
9に記載のファームウェア更新方法。
【請求項11】
前記データ取得ステップで取得した前記ステータスデータが前記特定の条件を満たさない場合には、前記更新用ファームウェア取得ステップを実行しない
ことを特徴とする請求項
9に記載のファームウェア更新方法。
【請求項12】
前記不揮発性の記憶装置は、一方が稼働系で使用される場合に、他方が待機系に割り当てられる第1及び第2の記憶部によって二重化が構成され、
前記ファームウェア更新ステップにおいて前記処理装置は、前記ステータスデータが前記特定の条件を満たす場合に、前記更新用ファームウェアを用いて、前記待機系に割り当てられている前記記憶部に記録された前記ファームウェアを更新する
ことを特徴とする請求項
9に記載のファームウェア更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組込用通信基板、通信端末、及びファームウェア更新方法に関し、産業機器に取付けられて外部と通信を行う組込用通信基板、通信端末、及びこれらのファームウェア更新方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業機器に外部との通信機能を持たせる用途で、通信機能に特化した通信端末(あるいは組込用通信基板)を産業機器に取付ける、あるいは内蔵するといった手段が用いられるようになっている。このような手段を用いる場合、通信端末に電力を供給する方法として、具体的には、産業機器の電源から電力を供給する方法や、通信端末は電源を有するが産業機器がその電力供給を制御する方法が採られる。
【0003】
上記のような用途に用いられる通信端末は一般的に、何らかの処理装置及び記憶装置を備えており、記憶装置に記録されたファームウェアを処理装置上で実行することによって動作する。ファームウェアは通常、工場出荷時に記録されるが、工場出荷後に機能追加や修正を実施したい場合には、通信端末のファームウェアを更新する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、産業機器は、常時稼働するとは限らないため稼働時以外は電源を切ることが多く、また、消費電力が大きいことから補助用の電源供給装置を設置することも一般的ではない。したがって、上述した通信端末のように電力の供給が産業機器によって制御されている場合、産業機器の電源が切られると、通信端末への電力の供給も停止してしまう。
【0005】
しかし、通信端末のファームウェア更新は、通信端末が備える記憶装置に記録されている所定のプログラムを書き換えることによって行われるため、データの書き換え中に、産業機器の電源が切られて通信端末への電力の供給が停止されると、書き換えが不完全になってファームウェアの内容が不整合を起こすおそれがあった。また、通信端末が取付けられた産業機器においても、動作異常が生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、組込用通信基板や通信端末において電力の供給が産業機器に制御される場合に、自身のファームウェア更新を安全に実行することができる組込用通信基板、通信端末、及びファームウェア更新方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、産業機器によって電力の供給が制御され、前記産業機器から供給される電力によって動作する以下の組込用通信基板が提供される。この組込用通信基板は、サーバ及び前記産業機器と通信する通信機能を有する処理装置と、ファームウェアを記録する不揮発性の記憶装置と、を備え、前記処理装置は、前記産業機器の状態を示すステータスデータを前記産業機器から取得し、前記ファームウェアを更新するための更新用ファームウェアを前記サーバから取得し、前記ステータスデータが前記産業機器の電源断が行われない所定の状況を判別する特定の条件を満たす場合に、前記産業機器による前記組込用通信基板への電力の供給の制御の変更を要することなく、前記更新用ファームウェアを用いて前記不揮発性の記憶装置に記録された前記ファームウェアを更新する。
【0008】
また、かかる課題を解決するため本発明においては、産業機器によって電力の供給が制御され、前記産業機器から供給される電力によって動作する以下の通信端末が提供される。この通信端末は、サーバ及び前記産業機器と通信する通信機能を有する処理装置と、ファームウェアを記録する不揮発性の記憶装置と、を備え、前記処理装置は、前記産業機器の状態を示すステータスデータを前記産業機器から取得し、前記ファームウェアを更新するための更新用ファームウェアを前記サーバから取得し、前記ステータスデータが前記産業機器の電源断が行われない所定の状況を判別する特定の条件を満たす場合に、前記産業機器による前記通信端末への電力の供給の制御の変更を要することなく、前記更新用ファームウェアを用いて前記不揮発性の記憶装置に記録された前記ファームウェアを更新する。
【0009】
また、かかる課題を解決するため本発明においては、産業機器によって電力の供給が制御され、前記産業機器から供給される電力によって動作する組込用通信基板または通信端末における以下のファームウェア更新方法が提供される。ここで、前記組込用通信基板または前記通信端末は、サーバ及び前記産業機器と通信する通信機能を有する処理装置と、ファームウェアを記録する不揮発性の記憶装置と、を有する。そしてこのファームウェア更新方法は、前記処理装置が、前記産業機器の状態を示すステータスデータを前記産業機器から取得するデータ取得ステップと、前記処理装置が、前記ファームウェアを更新するための更新用ファームウェアを前記サーバから取得する更新用ファームウェア取得ステップと、前記処理装置が、前記データ取得ステップで取得された前記ステータスデータが前記産業機器の電源断が行われない所定の状況を判別する特定の条件を満たす場合に、前記産業機器による前記組込用通信基板または前記通信端末への電力の供給の制御の変更を要することなく、前記更新用ファームウェア取得ステップで取得された前記更新用ファームウェアを用いて、前記不揮発性の記憶装置に記録された前記ファームウェアを更新するファームウェア更新ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、組込用通信基板や通信端末において電力の供給が産業機器に制御される場合に、自身のファームウェア更新を安全に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る通信端末を含む全体構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示した通信端末における通常の運用手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】ファームウェア更新の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図4】第2の実施形態に係る通信端末を含む全体構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を詳述する。以下の説明では、本実施形態に係る通信端末(あるいは組込用通信基板)が接続される産業機器の一例として、空気圧縮機を用いて説明する。
【0013】
(1)第1の実施形態
(1-1)構成
図1は、本発明の第1の実施形態に係る通信端末を含む全体構成例を示す図である。
【0014】
まず、
図1を参照しながら、各構成の接続関係を説明する。
【0015】
図1に示したように、本実施形態に係る通信端末10は、外部信号線41を介して、空気圧縮機20と通信可能に接続される。また、通信端末10は、外部信号線42、ネットワーク40、及び外部信号線43を介して、サーバ30とも通信可能に接続される。サーバ30は、外部装置の一例であって、通信端末10のファームウェアを更新するために用いられるファームウェアのデータ(以後、更新用ファームウェア)をネットワーク40経由で提供する。なお、更新用ファームウェアは、既存のファームウェア全体を書き換えることによって当該ファームウェアを更新することができる全体データであってもよいし、既存のファームウェアの一部を書き換えることによって当該ファームウェアを更新することができる差分データであってもよい。
【0016】
なお、本実施形態において、通信端末10とネットワーク40との間の通信経路は、
図1の外部信号線42のような有線に限定されるものではなく、無線であってもよい。有線接続の場合の典型的な構成として、外部信号線42にLAN(Local Area Network)ケーブルを用い、ネットワーク40にインターネットを用いることができる。この有線接続の場合において、外部信号線42とネットワーク40は必ずしも直接接続される必要はなく、適宜ファイアウォールやハブといった中継装置やイントラネット等のネットワークを挟んでもよいが、これらの構成は本実施形態において本質的ではなく、図示を省略している。また、無線接続の場合の典型的な構成として、外部信号線42の代わりに携帯電話無線を用いることができる。この無線接続の場合、携帯電話無線とネットワーク40の間には、携帯電話基地局や無線通信網などを挟むことができるが、これらの構成も本実施形態では本質的ではない。無線接続の別の構成として、無線LANや近距離無線等を使用してもよい。
【0017】
図1に示したように、空気圧縮機20は、電力供給線52を通じて電源50に接続され、電源50から供給される電力によって動作する。さらに、空気圧縮機20と通信端末10との間は電力供給線53で接続され、通信端末10は、空気圧縮機20から電力供給線53を通じて供給される電力によって動作する。なお、詳細に言えば、電力供給線53によって通信端末10に供給される電力は、通信端末10が内蔵する電源回路(不図示)によって、通信端末10が内蔵するその他の装置に適した電圧に変換されて供給されるが、簡便のため、
図1においてこれらの図示は省略している。
【0018】
また、電力供給線52の途中には、空気圧縮機20に対する電力の供給(ON)/遮断(OFF)を制御可能な電源スイッチ51が設けられている。
図1では電源スイッチ51は空気圧縮機20の外部に示されているが、電源スイッチ51は空気圧縮機20に内蔵されていてもよい。上述したように、電源50からの電力は通信端末10にも供給されるものであり、空気圧縮機20は、電源スイッチ51がONにされて電源50から電力が供給されている限り、電力供給線53を通じて通信端末10に電力を供給する。一方、電源スイッチ51がOFFにされて空気圧縮機20に電力が供給されなくなると、通信端末10にも電力は供給されなくなる。電源スイッチ51は、空気圧縮機20の操作者(ユーザ)によって操作される。
【0019】
次に、
図1を参照しながら、通信端末10の構成を詳しく説明する。通信端末10は、空気圧縮機20に取付けられる電子機器であって、内部信号線44を介して互いが接続された処理装置11、揮発性記憶装置12、及び不揮発性記憶装置13を備える。
【0020】
処理装置11は、サーバ30と通信する機能、空気圧縮機20と通信する機能、及び、揮発性記憶装置12や不揮発性記憶装置13に記憶されているデータを読み/書き/実行する機能等を有する。なお、
図1では、上記の各機能を全て有する処理装置11を示しているが、本実施形態においてこれら各機能は1つの処理装置11によって実現される必要はなく、通信端末10が、上記の各機能の1または複数の機能を有する複数の装置を備えて構成されるとしてもよい。また、
図1では、処理装置11、揮発性記憶装置12、及び不揮発性記憶装置13はそれぞれ別の装置として示したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、複数の上記装置が一体とされた装置で構成されてもよい。また、上記したように処理装置11が有する各機能を複数の装置で実現する場合には、これら複数の装置と揮発性記憶装置12または不揮発性記憶装置13とが一体とされてもよい。
【0021】
処理装置11は、通信端末10に電力が供給されているとき、不揮発性記憶装置13に記憶されたファームウェアを読み出し、そのファームウェアを実行する。通信端末10は、内部に別途電源スイッチを設ける等して、通信端末10に電源を投入する際の別の条件を設けるようにしてもよいが、本実施形態においては本質的ではないため、詳細な説明は省略する。また、詳細は後述するが、処理装置11は、特定の条件を満たした場合に、外部(例えばサーバ30)から取得した更新用ファームウェアを用いて、不揮発性記憶装置13に記憶されたファームウェアを更新するファームウェア更新処理を実行する。
【0022】
揮発性記憶装置12は、揮発性のメモリであって、具体的にはDRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等のRAMである。揮発性記憶装置12は、例えば、不揮発性記憶装置13から読み出されて実行されるプログラム(ファームウェア)や、当該プログラムの実行時に用いられるデータの他、サーバ30からダウンロードしたデータ(例えば更新用ファームウェア)等を一時的に記録するために使用される。
【0023】
不揮発性記憶装置13は、不揮発性のメモリであって、具体的には例えば、フラッシュメモリ(フラッシュROM)である。不揮発性記憶装置13には、ファームウェア等のデータが記憶されている。
【0024】
次に、
図1を参照しながら、空気圧縮機20の構成を詳しく説明する。空気圧縮機20は、本実施形態に係る通信端末10が接続される産業機器の一例であって、
図1に示したように、処理装置21及び空気圧縮部22を備える。
【0025】
処理装置21は、空気圧縮機20全般の制御、及び外部との通信を行う。例えば、処理装置21は、内部信号線45を介して空気圧縮部22に対して指示を出すことによって、空気圧縮部22による空気を圧縮する動作(空気圧縮動作)の実行を制御する。
【0026】
空気圧縮部22は、典型的には、動力源と空気を圧縮する機構とによって構成され、処理装置21の指示に応じて、空気圧縮動作を実行する。空気圧縮部22によって圧縮された空気は、通常、配管を通じて空気圧縮機20の外部に導出されるが、本発明には直接的な関係を持たないため、
図1等では図示を省略している。
【0027】
ここで、一般的な空気圧縮機と同様、空気圧縮機20は、空気圧縮動作を常時続けて使用されるものではなく、様々な状況や理由に応じて、空気圧縮動作を行ったり止めたりする。具体的には例えば、空気圧縮機20が接続された配管に十分な圧力が供給されている場合や、空気圧縮機20に用意されたユーザインタフェース(不図示)によってユーザから空気圧縮動作の停止が指示された場合等には、空気圧縮機20の処理装置21は、空気圧縮部22による空気圧縮動作を停止する。また、これも一般的な空気圧縮機と同様であるが、空気圧縮機20は、空気圧縮動作を行っている最中は動力源(モータ)が稼働している。このモータの稼働中に突然電源を切ることは、管理上あるいは空気圧縮機の保守上の観点から好ましくない。すなわち、空気圧縮機20においては、空気圧縮動作の実行中に電源断を行うことは、取り扱い上禁止されている。
【0028】
(1-2)ファームウェア更新
本実施形態に係る通信端末10によるファームウェア更新について、
図2を参照しながら通常の運用手順を説明した後、
図3を参照しながらファームウェア更新処理の詳細な手順を説明する。
【0029】
図2は、
図1に示した通信端末における通常の運用手順の一例を示すフローチャートである。
【0030】
図2によればまず、空気圧縮機20に電源が投入されること(すなわち、電源スイッチ51がON状態)により、通信端末10に電源が投入される(ステップS11)。
【0031】
次に、通信端末10への電源の投入を受けて処理装置11は、不揮発性記憶装置13に記憶されたファームウェアを読み出し、ファームウェアの実行を開始する(ステップS12)。
【0032】
次に、処理装置11は、ファームウェア更新処理を実行する(ステップS13)。ファームウェア更新処理は、一般にブートシーケンスとも呼ばれ、その処理手順は
図3を参照しながら後述するが、ステップS13では、必ずしもファームウェアが更新されるわけではない。
【0033】
ファームウェア更新処理の後、処理装置11は、通信端末10による通常時の運用を実行する(ステップS14)。ステップS14における通常運用の内容は、空気圧縮機20や、通信端末10が組み込まれる全体のシステムによって異なる。一般的には例えば、空気圧縮機20との通信及びサーバ30との通信、さらにこれらの通信によって取得したデータを用いた所定の判定や計算、あるいは一定時間の待機等の処理が含まれる。
【0034】
ステップS14で通常運用が実行された後(あるいは、通常運用で所定の時間が経過した後)、処理装置11は、再びステップS13に移行してファームウェア更新処理を実行し、その後ステップS14の通常運用の実行を繰り返す。このループ処理は、通信端末10の電源が切られるまで、言い換えれば、空気圧縮機20の電源が切られるまで継続する。
【0035】
なお、
図2に示した処理手順は一例であって、本実施形態に係る通信端末10の通常の運用手順はこれに限定されるものではなく、少なくとも、通信端末10において電源が投入されてから切られるまでの間に、何らかの形でステップS13のファームウェア更新処理が含まれる手順であればよい。
【0036】
図3は、ファームウェア更新の処理手順例を示すフローチャートである。
図3には、
図2のステップS13におけるファームウェア更新処理の詳細な処理手順例が示されている。
【0037】
なお、通信端末10のファームウェアを更新するにあたっては、更新用ファームウェアを用意し、不揮発性記憶装置13に記録する(より詳細には、不揮発性記憶装置13に記憶されたファームウェアのデータを書き換える)必要がある。このとき、可搬性を有する記憶装置(例えばSDカードやUSBフラッシュドライブ等)に更新用ファームウェアを記録し、これを通信端末10に直接読み取らせるといった方法も考えられるが、この方法では、上記の可搬性を有する記憶装置を持って通信端末10の所在地に逐一出向いて作業を行う必要があり、時間や手間が嵩む。そこで、本例では、通信端末10が有する通信機能を利用してサーバ30から更新用ファームウェアを取得(ダウンロード)し、不揮発性記憶装置13に記憶されたファームウェアを更新するという方法を採用している。
【0038】
図3によればまず、処理装置11は、サーバ30に対して、サーバ30が更新用ファームウェアのデータを保持しているか否かを問い合わせ(ステップS21)、問い合わせの結果を判定する(ステップS22)。問い合わせの結果から、更新用ファームウェアのデータが存在する場合は(ステップS22のYES)、ステップS23に進み、存在しない場合は(ステップS22のNO)、ファームウェア更新処理を終了する。
【0039】
ステップS23では、処理装置11は、サーバ30と通信を行い、サーバ30が保持している更新用ファームウェアのデータを揮発性記憶装置12にダウンロードする。
【0040】
ステップS23の処理が完了すると次に、処理装置11は、空気圧縮機20と通信を行い、空気圧縮機20の運転状態を表すステータスデータを受信する(ステップS24)。なお、ステップS24において処理装置11が空気圧縮機20と通信する際、空気圧縮機20へのデータ送信を含んでもよい。
【0041】
次いで、処理装置11は、ステップS24で受信したステータスデータに基づいて、予め定めた「特定の条件」を満たすか否かを判定する(ステップS25)。本例では、空気圧縮機20が空気圧縮動作を実行中(空気圧縮運転中)であることを「特定の条件」とする。これは、前述したように、空気圧縮機20では、空気圧縮動作の実行中に電源断を行うことは、取り扱い上禁止されていることに基づいている。したがって、ステップS24で空気圧縮機20から受信するステータスデータには、空気圧縮運転中であるかという空気圧縮機20の運転状態を示すデータが含まれる必要がある。
【0042】
なお、本例では説明を簡略にするために、空気圧縮運転中であることを特定の条件としたが、実際には、電源断が行われない状況であることを確実に確保するために、より詳細な条件を「特定の条件」として設定してもよい。例えば、空気圧縮機20の空気圧縮動作における動作工程を細分化し、更新用ファームウェアの書き込みに必要と想定される所定時間が担保できない可能性がある、終盤の動作工程については「特定の条件」から除外するようにしてもよい。
【0043】
ステップS25において特定の条件を満たした場合(ステップS25のYES)、処理装置11は更新用ファームウェアを書き込むことで、ファームウェアを更新する(ステップS26)。より具体的には、処理装置11は、ステップS23でダウンロードして揮発性記憶装置12に記憶した更新用ファームウェアのデータを、不揮発性記憶装置13に書き込む。ステップS26の処理後、ファームウェア更新処理は終了する。一方、ステップS25において特定の条件を満たさない場合は(ステップS25のNO)、更新用ファームウェアを書き込むことなく、ファームウェア更新処理を終了する。
【0044】
なお、
図3に示した処理手順は一例であって、本実施形態におけるファームウェア更新処理は、これに限定されるものではなく、例えば以下のような処理手順を採用してもよい。
【0045】
第1に、ステップS24の処理は、他のタイミングで実行するようにしてもよい。具体的には例えば、空気圧縮機20からステータスデータを受信するステップS24の処理を、
図2のステップ14で述べた通常運用の処理に含めるようにしてもよい。この場合、通信端末10の処理装置11は、通常運用の際に、空気圧縮機20の運転状態を表すデータ(ステータスデータ)を空気圧縮機20から取得して、例えば揮発性記憶装置12に一時的に保存すればよく、このようにすることで、ファームウェア更新処理の際に改めてステータスデータを取得する処理が不要となる。
【0046】
第2に、ステップS25の判定処理は、他のタイミングで実行するようにしてもよい。具体的には、ステップS23(更新用ファームウェアのダウンロード)の前に、ステップS25の判定を実行し、特定の条件を満たさなかった場合には、更新用ファームウェアをダウンロードしない、としてもよい。この場合、ファームウェアを更新してよい特定の条件が成立している場合にのみ、更新用ファームウェアをダウンロードすることができるため、不要なデータのダウンロードや一時的な保存を行う必要がなくなり、処理コストを節約することができる。
【0047】
以上に説明したように、第1の実施形態において、通信端末10は、ファームウェア更新処理のステップS25で「特定の条件」を満足する場合にのみ、ファームウェアの更新を実行する。この「特定の条件」は、通信端末10への電力の供給が停止されないと想定される状況を判別可能な条件、言い換えれば、産業機器(本実施形態では空気圧縮機20)の電源断が行われない所定の状況(タイミング)を判別可能な条件、であればよく、通信端末10が取付けられる産業機器によって、その具体的内容は異なる。
【0048】
すなわち、本実施形態によれば、通信端末10への電力の供給が停止されない状況でのみ、通信端末10におけるファームウェアの更新が実行されることで、ファームウェアのデータ書き換え中に電力の供給が停止されて不完全な書き換えによってファームウェアの内容が不整合を起こすことを防止できる。この結果、通信端末10のファームウェア更新を安全に実行することができる。引いては、ファームウェアの更新失敗によって通信端末10が取付けられた産業機器(例えば空気圧縮機20)において動作異常が生じることも防止できる。
【0049】
また、本実施形態によれば、産業機器(空気圧縮機20)の稼働中にファームウェア更新を実行できることから、ファームウェアの更新のために別途作業時間を設ける等の手間が掛からないという効果が得られる。
【0050】
(2)第2の実施形態
以下に、本発明の第2の実施形態について、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。本実施形態の説明では、特別に説明がない部分に関しては、第1の実施形態と同様の構成を備え、同様の処理を行うものとする。
【0051】
図4は、第2の実施形態に係る通信端末を含む全体構成例を示す図である。第2の実施形態では、通信端末60の内部構成が一部異なっている以外は、
図1に示した第1の実施形態と同様である。したがって、
図4に示したように、第2の実施形態に係る通信端末60は、第1の実施形態と同様に、空気圧縮機20及びサーバ30との接続関係を有する。
【0052】
通信端末60は、空気圧縮機20に取付けられる電子機器であって、内部信号線44を介して互いが接続された処理装置11、揮発性記憶装置12、及び不揮発性記憶装置13A,13Bを備える。通信端末60は、不揮発性記憶装置13が不揮発性記憶装置13A,13Bによって二重化されている点で、第1の実施形態に係る通信端末10の構成と相違する。
【0053】
二重化された不揮発性記憶装置13A,13Bは、通信端末60で使用されるプログラム(ファームウェア)やその他データを、それぞれ同じく記憶しており、一方が稼働系として用いられる場合に、他方が待機系に割り当てられる。不揮発性記憶装置13A,13Bにおける稼働系/待機系は、処理装置11が設定し、任意に切り替えることができ、切替時にはファームウェア以外の記憶データが稼働系から待機系に同期される。例えば、不揮発性記憶装置13Aを稼働系とする場合、処理装置11は不揮発性記憶装置13Aに記憶されているファームウェアを読み出して実行する。以下では、不揮発性記憶装置13Aを稼働系、不揮発性記憶装置13Bを待機系として説明する。なお、不揮発性記憶装置13A,13Bは、必ずしも別々の記憶装置として構成される必要はなく、1つの不揮発性記憶装置で実現されてもよい。すなわち、1つの不揮発性記憶装置の内部でパーティションを作成して、稼働系の記憶領域と待機系の記憶領域とに分割する等としてもよい。
【0054】
第2の実施形態における通信端末60のファームウェア更新処理について、第1の実施形態のファームウェア更新処理(
図3)を参照しながら説明する。第2の実施形態では、ファームウェア更新処理によって待機系の不揮発性記憶装置13Bに記憶されたファームウェアを更新することができる。このとき、稼働系の不揮発性記憶装置13Aに記憶されたデータは変更されないため、処理装置11は、不揮発性記憶装置13Aを利用して通常運用(
図2のステップS14参照)を続けながら、不揮発性記憶装置13Bのファームウェア更新を実行可能となる。
【0055】
まず、処理装置11が更新用ファームウェアの有無をサーバ30に問い合わせ、その有無を判定する(ステップS21~S22)。ステップS22で更新用ファームウェアが存在した場合には、処理装置11は、更新用ファームウェアのデータをダウンロードし、揮発性記憶装置12に一時的に記憶する(ステップS23)。
【0056】
そして、処理装置11は、空気圧縮機20からステータスデータを受信し(ステップS24)、受信データに基づいて、予め定めた「特定の条件」を満たすか否かを判定する(ステップS25)。特定の条件の内容は、第1の実施形態と同様でよく、具体的には例えば、空気圧縮機20が空気圧縮動作を実行中(空気圧縮運転中)であること、とする。
【0057】
ステップS25で特定の条件を満たす場合は、処理装置11は、更新用ファームウェアの書き込みを行う(ステップS26)。但し、本実施形態では、処理装置11は、揮発性記憶装置12に一時的に記憶した更新用ファームウェアのデータを、待機系の不揮発性記憶装置13Bに対してのみ書き込む。
【0058】
以上のステップS21~S26の処理が行われることにより、通信端末60では、通信端末10への電力の供給が停止されない(電源が切られない)状況において、待機系の不揮発性記憶装置13Bに記憶されているファームウェアを安全に更新することができる。
【0059】
その後、処理装置11は、不揮発性記憶装置13A,13Bの間で稼働系と待機系とを切り替え、上記の「特定の条件」を満たす場合に、不揮発性記憶装置13Aのファームウェアも更新する。待機系となった不揮発性記憶装置13Aに対するファームウェア更新の手順としては、例えば、ステップS23で揮発性記憶装置12に一時的に記憶されている更新用ファームウェアのデータを、不揮発性記憶装置13Aに書き込めばよい。
【0060】
以上に説明したように、第2の実施形態に係る通信端末60は、稼働系の不揮発性記憶装置13Aを利用して通常運用の動作を継続しながら、待機系の不揮発性記憶装置13Bのファームウェアを更新することができる。したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態で得られる効果に加えて、動作中にファームウェアが更新できる点で第1の実施形態よりも効率よく、また稼働系のファームウェアは同時に更新されない点で第1の実施形態よりも安全に、ファームウェアの更新を実行することができる。
【0061】
(3)他の実施形態
上述の第1及び第2の実施形態で説明した通信端末10,60は、処理装置11、揮発性記憶装置12、及び不揮発性記憶装置13(13A,13B)を構成として備え、これらが何らかの筐体に格納された電子機器の形態で実現される。しかし、本発明は、このような筐体に格納された電子機器の形態に限定されるものではない。具体的には例えば、筐体に格納されずに、上記の各構成が含まれる組込用通信基板の形態であってもよい。さらに、組込用通信基板の形態をとる場合、1枚の基板上に形成されることに限定されず、1または複数の各構成に相当する回路等が、複数の基板に分割されて形成され、これら複数の基板が結線された形態であってもよい。
【0062】
また、
図1や
図4では、通信端末10(または通信端末60)を、産業機器(空気圧縮機20)とは別の独立した装置として示したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、通信端末10,60が産業機器(空気圧縮機20)の付属品として取付けられる構成であってもよい。また例えば、上述した組込用通信基板の形態で、産業機器(空気圧縮機20)に内蔵される構成であってもよい。
【0063】
また、
図1や
図4では、通信端末10(または通信端末60)で使用される電力は、産業機器(空気圧縮機20)の電源50から電力供給線52,53を介して供給されるように示されているが、本発明における電力供給は、このような構成に限定されるものではなく、通信端末(あるいは組込用通信基板)への電力の供給が産業機器に制御されている形態であればよい。したがって、通信端末や組込用通信基板への電力供給を産業機器(空気圧縮機20)が制御できる構成となっていれば、本発明の通信端末や組込用通信基板は、産業機器とは別の独自電源を有してもよい。
【0064】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に置くことができる。
【0065】
また、図面における制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実施には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10,60 通信端末
11 処理装置
12 揮発性記憶装置
13,13A,13B 不揮発性記憶装置
20 空気圧縮機
21 処理装置
22 空気圧縮部
30 サーバ
40 ネットワーク
41,42,43 外部信号線
44,45 内部信号線
50 電源
51 電源スイッチ
52,53 電力供給線