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特許7239439回転ビーム送達を伴う粒子線治療システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】回転ビーム送達を伴う粒子線治療システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
A61N5/10 T
A61N5/10 H
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019189495
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2020062410
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】18200961.3
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509125981
【氏名又は名称】イオン・ビーム・アプリケーションズ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・ボシエ
(72)【発明者】
【氏名】イヴ・クラエルブド
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ヤンセン
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ドゥ・ヴィルド
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・ヴァンゲンベルゲ
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/031365(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0142310(US,A1)
【文献】国際公開第2015/137290(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 36/10-36/14
A61N 5/00-5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者標的荷電粒子ビームを照射するための粒子線治療システムであって、
前記荷電粒子ビームを生成するための粒子加速器であって、前記荷電粒子ビームはイオンのビームである、粒子加速器と、
前記荷電粒子ビーム前記標的に送達するためのビーム送達装置と、
前記荷電粒子ビーム前記粒子加速器から前記ビーム送達装置に輸送するためのビーム輸送システムと、
前記被験者を支持するための支持装置であって、
前記ビーム送達装置は、前記標的の周囲で、前記支持装置に対して回転可能であり、および/または前記支持装置は、複数の照射角度に従って前記荷電粒子ビーム前記標的に送達することが可能になるように、前記ビーム送達装置に対して回転可能である、支持装置と、
前記ビーム送達装置前記標的の周囲で前記支持装置に対して複数のビームオン速度で回転させるように制御し、および/または前記支持装置前記ビーム送達装置に対して複数のビームオン速度で回転させるように制御し、その間に前記標的前記荷電粒子ビームを照射するように構成されたコントローラと、
を備える、粒子線治療システムにおいて、
前記コントローラは、前記複数の照射角度のうち第1の照射角度に対応する第1のビームオン速度および第2の照射角度に対応する第2のビームオン速度の、少なくとも2つの異なる非ゼロビームオン速度で、前記ビーム送達装置を、前記標的の周囲で、前記支持装置に対して回転させるように制御するように構成されていること、
および/または、
前記コントローラは、前記複数の照射角度のうち前記第1の照射角度に対応する第3のビームオン速度および前記第2の照射角度に対応する第4のビームオン速度の、少なくとも2つの異なる非ゼロビームオン速度で、前記支持装置を、前記ビーム送達装置に対して回転させるように制御するように構成されていること
前記コントローラはさらに、複数のビームオフ速度で前記ビーム送達装置を前記支持装置に対して回転させるか、前記支持装置を前記ビーム送達装置に対して回転させるように制御して、その間、前記標的に前記荷電粒子ビームを照射することを停止させるように構成されていること、
前記コントローラはさらに、前記複数の照射角度のうち前記第1の照射角度に対応する第1のビームオフ速度および前記第2の照射角度に対応する第2のビームオフ速度の、少なくとも2つの異なる非ゼロビームオフ速度で、前記ビーム送達装置を前記支持装置に対して回転させるか、前記支持装置を前記ビーム送達装置に対して回転させるように制御するように構成されていること、および、
前記コントローラはさらに、前記ビーム送達装置が少なくとも1つの前記ビームオフ速度で回転する間に、前記標的に送達されるべき前記粒子ビームのエネルギーを変化させるように構成されていることを特徴とする、粒子線治療システム。
【請求項2】
前記ビーム送達装置は、前記標的の周囲で、前記支持装置に対して回転可能であることを特徴とする、請求項1に記載の粒子線治療システム
【請求項3】
前記ビーム送達装置は、ガントリー上に装着され、前記ガントリーは、前記支持装置に対して回転可能であることを特徴とする、請求項2に記載の粒子線治療システム
【請求項4】
前記支持装置は、前記ビーム送達装置に対して回転可能であることを特徴とする、請求項1に記載の粒子線治療システム
【請求項5】
前記複数の照射角度のうち少なくとも1つの照射角度に関して、前記ビームオン速度は前記支持装置に対する前記ビーム送達装置のシステム固有の最小回転速度に依存し、または前記ビーム送達装置に対する前記支持装置のシステム固有の最小回転速度に依存する、請求項1に記載の粒子線治療システム。
【請求項6】
前記複数の照射角度のうち前記少なくとも1つの照射角度に関して、前記ビームオン速度がさらに、前記支持装置に対する前記ビーム送達装置のシステム固有の最大回転速度に依存し、または前記ビーム送達装置に対する前記支持装置のシステム固有の最大回転速度に依存する、請求項5に記載の粒子線治療システム。
【請求項7】
前記複数の照射角度のうち少なくとも1つの照射角度に関して、前記ビームオン速度が前記支持装置に対する前記ビーム送達装置のシステム固有の最大回転速度に依存し、または前記ビーム送達装置に対する前記支持装置のシステム固有の最大回転速度に依存する、請求項1に記載の粒子線治療システム。
【請求項8】
前記コントローラがさらに、複数の照射場のうちの少なくとも1つの照射場で前記標的を照射する間に前記ビームオン速度を一定に維持するように構成され、前記複数の照射場の各照射場は、前記複数の照射角度のうち特定の照射角度に対応する、請求項1に記載の粒子線治療システム。
【請求項9】
前記コントローラはさらに、複数の照射場のうち少なくとも1つの照射場で前記標的を照射する間に、前記ビームオン速度を変化させるように構成され、前記複数の照射場の各照射場は、前記複数の照射角度のうち特定の照射角度に対応する、請求項1に記載の粒子線治療システム。
【請求項10】
前記加速器はサイクロトロンまたはシンクロトロンである、請求項1に記載の粒子線治療システム。
【請求項11】
前記荷電粒子ビームは陽子または炭素イオンのビームである、請求項1に記載の粒子線治療システム。
【請求項12】
前記コントローラは、複数の照射場に従って前記標的に前記荷電粒子ビームを照射するように構成され、前記複数の照射場の各照射場は、前記複数の照射角度のうちの特定の照射角度に対応し、
前記コントローラは、前記ビーム送達装置のシステム固有の最大回転速度ωmaxを入力として受け取り、
少なくとも1つの照射角度に関して、前記コントローラは、臨床要件に起因する許容差Dα 及び前記少なくとも1つの照射角度に対応する前記照射場で前記標的を照射するのに必要な時間t を入力として受け取り、
2×Dα is /t の値がωmaxより大きい場合、前記コントローラは前記少なくとも1つの照射角度に関する前記ビームオン速度をω(t)=2×Dα is /t の値に設定し、2×Dα is /t がωmax以下の場合、前記ビーム送達装置が角度位置(α -Dα is )に到達するか、または角度位置(α -Dα is )にあるとき、前記コントローラが前記粒子ビームをオンにし、前記ビーム送達装置が角度位置(α n+ Dα is )にあるとき、前記コントローラが前記ビームをオフにするように、前記コントローラが構成された、請求項1に記載の粒子線治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば陽子線治療システムなどの荷電粒子線治療システム、さらに具体的には、荷電粒子ビーム送達装置が、治療されるべき被験者の標的に荷電粒子ビームを送達する間に前記標的に対して回転しており、および/または前記被験者を支持する装置が、前記標的に荷電粒子ビームを送達する間に荷電粒子ビーム送達装置に対して回転している、荷電粒子線治療システムに関する。
【0002】
例示的な事例では、このようなシステムは、スポットスキャン陽子ARC(Spot-scanning Proton ARC)もしくはスキャン陽子ARC(Scanned Proton ARC)(SPARC)システムと呼ばれるか、または、対応する治療方法に言及する場合にはSPARC治療と呼ばれることがある。
【背景技術】
【0003】
例えば陽子線治療などの粒子線治療は、当技術分野で周知であり、標的(腫瘍)レベルにおける線量原体性を高めると共に、被験者(患者)が受ける全線量を減少させることによって、治療の質を改善する可能性を有している。腫瘍線量をより良く方向づけることによって、決定臓器への線量をさらに減少させることができる。さらに、SPARC治療技術は、治療方針の頑健性を増大させ、線量増加および少分割照射の採用をさらに改善し得る。
【0004】
SPARCシステムおよび方法は、例えば米国特許第7834336(B2)号から既知である。
【0005】
この特許は、荷電粒子線治療を用いて被験者内の標的に照射する方法を開示しており、この方法は、被験者を支持装置上に位置付けるステップと、荷電粒子を送達するように構成された送達装置を位置付けるステップと、荷電粒子を被験者内の標的に送達するステップと、を含み、送達装置は、荷電粒子の少なくとも一部の送達中に標的の周辺で回転する。
【0006】
このようなシステムはうまく機能するが、システム動作が制御される方法には、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7834336(B2)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、最新技術の問題を少なくとも部分的に解決することである。より具体的には、本発明の目的は、被験者の治療時間を低減することである。
【0009】
本発明は、独立請求項によって定義される。従属請求項は、有利な実施形態を定義する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、被験者の標的に荷電粒子ビームを照射するための粒子線治療システムであって、
荷電粒子ビームを生成するための粒子加速器と、
荷電粒子ビームを標的に送達するためのビーム送達装置と、
荷電粒子ビームを粒子加速器からビーム送達装置に輸送するためのビーム輸送システムと、
被験者を支持するための支持装置であって、
ビーム送達装置は、標的の周囲で、支持装置に対して回転可能であり、および/または支持装置は、複数の照射角度に従って荷電粒子ビームを標的に送達することが可能になるように、ビーム送達装置に対して回転可能である、支持装置と、
ビーム送達装置を標的の周囲で支持装置に対してビームオン速度(beam-on speed)で回転させ、および/または支持装置をビーム送達装置に対してビームオン速度で回転させ、その間に標的に荷電粒子ビームを照射するように構成された、コントローラと
を備える、粒子線治療システムにおいて、
コントローラは、複数の照射角度のうち第1の照射角度に対応する第1のビームオン速度および第2の照射角度に対応する第2のビームオン速度の、少なくとも2つの異なる非ゼロビームオン速度で、ビーム送達装置を、標的の周囲で、支持装置に対して回転させるように構成されていること、
および/または、
コントローラは、複数の照射角度のうち第1の照射角度に対応する第3のビームオン速度および第2の照射角度に対応する第4のビームオン速度の、少なくとも2つの異なる非ゼロビームオン速度で、支持装置を、ビーム送達装置に対して回転させるように構成されていることを特徴とする粒子線治療システムが提供される。
【0011】
このようなシステムでは、ビーム送達装置および/または支持装置を実際に制御することができ、それによって、それらは、種々の回転速度で、種々の照射角度またはその周囲で回転し、したがって治療時間を低減する。治療時間が短くなることは、患者にとってより快適であり、また1日に、より多くの患者を治療することを可能にする。第1の照射角度に対応する第1の場の照射が、例えば、第2の照射角度に対応する第2の場に照射するのに必要な時間より短い時間を必要とする場合、コントローラは、ビーム送達装置および/または支持装置が第1の照射角度またはその周囲にあるとき、ビームオン速度(すなわち、標的に照射する間のビーム送達装置および/または支持装置の回転速度)を増大させ得る。
【0012】
好ましくは、ビーム送達装置は、標的の周囲で、支持装置に対して回転可能である。さらに好ましくは、ビーム送達装置は、ガントリー上に装着され、ガントリーは、支持装置に対して回転可能である。
【0013】
好ましくは、または代わりに、支持装置も、ビーム送達装置に対して回転可能である。
【0014】
コントローラは、好ましくは複数の照射場に従って標的に荷電粒子ビームを照射するように構成され、前記複数の照射場の各照射場は、複数の照射角度のうちの特定の照射角度にそれぞれ対応する。特定の照射角度に対応する照射場は、例えば前記特定の照射角度について医師によって選択された照射場であり、システムに入力される。
【0015】
いくつかの実施例では、各照射場のシステムパラメータが、コントローラの一部であっても一部でなくてもよい治療計画サブシステムによって提供される。コントローラは次にすべてのシステムパラメータを設定し、それによって、動作する際、システムは、ビーム送達装置および/または支持装置が対応する照射角度またはその周辺にあるときに前記場を標的に照射する。
【0016】
好ましくは、複数の照射角度のうちの少なくとも1つの照射角度について、ビームオン速度は、前記少なくとも1つの照射角度に対応する照射場を標的に照射するのに必要な時間に依存する。好ましくは、前記ビームオン速度は、前記少なくとも1つの照射角度に対応する照射場を標的に照射するための前記時間に反比例する。実際に、必要な照射時間が少ないほど、速いビームオン速度が使用され得る。
【0017】
本発明のこれらおよびさらなる態様は、添付図面を参照して、例としてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による粒子線治療システムを概略的に示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態による例示的なビーム送達装置を概略的に示す図である。
図3】本発明によるシステムのビーム送達装置の回転速度および粒子ビームのオン/オフ状態の例示的な曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面の描画は、一定の比率に縮小して描かれておらず、釣り合いが取れているわけでもない。一般的に、同様または同一の構成要素は、図面中、同じ参照符号で示されている。
【0020】
図1は、本発明による粒子線治療システム(1)を概略的に示す。これは、基本的には、被験者(20)の標的(10)に荷電粒子ビーム(30)を照射するための粒子線治療システムである。粒子線治療システム(1)は、
荷電粒子ビーム(30)を生成するための粒子加速器(40)と、
荷電粒子ビーム(30)を標的(10)に送達するためのビーム送達装置(50)と、
荷電粒子ビーム(30)を粒子加速器(40)からビーム送達装置(50)に輸送するためのビーム輸送システム(60)と、
被験者(20)を支持するための支持装置(70)と、を含む。
【0021】
ビーム送達装置(50)は、標的(10)の周囲で、支持装置(70)に対して回転可能であり、複数の照射角度(α)に従って荷電粒子ビーム(30)を標的(10)に送達することを可能にする(第1の実施形態)。代わりに(第2の実施形態)、またはさらに(第3の実施形態)、支持装置(70)は、ビーム送達装置(50)に対して回転可能であり、複数の照射角度(α)に従って荷電粒子ビーム(30)を標的(10)に送達することを可能にする。
【0022】
粒子線治療システム(1)はまた、ビーム送達装置(50)を、標的(10)の周囲で、支持装置(70)に対して、ビームオン速度で回転させ、および/または支持装置(70)を、ビーム送達装置(50)に対して、ビームオン速度で回転させ、その間に標的(10)に荷電粒子ビーム(30)を照射するように構成された、コントローラ(80)を含む。
【0023】
このような構成は、当技術分野で周知であり、例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第7834336(B2)号に記載されている。
【0024】
本発明に特有なのは、コントローラ(80)が、ビーム送達装置(50)を、標的(10)の周囲で、複数の照射角度(α)のうちの第1の照射角度(α1)に対応する第1のビームオン速度および第2の照射角度(α2)に対応する第2のビームオン速度の、少なくとも2つの異なる非ゼロビームオン速度で、支持装置(70)に対して回転させるように構成されていること、および/またはコントローラ(80)が、支持装置(70)を、複数の照射角度(α)のうちの第1の照射角度(α1)に対応する第3のビームオン速度および第2の照射角度(α2)に対応する第4のビームオン速度の、少なくとも2つの異なる非ゼロビームオン速度で、ビーム送達装置(50)に対して回転させるように構成されていることである。
【0025】
第1の実施形態
本発明による粒子線治療システム(1)の第1の実施形態を、さらに詳細に説明する。この第1の実施形態では、コントローラ(80)は、標的(10)が荷電粒子ビーム(30)を照射されている間、および支持装置(70)が静止したままであるか、または並進運動を行っている間、ビーム送達装置(50)を、標的(10)の周囲で、複数の照射角度(α)のうちの第1の照射角度(α1)に対応する第1のビームオン速度および第2の照射角度(α2)に対応する第2のビームオン速度の、少なくとも2つの異なる非ゼロビームオン速度で、支持装置(70)に対して回転させるように構成されている。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施形態による例示的なビーム送達装置(50)を概略的に示す。
【0027】
この図面では、支持装置(70)、したがって被験者(20)が治療中に静止したままである間、ビーム送達装置(50)が、標的(10)の周囲で時間に応じてビームオン速度ω(t)で回転させられることが分かる。ビーム送達装置(50)がその回転中に占める3つの例示的な角度位置が、3つの照射角度αn-1、α、およびαn+1でそれぞれ示されている。これらの3つの角度位置は、さまざまな瞬間に占められてよく、それらは必ずしも連続していないことに注意する。言い換えれば、ビームオン速度は、正(時計回り)または負(反時計回り)またはこの両方の混合であってよい。好ましくは、ビームオン速度は、被験者(20)の1つの治療中、常に時計回りであるか、または常に反時計回りである。
【0028】
コントローラ(80)は、標的(10)が荷電粒子ビーム(30)を照射されている間、ビーム送達装置(50)を、標的(10)の周囲で、第1の照射角度(α1)に対応する第1のビームオン速度ω(t1)および第2の照射角度(α2)に対応する第2のビームオン速度ω(t2)の、少なくとも2つの異なる非ゼロビームオン速度で、支持装置(70)に対して回転させるように構成されている。第1のビームオン速度ω(t1)は、例えば、ビーム送達装置(50)が角度αにあるときのビーム送達装置(50)の回転速度である。第2のビームオン速度ω(t2)は、例えば、ビーム送達装置(50)が角度αn+1にあるときのビーム送達装置(50)の回転速度である。
【0029】
ビーム送達装置(50)を回転させるためには、これは、例えばモーター付きであってよい。好ましくは、ビーム送達装置(50)はガントリー上に装着され、ガントリーは、標的(10)の周囲で、支持装置(70)に対して回転可能である。このような回転するガントリーは、粒子線治療システム(1)の技術分野で周知である。例示的なガントリーは、アイソセントリックガントリーである。例示的なビーム送達装置(50)は、ノズルと呼ばれることもある。
【0030】
コントローラ(80)は、好ましくは、複数の照射場に従って標的(10)に荷電粒子ビーム(30)を照射するように構成され、前記複数の照射場の各照射場は、複数の照射角度(α)のうちの特定の照射角度(α)にそれぞれ対応する。
【0031】
したがって、これも当技術分野で既知である。しかしながら、本発明に特有なのは、ビーム送達装置(50)が標的(10)の周囲で2つの異なるビームオン速度でそれぞれ回転される間に前記複数の照射場のうちの2つの異なる照射場が標的(10)に送達されるように、コントローラ(80)が構成されていることである。図2の実施例では、第1の照射場は、例えば、ビーム送達装置(50)が角度αに、また好ましくはその周囲にあるときにビーム送達装置(50)が第1のビームオン速度ω(t1)で回転される間に、標的(10)に送達され、第2の照射場は、例えば、ビーム送達装置(50)が角度αn+1に、また好ましくはその周囲にあるときにビーム送達装置(50)がω(t1)とは異なる第2のビームオン速度ω(t2)で回転される間に、標的(10)に送達される。
【0032】
特定の照射角度(α)に対応する照射場は、例えば、前記特定の照射角度(α)について医師が選択した照射場であり、これは、システムに入力される。一般的に、各照射場のシステムパラメータが、コントローラ(80)の一部であっても一部でなくてもよい治療計画サブシステムによって提供される。コントローラ(80)は次に、すべてのシステムパラメータを設定し、それによって、動作する際、システムは、ビーム送達装置(50)および/または支持装置(70)が対応する照射角度(α)またはその周辺にあるときに前記場を標的(10)に照射する。
【0033】
好ましくは、コントローラ(80)は、複数の照射角度(α)のうちの少なくとも1つの照射角度(α)について、ビームオン速度が、前記少なくとも1つの照射角度(α)に対応する照射場を標的(10)に照射する時間に依存するように、構成される。例えば既知のスポットスキャン技術により標的(10)に層ごとに照射するように構成された粒子線治療システム(1)の場合、標的(10)を照射する前記時間は、前記照射場のすべての層のすべてのスポットを照射するのに必要な時間であり、これは、粒子ビーム(30)を調整するのに必要な時間も含み得る。
【0034】
好ましくは、前記ビームオン速度は、前記少なくとも1つの照射角度(α)に対応する照射場を標的(10)に照射する前記時間に反比例する。実際に、必要な照射時間が少ないほど、速いビームオン速度が使用され得る。
【0035】
好ましくは、コントローラ(80)は、複数の照射角度(α)のうちの前記少なくとも1つの照射角度(α)について、ビームオン速度が、支持装置(70)に対するビーム送達装置(50)のシステム固有の最小回転速度にさらに依存するように、構成される。ビーム送達装置(50)のシステム固有の最小回転速度は、例えば、それを下回ると、粒子線治療システム(1)が粒子線治療に必要な条件下で動作しないか、またはまったく動作しない速度である。ビーム送達装置(50)のシステム固有の最小回転速度は、例えば、それを下回ると、速度コントローラ(80)が動作しない最小回転速度である。
【0036】
さらに具体的には、コントローラ(80)は、好ましくは、ビームオン速度が、あらゆるすべての照射角度(α)で、ビーム送達装置(50)の前記システム固有の最小回転速度以上となるように構成されている。ビームオン速度は、ここで、ビーム送達装置(50)があらゆるすべての照射角度(α)にあるとき、標的(10)の周囲のビーム送達装置(50)の瞬間回転速度とみなされる。
【0037】
好ましくは、コントローラ(80)は、複数の照射角度(α)のうちの前記少なくとも1つの照射角度(α)について、ビームオン速度が、支持装置(70)に対するビーム送達装置(50)のシステム固有の最大回転速度にさらに依存するように、構成される。
【0038】
ビーム送達装置(50)のシステム固有の最大回転速度は、例えば、それを上回ると、粒子線治療システム(1)が粒子線治療に必要な条件下で動作しない速度であるか、または単にシステムが物理的理由で超えることのできない限界速度(例えば、駆動モーターの最大速度)である。さらに具体的には、コントローラ(80)は、好ましくは、ビームオン速度が、あらゆるすべての照射角度(α)で、ビーム送達装置(50)の前記システム固有の最大回転速度以下であるように構成されている。ビームオン速度は、ここで、標的(10)の周囲のビーム送達装置(50)の瞬間回転速度ω(t)とみなされる。
【0039】
いくつかの実施例では、または少なくとも1つの照射角度(α)について、コントローラ(80)は、標的(10)に前記複数の照射場のうちの少なくとも1つの照射場を照射する間、ビームオン速度を一定に保つようにさらに構成されている。
【0040】
他の実施例では、または少なくとも別の照射角度(α)について、コントローラ(80)は、標的(10)に前記複数の照射場のうちの少なくとも1つの照射場を照射する間、ビームオン速度を変化させるように構成されている。
【0041】
次に再び図2と、コントローラ(80)が複数の照射場に従って標的(10)に荷電粒子ビーム(30)を照射するように構成され、前記複数の照射場の各照射場が複数の照射角度(α)のうちの特定の照射角度(α)にそれぞれ対応する場合と、を参照する。当技術分野で既知のように、照射場での標的(10)の照射は、ビーム送達装置(50)の角度位置が照射角度(α)αの前および/または後の角度の制限範囲内にある間に実行され得る。角度位置のこの制限範囲は、以下、許容差ウィンドウと命名する。図2の実施例では、照射角度(α)αに対応する場の照射は、例えば、角度位置(α-Dα)および(α+Dα)によって境界が定められる許容差ウィンドウ内でビーム送達装置(50)が回転する間に、実行され得る。
【0042】
このような許容差Dαnは、例えば臨床要件に起因し、コントローラ(80)への入力として役立ち得る。その他の照射角度(α)についても同じことが言える。前述したように、コントローラ(80)への別の入力は、標的(10)に前記少なくとも1つの照射角度(α)に対応する照射場を照射するのに必要な時間であってよい。
【0043】
いくつかの実施例では、コントローラ(80)は、複数の照射角度(α)の各照射角度(α)αについて、以下を受信または計算する:標的(10)に送達される対応する照射場、照射角度(α)αにおける許容差Dα、および標的(10)に照射角度(α)αに対応する照射場を照射するのに必要な時間t。これらのパラメータに基づいて、コントローラ(80)は次に、例えば、照射角度αについてω(t)=2.Dα/t(rad/s単位)に等しくてよい、ビームオン速度を計算する。コントローラ(80)は次に、当然、ビーム送達装置(50)が角度位置(α-Dα)に到達するか、またはその角度位置(α-Dα)にあるとき、粒子ビーム(30)をオンにし、好ましくは、ビーム送達装置(50)が位置(α+Dα)にあるとき、ビーム(30)をオフにする。
【0044】
前述したように、コントローラ(80)は、好ましくは、ビームオン速度が、ビーム送達装置(50)のシステム固有の最小回転速度以上となるように構成されている。この場合、コントローラ(80)への追加入力は、ビーム送達装置(50)の前記システム固有の最小回転速度である。2.Dα/tの値が前記システム固有の最小回転速度より小さいことが判明したら、コントローラ(80)は、例えばビーム送達装置(50)の回転をしばらくの間停止させ得る。
【0045】
前述したように、コントローラ(80)は、好ましくは、ビームオン速度がビーム送達装置(50)のシステム固有の最大回転速度以下となるように構成されている。この場合、コントローラ(80)への追加入力は、ビーム送達装置(50)の前記システム固有の最大回転速度である。2.Dα/tの値が前記システム固有の最大回転速度より大きいことが判明したら、コントローラ(80)は、例えば、先に受信または計算されたDαの値を、より小さい値Dαisに引き下げ、ビーム送達装置(50)が角度位置(α-Dαis)に到達するか、または角度位置(α-Dαis)にあるとき、粒子ビーム(30)をオンにし、好ましくは、ビーム送達装置(50)が位置(α+Dαis)にあるとき、ビーム(30)をオフにすることができる。
【0046】
前述した実施例では、ビーム(30)は、ビーム送達装置(50)が、照射角度(α)αの周囲に対称に配置された角度位置にある間、オンに維持されるが、照射角度(α)αの前および/または後の角度位置の臨床的許容可能範囲内にとどまるという条件で、非対称の動作も、当然使用され得る。
【0047】
好ましくは、コントローラ(80)は、関連付けられた許容差ウィンドウ内の所与の照射角度(α)に関連付けられた完全な照射場を送達することを可能にする、最高ビームオン速度を見つけるように構成されている。
【0048】
ビーム送達装置(50)の回転速度に関するフィードバック読み取りの働きに応じて、2つの例示的なストラテジーがある。
【0049】
ストラテジーAは、読み出しが遅すぎるとみなし、この場合、コントローラ(80)は、速度パラメータをすべて事前に計算する。
【0050】
ストラテジーBは、読み出しの働きがコントローラ(80)によるビーム送達装置(50)のリアルタイムでの速度調節に適合することを想定する。
【0051】
ストラテジーA
標的(10)の照射を始める前に、以下のパラメータが、コントローラ(80)によって計算されるか、またはコントローラ(80)に送信される:
・各照射角度(α)のビームオン速度
・ビームオフ速度=2つの連続した照射間のビーム送達装置(50)の回転速度
・各照射場の開始角度=ビーム(30)がオンに切り替えられる角度
【0052】
いったんこの計算が終わると、コントローラ(80)は、以下のシーケンスを開始する:
A1/ ビーム送達装置(50)を、第1の照射角度(α1)に対応する許容差ウィンドウ内の第1の開始角度に動かす;
A2/ ビーム送達装置(50)の速度を現在の照射角度(α)のビームオン速度に設定し、粒子ビーム(30)をオンに切り替える;
A3/ 現在の照射場を標的(10)に送達する;
A4/ いったん照射場が送達されたら、ビーム送達装置(50)の速度をビームオフ速度に設定する:
A5/ 最後の照射場が送達されたら、停止する、そうでなければ次の開始角度に到達するのを待って、ステップA2に進む。
【0053】
ストラテジーB
ストラテジーBでは、同じステップA1~A5が、コントローラ(80)によって実行されるが、ビームオン速度、ビームオフ速度、および開始角度を計算する追加のステップは、例えば、ステップA1中に、および/またはビーム送達装置(50)が先のビームオフ速度で動いている間に、実行される。
【0054】
好ましくは、コントローラ(80)は、ビーム送達装置(50)を、ビームオフ速度で、支持装置(70)に対して回転させ、その間、標的(10)に荷電粒子ビーム(30)を照射するのを停止させ、さらに具体的には、ビーム送達装置(50)を、複数の照射角度(α)のうちの第1の照射角度(α1)に対応する第1のビームオフ速度および第2の照射角度(α2)に対応する第2のビームオフ速度の、少なくとも2つの異なる非ゼロビームオフ速度で、支持装置(70)に対して回転させるようにさらに構成されている。
【0055】
照射場の送達の合間に、すなわち、粒子ビーム(30)がオフに切り替えられたときに、ビーム送達装置(50)の回転速度を変化させることは実際に興味深い。図3について論じ、さらに例えば図2について論じると明らかになるように、次のビームオン速度を準備するために、および/または、粒子ビーム(30)のエネルギーを変化させるのに十分な時間もしくはかろうじて足りるだけの時間を有するために、例えば、ビーム送達装置(50)の回転速度を加速または減速させることができる。所与の照射角度(α)に対応するビームオフ速度は、前記所与の照射角度(α)に対応する照射の終了時(ビーム(30)がオフに切り替えられる)に始まり、次の照射角度(α)に対応する照射の開始時(ビーム(30)が再びオンに切り替えられる)に終了する期間にわたる、ビーム送達装置(50)の平均回転速度である。
【0056】
好ましくは、コントローラ(80)は、ビーム送達装置(50)がビームオフ速度のうちの少なくとも1つで回転する間に、標的(10)に送達される粒子ビーム(30)のエネルギーを変化させるようにさらに構成されている。図2を参照すると、コントローラ(80)は、例えば、ビーム送達装置(50)がβn-1および/またはβおよび/またはβn+1として示される範囲内の角度位置にある間に、標的(10)に送達される粒子ビーム(30)のエネルギーを変化させ得る。コントローラ(80)は、好ましくは、2つの連続する照射角度(α)間の粒子ビーム(30)のエネルギーを変化させるのに必要な時間を考慮するビームオフ速度を選択するように構成されている。具体的には、図2を参照すると、コントローラ(80)は、例えば、2つの連続する照射角度αおよびαn+1間で粒子ビーム(30)のエネルギーを変化させる、すなわち、ビーム(30)のエネルギーを、角度αに対応する照射の終了時に必要なエネルギーから、角度αn+1に対応する照射の始めに必要なエネルギーに変化させ、ビーム送達装置(50)の角度位置がβとして示される範囲内にある間にビーム送達装置(50)の回転速度ω(t)を制御するのに必要とされる時間tseを、前記範囲にわたるω(t)の平均値がβ/tse以下となるように、受信または計算するように構成されている。
【0057】
コントローラ(80)は、好ましくは、ビームオフ速度がビーム送達装置(50)のシステム固有の最小回転速度以上になるように、構成されている。この場合、コントローラ(80)への追加入力は、ビーム送達装置(50)の前記システム固有の最小回転速度である。例えば、範囲βにわたるω(t)の瞬間値が前記システム固有の最小回転速度より小さいことが判明したら、コントローラ(80)は、例えば、ビーム送達装置(50)の回転をしばらくの間、βの範囲内で停止させ得る。
【0058】
コントローラ(80)はまた、好ましくは、ビームオフ速度がビーム送達装置(50)のシステム固有の最大回転速度以下となるように構成されている。この場合、コントローラ(80)への追加入力は、ビーム送達装置(50)の前記システム固有の最大回転速度である。ω(t)の瞬間値がβの範囲内の前記システム固有の最大回転速度より大きいことが判明したら、コントローラ(80)は、例えば、ω(t)の値を、βの範囲にわたってビーム送達装置(50)の前記システム固有の最大回転速度に制限することができる。
【0059】
図3は、動作中、本発明による粒子線治療システムのビーム送達装置(50)の回転速度および粒子ビーム(30)のオン/オフ状態の例示的な曲線を示す。上方曲線(200)は、時間に応じたビーム送達装置(50)の回転速度ω(t)を表し、これは、度/秒で表される。下方曲線(100)は、時間に応じた粒子ビーム(30)のオン/オフ状態を表す。下方曲線(100)上のゼロ値は、ビーム(30)がオフであることに対応し、非ゼロ値は、ビーム(30)がオンであることに対応する。各オン状態期間は、照射角度αに対応する。
【0060】
垂直な点線により、各照射角度(α)について上方曲線(200)上のビームオン速度およびビームオフ速度をはっきりと見ることができる。好ましくは、コントローラ(80)は、例えば、ビーム(30)がオフに切り替えられている間に、粒子ビーム(30)のエネルギーを変化させ得る。
【0061】
好ましくは、加速装置は、サイクロトロンまたはシンクロトロンである。
【0062】
好ましくは、荷電粒子ビーム(30)は、イオンの、好ましくは陽子の、もしくは炭素イオンの、ビームである。
【0063】
第2の実施形態
この第2の実施形態では、コントローラ(80)は、標的(10)が荷電粒子ビーム(30)を照射されている間、および送達装置が静止したままであるか、または並進運動を行っている間、支持装置(70)を、複数の照射角度(α)のうちの第1の照射角度(α1)に対応する第1のビームオン速度および第2の照射角度(α2)に対応する第2のビームオン速度の、少なくとも2つの異なる非ゼロビームオン速度で、ビーム送達装置(50)に対して回転させるように構成されている。
【0064】
この目的で、支持装置(70)は、例えば、ロボット化アームに装着されたカウチであってよく、前記ロボット化アームは、図2に示されるものと同じ参照(referential)におけるXY平面に垂直なZ軸の周囲でカウチを回転させるように構成されている。
【0065】
粒子線治療システム(1)のその他の部分および動作方法は、例えば、第1の実施形態に関連して説明したものと同じかまたは同等である。言い換えれば、第1の実施形態と第2の実施形態との主な違いは、第2の実施形態では、支持装置(70)がビーム送達装置(50)に対して回転されるのに対し、第1の実施形態では、ビーム送達装置(50)が標的(10)の周囲で、支持装置(70)に対して回転させられることである。
【0066】
第3の実施形態
この第3の実施形態では、コントローラ(80)は、標的(10)が荷電粒子ビーム(30)を照射されている間、ビーム送達装置(50)を、標的(10)の周囲で、複数の照射角度(α)のうちの第1の照射角度(α1)に対応する第1のビームオン速度および第2の照射角度(α2)に対応する第2のビームオン速度の、少なくとも2つの異なる非ゼロビームオン速度で、支持装置(70)に対して回転させるように構成されている。
【0067】
この第3の実施形態では、コントローラ(80)は、標的(10)が荷電粒子ビーム(30)を照射されている間、支持装置(70)を、第1の照射角度(α1)に対応する第3のビームオン速度および第2の照射角度(α2)に対応する第4のビームオン速度の、少なくとも2つの異なる非ゼロビームオン速度で、ビーム送達装置(50)に対して回転させるようにさらに構成されている。
【0068】
したがって、この第3の実施形態は、第1の実施形態と第2の実施形態との組み合わせに対応し、ビーム送達装置(50)および支持装置(70)の両方は、標的(10)が荷電粒子ビーム(30)を照射されている間、回転する。第1のビームオン速度、第2のビームオン速度、第3のビームオン速度および第4のビームオン速度のさまざまな組み合わせが、当然可能である。
【0069】
この第3の実施形態では、コントローラ(80)は、ビーム送達装置(50)および/または支持装置(70)に、それらが回転している間に並進運動を実行させるようにさらに構成され得る。
【0070】
本発明は、本発明を説明していて、制限するものと解釈されるものではない、特定の実施形態に関して説明してきた。さらに一般的には、本発明が前記に具体的に図示および/または説明されたものによって制限されないことが、当業者には認識されるであろう。
【0071】
特許請求の範囲中の参照符号は、それらの保護範囲を制限するものではない。
【0072】
動詞「含む(to comprise)」、「含む(to include)」、「から構成される(to be composed of)」、または任意の他の変形体、ならびにそれらのそれぞれの語形変化の使用は、述べられたもの以外の要素の存在を排除するものではない。
【0073】
要素に先行する冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」または「その(the)」の使用は、複数のそのような要素の存在を排除するものではない。
【0074】
本発明は、以下のように説明することもできる:荷電粒子ビーム(30)を生成するための粒子加速器(40)と、ビーム(30)を被験者(20)の標的(10)に送達するためのビーム送達装置(50)と、ビーム(30)を粒子加速器(40)からビーム送達装置(50)に輸送するためのビーム輸送システム(60)と、被験者(20)を支持するための支持装置(70)と、を含む粒子線治療システム(1)。ビーム送達装置(50)は、支持装置(70)に対して回転可能であり、複数の照射角度(α)に従ってビーム(30)を標的(10)に送達することを可能にする。システムはまた、ビーム送達装置(50)をビームオン速度で回転させ、その間に標的(10)にビーム(30)を照射するように構成された、コントローラ(80)を含む。コントローラ(80)は、ビーム送達装置(50)を、複数の照射角度(α)のうちの第1の照射角度(α1)に対応する第1のビームオン速度および第2の照射角度(α2)に対応する第2のビームオン速度の、少なくとも2つの異なるビームオン速度で、支持装置(70)に対して回転させるように構成されている。種々のビームオン速度を有することで、治療時間を低減することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 粒子線治療システム
10 標的
20 被験者
30 荷電粒子ビーム
40 粒子加速器
50 ビーム送達装置
60 ビーム輸送システム
70 支持装置
80 コントローラ
α 照射角度
α1 第1の照射角度
α2 第2の照射角度
αn-1 照射角度
α 照射角度
αn+1 照射角度
(α)α 照射角度
(α)α 照射角度
α 照射角度
ω(t) ビームオン速度
ω(t1) 第1のビームオン速度
ω(t2) 第2のビームオン速度
α-Dα 角度位置
α+Dα 角度位置
α-Dα 角度位置
α+Dα 位置
αn 許容差
Dα 許容差
時間
se 時間
βn-1 範囲
β 範囲
βn+1 範囲
β 範囲
図1
図2
図3