(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/043 20160101AFI20230307BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20230307BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20230307BHJP
B60L 50/72 20190101ALN20230307BHJP
B60L 58/30 20190101ALN20230307BHJP
【FI】
H01M8/043
H01M8/04746
H01M8/249
B60L50/72
B60L58/30
(21)【出願番号】P 2019213391
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沢田 豊
(72)【発明者】
【氏名】横山 幸秀
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-149265(JP,A)
【文献】特開2013-78259(JP,A)
【文献】特開2005-85509(JP,A)
【文献】特開2019-71183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
B60L 50/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
水素ガスタンクと、
前記水素ガスタンクの下流に接続された1つ以上の減圧弁と、
前記減圧弁の下流に接続された第1流路と、前記第1流路の下流に接続され前記第1流路から分岐した複数の第2流路と、を備える水素ガス流路と、
前記複数の第2流路のそれぞれに接続され、開かれることで下流に水素ガスを噴射する複数のインジェクタユニットと、
前記複数のインジェクタユニットのそれぞれに接続された複数の燃料電池スタックと、
前記複数のインジェクタユニットの開閉を制御する制御部であって、前記燃料電池システムが予め定められた運転条件を満たす場合に、前記複数のインジェクタユニットのうち常に少なくとも1つのインジェクタユニットが開いた状態となるように前記複数のインジェクタユニットの閉弁期間をずれた期間に設定する、制御部と、を備える、
燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1
に記載の燃料電池システムであって、
前記運転条件は、前記燃料電池システムにおいて前記複数の燃料電池スタックによる発電を一時的に停止させる間欠運転が行われていないことを含む、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の燃料電池スタックを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の燃料電池スタックを搭載する燃料電池バスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の燃料電池スタックを搭載するバス等の大型車両では、1つの燃料電池スタックを搭載する車両に比べて、走行距離当たりの水素ガスの消費量が多い。そのため、このような大型車両では、燃料電池スタックに供給される水素ガスを減圧するための減圧弁の寿命が、より小型の車両に比べて短くなる場合があり、減圧弁の長寿命化が望まれていた。また、大型車両に限らず、複数の燃料電池スタックを備える燃料電池システムにおいても同様に、減圧弁の長寿命化が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、燃料電池システムが提供される。この燃料電池システムは、水素ガスタンクと、前記水素ガスタンクの下流に接続された1つ以上の減圧弁と、前記減圧弁の下流に接続された第1流路と、前記第1流路の下流に接続され前記第1流路から分岐した複数の第2流路と、を備える水素ガス流路と、前記複数の第2流路のそれぞれに接続され、開かれることで下流に水素ガスを噴射する複数のインジェクタユニットと、前記複数のインジェクタユニットのそれぞれに接続された複数の燃料電池スタックと、前記複数のインジェクタユニットの開閉を制御する制御部であって、前記燃料電池システムが予め定められた運転条件を満たす場合に、前記複数のインジェクタユニットのうち常に少なくとも1つのインジェクタユニットが開いた状態となるように前記複数のインジェクタユニットの閉弁期間をずれた期間に設定する、制御部と、を備える。
この形態によれば、燃料電池システムが予め定められた運転条件を満たす場合に、複数のインジェクタユニットのうち常に少なくとも1つのインジェクタユニットが開いた状態となるように、複数のインジェクタユニットの閉弁期間をずれた期間に設定して、インジェクタユニットの開閉を制御するので、水素ガス流路の圧力が急激に変動することを抑制できる。そのため、水素ガス流路の圧力を所定圧力に減圧するための減圧弁の動作を少なくすることができる。その結果、減圧弁の長寿命化を実現できる。
(2)上記形態の燃料電池システムにおいて、前記1つ以上の減圧弁は前記燃料電池スタックのそれぞれに対応して設けられた複数の減圧弁を含み、前記水素ガス流路は、前記複数の減圧弁のそれぞれに対応して設けられた複数の前記第1流路と前記複数の第2流路とを接続する1つの接続流路を更に備えていてもよい。
この形態によれば、複数の減圧弁に対応して設けられた複数の第1流路と、複数の第2流路とは、1つの接続流路で接続されるので、複数の第2流路のうちのいずれかにおける水素ガスの圧力が所定圧力よりも上昇した場合に、水素ガスは、接続流路を介して他の第2流路へ流れる。そのため、水素ガスが減圧弁の下流から減圧弁の上流へ流れることである水素ガスの逆流を抑制できる。
(3)上記形態の燃料電池システムにおいて、前記運転条件は、前記燃料電池システムにおいて前記複数の燃料電池スタックによる発電を一時的に停止させる間欠運転が行われていないことを含んでもよい。
この形態によれば、燃料電池スタックによる発電が不要な場合を除いて複数のインジェクタユニットのうち常に少なくとも1つのインジェクタユニットが開いた状態となるように、複数のインジェクタユニットの閉弁期間をずれた期間に設定して、インジェクタユニットの開閉を制御するので、減圧弁の長寿命化と、燃料電池システムの適切な運転とを実現できる。
【0007】
本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池システムの制御方法、燃料電池車両、車両に搭載される燃料電池システムの制御方法や、これらの制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体(non-transitory storage medium)等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】第2実施形態における燃料電池システムの概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態
図1は、本開示の一実施形態としての燃料電池システム100の概略構成を示す図である。本実施形態において、燃料電池システム100は、車両200に搭載され、運転車からの要求に応じて車両200の動力源となる電力を出力する。
【0010】
燃料電池システム100は、減圧弁21、22と、高圧配管50と、中圧配管60と、インジェクタユニット31、32と、燃料電池スタック41、42と、制御部81を有する制御装置80と、を備える。本実施形態において、燃料電池システム100は、更に、水素ガスタンク11、12と、主止弁13、14と、低圧配管70とを備える。図示は省略するが、燃料電池システム100は、更に、燃料電池スタック41、42に空気を供給するためのエアコンプレッサ、カソードガス配管等を含むカソードガス供給系を備える。
【0011】
水素ガスタンク11、12は、高圧配管50、中圧配管60、低圧配管70を介して燃料電池スタック41、42の水素ガス入口に接続されており、内部に充填されている水素ガスを燃料電池スタック41、42に供給する。主止弁13、14と、減圧弁21、22と、インジェクタユニット31、32とは、この順序で上流側、つまり、水素ガスタンク11、12に近い側から設けられている。
【0012】
高圧配管50は、主止弁13、14と、減圧弁21、22とを接続する配管である。高圧配管50は、第1高圧配管51と、第2高圧配管52と、接続配管55と、第3高圧配管53と、第4高圧配管54とを備える。主止弁13は第1高圧配管51に接続され、主止弁14は第2高圧配管52に接続されている。主止弁13は、制御部81の制御により開閉し、水素ガスタンク11内の水素ガスを第1高圧配管51に供給する。主止弁14は、制御部81の制御により開閉し、水素ガスタンク12内のガスを第2高圧配管52に供給する。第1高圧配管51及び第2高圧配管52の下流端は、1つの接続配管55に接続されている。接続配管55は、下流において第3高圧配管53及び第4高圧配管54に分岐する。第3高圧配管53には減圧弁21が接続されており、第4高圧配管54には減圧弁22が接続されている。なお、接続配管55を省略し、主止弁13と減圧弁21を直接接続し、主止弁14と減圧弁22を直接接続するようにしてもよい。
【0013】
中圧配管60は、減圧弁21、22と、インジェクタユニット31、32と、を接続する配管である。中圧配管60は、第1中圧配管61と、第2中圧配管62と、接続配管65と、第3中圧配管63と、第4中圧配管64とを備える。減圧弁21は第1中圧配管61に接続され、減圧弁22は第2中圧配管62に接続されている。第1中圧配管61及び第2中圧配管62の下流端は、1つの接続配管65に接続されている。接続配管65は、下流において第3中圧配管63及び第4中圧配管64に分岐する。中圧配管60を「水素ガス流路」とも呼び、第1中圧配管61、第2中圧配管62、接続配管65を「第1流路」とも呼ぶ。接続配管65は「接続流路」とも呼ばれる。また、第3中圧配管63及び第4中圧配管64を「第2流路」とも呼ぶ。
【0014】
減圧弁21、22は、中圧配管60における水素ガスの圧力を予め定められた所定圧力になるように調整する弁である。図示は省略するが、減圧弁21、22は、高圧配管50側と中圧配管60側とに連通する筐体内に収容され、筐体内を摺動する弁体及び弁体が着座可能な弁座とを備え、弁体が摺動及び弁体へ着座することで、中圧配管60の圧力を、予め定められた所定圧力に保つ機能を有する。例えば、減圧弁21、22では、中圧配管60の圧力変動に応じて、中圧配管60の圧力が上記所定圧力になるように、弁体が摺動する。圧力変動が大きい場合には、圧力変動が小さい場合に比べて、弁体が筐体内を摺動する距離(以下、摺動距離)は大きくなる。また、減圧弁21、減圧弁22では、中圧配管60で圧力が上記所定圧力以上に上昇すると弁体が弁座に当接し、高圧配管50から中圧配管60へのガスの流通を停止させる。
【0015】
インジェクタユニット31、32は、中圧配管60に接続されている。インジェクタユニット31、32は、それぞれ、1以上のインジェクタを備える。インジェクタは、制御部81の制御により開閉されて水素ガスを低圧配管70側に向けて噴射する。具体的には、インジェクタは、通電により開かれて下流に向けてガスを噴射し、通電停止により閉じられて下流に向けてのガスの噴射を停止する。「インジェクタユニット31を開く」とは、インジェクタユニット31の備えるインジェクタのうち、少なくとも1つのインジェクタを開くことをいう。「インジェクタユニット31を閉じる」とは、インジェクタユニット31の備えるインジェクタのうち、全てのインジェクタを閉じることをいう。これらのことは、インジェクタユニット32も同様である。
【0016】
低圧配管70は、第1低圧配管71と第2低圧配管72とを備えている。インジェクタユニット31は第3中圧配管63に接続され、第1低圧配管71を介して燃料電池スタック41に向けて水素ガスを噴射する。また、インジェクタユニット32は第4中圧配管64に接続され、第2低圧配管72を介して燃料電池スタック42に向けて水素ガスを噴射する。
【0017】
制御装置80は、いずれも図示しないCPUとメモリとインターフェースとを備えるECU(Electronic Control Unit)として構成されている。制御装置80は、メモリに記憶されたプログラムを展開して実行することにより、制御部81として機能する。制御部81は、図示しないセンサの計測結果を取得し、燃料電池システム100内の各部の動作を制御する。
【0018】
また、制御部81は、燃料電池システム100に求められる要求電力に応じて、燃料電池スタック41、42を発電させる。例えば、制御部81は、燃料電池スタック41、42の合計発電電力が要求電力に見合うように、第1低圧配管71における目標圧力値や、第2低圧配管72における目標圧力値を設定する。制御部81は、第1低圧配管71に設けられた図示しない圧力センサの計測結果を取得して、第1低圧配管71の圧力値が目標圧力値になるように、インジェクタユニット31を制御する。また、制御部81は、第2低圧配管72に設けられた図示しない圧力センサの計測結果を取得して、第2低圧配管72の圧力値が目標圧力値になるように、インジェクタユニット32を制御する。
【0019】
また、制御部81は、燃料電池システム100が予め定められた運転条件を満たす場合に、インジェクタユニット31、32のうち常に少なくとも1つのインジェクタユニットが開いた状態となるようにインジェクタユニット31、32の閉弁期間をずれた期間に設定してインジェクタユニット31、32を制御する、水素ガス供給制御を実行する。この制御は、インジェクタユニット31、32と減圧弁21、22との間の中圧配管60における圧力値の変動を抑制するために実行される。
【0020】
予め定められた運転条件は、燃料電池システム100が間欠運転をしていないことを含む。間欠運転とは、燃料電池システム100において複数の燃料電池スタック41、42による発電を一時的に停止させる運転である。間欠運転は、例えば、燃料電池システム100における要求電力が小さく、燃料電池スタック41、42からの発電指令値がゼロに設定される場合に行われる。上記運転条件は、燃料電池システム100が、回生運転をしていないことを含んでもよい。回生運転とは、燃料電池システム100が搭載される車両200が備える図示しない駆動モータにおいて発生する電力を回生して、車両200の制動力とするための回生制動が行われている運転である。燃料電池システム100の運転中における期間の大半、例えば、8割以上の期間において、複数の燃料電池スタック41、42が発電を継続しており、予め定められた運転条件が満たされる。また、予め定められた運転条件は、各インジェクタユニット31、32の1周期あたりの開弁期間であるデューティー(Duty)の合計が100%以上であることを含む。
【0021】
図2は、制御部81において実行される水素ガス供給制御を示す工程図である。この制御は、燃料電池システム100が始動されてから停止されるまで、繰り返し実行される。ステップS10では、制御部81は、燃料電池システム100が、上述した予め定められた運転条件を満たすか否か判定する。燃料電池システム100が予め定められた運転条件を満たさない場合(ステップS10、NO)、制御部81は、ステップS30において、要求発電量に応じてインジェクタユニット31、32を制御する。ステップS30では、制御部81は、要求発電量がゼロであれば、インジェクタユニット31、32を閉じる。
【0022】
予め定められた運転条件を満たす場合(ステップS10、YES)、制御部81は、ステップS20において、インジェクタユニット31、32のうち、常に少なくとも1つのインジェクタユニットが開いた状態となるように、複数のインジェクタユニット31、32の閉弁期間をずれた期間に設定して、インジェクタユニット31、32の開閉を制御する。
【0023】
図3は、複数のインジェクタユニットの開閉のタイミングを変更させた2つの実験(実験1、2)について説明するための図である。実験は、
図1に示す燃料電池システム100を用いて行った。実験1、2におけるインジェクタユニット31、32の駆動周期は、100msecである。駆動周期とは、今回インジェクタユニットが開かれてからインジェクタユニットが閉じられ、次回インジェクタユニットが開かれるまでの期間である。実験1、2におけるインジェクタユニット31、32の作動パターンは以下のとおりである。
【0024】
<実験1>インジェクタユニット31の開閉タイミングとインジェクタユニット32の開閉タイミングとを同じにする。各インジェクタユニット31、32のデューティーは、85%である。実験1では、インジェクタユニット31が開かれたときを0msecとすると、85msecまではインジェクタユニット31、32を開き、85msecから100msecまではインジェクタユニット31、32を閉じることを繰り返す。実験1では、1周期のうち、いずれのインジェクタユニット31、32も開いていない期間が一期間(
図3、P1参照)存在する。
【0025】
<実験2>インジェクタユニット31、32のうち、常に少なくとも一方が開くように、インジェクタユニット31、32の閉弁期間をずれた期間に設定する。各インジェクタユニット31、32のデューティーは、85%である。実験2では、インジェクタユニット31が開かれたときを0msecとすると、85msecまではインジェクタユニット31を開き、85msecから100msecまではインジェクタユニット31を閉じることを繰り返す。また、インジェクタユニット31が開かれてから15msec後にインジェクタユニット32を85msecだけ開き、85msec経過したらインジェクタユニット32を閉じることを繰り返す。実験2では、インジェクタユニット31、32の閉弁期間はずれており、いずれのインジェクタユニット31、32も開いていない期間は存在しない。
【0026】
発明者らは、上記実験1、2において、同期間あたりの減圧弁21、22のそれぞれの摺動距離と、弁体の着座回数と、を調査した。その結果、実験1における摺動距離を基準値Lとした場合、実験2における摺動距離は0.5Lであり実験1よりも短かった。また、実験1では、減圧弁21、22は、いずれのインジェクタユニット31、32も開いていない期間(
図3、P1参照)において着座した。減圧弁21、22の着座回数は、実験1ではインジェクタユニットの1周期を繰り返した作動回数と同じn回であった。これに対し、実験2では減圧弁21、22の着座回数はゼロ回であった。
【0027】
以上の実験結果から、複数のインジェクタユニット31、32のうち常に少なくとも1つのインジェクタユニットが開いた状態となるように、インジェクタユニット31、32の閉弁期間をずれた期間に設定してインジェクタユニットの開閉を制御することで、減圧弁21、22の摺動距離が短くなること、及び、減圧弁21、22の着座回数を低減できることが示された。
【0028】
本実施形態によれば、燃料電池システム100が予め定められた運転条件を満たす場合に、複数のインジェクタユニット31、32のうち常に少なくとも1つのインジェクタユニットが開いた状態となるように、複数のインジェクタユニット31、32の閉弁期間をずれた期間に設定して、インジェクタユニット31、32の開閉を制御するので、水素ガス流路としての中圧配管60の圧力が急激に変動することを抑制できる。そのため、中圧配管60の圧力を所定圧力に減圧するための減圧弁21、22の摺動距離や着座回数を少なくすることができ、減圧弁21、22の長寿命化を実現できるという、第1の効果を奏する。また、減圧弁21、22の長寿命化により、車両200における走行保証距離をより長くできる。
【0029】
また、例えば、水素ガス流路としての中圧配管60が接続配管65を備えておらず、第1中圧配管61と第3中圧配管63とが接続され、第2中圧配管62と第4中圧配管64とが接続されているシステムを想定する。当該システムにおいて、例えば、第1中圧配管61内及び第3中圧配管63内の圧力が所定圧力よりも上昇すると、第1中圧配管61内及び第3中圧配管63内の水素ガスが減圧弁21を逆流して減圧弁22側へ流れる場合がある。しかし、本実施形態によれば、複数の減圧弁21、22にそれぞれ接続する複数の第1流路としての第1中圧配管61及び第2中圧配管62と、複数のインジェクタユニット31、32にそれぞれ接続する複数の第2流路としての第3中圧配管63及び第4中圧配管64とは、1つの接続配管65で接続されているので、上記の水素ガスの逆流を抑制でき、減圧弁21、22の長寿命化を実現できるという第2の効果を奏する。
【0030】
また、本実施形態によれば、燃料電池システム100が予め定められた運転条件を満たす場合に水素ガス供給制御を実行する。予め定められた運転条件は、燃料電池システム100の運転中における大半の期間において満たされるので減圧弁21、22の長寿命化を実現でき、運転条件が満たされない場合には水素ガス供給制御を実行しないので燃料電池システム100の適切な運転を実現できるという、第3の効果を奏する。
【0031】
本実施形態では、減圧弁21、22の数と、燃料電池スタック41、42の数とは同じである。そのため、1つの燃料電池スタックを備える車両において用いられる減圧弁と同様の圧力調整機能を有する減圧弁を転用することができる。したがって、複数の燃料電池スタック41、42を備える燃料電池システム100を構築するためにかかる費用を抑制することができる。
【0032】
B.第2実施形態
図5は、第2実施形態における燃料電池システム100aの概略構成を示す図である。燃料電池システム100aは、車両200aに搭載されている。燃料電池システム100aは、水素ガスタンクと減圧弁がそれぞれ1つである点、及び、高圧配管50aの構成、中圧配管60aの構成において、上述の実施形態における燃料電池システム100と異なる。具体的には、燃料電池システム100aでは、水素ガスタンク11の下流における主止弁13と減圧弁21とが第1高圧配管51aで接続されており、減圧弁21と第1中圧配管61aとが接続されており、第1中圧配管61aが第3中圧配管63及び第4中圧配管64に分岐している。本実施形態において、制御装置80aの備える制御部81aは、第1実施形態の制御部81と同様に、燃料電池システム100aが予め定められた運転条件を満たす場合に、インジェクタユニット31、32のうち常に少なくとも1つのインジェクタユニットが開いた状態となるように、複数のインジェクタユニット31、32の閉弁期間をずれた期間に設定して、インジェクタユニット31、32の開閉を制御する、水素ガス供給制御を実行する。この形態によっても、第1実施形態の第1及び第3の効果と同様の効果を奏する。
【0033】
C.他の実施形態
上記各実施形態において、燃料電池スタックの数及びインジェクタユニットの数は、2よりも多くてもよい。この形態によっても、上記各実施形態と同様の効果を奏する。
【0034】
上記実施形態において、燃料電池システム100、100aが搭載される車両200、200aはバスであるが、燃料電池システム100は、トラック等の他の大型車両や商用車両に搭載されてもよい。また、燃料電池システム100、100aは車両に限らず、船舶、電車、ロボット等の移動体に搭載されてもよいし、定置されるものであってもよい。
【0035】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、他の実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
11、12…水素ガスタンク、13、14…主止弁、21、22…減圧弁、31、32…インジェクタユニット、41、42…燃料電池スタック、50、50a…高圧配管、51、51a…第1高圧配管、52…第2高圧配管、53…第3高圧配管、54…第4高圧配管、55…接続配管、60、60a…中圧配管、61、61a…第1中圧配管、62…第2中圧配管、63…第3中圧配管、64…第4中圧配管、65…接続配管、70…低圧配管、71…第1低圧配管、72…第2低圧配管、80、80a…制御装置、81、81a…制御部、100、100a…燃料電池システム、200、200a…車両