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特許7239470低表面エネルギー基材を結合するための自己接着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】低表面エネルギー基材を結合するための自己接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/10 20060101AFI20230307BHJP
   C09J 171/02 20060101ALI20230307BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20230307BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230307BHJP
   C09J 7/32 20180101ALI20230307BHJP
   C08G 18/83 20060101ALI20230307BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C09J201/10
C09J171/02
C09J175/04
C09J11/08
C09J7/32
C08G18/83 030
C09J11/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019523582
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 FR2017052927
(87)【国際公開番号】W WO2018078273
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-12
(31)【優先権主張番号】1660512
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グバール, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ラフェルテ, オリヴィエ
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0166858(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104769071(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102181256(CN,A)
【文献】特表2013-525543(JP,A)
【文献】特表2004-529234(JP,A)
【文献】特表2015-526547(JP,A)
【文献】特開2011-127120(JP,A)
【文献】特開2011-153309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 ー 201/10
C08G 18/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中、23℃、50%の相対湿度、1barの大気圧下で測定された、40mN/m以下の表面エネルギーを有する基材をコーティングするための、
A)ポリエーテル及び/又はポリウレタン主鎖と、ウレタン又はエーテル官能基(連結基と称される)によってポリマー主鎖に結合している少なくとも二つの加水分解性シリル化末端基とを含むポリマーから選択される、25,000から50,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する少なくとも一つのポリシリル化ポリマー、
B)100以下の平均ヒドロキシル数を有する少なくとも一つの粘着付与樹脂、
C)少なくとも一つの架橋触媒、
を含み、
D)いかなるモノシリル化ポリマーをも含まない、
架橋された接着剤組成物からなる接着剤層を含む自己接着性物品の使用であって、180°剥離によって測定された前記基材上の自己接着性物品の接着強度が少なくとも4N/cmである、使用。
【請求項2】
ポリシリル化ポリマーA)が、以下の式:
- 式(I):
[式中、
- Bは、直鎖状、分岐状、環状、脂環式又は芳香族の、飽和又は不飽和の、2から66の炭素原子を含み、一又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、二価(f=2)又は三価(f=3)の炭化水素化基を表し、
- Rは、1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の二価のアルキレン基を表し、
- R’は、2から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の二価のアルキレン基を表し、
- R及びRは、同一であるか又は異なり、それぞれ、1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Rは、任意選択的に環に係合されてもよく、
- n’’は、式-[OR’n’’-のポリエーテルブロックの数平均分子量が150g/molから20,000g/molの範囲であるゼロではない整数であり、
- pは、0又は1に等しい整数であり、
- fは、2又は3に等しい整数である
に相当する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ポリシリル化ポリマーA)が、以下の式:
- 式(II):
[式中、
- Bは、直鎖状、分岐状、環状、脂環式又は芳香族の、飽和又は不飽和の、2から66の炭素原子を含み、一又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、二価(f=2)又は三価(f=3)の炭化水素化基を表し、
- Rは、芳香族又は脂肪族の、直鎖状、分岐状又は環状であり得る、5から15個の炭素原子を含む二価の炭化水素化基を表し、
- Rは、1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の二価のアルキレン基を表し、
- R及びR’は、同一であるか又は異なり、それぞれ、2から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の二価のアルキレン基を表し、
- R及びRは、同一であるか又は異なり、それぞれ、1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Rは、任意選択的に環に係合されてもよく、
- nは、式-[OR-のポリエーテルブロックの数平均分子量が300g/molから40,000g/molの範囲であるゼロではない整数であり、
- n’は、式-[OR’-のポリエーテルブロックの数平均分子量が0から20000g/molの範囲であるゼロ又はゼロではない整数であり、
- mは、ゼロ又はゼロではない整数であり、
- pは、0又は1に等しい整数であり、
- fは、2又は3に等しい整数である
に相当する、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
ポリシリル化ポリマーA)が、請求項2若しくは3に記載の少なくとも一つのポリシリル化ポリマーを含むポリシリル化ポリマーの混合物、及び/又は請求項2若しくは3に記載の少なくとも一つのポリシリル化ポリマーである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
ポリシリル化ポリマーA)が、請求項2又は3に記載の、p=0の、少なくとも一つのポリシリル化ポリマーと、請求項2又は3に記載の、p=1の、少なくとも一つのポリシリル化ポリマーとを含む混合物である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
mがゼロではない、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
ポリシリル化ポリマーA)がジシリル化されている(f=2)、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
ポリシリル化ポリマーA)の数平均分子量が、30,000から45,000g/molである、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
A)請求項2から8のいずれか一項に記載の、式(I)若しくは(II)又はそれらの混合物の一つに相当する少なくとも20重量%の少なくとも一つのポリシリル化ポリマーA)、
B)50以下のヒドロキシル数を有し、
(i)石油留分に由来する5、9又は10個の炭素原子を有する、不飽和脂肪族及び/又は芳香族炭化水素の混合物の重合又は共重合により、任意選択的に水素化により得られる樹脂;
(ii)アルファ-メチルスチレンの重合又はアルファ-メチル-スチレンと他の炭化水素モノマーとの共重合を含む方法により得られる樹脂;
(iii)天然由来のロジン又は変成ロジン、及び二量化、重合化又はモノアルコール若しくはポリアルコールでエステル化されたそれらの水素化誘導体;並びに
(iv)それらの混合物
から選択される、少なくとも15重量%の少なくとも一つの粘着付与樹脂、
C)少なくとも0.2重量%の少なくとも一つの架橋触媒
を含み、重量%含有量が、接着剤組成物の総重量に基づいており、接着剤組成物の全ての原料の含有量の合計は100%に等しい、添加剤組成物。
【請求項10】
粘着付与樹脂が、請求項9に記載の、タイプ(i)粘着付与樹脂、又は少なくとも一つのタイプ(i)及び/若しくは(ii)粘着付与樹脂を含む粘着付与樹脂混合物から選択される、請求項2から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
粘着付与樹脂混合物が、請求項10に記載の少なくとも一つのタイプ(i)及び(ii)粘着付与樹脂を含む、請求項2から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
- ポリシリル化ポリマーA)の含有量が、接着剤組成物の重量の20から84.8重量%の範囲であり、
- 粘着付与樹脂B)の含有量が、接着剤組成物の重量の15から79.8重量%を占め、
- 架橋触媒C)の含有量が、接着剤組成物の重量の0.2から4重量%の範囲である、
請求項2から11のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項13】
自己接着性層でコーティングされた支持層を含む自己接着性物品であって、前記自己接着性層が、架橋状態の請求項2から12のいずれか一項に記載の接着剤組成物からなる、自己接着性物品。
【請求項14】
支持層が、厳密に100%未満の破断点伸びを有し、且つアクリルポリマー、ポリエチレン(PE)、配向、非配向若しくは二軸配向ポリプロピレン(PP)、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、又は紙に基づいている、請求項13に記載の自己接着性物品。
【請求項15】
表面が請求項13又は14に記載の自己接着性物品でコーティングされている製品であって、前記表面が、空気中、23℃、50%の相対湿度、1barの大気圧下で測定された、40mN/m以下の範囲の表面エネルギーを有する、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低表面エネルギー基材、特にプラスチック基材、特に熱可塑性低表面エネルギー基材の結合に関する。特に、本発明は、水分架橋後に自己接着特性を有する特定のホットメルト接着剤組成物と、その目的のための多層システムなどの自己接着性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤(又はHM)は、水も溶媒も含有しない、室温で固体の基材である。それらは溶融状態で塗布され、冷却中に凝固し、それにより、組み立てられる基材を固定するシーラントを形成する。いくつかのホットメルトは、コーティングされた支持体に比較的硬く粘着力のない特性を付与するために配合される。他のホットメルトは、支持体に比較的柔軟且つ非常に粘着性のある性質を付与し、これらは、自己接着ラベルの製造に広く使用されているPSAであり、相当する接着剤は「ホットメルト感圧接着剤」(あるいはHMPSA)と称される。
【0003】
感圧接着剤(PSA)は、それらでコーティングされている支持層に、室温で即時粘着性(又は粘着性)を付与する物質であり、これは軽く、且つ短時間の圧力下で基材への瞬間接着を促進する。PSAは、永久的又は一時的な結合中、情報(例えばバーコード、名前、価格)を提示する目的及び/又は装飾目的のために物品に付着されるラベル又は自己接着性フィルムを製造するために広く使用されている。PSAはまた、情報が長期間、数年間にわたって、及び/又は人間又は機械による通常又は偶発的な動き及び変形を伴う溶媒、化学物質、自然光又は人口光、及び放射線の存在する困難な操作条件において付着する必要がある電気、電子又は機械部品の持続可能なラベリングにも使用されている。PSAは、様々な用途のための自己接着テープを製造するためにも使用される。例えば、日常生活に広く使用されている透明な接着テープに加えて、PSAは、様々な産業用途、例えば厚紙包装の成形及び組み立て;建設における塗装作業のための表面保護;輸送業界での電気ケーブルの維持;良縁接着テープでのカーペットの結合;自動車、建設、繊維、木材及びプラスチック産業における部品又は設備の組み立て;並びに電気又は電子機器、工具及び専門的又は消費者の設備の組み立て等、物体又は建物の構築に使用することができる。
【0004】
多層システム、特に自己接着ラベル及び/又はテープの製造において、PSAは、通常、g/m(以降、「単位面積当たりの重量」と称される)と表される量で、大きな支持層の表面全体に、継続的なコーティング方法によって、しばしば塗布される。支持層は、単層又は多層ポリマー材料の紙又はフィルムでできている。支持層をカバーする接着剤層は、それ自体、例えばシリコーンフィルムからなる、剥離ライナーでカバーされ得る。得られる多層システムは、一般的に、幅2m、直径1mまでの大きなコイルの形態に包装され、これは保管及び輸送することができる。
【0005】
続いて、これらの多層システムは、エンドユーザによる使用のために、所望の情報及び/又は装飾の構成要素を支持層の印刷可能な表面に印刷し、所望の形及び寸法に切断することを含む変形方法により、自己接着ラベルに変換することができる。剥離ライナーは、支持層に付着されたままになる接着剤層を改質することなく、容易に除去することができる。剥離ライナーからの分離後、ラベルは、手作業で又は自動化包装ライン上でラベル付け機械を使用してコーティングされるべき基材表面に貼付される。
【0006】
これらの多層システムは、固定された幅及び長さのロールに切断及び包装することによって、自己接着テープに変換することもできる。
【0007】
PSAは、室温でのその高い粘着性により、一般的に、かなりの工業生産速度を得るのに適した、自己接着ラベル及び/又はテープをコーティングされるべき基材に迅速にくっつく又は付着することを可能にする。
【0008】
基材表面の性質は、その表面エネルギーにより特徴づけることができる。これは、接触角度の測定から当業者によく知られている方法で数値化することができ、Owens&Wendtモデルに従って計算することができる。
【0009】
同程度の表面条件では、無機極性基材であるガラス又は金属のような高表面エネルギー(又は表面張力)基材上に結合するのに適したPSA組成物は、必ずしも非極性有機基材である、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)基材として一般に知られている、エチレン型又はプロピレン型のモノマー及びコモノマーに基づくポリマー材料を含む基材のような低表面エネルギー基材に結合するのに適していない。低表面エネルギー基材のカテゴリーには、他のオレフィンモノマーに基づくポリマー材料と、一般にPSAでの結合が困難なフィルム又は物体上のすべてのコーティングも含まれる。
【0010】
上で言及されるような低表面エネルギー基材は、結合するのが困難であり、ラベル又はテープの自己接着性部分をラミネートする前に、前記表面の特定の処理をしばしば必要とすることが知られている。これらの処理は、当業者によく知られており、基材表面を化学的に且つ/又は物理的に修正して表面エネルギー及び/又は前記表面の粗さを増加させて、それにより基材への接着剤の接着を改善することからなる。例えば、基材表面の表面エネルギーを有利に改質するために、プラズマ若しくはコロナ処理、摩耗又は処理されるべき前記表面への化学固定剤(プライマリーとも呼ばれる)の塗布により、基材表面を処理することが可能である。
【0011】
そのような表面処理をしないと、この種類の基材への接着剤の接着は、前記基材の表面へラベル又は接着剤テープを効果的に固定するのにしばしば不十分である。そのような結合の有効性は、意図される用途のタイプによって考慮されるべきである。典型的には、二つの物体の付着を保証する接着シーラントは、以下の応力:剥離、引裂、又はせん断の一又は複数に最小限の抵抗を有することが望ましい。特に接着シーラント(同様に、ラベル及び/又は接着テープでコーティングされた製品)が例えば輸送、保管及び適用中に温度変化に供され得る場合、広範な温度下で、これらの特性が維持されることも望ましい。これらの有利な特性が、例えば自己接着性物品又は前記自己接着性物品のコーティングされた製品の使用又は耐用年数に関して、経時的に悪化しないか、又は少なくとも十分に長い時間維持されることも望ましい。特定の用途では、基材表面に関して接着シーラントの特定の破壊点が求められている。優先的には、まばらな接着剤結合破壊よりも均一なものが推奨される。
【0012】
国際公開第2009/016285号及びEP2336208は、特定のジシリル化ポリウレタンに基づくラベル及び/又は自己接着テープの製造に使用可能な接着剤組成物に関する。特に、実施例は、20,000g/mol未満のMnを有するジシリルポリウレタン及びテルペンフェノール粘着付与樹脂を含む組成物を説明する。
【0013】
しかしながら、上記の用途で挙げられる接着剤組成物は、低表面エネルギー基材に対する接着性能又は結合効率に関して、完全には満足のいくものではなく、改善の必要があることが発見されている。
【0014】
しかしながら、PSAの塗布のいくらかの範囲では、これらの基材に対する接着剤組成物の低い接着性能を克服するための上記表面処理の使用には、適していない。実際、これらの処理の欠点の一つは、自己接着性物品でコーティングされた製品を製造する方法に追加の工程を必要とし、それにより追加の費用を生み出し、これらの製品の製造ラインを制限することである。加えて、基材表面の物理化学的性質を改質することによって、これらの処理は基材表面の脆化をもたらすか、又は透明性の喪失若しくは基材の表面色の変化のような審美的に望ましくない効果を誘発することがあり、これは、自己接着性物品の支持層が例えば透明又は半透明であるとき、基材表面は目に見えるので、問題となることがある。これらの処理はまた、不均一な表面及び再現性の乏しい短寿命の結合をもたらす可能性があり、これは、自己接着性物品の接着部分に付着する前に、基材表面の別の予備処理を必要とする可能性がある。
【0015】
よって、近年、低表面エネルギー基材への結合に適して自己接着ラベルの製造に適合した新たな自己接着結合溶液が出現してきた。
【0016】
アクリレート型ポリマー(又はコポリマー)に基づく感圧接着剤組成物は、例えば3Mの特許出願EP2310470に記載されるように、知られている。
【0017】
しかしながら、これらのポリマーの調製及びこれらの接着剤組成物の配合におけるそれらの使用は、大量の溶媒の使用を必要とし、このことは、自己接着性物品の製造が、溶媒の除去及び/又は場合によっては専用の設備の設置を必要とするため、制限的である。加えて、アクリルポリマーの使用は、残留モノマー又は残留溶媒の存在による好ましくない臭いを生み出す欠点も有する。
【0018】
よって、先行技術の欠点の全て又はいくつかを示すことなく、接着するのが困難であると知られる低表面エネルギー基材の表面を含むあらゆる種類の表面に接着することができる新規の感圧接着剤組成物を開発する必要がある。
【0019】
本出願の主題である組成物は、低表面エネルギー基材を含むあらゆる種類の表面に、その表面条件にかかわらず、より効果的に結合することを可能にすることが発見されている。
【0020】
特に、本発明による接着剤組成物は、架橋状態で、国際公開第2009/016285号及びEP2336208に開示される先行技術の感圧接着剤組成物に関して、比較可能な表面条件で、低表面エネルギー基材表面上で特に凝集に関して改善された接着性能を有する。
【0021】
これらの利点は、一又は複数の従来のモノシリル化ポリマーを添加する必要なく、達成される。
【0022】
特に、本発明による接着剤組成物は、架橋状態で、プラスチック低表面エネルギープ基材の表面の結合について優れた接着性能、好ましくは現在のアクリル自己接着性溶液について測定された性能に少なくとも匹敵する性能を有する。
【0023】
特に、本発明による接着剤組成物は、架橋状態で、40mN/m以下の表面エネルギーを有する基材、とりわけHDPE及びPPのようなポリオレフィンプラスチック基材上、少なくとも4N/cmの180°での剥離試験に従って測定された接着剤強度を有する。
【0024】
特に、本発明による接着剤組成物は、そのような表面に迅速に且つ永久的に接着することが可能な自己接着性物品の製造を可能にする。
【0025】
特に、本発明による接着剤組成物は、実装が容易であり、高速製造ライン上で自己接着性物品を製造することを可能にする。
【0026】
本出願では、用語「低表面エネルギー基材」とは、空気中、23℃、50%の相対湿度、1barの大気圧下で測定された場合に、1メートルあたり40ミリニュートン(mN/m)以下又は1平方メートル当たり40ミリジュール(mJ/m2)以下の表面エネルギーを有する少なくとも一つの表面を有する基材を指す。基材の表面エネルギーは、接触角度の測定から当業者によく知られている方法で数値化することができ、Owens&Wendtモデルに従って計算することができる。
【0027】
本発明による接着剤の塗布が意図される低表面エネルギー基材は、好ましくは23から38mN/m(又はmJ/m2)、より好ましくは25から35mN/mの表面エネルギーを有する。
【発明の概要】
【0028】
したがって、本発明は、第一に、空気中、23℃、50%の相対湿度、1barの大気圧下で測定された40mN/m以下の表面エネルギーを有する、好ましくはプラスチックベースの基材をコーティングするための、180°剥離によって測定された前記基材上の自己接着性物品の接着強度が少なくとも4Nである、
A)ポリエーテル及び/又はポリウレタン主鎖と、ウレタン又はエーテル官能基(連結基と称される)によってポリマー主鎖に結合している少なくとも二つの加水分解性シリル化末端基とを含むポリマーから選択される、少なくとも20000g/molの数平均分子量(Mn)を有する少なくとも一つのポリシリル化ポリマー、
B)100以下、好ましくは50以下、より好ましくはゼロの平均ヒドロキシ数を有する少なくとも一つの粘着付与樹脂、
C)少なくとも一つの架橋触媒、及び
D)あらゆるモノシリル化ポリマー以外(すなわち、モノシリル化ポリマーを含まない)、
を含む架橋状態の接着剤組成物からなる接着剤層を含む自己接着性物品の使用に関する。
【0029】
一実施態様によれば、自己接着性物品は、支持層及び本発明による接着剤組成物により構成される接着剤層を含む。特に、自己接着性物品は自己接着ラベル又は自己接着テープである。
【0030】
一実施態様によれば、ポリシリル化ポリマーA)は以下の式:
- 式(I):
[式中、
- Bは、直鎖状、分岐状、環状、脂環式又は芳香族の、飽和又は不飽和の、2から66の炭素原子を含み、O、Nのような一又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、二価(f=2)又は三価(f=3)の炭化水素化基を表し、
- Rは、1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の二価のアルキレン基を表し、
- R’は、2から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の二価のアルキレン基を表し、
- R及びRは、同一であるか又は異なり、それぞれ、1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Rは、任意選択的に環に係合されてもよく、好ましくはRはメチル基であり、
- n’’は、式-[OR’n’’-のポリエーテルブロックの数平均分子量が150g/molから20,000g/molの範囲であるゼロではない整数であり、
- pは、0又は1に等しい整数であり、
- fは、2又は3に等しい整数であり、
- 数n’’及びfは、ポリシリル化ポリマーA)の数平均分子量が少なくとも20,000g/molであるようなものである]
に相当する。
【0031】
一実施態様によれば、ポリシリル化ポリマーA)は以下の式:
- 式(II):
[式中、
- Bは、直鎖状、分岐状、環状、脂環式又は芳香族の、飽和又は不飽和の、2から66の炭素原子を含み、O、Nのような一又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、二価(f=2)又は三価(f=3)の炭化水素化基を表し、
- Rは、芳香族又は脂肪族の、直鎖状、分岐状又は環状であり得る、5から15個の炭素原子を含む二価の炭化水素基を表し、
- Rは、1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の二価のアルキレン基を表し、
- R及びR’は、同一であるか又は異なり、それぞれ、2から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の二価のアルキレン基を表し、
- R及びRは、同一であるか又は異なり、それぞれ、1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Rは、任意選択的に環に係合されてもよく、好ましくはRはメチル基であり、
- nは、式-[OR-のポリエーテルブロックの数平均分子量が300g/molから40,000g/molの範囲であるゼロではない整数であり、
- n’’は、式-[OR’-のポリエーテルブロックの数平均分子量が0から20000g/molの範囲であるゼロ又はゼロではない整数であり、
- mは、ゼロ又はゼロではない整数であり、好ましくは、mはゼロではなく、
- pは、0又は1に等しい整数であり、
- fは、2又は3に等しい整数であり、
- 指数m、n、n’及びfは、ポリシリル化ポリマーA)の数平均分子量が少なくとも20,000g/molであるようなものである]
に相当する。
【0032】
一実施態様によれば、接着剤組成物は、式(I)及び/又は(II)のポリシリル化ポリマーA)の混合物を含む。好ましくは、接着剤組成物は、p=0であるような式(I)又は(II)の少なくとも一つのポリシリル化ポリマーと、p=1であるような式(I)又は(II)の少なくとも一つのポリシリル化ポリマーとを含むポリシリル化ポリマーA)の混合物を含む。より好ましくは、接着剤組成物は、p=0であるような式(II)の少なくとも一つのポリシリル化ポリマーと、p=1であるような式(II)の少なくとも一つのポリシリル化ポリマーとを含むポリシリル化ポリマーA)の混合物を含む。
【0033】
好ましくは、ポリシリル化ポリマーA)は、ジシリル化されている。
【0034】
好ましくは、ポリシリル化ポリマーA)の数平均分子量は、20,000から55,000g/mol、好ましくは25,000から45,000g/mol、より好ましくは30,000から40,000g/molである。
【0035】
第二に、本発明の主題は、
A)式(I)若しくは(II)又はそれらの混合物の一つに相当する少なくとも20重量%の少なくとも一つのポリシリル化ポリマーA)、
B)以下から選択される、少なくとも15重量%の少なくとも一つの粘着付与樹脂、
(i)石油留分に由来するおよそ5、9又は10個の炭素原子を有する、不飽和脂肪族及び/又は芳香族炭化水素の混合物の重合又は共重合により、任意選択的に水素化により得られる樹脂;
(ii)アルファ-メチルスチレンの重合又はアルファ-メチル-スチレンと他の炭化水素モノマーとの共重合を含む方法により得られる樹脂;
(iii)天然由来のロジン又は変成ロジン、例えば松脂から抽出されたロジン、木の根から抽出されたウッドロジン、及び二量化、重合化又はモノアルコール若しくはポリアルコール、例えばグリセロール若しくはペンタエリスリトールでエステル化されたそれらの水素化誘導体;並びに
(iv)それらの混合物
C)少なくとも0.2重量%の少なくとも一つの架橋触媒
を含む接着剤であり、重量%含有量は、接着剤組成物の総重量に基づいており、接着剤組成物の全ての原料の含有量の合計は100%に等しい。
【0036】
一実施態様によれば、ポリシリル化ポリマーA)の数平均分子量は、20,000から55,000g/mol、好ましくは25,000から45,000g/mol、より好ましくは30,000から40,000g/molである。
【0037】
一実施態様によれば、粘着付与樹脂B)は、タイプ(i)粘着付与樹脂、又は少なくとも一つのタイプ(i)及び/若しくは(ii)粘着付与樹脂を含む粘着付与樹脂混合物から選択される。
【0038】
本発明の第3の目的は、架橋状態の本発明による接着剤組物をからなる自己接着性層でコーティングされた支持層を含む自己接着性物品である。
【0039】
一実施態様によれば、自己接着性物品は、自己接着性多層システム、特に自己接着ラベル又はテープである。
【0040】
本発明の第4の目的は、空気中、23℃、50%の相対湿度、1barの大気圧下で測定された40mN/m以下、好ましくは23から38mN/mの範囲、より好ましくは25から35mN/mの表面エネルギーを有する表面が、本発明による自己接着性物品でコーティングされた製品である。
【0041】
一実施態様によれば、本発明による自己接着性物品でコーティングされた製品の表面は、プラスチックベース、好ましくはポリオレフィン型、例えばポリイソプレン(PI)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びそれらのコポリマー、特にHDPE及びPPである。
【0042】
本発明による自己接着性物品でコーティングされた製品の表面は、開環メタセシス(ROMP)により得られるもののような環状オレフィンポリマーにも基づくことができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本特許出願では、別段の記載がない限り、
- 粘度は、針及びセンサ感度に適合した回転速度を有するBrookfield RTV粘度計を使用して23℃で測定される。
- 粘着付与樹脂の数平均分子量(g/モル又はダルトンで表される)は、例えばポリスチレン基準を使用して、当業者によく知られる方法、例えばサイズ排除クロマトグラフィー(GPC)により決定することができる。
- ポリシリル化ポリマーの数平均分子量(g/モル又はダルトンで表される)は、当業者によく知られる方法、1H/13C NMRにより、且つ/又は使用される試薬のモル量に基づく計算により、且つ/又は例えばポリスチレン基準を使用して、サイズ排除クロマトグラフィー(GPC)により決定することができる。
- ヒドロキシル数は、粘着付与樹脂1グラム当たりのヒドロキシル官能基の数を表し、本出願では、ヒドロキシル官能基の決定のために粘着付与樹脂1グラム当たりのカリウムのミリグラムの当量(mg KOH/g)の形態で表される。
- 材料又は基材の表面エネルギーは、空気中で23℃、50%の相対湿度、大気圧下で測定される。
- 接着力(又は剥離強度)は、実施例に記載される180°での剥離試験により測定される。参照試験はFINAT規格であり、試験される媒体上の製品の適用時間は20分であり、堆積した接着剤の単位面積当たりの重量は50g/mである。
- ポリシリル化ポリマーA)は、少なくとも二つの加水分解性シリル基を有する以下のようなポリマーである。
- 「より低い」又は「より高い」という用語の後に「又は等しい」という語が続かない場合、それぞれ「厳密により低い」及び「厳密により高い」を意味する。
- 本出願に記載される異なる実施態様は、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0044】
接着剤組成物
ポリシリル化ポリマーA)
本発明による接着剤組成物は、ポリエーテル及び/又はポリウレタン主鎖と、ウレタン及び/又はエーテル官能基によってポリマー主鎖に結合している少なくとも二つの加水分解性シリル化末端基とを含むポリマーから選択される、少なくとも20,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する少なくとも一つのポリシリル化ポリマーA)を含む。
【0045】
ポリシリル化ポリマーA)の第1の実施態様によれば、ポリシリル化ポリマーA)は、それぞれがエーテル官能基によって加水分解性シリル化末端基に結合している少なくとも二つの末端基を有するポリエーテル型である。この実施態様によれば、ポリシリル化ポリマーA)は、以下を含む調製方法によって得ることができる:
- 第1の工程において、少なくとも二つのアリルエーテル末端基(-O-CH-CH=CH)を有するポリエーテルを調製すること;次いで
- 第2の工程において、第1の工程の最後に得られる前記ポリエーテルを、ポリエーテル末端基-O-CH-CH=CH末端基のそれぞれを白金触媒の存在下でヒドロシリル化によるシランSiH基と反応させるのに十分な量でSiH基を有する少なくとも一つのシランと反応させること;ここで、第1の工程の最後に得られるポリエーテルの数平均分子量(Mn)は、シラン化合物との反応後に、所望のMnのポリシリル化ポリマーA)を得るのに十分高い。
【0046】
ポリシリル化ポリマーA)の第2の実施態様によれば、ポリシリル化ポリマーA)は、それぞれがウレタン官能基によって加水分解性シリル化末端基に結合している少なくとも二つの末端基を有するポリウレタン型である。この実施態様によれば、ポリシリル化ポリマーA)は、以下を含む調製方法によって得ることができる:
- 第1の工程において、少なくとも二つのOH末端基を有するポリウレタンを調整すること;次いで
- 第2の工程において、前記ポリウレタンを、ポリウレタンOH末端基のそれぞれをイソシアネートシランのNCO基と反応させるのに十分な量でNCO基を有する少なくとも一つのイソシアネートシランと反応させること;ここで、第1の工程後に得られるポリウレタンの数平均分子量(Mn)は、イソシアネートシランとの反応後に、所望のMnのポリシリル化ポリマーA)を得るのに十分高い。
【0047】
少なくとも二つのOH末端基を有するポリウレタンは、化学量論的に余剰の少なくとも一つのポリエーテルポリオールと少なくとも一つのジイソシアネートの重付加により、当業者によく知られる方法で得ることができる。好ましくは、ポリエーテルポリオールは、ポリエーテルジオールである。
【0048】
第1の工程では、それぞれOHと第一級及び第二級アミンから互いに独立して選択される二つの基を含有する少なくとも一つの鎖延長剤を、ポリエーテルポリオールとの混合物中に添加することも可能である。鎖延長剤は、ポリウレタンを調製するために使用されるポリエーテルポリオールとは異なり、一般的に、300g/mol未満のモル質量を有する。
【0049】
使用される、ポリエーテルポリオール、ジイソシアネート、及び場合によっては鎖延長剤の量は、第1の工程の最後で二つのOH末端基を有するポリウレタンを得るために、当業者によく知られる方法で調整される。さらに、これらの量は、NCO官能基の数対任意選択的に存在する第一級及び第二級アミン官能基が添加されるOH官能基の総数(r2.1と表される)のモル比が厳密に1より少ないようなものである。
【0050】
使用されるイソシアネートシランの量は、第2の工程の最後で、ポリシリル化ポリマーA)を得るために、当業者によく知られる方法で調整される。さらに、この量は、NCO官能基の数対OH官能基、任意選択的に存在する第一級又は第二級アミンの総数(r2.2と表す)のモル比が1に近い、すなわち0.95から1.05であるようなものである。
【0051】
ポリシリル化ポリマーA)の調製は、好ましくは、少なくとも一つの反応触媒の存在下で行われる。特に、上記の反応速度を促進することが可能であり、且つ上記の調製方法の第1の工程及び/又は第2の工程に生じる触媒が使用され得る。
【0052】
ポリシリル化ポリマーA)の第3の実施態様によれば、ポリシリル化ポリマーA)は、それぞれがウレタン官能基によって加水分解性シリル化末端基に結合している少なくとも二つの末端基を有するポリエーテル型である。この実施態様によれば、ポリシリル化ポリマーA)は、少なくとも一つのポリエーテルポリオールを、ポリエーテルポリオールのOH末端基のそれぞれのイソシアネートシランのNCO基との反応を示唆するのに十分な量でNCO基を有する少なくとも一つのイソシアネートシランと反応させることによって得ることができ;ここで、使用されるポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)は、イソシアネートシランとの反応後に、所望のMnのポリシリル化ポリマーA)を得るのに十分高い。
【0053】
先述の少なくとも一つの鎖延長剤をポリエーテルポリオールとの混合物中に添加することも可能である。
【0054】
使用されるイソシアネートシランの量は、ポリシリル化ポリマーA)を得るために、当業者によく知られる方法で調整される。さらに、この量は、NCO官能基の数対OH官能基、任意選択的に存在する第一級又は第二級アミンの総数(r3と表す)のモル比が1に近い、すなわち0.95から1.05であるようなものである。
【0055】
ポリシリル化ポリマーA)の調製は、好ましくは、少なくとも一つの反応触媒の存在下で行われる。特に、上記の調製方法で生じる反応速度を促進することが可能な任意の触媒が使用され得る。
【0056】
好ましくは、ポリシリル化ポリマーA)は、以下の式の一つに相当する:
- 式(I):
[式中、
- Bは、直鎖状、分岐状、環状、脂環式又は芳香族の、飽和又は不飽和の、2から66の炭素原子を含み、O、Nのような一又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、二価(f=2)又は三価(f=3)の炭化水素化基を表し、
- Rは、1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の二価のアルキレン基を表し、
- R’は、2から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の二価のアルキレン基を表し、
- R及びRは、同一であるか又は異なり、それぞれ、1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Rは、任意選択的に環に係合されてもよく、好ましくはRはメチル基であり、
n’’は、式-[OR’n’’-のポリエーテルブロックの数平均分子量が150g/molから20,000g/molの範囲であるゼロではない整数であり、
- pは、0又は1に等しい整数であり、
- fは、2又は3に等しい整数であり、
- 数n’’及びfは、ポリシリル化ポリマーA)の数平均分子量が少なくとも20,000g/molであるようなものである]
- 式(II):
[式中、
- Bは、直鎖状、分岐状、環状、脂環式又は芳香族の、飽和又は不飽和の、2から66の炭素原子を含み、O、Nのような一又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、二価(f=2)又は三価(f=3)の炭化水素化基を表し、
- Rは、芳香族又は脂肪族の、直鎖状、分岐状又は環状であり得る、5から15個の炭素原子を含む二価の炭化水素化基を表し、
- Rは、1から6個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の二価のアルキレン基を表し、
- R及びR’は、同一であるか又は異なり、それぞれ、2から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の二価のアルキレン基を表し、
- R及びRは、同一であるか又は異なり、それぞれ、1から4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Rは、任意選択的に環に係合されてもよく、好ましくはRはメチル基であり、
- nは、式-[OR-のポリエーテルブロックの数平均分子量が300g/molから40,000g/molの範囲であるゼロではない整数であり、
- nは、式-[OR’-のポリエーテルブロックの数平均分子量が0から20000g/molの範囲であるゼロ又はゼロではない整数であり、
- mは、ゼロ又はゼロではない整数であり、
- pは、0又は1に等しい整数であり、
- fは、2又は3に等しい整数であり、
- 指数m、n、n’及びfは、ポリシリル化ポリマーA)の数平均分子量が少なくとも20,000g/molであるようなものである]。
【0057】
式(I)及び/又は(II)において、好ましくは、
- R及び/又はR’は、同一であるか又は異なり、それぞれ、直鎖状又は分岐状の二価のプロピレン基、例えば二価のイソプロピレン基を表し、
- nは、式-[OR-のポリエーテルブロックの数平均分子量が6000g/molから25,000g/molの範囲である整数であり、且つ
- n’は、式-[OR’n’-のポリエーテルブロックの数平均分子量が0から12,500g/molの範囲である整数である。
【0058】
より好ましくは、
- R及び/又はR’は、同一であり、それぞれ二価のイソプロピレン基であり、
- nは、式[OR-のポリエーテルブロックの数平均分子量が8000g/molから20,000g/molの範囲である整数であり、且つ
- n’は、式-[OR’n’-のポリエーテルブロックの数平均分子量が0から10,000g/molの範囲である整数である。
【0059】
好ましくは、Rは、1から3個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の二価のアルキレン基を表し、より優先的には、二価のメチレン又はn-プロピレン基を表す。
【0060】
好ましくは、pが1に等しいとき、Rは、メチル基を表す。
【0061】
好ましくは、Rは、メチル又はエチル基を表す。
【0062】
一実施態様によれば、接着剤組成物は、式(I)及び/又は(II)のポリシリル化ポリマーA)の混合物を含む。好ましくは、接着剤組成物は、p=0であるような式(I)又は(II)の少なくとも一つのポリシリル化ポリマーと、p=1であるような式(I)又は(II)の少なくとも一つのポリシリル化ポリマーとを含むポリシリル化ポリマーA)の混合物を含む。より好ましくは、接着剤組成物は、p=0であるような式(II)の少なくとも一つのポリシリル化ポリマーと、p=1であるような式(II)の少なくとも一つのポリシリル化ポリマーとを含むポリシリル化ポリマーA)の混合物を含む。
【0063】
好ましくは、mはゼロではない。
【0064】
好ましくは、ポリシリル化ポリマーA)は、ジシリル化されている。
【0065】
より優先的には、ポリシリル化ポリマーA)は、式(II)に相当し、好ましくはジシリル化され(f=2)、mはゼロではなく、p=1である。
【0066】
好ましくは、ポリシリル化ポリマーA)は、20,000から55,000g/mol、好ましくは25,000から50,000g/mol、より好ましくは30,000から45,000g/molの数平均分子量(Mn)を含有する。
【0067】
ポリシリル化ポリマーA)の含有量は、接着剤組成物の総重量の少なくとも20重量%、より好ましくは20から84.8重量%、より好ましくは25から74.8重量%、さらに良いのは30から64.8重量%を占める。
【0068】
上記のポリシリル化ポリマーA)を調製するための方法は、加水分解性シリル化基の加水分解を回避するために、無水条件下で行われる。同様に、これらのポリマーの使用は、好ましくはそのような条件下で行われる。
【0069】
粘着付与樹脂B)
本発明による接着剤組成物における使用に適した粘着付与樹脂B)は、ポリシリル化ポリマーA)に適合する。
【0070】
「適合性粘着付与樹脂」とは、50/50重量%の割合のポリシリル化ポリマーAと混合されたときに、実質的に均一な混合物を生成する粘着付与樹脂を指す。
【0071】
好ましくは、粘着付与樹脂B)は(それぞれ)、50以下、より好ましくは実質的にゼロに近い、より好ましくはゼロに等しいヒドロキシル数を含有する。
【0072】
粘着付与樹脂は(それぞれ)、好ましくは、0℃から140℃、より好ましくは50℃から130℃、より好ましくは70℃から120℃の範囲の軟化点を含有する。
【0073】
粘着付与樹脂B)は、100から6000g/mol、より好ましくは300から4000g/molの範囲の数平均分子量を有する。
【0074】
好ましくは、粘着付与樹脂は以下から選択される:
(i)石油留分に由来するおよそ5、9又は10個の炭素原子を有する、不飽和脂肪族及び/又は芳香族炭化水素の混合物の重合又は共重合により、任意選択的に水素化により得られる樹脂;
(ii)アルファ-メチルスチレンの重合又はアルファ-メチル-スチレンと他の炭化水素モノマーとの共重合を含む方法により得られる樹脂;
(iii)天然由来のロジン又は変成ロジン、例えば松脂から抽出されたロジン、木の根から抽出されたウッドロジン、及び二量化、重合化又はモノアルコール若しくはポリアルコール、例えばグリセロール若しくはペンタエリスリトールでエステル化されたそれらの水素化誘導体;並びに
(iv)それらの混合物。
【0075】
好ましい実施態様によれば、粘着付与樹脂B)は、タイプ(i)の粘着付与樹脂、又はタイプ(i)及び/又は(ii)の少なくとも一つの粘着付与樹脂を含む粘着付与樹脂の混合物である。より好ましくは、粘着付与樹脂B)は、少なくとも一つのタイプ(i)及び/又は(ii)の粘着付与樹脂を含む粘着付与樹脂混合物である。特に、本実施態様による、少なくとも一つのタイプ(i)の樹脂を含む粘着付与樹脂混合物、好ましくは少なくとも一つのタイプ(i)及び(ii)樹脂を含む混合物の使用は、特に少なくともPPに対して改善された接着性能をもたらすことが観察されている。
【0076】
そのような樹脂は市販されている。例えば、以下の製品が挙げられる:
- タイプ(i)の樹脂:ゼロのIOH、600g/molの数平均分子量及び100℃の軟化点を有する、主に石油留分由来の9個の炭素原子を含有する芳香族炭化水素混合物の重合により得られるPICCO(登録商標)AR-100(Eastmanから入手可能)、又はゼロのIOH、520g/molの数平均分子量及び85℃の軟化点を有する、主に石油留分由来の9個の炭素原子を含有する芳香族炭化水素混合物の重合により得られるPICCO(登録商標)AR-85(Eastmanから入手可能)、又はゼロのIOH及び90℃の軟化点を有する芳香族改質脂肪族樹脂であるNORSOLENE(登録商標)M1090樹脂(Cray Valley社から入手可能)、又は420g/molの数平均分子量を有し、周囲温度で液体であるPICCO(登録商標)A-10(Eastmanから入手可能);
- タイプ(ii)の樹脂:ゼロのIOH、750g/molの数平均分子量及び110℃の軟化点を有する、フェノールの作用なしでのアルファ-メチルスチレンの重合により得られるNORSOLENE(登録商標)W110(Cray Valleyから入手可能);ゼロのIOH、600g/molの数平均分子量及び85℃の軟化点を有するアルファ-メチルスチレン樹脂に相当するNORSOLENE(登録商標)W85(Cray Valleyから入手可能);
- タイプ(iii)の樹脂:50mg KOH/gのIOH、974g/molの数平均分子量及び100℃の軟化点を有する、ロジンでありペンタエリスリトールエステルであるSylvalite(登録商標)RE 100(Arizona Chemicalから入手可能)。
【0077】
粘着付与樹脂B)の含有量は、好ましくは、本発明による接着剤組成物の総重量の少なくとも15重量%を占め、接着剤組成物の総重量の、好ましくは15から79.8重量%、より好ましくは25から74.8重量%、より好ましくは35から69.8重量%を占める。
【0078】
架橋触媒C)
本発明による組成物における使用が推奨された架橋触媒は、シラノールの縮合に関して、当業者に知られるあらゆる触媒であり得る。そのような触媒の例は、アセチルアセトナートチタンなどの有機チタン誘導体(DuPontからTYZOR(登録商標)AA75の商品名で市販されている)、アルミニウムキレートなどのアルミニウム(KING INDUSTRIESからK-KAT(登録商標)5218の商品名で市販されている)、又は1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7若しくはDBUなどのアミンである。
【0079】
架橋触媒C)の含有量は、接着剤組成物の重量の0.2から4重量%である。
【0080】
一実施態様によれば、本発明による接着剤組成物は、接着剤組成物の総重量に対して、
- 20から84.8重量%の一又は複数のポリシリル化ポリマーA)、
- 15から79.8重量%の一又は複数の粘着付与樹脂B)、及び
- 0.2から4重量%の少なくとも一つの架橋触媒C)
を含む。
【0081】
さらにより好ましい実施態様によれば、本発明による接着剤組成物は、接着剤組成物の総重量に対して、
- 25から74.8重量%の一又は複数のポリシリル化ポリマーA)、
- 25から74.8重量%の一又は複数の粘着付与樹脂B)、及び
- 0.2から4重量%の少なくとも一つの架橋触媒C)
を含む。
【0082】
さらにより好ましい実施態様によれば、本発明による接着剤組成物は、
- 30から64.8重量%の一又は複数のポリシリル化ポリマーA)、
- 35から69.8重量%の一又は複数の粘着付与樹脂B)、及び
- 0.2から4重量%の少なくとも一つの架橋触媒C)
を含む。
【0083】
本発明による接着剤組成物は、ポリシリル化ポリマーA)と組み合わせて、HMPSA、例えばエチレンビニルアセテート(EVA)、又はスチレンブロックコポリマー(例えばSIS、SBS、SIBS、SEBS、SEPS及び特に無水マレイン酸でグラフト化されたそれらの誘導体)の調製に使用されるものから選択される少なくとも一つの熱可塑性ポリマーを含んでもよく、含まなくてもよい。これらの熱可塑性ポリマーはシリル化されていない。
【0084】
本発明による接着剤組成物は、乾燥剤として、500g/mol未満のモル質量を有する少なくとも一つの加水分解性の非ポリマーアルコキシシラン誘導体、好ましくはトリメトキシシラン誘導体をさらに含んでもよく、含まなくてもよい。そのような薬剤は、使用前の保管及び輸送中の本発明による接着剤組成物の保存期間を有利に延長する。例えば、MOMENTIVEからSILQUEST(登録商標)A-174の商品名で市販されているガンマ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。乾燥剤の含有量は、接着剤組成物の重量の最大3重量%可能である。
【0085】
本発明による組成物は、少なくとも一つの可塑剤、例えばフタレート若しくはベンゾエート、パラフィン及びナフテン油(例えばESSOのPrimol(登録商標)352)又はポリエチレンホモポリマーワックス(例えばHONEYWELLのAC(登録商標)617)、又はポリエチレンコポリマーワックス及びビニルアセテート、又は顔料若しくは染料、又はこれらの化合物の混合物を含んでもよく、含まなくてもよい。
【0086】
本発明による接着剤組成物は、充填剤を含んでもよく、含まなくてもよい。充填剤の含有量は、接着剤組成物の重量の好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満である。
【0087】
最後に、0.1から2%の量の一又は複数の安定剤(又は酸化防止剤)が、好ましくは、本発明による接着剤組成物に含まれる。これらの化合物は、熱又は光への曝露に際して形成される傾向がある酸素との反応により生じる分解から組成物を保護するために導入される。これらの化合物は、フリーラジカルを捕捉し、特に、例えばCIBA Irganox(登録商標)1076のような置換フェノールである一次酸化剤を含むことができる。一次酸化防止剤は、単独で又は他の二次酸化防止剤若しくはUV安定剤と組み合わせて使用することができる。
【0088】
本発明による接着剤組成物は、以下を含む方法によって調製することができる:
- 40から170℃、好ましくは70か150℃の範囲の温度で、気密大気中、好ましくは不活性又は減圧大気中、ポリシリル化ポリマーA)と粘着付与樹脂B)を混合する工程、次いで
- 40から90℃の範囲の温度で、少なくとも一つの架橋触媒及び(もしあれば)少なくとも一つの乾燥材と上記のような一つ又は多くの他の任意の成分を前記混合物中に取り込む工程。
【0089】
本発明による接着剤組成物は、一次的又は永久的な支持層及び接着剤組成物を架橋することにより得られる接着剤層を含む自己接着性物品の製造のために使用することができる。
【0090】
本発明による接着剤組成物から得られる自己接着性物品の支持層は、一次的又は永久的な支持層であり得る。
【0091】
支持層が一時的な支持体である場合、該支持層は、好ましくは、プラスチックフィルム又は剥離ライナーである。この場合、製品が表面に固定されるすると、固定された製品は、接着剤層のみを含み、一時的な媒体は除去されるように意図されている。
【0092】
「抗粘着」とは、架橋状態の本発明による接着剤組成物が、1センチメートル当たり200センチポアズ(cN/cm)未満、好ましくは50cN/cm未満、さらにより好ましくは30cN/cm未満、さらにより好ましくは10cN/cm未満の接着強度を有する材料を意味する。この値は、300mm/分の引張速度及び180°の引き角度で行われるFINAT 3試験に従って測定される。
【0093】
非粘着性コーティングは、一般的に、22mN/m以下、より好ましくは20mN/m未満の表面エネルギーを有する。
【0094】
支持層が永久的な支持層である場合、支持層は、感圧物品又はPSA物品の製造に使用可能な任意の材料に基づき得る。
【0095】
自己接着性物品
本発明は、架橋状態の本発明による接着剤組物からなる自己接着性層でコーティングされた支持層を含む自己接着性物品にも関する。
【0096】
本発明の目的に関して、用語「自己接着性物品」とは、追加の接着剤を使用することなく、手動又は機械的圧力下でのみ表面に接着することができるあらゆる物品を含む。用語「自己接着性物品」とは、用語「感圧接着性物品」又は「PSA製品」も含む。これらの製品は、結合、維持、付着若しくは単に固定するか、又は形、ロゴ、絵若しくは情報を明らかにするために、接着されるべき表面に塗布されることが意図される。これらの製品は、医療、服飾、包装、自動車及び建設業界などの多くの分野で使用することができる。それらは、それらの最終用途に応じて、例えば工業用テープ、DIY用テープ若しくは建設現場用テープ、片面若しくは両面テープのようなテープの形態に、又はラベル、バンデージ、ドレッシング、パッチ若しくはグラフィックフィルムの形態に成形することができる。
【0097】
一実施態様によれば、自己接着性物品は、自己接着性多層システム、特に片面又は両面であり得る自己接着ラベル又はテープである。
【0098】
支持層は、例えば上記のように、コイルの形態に巻きつけられ、調整されるのに十分に柔軟である。
【0099】
好ましくは、支持層は、ゼロより大きく、厳密に100%未満の破断点伸びを有する。より好ましくは、支持層は、50%以下、さらにより好ましくは40%以下の破断点伸びを有する。より好ましくは、支持層は30%以下の破断点伸びを有する。
【0100】
破断点伸びは、長さ又は幅において、23℃でISO1926に従って測定することができる。好ましくは、破断点伸びは長さにおいて測定される。
【0101】
支持層は、例えば、アクリルポリマー、ポリエチレン(PE)、配向、非配向又は二軸配向のポリプロピレン(PP)、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、又は紙に基づくことができる。
【0102】
好ましくは、支持層は、厳密に300MPaより大きい、より好ましくは400MPa以上、より好ましくは500MPa以上のヤング係数を有する。
【0103】
一実施態様によれば、本発明による接着剤組成物から得られる自己接着性物品は、接着剤層でコーティングされた永久的な支持層を含む。好ましくは、接着剤層は、プラスチックフィルム又は非粘着性保護紙、好ましくはシリコーンでさらにコーティングされる。
【0104】
非粘着性保護フィルムの代わりとして、接着剤層でコーティングされていない永久的な支持層の後面は、非粘着性表面、例えばシリコーン剥離ライナーを有し得る。
【0105】
上記の二つの実施態様は、自己接着性物品が巻き上げられ、次いで、接着剤層と永久的な支持層との間に接着剤の移動が生じることなく、広げられることを可能にする。
【0106】
一実施態様によれば、永久的な支持層は、同一であるか又は異なっていてもよい接着剤組成物で両面コーティングされており、二つの接着剤組成物のうち少なくとも一つは本発明によるものである。
【0107】
好ましくは、支持層は、10ミクロンから50mm、より好ましくは10ミクロンから20mm、好ましくは20ミクロンから10mm、より好ましくは20ミクロンから1mmの範囲の厚さを有する。
【0108】
いくつかの場合、特に、結合のための基材の支持層及び表面が同一の表面エネルギーを有するとき、支持層の表面処理を行い、コーティング工程中に接着剤層の接着を増加させることが必要である。
【0109】
本発明による自己接着性物品は、表面予備処理されていない低表面エネルギー基材の表面に塗布され得る。これらの予備処理は、前記表面を化学的且つ/又は物理的に改質して、前記表面の表面エネルギー及び/又は粗さを増加させ、よって、前記表面への接着剤層の接着を改善するよう意図されている。既知の表面処理の例には、プラズマ若しくはコロナ処理、摩耗又は、化学的固定剤(プライマリーとも呼ばれる)の、それでコーティングされている基材により高い表面エネルギーを付与することが可能な前記薬剤の前記表面への塗布が含まれる。
【0110】
したがって、本発明による自己接着性物品は、二つの基材を結合することができ、その基材の少なくとも一つは低表面エネルギーを有する。
【0111】
自己接着性物品が塗布されるべき基材(「粘着性のある基材」とも称される)は、柔軟であっても硬くてもよい。
【0112】
特に、自己接着性物品は、例えば上述のようにコイルの形態に巻き上げられ、調整されるために、上述の支持層と同じ可撓性を有することができる。
【0113】
あるいは、結合されるべき基材は、硬くてもよい。この場合、基材は、弱化せずには、例えば上記のようなコイルの形態に巻き上げること及び調整することはできない。
【0114】
結合されるべき基材は、有機無極性基材であるか、又はワニス、インク若しくはペンキのような有機無極性コーティングである、ポリオレフィン基材のような低表面エネルギー基材から選択することができ、前記基材は、40mN/m以下、好ましくは23から38mN/m、より好ましくは25から35mN/mの表面エネルギーを有する。
【0115】
ポリオレフィン基材は、例えば、モノマー及びコモノマーベースのポリマー材料、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソプレン(PI)、ポリイソブチレン(PIB)、及びそれらのコポリマー(ブロック又は統計)、又は開環メタセシス(ROMP)により得られる環状オレフィンポリマーに基づくポリマー、又はこれらのポリマーの混合物であり得る。
【0116】
ポリエチレン(PE)の例には、特に、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン及び直鎖状超低密度ポリエチレンが含まれる。
【0117】
本発明による接着剤組成物を架橋することによって得られる接着剤の接着特性により、本発明による自己接着性物品は、少なくとも4N/cmの接着強度を有する、低表面エネルギー基材、特にプラスチックベースのもの、好ましくはPE及びPP、特にHDPEのようなポリオレフィンベースのものに結合することができる。
【0118】
特に、本発明による自己接着性物品は、少なくとも5N/cmの接着強度を有するPPベースの基材にくっつくことができる。
【0119】
本発明の一実施態様によれば、自己接着性物品は、剥離ライナーをさらに含む。
【0120】
一実施態様によれば、前記非粘着性コーティングは、接着剤組成物の架橋後に、接着剤層に塗布される。
【0121】
支持層は、その二つの表面の一方、接着層でコーティングされていない裏面を、非接着性剥離ライナー、例えばシリコーンフィルムでカバーすることができる。このようにして、自己接着性物品をそれ自体の上に巻き上げ、シリコーン面への接着剤層の接着力の欠如のために容易に広げることができる。
【0122】
本発明による自己接着性物品は、以下の工程を含む方法によって得ることができる:
(a)20から130℃の範囲の温度で、上記の通りに本発明による接着剤組成物を調整する工程;次いで、
(b)工程(a)で得られた接着剤組成物を担持面でコーティングする工程、次いで
(c)気体1m当たり10から200mgの水分子が存在する気体環境中で、20から200℃の範囲の温度に加熱することにより、コーティングされた接着剤組成物を架橋する工程;
(d)架橋された接着剤層を、支持層又は非粘着性保護フィルム上に積層するか又は移動させる工程であって、前記支持層又は非接着フィルムが担体表面の反対側にあり得る、工程。
【0123】
本発明に関連する「担体表面」とは、非粘着性コーティング、剥離ライナー又は支持層でカバーされたコンベヤーベルトのいずれかを指す。したがって、担体表面は、非粘着性保護フィルム又は支持層のいずれかとして、自己接着性物品の一部になるよう作製される。
【0124】
担体表面が支持層ではない場合、本発明による自己接着性物品を得るための方法は、架橋接着剤層が支持層上へ移される工程(d)を含む。
【0125】
担体表面が支持層である場合、本発明による自己接着性物品を得るための方法は、接着剤層を非粘着性保護フィルムに結合する工程(d)を含むことができる。
【0126】
本発明の好ましい変形例によれば、上記の方法の工程(d)は、支持層を形成する材料の分解又は軟化温度未満の温度に架橋接着剤層を冷却した後に、架橋接着剤層を可撓性支持層(プラスチックフィルムであってもよい)上に移すことからなる。この変形例によれば、温度感受性材料、例えば上記のようなポリオレフィンベースの材料でできた支持層を含む自己接着性物品を製造することが可能である。
【0127】
一実施態様によれば、本発明による自己接着性物品は、支持層の表面の予備処理工程を含まない、上記の方法によって得ることができる。これらの予備処理は、前記表面を化学的且つ/又は物理的に改質して、前記表面の表面エネルギー及び/又は粗さを増加させ、よって、前記表面への接着剤層の接着を改善するよう意図されている。既知の表面処理の例には、プラズマ若しくはコロナ処理、摩耗又は、化学的固定剤(プライマリーとも呼ばれる)の、それでコーティングされている基材に高い表面エネルギーを付与することが可能な前記薬剤の前記表面への塗布が含まれる。
【0128】
本発明の一実施態様によれば、上記の接着剤層は、少なくとも4N/cmの異なる表面エネルギーの基材上の接着強度を有する。
【0129】
特に、50μmの厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)の支持層からなり、50g/mの単位面積当たりの重量で本発明による接着剤層でコーティングされた自己接着性物品は、有利には4~15N/cmの接着力に相当するHDPE又はPPに対する永久的な接着力(Finat1規格に従って実施された180°剥離試験により測定)を有する。
【0130】
前記接着力は、特に実施例で説明されるような数分間、数時間又は数日間続くことが可能な、低表面エネルギー基材の規定された表面への自己接着性物品の適用時間後に、測定することができる。
【0131】
一実施態様によれば、本発明による自己接着性物品を製造する方法は、さらに、支持層に本発明による接着剤組成物の第2の層をコーティングする工程(e)と、工程(e)でコーティングされた接着剤組成物を、20から200℃の範囲の温度に加熱することにより、架橋する後続の工程(f)も含む。この実施態様によれば、両面自己接着性物品が得られる。
【0132】
コーティング工程(b)は、既知のコーティング装置、例えばリップ又はカーテン型ノズルを使用して、又はローラにより行うことができる。工程(b)は、3から2000g/m2、好ましくは5から1000g/m2、より好ましくは10から500g/m2、より好ましくは12から250g/m2の範囲の単位面積当たりの重量の接着剤組成物を処理する。
【0133】
自己接着ラベルの製造に必要な接着剤組成物の単位面積当たりの重量は、10から100g/m、好ましくは20から50g/mの範囲であり得る。自己接着テープを製造するために必要な接着剤組成物の重量は、一面当たり3から500g/m、好ましくは15から250g/mとはるかに広範囲で変化し得る。
【0134】
一実施態様によれば、コーティングされた接着剤組成物は、工程(c)中、水分含有量による多湿雰囲気での処理をさらに施される。好ましくは、多湿雰囲気とは、2から100%の分子が水分子であり、好ましくは4から50%、より好ましくは5から10%の分子が水分子である雰囲気である。
【0135】
水分含有量は、単位体積当たりの水の百分率で表され、これは、単位体積中の分子に総数で割った水分子の数である。このスケールの線形性により、水分含有量は、例えばPID(比例積分偏差)モニターにより容易に測定及び制御される。重量百分率は、分子の総数に対する水分子の数の割合に0.622の係数を掛けることにより計算することができる。様々な環境での水分レベルについての一般的な情報は、W. Wagner等による、International Steam Tables - Properties of Water and Steam based on Industrial Formulation IAPWS-IF97に記載されている。
【0136】
架橋工程(c)に必要とされる時間は、支持体表面に堆積する接着剤組成物の単位委面積当たりの重量、加熱温度及び水分に応じて、広い範囲、例えば1秒から30分の間で変化し得る。
【0137】
この熱架橋工程は、上記のポリシリル化ポリマーAのポリマー鎖間及び水分の作用下で、三次元ポリマーネットワークの形成をもたらすシロキサン型結合を作成する効果を有する。得られる架橋接着剤組成物は、コーティングされた担持層に所望の接着強度及び粘着力を提供する感圧接着剤である。
【0138】
好ましくは、コーティングは、支持層又は非粘着性剥離ライナー上で均一に行われるが、コーティングはまた最終的な自己接着性物品に望ましい形状に適合され得る。
【0139】
一実施態様によれば、接着剤組成物によるコーティングは、支持層の二つの表面の少なくとも一部上で実施される。支持層の両面がコーティングされる場合、接着剤組成物は、両面で同一であっても、異なっていてもよく、単位面積当たりの重量は両面で同一であっても、異なっていてもよい。
【0140】
本発明の一実施態様によれば、自己接着性物品は、支持層の一面の少なくとも一部上又は二つの表面の少なくとも一部上に接着剤層を含み、前記一又は複数の接着剤層は、非粘着性剥離ライナーでコーティングされる可能性がある。一実施態様によれば、自己接着性物品は、二つの接着剤層のそれぞれに二つの非粘着性保護層を含む。この場合、二つの保護層は、同一若しくは異なる材料でできていてもよく、且つ/又は同一若しくは異なる厚さを有してもよい。
【0141】
本発明による自己接着性物品は、以下の工程を含む結合方法に使用することができる:
a) 非粘着性剥離ライナーが存在する場合、そのような層を除去する工程;
b) 自己接着性物品を製品の表面上に塗布する工程;及び
c) 前記製品に圧力を加える工程。
【0142】
工程b)において、自己接着性物品は、製品の自己接着性部分(自己接着性層により形成される)が製品の表面に面するように、塗布される。
【0143】
自己接着性物品が両面製品である一実施態様によれば、結合方法は、さらに、製品の第二の表面が製品の第一の表面に接着している製品に塗布されるか、又は製品の第一の表面に接着している製品が製品の第二の表面に塗布されるいずれかの工程を含む。
【0144】
自己接着性物品でコーティングされた製品
本発明の第3の主題は、本発明による自己接着性物品で表面がコーティングされた製品である。
【0145】
好ましくは、前記表面は、上記の表面事前処理を施されていない。
【0146】
好ましくは、前記表面は、40mN/m以下、好ましくは23から38mN/m、より好ましくは25から35mN/mの範囲の表面エネルギーを有する。
【0147】
好ましくは、前記表面はなめらかで均一である。
【0148】
本発明による自己接着性物品でコーティングされた製品の表面は、有機無極性基材であるか、又はワニス、インク若しくはペンキのような有機無極性コーティングである、ポリオレフィン基材のような低表面エネルギー基材に基づくことができ、前記基材は、40mN/m以下、好ましくは23から38mN/m、より好ましくは25から35mN/mの表面エネルギーを有する。
【0149】
ポリオレフィン基材は、例えば、モノマー及びコモノマーベースのポリマー材料、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソプレン(PI)、ポリイソブチレン(PIB)、及びそれらのコポリマー(ブロック又は統計)、又は開環メタセシス(ROMP)により得られる環状オレフィンポリマーに基づくポリマー、又はこれらのポリマーの混合物であり得る。
【0150】
ポリエチレン(PE)の例には、特に、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン及び直鎖状超低密度ポリエチレンが含まれる。
【0151】
本発明による自己接着性物品でコーティングされた製品は、柔軟であっても硬くてもよい。
【0152】
特に、コーティングされるべき製品は、例えば上述のようにコイルの形態に巻き上げられ、調整されるために、上述の支持層と同じ可撓性を有することができる。
【0153】
あるいは、コーティングされるべき製品は、その硬さ、形状又は厚さのために、例えば上記のようなコイルの形態に巻き上げられ、調整することができない。
【0154】
以下の実施例は、純粋に本発明の説明のために提供されるものであり、その範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例
【0155】
実施例では以下の原料を使用した。
【0156】
ジシリル化ポリマーとして:
- PDS 1:ポリウレタン主鎖及び二つの加水分解性プロピレントリメトキシシラン末端基を含む、約16,000g/molの数平均分子量(又は20kDa及びGPCにより決定された場合はおよそ1.6のIp)を有するジシリル化ポリマーであって、前記シリル化末端基がウレタン官能基によってポリマー主鎖に結合している、ジシリル化ポリマー。このポリマーは、特に、式(I)に相当するが、20,000g/mol以上のMnを有しない。
- PDS2:ポリウレタン主鎖及び二つの加水分解性プロピレントリメトキシシラン末端基を含む、約37,000g/molの数平均分子量(又は38kDa及びGPCにより決定された場合はおよそ1.9のIp)を有するジシリル化ポリマーであって、前記シリル化末端基がウレタン官能基によってポリマー主鎖に結合している、ジシリル化ポリマー。このポリマーは、特に、本発明による式(I)に相当する。
- PDS3:GENIOSIL(登録商標)STP-E 30(Wackerから入手可能):ポリウレタン主鎖及び二つの加水分解性メチレン-トリメトキシシラン末端基を含む、約18,500g/molの数平均分子量(又は22kDa及びGPCにより決定された場合はおよそ1.2のIp)を有するジシリル化ポリマーであって、前記シリル化末端基がウレタン官能基によってポリマー主鎖に結合している、ジシリル化ポリマー。このポリマーは、特に、式(I)に相当するが、20,000g/mol以上のMnを有しない。
- PDS4:GENIOSIL(登録商標)STP-E 35(Wackerから入手可能):ポリエーテル主鎖及び二つの加水分解性プロピレン-トリメトキシシラン末端基を含む、約18,600g/molの数平均分子量(又は22kDa及びGPCにより決定された場合はおよそ1.2のIp)を有するジシリル化ポリマーであって、前記シリル化末端基がウレタン官能基によってポリマー主鎖に結合している、ジシリル化ポリマー。このポリマーは、特に、式(I)に相当するが、20,000g/mol以上のMnを有しない。
【0157】
粘着付与樹脂B);
- T1:SYLVALITE(登録商標)RE 100(ARIZONA CHEMICALから入手可能):約50mg KOH/gのIOH、約974g/molの数平均分子量及び100℃の軟化点を有するロジンエステルペンタエリスリトール樹脂(粘着付与樹脂タイプ(iii));
- T2:DERTOPHENE(登録商標)H 150(DRTから入手可能):約150mg KOH/gのIOH、約700g/molの数平均分子量及び120℃の軟化点を有するテルペンフェノール樹脂;
- T3:NORSOLENE(登録商標)W85(CRAY VALLEYから入手可能):0のIOH、約600g/molの数平均分子量及び85℃の軟化点を有するアルファメチルスチレン樹脂(タイプ(ii)粘着付与樹脂);
- T4:NORSOLENE(登録商標)W110(CRAY VALLEYから入手可能):0のIOH、約750g/molの数平均分子量及び110℃の軟化点を有するアルファメチルスチレン樹脂(タイプ(ii)粘着付与樹脂);
- T5:PICCO(登録商標)AR 100(EASTMANから入手可能):0のIOH、550g/molの数平均分子量及び100℃の軟化点を有する、石油留分由来の主に9個の炭素原子を含む芳香族炭化水素混合物の重合により得られる樹脂(粘着付与樹脂タイプ(i))。
【0158】
架橋触媒:
- K-KAT(登録商標)5218(King Industriesにより入手可能):アルミニウムキレートを含有。
【0159】
I-ジシリル化ポリマーの調製:
PDS1合成(比較):
以下をガラス反応器中に導入する:
- 961.2g(0.1199mol)のポリ(オキシプロピレン)ジオールACCLAIM(登録商標)8200、
- 12.99g(0.0582mol)のイソホロンジイソシアネート(IPDI)、これは、0.5に等しいNCO/OH官能基モル比に相当する;及び:
- 0.29g(300ppmに相当する)のビスマス及び亜鉛ネオデカノエート触媒(BorchersからBorchi Kat VP 0244の商品名で市販されている)。
【0160】
IPDIのNCO官能基の反応が完了するまで、この混合物を窒素下3時間にわたって85℃で絶えず撹拌する。
【0161】
このように得られたヒドロキシル末端ポリウレタンに、次いで、26.05g(0.1269mol)のガンマ-イソシアネート-n-プロピル-トリメトキシシランを添加し、NCO官能基が完全に消失するまで混合物を85℃に維持した。
【0162】
得られたポリウレタンは、約55パスカル秒(Pa・s.)の粘度(1分間当たり20回転(rpm)で回転する針7を用いて、23℃でBrookfield粘度計で測定された)、及び約16,000g/mol(又は20kDa及びGPCにより決定された約1.6の多分子性指数)の平均分子量を有する。
【0163】
PDS2の合成(本発明による):
以下をガラス反応器中に導入する:
- 884.63g(0.0457モル)のポリ(オキシプロピレン)ジオールACCLAIM(登録商標)18200、
- 5.10g(0.0229モル)のイソホロンジイソシアネート(IPDI)、これは0.5に等しいNCO/OH官能基の数の比に相当する、及び
- 300ppmのビスマス及び亜鉛ネオデカノエート型触媒(BorchersからBorchi Kat VP 0244の商品名で市販されている)。
【0164】
IPDIのNCO官能基の反応が完了するまで、この混合物を窒素下3時間にわたって85℃で絶えず撹拌する。
【0165】
このように得られたヒドロキシル末端ポリウレタンに、次いで、10g(0.0474mol)のガンマ-イソシアネート-n-プロピル-トリメトキシシランを添加し、NCO官能基が完全に消失するまで混合物を85℃に維持した。
【0166】
得られたポリウレタンは、約510Pa・s.の粘度(20rpmで回転する針7を用いて、23℃でBrookfield粘度計で測定された)、及び約37,000g/mol(又は38kDa及びGPCにより決定された場合の約1.6のIp)の平均分子量を有する。
【0167】
II-接着剤組成物の調製
接着剤組成物1及びCE1からCE7を、以下の表1に列挙される原料を使用して、以下に記載される同じ操作手順に従って調製した。使用される各原料の量は、接着剤組成物の総重量に基づき、重量パーセントで示される。
【0168】
組成物1は、本発明による接着剤組成物に相当する。
【0169】
組成物CE1からCE7は、比較接着剤組成物に相当する。特に:
- 組成物CE1及びCE2はそれぞれ、国際出願第09/106699号及びEP2336208の実施例の組成物に相当し、20,000g/mol未満のMnのジシリル化ポリマー及び100mg KOH/g超のIOHの粘着付与樹脂を含み、
- 組成物CE3からCE7は、20,000g/mol未満のMnのジシリル化ポリマーを含む比較組成物に相当する。
【0170】
操作手順:
初めに粘着付与樹脂を減圧ガラス反応器に導入し、約140℃に加熱することにより、接着剤組成物を調製する。次いで、樹脂が溶融したらジシリル化ポリマーを添加する。
【0171】
混合物を減圧下で15分間撹拌し、次いで80℃に冷却する。次いで、触媒を導入する。混合物をさらに10分間撹拌しながら減圧下に保つ。
【0172】
次いで、センサの感度に適合した速度で回転する針A28を備えたBrookfield型粘度計(高温粘度測定用のThermoselシステムを搭載)を使用して、100℃で混合物の粘度を決定した。本発明による実施例1及び比較例について、混合物は、100℃で測定された0.5Pas.から40Pa・sの範囲の粘度を有する。
【0173】
II-自己接着性物品の調製
接着剤組成物1及びCE1からCE7のそれぞれを、以下の操作手順に従って、自己接着性物品を製造するために使用する。
【0174】
操作手順:
50μmの厚さ及び20cm×40cmの長方形ポリエチレンテレフタレート(PET)シートを支持層として使用する。
【0175】
接着剤組成物を90℃に近い温度に予熱し、その幅に平行にシートの端部近くに付着させたコードを押し出すカートリッジ中に導入する。
【0176】
次いで、実質的に一定した厚さの均一層を得るために、このコードに含有される接着剤組成物をシート表面全体に分配する。この目的のため、フィルムプラー(フィルモグラフとしても知られる)をシートの端部から反対側の端部へ動かす。よって、50g/mの単位面積当たりの重量に相当する接着剤組成物の層が堆積し、この厚さは約50μmである。
【0177】
次いで、このようにコーティングされたPETシートを120℃のオーブンに600秒間置いて、組成物を架橋し、次いで、同じ寸法の、長方形の、PETフィルムの別のシートからなり、非粘着性表面として作用するためにシリコーン表面を有する剥離ライナーに積層する。
【0178】
PET支持体上に架橋接着剤層を含む、このように得られた自己接着性物品に以下の試験を施す。
【0179】
III-自己接着性物品の接着試験
上記で調製した自己接着性物品を、二種類のポリオレフィン基材:HDPE及びPPについて、同じ条件下で以下の接着試験に供した。試験された接着剤に接触するこれらの基材の表面エネルギーは、HDPE及びPPについて、それぞれ27及び29mN/mであるこれらの値は、以下に記載される測定方法から決定した。
【0180】
基材の表面エネルギーの決定:
各基材の表面エネルギーを、前記基材の表面上の標準溶液の接触角度を測定することによって決定した。試験された基材は、長さ15cm、幅2.5cmの、HDPE又は平坦で、滑らかな均一の表面のPPプレートである。三つの標準溶液(ジヨードメタン、エチレングリコール及び水)に関して、標準溶液を堆積させるためのシリンジのセットを備えたDigidrop装置を用いて、接触角度を測定した。接触角度計は、測定された接触角度から基材の表面エネルギーを計算するための、GBX Scientific Instrumentにより供給されるWindrop++ソフトウェアに接続されている。測定は、開放空気中、室内で、23℃、50%の相対湿度で1barの大気圧下でなされた。
【0181】
基材の調製:基材と同じ寸法の両面接着テープの層を使用して、基材を長さ15cm及び幅5cmのガラスプレートに付着させ、基材、接着テープ及びガラスプレートにより形成された層のそれぞれの角の少なくとも一つを重ねることにより、前記基材の表面を完全にカバーする。このように形成された試料をなめらかにし、なめらかで気泡のない表面を得た。堆積シリンジが試料の基材表面に面し、試料の端部に可能な限り近くそろえられるように、試料をDigidrop下に置く。
【0182】
接触角度の測定:Windrop++ソフトウェアは、標準溶液の液滴の堆積を同時に引き起こし、基材の表面と接触している液滴の画像を自動的に撮影する堆積プログラムを開始する。プログラム開始から始まり、画像を、水及びエチレングリコールについては13,000ミリ秒(ms)で、ジヨードメタンについては2000msで撮影する。各標準溶液について、3滴を堆積させる。各堆積の間に、液滴が基板の表面上、試料端部近くで互いに近くに堆積するように試料を手動で移動させる。液滴順序は以下の通りである:3滴の水、3滴のエチレングリコール、3滴のヨードメタン。
【0183】
接触角度の計算及び基材表面エネルギーの決定:取られた各画像から、「マニュアル(Manual)2」法を用いて接触角度を計算する。各標準溶液について、三つの接触角度値がこのように得られる。Owen&Wendtモデルを適用して基材の表面エネルギー(EN1)を計算し、接触角度値を得る。
【0184】
第二のセットの接触角度の測定を、各標準溶液について実施する。先述の通り、各標準溶液3滴についての接触角度を上記の順序で測定し、第二の表面エネルギー値(EN2)をそれから導き出す。
【0185】
第三のセットの接触角度の測定を、各標準溶液について行い、第三の表面エネルギー値(EN3)をそれから導き出す。
【0186】
得られた三つの値を平均することによって、基材の表面エネルギー:EN1、EN2及びEN3を得る。
【0187】
ポリオレフィン(HDPE、PP)上180°での剥離試験:
FINAT Technical Handbook, 6thedition, 2001で発表されたFINAT法1に記載の180°での剥離試験により、接着力を評価する。FINATは、自己接着ラベルの製造者の国際的な協会である。この試験の原則は以下の通りである。
【0188】
長方形のストリップの形態の試験試料(25mm×175mm)を、先に得られた自己接着性物品を構成する架橋組成物でコーティングされたPET支持層に切り取る。調製後、この試験試料を23℃の温度及び50%の相対湿度の大気中で24時間保管する。次いで、2/3以上の長さの試験試料(非粘着性剥離ライナーに相当する部分の除去後)を、HDPE又はPPプレートを構成する基材へ付着させる。得られたアセンブリを室温(23℃)で20分間置く。次いで、それを、長方形ストリップの自由端から、180°の角度及び300mm/分の分離速度でストリップを剥離又は分離することが可能なけん引装置に置く。この装置は、これらの条件下でバンドを剥離するのに必要な力を測定する。
【0189】
結果:
測定結果をN/cmで表し、以下の表2に示す。本発明による実施例1の接着剤組成物は、例CE1からCE7の比較接着剤組成物よりも優れた接着力を有する自己接着性物品を得ることを可能にすることが観察される。
表1:
表2: