(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】臭化ウメクリジニウムの調製プロセス
(51)【国際特許分類】
C07D 453/02 20060101AFI20230307BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230307BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230307BHJP
C07D 211/62 20060101ALI20230307BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20230307BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230307BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230307BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230307BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
C07D453/02
A61K9/08
A61K9/10
C07D211/62
A61K31/439
A61P11/06
A61P11/00
A61K9/19
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019524995
(86)(22)【出願日】2017-11-10
(86)【国際出願番号】 GB2017053396
(87)【国際公開番号】W WO2018087561
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-05
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】315015195
【氏名又は名称】ホビオネ サイエンティア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】ロレンソ,ヌーノ トレス
(72)【発明者】
【氏名】ソブラル,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】アントニエス,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】サントス,マリア
(72)【発明者】
【氏名】エスパディーナ,マルガリダ
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-534769(JP,A)
【文献】特表2015-524832(JP,A)
【文献】特表2001-512113(JP,A)
【文献】特開2010-150170(JP,A)
【文献】特表2017-534686(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140136(WO,A1)
【文献】Chen, Xiao-Wen et al.,Development and Kilogram-Scale Synthesis of a D2/5-HT2A Receptor Dual Antagonist (±)-SIPI 6360,Organic Process Research & Development,2016年,(2016), 20(9), 1662-1667
【文献】Qiao, Hongwen et al.,Synthesis and evaluation of novel tropane derivatives as potential PET imaging agents for the dopamine transporter,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2012年,(2012), 22(13), 4303-4306
【文献】社団法人日本化学会,実験化学ガイドブック,丸善株式会社,1992年,第130-131頁
【文献】実験化学講座(続)2 分離と精製,丸善株式会社,1967年01月25日,p.159-162,184-193
【文献】浅原 照三,溶剤ハンドブック,株式会社 講談社,1985年,pp.47-51
【文献】社団法人日本化学会編,第4版実験化学講座1基本操作I,第184-189頁,丸善株式会社発行,1996年04月05日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭化ウメクリジニウムの調製プロセスであって、
a)イソニペコチン酸エチルを、溶媒中において、アミンの存在下で、1-ブロモ-2-クロロエタンと反応させて、1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)又はその塩を形成するステップ;
b)1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)又はその塩を、溶媒中において、リチウムジイソプロピルアミドと反応させて、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-4-カルボン酸エチル(III)を形成するステップ;
c)1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-4-カルボン酸エチル(III)を、溶媒中において、フェニルリチウムと反応させて、1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV)を形成するステップ;及び
d)1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV)を、溶媒中において、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼンと反応させて、4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の臭化ウメクリジニウムを形成するステップを含む臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項2】
ステップa)において使用される前記アミンは、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、トリエチルアミン、ピリジン、N,N- ジイソプロピルエチルアミン、4-(ジメチルアミノ)ピリジンからなる群から選択され、任意に前記アミンは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン又はトリエチルアミンである請求項1に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項3】
ステップa)における前記溶媒はケトンを含み、任意にアセトンを含む請求項1又は2に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項4】
ステップa)における前記塩は、塩酸塩、酢酸塩、コハク酸塩又はシュウ酸塩からなる群より選択され、任意に塩酸塩である請求項1又は2に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項5】
ステップa)の反応は、20℃と56℃との間の温度で実施される請求項1又は2に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項6】
ステップa)の反応は、20℃と30℃との間の温度で実施される請求項5に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項7】
ステップa)の反応は、20℃と
25℃との間の温度で実施される請求項6に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項8】
ステップa)は反応溶媒の交換をさらに含む請求項1又は2に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項9】
交換溶媒は1以上のアルカンを含み、任意に前記交換溶媒はn-ヘプタン又はヘプタンの混合液を含む請求項8に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項10】
ステップa)は水抽出をさらに含む請求項1又は2に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項11】
前記水抽出は無機又は有機酸、任意に塩酸、酢酸、コハク酸又はシュウ酸による酸性化を含む請求項10に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項12】
ステップa)は二量体(ジエチル1,1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(ピペリジン-4-カルボキシレート)(V))のろ過による除去をさらに含む請求項1又は2に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項13】
ステップa)の反応混合液はろ過に先立って冷却される請求項12に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項14】
ステップa)は、
i)反応溶媒の交換;
ii)水抽出;及び
iii)ろ過による二量体の除去
を含む請求項8に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項15】
ステップd)の前記溶媒は環状エーテル、芳香族溶媒、ケトン及び水から選択されることを含む請求項1又は2に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項16】
ステップd)の前記溶媒はテトラヒドロフラン、トルエン又はアセトンである請求項15に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項17】
ステップd)の前記反応は、40℃と111℃の間の温度で実施される請求項1に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項18】
ステップd)の前記反応は、60℃と100℃の間の温度で実施される請求項17に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項19】
ステップd)において形成された前記臭化ウメクリジニウムの一部がステップd)の反応混合液から沈殿した後、ステップd)の前記反応混合液を-10℃と10℃との間の温度に冷却し、ステップd)において形成された前記臭化ウメクリジニウムがさらにステップd)の前記反応混合液から沈殿するようにする請求項1に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項20】
ステップd)の前記反応混合液は、0℃と5℃との間の温度に冷却する請求項19に記載の臭化ウメクリジニウムの調整プロセス。
【請求項21】
沈殿した臭化ウメクリジニウムはろ過及び乾燥されて、HPLCによる純度98.0%以上の生成物に単離される請求項19又は20に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項22】
単離された臭化ウメクリジニウムの結晶形は、臭化ウメクリジニウムの非溶媒和形である請求項21に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項23】
e)溶媒中の臭化ウメクリジニウムを再結晶するステップをさらに含む請求項1に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項24】
臭化ウメクリジニウムは、1-プロパノールのようなアルコール、水のようなプロトン性溶媒、又はアルコールとプロトン性溶媒の組み合わせからなる群から選択される溶媒から再結晶される請求項23に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項25】
臭化ウメクリジニウムは水から再結晶されてHPLCによる純度99.0%以上の生成物を得る請求項24に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項26】
再結晶された生成物は単離され、オーブン乾燥及び/又は凍結乾燥のような従来の乾燥技術により乾燥される請求項23、24又は25に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項27】
f)臭化ウメクリジニウムの微粒子化のステップをさらに含む請求項1に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項28】
微粒子化は、粉砕装置内におけるキャビテーション及び/又は粒子間衝突及び/又は剪断応力によりもたらされる請求項27に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【請求項29】
粉末の形の臭化ウメクリジニウムの任意にスプレードライによる単離のステップをさらに含む請求項28に記載の臭化ウメクリジニウムの調製プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭化ウメクリジニウムの名称で知られている化合物4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(4-[hydroxyl(diphenyl)methyl]-1-[2-(phenylmethyl)oxy]ethyl]-1-azoniabicyclo[2.2.2]octane bromide)の新規な調製プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
臭化ウメクリジニウムは有効な抗コリン剤であり、ぜんそくや慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような呼吸器疾患の治療に使用されてきた。これは、経口吸入用の乾燥粉末として、1日1回のマイクログラム用量で投与される医薬品組成物を調製するために使用されている。臭化ウメクリジニウムを用いた新規な組成物、組み合わせ、投与形(例えば定量吸入器)及び投与量が開発されている。
【0003】
下に描かれた分子構造(I)の化合物である臭化ウメクリジニウムは、慢性気管支炎(chronic bronchitis)及び肺気腫(emphysema)を含む慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)(COPD)の患者における気流閉塞(airflow obstruction)の治療に使用される長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(muscarinic antagonist)である。
【0004】
【化1】
国際公開第2005/104745号において特許請求された臭化ウメクリジニウムの合成は、以下の4つのステップを含む:
【0005】
【化2】
重要な中間体である式(II)の1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(ethyl 1-(2-chloroethyl)piperidine-4-carboxylate)は、アセトン中において、炭酸カリウムの存在下で、1-ブロモ-2-クロロエタン(1-bromo-2-chloroethane)とイソニペコチン酸エチル(ethyl isonipecotate)を反応させることにより合成される。しかしながら、式(II)の化合物は、二量体副生成物であるジエチル1,1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(ピペリジン-4-カルボキシレート)(diethyl 1,1'-(ethane-1,2-diyl)bis(piperidine-4-carboxylate))(V)の形成により、非常に低い収率(39%)で調製される。これは、クロマトグラフ手法(chromatographic techniques)により一次化合物から分離しなければならない。
【0006】
【化3】
二量体化の問題及び結果として生じる低い収率を克服するために、以下のように国際公開第2014/027045号は、より良好な収率(80%)で式(II)の化合物を調製するための、代替的な二つのステップのプロセスを特許請求している。
【0007】
【化4】
この合成代替物がより良い収率をもたらしうることに疑問の余地は無いが、国際公開第2005/104745号に記載されているような単一のステップの代わりに、2つの反応ステップが必要であることは、工業的応用においては最良の解決策ではない。加えて、国際公開第2014/027045号は、第1のステップにおける高温の使用、及び第2のステップにおける高腐食性・毒性試薬(highly corrosive and toxic reagent)、すなわち環境上好ましくないSOx副生成物を生成する塩化チオニルの使用を開示する。これが、国際公開第2005/104745号に記載された穏やかな条件と比較した場合の3つの主な不利益である。
【0008】
また、国際公開第2016/071792号は、還元剤を加えたメタノール:酢酸の混合液中における、イソニペコチン酸エチルのハロゲン化アセトアルデヒドとの反応を含む式(II)の化合物を調製する以下のような一ステップのプロセスを特許請求している。
【0009】
【化5】
国際公開第2005/104745号及び国際公開第2014/027045号に記載のものと比較してより良好な収率(90%)をもたらすが、この合成は、還元剤との反応に先立って、エステル部分(ester moiety)をある程度分解可能な、メタノール溶解性-水性酸性溶液(methanolic-aqueous acidic solution)の使用を必要とする。
【0010】
国際公開第2011/029896号は以下のように、異なる中間体の使用を経て臭化ウメクリジニウムを調製する代替プロセスを説明する:
【0011】
【化6】
ここで、Pは保護基であり;Rはアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、アリール及びヘテロアリールからなる群から選択され;X及びYは脱離基であり、但しXとYは異なる。
【0012】
しかしながらこのプロセスは、より長い合成経路を包含し、且つ余分な保護-脱保護ステップを含むので、国際公開第2005/104745号に開示されたプロセスよりも複雑になっている。
【0013】
非溶媒和結晶形の臭化ウメクリジニウムは活性医薬成分の多形体として開示されており(国際公開第2014/027045号,米国特許第9273001号)、化合物が異なる物理的性質を有するさまざまな固体を生じ得ることを示している。単結晶形態での純粋な臭化ウメクリジニウムの調製は、臭化ウメクリジニウムが溶媒和を形成することに高い感受性を有するため、業界にとって課題であった。臭化ウメクリジニウム溶媒和にはメタノール溶媒和物(CZ27764(Sanofi))を含み、エタノール、2-プロパノール、2-メチルプロパン-1-オール、クロロベンゼン及びp-キシレン溶媒和物が開示されている(国際公開第2014/027045号,米国特許第9273001号)。1-プロパノールが最終プロセスステップにおける溶媒として使用して、溶媒和物の形成を最小限にして(米国特許第9273001号)、従来必要だった酢酸エチル、メタノール及び水の中での化合物の再懸濁を回避するようにしている(example 84,Method B,国際公開第2005/104745号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2005/104745号
【文献】国際公開第2014/027045号
【文献】国際公開第2016/071792号
【文献】国際公開第2011/029896号
【文献】米国特許第9273001号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
臭化ウメクリジニウム市場の需要を満たすために、より効率的なプロセスを開発する必要がある。すなわち国際公開第2016/071792号,国際公開第2005/104745号,国際公開第2014/027045号及び国際公開第2011/029896号に従来開示されたものを超える有利な点を提供するプロセスである。また、一定のレベルの結晶化度及び化学的純度を有する単一の純粋な結晶形の臭化ウメクリジニウムの調製プロセスも提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一つの態様によると、臭化ウメクリジニウムの調製プロセスが提供され、調製プロセスは:
a)イソニペコチン酸エチルを、溶媒中において、有機塩基の存在下で、1-ブロモ-2-クロロエタンと反応させて、1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)又はその塩を形成するステップ;
b)1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)又はその塩を、溶媒中において、リチウムジイソプロピルアミド(lithium diisopropylamide)と反応させて、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-4-カルボン酸エチル(III)を形成するステップ;
c)1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-4-カルボン酸エチル(III)を、溶媒中において、フェニルリチウム(phenyl lithium)と反応させて、1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV)を形成するステップ;及び
d)1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV)を、溶媒中において、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼンと反応させて、4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の臭化ウメクリジニウムを形成するステップ、を含む。
【0017】
本発明の他の態様によると、
a)イソニペコチン酸エチルを、溶媒中において、有機塩基の存在下で、1-ブロモ-2-クロロエタンと反応させて、1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)又はその塩を形成するステップを含むプロセスが提供される。
【0018】
本発明のさらなる態様によると、
d)1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノールを、溶媒中において、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼンと反応させて、4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)、臭化ウメクリジニウムを形成するプロセスにおいて、溶媒は、テトラヒドロフランのような環状エーテル、トルエンのような芳香族溶媒、アセトンのようなケトン、及び水のようなプロトン性溶媒、又はこれらの組み合わせからなる群から選択され、任意に溶媒は水であることを含むプロセスが提供される。
【0019】
本発明の他の態様は、本発明のプロセスにより得られる1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)及び臭化ウメクリジニウムに関し、並びに前記臭化ウメクリジニウムを含む医薬品組成物に関する。
【0020】
驚くべきことに、本発明のステップa)は、ステップ(例えば保護-脱保護ステップ)の数を増やす必要もなく、高温を使用する必要もなく、且つ望ましくない試薬(例えば腐食性試薬(corrosive reagents)、毒性試薬(toxic reagents)あるいはメタノール/水性酸性系)を使用する必要もなく、重要な中間体1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)を、国際公開第2005/104745号に開示されたプロセスよりも高い収率(66%)で供給することが見出された。本発明のステップa)は、ジエチル1,1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(ピペリジン-4-カルボキシレート)(V)のような望ましくない副生成物の形成を制御する。本発明のステップa)の間に得られた1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)は、精製することもでき、又は精製することなく続くプロセスステップで直接使用することもできる(例えばクロマトグラフィーによる精製)。本発明のプロセスは、臭化ウメクリジニウムの圧縮(又はワンポット)合成(telescoped (or one-pot) synthesis)を可能にし、これにより出発原料は連続的な化学反応を受ける。このような合成は、中間体の分離及び精製を回避することにより化学反応効率を改善し、従って化学収率を増加しつつ時間及び資源を節減するので、需要が非常に多い。
【0021】
本発明のステップa)の一つの有利な点は、このプロセスステップから得られる1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)中間体を使用することにより、一定のレベルの結晶化度及び化学的純度を有する単一の純粋な結晶形の臭化ウメクリジニウムを調製することができることにある。
【0022】
さらに、本発明のステップd)は、一定のレベルの結晶化度及び化学的純度を有する単一の純粋な結晶形を有する生成物を供給することが見出された。従って本発明のプロセスのさらなる有利な点の一つは、本発明のステップd)の間に得られる臭化ウメクリジニウムが、一定のレベルの結晶化度及び化学的純度を有する単一の純粋な結晶形であることである。
【0023】
従って本発明は、一定のレベルの結晶化度及び化学的純度を有する単一の純粋な結晶形を供給する臭化ウメクリジニウムの調製プロセスを開示する。
【0024】
最後に、本発明のプロセスは、吸入に適した粒径を有する臭化ウメクリジニウムの製造を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例18より得られた臭化ウメクリジニウムのXPRD回折図である。
【
図2】実施例18より得られた臭化ウメクリジニウムのDSCサーモグラムである。
【
図3】実施例18より得られた臭化ウメクリジニウムのTGAサーモグラムである。
【
図4】実施例18より得られた臭化ウメクリジニウムのHPLC。
【
図5】実施例19の3ステップの後に得られ、臭化ウメクリジニウムを調製する最終ステップにおける出発原料として使用された1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV)のHPLCである。
【
図6】実施例20より、水から再結晶した臭化ウメクリジニウムのHPLCである。
【
図7】微粒子化前の臭化ウメクリジニウムのXRPDである。
【
図8】実施例21より、流体エネルギージェットミル微粒子化後の臭化ウメクリジニウムのXRPDである。
【
図9】実施例22より、高圧均質化微粒子化後の臭化ウメクリジニウムのXRPDである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は臭化ウメクリジニウム、及び臭化ウメクリジニウムを調製する際の重要な中間体の一つである1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)を調製するための代替プロセスを提供する。
【0027】
本発明は以下のステップを含むプロセスを提供する。
a)イソニペコチン酸エチルを、溶媒中において、有機塩基の存在下で、1-ブロモ-2-クロロエタンと反応させて、1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)又はその塩を形成するステップ;
b)1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)又はその塩を、溶媒中において、リチウムジイソプロピルアミドと反応させて、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-4-カルボン酸エチル(III)を形成するステップ;
c)1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-4-カルボン酸エチル(III)を、溶媒中において、フェニルリチウムと反応させて、1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV)を形成するステップ;
d)1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV)を、溶媒中において、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼンと反応させて、単一の純粋な結晶形である4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)、臭化ウメクリジニウムを形成するステップ、及び任意に;
e)臭化ウメクリジニウムを再結晶して一貫して高純度の生成物を取得するステップ、及び任意に;
f)結晶形を維持しつつ臭化ウメクリジニウムを微粒子化して、吸入に適した粒径を有する生成物を取得するステップ。
【0028】
ステップa)乃至e)はステップf)の不在下で組み合わせることができる。ステップa)乃至d)及びf)はステップe)の不在下で組み合わせることができる。
【0029】
ステップd)とe)は他のプロセスステップの不在下で組み合わせることができる。ステップd)とf)は他のプロセスステップの不在下で組み合わせることができる。ステップd)、e)とf)は他のプロセスステップの不在下で組み合わせることができる。
【0030】
本発明のステップa)は以下のようにして実施することができる:
a)イソニペコチン酸エチルを、溶媒中において、有機塩基の存在下で、約20℃から約56℃の温度で、1-ブロモ-2-クロロエタンと反応させて、1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)を形成する;好ましくはその後、(i)溶媒交換を実行し、好ましくは水抽出により反応混合液から形成された塩を除去し、得られた溶液を濃縮し、二量体を除去するためにろ過された後の溶液に存在する1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)を単離する。又はその後;(ii)好ましくは水抽出により反応混合液から形成されたいずれの塩も除去し、得られた溶液を無機又は有機酸、好ましくは塩酸、酢酸、コハク酸又はシュウ酸により酸性化し、好ましくはろ過及び乾燥により生成物1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)を塩として単離する。
【0031】
ステップa)において使用される溶媒は、アセトンのようなケトンからなる群から選択することができる。
【0032】
ステップa)において使用される有機塩基は、トリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン等のアミン(amines)のような有機塩基の群から選択することができる。好ましくは有機塩基はトリエチルアミンである。ステップa)の反応が完了したら、溶媒交換を行うことができ、トリエチルアミン塩を水抽出により除去でき、得られた溶液を濃縮して1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)を単離することができる。トリエチルアミンを有機塩基として使用することにより、ジエチル1,1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(ピペリジン-4-カルボキシレート)(V)の残存量を14%未満として、66%までの収率で1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)を得ることができる。これに対して、国際公開第2005/104745号に開示された革新的な手順の実行によると、副生成物ジエチル1,1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(ピペリジン-4-カルボキシレート)(V)の生成は22%に達した。
【0033】
ステップa)は約20℃と約56℃の間、好ましくは約20℃と約30℃の間の温度で実施することができ、より好ましくはこの反応は約20℃と約25℃との間の温度で実行される。30℃よりも高い温度ではより多量の(more significant amount)副生成物ジエチル1,1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(ピペリジン-4-カルボキシレート)(V)が得られ、より低い収率(34%)で1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)が生じる。ステップa)は、約14時間と約24時間との間の期間で実施することができる。
【0034】
塩(例えばトリエチルアミン塩)を水抽出により除去した後、得られた溶液を、無機酸又は有機酸、好ましくは塩酸、酢酸、コハク酸又はシュウ酸あるいはこれらの溶液を用いて酸性化することができ、生成物1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)を塩として、好ましくはろ過及び乾燥により単離することができる。
【0035】
上に開示したように、ステップa)は反応溶媒を交換することを含んでいてもよい。交換溶媒は、n-ヘプタン又はヘプタンの混合液のような1以上のアルカンを含んでいてもよい。
【0036】
また上に開示したように、ステップa)はろ過による二量体の除去を含んでいてもよい。反応混合液はろ過前に冷却してもよく、任意に-20℃に冷却し、その温度で約12時間から24時間維持してもよく、任意に16時間維持してもよい。
【0037】
組み合わせにおいて、ステップa)は以下を含みうる:
i)反応溶媒の交換;
ii)水性抽出;及び
iii)ろ過による二量体の除去。
【0038】
本発明のステップb)は以下のように実施されうる。
b)溶媒中において、好ましくは約-50℃と約25℃との間の温度で、1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)又はその塩をリチウムジイソプロピルアミドと反応させて、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-4-カルボン酸エチル(III)又はその塩を形成し;好ましくはその後、好ましくは塩基性水抽出により、反応混合液から塩を除去し、そして溶媒蒸留(solvent distillation)及び溶媒交換(solvent exchange)を実行する。
【0039】
ステップb)において使用される溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)のような環状エーテルからなる群から選択することができる。
【0040】
本発明のステップc)は以下のように実施されうる:
c)溶媒中において、好ましくは約-30℃と約25℃との間の温度で、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-4-カルボン酸エチル(III)又はその塩をフェニルリチウムと反応させて、1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV)又はその塩を形成し;好ましくは1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV)又はその塩を含む反応混合液を水で処理し、得られた溶液を濃縮し、好ましくはその後適当な貧溶媒を添加して沈殿を生じさせ、好ましくはろ過及び乾燥により、HPLCによる純度が98%以上に形成されるように生成物を単離する。
【0041】
ステップc)において使用される溶媒は、THFのような環状エーテルからなる群から選択することができる。
【0042】
本発明のステップd)は以下のように実施されうる:
d)溶媒中において、約40℃と溶媒還流温度(solvent reflux temperature)との間の温度で、好ましくは約60℃と溶媒還流温度との間の温度で、1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV)と((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼンとを反応させて、4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の臭化ウメクリジニウムを形成し、好ましくは反応混合液を約-10℃と約5℃との間の温度に冷却し、好ましくは約-10℃と約5℃との間の温度で約2時間、懸濁液を撹拌する。その後、得られた生成物を、好ましくはろ過により単離し、約35℃と約55℃の間の温度で、好ましくは真空下で乾燥し、単結晶形態で、HPLCによる純度が98%以上の生成物を得ることができる。
【0043】
ステップd)で使用される溶媒は、THFのような環状エーテル、トルエンのような芳香族溶媒、アセトンのようなケトン、及び水のようなプロトン性溶媒からなる群から選択することができる。ステップd)は約40℃と約111℃の間の温度で実施することができ、好ましくは任意に約60℃と約100℃の間で実施することができる。ステップd)は、約18時間と約24時間の間の期間にわたって実施することができる。反応が完了したら、反応物を冷却することにより、最大84%の収率で、臭化ウメクリジニウムを得られる。説明した手順に従って得られる生成物の純度は、単結晶形態で、典型的にHPLCにより98.0%以上である。単離された臭化ウメクリジニウムの結晶形は、非溶媒和形の臭化ウメクリジニウムである。
【0044】
本発明のステップe)は以下のように実施されうる:
e)約40℃と約溶媒還流温度との間の温度で、好ましくは約60℃と約80℃との間の温度で溶媒中において臭化ウメクリジニウムを再結晶して、4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の臭化ウメクリジニウムを得る。好ましくは反応混合液を約-10℃と約5℃との間の温度に冷却し、好ましくは約-10℃と約5℃との間の温度で約2時間、懸濁液を撹拌する。その後、得られた生成物を、好ましくはろ過により単離し、約35℃と約55℃の間の温度で、好ましくは真空下で乾燥し、単結晶形態で、HPLCによる純度が99%以上の生成物を得ることができる。
【0045】
本発明のステップd)に従って得られた臭化ウメクリジニウムは、再結晶させることができる。再結晶溶媒は、1-プロパノールのようなアルコール、水のようなプロトン性溶媒、又は両方の種類の溶媒の混合液からなる群から選択することができる。好ましくは再結晶は水の中において実施され、任意に約40℃から約溶媒還流温度の間の温度、好ましくは約60℃と約80℃の間の温度で原料を水の中に懸濁させることにより実施される。得られた溶液を約-10℃と約5℃との間の温度まで冷却してもよく、得られた懸濁液を約-10℃と約5℃との間で約2時間撹拌してもよい。好ましくは、臭化ウメクリジニウムは単離されて(任意にろ過による)、水で洗浄され(任意)、続いて乾燥される。臭化ウメクリジニウムは真空下で、約35℃と約55℃との間の温度で乾燥されてもよい。乾燥した生成物は典型的にはHPLCにより99.0%以上の純度を有し、単結晶形態を呈する。
【0046】
本発明に従って得られた生成物のX線粉末回折(XRPD)回折図、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、熱重量分析(TGA)サーモグラム及びHPLCクロマトグラムを
図1-9に示す。
【0047】
本発明より得られた臭化ウメクリジニウムは、吸入に適した粒径を有する材料を得るために微粒子化することが好ましい。従って本発明は、臭化ウメクリジニウムの結晶形を維持しつつ粒径を適合させるための微粒子化プロセスをも提供する。
【0048】
以下の実施例は本発明のプロセスを説明するために提供され、本発明の限定として解釈されることを意図するものではない。本発明の精神と範囲から離反することなく、細かな変形を行うことができる。
【0049】
<実施例1>
1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)(ethyl 1-(2-chloroethyl)-4-piperidine-4-carboxylate hydrochloride(II))の調製
トリメチルアミン(1.09mL,7.79mmol)を、イソニペコチン酸エチル(0.80mL,5.19mmol)のアセトン(7.20mL)溶液に加え、続いて1-ブロモ-2-クロロエタン(0.86mL,10.38mmol)を加えた。反応混合液を25℃で24時間撹拌し、次に真空下で濃縮した。得られた残留物を水(3.0mL)で処理し、酢酸エチルで抽出した(3x3.0mL)。複合した有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物の精製をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(グラジエント1:1n-ヘキサン/酢酸エチルから9:1酢酸エチル/メタノール)により実行し、所望の化合物(無色の液体、0.75g,65.6%)とそれぞれの二量体(0.25g,14.0%)を得た。
【0050】
1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II):1H-NMR(300MHz,CDCl3)δ4.11(q,J=5.3Hz,2H),3.55(t,J=4.0Hz,2H),2.88-2.84(m,2H),2.68(t,J=4.0Hz,2H),2.24(dt,J=12.0,3.0Hz,1H),2.12(td,J=11.3,2.7Hz,2H),1.93-1.65(m,4H),1.22(t,J=9.0Hz,3H);13C-NMR(75MHz,CDCl3)δ175.11,60.51,60.21,53.18,41.23,41.09,28.29,14.38。MS(質量分析)(ESI,エレクトロスプレーイオン化)m/z(質量電荷比)C10H18ClNO2の算出値:219、実測値220[M+H]+。
【0051】
ジエチル1,1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(ピペリジン-4-カルボキシレート)(V):1H-NMR(300MHz,CDCl3)δ4.11(q,J=5.25Hz,4H),2.99-2.76(m,4H),2.47(s,4H),2.30-2.20(m,2H),2.07-1.99(m,6H),1.90-1.84(m,4H),1.79-1.66(m,4H),1.23(t,J=6.0Hz,6H);13C-NMR(75MHz,CDCl3)δ175.29,60.49,56.43,53.68,41.29,28.40,14.40。MS(質量分析)(ESI,エレクトロスプレーイオン化)m/z(質量電荷比)C18H32N2O2の算出値:340、実測値341[M+H]+。
【0052】
<実施例2>
1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)の調製
トリメチルアミン(1.09mL,7.79mmol)を、イソニペコチン酸エチル(0.80mL,5.19mmol)のアセトン(8.60mL)溶液に加え、続いて1-ブロモ-2-クロロエタン(0.86mL,10.38mmol)を加えた。反応混合液を25℃で17時間撹拌し、次にn-ヘプタン(8.6mL)を加え、アセトンを真空下で除去して体積8.6mlとした。混合液に水(8.6mL)を加え、n-ヘプタンで抽出した(2x8.6mL)。複合した有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。さらにn-ヘプタンを加え(2.40mL)、溶液を0℃で1時間放置し、-20℃まで16時間にわたり冷却した。溶液をろ過して二量体ジエチル1,1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(ピペリジン-4-カルボキシレート)(V)を除去し、次いで真空下で濃縮した。粗生成物の精製をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(グラジエント1:1n-ヘキサン/酢酸エチルから9:1酢酸エチル/メタノール)により実行し、所望の化合物(無色の液体、0.63g,55.1%)とそれぞれの二量体(0.10g,5.8%)を得た。
【0053】
<実施例3>
1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)の調製
イソニペコチン酸エチル(0.40mL,2.60mmol)及びトリエチルアミン(0.55mL,3.90mmol)のアセトン(1.3mL)溶液を、1-ブロモ-2-クロロエタン(0.43mL,5.19mmol)のアセトン(3.0mL)溶液に、56℃で5時間かけてゆっくりと加えた。反応混合液は56℃で24時間撹拌され、次に真空下で濃縮された。得られた残留物を水(1.0mL)で処理し、ジエチルエーテルで抽出した(3x3.0mL)。複合した有機層MgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物の精製をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(6:4n-ヘキサン/酢酸エチル)により実行し、所望の化合物(無色の液体、0.19g,33.5%)とそれぞれの二量体を得た。
【0054】
<実施例4>
1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)の調製
イソニペコチン酸エチル(0.40mL,2.60mmol)とトリエチルアミン(0.55mL,3.90mmol)のアセトン(1.6mL)溶液を、1-ブロモ-2-クロロエタン(0.86mL,10.38mmol)とヨウ化カリウム(10%,1.04mmol,0.17mg)のアセトン(7.0mL)溶液に、室温で、5時間かけてゆっくりと加えた。反応混合液を25℃で24時間撹拌し、次いで真空下で濃縮した。得られた残留物を水(1.0mL)で処理し、ジエチルエーテルで抽出した(3x3.0mL)。複合した有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物の精製をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(6:4n-ヘキサン/酢酸エチル)により実行し、所望の化合物(無色の液体,0.29g,50.1%)及びそれぞれの二量体を得た。
【0055】
<実施例5>
1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)の調製
N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(1.36mL,7.79mmol)をイソニペコチン酸エチル(0.80mL,5.19mmol)のアセトン(8.60mL)溶液に加え、次いで1-ブロモ-2-クロロエタン(0.86mL,10.38mmol)を加えた。反応混合液を25℃で24時間撹拌した。次に水(3.0mL)を加え、pHをHCl(1M)で中和し、水相をジエチルエーテルで抽出した(3x10.0mL)。複合した有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物(0.67g)を1H-NMRにより分析し、結果は二量体に対し1.00:0.06の1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)だった。
【0056】
<実施例6>
1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)の調製
4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.95g,7.79mmol)をイソニペコチン酸エチル(0.80mL,5.19mmol)のアセトン(8.60mL)溶液に加え、続いて1-ブロモ-2-クロロエタン(0.86mL,10.38mmol)を加えた。反応混合液を25℃で24時間撹拌した。次に水(3.0mL)を加え、pHをHCl(1M)で中和し、水相をジエチルエーテルで抽出した(3x10.0mL)。複合した有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物(0.52g)を1H-NMRにより分析し、結果は二量体に対して1.00:0.06の1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)だった。
【0057】
<実施例7>
1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)の調製
1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)(1.16mL,7.79mmol)をイソニペコチン酸エチル(0.80mL,5.19mmol)のアセトン(8.60mL)溶液に加え、続いて1-ブロモ-2-クロロエタン(0.86mL,10.38mmol)を加えた。反応混合液を25℃で24時間撹拌した。次に水(3.0mL)を加え、pHをHCl(1M)で中和し、水相をジエチルエーテルで抽出した(3x10.0mL)。複合した有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物(0.88g)を1H-NMRにより分析したが、二量体は検知されなかった。
【0058】
<実施例8>
1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)の調製
ピリジン(0.63mL,7.79mmol)をイソニペコチン酸エチル(0.80mL,5.19mmol)のアセトン(8.60mL)溶液に加え、続いて1-ブロモ-2-クロロエタン(0.86mL,10.38mmol)を加えた。反応混合液を25℃で24時間撹拌した。次いでn-ヘプタン(8.6mL)を添加し、真空下でアセトンを除去した。得られた混合物に、n-ヘプタン(8.6mL)を再度添加し、アセトンを真空下で再度除去して、8.6mlの体積を得た。水(8.6mL)を混合液に加え、n-ヘプタンで抽出した(2x8.6mL)。複合した有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物(0.38g)を1H-NMRで分析すると、結果は二量体に対して1.00:0.10の割合の1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)だった。
【0059】
<実施例9>
1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル塩酸塩の調製
1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)(0.15mL)のアセトン(2mL)溶液に、エタノール(0.72mL)中の塩酸(1.25M)を室温で一滴ずつ滴下した。溶媒を真空下で除去し、結晶質の白色固体を得た。
【0060】
<実施例10>
1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-4-カルボン酸エチル(III)の調製
テトラヒドロフラン(THF,147.0mL)中の1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)(5.0g,22.76mmol)溶液を窒素下で-50oCに冷却した。LDA(リチウムジイソプロピルアミド)(ヘプタン/THF/エチルベンゼン中2.0M,17.0mL,34.0mmol)を-50℃で25分間かけて溶液に加えた。反応混合液を16時間かけて室温まで温めた。反応を飽和K2CO3水溶液(122.0mL)でクエンチし(quenched)、ジエチルエーテルで抽出した(3x120.0mL)。複合した有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。得られたオレンジ色の液体をジクロロエタンと3回共蒸発させて(co-evaporated)過剰のエチルベンゼンを除去し、オレンジ色の油状物(4.15g,99.4%)を得た。
【0061】
1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-4-カルボン酸エチル(III):1H-NMR(300MHz,CDCl3)δ4.10(t,J=5.23Hz,2H),2.90-2.85(m,6H),1.71-1.66(m,6H),1.22(t,J=4.0Hz,3H).
<実施例11>
1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV)の調製
フェニルリチウム溶液(70シクロヘキサン/30エーテル中の1.9M,22.30mL,42.40mmol)を窒素下で-30℃に冷却した。1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-4-カルボン酸エチル(III)(2.0g,10.90mmol)のTHF(27.0mL)溶液を、-30℃で25分間かけて反応混合液にゆっくりと加えた。反応混合液を16時間かけて室温まで温めた。反応を水(10.0mL)でクエンチし、次に真空下で蒸発乾固した。水(40.0mL)と酢酸エチル(40.0mL)を加えて、白色の固体を沈殿(crash out)させた。この固体を真空下でろ過し、白色の粉末(2.46g,76.8%)を得た。
【0062】
1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV):1H-NMR(300MHz,CDCl3)δ7.54-7.51(m,3H),7.33-7.20(m,6H),2.85-2.80(m,6H),1.78-1.72(m,6H).MS(質量分析)(ESI,エレクトロスプレーイオン化)m/z(質量電荷比)C20H23NOの算出値:293,実測値294[M+H]+
<実施例12>
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の調製
1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV,0.20g,0.69mmol)のTHF(30.0mL)溶液に、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼン(0.16mL,1.03mmol)を加えた。溶液を60℃で24時間撹拌した。次に溶液を25℃に冷却し、真空下で濃縮して、白色固体を形成した。生成物をろ過し、真空下で、酢酸エチル(5x20.0mL)とn-ヘキサン(5x20.0mL)で洗浄した。次に白色固体を真空乾燥した(0.30g,82.2%)。
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I):1H-NMR(300MHz,DMSO-d6)δ7.54(d,J=6.0Hz,4H),7.35-7.20(m,11H),5.97(s,1H),4.49(s,2H),3.81(b,2H),3.49-3.46(m,6H),3.31(s,2H),1.99(bt,J=6.0Hz,6H).MS(質量分析)(ESI,エレクトロスプレーイオン化)m/z(質量電荷比)C29H34NO2の算出値:428,実測値428[M+H]+
<実施例13>
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の調製
1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV,0.20g,0.69mmol)のアセトン(30.0mL)懸濁液に、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼン(0.16mL,1.03mmol)を加えた。反応混合液を60℃で24時間撹拌した。次に反応溶液を25℃に冷却し、真空下で濃縮して、白色固体を形成した。生成物をろ過し、真空下で、酢酸エチル(5x20.0mL)とn-ヘキサン(5x20.0mL)で洗浄した。次に白色固体を真空乾燥した(0.27g,75.7%)。
【0063】
<実施例14>
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の調製
1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV,0.20g,0.69mmol)のトルエン(30.0mL)懸濁液に、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼン(0.16mL,1.03mmol)を加えた。反応混合液を60℃で24時間撹拌した。次に溶液を25℃に冷却し、真空下で濃縮して、白色固体を形成した。生成物をろ過し、真空下で、酢酸エチル(5x20.0mL)とn-ヘキサン(5x20.0mL)で洗浄した。次に白色固体を真空乾燥した(0.28g,79.6%)。
【0064】
<実施例15>
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の調製
1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV,0.20g,0.69mmol)のトルエン(30.0mL)懸濁液に、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼン(0.16mL,1.03mmol)を加えた。反応混合液を還流下で24時間撹拌した。次に反応混合液を2℃と4℃の間の温度にゆっくりと冷却すると、白色固体が沈殿した。生成物をろ過し、真空下で、酢酸エチル(5x20.0mL)とn-ヘキサン(5x20.0mL)で洗浄した。次に白色固体を真空乾燥した(0.28g,79.6%)。
【0065】
<実施例16>
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の調製
1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV,0.20g,0.69mmol)の水(20.0mL)懸濁液に、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼン(0.16mL,1.03mmol)を加えた。反応混合液を還流下で24時間撹拌した。次に反応混合液を2℃と4℃の間の温度にゆっくりと冷却すると、白色固体が沈殿した。生成物をろ過し、真空下で、酢酸エチル(20.0mL)とn-ヘキサン(5x20.0mL)で洗浄した。次に白色固体を真空乾燥した(0.24g,68.3%)。
【0066】
<実施例17>
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の調製
1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV,0.20g,0.69mmol)の水(15.0mL)とアセトン(15.0mL)懸濁液に、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼン(0.16mL,1.03mmol)を加えた。反応混合液を60℃で24時間撹拌した。次に反応混合液を2℃と4℃の間の温度にゆっくりと冷却すると、白色固体が沈殿した。生成物をろ過し、真空下で、酢酸エチル(20.0mL)とn-ヘキサン(5x20.0mL)で洗浄した。次に白色固体を真空乾燥した(0.19g,54.2%)。
【0067】
<実施例18>
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の調製
1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV,0.75g,2.56mmol)の水(112.50mL)懸濁液に、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼン(0.61mL,3.83mmol)を加えた。反応混合液を60℃で24時間撹拌した。次に反応混合液を2℃と4℃の間の温度にゆっくりと冷却し、2度と4度の間の温度で2時間撹拌した。生成物をろ過し、真空下で、酢酸エチル(20.0mL)とn-ヘキサン(5x20.0mL)で洗浄した。次に白色固体を真空乾燥した(1.03g,78.9%)。
【0068】
<実施例19>
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の調製
トリエチルアミン(5.45mL,38.95mmol)をイソニペコチン酸エチル(4.0mL,25.95mmol)のアセトン(43.0mL)溶液に加え、続いて1-ブロモ-2-クロロエタン(4.32mL,52.14mmol)を加えた。反応混合液を25℃で17時間撹拌した。続いてn-ヘプタン(43.0mL)を添加し、真空下でアセトンを除去した。得られた混合液に、n-ヘプタン(43.0mL)を再度添加し、真空下でアセトンをさらに除去して、43.0mLの体積を得た。この混合液に水(43.0mL)を加え、n-ヘプタンで抽出した(2x43.0mL)。複合した有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。この第1粗生成物(4.02g)を1H-NMRにより分析し、その結果二量体に対し1.00:0.11の割合の1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)を得た。さらにn-ヘプタン(11.50mL)を粗生成物に加え、溶液を0℃で1時間放置し、-20℃で16時間冷却した。固体をろ過して二量体を除去し、次に1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)の溶液を真空下で濃縮した。この第2粗生成物(3.57g)を1H-NMRにより分析し、その結果二量体に対し1.00:0.09の割合の1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)を得た。
【0069】
第2粗生成物1-(2-クロロエチル)-4-ピペリジン-4-カルボン酸エチル(II)(3.57g)のTHF(89.6mL)溶液を窒素下で-50℃に冷却した。LDA(ヘキサン/THF中に1.0M,20.72mL,20.72mmol)を-50℃で25分間かけて溶液に加えた。反応混合液を16時間かけて室温まで温めた。K2CO3の飽和水溶液(74.4mL)で反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出した(3x74.4mL)。複合した有機層をMgSO4,で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮して、オレンジ色の油状物として粗製1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-4-カルボン酸エチル(III)(3.02g)を得た。
【0070】
フェニルリチウム(70シクロヘキサン/30エーテル中に1.9M,33.7mL,64.1mmol)溶液を窒素下で-30℃に冷却した。粗製1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-4-カルボン酸エチル(III)(3.02g)のTHF(36.7mL)溶液を、-30℃で25分間かけて反応混合液にゆっくり加えた。反応混合物を16時間かけて室温まで温めた。反応を水(15mL)でクエンチし、次に真空下で蒸発乾固した(結果:黄色固体)。水(60.2mL)と酢酸エチル(60.2mL)を加えると、白色固体が沈殿した。この固体を真空下でろ過し、白色粉末として粗製1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV)(1.76g,3ステップの収率:23.0%)を得た。
【0071】
粗製1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-4-イル(ジフェニル)メタノール(IV)(1.76g,5.83mmol)の水(258.0mL)懸濁液に、((2-ブロモエトキシ)メチル)ベンゼン(1.40mL,9.01mmol)を加えた。反応混合液を還流下で24時間撹拌した。次に反応混合液を2℃と4℃の間の温度にゆっくりと冷却し、2度と4度の間の温度で2時間撹拌した。生成物を真空下でろ過し、過剰の臭化物をヘプタン化合物(compound with heptane)(20.0mL)で洗浄し、除去した。次に白色固体を真空乾燥した(2.55g,最終ステップの収率84.0%)。
【0072】
<実施例20>
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の再結晶
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)(0.20g)の水(2.25mL)中の懸濁液を80℃に加熱した。溶液を1時間撹拌した後、2℃と4℃の間の温度にゆっくりと冷却し、2℃と4℃の間の温度で2時間撹拌した。固体をろ過し、真空下で乾燥した(0.185g,92.5%)。
【0073】
<実施例21>
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の微粒子化
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)(3.0g)を10g/時間で流体エネルギージェットミルに供給した。ベンチュリには4バール及びリングには3バールの圧力にN2で操作した。
【0074】
単離された生成物は、
図8に示すように、Dv10=0.664μm;Dv50=3.071μm;Dv90=7.013μm;span=2.07の粒径分布を有する出発原料のものと同一のXRPDを示した。
【0075】
<実施例22>
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)の微粒子化
4-[ヒドロキシル(ジフェニル)メチル]-1-[2-(フェニルメチル)オキシ]エチル]-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン臭化物(I)(15.0g)を水(285.0g)中に懸濁させ、均一な懸濁液が得られるまで撹拌した。均一な懸濁液を60バールの圧力で合計で100サイクル運転される実験室規模の高圧均質化装置に供給した。均質化ステップの後、懸濁液を保持容器に移した。均質化された懸濁液を、撹拌しつつ、5.7ml/minの供給速度及び75℃(T out)の乾燥温度で、実験室規模のスプレードライヤに供給した。
【0076】
単離された生成物は、
図9に示すように、Dv10=0.55μm;Dv50=2.10μm;Dv90=4.77μm;span=2.03の粒径分布を有する出発原料のものと同一のXRPDを示した。
【0077】
[機器パラメータ]
<NMR-核磁気共鳴>
1H及び13C-NMRスペクトルは、300MHz(1H-NMR)及び75MHz(13C-NMR)のBruker 300 Avanceで記録した。
【0078】
<MS-質量分析>
MS実験は、Micromass(登録商標) Quattro Micro triple quadrupole (Waters(登録商標)、アイルランド)で、正イオンモード(ESI+)のエレクトロスプレー、120℃のイオン源、3.0Kvのキャピラリー電圧及び30Vの電源電圧で実行した。
【0079】
<HPLC-高速液体クロマトグラフィー>
HPLC分析は、Waters(登録商標)モデルAlliance/2695及び2487検出器(デュアルλ)システムを使用して、以下の条件下で実施した:
カラム:waters symmetry shield(商標) RP18 4.6x150mm 3.5ミクロン
流速:0.8mL/min
注入量:10uL
温度:30℃
溶媒A:H2O(0.1%TFA)
溶媒B:CH3CN
グラジエント溶出法は以下の通り:
【0080】
【表1】
<XRPD-X線粉末回折>
X線粉末パターンは、銅源(Cu/Kα-1.54056Å)を備えたPANalytical X’Pert PRO X線回折システムを使用して記録した。
【0081】
<DSC-示差走査熱量測定>
DSC実験はDSC Q200、ランプ10℃/minで350℃までで実行した。
【0082】
<TGA-熱重量分析>
TGA実験はTGA Q500、ランプ10℃/minで350℃までで実行した。