(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】前立腺がんにおける後期臨床エンドポイントを評価するためのアルゴリズムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20230307BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230307BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20230307BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
G01N33/50 P
G16H50/20
(21)【出願番号】P 2019542696
(86)(22)【出願日】2018-02-12
(86)【国際出願番号】 US2018017790
(87)【国際公開番号】W WO2018148642
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-11-25
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504345126
【氏名又は名称】ジェノミック ヘルス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ルイシャオ
(72)【発明者】
【氏名】クレイガー, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ナン
(72)【発明者】
【氏名】マダラ, タラ
(72)【発明者】
【氏名】フェッボ, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス, ヒュー ジェフリー
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-511814(JP,A)
【文献】あすか製薬株式会社[online], リュープロレリン酢酸塩注射用キット3.75mg「あすか」添付文書, 2016, <https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/470007_2499407G1046_1_06>
【文献】塩野義製薬株式会社[online], 注射用イホマイド1g 添付文書, 2012, <https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/340018_4211402D1020_1_14>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/686
G01N 33/50
G16H 50/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺がん患者の定量的スコア(QS)群を前記患者における有害臨床アウトカムの尤度の指標とする方法であって、該方法は、
(a)前記患者から得たがん細胞を含む生体試料において次の遺伝子:BGN、COL1A1、SFRP4、FLNC、GSN、TPM2、GSTM2、FAM13C、KLK2、AZGP1、SRD5A2およびTPX2のRNA転写物のレベルを測定するステップと、
(b)正規化遺伝子発現レベルを得るために、前記遺伝子の前記RNA転写物の前記レベルを正規化するステップと、
(c)定量的スコア(QS)を前記患者について算出するステップであって、前記定量的スコアが、次のように算出され、ここで以下の遺伝子記号は、各遺伝子それぞれの前記正規化遺伝子発現レベルを表す:
(i)未スケール化定量的スコア(QSu)を次のように算出する:
QSu=0.735×間質応答群スコア-0.368×細胞構成群スコア-0.352×アンドロゲン群スコア+0.095×増殖群スコア
ここで:
間質応答群スコア=0.527×BGN+0.457×COL1A1+0.156×SFRP4
細胞構成群スコア=0.163×FLNC+0.504×GSN+0.421×TPM2+0.394×GSTM2
アンドロゲン群スコア=0.634×FAM13C+1.079×KLK2+0.642×AZGP1+0.997×SRD5A2閾値
増殖群スコア=TPX2閾値、
ここで、SRD5A2閾値およびTPX2閾値は、閾値化により次のように算出される:
【数3】
(ii)スケール化定量的スコア(QS)を次のように算出する:
【数4】
、ステップと、
を含み、
(i)前記患者のQSが38、39、40、41または42から選択される閾値以下(≦)である場合、前記患者が、低いスコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが38、39、40、41または42の前記閾値より大きい(>)場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられ、
前記患者のスコア群は、前記患者について有害臨床アウトカムの尤度を示し、低いスコア群は、高スコア群よりも低い有害臨床アウトカムのリスクを示す、方法。
【請求項2】
前立腺がん患者の定量的スコア(QS)群を前記患者における有害臨床アウトカムの尤度の指標とする方法であって、該方法は、
(a)前記患者から得たがん細胞を含む生体試料において次の遺伝子:BGN、COL1A1、SFRP4、FLNC、GSN、TPM2、GSTM2、FAM13C、KLK2、AZGP1、SRD5A2およびTPX2のRNA転写物のレベルを測定するステップと、
(b)正規化遺伝子発現レベルを得るために、前記遺伝子の前記RNA転写物の前記レベルを正規化するステップと、
(c)定量的スコア(QS)を前記患者について算出するステップであって、前記定量的スコアが、次のように算出され、ここで以下の遺伝子記号は、各遺伝子それぞれの前記正規化遺伝子発現レベルを表す:
(i)未スケール化定量的スコア(QSu)を次のように算出する:
QSu=0.735×間質応答群スコア-0.368×細胞構成群スコア-0.352×アンドロゲン群スコア+0.095×増殖群スコア
ここで:
間質応答群スコア=0.527×BGN+0.457×COL1A1+0.156×SFRP4
細胞構成群スコア=0.163×FLNC+0.504×GSN+0.421×TPM2+0.394×GSTM2
アンドロゲン群スコア=0.634×FAM13C+1.079×KLK2+0.642×AZGP1+0.997×SRD5A2閾値
増殖群スコア=TPX2閾値、
ここで、SRD5A2閾値およびTPX2閾値は、閾値化により次のように算出される:
【数3】
(ii)スケール化定量的スコア(QS)を次のように算出する:
【数4】
、ステップと、
を含み、
(i)前記患者のQSが38、39、40、41または42から選択される閾値未満(<)である場合、前記患者が、低いスコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが38、39、40、41または42の前記閾値以上(≧)である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられ、
前記患者のスコア群は、前記患者について有害臨床アウトカムの尤度を示し、低いスコア群は、高スコア群よりも低い有害臨床アウトカムのリスクを示す、方法。
【請求項3】
前記閾値は40であり、前記患者のQSが<40である場合、前記患者が、低いスコア群に割り当てられ、前記患者のQSが≧40である場合、前記患者が高スコア群に割り当てられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記閾値は40であり、前記患者のQSが≦40である場合、前記患者が、低いスコア群に割り当てられ、前記患者のQSが>40である場合、前記患者が高スコア群に割り当てられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記患者の定量的スコアおよびスコア群を提供する報告を提供するステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記RNA転写物の前記レベルが、ARF1、ATP5E、CLTC、GPS1およびPGK1から選択される少なくとも1つの参照遺伝子に対して正規化される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体試料が、新鮮、凍結または固定したパラフィン包埋試料である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記生体試料が、固定したパラフィン包埋試料である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記RNA転写物の前記レベルが、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して決定される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が前記高スコア群に割り当てられる場合、前記患者の前記高スコア群は、前記
患者が高リスク患者のためのマルチモード療法または標準的療法により処置され得ることを示し、前記患者が前記低スコア群に割り当てられる場合、前記低スコア群は、前記患者が積極的監視により処置され得ることを示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記有害臨床アウトカムが、臨床的再発(CR)、生化学的再発(BCR)、遠隔転移(Mets)または前立腺がん死(PCD)の1つまたは複数である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前立腺がん患者の定量的スコア(QS)を、低または中リスクの前立腺がん患者に対する有害臨床アウトカムの相対リスクの指標とする方法であって、
(a)前記患者から得たがん細胞を含む生体試料において次の遺伝子:BGN、COL1A1、SERP4、FLNC、GSN、TPM2、GSTM2、FAM13C、KLK2、AZGP1、SRD5A2およびTPX2のRNA転写物のレベルを測定するステップと、
(b)正規化遺伝子発現レベルを得るために、前記遺伝子の前記RNA転写物の前記レベルを正規化するステップと、
(c)定量的スコア(QS)を前記患者について算出するステップであって、前記定量的スコアが、次のように算出され、ここで以下の遺伝子記号は、各遺伝子それぞれの前記正規化遺伝子発現レベルを表す:
(i)未スケール化定量的スコア(QSu)を次のように算出する:
QSu=0.735×間質応答群スコア-0.368×細胞構成群スコア-0.352×アンドロゲン群スコア+0.095×増殖群スコア
ここで:
間質応答群スコア=0.527×BGN+0.457×COL1A1+0.156×SFRP4
細胞構成群スコア=0.163×FLNC+0.504×GSN+0.421×TPM2+0.394×GSTM2
アンドロゲン群スコア=0.634×FAM13C+1.079×KLK2+0.642×AZGP1+0.997×SRD5A2閾値
増殖群スコア=TPX2閾値、
ここで、SRD5A2閾値およびTPX2閾値は、閾値化により次のように算出される:
【数5】
(ii)スケール化定量的スコア(QS)を次のように算出する:
【数6】
、ステップと
を含み、
(i)前記患者のQSが38、39、40、41または42から選択される閾値以下(≦)である場合、前記患者が、低いスコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが3
8、39、40、41または42の前記閾値より大きい(>)場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられる、方法。
【請求項13】
前立腺がん患者の定量的スコア(QS)を、低または中リスクの前立腺がん患者に対する有害臨床アウトカムの相対リスクの指標とする方法であって、
(a)前記患者から得たがん細胞を含む生体試料において次の遺伝子:BGN、COL1A1、SERP4、FLNC、GSN、TPM2、GSTM2、FAM13C、KLK2、AZGP1、SRD5A2およびTPX2のRNA転写物のレベルを測定するステップと、
(b)正規化遺伝子発現レベルを得るために、前記遺伝子の前記RNA転写物の前記レベルを正規化するステップと、
(c)定量的スコア(QS)を前記患者について算出するステップであって、前記定量的スコアが、次のように算出され、ここで以下の遺伝子記号は、各遺伝子それぞれの前記正規化遺伝子発現レベルを表す:
(i)未スケール化定量的スコア(QSu)を次のように算出する:
QSu=0.735×間質応答群スコア-0.368×細胞構成群スコア-0.352×アンドロゲン群スコア+0.095×増殖群スコア
ここで:
間質応答群スコア=0.527×BGN+0.457×COL1A1+0.156×SFRP4
細胞構成群スコア=0.163×FLNC+0.504×GSN+0.421×TPM2+0.394×GSTM2
アンドロゲン群スコア=0.634×FAM13C+1.079×KLK2+0.642×AZGP1+0.997×SRD5A2閾値
増殖群スコア=TPX2閾値、
ここで、SRD5A2閾値およびTPX2閾値は、閾値化により次のように算出される:
【数5】
(ii)スケール化定量的スコア(QS)を次のように算出する:
【数6】
、ステップと
を含み、
(i)前記患者のQSが38、39、40、41または42から選択される閾値未満(<)である場合、前記患者が、低いスコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが38、39、40、41または42の前記閾値以上(≧)である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられる、方法。
【請求項14】
前記閾値は40であり、前記患者のQSが≧40である場合、前記患者が、高スコア群
に割り当てられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記閾値は40であり、前記患者のQSが>40である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記患者の定量的スコアおよびスコア群を提供する報告を提供するステップをさらに含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記RNA転写物の前記レベルが、ARF1、ATP5E、CLTC、GPS1およびPGK1から選択される少なくとも1つの参照遺伝子に対して正規化される、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記生体試料が、新鮮、凍結または固定したパラフィン包埋試料である、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記生体試料が、固定したパラフィン包埋試料である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記RNA転写物の前記レベルが、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して決定される、請求項12~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記患者が前記高スコア群に割り当てられる場合、前記患者の前記高スコア群は、前記患者が高リスク患者のためのマルチモード療法または標準的療法により処置され得ることを示し、前記患者が前記低スコア群に割り当てられる場合、前記低スコア群は、前記患者が積極的監視により処置され得ることを示す、請求項12~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が前記高スコア群に割り当てられる場合、前記患者の前記高スコア群は、前記患者が高リスク患者として再分類され得ることを示す、請求項12~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が前記低いスコア群に割り当てられる場合、前記患者の前記低いスコア群は、前記患者の分類が中リスク患者として維持され得ることを示す、請求項12~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が前記高スコア群に割り当てられる場合、前記患者の前記高スコア群は、前記患者が高リスク患者のためのマルチモード療法または標準的療法により処置され得ることを示す、請求項12~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記マルチモード療法が、(a)少なくとも1つのホルモン療法剤の投与、(b)少なくとも1つの免疫療法剤の投与、および/または(c)少なくとも1つの化学療法剤の投与を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が前記低スコア群に割り当てられる場合、前記患者の前記低スコア群は、前記患者が積極的監視により処置され得ることを示す、請求項12~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前立腺がん患者の定量的スコア(QS)群を前記患者における有害臨床アウトカムの尤度の指標とする方法であって、該方法は、
(a)前記患者から得たがん細胞を含む生体試料において次の遺伝子:BGN、COL1A1、SFRP4、FLNC、GSN、TPM2、GSTM2、FAM13C、KLK2、AZGP1、SRD5A2およびTPX2のRNA転写物のレベルを測定するステップと、
(b)正規化遺伝子発現レベルを得るために、前記遺伝子の前記RNA転写物の前記レベルを正規化するステップと、
(c)定量的スコア(QS)を前記患者について算出するステップであって、前記定量的スコアが、次のように算出され、ここで以下の遺伝子記号は、各遺伝子それぞれの前記正規化遺伝子発現レベルを表す:
(i)未スケール化定量的スコア(QSu)を次のように算出する:
QSu=0.735×間質応答群スコア-0.368×細胞構成群スコア-0.352×アンドロゲン群スコア+0.095×増殖群スコア
ここで:
間質応答群スコア=0.527×BGN+0.457×COL1A1+0.156×SFRP4
細胞構成群スコア=0.163×FLNC+0.504×GSN+0.421×TPM2+0.394×GSTM2
アンドロゲン群スコア=0.634×FAM13C+1.079×KLK2+0.642×AZGP1+0.997×SRD5A2閾値
増殖群スコア=TPX2閾値、
ここで、SRD5A2閾値およびTPX2閾値は、閾値化により次のように算出される:
【数3】
(ii)スケール化定量的スコア(QS)を次のように算出する:
【数4】
、ステップと、を含み、
(i)前記患者のQSが18、19、20、21または22から選択される第1の閾値未満(<)である場合、前記患者が、低スコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが38、39、40、41または42から選択される第2の閾値以上(≧)である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられ、(iii)前記患者のQSが18、19、20、21または22の前記第1の閾値以上(≧)である場合および前記患者が(ii)の前記高スコア群に入らない場合、前記患者が、中スコア群に割り当てられ、
前記患者のスコア群は、前記患者について有害臨床アウトカムの尤度を示し、低または
中スコア群は、高スコア群よりも低い有害臨床アウトカムのリスクを示す、方法。
【請求項28】
前立腺がん患者の定量的スコア(QS)群を前記患者における有害臨床アウトカムの尤度の指標とする方法であって、該方法は、
(a)前記患者から得たがん細胞を含む生体試料において次の遺伝子:BGN、COL1A1、SFRP4、FLNC、GSN、TPM2、GSTM2、FAM13C、KLK2、AZGP1、SRD5A2およびTPX2のRNA転写物のレベルを測定するステップと、
(b)正規化遺伝子発現レベルを得るために、前記遺伝子の前記RNA転写物の前記レベルを正規化するステップと、
(c)定量的スコア(QS)を前記患者について算出するステップであって、前記定量的スコアが、次のように算出され、ここで以下の遺伝子記号は、各遺伝子それぞれの前記正規化遺伝子発現レベルを表す:
(i)未スケール化定量的スコア(QSu)を次のように算出する:
QSu=0.735×間質応答群スコア-0.368×細胞構成群スコア-0.352×アンドロゲン群スコア+0.095×増殖群スコア
ここで:
間質応答群スコア=0.527×BGN+0.457×COL1A1+0.156×SFRP4
細胞構成群スコア=0.163×FLNC+0.504×GSN+0.421×TPM2+0.394×GSTM2
アンドロゲン群スコア=0.634×FAM13C+1.079×KLK2+0.642×AZGP1+0.997×SRD5A2閾値
増殖群スコア=TPX2閾値、
ここで、SRD5A2閾値およびTPX2閾値は、閾値化により次のように算出される:
【数3】
(ii)スケール化定量的スコア(QS)を次のように算出する:
【数4】
、ステップと、を含み、
(i)前記患者のQSが18、19、20、21または22から選択される第1の閾値以下(≦)である場合、前記患者が、低スコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが38、39、40、41または42から選択される第2の閾値より大きい(>)場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられ、(iii)前記患者のQSが18、19、20、21または22の前記第1の閾値より大きい(>)場合および前記患者が(ii)の前記高スコア群に入らない場合、前記患者が、中スコア群に割り当てられ、
前記患者のスコア群は、前記患者について有害臨床アウトカムの尤度を示し、低または
中スコア群は、高スコア群よりも低い有害臨床アウトカムのリスクを示す、方法。
【請求項29】
前記第2の閾値は40であり、前記患者のQSが≧40である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられる、請求項2
7に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の閾値は40であり、前記患者のQSが>40である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられる、請求項
28に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の閾値は20であり、前記患者のQSが<20である場合、前記患者は、低スコア群に割り当てられ、前記患者のQSが≧20である場合および前記患者が高スコア群に入らない場合、前記患者は、中スコア群に割り当てられる、請求項2
7または
29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の閾値は20であり、前記患者のQSが≦20である場合、前記患者は、低スコア群に割り当てられ、前記患者のQSが>20である場合および前記患者が高スコア群に入らない場合、前記患者は、中スコア群に割り当てられる、請求項
28または3
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記患者の定量的スコアおよびスコア群を提供する報告を提供するステップをさらに含む、請求項2
7~3
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記RNA転写物の前記レベルが、ARF1、ATP5E、CLTC、GPS1およびPGK1から選択される少なくとも1つの参照遺伝子に対して正規化される、請求項2
7~3
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記生体試料が、新鮮、凍結または固定したパラフィン包埋試料である、請求項2
7~3
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記生体試料が、固定したパラフィン包埋試料である、請求項3
5に記載の方法。
【請求項37】
前記RNA転写物の前記レベルが、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して決定される、請求項2
7~3
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記患者が前記高スコア群に割り当てられる場合、前記患者の前記高スコア群は、前記患者が高リスク患者のためのマルチモード療法または標準的療法により処置され得ることを示し、前記患者が前記低スコア群に割り当てられる場合、前記低スコア群は、前記患者が積極的監視で処置され得ることを示す、請求項2
7~3
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記有害臨床アウトカムが、臨床的再発(CR)、生化学的再発(BCR)、遠隔転移(Mets)または前立腺がん死(PCD)の1つまたは複数である、請求項2
7~
38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前立腺がん患者の定量的スコア(QS)を、低または中リスクの前立腺がん患者に対する有害臨床アウトカムの相対リスクの指標とする方法であって、
(a)前記患者から得たがん細胞を含む生体試料において次の遺伝子:BGN、COL1A1、SERP4、FLNC、GSN、TPM2、GSTM2、FAM13C、KLK2、AZGP1、SRD5A2およびTPX2のRNA転写物のレベルを測定するステップと、
(b)正規化遺伝子発現レベルを得るために、前記遺伝子の前記RNA転写物の前記レベ
ルを正規化するステップと、
(c)定量的スコア(QS)を前記患者について算出するステップであって、前記定量的スコアが、次のように算出され、ここで以下の遺伝子記号は、各遺伝子それぞれの前記正規化遺伝子発現レベルを表す:
(i)未スケール化定量的スコア(QSu)を次のように算出する:
QSu=0.735×間質応答群スコア-0.368×細胞構成群スコア-0.352×アンドロゲン群スコア+0.095×増殖群スコア
ここで:
間質応答群スコア=0.527×BGN+0.457×COL1A1+0.156×SFRP4
細胞構成群スコア=0.163×FLNC+0.504×GSN+0.421×TPM2+0.394×GSTM2
アンドロゲン群スコア=0.634×FAM13C+1.079×KLK2+0.642×AZGP1+0.997×SRD5A2閾値
増殖群スコア=TPX2閾値、
ここで、SRD5A2閾値およびTPX2閾値は、閾値化により次のように算出される:
【数5】
(ii)スケール化定量的スコア(QS)を次のように算出する:
【数6】
、ステップと
を含み、
(i)前記患者のQSが18、19、20、21または22から選択される第1の閾値未満(<)である場合、前記患者が、低スコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが38、39、40、41または42から選択される第2の閾値以上(≧)である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられ、(iii)前記患者のQSが18、19、20、21または22の前記第1の閾値以上(≧)である場合かつ前記患者が(ii)の前記高スコア群に入らない場合、前記患者が、中スコア群に割り当てられる、方法。
【請求項41】
前立腺がん患者の定量的スコア(QS)を、低または中リスクの前立腺がん患者に対する有害臨床アウトカムの相対リスクの指標とする方法であって、
(a)前記患者から得たがん細胞を含む生体試料において次の遺伝子:BGN、COL1A1、SERP4、FLNC、GSN、TPM2、GSTM2、FAM13C、KLK2、AZGP1、SRD5A2およびTPX2のRNA転写物のレベルを測定するステップと、
(b)正規化遺伝子発現レベルを得るために、前記遺伝子の前記RNA転写物の前記レベルを正規化するステップと、
(c)定量的スコア(QS)を前記患者について算出するステップであって、前記定量的スコアが、次のように算出され、ここで以下の遺伝子記号は、各遺伝子それぞれの前記正規化遺伝子発現レベルを表す:
(i)未スケール化定量的スコア(QSu)を次のように算出する:
QSu=0.735×間質応答群スコア-0.368×細胞構成群スコア-0.352×アンドロゲン群スコア+0.095×増殖群スコア
ここで:
間質応答群スコア=0.527×BGN+0.457×COL1A1+0.156×SFRP4
細胞構成群スコア=0.163×FLNC+0.504×GSN+0.421×TPM2+0.394×GSTM2
アンドロゲン群スコア=0.634×FAM13C+1.079×KLK2+0.642×AZGP1+0.997×SRD5A2閾値
増殖群スコア=TPX2閾値、
ここで、SRD5A2閾値およびTPX2閾値は、閾値化により次のように算出される:
【数5】
(ii)スケール化定量的スコア(QS)を次のように算出する:
【数6】
、ステップと
を含み、
(i)前記患者のQSが18、19、20、21または22から選択される第1の閾値以下(≦)である場合、前記患者が、低スコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが38、39、40、41または42から選択される第2の閾値より大きい(>)場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられ、(iii)前記患者のQSが18、19、20、21または22の前記第1の閾値より大きい(>)場合かつ前記患者が(ii)の前記高スコア群に入らない場合、前記患者が、中スコア群に割り当てられる、方法。
【請求項42】
前記第2の閾値は40であり、前記患者のQSが≧40である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられる、請求項4
0に記載の方法。
【請求項43】
前記第2の閾値は40であり、前記患者のQSが>40である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられる、請求項4
1に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の閾値は20であり、前記患者のQSが<20である場合、前記患者は、低スコア群に割り当てられ、前記患者のQSが≧20である場合かつ前記患者が前記高スコア群に入らない場合、前記患者は、中スコア群に割り当てられる、請求項4
0または4
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の閾値は20であり、前記患者のQSが≦20である場合、前記患者は、低スコア群に割り当てられ、前記患者のQSが>20である場合かつ前記患者が前記高スコア群に入らない場合、前記患者は、中スコア群に割り当てられる、請求項4
1または4
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記患者の定量的スコアおよびスコア群を提供する報告を提供するステップをさらに含む、請求項4
0~4
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記RNA転写物の前記レベルが、ARF1、ATP5E、CLTC、GPS1およびPGK1から選択される少なくとも1つの参照遺伝子に対して正規化される、請求項4
0~4
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記生体試料が、新鮮、凍結または固定したパラフィン包埋試料である、請求項4
0~4
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記生体試料が、固定したパラフィン包埋試料である、請求項
48に記載の方法。
【請求項50】
前記RNA転写物の前記レベルが、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して決定される、請求項4
0~
49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記患者が前記高スコア群に割り当てられる場合、前記患者の前記高スコア群は、前記患者が高リスク患者のためのマルチモード療法または標準的療法により処置され得ることを示し、前記患者が前記低スコア群に割り当てられる場合、前記低スコア群は、前記患者が積極的監視により処置され得ることを示す、請求項4
0~5
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記患者が前記高スコア群に割り当てられる場合、前記患者の前記高スコア群は、前記患者が高リスク患者として再分類され得ることを示す、請求項4
0~5
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記患者が前記低または中スコア群に割り当てられる場合、前記患者の前記低いスコア群は、前記患者の分類が中リスク患者として維持され得ることを示す、請求項4
0~5
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記患者が前記高スコア群に割り当てられる場合、前記患者の前記高スコア群は、前記患者が高リスク患者のためのマルチモード療法または標準的療法により処置され得ることを示す、請求項4
0~5
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記マルチモード療法が、(a)少なくとも1つのホルモン療法剤の投与、(b)少なくとも1つの免疫療法剤の投与、および/または(c)少なくとも1つの化学療法剤の投与を含む、請求項5
4に記載の方法。
【請求項56】
前記患者が前記低スコア群に割り当てられる場合、前記患者の前記低スコア群は、前記患者が積極的監視により処置され得ることを示す、請求項4
0~5
0または5
3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年2月13日に出願された米国仮特許出願番号第62/458,474号、2017年3月17日に出願された同第62/473,204号、および2017年10月30日に出願された同第62/578,622号の優先権の利益を主張している。
技術分野
本開示は、本明細書において転移とも呼ばれる臨床的再発(CR)、生化学的再発(BCR)、遠隔転移(Mets)および前立腺がん死(PCD)のリスクのような、前立腺がん患者における種々の臨床エンドポイントを評価するため、ならびに一部の実施形態では、臨床管理の選択肢を低および中リスクの前立腺がん患者について決定するための、複数の遺伝子発現に基づいたゲノム前立腺スコア(Genomic Prostate Score)(商標)(GPS(商標))試験アルゴリズムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングの1987年の導入は、決して臨床的に有意または死亡の原因とはならないであろう低悪性度前立腺がんの多くの症例の診断および積極的処置に至った。この理由は、前立腺がんの自然史が、ほとんどの場合、低悪性度であり、処置しなかったとしても、男性の生涯において進行せず、苦痛または死を引き起こさないためである。約半数の男性が、その生涯において侵襲性前立腺がんを発症するが(検死により認められるように)(B. Halpertら、Cancer16巻:737~742頁(1963年);B. Holund、Scand J Urol Nephrol14巻:29~35頁(1980年);S. Lundbergら、Scand J Urol Nephrol4巻:93~97頁(1970年);M. Yinら、J Urol179巻:892~895頁(2008年))、17%が前立腺がんと診断されるにとどまり、ほんの3%が前立腺がんの結果として死亡する。Cancer Facts and Figures、Atlanta、GA:American Cancer Society(2010年);JE Damberら、Lancet371巻:1710~1721頁(2008年)。
【0003】
しかし、現在、前立腺がんと診断される高いパーセンテージの男性は、低リスクの前立腺がんであるとしても、即時の前立腺全摘除術(RP)または根治的放射線療法により処置する。MR Cooperbergら、J Clin Oncol28巻:1117~1123頁(2010年);MR Cooperbergら、J Clin Oncol23巻:8146~8151頁(2005年)。外科手術および放射線療法は、前立腺がんによる再発および死亡のリスクを減少させる(AV D'Amicoら、Jama280巻:969~974頁(1998年);M Hanら、Urol Clin North Am28巻:555~565頁(2001年);WU Shipleyら、Jama281巻:1598~1604頁(1999年);AJ Stephensonら、J Clin Oncol27巻:4300~4305頁(2009年))、しかし、処置して前立腺がんによる1個の死を予防しなければならない男性の数の推定は、12~100人の範囲に及ぶ。A Bill-Axelsonら、J Natl Cancer Inst100巻:1144~1154頁(2008年);J Hugossonら、Lancet Oncol11巻:725~732頁(2010年);LH Klotzら、Can J Urol13巻、補遺1号:48~55頁(2006年);S Loebら、J Clin Oncol29巻:464~467頁(2011年);FH Schroderら、N Engl J Med360巻:1320~1328頁(2009年)。前立腺がんのこの過剰処置は、出費および毒性を伴う。例えば、前立腺全摘除術を受ける多数の男性が、手術の結果として失禁およびインポテンスに苦しみ(MS Litwinら、Cancer109巻:2239~2247頁(2007年);MG Sandaら、N Engl J Med358巻:1250~1261頁(2008年))、25%もの男性が、前立腺がん処置のその選択を後悔している。FR Schroeckら、Eur Urol54巻:785~793頁(2008年)。
【0004】
前立腺がんの過剰処置の理由の1つは、即時療法を延期して代わりに積極的監視を受けるのに適切な候補である男性から、即時の根治療法を必要とする男性を識別するのに適切な予後ツールがないことである。例えば、臨床的病期分類、処置前PSAおよび生検グリーソンスコアの結果に基づいて低リスク疾患を有すると考えられ、プロトコールに基づいた積極的監視により処置されてきた男性の30~40%は、経過観察のはじめの数年にわたって疾患進行を経験し(PSAの上昇、反復生検におけるグリーソンスコアの上昇、または臨床的進行により診断される)、この何人かは、根治療法の機会を失っていた可能性がある。HB Carterら、J Urol178巻:2359~2364頁およびdiscussion2364~2355頁(2007年);MA Dall'Eraら、Cancer112巻:2664~2670頁(2008年);L Klotzら、J Clin Oncol28巻:126~131頁(2010年)。また、積極的監視の候補であると考えられるが、ともかく即時の前立腺摘除術を受ける男性の30~40%は、高グレード(3+4またはそれよりも高いグリーソンスコア)または非器官限局性疾患(被膜外進展(ECE)または精嚢への浸潤(SVI))を有することにより定義されるように、予想よりも高いリスクの疾患を有することが外科手術において見出される。SLら、J Urol181巻:1628~1633頁およびdiscussion1633~1624頁(2009年);CR Griffinら、J Urol178巻:860~863頁(2007年);PW Mufarrijら、J Urol181巻:607~608頁(2009年)。
前立腺がんにおける再発リスクおよび処置決定についての推定は現在、PSAレベルおよび/または臨床腫瘍悪性度のグレード分類および病期に主に基づいている。臨床腫瘍病期は、病理報告に含まれるのに十分な、アウトカムとの有意な関連性を有することを示しているが、米国病理医協会合意声明(College of American Pathologists Consensus Statement)は、この情報の獲得、解釈、報告、および分析へのアプローチに変動が存在すると述べた。C. Comptonら、Arch Pathol Lab Med124巻:979~992頁(2000年)。結果として、現存する病理的病期分類法は、再現性に欠けており、したがって、個々の患者のリスクの不正確な推定を生じ得るものとして批評されている。
臨床アウトカムの尤度の判定に役立つ、さらなる情報を提供するために、臨床的再発の尤度を予測し得る遺伝子発現マーカーを探すための研究が行われており、例えば、複数の遺伝子の発現レベルを評価するアルゴリズムが、開発および商業化されている。E. Kleinら、Eur Urol66巻:550~560頁(2014年);J. Cullen,ら、Eur Urol68巻:123~131頁(2015年);国際特許公開WO2013/116144、このそれぞれは、参照により本明細書に組み込む。本開示は、いくつかの遺伝子サブセット由来の少なくとも12種の種々の遺伝子の発現レベルを測定するアッセイを、例えば、他のパラメータに基づいて非常に低い、低、中、または高リスク群に分類される患者について、臨床的再発(CR)、生化学的再発(BCR)、遠隔転移(Mets)および前立腺がん死(PCD)のような特定の長期的イベントのその患者の相対リスクを判定する手段として使用する方法に関する。一部の実施形態では、その臨床的および病理的特徴と組み合わせた患者のゲノム前立腺スコア(GPS)結果により、その元の臨床リスク群と異なるリスクカテゴリーに患者が分類される。一部の実施形態では、これは、進行性疾患に対する患者の推定リスクをさらに精密化および個別化し、患者の処置計画の向上を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】B. Halpertら、Cancer16巻:737~742頁(1963年
【文献】B. Holund、Scand J Urol Nephrol14巻:29~35頁(1980年)
【文献】S. Lundbergら、Scand J Urol Nephrol4巻:93~97頁(1970年
【文献】M. Yinら、J Urol179巻:892~895頁(2008年)
【文献】Cancer Facts and Figures、Atlanta、GA:American Cancer Society(2010年)
【文献】JE Damberら、Lancet371巻:1710~1721頁(2008年)
【文献】MR Cooperbergら、J Clin Oncol28巻:1117~1123頁(2010年)
【文献】MR Cooperbergら、J Clin Oncol23巻:8146~8151頁(2005年)
【文献】AV D'Amicoら、Jama280巻:969~974頁(1998年)
【文献】M Hanら、Urol Clin North Am28巻:555~565頁(2001年
【文献】WU Shipleyら、Jama281巻:1598~1604頁(1999年)
【文献】AJ Stephensonら、J Clin Oncol27巻:4300~4305頁(2009年)
【文献】A Bill-Axelsonら、J Natl Cancer Inst100巻:1144~1154頁(2008年)
【文献】J Hugossonら、Lancet Oncol11巻:725~732頁(2010年)
【文献】LH Klotzら、Can J Urol13巻、補遺1号:48~55頁(2006年)
【文献】S Loebら、J Clin Oncol29巻:464~467頁(2011年)
【文献】FH Schroderら、N Engl J Med360巻:1320~1328頁(2009年)
【文献】MS Litwinら、Cancer109巻:2239~2247頁(2007年)
【文献】MG Sandaら、N Engl J Med358巻:1250~1261頁(2008年)
【文献】FR Schroeckら、Eur Urol54巻:785~793頁(2008年)
【文献】HB Carterら、J Urol178巻:2359~2364頁およびdiscussion2364~2355頁(2007年)
【文献】MA Dall'Eraら、Cancer112巻:2664~2670頁(2008年)
【文献】L Klotzら、J Clin Oncol28巻:126~131頁(2010年)
【文献】SLら、J Urol181巻:1628~1633頁およびdiscussion1633~1624頁(2009年)
【文献】CR Griffinら、J Urol178巻:860~863頁(2007年)
【文献】PW Mufarrijら、J Urol181巻:607~608頁(2009年)
【文献】C. Comptonら、Arch Pathol Lab Med124巻:979~992頁(2000年)
【文献】E. Kleinら、Eur Urol66巻:550~560頁(2014年)
【文献】J. Cullen,ら、Eur Urol68巻:123~131頁(2015年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
本開示は、一部の実施形態において、BCR、MetsおよびPCDのような、前立腺がん患者における有害臨床アウトカムの尤度を予測する方法であって、(a)患者から得たがん細胞を含む生体試料において次の遺伝子:BGN、COL1A1、SFRP4、FLNC、GSN、TPM2、GSTM2、FAM13C、KLK2、AZGP1、SRD5A2およびTPX2のRNA転写物のレベルを測定するステップと、(b)正規化遺伝子発現レベルを得るために、遺伝子のRNA転写物のレベルを正規化するステップと、(c)本明細書に記載のGPS結果のような、定量的スコア(QS)を患者について算出するステップと、(d)患者を定量的スコア群に割り当てるステップであって、(i)患者のQSが<または≦38、39、40、41または42の閾値である場合、患者が低いスコア群に割り当てられ、(ii)患者のQSが>または≧38、39、40、41または42の閾値である場合、患者が高スコア群に割り当てられる、ステップと、必要に応じて(e)患者のスコア群に基づいて、患者についてCR、BCR、MetsおよびPCDのような有害臨床アウトカムのリスクを予測するステップであって、低いスコア群が、高スコア群よりも低い有害臨床アウトカムのリスクを示す、ステップとを含む、方法を含む。一部の実施形態では、パート(d)において、患者のQSが<または≦40である場合、患者は、低いスコア群に割り当てられ、(ii)患者のQSが>または≧40である場合、患者は、高スコア群に割り当てられる。一部の実施形態では、パート(d)において、患者のQSが≦40である場合、患者は、低いスコア群に割り当てられ、(ii)患者のQSが>40である場合、患者は、高スコア群に割り当てられる。一部の実施形態では、パート(d)(i)の低いスコア群の患者について、患者のQSが<または≦18、19、20、21または22のさらなる閾値である場合、患者は、低スコア群に割り当てられ、患者のQSが>または≧18、19、20、21または22の閾値である場合および患者が高スコア群に入らない場合、患者は、中スコア群に割り当てられる。一部の実施形態では、パート(d)(i)の低いスコア群の患者について、患者のQSが<または≦20である場合、患者は、低スコア群に割り当てられ、患者のQSが>または≧20である場合および患者が高スコア群に入らない場合、患者は、中スコア群に割り当てられる。一部の実施形態では、パート(d)(i)の低いスコア群の患者について、患者のQSが≦20である場合、患者は、低スコア群に割り当てられ、患者のQSが>20である場合および患者が高スコア群に入らない場合、中スコア群に割り当てられる。したがって、一部の実施形態では、患者は、次の3つの群:QS<20、QS<20であるが<40、およびQS>40に分類される。任意の実施形態では、QSは、本明細書に記載のGPSであり得る。
【0008】
上記の方法の一部の実施形態では、患者は、非常に低い、もしくは低、中または高リスク患者である。一部のこのような実施形態では、患者は、AUA/EAUまたはNCCN分類の一方または両方による、非常に低い、もしくは低、中または高リスク患者である。一部の実施形態では、この方法は、患者の定量的スコアおよびスコア群を提供する報告を提供するステップをさらに含む。一部の実施形態では、RNA転写物のレベルは、GUS、ARF1、ATP5E、CLTC、GPS1およびPGK1から選択される少なくとも1つの参照遺伝子に対して正規化される。一部の実施形態では、生体試料は、新鮮、凍結または固定したパラフィン包埋試料である。一部の実施形態では、RNA転写物のレベルは、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して決定される。一部の実施形態では、この方法は、患者の定量的スコア群に基づいて患者のための処置を決定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、有害臨床アウトカムは、臨床的再発(CR)、生化学的再発(BCR)、遠隔転移(Mets)または前立腺がん死(PCD)の1つまたは複数である。
【0009】
本開示はまた、有害臨床アウトカムの相対リスクを低または中リスクの前立腺がん患者に割り当てる方法であって、(a)患者から得たがん細胞を含む生体試料において次の遺伝子:BGN、COL1A1、SFRP4、FLNC、GSN、TPM2、GSTM2、FAM13C、KLK2、AZGP1、SRD5A2およびTPX2のRNA転写物のレベルを測定するステップと、(b)正規化遺伝子発現レベルを得るために、遺伝子のRNA転写物のレベルを正規化するステップと、(c)本明細書に記載のGPS結果のような、定量的スコア(QS)を患者について算出するステップと、(d)患者を定量的スコア群に割り当てるステップであって、(i)患者のQSが<または≦38、39、40、41または42の閾値である場合、患者が低いスコア群に割り当てられ、(ii)患者のQSが>または≧38、39、40、41または42の閾値である場合、患者が高スコア群に割り当てられる、ステップとを含む、方法を包含する。一部の実施形態では、パート(d)において、患者のQSが<または≦40である場合、患者は、低いスコア群に割り当てられ、(ii)患者のQSが>または≧40である場合、患者は、高スコア群に割り当てられる。一部の実施形態では、パート(d)において、患者のQSが≦40である場合、患者は、低いスコア群に割り当てられ、(ii)患者のQSが>40である場合、患者は、高スコア群に割り当てられる。一部の実施形態では、パート(d)(i)の低いスコア群の患者について、患者のQSが<または≦18、19、20、21または22のさらなる閾値である場合、患者は、低スコア群に割り当てられ、患者のQSが>または≧18、19、20、21または22の閾値である場合および患者が高スコア群に入らない場合、中スコア群に割り当てられる。一部の実施形態では、パート(d)(i)の低いスコア群の患者について、患者のQSが<または≦20である場合、患者は、低スコア群に割り当てられ、患者のQSが>または≧20である場合および患者が高スコア群に入らない場合、中スコア群に割り当てられる。一部の実施形態では、パート(d)(i)の低いスコア群の患者について、患者は、患者のQSが≦20である場合、低スコア群に割り当てられ、患者のQSが>20である場合および患者が高スコア群に入らない場合、中スコア群に割り当てられる。一部の実施形態では、QSは、本明細書に記載のGPSである。
【0010】
一部の実施形態では、患者は、中リスク患者である。一部のこのような実施形態では、患者は、AUA/EAUまたはNCCN分類の一方または両方による中リスク患者である。一部の実施形態では、この方法は、患者の定量的スコアおよびスコア群を提供する報告を提供するステップをさらに含む。一部の実施形態では、RNA転写物のレベルは、GUS、ARF1、ATP5E、CLTC、GPS1およびPGK1から選択される少なくとも1つの参照遺伝子に対して正規化される。一部の実施形態では、生体試料は、新鮮、凍結または固定したパラフィン包埋試料である。一部の実施形態では、RNA転写物のレベルが、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して決定される。一部の実施形態では、この方法は、患者の定量的スコア群に基づいて患者のための処置を決定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、患者は、中リスクの患者であり、患者が高スコア群にある場合、方法は、高リスク患者と同様に、リスク推定を患者について精密化するステップをさらに含み、必要に応じて、患者が低いスコア群にある場合、方法は、患者の分類を中リスク患者として維持するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、患者が高スコア群にある場合、高リスク患者のためのマルチモード療法または標準的療法により患者を処置するステップをさらに含む。このような一部の実施形態では、マルチモード療法は、(a)少なくとも1つのホルモン療法剤の投与、および/または(b)少なくとも1つの免疫療法剤の投与、および/または(c)少なくとも1つの化学療法剤の投与、および/または(d)外科手術、および/または(e)放射線、すなわち、(a)~(e)の任意の組合せを含む。一部の実施形態では、患者が低スコア群にある場合、方法は、積極的監視により患者を処置または管理するステップをさらに含む。
【0011】
本開示はまた、上記の方法により高スコア群の定量的スコアを有すると判定された中リスク前立腺がん患者を処置する方法であって、マルチモード療法を患者に施すステップを含む、方法を包含する。一部の実施形態では、マルチモード療法は、(a)少なくとも1つのホルモン療法剤の投与、および/または(b)少なくとも1つの免疫療法剤の投与、および/または(c)少なくとも1つの化学療法剤の投与、および/または(d)外科手術、および/または(e)放射線、および/または(f)(a)~(e)の任意の組合せを含む。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
前立腺がん患者における有害臨床アウトカムの尤度を予測する方法であって、
(a)前記患者から得たがん細胞を含む生体試料において次の遺伝子:BGN、COL1A1、SFRP4、FLNC、GSN、TPM2、GSTM2、FAM13C、KLK2、AZGP1、SRD5A2およびTPX2のRNA転写物のレベルを測定するステップと、
(b)正規化遺伝子発現レベルを得るために、前記遺伝子の前記RNA転写物の前記レベルを正規化するステップと、
(c)定量的スコア(QS)を前記患者について算出するステップであって、前記定量的スコアが、次のように算出され、ここで以下の遺伝子記号は、各遺伝子それぞれの前記正規化遺伝子発現レベルを表す:
(i)未スケール化定量的スコア(QSu)を次のように算出する:
QSu=0.735×間質応答群スコア-0.368×細胞構成群スコア-0.352×アンドロゲン群スコア+0.095×増殖群スコア
ここで:
間質応答群スコア=0.527×BGN+0.457×COL1A1+0.156×SFRP4
細胞構成群スコア=0.163×FLNC+0.504×GSN+0.421×TPM2+0.394×GSTM2
アンドロゲン群スコア=0.634×FAM13C+1.079×KLK2+0.642×AZGP1+0.997×SRD5A2閾値
増殖群スコア=TPX2閾値、
ここで、SRD5A2閾値およびTPX2閾値は、閾値化により次のように算出される:
【数3】
(ii)スケール化定量的スコア(QS)を次のように算出する:
【数4】
、ステップと、
(d)前記患者を定量的スコア群に割り当てるステップであって、(i)前記患者のQSが<または≦38、39、40、41または42の閾値である場合、前記患者が、低いスコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが>または≧38、39、40、41または42の閾値である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられる、ステップと、
(e)前記患者のスコア群に基づいて、前記患者について有害臨床アウトカムの尤度を予測するステップであって、低いスコア群が、高スコア群よりも低い有害臨床アウトカムのリスクを示す、ステップと
を含む、方法。
(項目2)
パート(d)において、前記患者のQSが<または≦40である場合、前記患者が、低
いスコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが>または≧40である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられる、項目1に記載の方法。
(項目3)
パート(d)において、前記患者のQSが≦40である場合、前記患者が、低いスコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが>40である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられる、項目2に記載の方法。
(項目4)
パート(d)(i)の前記低いスコア群の患者について、前記患者は、前記患者のQSが<または≦18、19、20、21または22のさらなる閾値である場合、低スコア群に割り当てられ、前記患者のQSが>または≧18、19、20、21または22の閾値である場合および前記患者が前記高スコア群に入らない場合、中スコア群に割り当てられる、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
パート(d)(i)の前記低いスコア群の患者について、前記患者は、前記患者のQSが<または≦20である場合、低スコア群に割り当てられ、前記患者のQSが>または≧20である場合および前記患者が高スコア群に入らない場合、中スコア群に割り当てられる、項目4に記載の方法。
(項目6)
パート(d)(i)の前記低いスコア群の患者について、前記患者は、前記患者のQSが≦20である場合、低スコア群に割り当てられ、前記患者のQSが>20である場合および前記患者が高スコア群に入らない場合、中スコア群に割り当てられる、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記患者が、非常に低い、もしくは低、中または高リスク患者である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記患者が、AUAまたはNCCN分類の一方または両方による、非常に低い、もしくは低、中または高リスク患者である、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記患者の定量的スコアおよびスコア群を提供する報告を提供するステップをさらに含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記RNA転写物の前記レベルが、ARF1、ATP5E、CLTC、GPS1およびPGK1から選択される少なくとも1つの参照遺伝子に対して正規化される、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記生体試料が、新鮮、凍結または固定したパラフィン包埋試料である、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記RNA転写物の前記レベルが、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して決定される、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記患者の定量的スコア群に基づいて前記患者のための処置を決定するステップをさらに含む、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記有害臨床アウトカムが、臨床的再発(CR)、生化学的再発(BCR)、遠隔転移(Mets)または前立腺がん死(PCD)の1つまたは複数である、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
有害臨床アウトカムの相対リスクを低または中リスクの前立腺がん患者に割り当てる方
法であって、
(a)前記患者から得たがん細胞を含む生体試料において次の遺伝子:BGN、COL1A1、SERP4、FLNC、GSN、TPM2、GSTM2、FAM13C、KLK2、AZGP1、SRD5A2およびTPX2のRNA転写物のレベルを測定するステップと、
(b)正規化遺伝子発現レベルを得るために、前記遺伝子の前記RNA転写物の前記レベルを正規化するステップと、
(c)定量的スコア(QS)を患者について算出するステップであって、前記定量的スコアが、次のように算出され、ここで以下の遺伝子記号は、各遺伝子それぞれの前記正規化遺伝子発現レベルを表す:
(i)未スケール化定量的スコア(QSu)を次のように算出する:
QSu=0.735×間質応答群スコア-0.368×細胞構成群スコア-0.352×アンドロゲン群スコア+0.095×増殖群スコア
ここで:
間質応答群スコア=0.527×BGN+0.457×COL1A1+0.156×SFRP4
細胞構成群スコア=0.163×FLNC+0.504×GSN+0.421×TPM2+0.394×GSTM2
アンドロゲン群スコア=0.634×FAM13C+1.079×KLK2+0.642×AZGP1+0.997×SRD5A2閾値
増殖群スコア=TPX2閾値、
ここで、SRD5A2閾値およびTPX2閾値は、閾値化により次のように算出される:
【数5】
(ii)スケール化定量的スコア(QS)を次のように算出する:
【数6】
、ステップと、
(d)前記患者を定量的スコア群に割り当てるステップであって、(i)前記患者のQSが<または≦38、39、40、41または42の閾値である場合、前記患者が、低いスコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが>または≧38、39、40、41または42の閾値である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられる、ステップと
を含む、方法。
(項目16)
パート(d)において、前記患者のQSが<または≦40である場合、前記患者が、低いスコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが>または≧40である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられる、項目15に記載の方法。
(項目17)
パート(d)において、前記患者のQSが≦40である場合、前記患者が、低いスコア群に割り当てられ、(ii)前記患者のQSが>40である場合、前記患者が、高スコア群に割り当てられる、項目16に記載の方法。
(項目18)
パート(d)(i)の前記低いスコア群の患者について、前記患者は、前記患者のQSが<または≦18、19、20、21または22のさらなる閾値である場合、低スコア群に割り当てられ、前記患者のQSが>または≧18、19、20、21または22の閾値である場合および前記患者が前記高スコア群に入らない場合、中スコア群に割り当てられる、項目15~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
パート(d)(i)の前記低いスコア群の患者について、前記患者は、前記患者のQSが<または≦20である場合、低スコア群に割り当てられ、前記患者のQSが>または≧20である場合および前記患者が前記高スコア群に入らない場合、中スコア群に割り当てられる、項目18に記載の方法。
(項目20)
パート(d)(i)の前記低いスコア群の患者について、前記患者は、前記患者のQSが≦20である場合、低スコア群に割り当てられ、前記患者のQSが>20である場合および前記患者が前記高スコア群に入らない場合、中スコア群に割り当てられる、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記患者が、中リスク患者である、項目15~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記患者が、AUAまたはNCCN分類の一方または両方による中リスク患者である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記患者の定量的スコアおよびスコア群を提供する報告を提供するステップをさらに含む、項目15~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記RNA転写物の前記レベルが、ARF1、ATP5E、CLTC、GPS1およびPGK1から選択される少なくとも1つの参照遺伝子に対して正規化される、項目15~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記生体試料が、新鮮、凍結または固定したパラフィン包埋試料である、項目15~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記RNA転写物の前記レベルが、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して決定される、項目15~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記患者の定量的スコア群に基づいて前記患者のための処置を決定するステップをさらに含む、項目15~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記患者が、中リスク患者であり、前記患者が前記高スコア群にある場合、前記患者を高リスク患者として再分類し、必要に応じて、前記患者が前記低いスコア群にある場合、前記患者の分類を中リスク患者として維持する、項目15~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記患者が前記高スコア群にある場合、前記患者を高リスク患者のためのマルチモード療法または標準的療法により処置するステップをさらに含む、項目15~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記マルチモード療法が、(a)少なくとも1つのホルモン療法剤の投与、(b)少なくとも1つの免疫療法剤の投与、および/または(c)少なくとも1つの化学療法剤の投与を含む、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記患者が前記低スコア群にある場合、前記患者を積極的監視により処置する、項目18~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
項目15~17のいずれか一項に記載の方法に従って前記高スコア群の定量的スコアを有すると判定された中リスク前立腺がん患者を処置する方法であって、マルチモード療法を前記患者に施すステップを含む、方法。
(項目33)
前記マルチモード療法が、(a)少なくとも1つのホルモン療法剤の投与、(b)少なくとも1つの免疫療法剤の投与、および/または(c)少なくとも1つの化学療法剤の投与を含む、項目32に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】
図1Aは、4つのNCCN(National Clinical Practice Guidelines in Oncology)リスク群(非常に低い、低、中および高)のそれぞれのうち20年間にわたって無転移のままであった前立腺がん対象の比率を示すグラフを提供する。合計259人の対象を分析した。
【
図1B】
図1Bは、同様に20年間にわたって前立腺がん死(PCD)を経験していなかった4つの群の対象の比率を示す。
【0013】
【
図2A】
図2Aは、NCCNリスク群の259人の前立腺がん対象の分布を示し、非常に低い+低リスク、中リスクおよび高リスク群のそれぞれの対象の数を提供し、各群の範囲および全体的前立腺スコア(Global Prostate Score)(GPS)中央値を示す。
【
図2B】
図2Bは、各NCCNリスク群のアンドロゲン群スコアの分布を示す。
【0014】
【
図3】
図3は、非常に低い+低、中および高NCCNリスク群のGPSに対する転移の10年リスクを示す。
【0015】
【
図4】
図4は、非常に低い+低、中および高NCCNリスク群のGPSに対する死亡の10年リスクを示す。
【0016】
【
図5】
図5は、転移(Mets、左パネル)および前立腺がん死(PCD、右パネル)の予測と関連する、GPSおよび基礎的間質、細胞構成、アンドロゲンおよび増殖群スコアの標準化ハザード比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
他に定義しない限り、本明細書において使用する技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology第2版、J. Wiley & Sons(New York、NY1994年)およびMarch, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure第4版、John Wiley & Sons(New York、NY1992年)は、本出願において使用する用語の多くへの一般的指針を当業者に提供する。
【0018】
当業者は、本明細書に記載のものと同様または等価である、多くの方法および材料を理解し、これらは、本発明の実行において使用され得る。実際、本発明は、本明細書に記載の方法および材料に決して制限しない。本発明のために、次の用語を以下に定義する。
【0019】
用語「腫瘍」および「病変」は、本明細書において使用する場合、悪性か良性かにかかわらず、すべての新生細胞の成長および増殖、ならびにすべての前癌および癌細胞および組織を指す。当業者は、腫瘍組織試料が、1つまたは複数のがん細胞、部分的または断片化した細胞、種々の病期の腫瘍、組織学的に正常に見える周囲組織、および/またはマクロもしくはマイクロ解剖による組織のような、複数の生物学的エレメントを含み得ることを理解するであろう。
【0020】
用語「がん」および「癌性の」は、未制御の細胞増殖を典型的に特徴とする、哺乳動物における生理的状態を指示または説明する。本開示のがんの例としては、前立腺がんのような、尿生殖路のがんが挙げられる。
【0021】
本明細書において使用する場合、用語「前立腺がん」は、広い意味において使用し、前立腺の組織から生じるがんのすべての病期およびすべての形態を指す。
【0022】
がんの病期分類は、医師が、疾患が進行した程度を評価して患者の処置を計画するのに役立つ。病期分類は、理学的検査、血液検査もしくは放射線療法に対する応答により臨床的に(臨床的病期分類)、および/または前立腺全摘除術のような外科手術に基づいて病理的に(病理的病期分類)行われ得る。対がん米国合同委員会(American Joint Committee on Cancer)(AJCC)によるAJCC Cancer Staging Manual(第7版、2010年)の腫瘍、リンパ節、転移(TNM)病期分類システムによれば、前立腺がんの種々の病期は、次のように定義される:腫瘍:T1:臨床的に明らかでない腫瘍が非触知またはイメージングにより不可視である、T1a:偶発腫が切除組織の5%またはそれ未満に組織学的に認められる、T1b:偶発腫が切除組織の5%よりも多く組織学的に認められる、T1c:腫瘍が針生検により確認される、T2:腫瘍が前立腺内に限局する、T2a:腫瘍が片葉の半分またはそれ未満に浸潤する、T2b:腫瘍が片葉の半分よりも多く浸潤するが、両葉には及ばない、T2c:腫瘍が両葉に浸潤する、T3:腫瘍が前立腺被膜まで進展する、T3a:被膜外進展(片葉または両葉)、T3b:腫瘍が精嚢(単数または複数)に浸潤する、T4:腫瘍が精嚢以外の隣接組織(膀胱頸部、外括約筋、直腸、挙筋または骨盤壁)に固定または浸潤する。一般には、臨床的T(cT)病期は、T1またはT2であり、病理的T(pT)病期は、T2またはそれよりも高い。リンパ節:NO:非限局性のリンパ節転移、N1:限局性リンパ節転移。転移:M0:非遠隔転移、M1:遠隔転移が存在する。
【0023】
グリーソングレード分類システムは、前立腺がんを有する男性の予後を評価することを助けるために使用する。他のパラメータとともに、これは、前立腺がん病期分類の方針に組み込まれ、予後を予測し、療法の指針となるのに役立つ。グリーソン「スコア」または「グレード」は、その顕微鏡像に基づいて前立腺がんに与えられる。グリーソンスコアが低い腫瘍は、典型的に、あまりにも緩徐に増殖するため、患者にその生涯において顕著な脅威を示さないことがある。このような患者は、「待機療法」または「積極的監視」により経時的にモニターされ得る。グリーソンスコアがより高いがんは、より侵襲性で、予後が悪化する可能性があり、このような患者は一般に、外科手術(例えば、前立腺全摘除術)、場合によっては、他の療法(例えば、放射線、ホルモン、超音波、化学療法)により処置する。グリーソンスコア(または和)は、2つの最も一般的な腫瘍パターンのグレードを含む。このようなパターンは、グリーソンパターン1~5と呼ばれ、パターン1は、最も高分化型である。ほとんどは、パターンの混合を有する。グリーソンスコアまたはグレードを得るために、優勢のパターンを第2の最も多く見られるパターンに加えて2~10の数値を得る。グリーソングレードは、次の通りである:GGG1(GS≦6)、GGG2(GS3+4=7)、GGG3(GS4+3=7)、GGG4(GS4+4=8、GS3+5=8、GS5+5=8)およびGGG5(GS9または10)。
【0024】
病期分類:病期I:T1a N0 M0 G1;病期II:(T1a N0 M0 G2~4)または(T1b、c、T1、T2、N0 M0 任意のG);病期III:T3 N0 M0 任意のG;病期IV:(T4 N0 M0 任意のG)または(任意のT N1 M0 任意のG)または(任意のT 任意のN M1 任意のG)。
【0025】
用語「アップグレーディング」は、本明細書において使用する場合、生検から判定されるグリーソングレードの、前立腺全摘除術(RP)から判定されるグリーソングレードに対する上昇を指す。例えば、アップグレーディングは、生検に関する3+3または3+4のグリーソングレードの、RPに関する3+4またはそれよりも高いグリーソングレードに対する変化を含む。「有意なアップグレーディング」または「アップグレード2」は、本明細書において使用する場合、生検から判定される3+3または3+4のグリーソングレードの、RPから判定される4+3またはそれよりも高いグリーソングレードに対する変化、または精嚢への浸潤(SVI)、または被膜外浸潤(ECE)を指す。
【0026】
用語「高グレード」は、本明細書において使用する場合、RPに関するグリーソンスコア>=3+4または>=4+3を指す。用語「低グレード」は、本明細書において使用する場合、RPに関する3+3のグリーソンスコアを指す。特定の実施形態では、「高グレード」の疾患は、少なくとも第1のパターン4、第2のパターン5または第3のパターン5のグリーソンスコアを指す。
【0027】
用語「アップステージング」は、本明細書において使用する場合、生検の腫瘍病期の、RPの腫瘍病期に対する上昇を指す。例えば、アップステージングは、生検の臨床的T1またはT2病期の腫瘍病期の、RPの病理的T3病期に対する変化である。
【0028】
用語「非器官限局性疾患」は、本明細書において使用する場合、RPにおいて病理的病期T3疾患を有することを指す。用語「器官限局性」は、本明細書において使用する場合、RPにおける病理的病期pT2を指す。用語「高グレードまたは非器官限局性疾患」は、少なくとも第1のパターン4、第2のパターン5もしくは第3のパターン5のグリーソンスコア、または病理的病期T3を有する前立腺がんを指す。
【0029】
用語「有害病態」または「AP」は、本明細書において使用する場合、上記に定義する高グレード疾患、または上記に定義する非器官限局性疾患を指す。特定の実施形態では、「有害病態」は、グリーソンスコア>=3+4もしくは>=4+3もしくはGS>4+3および/または病理的病期T3を有する前立腺がんを指す。
【0030】
前立腺がん患者は、米国泌尿器科学会(American Urological Association)(AUA)もしくはthe National Clinical Practice Guidelines in Oncology(NCCN)により提供された特定の認められたリスク分類システムに基づいて、またはUCSFにより策定されたCancer of the Prostate Risk Assessment(CAPRA)スコアシステムに応じて、特定の「リスク群」または「リスク分類」に分類され得る。したがって、一般には、用語「リスク分類」または「リスク群」は、PSAレベル、グリーソンスコアおよび臨床的病期等のような一連の予後因子に基づいた対象のグループ分類を意味し、これは、低、中または高のような負の臨床アウトカムと同様のリスクレベルを有するように分類されている。
【0031】
例えば、AUAの2007年のガイドラインによれば、「低リスク」患者は、10ng/mLまたはそれ未満の前立腺抗原(PSA)レベル、6またはそれ未満のグリーソンスコアおよびT1cまたはT2aの臨床的病期を有する患者である。AUAによる「高リスク」患者は、PSA>20ng/mL、または8~10のグリーソンスコア、またはT2cの臨床的病期を有する。AUAによる「中リスク」患者は、PSA>10ng/mL~20ng/mL、または7のグリーソンスコア、またはT2bの臨床的病期を有するが、いかなる「高リスク」条件をも満たさない。前立腺がんのためのNCCNガイドライン(2017年第2版)によれば、「非常に低いリスク」の患者は、T1cの病期、6未満またはそれと等しいグリーソンスコア、10ng/mL未満のPSA、0.15ng/mL/g未満のPSA濃度、および3未満の陽性の前立腺生検コアを有し、50%未満またはそれと等しいがんを各コアに有する。NCCNによる「低リスク」患者は、T1~T2aの臨床的病期、6未満またはそれと等しいグリーソンスコア、および10ng/mL未満のPSAを有する。NCCNによる「高リスク」患者は、T3aの臨床的病期、または8~10のグリーソンスコア、またはPSA>20ng/mLを有する。NCCNによる「中リスク」患者は、T2b~T2cの臨床グレード、または7のグリーソンスコア、または10~20ng/mLのPSAを有する。CAPRAスコアは、診断時の年齢、診断時のPSA、生検のグリーソンスコア、臨床的病期、およびがんに関与する生検コアの割合により算出し、得点を各変数に割り当てて結果としてのスコアを得る。0~2のCAPRAスコアは低リスクを示し、3~5のスコアは中リスクを示し、6~10のスコアは高リスクを示す。例えば、評価システム(例えば、AUA、NCCNまたはCAPRA)を使用せずに「中リスク」の患者について本明細書において言及した場合、そのようなシステムの少なくとも1つの中リスク群に入る患者を意味する。同様に、特定のシステムについて言及せずに「低リスク」患者について言及した場合、そのようなシステムの少なくとも1つの低または非常に低いリスク群に入る患者を意味する。特定のシステムについて言及せずに「高リスク」患者について言及した場合、そのようなシステムの少なくとも1つの高リスク群に入る患者を意味する。
【0032】
高リスク患者または低リスク患者のための標準的療法のような「標準的療法」は、本明細書において使用する場合、AUAまたはNCCNのような組織によりそのような患者に推奨される療法の1つまたは複数の種類を指す。
【0033】
本明細書において使用する場合、用語「積極的監視」および「待機療法」はともに、症状が現れるか、または変化するまでいかなる処置も施すことなく患者の状態を入念にモニタリングすることを含む。用語「待機療法」は、原発前立腺腫瘍の根治的処置を見合わせること、ならびに発症した場合は、前立腺の経尿道的切除術、尿路閉塞の管理、ホルモン療法、および転移巣の緩和のための放射線療法のような、限局性または転移性の進行のための緩和処置のみを提供することを包含する。用語「積極的監視」は、外科的、放射線および/または薬物処置のような根治的処置の必要を示唆する任意の続発する変化について患者をモニタリングすることを目標とする、初期の外科的、放射線および薬物処置のいずれも含まない患者のための定期的な臨床的モニタリングプログラムを意味する。積極的監視は、例えば、定期的なPSA試験、定期的な生検、および腫瘍病期および腫瘍進行のリスクを評価するように計画された他の定期的な試験を包含する。
【0034】
本明細書において使用する場合、用語「外科手術」は、骨盤リンパ節郭清術、前立腺全摘除術(RP)、前立腺の経尿道的切除術(TURP)、切除術、解剖、および腫瘍生検/除去を含む、癌組織の除去のために行われる外科的方法に適用する。遺伝子発現分析に使用する腫瘍組織または切片は、このような任意の方法により得られている。
【0035】
本明細書において使用する場合、用語「がん細胞を含む生体試料」または「腫瘍細胞を含む生体試料」は、がん患者から得られる腫瘍材料を含む試料を互換的に指す。用語は、腫瘍組織試料、例えば、前立腺全摘除術により得られた組織、および例えば、コア生検または細針生検のような生検により得られた組織を包含する。生体試料は、新鮮、凍結または固定、ワックスに包埋した組織試料、例えば、ホルマリン固定したパラフィン包埋組織試料であってもよい。生体試料はまた、がん細胞を含む体液、例えば、血液、血漿、血清、尿等を包含する。さらに、用語「がん細胞を含む生体試料」は、原発腫瘍、例えば、循環腫瘍細胞以外の部位から得られた腫瘍細胞を含む試料を包含する。用語はまた、患者の腫瘍細胞の子孫である細胞、例えば、原発腫瘍細胞または循環腫瘍細胞に由来する細胞培養試料を包含する。用語は、in vivoの腫瘍細胞から排出されたタンパク質または核酸材料、例えば、骨髄、血液、血漿、血清等を含み得る試料をさらに包含する。用語はまた、腫瘍細胞を濃縮した、あるいは、その採取後に操作した試料、ならびに患者の腫瘍材料から得られたポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを含む試料を包含する。
【0036】
用語「予後」は、がん患者が、前立腺がんのような新生物疾患の、再発、転移拡散および薬物耐性を含む、がんに起因し得る死または進行を有する尤度を指すために本明細書において使用する。例えば、「予後良好」は、再発のない長期生存を含み、「予後不良」は、がん再発を含む。
【0037】
用語「再発」は、がんの限局または遠隔再発(すなわち、遠隔転移)を指すために本明細書において使用し、「臨床的再発」と「生化学的再発」の両方を包含する。
【0038】
用語「臨床的再発」または「CR」は、例えば、経過観察生検または他の臨床的手順において検出された場合、限局性の再発または遠隔転移のような再発を指す。
【0039】
用語「生化学的再発」または「BCR」は、PSAのような生化学マーカーの変化に基づいて検出された場合、再発を指す。一部の実施形態では、術後のPSA初期レベルが≧0.2ng/mLであり、その後、後続の試験における確認PSAレベルが≧0.2ng/mLである場合は、BCRを示す。
【0040】
用語「前立腺がん死」または「PCD」は、患者において早期に発見された前立腺がんの再発を含む、前立腺がんに起因する患者の死を指す。
【0041】
用語「遠隔転移」または「Mets」は、骨内、または1つもしくは複数の遠位のリンパ節内、または別の非前立腺器官もしくは組織内のような、元の前立腺腫瘍から遠い部位におけるがんの再発を指す。
【0042】
用語「臨床的無再発期間(cRFI)」は、外科手術から最初の臨床的再発または前立腺がんの臨床的再発に起因する死までの時間として本明細書において使用する。臨床的再発、または臨床的再発の前に生じる他の原発がんもしくは死が生じることなく経過観察が終了する場合、cRFIまでの時間は、打ち切りとみなされる;これが生じる場合、唯一理解できる情報は、打ち切り時間に至るまで、臨床的再発は、この対象において生じていないということである。生化学的再発は、cRFIの算出のために無視する。
【0043】
用語「生化学的無再発期間(bRFI)」は、外科手術から最初の前立腺がんの生化学的再発までの時間を意味するために本明細書において使用する。生化学的再発の前に臨床的再発が生じ、bRFIまたは生化学的再発の前に生じる他の原発がんもしくは死が生じることなく経過観察が終了する場合、生化学的再発までの時間は、これらのはじめの時点で打ち切りとみなされる。
【0044】
実際は、上記のイベントまでの時間基準の算出は、打ち切りとみなされるイベントの定義に応じて試験毎に変化し得る。
【0045】
本明細書において使用する場合、遺伝子の「発現レベル」または「レベル」の用語は、遺伝子の、またはそのポリペプチド翻訳産物のRNA転写の発現のレベルを本明細書において指す。本明細書において使用する場合、遺伝子の「正規化レベル」または「正規化発現レベル」の用語は、本明細書における1つまたは複数の参照遺伝子の発現レベルに対する正規化後の、遺伝子の、またはそのポリペプチド翻訳産物のRNA転写の発現のレベルを本明細書において指す。
【0046】
用語「遺伝子産物」または「発現産物」は、mRNAおよび遺伝子のRNA転写物のポリペプチド翻訳産物を含む、遺伝子のRNA(リボ核酸)転写産物(転写物)を指すために本明細書において使用する。遺伝子産物は、例えば、スプライシングされていないRNA、mRNA、スプライスバリアントmRNA、マイクロRNA、断片化RNA、ポリペプチド、翻訳後修飾ポリペプチド、スプライスバリアントポリペプチド等であり得る。
【0047】
本明細書において使用する用語「RNA転写物」は、例えば、mRNA、スプライシングされていないRNA、スプライスバリアントmRNA、マイクロRNAおよび断片化RNAを含む、遺伝子のRNA転写産物を指す。
【0048】
他に指示しない限り、本明細書において使用する各遺伝子名は、遺伝子に割り当てられ、Entrez Gene(URL: www (dot) ncbi (dot) nlm (dot) gov (slash) sites (slash) entrez)により提供されたOfficial Symbolと本出願の出願日と現在一致する。
【0049】
用語「マイクロアレイ」は、ハイブリダイズ可能な配列要素、例えば、基質上のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドプローブの秩序配列を指す。
【0050】
用語「ポリヌクレオチド」は一般に、任意のポリヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指し、これは、非修飾RNAもしくはDNAまたは修飾RNAもしくはDNAであってもよい。したがって、例として、本明細書において定義するポリヌクレオチドは、一本および二本鎖DNA、一本および二本鎖領域を含むDNA、一本および二本鎖RNA、ならびに一本および二本鎖領域を含むRNA、一本鎖もしくはより典型的には二本鎖であるか、または一本および二本鎖領域を含み得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子を制限なく含む。さらに、用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書において使用する場合、RNAもしくはDNAまたはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。このような領域の鎖は、同一分子由来または異なる分子由来であり得る。領域は、この分子の1つまたは複数のすべてを含み得るが、より典型的には、この分子の一部の領域のみを含む。三重らせん領域の分子の1つは、オリゴヌクレオチドであることが多い。用語「ポリヌクレオチド」は、特にはcDNAを含む。この用語は、1つまたは複数の修飾塩基を含む、DNA(cDNAを含む)およびRNAを含む。したがって、安定性のため、または他の理由のために修飾した骨格を有するDNAまたはRNAは、その用語が本明細書において意図される「ポリヌクレオチド」である。さらに、イノシンのような異常塩基、またはトリチウム化塩基のような修飾塩基を含むDNAまたはRNAは、本明細書において定義する用語「ポリヌクレオチド」に含まれる。一般には、用語「ポリヌクレオチド」は、すべての化学的、酵素的および/または代謝的に修飾した未修飾ポリヌクレオチドの形態と、ウイルスならびに単純型および複雑型細胞を含む細胞のDNAおよびRNA特性の化学形態とを包含する。
【0051】
用語「オリゴヌクレオチド」は、一本鎖デオキシリボヌクレオチド、一本または二本鎖リボヌクレオチド、RNArDNAハイブリッドおよび二本鎖DNAを制限なく含む、比較的短いポリヌクレオチドを指す。一本鎖DNAプローブオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチドは、化学的方法により、例えば、市販の自動オリゴヌクレオチド合成装置を使用して合成されることが多い。しかし、オリゴヌクレオチドは、in vitro組換えDNAによる技術を含む種々の他の方法により、ならびに細胞および生物内のDNAの発現により生成され得る。
【0052】
用語「Ct」は、本明細書において使用する場合、閾値サイクルを指し、蛍光が反応ウェル中で生成される、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)におけるこのサイクル数は、既定の閾値、すなわち、十分な数の増幅産物が蓄積して既定の閾値を満たす、反応中のポイントを上回る。
【0053】
用語「Cp」は、本明細書において使用する場合、「交差ポイント」を指す。Cp値は、qPCR増幅曲線全体とその最大値の二次導関数とを決定することにより算出される。Cp値は、蛍光の増加が最も高く、PCRの対数期が始まる時点のサイクルを表す。
【0054】
用語「閾値化」は、遺伝子発現測定値と臨床応答との非線形関係を説明するのに、ならびに報告された患者のスコアの変動をさらに減少させるのに使用する手順を指す。閾値化を適用すると、閾値より低いかまたは高いすべての測定値が、その閾値に設定される。遺伝子発現とアウトカムとの非線形関係は、スムーサーまたは三次スプラインを使用して検討され、コックス比例ハザード回帰を使用して無再発期間について、またはロジスティック回帰を使用して有害病態について遺伝子発現をモデル化し得る。D. Cox、Journal of the Royal Statistical Society、Series B34巻:187~220頁(1972年)。報告された患者のスコアの変動は、遺伝子発現の可変性の関数として特定の遺伝子の定量化および/または検出の限界において検討され得る。
【0055】
本明細書において使用する場合、用語「増幅産物」は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびリガーゼ連鎖反応のような増幅技術を使用して合成されたDNAの断片を指す。
【0056】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者により容易に決定することができ、一般に、プローブ長、洗浄温度および塩濃度に依存した実験的計算である。一般には、長いプローブでは、適切なアニーリングに高い温度が必要とされるが、短いプローブでは、低い温度が必要とされる。ハイブリダイゼーションは一般に、その融解温度未満の環境において相補鎖が存在する場合、変性DNAの再アニーリングする能力に依存する。プローブとハイブリダイズ可能な配列との所望の相同性の程度が高ければ、使用し得る相対温度が高くなる。結果として、高い相対温度では、よりストリンジェントな反応条件を生じる傾向にあるが、低い温度では、それほどストリンジェントな反応条件を生じないということになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細および説明については、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(Wiley Interscience Publishers、1995年)を参照されたい。
【0057】
「ストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、本明細書において定義する場合、典型的には(1)洗浄に低いイオン強度および高い温度、例えば、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを50℃で使用するか、(2)ハイブリダイゼーションにおいてホルムアミドのような変性剤、例えば、50%(v/v)のホルムアミドを0.1%のウシ血清アルブミン/0.1%のフィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのリン酸ナトリウムバッファーをpH6.5で、750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムを42℃でともに使用するか、または(3)50%のホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%のSDS、および10%のデキストラン硫酸を42℃で使用して0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および50%のホルムアミド中42℃で洗浄し、その後、EDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を55℃で行う。
【0058】
「中ストリンジェント条件」は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Press、1989年に記載のように確認することができ、洗浄液および上記の条件ほどストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度および%SDS)の使用を含む。中ストリンジェント条件の例としては、20%のホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%のデキストラン硫酸、およびせん断した変性サケ精子DNA20mg/mlを含む溶液中37℃で一晩インキュベーションし、その後、フィルターを1×SSC中約37~500Cで洗浄する。当業者は、プローブ長等のような因子を適応させるのに必要な温度、イオン強度等の調整法を理解するであろう。
【0059】
用語「スプライシング」および「RNAスプライシング」は、互換的に使用し、イントロンを除去しエクソンを連結して、真核細胞の細胞質内に移動する持続的コード配列を有する成熟mRNAを生成するRNAプロセシングを指す。
【0060】
用語「相関する」および「関連する」は、2つの測定または算出したエンティティ間、あるいは測定または算出したエンティティ(例えば、グリーソンスコア、PSAレベル、GPS結果)とイベント(例えば、CR、PCD)との間の関連性を指すために本明細書において互換的に使用する。
【0061】
「カートリッジ」は、RNA転写レベルを試料から検出するための試薬のような、試料を処理するための試薬を含む物理的構造を指す。一部の実施形態では、熱循環のような反応およびRNA抽出のような試料の処理は、カートリッジ内で生じ得る。カートリッジ内に含まれる「ウェル」は、チャンバー、くぼみ、特定の表面または他の種類の特定の領域であり得、これはPCRまたは他の化学反応を行うための、プライマーおよび/またはプローブのような特定の試薬を保持し得る。
【0062】
「コンピュータベースシステム」は、情報を分析するために使用する、ハードウェア、ソフトウェアおよびデータ記憶媒体のシステムを指す。患者のコンピュータベースシステムの最小限のハードウェアは、中央処理装置(CPU)ならびにデータ入力、データ出力(例えば、ディスプレイ)およびデータ記憶のためのハードウェアを含む。当業者は、いずれの現在利用可能なコンピュータベースシステムおよび/またはその構成要素が、本開示の方法と関連した使用に適することを容易に理解し得る。データ記憶媒体は、上記の本発明の情報の記録、またはそのような製品にアクセス可能なメモリアクセスデバイスを含む任意の製品を含むことができる。
【0063】
データを「記録」するための、プログラミングまたはコンピュータ可読媒体上の他の情報は、当分野で公知の任意の方法を使用した、情報を記憶するためのプロセスを指す。好都合な任意のデータ記憶構造を、記憶した情報にアクセスするために使用する手段に基づいて選択することができる。多様なデータプロセッサプログラムおよびフォーマットは、記憶、例えば、文書作成テキストファイル、データベースフォーマット等に使用することができる。
【0064】
「プロセッサ」または「演算手段」は、それに要求される機能を実行する、ハードウェアおよび/またはソフトウェアの任意の組合せを言及する。例えば、適したプロセッサは、電子制御装置、メインフレーム、サーバまたはパーソナルコンピュータ(デスクトップまたはポータブル)の形態で利用可能なようなプログラム可能なデジタルマイクロプロセッサであり得る。プロセッサがプログラム可能である場合、適したプログラミングは、遠隔地からプロセッサへ伝達されるか、またはコンピュータプログラム製品(磁気、光学もしくは固体デバイスに基づいたいずれかの、ポータブルまたは固定のコンピュータ可読記憶媒体等)にあらかじめ保存され得る。例えば、磁気媒体または光学ディスクは、プログラミングを保持可能であり、各プロセッサとその対応する基地で通信する、適したリーダーにより読取り可能である。
【0065】
アルゴリズムに基づいた方法、GPSアルゴリズム、および遺伝子サブセット
本発明は、特定の臨床アウトカムの相対リスクを、前立腺がんを有する患者について判定するため、およびアッセイから得られるスコアに基づいて患者を特定の処置群に割り当てるためのアルゴリズムに基づいた分子診断アッセイを提供する。
【0066】
一部の実施形態では、本開示は、次の各遺伝子:BGN、COL1A1、SFRP4、FLNC、GSN、GSTM2、TPM2、TPX2、AZGP1、FAM13C、KLK2およびSRD5A2ならびに1つまたは複数の参照遺伝子の発現レベルに基づいて定量的スコアを得る方法に関する。一部の実施形態では、定量的スコアは、0~100の範囲にスケール化して全体的前立腺スコア(GPS)を得る。一部の実施形態では、定量的スコアは、CR、BCR、MetsおよびPCDのような臨床エンドポイントの相対リスクを患者について予測するために使用する。一部の実施形態では、臨床エンドポイントは、3年、5年または10年のような特定の期間の臨床エンドポイントであるとみなされる。
【0067】
一部の実施形態では、方法は、患者のGPSが、有害臨床アウトカムまたはCR、BCR、MetsおよびPCDのような種々の臨床エンドポイントのリスクの特定のレベルを示唆する、特定の閾値よりも高いかまたは低いかどうかを判定するステップを含む。一部の実施形態では、閾値は、18~22、例えば18、19、20、21または22であり、一部の実施形態では、38~42、例えば、38、39、40、41または42であり、一部の実施形態では、このような閾値の両方が考えられる。一部の実施形態では、閾値は20であり、一部の実施形態では、閾値は40であり、一部の実施形態では、20と40の両方の値が考えられる。
【0068】
本明細書において使用する場合、「定量的スコア」は一般に、より複雑な定量的情報分析の単純化または開示または報告を助けるための算術的または数学的に算出した数値、例えば、前立腺がん患者における、本開示の遺伝子または遺伝子サブセットの特定の発現レベルの、特定の臨床アウトカムパラメータの尤度に対する相関性を指す。定量的スコアは、特定のアルゴリズムの適用により定めることができる。本明細書における一部の実施形態では、定量的スコアは、遺伝子または遺伝子群の特定のサブセットについて定めることができる(すなわち、「遺伝子群スコア」)。さらに、群の形成により、遺伝子または遺伝子サブセットの種々の発現レベルの寄与の数学的重み付けを、定量的スコアに対して容易にすることができる。生理的プロセスまたは構成要素の細胞特性を表す遺伝子または遺伝子群の重み付けは、CR、BCR、MetsおよびPCDのような、がんの病態および臨床アウトカムに対するそのプロセスまたは特性の寄与を反映し得る。
【0069】
GPSは、次の遺伝子:BGN、COL1A1、SFRP4、FLNC、GSN、GSTM2、TPM2、TPX2、AZGP1、FAM13C、KLK2およびSRD5A2のそれぞれを含む一連の遺伝子、ならびにGUS、ARF1、ATP5E、CLTC、GPS1およびPGK1の1つまたは複数のような少なくとも1つの参照遺伝子の発現レベルデータから算出される。
【0070】
分析された遺伝子は、アルゴリズムの一部として特定の遺伝子サブセットに分類され得る。本開示の遺伝子サブセットは、例えば、間質応答遺伝子群、増殖遺伝子群、アンドロゲンシグナル伝達遺伝子群、および細胞構成遺伝子群を含む。間質応答および増殖遺伝子群は、過剰発現した場合にアウトカムの悪化と関連する遺伝子を含むが、アンドロゲンシグナル伝達および細胞構成遺伝子群は、過小発現した場合にアウトカムの悪化と関連する遺伝子を含む。
【0071】
本明細書において「間質応答遺伝子群」と呼ばれる(「ECM遺伝子群」または「間質系遺伝子群」とも呼ばれる)遺伝子サブセットは、BGN、COLIA1およびSFRP4遺伝子を含む。この群の遺伝子は、主に間質細胞により合成することができ、間質応答に関与し得るか、またはECM遺伝子群の遺伝子を同時発現し得る。「間質細胞」は本明細書において、生体組織の支持構造を構成する結合組織細胞と呼ばれる。間質細胞は、線維芽細胞、免疫細胞、周皮細胞、内皮細胞および炎症細胞を含む。
【0072】
「細胞構成遺伝子群」(「遊走遺伝子群」または「遊走制御遺伝子群」または「細胞骨格遺伝子群」とも呼ばれる)は、FLNC、GSN、GSTM2およびTPM2遺伝子を含む。このような遺伝子は、アクチンおよび付属タンパク質の動的微小繊維網の一部であり、細胞内で細胞を支持する、遺伝子および同時発現した遺伝子を含み、細胞運動および細胞分裂のための物理的な力を生成し、ならびに小胞および細胞小器官の細胞内輸送を容易にし得る。
【0073】
「アンドロゲン遺伝子群」(「PSA遺伝子群」および「PSA制御遺伝子群」とも呼ばれる)は、AZGP1、FAM13C、KLK2、AR、ERGおよびSRD5A2遺伝子を含む。このような遺伝子は、セリンプロテアーゼのカリクレインファミリーのメンバーである遺伝子(例えば、カリクレイン3[PSA])、およびアンドロゲン遺伝子群の遺伝子を同時発現する遺伝子を含み得る。
【0074】
「増殖遺伝子群」(「細胞周期遺伝子群」とも呼ばれる)は、TPX2遺伝子を含む。この遺伝子群は、細胞増殖および細胞周期調節のような細胞周期機能、例えば、チェックポイント/G1からS期への移行に関与し得る遺伝子、ならびにこのような遺伝子を同時発現する遺伝子を含む。
【0075】
一部の実施形態では、WO2013/116144の表5BのRS0~RS27アルゴリズムから選択されるアルゴリズムを選択し、必要に応じて、0~100にスケール化して、患者を評価する定量的スコアを得て、例として、CR、BCR、MetsまたはPCDのような臨床エンドポイントの相対リスクを判定することができる。一部の実施形態では、遺伝子のセットは、それぞれ間質応答群、細胞構成群、アンドロゲン群および増殖群由来の少なくとも1つの遺伝子を含む。一部の実施形態では、アルゴリズムは、修飾することができ、例えば、1つもしくは複数の上記の遺伝子群由来の1つもしくは複数の遺伝子を追加もしくは除去するか、またはさらなる遺伝子群を追加することができる。一部の実施形態では、臨床エンドポイントは、3年、5年または10年のような特定の期間の臨床エンドポイントであるとみなされる。
【0076】
GPSの算出
一部の実施形態では、定量的結果は、GPSである。GPS結果は、0~100のスケールで算出することができ、対照により正規化した遺伝子発現測定値から次のように導き出すことができる。
【0077】
未スケール化GPS(GPSu)は、次のように算出することができる:
GPSu=0.735×間質応答群スコア-0.368×細胞構成群スコア-0.352×アンドロゲン群スコア+0.095×増殖群スコア
ここで:
間質応答群スコア=0.527×BGN+0.457×COL1A1+0.156×SFRP4
細胞構成群スコア=0.163×FLNC+0.504×GSN+0.421×TPM2+0.394×GSTM2
アンドロゲン群スコア=0.634×FAM13C+1.079×KLK2+0.642×AZGP1+0.997×SRD5A2閾値
増殖群スコア=TPX2閾値、
ここで、SRD5A2閾値およびTPX2閾値は、閾値化により次のように算出される:
【数1】
【0078】
次いで、GPSuは、0~100であるように次のようにスケール化することができる。
【0079】
【0080】
GPS(スケール化)は、GPS値である。
【0081】
患者についてGPS値または結果が得られると、スコアは、事前に規定されたカットポイントまたは閾値、例えば、18~22の範囲、例えば、18、19、20、21もしくは22、および/または38~42の範囲、例えば、38、39、40、41または42のカットポイントを使用して特定のGPS群に分類される。このようなカットポイントは、以下の実施例に記載のように、CR、BCR、MetsおよびPCDのリスク対GPS結果の統計分析に基づいて定義され得る。
【0082】
一部の実施形態では、患者は、18~22の範囲、例えば、18、19、20、21または22のカットポイントに基づいて2つの群に分類することができ、ここで、一方の群は、GPS結果がカットポイント未満あるいはカットポイント未満またはそれと等しい場合、カットポイント未満であるとみなされ、他方の群は、GPS結果がカットポイントよりも高いか、あるいはカットポイントよりも高いかまたはそれと等しい場合、カットポイントよりも高いとみなされる。したがって、例えば、低GPS群は、GPS<20(または、カットポイントが設定される場合に応じて<18、<19、<21、<22)を有するものであり得、高GPS群は、GPS≧20(または、カットポイントが設定される場合に応じて≧18、≧19、≧21、≧22)を有するものであり得る。あるいは、低GPS群は、GPS≦20を有するものであり得、高GPS群は、GPS>20を有するものであり得る(または、カットポイントが設定される場合に応じて≦18、≦19、≦21、≦22および>18、>19、>21、>22)。一部の実施形態では、20のカットポイントは、低GPS群および高GPS群を定義し、したがって、GPS結果≦20を有するものは、低GPS群に入り、GPS結果>20を有するものは、高いGPS群に入る。
【0083】
一部の実施形態では、38~42の範囲のカットポイントは、低GPSおよび高GPS群を示すために使用される。したがって、例えば、低GPS群は、GPS<40(または、カットポイントが設定される場合に応じて<38、<39、<41、<42)を有するものであり得、高GPS群は、GPS≧40(カットポイントが設定される場合に応じて≧41、≧42)を有するものであり得る。あるいは、低GPS群は、GPS≦40を有するものであり得、高GPS群は、GPS>40を有するものであり得る(または、カットポイントが設定される場合に応じて≦41、≦42および>38、>39、>41、>42)。一部の実施形態では、40のカットポイントは、低GPS群および高いGPS群を定義し、したがって、GPS結果≦40を有するものは、低GPS群に入り、GPS結果>40を有するものは、高いGPS群に入る。
【0084】
GPSアルゴリズムの特定の前立腺がんリスク群への適用
前立腺がん患者の処置は、場合によっては、AUA、NCCNまたはCAPRA基準の1つまたは複数に従って、非常に低い、低、中または高リスクとして負の臨床アウトカムについて患者が分類されているかどうかに、少なくともある程度は基づいている。上述のように、このような分類は、腫瘍病期またはグレード、PSAレベルおよびグリーソンスコアのような複数の因子を考慮に入れる。
【0085】
例えば、前立腺がん患者のために利用可能な処置は、前立腺全摘除術(RP)、前立腺の経尿道的切除術(TURP)、切除術、解剖および腫瘍生検/除去のような外科手術を含む。骨盤リンパ節の解剖(PLND)はまた、将来の転移を防ぐのに懸念があるような一部の場合では、RPと同時に行われ得る。一部の場合では、外照射療法(EBRT)、一次小線源療法、または他の種類の小線源療法のような放射線療法(RT)が行われ得る。一部の場合では、患者は、アンドロゲン遮断剤(アンドロゲン遮断療法またはADT)のような薬物により処置することができ、これは一般にLHRHアンタゴニストを含む。ADTは、一部の場合、例えば、RTの前、中および/または後に投与され得る。高リスク患者においては、例えば、ADTは、RT後1、2、3年またはそれを超える等の長期間投与され得る。一部の場合では、ドセタキセル、カバジタキセルまたはシプロイセルTのような免疫療法剤および化学療法剤がまた、処方され得る。低リスク患者はまた、積極的監視により単独で処置することができ、例えば、その腫瘍病期の変化のエビデンスがない限り、またはその腫瘍病期の変化のエビデンスがあるまで、積極的監視を続けることができる。高齢患者あるいはその平均余命が短い患者はまた、必要に応じて緩和的介入による待機療法によって単独で処置することができる。
【0086】
種々の処置選択は、患者のリスクレベル、および例えば、AUAまたはNCCNガイドラインによる関連の推奨に従ってなされ得る。例えば、非常に低いリスクの患者は、積極的監視により、またはその平均余命が短い場合は待機療法により処置され得る。低リスク患者は、例えば、積極的監視によるだけでなく、限局性腫瘍が完全に除去され得る場合は特に、必要に応じてPLNDを併用するRPにより、またはEBRTもしくは小線源療法のようなRTにより、または他の一部の「単独」処置の形態(すなわち、2つの組合せとは対照的な外科手術または放射線のような処置の1つの形態)により処置され得る。中リスクの患者は、例えば、RPおよび必要に応じたPLNDにより、必要に応じてADTを併用するRTにより、または外科手術、放射線療法、および必要に応じた薬物処置の組合せにより処置され得る。このような患者は、「集学的」療法、すなわち、RTおよびADTのような種々の処置形態の組合せにより処置され得る。高リスク患者は、例えば、EBRT、およびRT後1、2または3年間等の長期ADT処置のようなマルチモード療法により、ならびに時には、患者が処置に対処するのに十分に適合する場合に、さらに化学療法とともに処置され得る。高リスク患者はまた、状態が保証する場合には、外科的に処置され得る。
【0087】
したがって、本発明の方法の一部の実施形態では、患者はこれまでに、AUAまたはNCCNまたはCAPRA基準に従って非常に低い、低、中または高リスク群に分類されている。一部の実施形態では、GPS結果または他の定量的スコアを本明細書に記載の方法から得ることは、患者のための適切な処置方針の決定において有用であり得る。
【0088】
例えば、一部の実施形態では、GPS結果は、非常に低いまたは低リスクの患者について得られ、方法は、18~22のカットオフポイントもしくは38~42のカットオフポイント、またはこのようなカットオフポイントの両方を使用して、どのGPS結果群、例えば、低または高群に患者が入るかを判定するステップを含む。一部の実施形態では、GPS結果は、高リスク患者について得られ、方法は、18~22のカットオフポイントもしくは38~42のカットオフポイント、またはこのようなカットオフポイントの両方を使用して、どのGPS結果群、例えば、低または高群に患者が入るかを判定するステップを含む。一部の実施形態では、GPS結果は、中リスクの患者について得られ、方法は、18~22のカットオフポイントもしくは38~42のカットオフポイント、またはこのようなカットオフポイントの両方を使用して、どのGPS結果群、例えば、低または高群に患者が入るかを判定するステップを含む。
【0089】
中リスクの患者が関わるこのような一部の実施形態では、本発明の方法に基づいた定量的スコアの判定が、患者の負の臨床アウトカムの相対リスクをさらに分類するために使用され得る。例えば、一部の実施形態では、38、39、40、41もしくは42よりも高い、または38、39、40、41もしくは42よりも高いかもしくは等しいGPS結果を有する中リスクの患者は、患者のCR、BCR、MetsおよびPCDのような負の臨床エンドポイントの相対リスクが、中リスクの患者と比較して、概して高いことを示す。一部の実施形態では、38、39、40、41もしくは42よりも高い、または38、39、40、41もしくは42よりも高いかもしくはそれに等しいGPS結果を有する中リスクの患者は、患者がCR、BCR、MetsおよびPCDのような負の臨床エンドポイントのリスクを有し、これは高リスク患者のリスクと概して同様であることを示す。例えば、40よりも高い、または40よりも高いかもしくはそれと等しいGPS結果を有する中リスクの患者は、患者がCR、BCR、MetsおよびPCDのような負の臨床エンドポイントのリスクを有し、これは高リスク患者のリスクと概して同様であることを示し得る。一部の実施形態では、この情報は、どのようにその中リスク患者を処置するかに影響し得る。例えば、このような患者は、高リスク患者のための処置の推奨に従って処置することができ、例えば、ADTおよび必要に応じて化学療法または免疫療法を併用したRTのような集学的治療を施すことができる。一方、中リスクの患者において、38、39、40、41もしくは42未満、または38、39、40、41もしくは42未満もしくはそれと等しいGPS結果は、患者のCR、BCR、MetsおよびPCDのような負の臨床エンドポイントの相対リスクが、中リスクの患者と比較して、概して低いことを示し得る。一部の実施形態では、中リスクの患者において、40未満、または40未満もしくはそれと等しいGPS結果は、患者のCR、BCR、MetsおよびPCDのような負の臨床エンドポイントの相対リスクが、中リスクの患者と比較して、概して低いことを示し得る。このような場合では、患者は、外科手術によるよりもむしろ積極的監視により、少なくとも初期は処置することができ、または外科手術または放射線単独のような単独処置により処置することができる。例えば、中リスクの患者が関わる一部の実施形態では、18、19、20、21もしくは22未満、または18、19、20、21もしくは22未満もしくはそれと等しいGPS結果は、CR、BCR、MetsおよびPCDのような負の臨床エンドポイントの相対リスクが低いことを示す。例えば、中リスクの患者が関わる一部の実施形態では、20未満、または20未満もしくはそれと等しいGPS結果は、CR、BCR、MetsおよびPCDのような負の臨床エンドポイントの相対リスクが低いことを示す。このような場合では、例えば、患者は、外科手術または放射線によるよりもむしろ積極的監視により、少なくとも初期は治療することができる。一部の実施形態では、中リスクの患者は、このような上位と下位のカットポイントの間のGPS結果を有し得る。このような場合では、患者は、外科手術によるよりもむしろ積極的監視により、少なくとも初期は処置することができ、または外科手術または放射線単独のような単独処置により処置することができる。したがって、GPSにより、中リスクの患者を、負の臨床エンドポイントについて高いおよび低いリスクの2つまたは3つの亜群に分類することが可能となり得る。その結果、一部の実施形態では、GPS結果の判定および患者の分類についての分析後、それに伴って処置方針を変化させてもよい。他の実施形態では、初期の処置方針は、リスク群(例えば、AUA、NCCNまたはCAPRA)とGPS結果の組合せに少なくともある程度基づいてもよい。
【0090】
遺伝子産物の発現レベルをアッセイする方法
本開示の遺伝子の発現レベルを決定するための種々の技術的アプローチは、本明細書に記載し、RT-PCR、マイクロアレイ、ハイスループット配列決定、遺伝子発現の連続分析(serial analysis of gene expression)(SAGE)およびデジタル遺伝子発現(Digital Gene Expression)(DGE)をこれらに制限なく含み、以下に詳細に考察する。特定の態様では、各遺伝子の発現レベルは、エクソン、イントロン、タンパク質エピトープおよびタンパク質活性を含む、遺伝子発現産物の種々の特徴に関連して決定され得る。
【0091】
アッセイする発現産物は、例えば、RNAまたはポリペプチドであり得る。発現産物は、断片化していてもよい。例えば、アッセイでは、発現産物の標的配列に相補的なプライマーを使用することができ、したがって、標的配列を含む完全転写物ならびに発現産物を断片化したものを測定することができる。さらなる情報は、国際特許公開WO2013/116144の表Aに提示されている。
【0092】
RNA発現産物は、直接、またはPCRに基づいた増幅法、例えば、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)によって得られるcDNA産物を検出することによりアッセイすることができる(米国特許第7,587,279号を参照)。ポリペプチド発現産物は、免疫組織化学的検査(IHC)を使用して、プロテオミクス技術によりアッセイすることができる。さらに、RNAとポリペプチド発現産物の両方はまた、マイクロアレイを使用してアッセイすることができる。
【0093】
遺伝子発現プロファイリングの方法は、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析に基づいた方法、ポリヌクレオチドの配列決定に基づいた方法、およびプロテオミクスに基づいた方法を含む。試料中のRNA発現の定量のための、当分野において公知の例示的方法は、ノーザンブロット法およびin situハイブリダイゼーション法(ParkerおよびBarnes、Methods in Molecular Biology106巻:247~283頁(1999年));RNAseプロテクションアッセイ(Hod、Biotechniques13巻:852~854頁(1992年));ならびに逆転写PCR(RT-PCR)(Weisら、Trends in Genetics8巻:263~264頁(1992年))のようなPCRに基づいた方法を含む。DNA二本鎖、RNA二本鎖、およびDNA-RNAハイブリッド二本鎖またはDNA-タンパク質二本鎖を含む、配列特異的二本鎖を認識し得る抗体を利用してもよい。配列決定に基づいた遺伝子発現分析のための代表的方法は、遺伝子発現の連続分析(SAGE)および超並列特性配列決定法(massively parallel signature sequencing)(MPSS)による遺伝子発現分析を含む。当分野において公知の他の方法を使用してもよい。
【0094】
逆転写PCR(RT-PCR)
典型的には、mRNAは、試験試料から単離する。出発物質は典型的に、ヒト腫瘍から、通常は、原発腫瘍から単離した全RNAである。必要に応じて、同一の患者由来の正常組織を内部対照として使用し得る。このような正常組織は、腫瘍に隣接する組織学的に正常に見える組織であってもよい。mRNAは、組織試料から、例えば、新鮮、凍結(例えば、新鮮凍結)、またはパラフィン包埋し固定(例えば、ホルマリン固定)した試料から抽出することができる。
【0095】
mRNA抽出のための一般的方法は、当分野において公知であり、Ausubelら、Current Protocols of Molecular Biology、John Wiley and Sons(1997年)を含む分子生物学の標準的教科書に開示されている。パラフィン包埋組織からのRNA抽出のための方法は、例えば、RuppおよびLocker、Lab Invest.56巻:A67(1987年)およびDe Andresら、BioTechniques18巻:42044頁(1995年)に開示されている。特には、RNA単離は、Qiagenのような商業的製造者による精製キット、バッファーセットおよびプロテアーゼを使用して、製造者の説明書に従って行うことができる。例えば、培地中の細胞からの全RNAは、Qiagen RNeasy(登録商標)ミニカラムを使用して単離することができる。他の市販のRNA単離キットは、MasterPure(商標)Complete DNA and RNA Purification Kit(EPICENTRE(登録商標)、Madison、WI)およびParaffin Block RNA Isolation Kit(Ambion,Inc.)を含む。組織試料由来の全RNAは、RNA Stat-60(Tel-Test)を使用して単離することができる。腫瘍から調製したRNAは、例えば、塩化セシウム密度勾配遠心分離法により単離することができる。
【0096】
次いで、RNAを含む試料は、逆転写に供して、RNA鋳型からcDNAを生成し、その後、PCR反応において指数関数的に増幅させる。2つの最も一般的に使用される逆転写酵素は、トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV-RT)およびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV-RT)である。逆転写ステップは、発現プロファイリングの状況および目標に応じて、特定のプライマー、ランダムヘキサマー、またはオリゴdTプライマーを使用して典型的に刺激する。例えば、抽出したRNAは、GeneAmp RNA PCR kit(Perkin Elmer、CA、USA)を使用して、製造者の説明書に従って逆転写することができる。次いで、得られたcDNAは、後続のPCR反応において鋳型として使用することができる。
【0097】
PCRに基づいた方法では、Taq DNAポリメラーゼのような耐熱性DNA依存DNAポリメラーゼを使用する。例えば、TaqMan(登録商標)PCRでは、TaqまたはTthポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を典型的に利用して、その標的増幅産物に結合するハイブリダイゼーションプローブを加水分解するが、等価な5’ヌクレアーゼ活性を有するいかなる酵素も使用することができる。2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、PCR反応産物に典型的な増幅産物の生成に使用する。第3のオリゴヌクレオチド、またはプローブは、2つのPCRプライマーのハイブリダイゼーション部位間に位置する増幅産物のヌクレオチド配列の検出を促進するように設計することができる。プローブは、例えば、レポーター色素により検出可能に標識化することができ、Taqman(登録商標)プローブ構成のように、蛍光色素と消光蛍光色素の両方がさらに提供され得る。Taqman(登録商標)プローブを使用する場合、増幅反応において、Taq DNAポリメラーゼ酵素により、プローブが鋳型依存的方法で切断される。得られたプローブ断片は、溶液中で分離し、放出されたレポーター色素からのシグナルは、第2のフルオロフォアの消光効果から免れる。レポーター色素の1つの分子は、遊離して新たな各分子が合成され、消光しなかったレポーター色素を検出することにより、データの定量的解釈の基礎がもたらされる。
【0098】
TaqMan(登録商標)RT-PCRは、例えば、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System(登録商標)(Perkin-Elmer-Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)またはLightCycler(登録商標)(Roche Molecular Biochemicals、Mannheim、Germany)等のハイスループットプラットフォームのような市販の装置を使用して行うことができる。好ましい実施形態では、手順は、LightCycler(登録商標)480(Roche Diagnostics)リアルタイムPCRシステム上で実行され、これはマイクロウェルプレートに基づいたサイクラープラットフォームである。
【0099】
5’ヌクレアーゼアッセイのデータは一般に、閾値サイクル(「Ct」)として最初に表される。蛍光値は、すべてのサイクルにおいて記録され、増幅反応におけるその時点までの増幅された産物の量を表す。閾値サイクル(Ct)は一般に、蛍光シグナルが統計的に有意であるとして最初に記録されるポイントであると説明される。あるいは、データは、交差ポイント(「Cp」)として表され得る。Cp値は、qPCR増幅曲線全体とその最大値の二次導関数を割り出すことにより算出される。Cp値は、蛍光の増加が最も高く、PCRの対数期が始まる時点のサイクルを表す。
【0100】
誤差および試料間の変動効果を最少化するために、RT-PCRは通常、内部標準を使用して行われる。理想的な内部標準遺伝子(参照遺伝子とも呼ばれる)は、同一起源のがんおよび非がん組織において、ほとんど一定のレベル(すなわち、正常およびがん組織において有意差を有しないレベル)で発現し、実験的処置により有意には影響されず(すなわち、化学療法への曝露の結果として、適切な組織の発現レベルにおいて有意差を示さない)、異なる患者から採取した同一組織において、ほとんど一定のレベルで発現する。例えば、本明細書に開示されている方法において有用な参照遺伝子は、正常前立腺組織と比較して、がん性前立腺において有意差を有する発現レベルを示すべきではない。正規化に使用する例示的参照遺伝子としては、次の遺伝子:GUS、AAMP、ARF1、ATP5E、CLTC、GPS1およびPGK1の1つまたは複数が挙げられる。遺伝子発現測定値は、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、5つまたはそれよりも多い)参照遺伝子の平均に対して正規化され得る。対照により正規化した発現測定値は、2~15の範囲であってもよく、ここで、1単位の増加は通常、RNA量の2倍の増加を示す。
【0101】
リアルタイムPCRは、各標的配列の内部競合配列を正規化に使用する場合の定量的競合PCRと、試料に含まれる正規化遺伝子またはRT-PCRのためのハウスキーピング遺伝子を使用する定量的競合PCRの両方との互換性を有する。さらなる詳細については、例えば、Heldら、Genome Research6巻:986~994頁(1996年)を参照されたい。
【0102】
本開示の方法における使用のための代表的プロトコールのステップでは、固定したパラフィン包埋組織をRNAソースとして使用する。例えば、mRNAの単離、精製、プライマー伸長および増幅は、当分野において利用可能な方法に従って行うことができる(例えば、Godfreyら、J. Molec. Diagnostics2巻:84~91頁(2000年);Spechtら、Am. J. Pathol.158巻:419~29頁(2001年)を参照)。簡潔には、代表的プロセスは、約10μm厚のパラフィン包埋腫瘍組織試料の切片に切断することにより開始する。次いで、RNAを抽出し、タンパク質およびDNAを、RNAを含む試料から枯渇させる。RNA濃度の分析の後、遺伝子特異的プライマーを使用してRNAを逆転写し、その後、RT-PCRを行ってcDNA増幅産物を得る。
【0103】
イントロンに基づいたPCRプライマーおよびプローブの設計
PCRプライマーおよびプローブは、目的の遺伝子のmRNA転写物に存在する、エクソンまたはイントロン配列に基づいて設計することができる。プライマー/プローブの設計は、Kent, W.J.、Genome Res.12巻(4号):656~64頁(2002年)により開発されたDNA BLATソフトウェアのような公的に入手可能なソフトウェアを使用して、またはその変形を含むBLASTソフトウェアにより行うことができる。
【0104】
必要または望ましい場合、標的配列の反復配列は、マスクして非特異的シグナルを軽減することができる。これを達成するための例示的ツールとしては、Baylor College of Medicineよりオンラインで利用可能なRepeart Maskerプログラムが挙げられ、これはDNA配列を反復エレメントのライブラリーに対してスクリーニングし、反復エレメントがマスクされたクエリー配列を返す。次いで、マスク化イントロン配列は、商業的に、あるいは公的に利用可能な任意のプライマー/プローブ設計パッケージ、例えば、Primer Express(Applied Biosystems)、MGB assay-by-design(Applied Biosystems)、Primer3(Steve RozenおよびHelen J. Skaletsky(2000年)Primer3 on the WWW for general users and for biologist programmers)を使用してプライマーおよびプローブ配列を設計するために使用することができる。S. Rrawetz、S. Misener、Bioinformatics Methods and Protocols:Methods in Molecular Biology、365~386頁(Humana Press)を参照されたい。
【0105】
PCRプライマー設計に影響し得る他の因子は、プライマー長、融解温度(Tm)、およびG/C含量、特異性、相補的プライマー配列、ならびに3’末端配列を含む。一般には、最適なPCRプライマーは通常、17~30塩基の長さであり、約20~80%、例えば、約50~60%のG+C塩基を含み、50~80 0C、例えば、約50~70 0CのTmの値を示す。
【0106】
PCRプライマーおよびプローブ設計のためのさらなるガイドラインについては、例えば、これによりその全開示を参照により明示的に組み込む、Dieffenbach, CW.ら、PCR Primer, A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、1995年、133~155頁の「General Concepts for PCR Primer Design」;InnisおよびGelfand、PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications、CRC Press、London、1994年、5~11頁の「Optimization of PCRs」;およびPlasterer, T.N. Primerselect: Primer and probe design. Methods Mol. Biol.70巻:520~527頁(1997年)を参照されたい。
【0107】
国際特許公開WO2013/116144の表Aは、プライマー、プローブおよび増幅産物配列に関するさらなる情報を提供し、これらは、本明細書に開示されている遺伝子とともに使用することができる。
【0108】
MassARRAY(登録商標)システム
MassARRAYに基づいた方法、例えば、RNAの単離および逆転写の後にSequenom,Inc.(San Diego、CA)により開発された例示的方法では、得られたcDNAに合成DNA分子(競合分子)を添加し、これは、単一塩基以外のすべての位置の標的cDNA領域に適合し、内部標準として作用する。cDNA/競合分子混合物は、PCRで増幅し、PCR後エビアルカリホスファターゼ(SAP)酵素処理に供し、これにより残留ヌクレオチドが脱リン酸化される。アルカリホスファターゼの不活化の後、競合分子およびcDNA由来のPCR産物は、プライマー伸長に供し、これにより競合分子およびcDNA由来のPCR産物の明瞭なマスシグナルが生成される。精製の後、このような産物は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)法による分析に必要とされる構成要素があらかじめ充填されているチップアレイ上に分注する。次いで、反応中に存在するcDNAは、生成されたマススペクトルのピーク領域の比率を分析することにより定量する。さらなる詳細については、例えば、DingおよびCantor、Proc. Natl. Acad. Sci. USA100巻:3059~3064頁(2003年)を参照されたい。
【0109】
他のPCRに基づいた方法
本明細書に開示されている方法における使用を見出すことが可能な、さらなるPCRに基づいた技術は、例えば、BeadArray(登録商標)技術(Illumina、San Diego、CA;Oliphantら、Discovery of Markers for Disease(Supplement to Biotechniques)、2002年6月;Fergusonら、Analytical Chemistry72巻:5618頁(2000年));市販のLuminex100 LabMAP(登録商標)システムおよび多色コードミクロスフェア(Luminex Corp.、Austin、TX)を遺伝子発現の迅速アッセイにおいて使用したBeadsArray for Detection of Gene Expression(登録商標)(BADGE)(Yangら、Genome Res.11巻:1888~1898頁(2001年));ならびにhigh coverage expression profiling(HiCEP)分析(Fukumuraら、Nucl. Acids. Res.31巻(16号)e94頁(2003年))を含む。
【0110】
マイクロアレイ
目的の遺伝子またはマイクロアレイの発現レベルはまた、マイクロアレイ技術を使用して評価することができる。この方法では、目的のポリヌクレオチド配列(cDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)を基質上に整列させる。次いで、整列した配列は、特定のハイブリダイゼーションに適した条件下で、試験試料のRNAから生成した検出可能な標識化cDNAと接触させる。RT-PCR方法のように、RNAのソースは典型的には、腫瘍試料から、および必要に応じて、内部対照として同一患者の正常組織または細胞株から単離した全RNAである。RNAは、例えば、パラフィン包埋し固定(例えば、ホルマリン固定)して凍結または保存された組織試料から抽出することができる。
【0111】
例えば、PCRにより増幅した、アッセイする遺伝子cDNAクローンの挿入断片は、高密度の配列の基質に適用される。通常、少なくとも10,000のヌクレオチド配列が、基質に適用される。例えば、マイクロチップ上に各10,000エレメントで固定化したマイクロアレイ遺伝子は、ストリンジェント条件下のハイブリダイゼーションに適する。蛍光で標識したcDNAプローブは、目的の組織から抽出したRNAの逆転写によって、蛍光ヌクレオチドを組み込むことにより生成することができる。チップに適用した標識化cDNAプローブは、配列上のDNAの各スポットに対する特異性によりハイブリダイズさせる。ストリンジェント条件下で洗浄して非特異的に結合したプローブを除去した後、共焦点レーザー顕微鏡により、またはCCDカメラのような別の検出方法によりチップをスキャンする。整列させた各エレメントのハイブリダイゼーションの定量により、対応するRNA存在量の評価が可能となる。
【0112】
二色蛍光により、別々に標識した、2つのRNAソースから生成したcDNAプローブは、対で配列とハイブリダイズさせる。したがって、特定の各遺伝子に対応する2つのソース由来の転写物の相対存在量は、同時に決定する。ハイブリダイゼーションのスケールの小型化は、簡便性および多数の遺伝子について発現パターンの迅速な評価をもたらす。このような方法は、1細胞あたり少数のコピーを発現する希少な転写物を検出するのに、および発現レベルの少なくとも約2倍の差を再現性よく検出するのに必要とされる感度を有することが示されている(Schenaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA93巻(2号):106~149頁(1996年))。マイクロアレイ分析は、市販の装置により、製造者のプロトコールに従って、例えば、AffymetrixのGenChip(登録商標)技術、またはIncyteのマイクロアレイ技術を使用することにより行うことができる。
【0113】
遺伝子発現の連続分析(SAGE)
遺伝子発現の連続分析(SAGE)は、各転写についてそれぞれのハイブリダイゼーションプローブを用意する必要なく、多数の遺伝子転写物の同時および定量的分析を可能とする方法である。はじめに、各転写物における唯一の位置からタグが得られるという条件で、転写物を一意的に同定するのに十分な情報を含む、短い配列タグ(約10~14bp)を生成する。次いで、多くの転写物をともに連結させて長い連続分子を形成し、これを配列決定して複数のタグの同一性を同時に明らかとすることができる。転写物の任意の集団の発現パターンは、タグそれぞれの存在量を決定し、各タグに対応する遺伝子を同定することにより定量的に評価することができる。さらなる詳細については、例えば、Velculescuら、Science270巻:484~487頁(1995年);およびVelculescuら、Cell88巻:243~51頁(1997年)を参照されたい。
【0114】
核酸配列決定による遺伝子発現分析
核酸配列決定技術は、遺伝子発現の分析に適した方法である。このような方法の根底にある原理は、cDNA配列が試料中に検出される回数が、その配列に対応するRNAの相対発現に直接関連することである。このような方法は、デジタル遺伝子発現(DGE)の用語で言及され、得られるデータの別々の数値的特性を示すこともある。この原理を適用する初期の方法は、遺伝子発現の連続分析(SAGE)および超並列特性配列決定法(MPSS)であった。例えば、S. Brennerら、Nature Biotechnology18巻(6号):630~634頁(2000年)を参照されたい。より最近では、「次世代」配列決定技術の出現により、DGEがより簡便、よりハイスループットで、より入手可能となった。結果として、これまでに可能なものよりも、より多くの実験室で、より多くの各患者試料における、より多くの遺伝子の発現をスクリーニングするためにDGEを利用することが可能となる。例えば、J. Marioni, Genome Research18巻(9号):1509~1517頁(2008年);R. Morin, Genome Research18巻(4号):610~621頁(2008年);A. Mortazavi, Nature Methods5巻(7号):621~628頁(2008年);N. Cloonan, Nature Methods5巻(7号):613~619頁(2008年)を参照されたい。
【0115】
RNAの体液からの単離
発現分析においてRNAを血液、血漿および血清から(例えば、K. Endersら、Clin Chem48巻、1647~53頁(2002年)およびそこに引用される参考文献を参照)ならびに尿から(例えば、R. Boomら、J Clin Microbiol.28巻、495~503頁(1990年)およびそこに引用される参考文献を参照)単離する方法は、記載されている。
【0116】
免疫組織化学的検査
免疫組織化学的検査法はまた、遺伝子の発現レベルの検出に適し、本明細書に開示されている方法に適用する。目的の遺伝子の遺伝子産物に特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体)は、このような方法において使用することができる。抗体は、抗体それ自体を直接標識することにより、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチンのようなハプテン標識、または西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼのような酵素を用いて、検出することができる。あるいは、非標識一次抗体は、一次抗体に特異的な標識化二次抗体と組み合わせて使用することができる。免疫組織化学的検査プロトコールおよびキットは、当分野において周知であり、市販されている。
【0117】
プロテオミクス
用語「プロテオーム」は、試料(例えば、組織、生物または細胞培養物)中に特定の時点で存在するタンパク質全体として定義される。プロテオミクスはとりわけ、試料中のタンパク質発現の全体的変化の研究を含む(「発現プロテオミクス」とも呼ばれる)。プロテオミクスは典型的に、次のステップ:(1)試料中の各タンパク質の二次元ゲル電気泳動(2-D PAGE)による分離、(2)ゲルから回収された各タンパク質の同定、例えば、質量分析またはN末端配列決定、および(3)バイオインフォマティクスを使用したデータの分析を含む。
【0118】
mRNAの単離、精製および増幅の概要
mRNA単離、精製、プライマー伸長および増幅を含む、固定したパラフィン包埋組織をRNAソースとして使用して遺伝子発現をプロファイリングするための代表的プロトコールのステップが、種々の公開学術論文に提供されている(例えば、T.E. Godfreyら、J. Molec. Diagnostics2巻:84~91頁(2000年);K. Spechtら、Am. J. Pathol.158巻:419~29頁(2001年)、M. Croninら、Am J Pathol164巻:35~42頁(2004年)を参照)。簡潔には、代表的プロセスは、組織試料切片(例えば、パラフィン包埋腫瘍組織試料の約10μm厚の切片)を切断することから開始する。次いで、RNAを抽出し、タンパク質およびDNAを除去する。RNA濃度の分析の後、必要に応じてRNA修復を行う。次いで、例えば、遺伝子特異的プロモーターを使用して逆転写により試料を分析に供し、その後RT-PCRを行うことができる。
【0119】
統計分析
当業者は、目的の臨床アウトカム(例えば、再発)とGPSまたは別の診断試験スコアとの間に有意な関連性が存在するかどうかの判定に使用され得る、多くの統計的方法が存在することを理解するであろう。
【0120】
例えば、仮説検定は、両側p値を使用して報告され得る。アウトカム(例えば、CR、BCR、Mets、PCD)の特定の測定または算出したエンティティとの有意な関連性が存在するかどうかを検討するために、最大重み疑似部分尤度推定量を使用したコックス比例ハザード(PH)モデルを使用することができ、ハザード比(HR)が1である帰無仮説のワルド検定のp値が、報告され得る。
【0121】
発現レベルの正規化
本明細書に開示されている方法において使用する発現データは、正規化され得る。正規化は、例えば、RNAの量の差および試料から得たRNAの質の可変性を補正して、CtまたはCp測定値等における不必要な体系的変化の原因を除去する(すなわち、正規化して切り捨てる)プロセスを指す。保存した固定化パラフィン包埋組織試料を使用するRT-PCR実験に関しては、例えば、体系的変化の原因は、患者試料の年齢および試料の保管に使用する固定液の種類に応じたRNA分解度を含み得る。他の体系的変化の原因は、実験室処理条件に起因し得る。
【0122】
アッセイは、適切な条件下での発現レベルにおいて有意差を有しない、特定の参照遺伝子の発現を組み込むことにより正規化を行うことができる。本明細書に開示されている参照遺伝子の例としては、ハウスキーピング遺伝子が挙げられる(例えば、E. Eisenbergら、Trends in Genetics19巻(7号):362~365頁(2003年)を参照)。一般には、参照遺伝子は典型的に、非癌性前立腺組織と比較して有意味に異なる前立腺がんの発現を示さないこと、ならびに種々の試料およびプロセス条件に追従しないことで知られている遺伝子であり、したがって、外部影響を正規化して切り捨てることができる。例示的実施形態では、次の遺伝子の1つまたは複数を、mRNA発現データを正規化する参照遺伝子として使用する:GUS、AAMP、ARF1、ATP5E、CLTC、GPS1およびPGK1。各試験遺伝子、例えば、BGN、COL1A1、SFRP4、TPX2、AZGP1、FAM13C、KLK2、SRD5A2、FLNC、GSN、GSTM2およびTPM2についての較正重み付け平均CtまたはCp測定値は、5つまたはそれよりも多い参照遺伝子の平均値に対して正規化され得る。他の実施形態では、正規化は、あるいは、すべてのアッセイした遺伝子またはその大きなサブセットのシグナル(CtまたはCp)の平均値または中央値に基づき得る(国際的な正規化のアプローチ)。
【0123】
当業者は、正規化は、多くの方法で達成することができ、上記の技術は、網羅的なものではなく、例示的なものであることのみを意図することを理解するであろう。
【0124】
発現レベルの標準化
本明細書に開示されている方法において使用する発現データは、標準化され得る。標準化は、すべての遺伝子を効率的に比較可能なスケールにおくプロセスを指す。これは、一部の遺伝子が、他よりも変動(広範な発現)を示すために行われる。標準化は、各発現値を、その遺伝子の全試料にわたる標準偏差で割ることにより行われる。次いで、ハザード比は、ハザードの、臨床エンドポイント(臨床的再発、生物学的再発、前立腺がんによる死、または任意の原因による死)に対する、発現において標準偏差が1増加する毎の比例変化として解釈される。
【0125】
本発明のキット
本発明の方法における使用のための材料は、周知の手順に従って生成されるキットの調製に適する。したがって、本開示は、予後のアウトカムまたは処置に対する応答を予測することを目的として本開示の遺伝子の発現を定量するための、遺伝子特異的または遺伝子選択的プローブおよび/またはプライマーを含み得る薬剤を含むキットを提供する。このようなキットは必要に応じて、腫瘍試料、特に、固定したパラフィン包埋組織試料からのRNAの抽出のための試薬、および/またはRNA増幅のための試薬を含むことができる。さらに、キットは必要に応じて、識別の記述もしくは表示または本発明の方法におけるその使用に関する説明書を有する試薬(単数または複数)含むことができる。キットは、容器(方法の自動的実施における使用に適したマイクロリットルプレートを含む)を含むことができ、それぞれが方法において利用される種々の材料または試薬(典型的には濃縮形態)の1つまたは複数を有し、例えば、クロマトグラフカラム、既製のマイクロアレイ、バッファー、適切なヌクレオチド三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、またはrATP、rCTP、rGTPおよびUTP)、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、ならびに1つまたは複数の本発明のプローブおよびプライマー(例えば、RNAポリメラーゼと反応するプロモーターに結合する適切な長さのポリ(T)またはランダムプライマー)を含む。予後または予測情報を推定または定量するのに使用する数学的アルゴリズムはまた、キットの正しく有望な構成要素である。
【0126】
一部の実施形態では、キットは、患者試料における特定のRNA転写物のレベルをRT-PCRにより決定するのに必要な試薬を含むことができる。例えば、一部の実施形態では、キットは、BGN、COL1A1、SFRP4、TPX2、AZGP1、FAM13C、KLK2、SRD5A2、FLNC、GSN、GSTM2およびTPM2遺伝子の1つまたは複数のRNA転写物のレベルを決定するための1つまたは複数のプライマーを含む、少なくとも1つのウェル(チャネル、チャンバー、領域または表面を構成し得る)を含む、カートリッジまたは他の同様の物理的構造を含むことができる。一部の実施形態では、プライマーは、カートリッジ内の1つまたは複数のウェルに付着している。一部の実施形態では、各ウェルは、例えば、種々の色の標識で標識したプライマーを使用することにより、2、3、4、5または6つの種々の遺伝子のためのプライマーを含むことができる。一部の実施形態では、少なくとも1つのウェルは、1つまたは複数の参照遺伝子のRNA転写レベルを決定するための少なくとも1つのプライマーを含む。一部の実施形態では、参照遺伝子は、GUS遺伝子を含む。他の実施形態では、参照遺伝子は、GUS、AAMP、ARF1、ATP5E、CLTC、GPS1およびPGK1の1つまたは複数を含む。一部の実施形態では、カートリッジ内に含まれるプライマーは、BGN、COL1A1、SFRP4、TPX2、AZGP1、FAM13C、KLK2、SRD5A2、FLNC、GSN、GSTM2およびTPM2、ならびに1つまたは複数の参照遺伝子からなる一連の遺伝子のRNA転写物のレベルを決定するためのプライマーを含む。一部の実施形態では、カートリッジは、バッファー、ヌクレオチド三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dGTPおよびdTTPまたはrATP、rCTP、rGTPおよびUTP)、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、および/またはRNAポリメラーゼのような増幅試薬をさらに含む。一部の実施形態では、カートリッジは、このような試薬をカートリッジのウェル内に導入する1つまたは複数の構成要素を含むシステムの一部である。一部の実施形態では、RNAは、試料から抽出され、抽出されたRNAは、カートリッジに適用される。他の実施形態では、抽出ステップは必要とせず、試料は、カートリッジに直接適用される。本明細書においてRNA転写レベルを定量するのに利用可能なカートリッジおよび関連システムの実例は、国際公開WO2006/136990およびその関連の米国特許第9,568,424号に記載されている。
【0127】
一部の実施形態では、カートリッジは、そこで熱循環が発生する、プライマーを含む少なくとも1つのウェル、ならびに試料を導入、溶解および/または洗浄するための1つまたは複数のウェルを含む。一部の実施形態では、カートリッジ構造の全体はまた、ポンプ、バルブ、プロセスウェル、ならびに液体および廃棄リザーバーを含み、これらはカートリッジ内において、試料の処理およびRT-PCR反応ならびにそれに関連した、特定の遺伝子のRNA転写レベルの検出を行うことを可能とする。
【0128】
カートリッジシステムを利用する一部の実施形態では、システムでは、試料由来のRNAならびにカートリッジ内に含まれるプライマーおよび試薬を使用してRNA転写レベルを決定することが可能であり、システムはまた、関連する正規化RNA転写レベルを決定し、GPSスコアのような関連する任意の定量的スコアを算出することが可能なソフトウェアを含む。一部の実施形態では、システムは、患者の定量的スコア(例えば、GPSスコア)を本明細書に記載のように、適切な低、中または高リスク範囲に分類することにより、患者が低、中または高リスクの有害臨床アウトカム、例えば、臨床的再発(CR)、生化学的再発(BCR)、遠隔転移(Mets)および前立腺がん死(PCD)のリスクにあるかどうかを判定することが、さらに可能である。一部の実施形態では、システムはまた、患者の定量的スコアを提供する報告を作成することが可能である。
【0129】
報告
本発明の方法は、商業的診断目的のために実行される場合、本明細書に記載の方法から得た情報の報告または要約を一般に作成する。例えば、報告は、1つまたは複数の遺伝子の発現レベル、GPS結果、GPS結果と、特定の閾値またはカットオフポイントとの、および/または平均スコアとの比較に関する前立腺患者の情報、ならびに患者についての他の情報、例えば、AUAまたはNCCNまたは他の認められるリスク群、ならびに患者をこのようなリスク群、例えば、PSAレベル、グリーソンスコア等に分類するために使用した情報を含み得る。本発明の方法および報告は、報告をデータベースに記憶することをさらに含み得る。方法では、データベースに対象の記録を作成し、記録にデータを追加することができる。報告は、書面の報告、音声による報告、または電子記録であってもよい。報告は、演算デバイス(例えば、携帯用デバイス、デスクトップコンピュータ、スマートデバイス、ウェブサイト等)上で表示および/または記憶することができる。報告が、医師および/または患者に提供されることが考慮される。報告の受信には、データおよび報告を含むサーバコンピュータへのネットワーク接続を確立すること、ならびにサーバコンピュータからのデータおよび報告を要求することをさらに含み得る。
【0130】
コンピュータプログラム
上記のアッセイから得た値、例えば、発現データは、手動で算出し記憶することができる。あるいは、上記のステップは、コンピュータプログラム製品により完全または部分的に行うことができる。したがって、本発明は、そこに記憶されたコンピュータプログラムを有するコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータプログラム製品を提供する。プログラムは、コンピュータにより読み取る場合、1つまたは複数の個体由来の生体試料の分析から得られた値(例えば、遺伝子発現レベル、正規化、標準化、閾値化、ならびにアッセイから得た値のスコアおよび/もしくはテキストへの変換または腫瘍病期および関連情報のグラフィック描写)に基づいて適切な計算を実行することができる。コンピュータプログラム製品は、そこに計算を行うためのコンピュータプログラムを記憶している。
【0131】
本開示は、上記のプログラムを実行するためのシステムを提供し、このシステムは一般に、a)中央演算環境と、b)演算環境に動作可能に接続されて患者のデータを受信する入力デバイスであって、この患者のデータが、例えば、詳細に上記のように、患者由来の生体試料を使用したアッセイから得た発現レベルもしくは他の値、またはマイクロアレイデータを含み得る、入力デバイスと、c)演算環境に接続されて情報をユーザ(例えば、医療関係者)に提供する出力デバイスと、d)中央演算環境(例えば、プロセッサ)により実行されるアルゴリズムとを含み、このアルゴリズムは、入力デバイスにより受信したデータに基づいて実行され、このアルゴリズムが、本明細書に記載の、発現スコア、閾値、または他の機能を算出する。本発明により提供する方法はまた、全体的または部分的に自動化してもよい。
【0132】
本発明を説明してきたところで、次の実施例を参照することによって、本発明は、より容易に理解することができる。この実施例は、例示目的で提供し、本発明を制限することを決して意図しない。
【実施例】
【0133】
(実施例1)
GPS結果<20と関連する臨床的再発(CR)および前立腺がん死(PCD)のリスク
2つの大規模な長期的前立腺がんコホートを分析して、CRおよびPCDのリスクをGPS<または>20単位について0~100のスケールで推定した。E. Kleinら、Eur Urol 66巻:550~560頁(2014年)およびJ. Cullenら、Eur Urol 68巻:123~131頁(2015年)から得た患者のデータを分析して、あらかじめ設定した20のGPSカットオフポイントと関連するCRおよびPCDのリスクを設定した。本試験における患者のベースライン特性に関する、さらなる詳細についてはE. Kleinら、Eur Urol66巻:550~560頁(2014年)、表1、およびJ. Cullenら、Eur Urol68巻:123~131頁(2015年)、表1を参照されたい。
【0134】
GPSの値(≦20または>20)に基づいて患者を分けた。コックス回帰分析は、コホートのサンプリング重み付けを考慮した。GPSおよびCRおよびPCDについてKleinの標準化ハザード比(std HR、共変量における1標準偏差(SD)の変化についてのHR)を使用してGPSを展開したため、平均への回帰(RM)を補正して2群の生存曲線を推定した。
【0135】
Cullenの402人の患者(追跡期間中央値5.2年)のうち、5人の患者のみが転移を起こし、5人すべてがGPS>20を有した。6.6年の追跡期間中央値を有するKleinの426人の患者のうち、109人のCR患者(遠隔転移と限局性の再発の両方を含む)および39人のPCD患者が存在したが、このような患者の1人のみが、GPS<20を有した。対照的に、Kleinの患者の28%が、GPS<20を有した。GPSは、AUAリスク群を調整した後のCR(std HR2.50(95%CI 1.99、3.15、p<0.001、RM補正stdHR2.16、FDR<0.1%))とPCD(stdHR 2.90(95%CI 2.06、4.06、p<0.001、RM補正stdHR1.96、FDR<0.1%))の両方にとって有意な予測因子であった。下記の表に示すように、中リスクの前立腺がん(AUA)およびGPS結果≦20を有する男性は、CRおよびPCDの10年RM補正リスクがそれぞれ2.6%および0.7%であった。中リスクの前立腺がん(AUA)およびGPS結果>20を有する男性は、CRおよびPCDの推定10年RM補正リスクがより大きい。このような結果は、非常に低い、低または中程度のNCCNリスク群およびGPS結果≦20の男性が、即時の根治的処置よりもむしろ積極的監視に適した候補であり得ることを示唆する。
【表1】
【0136】
(実施例2)
前立腺がん患者におけるGPS結果≦40および>40ならびに遠隔転移および前立腺がん死のリスク
259人の患者の最初の選択は、1995~2010年の大規模な地域参画型の米国統合医療制度(U.S. Integrated health care system)のNCCNリスクが非常に低いから高である6184人の前立腺がん患者から選択された。特には、6,184人の適格な患者の中でも、あらかじめ規定したコホートサンプリング計画に基づいて404人が選択され、そのうちの334人の患者が利用可能な生検組織を有していた。14人(4%)が、臨床的不適格であったため、41人(12%)が、腫瘍が不十分であったか、または腫瘍型が誤っていたため除外された。残りの279人のうち、有効なGPS結果を、最終的に評価可能な集団を代表する259人の患者(93%)について得た。259人の患者には、5人の非常に低いリスク群、35人の低リスク群、160人の中リスク群、および57人の高リスク群が含まれた。以下の表では、259人の評価可能な患者の特性を提供する。
【表2】
【0137】
259人の評価可能な患者には、79人(加重比率=8.8%)の遠隔転移、および180人の非転移患者が含まれた。259人の評価可能な患者には、64人のPCD(加重比率=1.8%)および195人の非PCD患者が含まれた。
【0138】
遠隔転移(Mets)および前立腺がん死(PCD)の10年推定は、各患者リスク群について判定し、GPS結果を得た(詳細については
図1A~1Bおよび2A~2Bを参照)。以下の表に示すように、259人の患者すべてについての平均GPSは、31であり、スコア中央値は、28であった。
【表3】
【0139】
40人の患者の非常に低いおよび低リスク群では、スコア中央値は22であり、160人の患者の中リスク群では、中央値は29であり、57人の患者の高リスク群では、中央値は43であった。
【0140】
グリーソンスコアに対してGPSを考慮する多変量分析(MVA)では、NCCNリスク群、AUAリスク群またはCapraスコア、GPSは、p値<0.001~0.007によりMetsおよびPCDの10年リスクと有意に関連していることが見出された。詳細については、以下の表を参照されたい。また、
図3を参照されたい。
【表4】
【表5】
【0141】
GPS結果はまた、診断時の年齢、グリーソンスコア、診断時のPSAレベル、および陽性生検コアの割合のような臨床的因子により調整する多変量モデルにおいてPCDと有意に関連し続けた(p値=0.004)。詳細については、以下の表を参照されたい。
【表6】
【0142】
さらに、160人のNCCN中リスク患者から得たデータの分析は、高リスク患者のリスクと同様に、GPS結果>40を有する患者(24%)が転移の5年リスクを有することを示した。特には、このような患者の84%が、5年無転移であり、高リスク患者の85%が、GPS結果にかかわらず5年無転移であり、GPS結果≦40を有する中リスク患者の97%が、5年無転移であった。さらに、GPS≦40を有するNCCN高リスク患者(試験した高リスク群の41%)は、臨床的中リスク患者のリスクと同様に、遠隔転移の5年リスクを有した。特には、そのような患者は、96%が5年無転移であるが、中リスク患者のすべては、94%が5年無転移であると推定された。対照的に、GPS>40を有する高リスク患者は、59%が5年無転移にとどまった。
【0143】
それぞれの遺伝子群スコア(間質応答、細胞構成、アンドロゲンシグナル伝達、および増殖)をまた、MetsおよびPCDの発生に対して判定および分析する。
図5を参照されたい。MetsとPCDの遺伝子群スコアはともに、遺伝子群スコアの、CRのような他の変数との関連性に基づいて予想通りのままである。
【0144】
概して、結果は、GPSが、前立腺全摘除術後の、臨床的に低、中および高リスク前立腺がん患者についての転移およびPCDのリスクの有意な予測因子であること、NCCN、AUAおよびCAPRA臨床リスク群を含む臨床的および病理的共変量による調整後の、GPSと転移およびPCDまでの時間との関連性が有意なままであること、GPSにより、従来の臨床病理的予後因子を超えた予後情報が加えられ、診断時のリスク層別化が向上することを実証する。その上、NCCN中リスク群において、GPSは、アウトカムの有意な予測因子であった。特には、40よりも高いGPS結果を有する患者は、臨床的高リスク患者のリスクと同様に、遠隔転移の5年リスクを有した。結果として、GPS>40を有するこのような中リスク群の患者は、マルチモード処置のような、より強力な処置の適した候補であり得る。
【0145】
GPSと生化学的再発(BCR)との相関性をまた、この患者群において試験した。試験のために、術後のBCRイベントを2007年のAUAガイドラインに従って、(1)術後PSAレベル≧0.2ng/mLであり、その上、連続確証的PSAレベル≧0.2ng/mLであり、ここで、BCR日は最初のPSA日であるか、または(2)PSAレベル≧0.1ng/mLの上昇後にサルベージ放射線またはホルモン療法を開始し、ここで、BCR日は、サルベージ療法日であるとして定義した。試験により、単変量モデルの259人の試験した患者において、20単位あたりのGPS値とBCRとの有意な関連性が見出された(HR2.50、HR95%CI 1.62、3.85、ワルドChisq17.00、ワルドp値<0.0001)。
【表7-1】
【表7-2】
【表8】
【表9】
【0146】
NCCN、AUAおよびCapraスコアならびにGPS結果を考慮する多変量モデルにおいて、関連性は、有意なままであった(p<0.001)。詳細については、表4を参照されたい。cT病期、グリーソンスコア、および診断時のPSAのような因子により調整した後の関連性はまた、有意なままであった。詳細については、表5を参照されたい。
【0147】
(実施例3)
前立腺がん患者におけるGPS結果≦40および>40ならびに臨床的再発(CR)および生化学的再発(BCR)のリスク
2つのさらなる試験では、E. Kleinら、Eur Urol66巻:550~560頁(2014年)およびJ. Cullenら、Eur Urol68巻:123~131頁(2015年)から得た患者のデータを分析して、40より高いかまたは低いGPA結果が、BCRおよびCRとどのように相関するかを中リスク患者において検討した。このような試験における患者のベースライン特性に関する、さらなる詳細についてはE. Kleinら、Eur Urol66巻:550~560頁(2014年)、表1、およびJ. Cullenら、Eur Urol68巻:123~131頁(2015年)、表1をまた参照されたい。
【0148】
E. Kleinら、Eur Urol66巻:550~560頁(2014年)に記載のクリーブランドクリニック(CC)のデータベースから得られる前立腺がん患者の試験では、GPS≦40を有するAUA中リスク群患者は、10年で4.7%の臨床的再発(CR)のRM補正推定リスクを有するが、GPS>40を有するAUA中リスク患者は、10年で16.9%のCRのRM補正推定リスクを有することを示した。AUA高リスク群の患者は、GPS結果にかかわらず、10年で18.2%のCRのRM補正推定リスクを有した。したがって、GPS中および高リスク群は、10年で同様のCRリスクを有した。
【0149】
GPS≦40を有するAUA中リスク群の患者はまた、3年で15.7%および5年で23.6%の生化学的再発(BCR)のRM補正推定リスクを有することが見出された(PSA閾値0.2)が、GPS>40を有するAUA中リスク患者は、3年で33.5%および5年で47.1%のBCRのRM補正推定リスクを有することが見出された。AUA高リスク群の患者は、GPS結果にかかわらず、3年で32.9%および5年で45.4%のBCRのRM補正推定リスクを有した。やはり、GPS中および高リスク群は、3および5年で同様のBCRリスクを有した。
【0150】
J. Cullenら、Eur Urol68巻:123~131頁(2015年)に記載のCenter for Prostate Disease Research(CPDR)データベースの試験から得た患者の同様の分析では、139人のNCCN中リスク患者の群を評価して、GPS結果対BCRの3年または5年リスクを検討した。GPS≦40を有する中リスク患者(患者の61%)は、8.0%のBCRの3年リスクおよび16.1%のBCRの5年リスクを有した(PSA閾値0.2)。対照的に、GPS>40を有する中リスク患者は、27.4%のBCRの3年リスクおよび36.0%のBCRの5年リスクを有した。このような結果は、CC/Klein試験における患者の結果と同様である。