(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】瞳孔周波数タグ付けに基づく哺乳類被験体による色知覚のバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20230307BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A61B3/10 ZDM
A61B10/00 H
(21)【出願番号】P 2019553316
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2018058119
(87)【国際公開番号】W WO2018178257
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-19
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516369608
【氏名又は名称】イセエム(アンスティテュ・デュ・セルヴォー・エ・ドゥ・ラ・ムワル・エピニエール)
【氏名又は名称原語表記】ICM(INSTITUT DU CERVEAU ET DE LA MOELLE EPINIERE)
(73)【特許権者】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(73)【特許権者】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】プジェ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ロランソー,ジャン
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/030658(WO,A1)
【文献】特開2010-017205(JP,A)
【文献】特開2008-237492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類被験体(2)による色知覚の指標またはバイオマーカー(SIG
power、APPROX
power、499)を生成する方法であって、以下の工程:
タグ付け周波数(F
tag)と呼ばれる周波数で少なくとも二つの色が周期的に反転される多色パターンをディスプレイ周辺機器(10)上に表示することを含む、哺乳類被験体を少なくとも一つの動的多色刺激にさらす工程(41)と、
この色の表示される輝度を変動させるために、動的多色刺激の表示中の多色パターンの二つの色の少なくとも一つ(C
2)の経時的な変更を制御する工程(41)と、
動的多色刺激の表示中に、哺乳類被験体の少なくとも一つの瞳孔の振動応答(SIG
resp)を画像取得装置(20)で取得する工程(42、43、44)と、
動的多色刺激の表示中の二つの色の少なくとも一つの経時的な変更の関数としての瞳孔の振動応答(SIG
resp)の力を表す信号(SIG
power、APPROX
power)を取得された応答から生成する工程(46、48)と
を含む方法。
【請求項2】
生成される信号(SIG
power、APPROX
power)の最小値(MIN)に対応する動的多色刺激の二つの色の等輝度二色構成を測定することで構成される工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
多色パターンの他方の色(C
1)が動的多色刺激の表示中、固定され続ける、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
タグ付け周波数(F
tag)が被験体(2)に依存している、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
被験体を少なくとも一つの較正光フラッシュにさらすことと、較正光フラッシュに対する哺乳類被験体の瞳孔の平均応答時間を計測することと、計測された平均応答時間に応じてタグ付け周波数を設定することとを含む、タグ付け周波数(F
tag)を測定する事前工程(40)をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
哺乳類被験体(2)が二つの異なる対の色に基づく二つの連続的な動的多色刺激にさらされる、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
生成される信号が、タグ付け周波数でのおよび/またはその高調波の一つ以上での瞳孔の振動力を表す信号であって、瞳孔の振動応答の、タグ付け周波数および/またはその高調波の一つ以上での周波数成分の変動を表す信号である、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
タグ付け周波数(F
tag)でのおよび/またはその高調波の一つ以上での瞳孔の振動力を表す信号(SIG
power、APPROX
power)の生成(46、48)が、取得された応答(SIG
resp)に対してムービング時間ウィンドウ(W
i)において離散高速フーリエ変換を適用すること(46)と、タグ付け周波数でのおよび/または得られる周波数スペクトルのその高調波の一つ以上での周波数成分の値(P
i,tag)を時間ウィンドウごとにメモリに保存することとを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
信号の生成(46、48)が、多色パターンの色の各反転に応答する瞳孔の直径の変動の振幅を測定することを含み、信号(SIG
power、APPROX
power)がこのように測定された振幅から形成される、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
哺乳類被験体(2)の病状の指標またはバイオマーカー(53)特性を測定する方法であって:
同じ動的多色刺激を使用しながら、請求項1~9のいずれか1項記載の方法を使用して、哺乳類被験体による色知覚の少なくとも二つの指標またはバイオマーカー(SIG
power、APPROX
power、499)を二つの個別のそれぞれの時間(t
1、t
2)において生成する工程(50、51)と、
二つのこのように生成される瞳孔の力信号(SIG
power、APPROX
power)の間の変更指標(53)を測定する工程(52)とを含む方法。
【請求項11】
少なくとも二つの指標またはバイオマーカーを生成する工程(50、51)が、生成される信号(SIG
power、APPROX
power)の最小値(MIN)に対応する動的多色刺激の二つの色の等輝度二色構成を二つの時間(t
1、t
2)ごとに測定することを含み、
変更指標(53)が二つの測定された二色構成の色値(c
2(t
1)、c
2(t
2))の間の差を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
病状を診断するまたは被験体の病状の進行を追跡するために、請求項10または11記載の方法を使用して、人間以外の哺乳類被験体(2)に対して得られる変更指標(53)の使用。
【請求項13】
多発性硬化症、肝炎、糖尿病、神経変性疾患、神経発達疾患、神経血管疾患、中毒、加齢に関連した黄斑変性、緑内障ならびに網膜の疾患の病状を発見するまたは追跡するための、請求項12記載の使用。
【請求項14】
哺乳類被験体(2)による色知覚の指標またはバイオマーカー(SIG
power、APPROX
power、499)を生成するシステム(1)であって、:
ディスプレイ周辺機器(10)と、
タグ付け周波数(F
tag)と呼ばれる周波数で少なくとも二つの色が周期的に反転される多色パターンの、ディスプレイ周辺機器上の表示を制御することで、哺乳類被験体を動的多色刺激する計算システム(31)と、
この色の表示される輝度を変動させるために、動的多色刺激の表示中の多色パターンの二つの色の少なくとも一つ(C
2)を、経時的に変更するように構成される色コントローラ(32)と、
動的多色刺激の表示中に、哺乳類被験体の少なくとも一つの瞳孔の振動応答(SIG
resp)を取得する画像取得装置(20)と、
動的多色刺激の表示中の二つの色の少なくとも一つの経時的な変更の関数としての瞳孔の振動応答(SIG
resp)の力を表す信号(SIG
power、APPROX
power)を取得された応答から生成するように構成される指標またはバイオマーカー生成器(33)と
を含むシステム。
【請求項15】
哺乳類被験体(2)の病状の指標またはバイオマーカー(53)特性を測定するシステムであって:
哺乳類被験体による色知覚の指標またはバイオマーカーを生成する、請求項14記載のシステム(1)と、
同じ動的多色刺激を使用して同じ被験体に対して生成システム(1)によって二つの個別の時間(t
1、t
2)において生成される二つの力信号(SIG
power、APPROX
power)の間の変更指標(53)を測定するように構成される処理モジュール(34)と
を含むシステム。
【請求項16】
神経変性疾患が、アルツハイマー病およびパーキンソン病からなる群から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項17】
神経発達疾患が、統合失調症および自閉症からなる群から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項18】
神経血管疾患が、発作からなる、請求項13に記載の使用。
【請求項19】
動的多色刺激が、二つの色の刺激であり、多色パターンが、二つの色のパターンである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
動的多色刺激が、二つの色の刺激である、請求項6記載の方法。
【請求項21】
動的多色刺激が、二つの色の刺激であり、多色パターンが、二つの色のパターンである、請求項14記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、哺乳類による色知覚の評価、より詳細には、哺乳類被験体、例えば、人間または動物による色知覚の指標またはバイオマーカーを生成する方法およびシステムに関する。
【0002】
発明の背景
色知覚は、哺乳類被験体ごとに非常にばらつきがある。
【0003】
このばらつきは、通例、網膜の応答型領域にある、一般的に窩周囲にある色光受容体(錐体)の、被験体間で異なる濃度、分布および感度によって説明される。
【0004】
色知覚は、被験体の加齢によって変動する。
【0005】
それは、視覚経路のもしくは大脳視覚野の、遺伝子または眼(色光受容体)の取得された病状に関連している機能障害によっても悪化する。
【0006】
色知覚の評価は、多くの医療および非医療用途の両方にとって有効である。
【0007】
例として、文献米国特許第2015/245766号は、患者の神経学的低下を測定するために、白色(または赤色)および青色フラッシュに対する患者の瞳孔応答の差を使用する。
【0008】
色等輝度方法と呼ばれる一つの方法は、そのうちの一つが経時的に変動する色の組み合わせのすべての(一般的に両方の)色が被験体によって同じ輝度を有すると知覚されるときを測定することで構成される。この評価は、哺乳類による視覚処理の精神物理学的および神経生理学的研究において広く使用される。それは、とりわけ、被験体による色知覚の一貫性が評価されることのみならず、色知覚において輝度に対して感受性がある細胞の相対的な寄与が分離されることも可能にする。
【0009】
長い間、色等輝度の評価は、それが被験体による知覚判断に基づいているため、主観的であり続けた。
【0010】
言語でコミュニケーションを取ることが不可能な哺乳類被験体、例えば、動物および乳児の客観的な評価を可能にするために、哺乳類被験体による色知覚の指標またはバイオマーカーが作り出された。これらの指標またはバイオマーカーは、試験される色の知覚のある程度客観的な神経学的および生理学的特徴である。
【0011】
出版物「Screening for color blindness using optokinetic nystagmus」(Cavanagh Pら、1984)は、例として、色の一つが経時的に徐々に変更される赤色および緑色の棒で形成される格子における錯視シンチレーションに応答する被験体の眼の眼振を表す信号の生成を記載する。この応答信号は、試験される被験体による色知覚の指標である。とりわけ、二つの試験される色(赤色および緑色)の間の等輝度は、眼振信号において眼の動きの方向が反転する瞬間に得られる。
【0012】
出版物「A new technique for estimating chromatic isoluminance in humans and monkeys」(Chaudhuri A.ら、1990)も動的二色刺激の表示に応答する視運動性信号を生成することを開示する。眼振の方向の変化も、使用される二つの色(緑色と灰色)の間の等輝度を識別するために、使用される。
【0013】
色知覚の指標としての被験体の視運動性応答に基づくこれらの技術は、しかしながら、眼の動きの非常に正確な分析を要する。具体的には、動的二色刺激に応答する眼の不随意振動は、一般的に突然かつ急速である。高度な画像取得装置(例として、100im/sのビデオカメラ)およびとりわけ、リアルタイム処理のための高性能処理手段を、したがって、要する。
【0014】
さらに、この精度を保証するために、被験体の凝視が動かないことが必要である。この制約は、特定の被験体、例えば、動物や乳児では満たすことが困難である。
【0015】
加えて、眼球運動を計測するための凝視追跡装置の使用は、凝視追跡装置が較正されることを要する。較正手順は、被験体からの応答も要し、非協力的な被験体へのこれらの計測を困難にする。
【0016】
このように、単純に得られ、より制約的でない色知覚の指標またはバイオマーカーが要望されている。
【0017】
発明の概要
本発明者らは、輝度変動に対する瞳孔の応答を利用するアイデアを有した。具体的には、この応答(瞳孔の収縮または膨張)が眼振よりもよりゆっくりとしているため、本発明者らは、その後、より高度でない機器および処理作業で足りるであろうと結論付けた。
【0018】
これに関連して、本発明は、まず第一に、以下の工程:
その少なくとも二つの色がタグ付け周波数と呼ばれる周波数で周期的に反転される多色、通常二色のパターンをディスプレイ周辺機器(スクリーンまたは任意の他の視覚媒体)上に表示することを含み、多色パターンがこのように、所与の時間ごとに(反転する二つを包含する)複数の色を表示する、哺乳類被験体を少なくとも一つの動的多色、通常二色の刺激にさらす工程と、
動的多色刺激の表示中の多色パターンの二つの色の少なくとも一つの、この色の表示輝度を(一般的に数回)変動させるために、色の変更が二つの色(すなわち、実際のまたは知覚される輝度の差)の相対的な輝度を経時的に変動させるために意図される、経時的な変更を制御する工程と、
動的多色刺激の表示中に、哺乳類被験体の少なくとも一つの瞳孔の振動応答を画像取得装置で取得する工程と、
動的多色刺激の表示中に、二つの色の少なくとも一つの経時的な変更(より一般的には二つの色の間の輝度差)の関数としての瞳孔の振動応答の力を表す信号を取得された応答から生成する工程とを含む、哺乳類被験体による色知覚の指標またはバイオマーカーを生成する方法に関する。
【0019】
通例、瞳孔の振動応答は、瞳孔の直径の経時的な変動(収縮および膨張)を計測することで構成される。有利には、二つの眼の瞳孔は、個別にまたは組み合わせて(例として、平均として)分析され得る。
【0020】
瞳孔のゆっくりとした振動応答のため、使用されるタグ付け周波数は、大変低く、加えて、被験体の他の生理学的周波数から遠い。
【0021】
生理学的周波数からのこの遠さのため、瞳孔の振動応答の信号ノイズ比は、生来高い。それは、その後、傷のない瞳孔応答を真に表す振動応答の力を表す信号が得られることを可能にする。網膜の応答および/または試験される色の相対的な(被験体に特有の)知覚を表すこの信号は、したがって、色の区別および/または知覚の信頼性のある指標またはバイオマーカーに直接役立ちまたは直接関連し得る。
【0022】
生成される信号は、その後、下記に述べたように、例として、二つの試験される色の間の色等輝度を測定するために、医療または非医療用途に使用され得る。
【0023】
さらに、一般的におよそ0.1Hz~5Hz、例として、1.3または1.4Hzの低いタグ付け周波数の使用により、従来の映像取得装置、通常25im/sのビデオカメラ(例えば、コンピュータや携帯電話に装備されているようなもの)で足りる。とりわけ、取得された信号のリアルタイム処理は、その後、実質的により資源集約的でない。
【0024】
相関的に、本発明は、:
ディスプレイ周辺機器と、
計算システムがその少なくとも二つの色がマーキング周波数と呼ばれる周波数で周期的に反転される多色、通常二色のパターンの、ディスプレイ周辺機器上の表示を制御する、哺乳類被験体を動的多色、通常二色の刺激で刺激する計算システムと、
動的多色刺激の表示中の多色パターンの二つの色の少なくとも一つを、この色の表示される輝度を変動させるために、経時的に変更するように構成される色コントローラと、
動的多色刺激の表示中に、哺乳類被験体の少なくとも一つの瞳孔の振動応答を取得する画像取得装置と、
動的多色刺激の表示中の二つの色の少なくとも一つの経時的な変更の関数としての瞳孔の振動応答の力を表す信号を取得された応答から生成するように構成される指標またはバイオマーカー生成器とを含む、哺乳類被験体による色知覚の指標またはバイオマーカーを生成するシステムに関する。
【0025】
このシステムは、先に記載した方法のそれらに類似の効果を有する。
【0026】
本発明の方法の任意のフィーチャは、また、従属請求項に定義される。本発明のシステムは、これらの任意のフィーチャを具現化するように構成される手段を含むこともできる。
【0027】
一つの態様では、方法は、瞳孔の振動応答の力を表す信号の最小値に対応する動的多色刺激の二つの色の等輝度二色構成(すなわち、これら二つの色の値)を測定することで構成される工程をさらに含む。本発明者らは、パターンの二つの色の周期的な反転のため、二つの色の間の知覚される明度の差が増加するにつれ力が増加する応答により、瞳孔が対応する(タグ付け)周波数で振動することに気付いた。このように、力を表す信号の最小値を測定することは、二つの試験される色に対する被験体によって知覚される色等輝度を測定すること、すなわち、二つの試験される色の間で経時的に変動させられる輝度差が被験体によって知覚される最小値であるときを測定することを可能にさせる。色等輝度対応は、被験体による色知覚の指標またはマーカーとして使用され得る。具体的には、それは、他の被験体に対して得られるものと比較され得る。
【0028】
色等輝度を測定するために採用される計算は、公知技術に関して多大に簡素化される。さらに、力を表す信号の最小値の位置は、瞳孔の振動応答を計測するために使用されるユニットに依存しない。このように、この構成は、画像取得装置の較正が回避されることを可能にする。
【0029】
一つの態様では、多色パターンの二つの色のうち他方の色は、動的多色刺激の表示中、固定され続ける。
【0030】
もう一つの態様では、タグ付け周波数は、被験体に依存している。とりわけ、方法は、被験体を少なくとも一つの較正光フラッシュにさらすことと、較正光フラッシュに対する哺乳類被験体の瞳孔の平均応答時間を計測することと、計測された平均応答時間に応じてタグ付け周波数を設定することとを含む、タグ付け周波数を測定する事前工程をさらに含むことができる。
【0031】
これらの配置は、とりわけ、実施される計測の信頼性および、例として、試験される色に対する色等輝度構成を低時間費用で改善することを可能にさせる。さらに、それらは、試験(動的多色、通常二色の刺激への送り出し)の継続時間が最適化される、とりわけ、減らされることを可能にする。
【0032】
変形態様としてまたは組み合わせて、使用される多色パターンは、被験体に依存しており、例として、光フラッシュに対する瞳孔の振動応答に依存している。これは、とりわけ、被験体の眼の空間感度を減らす被験体の潜在的病状が考慮されることを可能にする。例として、多色パターンは、被験体に与えられたスクリーンの優先領域、例として、スクリーンの上部もしくは下部にまたはスクリーンの一つの具体的な4半分にさえ位置付けられ得る。
【0033】
一つの態様では、色の経時的な変更の制御は、少しずつの漸進的(または段階的)変更を含む。これは、とりわけ、ムービング分析ウィンドウにおいて、安定した振動応答が取得されることを可能にする。とりわけ、色の(漸進的)変更の周波数は、タグ付け周波数よりもより小さい。好ましくは、色の変更周波数は、タグ付け周波数の約数である。これは、表示される多色、通常二色のパターンの同じ二つの色の複数の交代を得、したがって、より良い質の振動応答を取得することを可能にさせる。
【0034】
一つの態様では、哺乳類被験体は、二つの異なる対の色に基づく二つの連続的な動的多色、通常二色の刺激にさらされる。この措置は、被験体による色知覚の完全な相対的な指標が得られることを可能にする。具体的には、色空間は、一般的に三次元(例として、赤色-緑色-青色、RGB)であり、二対の色の相対的な知覚の知識は、対の色のすべての相対的な知覚が(例として、単純な計算を介して)推定されることを可能にする。この相対的な知覚は、例として、色等輝度対応である。
【0035】
一つの態様では、ディスプレイ周辺機器上の色の表示は、赤色-緑色-青色値の三重項を使用して制御され、多色パターンの二つの色は、赤色、緑色、青色の三つの成分のうち二つがゼロである純色である。このように、色の経時的な変更は、ゼロでない第三の成分を徐々に増やすことによって単純に達成される。
【0036】
このケースでは、先に指し示された二対の色がRG、RBおよびGBの対からRGB空間に選択され、R、G、Bがそれぞれ純赤色、純緑色および純青色の色である。
【0037】
力を表す信号は、取得された応答信号に適用される処理に応じて、様々なやり方で形成され得る。
【0038】
第一の態様では、信号は、タグ付け周波数でのおよび/またはその高調波の一つ以上での瞳孔の振動力を表し、瞳孔の振動応答の、前記タグ付け周波数および/またはその高調波の一つ以上での周波数成分の変動を表す信号である。「高調波」が意味するものは、タグ付け周波数の倍数および/または約数である。通常、タグ付け周波数Ftagとは別に、半調波Ftag/2および/または二倍高調波2*Ftagが対象となり得る。
【0039】
周波数ドメインへの通過は、このように生成される指標またはバイオマーカーの、ノイズに対する耐性を改善する。例として、タグ付け周波数での瞳孔の振動力を表す信号の生成は、取得された応答に対してムービング時間ウィンドウにおいて離散高速フーリエ変換を適用することと、タグ付け周波数でのおよび/または得られる周波数スペクトルのその高調波の一つ以上での周波数成分の値を時間ウィンドウごとにメモリに保存することとを含む。これらの処理作業は、メモリ資源の点ではほとんどなしで、有利にはリアルタイムで実施され得る。
【0040】
とりわけ、ムービング時間ウィンドウの幅は、タグ付け周波数と対応する期間に少なくとも等しいように、例として、この期間の少なくとも二倍に等しいように選択される。
【0041】
もう一つの具体的なフィーチャによると、ムービング時間ウィンドウは、離散高速フーリエ変換の新たな適用ごとに、取得された応答の一つのサンプルによってシフトされる。サンプルの時間精度は、一般的に、使用される画像取得装置におよびその構成に応じる。有利には、本発明は、従来のビデオカメラの解像度(25im/s)に対応する25Hzのサンプリング周波数が使用されることを可能にする。このように、先の措置のおかげで、振動力を表す生成される信号は、使用される取得装置に与えられた可能な最良の解像度を有する。
【0042】
一つの具体的な態様では、タグ付け周波数でのおよび/またはその高調波の一つ以上での瞳孔の振動力を表す信号の生成は、少なくとも一つの数学関数、例として、アフィン関数および指数関数のうち一つ以上のサブ関数を組み合わせることができる区分関数によって、タグ付け周波数および/またはその高調波の一つ以上での周波数成分のメモリに保存される値から形成される信号を近似することをさらに含む。メモリに保存される値から形成される信号の一部分に対して最良の各サブ関数を近似し選択する従来の技術が使用され得る。そのような近似の使用は、比較的単純な指標またはバイオマーカーが得られること、したがって、後の処理が簡素化されること:例として、計算作業をパーソナライズするためのまたは病状の進行もしくはそのような病状に対する治療の有効性を評価するためのこの指標の使用を可能にする。
【0043】
第二の態様では、力を表す信号の生成は、多色、通常二色のパターンの色の各反転に応答する瞳孔の直径の変動の振幅を測定することを含み、力を表す前記信号がこのように測定された振幅から形成される。具体的には、これらの振幅、すなわち、瞳孔応答ごとの瞳孔の直径の差は、係数(瞳孔の応答時間)内に対する瞳孔応答の力を表す。
【0044】
瞳孔の振動応答(すなわち、多色パターンの表示の各制御された変化に対する応答)の力を表す信号を可能にする任意の他の方法が使用され得る。
【0045】
全体として、これらの分析方法は、具体的な事前フィルタリングなしで実施され得る。また、有利には、本発明は、従来のビデオカメラの解像度(25im/s)に対応する25Hzのサンプリング周波数が使用されることを可能にする。このように、振動力を表す信号は、使用される取得装置に与えられた可能な最良の解像度で生成される。
【0046】
一つの態様では、方法は、このように生成される力を表す信号の最小値、例として、先に構築された区分関数の最小値または瞳孔の振動の振幅の信号の最小値を測定することをさらに含むことができる。この最小値は、その後、知覚される等輝度多色、通常二色構成(または、例として、パターンが複数の対の色を包含し、そのうちの一つの輝度が経時的に変更される場合、等輝度多色構成)が識別されることを可能にする。
【0047】
一つの態様では、方法は、取得された振動応答をフィルタリングする工程をさらに含み、フィルタリング工程が眼のまばたき中の振動応答信号を、好ましくは直線的に、補間することを含む。これは、曲線の点アーチファクトが修正されることを可能にする。
【0048】
多くの病状は、哺乳類による色知覚の悪化につながる。これらの病状の有効な指標またはバイオマーカーが要望されている。これに関連して、本発明は、以下の工程:
同じ動的多色刺激(すなわち、例として、反転する同じ二つの色、同じタグ付け周波数など)を使用しながら、先に記載した方法を使用して、哺乳類被験体による色知覚の少なくとも二つの指標またはバイオマーカーを二つの個別のそれぞれの時間において生成する工程と、
力を表す二つのこのように生成される信号の間の変更の指標を測定する工程と
を含む、哺乳類被験体の病状の指標またはバイオマーカー特性を測定する方法にも関する。
【0049】
具体的には、本発明者らは、これらの病状に関連している色知覚の悪化が二つの試験時間における瞳孔の振動応答の力を表す信号を直接悪化させる(したがって変更する)ことに気付いた。本発明者らは、その後、瞳孔振動力を表すこれらの信号の経時的な変動を基礎として、これらの病状の特性指標を築くというアイデアを有した。
【0050】
この変更指標、すなわち、病状の指標またはバイオマーカー特性は、病状を発見する、病状を追跡する、病状に対する治療の有効性を追跡するなどより特有のプロセスにおいてこのように使用され得る。
【0051】
また、当該被験体の二つの眼は、一般的に色を同じように知覚しない。知覚の差は、わずかまたは有意であり得る。したがって、二つの眼の各々に対するそのような変更指標を得るために準備がされ得る。具体的には、特定のタイプの病状(例として、特定の神経学的疾患)は、二つの指標が有意であるときに発見され得、一方で、影響がより局所的な他のタイプの病状(眼科疾患、例えば、緑内障または網膜の疾患のみならず特定の神経学的疾患、例えば、多発性硬化症も)は、単一の指標(罹患した眼のそれ)が有意に悪化するときに発見され得る。とりわけ、神経学的疾患、例えば、多発性硬化症の場合、このように生成される指標は、疾患に罹患した眼が識別されることを可能にする。
【0052】
相関的に、本発明は、:
例えば、先に定義された、哺乳類被験体による色知覚の指標またはバイオマーカーを生成するシステムと、
同じ動的多色刺激を使用して同じ被験体に対して生成システムによって二つの個別の時間において生成される力を表す二つの信号の間の変更の指標を測定するように構成される処理モジュールと
を含む、哺乳類被験体の病状の指標またはバイオマーカー特性を測定するシステムに関する。
【0053】
本発明の指標またはバイオマーカーを測定する方法の任意のフィーチャは、また、従属請求項に定義される。本発明のシステムは、これらの任意のフィーチャを具現化するように構成される手段を含むこともできる。
【0054】
一つの態様では、変更指標は、力を表す二つのこのように生成される信号の平均値の間の差を包含する。
【0055】
好ましくは、少なくとも二つの指標またはバイオマーカーを生成する工程は、このように生成される力を表す信号の最小値に対応する動的多色刺激の等輝度二色構成(すなわち、二つの反転された色の値)を二つの時間ごとに測定することを含み、変更指標は、二つの測定された二色構成の色値の間の差を含む。
【0056】
そのような指標またはバイオマーカーは、試験される被験体の側で過大な努力を要することなく、単純に得られる。それは、色知覚の悪化、したがって、眼(色光受容体)、視覚経路(視神経)または大脳視覚野の悪化が発見されることを可能にする。
【0057】
このように、この指標またはバイオマーカーは、病状、例えば、非網羅的に、多発性硬化症、肝炎(中毒に起因する神経学的悪化を伴う可能性がある肝臓の短絡)、糖尿病(これもまた神経学的悪化を伴う可能性がある)、神経変性疾患(アルツハイマー、パーキンソン)、神経発達疾患(統合失調症、自閉症)、神経血管疾患(発作)、(神経系に影響を与える)中毒、加齢に関連した黄斑変性、緑内障および網膜の疾患などが診断されるのみならず、その進行が追跡されることも可能にする。
【0058】
これに関連して、本発明は、病状を診断するまたは被験体の病状の進行を追跡するために、哺乳類被験体の病状の指標またはバイオマーカー特性を測定する先の方法を使用して哺乳類被験体に対して得られる変更指標の使用にも関する。
【0059】
この使用は、とりわけ、閾値のある変更指標を比較することを含むことができる。例として、実施された二つの計測の間の色等輝度差(振動力を表す信号を最小化する二つの二色構成)が大きい(閾値よりもより多い)場合、これは、被験体の神経系が悪化し、このように、試されているプロセスの治癒的治療が無効であるか、または対照的に、被験体の神経系が改善されたこと(差がより正常な等輝度構成への戻りを示す場合)を意味し得る。当然ながら、閾値は、二つの計測時間の間の差に応じてのみならず、追跡される病状および当該被験体に応じて調整され得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
本発明の他の詳細および効果は、添付の図面によって図示される、下記の記載からさらに明らかになる:
【
図1】本発明の一つの態様による、哺乳類被験体による色知覚の指標またはバイオマーカーを生成するシステムを図示する;
【
図2】本発明の一つの態様による、動的二色刺激を概略的に図示する;
【
図3】
図3aは、一つの態様による、
図2の刺激の二色パターンの色の一つの変更パターンまたはプロファイルを図示する;
図3bは、一つの態様による、
図2に示されるタイプの動的二色刺激に応答する瞳孔の振動応答の例を示す;
図3cは、態様の一つによる、
図3bの信号の分析ウィンドウへの離散高速フーリエ変換の適用の結果として生じる周波数スペクトルを概略的に図示する;
図3dと3d1は、様々な態様による、瞳孔の振動力を表す信号およびそれらを近似する区分関数を図示する;
図3eは、一つの態様による、
図3aの変更プロファイルからの色等輝度値の測定を図示する;
【
図4】本発明の態様による、哺乳類被験体による色知覚の指標またはバイオマーカーを生成する方法を、フローチャートを介して図示する;および
【
図5】本発明の態様による、哺乳類被験体の病状の指標またはバイオマーカー特性を測定する方法を、フローチャートを介して図示する。
【0061】
発明を実施するための形態
本発明は、そこから試験される被験体各々のバイオマーカー特性を形成することを見越して、哺乳類による色の知覚または区別に関する。それは、被験体による色の相対的な知覚の客観的な神経学的特徴を生成するために、振動光刺激に対する哺乳類被験体のゆっくりとした瞳孔振動応答(0.1Hz~5Hz)を活用する。
【0062】
瞳孔周波数タグ付け方法は、瞳孔応答速度に適応され、有利には被験体の眼の応答運動と対応する他の生理学的周波数とは遠いタグ付け周波数Ftagで使用される。例として、Ftagは、およそ1.3~1.4Hz以下である。
【0063】
この方法は、被験体の他の眼の運動の結果として生じるノイズに対してロバストであり、被験体側での較正を要しない。
【0064】
この方法は、例として、被験体によって知覚される色等輝度が得られる神経学的特徴から測定されることを可能にする。
【0065】
図1は、哺乳類被験体2による色知覚の指標またはバイオマーカー生成するシステム1を図示する。
【0066】
それは、ディスプレイスクリーン10、画像取得装置20および処理・制御計算システム30を含む。
【0067】
ディスプレイスクリーン10は、例として、60Hzの表示周波数を持つ、画素、例として、1920x1080画素解像度のパネルであり、システム30のビデオカードによって起動される。各画素は、各々が8ビット(すなわち0~255の値を取ることができる)の赤色、緑色および青色(RGB)の三つの色成分から形成される。当然ながら、他の画素解像度(ビットパーカラーの数、色空間)が本発明に関連して想定され得る。
【0068】
スクリーン10は、凝視に対して垂直な平面に、被験体2から固定された距離を置いて、被験体の眼に面して中心に位置付けられ得る。被験体2のいかなる運動も回避するために、後者の頭は、顎および額を介して好適な台の上にもたれさせて静止させることによって安定化され得る。
【0069】
画像取得装置20は、通常、赤外線に対して感受性があるビデオカメラまたは瞳孔直径が記録されることを可能にする任意の他のタイプのセンサであり、前記ビデオカメラも、それが被験体2の一つ以上の瞳孔の画像を取得できるように、被験体に面して設置される。
【0070】
説明の簡素化を理由として、画像の取得は、下記のとおり、被験体2の単一の瞳孔に限定される。当然ながら、類似の処理は、両方の瞳孔の画像の取得の際に実施され得:例として、平均が取られ得、他方の瞳孔の結果に裏付けられて一方の瞳孔に対して結果が得られ、または最後に、他方に対する一方の瞳孔の悪化が分析され得る。
【0071】
比較的低いタグ付け周波数Ftagのため、25im/sタイプの規格品のビデオカメラ20の使用が可能である。とりわけ、それらが赤外線に対して感受性があるならば、従来の電子装置(携帯電話、コンピュータ、タブレット、ポータブルビデオカメラ)に見られるビデオカメラが使用され得る。
【0072】
当然ながら、25im/sよりもより高い取得周波数を持つビデオカメラも使用され得る。
【0073】
ビデオカメラが赤外線のそれよりもより広い周波数スペクトルで作動するとき、赤外線スペクトルの画像だけを取得の最後に得るまたは少なくとも観察した瞳孔の直径が測定されることを可能にするために、公知技術(ここには記載されない)を使用する(物理的または電子)フィルタリングの準備がされ得る。
【0074】
制御・処理計算システム30は、動的多色、通常二色の刺激によって哺乳類被験体を刺激する計算モジュール31、色コントローラ32および指標またはバイオマーカー生成器33を含む。これらの様々な要素は、それが本質的に、スクリーン10上の表示を制御するまたは装置20によって取得されたデータを処理することを目標とする、処理作業の問題であるため、ソフトウェアによって具現化される。このために、システム30は、スクリーン10が接続される従来のビデオカード38および取得装置20が接続される従来のビデオ取得カード39も含む。
【0075】
システム30は、操作者がシステムをパラメータ化し、本発明のプロセスおよびアプリケーションを始動させることを可能にするために、入力/出力手段(キーボード、マウス、ネットワークカード)をさらに含むことができる。
【0076】
動的多色、通常二色の刺激によって哺乳類被験体を刺激する計算モジュール31は、その二つの色の少なくとも一つがタグ付け周波数Ftagで周期的に反転される多色、通常二色のパターンの、スクリーン10上の表示を制御する。
【0077】
当該多色パターンは、所与の時間ごとの複数の色を表示する。これらの色の少なくとも二つは、その後、周期的に互いに反転される。
【0078】
図2は、色C
1およびC
2から形成される二色パターンの例、具体的に言うと、その中心に他方の色(ここでは、より良い読みやすさのために斜線)の均一な円を持つ、色の一方の均一なスクリーン背景(ここでは、より良い読みやすさのために白色のまま)を概略的に図示する。動的二色刺激は、周波数F
tagで二つの色C
1とC
2との間の交代を作り出すことで構成される。二色パターンは、例として、白色背景上に存在することができる。
【0079】
好ましくは、二色パターンの二つの色C1およびC2は、純色、すなわち、赤色、緑色、青色の三つの成分のうち二つがゼロの色である。RGB色空間において、C1およびC2は、このように、R、G、Bがそれぞれ純赤色(ri,0,0)、純緑色、(0,gi,0)および純青色(0,0,bi)の色である、RGまたはRBまたはGBのどれかである。
【0080】
C1およびC2がとりわけ、検査試験に対して、同じ純色(RR、GG、BB)であるように選択され得ることに注目される。当然ながら、必ずしも純色から成らない対の色(C1、C2)の他の選択が想定され得る。
【0081】
色コントローラ32は、動的多色、通常二色の刺激のスクリーン10上の表示中に、多色、通常二色のパターン(
図2)の二つの色の少なくとも一つを、この色の表示される輝度を(一般的に複数回)変動させるために、経時的に変更するように構成される。純色の場合、輝度変動は、得ることが容易であり、単純に単一のゼロでない成分(r
iまたはg
iまたはb
i)を変更することで構成される。
【0082】
二つの色の一つのこの変更は、当該二つの色の相対的な輝度を経時的に変動させる、すなわち、差が実際のものであるまたは被験体によって知覚される、二つの色の間の輝度差を変動させる目的を有する。
【0083】
一つの態様では、パターンの他方の色、仮にC
1は、動的二色刺激の表示中、固定され続ける。これは、試験の至るところ(
図2の表示される画像のすべて)で、色C
1は、同じRGB三重項で表示されることを意味する。当然ながら、この他方の色も(例として、第一の色とは逆の意味において)経時的に変更され得る。ここで重要なことは、知覚される等輝度を確かにする、二つの色の間のシフトを測定することである。第一の近似に対して、このシフトは、その後、等輝度構成の他方の色の値を得るために、色の一つの任意の値に適用され得る。
【0084】
色C2の経時的な変更は、好ましくは、試験中に、可能な値の範囲で(例として、単一の変更される成分に対して0から255まで)もしくは試験される値の範囲で増加して段階的に、または減って(例として、255から0まで)段階的に達成される。非純色の場合、結果としての輝度(RGB成分に基づく様々な調合が当業者には公知である)は、試験中に増加するまたは減るように選択される。
【0085】
変形態様として、第一の試験(本発明の技術に基づくまたは他の方法を使用する)で設定された第一の等輝度値に関する二分法による色C2の変更が想定され得る。
【0086】
多色パターンの他の例、例として、より多数の色を包含するパターンまたは、例として、先に説明されるように、対ごとに反転される二つ以上の異なる対の色を表示する多色パターンが使用され得る。空間的に異なるパターンもスクリーン10上の表示領域に、例として、スクリーンの任意の4半分上の表示または実際にスクリーンの上部(もしくは右手)または下部(もしくは左手)側の表示さえも想定され得る。
【0087】
以降の説明を簡素化するために、参照は、その二つの同時に表示される色が反転される(そのパターンが例として、均一な背景上に表示され得、結果として多色表示が生じる)、主に二色パターンに対して成される。
【0088】
図3aは、少しずつの漸進的(階段状)変更で構成される、色C
2の経時的な変更の制御の例を図示する。二つの色の間の輝度差は、このように、経時的に変動する。この例では、色C
2のゼロでない成分は、20単位で段階的に20~220の間で(極値は有意でない)変動させられる。当然ながら、他の段階サイズを持つ他の試験される範囲が試験の継続期間を減らすもしくは増加させるために、または例として、色等輝度の測定の精度を減らすもしくは改善するために使用され得る。
【0089】
とりわけ、第一の試験(本発明の技術に基づいてまたは他の方法を使用して)で事前に測定された近似の等輝度値(すなわち、C1の固定された値として被験体2によって知覚されたのと同じ輝度を有するC2の値)に関して、より高い精度(より狭い範囲およびより小さい段階)が第二の試験で使用され得る。
【0090】
図2に図示されるように、C
2の値の増分の周波数F
stepは、タグ付け周波数F
tagよりもより低い、例として、3倍より低い(
図2、三つの連続して表示される画像が同じ値の色C
2を有することを意味する)もしくはおよそ10倍以上より低い(
図3a)または任意でF
tagの約数であるように選択される。
【0091】
図1に戻ると、指標またはバイオマーカー生成器33は、応答が取得装置20によって取得される、被験体2の少なくとも一つの瞳孔の振動応答SIG
respから、瞳孔振動力信号SIG
powerと呼ばれる信号を生成するように構成される。振動応答の例は、
図3bに図示され、一方で、瞳孔振動力信号の例は、
図3dおよび3d1に図示される。
【0092】
この信号SIG
powerは、動的二色刺激の表示中の色の少なくとも一つの経時的な変更(
図3a)の関数としての瞳孔の振動応答の力を表す。
【0093】
この信号SIGpowerを得るために、様々な態様が想定され得る。
【0094】
急速な第一の方法は、二色パターンの色の各反転(t
iにおける)に応答する瞳孔の直径の変動の振幅A
iを測定することで構成される。各振幅A
iは、瞳孔応答中の瞳孔の直径の変更を定量化する。そのような振幅は、係数(瞳孔の応答時間)内に対する瞳孔応答の力を表す。信号SIG
powerは、その後、このように測定された振幅から形成される(三角形が各々測定された振幅A
i(t
i)を概略的に表す
図3d1を参照されたい)。
【0095】
ノイズに対してより耐性のある第二の方法は、振動応答SIG
respの周波数ドメインで働くことで構成される。このケースでは、信号SIG
powerは、好ましくは、信号が動的二色刺激(
図2)の表示中の色C
2の経時的な変更(
図3a)の関数としての瞳孔の振動応答SIG
respの、前記タグ付け周波数F
tagでの周波数成分P
i,tagの変動を表す、タグ付け周波数での瞳孔振動力を表す信号である。信号SIG
powerは、その後、このように測定された周波数成分P
i,tagから形成される(
図3dを参照されたい)。
【0096】
これらの周波数成分の測定が必ずしも色の反転ごとに取得される完全な振動応答を要しないことに注目される。具体的には、公知技術は、これらの周波数成分が瞳孔の振動応答の部分的な周期から得られることを可能にする。一つの好ましい態様では、完全な振動応答が採用される。
【0097】
変形態様としてまたは第一の高調波Ftagと組み合わせて、タグ付け周波数Ftag、とりわけ、分数調波、例えば、半調波Ftag/2および/または倍数の高調波、例えば、二倍または第二の高調波2*Ftagの高調波を使用することが可能である。このケースでは、各高調波は、下記に記載したように個別に処理され、それらの結果は、とりわけ、単一の等輝度二色構成を得るために、組み合わされる(平均としてまたは第一の高調波の結果調整するために、など)可能性がある。
【0098】
このように、任意の処理された高調波の信号SIG
powerから、指標またはバイオマーカー生成器33は、とりわけ、C
1(固定された)に関してC
2の等輝度を測定することができる。
図3dおよび3eに対して
図4を参照しながら下記に説明するように、この色等輝度は、信号SIG
powerの最小値に対応する動的二色刺激の等輝度二色構成に対応する。具体的には、瞳孔応答の振幅、したがって、その振動力は、表示される刺激の輝度の変動を密接に辿る。それらは、したがって、輝度の変動が最小値であるとき、すなわち、表示される二色パターンが被験体によって色等輝度を有すると知覚されるとき、最小値である。
【0099】
ここで
図4を参照しながら、本発明の教示による、哺乳類被験体による色知覚の指標またはバイオマーカーを生成する方法の例が記載される。
【0100】
システム1の電源を投入すると、任意の工程40は、システム1が試験される被験体2に対して較正されることを可能にする。とりわけ、この工程の目標は、被験体2および/または使用されるパターンに応じて周波数Ftagを測定することである。具体的には、瞳孔応答時間は、被験体ごとに、時には大きく変動する。このように、試験の継続期間を減らすまたは適切な計測を保証するために、被験体の瞳孔応答速度を超えないよう確認しつつ、Ftagが可能な限り高いことが好ましい。
【0101】
また、被験体の固視点に関して空間的に区分されるパターンは、被験体の網膜の特定の領域に具体的に影響を与える症状を分離するために想定され得る。例として、色知覚の上下差は、アルツハイマーを患っている患者に存在することができ、一方で、具体的な領域は、ARMDを局所的に患っている患者によっては容易には知覚されない(これらの領域は、病状のため網膜の変性した部分に対応する)。
【0102】
較正工程40は、そこから瞳孔応答時間および、このように、使用される周波数Ftag(例として、ルックアップテーブルを使用して)および/または二色パターンの表示の好ましい領域を画定する被験体のより良い感度の領域を推定するために、一般的に被験体の瞳孔応答(一般的に収縮)を記録することで構成される。
【0103】
例として、被験体2は、システム30によって制御され、スクリーン10(例として、暗いものから白色に突然変化するスクリーンまたは暗いスクリーンに突然現れる白色領域、この白色領域の場所は、較正試験中に変動する可能性がある)上に表示される少なくとも一つの較正光フラッシュにさらされ得る。
【0104】
(フラッシュまたは複数のフラッシュに対する)被験体2の瞳孔応答の画像の装置20による取得は、瞳孔(とりわけ、その直径)(の収縮)の変動を表す信号が得られることを可能にし、それから瞳孔の応答時間(任意で複数の応答の平均)が従来の技術によって計測され得る(例として、フラッシュから開始してかかる時間は、応答における収縮の90%に達する)。通例、人の瞳孔応答時間は、およそ0.5秒~2秒である。
【0105】
この計測されたまたは計算された応答時間を基礎として、工程40は、周波数Ftagを設定する。これは、限定された数のタグ付け周波数値を得るために、ルックアップテーブル(応答時間の範囲によって、Ftagのそれぞれの値と対応している)を使用して成され得る。変形態様として、タグ付け周波数Ftagと対応する期間は、計測された応答時間の二倍または計測された応答時間のもう一つの倍数に設定され得る。
【0106】
デフォルト設定で、およそ1.3~1.4Hzの値Ftagが使用され得る。
【0107】
さらに、スクリーンの複数の領域でのフラッシュの表示に対する瞳孔応答を基礎として、一方で、被験体は、同じ固視点を続け、装置は、被験体の最良の感度の領域を測定する。この領域は、その後、一部分のみのスクリーン上で二色パターンを表示するために使用され得る。このように、空間的に区分されるパターンは、当該被験体に応じて最終的に表示される。
【0108】
工程41では、被験体2は、少なくとも一つの動的多色、通常二色の刺激にさらされる。
【0109】
以下の記載が単一の二色刺激への被験体の送り出しに重点を置くものの、とりわけ、三次元RGB色空間のすべてにわたって被験体の相対的な色知覚を測定するために、例として、二つの異なる対の色に基づく二つの連続的な動的二色刺激に被験体を連続的にさらす準備がされ得る。例として、RG対に対する被験体の色等輝度を測定する試験は、GB対の色等輝度を測定する後の第二の試験と組み合わされ得る。赤色および青色の色の相対的な知覚は、その後、直接推定され得、これ故に、色空間のすべての色の被験体の相対的な知覚がわかる。
【0110】
さらに、ここで使用される刺激が二つの色のみが反転されるという意味において二色であり、少なくともその一つが経時的に変動するものの、周波数Ftagで反転される複数の異なる対の色を含むために使用される多色刺激の準備がされ得、前記対が同じスクリーン上に同時に表示される。
【0111】
工程41では、動的二色刺激によって哺乳類被験体を刺激する計算モジュール31は、好ましい表示領域で任意で二色パターンの表示ならびに周波数F
tagでの二つの色C
1およびC
2の周期的な反転(
図2)を制御する。同時に、色C
2の輝度は、色コントローラ32の制御下で、変更プロファイル410によって経時的に変更される。変更プロファイルは、C
2のゼロでない成分については、
図3aに示すように漸増であり得る。
【0112】
工程42では、画像取得装置20は、被験体2のモニタリングされる瞳孔の画像を、赤外線スペクトルで、撮影および取得する。これらの画像は、システム30に送信され、メモリ420に保存される。取得は、装置20の容量に応じて、25~1000im/sのサンプリング周波数Fsamplingで実施される。
【0113】
工程43では、取得された画像は、瞳孔の縁を発見し、瞳孔の直径を計測するためのアルゴリズムを使用して処理される。これらの計測は、瞳孔振動応答信号SIGrespが動的二色刺激の表示中に生成されることを可能にし、この信号は、瞳孔の直径の経時的な変動を表す。
【0114】
図3bは、動的赤色緑色二色刺激に対する瞳孔振動応答SIG
respの例を図示し、その純赤色が(140,0,0)に固定され、その純緑色が
図3aの曲線(F
step=0.0345、すなわち、およそ29秒の工程)を辿る。周波数F
tagは、0.345Hzに設定される。
【0115】
このように得られる曲線SIGrespは、システム30のメモリ430に保存される。
【0116】
計算システム30に送信されるデータの量を減らすために、縁検出処理作業およびSIGrespを生成する処理作業が取得装置20によって実施され得ることに注目される。
【0117】
振動応答SIGrespは、下記に記載した工程45~49と同様に利用され得る。具体的には、生理学的ノイズの周波数から遠い周波数Ftagの使用は、この応答が良いロバスト性のものであることを保証する。
【0118】
しかしながら、とりわけ、信号からアーチファクトを除く目的のために、この応答をフィルタリングするための準備が任意でされ得る。
【0119】
このケースでは、方法は、取得された振動応答SIGrespをフィルタリングする任意の工程44を継続する。このフィルタリング工程の目的は、とりわけ、信号からノイズ、例として、眼のまばたきの結果として生じるノイズ(縁検出アルゴリズムによって検出可能な瞳孔がない)を除くことである。
【0120】
一つの態様では、工程44は、一つ以上の眼のまばたき中、すなわち、縁検出アルゴリズムが画像内に瞳孔を発見することが不可能であるとき、振動応答信号SIGrespを、好ましくは直線的に、補間することで構成される。従来の補間技術が使用され得る。
【0121】
例として、Savitzky-Golay法に基づくフィルタリングが採用され得る。
【0122】
このようにフィルタリングされた信号は、システム30のメモリ440に維持される。
【0123】
信号SIGpowerが生成されるのは、この任意でフィルタリングされた信号SIGrespからである。
【0124】
前述の第一の態様では、生成器33は、表示される二色刺激の色の反転の時間tiを測定し、その後、対応する振動応答ごとに、被験体2の瞳孔直径の変動の振幅Ai(ti)を測定することができる。
【0125】
それは、単純に、被験体の応答時間に実質的に対応する時間ウィンドウにおける、色の反転の瞬間の直径の値と直径の対極値(最大または最小値)との間の差を測定することの問題であり得る。
【0126】
当然ながら、振幅を評価する他の方法、例えば、例として、直径の極値のパーセンテージまたは応答の90%(以下)における直径の値の使用が想定され得る。
【0127】
色の反転のそれぞれの時間と対応する計算された振幅のすべては、下記の工程48および49で使用される信号SIG
power(
図3d1)を形成する。
【0128】
周波数ドメインに基づく第二の態様では、得られる(任意でフィルタリングされる)信号SIGrespは、周波数成分Ftagおよび/またはその高調波の変動を分析することを見越して、スペクトルドメインに変換される。これを成すために、離散高速フーリエ変換(DFFT)がムービング時間ウィンドウWiの信号SIGrespに適用される。このように、ウィンドウごとに分析された信号のセグメントに対応する周波数スペクトルが得られる。次に、分析時間ウィンドウWiごとに、周波数Ftag(および/または一つ以上の高調波の)における周波数成分の値Pi,tagがメモリに保存される。
【0129】
残りの記載は、周波数成分Ftagに重点を置く。対象となる任意の高調波を処理するために、類似の手法が使用され得る。
【0130】
図3bは、第一のウィンドウW
0から最後のウィンドウW
Nまで使用される、分析時間ウィンドウW
iを図示する。スペクトル内のF
tagでの周波数成分の存在を確かにするために、ムービング時間ウィンドウW
iの幅は、タグ付け周波数F
tagと対応する期間T
tagに少なくとも等しい。図の例では、2*T
Tag(以上)に等しい幅が例として、選択された。このように、t
0を中心とするウィンドウW
0から、ゼロでない成分P
0,tagが得られ得る。
【0131】
各分析ウィンドウWiは、時間tiを中心とする(したがって、と対応する)。好ましくは、ウィンドウWiは、値{Pi,tag}から形成される振動力を表す信号の解像度を最大化するために、各サンプリング時間と対応する。このケースでは、ムービング時間ウィンドウWは、高速フーリエ変換の新たな適用ごとに、取得された応答の一つのサンプルSIGrespによってシフトされる。当然ながら、分析ウィンドウWのシフトの段階サイズSTEPWは、この例で使用される単一のサンプリング期間(Tsampling=1/Fsampling)よりもより大きくてもよい。複数のサンプリング期間に設定された段階サイズSTEPWは、計算の数および要するメモリサイズが減らされることを可能にする。
【0132】
周波数Ftagでの瞳孔の振動力を表し、瞳孔の振動応答SIGrespの周波数成分Ftagの変動を表す信号SIGpowerを得るために、方法は、まず第一に、工程45で、(各サンプルを処理するために)変数「i」をゼロに初期化することを含むことができる。
【0133】
次に、処理されるサンプル「i」を中心とする現在時間ウィンドウW
iによって定義される信号SIG
respのセグメント(すなわち、t
i)に、DFFTが適用される。
図3cは、得られる周波数スペクトルの概略例を図示する。ウィンドウW
iの幅に対応する周波数未満かつ半サンプリング周波数(ナイキスト基準)を超える周波数成分の非存在に注目される。F
tagの高調波成分は、したがって、存在し得る。
【0134】
このグラフは、ノイズを生成する可能性のある被験体2の生理学的周波数からFtagが遠いため、Ftagでの周波数成分Pi,tagが卓越した信号ノイズ比を有することを示す。値Pi,tagが得られ、メモリ460に保存される。これが工程46である。
【0135】
DFFTは、それが離散値(サンプル)上で作動するため、必ずしもぴったり周波数Ftagで周波数成分を作らないことが理解される。このように、値Pi,tagは、Ftagにもっとも近い得られる周波数成分のそれ、またはFtag周辺の二つの(もしくは二を上回る)周波数成分の間の(例として、線形)近似もしくはFtag周辺の二つ以上の周波数成分の平均であることさえできる。
【0136】
可能な限り高いサンプリング周波数Fsamplingおよび/または可能な限り大きいサイズのウィンドウWの使用がとりわけ、Ftagを中心にスペクトル内の周波数サンプルの数を増加させることに注目される。
【0137】
工程46の後、すべてのDFFTが実施されたか否かが測定され(試験47、i=N、試験期間にわたって処理されるサンプルの数であるか否かをチェックする)、さもなければ、以降のウィンドウWiにおいて信号のDFFTを実行するために、変数「i」が増やされる(工程470)。
【0138】
すべてのウィンドウで(すなわち、応答SIG
respのすべての断片に対して)DFFTが適用されたとき、メモリ460は、ともに周波数F
tagでの瞳孔の信号SIG
powerを形成する値P
i,tagのすべてを含有する(
図3dを参照されたい)。
【0139】
これらの方法の任意の一つを使用して生成される信号SIGpowerは、既に被験体2による色知覚の指標またはバイオマーカーである。具体的には、それは、被験体2のロバストな神経学的特徴の問題である。下記に見てとれるように、経時的なその変動の分析は、病状または病状の重症化が発見されることを可能にすることができる。これは、例として、多発性硬化症のケースである。
【0140】
任意の工程48および49は、この指標またはバイオマーカーが改良されることを可能にする。信号SIGpowerの一般的な形状は、横方向領域よりもより低い中心の領域を含有する。
【0141】
任意の工程48では、信号SIGpowerを近似するためのアルゴリズムは、とりわけ、この信号を数学関数に対応させるために採用される。とりわけ、それは、各断片がアフィン関数、指数関数または任意の他の従来の関数に対応し得る区分関数に信号を対応させるために求められる。
【0142】
図3dの例では、信号の一般的に減る部分(左側)および信号の一般的に増加する部分(右側)にフィットさせるために、区分(2区分)指数関数APPROX
powerが使用される。従来のフィッティングに基づく近似技術が使用され得るが、ここでそれらを詳述することは要望されていない。
【0143】
このように得られる信号APPROXpowerは、被験体2による色知覚の指標またはバイオマーカーとしても使用され得る。
【0144】
これもまた任意である工程49は、力信号SIG
powerまたはその近似APPROX
powerを最小化する色C
2の値c
2を測定することで構成される。これは、従来の技術を使用して信号SIG
powerまたはAPPROX
powerの最小値MINを測定することおよび変更プロファイル410(
図3a、
図3eに再現されている)を使用してこの信号最小値に対応する時間t
minにおけるC
2の値を測定することによって成される。
【0145】
本例では、値c2(tmin)=120がC2に対して得られる。換言すると、示された例では、被験体2は、値C1=(140,0,0)およびC2=(0,120,0)の純赤色と純緑色との間の相対的な色等輝度を知覚する。
【0146】
このように得られる等輝度構成499は、被験体2による色知覚の指標またはバイオマーカーとして役立ち得る。
【0147】
この構成は、一つ以上の高調波Ftagを使用して測定される一つ以上の他の対応する等輝度構成と組み合わされ得る。
【0148】
使用される動的多色刺激が周波数Ftagで反転される複数の異なる対の色を含むケースでは、信号SIGpowerまたはAPPROXpowerの最小値MINは、様々な対の色の全部の等輝度構成に対応し、この構成が個別に考慮される色の各対に対する一つの等輝度構成に具体的に対応するものではないことに注目される。
【0149】
一つの態様では、得られる等輝度構成は、試験を逆変更プロファイル410(例として、220から20まで段階的に減る)で再現することによって確かめられる。とりわけ、これら二つの試験で得られる二つの値c2の平均は、色C1およびC2に対する被験体2の平均等輝度構成を表すために計算され得る。
【0150】
先の方法は、45分の14セッション中に4人の人間の被験体で、20分のセッション中に7個の人間以外の哺乳類被験体で試験された。採用されたタグ付け周波数は、研究された被験体のすべてに好適な0.345Hzであった。使用された二色パターンは、一方の色が固定され、他方の色が段階的に変動する(
図3に概略的に図示されるように)
図2のそれであった。1920x1080画素解像度、8ビットパーカラーおよび60Hzのフラットスクリーン10が被験体から67cm距離を置いて設置された。
【0151】
本発明者らは、被験体のすべてについて、試験された二色パターンの等輝度構成で刺激の輝度変動によって誘発される瞳孔振動の力の最大減少に実際に気付いた。
【0152】
ここで
図5を参照しながら見てとれるように、これらの様々な指標またはバイオマーカーは、医療目的のために、とりわけ、哺乳類被験体の病状の指標またはバイオマーカー特性の測定で使用され得、したがって、診断プロセスで採用されることができる。
【0153】
信号が同じ動的二色刺激を使用して同じ被験体に対して生成システムによって二つの個別の時間において生成される瞳孔の振動力を表す二つの信号の間の変更の指標を測定するように構成される処理モジュール34(図示せず)が提供される、哺乳類被験体の病状の指標またはバイオマーカー特性を測定するシステムは、
図1のシステム1に類似し得る。
【0154】
図5は、哺乳類被験体の病状の指標またはバイオマーカー特性を測定する方法の一つの例および診断プロセスにおけるその使用を図示する。
【0155】
方法は、被験体による色知覚の少なくとも二つの指標またはバイオマーカーを二つのそれぞれ個別の時間t
1およびt
2において生成することを含む。好ましくは、本発明の教示および、とりわけ、
図1~4を参照しながら先に記載した方法が使用される。
【0156】
二つの指標またはバイオマーカーは、同じ動的多色、通常二色の刺激:同じ固定された色C1、色C2の同じ変更プロファイル410、同じタグ付け周波数Ftagなどを使用して、工程50および51で得られる。
【0157】
二つの指標またはバイオマーカーは、同じ性質を持ち、例として、二つの信号SIGpower(t1)とSIGpower(t2)460、二つの近似信号APPROXpower(t1)とAPPROXpower(t2)または二つの等輝度構成499(またはより単純には実施された二つの試験の色等輝度に対応するC2の二つのゼロでない値c2(t1)とc2(t2))である。
【0158】
これら二つの指標またはバイオマーカーは、その後、瞳孔の振動力を表す二つの信号の間の変更を表す指標53を測定するために、工程52で比較される。
【0159】
例として、変更指標53は、これら二つの信号の平均値の間の差:
average[SIGpower(t1)]-average[SIGpower(t2)]または
average[APPROXpower(t1)]-average[APPROXpower(t2)]である。
【0160】
変形態様として、変更指標53は、二つの色等輝度構成の色値の間の差:c2(t1)-c2(t2)である。
【0161】
被験体の潜在的病状の有効な指標またはバイオマーカー特性を形成するのは、この変更指標53である。
【0162】
変更指標53は、その後、病状を診断するまたは被験体の病状の進行を追跡するために使用され得る。
【0163】
例として、工程54では、変更指標53は、閾値55と比較される。変更指標53がこの閾値を超える場合、その後、病状が診断されるまたは病状の悪化が結論付けられる(工程56)。
【0164】
具体的には、本発明者らは、眼の(色光受容体の)、視覚経路(視神経)のまたは大脳視覚野の悪化が瞳孔の振動力の時には有意な減少および/または色知覚の有意な変更につながることに気付いた。
【0165】
このように、例として、変更指標35は、肝臓の短絡による肝炎のため手術される患者の潜在的中毒を追跡するために使用され得る。とりわけ、手術の前に計測された値に関して純赤色(140,0,0)との色緑色等輝度値が40単位を上回って低下する場合、その後、中毒の疑いが診断される。
【0166】
本発明者らは、とりわけ、この指標またはバイオマーカー53が多発性硬化症(MS)の進行のフェーズを発見するまたは(時には、実験的)医療治療のケースではこの進行を追跡する有効なやり方であることに気付いた。この発見のために使用される現在の技術は、とりわけ、被験体の運動に起因するアーチファクトに対して感受性があり、長い計測セッションおよび複雑な機器(電極)を要する視覚誘発電位(VEPs)に基づく。本発明の指標またはバイオマーカー53の使用は、これらの制約を回避する。
【0167】
本発明者らは、この指標またはバイオマーカー53が特定の病状の、または糖尿病および肝炎(術後中毒のため)がその例である、これらの病状に起因する治療介入の結果として生じる神経学的進行を追跡するために好適であることにも気付いた。それは、したがって、(被験体の神経系を悪化させることによって)色知覚を悪化させる任意の病状、例えば、神経変性疾患(アルツハイマー、パーキンソン)、神経発達疾患(統合失調症、自閉症)、神経血管疾患(発作)、(神経系に影響を与える)中毒、加齢に関連した黄斑変性、緑内障および網膜の疾患などを発見することも可能にさせる。
【0168】
具体的には、神経学的領域(視神経、大脳視覚野)の悪化は、被験体による色知覚の時には有意な変更につながる。対照的に、健康な被験体は、経時的に比較的一定の(たとえ加齢によってわずかに変化しても)色知覚を維持する。
【0169】
出版物「Colour vision deficiencies in Alzheimer's disease」(Patche M.ら、2003)は、例として、アルツハイマー病を発症している被験体の色覚の低下を明示した。出版物「Abnormalities in color vision and contrast sensitivity in Parkinson's disease」(Price M.J.ら、1992)は、パーキンソン病について同じことを成した。出版物「Reversible color vision defects in obstructive jaundice」(Varnek L.ら、1981)も、色知覚の悪化と肝臓治療に関連している中毒との間に関連があると見ている。出版物「Diabetic retinopathy seeing beyond glucose-induced microvascular disease」(Antonetti D.A.ら、2006)は、糖尿病と網膜の悪化、したがって色知覚との間に関連があると見ている。
【0170】
特定の病状(例として、神経学的疾患)は、研究される被験体の両方の眼に影響を与える。このように、一つの指標/バイオマーカー53は、二つの眼各々に対して生成され得る。このケースでは、各指標が有意に悪化するか否かが測定される。変形態様として、二つのマーカーの平均が使用され得る。
【0171】
他の病状は、一般的に単一の眼に影響を与える、より局所的な影響を有する。これは、とりわけ、眼科疾患(緑内障、網膜の疾患)のケースのみならず、特定の神経学的疾患(例として、多発性硬化症は、単一の視神経に影響を与え、局所的な視神経炎を引き起こし得る)のケースでもある。そのような病状は、二つの生成される指標/バイオマーカー53の単一が有意に悪化するとき、発見され得る。相互に、これらの指標53は、疾患に罹患した領域(すなわち、眼)が見つけられることを可能にする(例として、多発性硬化症の前述のケース)。
【0172】
前述の例は、本発明の態様にすぎず、それらに限定されない。