(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】経口投与用固形組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/26 20060101AFI20230307BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230307BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230307BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230307BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230307BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230307BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230307BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A61K38/26 ZNA
A61K47/26
A61K47/12
A61P3/10
A61P3/04
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
(21)【出願番号】P 2019567972
(86)(22)【出願日】2018-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2018065266
(87)【国際公開番号】W WO2018224689
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-24
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴェッジ、アンドリアス
(72)【発明者】
【氏名】シュエル、スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ビェルレガード、シモン
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/004623(WO,A1)
【文献】特表2014-503526(JP,A)
【文献】Tissue Barriers (2016) vol.4, no.2, e1176822, p.1-13
【文献】Lancet Diabetes Endocrinol. (2016) vol.4, issue 12, p.1004-1016
【文献】Diabetes Obes. Metab. (Jan 2017) vol.19, issue 1, p.49-60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/26
A61K 47/00 - 47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セマグルチドおよびダパグリフロジンを含む、経口投与用固形組成物であって、セマグルチドのバイオアベイラビリティを、ダパグリフロジンの存在下で増加させる、組成物。
【請求項2】
前記セマグルチドおよび/またはダパグリフロジンが薬学的に許容可能な塩、エステル、または溶媒和物の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が吸収促進剤をさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記吸収促進剤がNACの塩である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記吸収促進剤がSNACである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が5~300mgのダパグリフロジン、20~800mgのNACの塩(SNACなど)およ
び0.1~100mgのセマグルチドを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ダパグリフロジンの投与量が0.5~50mg/日であり、かつ前記ダパグリフロジンの投与量が0.1~100mg/日である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、一つ以上の追加的なその薬学的に許容可能な賦形剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が錠剤、カプセル、または小袋の形態である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
投与される前記組成物の投与量が200~1000mgの範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が1日1回投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
医薬品で使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
糖尿病または肥満の治療に使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
セマグルチドおよびダパグリフロジンを含む、経口投与用固形組成物であって、ダパグリフロジンが、セマグルチドの吸収促進剤である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与用固形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
GLP-1ペプチドは経口バイオアベイラビリティが低い。GLP-1ペプチドはある特定の吸収促進剤とともに製剤化された場合にのみ、経口投与後に血漿中で検出することができる。GLP-1ペプチドの経口投与用のさらに改善された医薬組成物に対する必要性がある。
【発明の概要】
【0003】
一部の実施形態において、本発明は、(i)GLP-1誘導体およびダパグリフロジン、または(ii)ナトリウムグルコース結合輸送体2(SGLT2)阻害剤と組み合わせたGLP-1誘導体およびNACの塩を含む、経口投与用固形組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明者らは、驚くべきことに、GLP-1誘導体またはSNACと組み合わせたダパグリフロジンを含む組成物が、細胞膜を通して前記GLP-1誘導体の透過性の改善を提供することを見出した。一部の実施形態において本発明の組成物は、GLP-1ペプチドまたはその誘導体の改善されたバイオアベイラビリティを提供する。一部の実施形態において、本発明は、GLP-1誘導体およびダパグリフロジンを含む経口投与用固形組成物に関する。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、GLP-1誘導体またはSNACと組み合わせたダパグリフロジンを含む組成物が、ダパグリフロジンおよび/またはGLP-1ペプチドもしくはその誘導体の細胞膜を通した透過性の改善を提供することを見出した。一部の実施形態において、本発明の組成物は、ダパグリフロジンおよび/またはGLP-1ペプチドもしくはその誘導体の改善されたバイオアベイラビリティを提供する。
【0005】
本発明者らは、驚くべきことに、GLP-1誘導体およびSNACと組み合わせたエンパグリフロジンを含む組成物が、細胞膜を通した前記GLP-1誘導体の透過性の改善を提供することも見出した。一部の実施形態において、本発明は、SGLT2阻害剤と組み合わせたGLP-1誘導体およびNACの塩を含む経口投与用固形組成物に関する。一部の実施形態において、本発明は、GLP-1誘導体、NACの塩(例えば、SNAC)、およびエンパグリフロジンを含む経口投与用固形組成物に関する。
【0006】
一部の実施形態において、本発明は、GLP-1誘導体およびダパグリフロジンを含む固形組成物に関する。一部の実施形態において、前記組成物は経口投与用である。一部の実施形態において、前記GLP-1誘導体は、セマグルチド、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、および化合物Eから成る群から選択される。一部の実施形態において、前記組成物は吸収促進剤をさらに含む。一部の実施形態において、前記吸収促進剤は、SNACなどのNACの塩である。一部の実施形態において、本発明は、ダパグリフロジンおよびSNACを含む固形組成物に関し、前記組成物は任意選択でGLP-1ペプチドまたはその誘導体をさらに含む。一部の実施形態において、本発明は、GLP-1誘導体および第二の活性成分を含む経口投与用固形組成物に関し、前記第二の活性成分は、SGLT2受容体を介してグルコース再取込みを阻害し、細胞単層膜を通して前記GLP-1誘導体の透過性を増加させる。
【0007】
GLP-1誘導体およびダパグリフロジンを含む経口投与用固形組成物は、患者の利便性をさらに提供する。
【0008】
一部の実施形態において、組成物は毎日1回投与される。一部の実施形態において、組成物は、100~1500mg(200~1000mgなど)の範囲の投与量で投与される。一部の実施形態において、錠剤の重量は、150mg~1000mg(300~600mgまたは300~500mgなど)の範囲内である。
【0009】
一部の実施形態において、組成物は、0.1~100mg(0.2~60mgなど)の量のGLP-1ペプチドまたはGLP-1誘導体を含む。一部の実施形態において、組成物は、1~30mg(2~20mgなど)の量のGLP-1ペプチドまたはGLP-1誘導体を含む。一部の実施形態において、組成物は、0.5~300mg(5~100mgなど)のSGLT2阻害剤を含む。一部の実施形態において、組成物は、3~50mg(5~30mgなど)のSGLT2阻害剤を含む。一部の実施形態において、組成物は5~300mg SGLT2阻害剤、0.1~100mg GLP-1誘導体、および20~800mgのNACの塩(SNACなど)を含む。一部の実施形態において、組成物は、0.5~50mgのダパグリフロジン(2~15mgのダパグリフロジンなど)を含む。一部の実施形態において、組成物は、5mgまたは10mgのダパグリフロジンを含む。一部の実施形態において、組成物は0.5~50mgのダパグリフロジンおよび0.1~100mgのGLP-1誘導体を含む。一部の実施形態において、組成物は、0.5~50mgのエンパグリフロジンを含む。一部の実施形態において、組成物は、5~30mgのエンパグリフロジン(10mgまたは25mgのエンパグリフロジンなど)を含む。一部の実施形態において、組成物は、20~800mgのNACの塩(SNACなど)を含む。一部の実施形態において、組成物は、20~1000mg(50~800mgまたは100~600mgなど)のNACの塩を含む。一部の実施形態において、組成物は、100~500mg(200~400mgまたは300mgなど)のNACの塩を含む。一部の実施形態において、組成物は0.5~300mgのSGLT2阻害剤、0.1~100mgのGLP-1誘導体、および20~800mgのNACの塩(SNACなど)を含む。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤とGLP-1誘導体との比は重量比で0.1~100である。
【0010】
一部の実施形態において、前記GLP-1ペプチドまたは前記GLP-1誘導体の投与量は、0.1~100mg/日(0.1~60mg/日など)である。一部の実施形態において、ダパグリフロジンの投与量は、0.5~50mg/日である。一部の実施形態において、前記ダパグリフロジンの投与量は0.5~50mg/日であり、また前記GLP-1誘導体の投与量は0.1~100mg/日である。一部の実施形態において、前記NACの塩(SNACなど)の投与量は、20~800mg/日である。一部の実施形態において、エンパグリフロジンの投与量は、0.5~50mg/日である。
【0011】
GLP-1ペプチド
一部の実施形態において、本発明の組成物はGLP-1ペプチドを含む。「GLP-1ペプチド」という用語は、GLP-1活性を有するヒトGLP-1の変異体であるペプチドを指す。本明細書で使用される場合、「ヒトGLP-1」という用語は、その構造および特性が周知のヒトGLP-1ホルモンを意味する。ヒトGLP-1はまたGLP-1(7~37)も示し、これは31個のアミノ酸を有し、かつプログルカゴン分子の選択的切断から生じる。ヒトGLP-1のアミノ酸配列は、HAEGTFTSDV SSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG(配列番号1)である。
【0012】
一部の実施形態において、GLP-1ペプチドは、ヒトGLP-1またはエキセンジン-4に対してアミノ酸の10個以下の置換、欠失、および/または追加を含む。特に、GLP-1ペプチドは、ヒトGLP-1に対して、アミノ酸の8個以下(6個以下、5個以下、または個4以下など)の置換、欠失、および/または追加を含む。GLP-1ペプチドは、ヒトGLP-1に対してアミノ酸の8個以下の置換、欠失、および/または追加を含みうる。
【0013】
本発明のGLP-1ペプチドは、GLP-1受容体作動薬である(「GLP-1活性」とも呼ばれる場合がある)。受容体作動薬は、受容体に結合し、天然リガンドの典型的な応答を引き出す化合物として定義されうる。完全な作動薬は、天然リガンドと同じ度合いの応答を引き出す作動薬と定義されうる(例えば、“Principles of Biochemistry”,AL Lehninger,DL Nelson,MM Cox,Second Edition,Worth Publishers,1993,page 763を参照)。従って、例えば、「GLP-1受容体作動薬」(本明細書では「GLP-1作動薬」とも呼ばれる)は、GLP-1受容体に結合する能力があり、かつGLP-1受容体を活性化する能力がある化合物と定義されうる。また、「完全な」GLP-1受容体作動薬は、ヒトGLP-1に類似した度合いのGLP-1受容体応答を引き出す能力があるGLP-1受容体作動薬と定義されうる。一部の実施形態において、GLP-1作動薬は、完全なGLP-1受容体作動薬である。例えば、本発明のGLP-1ペプチドは、標準GLP-1活性アッセイを使用してGLP-1活性を試験することができる。
【0014】
配列表では、配列番号1(ヒスチジン)の第一のアミノ酸残基には番号1が割り当てられている。しかしながら、当該技術分野において確立された慣行に従って、以下では、このヒスチジン残基は番号7と呼ばれ、それ以降のアミノ酸残基はそれに応じてナンバリングされ、グリシンの番号37で終わる。従って、一般に、本明細書でアミノ酸残基番号またはGLP-1(7~37)配列の位置番号に対するあらゆる参照は、位置7のHisから始まり位置37のGlyで終わる配列に対する参照である。
【0015】
本発明のGLP-1ペプチドは、i)変化したアミノ酸残基(すなわち、ヒトGLP-1内の対応する位置)に対応するヒトGLP-1(7~37)内のアミノ酸残基の番号、およびii)実際の変化を参照することにより説明されうる。
【0016】
言い換えれば、GLP-1ペプチドは、ヒトGLP-1(7~37)(配列番号1)と比較した場合に、アミノ酸残基の番号が変化したヒトGLP-1(7~37)である。これらの変化は、独立して、一つ以上のアミノ酸の置換、追加、および/または欠失を表しうる。
【0017】
以下は、適切な命名法の非限定的な例である。
【0018】
ある特定の指定された変化を「含む」GLP-1ペプチドは、配列番号1と比較した場合にさらなる変化を含みうる。一部の実施形態において、GLP-1ペプチドは指定された変化を「有する」。
【0019】
上記の例から明らかなように、アミノ酸残基は、その完全な名称、1文字のコード、および/または3文字のコードによって識別されうる。これら3つの方法は完全に均等である。
【0020】
「~に対応する位置」または「対応する位置」という表現は、ヒトGLP-1(7~37)(配列番号1)を参照して変異体GLP-1(7~37)配列の変化部位を特徴付けるために使用されうる。均等のまたは対応する位置だけでなく変化の数も、例えば、単純な手書きおよび目測によって簡単に推定でき、かつ/またはNeedleman-Wunschアルゴリズムに基づく「整列」などの標準タンパク質またはペプチド整列プログラムを使用してもよい。このアルゴリズムは、Needleman,S.B. and Wunsch,C.D.,(1970),Journal of Molecular Biology,48:443-453、およびMyers and W.Miller in“Optimal Alignments in Linear Space”CABIOS(computer applications in the biosciences)(1988)4:11-17による整列プログラムに説明されている。整列のために、デフォルトのスコアマトリックスBLOSUM62およびデフォルトの同一性マトリックスを使用してもよく、またギャップの第一の残基に対するペナルティは-12、好ましくは-10に設定されてもよく、そしてギャップにおける追加的な残基に対するペナルティは-2、好ましくは-0.5に設定されてもよい。
【0021】
Impおよび/またはAibなどの非天然のアミノ酸が配列に含まれている場合には、これらは、整列目的で、例えば、Xを用いて置換されてもよい。所望であれば、後で手動でXを修正することができる。
【0022】
「ペプチド」という用語は、例えば、本発明のGLP-1ペプチドの文脈で使用されるように、アミド(またはペプチド)結合によって相互接続された一連のアミノ酸を含む化合物を指す。本発明のペプチドは、ペプチド結合によって結合された少なくとも5個の構成アミノ酸を含む。特定の実施形態において、ペプチドは、少なくとも10個、好ましくは少なくとも15個、より好ましくは少なくとも20個、なおより好ましくは少なくとも25個、または最も好ましくは少なくとも28個のアミノ酸を含む。特定の実施形態において、ペプチドは、少なくとも5個の構成アミノ酸から構成され、好ましくは少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも25個、または最も好ましくは少なくとも28個のアミノ酸から構成される。追加的な特定の実施形態において、ペプチドは、a)29~33個のアミノ酸から構成される、またはb)29~33個のアミノ酸から成る。一部の実施形態において、ペプチドは、29、30、または31個のアミノ酸から成る。一部の実施形態において、ペプチドは、32、33または34個のアミノ酸から成る。なおさらなる特定の実施形態において、ペプチドは、ペプチド結合によって相互接続されたアミノ酸から成る。
【0023】
アミノ酸は、アミン基およびカルボン酸基、ならびに任意選択で側鎖と呼ばれることの多い一つ以上の追加的な基を含有する分子である。
【0024】
「アミノ酸」という用語は、タンパク質原性(または天然の)アミノ酸(20種類あるといわれる標準アミノ酸の中の)、ならびに非タンパク質原性(または非天然の)アミノ酸を含む。タンパク質原性アミノ酸は、タンパク質の中へと天然で組み込まれているアミノ酸である。標準アミノ酸は、遺伝子コードによってコードされたアミノ酸である。非タンパク質原性アミノ酸は、タンパク質内に見出されないか、標準的な細胞機構によって生成されない(例えば、翻訳後修飾の対象となっていた場合がある)。非タンパク質原性アミノ酸の非限定的な例は、Aib(α-アミノイソ酪酸)、des-アミノ-ヒスチジン(別名イミダゾプロピオン酸、略称Imp)、ならびにタンパク質原性アミノ酸のD異性体である。以下では、光学異性体が記載されていないGLP-1ペプチドのすべてのアミノ酸は、(別段の指定がない限り)L異性体を意味すると理解されるべきである。
【0025】
一部の実施形態において、GLP-1ペプチドは式Iを含む:
式I:Xaa7-Xaa8-Glu-Gly-Thr-Xaa12-Thr-Ser-Asp-Xaa16-Ser-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Glu-Xaa22-Xaa23-Xaa24-Xaa25-Xaa26-Lys-Phe-Ile-Xaa30-Xaa31-Leu-Val-Xaa34-Xaa35-Xaa36-Xaa37-Xaa38-Xaa39(配列番号2)、
式中、Xaa7はL-ヒスチジン、イミダゾプロピオニル、α-ヒドロキシ-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、Nα-アセチル-ヒスチジン、Nα-ホルミル-ヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン、α-メチル-ヒスチジン、3-ピリジルアラニン、2-ピリジルアラニン、または4-ピリジルアラニンであり、
Xaa8はAla、Gly、Val、Leu、Ile、Thr、Ser、Lys、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1-アミノシクロブチル)カルボン酸、(1-アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1-アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1-アミノシクロへプチル)カルボン酸、または(1-アミノシクロオクチル)カルボン酸であり、
Xaa12はLysまたはPheであり、
Xaa16はValまたはLeuであり、
Xaa18はSer、Arg、Asn、Gln、またはGluであり、
Xaa19はTyrまたはGlnであり、
Xaa20はLeu、Lys、またはMetであり、
Xaa22はGly、Glu、Lys、またはAibであり、
Xaa23はGln、Glu、またはArgであり、
Xaa24はAlaまたはLysであり、
Xaa25はAlaまたはValであり、
Xaa26はVal、His、Lys、またはArgであり、
Xaa30はAla、Glu、またはArgであり、
Xaa31はTrpまたはHisであり、
Xaa34はGlu、Asn、Gly、Gln、またはArgであり、
Xaa35はGly、Aib、または不在であり、
Xaa36はArg、Gly、Lys、または不在であり、
Xaa37はGly、Ala、Glu、Pro、Lys、Arg、または不在であり、
Xaa38はSer、Gly、Ala、Glu、Gln、Pro、Arg、または不在であり、かつ
Xaa39はGly、または不在である。
【0026】
一部の実施形態において、GLP-1ペプチドは式Iを含むか、または式Iから成る。式IのXaa38が不在である場合、式IのXaa39も不在である場合がある。式IのXaa37が不在である場合、式IのXaa38およびXaa39も不在である場合がある。式IのXaa36が不在である場合、式IのXaa37、Xaa38、およびXaa39も不在である場合がある。式IのXaa35が不在である場合、式IのXaa36、Xaa37、Xaa38、およびXaa39も不在である場合がある。
【0027】
一部の実施形態において、GLP-1ペプチドは式Iを含み、式中Xaa7はHisであり、Xaa8はAlaまたはAibであり、Xaa12はLysまたはPheであり、Xaa16はValであり、Xaa18はSerであり、Xaa19はTyrであり、Xaa20はLeuまたはLysであり、Xaa22はGlu、GlyまたはLysであり、Xaa23はGluまたはGlnであり、Xaa24はAlaまたはLysであり、Xaa25はAlaまたはValであり、Xaa26はLysまたはArgであり、Xaa30はAlaまたはGluであり、Xaa31はTrpまたはHisであり、Xaa34はGly、GlnまたはArgであり、Xaa35はGlyまたは不在であり、Xaa36はArg、Lysまたは不在であり、Xaa37はGly、Lysまたは不在であり、Xaa38はGlu、Glnまたは不在であり、かつXaa39はGlyまたは不在である。
【0028】
一部の実施形態において、GLP-1ペプチドは式Iを含み、式中Xaa7はHisであり、Xaa8はAibであり、Xaa12はPheであり、Xaa16はValであり、Xaa18はSerであり、Xaa19はTyrであり、Xaa20はLeuであり、Xaa22はGluまたはGlyであり、Xaa23はGlnであり、Xaa24はAlaであり、Xaa25はAlaであり、Xaa26はLysまたはArgであり、Xaa30はAlaまたはGluであり、Xaa31はTrpであり、Xaa34はArgであり、Xaa35はGlyであり、Xaa36はArgまたはLysであり、Xaa37はGlyまたはLysであり、Xaa38はGluまたは不在であり、かつXaa39はGlyまたは不在である。
【0029】
GLP-1誘導体
一部の実施形態において、GLP-1ペプチドは、GLP-1ペプチドの誘導体である(本明細書では「GLP-1誘導体」とも呼ばれる)。GLP-1ペプチドの文脈で「誘導体」という用語が本明細書で使用される場合は、一つ以上の置換基が構成ペプチドに共有結合している化学修飾GLP-1ペプチドを意味する。置換基は側鎖とも呼ばれる場合がある。従って、GLP-1ペプチドの文脈で「誘導体」という用語が本明細書で使用される場合は、一つ以上の置換基がペプチドに共有結合している化学修飾GLP-1ペプチドを意味する。GLP-1誘導体は、アシル化によって置換基に共有結合しているGLP-1ペプチドを含んでもよく、前記置換基は親油性部分および任意選択で遠隔酸基(例えば、カルボン酸)または芳香族基(例えば、4-カルボキシフェノキシ)を含む。
【0030】
一部の実施形態において、前記GLP-1ペプチドまたは前記GLP-1誘導体は、12kDa以下(10kDa以下、7kDa以下、または4kDa以下など)のサイズを有する。一部の実施形態において、前記GLP-1ペプチドまたは前記GLP-1誘導体は、2~12kDa(3~6kDaなど)のサイズ(すなわち、分子量)を有する。
【0031】
一部の実施形態において、側鎖はアルブミンと非共有結合凝集体を形成する能力があり、これによって誘導体の血流内での循環を促進し、またGLP-1誘導体とアルブミンの凝集体は緩慢にのみ分解されて原薬を放出するという事実に起因して誘導体の作用時間を延長させる効果を有する。従って、置換基、つまり側鎖は全体として、アルブミン結合部分と呼ばれることが好ましい。
【0032】
特定の実施形態において、側鎖は、少なくとも10個の炭素原子、または少なくとも15、20、25、30、35、または少なくとも40個の炭素原子を有する。さらなる特定の実施形態において、側鎖は、少なくとも5個のヘテロ原子、特にOおよびN、例えば、少なくとも7、9、10、12、15、17、または少なくとも20個のヘテロ原子(少なくとも1、2、または3個のN原子および/または少なくとも3、6、9、12、または15個のO原子など)をさらに含んでもよい。
【0033】
別の特定の実施形態において、アルブミン結合部分は、アルブミン結合、およびこれによって延長に特に関連性のある一部分を含み、この部分は従って延長部分と呼ばれることがある。延長部分は、ペプチドへの付着点に対して、アルブミン結合部分の末端(または遠位端、または遊離端)の近くであってもよく、好ましくはその末端でありうる。
【0034】
なおさらなる特定の実施形態において、アルブミン結合部分は延長部分とペプチドへの付着点との間の一部分を含み、この部分はリンカー、リンカー部分、スペーサーなどと呼ばれることがある。リンカーは任意選択であってもよく、そのため、この場合、アルブミン結合部分は延長部分と同一であってもよい。
【0035】
特定の実施形態において、アルブミン結合部分および/または延長部分は親油性であり、かつ/または生理的pH(7.4)で陰性に荷電している。
【0036】
アルブミン結合部分、延長部分、またはリンカーは、アシル化、すなわち、その(アルブミン結合部分、延長部分、またはリンカーの)カルボン酸基とリジン残基のアミノ基との間で形成されるアミド結合を介して、構成ペプチド(例えば、GLP-1ペプチド)のリジン残基に共有結合してもよい。追加的または代替的な共役化学には、アルキル化、エステル形成、もしくはアミド形成、または例えばマレイミドまたはハロアセトアミド(ブロモ-/フルオロ-/ヨード-など)結合によるなどの、システイン残基への結合が含まれる。
【0037】
一部の実施形態において、上記で説明するように、好ましくは延長部分およびリンカーを含むアルブミン結合部分の活性エステルは、アミド結合の形成下で、リジン残基のアミノ基、好ましくはそのイプシロンアミノ基と共有結合している。
【0038】
別段の記載がない限り、リジン残基のアシル化に言及される時、そのイプシロンアミノ基に言及しているものと理解される。
【0039】
「脂肪酸」という用語は、4~28個の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸を指し、これは分岐していないことが好ましく、また飽和であってもよく、または不飽和であってもよい。
【0040】
「脂肪二酸」という用語は、上記で定義されるように脂肪酸を指すが、オメガ位置に追加的なカルボン酸基を有する。従って、脂肪二酸はジカルボン酸である。脂肪二酸は、14~22個の炭素原子を含みうる。
【0041】
本発明の誘導体の二つのリンカーの各々は、以下の第一のリンカー要素を含んでもよく:
【化1】
(化学式A1a)、
式中、kは1~5の範囲内の整数であり、またnは1~5の範囲内の整数である。
【0042】
一部の実施形態において、k=1、かつn=1の時、このリンカー要素はOEG、または8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸のジラジカルと指定されてもよく、かつ/または以下の式によって表わされてもよい:
*-NH-(CH2)2-O-(CH2)2-O-CH2-CO-*(化学式A2)。
【0043】
一部の実施形態において、本発明の誘導体の各リンカーは、独立して、第二のリンカー要素、好ましくはGluジラジカル(化学式B1など)をさらに含んでもよい:
【化2】
(化学式B1)
式中、Gluジラジカルをp回含んでもよく、ここでpは1~3の範囲の整数である。化学式 B1はまた、本明細書では別のリンカー要素への、またはリジンのイプシロンアミノ基への結合のために使用されるアミノ酸グルタミン酸のガンマカルボキシ基であることから、ガンマ-Glu、または簡潔にgGluとも呼ばれる場合がある。上記に説明するように、他のリンカー要素は、例えば、別のGlu残基、またはOEG分子であってもよい。次にGluのアミノ基は、延長部分のカルボキシ基、または存在する場合は、例えば、OEG分子のカルボキシ基と、または存在する場合は、例えば、別のGluのガンマカルボキシ基と、アミド結合を形成する。
【0044】
上記に説明するように、GLP-1誘導体は、二重アシル化、すなわち、二つのアルブミン結合部分が構成ペプチド(例えば、GLP-1ペプチド)に共有結合してもよい。
【0045】
一部の実施形態において、二つのアルブミン結合部分(すなわち、側鎖全体)は類似しており、実質的に同一であることが好ましく、または同一であることが最も好ましい。
【0046】
一部の実施形態において、二つの延長部分は類似しており、実質的に同一であることが好ましく、または同一であることが最も好ましい。
【0047】
一部の実施形態において、二つのリンカーは類似しており、実質的に同一であることが好ましく、または同一であることが最も好ましい。
【0048】
「実質的に同一」という用語は、一つ以上の塩、エステル、および/もしくはアミドの形成、好ましくは一つ以上の塩、メチルエステル、および単純なアミドの形成、より好ましくは二つ以下の塩、メチルエステル、および/もしくは単純なアミドの形成、なおより好ましくは一つ以下の塩、メチルエステル、および/もしくは単純なアミドの形成、または最も好ましくは一つ以下の塩の形成に起因する同一性からの差異を含む。
【0049】
アルブミン結合部分、延長部分、およびリンカーなどの化学化合物の文脈では、類似性および/または同一性は、当該技術分野において公知の任意の適切なコンピュータプログラムおよび/またはアルゴリズムを使用して決定されてもよい。
【0050】
例えば、二つの延長部分、二つのリンカー、および/または二つの側鎖全体の類似性は、分子フィンガープリントを使用して適切に決定されうる。フィンガープリントは、化学構造を表す数学的方法である(例えば、Chemoinformatics:A textbook,Johann Gasteiger and Thomas Engel(Eds),Wiley-VCH Verlag,2003を参照のこと)。
【0051】
適切なフィンガープリントの例としては、UNITYフィンガープリント、MDLフィンガープリント、および/またはECFP_6フィンガープリントなどのECFPフィンガープリントが挙げられる(ECFPは「拡張接続性フィンガープリント」の略称である)が、これらに限定されない。
【0052】
特定の実施形態において、二つの延長部分、二つのリンカー、および/または二つの側鎖全体は、a)ECFP_6拡張接続性フィンガープリント、b)UNITY拡張接続性フィンガープリント、および/またはc)MDL拡張接続性フィンガープリントとして表される。a)、b)、またはc)が使用されるかどうかに関係なく、二つのフィンガープリントの類似性を計算するためにタニモト係数を使用することが好ましい。特定の実施形態において、a)、b)、またはc)が使用されるかどうかに関係なく、二つの延長部分、二つのリンカー、および/または二つの側鎖全体はそれぞれ、少なくとも0.5(50%)の類似性を有し、少なくとも0.6(60%)の類似性を有することが好ましく、少なくとも0.7(70%)または少なくとも0.8(80%)の類似性を有することがより好ましく、少なくとも0.9(90%)の類似性を有することがなおより好ましく、または少なくとも0.99(99%)(1.0(100%)の類似性など)の類似性を有することが最も好ましい。
【0053】
UNITYフィンガープリントは、プログラムSYBYL(Tripos(1699 South Hanley Road,St. Louis,MO 63144-2319 USA)から入手可)を使用して計算されうる。ECFP_6フィンガープリントおよびMDLフィンガープリントは、プログラムPipeline Pilot(Accelrys Inc.(10188 Telesis Court,Suite 100,San Diego,CA 92121,USA)から入手可)を使用して計算されうる。
【0054】
詳しくは、例えば、J.Chem.Inf.Model.2008,48,542-549;J.Chem.Inf.Comput.Sci.2004,44,170-178;J.Med.Chem.2004,47,2743-2749;J.Chem.Inf.Model.2010,50,742-754、およびSciTegic Pipeline Pilot Chemistry Collection:Basic Chemistry User Guide,March 2008,SciTegic Pipeline Pilot Data Modeling Collection,2008(両方とも米国サンディエゴのAccelrys Software Inc.から提供されている)、および案内(http://www.tripos.com/tripos_resources/fileroot/pdfs/Unity_111408.pdfおよびhttp://www.tripos.com/data/SYBYL/SYBYL_072505.pdf)を参照のこと。
【0055】
類似性の計算例を以下に挿入する。この例で既知のGLP-1誘導体の既知の側鎖全体をそのメチルエステルと比較する:
【化3】
【0056】
a)ECFP_6フィンガープリントを使用する場合の類似性は0.798、b)UNITYフィンガープリントを使用する場合の類似性は0.957、そしてMDLフィンガープリントを使用する場合の類似性は0.905である。
【0057】
二つの同一の側鎖(アルブミン結合部分)の場合、誘導体は対称的に指定されうる。
【0058】
特定の実施形態において、類似性係数は、少なくとも0.80であり、少なくとも0.85であることが好ましく、少なくとも0.90であることがより好ましく、少なくとも0.95であることがなおより好ましく、または少なくとも0.99であることが最も好ましい。
【0059】
一部の実施形態において、GLP-1誘導体はGLP-1ペプチドを含み、GLP-1ペプチドは、i)GLP-1(7~37)(配列番号1)の位置26に対応する位置での第一のK残基、およびGLP-1(7~37)の位置37に対応する第二のK残基、およびii)GLP-1(7~37)(配列番号1)の位置27に対応する位置での第一のK残基、およびGLP-1(7~37)の位置Tに対応する位置での第二のK残基から成る群から選択される第一のK残基および第二のK残基を含み、式中、Tは7~37の範囲の整数であり、第一のK残基は指定されたK
Fであり、第二のK残基は指定されたK
Tであり、
GLP-1ペプチドは、GLP-1(7~37)と比較して最大で10個のアミノ酸変化を含み、
GLP-1誘導体は、それぞれ第一のリンカーおよび第二のリンカーを介してそれぞれK
FおよびK
Tへと取り付けられた第一および第二の延長部分を含み、
式中、第一の延長部分および第二の延長部分は化学式C1および化学式C2:
化学式C1: HOOC-(CH
2)
x-CO-*
化学式C2: HOOC-C
6H
4-O-(CH
2)
y-CO-*から選択され、
式中、xは6~16の範囲の整数であり、yは3~17の範囲の整数であり、第一のリンカーおよび第二のリンカーは化学式D5を含み、
【化4】
化学式D5:
式中、kは1~5の範囲の整数であり、またnは1~5の範囲の整数であり、またはその薬学的に許容可能な塩、アミド、またはエステルである。一部の実施形態において、GLP-1誘導体はGLP-1ペプチドを含み、GLP-1ペプチドは、1)GLP-1(7~37)(配列番号1)の位置26に対応する位置での第一のK残基およびGLP-1(7~37)の位置37に対応する位置での第二のK残基、ならびにii)GLP-1(7~37)(配列番号1)の位置27に対応する位置での第一のK残基、およびGLP-1(7~37)の位置Tに対応する位置での第二のK残基から成る群から選択される、第一のK残基および第二のK残基を含み、式中、Tは7~37の範囲の整数であり、式中、第一のK残基は指定されたK
Fであり、また第二のK残基は指定されたK
Tであり、GLP-1ペプチドはGLP-1(7~37)と比較して最大で10個のアミノ酸変化を含み、GLP-1誘導体は、それぞれ第一のリンカーおよび第二のリンカーを介して、それぞれK
FおよびK
Tに取り付けられた第一および第二の延長部分を含み、第一の延長部分および第二の延長部分は化学式1および化学式 2:
化学式C1: HOOC-(CH
2)
x-CO-*
化学式C2: HOOC-C
6H
4-O-(CH
2)
y-CO-*から選択され、
式中、xは6~16の範囲の整数であり、yは3~17の範囲の整数であり、第一のリンカーおよび第二のリンカーは化学式 D5を含み、
【化5】
化学式 D5:
式中、kは1~5の範囲の整数であり、nは1~5の範囲の整数であるか、またはその薬学的に許容可能な塩、アミド、またはエステルである。
【0060】
一部の実施形態において、(KF,KT)は、GLP-1(7~37)(配列番号1)の位置(26,37)に対応する位置である。一部の実施形態において、(KF,KT)は、GLP-1(7~37)(配列番号1)の位置(27,36)に対応する位置である。
【0061】
一部の実施形態において、GLP-1誘導体は延長部分の化学式C2を含む。一部の実施形態において、化学式C2は化学式C2aによって表される。
【化6】
化学式 C2a:
一部の実施形態において、化学式C2または化学式C2aのyは奇数である。一部の実施形態において、化学式2または化学式2aのyは、9~11の範囲の整数(9、10、または11など)である。一部の実施形態において、化学式C2は化学式C2b、または化学式C2c:
【化7】
化学式C2b:
【化8】
または化学式C2c:
によって表される。一部の実施形態において、化学式D5は第一のリンカー要素である。一部の実施形態において、化学式5は第一のリンカー要素である。一部の実施形態において、化学式D5のkは1である。一部の実施形態において、化学式D5のnは1である。一部の実施形態において、化学式D5はm回含まれ、mは1~10の範囲の整数である。一部の実施形態において、mは2である。mが1ではない場合、化学式D5の要素は、アミド結合を介して相互接続されうる。
【0062】
一部の実施形態において、GLP-1誘導体は第二のリンカー要素をさらに含む。一部の実施形態において、第二のリンカー要素は、Gluジラジカルである。一部の実施形態において、第二のリンカー要素は、化学式E6、および/または化学式E7:
【化9】
化学式 E6:、
【化10】
および/または化学式 E7:
から選択される。一部の実施形態において、第二のリンカー要素は化学式E6である。一部の実施形態において、Gluジラジカルはp回含まれ、1~2の範囲の整数(pは1または2など)である。一部の実施形態において、第二のリンカー要素は、L-GluのラジカルであるGluジラジカルを含む。一部の実施形態において、第二のリンカー要素は一つ以上のGluジラジカルを含み、一つ以上の化学式D5要素はアミド結合を介して相互接続されている。一部の実施形態において、リンカーはm回の化学式D5およびp回のGluジラジカルから成る。一部の実施形態において、(m,p)は(2,2)または(2,1)である。一部の実施形態において、(m,p)は(2,1)である。一部の実施形態において、mの化学式D5要素およびpのGluジラジカルは、アミド結合を介して相互接続されている。
【0063】
一部の実施形態において、リンカーおよび延長部分は、アミド結合を介して相互接続されている。一部の実施形態において、リンカーおよびGLP-1ペプチドは、アミド結合を介して相互接続されている。一部の実施形態において、リンカーは、第一のK残基または第二のK残基のイプシロンアミノ基に結合している。
【0064】
一部の実施形態において、GLP-1誘導体はセマグルチドである。セマグルチドは、国際特許公開公報第2006/097537号で、例えば、実施例4に開示されるように調製されてもよい。(セマグルチドは、N-ε26-[2-(2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1-(7~37)ペプチドと呼ばれることがある。別の方法として、セマグルチドは、N6.26-{18-[N-(17-カルボキシヘプタデカノイル)-L-γ-グルタミル]-10-オキソ-3,6,12,15-テトラオキサ-9,18-ジアザオクタデカノイル}-[8-(2-アミノ-2-プロパン酸),34-L-アルギニン]ヒトグルカゴン様ペプチド1(7~37)(WHO Drug Information Vol.24,No.1,2010)と呼ばれることもある。
【0065】
一部の実施形態において、GLP-1誘導体は、N
ε26{2-[2-(2-{2-[2-(2-{(S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブチリルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル}、N
ε37-{2-[2-(2-{2-[2-(2-{(S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブチリルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル}-[Aib
8,Arg
34,Lys
37[GLP-1(7~37)-ペプチドである化合物Aであり、以下の構造を有する:
【化11】
(そのアミノ酸配列、すなわち、[Aib
8,Arg
34,Lys
37]GLP-1(7~37)-ペプチドの配列は、配列番号3に示されているものである)。化合物Aは、国際特許公開公報第2011/080103号で、例えば、実施例2に開示されるように調製されてもよい。
【0066】
一部の実施形態において、GLP-1誘導体は、N
ε27-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル、N
ε36-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシ-フェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Glu22,Arg26,Lys27,Glu30,Arg34,Lys36]-GLP-1-(7~37)-ペプチジル-Glu-Glyである化合物Bであり、次の構造を有する:
【化12】
(このアミノ酸配列は配列番号4に示されているものである)。化合物Bは、国際特許公開公報第2012/140117号で、例えば、実施例31に開示されるように調製されてもよい。化合物Bは以下のように例示されてもよい。
【化13】
(このアミノ酸配列は配列番号4に示されているものである)。
【0067】
一部の実施形態において、GLP-1作動薬は、位置36および37の各々において、リジンのイプシロンアミノ基上の側鎖でアシル化されたGLP-1誘導体(例えば、GLP-1ペプチドの誘導体)であり、
各側鎖は、以下の式の延長を個別に含み、
化学式1: HOOC-C6H4-O-(CH2)y-CO-*、
式中、yは、位置36および37でリジンのイプシロンアミノ基に取り付けられた8~11の範囲の整数であり、また延長は以下を含むリンカーを介してイプシロンアミノ基に取り付けられ、
i)式のgGlu:
化学式3: *-NH-CH(COOH)-(CH2)2-CO-*、
および
ii)式の部分:
化学式5: *NH-(CH2)2-[O-(CH2)2]k-O-[CH2]n-CO-*、
式中、kは1~5の範囲の整数であり、nは1~5の範囲の整数であり、
またはその薬学的に許容可能な塩、アミド、またはエステルである。
【0068】
一部の実施形態において、本発明のGLP-1誘導体では、リンカー、延長、およびペプチドは、*においてアミド結合を介して接続されている。一部の実施形態において、リンカーのgGluは、*においてアミド結合を介して延長に接続されている。一部の実施形態において、リンカーのgGluは、*においてアミド結合を介して化学式5の部分に接続されている。一部の実施形態において、リンカーの化学式5の部分は、*においてアミド結合を介してペプチドに接続されている。一部の実施形態において、化学式5によって定義される式の部分は、「OEG」、すなわち、n=k=1である。一部の実施形態において、リンカーは、*において延長に接続され、かつ**においてペプチドに接続された、「*-gGlu-OEG-OEG-**」である。一部の実施形態において、延長はy=10を有し、かつこれはパラ構成である。一部の実施形態において、延長はy=9であり、かつこれはパラ構成である。一部の実施形態において、延長はy=9またはy=10であり、かつこれはメタ構成である。
【0069】
一部の実施形態において、GLP-1誘導体は式II(配列番号7)を含む:
式II:Xaa7-Xaa8-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Xaa16-Ser-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Glu-Xaa22-Xaa23-Ala-Xaa25-Xaa26-Xaa27-Phe-Ile-Xaa30-Xaa31-Leu-Xaa33-Xaa34-Xaa35-Lys36-Lys37(配列番号5)、式中、
Xaa7は、L-ヒスチジン、(S)-2-ヒドロキシ-3-(1H-イミダゾール-4-イル)-プロピオン酸、D-ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジン(desH)、Nα-アセチル-ヒスチジン、またはNα-ホルミル-ヒスチジンであり、
Xaa8は、Ala、Ser、Aib、(1-アミノシクロプロピル)カルボン酸、または(1-アミノシクロブチル)カルボン酸であり、
Xaa16はValまたはLeuであり、
Xaa18はSerまたはArgであり、
Xaa19はTyrまたはGlnであり、
Xaa20はLeuまたはMetであり、
Xaa22はGlyまたはGluであり、
Xaa23はGln、Glu、またはArgであり、
Xaa25はAlaまたはValであり、
Xaa26はArgまたはLysであり、
Xaa27はGluまたはLeuであり、
Xaa30はAla、またはGluであり、
Xaa31はTrpまたはHisであり、
Xaa33はValまたはArgであり、
Xaa34はArg、Lys、His、Asn、またはGlnであり、
Xaa35はGlyまたはAibである。
【0070】
一部の実施形態において、GLP-1誘導体は式II(配列番号7)のGLP-1誘導体であり、Xaa7はHisであり、Xaa8はAibであり、Xaa16はValであり、Xaa18はSerであり、Xaa19はTyrであり、Xaa20はLeuであり、Xaa22はGlyまたはGluであり、Xaa23はGlnであり、Xaa25はAlaであり、Xaa26はArgであり、Xaa27はGluであり、Xaa30はAlaまたはGluであり、Xaa31はTrpであり、Xaa33はValであり、Xaa34はArgまたはGlnであり、Xaa35はGlyである。
【0071】
一部の実施形態において、GLP-1誘導体は式II(配列番号7)のGLP-1誘導体であり、Xaa7はHisであり、Xaa8はAibであり、Xaa16はValであり、Xaa18はSerであり、Xaa19はTyrであり、Xaa20はLeuであり、Xaa22はGluであり、Xaa23はGlnであり、Xaa25はAlaであり、Xaa26はArgであり、Xaa27はGluであり、Xaa30はAlaであり、Xaa31はTrpであり、Xaa33はValであり、Xaa34はArgであり、Xaa35はGlyである。
【0072】
一部の実施形態において、GLP-1誘導体は、N{イプシロン-36}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]、N{イプシロン-37}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys36,Lys37]-GLP-1-(7~37)-ペプチドである化合物Cであり、以下の構造を有する:
【化14】
(このアミノ酸配列は配列番号6に示されているものである)。化合物Cは、国際特許公開公報第2015/155151号の実施例1に開示されるように調製されてもよい。
【0073】
一部の実施形態において、GLP-1誘導体は、N{イプシロン-36}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]、N{イプシロン-37}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[11-(4-カルボキシフェノキシ)ウンデカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Arg26,Arg34,Lys36,Lys37]-GLP-1-(7~37)-ペプチドである化合物Dであり、以下の構造を有する:
【化15】
(このアミノ酸配列は配列番号7に示されているものである)。化合物Dは、国際特許公開公報第2015/155151号の実施例2に開示されるように調製されてもよい。一部の実施形態において、化合物Cおよび化合物Dは、当業者によって公知のその他の方法に従って調製されてもよい。
【0074】
一部の実施形態において、GLP-1誘導体は、N{イプシロン-36}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(3-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]、N{イプシロン-37}-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(3-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys36,Lys37]-GLP-1-(7~37)-ペプチドである化合物Eである。
【化16】
(このアミノ酸配列は配列番号8に示されているものである)。化合物Eは、国際特許公開公報第2012/140117号または同第2015/155151号の実施例35に開示されるように調製されてもよい。
【0075】
一部の実施形態において、GLP-1誘導体は、セマグルチド、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、および化合物Eから成る群から選択される。一部の実施形態において、GLP-1誘導体は、セマグルチド、化合物A、化合物B、および化合物Eから成る群から選択される。
【0076】
GLP-1誘導体は、同じ分子式および結合原子の配列を有する異なる立体異性の形態で存在してもよいが、空間内におけるそれらの原子の三次元方位についてのみ異なる。本発明の例証された誘導体の立体異性は、標準的な命名法を使用して、実験セクションにおいて、名前ならびに構造において示されている。別段の記載のない限り、本発明は特許請求される誘導体のすべての立体異性の形態に関する。
【0077】
GLP-1誘導体の血漿中濃度は、任意の適切な方法を使用して決定されてもよい。例えば、LC-MS(液体クロマトグラフィー質量分光法)を使用してもよく、またはRIA(放射免疫測定法)、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、およびLOCI(発光酸素チャネリング免疫測定法)などの免疫測定法を使用することができる。適切なRIAおよびELISAアッセイに対する一般的なプロトコルは、例えば、国際特許公開公報第2009/030738号(p.116~118)に記載されている。
【0078】
一部の実施形態において、GLP-1ペプチドまたはその誘導体は、その塩、エステル、またはアミドの形態である。
【0079】
本発明で使用するためのGLP-1ペプチドまたはその誘導体の例の非限定的なリストは、国際特許公開公報第2006/097537号、同第2011/080103号、同第2012/140117号、および/またはPCT/EP2015/057442号に記載されている。本発明のGLP-1ペプチドの調製方法は、例えば、国際特許公開公報第2006/097537号、同第2011/080103号、同第2012/140117号、またはPCT/EP2015/057442号に記載されている可能性がある。このようなGLP-1ペプチドの調製方法だけでなく、このようなGLP-1ペプチドの物理的安定性および化学的安定性、ならびに効力およびT1/2などの特徴付けのためのアッセイは、国際特許公開公報第2006/097537号、同第2011/080103号、同第2012/140117号、およびPCT/EP2015/057442号に提供されている。化合物Eは、例えば、国際特許公開公報第2012/140117号またはPCT/EP2015/057442号の実施例2に開示されるように調製されてもよい。
【0080】
一部の実施形態において、GLP-1ペプチドまたはその誘導体は、ヒトにおいて少なくとも60時間の血漿半減期を有する。一部の実施形態において、GLP-1ペプチドまたはその誘導体は、ヒトにおいて少なくとも60時間(少なくとも100時間または少なくとも160時間など)の血漿半減期を有する。一部の実施形態において、GLP-1ペプチドまたはその誘導体は、ヒトにおいて少なくとも1日、少なくとも36時間、または少なくとも2日間の血漿半減期を有する。
【0081】
SGLT2阻害剤
一部の実施形態において、本発明の組成物はSGLT2阻害剤を含む。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤はSGLT1阻害剤でもある。SGLT2阻害剤およびSGLT1阻害剤は、ナトリウムグルコース結合輸送体を阻害する能力を有する化合物である。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤はグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体である。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤は、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、ルセオグリフロジン、ベキサグリフロジン、およびレモグリフロジンから成る群から選択される。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤はダパグリフロジンである。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤はエンパグリフロジンである。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤はカナグリフロジンである。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤はエルツグリフロジンである。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤はソタグリフロジンである。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤はイプラグリフロジンである。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤はトホグリフロジンである。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤はルセオグリフロジンである。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤はベキサグリフロジンである。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤はレモグリフロジンである。SGLT2阻害剤は、例えば、国際特許公開公報第2006/120208号、同第2007/031548号、または同第2008/002824号に示されるように、当該技術分野で公知の方法に従って調製されてもよい。
【0082】
本明細書で使用される場合、「SGLT2阻害剤」という用語は、ナトリウム-グルコース輸送体2(SGLT2)(ヒトSGLT2など)に対する阻害効果を提供する化合物に関する。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤のIC50として測定されるヒトSGLT2に対する阻害効果は、1000nM未満(100nM未満または50nM未満など)である。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤のIC50値は、少なくとも0.01nM(少なくとも0.1nMなど)である。ヒトSGLT2に対する阻害効果を決定する方法は、当該技術分野において公知である(例えば、国際特許公開公報第2007/093610号の23~24ページ)。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤は、その薬学的に許容可能な塩、水和物、および/または溶媒和物の形態である。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤は、非晶質形態である。一部の実施形態において、SGLT2阻害剤は、結晶形態、例えば、その薬学的に許容可能な塩、水和物、および/または溶媒和物の形態である。
【0083】
ダパグリフロジン
一部の実施形態において、本発明の組成物は、SGLT2阻害剤ダパグリフロジンを含む。一部の実施形態において、ダパグリフロジンの構造は、式(II)
【化17】
(II)に示される通り、またはその立体異性体である。一部の実施形態において、ダパグリフロジンは、その薬学的に許容可能な塩、エステル、または溶媒和物の形態である。エステルは、ダパグリフロジンのプロドラッグエステル(インビボ切断可能なエステルなど)であってもよい。薬学的に許容可能なエステルは、ヒトまたは動物の体内で切断されて、親酸(例えば、前記エステルはメトキシメチル)またはヒドロキシ基(例えば、前記エステルはアセチルエステル)を生成してもよい。溶媒和物は、ダパグリフロジンプロピレングリコール溶媒和物(ダパグリフロジンプロピレングリコール(1:1)など)を含むかまたはそれらから成ってもよい。一部の実施形態において、ダパグリフロジンは、そのプロピレングリコール溶媒和物水和物(1:1:1)の形態である。一部の実施形態において、プロピレングリコールは、(S)形態、(R)形態、またはその混合物である。一部の実施形態において、プロピレングリコールは、(S)形態である。一部の実施形態において、ダパグリフロジンは、0.5~200mg/日の用量(3~20mg/日、5mg/日、または10mg/日など)で投与される。
【0084】
エンパグリフロジン
一部の実施形態において、本発明の組成物は、SGLT2阻害剤エンパグリフロジンを含む。一部の実施形態においてエンパグリフロジンの構造は、式(III)
【化18】
(III)に示される通り、またはその立体異性体である。一部の実施形態において、エンパグリフロジンは、その薬学的に許容可能な塩、エステル、または溶媒和物の形態である。エステルは、エンパグリフロジンのプロドラッグエステル(インビボ切断可能なエステルなど)であってもよい。薬学的に許容可能なエステルは、ヒトまたは動物の体内で切断されて、親酸(例えば、前記エステルはメトキシメチル)またはヒドロキシ基(例えば、前記エステルはアセチルエステル)を生成してもよい。一部の実施形態において、組成物は、0.5~200mg(5~50mgなど)の量のエンパグリフロジンを含む。一部の実施形態において、組成物は、10mgまたは25mgの量でエンパグリフロジンを含む。一部の実施形態において、エンパグリフロジンは、0.5~200mg/日(5~50mg/日など)の用量で投与される。一部の実施形態において、エンパグリフロジンは、10mg/日または25mg/日の用量で投与される。
【0085】
吸収促進剤
本発明の方法または使用は、促進剤を含んでもよい。一部の実施形態において、促進剤は水溶性である。一部の実施形態において、「促進剤」という用語は、経口投与後の組成物のGLP-1ペプチドのバイオアベイラビリティを増加させる化合物を指す。従って、一部の実施形態において、促進剤はバイオアベイラビリティ促進剤である。一部の実施形態において、促進剤の重量割合は、組成物の総重量の少なくとも60%(w/w)(少なくとも70%(w/w)または少なくとも75%(w/w)など)である。
【0086】
一部の実施形態において、促進剤は、中鎖脂肪酸またはその塩であり、また約4~約20個の炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態において、促進剤は、カプリン酸の塩(カプリン酸ナトリウムなど)である。一部の実施形態において、カプリン酸の塩(例えば、カプリン酸ナトリウム)などの前記中鎖脂肪酸の重量割合は、組成物の総重量の少なくとも60%(w/w)(少なくとも70%(w/w)または少なくとも75%(w/w)など)である。一部の実施形態において、組成物中のカプリン酸の塩(例えば、カプリン酸ナトリウム)などの前記中鎖脂肪酸の量は、一投薬単位内に少なくとも2.0mmol(少なくとも2.5mmolまたは少なくとも3.5mmolなど)である。一部の実施形態において、組成物中のカプリン酸の塩(カプリン酸ナトリウムなど)の量は、少なくとも300mg、少なくとも400mg、または少なくとも500mgである。
【0087】
一部の実施形態において、促進剤は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩である。一部の実施形態において、促進剤は吸収促進剤である。N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸塩の構造式を式(I)に示す。
【化19】
(I)
【0088】
一部の実施形態において、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、カプリル酸の形態および/またはカプリル酸塩の形態である。一部の実施形態において、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、一つの一価陽イオン、二つの一価陽イオン、または一つの二価陽イオンを含む。一部の実施形態において、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸のナトリウム塩、カリウム塩、およびカルシウム塩から成る群から選択される。N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸塩の塩は、例えば、国際特許公開公報第96/030036号、同第00/046182号、同第01/092206号、または同第2008/028859号に記載される方法を使用して調製されてもよい。N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、結晶性であってもよく、かつ/または非晶質であってもよい。一部の実施形態において、促進剤は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩の無水物、一水和物、二水和物、三水和物、溶媒和物、または水和物の3分の1、ならびにそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態において、促進剤は、国際特許公開公報第2007/121318号に記載されるように、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩である。一部の実施形態において、促進剤は、8-(サリチロイルアミノ)オクタン酸ナトリウムとしても知られる、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸ナトリウム(本明細書では「SNAC」と呼ばれる)である。一部の実施形態において、SNACなどのN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸(SNACなど)の塩の重量割合は、組成物の総重量の少なくとも60%(w/w)(少なくとも70%(w/w)または少なくとも75%(w/w)など)である。一部の実施形態において、SNACなどのN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸(SNACなど)の塩の重量割合は、組成物の総重量の50~90%(w/w)である。一部の実施形態において、組成物中のN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩の量は、0.2~5mmol(0.6~3.5mmolなど)の範囲である。一部の実施形態において、組成物中のN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩の量は、少なくとも0.6mmolである。一部の実施形態において、組成物中のSNACの量は、20~1000mg(50~800mgまたは100~600mgなど)の範囲内である。一部の実施形態において、SNACの量は、100~500mg(200~400mgまたは300mgなど)である。一部の実施形態において、組成物中のGLP-1ペプチドと促進剤のモル比は、10未満(5未満または1未満など)である。
【0089】
固形組成物
本発明の方法または使用は、GLP-1ペプチドおよび任意選択で促進剤を含む組成物を含む。一部の実施形態において、組成物は固形剤形の形態である。経口投与用の固形剤形は、カプセル、錠剤、粉末、および/または顆粒から成る群から選択してもよい。一部の実施形態において、組成物は錠剤の形態である。一部の実施形態において、組成物はカプセルの形態である。一部の実施形態において、組成物は小袋の形態である。一部の実施形態において、組成物は、乾式造粒または湿式造粒によって製造された顆粒を含む。一部の実施形態において、組成物は、ローラー圧縮によって製造された顆粒を含む。一部の実施形態において、ローラー圧縮プロセスからの成形物は顆粒へと粉砕される。一部の実施形態において、「造粒」という用語は、一つ以上の顆粒を指す。一部の実施形態において、「顆粒」という用語は、大きな粒子へと集められた粒子を指す。
【0090】
一部の実施形態において、本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は一つの投与単位を指す。
【0091】
一部の実施形態において、組成物または顆粒は、一つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む。本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、活性治療的成分(当該技術分野では原薬または活性医薬品成分とも呼ばれる)以外の任意の構成要素を広義に指す。賦形剤は不活性物質であってもよく、これはそれ自体は実質的にいかなる治療的効果および/または予防的効果も有しないという意味で不活性である。賦形剤は、例えば、促進剤、吸収促進剤、担体、充填剤(希釈剤としても知られる)、結合剤、潤滑剤、滑剤、崩壊剤、結晶化遅延剤、酸性化剤、アルカリ化剤、保存剤、抗酸化剤、緩衝剤、キレート剤、錯化剤、界面活性剤、乳化および/もしくは可溶化剤、甘味剤、湿潤剤、安定剤、着色剤、風味剤として、様々な役目を果たし、かつ/または活性物質の投与および/または吸収を改善するように機能する場合がある。当業者であれば、日常的な実験により、かつ不当な負担なく、経口固形剤形の特定の所望の特性に関して前述の賦形剤のうちの一つ以上を選択しうる。使用される各賦形剤の量は、当該技術分野の従来の範囲内で変化しうる。経口剤形を製剤するために使用してもよい技法および賦形剤については、Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th edition,Rowe et al.,Eds.,American Pharmaceuticals Association and the Pharmaceutical Press,publications department of the Royal Pharmaceutical Society of Great Britain(2009)、およびRemington:the Science and Practice of Pharmacy,21th edition,Gennaro,Ed.,Lippincott Williams & Wilkins(2005)に記載されている。
【0092】
一部の実施形態において、組成物または顆粒は、ラクトース(例えば、噴霧乾燥ラクトース、α-ラクトース、β-ラクトース、Tabletose(登録商標)、様々なグレードのPharmatose(登録商標)、Microtose、(登録商標)またはFast-FloC(登録商標))、微結晶性セルロース(様々なグレードのAvicel(登録商標)、Elcema(登録商標)、Vivacel(登録商標)、Ming Tai(登録商標)、またはSolka-Floc(登録商標))、その他のセルロース誘導体、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デキストリン、デキストラン、マルトデキストリン、デキストロース、フルクトース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、スクロース、糖、デンプンもしくは加工デンプン(ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、および米デンプン)、リン酸カルシウム(例えば、塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二カルシウム水和物)、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、またはアルギン酸ナトリウムなどの充填剤を含む。一部の実施形態において、充填剤は、Avicel PH 101などの微結晶性セルロースである。
【0093】
一部の実施形態において、組成物または顆粒は、ラクトース(例えば、噴霧乾燥ラクトース、α-ラクトース、β-ラクトース、Tabletose(登録商標)、様々なグレードのPharmatose(登録商標)、Microtose(登録商標)、またはFast-FloC(登録商標))、微結晶性セルロース(様々なグレードのAvicel(登録商標)、Elcema(登録商標)、Vivacel(登録商標)、Ming Tai(登録商標)、またはSolka-Floc(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、L-ヒドロキシプロピルメチルセルロース(低置換)、ヒプロメロース(HPMC)(例えば、Shin-Etsu,LtdのMethocel E、F、およびK、Metolose SH(例えば、Methocel EおよびMetolose 60 SHの4,000cpsグレード、Methocel FおよびMetolose 65 SHの4,000cpsグレード、Methocel Kの4,000cps、15,000cps、および100,000cpsグレード、ならびにMetolose 90 SHの4,000、15,000、39,000、および100,000グレードなど)、メチルセルロースポリマー(例えば、Methocel A、Methocel A4C、Methocel A15C、Methocel A4M)、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、その他のセルロース誘導体、スクロース、デキストリン、マルトデキストリン、デンプンもしくは加工デンプン(ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、および米デンプンを含む)、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、アカシア、アルギン酸ナトリウム、寒天、カラギーナン、ゼラチン、グアーガム、ペクチン、PEG、またはポビドンなどの結合剤を含む。一部の実施形態において、結合剤は、ポビドンK90などのポビドンである。
【0094】
一部の実施形態において、組成物または顆粒は、アルギン酸、アルギン酸塩、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、その他のセルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、アルファー化デンプン、またはカルボキシメチルデンプン(例えば、Primogel(登録商標)およびExplotab(登録商標))などの崩壊剤を含む。
【0095】
一部の実施形態において、組成物または顆粒は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、もしくはその他の金属ステアリン酸塩、タルク、ワックス、グリセリド、軽油、ベヘン酸グリセリル、水添植物油、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、アルキル硫酸塩、または安息香酸ナトリウムなどの潤滑剤を含む。一部の実施形態において、組成物または顆粒は、ケイ酸マグネシウム、タルク、またはコロイダルシリカなどの潤滑剤を含む。一部の実施形態において、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0096】
一部の実施形態において、組成物または顆粒は、ポビドンなどの結晶化遅延剤、可溶化剤(界面活性剤としても知られる)(陰イオン界面活性剤(例えば、プルロニックまたはポビドン)、陽イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、および/または両性イオン界面活性剤など)、染料および顔料を含む着色剤(べんがらまたは鉄黄、二酸化チタン、および/またはタルク)、および/またはpH調整剤(クエン酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸ナトリウム、第二リン酸カルシウムなど)、および/または二塩基性リン酸ナトリウムから選択される一つ以上の賦形剤を含む。
【0097】
一部の実施形態において、組成物は、少なくとも60%(w/w)の促進剤、10%(w/w)未満の結合剤、5~40%(w/w)の充填剤、および10%(w/w)未満の潤滑剤を含む。一部の実施形態において、促進剤は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩であり、また組成物は、GLP-1ペプチドを含むがN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は含まない第一の顆粒、およびN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩を含むがGLP-1ペプチドは含まない第二の顆粒を含む。
【0098】
組成物は、当該技術分野で周知の方法によって調製されうる一つ以上の被覆を含んでもよい。
【0099】
製造
本発明において使用するための組成物は、当該技術分野で公知の通り調製されうる。一部の実施形態において、組成物は、錠剤へと圧縮される前に造粒化されてもよい。一部の実施形態において、顆粒は、ローラー圧縮などの乾式造粒によって製造される。一部の実施形態において、ローラー圧縮プロセスからの成形物は顆粒へと粉砕される。組成物は、一つ以上の粒内部および粒外部を含んでもよく、粒内部は造粒化され、また粒外部は造粒化後に添加される。第一の粒内部は、GLP-1ペプチドおよび一つ以上の賦形剤を含んでもよく、また第二の粒内部は促進剤および任意選択で一つ以上の賦形剤を含んでもよい。第一の粒内部は、GLP-1ペプチド、充填剤、および/または結合剤を含んでもよく、また第二の粒内部は、促進剤、潤滑剤、および/または充填剤を含んでもよい。一部の実施形態において、第一の粒内部は、GLP-1ペプチド、微結晶性セルロースおよび/またはポビドンを含み、また第二の粒内部は促進剤、ステアリン酸マグネシウム、および/または微結晶性セルロースを含む。粒外部は潤滑剤を含んでもよい。一部の実施形態において、粒外部は、ステアリン酸マグネシウムを含む。
【0100】
錠剤成形材料の乾燥ブレンドを調製するために、様々な構成要素の重量を測り、任意選択で砕塊してから組み合わせる。構成要素の混合は、均質なブレンドが得られるまで実行されてもよい。
【0101】
一部の実施形態において、組成物の少なくとも一部は、乾式造粒または湿式造粒される。顆粒は、例えば、薬学的活性剤および/または促進剤が賦形剤とともに圧縮されて比較的大きい成形物、例えばスラグまたはリボンを形成し、これをすりつぶすことによって粉砕し、そしてすりつぶした材料が、その後錠剤へと圧縮される錠剤成形材料の役割を果たすことによる乾式造粒技法によって、当業者に公知の様式で生成されてもよい。乾式造粒のための適切な装置としては、Gerteis MINI-PACTORなどのGerteis製のローラー圧縮装置が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、顆粒はローラー圧縮によって調製される。一部の実施形態において、ローラー圧縮プロセスからの成形物は顆粒へと粉砕される。別の方法として、顆粒は、水中に溶解された薬学的活性剤を促進剤の乾燥ブレンドおよび任意選択で一つ以上の賦形剤と混合し、その後顆粒を乾燥させることによって実施されうる湿式造粒によって得ることができる。
【0102】
錠剤成形材料を固形経口剤形(例えば、錠剤など)へと圧縮するために、錠剤成形プレスが使用されてもよい。錠剤成形プレスでは、錠剤成形材料は成形型のくぼみの中へと充填される(例えば、強制供給または重力供給)。次いで、錠剤成形材料は圧力を用いるパンチによって圧縮される。その後、得られた圧縮物、つまり錠剤は、錠剤成形プレスから排出される。上述の圧縮プロセスは、本明細書では、以降では「圧縮プロセス」と呼ばれる。適切な錠剤成形プレスとしては、ロータリー錠剤プレスおよび偏心錠剤成形プレスが挙げられるが、これらに限定されない。錠剤成形プレスの例としては、Fette 102i(Fette Gmbh)、Korsch XL100、Korsch PH 106ロータリー錠剤成形プレス(Korsch AG、ドイツ)、Korsch EK-O偏心錠剤成形プレス(Korsch AG、ドイツ)、およびManesty F-Press(Manesty Machining Ltd.、英国)が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、錠剤は、3~20kNまたは5~25kNの範囲の圧縮力を加えることによって調製される。
【0103】
機能的特徴
経口バイオアベイラビリティ
一部の実施形態において、本発明の固形医薬組成物は、GLP-1作動薬および/またはダパグリフロジンの改善された経口バイオアベイラビリティを提供する。一般的に、バイオアベイラビリティという用語は、変化せずに体循環に到達する原薬(GLP-1ペプチドまたはその誘導体など)の投与された用量の割合を指す。定義により、原薬が静脈内投与されるとき、そのバイオアベイラビリティは100%である。しかしながら、原薬がその他の経路(経口など)を介して投与される場合、そのバイオアベイラビリティは(分解および/または不完全な吸収ならびに初回通過代謝により)減少する。バイオアベイラビリティに関する知識は、原薬の静脈以外の投与経路での投与量を計算する時に重要である。経口投与および静脈内投与の両方の後に、血漿濃度対時間のプロットが行われる。絶対バイオアベイラビリティは、(AUC経口投与/投与量)を(AUC静脈内投与/投与量)で割って得られる。
【0104】
適応
本発明で使用するための組成物は、薬剤として使用するためのものである。一部の実施形態において、組成物は、糖尿病および/または肥満の治療または予防に使用するためのものである。
【0105】
当然のことながら、経口医薬製品(すなわち、薬剤)として使用するための組成物またはGLP-1ペプチドは、投与方法として記載されてもよく、または別の方法として、経口医薬製品の製造における組成物の使用として記載されてもよい。当然のことながら、本明細書に記載の投与方法は、別の方法としては経口医薬製品として使用するための組成物として、また別の方法としては経口医薬製品の製造における組成物の使用として記載されてもよい。本明細書に記載の投与方法は、別の方法として、経口医薬製品として使用するためのGLP-1ペプチドとして記載されてもよく、また別の方法としては経口医薬製品の製造におけるGLP-1ペプチドの使用として記載されてもよい。類似的に、本明細書に記載のGLP-1ペプチドの使用は、別の方法として経口医薬製品の製造におけるGLP-1ペプチドの投与または使用の方法として記載されてもよい。一部の実施形態において、「投与レジメン」および「投与方法」という用語は、本明細書では互換的に使用される。本明細書では、一部の実施形態において、「使用」という用語は使用するための組成物を含み、例えば「医薬品における使用」という用語は「医薬品に使用するための組成物」を含む。一部の実施形態において、本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、投与方法、例えば、経口投与の方法を含む。
【0106】
本発明の投与方法は、経口療法を含む。一部の実施形態において、方法は、糖尿病および/または肥満の治療または予防を含む。
【0107】
一部の実施形態において、方法または使用は以下を含む(例えば、本発明のGLP-1ペプチドは以下の医学的処置のために使用されてもよい):
(i)高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、1型糖尿病、非インスリン依存性糖尿病、MODY(若年発症成人型糖尿病)、妊娠糖尿病、および/またはHbA1cの減少などのすべての形態の糖尿病の予防および/または治療、
(ii)2型糖尿病の進行などの糖尿病疾患の進行の遅延または予防、耐糖能障害(IGT)からインスリンを必要とする2型糖尿病への進行の遅延、および/またはインスリンを必要としない2型糖尿病からインスリンを必要とする2型糖尿病への進行の遅延、
(iii)肥満などの摂食障害(例えば、食事量の減少、体重減少、食欲の抑制(満腹感を含む))の予防および/もしくは治療、むちゃ食い障害、神経性大食症、および/もしくは抗精神病薬もしくはステロイドの投与によって誘発された肥満、胃の運動の減少、ならびに/または胃内容排出の遅延の治療または予防。
【0108】
一部の実施形態において、適応は(i)である。一部の実施形態において、適応は(ii)である。なおさらなる特定の態様において、適応は(iii)である。一部の実施形態において、適応は2型糖尿病および/または肥満である。
【0109】
一部の実施形態において、方法または使用は、本明細書で定義される一つ以上の疾患または症状の予防、治療、低減、および/または誘発を含む。一部の実施形態において、適応は(i)および(iii)である。一部の実施形態において、適応は(ii)および(iii)である。一部の実施形態において、本発明は有効量のGLP-1ペプチドの投与を含む。一部の実施形態において、本発明は有効量のGLP-1ペプチドの投与に関する。
【0110】
一部の実施形態において、本明細書で使用される場合、数または間隔に関連して与えられる特定の値は、特定の値として、またはおよそ特定の値として理解されうる。一部の実施形態において、「約」という用語が数に関連して本明細書で使用される時、前記数±10%を指す。
【0111】
発明の実施形態
以下は、本発明の非限定的な実施形態である。
1.経口投与用固形組成物であって、
(i)GLP-1誘導体およびダパグリフロジン、または
(ii)SGLT2阻害剤と組み合わせたGLP-1誘導体およびNACの塩、を含む組成物。
2.前記SGLT2阻害剤がエンパグリフロジンである、実施形態1のいずれか一つに記載の組成物。
3.GLP-1誘導体およびダパグリフロジンを含む固形組成物。
4.前記組成物が経口投与用である、実施形態1~3のいずれか一つに記載の組成物。
5.GLP-1誘導体および第二の活性成分を含む経口投与用固形組成物であって、前記第二の活性成分がSGLT2受容体を介してグルコース再取込みを阻害し、かつ細胞単層を通した前記GLP-1誘導体の透過性を増加させる、組成物。
6.前記組成物が吸収促進剤をさらに含む、実施形態1~5のいずれか一つに記載の組成物。
7.前記吸収促進剤がSNACなどのNACの塩である、実施形態1~6のいずれか一つに記載の組成物。
8.前記GLP-1誘導体が、セマグルチド、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、および化合物Eから成る群から選択される、実施形態1~7のいずれか一つに記載の組成物。
9.ダパグリフロジンおよびSNACを含む固形組成物。
10.前記組成物がGLP-1ペプチドをさらに含む、実施形態1~9のいずれか一つに記載の組成物。
11.前記GLP-1ペプチドが、セマグルチド、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、および化合物Eから成る群から選択されるもののようなGLP-1誘導体である、実施形態10のいずれか一つに記載の組成物。
12.前記GLP-1ペプチドまたは前記GLP-1誘導体が12kDaを超えないサイズを有する、実施形態1~11のいずれか一つに記載の組成物。
13.前記GLP-1ペプチドまたは前記GLP-1誘導体が、ヒトGLP-1に対して10個以下のアミノ酸修飾を含む、実施形態1~12のいずれか一つに記載の組成物。
14.前記GLP-1ペプチドまたは前記GLP-1誘導体が、ヒトGLP-1に対して10個以下のアミノ酸置換を含む、実施形態1~13のいずれか一つに記載の組成物。
15.前記GLP-1ペプチドまたは前記GLP-1誘導体が、少なくとも60時間のヒト血漿半減期を有する、実施形態1~14のいずれか一つに記載の組成物。
16.前記GLP-1ペプチド、GLP-1誘導体、および/またはダパグリフロジンが、その薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくは溶媒和物の形態である、実施形態1~15のいずれか一つに記載の組成物。
17.前記GLP-1ペプチドまたは前記GLP-1誘導体が、その薬学的に許容可能な塩、もしくはエステルの形態である、実施形態1~16のいずれか一つに記載の組成物。
18.前記SGLT2阻害剤が、その薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくは溶媒和物の形態である、実施形態1~17のいずれか一つに記載の組成物。
19.前記ダパグリフロジンが、その薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくは溶媒和物の形態である、実施形態1~18のいずれか一つに記載の組成物。
20.前記ダパグリフロジンが、ダパグリフロジンプロピレングリコール溶媒和物の形態である、実施形態1~19のいずれか一つに記載の組成物。
21.前記ダパグリフロジンがダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(1:1:1)の形態である、実施形態1~20のいずれか一つに記載の組成物。
22.前記プロピレングリコールが、(R)または(S)立体異性体またはそれらの混合物の形態である、実施形態1~21のいずれか一つに記載の組成物。
23.前記組成物が一つ以上の追加的な薬学的に許容可能な賦形剤を含む、実施形態1~22のいずれか一つに記載の組成物。
24.前記組成物が錠剤、カプセル、または小袋の形態である、実施形態1~23のいずれか一つに記載の組成物。
25.前記組成物の投与量が10~1500mgまたは200~1000mgの範囲内である、実施形態1~24のいずれか一つに記載の組成物。
26.ダパグリフロジンの投与量が0.5~50mg/日である、実施形態1~25のいずれか一つに記載の組成物。
27.前記GLP-1ペプチドまたは前記GLP-1誘導体の投与量が、0.1~100mg/日(0.1~60mg/日など)である、実施形態1~26のいずれか一つに記載の組成物。
28.SNACなどの前記NACの塩の投与量が、20~800mg/日である、実施形態1~27のいずれか一つに記載の組成物。
29.前記組成物が毎日1回投与される、実施形態1~28のいずれか一つに記載の組成物。
30.前記GLP-1誘導体がセマグルチドである、実施形態1~29のいずれか一つに記載の組成物。
31.前記GLP-1誘導体が化合物Aである、実施形態1~30のいずれか一つに記載の組成物。
32.前記GLP-1誘導体が化合物Bである、実施形態1~31のいずれか一つに記載の組成物。
33.前記GLP-1誘導体が化合物Cである、実施形態1~32のいずれか一つに記載の組成物。
34.前記GLP-1誘導体が化合物Dである、実施形態1~33のいずれか一つに記載の組成物。
35.前記GLP-1誘導体が化合物Eである、実施形態1~34のいずれか一つに記載の組成物。
36.医薬品で使用するための実施形態1~35のいずれか一つで定義される組成物。
37.糖尿病または肥満の予防または治療に使用するための、実施形態1~36のいずれか一つで定義される組成物。
38.実施形態1~37のいずれか一つで定義した組成物の治療有効量をそれを必要とする対象に投与することを含む、糖尿病または肥満の予防または治療のための方法。
【実施例】
【0112】
略語リスト
FD4: フルオレセインイソチオシアネート-デキストラン4kD
【0113】
材料および方法
アッセイ(I):上皮細胞単層培養および透過性試験
細胞培養
Caco-2およびNCI-N87細胞を、American Type Culture Collection(ATCC)(米国バージニア州マナッサス)から入手した。Caco-2細胞を培養フラスコ内に播種し、10%ウシ胎児血清、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(それぞれ100U/mLおよび100μg/mL)、1% L-グルタミン、および1%非必須アミノ酸で補充したダルベッコ変法イーグル(DMEM)培地で継代させた。Caco-2細胞を、105細胞/ウェルの密度で、12ウェルコーニングトランスウェルプレート(1.13cm2、孔径0.4μm)中の組織培養処理ポリカーボネートフィルターの上へと播種した。
【0114】
NCI-N87細胞を、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(それぞれ100 U/mLおよび100 μg/mL)で補充したRoswell Park Memorial Institute(RPMI)1640培地中で培養した。N87細胞を、105細胞/ウェルの密度で、12ウェルコーニングトランスウェルプレート(1.13cm2、孔径0.4μm)中の組織培養処理ポリエステルフィルターの上へと播種した。
【0115】
細胞単層を、37℃にて5% CO2-95% O2雰囲気中で増殖させ、増殖培地を一日おきに交換した。実験は、細胞播種後14~16日目に実施された。
【0116】
経上皮輸送
ドナーチャンバー(頂端側)からレシーバーチャンバー(側底側)へと輸送される試験化合物の量を、振盪プレート(30rpm)上で、37℃にて5% CO2-95% O2の雰囲気中で、Caco-2単層については[1]、NCI-N87細胞単層膜については[2]に記載のように測定した。実験前に、上皮の両側について輸送緩衝液を用いて細胞単層を60分間平衡化させた。輸送緩衝液は、pH7.4に調節された、0.1%オボアルブミン(w/v)、0.005% Tween20(w/w)および10mM HEPESを含有するハンクス緩衝塩類溶液から成る。[3H]マンニトール(PerkinElmer)の輸送を測定して、上皮の完全性を検証した。
【0117】
Caco-2細胞については、試験化合物の400μlの溶液(試験化合物および0.8μCi/mL[3H]マンニトール(例えば、100μM GLP-1ペプチド、540μm FD4(Sigma Aldrich品番第46944号)、0~80mM SNAC、0~2mMエンパグリフロジン、および0~3mMダパグリフロジンのうちの一つ以上を含む)を含有する輸送緩衝液)をドナーチャンバーに添加し、1mLの輸送緩衝液をレシーバーチャンバーに添加することで試験を開始し、レシーバーサンプル(200μl)を1時間の間、15分ごとに採取した。NCI-N87細胞については、緩衝液による平衡化の後、細胞単層を、400μlの試験化合物溶液(0~80mM SNACおよび/または0~3mMダパグリフロジン)を用いて15分間プレインキュベートし、これを、400μlの試験化合物溶液(0.8μCi/mL3H]マンニトールおよび100μMのGLP-1ペプチドまたは540μMのFD4のいずれかを含有する水溶液)で置換し、レシーバーサンプル(200μl)を1時間の間、15分ごとに採取した。
【0118】
細胞層を横切る所与の化合物の移行は、見かけ透過性(P
app)として表現され、以下によって算出される。
【化20】
式(1):
式中、dQ/dtは細胞層を横切る定常状態流束(pmol/s)であり、Aは表面積(1.12cm
2)であり、C
0は当初のサンプル濃度である。
【0119】
実験前および実験後、細胞単層の経上皮電気抵抗(TEER)をモニターした。実験後、細胞を緩衝液で二回洗浄し、培地を用いて24時間の間補給してTEER回復し、細胞単層が生育可能であり、促進剤の効果が一過性であることを確認した。箸型電極に接続されたEVOM(商標)Epithelial Voltohmmeterを用いて、TEERを測定した。Caco-2単層については開始TEERは典型的にはおよそ1000Ωcm2であり、N87単層については約1600Ωcm2であった。
【0120】
貯蔵溶液中のダパグリフロジンおよびエンパグリフロジンの濃度をUPLCによって検証した。
【0121】
参考資料
[1]I.Hubatsch,E.G.E.Ragnarsson,P.Artursson,Determination of drug permeability and prediction of drug absorption in Caco-2 monolayers.Nat.Protoc.(2007)2,2111-9.
[2]M.Lemieux,F.Bouchard,P.Gosselin,J.Paquin,M.A.Mateescu,The NCI-N87 cell line as a gastric epithelial barrier model for drug permeability assay.Biochem Biophys Res Commun.(2011);412(3):429-34.
【0122】
一般的な方法
ELISAに似た原理を用いるLOCIアッセイを使用してセマグルチドおよび化合物Bの濃度を決定した。UPLCを使用して貯蔵溶液中のダパグリフロジンとエンパグリフロジンの濃度を測定した。FD4の濃度を蛍光プレートリーダーで測定した。[3H]マンニトールの濃度をシンチレーションカウンターで測定した。
【0123】
実施例1:ダパグリフロジンはGLP-1の経口吸収を促進する
細胞層を横切るセマグルチドの透過性を、本明細書に記載のインビトロモデルシステムアッセイ(I)で試験した。このアッセイは、消化管を横切る化合物の吸収、すなわち経口バイオアベイラビリティのモデルである。透過性は、広く使用されている腸細胞株Caco-2および最近記載されている胃細胞株N87の両方で評価し、セマグルチドの吸収に関連性のある場合がある様々な胃腸の症状を網羅した。結果を表1~表4に示す。
【0124】
表1.セマグルチドの、単独の、またはSNAC、もしくはダパグリフロジンの存在下でのCaco-2細胞単層を横切る透過性(三つの別個の実験から得られた)
【表1】
SNACおよびダパグリフロジンは、細胞単層TEERの開始値の約25%までの一過性の減少を引き出し(ダパグリフロジンに対する用量依存性)、新鮮培地中で24時間後に回復した。>2.7mMのダパグリフロジンについては回復しないTEERが観察され、これらに対する透過性値は含まれていない。
【0125】
驚くべきことに、この実験の結果(表1)は、試験した化合物に対してダパグリフロジンが細胞単層を横切るセマグルチド透過性の促進剤として作用することを示しており、すなわち、セマグルチドの経口バイオアベイラビリティがダパグリフロジンの存在下で増加することになることを示している。
【0126】
表2.化合物Bの、単独の、またはSNAC、もしくはダパグリフロジンの存在下でのCaco-2細胞単層を横切る透過性(二つの別個の実験から得られた)
【表2】
SNACおよびダパグリフロジンは、細胞単層TEERの開始値の約25%までの一過性の減少を引き出し(ダパグリフロジンに対する用量依存性)、新鮮培地中で24時間後に回復した。>2.7mMのダパグリフロジンについては回復しないTEERが観察され、これらに対する透過性値は含まれていない。
【0127】
驚くべきことに、この実験の結果(表2)は、試験した化合物に対してダパグリフロジンが細胞単層を横切るGLP-1化合物B透過性の促進剤として作用することを示しており、すなわち、化合物Bの経口バイオアベイラビリティがダパグリフロジンの存在下で増加することになることを示している。
【0128】
用いられたダパグリフロジン溶媒和物は、プロピレングリコール(1:1)を含有し、これは観察された促進剤の効果がダパグリフロジンによって生じたことを確認するために単独で試験された。最大で3.2mMまでのプロピレングリコールは、いかなる単層TEERの減少または透過性の促進も生じさせなかった。
【0129】
表3.セマグルチドの、単独の、またはSNAC、もしくはダパグリフロジンの存在下でのNCI-N87細胞単層を横切る透過性
【表3】
SNACおよびダパグリフロジンは、細胞単層TEERの開始値の約20%までの一過性の減少を引き出し、新鮮培地中で24時間後に回復した。≧2.6mMのダパグリフロジンについては回復しないTEERが観察され、これらに対する透過性値は含まれていない。
【0130】
表3のデータは、ダパグリフロジンが胃細胞単層を通したセマグルチドの透過性を効率的に促進することを示す。
【0131】
表4.FD4の、単独の、またはSNAC、もしくはダパグリフロジンの存在下でのNCI-N87細胞単層を横切る透過性(二つの別個の実験から得られた)
【表4】
SNACおよびダパグリフロジンは、細胞単層TEERの開始値の約25%までの一過性の減少を引き出し、新鮮培地中で24時間後に回復した。>2.6mMのダパグリフロジンについては回復しないTEERが観察され、これらに対する透過性値は含まれていない。
【0132】
表4の結果は、FD4の透過性がダパグリフロジンによって用量依存的に増加したことを示す。
【0133】
集合的に、上記データは驚くべきことに、試験した化合物に対してダパグリフロジンが細胞単層膜を横切るセマグルチド、化合物B、およびFD4の透過性の促進剤として作用することを示しており、すなわち、セマグルチドおよび化合物Bの経口バイオアベイラビリティがダパグリフロジンの存在下で増加することになることを示している。
【0134】
実施例2:ダパグリフロジンとSNACの組み合わせは相乗的な経口吸収を提供する
細胞層膜を横切るFD4またはセマグルチドの透過性を、本明細書に記載のインビトロモデルシステムアッセイ(I)で試験した。このアッセイは、消化管を横切る化合物の吸収、すなわち経口バイオアベイラビリティのモデルである。結果を表5~表8に示す。
【0135】
表5.FD4の、単独の、またはSNAC、ダパグリフロジン、もしくはその組み合わせの存在下でのCaco-2細胞単層を横切る透過性
【表5】
SNAC、ダパグリフロジン、およびその組み合わせは、細胞単層TEERの開始値の約35%までの一過性の減少を引き出し、新鮮培地中で24時間後に回復した。3mMのダパグリフロジンおよび60mM SNAC+2mMダパグリフロジンについては回復しないTEERが観察され、これらに対する透過性値は含まれていない。
【0136】
驚くべきことに、この実験の結果(表5)は、ダパグリフロジンとSNACとの組み合わせがFD4に対する細胞単層を横切る透過性に対する相乗効果を提供することを示しており、すなわち、経口バイオアベイラビリティが、ダパグリフロジン単独またはSNAC単独の経口バイオアベイラビリティの和よりも大きいことになることを示している。Caco-2(表6~表7)およびNCI-N87(表8)の両方の細胞層でセマグルチドの相乗効果が確認された。
【0137】
表6.セマグルチドの、単独の、またはSNAC、ダパグリフロジン、もしくはその組み合わせの存在下でのCaco-2細胞単層を横切る透過性
【表6】
SNACとダパグリフロジンの混合物は、細胞単層TEERの開始値の約35%までの一過性の減少を引き出し、新鮮培地中で24時間後に回復した。70mM SNAC+2mMダパグリフロジンおよび80mM SNAC+1.5mMについては回復しないTEERが観察され、これらに対する透過性値は含まれていない。0.5~1.5mMのダパグリフロジンは単独ではセマグルチドのCaco-2細胞単層を横切る透過性にほとんど効果がないことが、過去に示されている。
【0138】
表7.化合物Bの、単独の、またはSNAC、ダパグリフロジン、もしくはその組み合わせの存在下でのCaco-2細胞単層を横切る透過性
【表7】
SNACとダパグリフロジンの混合物は、細胞単層TEERの開始値の約35%までの一過性の減少を引き出し、新鮮培地中で24時間後に回復した。0.5~2.0mMダパグリフロジンは単独では化合物BのCaco-2細胞単層を横切る透過性にほとんど効果がないことが、過去に示されている。
【0139】
表8.セマグルチドの、単独の、またはSNAC、ダパグリフロジン、もしくはその組み合わせの存在下でのNCI-N87細胞単層を横切る透過性
【表8】
SNACとダパグリフロジンの混合物は、細胞単層TEERの開始値の約15%までの一過性の減少を引き出し、新鮮培地中で24時間後に回復した。60mM SNAC+2mMダパグリフロジンについては回復しないTEERが観察され、これらに対する透過性値は含まれていない。
1~1.5mMダパグリフロジンは単独ではセマグルチドのNCI-N87細胞単層を横切る透過性にほとんど効果がないことが、過去に示されている。
【0140】
驚くべきことに、これらの実験の結果(表5~表8)は、ダパグリフロジンとSNACの組み合わせがセマグルチド、化合物B、およびFD4に対するCaco-2またはNCI-87のいずれかの細胞単層を横切る透過性に対する相乗効果を提供することを示しており、すなわち、セマグルチドおよび化合物Bなどのペプチドの経口バイオアベイラビリティが、ダパグリフロジン単独またはSNAC単独のその経口バイオアベイラビリティの和よりも大きいことになることを示している。
【0141】
実施例3:エンパグリフロジンとSNACの組み合わせは相乗的な経口吸収を提供する
細胞層を横切るセマグルチドまたはFD4の透過性を、本明細書に記載のインビトロモデルシステムアッセイ(I)で試験した。このアッセイは、消化管を横切る化合物の吸収、すなわち経口バイオアベイラビリティのモデルである。結果を表9~表10に示す。
【0142】
表9.セマグルチドの、単独の、またはSNAC、もしくはSNACとエンパグリフロジンの組み合わせの存在下でのCaco-2細胞単層を横切る透過性
【表9】
N.A.:適用外
【0143】
表10.FD4の、単独の、またはSNAC、エンパグリフロジン、もしくはその組み合わせの存在下でのCaco-2細胞単層を横切る透過性(二つの別個の実験から得られた)
【表10】
SNAC、エンパグリフロジン、およびその組み合わせは、細胞単層TEERの開始値の約35%までの一過性の減少を引き出し、新鮮培地中で24時間後に回復した。
【0144】
驚くべきことに、これらの実験の結果(表9~表10)は、エンパグリフロジンとSNACとの組み合わせがセマグルチドおよびFD4に対するCaco-2の細胞単層を横切る透過性に対する相乗効果を提供することを示しており、すなわち、セマグルチドなどのペプチドの経口バイオアベイラビリティが、ダパグリフロジン単独またはSNAC単独のその経口バイオアベイラビリティの和よりも大きいことになることを示している。
【0145】
セマグルチドおよびダパグリフロジンを用いた製剤とセマグルチドの製剤とをインビボで繰り返し、同等の結果が得られた。
【0146】
本明細書では本発明のある特定の特徴を例示および説明してきたが、数多くの修正、置換、変更、および均等物が当業者には思い浮かぶであろう。従って、添付の特許請求の範囲が、本発明の真の趣旨の範囲内にあるそのようなすべての修正および変更を網羅することを意図していることが理解されるべきである。
【配列表】