(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】バナジウム系膜を金属結合部に接合し、シールする方法
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20230307BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20230307BHJP
B01D 69/04 20060101ALI20230307BHJP
B23K 1/005 20060101ALI20230307BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B01D71/02 500
B01D69/00
B01D69/04
B23K1/005 A
B23K1/19 Z
(21)【出願番号】P 2019572185
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(86)【国際出願番号】 AU2018050636
(87)【国際公開番号】W WO2019000026
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-05
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】590003283
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・マイケル・ヴィアーノ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・デイヴィッド・ドラン
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-199117(JP,A)
【文献】特開2003-334418(JP,A)
【文献】特開2005-296746(JP,A)
【文献】特開2013-248651(JP,A)
【文献】特開平11-250806(JP,A)
【文献】特開2006-032192(JP,A)
【文献】特開2005-200273(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0368762(US,A1)
【文献】米国特許第06152987(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00 - 71/82
B23K 1/00 - 3/08
31/02
33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バナジウム系膜を金属結合部に接合し、シールする方法であって、
結合部のコネクタ構造にバナジウム系膜の部分を取り付ける工程であって、前記結合部は、鋼、ステンレス鋼、ニッケル-クロム-鉄合金、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つで形成されており、前記コネクタ構造は、前記バナジウム系膜の部分が着座する凹部及び前記バナジウム系膜の端面が前記コネクタ構造の隣接面に近接するか、実質的に当接する結合界面を設けている、工程と;
チラー機構を前記結合界面に近接したバナジウム系膜と熱的接触させて、取り付け、操作する工程と;
前記結合部に位置する溶加材に向けられたレーザービームを使用し、前記レーザービームがビーム幅を有し、ビーム端を、前記レーザービームによる前記バナジウム系膜の直接加熱を減衰させる距離だけ、前記結合界面から離隔して、前記結合部上で、オフセット位置に配置して、前記結合部上の前記溶加材を少なくとも前記溶加材の液相線温度まで加熱し、これにより前記溶加材が前記オフセット位置から前記バナジウム系膜に、前記結合界面上にわたって流れることができるようにする工程と;
前記溶加材を冷却して、前記バナジウム系膜と前記結合部との間で、前記結合界面上にわたり溶加材のブリッジ部を形成する工程と
を含み、
前記ビーム幅に対する前記ビーム端のオフセット距離の比が、0.1~0.5である、方法。
【請求項2】
前記ビーム端が、前記結合界面から少なくとも0.1mmオフセットで離隔している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶加材が、アルミニウム-ケイ素、銅、銅合金、金-銀合金、ニッケル合金又は銀のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記バナジウム系膜が、バナジウム;含有量が0原子%超で10原子%までのアルミニウム;及び含有量が0.01原子%未満であるTaを含み、かつ伸長率が10%超の延性を有するバナジウム合金を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バナジウム合金が、0原子%超で5原子%までの含有量を有するTi、Cr、Fe、Ni又はBから選択される結晶粒微細化元素を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記バナジウム合金が、0.2~4.5原子%の間の含有量を有するTi、Cr、Fe、Ni又はBから選択される結晶粒微細化元素を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記バナジウム系膜が管状である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記バナジウム系膜が、0.1~1mmの厚さを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記結合部が管状である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記結合部が、1~5mmの厚さを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザービームが、前記溶加材を、前記溶加材の液相線温度に少なくとも5℃を加えた温度まで加熱する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザービームが、0.4~1.5mmの間のビーム幅を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記コネクタ構造が、前記バナジウム系膜の端部をその中に着座させるようにサイズ決めされた、前記結合部の端部内に形成されたリベートを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記結合界面が、前記コネクタ構造の実質的に平坦な隣接面に平行に当接又は隣接する関係で配置された前記バナジウム系膜の実質的に平坦な端面を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記バナジウム系膜の前記平坦な端面が、25~100μmの許容誤差で前記コネクタ構造の前記隣接面に当接するように協同的に成形されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記チラー機構が、前記結合界面に近接する前記バナジウム系膜の部分に熱的に接触するように構成された伝導性本体を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記チラー機構が、前記結合界面に近接して配置されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記チラー機構が、前記結合界面から10mm以内に配置されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記チラー機構が、前記バナジウム系膜が800℃以下のピーク温度に達するのを防ぐ、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記チラー機構が、前記バナジウム系膜が750℃以下のピーク温度に達するのを防ぐ、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記溶加材を冷却する前記工程が、対流冷却及び/又は前記チラー機構との協働による伝導性冷却を介して前記溶加材を冷却させることを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
溶加材の前記ブリッジ部が、前記オフセット位置に中心を有し、前記結合界面上で少なくとも0.3mm延びている本体を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
バナジウム系膜を金属結合部に接合し、シールするためのレーザーろう付け機構であって、
結合部のコネクタ構造に取り付けられたバナジウム系膜であって、前記結合部は、鋼、ステンレス鋼、ニッケル-クロム-鉄合金、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つで形成されており、前記コネクタ構造は、前記バナジウム系膜の部分が着座する凹部及び前記バナジウム系膜の端面が前記コネクタ構造の隣接面に近接するか、実質的に当接する結合界面を設けている、バナジウム系膜と;
前記結合界面に近接したバナジウム系膜と熱的接触しているチラー機構と;
使用中に前記結合部に向けられるレーザービームであって、前記レーザービームがビーム幅を有し、ビーム端を、前記レーザービームによる前記バナジウム系膜の直接加熱を減衰させる距離だけ、前記結合界面から離隔して、前記結合部上でオフセット位置に配置し、前記ビーム幅に対する前記ビーム端のオフセット距離の比が、0.1~0.5である、レーザービームを含むレーザー溶接機構と;
前記結合界面上の前記オフセット位置で前記レーザービーム下に供給される溶加材であって、使用時に前記レーザービームによって溶融され、前記オフセット位置から前記バナジウム系膜に前記結合界面上にわたって流れることができる、溶加材と
を含む、レーザーろう付け機構。
【請求項24】
請求項
23に記載のレーザーろう付け機構を使用する、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
バナジウム系膜と金属結合部との間のレーザーろう付け接合部であって、
結合部のコネクタ構造に取り付けられたバナジウム系膜であって、前記結合部は、鋼、ステンレス鋼、ニッケル-クロム-鉄合金、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つで形成されており、前記コネクタ構造は、前記バナジウム系膜の部分が着座する凹部及び前記バナジウム系膜の端面が前記コネクタ構造の隣接面に近接するか、実質的に当接する結合界面を設けている、バナジウム系膜と;
固化した溶加材で形成されたブリッジ結合であって、前記結合界面から少なくとも0.1mm離隔した、前記結合部上のオフセット位置を中心とし、前記バナジウム系膜及び前記結合部上に延びている、ブリッジ結合と
を含み、
前記ブリッジ結合に近接する前記バナジウム系膜の微細構造は、前記バナジウム系膜のバルク微細構造と実質的に同じである、レーザーろう付け接合部。
【請求項26】
前記ブリッジ結合に近接する前記バナジウム系膜の平均結晶粒径が、前記バナジウム系膜の平均結晶粒径と実質的に同じである、請求項
25に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項27】
前記ブリッジ結合に近接する前記バナジウム系膜の平均結晶粒径が、前記バナジウム系膜の平均結晶粒径の10%以内である、請求項
26に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項28】
前記固化した溶加材が、レーザー溶接機構のレーザービームによって溶融され、前記オフセット位置から前記バナジウム系膜に前記結合界面上にわたって流れる、前記溶加材から形成されている、請求項
25又は
26に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項29】
前記溶加材が、アルミニウム-ケイ素、銅、銅合金、金-銀合金、ニッケル合金又は銀のうちの少なくとも1つを含む、請求項
25から
28のいずれか一項に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項30】
前記バナジウム系膜が、バナジウム;含有量が0原子%超で10原子%までのアルミニウム;及び含有量が0.01原子%未満であるTaを含み、かつ伸長張率が10%超の延性を有するバナジウム合金を含む、請求項
25から
29のいずれか一項に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項31】
前記バナジウム合金が、0原子%超で5原子%までの含有量を有するTi、Cr、Fe、Ni又はBから選択される結晶粒微細化元素を更に含む、請求項
30に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項32】
前記バナジウム合金が、0.2~4.5原子%の間の含有量を有するTi、Cr、Fe、Ni又はBから選択される結晶粒微細化元素を更に含む、請求項
30に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項33】
前記バナジウム系膜が管状である、請求項
25から
32のいずれか一項に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項34】
前記バナジウム系膜が、0.1~1mmの厚さを有する、請求項
25から
33のいずれか一項に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項35】
前記結合部が管状である、請求項
25から
34のいずれか一項に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項36】
前記結合部が、1~5mmの厚さを有する、請求項
25から
35のいずれか一項に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項37】
前記コネクタ構造が、前記バナジウム系膜の端部をその中に着座させるようにサイズ決めされた、前記結合部の前記端部内に形成されたリベートを含む、請求項
25から
36のいずれか一項に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項38】
前記結合界面が、前記コネクタ構造の実質的に平坦な隣接面に平行に当接又は隣接する関係で配置された前記バナジウム系膜の実質的に平坦な端面を含む、請求項
25から
37のいずれか一項に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項39】
前記バナジウム系膜の前記平坦な端面が、20~40μmの許容誤差で前記コネクタ構造の前記隣接面に当接するように協同的に成形されている、請求項
38に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項40】
前記ブリッジ結合が、前記オフセット位置に中心を有し、前記結合界面上で少なくとも0.3mm延びている本体を含む、請求項
25から
39のいずれか一項に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項41】
前記ブリッジ結合が半円形の断面を有する、請求項
25から
40のいずれか一項に記載のレーザーろう付け接合部。
【請求項42】
バナジウム系膜と金属結合部との間にレーザーろう付け接合部を形成するためのレーザービームの使用であって、
結合部のコネクタ構造にバナジウム系膜の部分を取り付ける工程であって、前記結合部は、鋼、ステンレス鋼、ニッケル-クロム-鉄合金、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つで形成されており、前記コネクタ構造は、前記バナジウム系膜の部分が着座する凹部及び前記バナジウム系膜の端面が前記コネクタ構造の隣接面に近接するか、実質的に当接する結合界面を設けている、工程と;
チラー機構を結合界面に近接したバナジウム系膜と熱的接触させて、取り付け、操作する工程と;
前記レーザービームを使用して、前記結合部に位置する溶加材に前記レーザービームを向け、前記レーザービームがビーム幅を有し、ビーム端を、前記レーザービームによる前記バナジウム系膜の直接加熱を減衰させる距離だけ、前記結合界面から離隔して、前記結合部上で、オフセット位置に配置することによって、前記結合部上の前記溶加材を少なくとも前記溶加材の液相線温度まで加熱し、これにより前記溶加材が前記オフセット位置から前記バナジウム系膜に、前記結合界面上にわたって流れることができるようにし、前記ビーム幅に対する前記ビーム端のオフセット距離の比が、0.1~0.5である工程と;
前記溶加材を冷却して、前記バナジウム系膜と前記結合部との間で、前記結合界面上にわたり溶加材のブリッジ部を形成する工程と
を含む、使用。
【請求項43】
請求項1から22のいずれか一項に記載の方法に従う、請求項
42に記載のレーザービームの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2017年6月30日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2017902556号から優先権を主張し、その内容はこの参照により本明細書に組み込まれると理解されるべきである。
【0002】
本発明は、一般に、バナジウム系膜を金属結合部に接合し、シールする方法に関する。本発明は、管状バナジウム膜又は管状バナジウム合金膜をステンレス鋼体に接合することに特に適用可能であり、その例示的な用途に関して本発明を以下に開示することが好都合であろう。しかし、本発明はその用途に限定されず、任意の好適な用途においてバナジウム系の本体を金属結合部に接合するために使用することができることを理解するべきである。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景に関する以下の議論は、本発明の理解を容易にすることを意図している。しかし、この議論は、言及された試料のいずれかが、出願の優先日において公開されたもの、既知のもの、又は一般的知見の一部であるということを認容又は承認するものではないことを理解すべきである。
【0004】
水素(H2)は大量に自然発生することはなく、工業的実践において、石炭、石油、若しくは天然ガス等の炭化水素燃料の転換、又はアンモニア(NH3)の分解によって製造される。これらの製造経路はそれぞれ、H2に加えて未反応の原料ガス(たとえば、CH4、H2O、NH3等)及びCO2、CO、及びN2等の副生成物を含む不純ガス流を生成する。多くの用途において、この混合ガス流からH2を分離しなければならない。
【0005】
混合ガス流からH2を分離するための膜系分離技術が、現在開発中である。大まかに言えば、膜は、ある種に対して選択的透過性のあるほぼ二次元の構造である。ガス分離との関係において、膜は、ある種を選択的に透過させ(通常はH2)、他の種(たとえば、CO、CO2、H2O、N2等)を遮断する。水素選択膜は、無機材料、金属材料、又はセラミック材料から作成することができ、これらの材料のそれぞれは、特徴的な水素処理量、動作温度、選択性を有する。
【0006】
パラジウムは最もよく知られている合金膜材料であり、300~600℃の間で水素を透過し、一方でCOやH2O等の合成ガス種に耐性がある。しかし、パラジウムの高コスト(約330USドル/m2/μm(2014))により、その消費を最小限に抑えるための研究が推進されており、最も顕著なのは、より安価な金属との合金化、及び非常に細かい細孔を有する支持構造体上に非常に薄い(<5μm)層を堆積することにより、厚さを最小化することによるものである。
【0007】
複数の他の金属、最も顕著には、バナジウム、チタン、タンタル及びジルコニウムが、非常に高い水素透過性を示す。400℃では、これらの金属の水素透過性はパラジウムよりも約2桁大きく、原材料価格は著しく低い。これらの金属の中で、バナジウムは最も広い合金化範囲を有しており、このことは、バナジウムが、バナジウム系膜の要求を満たすために合金特性を改変する最も広い範囲を有することを意味する。バナジウム系膜の一例は、出願人の米国特許出願公開第2015/0368762号明細書に教示されている。
【0008】
バナジウム系膜は、抽出されたH2のための流路を提供し、非H2ガス種が膜を通過するのを防ぐために、別の管又はパイプで結合され、シールされなければならない。接合技術は、
・V系管の微細構造を変更しないように、
・V系管の内側と外側に適用された触媒層を損傷しないように、
・膜分離デバイスにおいて使用する場合、H2下でのサイクリング中にシールを保持するように、
理想的に選択される。
【0009】
管状バナジウム系膜について上記を満たす1つの結合及びシール技術は、適切なフェルール、例えばグラファイトフェルールと組み合わせたステンレス鋼圧縮継手等の圧縮継手を利用して、バナジウム管状膜を同様の直径のステンレス鋼管に結合する。しかし、圧縮継手を使用すると、取り付けのために管の直径と比較して継手の直径が必然的に大きめになるために、反応器内の管状膜の充填密度が制限される可能性がある。膜が密に充填されると、反応器容積内の表面積が大きくなり、これにより混合ガス流からH2をより多く回収し、所定の容積の膜モジュールから回収することができるH2の量が増えるため、より効率的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2015/0368762号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、バナジウム系又はバナジウム合金系管状膜を隣接する金属管又はパイプに結合し、シールする改善された方法及び/又は代替の方法を提供することが望ましいだろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、バナジウム系膜を金属結合部に接合し、シールする方法であって、
結合部のコネクタ構造にバナジウム系膜の部分を取り付ける工程であって、結合部は、バナジウム系膜とは異なる金属で形成されており、コネクタ構造は、バナジウム系膜の部分が着座する凹部及びバナジウム系膜の端面がコネクタ構造の隣接面に近接するか、実質的に当接する結合界面を設けている、工程と;
チラー機構を結合界面に近接したバナジウム系膜と熱的接触させて、取り付け、操作する工程と;
結合部に位置する溶加材に向けられ、ビーム端を、レーザービームによるバナジウム系膜の直接加熱を減衰させる距離だけ、結合界面から離隔して、結合部上で、オフセット位置に配置した、レーザービームを使用して、結合部上の溶加材を少なくとも溶加材の液相線温度まで加熱し、これにより溶加材がオフセット位置からバナジウム系膜に、結合界面上にわたって流れることができるようにする工程と;
溶加材を冷却して、バナジウム系膜と結合部との間で、結合界面上にわたり溶加材のブリッジ部を形成する工程と、
を含む方法を提供する。
【0013】
したがって、本発明のこの第1の態様は、バナジウム系膜(すなわち、バナジウム又はバナジウム合金系膜)を異なる金属、好ましくはステンレス鋼に接合するためのろう付け技術を提供し、これは、レーザー接合技術を利用する。レーザー溶接等のレーザー接合は、使用するレーザー熱源の幅が狭く集中しているという性質のため、加えられる熱負荷を局所化できる技術である。チラー機構の使用と組み合わせた、溶加材を加熱し、溶融する際のレーザービームのオフセット適用は、レーザー溶接中のバナジウム管の熱曝露を制限し、バナジウム系膜の微細構造及び化学組成の変化を最小限に抑え、好ましくは防ぎ、バナジウム系膜の外側に設けられた触媒層を損傷しないように設計されている。
【0014】
これに関して、レーザービームのオフセット位置決めを使用して、バナジウム系膜がレーザービームによって直接加熱されるのを減弱し、好ましくは防ぐ。更に、結合界面近接したバナジウム系膜に熱的に結合したチラー機構を使用することにより、結合部からバナジウム系膜への熱伝導等によってバナジウム系膜が過度に加熱されないことが保証される。したがって、得られたろう付け製品は、所望のバナジウム系の材料の結晶構造及び機械的特性を実質的に保持することができる。
【0015】
溶加材は、加熱されると結合界面上を濡らし、固化すると結合界面にわたってブリッジ体を形成するように設計されている。溶加材は、溶融されて、結合部とバナジウム系膜との間にブリッジ部を形成することができる任意の好適な金属又は金属合金を含むことができる。溶加材は、好ましくは、バナジウム及び結合部を形成する金属、典型的にはステンレス鋼と同様の融点(液相線温度)を有する。しかし、適用目的のために、溶加材は、バナジウム系膜及び金属結合部の両方よりも低い液相線温度を有するように好ましくは選択される。溶加材はまた、好ましくは、バナジウム系膜の膨張及びH2に対する耐性に対応するために高い延性を有する。特定の合金は、一般に、所望の液相線温度と得られる機械的特性に基づいて選択される。アルミニウム-ケイ素、銅、銅合金、金-銀合金、ニッケル合金又は銀のうちの少なくとも1つを含む、複数の可能な溶加材が可能である。溶加材は、好ましくは、銅、又は銅-銀、銅-亜鉛、銅-ケイ素、銅-スズ等の銅の合金を含む。いくつかの実施形態では、溶加材は、Cu-Si合金又はCu-Si-Mn合金を含む。場合によっては、溶加材は市販の溶加ワイヤを含む。しかし、特注の溶加材組成物も製造することができることを理解するべきである。いくつかの実施形態では、溶加材は、例えば、Cu、Si、Mn合金(Cu、3%Si、1%Mn)を含む。
【0016】
加熱工程中、溶加材は、典型的には、レーザービームの中心に中心を有する液滴を形成する。液滴の直径は、溶融した溶加材の量によって決定される。しかし、液滴の直径は、結合界面上に溶加材のブリッジ部を形成するのに十分でなくてはならない。結合界面(及びしたがってバナジウム系膜とコネクタ構造)に対するレーザービームと溶加材の移動により、結合界面上にわたって溶加材の連続体を形成し、結合界面の周りでバナジウム系膜と結合部を相互結合させ、その結合界面でそれら本体の間にある隙間をシールする。管状バナジウム系膜及び結合部の場合、隣接する管状体の周囲の結合界面にわたる溶加材の連続体により、これらの管状体を一緒に効果的に接合し、シールする。
【0017】
本発明との関係におけるシールは、バナジウム系膜と金属結合部との間に流体密シールを形成することを含み、このシールにより、流体(液体及び気体を含む)は、漏れることができないか、又は別様にバナジウム系膜と金属結合部の間の結合部を流れることができないこと理解すべきである。したがって、バナジウム系膜をセパレータ、触媒膜反応器(CMR)等として使用する場合、水素等のガスがバナジウム系膜と金属結合部との間の接合部又は結合部を流れるのを防ぐ。
【0018】
また、機構は、オフセット位置が結合部上に配置されるように設定されており、レーザービーム端(又はビーム端、すなわち表面に向けられたレーザービームの外周又は端部、典型的には、その表面に形成されたレーザースポットの円周)は、レーザービームからバナジウム系膜への熱伝達を減衰させる距離で結合部からオフセット位置にあるか又は離隔している。オフセット距離により、好ましくは、バナジウム系膜の直接加熱が実質的に回避される。実施形態では、そのオフセット距離は、結合界面から少なくとも0.1mmであり得る。これにより、バナジウム系膜がレーザービームによって直接加熱されないことが保証される。実施形態では、ビーム端部は、結合界面から少なくとも0.2mmオフセットで、好ましくは0.2mm~1mmの間で離隔している。レーザービームが結合界面(したがって、レーザービームに面しているバナジウム膜及び結合構造の表面)に対して移動すると、オフセッ位置は、典型的には、結合界面に対して平行な離隔線を追跡してオフセット配置を維持することに留意すべきである。
【0019】
結合部は、バナジウム系膜を取り付けることが望ましい任意の好適な金属又は金属合金で形成することができる。いくつかの実施形態では、結合部は、鋼、ステンレス鋼、ニッケル-クロム-鉄合金、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つで構成される。好適な材料の例としては、オーステナイト系ステンレス鋼、好ましくは300シリーズステンレス鋼、例えば304又は316ステンレス鋼が挙げられる。
【0020】
バナジウム系膜は、バナジウム又はバナジウム合金から形成することができる。典型的には、特定のバナジウム金属又は合金は、膜分離デバイスにおける使用の適合性に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、バナジウム系膜は、バナジウム;含有量が0原子%超で10原子%までのアルミニウム;及び含有量が0.01原子%未満であり、延性が10%超の伸長率、好ましくは11%超の伸長率であるTa、を含むバナジウム合金を含む。バナジウム合金は、0原子%超で5原子%までの、好ましくは0.2~4.5原子%の間の含有量を有するTi、Cr、Fe、Ni又はBから選択される結晶粒微細化元素を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、結晶粒微細化元素は、0.1~2原子%、好ましくは0.1~2原子%、より好ましくは0.1~1原子%の含有量を有する。
【0021】
バナジウム系膜は、任意の好適な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、膜は平面膜を含む。しかし、例示的な実施形態では、バナジウム系膜は管状である。管状膜は、前述の通り任意の好適な寸法を有することができる。いくつかの実施形態では、以下でより詳細に議論するように、薄壁管は、2~25mmの間、好ましくは3~20mmの間の外径、及び0.05~1mm、好ましくは0.1~1.5mmの壁厚を有する管を含む。いくつかの実施形態では、バナジウム系膜は、0.1~1mm、好ましくは0.2~0.8mm、より好ましくは0.2~0.5mmの厚さを有する。
【0022】
結合部は、任意の好適な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、結合部は平面である。しかし、例示的な実施形態では、結合部は管状である。結合部は、任意の好適な寸法を有することができる。実施形態では、結合部は、1~5mm、好ましくは1~3mm、より好ましくは1~2mmの厚さを有する。
【0023】
レーザービームを使用して、溶加材を少なくともその液相線温度まで加熱して、これにより、溶加材が結合界面にわたって流れ、バナジウム系膜と結合部との間で、結合界面上にわたり溶加材のブリッジ部を形成することができる。溶加材は、本明細書では、以後、バナジウム膜及び結合構造のレーザー対向面と呼ばれる、レーザービームに対面するバナジウム膜及び結合構造の表面上にわたって流れることを理解すべきである。結合界面は、好ましくは、緊密な当接嵌合である。しかし、実施形態では、溶加材料は、毛細管現象により、これらのレーザー対向面から結合界面の当接面間の隙間又は凹部に流入してもよい。したがって、溶加材のブリッジ部は、結合界面に近接するバナジウム膜及び結合構造のレーザー対向面上の結合界面にわたって形成される。
【0024】
レーザービームは、任意の選択された温度まで溶加材を加熱することができる。実施形態では、レーザービームは、溶加材を、溶加材の液相線温度に少なくとも5℃を加えた、好ましくは少なくとも10℃を加えた、より好ましくは溶加材の液相線温度に5~15℃を加えた温度まで加熱する。
【0025】
レーザービームのビーム幅は、結合界面に対するレーザービームの位置決め、及びろう付けプロセスにおけるエネルギー集中量の両方において、重要な考慮事項である。実施形態では、レーザービームは、0.4~1.5mmの間のビーム幅を有する。いくつかの実施形態では、レーザービームは、0.5~1.0mmの間、より好ましくは0.6mm~0.9mmの間、更により好ましくは約0.9mmのビーム幅を有する。
【0026】
ビーム幅に対するビーム端オフセットの比は、この方法のエネルギー制御戦略のための指針を提供する。実施形態では、ビーム幅に対するビーム端オフセットの比は、0.1~0.5、好ましくは0.2~0.4、より好ましくは0.25~0.35である。特定の一実施形態では、接合部を覆うこととバナジウムを溶融させないこととの間の良好なバランスを提供するビーム幅に対するビーム端オフセットの比を使用することに留意する。
【0027】
コネクタ構造は、バナジウム系膜が結合部内及び/又は結合部上に着座することができる任意の凹部構造を含む。実施形態では、コネクタ構造は、バナジウム系膜の端部をその中に着座させるようにサイズ決めされた、結合部の端部内に形成された実を含む。実深さは、好ましくは、バナジウム系膜の厚さに実質的に対応する。しかし、好適な構造では、例えば、バナジウム系膜と結合部の隣接する端部を一緒に密接に配置する、好ましくは当接する重ね接合又は類似物等を使用することができることを理解するべきである。
【0028】
コネクタ構造は、任意の好適な長さのバナジウム系膜を着座させるようにサイズ決めすることができる。実施形態では、コネクタ構造では、バナジウム系膜を長さ5~30mm、好ましくは10~20mm、より好ましくはバナジウム系膜を長さ約15mmのサイズにすることができる。
【0029】
結合界面は、バナジウム系膜と結合部の当接面又は隣接面の間の接合部又は界面を含む。実施形態では、結合界面は、コネクタ構造の実質的に平坦な隣接面に平行に当接又は隣接する関係で配置されるバナジウム系膜の実質的に平坦な端面を含む。好ましくは、バナジウム系膜の平坦な端面は、20~40μm、好ましくは20~30μm、より好ましくは約25μm(10%)の許容誤差でコネクタ構造の隣接面に当接するように協同的に成形される。
【0030】
チラー機構は、バナジウム系膜の温度がバナジウムの再結晶温度未満に維持されるように、バナジウム系膜と結合部との間の加熱/レーザーろう付け接合部から熱を奪う手段を含むことを理解すべきである。バナジウムの再結晶温度は800~1010℃の間である。したがって、チラー機構は、好ましくは、レーザー接合/ろう付けプロセス中に、バナジウム基板が800℃以下、より好ましくは750℃以下、更により好ましくは700℃以下のピーク温度に達するのを防ぐように選択される。チラー機構は、好ましくは、バナジウム系膜よりも大きい伝導率を有し、好ましくは、バナジウム系膜よりも少なくとも5倍大きい熱質量を有する。
【0031】
チラー機構は、バナジウム系膜から熱を抽出することができる任意の好適な冷却機構又はヒートシンク機構を含むことができる。実施形態では、チラー機構は、結合界面に近接するバナジウム系膜の部分に熱的に接触するように、好ましくは伝導的に接触するように構成された伝導性本体を含む。しかし、冷蔵機構又は他の対流若しくは伝導性冷却機構も同様に使用することができることを理解すべきである。
【0032】
チラー機構は、好ましくは、加熱工程から結合界面及びバナジウム系膜に加えられる熱を最良に伝導するために、結合界面に近接して配置される。実施形態では、チラー機構は、結合界面から10mm以内、好ましくは5mm未満以内、より好ましくは2mm未満以内に配置される。
【0033】
溶加材料は、バナジウム系膜と結合部との間の、結合界面上にわたる溶加材のブリッジ部において、溶加材料を固化するための任意の好適な手段によって冷却することができる。実施形態では、溶加材を冷却する工程は、チラー機構との協働よる対流冷却及び/又は伝導性冷却を介して溶加材を冷却させることを含む。しかし、対流冷却、熱交換、冷却液、冷媒等の強制冷却も同様に使用することができる。
【0034】
溶加材のブリッジ部は、好ましくは、オフセット位置に中心を有し、結合界面上で少なくとも0.3mmだけ延びている本体を含む。実施形態では、溶加材のブリッジ部は、好ましくは、オフセット位置に中心を有し、結合界面上で少なくとも0.5mm、より好ましくは少なくとも0.8mm、更により好ましくは少なくとも1mm延びている本体を含む。ブリッジ部は、任意の好適な形状及び/又は構成を有することができる。液滴の形成により、溶加材のブリッジ部は典型的には、半円形の断面を有する。
【0035】
本発明の第2の態様は、バナジウム系膜を金属結合部に接合し、シールするためのレーザーろう付け機構であって、
結合部のコネクタ構造に取り付けられたバナジウム系膜であって、結合部は、バナジウム系膜とは異なる金属で形成されており、コネクタ構造は、バナジウム系膜の部分が着座する凹部及びバナジウム系膜の端面がコネクタ構造の隣接面に近接するか、実質的に当接する結合界面を設けている、バナジウム系膜と;
結合界面に近接したバナジウム系膜と熱的接触しているチラー機構と;
使用中に結合部に向けられ、レーザービームのビーム端を、レーザービームによるバナジウム系膜の直接加熱を減衰させる距離だけ、結合界面から離隔して、結合部上でオフセット位置に配置した、レーザービームを含むレーザー溶接機構と;
結合界面上のオフセット位置でレーザービーム下に供給される溶加材であって、使用時にレーザービームによって溶融され、オフセット位置からバナジウム系膜に結合界面上にわたって流れることができる、溶加材と、
を含む、レーザーろう付け機構を提供する。
【0036】
本発明のこの第2の態様は、本発明の第1の態様を含む方法に関する上記の特徴のいずれか1つ又は組合せを含むことができることを理解すべきである。更に、実施形態では、本発明の第1の態様による方法は、本発明の第2の態様によるレーザーろう付け機構を使用して実施することができる。
【0037】
本発明はまた、本発明の第1の態様による方法によって製造されたコネクタ構造に接合され、シールされたバナジウム系膜を組み込んだガス分離膜システムに関する。
【0038】
本発明の第3の態様は、バナジウム系膜と金属結合部との間のレーザーろう付け接合部であって、
結合部のコネクタ構造に取り付けられたバナジウム系膜であって、結合部は、バナジウム系膜とは異なる金属で形成されており、コネクタ構造は、バナジウム系膜の部分が着座する凹部及びバナジウム系膜の端面がコネクタ構造の隣接面に近接するか、実質的に当接する結合界面を設けている、バナジウム系膜と;
固化した溶加材で形成されたブリッジ結合であって、結合界面から少なくとも0.1mm離隔した、結合部上のオフセット位置を中心とし、バナジウム系膜及び結合部上に延びている、ブリッジ結合と、を含み、
レーザーろう付け接合のバナジウム系膜は、バナジウム系膜のバルク微細構造と実質的に同じである、ブリッジ結合に近接した微細構造を有する、レーザーろう付け接合部を提供する。
【0039】
したがって、本発明のこの第3の態様は、バナジウム系膜(すなわち、バナジウム又はバナジウム合金系の膜)と異なる金属、好ましくはステンレス鋼との間のレーザーろう付け接合部を提供し、これは、レーザー溶接機構を利用する。固化した溶加材は、好ましくは、レーザー溶接機構のレーザービームによって溶融され、オフセット位置からバナジウム系膜に結合界面上にわたって流れている溶加材から形成されている。上記のように、レーザー溶接は、使用するレーザー熱源の幅が狭く集中しているという性質のため、加えられる熱負荷を局所化できる技術である。ブリッジ結合のオフセット中心は、溶加材を加熱し、溶融する際のレーザービームのオフセット適用を示し、このレーザービームのオフセット適用は、レーザー溶接中のバナジウム管の熱暴露を制限し、バナジウム系膜の微細構造の変化を最小限に抑え、好ましくは防ぎ、バナジウム系膜の外側に設けられた触媒層を損傷しないように設計されている。
【0040】
この技術を使用して、レーザーろう付け接合部のバナジウム系膜は、バナジウム系膜のバルク微細構造と実質的に同じである、ブリッジ結合に近接した微細構造を有する。実施形態では、ブリッジ結合に近接するバナジウム系膜の平均結晶粒径は、バナジウム系膜の平均結晶粒径と実質的に同じである。好ましくは、ブリッジ結合に近接するバナジウム系膜の平均結晶粒径は、バナジウム系膜の平均結晶粒径の10%以内、好ましくは5%以内である。
【0041】
バナジウム系膜のバルク微細構造は、バナジウム系膜の全般的又は全体的な微細構造をその膜の長さ全体にわたって含むことを理解すべきである。したがって、バナジウム系膜のレーザーろう付け接合部の微細構造は、バナジウム系膜の全体的微細構造又はバルク微細構造とほぼ同じである。したがって、レーザーろう付け接合部、より詳細にはブリッジ結合の形成により、バナジウム系膜の微細構造は実質的に変わらない。
【0042】
ブリッジ結合は、結合界面に対して任意の好適なオフセット位置に中心を置くことができる。実施形態では、オフセット位置は、結合インターフェースから少なくとも0.2mmオフセットで、好ましくは0.2mm~1mmの間で離隔している。
【0043】
結合部は、バナジウム系膜を取り付けることが望ましい任意の好適な金属又は金属合金で形成することができる。いくつかの実施形態では、結合部は、鋼、ステンレス鋼、ニッケル-クロム-鉄合金、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つで構成される。好適な材料の例としては、オーステナイト系ステンレス鋼、好ましくは300シリーズステンレス鋼、例えば304又は316ステンレス鋼が挙げられる。
【0044】
バナジウム系膜は、バナジウム又はバナジウム合金から形成することができる。典型的には、特定のバナジウム金属又は合金は、触媒膜型反応器(CMR)における使用の適合性に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、バナジウム系膜は、バナジウム;含有量が0原子%超で10原子%までのアルミニウム;及び含有量が0.01原子%未満であり、延性が10%超の伸長率、好ましくは11%超の伸長率であるTa、を含むバナジウム合金を含む。バナジウム合金は、0原子%超で5原子%までの、好ましくは0.2~4.5原子%の間の含有量を有するTi、Cr、Fe、Ni又はBから選択される結晶粒微細化元素を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、結晶粒微細化元素は、0.1~2原子%、好ましくは0.1~2原子%、より好ましくは0.1~1原子%の含有量を有する。
【0045】
バナジウム系膜は、任意の好適な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、膜は平面膜を含む。しかし、例示的な実施形態では、バナジウム系膜は管状である。管状膜は、前述の通り任意の好適な寸法を有することができる。いくつかの実施形態では、以下でより詳細に議論するように、薄壁管は、2~25mmの間、好ましくは3~20mmの間の外径、及び0.05~1mm、好ましくは0.1~1.5mmの壁厚を有する管を含む。いくつかの実施形態では、バナジウム系膜は、0.1~1mm、好ましくは0.2~0.8mm、より好ましくは0.2~0.5mmの厚さを有する。
【0046】
結合部は、任意の好適な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、結合部は平面である。しかし、例示的な実施形態では、結合部は管状である。結合部は、任意の好適な寸法を有することができる。実施形態では、結合部は、1~5mm、好ましくは1~3mm、より好ましくは1~2mmの厚さを有する。
【0047】
結合界面は、バナジウム系膜と結合部の当接面又は隣接面の間の接合部又は界面を含む。実施形態では、結合界面は、コネクタ構造の実質的に平坦な隣接面に平行に当接又は隣接する関係で配置されるバナジウム系膜の実質的に平坦な端面を含む。好ましくは、バナジウム系膜の平坦な端面は、25~100μm、好ましくは25~50μm、より好ましくは約25μmの許容誤差でコネクタ構造の隣接面に当接するように協同的に成形される。
【0048】
実施形態では、バナジウム系膜と結合部と溶加材料との当接面又は隣接面の間の界面は鋭く、これら3つの別個の部分の融合又は混合が実質的にない、好ましくはない。鋭い界面の存在は、結合部とバナジウム系膜を接合するために使用されるレーザーろう付けプロセスでの溶加材料によるバナジウム又は結合部の希釈がないことを意味し、したがって、そうしなければ材料を混合又は融合した場合に生じるであろう、材料特性へのいかなる有害な影響をも有利に回避する。
【0049】
本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様による方法によって製造されたコネクタ構造に接合され、シールされた少なくとも1つのバナジウム系膜を含む、触媒膜型反応器(CMR)又は膜セパレータのうちの少なくとも1つを提供する。
【0050】
本発明の膜は、構成が特定のCMR又は膜分離器構成に提供することができる特定の利点に基づいて選択された、任意の好適な構成を有することができる。
【0051】
CMRは、本質的に、合成ガスを、膜に隣接する触媒床に通して一方向に沿って導く二次元デバイスである。平らな膜は、管状の膜よりも製造が簡単で安価であるが、膜が外端の周りでシールされるため、シール面積がより大きくなる。このシール構成は、より大きなシール領域を提供するため、ラフィネートガス流と透過ガス流との間で漏れが発生しやすい可能性がある。管状膜により、管状CMRを使用できるため、シール面積を削減することができる。管型反応器では、管の各端部にのみシールが必要である。本発明の接合及びシール方法を使用して、これらのシールを提供することができる。類似の考慮事項は、膜分離装置の構成にも適用することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明の膜は、好ましくは管を含む管状構成を有する。管は、所望の寸法にすることができる。いくつかの実施形態では、外径は2~25mmの間、好ましくは3~24mmの間、好ましくは5~15mmの間、好ましくは6~13mmの間、及びより好ましくは8~12mmの間である。いくつかの実施形態では、管の壁厚は1mm以下、好ましくは0.1~1.5mmの間、好ましくは0.05~1mmの間、より好ましくは0.5mm未満、及びより好ましくは0.25mm以下である。一例示的実施形態では、管状膜は以下の仕様を有する。
・長さ:≧100mm
・外径:9.52mm(3/8インチ)(3/8”)
・壁厚:≦0.25mm
【0053】
いくつかの例示的実施形態では、管状膜は、バナジウム;含有量が0原子%超で10原子%までのアルミニウム;及び含有量が0.01原子%未満であり、延性が10%超の伸長率、好ましくは11%超の伸長率であるTa、を含むバナジウム合金を含む薄壁管を含む。
【0054】
本発明の第10の態様の膜の合金含有量及び機械的特性、特に延性は、本発明の第1の態様及び第2の態様について上述したものと同じであり、本発明のこの態様に等しく適用することを理解すべきである。
【0055】
いくつかの実施形態では、バナジウム合金は、0原子%超で5原子%までの、好ましくは0.2~4.5原子%の間の含有量を有するTi、Cr、Fe、Ni又はBから選択される結晶粒微細化元素を更に含む。いくつかの実施形態では、結晶粒微細化元素は、0.1~2原子%、好ましくは0.1~2原子%、及びより好ましくは0.1~1原子%の含有量を有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、バナジウム合金は、すべて6個の結晶粒子、好ましくは8個の結晶粒子の最小サンプルサイズに基づいて、5.0mm未満、好ましくは5.5mm未満、好ましくは4.0mm未満、好ましくは4.5mm未満、更により好ましくは3.0mm未満、また更により好ましくは2.0mm未満、最も好ましくは1.0mm未満の結晶粒子直線切片を有する。
【0057】
特定の実施形態では、微細構造は樹状突起を含む。これらの実施形態では、結晶粒子直線切片値は、6個の結晶粒子、好ましくは8個の結晶粒子の最小サンプルサイズに基づいて、好ましくは500マイクロメートル未満、好ましくは450マイクロメートル未満、より好ましくは50~450マイクロメートル、より好ましくは50~400マイクロメートル、更により好ましくは50~300マイクロメートル、より好ましくは100~350マイクロメートル、及び更により好ましくは100~200マイクロメートルである。
【0058】
加えて、バナジウム合金は、0.5mm超、好ましくは0.4mm以下、好ましくは0.3mm以下の平均サイズを有する空隙を含まないことがまた好ましい。結晶粒子直線切片は、ASTM E112-113の方法を使用して、Olympus社の「Stream Essential」画像解析ソフトウェアを使用して決定することができる。特に明記しない限り、結晶粒子直線切片は、結晶粒子が等軸ではない(例えば円柱状)状況における、結晶粒子の成長方向に対して垂直な幅の測定値である。
【0059】
管状膜は、前述の通り任意の好適な寸法を有することができる。いくつかの実施形態では、以下でより詳細に議論するように、薄壁管は、2~25mmの間、好ましくは3~20mmの間の外径、及び0.05~1mm、好ましくは0.1~1.5mmの壁厚を有する管を含む。
【0060】
実施形態では、本発明において使用されるバナジウム基板を構築するために使用されるバナジウム合金は、800~1500℃の熱処理温度及び50~500MPaの圧力を有する精製された又は熱処理されたバナジウム合金である。実施形態では、熱処理は、バナジウム合金を1000~1400℃、好ましくは1050~1380℃の間、より好ましくは最高1400℃、更により好ましくは約1200℃の温度にさらすことを含む。実施形態では、熱処理は、バナジウム合金を50~400MPa、好ましくは75~350MPa、更により好ましくは約200MPaの圧力にさらすことを含む。
【0061】
実施形態では、熱処理されたバナジウム合金は、10%超の伸長率、好ましくは11%以上の伸長率、より好ましくは13%以上の伸長率、更により好ましくは14%以上の伸長率の延性を有する。
【0062】
本発明の第5の態様は、バナジウム系膜と金属結合部との間にレーザーろう付け接合部を形成するためのレーザービームの使用であって、
結合部のコネクタ構造にバナジウム系膜の部分を取り付ける工程であって、結合部は、バナジウム系膜とは異なる金属で形成されており、コネクタ構造は、バナジウム系膜の部分が着座する凹部及びバナジウム系膜の端面がコネクタ構造の隣接面に近接するか、実質的に当接する結合界面を設けている、工程と;
チラー機構を結合界面に近接したバナジウム系膜と熱的接触させて、取り付け、操作する工程と;
レーザービームを使用して、結合部に位置する溶加材にレーザービームを向け、レーザービームのビーム端を、レーザービームによるバナジウム系膜の直接加熱を減衰させる距離だけ、結合界面から離隔して結合部上でオフセット位置に配置することによって、結合部上の溶加材を少なくとも溶加材の液相線温度まで加熱し、これにより、溶加材がオフセット位置からバナジウム系膜に、結合界面上にわたって流れることができるようにする工程と;
溶加材を冷却して、バナジウム系膜と結合部との間で、結合界面上にわたり溶加材のブリッジ部を形成する工程と、
を含む使用を提供する。
【0063】
本発明のこの第5の態様は、本発明の第1、第2、第3、及び第4の態様のそれぞれに関する上記の特徴を含むことができることを理解すべきである。
【0064】
ここで、本発明の特定の好ましい実施形態を示す添付図面の図を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】本発明の実施形態によるレーザーろう付け方法及び機構の概略図を提供する。
【
図2】
図1に示したレーザーろう付け方法及び機構を使用して形成された、得られたレーザーろう付け接合部の概略図を提供する。
【
図4】プロトタイプの管状触媒膜型反応器(CMR)の写真を提供する。
【
図5】(a)バナジウム管をステンレス鋼マウントに接合するために使用されるレーザー溶接技術の概略図、及び(b)得られたレーザー溶接接合部の光学顕微鏡写真を示す、比較のレーザー溶接の例を示す。
【
図6A】(a)本発明の一実施形態によるレーザーろう付け方法及び機構の写真、及び(b)得られたレーザーろう付け接合部の光学顕微鏡写真を示す。
【
図6B】(a)本発明で使用することができるチラーの実施形態の等角図、及び(b)そのチラーの実施形態の縦断面図を示す。
【
図6C】本発明の実施形態によるレーザーろう付け方法及び機構の概略図を提供し、溶加ワイヤの角度が管上に供給されることを示している。
【
図7(a)】結晶粒径に対するチルブロックの効果を示す2つのサンプルの光学顕微鏡写真画像、(a)チラーブロックを利用する本発明による方法を使用して接合されたサンプル、を提供する。
【
図7(b)】結晶粒径に対するチルブロックの効果を示す2つのサンプルの光学顕微鏡写真画像、(b)チラーブロックを使用せずに接合された比較サンプル、を提供する。
【
図7(c)】結晶粒径に対するチルブロックの効果を示す2つのサンプルの光学顕微鏡写真画像、(c)レーザー接合/溶接前のバナジウム管サンプルの結晶粒構造を示す比較サンプル、を提供する。
【
図8】
図7(a)に示されたサンプルのバナジウム膜とろう付け合金との間の界面を示す一連のSEM画像を提供する。
【
図9】
図7(a)に示されたサンプルのバナジウム膜とろう付け合金との間の界面を示す一連のSEM画像を提供する。
【
図10A】本発明の実施形態によるレーザーろう付け実験セットアップの概略図を提供する。
【
図10B】チラーを使用しない比較レーザーろう付け実験セットアップの概略図を提供する。
【
図11A】チラーを利用して、
図10に示した実験的レーザーろう付け機構を使用して実施された2つの別個のレーザーろう付けランの温度対時間のプロットを提供する。
【
図11B】チラーを利用して、
図10に示した実験的レーザーろう付け機構を使用して実施された2つの別個のレーザーろう付けランの温度対時間のプロットを提供する。
【
図12A】チラーを利用して、
図10に示した実験的レーザーろう付け機構を使用して実施された2つの別個のレーザーろう付けランの温度対時間のプロットを示す
図11A及び11Bに対する比較実験結果を提供する。
【
図12B】チラーを利用して、
図10に示した実験的レーザーろう付け機構を使用して実施された2つの別個のレーザーろう付けランの温度対時間のプロットを示す
図11A及び11Bに対する比較実験結果を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明は、バナジウム又はバナジウム合金膜を異なる金属、好ましくはステンレス鋼に接合するための方法及び関連するろう付け技術であって、レーザー接合/溶接機構を利用する、方法に関する。この方法は、異なる金属を一緒に接合するために、接合部の付近で溶加材を溶融するレーザーろう付け技術を含む。得られたろう付け接合部により、圧縮シールを使用して管材に結合され、シールされた同等の管状膜と比較して、管状膜を所定の容積の反応器モジュール内により緊密に充填することができるため、このことにより所定の反応器モジュール容積の相対的分離効率が向上する。
【0067】
異なる金属を接合することは、金属の熱的特性及び機械的特性の違いのために困難になる可能性がある。接合されるべき2つの材料の厚さが異なる場合、これは更に困難になる可能性がある。例えば、出願人が使用するバナジウム又はバナジウム合金の膜管は、典型的には、この管が結合される金属結合部よりもはるかに薄く繊細である。実施形態では、V系管は、金属結合部の数mmに対して0.2~0.5mmの厚さを有する。更に、接合技術は理想的には、
・V合金管の微細構造を変更するべきではない;
・触媒層を損傷するべきではない;
・H2下でのサイクリング中にシールを保持するべきである。
【0068】
レーザー溶接は、加えられた熱負荷を局所化できる溶接技術である。レーザービームは集中した熱源を提供し、これにより狭く深い溶接及び高い溶接率が可能になる。レーザービーム溶接の出力密度は高く(1MW/cm2のオーダー)、これにより熱の影響を受ける領域が小さくなり、加熱速度及び冷却速度が速くなる。レーザーのビーム幅(スポットサイズ)は、0.2mm~13mmの間で変えることができるが、本発明では、より小さいサイズのみを溶接に使用する。貫通の深さは、供給電力量に比例するが、焦点の位置にも依存する、すなわち、焦点がワークの表面よりわずかに下にある場合、貫通は最大になる。溶接速度も供給電力量に比例するが、ワークの種類及び厚さにも依存する。
【0069】
本発明は、バナジウム系膜を、溶加材を使用して異なる材料から形成された結合部に接合するために使用される、ろう付けプロセスのためのレーザー溶接装置を使用する。ろう付けは、同じ金属又は異なる金属をかなりの強度で接合する能力を提供する。理解できるように、ろう付けは、接合部に溶加材を溶融させて流し込むことにより2つ以上の金属部品を接合する金属接合プロセスであり、溶加材は隣接する金属よりも低い液相線温度を有する。ろう付けは、ワークの溶融を伴わないという点で溶接とは異なり、また、同様のプロセスでより高い温度を使用する一方で、半田付けよりもはるかに緊密に適合した部品を必要とするという点で、半田付けとは異なる。
【0070】
ろう付けプロセスにおいて、溶加材は、本発明ではレーザー溶接ビームである高温装置を使用して溶融する。溶加材は、好適な雰囲気又はAr等のカバーガス、及び任意選択によりフラックスによって保護されながら、その溶融(液相線)温度よりわずかに高く加熱される。しかし、フラックスを使用する必要がないことを理解すべきである。液体の溶加材は、母材の上に流れ(濡れとして知られている)、毛細管現象によってぴったり合った部品間の隙間に流れ込む。溶加材の冷却により、ワークを接合させる。この結合は、バナジウム系膜と結合部との間に液密シールを提供する。
【0071】
図1及び
図2は、本発明の実施形態による、レーザーろう付け機構及び関連するレーザーろう付け方法(
図1)、並びに得られた接合され、シールされたろう付け製品(
図2)を示す概略図を提供する。
【0072】
図1は、本発明の実施形態による基本的なろう付け機構50を示す。この機構50は以下を含む:
1)バナジウム系膜52;
2)バナジウム系膜とは異なる金属、典型的にはステンレス鋼で形成された結合部54。結合部54は、コネクタ構造56、好ましくはバナジウム系膜52の端部58が着座する溝又は凹部を含む。結合界面60が、バナジウム系膜52の端面62とコネクタ構造56の隣接面64との間に形成される;
3)結合界面60に近接したバナジウム系膜52と熱的接触しているチラー機構66;
4)レーザー溶接機構(図示せず)からのレーザービーム68。レーザービーム68は、結合界面60から少なくとも0.1mm離れたオフセット位置X及び結合部54上に配置されたビーム端69を有するように、結合部64上に配置されている。レーザービームは0.4~1.5mmのビーム幅を有する;
5)結合界面60上のオフセット位置Xでレーザービーム68の下に供給された溶加材70。
【0073】
レーザーろう付け機構50は、バナジウム系膜を金属結合部に接合し、シールするために使用される。このようにして、バナジウム系膜52の端部58は、バナジウム系膜52の端面62がコネクタ構造56の隣接面64に近接して、好ましくは強く当接して、コネクタ構造56に取り付けられる。次いで、チラー機構66を操作して、結合界面60に近接したバナジウム系膜52を冷却する。チラー機構66を操作して、バナジウム基板がバナジウムの再結晶温度より低いピーク温度に達するのを防ぎ、したがって、バナジウム系膜52が800℃以下のピーク温度に加熱されるのを防ぐ。選択された溶加材70は、レーザービーム68の下のオフセット位置に供給されて、結合部54上の溶加材70を少なくとも溶加材70の液相線温度まで加熱し、こうして溶加材70がオフセット位置Xからバナジウム系膜52の上面に結合界面60上にわたって、流れることができる。溶加材70は、典型的には、レーザービーム68の中心に中心を有する液滴を形成する。液滴の直径は、結合界面60上に溶加材70のブリッジ部を形成するのに十分な、溶融溶加材70の量によって決定される。例えば、バナジウム系膜52と結合部54が管状である場合、これらの回転を介して、結合界面に対しレーザービーム68と溶加材70を移動させ、オフセット位置Xへ溶加材70を連続的に供給することにより、結合界面60上に溶加材70の連続体が形成される。次いで、溶加材70を冷却して、固化し、バナジウム系膜52と結合部54との間で、結合界面60上にわたり溶加材70のブリッジ部75(
図2)を形成する。溶加材70を、典型的には、チラー機構66との協働よる対流冷却及び/又は伝導性冷却を介して冷却する。しかし、対流冷却等の強制冷却も同様に使用することができる。
図2に示すように、溶加材70のブリッジ部75は、オフセット位置に中心を有し、結合界面上で少なくとも0.3mmだけ延びている本体を含む。液滴の形成により、溶加材のブリッジ部75は、典型的には、例えば
図6A(b)及び
図7に示されるように、半円形の断面を有する。
【0074】
管状バナジウム系膜52及び結合部54に関し、隣接する管状体52、54の周囲の結合界面60にわたる溶加材70の連続体(すなわち、溶加材70のブリッジ部75)により、これらの管状体52、54を一緒に接合して、シールする。
【0075】
図示された機構50を使用するろう付け方法は、レーザー接合/溶接中のバナジウム系膜52の熱曝露を、
・バナジウム系膜52がレーザーによって直接加熱されるのを防ぐために、溶加材70を加熱及び溶融する際に、結合部54上にレーザービーム68のオフセット位置決めと;
・結合部54からの熱伝導を介してバナジウム系膜52が過度に加熱されないことを保証するためのチラー機構66の使用と、
の両方を利用することにより制限する。
これらの特徴の組合せは、バナジウム系膜52の微細構造の変化を最小限にし、好ましくは防ぎ、パラジウム等のバナジウム系膜52の外側に適用された触媒層を損傷しない。したがって、得られたろう付け製品80(
図2)は、バナジウム系膜52の所望の結晶構造及び機械的特性を保持する。
【0076】
溶加材70は、溶融されて、結合部54とバナジウム系膜52との間にブリッジ部を形成することができる任意の好適な金属又は金属合金を含むことができる。溶加材70は、バナジウム系膜及び金属結合部の両方よりも低い液相線温度を有するように選択される。前述のように、複数の溶加材料を使用することができる。好ましい実施形態では、溶加材は、銅又は銅系合金を含む。
【0077】
結合部54は、任意の好適な構成を有することができる。しかし、バナジウム系膜52が管状である場合、結合部54も管状である。結合部52は、バナジウム系膜58を取り付けることが望ましい任意の好適な金属又は金属合金で形成することができる。前述のように、好ましくは、結合部は、オーステナイト系ステンレス鋼、好ましくは300シリーズのステンレス鋼、例えば304又は316ステンレス鋼で構成される。
【0078】
バナジウム系膜52は、触媒膜型反応器(CMR)における使用の適合性に基づいて、バナジウム又はバナジウム合金から形成することができる。好適なバナジウム合金の例は、出願人の米国特許出願公開第2015/0368762号明細書に教示されており、その内容はこの参照により本明細書に組み込まれている。このバナジウム合金は、バナジウム;含有量が0原子%超で10原子%までのアルミニウム;及び含有量が0.01原子%未満であり、延性が10%超の伸長率、好ましくは11%超の伸長率であるTaを含む。バナジウム合金は、0原子%超で5原子%までの、好ましくは0.2~4.5原子%の間の含有量を有するTi、Cr、Fe、Ni又はBから選択される結晶粒微細化元素を更に含むことができる。バナジウム系膜52は、任意の好適な構成を有することができるが、例えば米国特許出願公開第2015/0368762号明細書に記載されているように、好ましくは管状である。レーザー接合/溶接前のバナジウム管の結晶粒構造の例を、
図7(c)に示す。
【0079】
図示されたコネクタ構造56は、バナジウム系膜52の端部58をその中に着座させるようにサイズ決めされた、結合部54の端部内に形成された実(リベート)を含む。実深さは、バナジウム系膜52の厚さに対応する深さを有する。実のくぼみ又はトラフ82は、コネクタ構造56の平坦面64の形成プロセスの成果物であり、この形成プロセスではフライス工具は実の基部83に追加の深さミリングし、コネクタ構造56の平坦面64全体が所望の平坦度を有することを保証することが留意される。このようにして、結合界面60は、コネクタ構造56の平坦な隣接面64に平行な当接関係で配置されたバナジウム系膜52の平坦な端面62の平らな当接面から形成される。
【0080】
図示されたチラー機構66は、コネクタ構造56に着座したバナジウム系膜52の端部58に当接して取り付けられた銅伝導体を含む。チラー機構66は、結合界面60に近接したその端部58に伝導的に接触する。実施形態では、チラー機構66は、好ましくは、結合界面60から10mm以内、好ましくは5mm未満以内に配置される。冷蔵機構又は他の対流若しくは伝導性冷却機構も同様に使用することができることを理解すべきである。
【0081】
結合部54に接合されシールされたバナジウム系膜52は、典型的には触媒膜型反応器(CMR)において使用される。典型的なCMR100が
図3に示されており、水性ガスシフト転換触媒106とH
2選択膜108との密接な結合を示している。図示されたCMR100の概略図は、CO+H
2+H
2Oフィード101を有するプレート膜、それを反応器シェル104に供給し、この反応器シェルに触媒106と膜108が位置することを示す。フィード101は、触媒106内でその水性ガスシフト(WGS)を受けて、ラフィネート110(H
2除去合成ガス)及びH
2透過物112を生成する。任意の窒素スイープ102も、膜から出るH
2に使用することができる。発熱性であるため、低温ではWGS反応が優先されるが、高温では反応速度が優先される。この制限を克服するために、商業用WGSプロセスには、高温ステージ(約450℃、高速反応用で必要な反応器サイズを縮小)と低温ステージ(約200℃、高温ステージからの残留COの転換を最大化する)とが含まれる。CMRにより高温でのWGSの高転化率が可能になり、これによって低温反応器を排除することができる。石炭由来の合成ガスの処理に適用される場合、CMRは、ほぼ完全なCOからH
2への転換、H
2精製、及び燃焼前のCO
2回収を単一のデバイスで達成することができる。他の実施形態では、CMRは、他の用途、例えば天然ガス改質、アンモニア分解等に使用することができることを理解すべきである。
【0082】
本発明のバナジウム合金から形成された管状膜を含むことができるプロトタイプの管状CMR200を
図4に示す。管状CMR200は、管状シェル204内に管状膜208を組み込み、シェル204内の環状スペースを触媒が占有する。この構成の最大の利点は、シール(214等)が管の各端部にのみ必要であり、シール面積が削減されることである。ここでも、CMR200が、ラフィネート210(H
2除去合成ガス)及びH
2透過物212を生成する。また管状CMRを使用すると、容易に使用可能な管材及び圧縮継手をより多く使用することができ、簡単で信頼性の高い組立体を作成することができる。
【0083】
膜の管状構成は、シール面積が大幅に削減され、構造がより単純であるという点で、平面構成よりも大きな利点を提供する。バナジウム系の合金膜は、パラジウム合金膜と比較した場合、製造においてさらなる利点を提供する。Pd系の膜は、コストを最小化し、水素透過性を最大化するために非常に薄くなければならない。これには、多孔性支持構造を使用することが必要である。V系合金の高い透過性により、自己支持型であり得るより厚い膜が可能になる。これにより、製造プロセスの複雑さとコストが大幅に削減される。
【0084】
所望の合金管材は、以下の寸法を有することを意図している:
・直径(2~25mm);及び
・壁厚(0.05~1.00mm)。
【0085】
管状膜の造形は、引張変形を使用し、これは、引張変形プロセスのための材料形状寸法及び材料特性要件を含む:
- 変形プロセスのプリフォーム材料は、例えば、直径25~50mm、高さ100~300mmの円柱形等、十分なサイズで鋳造又は焼結する必要がある。このことは、非常に高い溶融力を必要とし、高い溶融温度(最大2000℃)を有するV系合金にとって大きな課題を示し、耐火性封じ込め材料と反応する傾向につながる、
- 供給材料は十分な延性を有するべきである。伸長率が10%未満の材料は、小さな管状膜を製造することを目的とした変形プロセスには好適でないと考えられる。
【0086】
上記の特性が満たされる場合、ロッドキャスティング、押出、及び引抜を含む、小型の管状部品を製造するための標準的な製造経路を使用することができる。
【0087】
実施例
比較実施例1-直接レーザー溶接
バナジウム-アルミニウム合金管をステンレス鋼取り付け管に接合するための直接レーザー溶接技術を調査した。実験セットアップ300の概略図を
図5に示す。
図5(a)に示すように、管状バナジウム管302を、ステンレス鋼取り付け管304の取り付け溝又は実に着座させた。ステンレス鋼取り付け管304は、バナジウム管302の短い部分(約15mm)をその中に着座させるようにサイズ決めされた取り付け溝303を含むように機械加工された。レーザーの方向は306で示す。
【0088】
190V、4.6mS、25Hzレーザー溶接装置(ALW 200、Alpha Lasers GmbH社、Germany)を使用して、これら2つの部分を一緒に溶接した。レーザー溶接装置には、3.5rpmで移動する0.7mmビームを使用し、2mm/秒で移動する0.4mm Ni 20%Crワイヤフラックスを含む。
図5(a)に示すように、レーザービーム306は、バナジウム管とステンレス鋼取り付け管のとの間の接合部に直接投射した。
【0089】
図5(b)に示す得られた溶接接合部の光学顕微鏡写真を参照すると、レーザー溶接が接合部でバナジウム金属とステンレス鋼とを接合していることがわかる。しかし、バナジウム管とステンレス鋼の両方の微細構造は、接合部の熱影響領域(HAZ)において変化する。特に、接合部に近接したHAZ内のバナジウム管の結晶粒径は、管本体の結晶粒径よりもはるかに大きく、これはHAZ内の金属の溶融から生じたものである。これらの大きな結晶粒子は、バナジウム管に脆弱な領域をもたらし、管は大きな結晶粒子の結晶粒界に沿って割れたり、又は別様に破砕する可能性がある。
【0090】
HAZにおける結晶粒子形態に対する有害な影響は、直接レーザー溶接技術は、バナジウム系膜をステンレス鋼又は他の金属結合部に接合し、シールするのに好適でないことを示す。
【0091】
実施例1-レーザーろう付け
バナジウム-アルミニウム合金管をステンレス鋼の取り付け管に接合するためのレーザーろう付け技術を調査した。実験セットアップは、上記の
図1に示したものと同じである。セットアップの写真も
図6A(a)に示す。この実験では、結合部54は、
図1に示すように取り付け溝又は実56を含むように機械加工されたステンレス鋼取り付け管を含む。取り付け溝56は、バナジウム膜管52の短いセクション(約15mm)をその中に着座させ、バナジウム膜管52の端面62に対して平行な当接面64を提供するようにサイズ決めされた。
図1及び6A(a)に示すように、銅製チルブロック(
図1の66、
図6A(a)の366、及び
図6Bに詳細に示されている)は、バナジウム膜管52と熱的接触して、バナジウム膜管52と結合部54との間の結合界面60に近接して位置していた。
図6A(a)及び6Cに示されるガス管372を介してシールドガスが提供される。このシールドガスは、溶接グレードのアルゴンを含み、10L/分で溶接領域に向けられる。
【0092】
図6Bに示すように、銅製チルブロック366は、開口部/開口369Bを使用してバナジウム膜管52の周りに取り付けられるスリーピースデバイス(three piece device)を含み、バナジウム膜管52と結合部54との間の結合界面60に接近又は近接している。キャップ367は、相補的なねじを使用して細長い本体部368に固定され、銅マウント部369Aをその中に保持する。
図6A(a)に示すように、キャップ367は空冷式である。実施形態では、銅マウント部369Aは、2つの係合可能な半片で形成される。これは、銅製チルブロック366を膜に締め付けるのを助ける。
【0093】
220V、4.6mS、25Hzのレーザー溶接装置(図示せず)(ALW 200、Alpha Lasers GmbH社、Germany)を使用して、これら2つの部分52及び54を一緒に溶接するために使用されるレーザービームを提供した。レーザー溶接装置には、3.5rpmで移動する0.8mmビームを使用した。ビームは、接合部から0.3mmのオフセットで、接合部に近接したステンレス鋼表面に向けられた。直径0.4mmのCu 3%Si、1%Mn溶加ワイヤ(
図6A(a)の370)をビーム(
図6A(a)の368)の下に向け、2mm/秒でその位置に供給した。レーザービーム368を焦点F(
図6C)でステンレス鋼に当ててCu 3%Si溶加ワイヤを溶融し、そのオフセット位置Xから結合界面60上にわたって流れるようにした。オフセットを意図的に使用して、バナジウム合金管がレーザービーム368によって直接加熱されるのを防ぐ。溶加ワイヤ370は、
図6Cに示すように、水平から10度のフィード角βで供給された。更に、結合界面60に近接したバナジウム膜管52に熱的に結合したチラー機構66、366を使用することにより、ステンレス鋼結合部54からバナジウム膜管52への熱伝導によってバナジウム膜管52が過度に加熱されないことが保証される。
【0094】
図6A(b)は、得られたレーザーろう付け接合部の光学顕微鏡写真を示す。得られた接合部は、2つの材料がCu 3%Siフィラーで接合されて、これら2つの材料上にわたって結合ブリッジを形成する、典型的なろう付け構成を有する。接合部における又は接合部に近接したステンレス鋼又はバナジウム管のいずれの部分でも、過剰な溶融は発生していなかったように見える。
【0095】
実施例2-チラー/チルブロックの使用の効果
バナジウム-アルミニウム合金管をステンレス鋼の取り付け管に接合するためのレーザーろう付け技術を調査した。実験セットアップは、例1において上記の
図1に示したものと同じである。最初の実験では、銅製チルブロック(
図1の66、
図6A(a)の366)は、バナジウム膜管52と熱的接触して、バナジウム膜管52と結合部54との間の結合界面60に近接して位置していた。
図6(a)に示されるガス管372を介してシールドガスが提供される。2回目の実験ランでは、銅製チラーブロックは使用しなかった。各サンプルの結晶粒子形態を決定するために、各実験サンプルの断面図について光学顕微鏡画像を得た。チラーサンプルのSEM画像も得た。
【0096】
図7(a)及び(b)は、結晶粒径に対するチルブロックの効果を示す2つのサンプルの光学顕微鏡写真を提供する。画像の目的で、各サンプルが樹脂マトリックスに取り付けられていることに留意すべきである。結晶粒径の測定は、直線切片法を使用したASTM E112-12を使用して行った。
図7(c)は、バナジウム管の元の結晶粒径を示す。バナジウム管の元の結晶粒径は約41ミクロンであった。
図7(a)は、チルブロックを使用したサンプルを示す。平均結晶粒径は41ミクロンであると測定された。この結晶粒径は、バルクバナジウム膜管、及び溶接/ろう付け前の管の結晶粒径及び形態に類似していた。
図7(b)は、チルブロックを使用せずに接合したサンプルの比較例を示す。平均結晶粒径は62ミクロンであると測定された。この結晶粒径は、バルクバナジウム膜管、及び溶接/ろう付け前の管の結晶粒径及び形態よりも大きく、チルブロックを使用しない接合プロセスから熱影響領域が生じたことを示している。
【0097】
図8及び
図9は、
図7(a)に示されたサンプルのバナジウム膜管52と溶加材70(すなわち、ろう付け合金)のブリッジ部75との間の界面を示す一連のSEM画像を提供する。これらは、組成のばらつきを明らかにできる後方散乱電子画像である。
図8及び9における画像それぞれが示すように、界面は鋭く、これはろう付け合金によるバナジウムの希釈がないことを意味する。
【0098】
実施例3-チラー/チルブロックの使用の温度効果
バナジウム-アルミニウム合金管をステンレス鋼の取り付け管に接合するための、本発明のレーザーろう付け技術の温度効果を調査した。実験全体のセットアップの概略図を
図10に示す。実験全体のセットアップは、以下に説明する温度センサー(熱電対)を追加して、例1において上記の
図1に示したものと同じであることに留意すべきである。
【0099】
これらの実験では、銅製チルブロック466の質量は53gで、長さは30mmであった。バナジウム管452の長さは変えることができるが、この実験では、質量は0.042g/mmであった。したがって、銅製チルブロック466で覆われたバナジウムの(バナジウム管452の)質量は1.26gであった。バナジウム管452を、質量4.5gのステンレス鋼結合部454上に溶接した。
【0100】
温度データは、バナジウム管452の内側に、端部から0.3mm、180度離れて、スポット溶接された2本の細い熱電対ワイヤ471(
図10上のTC内側-
図11A~12Bに示すプロット上で内側tc1及び内側tc2とラベル付けされている)を使用して、レーザーによるろう付けプロセス中に収集した。熱電対470(
図10上のTC外側-
図11A~12Bに示すプロット上で外側tcとラベル付けされている)も、端部から2mmのところ、バナジウム管452の外側に取り付けた。熱電対472(
図11A~
図12Bに示されたプロット上のチル)も、銅製チルブロック466に、その分割面上で、前面から約1mm、結合界面460から1mmのところに溶接された。
【0101】
2回のランを含む第1の実験シーケンス(
図11A及び11Bを参照)では、銅製チルブロック(466、
図10A)を、バナジウム膜管452と熱接触させて、バナジウム膜管452と結合部454との結合界面460に近接して配置した。2回のランを含む第2の実験シーケンス(
図12A及び12B並びに
図10Bの実験セットアップを参照)では、この実験シーケンスのレーザーろう付け操作中に銅チラーブロック466を使用しなかった。第2の実験シーケンスによって、バナジウム膜管452の冷却に対するチラーの温度効果を決定することができる比較結果が提供された。
【0102】
試験の結果を
図11A~12Bに提供し、
図11A及び11Bでは、第1の「冷却された」実験シーケンスを示し、
図12A及び12Bでは、第2の「非冷却」実験シーケンスを示す。以下のことに留意すべきである、すなわち、
・銅製チルブロック466とバナジウム膜管452との間の冷接点は一定ではなく、適用されるオフセットは、開始時に測定された値によって各ランに対して固定された。発明者は、読み取り値の誤差は2度又は3度に制限されると考えている。
・内側tc1の位置は、繰り返しラン間で交換された。
- 銅製チルブロック466を用いて(
図11A及び11B):
・ラン1(
図11A)では、内側tc1は、溶接開始点から180度のところにあり、内側tc2は、内側tc1から180度離隔していた。
・ラン2(
図11B)では、内側tc1は、溶接開始点のところにあり、内側tc2は、内側tc1から180度離隔していた。内側tc2からのデータは、このランに関して正確に記録されていなかったように見える。
- 銅製チルブロック466を用いないで:
・ラン1(
図12A)では、内側tc1は、溶接開始点のところにあり、内側tc2は、内側tc1から180度離隔していた。
・ラン2(
図12B)では、tc1は、溶接開始点から180度のところにあり、内側tc2は、内側tc1から180度離隔していた。
・発明者は、チルtcデータと外側tcデータ(
図11A~12Bに示す)の両方が、散乱放射による直接加熱によってバイアスを示す可能性があることに留意する。このことは、レーザー自体からの反射に加えて、溶融/高温ビーズからの放射に起因する可能性がある。しかし、収集されたデータによって提供される一般的な傾向は、それらのポイントでの温度効果を示している。
【0103】
図12A及び12Bに示すように、銅製チルブロック466を使用しない溶接中のバナジウム膜管452の到達に関し、記録された各点のピーク温度は919℃であった。比較すると、銅製チルブロック466からの冷却を使用した溶接中のバナジウム膜管452の到達に関し、記録された各点のピーク温度は733℃であった。銅製チルブロックの温度は、周囲温度23℃から35℃に上昇した。
【0104】
バナジウムの再結晶温度は800~1010℃の間である。したがって、銅製チルブロック466は、バナジウム膜管452のピーク温度を再結晶化温度よりも低くする効果があった。したがって、銅製チルブロック466を使用する場合、微細構造及び結晶粒子形態は、溶接中に再結晶プロセスの影響を受けない。
【0105】
用途
主な用途は、高温の水素選択性合金膜として使用されるバナジウム合金管のコーティングとしての用途である。これらのデバイスは、H2O、CO、CO2、CH4、及びH2Sをも含む混合ガス流から水素を分離する。一特定用途は、H2の生成及びガス化石炭及びバイオマスからのCO2の回収のための水素選択性合金膜の使用である。
【0106】
他の可能な用途としては、移動型発電又は分散型発電用の燃料電池で使用するための高純度水素ガスを貯蔵するための媒体、航空宇宙用途の電離放射線の遮蔽、及び熱エネルギー貯蔵媒体としてのものが挙げられる。
【0107】
当業者は、本明細書に記載された発明が、具体的に記載されたもの以外の変形及び修正を受けやすいことを理解するであろう。本発明は、本発明の精神及び範囲内にあるそのようなすべての変形及び修正を含むことが理解される。
【0108】
「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」又は「含む(comprising)」という用語を本明細書(クレームを含む)で使用する場合、述べられた特徴、整数、工程又は構成要素の存在を特定するものとして解釈されるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、工程、構成要素又はそれらの群の存在を排除するものではない。
【符号の説明】
【0109】
50 ろう付け機構
52 バナジウム膜管/バナジウム系膜
54 ステンレス鋼結合部
56 コネクタ構造/取り付け溝
58 バナジウム系膜の端部
60 結合界面
62 バナジウム系膜の端面
64 当接面/コネクタ構造の平坦面
66 チラー機構
68 レーザービーム
69 ビーム端
70 溶加材
75 ブリッジ部
80 ろう付け製品
82 トラフ
83 実の基部
100 CMR
101 CO+H2+H2Oフィード
102 窒素スイープ
104 反応器シェル
106 触媒
108 膜
110 ラフィネート
112 H2透過物
200 プロトタイプの管状CMR
204 管状シェル
208 管状膜
210 ラフィネート
212 透過物
214 シール
300 実験セットアップ
302 管状バナジウム管
303 取り付け溝
304 ステンレス鋼取り付け管
306 レーザービーム/レーザーの方向
366 チラー機構
368 レーザービーム/本体部
370 溶加ワイヤ
372 ガス管/Arシールドガス
367 キャップ
369A 銅マウント部
369B 開口部
452 バナジウム膜管
454 ステンレス鋼結合部
460 結合界面
466 銅製チルブロック
470 熱電対
471 熱電対ワイヤ
472 熱電対