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特許7239500イモーテルのエッセンシャルオイル及びオリガヌムの抽出物を含む化粧品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】イモーテルのエッセンシャルオイル及びオリガヌムの抽出物を含む化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20230307BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20230307BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230307BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230307BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q17/00
A61Q17/04
A61Q19/00
A61Q19/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019572204
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 FR2018051412
(87)【国際公開番号】W WO2019002714
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】1756021
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517121892
【氏名又は名称】ラボラトワール・エム・アンド・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルディーヌ・ルメール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・セニーソ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・カーン
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ポルテ
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0258783(US,A1)
【文献】国際公開第2012/153064(WO,A2)
【文献】特開2007-016077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0141019(US,A1)
【文献】特開2011-236149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0346191(US,A1)
【文献】HASSINE D.Ben et.al.,Chapter 44 Curry Plant (Helichrysum sp.) Oils,Essential Oils in Food Preservation, Flavor and Safety.,2016年,pp.395-403
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨラナ(Origanum majorana)のテルペン抽出物、及びイモーテルのエッセンシャルオイルを含前記イモーテルが、カレープラント(Helichrysum italicum)由来である、化粧品組成物。
【請求項2】
前記イモーテルのエッセンシャルオイルが、植物の花又は頭花から得られることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記マヨラナの抽出物が、茎、葉及びそれらの混合物から選択される植物の地上部分から得られることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記マヨラナの抽出物が、植物の葉から得られることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記マヨラナの抽出物が、水、モノアルコール、グリコール、ポリオールおよびそれらの混合物から選択される、少なくとも一つの溶媒を含む、プロトン性極性溶媒を使用した抽出により得られることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
皮膚老化の兆候に対抗するための、及び/又は皮膚の乾燥に対抗するための、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記皮膚老化の兆候が、しわの形成、皮膚のたるみ及び顔色の輝きの減少から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記皮膚老化の兆候が、UV照射及び/若しくはブルーライト、喫煙、並びに/又は汚染への暴露により引き起こされる、請求項又はに記載の組成物。
【請求項9】
皮膚老化の兆候に対抗するための、及び/又は皮膚の乾燥に対抗するための、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物を皮膚に局所的に塗布することを含む、化粧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イモーテルのエッセンシャルオイル及びオリガヌム(origanum)属の少なくとも一つの植物、特にマヨラナ種のテルペン抽出物を含む、化粧品組成物に関し、特に皮膚の老化及び/又は乾燥肌の兆候に対抗するためのスキンケア用のそれらの化粧的使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚老化は、遺伝及び環境因子によって決定される。差異は、他の臓器に影響を与えるように、皮膚に影響を与え、年齢と相関する避けられない変化に相当する、内因性老化、又は実際の老化、並びに環境因子、特に太陽、すなわち光暴露に位置する場所への慢性暴露に関する、特徴的な皮膚の臨床の、組織学の、及び機能的な変化に関係する外因性老化に大抵区別される。
【0003】
これらの二つの作用は、緊密に関連しており、どちらの場合も、酸化的ストレスをもたらす、活性酸素種(ROS)の生成が皮膚老化において決定要因である。それは、様々な生理学的な機構による過剰な生成、又は(喫煙、汚染、ブルーライト、又は紫外線暴露等の)外因性中毒症状に起因する、有機物中に存在する、過剰なフリーラジカルとして定義される。これらの活性酸素種(ROS)及びフリーラジカルは、ミトコンドリアの呼吸等の細胞の代謝により、あるいは生体異物又は太陽光線の解毒作用により結果として生成され得る。
【0004】
原則として、このフリーラジカルの生理学上の生産は、細胞防御系により制御されている。しかしながら、この系は、抗酸化物質の欠乏、若しくは抗酸化酵素活性の減少などの、様々な因子、又は活性酸素種の過剰生産により影響を受け、結果として、抗酸化物質/酸化促進剤防御平衡の不均衡、及び酸化的ストレス状態をもたらす。この酸化的ストレスは、皮膚老化に重要な役割を果たすことが広く受け入れられている。特に、酸化的ストレスの影響下で、皮膚中の脂質及びタンパク質の分解は、皮膚のたるみ、しわ及びシミの生成、並びに皮膚の弾力及び顔色の輝きの損失を導く。還元バランスの不均衡があった場合、過剰に生産される一酸化窒素は、表皮の角質化に必要な、タンパク質の合成を抑制し、結果としてバリア機能を破壊することが観察された。
【0005】
他の現象は、バリア機能の破壊、特に老化に関する、角化細胞の再生及び分化能の減少を導く。表皮のバリアの機能障害は、表皮の脱水をもたらし、代わりに、酸化及び汚染物質に皮膚のより大きな透過性を導く。
【0006】
したがって、皮膚バリアを強化する手段を有し、酸化的ストレスに対する皮膚を保護する利点は、理解される。
【0007】
本出願人は、フリーラジカル補足及び保湿機能(国際公開第2003/018730号)により、又は、バリア機能を強化するために(国際公開第2012/153064号)、抗酸化剤として、テルペン化合物が豊富な、イモーテルのエッセンシャルオイルの使用をすでに提案している。
【0008】
酸化的ストレスに対して効果的であると記載されている、地中海地方の他の植物のうち、マヨナラの又はマヨラナ(Origanum majorana)種由来のポリフェノール(欧州特出願公開許第3069710号明細書)又はカルノシン酸(米国特許第9040066号明細書)が言及されてもよい。他のマヨラナの抽出物は、アンチエイジング活性剤としても知られる。したがって、BASF社は、商品名Dermagenist(登録商標)のもと、DNAメチル化阻害特性のための、テルペン豊富なマヨラナの水抽出物を販売している。したがって、この抽出物は、紫外線暴露の効果のもと、経年劣化する弾性繊維の形成を刺激するために、活用され得る(仏国特許発明第2999926号明細書)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2003/018730号
【文献】国際公開第2012/153064号
【文献】欧州特許出願公開第3069710号明細書
【文献】米国特許第9040066号明細書
【文献】仏国特許発明第2999926号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、皮膚老化の兆候を効果的に対抗する、特に酸化的ストレスに対して、皮膚バリア、及び皮膚の反応を強化することを可能にする化粧品組成物を提供する需要があるままである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は、オリガヌムのテルペン抽出物とイモーテルのエッセンシャルオイルの組み合わせが、酸化的ストレスへの応答に関連すると知られるNrf2経路を相乗的に活性化させることを示した。Nrf2転写因子は、実際、酸化的及び求電子的なストレスにこたえて、多数の細胞保護遺伝子の誘導発現の中心役割を果たす、強力な転写活性化因子である。Nrf2のターゲット遺伝子は、特に、グルタチオン合成、活性酸素種排除及び細胞解毒酵素に関する。本出願人は、相乗的でもある、オリガヌムのテルペン抽出物とイモーテルのエッセンシャルオイルの組み合わせの手段によって、表皮の分化過程に関係する遺伝子の発現の増加も示した。したがって、本出願人は、上記組み合わせが、皮膚老化の兆候及び皮膚の乾燥に対して有効な化粧品組成物の処方化を可能にすることを明らかにした。
【0012】
これに関して、本発明の目的は、イモーテルのエッセンシャルオイル及びオリガヌム属の少なくとも一つの植物のテルペン抽出物を含む化粧品組成物である。
【0013】
本発明の別の目的は、特に、ブルーライト、紫外線照射、喫煙、及び/若しくは汚染への暴露により引き起こされる、皮膚老化の兆候、特にしわの形成、皮膚のたるみ、及び顔の艶の輝きの損失に対抗するための、並びに/又は皮膚の乾燥に対抗するための、上記組成物の使用である。
【0014】
本発明の別の目的は、特に、ブルーライト、紫外線照射、喫煙、及び/若しくは汚染への暴露により引き起こされる、皮膚老化の兆候、特にしわの形成、皮膚のたるみ及び顔の輝きの損失に対抗するための、並びに/又は皮膚の乾燥に対抗するための。皮膚に上記組成物の部分的な塗布を含む、化粧的方法である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、イモーテルのエッセンシャルオイルを使用する。本発明によって使用されてもよいイモーテルの種のうち、ヘリクリスム(Helichrysum)属由来のすべての種、特にカレープラントであるHelichrysum italicum(又はHelichrysum angustifolium D.C)、サンディエバーラスティングである、ヘリクリスムアレナリウム(Helichrysum arenarium)及びヘリクリスムストエカス(Helichrysum stoechas)又は一般のエバーラスティングフラワーが、この例に限定されないが、挙げられる。カレープラントのエッセンシャルオイルが、亜種の問題を無視して、好ましく使用される。
【0016】
本明細書内において、用語「エッセンシャルオイル」は、イモーテルのあらゆる部分、又は全植物、及び特に例えば、その花又は頭花などの、その地上部分に存在する揮発性の有機化合物の水蒸気蒸留の生産物を意味する。
【0017】
イモーテルのエッセンシャルオイルは有利には、本発明による組成物の総質量に対して、0.001質量%~5質量%、及び好ましくは、0.001質量%~0.1質量%を表す。
【0018】
この組成物内では、特に、オレガノ(Origanum vulgare)種及びマヨラナ(Origanum majorana)種の、オリガヌム属の少なくとも一つの植物のテルペン抽出物と組み合わせられ得る。好ましくは、オリガヌム属の植物は、マヨラナ種に属する。
【0019】
オリガヌム属の植物のすべて又は一部、特に根、茎、樹皮、花、種、芽及び/又は葉から、及び好ましくは茎、葉及びそれらの混合物から、好ましくは葉から得られる抽出物が使用されてもよい。
【0020】
抽出物は、テルペン化合物の主な質量の画分の抽出に適したあらゆる方法により、特に水、(エタノール又はイソプロパノールなどの)モノアルコール、(プロピレングリコール又はブチレングリコールなどの)グリコール、(キシリトールなどの)ポリオール及びそれらの混合物から選択される少なくとも一つの溶媒を含む、好ましくはからなる、プロトン性極性溶媒を使用した抽出により、得られ得る。抽出物は、低温条件(冷浸)又は温かい条件、好ましくは4℃~20の温度で、行われ得る。使用される植物の量は、溶媒の質量に対して、1質量%~10質量%を表し得る。抽出工程は通常、続いて、例えば、遠心分離による、固体及び上澄みの分離工程、特にろ過による上澄みの回収工程、及び任意選択で、蒸留工程がある。得られた抽出物は、任意選択で、噴霧乾燥、及び/又は凍結乾燥により乾燥され得る。抽出物を脱臭及び/又は脱色する工程は、抽出の後に上記工程のあらゆる段階において、行われ得る。
【0021】
マヨラナ種のそのような抽出物は、特に、BASF社の商品名Dermagenist(登録商標)から利用可能である。
【0022】
オリガヌムの抽出物は、有利には、本発明による組成物の総質量に対して0.001質量%~5質量%、及び好ましくは0.01質量%~0.4質量%を表す。
【0023】
下記実施例に表すように、本発明による植物抽出物の組み合わせが、酸化現象に対する皮膚の防御に関係する遺伝子の、及び表皮分化の制御に関係する遺伝子の発現の相乗的な活性化を可能にすることが示された。
【0024】
本明細書内に関して、用語「相乗」は、本発明による抽出物の組み合わせの使用で得られる効果が、二つの抽出物のどちらか一方を使用して得られる効果より著しく大きいことを意味する。
【0025】
上記組み合わせは、生理学的に許容可能な媒体、特に、化粧的に許容可能な媒体、すなわち、化粧的使用に不適合であるうずき又は赤味を生じさせない媒体、を一般に含む化粧品組成物に含まれる。この媒体は好ましくは、(例えばオリガヌムの抽出物を含む)水性相、及び(一般にイモーテルのエッセンシャルオイルを含む)脂肪相を含む。組成物は、好ましくは、水中油若しくは油中水のエマルション、又は水中油の分散体の形態である。
【0026】
水性相は、水、及び任意選択でポリオール及び水性ゲル化剤から選択される少なくとも一つの成分を含む。水は有利には組成物の総質量の40質量%~80質量%、好ましくは、60質量%~70質量%を表す。ポリオールは、特にグリセロール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール及びそれらの混合物から選択されてもよく、組成物の総質量の5質量%~30質量%、好ましくは15質量%~25質量%を表してもよい。
【0027】
用語「水性ゲル化剤」は、水和により水分子を静止させ、結果として水性相の粘度を上昇させる能力のあるポリマーの化合物を示す。そのようなゲル化剤は、セルロース及びそれらの誘導体、変性デンプン、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、及びグアーガム又はローカストビーンガムなどの植物ゴム等の多糖;特に任意選択で架橋されたナトリウムアクリレートホモポリマー、かつ任意選択で、少なくとも一つの他のモノマー、有利には2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とのアクリル酸のコポリマー、特にナトリウムアクリレート及び/若しくはアルキル(メタ)アクリレートのコポリマー、並びに/又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及び/若しくは(ポリエトキシ)アルキル(メタ)アクリレートのコポリマー、これらのポリマーは任意選択で架橋され、かつそれらの混合物である合成ポリマーから選択され得る。
【0028】
その部分に対して、脂肪相は1つ以上の揮発性及び/又は不揮発性オイルを含んでもよい。揮発性オイルの例は、イソドデカンなどの分岐のC10-C13のアルカン、及び直鎖のC10-C13のアルカンである。不揮発性オイルとしては、特に、
-飽和直鎖C-C10(好ましくはC-C10)の酸及び飽和直鎖C10-C18(好ましくはC10-C14)のモノアルコールのモノ及びポリエステル、飽和直鎖C10-C20の酸及び分岐又は不飽和C-C20(好ましくはC-C10)のモノアルコールのモノ及びポリエステル;分岐又は不飽和C-C20の酸及び分岐又は不飽和C-C20のモノアルコールのモノ及びポリエステル;分岐又は不飽和C-C20の酸及び直鎖C-Cのモノアルコールのモノ及びポリエステルから選択される酸及びモノアルコールのエステル;
-カプリル酸及びカプリン酸トリグリセリド及びトリヘプタノインなどのC-C12の脂肪酸トリグリセリド;
-(リノール酸、ラウリン酸、及びミリスチン酸などの)分岐及び/又は不飽和C10-C20脂肪酸;
-(オクチルドデカノール及びオレイルアルコールなどの)分岐及び/又は不飽和C10-C20脂肪アルコール;
-特にオリーブオイルから抽出される植物性スクワラン(C30)及びヘミスクワラン(C15)などの炭化水素;
-炭酸ジカプリリル及び炭酸ジエチルヘキシルなどの炭酸ジアルキル;
-ジカプリリルエーテルなどのジアルキルエーテル;並びに
-それらの混合物が挙げられる。
【0029】
上述の成分の1以上含む植物性オイルもまた挙げられてもよい。
【0030】
酸とモノアルコールのエステルとしては、ココカプレート及びココカプリレートの混合物、エチルマカダミエート、シアバターエチルエステル、イソステアリルイソステアレート、イソノニルイソノナノエート、エチルヘキシルイソノナノエート、ヘキシルネオペンタノエート、エチルヘキシルネオペンタノエート、イソステアリルネオペンタノエート、イソデシルネオペンタノエート、イソプロピルミリステート、オクチルドデシルミリステート、イソプロピルパルミテート、エチルヘキシルパルミテート、ヘキシルラウレート、イソアミルラウレート、セトステアリルノナノエート、プロピルへプチルカプリレート、並びにそれらの混合物などのモノエステルが具体的に挙げられてもよい。使用されてもよい他のエステルは、ジイソプロピルアジペート、ジエチルヘキシルアジペート、ジイソプロピルセバケート及びジイソアミルセバケートなどの酸及びモノアルコールのジエステルである。
【0031】
植物性オイルの例は、具体的に、小麦胚芽、ひまわり、アルガン、ハイビスカス、コリアンダー、グレープシード、ゴマ、トウモロコシ、アンズ、キャスター、シア、アボカド、オリーブ及び大豆油、甘扁桃油、及びパーム、菜種、コットンシード、ヘーゼルナッツ、マカダミア、ホホバ、アルファルファ、ポピー、カボチャ、ゴマ、マロー、クロスグリ、マツヨイグサ、ラベンダー、ルリジサ、キビ、大麦、キヌア、ライ麦、ベニバナ、ククイノキ、トケイソウ、ジャコウバラ、エキウム、ヒメアマナズナ又はカメリアオイルである。
【0032】
脂肪相は、少なくとも一つの脂肪相構造化剤を含んでもよい。用語「脂肪相構造化剤」は、組成物中に含まれるオイルを濃くする能力のある化合物を意味し、特に、ワックス、脂肪相、ゲル化剤、及び粘りのある脂肪基質並びにそれらの混合物からも選択される。
【0033】
好ましい一実施態様によると、組成物は、少なくとも一つのアンチエイジング活性剤も含み、しわ、皮膚のたるみ及び/若しくはシミの形成を抑制並びに/又は治療するために適した活性剤を特に含み、角化細胞及び/若しくは線維芽細胞の分化、並びに/又は増殖を刺激する剤;グリコサミノグルカン並びに/又はコラーゲン、並びに/又は表皮真皮固定線維及び/若しくは表皮真皮弾性繊維の合成を刺激する剤;コラーゲン並びに/又はグリコサミノグルカン、並びに/又は表皮真皮固定線維及び/若しくは表皮真皮弾性繊維の分解を抑制する剤;抗-糖化剤;脱色剤及び/又はメラニン形成抑制剤;並びにそれらの混合物のフリーラジカル補足剤から特に選択され得る。
【0034】
そのようなアンチエイジング活性剤の例は、特に、具体的には、アスコルビルグルコシドの、アスコルビン酸、その塩、そのエーテル及びそのエステル;アデノシン;リボース;はちみつ抽出物;具体的には、スイートアーモンドから抽出されたタンパク質及び糖プロテイン;具体的には、コメ、ハイビスカス種子、又はルーピン由来の加水分解植物タンパク;カルシニン塩酸塩、パルミトイルペンタペプチド-4(Pal-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser)及びMatrixyl(登録商標)3000及びMatrixyl(登録商標)Synthe’6の商品名でSederma社から特にそれぞれ販売されるパルミトイルトリペプチド-38、Nutrazen(登録商標)の商品参照でLucas Meyer社により販売されるパルミトイルトリペプチド-8、Leuphasyl(登録商標)溶液の商品名でLipotec社により販売されるペンタペプチド-18、Neoendorphin(登録商標)の商品名でSandream社により販売されるsh-デカペプチド-9、及びX50 Myocept(登録商標)粉末の商品参照でInfinitec社により販売されるパルミトイルヘキサペプチド-52などの、ポリタンパク及び疑似ジペプチド;メチルシラノールマンヌロネートなどの、シラン;具体的にライ麦粉から抽出されるアラビノキシラン、及び具体的にカラマツ由来のガラクトアラビナン;ヒアルロン酸及びその塩;具体的にミモザから抽出されるポリフェノール;レモンから抽出されるものを含む、α-ヒドロキシ酸;ミツガシワ、野生の三色スミレ、スギナ、オランダセンニチ(Acmella oleracea)、アザミ(Onopordum acanthium)、ノコギリソウ(Achillea millefolium、具体的にBASF社からNeurobiox(登録商標)製品に含まれる)、エンベリア(Embelia concinna、SEPPIC社により販売される)、ウチワサボテン(Opuntia ficus indica、AquaCacteen(登録商標)の商品名でMibelle AG Biochemistry社より特に販売される)、セージ(Salvia officinalis、Provitalグループより特に販売される)、ニンジンボク(Vitex negundo、Neurovity(登録商標)の商品参照でLaboratoires Expanscienceより特に販売される)、クリ、デイジー、アルガンノキ、オート麦、ひまわり、デイジー、ボタン又はディルなどの植物(の通常水性抽出物);藻、具体的には、Jania rubens、ワカメ(Ungaria pinnatifada)、Alaria esculenta、又はNannochlorosis oculataのサンゴモの水性抽出物;特にギンバイカのエッセンシャルオイル;亜鉛グルコネート及び/又は銅グルコネート;並びにそれらの混合物である。
【0035】
変化又は追加として、本発明により使用される組成物は、少なくとも一つの張力剤を含んでもよい。それは、機械作用により皮膚に緊張を与え、及び結果として、しわ及び小じわの外観を減少させる能力のある、張力ポリマー、具体的には、多糖、特に藻又は海洋プランクトン、又は植物ゴムの抽出物であってもよい。それは、ボトックスのような種類の、生理学的に作用する張力ポリマーであってもよく、例えば、Gattefosse社によりGatuline(登録商標)Expressionの名で販売される、オランダセンニチ(Acmella oleracea)の抽出物;BASF BCS社によりMyoxinol(登録商標)LS9736の名で販売されるハイビスカス種子の抽出物、又はLipotec社によりArgireline(登録商標)の名で販売されるアセチルヘキサペプチド-8類のペプチドである。
【0036】
本発明による組成物は、エマルションの、脂肪相及び/又は水性相中に分散され、皮膚への局所的な塗布に適合するよう与えられ得る様々な成分を含んでもよい。
【0037】
それは、従って、ポリオキシエチレンエステル、任意選択で、ポリエトキシル化ソルビタンエステル、任意選択で脂肪酸及びグリセロールのポリエトキシル化エステル、脂肪アルコール及びアルキルグリコシドなどの糖のエーテル、並びにそれらの混合物などの、少なくとも一つの一般的な非イオン性水中油又は油中水の乳化剤を含有してもよい。乳化剤は、組成物の総質量の2質量%~10質量%、及び好ましくは4質量%~6質量%を表してもよい。しかしながら、本発明による組成物は、好ましくは乳化剤が含まれない。
【0038】
本発明による組成物は、1つ以上の粉体充填剤を含んでもよく、それは、有利には、多孔質又は中空の形態であり、好ましくは多孔質の微小粒子である。これらの微小粒子は、原則として、実質的に球状である。これらの充填剤は具体的に、:
-多糖粉末、具体的に天然デンプン粉末、変性デンプン粉末又はセルロース粉末;ポリ(メチルメタクリレート)などのアクリルポリマー、ポリアミド、又はポリオレフィンの粉末;サンゴモなどの乾燥藻の粉末;などの有機充填剤;
-シリカ、クレイ、パーライト及びタルクなどの無機充填剤;
-並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0039】
シリカは、好ましくは、無機充填剤として使用される。
【0040】
これらの充填剤は、組成物の総質量に対して、1質量%~5質量%を表し得る。
【0041】
本発明による組成物は、有機及び/又は無機の光防護剤、ブルーライト及び/又はUVA及び/又はUVBに活性がある剤;Pollustop(登録商標)及びSolashield(登録商標)の商品名で、Solabia社により販売される製品などの、抗-汚染防護フィルムを形成する能力のあるポリマーを形成する多糖-ベースのフィルム;α-及びβ-ヒドロキシ酸などの落屑剤;剥離粒子;香料;抗酸化剤;金属イオン封鎖剤;pH調整剤、防腐剤;顔料;染料;及びそれらの混合物から具体的に選択される添加剤も含み得る。
【0042】
この組成物は、皮膚への局所的な塗布に適したあらゆる形態で、具体的には、ミルク、クリーム、ローション、ゲル、ペースト又はフィルムの形態であり得る。組成物は、通常、リーブオン組成物であり、具体的にはケア組成物、ファンデーションなどのメイクアップ組成物、又は日焼け止め組成物である。
【0043】
本発明による組成物は、(例えば、少なくとも30歳、又は更には少なくとも40歳での)皮膚老化の兆候を示す人の体の少なくとも一つの部分、及びより具体的には、顔、首、及び/又は襟足に塗布され得る。変化として、それは、皮膚の乾燥に対抗する目的で、体のすべて、具体的には胸、腕、足、及び腹に塗布され得る。
【0044】
この組成物は、一日1回以上、例えば朝及び/又は晩に、治療される部分に塗布され得る。
【0045】
変化として、本発明による組成物は、特に顔、及び任意選択で体の、皮膚をケアするために、使用される洗い流す組成物であってもよい。この場合、それは、例えば、洗浄ペースト又はマスクとして使用され得る。
【実施例
【0046】
本発明は、下記実施例の観点からより明らかに理解されるが、実施例は、単に説明の手段として与えられ、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲を制限する意図はない。
【0047】
実施例1:ヒト皮膚外植体への生体外試験
トランスクリプトーム分析を、皮膚内に特定の遺伝子の発現において、本発明による植物の組み合わせの効果を示すために、行った。
【0048】
トランスクリプトームは、与えられる組織又は細胞型において、ゲノムの一部の発現に由来する一連のメッセンジャーRNAである。トランスクリプトームの特性評価及び定量化は、特定の条件で制御される遺伝子を同定すること、これらの遺伝子を制御するための機構を決定すること、これらの遺伝子の活性のための発現又は経路のネットワークを定義することを可能にする。多くの異なるメッセンジャーRNAの発現濃度の同時測定に使用される技術の一つが、DNAチップ技術である。DNAチップは、完全なゲノムの規模の発現において、かなり早く測定し、違いを視覚化することを可能にする。
【0049】
1)材料及び方法
サンプル調整
マヨラナ種(Origanum majorana)の葉の水性抽出物、水蒸気蒸留により得られた、イモーテル(Helichrysum italicum)のエッセンシャルオイル、又は二つの抽出物の組み合わせを、活着条件の下、皮膚外植体の存在中に置いた。イモーテルのエッセンシャルオイルを、培地中に塗布される前に、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に10%で溶解させた。マヨラナ抽出物を培地に直接希釈した。
【0050】
34歳の患者の腹部形成由来の4つの皮膚外植体を、マヨラナ抽出物、イモーテルのエッセンシャルオイル、それらの組み合わせの存在下、24時間、Biopredic社からの「皮膚培地」中、37℃5%COで、湿気環境(98%)で、気相液相-界面で、単独で培養した。1%でDMSO溶媒と処理されない又は処理された、4つの皮膚外植体を、同じ条件で培養した。
【0051】
下記表1にそれぞれの組成物の塗布濃度をまとめた。
【表1】
【0052】
総RNA抽出
培養後、皮膚外植体を、RNeasy RNA抽出ミニキット(Qiagen, Hilden,ドイツ)の製作者により推薦される緩衝液内に置き、その後総RNAを同様のキットを使用して抽出した。総RNAを定量化し、その後その質を、BIOanalyzer2100電気泳動装置とそのRNA 6000 Nano LabChip Kit分析キット(Agilent Technologies, Santa Clara,アメリカ)を使用して検証した。
【0053】
オリゴヌクレオチドチップ上の遺伝子発現の測定及びデータ取得:
1”x3”のガラスカバーガラス(SurePrint G3 Human Gene Expression 8x60K v2 Microarray - G4851B, Agilent Technologies, Santa Clara, アメリカ)上の60量体のオリヌクレオチドチップを遺伝子発現分析に使用した。
【0054】
書類及び完全な実験手順は、Agilent Technologiesのウェブサイトから利用できる。
【0055】
簡潔に、cDNAへ、及びその後のcRNAへの、総RNAの逆転写及び増幅、並びにシアニン3でのその標識化を、Low Input Quick Amp標識化キット(Agilent Technologies)を使用して行った。cRNAをRNeasyミニキット(Qiagen, Hilden,ドイツ)を使用して精製し、ハイブリダイゼーションを、マイクロアレイハイブリダイゼーションチャンバーキット(Agilent Technologies, Santa Clara,アメリカ)で行った。
【0056】
走査像をその後、Feature Extractionソフトウェア(Agilent Technologies, Santa Clara,アメリカ)を用いて抽出し、規格化した。
【0057】
データの統計的な分析をGenespring GX 13ソフトウェア(Agilent Technologies, Santa Clara, USA)を用いて行った。
【0058】
Ingenuity Pathways Analysisソフトウェア(Ingenuity(登録商標) Pathway Analysis (IPA), Ingenuity Systems, Redwood City, CA, アメリカ- http://www.ingenuity.com)をその後、分析に使用して、マヨナラ抽出物、イモーテルのエッセンシャルオイル又はその組み合わせにより調節された生物学上の経路の活性の状態を予測した。
【0059】
それぞれの処理条件として、データの再現性を増加させる目的で、4つの独立した標識化実験を行った(すなわち、それぞれの条件で独立に処理された4つの皮膚外植体に相当する、条件当たり4つのヌクレオチドチップである)。
【0060】
それらの異なる発現濃度が、コントロール外食体のそれと比較して、2の因子により大きくなる場合、処理された皮膚外植体によって発現された遺伝子が、導入又は阻害されたと考えられた。未処理の外植体は、マヨナラ抽出物で処理された条件に対するコントロールとしての役割を果たし、1%でDMSO溶媒で処理された外植体は、イモーテルのエッセンシャルオイル、又はマヨナラ抽出物及びイモーテルのエッセンシャルオイルの組み合わせで処理される条件に対するコントロールとしての役割を果たした。未処理、又はDMSO溶媒で処理された外植体、及び活性剤、又はそれらの組み合わせでの処理された外植体での遺伝子発現において、統計的な差異を計算するため、偽陽性率に対して収集された、調節されたスチューデント検定を、GeneSpringソフトウェアの方法により、Benjamini & Hochbergの手順を用いて適用した。p値が0.05以下である遺伝子は、有意に発現されたと考えられた。
【0061】
これらの遺伝子を、その後、Ingenuity Pathways Analysisソフトウェアを用いて分析した。このソフトウェアは、様々な処理条件の下、調節された遺伝子の機能的分析、これらの遺伝子にあるシグナル経路の分析、及びこれらの経路の上流の調節遺伝子の分析を可能にする。(減少した中心の可変の)AZ-成績を、有意に調節された遺伝子に関して、ソフトウェアにより計算した。AZ‐成績が2超又は-2未満は、導入又は抑制された生物学上の経路が偶然だけでなく、かなり具体的に行われる99%の信頼区間を示唆する。
【0062】
2)結果
2a)抗酸化防御:Nrf2経路の活性
下記表は、マヨナラ抽出物、イモーテルのエッセンシャルオイル及びそれらの組み合わせでの皮膚外植体の処理を受けて、抗酸化防御のNrf2経路に関する遺伝子の発現の差異を表す。
【0063】
【表2】
【0064】
マヨナラ抽出物、イモーテルのエッセンシャルオイル及びそれらの組み合わせでの皮膚外植体の処理にこたえて、抗酸化防御に対するNRF-2経路のZ-成績を、使用されるソフトウェアで計算し、下記表2に示した。
【0065】
【表3】
【0066】
この表から、イモーテルのエッセンシャルオイルに反して、単独で使用される、マヨナラ抽出物は、NRF-2経路を阻害する傾向を有することが明らかになった。しかしながら、これらの効果は有意ではない。一方、二つの抽出物の組み合わせは、明らかにNRF-2経路の活性をもたらすことが明らかであり、それによって、これら二つの抽出物の相乗効果が示された。
【0067】
2b)表皮分化:バリア機能の増加
下記表3は、マヨナラ抽出物、イモーテルのエッセンシャルオイル及びそれらの組み合わせでの皮膚外植体の処理を受けて、表皮分化に関する遺伝子の発現の差異を表す。
【0068】
【表4】
【0069】
この表は、角化細胞の分化に関する特定の遺伝子が、上方調節され、角化細胞分化を阻害する他の遺伝子が、下方調節されることを示す。更に、成長因子(HGF、エピレグリン)の遺伝子も上方調節され、維持されるために、角化細胞を急速に増殖させる制限を可能にする。これらの遺伝子のすべては、表皮バリアの強化を可能にし得る。
【0070】
3)結論
DNAチップを用いて生体外トランスクリプトーム分析の方法により、本実施例は、本発明の組成物が、表皮の再生、及び酸化的ストレス管理に特に関する遺伝子を刺激することを可能にし、それにより、特に、酸化的ストレスを生む外部刺激による、皮膚の老化に対抗すること、及び皮膚のバリア機能を強化することを可能にすることを示した。
【0071】
実施例2:化粧品組成物
下記組成物を、当業者にとって従来の方法で、下記に示される質量比で原料を混合することにより、調整した。
【0072】
【表5】