IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヨット ゲー ヴァイサー ゼーネ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフトの特許一覧

特許7239501工具交換装置、このような工具交換装置を備えた工作機械、および関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】工具交換装置、このような工具交換装置を備えた工作機械、および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/24 20060101AFI20230307BHJP
   B23B 29/32 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B23B29/24 Z
B23B29/32
B23B29/24 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019572603
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 EP2018068991
(87)【国際公開番号】W WO2019012059
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】102017115951.7
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508366880
【氏名又は名称】ヨット ゲー ヴァイサー ゼーネ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】J.G. Weisser Soehne GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann-Georg-Weisser-Strasse 1, 78112 St. Georgen im Schwarzwald, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン フェーレンバッハー
(72)【発明者】
【氏名】トアステン レティヒ
(72)【発明者】
【氏名】ライナー イェルク
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-134536(JP,U)
【文献】実開昭55-175041(JP,U)
【文献】特開昭50-008989(JP,A)
【文献】実開昭56-147050(JP,U)
【文献】実開昭63-197005(JP,U)
【文献】特開2008-023703(JP,A)
【文献】特開2014-172139(JP,A)
【文献】米国特許第01406339(US,A)
【文献】米国特許第03162064(US,A)
【文献】米国特許第03371566(US,A)
【文献】米国特許第05424621(US,A)
【文献】英国特許出願公告第00101696(GB,A)
【文献】英国特許出願公告第00173967(GB,A)
【文献】国際公開第98/025729(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0139065(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
B23Q 16/00-16/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具交換装置(1)であって、それぞれ1つの工具(3)を収容するための、少なくとも2つの工具ホルダ(2)と、動装置(4)とが設けられている、工具交換装置(1)において、
前記駆動装置(4)は、少なくとも1つのロックエレメント(7)と、前記少なくとも2つの工具ホルダ(2)に少なくとも間接的に結合された少なくとも1つの対応エレメント(8)と、直線的な調整運動(22)を生じさせるための駆動部とを有しており、
前記駆動装置(4)によって、前記対応エレメント(8)の、回転軸(R)の周りに行われる回転位置決め運動(21)によって、前記工具ホルダ(2)は当該工具交換装置(1)のフレーム(5)および/またはベース体(5a)に対して相対的に作業位置(6)に移動可能であり、
前記ロックエレメント(7)および前記対応エレメント(8)は、前記回転軸(R)の方向に生じる、前記駆動部により生じる前記直線的な調整運動(22)によって互いに相対的に調整可能であり、
前記対応エレメント(8)および前記ロックエレメント(7)は、前記直線的な調整運動(22)が、前記回転位置決め運動(21)に変換されるように、共働し、これにより、前記工具ホルダ(2)は、前記ロックエレメント(7)と前記対応エレメント(8)との間の相対的な前記直線的な調整運動(22)によって、前記作業位置(6)に位置決めされ、かつ前記作業位置(6)においてロックされることを特徴とする、工具交換装置(1)。
【請求項2】
前記ロックエレメント(7)および前記対応エレメント(8)は、ロック位置(9)への前記ロックエレメント(7)の、前記対応エレメント(8)に対して相対的に実施される調整運動(22)が、かつ/または前記ロックエレメント(7)におけるロック位置(9)への前記対応エレメント(8)の、前記ロックエレメント(7)に対して相対的に実施される調整運動(22)が、前記対応エレメント(8)の前記位置決め運動(21)に変換され、該位置決め運動(21)によって前記工具ホルダ(2)が前記作業位置(6)に位置決め可能であるように、働する、請求項1記載の工具交換装置(1)。
【請求項3】
前記対応エレメント(8)の記位置決め運動(21)が、具ヘッド(23)の回転軸を中心にした回転運動であ、請求項1または2記載の工具交換装置(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの対応エレメント(8)は、前記少なくとも1つのロックエレメント(7)に対応して形成された歯形異形材および/またはクロー異形材(10)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の工具交換装置(1)。
【請求項5】
前記工具ホルダ(2)は、前記工具ホルダ(2)と前記対応エレメント(8)との間の相対運動が阻止されるように前記対応エレメント(8)に結合されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の工具交換装置(1)。
【請求項6】
当該工具交換装置(1)は、工具ヘッド(23)を有しており、該工具ヘッド(23)に、前記少なくとも2つの工具ホルダ(2)が配置または形成されており、かつ工具ヘッド(23)が、当該工具交換装置(1)の前記フレーム(5)および/または前記ベース体(5a)に対して相対的に移動可能ある、請求項1から5までのいずれか1項記載の工具交換装置(1)。
【請求項7】
前記ロックエレメント(7)は、前記フレーム(5)および/または前記ベース体(5a)に配置されており、前記対応エレメント(8)は、可動の工具ヘッド(23)または前記可動の工具ヘッド(23)に配置されている、または、
前記ロックエレメント(7)は、可動の工具ヘッド(23)または前記可動の工具ヘッド(23)に配置されており、前記対応エレメント(8)は、前記フレーム(5)に配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の工具交換装置(1)。
【請求項8】
前記ロックエレメント(7)は、前記対応エレメント(8)に関して、軸方向で固定されたクローエレメント(13)として形成されており、前記対応エレメント(8)は、該対応エレメント(8)の回転軸(R)に関して回転可能な、かつ記対応エレメント(8)に対して軸方向に変位可能な対応クローエレメント(12)として形成されており、それぞれ、前記対応エレメント(8)の前記回転軸(R)に対して斜めに位置している少なくとも1つのクロー側面(15)を有しており、前記クロー側面(15)は、互いに対応するように形成されており、これによって前記調整運動(22)は、前記クロー側面(15)を介して、前記対応エレメント(8)の回転位置決め運動(21)に伝達可能である、請求項1から7までのいずれか1項記載の工具交換装置(1)。
【請求項9】
当該工具交換装置(1)は調節装置(16)を有しており、該調節装置(16)によって、調節力を、少なくとも間接的に記工具ホルダ(2)に伝達可能であり、ロックされていない前記対応エレメント(8)は、前記工具ホルダ(2)と一緒に前記調節力を用いて自動的に、前記作業位置(6)から係合位置(17)に位置決め可能またはさらに移動可能であり、該係合位置(17)において前記ロックエレメント(7)は、新たに前記対応エレメント(8)との係合状態にすることができる請求項1から8までのいずれか1項記載の工具交換装置(1)。
【請求項10】
前記調節力の大きさが、前記ロックエレメント(7)と前記対応エレメント(8)との相互の相対位置に依存している、請求項9記載の工具交換装置(1)。
【請求項11】
前記調節力は、係合位置(17)にある前記対応エレメント(8)において最小値を取り、れ以外では、前記工具ホルダ(2)の位置決め運動(21)の方向または逆の方向に作用請求項9または10記載の工具交換装置(1)。
【請求項12】
前記調節装置(16)は、当該工具交換装置(1)の前記フレーム(5)または前記ベース体(5a)と前記対応エレメント(8)との間に配置されており、かつ/または磁力式の調節装置(16)として形成されている、請求項9から11までのいずれか1項記載の工具交換装置(1)。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の工具交換装置(1)を備えた工作機械(18)。
【請求項14】
当該工作機械(18)は駆動装置(4)を有しており
当該工作機械(18)は、ック装置(24)を有しており、該ロック装置(24)を用いて、前記工具交換装置(1)の前記ロックエレメント(7)は、少なくとも工具交換中に、当該工作機械(18)のフレーム(5)に対して相対的に固定可能である、請求項13記載の工作機械(18)。
【請求項15】
工具交換装置(1)使用して工具(3)を交換するための方法であって、
前記工具交換装置(1)には、
それぞれ1つの工具(3)を収容するための、少なくとも2つの工具ホルダ(2)と、
少なくとも1つのロックエレメント(7)と、前記少なくとも2つの工具ホルダ(2)に少なくとも間接的に結合された少なくとも1つの対応エレメント(8)と、直線的な調整運動(22)を生じさせるための駆動部とを有する駆動装置(4)と
が設けられている、方法において、
前記駆動装置(4)によって、前記対応エレメント(8)の、回転軸(R)の周りに行われる回転位置決め運動(21)によって、前記工具ホルダ(2)が前記工具交換装置(1)のフレーム(5)および/またはベース体(5a)に対して相対的に作業位置(6)に移動され、
さらに、前記ロックエレメント(7)および前記対応エレメント(8)は、前記回転軸(R)の方向に生じる、前記駆動部により生じる前記直線的な調整運動(22)によって互いに相対的に調整され、
前記対応エレメント(8)および前記ロックエレメント(7)は、前記直線的な調整運動(22)が、前記回転位置決め運動(21)に変換されるように、共働し、これにより、前記工具(3)を保持する工具ホルダ(2)のうちの1つを、前記ロックエレメント(7)と前記対応エレメント(8)との間の相対的な前記直線的な調整運動(22)によって、作業位置(6)に位置決めする、ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記ロックエレメント(7)を、前記工具ホルダ(2)を位置決めするために、前記対応エレメント(8)をロックするロック位置(9)に移動させ、かつ/または、前記対応エレメント(8)を、前記工具ホルダ(2)の位置決めのために、ロック位置(9)に移動させ、前記調整運動(22)を、前記対応エレメント(8)の位置決め運動(21)に変換る、
請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記ロックエレメント(7)または前記対応エレメント(8)が前記ロック位置(9)から解除された後で、前記工具ホルダ(2)、前記作業位置(6)から中間位置または係合位置(17)に調整する、請求項16載の方法。
【請求項18】
前記工具ホルダ(2)、調節装置(16)用いて、前記作業位置(6)から中間位置または係合位置(17)に調整する、請求項15から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記工具の交換前および/または交換後に、前記駆動装置によって、具送りを、切削加工中に実施する、請求項15から18までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具交換装置であって、それぞれ1つの工具を収容するための少なくとも2つの工具ホルダと、工具ホルダを工作機械のフレームおよび/または工具交換装置のフレームに対して作業位置に移動させることができる駆動装置と、が設けられている工具交換装置に関する。
【0002】
本発明はさらに、このような工具交換装置を備えた工作機械、および工具交換装置を使用して工作機械における工具を交換するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
このような工具交換装置、工作機械、および工具を交換するための方法も、従来技術から様々な実施形態で既に知られている。特に、高精度の加工では、工具のロックの可能性が特に重要である。従来技術から既知の工具交換装置では、モータによって駆動される駆動装置が使用されており、このような駆動装置を用いて工具ホルダを所望の位置に調整することができる。工具ホルダの所望の位置が得られると、工具ホルダは、別の駆動装置によって送られるロックエレメントを用いて、取られた位置にロックされ、次いでワークピースの加工を行うことができる。したがって、それぞれ固有の駆動部を有している、駆動装置およびロック装置を準備することが必要であり、このことには比較的大きなコストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゆえに、本発明の課題は、作業位置に工具ホルダを位置決めするため、および作業位置に工具ホルダをロックするためにかかるコストを減らすことができる、冒頭に述べた形式の工具交換装置、工作機械、および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、工具交換装置に向けられた独立請求項に記載の手段および特徴を備えた、冒頭に述べた形式の工具交換装置によって解決される。特に、冒頭に述べた形式の工具交換装置においてこの課題を解決するために、駆動装置は、少なくとも1つのロックエレメントと、少なくとも2つの工具ホルダに少なくとも間接的に結合された少なくとも1つの対応エレメントとを有しており、工具ホルダが、ロックエレメントと対応エレメントとの間の相対的な調整運動によって、作業位置に位置決めされ、かつ作業位置にロックされることが提案される。工具ホルダは、ロックエレメントと対応エレメントとが互いにロック位置に配置されている場合に、ロックされる。
【0006】
したがって、本発明の核となる思想は、工具ホルダをロックするために必要な調整運動であって、ロックエレメントおよび/または対応エレメントによって互いに対して実施される調整運動が、作業位置への工具ホルダの位置決めのために使用されるように、工具交換装置を構成することである。言い換えれば、工具交換装置は、ロックによって作業位置への工具ホルダの位置決めを行うように構成されている。
【0007】
したがって、本発明に係る工具交換装置では、工具ホルダの作業位置への工具ホルダの調整のための別体の駆動部を省くことができる。これは好適である。なぜなら、これによって、一方では必要な構造空間を減らし、他方では工具ホルダの調整およびロックのための所要エネルギを減らすことができるからである。
【0008】
ロックエレメントおよび対応エレメントは、ロックエレメントのロック位置へのロックエレメントの、対応エレメントに対して実施される調整運動が、対応エレメントの位置決め運動に変換可能であるように、好ましくは機械的に共働することができる。この位置決め運動によって、工具ホルダは作業位置に達することができ、最終的に対応エレメントにおけるロック位置にあるロックエレメントを用いて固定することができる。このとき、対応エレメントは、力伝達エレメントとして働くことができ、この力伝達エレメントを介して、ロックエレメントの駆動力を、作業位置への工具ホルダの位置決めのために作業位置に伝達することができる。
【0009】
しかしながらまた、ロックエレメントおよび対応エレメントは、ロックエレメントにおけるロック位置への対応エレメントの、ロックエレメントに対して実施される調整運動が、対応エレメントの位置決め運動に変換可能であり、この位置決め運動によって工具ホルダが作業位置に位置決め可能であるように、好ましくは機械的に共働することも可能である。
【0010】
好ましくは、ロックエレメントおよび対応エレメントは、ロックエレメントまたは対応エレメントの直線的な調整が、対応エレメントの回転位置決め運動を生じさせるように、機械的に共働することもできる。ロックエレメントの直線的な調整は、ロック位置へのロックエレメントの、対応エレメントに対して実施される調整運動によって行われる。対応エレメントの直線的な調整は、ロック位置への対応エレメントの、ロックエレメントに対して実施される調整運動によって行われる。対応エレメントの回転位置決め運動は、作業位置に対応する位置へと行うことができる。このようにして、工具交換装置を、例えば工作機械における工具リボルバで使用することができる。これに関連して、対応エレメントが工具交換装置のベース体に回転可能に支持されていると好適であることがある。
【0011】
ロックエレメントによって少なくとも2つの工具ホルダに、かつ/または少なくとも2つの工具ホルダが形成されていてよい工具ヘッドに伝達可能な位置決め運動は、直線運動または回転運動であってよい。回転位置決め運動は、工具ヘッドの回転軸周りに行うことができる。このとき、工具ホルダは、回転軸周りの閉じた軌道に沿って環状に延びていてよい。
【0012】
調整のためにロックエレメントによって実施可能な調整運動は、好ましくは直線運動であるが、場合によっては回転運動であってもよい。
【0013】
工具ホルダの位置決め運動へのロックエレメントの調整運動の変換は、少なくとも1つの対応エレメントが、少なくとも1つのロックエレメントに対応して形成された歯形異形材またはクロー異形材を有していると、構造的に比較的簡単な形式で得ることができる。歯形異形材またはクロー異形材は、対応エレメントの歯形異形材またはクロー異形材へのロックエレメントの係合が、対応エレメントの回転を生じさせるように、ロックエレメントに対応して形成されていてよい。
【0014】
対応エレメントの回転へのロックエレメントの調整運動の変換は、対応エレメントが軸方向において位置固定のままであると、つまりロックエレメントの送りによって軸方向に変位されるのではなく単に回転されると、十分に損失なしに行うことができる。したがって、ロックエレメントおよび対応エレメントは、調整運動である第1の運動を位置決め運動である第2の運動に変換することができる、一種の伝動装置段を形成している。さらに、対応エレメントは、工具ホルダのうちの1つの工具ホルダがその作業位置を取り、かつロックエレメントがそのロック位置を取ると、この伝動装置段を用いてロックされる。
【0015】
特に好ましくは、ロックエレメントおよび対応エレメントは、対応する歯形異形材またはクロー異形材を有している。好ましくは、歯形異形材またはクロー異形材の歯またはクロー突起は、対応エレメントの回転軸周りに均等に分配配置されている。
【0016】
工具ホルダは、工具ホルダと対応エレメントとの間の相対運動が阻止され、ひいては排除されるように、対応エレメントに結合されていてよい。言い換えれば、工具ホルダと対応エレメントとは互いに回動不能に結合されていてよいと云うことができる。このように構成されていると、対応エレメントの、ロックエレメントによって生じた運動を、工具ホルダに確実に伝達することができる。
【0017】
工具交換装置は、工具ヘッドを有することができる。この工具ヘッドには、少なくとも2つの工具ホルダが配置または形成されていてよい。さらに、工具ヘッドを、工具交換装置のフレームおよび/またはベース体に対して移動させること、特に回転させることが可能である。
【0018】
工具交換装置の一実施形態では、ロックエレメントがフレームまたはベース体に配置されており、対応エレメントが例えば既に上述した可動の工具ヘッドに配置されていることが提案されてよい。また、ロックエレメントが例えば既に上述した可動の工具ヘッドに配置されており、対応エレメントがフレームに配置されていることも可能である。
【0019】
工具交換装置の特に好適な実施形態では、ロックエレメントが、軸方向で固定された、好ましくは工具交換装置のベース体に対して回動固定のまたは回動不能のクローエレメントとして形成されており、対応エレメントが、該対応エレメントの回転軸に関して軸方向に変位可能な回転可能な対応クローエレメントとして形成されていることが提案される。このとき、ロックエレメントと対応エレメントとは、それぞれ、対応エレメントの回転軸に対して斜めに位置している少なくとも1つのクロー側面を有している。両クローエレメントのクロー側面は、互いに対応するように形成されていて、かつ対応エレメントの回転軸に対して斜めに位置している係合面を有することができ、これによって、対応エレメントの、ロックエレメントにおけるロック位置への対応エレメントの調整によって、クロー側面およびその係合面を介して駆動力を対応エレメントに伝達することができる。
【0020】
クローエレメントとして形成されたロックエレメントおよび対応クローエレメントとして形成された対応エレメントは、ロック位置において一種のクローカップリングを形成する。
【0021】
さらに、工具交換装置が調節装置を有していると好適であることがある。このような調節装置によって、調節力を、少なくとも間接的に、好ましくは対応エレメントを介して、工具ホルダに伝達することができる。調節力は、工具ヘッドに、特に既に記載した形式の工具ヘッドに伝達することができ、この工具ヘッドには工具ホルダが同様に形成されていてよい。
【0022】
調節装置は、工具ホルダを調節力によって自動的に作業位置から中間位置または休止位置に移動させるように構成されていてよい。このとき、対応エレメントは、調節力によって、作業位置に対応する位置から係合位置に移動することができる。これは、特に調節装置が対応エレメントに作用する場合である。この係合位置において対応エレメントは、ロックエレメントを新たに対応エレメントとの係合状態にもたらすことができるように配置されていてよく、またはその逆であってもよい。これによって次いで、少なくとも2つの工具ホルダのうちの他方の工具ホルダを、ロックエレメントを用いて作業位置に調整することができる。このように構成されていると、ロックエレメントによる対応エレメントのロックが解消されかつ対応エレメントが解放される工具交換装置、または非ロック状態になるや否や対応エレメントが調節装置を用いて自動的に係合位置に達する工具交換装置が得られる。
【0023】
これによって、対応エレメントは、自動的に1つの位置から係合位置に達することができ、この係合位置においては、工具ホルダのうちのいずれもがもはや作業位置に配置されておらず、対応エレメントの新たな係合および新たな操作が、作業位置への工具ホルダのうちの少なくとも1つの工具ホルダの位置決めのために、ロックエレメントを用いて可能である。
【0024】
調節力の大きさは、ロックエレメントと対応エレメントとの相互の相対位置に依存していてよい。このとき、調節力は、ロック位置にあるロックエレメントにおいて、工具ホルダの、例えば既に上述した位置決め運動の方向に作用することができる。ロックエレメントがそのロック位置に配置されており、かつ工具ホルダのうちの少なくとも1つの工具ホルダがその作業位置に配置されている場合に、調節力が最大値を取ると、特に好適であることがある。このように構成されていると、ロックエレメントが対応エレメントを再び解放するや否や、対応エレメントを工具ホルダと一緒に、位置決め運動の方向に作用する調節力に基づいて、十分な調節力でさらに移動させることができることを保証することができる。
【0025】
さらに、調節力は、相前後して連続する相対位置において、工具ホルダの、特に対応エレメントの位置決め運動の方向および逆の方向に交互に作用し、かつ方向付けられていてよい。このように構成されていると、ロックエレメントに対して、対応エレメントおよび工具ホルダを、特定の中間位置または係合位置へと自動的に位置決めすることができ、または引き続き位置決めのために調節装置を使用することができる。相前後して連続する2つの相対位置に関して互いに逆向きの調節力ベクトルに基づいて、調節装置は、中間位置において工具ホルダをセンタリングし、かつ/または係合位置において対応エレメントをセンタリングすることができ、この係合位置において、ロックエレメントは、さらなる操作ステップにおいて新たに対応エレメントと係合することができる。特に好ましくは、調節力は、係合位置にある対応エレメントで最小値を有することができる。対応エレメントを係合位置に確実に保持するために、調節装置は、好ましくは半径方向の、対応エレメントに作用する保持力を生じさせるように構成されていると、さらに好適であることがある。この保持力は、対応エレメントが係合位置に配置されている場合に、最大値を取ることができる。
【0026】
調節装置は、工具交換装置のフレームまたはベース体と、少なくとも2つの工具ホルダを備えた対応エレメントとの間に配置されているかまたは構成されていてよい。特に好ましくは、調節装置は、磁力式の調節装置として形成されていてよい。永久磁石を備えた磁力式の調節装置では、調節装置へのエネルギ供給を省くことができる。調節装置が磁力式の調節装置として形成されていると、調節装置は、調節力を生じさせるために、対応エレメントに対して位置固定の少なくとも1つの磁石と、対応エレメントに配置された少なくとも1つの対応磁石とを有していてよい。特に、ロックエレメントがもはや対応エレメントとの係合状態にない場合に、少なくとも1つの磁石および少なくとも1つの対応磁石を用いて、対応エレメントを係合位置にもたらすことができる。
【0027】
工具交換装置の特に好適な実施形態では、磁力式の調節装置は、複数の、好ましくは4つの個々の磁石を有していてよく、これらの磁石は、相応の極性方向で均等に分配されて、特に対応エレメントの回転軸の周りに、保持リングに配置されている。対応エレメント自体は、同数の相応に配置された対応磁石を備えていてよい。使用位置にある対応エレメントでは、磁石と対応磁石とは、相互の引付けによって、上記した調節力および/または保持力を生じさせることができ、かつ対応エレメントを自動的に係合位置に移動させることができ、この係合位置において、対応エレメントは、ロックエレメントの新たな係合を提供し、これによって工具ホルダを新たに位置決めすることができる。
【0028】
磁石の数および対応磁石の数が、工具交換装置の個々の工具ホルダの数または整数倍に相当していると、特に好適であることがある。これにより対応エレメントは、それぞれの工具ホルダのための磁力式の調節装置を用いて、固有の係合位置に移動することができ、この係合位置では、例えば工具ホルダは作業位置に配置されていない。
【0029】
ばね作動式の調節装置または玉係止機構を備えた調節装置も、調節装置として利用することができる。
【0030】
ロックエレメントを調整するために、駆動装置(Antriebsvorrichtung)は駆動部(Antrieb)を有することができる。この駆動部は、好ましくは電気式、空気力式、または液圧式、または電磁式であってもよい。
【0031】
駆動装置が、工具送りを生じさせるための工作機械の駆動装置であると、特に好適であることがある。このように構成されていると、駆動装置は二つの機能を引き受けることができ、また工具交換運動をも生じさせることができる。
【0032】
上述した課題は、工具交換装置に向けられた請求項のいずれか1項記載の工具交換装置を備えた工作機械によっても解決される。
【0033】
この文脈では、工作機械は駆動装置を有しており、該駆動装置が、工具送りと、ロックエレメントと対応エレメントとの間の相対的な調整運動とを生ぜしめるように構成されていると、好適であることがある。このように構成されていると、工具交換工程のための追加的な駆動部を省くことができる。好ましくは、工具送りはワークピース回転と同期化されており、これによって例えば非円形のワークピースを製造することができる。調整運動と工具送りとが互いに平行に方向付けられていて、例えば同一の直線に沿って延びていると、好適である。
【0034】
調整作動と送り作動との間で切換えができるようにするために、工作機械は、特にロックプランジャを備えたロック装置を有していてよい。このロック装置を用いて、工具交換装置のロックエレメントは、少なくとも工具交換中に、工作機械のフレームに対してかつ/または対応エレメントに対して固定可能であってよい。
【0035】
上記の課題を解決するために、工具交換装置、特に工具交換装置に向けられた請求項のいずれか1項記載の工具交換装置を使用して工具を交換するための方法であって、工具交換装置の、工具を保持する工具ホルダを、工具交換装置のロックエレメントと対応エレメントとの間の相対的な調整運動によって、作業位置に位置決めする方法も提案される。このようにすると、特に、高精度で作業を行う工作機械において必要なロックエレメントは、二つの機能を引き受けることができ、かつ工具ホルダのロックのみならず、作業位置への工具ホルダの位置決めをも行うことができる。
【0036】
この場合、工具ホルダを位置決めするために、ロックエレメントを、対応エレメントをロックするロック位置に移動させることができる。しかしならまた、対応エレメントを、工具ホルダの位置決めのために、ロック位置にロックエレメントに対して移動させることも可能である。このとき、調整運動を、対応エレメントの位置決め運動に変換することができる。そしてロックエレメントおよび/または対応エレメントがロック位置に達した場合に、工具ホルダのうちの1つの工具ホルダをその作業位置に固定するか、または工具ホルダはその作業位置にあることができる。
【0037】
工具ホルダは、ロック位置からのロックエレメントおよび/または対応エレメントの解除後に、作業位置から中間位置に調整することができる。さらに、解放された、つまりもはやロックされていない対応エレメントは、作業位置に対応する位置から係合位置に移動することができ、この係合位置において対応エレメントおよび工具ホルダの新たなロックが可能である。移動および新たなロックは、ロックエレメントおよび/または対応エレメントがロック位置から解除された後で、好ましくは自動的に行うことができる。工具ホルダおよび/または対応エレメントの自動的な調整は、調節装置を用いて行うことができる。このとき、例えば請求項9から12までのいずれか1項においてより正確に記載された調節装置を使用することができる。
【0038】
工具ホルダがその作業位置に移動させられると、工具によって、ワークピースの切削加工を、例えば旋削加工またはフライス加工および/または研磨加工を実施することができる。これは、特に緊締状態において非円形の旋削部材を製造するために、ワークピース回転に対して同期化されていてよい。切削加工は、工具交換の前に実施することも可能である。
【0039】
次に、図面を参照しながら本発明の一実施形態について詳説する。図面は、部分的に大きく概略化されて示されている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】複数の工具ホルダを有する工具交換装置を備えた本発明に係る工作機械の斜視図である。
図2図1に示した工具交換装置の斜視図である。
図3図1および図2に示した工具交換装置の斜視図であって、ここでは図1および図2に示した工具ヘッド用の保持皿を備えた工具交換装置の対応エレメントを認識することができる。
図4図1図3に示した工具交換装置の側面図であって、(対応)クロー異形材を備えた対応エレメントと、対応エレメントと共働するロックエレメントであって、対応エレメントのクロー異形材に対応して形成されたクロー異形材を備えたロックエレメントとを認識することができる。
図5図4中のA-A線に沿った工具交換装置の横断面図である。
図6a図6b中のB-B線に沿った、ロック位置にあるロックエレメントを備えた工具交換装置の横断面図である。
図6b】係合状態にあるクロー異形材を備えた、先行する図面に示した工具交換装置の、図6aに対応する側面図である。
図7a図7b中のC-C線に沿った工具交換装置の横断面図である。
図7b図7aに対応する、工具交換装置の側面図であって、ここでは、ロックエレメントが、対応エレメントのクロー異形材との係合状態ではないその出発位置に示されている。
図8図8aおよび図8bは、先行する図面に示した工具交換装置の横断面図および側面図であって、ここでは、対応エレメントが調節装置の作用に基づいてその係合位置を取っており、この係合位置において、対応エレメントは、ロックエレメントが工具ホルダのさらなる位置決めのために対応エレメントのクロー異形材との係合状態に新たに達することができるように、ロックエレメントに対して配置されている。
図9図9aおよび図9bは、先行する図面に示した工具交換装置の横断面図および側面図であって、図9bでは、ロックエレメントが、ロック位置への途中の中間位置に示されており、対応エレメントが、工具ホルダのうちの1つの工具ホルダがロックされる作業位置への途中の対応する中間位置に示されている。
図10図10aおよび図10bは、先行する図面に示した工具交換装置の横断面図および側面図であって、対応エレメントが、工具ホルダのうちの1つの工具ホルダの作業位置に対応する位置に完全に達しており、かつロックエレメントがそのロック位置に完全に達している状態を示している。
図11】工作機械の駆動装置を使用した工具交換工程を具体的に示す、本発明に係る工具交換装置を備えた本発明に係る工作機械の側面図である。
図12】工作機械の駆動装置を使用した工具交換工程を具体的に示す、本発明に係る工具交換装置を備えた本発明に係る工作機械の側面図である。
図13】工作機械の駆動装置を使用した工具交換工程を具体的に示す、本発明に係る工具交換装置を備えた本発明に係る工作機械の側面図である。
図14】工作機械の駆動装置を使用した工具交換工程を具体的に示す、本発明に係る工具交換装置を備えた本発明に係る工作機械の側面図である。
図15】工作機械の駆動装置を使用した工具交換工程を具体的に示す、本発明に係る工具交換装置を備えた本発明に係る工作機械の側面図である。
図16】工作機械の駆動装置を使用した工具交換工程を具体的に示す、本発明に係る工具交換装置を備えた本発明に係る工作機械の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
すべての図には、全体を符号1で指した工具交換装置が示されている。工具交換装置1は、少なくとも部分的に図1および図11図16に示した工作機械18において使用される。残りの図2図10bには、工具交換装置1が異なった見方で示されている。
【0042】
工具交換装置1には、工具ヘッド23が装着されている。工具ヘッド23には、互いに90°ずらされて配置された全部で4つの工具ホルダ2が形成されている。それぞれの工具ホルダ2には、それぞれ1つの工具3が配置されている。工具交換装置1は駆動装置4を有しており、この駆動装置4によって工具ホルダ2は、工作機械18のフレーム5に対して、かつ工具交換装置1のベース体5aに対しても、作業位置に移動される。作業位置は、図1において、符号6で示した破線によって明瞭にされている。
【0043】
駆動装置4は、ロックエレメント7および対応エレメント8を含んでいる。工具ホルダ2を備えた工具ヘッド23は、対応エレメント8に結合されている。ロックエレメント7と対応エレメント8とは、工具ヘッド23における全部で4つの工具ホルダ2が相前後して作業位置6へと位置決めされ、そこでロックエレメント7によって固定されることができるように、機械的に共働する。工具ホルダ2の位置決めは、図に示した実施形態では、対応エレメント8を、例えば図10a中に符号9で示したそのロック位置に、ロックエレメント7に対して移動させることによって行われる。
【0044】
ロックエレメント7は、この調整中に、対応エレメント8の、そのロック位置9への直線的な調整運動(この調整運動は、図9bおよび図10b中に矢印22によって示されている)が、矢印21(図9aおよび図9b)の方向における対応エレメント8の位置決め運動を生じさせるように、対応エレメント8と機械的に共働する。
【0045】
このとき、対応エレメント8は、工具ホルダ2の作業位置6に対応する位置または相対位置を取る。対応エレメント8の、この対応する位置または相対位置は、図6aおよび図6bならびに図10aおよび図10b中で認識することができる。
【0046】
ロックエレメント7および対応エレメント8を用いて、工具ヘッド23における工具ホルダ2に伝達可能な位置決め運動21は、工具ヘッド23および対応エレメント8の回転軸Rの周りに行われる回転運動である。対応エレメント8によって実施可能な調整運動22は、工具ヘッド23および対応エレメント8の回転軸Rの方向の、軸方向で固定されたロックエレメント7に対して行われる直線運動である。
【0047】
対応エレメント8は、クロー異形材10を有している。ロックエレメント7は、対応するクロー異形材10を有している。このようにして、ロックエレメント7のクロー異形材10への対応エレメント8の係合時に、対応エレメント8の回転を生じさせることができる。このとき、ロックエレメント7は、工具交換装置1のベース体5aにおけるその支持部19に基づいて、軸方向で位置固定のままであり、つまり回転軸Rに関して軸方向で固定されている。これは、図2図10bおよび特に図11図16に示されている、ロックエレメント7の様々な位置の比較時に、明らかになる。
【0048】
工具ホルダ2は、工具ホルダ2と対応エレメント8との間の相対運動が阻止されるように、工具ヘッド23を介して対応エレメント8に結合されている。工具ホルダ2は、工具ヘッド23を介して、対応エレメント8に回動不能に結合されている。
【0049】
特に図3および図4に示されているように、対応エレメント8は、使用位置での工具ヘッド23に対応配置されたその端部に、保持皿11を有している。この保持皿11を介して工具ヘッド23は、使用位置で対応エレメント8に固定されている。保持皿11を介して、ロックエレメント7から対応エレメント8に伝達されたトルクは、最終的に、工具ヘッド23、および工具ヘッド23に形成された工具ホルダ2に伝達されることができ、これによって工具ホルダ2を相前後して、その所望の作業位置6に移動させることができる。保持皿11は、対応エレメント8における工具ヘッド23を快適に固定する働きをする。回転可能に支持された対応エレメント8における工具ヘッド23の固定によって、工具交換装置1の工具ヘッド23は、工作機械18のフレーム5に対して、また工具交換装置1のベース体5aに対しても回転可能である。
【0050】
ロックエレメント7は、ベース体5aに配置されている。対応エレメント8は、可動の工具ヘッド23を備えた側に配置されている。ベース体5aは、図面中に認識可能な外側の保持部5bを有している。この保持部5bは、ガラスゲージ(図示せず)を固定する働きをし、このガラスゲージによって、工作機械18のフレーム5に対するベース体5aの移動を監視することができる。
【0051】
工作機械18の相応の対応部分にベース体5aを固定するために、環状のフランジ5cが作用する。
【0052】
対応エレメント8は、対応クローエレメント12であり、この対応クローエレメント12には、既に上述したクロー異形材10のうちの1つのクロー異形材が形成されている。ロックエレメント7は、回転軸Rに関してかつ対応エレメント8に対して軸方向で固定されたクローエレメント13として形成されており、このクローエレメント13自体は、既に上述した別のクロー異形材10を有しており、さらにベース体5aに対して回動不能である。クローエレメント13として形成されたロックエレメント7の機能は、軸方向で固定されたクロージョーの機能に似ており、このクロージョーは、交換工程中に回転軸Rに関して軸方向に変位されないのに対して、対応クローエレメント12として形成された対応エレメント8は、軸方向に変位可能なクロースリーブに似ている。したがって、本実施形態では、対応エレメント8は、交換工程中に、少なくとも交換工程中に不動のロックエレメント7に対して変位される。
【0053】
ロックエレメント7および対応エレメント8は、そのクロー異形材10のクロー側面15に互いに適合する係合面14を有している。係合面14およびクロー側面15は、回転軸Rに対して斜めに方向付けられている。係合面14の傾斜位置を介して、対応エレメント8の駆動力の向きを変えることができ、対応エレメント8の軸方向における調整運動22を、対応エレメント8の回転位置決め運動21に変換することができる。係合面14およびクロー側面15はその傾斜位置によって、位置決め運動21の回転方向を設定する。
【0054】
ロックエレメント7および対応エレメント8は、全体として、クロー側面15を備えたそれぞれ4つのクロー突起15aを有している。クロー突起15aおよびクロー側面15は、対応エレメント8の回転軸R周りに、互いに90°だけずらされて配置されている。これによってロックエレメント7は、対応エレメント8を4つの異なった位置に移動させ、そこで固定することができる。クロー突起15aおよびクロー側面15の配置形態は、工具ホルダ2の配置形態に相当している。さらに、ロックエレメント7に設けられた斜めのクロー側面15の数は、対応エレメント8に設けられた斜めのクロー側面15の数と同じであり、また工具ホルダ2の数とも同じである。さらに、4つのクロー突起15aがロックエレメント7に形成されており、4つの(対応)クロー突起15aが対応エレメント8に形成されている。
【0055】
さらに、工具交換装置1は調節装置16を有している。この調節装置16は、対応エレメント8がロックエレメント7から解放されている場合に、対応エレメント8を自動的にさらに移動させる働きをする。これには、対応エレメント8におけるロックエレメント7の新たな係合を、作業位置6への次の工具ホルダ2の位置決めのために、かつ最終的に対応エレメント8および位置決めされた工具ホルダ2のロックのために可能にするという目的がある。
【0056】
この目的のために、調節装置16は、対応エレメント8を介して工具ヘッド23および工具ホルダ2に伝達することができる調節力を生じさせるように構成されている。調節力は、4つの工具ホルダ2のそれぞれおよび特に対応エレメント8を、ロック位置9から移動された対応エレメント8において、自動的に作業位置6から中間位置に移動させるために使用される。この中間位置では、対応エレメント8は、係合位置17においてロックエレメント7に対して配置されている。
【0057】
係合位置17は、図8a中に破線で示した線によって示されている。この係合位置17では、対応エレメント8を、図9aおよび図9bで認識できるように、軸方向での調整によって、新たにロックエレメント7との係合状態にもたらすことができ、これによって作業位置6への工具ホルダ2のうちの次の工具ホルダの位置決めを行うことができる(図6aおよび図6bならびに図10aおよび図10b参照)。
【0058】
調節装置16によってもたらされる調節力の大きさは、ロックエレメント7に対する対応エレメント8の相対位置に依存している。したがって、調節力は、ロックエレメント7に対する対応エレメント8の、作業位置6に対応する相対位置において、つまり対応エレメント8がロックエレメント7によって固定されている場合に(図6aおよび図6bならびに図10aおよび図10b参照)、最大値を取る。このようにして、工具ホルダ2を、最終的に対応エレメント8をも、工具ホルダ2の、矢印21で示した位置決め運動の方向にさらに移動させるために生じる調節力が、対応エレメント8を、工具ホルダ2と一緒に、ロックエレメント7による解放後に、係合位置17へとさらに移動させるために十分であることを保証することができる。
【0059】
上述した調節力は、ロックエレメント7に対する対応エレメント8の、相前後して連続する相対位置において、工具ホルダ2の位置決め運動21の方向および逆の方向に交互に作用し、係合位置17において値ゼロを取る。その結果、ロックエレメント7から解放された対応エレメント8は、調節装置16の調節力によって安定した中間位置を取ることになる。図8aには、対応エレメント8および調節装置16が、相前後して連続する2つの相対位置の間のこのような中間位置に示されている。この中間位置は、既に上述した係合位置17に相当している。
【0060】
係合位置17において調節装置16は、保持力をもたらし、この保持力によって対応エレメント8は、ロックエレメント7の新たな係合のためのその係合位置17に保持される。対応エレメント8がこの係合位置17から移動させられるどちらの方向においても同様に、調節装置16は、係合位置17の方向および逆の方向に作用する調節力を自動的にもたらす。
【0061】
調節装置16は、工具交換装置1のベース体5aと、ベース体5aに対して回転可能な対応エレメント8との間に形成されている。調節装置16は、磁力式の調節装置であり、かつ対応エレメント8の回転軸Rの周りに均等に分配配置された4つの磁石20aを備えた保持リング20を有している。対応エレメント8は、2つの支持部19を介して、工具交換装置1のベース体5aに回転可能に支持されている。したがって、工具交換装置1のベース体5aは、ハウジングとも呼ぶことができる。
【0062】
磁石20aを備えた保持リング20は、使用位置にある対応エレメント8を外側で取り囲んでおり、かつ工具交換装置1のベース体5aに固定されている。対応エレメント8には、対応エレメント8の回転軸Rの周りに均等に分配されて4つの対応磁石20bが配置されており、これらの対応磁石20bは、保持リング20における磁石20aに対応配置されており、同様に磁力式の調節装置16の一部である。磁石20aおよび対応磁石20bは、その極性に関して、ロックエレメント7に対する対応エレメント8の、図8aに示した係合位置17において、磁石20aと対応磁石20bとが互いに引き付け合うように、つまりこの係合位置17における対応エレメント8の安定した位置のために作用するように配置されている。係合位置17では、磁石20aおよび対応磁石20bは、その相互の引付けおよび極性に基づいて、半径方向に作用する保持力を形成する。
【0063】
対応エレメント8を位置固定の保持リング20に対して回転させることによって、磁石20aおよび対応磁石20bが、図8に示した相対位置から互いに変位されると、磁石20aおよび対応磁石20bは、係合位置17の方向に作用する調節力を形成する。この調節力は、少なくとも接線方向の成分を有しており、対応エレメント8によって、対応エレメント8の位置決めのために、ロックエレメント7への対応エレメント8の軸方向における送り(Zustellung)を通して克服されねばならない。
【0064】
磁石20aおよび対応磁石20bによってもたらされる調節力は、対応エレメント8によってもたらされる力、つまりクロー状のロックエレメント7およびクロー状の対応エレメント8のクロー側面15を介して位置決め力に変換される力よりも小さい。これによって、調節装置16の調節力を、対応エレメント8を用いて克服することができ、かつ対応エレメント8をさらに回転させることができ、次の工具ホルダ2を作業位置6に調整することができる。したがって、対応エレメント8は、回転スライダと呼ぶことができ、この回転スライダによって、対応エレメント8の軸方向における調節運動を、対応エレメント8の回転位置決め運動21に変換することができる。
【0065】
工具ヘッド23における4つの工具ホルダ2には、それぞれ1つの磁石20aおよび1つの対応磁石20bが対応配置されている。したがって、調節装置16は、全部で4つの磁石20aおよび4つの磁石20bを有しており、これらの磁石20a,20bはそれぞれ、対応エレメント8の回転軸Rの周りに互いに90°だけずらされて分配されている。
【0066】
駆動装置4は、ロックエレメント7を軸方向で調整するための駆動部を含んでいる。この駆動部は、工作機械18の駆動装置4の一部であり、高い周波数の往復動を備えた電磁式の駆動装置4として形成されてよい。
【0067】
したがって、工作機械18は、ロックエレメント7と対応エレメント8との間の工具送りおよび調整運動22を生じさせるように構成された駆動装置4を有している。ゆえに、工具交換のための調整運動のための別体の駆動装置は不要である。
【0068】
さらに、工作機械18は、ロックプランジャ25を備えたロック装置24を有している。ロック装置24およびロックプランジャ25を用いて、工具交換装置1のロックエレメント7を、少なくとも工具交換中に工作機械18のフレーム5に対して固定することができる。そのために、ロックプランジャ25は、ロックエレメント7における相応の切欠き26内に押し込まれる。例えば図13に図示されたこの位置において、ロックプランジャ25はロックエレメント7をしっかりと保持し、かつ工作機械18の駆動装置4の相応の送り運動時に対応エレメント8をロックエレメント7から解除する働きをし、これによって上に詳しく記載した工具交換を実施することができる。
【0069】
駆動装置4の、高周波数で振動する送り運動時に、ロックエレメント7からの対応エレメント8の望ましくない解除を阻止するために、圧縮ばね27が設けられており、この圧縮ばね27は、ロックエレメント7を対応エレメント8におけるそのロック位置に保持する。
【0070】
図11には、作動モード時の工作機械18が示されている。作動モードでは、ロックプランジャ25は解除され、ロックエレメント7は、工作機械18の駆動装置4によって自由に可動である。作動モードでは、駆動装置4は、工具3が配置されている工具ヘッド23のための送り駆動部として働く。
【0071】
図12では、工具ヘッド23は、図11と比較して引き戻されている。いまやロックエレメント7は、ロックプランジャ25をロックエレメント7の切欠き26内に押し込むことができるように、ロック装置24に対して配置されている。ロックプランジャ25はそのために、空気力式にかつ/または液圧式に移動される。
【0072】
図13では、ロックプランジャ25は、切欠き26内に走入されている。これによって、ロックエレメント7は、ロックプランジャ25および工作機械18のフレーム5に対して固定される。工作機械18はいまや工具交換モードにある。工作機械18の駆動装置4は、いまや工具交換駆動部として働く。
【0073】
図14では、工具ヘッド23は、駆動装置4を用いて前方に向かって変位されている。ロックエレメント7は、ロックプランジャ25によって固定されているので、対応エレメント8およびロックエレメント7は、駆動装置4によって生じる直線的な調整運動22によって互いに分離される。対応エレメント8がロックエレメント7から完全に分離されるや否や、調節装置16は対応エレメント8をロックエレメント7に対して係合位置17に回転させることができ、かつ工具交換を導入することができる。
【0074】
図15では、対応エレメント8を備えた工具ヘッド23は、駆動装置4によって再びその後方の位置に移動されている。クロー側面15における係合面14を介して、工具ヘッド23の直線的な戻り運動が、位置決め運動21に変換され、工具3が交換されている。
【0075】
図16では、ロックプランジャ25は、ロックエレメント7の切欠き26から引き戻されている。ロックエレメント7は、ばね27によって再び対応エレメント8に押圧される。対応エレメント8は、ロックエレメント7によってロックされる。工具交換は終了している。工作機械18は再び作動モードにあり、工作機械18の駆動装置4は、送り運動を生じさせるために使用することができる。
【0076】
上記した工具交換装置1によって、後で記載する、工作機械18において工具3を交換するための方法を実施することができる。
【0077】
このとき、工具交換装置1の対応エレメント8を、ロックエレメント7におけるロック位置9にもたらすことによって、工具交換装置1の、工具3を保持する工具ホルダ2が、作業位置6に位置決めされる。工具ホルダ2の位置決めのために、対応エレメント8はロックエレメント7内に係合し、かつロックエレメント7に対して移動される。
【0078】
既に上記したように、工具ホルダ2と対応エレメント8とは互いに回動不能に結合されている。一般的に云えることでもあるが、工具ホルダ2と対応エレメント8とは、工具ホルダ2と対応エレメント8との間の相対運動が排除されるように互いに結合されている。対応エレメント8が、ロックエレメント7におけるそのロック位置9に達するや否や、工具ホルダ2は作業位置6に達し、ロックエレメント7によって作業位置6に固定される。対応エレメント8がそのロック位置9(図6aおよび図6b、図10aおよび図10b、ならびに図14)から再び解除されるや否や、工具ホルダ2は作業位置6から自動的に離反移動され、対応エレメント8は係合位置17に調整される。これは、既に上記した調節装置16を用いて行われる。工具ホルダ2は、位置決め時に、閉じた環状の軌道に沿って移動する。したがって、工具ホルダ2が同じ作業位置6に新たに達する前に、軌道の完全な一回転が必要である。
【0079】
本発明は、工作機械18において使用される、いわゆる工具交換装置1の領域における改善に関する。ここでは、工具ホルダ2の作業位置6への工具ホルダ2の位置決めを、工具交換装置1の駆動装置4のロックエレメント7を用いて行うことが提案されている。ロックエレメント7の調整運動22が工具ホルダ2の位置決め運動21に変換されることによって、工具3の使用のために必要なロック位置9への、ロックエレメント7の調整運動22が、作業位置6への工具ホルダ2の位置決めのために使用される。
【符号の説明】
【0080】
1 工具交換装置
2 工具ホルダ
3 工具
4 駆動装置
5 フレーム
5a 1のベース体
5b 保持部
5c フランジ
6 作業位置
7 ロックエレメント
7a 7におけるガイドエレメント
8 対応エレメント
9 ロック位置
10 クロー異形材
11 保持皿
12 対応クローエレメント
13 クローエレメント
14 係合面
15 クロー側面
15a 7および8におけるクロー突起
16 調節装置
17 係合位置
18 工作機械
19 支持部
20 保持リング
20a 磁石
20b 対応磁石
21 位置決め運動
22 調整運動
23 工具ヘッド
24 ロック装置
25 ロックプランジャ
26 切欠き
27 圧縮ばね
R 8の回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14
図15
図16