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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】厚板転回の自動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 39/20 20060101AFI20230307BHJP
   B21B 41/04 20060101ALI20230307BHJP
   B21B 41/06 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B21B39/20 A
B21B41/04
B21B41/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020005814
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021112759
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】山本 遼太
(72)【発明者】
【氏名】江嵜 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】北山 智大
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 宏之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 賢二
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-062304(JP,A)
【文献】特開2011-166608(JP,A)
【文献】特開2009-174968(JP,A)
【文献】特開昭62-120099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 39/00-41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚板を圧延する圧延機と、
前記圧延機に向けて前記厚板を移動させるとともに、前記厚板を転回させる複数のロールを有する転回テーブルと、
前記転回テーブルを挟んだ両側に前記厚板を前記転回テーブルの中央に向けて押圧するサイドガイドと、
前記転回テーブルの上に位置する前記厚板を撮影する撮影機と、
前記撮影機に接続され前記転回テーブルの複数の前記ロールを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記厚板の頂点と前記圧延機との間の距離、前記厚板の前記頂点とは異なる他の頂点と前記圧延機との間の距離、および前記頂点と前記他の頂点との間の距離、により前記厚板の回転角を演算するとともに、
前記転回テーブルの上に位置する前記厚板と前記サイドガイドとの間の距離を演算し、
前記厚板と前記サイドガイドとの間の前記距離が閾値よりも小さい場合には、前記サイドガイドを作動させることを特徴とする厚板転回の自動制御装置。
【請求項2】
厚板を圧延する圧延機と、
前記圧延機に向けて前記厚板を移動させるとともに、前記厚板を転回させる複数のロールを有する転回テーブルと、
前記転回テーブルを挟んだ両側に前記厚板を前記転回テーブルの中央に向けて押圧するサイドガイドと、
前記転回テーブルの上に位置する前記厚板を撮影する撮影機と、
前記撮影機に接続され前記転回テーブルの複数の前記ロールを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記厚板の頂点と前記サイドガイドとの間の距離、前記厚板の前記頂点とは異なる他の頂点と前記サイドガイドとの間の距離、および前記頂点と前記他の頂点との間の距離、により前記厚板の回転角を演算し、
前記厚板の頂点と前記サイドガイドとの間の前記距離または前記厚板の前記頂点とは異なる他の頂点と前記サイドガイドとの間の前記距離のうち、少なくともいずれか一方の距離が閾値よりも小さい場合には、前記サイドガイドを作動させることを特徴とする厚板転回の自動制御装置。
【請求項3】
前記サイドガイドは、前記厚板を押圧するガイド部を有し、
前記制御部は、前記サイドガイドとの間の前記距離が前記閾値よりも小さいと判定した場合には、前記閾値以上になるまで前記ガイド部を前記厚板から離れる方向に移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の厚板転回の自動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、一般的に厚板転回の自動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼プラントや非鉄プラントなどでは、リバース圧延機により厚板(圧延材)を往復動させながら厚板を所定の板厚、形状に成形している。このリバース圧延機は、厚板を往復動させるときに、例えば厚板を90°転回させる転回テーブルを有している。転回テーブルは、厚板を支持する複数のロールを有し、この複数のロールの回転方向、速度をそれぞれ変化させることにより、厚板を転回させている。そして、転回テーブルのロールを自動制御することにより、厚板を自動で転回させることができる厚板転回の自動制御装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-273214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された厚板転回の自動制御装置は、転回テーブルの上方に設置されたカメラによって厚板の回転角を演算している。そして、厚板の幅、長さ、板厚、および回転角に応じて演算したオーバ転回量などにより転回テーブルの回転速度を制御している。しかし、特許文献1に記載された厚板転回の自動制御装置は、あらかじめ分かっている厚板の幅、長さ、板厚からオーバ転回量を演算している。従って、厚板とロール間とのすべりが考慮されておらず、演算した厚板の転回量と実際の転回量とに差が発生する虞がある。
【0005】
本実施形態は、上述する課題に鑑みなされたもので、厚板の自動転回を精度よく行うことができる厚板転回の自動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態は、厚板を圧延する圧延機と、前記圧延機に向けて前記厚板を移動させるとともに、前記厚板を転回させる複数のロールを有する転回テーブルと、前記転回テーブルの上に位置する前記厚板を撮影する撮影機と、前記撮影機に接続され前記転回テーブルの複数の前記ロールを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記厚板の頂点と前記圧延機との間の距離、前記厚板の前記頂点とは異なる他の頂点と前記圧延機との間の距離、および前記頂点と前記他の頂点との間の距離、により前記厚板の回転角を演算することを特徴とする厚板転回の自動制御装置である。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、厚板の自動転回を精度よく行うことができる厚板転回の自動制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態による厚板転回の自動制御装置を示す正面図である。
図2図1中の厚板転回の自動制御装置を上方からみた平面図である。
図3】撮影機により撮影された厚板の回転角を演算する場合の一例を示す説明図である。
図4】制御部による厚板転回の自動制御を示す流れ図である。
図5】本発明の変形例による厚板の回転角を演算する場合の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図4を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態による厚板転回の自動制御装置を示す正面図である。
図2は、図1中の厚板転回の自動制御装置を上方からみた平面図である。
図1図2に示す厚板転回の自動制御装置1は、鉄鋼プラントや非鉄プラントなどの圧延ラインの一部を構成している。圧延ラインでは、厚板2が圧延機10に対して往復動することにより厚板2を所定の厚さ、形状に成形する。本実施形態では、平面視で四角形状の厚板2を例に挙げて説明する。
【0010】
そして、厚板転回の自動制御装置1は、厚板2を圧延する圧延機10と、圧延機10に向けて厚板2を移動させるとともに、厚板2を転回させる複数のロール22を有する転回テーブル20と、転回テーブル20の上に位置する厚板2を撮影する撮影機30と、撮影機30に接続され転回テーブル20の複数のロール22を制御する制御部50と、を備えている。また、厚板転回の自動制御装置1は、転回テーブル20を挟んだ両側に厚板2を転回テーブル20の中央に向けて押圧するサイドガイド40を備えている。
【0011】
圧延機10は、厚板2を搬送する搬送ロール60(図1のみ図示)の途中部位に設けられている。圧延機10は、複数個(例えば、2個)の上ロール10aと、下ロール10bとを有している。厚板2は、上下方向に位置する上ロール10aと下ロール10bとの間を移動することにより、所定の形状に成形される。この場合、厚板2は、圧延機10を複数回(例えば、5~10回)往復動するリバース圧延が行われる。なお、圧延機10は、3個以上のロールを有していてもよい。
【0012】
転回テーブル20は、厚板2の流れ方向(図1図2の左右方向)に複数のロール22を有している。複数のロール22は、例えばモータやソレノイドからなる駆動部24によりそれぞれ回転駆動する。駆動部24は、制御部50に接続され、制御部50からの指令信号により回転方向、回転速度が制御される。転回テーブル20は、リバース圧延を行うときに、圧延機10から搬出される厚板2を転回テーブル20上に位置させるとともに、圧延機10に向けて厚板2を搬送する。さらに、転回テーブル20は、リバース圧延を行うときに、厚板2を例えば90度転回させる。
【0013】
複数のロール22は、大径部22aと小径部22bとを有している。図1に示すように、小径部22bは、大径部22aと同軸上に形成されている。これにより、厚板2は、大径部22a上に位置する。図2に示すように、ロール22は、大径部22aと小径部22bとが厚板2の流れ方向で交互に配設されている。すなわち、大径部22aは、厚板2の流れ方向で千鳥状に配列されている。
【0014】
転回テーブル20は、複数のロール22がラインシャフトで一括駆動される。この場合、転回テーブル20は、隣り合うロール22が相互に逆回転することにより厚板2を転回させることができる。例えば、図2に示すように、ロール22の正回転を時計回りとした場合に、圧延機10側に位置するロール22から順番に逆回転、正回転、逆回転、正回転、逆回転、正回転とすることで、厚板2を時計回りに転回させることができる。制御部50が行う厚板2の転回制御については、後で説明する。なお、転回テーブル20は、複数のロール22が個別に駆動(制御)されてもよい。
【0015】
撮影機30は、転回テーブル20上に位置する厚板2を撮影するカメラである。撮影機30は、制御部50に接続され、撮影した厚板2の画像を制御部50に出力する。撮影機30の撮影範囲は、少なくとも厚板2が含まれていればよく、圧延機10やサイドガイド40が含まれていてもよい。なお、撮影機30により撮影された画像は、制御室のモニタ(いずれも図示せず)に表示されてもよい。
【0016】
サイドガイド40は、転回テーブル20の側方で厚板2の流れ方向に沿って設けられている。サイドガイド40は、転回テーブル20の両側に設けられている。サイドガイド40は、例えば転回テーブル20上で片寄った位置にある厚板2を転回テーブル20の中央にセンタリングする。また、サイドガイド40は、転回させた厚板2の位置ずれを補正する。そして、サイドガイド40は、厚板2を押圧するガイド部42と、ガイド部42を移動させる支持部44と、支持部44を介してガイド部42を転回テーブル20上方に進出、後退させる駆動部46と、を有している。
【0017】
ガイド部42は、転回テーブル20のロール22よりも上方に位置している。これにより、ガイド部42は、転回テーブル20の上方を進退可能となっている。駆動部46は、例えばモータやソレノイドからなり、制御部50に接続されている。駆動部46は、制御部50からの指令信号により動作が制御される。
【0018】
制御部50は、転回テーブル20およびサイドガイド40の動作を制御する。また、制御部50は、転回テーブル20上に位置する厚板2を転回させるときの回転角を演算する。制御部50は、撮影機30に接続され、撮影機30から撮影した画像信号を取得する。また、制御部50は、転回テーブル20の駆動部24およびサイドガイド40の駆動部46に接続され、駆動部24、46に向けて指令信号を出力する。
【0019】
制御部50は、記憶部52(メモリ)を有している。記憶部52には、撮影機30から出力された画像信号や、制御部50から駆動部24、46に向けて出力した指令信号の履歴が記憶される。また、記憶部52には、厚板2を転回させるときの目標回転角や、厚板2とサイドガイド40との距離の閾値などがあらかじめ記憶されている。目標回転角や閾値などは、オペレータなどが任意に設定してもよい。さらに、記憶部52には、転回テーブル20やサイドガイド40を動作させるための制御プログラム、厚板2を転回させるときの回転角を演算するための制御プログラムが格納(記憶)されている。
【0020】
本実施形態による厚板転回の自動制御装置1は、上述の如き構成を有するもので、次に制御部50が行う厚板2の転回制御について説明する。
【0021】
図3は、撮影機により撮影された厚板の回転角を演算する場合の一例を示す説明図である。図3では、厚板2を時計回りに転回させる場合を示している。また、図3に示す圧延機10とサイドガイド40のガイド部42とは、撮影機30により実際に撮影された画像でもよいし、圧延機10およびガイド部42をモデル化した仮想画像でもよい。なお、ガイド部42を仮想画像とした場合には、制御部50がサイドガイド40からガイド部42の位置情報を取得して、それに対応して仮想画像を表示してもよい。図3に示す画像は、例えば制御室のモニタ(いずれも図示せず)に表示される。
【0022】
制御部50は、転回テーブル20上に搬送された厚板2を検出する。制御部50は、例えば撮影機30が撮影した画像信号を2値化することにより、厚板2の頂点を検出する。そして、制御部50は、厚板2の頂点2aと圧延機10との間の距離A、厚板2の頂点2aとは異なる他の頂点2bと圧延機10との間の距離B、および頂点2aと頂点2bとの間の距離Cとしたときに、以下に示す数1の式により厚板2の回転角θ1を演算する。
【0023】
【数1】
【0024】
厚板2の頂点2aと頂点2bは、厚板2の異なる頂点となっている。この例では、頂点2aと頂点2bとを圧延機10側に位置する頂点としている。なお、制御部50は、頂点2a、2bに限らず、他の2頂点を検出してもよい。また、頂点2aと圧延機10との間の距離Aと、頂点2bと圧延機10との間の距離Bとは、厚板2の流れ方向においてそれぞれ平行に計測した値となっている。
【0025】
また、距離Cは、厚板2の頂点2aと頂点2bとの間の一辺の長さである。距離Cは、例えば撮影機30により撮影された画像から計測することができる。また、距離Cは、記憶部52にあらかじめ記憶された値を用いてもよい。すなわち、厚板2は、リバース圧延されるとその形状が変化するが、一辺の長さの値(距離C)は圧延機10の設定値により定まった値となる。従って、距離Cは、厚板2の圧延回数に応じた値をあらかじめ記憶部52に記憶させておいてもよい。
【0026】
このように、制御部50は、厚板2の回転角θ1を演算することで、厚板2の位置(向き)を検出することができる。そして、制御部50は、演算された回転角θ1が記憶部52にあらかじめ記憶された目標回転角となるように、転回テーブル20の各ロール22の動作を制御する。
【0027】
また、制御部50は、転回する厚板2がサイドガイド40のガイド部42に接触する虞があるか否かを監視する。この場合、制御部50は、転回テーブル20の上に位置する厚板2とサイドガイド40との間の距離Dを演算する。制御部50は、例えば厚板2の頂点2aとサイドガイド40のガイド部42との間の距離Dを演算する。制御部50は、距離Dを演算することにより、厚板2が転回テーブル20の中央からどの程度片寄っているかを検出することができる。
【0028】
一例を挙げると、制御部50は、例えば距離Dがあらかじめ記憶部52に記憶された閾値よりも小さくなったときに、厚板2がガイド部42と接触する虞があることを検出することができる。また、制御部50は、厚板2を転回させる前に、例えば距離Dが厚板2の中心Oから頂点2aまでの距離よりも小さい場合に、転回する厚板2がガイド部42に接触する虞があることを検出することができる。また、制御部50は、厚板2の転回動作を予測して、厚板2がガイド部42に接触する虞があることを検出してもよい。
【0029】
なお、図3では、転回テーブル20を挟んで設けられたサイドガイド40の一方を例に挙げて説明したが、他方のサイドガイド40についても厚板2との距離を演算して、厚板2がサイドガイド40と接触するか否かを検出してもよい。また、他方のサイドガイド40のガイド部42の位置を検出して、一方のサイドガイド40と厚板2との距離Dから厚板2が他方のガイド部42に接触するか否かを演算してもよい。
【0030】
図4は、制御部による厚板転回の自動制御を示す流れ図である。
図4に示す制御処理は、制御部50の記憶部52にあらかじめ格納され、厚板2の転回制御を実行するごとに繰り返し実行される。また、図4では、各ステップを「S」と示し、例えば「ステップ1」を「S1」で示している。
【0031】
まず、S1では、厚板2を検出したか否かを判定する。すなわち、制御部50は、撮影機30から出力された画像信号から、圧延機10から厚板2が転回テーブル20上に搬出されたか否かを判定する。そして、S1で「YES」、すなわち、制御部50が厚板2を検出したと判定した場合にはS2に進む。一方、S1で「NO」、すなわち、制御部50が厚板2を検出していないと判定した場合には転回テーブル20上の厚板2の有無の監視を継続する。
【0032】
S2では、厚板2の2頂点を検出する。制御部50は、例えば撮影機30の画像信号を2値化することにより、厚板2の形状を鮮明にして頂点2aと頂点2bとを検出する。
【0033】
次のS3では、各頂点(頂点2aおよび頂点2b)と圧延機10までの距離A、Bを演算する。すなわち、制御部50は、頂点2aと圧延機10までの距離Aと、頂点2bと圧延機10までの距離Bとを演算する。圧延機10における距離Aと距離Bの計測点は、厚板2の流れ方向(図3の左右方向)に直交する線と同一線上となっている。
【0034】
次のS4では、各頂点(頂点2aと頂点2b)の間の距離Cを演算する。制御部50は、撮影機30から出力された画像から距離Cを演算する。なお、制御部50は、厚板2の圧延回数に対応する距離Cを記憶部52から参照してもよい。S3とS4との順番は、逆でもよい。
【0035】
S5では、厚板2の回転角θ1を演算する。すなわち、制御部50は、S3とS4とで演算された距離A、B、Cから、前述の数1に示した式を用いて回転角θ1を演算する。これにより、制御部50は、厚板2の状態を検出することができる。次のS6では、頂点2aとサイドガイド40(ガイド部42)との距離Dを演算する。なお、S3~S6は、順序不同である。
【0036】
S7では、厚板2がサイドガイド40(ガイド部42)に接触するか否かを判定する。すなわち、制御部50は、例えば頂点2aからガイド部42までの距離Dがあらかじめ設定された閾値よりも小さいか否かを判定する。制御部50は、距離Dが閾値よりも小さい場合には厚板2がガイド部42に接触する虞があると判定する。そして、S7で「YES」、すなわち、制御部50が厚板2がサイドガイド40に接触すると判定した場合には、S8に進む。一方、S7で「NO」、すなわち、制御部50が厚板2がサイドガイド40に接触しないと判定した場合には、S9に進む。
【0037】
S8では、サイドガイド40を作動する。すなわち、制御部50は、厚板2がガイド部42に接触する場合にはサイドガイド40の駆動部46に指令信号を出力する。この場合、サイドガイド40は、例えば転回テーブル20の両側に位置する両方のサイドガイド40が同時に作動する。制御部50は、距離Dが閾値以上となるように、各ガイド部42が厚板2から離れる方向に移動する指令信号を駆動部46に出力する。なお、制御部50は、各ガイド部42が厚板2を転回テーブル20の中央に向けて押圧する指令信号を駆動部46に出力した後に、各ガイド部42が厚板2から離れる方向に移動する指令信号を駆動部46に出力してもよい。すなわち、サイドガイド40で厚板2を転回テーブル20の中央に押圧した後に、各サイドガイド40を距離Dが閾値以上となるように開いてもよい。この場合、厚板2が転回中であるときには、厚板2の転回を停止させてサイドガイド40を作動させる。なお、各サイドガイド40は、制御部50により個別に(駆動)制御されてもよい。
【0038】
S9では、転回テーブル20のロール制御を行う。すなわち、制御部50は、転回テーブル20の各駆動部24に向けてそれぞれ指令信号を出力する。この指令信号は、ロール22の回転方向(正転または逆転)および回転速度を有している。ロール22の回転方向および回転速度は、例えばS5で演算された厚板2の回転角θ1に基づき設定される。これにより、厚板2を転回テーブル20上で効率よく転回させることができる。
【0039】
次のS10では、厚板2が目標回転角となったか否かを判定する。すなわち、制御部50は、転回している厚板2の回転角θ1が記憶部52に記憶された目標回転角となったか否かを判定する。そして、S10で「YES」、すなわち、制御部50は、厚板2の回転角θ1が目標回転角となったと判定した場合にはS11に進む。一方、S10で「NO」、すなわち、制御部50は、厚板2の回転角θ1が目標回転角になっていないと判定した場合にはS2に戻り、厚板2の転回制御を継続させる。
【0040】
S11では、サイドガイド40を作動する。すなわち、制御部50は、各ガイド部42が厚板2に近づく方向に移動する指令信号を駆動部46に出力する。これにより、制御部50は、各サイドガイド40による厚板2の挟み込みを実行して、厚板2の位置および向きを補正する。その後、制御部50は、各ガイド部42が厚板2から離れる方向に移動する指令信号を駆動部46に出力して、厚板2の転回制御を終了する。
【0041】
かくして、実施形態による厚板転回の自動制御装置1は、厚板2を圧延する圧延機10と、圧延機10に向けて厚板2を移動させるとともに、厚板2を転回させる複数のロール22を有する転回テーブル20と、転回テーブル20の上に位置する厚板2を撮影する撮影機30と、撮影機30に接続され転回テーブル20の複数のロール22を制御する制御部50と、を備えている。そして、制御部50は、厚板2の頂点2aと圧延機10との間の距離A、厚板2の頂点2bと圧延機10との間の距離B、および頂点2aと頂点2bとの間の距離Cにより厚板2の回転角θ1を演算する。
【0042】
これにより、転回テーブル20上で厚板2を自動で転回させることができ、厚板2の成形作業を効率よく行うことができる。また、制御部50は、転回している厚板2の回転角θ1を演算することができるので、仮に厚板2が転回テーブル20上で滑りながら転回しても、その滑りを考慮して厚板2の転回を実行することができる。従って、厚板2の自動転回を精度よく行うことができる。
【0043】
また、転回テーブル20を挟んだ両側に厚板2を転回テーブル20の中央に向けて押圧するサイドガイド40を備えている。そして、制御部50は、転回テーブル20の上に位置する厚板2とサイドガイド40との間の距離Dを演算する。
【0044】
これにより、転回テーブル20上で片寄った位置にある厚板2を転回させた場合でも、制御部50は距離Dから厚板2がサイドガイド40に接触するか否かを検出することができる。また、制御部50は、転回中の厚板2とサイドガイド40との距離Dを検出することで、厚板2の転回中におけるサイドガイド40の位置を調整することができる。
【0045】
例えば、制御部50は、距離Dの閾値を複数個設定することで、サイドガイド40の動作を細かく制御することができる。すなわち、厚板2の転回中にサイドガイド40を厚板2に近づけることで、厚板2のセンタリングや厚板2の位置ずれの修正を早期に実行することができる。従って、厚板2の成形作業の速度が早くなり、作業効率を向上できる。
【0046】
図5は、本発明の変形例による厚板の回転角を演算する場合の一例を示す説明図である。
なお、上述した実施形態では、厚板2と圧延機10との間の距離A、Bを用いて厚板2の回転角θ1を演算した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限らず、例えば厚板2とサイドガイド40との距離D、Eにより厚板2の回転角θ2を演算してもよい。
【0047】
具体的には、制御部50は、厚板2の頂点2aとサイドガイド40との間の距離D、厚板2の頂点2aとは異なる他の頂点2cとサイドガイド40との間の距離E、および頂点2aと他の頂点2cとの間の距離F、により厚板2の回転角θ2を演算してもよい。この場合、厚板2の回転角θ2は、以下に示す数2の式により演算することができる。
【0048】
【数2】
【0049】
かくして、変形例における厚板転回の自動制御装置1においても、上述した実施形態と同様の作用、効果を有することができる。特に、変形例では、厚板2とサイドガイド40との間の距離D、Eにより、厚板2の回転角θ2を演算している。従って、制御部50は、この距離D、Eを用いて厚板2がサイドガイド40に接触するか否かを判定することができるので、制御部50の制御負担を低減することができる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、圧延機10の厚板2の流れ方向の上流側に搬送ロール60を設け、下流側に転回テーブル20を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限らず、例えば搬送ロール60を転回テーブル20としてもよい。すなわち、圧延機10を挟んで上流側と下流側とに転回テーブル20が設けられていてもよい。このことは、変形例についても同様である。
【0051】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 厚板転回の自動制御装置、 2 厚板、 2a 頂点、 2b 頂点、 2c 頂点、 10 圧延機、 10a 上ロール、 10b 下ロール、 20 転回テーブル、 22 ロール、 22a 大径部、 22b 小径部、 24 駆動部、 30 撮影機、 40 サイドガイド、 42 ガイド部、 44 支持部、 46 駆動部、 50 制御部、 52 記憶部、 60 搬送ロール、 θ1 回転角、 θ2 回転角
図1
図2
図3
図4
図5