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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
F04D19/04 H
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020028168
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2020139504
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2020-02-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】19159776
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391043675
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン・ベットヒャー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・シュナール
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・シュトル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シュヴァイクヘーファー
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】窪田 治彦
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-282194(JP,A)
【文献】特表2009-544888(JP,A)
【文献】特開2015-190404(JP,A)
【文献】特開平10-306790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの軸受装置によって回転可能に支承された少なくとも1つのロータを有する少なくとも1つのポンプ段と、軸受装置に隣接して配置されかつ軸受装置の作動パラメータを決定可能な第1のセンサ装置と、軸受装置から離間して配置されかつ真空ポンプの作動パラメータを決定可能な第2のセンサ装置を備える真空ポンプにおいて、
軸受装置の作動パラメータと真空ポンプの作動パラメータを互いに比較し、比較に基づいて軸受装置の作動状態を確定するために形成及び設備された制御装置が設けられていること、第1及び第2のセンサ装置が、それぞれ1つの温度センサであること、第2のセンサ装置が軸受装置の温度上昇によって全く又はほとんど影響を受けないように、第2のセンサ装置が軸受装置から離間して配置されていること、及び真空ポンプが、アクティブ冷却装置を有し、このアクティブ冷却装置が、少なくとも真空ポンプの第2のセンサ装置を配置した部品を冷却するために設けられていること、を特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
真空ポンプの作動パラメータが、真空ポンプのハウジングの作動パラメータであること、を特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
軸受装置が、少なくとも1つの転がり軸受又は少なくとも1つの玉軸受を含むこと、を特徴とする請求項1又は2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
真空ポンプの、軸受装置を収容する部品の作動パラメータが直接的又は間接的に決定可能であるように、第1のセンサ装置が配置されていること、を特徴とする請求項1~3の少なくとも1項に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
軸受装置が、真空ポンプの第1の部品によって収容され、この第1の部品が、真空ポンプの第2の部品とは別個に形成され、この第2の部品に第2のセンサ装置が付設され第1及び第2の部品が、熱伝導的に互いに結合されていること、を特徴とする請求項1~4の少なくとも1項に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
真空ポンプの第2の部品が、真空ポンプのハウジング部品であること、を特徴とする請求項5に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
請求項1~6の少なくとも1項に記載の真空ポンプを作動させるための方法であって、軸受装置の作動パラメータと真空ポンプの作動パラメータが互いに比較され、比較に基づいて軸受装置の作動状態が確定されること、を特徴とする方法。
【請求項8】
軸受装置の作動パラメータと真空ポンプの作動パラメータの比較が、比較パラメータの形成を含むこと、及び、比較パラメータの閾値を上回った時に、故障が確定されること、を特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
軸受装置の作動パラメータと真空ポンプの作動パラメータの比較が、作動パラメータの差の形成を含むこと、及び、差の閾値を上回った時に、故障が確定されること、を特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
故障の確定時に、制御装置によって、警告信号が出力される及び/又は自動的に真空ポンプの作動介入を受けること、特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
真空ポンプの作動パラメータが、静的又は準静的な値又は値範囲に達した時に初めて、真空ポンプの作動状態が決定されること、を特徴とする請求項7~10の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項12】
真空ポンプの作動状態を決定する時に、別の要因が考慮されること、を特徴とする請求項7~11の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項13】
別の要因が、真空ポンプの稼働時間及び/又は古さ、真空ポンプの外部機械的負荷、真空ポンプの外部温度負荷及び/又は真空ポンプの作動モードのような外部及び/又は内部パラメータであること、を特徴とする請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの軸受装置によって回転可能に支承された少なくとも1つのロータを有する少なくとも1つのポンプ段を備える真空ポンプ、特にターボ分子ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
このような真空ポンプは、基本的に知られており、例えば産業及び/又は科学的環境で広く適用される。この場合、その(作動)コスト、性能又はサイズだけが、それぞれのユーザにとって重要な実質的な要因ではない。真空ポンプは、信頼性も有していなければならない。何故なら、故障は、真空ポンプを付設した真空設備の損傷を生じさせるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、差し迫った損傷を早期に、理想的には真空ポンプが実際に故障する前に検知し得る冒頭で述べた構成の真空ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、真空ポンプは、軸受装置に隣接して配置されかつ軸受装置の作動パラメータを直接的又は間接的に決定可能な第1のセンサ装置と、軸受装置から離間して配置されかつ真空ポンプの作動パラメータ、特に真空ポンプのハウジングの作動パラメータを決定可能な第2のセンサ装置を備える。更に、軸受装置の作動パラメータと真空ポンプの作動パラメータを互いに比較し、比較に基づいて軸受装置の作動状態を確定するために形成及び設備された制御装置が設けられている。損傷時又はその直前に、確定された作動状態は、しばしばそれぞれの作動モードにとって特徴的な標準的な作動状態とは異なる。その場合、このような差異の検知は、対抗措置を導入するために利用することができる。
【0005】
軸受装置の作動パラメータの決定は、軸受装置自身において行なうことができる。しかしながらまた、相応のパラメータを軸受装置の近傍で、特に軸受装置と密に、好ましくは直接的に接触している部品において決定することも可能である。軸受装置の近傍でのパラメータの決定時には、決定される値が、軸受装置において直接的に決定された値に実質的に一致することから始めることができる。
【0006】
軸受装置の空間的に近くに配置された第1のセンサ装置による軸受装置の作動パラメータの決定により、その状態を推測することができる。但し、この作動パラメータは、比較的広い限度内の軸受装置もしくは真空ポンプの瑕疵のない状態内で変化することもできるので、このパラメータだけの分析は、しかしながらいずれにしても有益でない。
【0007】
従って、軸受装置の実際の状態の確実な分析を可能にするために、第2のセンサ装置が設けられている。軸受装置の状態によって全く又は僅かにしか影響を受けない少なくとも1つの別のパラメータを得るために、第2のセンサ装置は、空間的に間隔を置いた真空ポンプの状態を決定する。
【0008】
従って、最後に、軸受装置の状態によって一方では強く影響を受け、他方ではほとんど影響を受けないパラメータが比較される。この比較により、軸受装置の作動状態の推測及び/又は作動状態の時間的変化を得ることができる。パラメータの比較時に、その離散値及び/又は値の時間的変化を考慮することができる。
【0009】
例えば、制御装置は、比較に基づいて、異なった両パラメータが所定の限度内で一貫して変化する時に、真空ポンプが正しく機能することを検知する。ポンプの起動時、両パラメータの増加が期待できる。しかしながらこれらパラメータが発散するとすぐに、これは、差し迫った軸受損傷の兆候であると解釈することができる。しかしながら、軸受装置の作動状態の変化に有利又は不利に作用する、パラメータの時間的成長の他のシナリオも考えられる。
【0010】
この関係で、分析の信頼性を高めるため、及び/又は、ポンプの特別な要求を満たすため、その測定データが軸受装置の作動状態を決定するために考慮される2つより多くのセンサ装置を設け得ることが指摘される。
【0011】
本発明の別の実施形態は、明細書、特許請求の範囲並びに添付図に記載されている。
【0012】
1つの実施形態によれば、第1及び第2のセンサ装置が、同じ測定量を決定するために形成されている。これは、決定されたデータの分析を容易化する。しかしながら、基本的には、軸受装置の作動状態を検出するために、異なった物理的測定量が比較されることも考えられる。
【0013】
例えば、第1及び/又は第2のセンサ装置は、温度センサ及び/又は振動センサ及び/又は音響センサを含む。即ち、損傷のある又は摩耗した軸受は、しばしば軸受の構成要素の損傷(例えば玉軸受の場合はボールの軌道及び/又はボールケージの損傷)を備え、これは、軸受摩擦を高め、この高い軸受摩擦は、更にまた軸受の温度上昇及び/又は振動特性の変化に表れる。
【0014】
真空ポンプの構成は、所定の値の熱伝導率が温度センサの間に得られるように最適化することができる。センサの間の熱抵抗が最適であるときに、確定された温度差の評価が簡素化される。
【0015】
軸受装置は、少なくとも1つの転がり軸受、特に少なくとも1つの玉軸受を含み得る。しかしながらまた、発明のコンセプトは、他の軸受タイプ、例えば滑り軸受の場合でも使用可能である。
【0016】
真空ポンプの、軸受装置を収容する部品の作動パラメータが直接的又は間接的に決定可能であるように、第1のセンサ装置は配置し得る。例えば、軸受ホルダの温度又は軸受装置に隣接する部品の温度を検出する温度センサが設けられている。しかしながらまた、軸受装置の作動パラメータは、軸受装置自身において直接的に測定することができる。温度の検出時、例えば従来の温度センサ又はIRセンサを使用することができる。振動も、間接的に検出すること又は軸受装置において直接的に測定することができる。
【0017】
真空ポンプは、アクティブ冷却装置を有することができ、このアクティブ冷却装置が、特に少なくとも真空ポンプの部品を冷却するために設けられ、この部品の作動パラメータが第2のセンサ装置によって決定可能である。この部品は、例えばハウジング部品であり得る。
【0018】
別の実施形態によれば、軸受装置が、真空ポンプの第1の部品によって収容され、この第1の部品が、真空ポンプの第2の部品、特に真空ポンプのハウジング部品(例えば下側部分)とは別個に形成され、この第2の部品に第2のセンサ装置が付設されている。確かに、両部品が熱的絶縁によって互いに(十分に)熱的に切離されている構成が、しかしながら、好ましくは、特に第1及び第2の部品が、熱伝導的に互いに結合されている構成が、考えられる。しかしながらまた、第1及び第2のセンサ装置もしくはその測定領域が部品、例えばポンプの下側部分に配置されていることも考えられる。センサ装置は、この場合でも空間的に離間されており、即ち、第1のセンサ装置は、軸受の近くに配置されているが、第2のセンサ装置は、軸受から遠くに配置されている。
【0019】
本発明は、更に、少なくとも1つの軸受装置によって回転可能に支承された少なくとも1つのロータを有する少なくとも1つのポンプ段と、軸受装置の作動パラメータを直接的又は間接的に決定する第1のセンサ装置と、軸受装置から離間した部分内で真空ポンプの作動パラメータ、特に真空ポンプのハウジングの作動パラメータを決定する第2のセンサ装置を備える真空ポンプを作動させるための、特に前記の少なくとも1つの実施形態の真空ポンプを作動させるための方法であって、軸受装置の作動パラメータと真空ポンプの作動パラメータが互いに比較され、比較に基づいて軸受装置の作動状態が確定されること、を特徴とする方法に関する。
【0020】
比較に対して、データのフィルタリング及び/又はデータのコンバージョンが先行すること、又は、これら又は同様の方法を含むこと、ができる。データ加工及び/又はデータ分析時に、安全性基準が考慮されることも企図し得る。この措置の目標は、特に、軸受の状態の誤った画像を示し得るデータ内の重要でない(例えば短期の)変動が除去されることである。
【0021】
即ち、第1のセンサ装置は、第1のセンサ装置が軸受装置の作動パラメータを直接的に測定し得るように配置されている。しかしながらまた、測定が軸受装置の近くの環境内で実施されることも考えられる。その場合は、測定された値が実質的に直接的な測定時に得られる値に一致することから出発する。第2のセンサ装置は、軸受装置の状態によってほとんど影響を受けない作動状態の値を提供すべきである。従って、値は、軸受装置から多少離れたところに決定される。
【0022】
軸受装置の作動パラメータと真空ポンプの作動パラメータは、同じ物理的測定量であり得る。
【0023】
例えば、軸受装置の作動パラメータ及び/又は真空ポンプの作動パラメータは、温度、機械的振動用の尺度、特に振動振幅及び/又は振動周波数、及び/又は、音響パラメータである。
【0024】
方法の1つの実施形態によれば、即ち例えば、軸受装置の温度又は軸受装置と直接的又は間接的に接触している隣接する部品の温度と、真空ポンプのハウジングの部分の温度は、軸受装置の作動状態を確定するためのベースとして考慮することができる。同様のことが、振動及び他の物理的測定量に対して当て嵌まる。
【0025】
方法の別の実施形態によれば、軸受装置の作動パラメータと真空ポンプの作動パラメータの比較が、比較パラメータの形成を含む。比較パラメータの所定の又は習得した閾値を下回った及び/又は上回った時に、故障が確定される。比較パラメータのために、正常又は異常な状態に相当するパラメータ空間を規定することもできる。
【0026】
軸受装置の作動パラメータと真空ポンプの作動パラメータの比較が、作動パラメータの差の形成を含み、差の所定の又は習得した閾値を上回った時に、故障が確定される。しかしながらまた、比較は、商の形成等も含み得る。
【0027】
故障の確定時に、警告信号を出力することができる。故障が生じた場合、選択的又は付加的に、自動的に-例えば制御装置によって-真空ポンプの作動に介入される。例えば、ポンプは、穏やか又は突然に停止され、“安全な”作動モードにするために、ポンプの回転数は低減される。故障の発生に対するリアクションは、故障の確定された深刻さに依存して選択することができる。
【0028】
作動状態の確定の信頼性を高めるために、真空ポンプの作動パラメータが、静的又は準静的な値又は値範囲に達した時に初めて、真空ポンプの作動状態が決定されること、が企図し得る。例えば、ポンプの起動時の真空ポンプ内の温度分布は、数時間後に初めて安定する。従って、センサ装置の所定の作動パラメータは、その間に、おそらく未だ、軸受装置の実際の状態の確実な推測を必ずしも許容しない画像を提供する。即ち、誤った警報の確率を最小化するため、ポンプが安定した状態に達した場合に初めて、相応の分析が開始されるか、相応の測定データが考慮される。
【0029】
真空ポンプの作動状態を決定する時に、別の要因、特に外部及び/又は内部パラメータ、好ましくは真空ポンプの稼働時間及び/又は古さ、真空ポンプの外部機械的負荷、真空ポンプの外部温度負荷及び/又は真空ポンプの作動モードが考慮され得る。
【0030】
多くの場合、軸受装置及び/又は真空ポンプの作動パラメータは、軸受装置の状態及び/又は例えばポンプの回転数に依存するだけではない要因によっても影響を受ける。ポンプの古さ、最後のサービスインターバル後の稼働時間、ポンプの“歴史”(どのくらいの間、どのような回転数でもしくはどのような作動モードでポンプが作動されたか)、使用された潤滑剤の古さ等も、ポンプの作動時の作動パラメータに影響を与える。同じことが、例えばポンプの機械的負荷及び/又は振動負荷及び/又はポンプの温度負荷のような外部要因に対して当て嵌まる。
【0031】
これら要因に対するデータが存在するのであれば、これらデータは、軸受装置の作動状態の確定時に考慮することができる。例えば、前記の閾値は、相応に適合される。
【0032】
軸受装置の作動状態の確定時に得られるデータは、ポンプもしくは軸受装置の保守を行なうべき時点を決定するために利用することもできる。ユーザには、保守インターバルの残存期間を出力することもできる。換言すれば、前記データは、保守を最適化するために利用することができるということである。何故なら、保守インターバルは、必要に応じて及びポンプの利用の集中度に依存して適合させることができるからである。
【0033】
以下で、本発明を、添付図に関係づけた有利な実施形態により模範的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ターボ分子ポンプの斜視図
図2図1のターボ分子ポンプの下側の図
図3図2に示した切断線A-Aに沿ったターボ分子ポンプの横断面図
図4図2に示した切断線B-Bに沿ったターボ分子ポンプの横断面図
図5図2に示した切断線C-Cに沿ったターボ分子ポンプの横断面図
図6】ターボ分子ポンプの別の実施形態の横断面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に示されたターボ分子ポンプ111は、インレットフランジ113に取り囲まれたポンプインレット115を有する。このポンプインレットには、公知の方法で、図示されていない真空容器が接続されることが可能である。真空容器からのガスは、ポンプインレット115を介して真空容器から吸引され、そしてポンプを通してポンプアウトレット117へと搬送されることが可能である。ポンプアウトレットには、予真空ポンプ(例えばロータリーベーンポンプ)が接続されていることが可能である。
【0036】
インレットフランジ113は、図1の真空ポンプの向きにおいては、真空ポンプ111のハウジング119の上端部を形成する。ハウジング119は、下部分121を有する。これには、側方にエレクトロニクスハウジング123が設けられている。エレクトロニクスハウジング123内には、真空ポンプ111の電子的、及び/又は電子的コンポーネントが収容されている。これらは例えば、真空ポンプ内に配置される電動モータ125を作動させるためのものである。エレクトロニクスハウジング123には、アクセサリーのための複数の接続部127が設けられている。更に、データインターフェース129(例えばRS485スタンダードに従うもの)と、電源供給接続部131がエレクトロニクスハウジング123には設けられている。
【0037】
ターボ分子ポンプ111のハウジング119には、フローインレット133が、特にフローバルブの形式で設けられている。これを介して真空ポンプ111は溢出を受けることが可能である。下部分121の領域には、更にシールガス接続部135(洗浄ガス接続部とも称される)が設けられている。これを介して洗浄ガスが、ポンプによって搬送されるガスに対して電動モータ125(例えば図3参照)を保護するため、モータ室137内に取り込まれることが可能である。モータ室内には、真空ポンプ111の電動モータ125が収容されている。下部分121内には、更に2つの冷却媒体接続部139が設けられている。その際、一方の冷却媒体接続部は冷却媒体のインレットとして、そして他方の冷却媒体接続部はアウトレットとして設けられている。冷却媒体は、冷却目的で真空ポンプ内に導かれることが可能である。
【0038】
真空ポンプの下側面141は、起立面として使用されることが可能であるので、真空ポンプ111は下側面141上に起立して作動させられることが可能である。しかしまた、真空ポンプ111は、インレットフランジ113を介して真空容器に固定されることも可能であり、これによっていわば懸架して作動させられることが可能である。更に真空ポンプ111は、図1に示されたものと異なった向きとされているときにも作動させられることが可能であるよう構成されていることが可能である。下側面141が下に向かってではなく、当該面に向けられて、又は上に向けられて配置されている真空ポンプの実施形も実現されることが可能である。
【0039】
図2に表わされている下側面141には、更に、種々のスクリュー143が設けられている。これらによって、ここでは詳細に特定されない真空ポンプの部材が互いに固定されている。例えば、軸受カバー145が下側面141に固定されている。
【0040】
下側面141には、更に、固定穴147が設けられている。これを介してポンプ111は例えば載置面に固定されることが可能である。
【0041】
図2から5には、冷却媒体配管148が表わされている。この中に、冷却媒体接続部139を介して導入、又は導出される冷却媒体が循環していることが可能である。
【0042】
図3から5の断面図に示されているように、真空ポンプは、複数のプロセスガスポンプ段を有している。これは、ポンプインレット115に及ぶプロセスガスをポンプアウトレット117に搬送するためのものである。
【0043】
ハウジング119内には、ロータ149が配置されている。このロータは、回転軸151を中心として回転可能なロータ軸153を有している。
【0044】
ターボ分子ポンプ111は、ポンプ効果を奏するよう互いにシリアルに接続された複数のポンプ段を有している。これらポンプ段は、ロータ軸153に固定された複数の半径方向のロータディスク155と、ロータディスク155の間に配置され、そしてハウジング119内に固定されているステータディスク157を有している。その際、1つのロータディスク155とこれに隣接する1つのステータディスク157がそれぞれ1つのターボ分子ポンプ段を形成している。ステータディスク157は、スペーサリング159によって互いに所望の軸方向間隔に保持されている。
【0045】
真空ポンプは、更に、半径方向において互いに入れ子式に配置され、そしてポンプ作用を奏するよう互いにシリアルに接続されたホルベックポンプ段を有する。ホルベックポンプ段のロータは、ロータ軸153に設けられるロータハブ161と、ロータハブ161に固定され、そしてこれによって担持されるシリンダ側面形状の2つのホルベックロータスリーブ163,165を有している。これらは、回転軸151と同軸に向けられており、そして半径方向において互いに入れ子式に接続されている。更に、シリンダ側面形状の2つのホルベックステータスリーブ167,169が設けられている。これらは同様に、回転軸151に対して同軸に向けられており、そして半径方向で見て互いに入れ子式に接続されている。
【0046】
ポンプ効果を発揮するホルベックポンプ段の表面は、側面によって、つまり、ホルベックロータスリーブ163,165とホルベックステータスリーブ167,169の内側面、及び/又は外側面によって形成されている。外側のホルベックステータスリーブ167の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙171を形成しつつ、外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向外側面と向かい合っており、そしてこれと、ターボ分子ポンプに後続する第1のホルベックポンプ段を形成する。外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙173を形成しつつ、内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向外側面と向かい合っており、そしてこれと、第2のホルベックポンプ段を形成する。内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙175を形成しつつ、内側のホルベックロータスリーブ165の半径方向外側面と向かい合っており、そしてこれと、第3のホルベックポンプ段を形成する。
【0047】
ホルベックロータスリーブ163の下側端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられていることが可能である。これを介して、半径方向外側に位置するホルベック間隙171が、中央のホルベック間隙173と接続されている。更に、ホルベックステータスリーブ169の上側端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられていることが可能である。これを介して、中央のホルベック間隙173が、半径方向内側に位置するホルベック間隙175と接続されている。これによって、入れ子式に接続される複数のホルベックポンプ段が互いにシリアルに接続される。半径方向内側に位置するホルベックロータスリーブ165の下側の端部には、更に、アウトレット117への接続チャネル179が設けられていることが可能である。
【0048】
ホルベックステータスリーブ163、165の上述したポンプ効果を発揮する表面は、それぞれ、螺旋形状に回転軸151の周りを周回しつつ軸方向に延びる複数のホルベック溝を有する。他方で、ホルベックロータスリーブ163、165のこれに向かい合った側面は、滑らかに形成されており、そして真空ポンプ111の作動のためのガスをホルベック溝内へと駆り立てる。
【0049】
ロータ軸153の回転可能な支承のため、ポンプインレット117の領域に転がり軸受181、およびポンプアウトレット115の領域に永久磁石軸受183が設けられている。
【0050】
転がり軸受181の領域には、ロータ軸153に円錐形のスプラッシュナット185が設けられている。これは、転がり軸受181の方に向かって増加する外直径を有している。スプラッシュナット185は、作動媒体貯蔵部の少なくとも1つのスキマー(独語:Abstreifer)と滑り接触状態にある。作動媒体貯蔵部は、互いに積層された吸収性の複数のディスク187を有する。これらディスクは、転がり軸受181のための作動媒体、例えば潤滑剤を染み込ませてある。
【0051】
真空ポンプ111の作動中、作動媒体は、毛細管効果によって作動媒体貯蔵部からスキマーを介して回転するスプラッシュナット185へと伝達され、そして、遠心力によってスプラッシュナット185に沿って、スプラッシュナット185の大きくなる外直径の方向へと、転がり軸受181に向かって搬送される。そこでは例えば、潤滑機能が発揮される。転がり軸受181と作動媒体貯蔵部は、真空ポンプ内において槽形状のインサート189と、軸受カバー145に囲まれている。
【0052】
永久磁石軸受183は、ロータ側の軸受半部191と、ステータ側の軸受半部193を有している。これらは、各1つのリング積層部を有している。リング積層部は、軸方向に互いに積層された永久磁石の複数のリング195、197から成っている。リングマグネット195,197は、半径方向の軸受間隙199を形成しつつ互いに向き合っており、その際、ロータ側のリングマグネット195は、半径方向外側に、そしてステータ側のリングマグネット197は半径方向内側に設けられている。軸受間隙199内に存在する地場は、リングマグネット195,197の間の磁気的反発力を引き起こす。これは、ロータ軸153の半径方向の支承を実現する。ロータ側のリングマグネット195は、ロータ軸153のキャリア部分201によって担持されている。これは、リングマグネット195を半径方向外側で取り囲んでいる。ステータ側のリングマグネット197は、ステータ側のキャリア部分203によって担持されている。これは、リングマグネット197を通って延びており、そしてハウジング119の支材205に吊架されている。回転軸151に平行に、ロータ側のリングマグネット195が、キャリア部分203と連結されるカバー要素207によって固定されている。ステータ側のリングマグネット197は、回転軸151に平行に1つの方向で、キャリア部分203と接続される固定リング209によって、およびキャリア部分203と接続される固定リング211によって固定されている。その上、固定リング211とリングマグネット197の間には、皿バネ213が設けられていることが可能である。
【0053】
磁気軸受の内部には、緊急用または安全用軸受215が設けられている。これは、真空ポンプの通常の作動時には、非接触で空転し、そしてロータ149がステータに対して半径方向において過剰に偏移した際に初めて作用するに至る。ロータ149のための半径方向のストッパーを形成するためである。ロータ側の構造がステータ側の構造と衝突するのが防止されるからである。安全用軸受215は、潤滑されない転がり軸受として形成されており、そして、ロータ149及び/又はステータと半径方向の間隙を形成する。この間隙は、安全用軸受215が通常のポンプ作動中は作用しないことに供する。安全用軸受が作用するに至る半径方向の間隙は、十分大きく寸法取られているので、安全用軸受215は、真空ポンプの通常の作動中は作用せず、そして同時に十分小さいので、ロータ側の構造がステータ側の構造と衝突するのがあらゆる状況で防止される。
【0054】
真空ポンプ111は、ロータ149を回転駆動するための電動モータ125を有している。電動モータ125のアンカーは、ロータ149によって形成されている。そのロータ軸153はモータステータ217を通って延びている。ロータ軸153の、モータステータ217を通って延びる部分には、半径方向外側に、または埋め込まれて、永久磁石装置が設けられていることが可能である。ロータ149の、モータステータ217を通って延びる部分と、モータステータ217との間には、中間空間219が設けられている。これは、半径方向のモータ間隙を有する。これを介して、モータステータ217と永久磁石装置は、駆動トルク伝達のため、互いに磁気的に影響することが可能である。
【0055】
モータステータ217は、ハウジング内において、電動モータ125のために設けられるモータ室137の内部に固定されている。シールガス接続部135を介して、シールガス(洗浄ガスとも称され、これは例えば空気や窒素であることが可能である)が、モータ室137内へと至る。シールガスを介して電動モータ125は、プロセスガス、例えばプロセスガスの腐食性の部分に対して保護されることが可能である。モータ室137は、ポンプアウトレット117を介しても真空引きされることが可能である、つまりモータ室137は、少なくとも近似的に、ポンプアウトレット117に接続される読真空ポンプによって実現される予真空状態となっている。
【0056】
モータ室137を画成する壁部221とロータハブ161の間には、更に、いわゆる公知のラビリンスシール223が設けられていることが可能である。特に、半径方向外側に位置するホルベックポンプ段に対してモータ室217をより良好にシールすることを達成するためである。
【0057】
図6は、ターボ分子ポンプの別の実施形態を示すが、このターボ分子ポンプの場合は、冒頭で述べた第1及び第2のセンサ装置のそれぞれの測定領域が位置する領域を模範的に記載されている。この例では、一方で、少なくとも1つの温度センサ(示してない)が設けられ、この温度センサは、温度センサが領域T1内を支配する温度を決定し得るように配置されている。領域T1は、玉軸受181を収容するインサート189に付設されている。選択的又は付加的に、領域T1’内で温度測定を行なうことができる。領域T1’は、下部分121内に位置し、インサート189と直接的に接触している。
【0058】
即ち、温度センサは、直接的又は間接的に底を支配する温度を測定し、これは、転がり軸受181の温度の直接的な推測を可能にする。何故なら、領域T1及びT1’は、軸受181に対して空間的に近くに存在するからである。軸受181の構成要素、例えばその外輪に対して直接的な温度測定も考えられる。
【0059】
181軸受の損傷及び/又は摩耗時に、軸受は、通常よりも強く加熱する。軸受181の温度上昇-その場合、これは、領域T1,T1’内の温度上昇も生じさせる-の原因が、ポンプ自身の負荷が高いことにあるのかを区別し得るように、領域T1,T1’内で確定された温度データが、軸受181の温度上昇によって全く又はほとんど影響を受けない少なくとも1つの領域内で測定されるデータと比較される。この例では、下部分121の、軸受181から空間的に離間した領域T2である。
【0060】
そこで所定の状況で温度が上昇した場合、例えばポンプの作動モード及び/又は外部要因によって決定される通常の温度上昇が推察し得る。領域T1,T1’内及び領域T2内で測定されるデータの差が異常な場合、及び/又は、領域T1,T1’内でだけ温度上昇があった場合、これは、軸受181の摩耗の増加又は損傷の出現に起因し得る。前記データを検出及び評価するポンプの制御装置は、これを検知し、(自動的に)対抗措置(例えば警告信号、ポンプの停止、作動モードの偏向、整備インターバルの適合等)を導入する。前記データの評価時、冒頭で説明したように、外部要因及び/又はポンプの“歴史”並びにポンプをそれぞれ現在作動させる作動モードも、軸受の監視を最適化するために考慮することができる。軸受の監視のために使用される閾値及び/又は比較パラメータは、制御装置内に保存されていること及び/又は習得することができる。整備インターバルの適合及び/又はエラーの検知及びその原因の良好な分析をし得るために、軸受の監視の範囲内で確定されたデータもしくはそれから判明した分析は、保存すること及び/又は外部データメモリ(例えばポンプメーカのサーバ)に伝達することができる。
【0061】
通常の作動で温度補償を可能にするため、領域T2及び領域T1,T1’は、熱的に連結されている。即ち、ポンプの適切な作動時、所定の負荷状態で、ある程度の時間の後、性的又は準静的な温度分布が生じる。好ましくは、誤った警報の危険を最小化するため、そのような状態に達したときに初めて、軸受181の状態が監視される。
【0062】
好ましくは、特に領域T2に影響を与えるアクティブ冷却装置、例えば水冷装置が設けられている。冷却は、領域T1,T1’とT2で測定された温度値の間の差を増大させ、これが、データ分析を簡素化する。相応の冷却装置のうち、図6には、冷却媒体接続部225だけが示されている。
【0063】
模範的な差は、冷却に依存して、通常の軸受状態で1℃~5℃の温度差である。差し迫った軸受損傷が生じた時に、差は、例えば5℃よりも多くの、6℃よりも多くの、15℃よりも多くの値に又はそれどころか更に大きい値に上昇する。
【0064】
以上のように、温度センサにより本発明のコンセプトを説明した。その軸受の近くの及び軸受から遠くの測定領域T1,T1’もしくはT2は、純粋に模範的に記載されている。軸受装置の作動状態を監視するために、相応のセンサを適切に配置して、他の物理的パラメータを同様に利用し得ることがわかる。また、更に良好なデータベースを得るために、前記パラメータを複数の箇所で測定することもできる。発明のコンセプトは、ターボ分子ポンプに限定されるものではなく、他のポンプタイプでも使用することができる。
【符号の説明】
【0065】
111 ターボ分子ポンプ
113 インレットフランジ
115 ポンプインレット
117 ポンプアウトレット
119 ハウジング
121 下部分
123 エレクトロニクスハウジング
125 電動モータ
127 アクセサリー接続部
129 データインターフェース
131 電源供給接続部
133 フローインレット
135 シールガス接続部
137 モータ室
139 冷却媒体接続部
141 下側面
143 ネジ
145 軸受カバー
147 固定穴
148 冷却媒体配管
149 ロータ
151 回転軸
153 ロータ軸
155 ロータディスク
157 ステータディスク
159 スペーサリング
161 ロータハブ
163 ホルベックロータスリーブ
165 ホルベックロータスリーブ
167 ホルベックステータスリーブ
169 ホルベックステータスリーブ
171 ホルベック間隙
173 ホルベック間隙
175 ホルベック間隙
179 接続チャネル
181 転がり軸受
183 永久磁石軸受
185 スプラッシュナット
187 ディスク
189 インサート
191 ロータ側の軸受半部
193 ステータ側の軸受半部
195 リングマグネット
197 リングマグネット
199 軸受間隙
201 担持部分
203 担持部分
205 半径方向の支柱
207 カバー要素
209 支持リング
211 固定リング
213 皿バネ
215 緊急用または安全用軸受
217 モータステータ
219 中間空間
221 壁部
223 ラビリンスシール
225 冷却媒体接続部
T1,T1’ 軸受の近くの測定領域
T2 軸受から遠くの測定領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6