(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】PRPF31遺伝子における変異により引き起こされる遺伝性網膜変性に対する遺伝子増強療法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20230307BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230307BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230307BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230307BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230307BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20230307BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
A61K35/76
A61K38/17
A61K48/00
A61P27/02
C07K14/47
C12N15/12 ZNA
(21)【出願番号】P 2020208068
(22)【出願日】2020-12-16
(62)【分割の表示】P 2017564778の分割
【原出願日】2016-03-07
【審査請求日】2021-01-15
(32)【優先日】2015-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511140770
【氏名又は名称】マサチューセッツ アイ アンド イヤー インファーマリー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ピアス,エリック エー.
(72)【発明者】
【氏名】ファーカス,マイケル エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ソウサ,マリア イー.
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-512171(JP,A)
【文献】国際公開第2013/173129(WO,A2)
【文献】特表2018-511652(JP,A)
【文献】The American Journal of Pathology,2014年,Vol.184, No.10,pp.2641-2652
【文献】実験医学,2008年,Vol.26, No.10,pp.1590-1595
【文献】PLOS ONE,2013年,Vol.8, No.10,e75666(11pages)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜色素上皮(RPE)細胞における発現を駆動するプロモーターと作動可能に連結した、ヒトPRPF31をコードする配列を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)。
【請求項2】
前記プロモーターが、CAG、CASI、RPE65、VMD2、RLBP1、RGRまたはTIMP3プロモーターである、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
前記PRPF31配列がコドン最適化されている、請求項1または2に記載のベクター。
【請求項4】
配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、20、21、22、23、24、25および26からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するAAVカプシドポリペプチドをさらに含む、請求項1~3の何れか一項に記載のベクター。
【請求項5】
CAGプロモーター、コザック配列およびヒトPRPF31をコードする配列を5’から3’に含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項6】
配列番号34のnts1319~2818を含む、請求項1~5の何れか一項に記載のベクター。
【請求項7】
網膜下注射による送達のために製剤化された、請求項1~6の何れか一項に記載のベクターを含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~6の何れか一項に記載のベクターを希釈剤中に含む、またはそれが徐放性マトリックス中に包埋された遺伝子送達系からなる医薬組成物。
【請求項9】
前記遺伝子送達系がタンパク質および/または脂質をさらに含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記遺伝子送達系が脂質をさらに含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ヒト対象の眼において、PRPF31における変異により引き起こされる網膜色素変性の処置に使用するための、請求項1~6に記載のベクター。
【請求項12】
ヒト対象の眼において、PRPF31の発現を増大させることに使用するための、請求項1~6に記載のベクター。
【請求項13】
ヒト対象の眼において、PRPF31における変異により引き起こされる網膜色素変性の処置に使用するための、請求項7~10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ヒト対象の眼において、PRPF31の発現を増大させることに使用するための、請求項7~10に記載の医薬組成物。
【請求項15】
(i)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17および19~26からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するAAVカプシドポリペプチド、および
(ii)ヒトPRPF31をコードする配列
を含む、ウイルス粒子。
【請求項16】
PRPF31をコードする配列が、配列番号34のnts1319~2818を含む、請求項15に記載のウイルス粒子。
【請求項17】
網膜色素上皮(RPE)細胞における発現を駆動するプロモーターと作動可能に連結した、請求項15または16に記載のウイルス粒子。
【請求項18】
単離されたベクターを製造する
インビトロの方法であって、
請求項1~6、11、および12の何れか一項に記載のベクターを用いて細胞を形質転換すること、および
ベクターを単離すること
を含む、方法。
【請求項19】
PRPF31を発現するベクターを含む細胞を
インビトロで製造する方法であって、
請求項18に記載
された方法により製造されたベクターを用いて細胞を形質転換することを含む、方法。
【請求項20】
PRPF31を発現するベクターを含む細胞を製造する
インビトロの方法であって、
請求項1~6、11、および12の何れか一項に記載のベクターを単離すること、および
単離されたベクターを用いて細胞を形質転換すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年3月6日出願の米国特許出願第62/129,638号、および
2015年4月14日出願の同第62/147,307号の利益を主張する。前述の特許
出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体が参照により本明細
書に組み込まれる配列表を含有する。前記ASCIIのコピーは、2016年3月7日に
作成され、00633-0192WO1.txtと命名され、サイズは154KBである
。
【0003】
連邦支援の研究または開発
本発明は、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与さ
れる助成金番号EY020902の下に、政府により支援されて行われた。政府は本発明
における一定の権利を有する。
【0004】
本発明は、mRNA前駆体プロセシング因子31(PRPF31)における変異に関係
する網膜色素変性の遺伝子療法のための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0005】
mRNA前駆体プロセシング因子31(PRPF31)における変異はヒトにおいて、
遺伝性網膜ジストロフィー(IRD)の1つである非症候性網膜色素変性(RP)を引き
起こす。変異が、遍在して発現されるこれらのタンパク質に存在する場合に、どのような
機構またはどの組織が影響されているのか、現在のところ不明である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書には、mRNA前駆体プロセシング因子31(PRPF31)における変異に
関係する網膜色素変性の遺伝子療法のための方法および組成物が記載される。
【0007】
したがって、本明細書では、ヒト対象におけるPRPF31の変異により引き起こされ
る網膜色素変性を処置するか、またはヒト対象の眼においてPRPF31の発現を増大さ
せる方法が提供される。方法は、網膜色素上皮(RPE)細胞における発現を駆動させる
プロモーターと作動可能に連結した、ヒトPRPF31をコードする配列を含む治療的有
効量のアデノ随伴ウイルスのベクター、例えば、アデノ随伴ウイルスタイプ2(AAV2
)ベクターを対象の眼に送達することを含む。
【0008】
プロモーターは、RPEに特異的であってもよく、または他の細胞型においても同様に
、例えば、CASIもしくはCAGでも発現を駆動する一般的プロモーターであってもよ
い。いくつかの実施形態において、プロモーターはRPE65またはVMD2プロモータ
ーである。
【0009】
いくつかの実施形態において、PRPF31配列は、例えば、対象がヒトである場合に
、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化されている。いくつかの実施形態において
、PRPF31配列は、配列番号34のnts1319~2818と同じタンパク質であ
るかまたはそれを含むかまたはコードする。
【0010】
いくつかの実施形態において、ベクターは、網膜下注射により送達される。
【0011】
いくつかの実施形態において、ベクターは、国際公開第2015054653号パンフ
レットに記載されたAAVカプシドポリペプチドを含むか、またはAAVカプシドポリペ
プチドをコードする配列を含む。
【0012】
網膜色素上皮(RPE)細胞における発現を駆動するプロモーターと作動可能に連結し
た、ヒトPRPF31をコードする配列を含むアデノ随伴ウイルスベクター、例えば、ア
デノ随伴ウイルスタイプ2(AAV2)ベクターも、本明細書で提供される。プロモータ
ーはRPE特異的であってもよく、または他の細胞型においても同様に、例えば、CAS
IまたはCAGでも発現を駆動する一般的プロモーターであってもよい。いくつかの実施
形態において、プロモーターは、RPE65またはVMD2プロモーターである。いくつ
かの実施形態において、PRPF31配列は、例えば、ヒト細胞における発現のためにコ
ドン最適化されている。ベクターを、好ましくは、網膜下注射による送達のために製剤化
されたベクターを含む医薬組成物も提供される。
【0013】
本明細書に記載された核酸、ベクター、および医薬組成物の使用も、本明細書で提供さ
れる。
【0014】
特に断りのない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明
が属する技術分野における当業者により共通して理解される同じ意味を有する。方法およ
び材料は、本発明で使用するために本明細書に記載されるが、当技術分野において知られ
た他の適当な方法および材料も使用することができる。材料、方法および例は、単なる例
示であり、限定することは意図されない。全ての公報、特許出願、特許、配列、データベ
ース登録、および本明細書で言及される他の参考文献は、それらの全体が参照により組み
込まれる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書に従うものとする。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図から、ならびに特許請求の
範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1-1】
図1A~F:Prpf変異マウスにおける食作用の阻害を示す図である。網膜色素上皮の(RPE)初代培養を、日齢9~10日のPrpf変異マウスおよびそれらの同腹子対照から確立し、次にFITC標識されたブタ光受容体の外側セグメントでチャレンジし、核はDAPI(青色)で標識した。(A)野生型(WT)またはPrpf3T494M/T494M、Prpf8H2309P/H2309P、Prpf31+/-変異(MUT)マウスからの初代RPE細胞の定性的描写(核の青色DAPI染色)。POS取り込みにおける差が、変異体と対照との間で観察された。
【
図1-2】
図1A~F:Prpf変異マウスにおける食作用の阻害を示す図である。網膜色素上皮の(RPE)初代培養を、日齢9~10日のPrpf変異マウスおよびそれらの同腹子対照から確立し、次にFITC標識されたブタ光受容体の外側セグメントでチャレンジし、核はDAPI(青色)で標識した。(B)食作用の比の定量分析により、示した3種の変異体マウス系統について野生型同腹子(WT)と比較した変異(MUT)マウスにおける食作用の有意の減少が示される(
*P<0.05、N=3~5)。(C)POSの結合および内部移行比を、野生型対照(WT)と比較してPrpf31+/-(MUT)マウス間で比較すると、変異マウスでは、結合(Bind.)では有意の減少を示すが、POS内部移行(Intern.)では有意の変化を示さない(
*P<0.05、N=2~5)。
【
図1-3】
図1A~F:Prpf変異マウスにおける食作用の阻害を示す図である。網膜色素上皮の(RPE)初代培養を、日齢9~10日のPrpf変異マウスおよびそれらの同腹子対照から確立し、次にFITC標識されたブタ光受容体の外側セグメントでチャレンジし、核はDAPI(青色)で標識した。(D)ARPE-19細胞におけるPRPF31のshRNAにより媒介されるノックダウンの安定な系列。POS取り込みにおける差が、対照のshRNAをトランスフェクトされたARPE-19細胞と抗PRPF31 shRNAをトランスフェクトされたARPE-19細胞との間でも観察された。(E)ARPE-19細胞におけるPRPF31-ノックダウンの効果を決定するための細胞生存能力アッセイは、PRPF31のshRNA-ノックダウン後の細胞増殖または生存能力は、非標的対照と比較して有意の差がないことを示す(P>0.05、N=6)。(F)ヒトARPE-19細胞系列におけるPRPF31のshRNAにより媒介されるノックダウンは、非標的構造物(NTC)と比較して1細胞当たりのPOSの減少数により示されるように、食作用も有意に阻害する(
*P<0.05、N=3)。誤差バーは、平均値からの標準偏差を表す。
【
図2-1】
図2A~C:Prpf変異マウスにおける食作用の日周的な周期性が乱されることを示す図である。食作用を、光照射開始前2時間(-2)、光照射開始時(0)、および光照射開始後2、4、および6(+2、+4、+6)時間にインビボでアッセイした。(A、B)代表的な写真を光照射開始後+2(食作用のピーク)および+8(食作用のピークの外側)時間で示す。RPE:網膜色素上皮、OS:光受容体外側セグメント、Ch:脈絡膜。(A)Prpf3およびPrpf8変異マウスにおける初期のファゴソームの検出は、電子顕微鏡を使用して、1)RPEの細胞原形質中にある、および2)視認できる層状の構造(黒色矢じり)に含有されるファゴソームを計数して実施した。スケールのバーは2μm。(B)Prpf31+/-マウスの日周的なリズムを、ロドプシンに対する免疫蛍光染色(Ig-AlexaFluor488)および100μmの完全な網膜全体にわたってRPE細胞層(DAPIで染色された核)に所在するファゴソーム(白色矢じり)の検出を使用して決定した。スケールのバーは20μm。
【
図2-2】
図2A~C:Prpf変異マウスにおける食作用の日周的な周期性が乱されることを示す図である。食作用を、光照射開始前2時間(-2)、光照射開始時(0)、および光照射開始後2、4、および6(+2、+4、+6)時間にインビボでアッセイした。(C)全ての時点にわたるファゴソームの定量は、全てのPrpf変異マウスにおける食作用のバーストの一貫した有意の乱れを示す(
*P<0.05、Prpf3およびPrpf8変異体についてはN=2、ならびにPrpf31変異マウスについてはN=3~5)。誤差バーは、平均値からの標準偏差を表す。
【
図3-1】
図3A~B:ピーク時点におけるPrpf変異マウスにおける網膜接着の変化を示すグラフである。RPE頂点の微絨毛とPOSとの間の接着強度は、神経網膜に接着するRPE色素またはタンパク質の量を、WT対照と比較して定量化することにより決定した。(A)メラニン定量化により、接着が3種全ての変異マウスで、光照射開始後3.5時間のピーク時点に減少し、Prpf8H2309P/H2309Pマウスではオフピーク時点で減少することが示される(
*P<0.05、N=3~7)。
【
図3-2】
図3A~B:ピーク時点におけるPrpf変異マウスにおける網膜接着の変化を示すグラフである。RPE頂点の微絨毛とPOSとの間の接着強度は、神経網膜に接着するRPE色素またはタンパク質の量を、WT対照と比較して定量化することにより決定した。(B)イムノブロット上におけるRPE65タンパク質の定量的測定により、3種全ての変異マウスにおいてピーク時点でメラニンが見出されることか確認されるが、Prpf8変異マウスでのみオフピーク時点で接着における減少傾向が観察される(
*P<0.05、N=4~7)。誤差バーは平均値からの標準偏差を表す。
【
図4-1】
図4A~C:若干の接着および食作用マーカーの局在および発現が、Prpf3およびPrpf8変異マウスで妨げられることを示す図である。示される通りの、野生型対照(WT)ならびにPrpf3-およびPrpf8変異体網膜の凍結切片上における(A)αvおよびβ5インテグリン受容体サブユニットおよび関連するMfg-E8リガンド、(B)FAK細胞内シグナル伝達タンパク質、ならびに(C)MerTK受容体ならびに関連するGas6およびタンパク質Sリガンドの発現および局在の代表的影像。非免疫IgG(IgG)で探査された切片からの画像が、各抗原について含まれる。RPE:網膜色素上皮、OS:光受容体外側セグメント、ONL:外側の核層。RPEの基底側へのβ5インテグリンの局在が、Prpf3およびPrpf8変異マウスの両方で観察された。それに加えて、FAKは、Prpf8変異マウスでRPEの基底側に誤って局在した。目的の各タンパク質をIg-AlexaFluor488で染色して、核はDAPIで染色される。スケールバーは40μm。
【
図4-2】
図4A~C:若干の接着および食作用マーカーの局在および発現が、Prpf3およびPrpf8変異マウスで妨げられることを示す図である。示される通りの、野生型対照(WT)ならびにPrpf3-およびPrpf8変異体網膜の凍結切片上における(A)αvおよびβ5インテグリン受容体サブユニットおよび関連するMfg-E8リガンド、(B)FAK細胞内シグナル伝達タンパク質、ならびに(C)MerTK受容体ならびに関連するGas6およびタンパク質Sリガンドの発現および局在の代表的影像。非免疫IgG(IgG)で探査された切片からの画像が、各抗原について含まれる。RPE:網膜色素上皮、OS:光受容体外側セグメント、ONL:外側の核層。RPEの基底側へのβ5インテグリンの局在が、Prpf3およびPrpf8変異マウスの両方で観察された。それに加えて、FAKは、Prpf8変異マウスでRPEの基底側に誤って局在した。目的の各タンパク質をIg-AlexaFluor488で染色して、核はDAPIで染色される。スケールバーは40μm。
【
図4-3】
図4A~C:若干の接着および食作用マーカーの局在および発現が、Prpf3およびPrpf8変異マウスで妨げられることを示す図である。示される通りの、野生型対照(WT)ならびにPrpf3-およびPrpf8変異体網膜の凍結切片上における(A)αvおよびβ5インテグリン受容体サブユニットおよび関連するMfg-E8リガンド、(B)FAK細胞内シグナル伝達タンパク質、ならびに(C)MerTK受容体ならびに関連するGas6およびタンパク質Sリガンドの発現および局在の代表的影像。非免疫IgG(IgG)で探査された切片からの画像が、各抗原について含まれる。RPE:網膜色素上皮、OS:光受容体外側セグメント、ONL:外側の核層。RPEの基底側へのβ5インテグリンの局在が、Prpf3およびPrpf8変異マウスの両方で観察された。それに加えて、FAKは、Prpf8変異マウスでRPEの基底側に誤って局在した。目的の各タンパク質をIg-AlexaFluor488で染色して、核はDAPIで染色される。スケールバーは40μm。
【
図5-1】
図5A~C:若干の接着および食作用マーカーの局在および発現が、Prpf31変異マウスで妨げられることを示す図である。示される通りの、野生型対照(WT)ならびにPrpf31変異体の網膜のパラフィン切片上における(A)αvおよびβ5インテグリン受容体サブユニットおよび関連するMfg-E8リガンド、(B)FAK細胞内シグナル伝達タンパク質、ならびに(C)MerTK受容体ならびに関連するGas6およびタンパク質Sリガンドの発現および局在、または非免疫IgG(IgG)の代表的画像。RPE:網膜色素上皮、OS:光受容体外側セグメント、ONL:外側核層。Prpf31変異マウスにおける最も顕著な変化は、RPEの基底側へのβ5インテグリンの誤った局在であるが、MerTKの局在も摂動する。目的の各タンパク質をIgG-AlexaFluor488で染色し、核はDAPIで染色される。スケールバーは20μm。
【
図5-2】
図5A~C:若干の接着および食作用マーカーの局在および発現が、Prpf31変異マウスで妨げられることを示す図である。示される通りの、野生型対照(WT)ならびにPrpf31変異体の網膜のパラフィン切片上における(A)αvおよびβ5インテグリン受容体サブユニットおよび関連するMfg-E8リガンド、(B)FAK細胞内シグナル伝達タンパク質、ならびに(C)MerTK受容体ならびに関連するGas6およびタンパク質Sリガンドの発現および局在、または非免疫IgG(IgG)の代表的画像。RPE:網膜色素上皮、OS:光受容体外側セグメント、ONL:外側核層。Prpf31変異マウスにおける最も顕著な変化は、RPEの基底側へのβ5インテグリンの誤った局在であるが、MerTKの局在も摂動する。目的の各タンパク質をIgG-AlexaFluor488で染色し、核はDAPIで染色される。スケールバーは20μm。
【
図5-3】
図5A~C:若干の接着および食作用マーカーの局在および発現が、Prpf31変異マウスで妨げられることを示す図である。示される通りの、野生型対照(WT)ならびにPrpf31変異体の網膜のパラフィン切片上における(A)αvおよびβ5インテグリン受容体サブユニットおよび関連するMfg-E8リガンド、(B)FAK細胞内シグナル伝達タンパク質、ならびに(C)MerTK受容体ならびに関連するGas6およびタンパク質Sリガンドの発現および局在、または非免疫IgG(IgG)の代表的画像。RPE:網膜色素上皮、OS:光受容体外側セグメント、ONL:外側核層。Prpf31変異マウスにおける最も顕著な変化は、RPEの基底側へのβ5インテグリンの誤った局在であるが、MerTKの局在も摂動する。目的の各タンパク質をIgG-AlexaFluor488で染色し、核はDAPIで染色される。スケールバーは20μm。
【
図6】ゲノム編集により生じたPRPF31+/-hiPSCおよびARPE-19細胞系列の配列を示す図である。PRPF31についての遺伝子モデルを上に示し、例となる3種の細胞系列についてエクソン6~7中の配列の詳細を下に示す。ノックアウトhiPSC細胞系列は、ヘテロ接合の4bpの欠失を有し(欠失した塩基は正常配列中で上に罫線を引いて示した)、その結果、フレームシフト(下線を引いたアミノ酸)および未成熟停止が生じる。描かれたノックアウトARPE-19細胞系列は4bpの欠失または単一の塩基の挿入を有し、そのこともフレームのシフトおよびヌル対立遺伝子を生じさせる。
【
図7】AAV.CASI.PRPF31で処理した後の相対的POS取り込みを示すグラフである。ゲノム編集されたPRPF31(GE31)ARPE-19細胞に、AAV.CASI.PRPF31を0、10,000、および15,000のMOIで3日間形質導入した。その後、細胞をFITC-POSと1時間インキュベートして、FITC陽性の細胞をフローサイトメトリーにより計数した。
*P<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0017】
RNAスプライシング因子をコードする遺伝子における変異は、盲目にする障害である
網膜色素変性(RP)の主要な形態の2番目に多い一般的な原因であり、したがって失明
の重要な原因である(Hartong et al., Lancet. 2006; 368: 1795-809;Daiger et al.,
Archives Ophthalmology. 2007; 125: 151-8;Sullivan et al., Investigative Ophthal
mology & Visual Science. 2013; 54: 6255-61. PMCID: 3778873)。変異を受けるスプラ
イシング因子であるmRNA前駆体プロセシング因子(PRPF)3、PRPF4、PR
PF6、PRPF8、PRPF31、およびSNRNP200は、スプライセオソームの
高度に保存された成分であり、スプライセオソームは、新生RNA転写物からイントロン
を切って成熟mRNAを生成する複合体である(McKie et al., Human Molecular Geneti
cs. 2001; 10: 1555-62;Vithana et al., Molecular Cell. 2001; 8:375-81;Chakarova
et al., Human Molecular Genetics. 2002; 11: 87-92;Keen et al., European Journa
l Human Genetics. 2002; 10:245-9;Nilsen, Bioessays. 2003; 25: 1147-9;Sullivan
et al., Investigative Ophthalmology & Visual Science. 2006; 47: 4579-88;Zhao et
al., American Journal Human Genetics. 2009; 85: 617-27;Tanackovic et al., Amer
ican Journal Human Genetics. 2011; 88: 643-9;Chen et al., Human Molecular Genet
ics. 2014; 23: 2926-39.)。PRPF31遺伝子における変異は、RNAスプライシン
グ因子RPの最も一般的な原因であり、米国で2400から8500人の影響された人々
および世界中で55,000から193,000人を占めると見積もられている(Daiger
et al., Archives Ophthalmology. 2007; 125:151-8;Sullivan et al., Investigative
Ophthalmology & Visual Science. 2013;54: 6255-61. PMCID: 3778873)。RNAスプ
ライシングは、全ての細胞で必要とされるので、これらの遍在するタンパク質における変
異が、どのようにして網膜特異的疾患をもたらすのかは明らかではない。
【0018】
RNAスプライシング因子における変異が網膜変性を引き起こす機構(単数または複数
)を理解するために、Prpf3、Prpf8およびPrpf31変異マウスの表現型を
検討した。細胞自律性における欠陥を、遺伝子を標的とされるマウスにおける網膜色素上
皮の(RPE)細胞の機能で同定した。しかしながら、マウスモデルとヒトの状態との間
の疾患における遺伝的および表現型の差が、マウスで引き出された結論をヒトに置き換え
ることを困難にする可能性がある。
【0019】
PRPF31における変異がハプロ不全による疾患を引き起こすこと、したがって、優
性RPのこの形態は、遺伝子増強療法による処置に対応できるといういくつかの証拠があ
る。PRPF31で同定された変異の多くは、大きい染色体の欠失であるか、またはナン
センスおよびフレームシフト変異のいずれかであり、それが未成熟停止コドンをもたらし
、それはナンセンス媒介mRNA崩壊を経て、ヌル対立遺伝子を生じる(Vithana et al.
, Molecular Cell. 2001;8:375-81;Sullivan et al., Investigative Ophthalmology &
Visual Science. 2006;47:4579-88.;Wang et al., American Journal Medical Genetics
A. 2003;121A:235-9;Xia et al., Molecular Vision. 2004;10:361-5;Sato et al., A
merican Journal Ophthalmology. 2005;140:537-40;Abu-Safieh et al., MolVis. 2006;
12:384-8;Rivolta et al., Human Mutation. 2006;27:644-53;Waseem et al., Investi
gative Ophthalmology & Visual Science. 2007;48:1330-4;Rio Frio et al., Human Mu
tation. 2009;30:1340-7. PMCID: 2753193;Rose et al., Investigative Ophthalmology
& Visual Science. 2011;52:6597-603;Saini et al., Experimental Eye Research. 20
12;104:82-8)。したがって、PRPF31が関連する網膜の変性はハプロ不全により引
き起こされると考えられる。この仮説と矛盾せずに、野生型対立遺伝子からのPRPF3
1発現のレベルは、PRPF31における変異を有する患者における疾患の重症度と相関
する(Rio et al., Journal Clinical Investigation. 2008;118:1519-31;Vithana et a
l., Investigative Ophthalmology & Visual Science. 2003;44:4204-9;McGee et al.,
American Journal Human Genetics. 1997;61:1059-66)。2通りの機構が、野生型PRP
F31の対立遺伝子の発現の調節に寄与すると報告されている。第1に、CNOT3は、
PRPF31発現を転写の抑制により調節する。PRPF31変異の無症候性の保因者で
は、CNOT3が低レベルで発現され、これが、より高い量の野生型PRPF31転写物
が産生されることを可能にし、網膜変性の顕性化を防止する(Venturini et al., PLoS g
enetics. 2012;8:e1003040. PMCID: 3493449;Rose et al., Annals Human Genetics. 20
13)。第2に、MSR1が、PRPF31の上流のシス調節エレメントとして同定されて
いる。したがって、ヒトの遺伝的変動は、PRPF31遺伝子発現の増強がこの障害にお
ける失明を減少させるかまたは排除することができることの証拠を提供している。
【0020】
本明細書で説明するように、本発明者らは、RPE細胞を、RNAスプライシング因子
RPにおいて影響された原発性細胞と同定した。このことが、PRPF31における変異
により引き起こされる疾患のための遺伝子増強療法を開発して前進する機会を創り出す(
実施例1を参照されたい)。この目標に達するために、ヒトPRPF31を発現するため
のAAVベクターが本明細書に記載され、それは、ヒト対象における表現型を向上させる
ために使用することができる。
【0021】
U4/U6小核リボ核タンパク質Prp31としても知られるヒトPRPF31の配列
は、GenBankにおいて受託番号NM_015629.3(核酸)およびNP_05
6444.3(タンパク質)で入手できる。PRPF31における変異と関連するRPを
有する対象は、当技術分野において知られた方法により、例えば、PRPF31遺伝子の
配列を決定することにより(NG_009759.1、範囲:5001から21361)
またはNC_000019.10参照GRCh38.p2 Primary Assem
bly、範囲:54115376から54131719)、同定することができる。罹患
した固体において多数の変異が同定された;例えば、Villanueva et al. Invest Ophthal
mol Vis Sci, 2014;Dong et al. Mol Vis, 2013;Lu F, et al. PLoS One, 2013;Utz e
t al. Ophthalmic Genet, 2013;およびXu F, et al. Mol Vis, 2012;Saini et al., Ex
p Eye Res. 2012 Nov;104:82-8;Rose et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2011 Aug 2
2;52(9):6597-603;Audo et al., BMC Med Genet. 2010 Oct 12;11:145;およびTanackov
ic and Rivolta, Ophthalmic Genet. 2009 Jun;30(2):76-83を参照されたい。
【0022】
したがって、本明細書に記載されたPRPF31ポリペプチドをコードするポリヌクレ
オチドの、RPE細胞中、例えば、主としてまたは専らRPE細胞中におけるインビボの
トランスフェクションおよび発現のための標的とされる発現ベクターが本明細書に記載さ
れる。そのような成分の発現構築物は、任意の効果的な担体で、例えば、成分の遺伝子を
、インビボで細胞に効果的に送達することができる任意の製剤または組成物中で投与する
ことができる。種々の手法は、組み替えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウ
イルス、レンチウイルス、および単純ヘルペスウイルス-1、アルファウイルス、ワクシ
ニアウイルスを含むウイルスベクター、または組み替え細菌のまたは真核細胞のプラスミ
ドに遺伝子を挿入することを含む。好ましいウイルスベクターはアデノ随伴ウイルスのタ
イプ2(AAV2)である。ウイルスベクターは、細胞に直接形質移入する。プラスミド
DNAは、裸で、または例えば、カチオン性リポソーム(リポフェクタミン)の助けで、
または誘導体化されて(例えば、抗体とコンジュゲートして)、カチオン性デンドリマー
、無機ベクター(例えば、酸化鉄マグネトフェクション)、リピドイド、細胞浸透性ペプ
チド、シクロデキストリンポリマー(CDP)、ポリリシンコンジュゲート、グラマシジ
ンS、人工ウイルスのエンベロープまたは他のそのような細胞内担体、および遺伝子構築
物の直接注射またはインビボで実施されるCaPO4沈殿の助けで送達することができる
。
【0023】
核酸を細胞中にインビボで導入する典型的手法は、核酸、例えば、cDNAを含有する
ウイルスベクターの使用による。ウイルスベクターによる細胞の感染は、標的とされる細
胞の大きい比率が、核酸を受け入れることができるという利点を有する。それに加えて、
ウイルスのベクター内で、例えば、ウイルスベクターに含有されるcDNAによりコード
された分子が、ウイルスベクターの核酸を取り上げた細胞中で効率的に発現される。
【0024】
ウイルスベクターは、組み替え遺伝子の送達系として、外因性遺伝子をインビボで、特
にヒト中に導入するために使用することができる。これらのベクターは、遺伝子を細胞中
に効率的に送達し、いくつかの場合には、導入された核酸は、宿主の染色体DNA中に安
定に組み込まれる。組み替えウイルスを産生するための、および細胞にインビトロまたは
インビボでそのようなウイルスを感染させるためのプロトコルは、Ausubel, et al., eds
., Gene Therapy Protocols Volume 1: Production and In Vivo Applications of Gene
Transfer Vectors, Humana Press, (2008), pp. 1-32および他の標準的実験室マニュアル
に見出すことができる。
【0025】
核酸の送達のために有用な好ましいウイルスベクター系は、アデノ随伴ウイルス(AA
V)である。アデノ随伴ウイルスは、効率的な複製および産生のライフサイクルのための
ヘルパーウイルスとして、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスなどの別のウイルスを
必要とする天然に存在する欠損ウイルスである。(総説については、Muzyczka et al., C
urr. Topics in Micro and Immunol.158:97-129 (1992)を参照されたい)。AAVベクタ
ーは、種々の細胞型に効率的に形質導入して、インビボにおける導入遺伝子の長期発現を
生じさせることができる。AAVベクターのゲノムは、細胞内でエピソームとして存続す
ることができるが、ベクターの組み込みが観察されている(例えば、Deyle and Russell,
Curr Opin Mol Ther. 2009 Aug; 11(4): 442-447;Asokan et al., Mol Ther. 2012 Apr
il; 20(4): 699-708;Flotte et al., Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. 7:349-356 (19
92);Samulski et al., J. Virol. 63:3822-3828 (1989);およびMcLaughlin et al., J.
Virol. 62:1963-1973 (1989)を参照されたい)。AAVベクター、特にAAV2は、遺
伝子増強または置き換えのために広く使用されてきて、広範囲の動物モデルおよびクリニ
ックで治療効果を示してきた。例えば、Mingozzi and High, Nature Reviews Genetics 1
2, 341-355 (2011);Deyle and Russell, Curr Opin Mol Ther. 2009 Aug; 11(4): 442-4
47;Asokan et al., Mol Ther. 2012 April; 20(4): 699-708を参照されたい。AAVの
わずか300塩基対を含有するAAVベクターがパッケージされ得て、組み替えタンパク
質発現を生じさせることができる。外因性DNAのための余地は約4.5kbに限定され
る。例えば、AAV1、2、4、5、または8ベクターは、DNAをRPE細胞中に導入
するために使用することができる(例えば、Maguire et al. (2008). Safety and effica
cy of gene transfer for Leber's congenital amaurosis. N Engl J Med 358: 2240-224
8. Maguire et al. (2009). Age-dependent effects of RPE65 gene therapy for Leber
's congenital amaurosis: a phase 1 dose-escalation trial. Lancet 374: 1597-1605
;Bainbridge et al. (2008). Effect of gene therapy on visual function in Leber's
congenital amaurosis. N Engl J Med 358: 2231-2239;Hauswirth et al. (2008). Tre
atment of leber congenital amaurosis due to RPE65 mutations by ocular subretinal
injection of adeno-associated virus gene vector: short-term results of a phase
I trial. Hum Gene Ther 19: 979-990;Cideciyan et al. (2008). Human gene therapy
for RPE65 isomerase deficiency activates the retinoid cycle of vision but with s
low rod kinetics. Proc Natl Acad Sci USA 105: 15112-15117. Cideciyan et al. (200
9). Vision 1 year after gene therapy for Leber's congenital amaurosis. N Engl J
Med 361: 725-727;Simonelli et al. (2010). Gene therapy for Leber's congenital a
maurosis is safe and effective through 1.5 years after vector administration. Mo
l Ther 18: 643-650;Acland, et al. (2005). Long-term restoration of rod and cone
vision by single dose rAAV-mediated gene transfer to the retina in a canine mod
el of childhood blindness. Mol Ther 12: 1072-1082;Le Meur et al. (2007). Restor
ation of vision in RPE65-deficient Briard dogs using an AAV serotyp 4 vector tha
t specifically targets the retinal pigmented epithelium. Gene Ther 14: 292-303;
Stieger et al. (2008). Subretinal delivery of recombinant AAV serotype 8 vector
in dogs results in gene transfer to neurons in the brain. Mol Ther 16: 916-923;
およびVandenberghe et al. (2011). Dosage thresholds for AAV2 and AAV8 photorecep
tor gene therapy in monkey. Sci Transl Med 3: 88ra54に記載されたものなど)。いく
つかの実施形態において、AAVベクターは、国際公開第2015054653号パンフ
レットに記載されたAAVカプシドポリペプチド;例えば、国際公開第20150546
53号パンフレットの配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、および17、お
よび本明細書に記載されたPRPF31をコードする配列からなる群から選択されるアミ
ノ酸配列を有するAAVカプシドポリペプチドを含むウイルス粒子を含む(またはそれを
コードする配列を含む)ことができる。いくつかの実施形態において、AAVカプシドポ
リペプチドは、ここで再掲する国際公開第2015054653号パンフレットの表1に
示されている通りである。
【0026】
【0027】
いくつかの実施形態において、AAVカプシドポリペプチドは、Anc80ポリペプチ
ドであり、例えば、典型的ポリペプチドは、配列番号19(Anc80L27);配列番
号20(Anc80L59);配列番号21(Anc80L60);配列番号22(An
c80L62);配列番号23(Anc80L65);配列番号24(Anc80L33
);配列番号25(Anc80L36);および配列番号26(Anc80L44)で示
される。
【0028】
種々の核酸が、異なった細胞型中に、AAVベクターを使用して導入されてきた(例え
ば、上で挙げた引用文献およびAsokan et al., Molecular Therapy (2012); 20 4, 699-7
08:およびHermonat et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6466-6470 (1984);Trats
chin et al., Mol. Cell. Biol. 4:2072-2081 (1985);Wondisford et al., Mol. Endocr
inol. 2:32-39 (1988);Tratschin et al., J. Virol. 51:611-619 (1984);およびFlott
e et al., J. Biol. Chem. 268:3781-3790 (1993)を参照されたい)。
【0029】
レトロウイルスも使用することができる。複製欠損レトロウイルスのみを産生する特化
された細胞系列(「パケージング細胞」と称される)の開発により、遺伝子療法のための
レトロウイルスの効用が高まったので、欠損レトロウイルスが、遺伝子療法目的のための
遺伝子移入で使用するために特徴づけられる(総説については、Katz et al., Human Gen
e Therapy 24:914 (2013)を参照されたい)。複製欠損レトロウイルスは、ビリオンにパ
ッケージ化することができ、それは、ヘルパーウイルスの使用を通じて標準的技法により
標的細胞への感染のために使用することができる。適当なレトロウイルスの例には、当業
者に知られたpLJ、pZIP、pWEおよびpEMが含まれる。同種エクトロピックレ
トロウイルスおよびアンホトロピックレトロウイルス系の両者を調製するために適当なパ
ッケージングウイルス系列の例には、ΨCrip、ΨCre、Ψ2およびΨAmが含まれ
る。レトロウイルスは、種々の遺伝子を、インビトロおよび/またはインビボで上皮細胞
を含む多くの異なった細胞型中に導入するために使用されてきた(例えば、Eglitis, et
al. (1985) Science 230:1395-1398;Danos and Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sc
i. USA 85:6460-6464;Wilson et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3014-301
8;Armentano et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6141-6145;Huber et al.
(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8039-8043;Ferry et al. (1991) Proc. Natl.
Acad. Sci. USA 88:8377-8381;Chowdhury et al. (1991) Science 254:1802-1805;van
Beusechem et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7640-7644;Kay et al. (19
92) Human Gene Therapy 3:641-647;Dai et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8
9:10892-10895;Hwu et al. (1993) J. Immunol. 150:4104-4115;米国特許第4,868
,116号明細書;米国特許第4,980,286号明細書;PCT出願国際公開第89
/07136号パンフレット;PCT出願国際公開第89/02468号パンフレット;
PCT出願国際公開第89/05345号パンフレット;およびPCT出願国際公開第9
2/07573号パンフレットを参照されたい)。
【0030】
本発明の方法で有用な別のウイルスの遺伝子送達系は、アデノウイルス誘導ベクターを
利用する。アデノウイルスのゲノムは、それが目的の遺伝子産物をコードおよび発現する
ように操作することができるが、正常な細胞を溶解するウイルスのライフサイクルで複製
するその能力に関して不活性化されている。例えば、Berkner et al., BioTechniques 6:
616 (1988);Rosenfeld et al., Science 252:431-434 (1991);およびRosenfeld et al.
, Cell 68:143-155 (1992)を参照されたい。アデノウイルス系統のAdタイプ5dl32
4または他の系統のアデノウイルス(例えば、Ad2、Ad3、またはAd7その他)か
ら誘導された適当なアデノウイルスベクターが当業者に知られている。組み替えアデノウ
イルスは、それらは、非分裂細胞に感染することができず、上皮細胞を含む広範囲の細胞
型への感染のために使用することができることで、ある状況では有利であり得る(Rosenf
eld et al.,(1992)前出)。さらに、ウイルス粒子は比較的安定であり、精製および濃縮
に対応できて、上記のように、感染力のスペクトルに影響するように改変することができ
る。それに加えて、導入されたアデノウイルスDNA(およびその中に含有される外来D
NA)は宿主細胞のゲノムに組み込まれず、エピソームにとどまり、それによりその場で
挿入変異の結果として、導入されたDNAが宿主ゲノムに組み込まれる場合に(例えば、
レトロウイルスDNA)起こり得る可能性のある問題を回避する。その上、外来DNAの
ためのアデノウイルスゲノムの運搬能は、他の遺伝子送達ベクターと比較して大きい(8
キロ塩基まで)(Berkner et al., 前出; Haj-Ahmand and Graham, J. Virol. 57:267 (1
986))。
【0031】
いくつかの実施形態において、PRPF31をコードする遺伝子は、それらの表面に正
電荷を有するリポソーム(例えば、リポフェクチン)に捕捉されており、それは標的組織
の細胞表面抗原に対する抗体でタグを付けられる得る(Mizuno et al., No Shinkei Geka
20:547-551 (1992);国際公開第91/06309号パンフレット;日本特許出願第10
47381号明細書;および欧州特許出願公開第43075号明細書)。
【0032】
臨床環境で、治療遺伝子のための遺伝子送達系は、各々当技術分野でよく知られている
多くの方法のいずれかにより対象に導入することができる。他の方法も使用することがで
きるが、いくつかの実施形態において、遺伝子療法ベクターを網膜に送達するために選択
される経路は、網膜下注射によるものである。これは、網膜のRPEおよび光受容体細胞
への接近を提供する。種々のAAVの血清型が、動物の検討において、網膜下に注射後に
これらの細胞集団に効果的に形質導入することが示された(Vandenberghe et al., PLoS
One. 2013;8:e53463. PMCID: 3559681; Vandenberghe and Auricchio, Gene Therapy. 20
12;19:162-8;Vandenberghe et al., Science translational medicine. 2011;3:88ra54
;Dinculescu et al., HumGene Ther. 2005;16:649-63;Boye et al., Mol Ther. 2013;2
1:509-19;Alexander and Hauswirth, Adv Exp Med Biol. 2008;613:121-8)。網膜下注
射の手法は、RPE65における変異およびCHM遺伝子の遺伝的疾患により引き起こさ
れる網膜変性のための遺伝子増強療法の現在進行中の臨床試験で使用されている(Maguir
e et al., New England Journal of Medicine. 2008;358:2240-8;Bainbridge et al., N
ew England Journal of Medicine. 2008;358:2231-9;Cideciyan et al., Proceedings N
ational Academy Sciences USA. 2008;105:15112-7;Maguire et al., Lancet. 2009;374
:1597-605;Jacobson et al., Archives Ophthalmology. 2012;130:9-24;Bennett et al
., Science translational medicine. 2012;4:120ra15;MacLaren et al., Lancet. 2014
;383:1129-37)。網膜下注射は、標準的外科手法を使用して実施することができる(例え
ば、Maguire et al., 2008 前出;Bainbridge et al., 2008 前出;Cideciyan et al., 2
008 前出;MacLaren et al., 2014 前出に記載されたように)。
【0033】
遺伝子療法構築物の医薬製剤は、許容される希釈剤中の遺伝子送達系(ウイルスベクタ
ーおよびヘルパーウイルス、タンパク質、および脂質などの任意の関連する作用物質)か
ら本質的になるか、または遺伝子送達ビヒクルが、包埋された徐放性マトリックスを含む
ことができる。あるいは、完全な遺伝子送達系が、組み替え細胞、例えば、レトロウイル
スベクターから完全に生成され得る場合には、医薬製剤は、遺伝子送達系を生成する1種
または複数種の細胞を含むことができる。
実施例
【0034】
本発明を、以下の実施例でさらに説明するが、これらの実施例は、特許請求の範囲に記
載された本発明の範囲を限定しない。
【実施例1】
【0035】
mRNA前駆体プロセシング因子3、8および31における変異は、網膜色素上皮の機
能不全を引き起こす。
序
スプライセオソームは、新生RNAからイントロンを除去するために必要な、遍在する
動的リボ核タンパク質高分子である1。常染色体の優性の網膜色素変性(RP)の原因と
なる変異は、U4/U6.U5トリ-snRNP2に見出されるタンパク質(PRPF3
、PRPF4、PRPF6、PRPF8、PRPF31、およびSNRNP200)をコ
ードする6種の遺伝子中で同定された。全体として、これらの遺伝子における変異は、優
性のRPの2番目に多い一般的な原因である3~5。RPは進行性の後期発症性の失明に
より定義され、遺伝性の網膜変性の最も一般的な形態であり、世界中で約1:3500の
個体が罹患する6。それは遺伝的に不均一であり、メンデル遺伝の3通り全ての様式を示
す7。罹患組織は、神経網膜、網膜色素上皮(RPE)、および脈絡膜を含む4。スプラ
イセオソームの成分は、あらゆる細胞型で普遍的に発現するので、これらのスプライシン
グ因子における変異が、非症候性RPのみを引き起こす理由は明らかでない。さらに、こ
れらの変異によって罹患した網膜に特異的な細胞型(単数または複数)は未だ同定されて
いない。
【0036】
本発明者らは、Prpf3、Prpf8およびPrpf31ノックアウトマウス、なら
びにPrpf3-T494MおよびPrpf8-H2309Pノックインマウスを含むマ
ウスモデルのPRPF3、PRPF8およびPRPF31遺伝子における変異に基づくR
NAスプライシング因子RPのキャラクタリゼーションを以前に報告した8、9。これら
のマウスモデルの検討結果、およびヒトの検討によるデータに基づいて、PRPF3およ
びPRPF8における変異は、機能獲得または優性ネガティブ機構により優性の疾患を引
き起こすが、一方、PRPF31における変異は、ハプロ不全により疾患を引き起こすと
考えられる9~11。Prpf3-T494MおよびPrpf8-H2309Pノックイ
ンマウスおよびPrpf31+/-マウスの老化するRPE(神経網膜ではなく)におけ
る形態学的変化については、本発明者らは、基底陥入の消失、RPE下における基底沈着
物の形成および細胞原形質中の空胞形成を観察し、特に興味深かった。これらのRPEの
変性性の変化は、ヘテロ接合のPrpf3T494M/+、Prpf8H2309P/+
およびPrpf31+/-マウスで観察され、ホモ接合体のPrpf3T494M/T4
94MおよびPrpf8H2309P/H2309Pノックインマウスにおいてはさらに
顕著であった8。
【0037】
RPEは、網膜の全体的健康状態にとって極めて重要である12。消費された光受容体
外側セグメント末端(POS)の日々の脱離は、高度に互いに整合的に作用するプロセス
であり、脱落するPOSに対する食作用は、周期的基調で起こる13。POS食作用に関
係する一部の受容体は、全体的な網膜接着およびその生理学的リズムにも関与する14。
最高の食作用および網膜接着は、光照射開始後それぞれ約2および3.5時間に起こり、
およそその10時間後にそれらの最少レベルになる13、15、14。RPEは専門のマ
クロファージであり、そこで、基質の結合および内部移行は、RPE細胞上の受容体と光
受容体間マトリックス中のリガンドとがそれぞれRPE細胞とPOS表面にあるホスファ
チジルセリンとを架橋することにより調整されている16。一部の受容体は、食作用およ
び接着の間で共通であるが、それらは異なったリガンドを使用する13、14、15、1
7。食作用のこれらの重要な成分のいずれかの調節の喪失は、ヒト疾患における失明に結
びつき、齧歯目モデルにおいても同様である13、18~20。
【0038】
ここで、本発明者らは、Prpf3T494M/T494M、Prpf8H2309P
/H2309PおよびPrpf31+/-マウスモデルについて、RPE食作用および接
着の検討を報告する。具体的には、本発明者らは、2週齢マウスからの初代RPE培養に
おける食作用を測定した。結果は食作用の欠損を示し、本発明者らは、食作用の欠損を、
ヒトRPE細胞系列ARPE-19においてもPRPF31のshRNAにより媒介され
るノックダウン後に示す。それに加えて、食作用および接着の日周的な周期性の消失が、
インビボで検出された。興味深いことに、RPE細胞による食作用に関与することが知ら
れている重要な因子の局在が変更されている。本発明者らは、RPEが、RNAスプライ
シング因子RP中の病原性の主要な部位であるらしいと結論する。
【0039】
材料および方法
動物
動物による研究は、the Massachusetts Eye and Ear
Infirmaryのthe Institutional Animal Care
and Use Committeesおよびthe Universite Pier
re et Marie Curie-Parisからのthe Charles Da
rwin Animal Experimentation Ethics COmmi
tteeにより承認されたプロトコルの下で実施された。同数の雄および雌マウスを以下
の実験の各々で使用した。
【0040】
初代RPE細胞培養
日齢9~10日の動物からのRPE細胞を記載したようにして単離した13。簡単に説
明すると、眼杯を2mg/mlのヒアルロニダーゼ(Sigma)で消化して、神経網膜
を眼杯から丁寧に剥離した。1mg/mlのトリプシン(Invitrogen)で消化
した後、RPEをBruch膜から剥離して5mmのカバーガラス上に播種した。細胞を
、10%FBSを添加したDMEM中において37℃、5%CO2でコンフルエントにな
るまで5~10日間増殖させた。
【0041】
腹腔マクロファージ細胞の初代培養
腹腔の常在マクロファージを以前に記載したようにして単離した21。安楽死させたマ
ウスを解剖台にピンで留めて、水平なフローフード中で毛皮を70%エタノールを使用し
て湿らせた。ピンセットおよび鋏を使用して、皮膚を腹腔壁から注意深く分離した。5m
Lの滅菌PBSを腹部の空洞に注入して、20~30秒間臍を揉むかまたは全身を揺すっ
た。PBSを腹部空洞からゆっくりと集めて、2から3匹の異なる動物からの試料をプー
ルした。細胞を10分間300gでスピンにかけて、10%FBSを添加した1mLのR
PMI中に再懸濁させた。細胞を96ウェルのプレートに1ウェル当たり100,000
~200,000細胞で播種して、2時間接着するに任せた。プレートを振盪して、滅菌
PBSを使用してウェルを1回すすいだ。細胞を培地中で2~3日の間37℃、5%CO
2に保った。
【0042】
安定なshRNA-PRPF31ノックダウンARPE-19およびJ774.1細胞系
列の生成および細胞の生存能力アッセイ
3種のshRNAをヒトPRPF31またはマウスPrpf31に設計して、ピューロ
マイシン耐性遺伝子を含有するpCAG-mir30ベクター中にクローニングした。こ
れらのshRNAの配列は以下の通りである。ヒトshRNA1-5’-TGCTGTT
GACAGTGAGCGAGCAGATGAGCTCTTAGCTGATTAGTGAA
GCCACAGATGTAATCAGCTAAGAGCTCATCTGCCTGCCTA
CTGCCTCGGA-3’(配列番号27)、ヒトshRNA2-5’-TGCTGT
TGACAGTGAGCGAACCCAACCTGTCCATCATTATTAGTGA
AGCCACAGATGTAATAATGATGGACAGGTTGGGTGTGCCT
ACTGCCTCGGA-3’(配列番号28)、およびヒトshRNA3-5’-TG
CTGTTGACAGTGAGCGAGCTGAGTTCCTCAAGGTCAAGTA
GTGAAGCCACAGATGTACTTGACCTTGAGGAACTCAGCCT
GCCTACTGCCTCGGA-3’(配列番号29);マウスshRNA1-5’-
TGCTGTTGACAGTGAGCGCTCAGTCAAGAGCATTGCCAAG
TAGTGAAGCCACAGATGTACTTGGCAATGCTCTTGACTGA
ATGCCTACTGCCTCGGA-3’(配列番号30)、マウスshRNA2-5
’-TGCTGTTGACAGTGAGCGACCTGTCTGGCTTCTCTTCT
ACTAGTGAAGCCACAGATGTAGTAGAAGAGAAGCCAGACA
GGGTGCCTACTGCCTCGGA-3’(配列番号31)、およびマウスshR
NA3-5’-TGCTGTTGACAGTGAGCGAGCCGAGTTCCTCAA
GGTCAAGTAGTGAAGCCACAGATGTACTTGACCTTGAGGA
ACTCGGCCTGCCTACTGCCTCGGA-3’(配列番号32)。本発明者
らは、緑色蛍光タンパク質に対するshRNAをこのベクター中に非標的対照としてクロ
ーニングした(5’-TGCTGTTGACAGTGAGCGCTCTCCGAACGT
GTATCACGTTTAGTGAAGCCACAGATGTAAACGTGATACA
CGTTCGGAGATTGCCTACTGCCTCGGA-3’(配列番号33))。
shRNAを含有するベクターをPstIで線状化して、Amaxa電気穿孔法キットV
(Amaxa)を使用して、別々のARPE-19(ヒトRPE細胞系列、ATCC)ま
たはJ774A.1(マウスマクロファージ細胞系列、ATCC)培養物にトランスフェ
クトした。トランスフェクトされた細胞を6ウェルプレートおよび2mLの培養培地(1
:1DMEM:10%FBS添加F-12)に移した。トランスフェクトされた細胞を、
終夜37℃、5%CO2で増殖させた。トランスフェクション後24時間に、1μg/m
l(ARPE-19)から1.25(J774A.1)μg/mlのピューロマイシン(
Sigma)を添加して、安定な細胞系列を選択した。培地およびピューロマイシンを2
日毎に10日間更新した。選択後、4種のARPE-19および4種のJ774A.1ノ
ックダウン系列をコンフルエントになるまで増殖させた。ノックダウンの有効度を決定す
るために、安定な系列に、ARPE-19細胞中のV5でタグを付けたPRPF31、ま
たはGateway Destinationベクター(Invitrogen)中にク
ローニングされたV5でタグを付けたPrpf31のいずれかを一過性にトランスフェク
トした。ウェスタンブロットを実施して、Odyssey赤外撮像装置(Li-Cor)
を使用してV5でタグを付けたPRPF31を定量した。細胞生存能力アッセイは、Ce
ll Titer-Glo Luminescent Cell Viability
Assay(Promega)を製造業者の推奨に従って使用して実施した。簡単に説明
すると、ARPE-19細胞を、96ウェルの細胞培養プレート(Corning、カタ
ログ番号3904)に1,000細胞/ウェルの密度で播種した。10%FBSを添加し
たDMEM中で、細胞を37℃、5%CO2で3日間増殖させた。この期間の後、細胞の
生存能力をルミネッセンスにより測定し、スチューデントt-検定を使用して統計的有意
性を決定した。
【0043】
インビトロにおける食作用アッセイ
光受容体外側セグメントを屠殺場から得られた新鮮なブタの眼から単離し、以前に記載
したインビトロ食作用アッセイ13のために、FITC染料(Invitrogen)を
用いて共有結合で標識した。コンフルエントに培養されたRPE細胞を、1細胞当たり約
10FITC-POSでチャレンジし1.5時間置いた。1mM MgCl2および0.
2mM CaCl2を添加したPBSで3回洗浄して、非特異的に結合したPOSを徹底
的に除去した。内在化したPOSを測定するために、一部のウェルをトリパンブルーと1
0分間インキュベートして、表面に結合したFITC標識されたPOSの蛍光を以前に記
載したように26消光した。細胞を氷冷メタノールで固定して、核をHoechst33
258(Invitrogen)またはDAPI(Euromedex)で対比染色した
。細胞を、Nikon Ti2またはLeica DM6000蛍光顕微鏡を20×で使
用して撮像した。RPE初代培養について、FITC/DAPI比を、全ての視野で、1
細胞当たりのPOSの数に対応して計算した。FITC-POSを1細胞基準で100細
胞について計算して、ARPE-19について3個のウェルで平均を決定した。腹腔マク
ロファージについて、FITC-POSおよびDAPI標識された核を蛍光プレートの読
みにより定量した(Infinite M1000、Magellan6ソフトウェア、
Tecan)。結合比は、内部移行ウェル(トリパンブルー処理した)で得られた結果を
全食作用(未処理)ウェルから差し引くことにより計算した。これを、3から6回の独立
のアッセイについて実施して、有意性をスチューデントt-検定(P<0.05)を使用
して決定した。
【0044】
食作用に先立って、安定なノックダウンJ774A.1系列のコンフルエント培養物を
、Zymosan A Bioparticle Opsonizing試薬(Life
Technologies)を製造業者のプロトコルに従って使用してオプソニン化し
た。オプソニン化の後、培養培地中で再構成された1μgのZymosan A Bio
particleを96ウェルプレートの各培養ウェルに適用した。培養物を37℃、5
%CO2で1時間インキュベートした。固定および食作用レベルの決定は、上で記載した
ようにして実施した。
【0045】
インビボにおける日周的な周期性のアッセイ
マウスは、光照射開始の2時間前(-2)、光照射開始時(0)、ならびに光照射開始
後2、4、および8時間に(+2、+4、+8)安楽死させて、電子顕微鏡またはパラフ
ィン包埋のいずれかのために、前に記載したように13、15処理した。電子顕微鏡のた
めには、全ての試薬を、Electron Microscopy Sciencesか
ら購入した。マウスを、2%グルタルアルデヒド+2%パラホルムアルデヒドで灌流して
、眼杯を、0.2Mカコジル酸ナトリウム緩衝液を添加した灌流緩衝液に移した。60か
ら80ナノメートルの超薄切片を、クエン酸鉛/酢酸ウラニルで染色して、視神経から2
00nM離れた初期ファゴソームを計数した。初期ファゴソームは、以下の基準:1)そ
れがRPEの細胞原形質内に含有されていること、および2)視認できる層状構造を有す
ること、に合致する場合に計数する。光顕微鏡のためには、眼杯をホルムアルデヒド/エ
タノール/酢酸中で固定して、Ottix Plus溶媒代用品(DiaPath)を使
用してパラフィン包埋した。5マイクロメートルの切片に切り、SafeSolv溶媒代
用品を使用してパラフィンを除去した。切片を再水和して、色素を漂白するために、照明
下で10分間1×SSC中5%H2O2でインキュベートした。1×TBS中の10%B
SA使用して非特異的シグナル伝達を遮断した後、抗ロドプシン抗体(Millipor
e)および抗マウスIgG-AlexaFluor488(Invitrogen)を用
いて切片を染色した。核はDAPIで染色して、(標準的手順に従って調製した)Mow
iolを用いてスライドにマウントした。像のスタックは、60×油浸対物レンズを備え
たOlympus FV1000倒立共焦点顕微鏡で、4倍ズームおよび0.41μmス
テップサイズ走査で得て、Adobe Photoshop CS6ソフトウェアを使用
して処理した。少なくとも100μmの連続した網膜/RPEの領域が10回走査のスタ
ックで計数された。各実験シリーズにおいて、ファゴソームの数は、網膜の長さに対して
正規化して平均した。有意性は、スチューデントのt-検定を使用して(P<0.05)
、全ての実験についてN=2~5で決定した。
【0046】
インビボにおける網膜の接着アッセイ
本発明者らは、記載したようにして14インビボにおける網膜の接着アッセイを実施し
た。簡単に説明すると、水晶体および角膜を眼杯から取り外して、直ちにカルシウムおよ
びマグネシウムを添加したHanks生理食塩水緩衝液中で検死解剖する。視神経に放射
状の切断を行い、神経網膜を平板化された眼杯から丁寧に剥離した。神経網膜試料を、5
0mM Tris-HCl(pH7.5)、2mM EDTA、150mM NaCl、
1%トリトンX-100、0.1%SDS、およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sig
ma)および1mM PMSFを添加した1%Nonidet P-40中で溶解した。
清澄化した上清からのタンパク質を、Bradfordアッセイを使用して定量し、等濃
度をRPE65(AbcamまたはMillipore)およびベータ-アクチン(Ab
camまたはSigma)に対してイムノブロットした。メラニン色素を、不溶性の神経
網膜のペレットから20%DMSO、2N NaOHを用いて抽出した。試料および市販
のメラニン標準(Sigma)を、吸光度を490nMで測定することにより定量した。
異なった組織収率を説明するために、各試料で色素の存在量をタンパク質濃度に対して正
規化した。イムノブロットのバンドを、ImageJソフトウェアv1.46rを使用し
て、全てのブロットに対して参照として共通の試料を使用して定量し、次にシグナルを平
均した。有意性は、スチューデントのt-検定を使用して(P<0.05)、全ての実験
についてN=3~6で決定した。
【0047】
免疫蛍光顕微鏡
凍結切片のために、眼杯を2%パラホルムアルデヒド中で固定して、30%スクロース
中で終夜4℃でインキュベートした。眼杯をO.C.T.Compound(Sakur
a)中に包埋して、10μmの切片を切った。切片を個々に、αvインテグリン(BD
Biosciences)、β5インテグリン(Santa Cruz Biotech
nology)、MerTK(FabGennix)、Mfg-E8およびGas6(R
& D Systems)、FAKクローン2A7(Millipore)、およびタ
ンパク質S(Sigma)に対する一次抗体とインキュベートし、続いてIgG-Ale
xaFluor488(Invitrogen)とインキュベートした。核は、DAPI
で染色して、Fluoromount(Electron Microscopy Sc
iences)を用いてマウントした。画像は、油浸60×対物レンズを使用するNik
on Eclipse Ti倒立蛍光顕微鏡を用いて撮った。画像をNIS-Eleme
nts ARソフトウェア(Nikon)で処理した。
【0048】
パラフィン切片のためには、動物を食作用のピーク時に屠殺して、眼をDavidso
n固定剤中で3時間4℃で固定し、次に水晶体および角膜を取り出した。眼杯をパラフィ
ン中に包埋して5μm切片を切った。切片を「インビボにおける日周的な周期性のアッセ
イ」の節で記載したように処理して、αvインテグリン(Covance)、β5インテ
グリン(Santa Cruz Biotechnology)、Mfg-E8、Mer
TKおよびGas6(R & D Systems)、FAKクローン2A7(Mill
ipore)、およびタンパク質S(Novus Biologicals)に対する一
次抗体と個々にインキュベートして、続いてIgG-AlexaFluor488(In
vitrogen)を用い、二次抗体とのインキュベーションを行った。核をDAPIで
染色して、Mowiolを用いてスライドにマウントした。画像を、40×油浸対物プリ
ズムを使用するLeica DM6000B落射蛍光顕微鏡を用いて撮った。画像を、I
mageJ v1.46rおよびPhotoshop CS6ソフトウェアで処理した。
【0049】
結果
RPEの食作用はPrpf変異マウスで低下する
Prpf変異マウスの本発明者らの独自のキャラクタリゼーションで、電子顕微鏡によ
り、1から2歳の変異体における形態学的変化が確認された
8。ここで、本発明者らは、
機能的変化が観察された形態学的変化に先行するかどうかを決定することを企てた。RP
Eは培養中に食作用活性を維持するので、本発明者らは、日齢9~10日のPrpf3
T
494M/T494M、Prpf8
H2309P/H2309P、Prpf31
+/-マ
ウスおよびそれらの対応する同腹子対照から独立の初代RPE培養を確立した。培養物が
コンフルエントになったら、本発明者らは、1.5時間のインキュベーション後にFIT
C標識されたブタPOSを使用して食作用を測定した。
図1A(パネル1~3)は、Pr
pf変異マウスおよびそれらの同腹子対照からのRPE細胞のPOS結合/取り込みを例
示して、変異マウスによる食作用における定性的欠損を示す初代培養の代表的画像を示す
。3種全ての変異体モデルにおいて、食作用における37~48%の減少が観察された(
N=3~5、P<0.05)(
図1B)。POSのカバーガラスへの非特異的結合を数え
るために、本発明者らは、細胞を含有しないカバーガラス上で食作用のアッセイが実施さ
れる陰性対照を実験した。本発明者らは、POSのカバーガラスへのいかなる非特異的接
着も観察しなかった(データ掲載せず)。
【0050】
本発明者らは、結合と内部移行との間の食作用の特異的ステップが、Prpf31
+/
-RPEの初代培養で優先的に妨げられるかどうかを調べた。1.5時間食作用チャレン
ジを実施した後、本発明者らは、内在化したPOSのみを定量するために、細胞を処理し
て表面(結合したPOS)の蛍光を消光した。POSの結合は、変異体細胞で53±11
%有意に減少した(N=2~5、P<0.05)が、野生型と変異体のRPE培養との間
におけるPOS内部移行率に有意な差はなかった(
図1C)。
【0051】
現在、PRPF31には64通りの知られた病原性変異があり、その多くはフレームの
シフトが生じて、ナンセンス媒介崩壊経路を通って分解される
2、10、11、22。A
RPE-19は、自発的に不死化したヒトRPE細胞系列であり、トランスフェクション
を受けやすく食作用能力を保持する
23。スプライシング因子における変異がヒトRPE
モデルでも食作用に影響するかどうかを試験するために、本発明者らは、転写物の5’、
3’および中部領域に対する3種の別個のshRNAを使用して、PRPF31のshR
NAにより媒介されるノックダウンを有する3種の安定なARPE-19細胞系列を創り
出した(
図1D)。本発明者らは、対照として使用するために緑色蛍光性タンパク質に対
するshRNAを有する第4の安定な細胞系列も生成した。3種のPRPF31 shR
NA安定な細胞系列の各々で、本発明者らは、約60~95%のPRPF31のノックダ
ウンを達成した(データ掲載せず)。shRNA-ノックダウンおよび非標的とされる対
照ARPE-19細胞の細胞生存能力アッセイは、有意の低下が、PRPF31のノック
ダウンと関連して起こることはないことを示した(
図1E)。食作用は試験された各系列
で、標的とされない対照shRNA系列と比較して約40%減少した(
図1F)。初代R
PEに対して実施された食作用のアッセイと同様に、本発明者らは、陰性対照のアッセイ
も実施し、POSのカバーガラスへのいかなる非特異的接着も観察しなかった(データ掲
載せず)。
【0052】
食作用のはたらきの混乱がRPEに特異的な機構であるか、または他の食作用細胞でも
観察され得るかを決定するために、本発明者らは、マウスマクロファージ細胞系列、J7
74A.1において、Prpf31をノックダウンした。ARPE-19細胞系列におけ
るノックダウンの検討と同様に、3種の別個のshRNAを、転写物の5’-、3’-末
端および中部に対するものとした。本発明者らは前の検討と同じ対照shRNAを使用し
た。安定なPrpf31細胞系列の各々で、本発明者らは、Prpf31の約45~70
%ノックダウンを達成した(補足の
図1A)。本発明者らは、試験された系列のいずれに
おいてもいかなる食作用欠損も観察しなかった(補足の
図1B)。本発明者らが非特異的
POS接着を観察しなかったことを確かめるために、本発明者らは、以前の実験シリーズ
に対するように陰性対照のアッセイを実施した(データ掲載せず)。同一の実験を、Pr
pf31
+/-マウスから単離されたマウスの初代腹腔マクロファージで繰り返した。興
味深いことに、野生型マクロファージと比較して、Prpf31変異体では、食作用のス
テップ、すなわち結合または内部移行も、全食作用も、影響されなかった(補足の
図1C
)。
【0053】
食作用の日周的な周期性が乱される
光照射開始後2時間でピークになり、その日の残りには比較的不活性にとどまる
13強
い日周的な、同期されたリズムに従って、脱落したPOSのRPEによる食作用が生じる
。本発明者らは、光サイクルを通して5つの時点で、インビボにおける食作用を、電子顕
微鏡(
図2A、Prpf3およびPrpf8変異体)または免疫蛍光(
図2B、Prpf
31変異体)のいずれか(両方共、RPEの食作用のリズムを推定する認められた技法
1
3、15)を使用して、測定した。Prpf3およびPrpf8の対照および変異マウス
について、本発明者らは、電子顕微鏡写真で層状の構造(
図2A、挿入された矢じりは層
状の構造を示す)を含有する初期のファゴソームを計数した。食作用の周期性は、パラフ
ィン包埋およびロドプシンに対する染色を使用して、Prpf31
+/-マウスで決定し
て、本発明者らは、RPE細胞層に存在するファゴソーム(
図2B、矢じり)を計数した
。本発明者らは、光照射開始後2時間に全ての対照マウスで食作用のバーストを観察して
、網膜の切片の100μm当たり22~26個のファゴソームを確認した(
図2C、+2
時点)。対照的に、変異マウスは、同じピーク時点で10~14個のファゴソームを示し
ただけであった。光照射の他の間:暗サイクルでは、食作用レベルは対照マウスでは比較
的低いままであり(「ピークオフ時間」、2~12個のファゴソーム/100μm網膜)
、これらのレベルは、変異マウスでは一般的に上昇した(6~14個のファゴソーム/1
00μm網膜)。これらの結果は、変異マウスの3種全てのタイプにおいて食作用のピー
ク強度における低下を示し、ピーク時が広がってそれがPrpf3およびPrpf8変異
体ではより長く持続して、Prpf31変異体ではより早く始まる。さらに、Prpf8
変異体は、ピークオフ時点で(+8時間)、WT対照と比較して有意により多くのファゴ
ソームを有する。
【0054】
減少した網膜の接着がピーク時点で観察される
RPE頂点の微絨毛とPOSの末端の先端との間の接着は、同期されたリズムに従って
、最大強度は光照射開始後3.5時間に、食作用のピークのわずかに後に起こることが知
られている
4,15。接着は、安楽死の直後に平坦化された眼杯から網膜を剥離し、次に
網膜に移されたRPE65などのRPEメラニン含有率および頂点のRPEタンパク質マ
ーカーの両者を定量することにより、決定することができる。この方法を使用して、本発
明者らは、Prpf変異マウスおよび同腹子対照で、光照射開始後3.5および8.5時
間に(それぞれ、ピーク時およびピークオフの接着)接着を推定した。RPE接着は、先
ず標準的メラニン定量の手順
14、次にメラニン生成を確認するためにRPE65の存在
についてウェスタンブロットを使用して定量した。本発明者らは、ピーク時におけるPr
pf3
T494M/T494Mのメラニン含有率が56±16%減少すること(N=6、
p<0.05、変動は標準偏差に等しい)およびピークオフ時点における(
図3A)接着
に有意の変化はないことを認めた。ウェスタンブロット分析により、ピーク接着における
30±2%減少でこの観察を確認した(
図3B)。Prpf8
H2309P/H2309
Pマウスにおけるメラニン定量は、接着が、ピーク時点で61±28%、およびピークオ
フ時点で51±16%と有意に減少することを示した(両時点共、N=6、P<0.05
)(
図3A)。しかしながら、ウェスタンブロット分析では、ピーク時点においてのみ有
意の36±11%減少が確認された(
図3B)。Prpf31
+/-マウスでは、15±
1%の減少がピーク時点で観察されて(
図3A)、イムノブロット分析によって確認され
た(両方のパネルについて、N=3~7、P<0.05)(
図3B、14±1%)。
【0055】
食作用および接着マーカーの局在
RPE細胞は高度に分極しており、それらの機能はこの極性に依存する
24。RPEで
発現された多くのタンパク質の特異的局在は重要であり、局在における不規則性は、RP
またはベスト病などの網膜ジストロフィーの原因となり得る
25、26。3種全てのPr
pf変異体マウスモデルにおける食作用および接着の両方の日周的なリズムの乱れがある
と仮定し、本発明者らは、これらのプロセスにとって重要であることが知られているタン
パク質の局在を特徴づけることを企てた。タンパク質の局在は、Prpf3およびPrp
f8変異マウスについては凍結切片(
図4)、およびPrpf31変異マウスについては
パラフィン切片でアッセイした(
図5)。
【0056】
前に示したように、主要な食作用の受容体(αvβ5インテグリンおよびMerTK)
は、RPE頂点の表面に局在しているが27、それらのリガンドは、POSおよびRPE
の全体にわたって発現し得る28。興味深いことに、光受容体間マトリックスで発現され
た細胞外リガンドは、RPEおよび光受容体細胞の両方で合成され得る。
【0057】
αvβ5-インテグリンは、その関連するリガンドMfg-E8(乳脂肪小球体-EG
F8)と共に、食作用にとって重要であり、この機能の日周的な周期性の原因であること
が示されている
13、15。それに加えて、αvβ5-インテグリンは、網膜の接着およ
びそのリズムに関与するが、Mfg-E8と異なるリガンドによる
14、15、17。α
vインテグリンサブユニットは、RPE細胞における数種のβインテグリンサブユニット
と複合体で結びつき
14、それ故それは、β5インテグリンサブユニットの発現の分析に
さらに関連する。したがって、本発明者らは、αvβ5インテグリン受容体のαvおよび
β5サブユニットを別々に探索した。野生型組織では、各インテグリンはRPEの頂点側
に主として局在しており、一部の発現はRPE細胞全体にわたる。全ての3種のPrpf
変異体の組織において、αv-インテグリンの局在に変化は観察されなかった(
図4A、
5A)。対照的に、β5インテグリンは、Prpf3およびPrpf31変異体の組織で
はRPEの基底側に主として局在しているが、それは、Prpf8変異体のRPE細胞で
はRPE全体にわたる均等な発現を示した。本発明者らは、RPEまたはPOSのいずれ
においてもMfg-E8の局在における変化を観察しなかったが、Prpf8および31
変異体の両方でより多く発現されているように思われる。
【0058】
下流のシグナル伝達タンパク質FAK(限局性接着キナーゼ)は、インビトロおよびイ
ンビボの両方で、αvβ5インテグリンとMerTK受容体間の逐次活性化のリンクを提
供する
29、30、13。FAKは、RPE全体にわたって見出され、このパターンに対
する変化は、Prpf3またはPrpf31変異マウスでは観察されなかった(
図4B、
5B)。しかしながら、Prpf8変異マウスは、RPEの基底側にFAKの局在を示し
た。
【0059】
食作用は、活性のピーク時にリン酸化によるMerTKの適時の活性化により推進され
る
13、31、32。Gas6およびタンパク質Sは、インビトロで脱落した外側セグメ
ントの取り込みを刺激し得るMerTKのリガンドである
33。二重ノックアウト動物は
、MerTKに受容体がないラットで起こる急速な網膜の変性を再現するので
34、両リ
ガンドは、POSの内部移行に必要である。野生型組織におけるMerTK発現は、RP
Eの頂点および基底膜の両方に局在するが、それに対してMerTKは、Prpf31変
異体のRPE細胞の頂点側にだけ局在している(
図4C、5C)。野生型組織では、第1
のMerTKリガンドのGas6は、POSに、およびRPEの頂点の層に局在する。発
現の減少はPrpf3変異マウスのPOSで観察され、散在性の発現がRPE全体にわた
って見られる。Prpf8変異マウスは、POS中におけるGas6発現を維持するが、
RPEにおける頂点の局在を失うように見えて、やはりRPE全体にわたって散在性の発
現を示す。局在の変化は、Prpf31変異マウスでは観察することができない。第2の
MerTKリガンドタンパク質Sの発現は、野生型および全てのPrpf変異マウス中の
POSに特異的に局在している(
図4C、5C)。
【0060】
考察
ここで、本発明者らは、RNAスプライシング因子Prpf3、8、および31におけ
る変異を有するマウス中のRPEの機能の最初のキャラクタリゼーションを報告する。本
発明者らが以前報告したように、変異マウスでは、光受容体の変性はないが、むしろRP
Eにおける形態学的変化がある8。RNAスプライシング因子RPは後期発症疾患である
から、これらの結果は、驚くことではなく、これらのモデルにより、本発明者らは、疾患
の発症に導く機構を検討することができる。本発明者らの結果は、マウスにおいて、およ
びヒトにおいても、同様な食作用の欠損が、PRPF31がノックダウンされたヒトAR
PE-19細胞で観察されることを考慮に入れれば、RPEが、これらの3種のRNAス
プライシング因子の変異により罹患する主要な細胞型である可能性が高いことを示す。疾
患の病原性の厳密な機構は未だ確認されていないが、これらのデータは、研究がRPEに
集中されることを許容する。例えば、これらの障害に罹患する主要な細胞型としてのRP
Eの同定により、これらの検討をヒト細胞に拡大することが可能になるであろう。遺伝性
の網膜疾患を有する患者のヒト由来の多分化能幹細胞(hiPSC)からRPE細胞を発
生させることが現在では可能であるからである42~45。
【0061】
実施例1のための参考文献
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6767-78.
【実施例2】
【0062】
ゲノム編集技法を使用するPRPF31ノックアウトARPE-19細胞の開発および機
能のキャラクタリゼーション
実施例1に記載したように、網膜色素上皮(RPE)を、RNAスプライシング網膜色
素変性(RP)の3種の変異体マウスモデルにおける病原性の部位と同定した。しかしな
がら、これらの結果は、ヒトRPEにおいて確認される必要があった。CRISPR/C
as9ゲノム編集技法の出現で、疾患のこれらの形態のためのヒト細胞系列モデルが開発
された。本実施例は、ヒト細胞系列で初めてPRPF31をノックアウトするためのCR
ISPR/Cas9ゲノム編集の使用を提供し、およびRPE機能に対する効果をキャラ
クタライズする。
【0063】
PRPF31のエクソン7への20bpのガイドRNA(gRNA)を設計して、gR
NA足場配列を含有するpCAGベクター中にクローニングした。gRNAベクターを、
pCAG-Cas9-GFPベクターと共にARPE-19細胞中にコトランスフェクト
した。
【0064】
GFP陽性細胞は、96ウェルプレートの個々のウェル中に選別された単一細胞であり
、コンフルエントになるまで増殖させた。DNAを各クローンから単離して、予測される
切断部位付近の領域をSanger法で配列決定して、正確な切断および非相同末端連結
(NHEJ)を示すところを同定した。qRT-PCRおよび食作用アッセイの両方を使
用して、5通りのNHEJ系列をさらなるキャラクタリゼーションのために選択して、F
ITC標識された光受容体外側セグメント取り込みを、フローサイトメトリーを用いて定
量した。これらの系列を、RPEに特異的な遺伝子の分極および最高の発現を確実にする
ために、3週間コンフルエントな培養として維持した。
【0065】
トランスフェクション後に検証された個々のクローンの約25%が、2個と11個との
間の塩基が欠失したNHEJを示し、1つのクローンが1塩基挿入を有した(
図6)。ヘ
テロ接合のインデル(indel)だけが同定され、これは、PRPF31における変異がハ
プロ不全による疾患の原因であるという以前の報告と矛盾しない。5種のゲノム編集され
たクローン中4種におけるPRPF31の発現が、野生型対照と比較して50~80%有
意に(P<0.05)減少した。これらの変化がゲノム編集の結果であることを確認する
ために、PRPF31変更因子CNOT3の発現レベルを決定した。1つの系列で発現が
2倍に増大して、それは、その系列におけるPRPF31の低下したレベルを説明するこ
とができる。POS取り込みのフローサイトメトリー分析は、食作用がゲノム編集された
系列で10~60倍減少したことを示した。
【0066】
現在のところ、ヒトモデルでRNAスプライシング因子RPの疾患機構を検討すること
は難しい。本発明者らは、マウスモデルにおける発見を模倣するPRPF31関連疾患の
ためのヒト細胞系列モデルを創出した。これらの系列は、本発明者らが、より関連するモ
デルで疾患を検討することを可能にして、本発明者らがスプライシングをより深く調べる
ことができるようにするであろう。さらに、本発明者らは、PRPF31のAAVにより
媒介される遺伝子増強の、疾患の病原性に対する効果および機能欠如のレスキューを検討
することができる。
【0067】
例えば、実施例1で言及したように、光受容体外側セグメント(POS)は、それらの
末端の先端における視神経円板の脱落により調節されるそれらの基底における連続した増
殖により、10日毎に完全に更新される(Young RW. The renewal of photoreceptor cel
l outer segments. Journal of Cell Biology. 1967;33:61-72;Young RW. Shedding of
discs from rod outer segments in the rhesus monkey. JUltrastructRes. 1971;34:190
-203)。RPEによる弱ったPOS材料に対する食作用は、それがないかまたは遅延する
と視力の喪失をもたらすので、適当な網膜の機能にとって必須である(Dowling JE, Sidm
an RL. Inherited retinal dystrophy in the rat. Journal Cell Biology. 1962;14:73-
109;Nandrot EF, Kim Y, Brodie SE, Huang X, Sheppard D, Finnemann SC. Loss of sy
nchronized retinal phagocytosis and age-related blindness in mice lacking alphav
beta5 integrin. Journal Experimental Medicine. 2004;200:1539-45)。POSに対す
る食作用は、日齢10日の変異マウスからの初代RPE細胞培養で減少し、これは、ヒト
ARPE-19細胞中のPRPF31のshRNA媒介ノックダウンにより再現される(
実施例1、
図1)。インビボにおける食作用の日周的な周期性も失われ、RPE頂点の微
絨毛とPOSとの間の接着の強度は、3種全ての変異体モデルでピーク接着時において、
低下していた(Nandrot EF, Kim Y, Brodie SE, Huang X, Sheppard D, Finnemann SC. L
oss of synchronized retinal phagocytosis and age-related blindness in mice lacki
ng alphavbeta5 integrin. Journal Experimental Medicine. 2004;200:1539-45;Nandro
t EF, Finnemann SC. Lack of alphavbeta5 integrin receptor or its ligand MFG-E8:
distinct effects on retinal function. Ophthalmic Research. 2008;40:120-3)。
【実施例3】
【0068】
ゲノム編集技法を使用するPRPF31がノックアウトされたヒト由来多分化能幹細胞(
hiPSC)の開発および機能のキャラクタリゼーション
上の実施例2で記載したように、CRISPR/Cas9ゲノム編集を、正常hiPS
CにおいてPRPF31をノックアウトするために使用した(Hou Z, Zhang Y, Propson
NE, Howden SE, Chu LF, Sontheimer EJ, Thomson JA. Efficient genome engineering i
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【0069】
hiPSC技法の開発により、hiPSCはRPE細胞に容易に分化することができる
ので、現在では、ヒトRPE細胞が、RNAスプライシング因子遺伝子における変異によ
り同様に罹患するかどうかを決定することが可能になっている(実施例1、Singh R, Phi
llips MJ, Kuai D, Meyer JT, Martin J, Smith M, Shen W, Perez ET, Wallace KA, Cap
owski EE, Wright L, Gamm DM. Functional analysis of serially expanded human iPS
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Rapid and efficient directed differentiation of human pluripotent stem cells in
to retinal pigmented epithelium. Stem cells translational medicine. 2013;2:384-9
3を参照されたい)。hiPSCから誘導されたRPE細胞は、機能的なタイトジャンク
ション、POSの食作用、および分極を含め、天然のRPE細胞と多くの特徴を共有しす
る。(同上)。
【0070】
hiPSC-RPEを得るために、胚様体(EB)発生させて、ラミニンでコートされ
たプレートに接着させ、網膜の分化培地(RDM)中で60~90日間培養した。次に、
色素沈着細胞の領域は、顕微解剖されて分離され、確立されたプロトコルに従ってtra
nswellインサート上に送られるであろう(Singh R, Phillips MJ, Kuai D, Meyer
JT, Martin J, Smith M, Shen W, Perez ET, Wallace KA, Capowski EE, Wright L, Gamm
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s. Investigative Ophthalmology & Visual Science. 2013;54:6767-78;Phillips MJ, W
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Capowski EE, Percin EF, Perez ET, Zhong X, Canto-Soler MV, Gamm DM. Blood-derive
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rm retinal laminae and develop synapses. Investigative Ophthalmology & Visual Sc
ience. 2012;53:2007-19)。次に、色素の沈着した単層が再形成される場合、細胞をさら
に30~60日の間培養する。実験で使用する前に、Transwellインサート上で
増殖したhiPSC-RPE単層の経上皮耐性(TER)を測定する。TER>150Ω
cm2で培養されたものだけが、さらなる検討のために選択される。全ての実験のために
、本発明者らは、目的の各変異および野生型対照細胞について2連を含め、それらを培養
し、平行して分析する。hiPSCから誘導されたRPE細胞の構造および機能を、数通
りの方法を使用してキャラクタライズする。
【0071】
構造:光顕微鏡および電子顕微鏡を使用して、頂点の隆起および基底外側の陥入の形成を
含む分極を推定する(実施例1、Garland DL, Fernandez-Godino R, Kaur I, Speicher K
D, Harnly JM, Lambris JD, Speicher DW, Pierce EA. Mouse genetics and proteomic a
nalyses demonstrate a critical role for complement in a model of DHRD/ML, an inh
erited macular degeneration. Human Molecular Genetics. 2013;Sep 4. [Epub ahead o
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d for the correct stacking of outer segment discs. Investigative Ophthalmology &
Visual Science. 2003;44:4171-83)。
【0072】
食作用:
上で記載したように、Prpf3
T494M/T494M、Prpf8
H2309P/
H2309P、およびPrpf31
+/-マウスからのRPE細胞の初代培養物は、PO
Sに食作用を行う能力が有意に低下している(
図1)。本発明者らは、hiPSCから誘
導されたRPE細胞の食作用機能を、確立された技法を使用して推定するであろう(実施
例1;Finnemann SC, Bonilha VL, Marmorstein AD, Rodriguez-Boulan E. Phagocytosis
of rod outer segments by retinal pigment epithelial cells requires alpha(v)beta
5 integrin for binding but not for internalization. ProcNatlAcadSciUSA. 1997;94:
12932-7;Singh R, Shen W, Kuai D, Martin JM, Guo X, Smith MA, Perez ET, Phillips
MJ, Simonett JM, Wallace KA, Verhoeven AD, Capowski EE, Zhang X, Yin Y, Halbach
PJ, Fishman GA, Wright LS, Pattnaik BR, Gamm DM. iPS cell modeling of Best dise
ase: insights into the pathophysiology of an inherited macular degeneration. Hum
an Molecular Genetics. 2013;22:593-60を参照されたい)。
【0073】
hiPSCから誘導されたRPE細胞の極性を推定するために、Transwell上
で増殖させた安定にトランスフェクトされた細胞のビブラトーム切片を、確立された技法
を使用して確立されたRPE細胞マーカーに対する抗体で免疫染色する(Nandrot EF, Ki
m Y, Brodie SE, Huang X, Sheppard D, Finnemann SC. Loss of synchronized retinal
phagocytosis and age-related blindness in mice lacking alphavbeta5 integrin. Jou
rnal Experimental Medicine. 2004;200:1539-45;Nandrot EF, Finnemann SC. Lack of
alphavbeta5 integrin receptor or its ligand MFG-E8: distinct effects on retinal
function. Ophthalmic Research. 2008;40:120-3; Finnemann SC, Nandrot EF. MerTK ac
tivation during RPE phagocytosis in vivo requires alphaVbeta5 integrin. Advances
Experimental Medicine Biology. 2006;572:499-503)。この染色された細胞を共焦点顕
微鏡によって評価して、マーカータンパク質の分布および相対量を変異体および対照hi
PSCから誘導されたRPE細胞で比較する。これらのRPE細胞マーカーのレベルも、
分化した細胞でウェスタンブロットにより評価する(Nandrot EF, Kim Y, Brodie SE, Hu
ang X, Sheppard D, Finnemann SC. Loss of synchronized retinal phagocytosis and a
ge-related blindness in mice lacking alphavbeta5 integrin. Journal Experimental
Medicine. 2004;200:1539-45)。
【0074】
ゲノム編集されたhiPSCにおいて観察されたRPE表現型における変化は、RNA
スプライシング因子RPを有する患者からのhiPSCを使用して確認される。PRPF
31の遺伝子における変異に基づくRPを有する患者および家族は同定されており、hi
PSCは、3組の家族の各々から1名の罹患したおよび1名の罹患していないファミリー
メンバーからの線維芽細胞を使用して発生させる。簡単に説明すると、記載されたように
、線維芽細胞を、7種のリプログラミング因子(OCT4、SOX2、NANOG、LI
N28、c-Myc、KLF4、およびSV40の大きいT-抗原)をコードする非組み
込み性oriP含有プラスミドベクターを使用して、プログラムし直す(Yu J, Hu K, Sm
uga-Otto K, Tian S, Stewart R, Slukvin II, Thomson JA. Human induced pluripotent
stem cells free of vector and transgene sequences. Science. 2009;324:797-801)
。正常核型を有し且つ多分化能性のマーカーOCT4、SSEA4、NANOGおよびT
RA-1-81の奇形腫の検討および発現により多分化能であることが確認されているh
iPSC系列を、さらなる検討のために選択する(Singh R, Shen W, Kuai D, Martin JM
, Guo X, Smith MA, Perez ET, Phillips MJ, Simonett JM, Wallace KA, Verhoeven AD,
Capowski EE, Zhang X, Yin Y, Halbach PJ, Fishman GA, Wright LS, Pattnaik BR, Ga
mm DM. iPS cell modeling of Best disease: insights into the pathophysiology of a
n inherited macular degeneration. Human Molecular Genetics. 2013;22:593-607;Sin
gh R, Phillips MJ, Kuai D, Meyer JT, Martin J, Smith M, Shen W, Perez ET, Wallac
e KA, Capowski EE, Wright L, Gamm DM. Functional analysis of serially expanded h
uman iPS cell-derived RPE cultures. Investigative Ophthalmology & Visual Science
. 2013;54:6767-78;Meyer JS, Howden SE, Wallace KA, Verhoeven AD, Wright LS, Cap
owski EE, Pinilla I, Martin JM, Tian S, Stewart R, Pattnaik B, Thomson JA, Gamm
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litate a customized approach to retinal disease treatment. Stem Cells. 2011;29:1
206-18)。各hiPSC系列が予想される変異を有することを確認した後、hiPSCか
ら誘導されたRPE機能を患者からの細胞でキャラクタライズして、罹患していないファ
ミリーメンバーと上記の技法を使用して比較する。
【実施例4】
【0075】
遺伝子増強療法のためのAAVベクター
RNAスプライシング因子RPに罹患した初代細胞と思われるRPE細胞の同定(実施
例1を参照されたい)により、PRPF31における変異により引き起こされた疾患のた
めに遺伝子増強療法を使用する機会が得られる。この目標を達成するために、本発明者ら
は、RPE細胞中でヒトPRPF31を発現するAAVベクターを開発して、培養された
RPE細胞において、および次にインビボにおけるPrpf31+/-マウスにおいて、
AAV送達されたPRPF31の表現型を改良する能力を試験した。AAVは、RPE6
5LCAおよびコロイデレミアのための遺伝子療法の臨床試験、ならびに他の臨床試験お
よび前臨床試験の成功に基づく、網膜の障害のための好ましい遺伝子送達ベクターである
(Maguire AM, Simonelli F, Pierce EA, Pugh EN, Jr., Mingozzi F, Bennicelli J, Ba
nfi S, Marshall KA, Testa F, Surace EM, Rossi S, Lyubarsky A, Arruda VR, Konkle
B, Stone E, Sun J, Jacobs J, Dell’Osso L, Hertle R, Ma JX, Redmond TM, Zhu X, H
auck B, Zelenaia O, Shindler KS, Maguire MG, Wright JF, Volpe NJ, McDonnell JW,
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F, Mingozzi F, Bennicelli JL, Ying GS, Rossi S, Fulton A, Marshall KA, Banfi S,
Chung DC, Morgan JI, Hauck B, Zelenaia O, Zhu X, Raffini L, Coppieters F, De Bae
re E, Shindler KS, Volpe NJ, Surace EM, Acerra C, Lyubarsky A, Redmond TM, Stone
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J, Calcedo R, Pang JJ, Erger KE, Olivares MB, Mullins CL, Swider M, Kaushal S, F
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P, Ng CY, Kay MA, Zhou J, Spence Y, Morton CL, Allay J, Coleman J, Sleep S, Cun
ningham JM, Srivastava D, Basner-Tschakarjan E, Mingozzi F, High KA, Gray JT, Re
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PMCID: 3265081)。
【0076】
AAVは、初期相の臨床試験で例外的安全性の記録を有し、AAVゲノムは光受容体お
よびRPE細胞などの最終的に分化した細胞中においてエピソーム形態で安定であるので
、他のベクター系と比較して遺伝毒性のリスクをもたらすことも少ない(Yang GS, Schmi
dt M, Yan Z, Lindbloom JD, Harding TC, Donahue BA, Engelhardt JF, Kotin R, David
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ration of rod and cone vision by single dose rAAV-mediated gene transfer to the
retina in a canine model of childhood blindness. Molecular Therapy. 2005;12:1072
-82)。
【0077】
PFPF31のための数種のAAVベクター系が、異なったプロモーターの選択および
カプシドの血清型で開発されている。プロモーターに関して、ベクターは、多くの細胞型
(例えば、CAGまたはCASI)、RPE細胞(例えば、RPE特異的タンパク質、例
えば、VMD2、RPE65、RLBP1、RGR、またはTIMP3などのためのプロ
モーター)および光受容体細胞(RHO)において発現を駆動するプロモーターを含むこ
とができる(Esumi N, Oshima Y, Li Y, Campochiaro PA, Zack DJ. Analysis of the VM
D2 promoter and implication of E-box binding factors in its regulation. Journal
Biological Chemistry. 2004;279:19064-73;Guziewicz KE, Zangerl B, Komaromy AM, I
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分は、遺伝子発現のレベルおよび持続時間を改善するようにコドン最適化されたPRPF
31配列を使用して合成される(Ill CR, Chiou HC. Gene therapy progress and prospe
cts: recent progress in transgene and RNAi expression cassettes. Gene Therapy. 2
005;12:795-802;Foster H, Sharp PS, Athanasopoulos T, Trollet C, Graham IR, Fost
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t B cell depletion or improved transgene expression by codon optimization promot
e tolerance to factor VIII in gene therapy. PLoS One. 2012;7:e37671)。予備的検
討で、コドン最適化されたPRPF31は、全長PRPF31タンパク質をARPE-1
9細胞中で産生した。調製されたベクターは、最適の発現を達成するために必要な最小の
ベクターゲノムをコードする。本発明者らは、RPE細胞に形質導入することに主として
関心があるので、本発明者らは、対照血清型としてAAV2を使用するが、これは、この
ベクターが培養された単層細胞に形質導入することが知られており、インビボで首尾良く
RPEに形質導入を起こしたからである(Pang JJ, Lauramore A, Deng WT, Li Q, Doyle
TJ, Chiodo V, Li J, Hauswirth WW. Comparative analysis of in vivo and in vitro
AAV vector transduction in the neonatal mouse retina: effects of serotype and si
te of administration. Vision Research. 2008;48:377-85;Vandenberghe LH, Bell P,
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を生成し、確立された技法を使用して精製した(Vandenberghe LH, Bell P, Maguire AM,
Cearley CN, Xiao R, Calcedo R, Wang L, Castle MJ, Maguire AC, Grant R, Wolfe JH
, Wilson JM, Bennett J. Dosage thresholds for AAV2 and AAV8 photoreceptor gene t
herapy in monkey. Science translational medicine. 2011;3:88ra54, Lock M, Alvira
M, Vandenberghe LH, Samanta A, Toelen J, Debyser Z, Wilson JM. Rapid, simple, an
d versatile manufacturing of recombinant adeno-associated viral vectors at scale
. Human Gene Therapy. 2010;21:1259-71. PMCID: 2957274)。タイターの決定は、ベク
ターゲノム中のポリアデニル化シグナルに対するプライマープローブセットを用いてTa
qman qPCRにより実施した。
【0078】
培養された細胞中におけるPRPF31の発現を検討するために、PRPF31変異体
および対照ARPE-19細胞を、実施例1で記載したように、Transwellフィ
ルター上で培養した。細胞を所望量のAAV-PRPF31ベクターで処理して、さらに
11~14日間培養した。AAV-PRPF31で処理された野生型RPE細胞、および
AAV-EGFPで処理されたPRFP31+/-細胞を対照として使用した。AAV-
PRPF31処理の効果を、数通りの手法を使用して評価する。全長PRPF31タンパ
ク質の産生は、形質導入後2~4日に免疫蛍光顕微鏡およびウェスタンブロット実験によ
り評価する(Liu Q, Zhou J, Daiger SP, Farber DB, Heckenlively JR, Smith JE, Sull
ivan LS, Zuo J, Milam AH, Pierce EA. Identification and subcellular localization
of the RP1 protein in human and mouse photoreceptors. Investigative Ophthalmolo
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science. 2004;24:6427-36;Falk MJ, Zhang Q, Nakamaru-Ogiso E, Kannabiran C, Fons
eca-Kelly Z, Chakarova C, Audo I, Mackay DS, Zeitz C, Borman AD, Staniszewska M,
Shukla R, Palavalli L, Mohand-Said S, Waseem NH, Jalali S, Perin JC, Place E, O
strovsky J, Xiao R, Bhattacharya SS, Consugar M, Webster AR, Sahel JA, Moore AT,
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ゲノムについてアッセイした。変異体細胞の正常な食作用活性の回復を、FITC標識P
OSを用いる処理により、確立された技法を使用して測定する(実施例1、Finnemann SC
, Bonilha VL, Marmorstein AD, Rodriguez-Boulan E. Phagocytosis of rod outer segm
ents by retinal pigment epithelial cells requires alpha(v)beta5 integrin for bin
ding but not for internalization. ProcNatlAcadSciUSA. 1997;94:12932-7;Singh R,
Shen W, Kuai D, Martin JM, Guo X, Smith MA, Perez ET, Phillips MJ, Simonett JM,
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the pathophysiology of an inherited macular degeneration. Human Molecular Genet
ics. 2013;22:593-607)。
【0079】
Prpf31+/-変異マウスにおけるPRPF31発現および機能を検討するために
、PRPF31のAAVにより媒介される送達を使用して、インビボでPrpf31+/
-マウスにおける欠損食作用を処理する。これらの検討のために、細胞培養の検討で確認
されたAAV-PRPF31ベクターの最適の用量を、Prpf31+/-マウスの1眼
中の網膜下に注射する。注射後1カ月に眼を取り出して免疫蛍光およびウェスタンブロッ
トアッセイを使用して、全長PRPF31タンパク質の発現および局在を評価する(Liu
Q, Lyubarsky A, Skalet JH, Pugh EN, Jr., Pierce EA. RP1 is required for the corr
ect stacking of outer segment discs. Investigative Ophthalmology & Visual Scienc
e. 2003;44:4171-83;Liu Q, Saveliev A, Pierce EA. The severity of retinal degene
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tein in Rp1 Knock-in Mice Rescues the Retinal Degeneration Phenotype. PLoS One.
2012;7:e43251)。
【0080】
AAVを送達されたPRPF31の、RPE食作用の周期性の喪失を防止またはレスキ
ューする能力を、光照射開始の2時間前(-2)、光照射開始時(0)、および光照射開
始の2、4、および6(+2、+4、+6)時間後に、ロドプシンの免疫蛍光染色および
RPE細胞層に所在するファゴソームの検出について、確立された技法を使用して推定す
る(Nandrot EF, Kim Y, Brodie SE, Huang X, Sheppard D, Finnemann SC. Loss of syn
chronized retinal phagocytosis and age-related blindness in mice lacking alphavb
eta5 integrin. Journal Experimental Medicine. 2004;200:1539-45;Nandrot EF, Finn
emann SC. Lack of alphavbeta5 integrin receptor or its ligand MFG-E8: distinct e
ffects on retinal function. Ophthalmic Research. 2008;40:120-3)。本発明者らは、
これらの動物で、AAV-PRPF31の注射後1カ月および2カ月に初めて、表現型の
レスキューの証拠について、処理された網膜を評価する。RPE変性の防止の証拠を評価
するために、マウスを月齢1カ月で処置して、RPEの超微細構造を、表現型のレスキュ
ーについて、AAV-PRPF31注射後5、8および11カ月に評価する(Graziotto
JJ, Farkas MH, Bujakowska K, Deramaudt BM, Zhang Q, Nandrot EF, Inglehearn CF, B
hattacharya SS, Pierce EA. Three gene-targeted mouse models of RNA splicing fact
or RP show late-onset RPE and retinal degeneration. Investigative Ophthalmology
& Visual Science. 2011;52:190-8)。PRPF31変異の無症候性の保因者からのデー
タに基づいて、本発明者らは、処理されたRPE細胞におけるPRPF31レベルの控え
めの増大でさえ治療効果があるであろうと予想する(Rio FT, Wade NM, Ransijn A, Bers
on EL, Beckmann JS, Rivolta C. Premature termination codons in PRPF31 cause reti
nitis pigmentosa via haploinsufficiency due to nonsense-mediated mRNA decay. Jou
rnal Clinical Investigation. 2008;118:1519-31;Vithana EN, Abu-Safieh L, Pelosin
i L, Winchester E, Hornan D, Bird AC, Hunt DM, Bustin SA, Bhattacharya SS. Expre
ssion of PRPF31 mRNA in patients with autosomal dominant retinitis pigmentosa: a
molecular clue for incomplete penetrance? Investigative Ophthalmology & Visual
Science. 2003;44:4204-9)。
【実施例5】
【0081】
培養されたRPE細胞における欠損食作用表現型を改良するためのAAVにより媒介され
る遺伝子増強療法
上で記載したように、PRPF31における変異は、ハプロ不全により疾患を引き起こ
し、したがって優性のRPのこの形態は、遺伝子増強療法を用いる処置を受けやすいとい
う十分な証拠がある(Wang et al., American Journal Medical Genetics A. 2003;121A:
235-9;Xia et al., Molecular Vision. 2004;10:361-5;Abu-Safieh et al., MolVis. 2
006;12:384-8;Rivolta et al., Human Mutation. 2006;27:644-53;Sullivan et al., I
nvestigative Ophthalmology & Visual Science. 2006;47:4579-88;Rio et al., Human
Mutation. 2009;30:1340-7)。この仮説と矛盾することなく、野生型対立遺伝子由来のP
RPF31の発現のレベルは、PRPF31における変異を有する患者における疾患の重
症度と相関する(Rio et al., Journal Clinical Investigation. 2008;118:1519-31;Ve
nturini et al., PLoS genetics. 2012;8:e1003040;Rose et al., Scientific reports.
2016;6:19450)。この仮説を試験するために、本発明者らは、AAVにより媒介される
遺伝子増強療法を使用して、培養されたRPE細胞における表現型を改良した。
【0082】
これらの検討のために、本発明者らは、AAV.CASI.PRPF31ウイルスのベ
クターを生成し、これが、培養された細胞中で全長PRPF31タンパク質を産生できる
ことを示した。このベクターの配列は以下の通りである。
【0083】
【0084】
【化1-2】
ITR-pZac2.1逆位末端反復- nts1~130および3291~3420
プロモーター-CASI nts197~1252
タグ-V5 nts1259~1309
挿入-PRPF31 nts1319~2818
ポリA配列-ウサギβ-グロビン nts2825~3211
【0085】
本発明者らは、次に、ゲノム編集されたPRFP31-欠損ARPE-19細胞におけ
る欠損食作用表現型を修正するAAV.CASI.PRPF31の能力を試験した。これ
らの実験のために、ゲノム編集されたPRPF31変異体(GE31)ARPE-19細
胞に、AAV.CASI.PRPF31を0、10,000、および15,000の感染
多重度(MOI)で形質導入した。形質導入に続いて、各複製を、1×10
6個のFIT
C標識された光受容体外側セグメント(FITC-POS)と1時間37℃でインキュベ
ートした。FITC-POS取り込みは、フローサイトメトリーを使用してFITC陽性
細胞を計数することにより決定した。GE31変異体細胞系列の処置の結果、用量依存性
の様式でFITC-POS取り込みが増大した(
図7)。この結果により、遺伝子増強療
法がPRPF31-関連する網膜の変性を処置するために使用される可能性が確認される
。
【0086】
他の実施形態
本発明をそれらの詳細な説明と関連して説明したが、前述の説明は、例示することが意図され、本発明の範囲を限定することは意図されず、本発明は、添付の請求項の範囲によって定義されることが理解されるべきである。他の態様、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
また、本発明は、以下の態様を含み得る。
[1]
ヒト対象において、PRPF31における変異により引き起こされる網膜色素変性を処置する方法であって、網膜色素上皮(RPE)細胞における発現を駆動するプロモーターと作動可能に連結した、ヒトPRPF31をコードする配列を含む治療的有効量のアデノ随伴ウイルスタイプ2(AAV2)ベクターを前記対象の眼に送達することを含む方法。
[2]
前記プロモーターが、CAG、CASI、RPE65またはVMD2プロモーターである、[1]に記載の方法。
[3]
前記PRPF31配列がコドン最適化されている、[2]に記載の方法。
[4]
前記ベクターが網膜下注射により送達される、[1]~[3]に記載の方法。
[5]
ヒト対象の眼においてPRPF31の発現を増大させる方法であって、網膜色素上皮(RPE)細胞における発現を駆動するプロモーターと作動可能に連結した、ヒトPRPF31をコードする配列を含む治療的有効量のアデノ随伴ウイルスタイプ2(AAV2)ベクターを前記対象の眼に送達することを含む方法。
[6]
前記プロモーターがCAG、CASI、RPE65またはVMD2プロモーターである、[5]に記載の方法。
[7]
前記PRPF31配列がコドン最適化されている、[5]に記載の方法。
[8]
前記ベクターが網膜下注射により送達される、[5]~[7]に記載の方法。
[9]
網膜色素上皮(RPE)細胞における発現を駆動するプロモーターに作動可能に連結した、ヒトPRPF31をコードする配列を含むアデノ随伴ウイルスタイプ2(AAV2)ベクター。
[10]
前記プロモーターがCAG、CASI、RPE65またはVMD2プロモーターである、[9]に記載のベクター。
[11]
前記PRPF31配列がコドン最適化されている、[9]に記載のベクター。
[12]
網膜下注射による送達のために製剤化された、[9]~[11]に記載のベクターを含む医薬組成物。
[13]
ヒト対象の眼において、PRPF31における変異により引き起こされる網膜色素変性の処置に使用するための、[9]~[11]に記載のベクター。
[14]
ヒト対象の眼において、PRPF31の発現を増大させることに使用するための、[9]~[11]に記載のベクター。
[15]
ヒト対象の眼において、PRPF31における変異により引き起こされる網膜色素変性の処置に使用するための、[12]に記載の医薬組成物。
[16]
ヒト対象の眼において、PRPF31の発現を増大させることに使用するための、[12]に記載の医薬組成物。
【配列表】