(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】光学活性な架橋型環状2級アミン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 519/00 20060101AFI20230307BHJP
A61K 31/4365 20060101ALI20230307BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230307BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230307BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C07D519/00 301
C07D519/00 CSP
A61K31/4365
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2020511076
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019013941
(87)【国際公開番号】W WO2019189732
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2018067187
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】上岡 正児
(72)【発明者】
【氏名】島田 尚明
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 亘
(72)【発明者】
【氏名】坂 仁志
(72)【発明者】
【氏名】横山 明彦
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/112768(WO,A1)
【文献】特表2016-512514(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106831787(CN,A)
【文献】国際公開第2018/050686(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/050684(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/024602(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/207387(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式中、
pは、1又は2を表し、
R
1は、-CF
3、-CHF
2又はシアノを表し、
R
2a、R
2b、R
3a、及びR
3bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-10シクロアルキル、-OR
4、3~10員の飽和複素環基、C
6-10アリール、又は5~12員のヘテロアリール(該アルキルは、1~3個のフッ素原子で置換されていてもよく;該シクロアルキル及び該飽和複素環基は、それぞれ独立して、フッ素原子及びC
1-3アルキルからなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよく;該アリール及び該ヘテロアリールは、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びC
1-3アルキルからなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し、ここにおいて、R
2a及びR
2bは、一緒になって=Oを形成していてもよく、R
3a及びR
3bは、一緒になって=Oを形成していてもよく、
R
4は、複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-10シクロアルキル、3~10員の飽和複素環基、C
6-10アリール又は5~12員のヘテロアリール(該アルキルは、C
3-10シクロアルキル、3~10員の飽和複素環基、C
6-10アリール及び5~12員のヘテロアリールからなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよく;該シクロアルキル及び該飽和複素環基は、それぞれ独立して、フッ素原子及びC
1-3アルキルからなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよく;該アリール及び該ヘテロアリールは、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びC
1-3アルキルからなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
Xは、―C(=O)-又はC
1-6アルキレンを表す]
で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Xが、-C(=O)-であり、
R
1が、-CF
3である、
請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R
2a、R
2b、R
3a、及びR
3bが、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、C
1-6アルキル、又は-OR
4であり、ここにおいて、R
2a及びR
2bは、一緒になって=Oを形成していてもよく、R
3a及びR
3bは、一緒になって=Oを形成していてもよく、
R
4が、複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、C
2-6アルケニル、又はC
1-6アルキル(該アルキルは、C
6-10アリールで置換されていてもよい)である、
請求項1若しくは2に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項4】
式(1)が、下記式(1-A):
【化2】
[式中、
pは、1又は2であり、
R
2a及びR
2bが、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又は-OR
4であり、
R
3a及びR
3bが、それぞれ独立して、水素原子若しくはフッ素原子である、又はR
3a及びR
3bが、一緒になって=Oを形成しており、
R
4が、複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、C
2-4アルケニル、又はC
1-3アルキル(該アルキルは、フェニルで置換されてもよい)である]
である請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項5】
R
2a及びR
2bが、共に水素原子であり、
R
3a及びR
3bが、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項6】
R
3aが、水素原子であり、
R
3bが、フッ素原子である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項7】
以下の化合物から選択される、請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
{(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル}{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
[(1R,3S,4S)-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
[(3S)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン2-イル}メタノン、
[(1S,3S,4S)-5,5-ジフルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
[(1S,3S,4R,6S)-6-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
(1S,3S,4S)-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-5-オン、
[(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
[(1S,3S,4R,6R)-6-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
{(1S,3S,4R,6S)-6-[(プロピ-2-エン-1-イル)オキシ]-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル}{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
[(1S,3S,4R,6S)-6-(ベンジルオキシ)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
4-{6-[(3S)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボニル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル、
4-{6-[(1R,3S,4S)-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-カルボニル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル、
4-{6-[(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボニル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル、
4-{6-[(1S,3S,4S)-5,5-ジフルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボニル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル、
4-{6-[(1S,3S,4S)-5-オキソ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボニル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル、
[(3S)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[5-(ジフルオロメチル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、及び
[(1R,3S,4S)-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[5-(ジフルオロメチル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン。
【請求項8】
以下の化合物から選択される、請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
{(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル}{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
[(1R,3S,4S)-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
[(3S)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン2-イル}メタノン、
[(1S,3S,4S)-5,5-ジフルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
[(1S,3S,4R,6S)-6-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
(1S,3S,4S)-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-5-オン、
[(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
[(1S,3S,4R,6R)-6-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
{(1S,3S,4R,6S)-6-[(プロピ-2-エン-1-イル)オキシ]-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル}{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、及び
[(1S,3S,4R,6S)-6-(ベンジルオキシ)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン。
【請求項9】
以下の化合物から選択される、請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
{(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル}{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン、
[(1R,3S,4S)-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(、
[(3S)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン2-イル}メタノン、及び
[(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン。
【請求項10】
請求項1に記載の以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
{(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル}{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン。
【請求項11】
請求項1に記載の以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
[(1R,3S,4S)-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン。
【請求項12】
請求項1に記載の以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
[(3S)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン2-イル}メタノン。
【請求項13】
請求項1に記載の以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
[(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する、抗腫瘍剤。
【請求項16】
腫瘍が、急性白血病(MLL急性白血病、MLL部分縦列重複急性白血病、NPM変異急性白血病、MOZ急性白血病、NUP98急性白血病、CALM急性白血病を含む)、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、真性多血症、悪性リンパ腫(B細胞性リンパ腫を含む)、骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)、脳腫瘍、頭頸部がん、食道がん、甲状腺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、胃がん、胆のう・胆管がん、肝がん、肝細胞がん、膵がん、結腸がん、直腸がん、肛門がん、絨毛上皮がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、尿路上皮がん、腎がん、腎細胞がん、前立腺がん、睾丸腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、ウイルムス腫瘍、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉種、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、軟部肉腫、又は皮膚がんである、請求項15に記載の抗腫瘍剤。
【請求項17】
腫瘍が、急性白血病(MLL急性白血病、MLL部分縦列重複急性白血病、NPM変異急性白血病、MOZ急性白血病、NUP98急性白血病、CALM急性白血病を含む)、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫(B細胞性リンパ腫を含む)、骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)、脳腫瘍、前立腺がん、乳がん、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、又は肝がんである、請求項15又は16に記載の抗腫瘍剤。
【請求項18】
腫瘍が、MLL急性白血病、MLL部分縦列重複急性白血病、NPM変異急性白血病、MOZ急性白血病、NUP98急性白血病、CALM急性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞性リンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、又は前立腺がんである、請求項15~17のいずれか一項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項19】
腫瘍が、MLL急性白血病、又はNPM変異急性白血病である、請求項15~18のいずれか一項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項20】
腫瘍が、HOXa遺伝子群、又はMEIS遺伝子群の高発現を伴う腫瘍である、請求項15~19のいずれか一項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項21】
腫瘍が、p53機能獲得型変異を伴う腫瘍である、請求項15~20のいずれか一項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項22】
抗腫瘍剤を製造するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【請求項23】
腫瘍の治療に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項24】
他の薬剤又はその製薬学的に許容される塩と組み合わせてなる、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含む医薬組成物であって、当該他の薬剤が、抗がん性アルキル化剤、抗がん性代謝拮抗剤、抗がん性抗生物質、植物由来抗がん剤、抗がん性白金配位化合物、抗がん性カンプトテシン誘導体、抗がん性チロシンキナーゼ阻害剤、抗がん性セリンスレオニンキナーゼ阻害剤、抗がん性リン脂質キナーゼ阻害剤、抗がん性モノクローナル抗体、インターフェロン、生物学的応答調節剤、ホルモン製剤、血管新生阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、エピジェネティクス関連分子阻害剤、タンパク質翻訳後修飾阻害剤、プロテアソーム阻害剤、及びその他抗がん剤からなる群から選択される少なくとも1種以上である、医薬組成物。
【請求項25】
他の薬剤又はその製薬学的に許容される塩と併用して、腫瘍を治療するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩であって、当該他の薬剤が、抗がん性アルキル化剤、抗がん性代謝拮抗剤、抗がん性抗生物質、植物由来抗がん剤、抗がん性白金配位化合物、抗がん性カンプトテシン誘導体、抗がん性チロシンキナーゼ阻害剤、抗がん性セリンスレオニンキナーゼ阻害剤、抗がん性リン脂質キナーゼ阻害剤、抗がん性モノクローナル抗体、インターフェロン、生物学的応答調節剤、ホルモン製剤、血管新生阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、エピジェネティクス関連分子阻害剤、タンパク質翻訳後修飾阻害剤、プロテアソーム阻害剤、及びその他抗腫瘍剤からなる群から選択される少なくとも1種以上である、化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として有用なチエノピリジンを有する光学活性な架橋型環状2級アミン誘導体及びその製薬学的に許容される塩並びにこれらを含有する医薬組成物、又はこれら組成物を含有するmenin-MLLが関与する病態の治療剤若しくは再発予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
MLL白血病は、急性骨髄性白血病(AML)及び急性リンパ性白血病(ALL)の約6-7%を占める疾患であり、アメリカでは年間約1100人が新たにMLL白血病と診断されている。MLL白血病を引き起こす主な融合パートナー遺伝子は、AMLではAF9、ELL、ENL、AF10、及びAF6などが多く、ALLではAF4、ENL、及びAF9が多いことが報告されている(非特許文献1)。
【0003】
このようにして融合パートナー遺伝子と融合したMLL融合タンパクは、未分化な造血細胞の無制限な増殖を引き起こし、白血病を引き起こすと推察されている(非特許文献2)。MLL融合タンパクは、まず始めにmeninと結合し、複合体を形成することが報告されている。したがって、最初のステップであるMLL融合タンパクとmeninの結合を阻害することで、MLL融合タンパクに起因するがん化を防ぐことが期待される(非特許文献3)。
【0004】
前立腺がんにおいては、MLLがアンドロゲンシグナルの活性化補助因子として働くことが報告されている。そのため、menin-MLLを標的とした低分子阻害剤は、当該がんに対する治療剤として有用であることが期待されている(非特許文献4)。
乳癌においては、meninがエストロゲンシグナルの活性化補助因子として働くことが報告されている。そのため、menin-MLLを標的とした低分子阻害剤は、当該がんに対する治療剤として有用であることが期待されている(非特許文献5)。
ユーイング肉腫や肝癌、p53機能獲得型変異癌においては、meninあるいはMLLが腫瘍増殖に重要ということが報告されており、menin-MLLを標的とした低分子阻害剤は、当該がんに対する治療剤として有用であることが期待されている(非特許文献6,7,8)。
【0005】
これまでに、menin-MLLを標的とした低分子阻害剤としては、特許文献1~16及び非特許文献9~12が開示されている。しかしながら、チエノピリジンを有する光学活性な架橋型環状2級アミン誘導体である後述式(1)で表される本発明の化合物は、これらに何ら開示及び示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2011/129054号
【文献】国際公開第2014/164543号
【文献】米国特許出願公開第2014/0371239号
【文献】国際公開第2016/040330号
【文献】国際公開第2016/195776号
【文献】国際公開第2016/197027号
【文献】国際公開第2017/161002号
【文献】国際公開第2017/161028号
【文献】国際公開第2017/112768号
【文献】国際公開第2017/207387号
【文献】国際公開第2017/192543号
【文献】国際公開第2017/214367号
【文献】国際公開第2018/024602号
【文献】国際公開第2018/050684号
【文献】国際公開第2018/050686号
【文献】国際公開第2018/053267号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Look A. T, Science, 278 (5340): 1059-1064 (1997)
【文献】Yokoyama A, et al., Cell 123 (2): 207-18 (2005)
【文献】Yokoyama, A et al., Cancer Cell. 14(1): 34-46 (2008)
【文献】Malik, R. et al., Nature Medicine. 21(4):344-352 (2015)
【文献】Imacho, H et al., Breast Cancer Res Treat. 122(2):395-407 (2010)
【文献】Svoboda, L. K. et al., Oncotargrt. 8(1):458-471 (2017)
【文献】Svoboda, L. K. et al., Proc Natl Acad Sci USA. 110(43):17480-17485 (2013)
【文献】Zhu, J. et al., Nature. 525(7568):206-211 (2015)
【文献】Grembecka, J. et al., Nature Chemical Biology. 8: 277-284 (2012)
【文献】Borkin, D. et al., Cancer Cell. 27 (1): 1-14 (2015)
【文献】Borkin, D. et al., J. Med. Chem. 59: 892-913 (2016)
【文献】Shilin, X. et al., Angew. Chem. Int. Ed. 57: 1601-1605 (2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、MLL白血病を引き起こす代表的な融合パートナー遺伝子であるAF4、AF9等が融合したMLL融合タンパクとmeninの結合を阻害することにより抗腫瘍作用を発揮する化合物を提供することである。より好ましくは、menin-MLL結合を阻害することにより抗腫瘍作用を発揮し、薬物動態に優れた化合物を提供することである。すなわち、治療効果の高い抗腫瘍剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記式(1)で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩(以下、「本発明の化合物」と称することもある。)が、menin-MLL結合に対して高い阻害作用を有することにより、優れた抗腫瘍作用を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0011】
〔項1〕
式(1):
【化1】
[式中、
pは、1又は2を表し、
R
1は、-CF
3、-CHF
2又はシアノを表し、
R
2a、R
2b、R
3a、及びR
3bは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-10シクロアルキル、-OR
4、3~10員の飽和複素環基、C
6-10アリール、又は5~12員のヘテロアリール(該アルキルは、1~3個のフッ素原子で置換されていてもよく;該シクロアルキル及び該飽和複素環基は、それぞれ独立して、フッ素原子及びC
1-3アルキルからなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよく;該アリール及び該ヘテロアリールは、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びC
1-3アルキルからなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し、ここにおいて、R
2a及びR
2bは、一緒になって=Oを形成していてもよく、R
3a及びR
3bは、一緒になって=Oを形成していてもよく、
R
4は、複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
3-10シクロアルキル、3~10員の飽和複素環基、C
6-10アリール又は5~12員のヘテロアリール(該アルキルは、C
3-10シクロアルキル、3~10員の飽和複素環基、C
6-10アリール及び5~12員のヘテロアリールからなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよく;該シクロアルキル及び該飽和複素環基は、それぞれ独立して、フッ素原子及びC
1-3アルキルからなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよく;該アリール及び該ヘテロアリールは、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びC
1-3アルキルからなる群から選択される同一又は異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
Xは、―C(=O)-又はC
1-6アルキレンを表す]
で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0012】
〔項2〕
Xが、-C(=O)-であり、
R1が、-CF3である、
項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0013】
〔項3〕
R2a、R2b、R3a、及びR3bが、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、C1-6アルキル、又は-OR4であり、ここにおいて、R2a及びR2bは、一緒になって=Oを形成していてもよく、R3a及びR3bは、一緒になって=Oを形成していてもよく、
R4が、複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、C2-6アルケニル、又はC1-6アルキル(該アルキルは、C6-10アリールで置換されていてもよい)である、
項1若しくは項2に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0014】
〔項4〕
式(1)が、下記式(1-A):
【化2】
[式中、
pは、1又は2であり、
R
2a及びR
2bが、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又は-OR
4であり、
R
3a及びR
3bが、それぞれ独立して、水素原子若しくはフッ素原子である、又はR
3a及びR
3bが、一緒になって=Oを形成しており、
R
4が、複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、C
2-4アルケニル、又はC
1-3アルキル(該アルキルは、フェニルで置換されてもよい)である]
である項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0015】
〔項5〕
R2a及びR2bが、共に水素原子であり、
R3a及びR3bが、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子である、
項1~4のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0016】
〔項6〕
R3aが、水素原子であり、
R3bが、フッ素原子である、
項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0017】
〔項7〕
以下の化合物から選択される、項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
{(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル}{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例1)、
[(1R,3S,4S)-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例2)、
[(3S)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン2-イル}メタノン(実施例3)、
[(1S,3S,4S)-5,5-ジフルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例4)、
[(1S,3S,4R,6S)-6-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例6)、
(1S,3S,4S)-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-5-オン(実施例8)、
[(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例9)、
[(1S,3S,4R,6R)-6-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例10)、
{(1S,3S,4R,6S)-6-[(プロピ-2-エン-1-イル)オキシ]-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル}{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例11)、
[(1S,3S,4R,6S)-6-(ベンジルオキシ)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例13)、
4-{6-[(3S)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボニル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(実施例20)、
4-{6-[(1R,3S,4S)-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-カルボニル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(実施例21)、
4-{6-[(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボニル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(実施例22)、
4-{6-[(1S,3S,4S)-5,5-ジフルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボニル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(実施例23)、
4-{6-[(1S,3S,4S)-5-オキソ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボニル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(実施例25)、
[(3S)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[5-(ジフルオロメチル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例26)、及び
[(1R,3S,4S)-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[5-(ジフルオロメチル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例27)。
【0018】
〔項8〕
以下の化合物から選択される、項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
{(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル}{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例1)、
[(1R,3S,4S)-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例2)、
[(3S)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン2-イル}メタノン(実施例3)、
[(1S,3S,4S)-5,5-ジフルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例4)、
[(1S,3S,4R,6S)-6-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例6)、
(1S,3S,4S)-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-5-オン(実施例8)、
[(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例9)、
[(1S,3S,4R,6R)-6-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例10)、
{(1S,3S,4R,6S)-6-[(プロピ-2-エン-1-イル)オキシ]-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル}{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例11)、及び
[(1S,3S,4R,6S)-6-(ベンジルオキシ)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例13)。
【0019】
〔項9〕
以下の化合物から選択される、項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
{(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル}{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例1)、
[(1R,3S,4S)-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例2)、
[(3S)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン2-イル}メタノン(実施例3)、及び
[(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例9)。
【0020】
〔項10〕
項1に記載の以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
{(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル}{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例1)。
【0021】
〔項11〕
項1に記載の以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
[(1R,3S,4S)-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例2)。
【0022】
〔項12〕
項1に記載の以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
[(3S)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン2-イル}メタノン(実施例3)。
【0023】
〔項13〕
項1に記載の以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩:
[(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-イル]{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン(実施例9)。
【0024】
〔項14〕
項1~項13のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【0025】
〔項15〕
項1~項13のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する、抗腫瘍剤。
【0026】
〔項16〕
腫瘍が、急性白血病(MLL急性白血病、MLL部分縦列重複急性白血病、NPM変異急性白血病、MOZ急性白血病、NUP98急性白血病、CALM急性白血病を含む)、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、真性多血症、悪性リンパ腫(B細胞性リンパ腫を含む)、骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)、脳腫瘍、頭頸部がん、食道がん、甲状腺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、胃がん、胆のう・胆管がん、肝がん、肝細胞がん、膵がん、結腸がん、直腸がん、肛門がん、絨毛上皮がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、尿路上皮がん、腎がん、腎細胞がん、前立腺がん、睾丸腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、ウイルムス腫瘍、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉種、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、軟部肉腫、又は皮膚がんである、項15に記載の抗腫瘍剤。
【0027】
〔項17〕
腫瘍が、急性白血病(MLL急性白血病、MLL部分縦列重複急性白血病、NPM変異急性白血病、MOZ急性白血病、NUP98急性白血病、CALM急性白血病を含む)、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫(B細胞性リンパ腫を含む)、骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)、脳腫瘍、前立腺がん、乳がん、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、又は肝がんである、項15又は16に記載の抗腫瘍剤。
【0028】
〔項18〕
腫瘍が、MLL急性白血病、MLL部分縦列重複急性白血病、NPM変異急性白血病、MOZ急性白血病、NUP98急性白血病、CALM急性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞性リンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、又は前立腺がんである、項15~17のいずれか一項に記載の抗腫瘍剤。
【0029】
〔項19〕
腫瘍が、MLL急性白血病、又はNPM変異急性白血病である、項15~18のいずれか一項に記載の抗腫瘍剤。
【0030】
〔項20〕
腫瘍が、HOXa遺伝子群、又はMEIS遺伝子群の高発現を伴う腫瘍である、項15~19のいずれか一項に記載の抗腫瘍剤。
【0031】
〔項21〕
腫瘍が、p53機能獲得型変異を伴う腫瘍である、項15~20のいずれか一項に記載の抗腫瘍剤。
【0032】
〔項22〕
治療が必要な患者に、項1~項13のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を投与することを含む、腫瘍の治療方法。
【0033】
〔項23〕
腫瘍が、Menin-MLLが関与する腫瘍である、項22に記載の方法。
【0034】
〔項24〕
抗腫瘍剤を製造するための、項1~項13のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0035】
〔項25〕
腫瘍の治療に使用するための、項1~項13のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0036】
〔項26〕
他の薬剤又はその製薬学的に許容される塩と組み合わせてなる、項1~項13のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含む医薬組成物であって、当該他の薬剤が、抗がん性アルキル化剤、抗がん性代謝拮抗剤、抗がん性抗生物質、植物由来抗がん剤、抗がん性白金配位化合物、抗がん性カンプトテシン誘導体、抗がん性チロシンキナーゼ阻害剤、抗がん性セリンスレオニンキナーゼ阻害剤、抗がん性リン脂質キナーゼ阻害剤、抗がん性モノクローナル抗体、インターフェロン、生物学的応答調節剤、ホルモン製剤、血管新生阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、エピジェネティクス関連分子阻害剤、タンパク質翻訳後修飾阻害剤、プロテアソーム阻害剤、及びその他抗がん剤からなる群から選択される少なくとも1種以上である、医薬組成物。
【0037】
〔項27〕
他の薬剤又はその製薬学的に許容される塩と併用して、腫瘍を治療するための、項1~13のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩であって、当該他の薬剤が、抗がん性アルキル化剤、抗がん性代謝拮抗剤、抗がん性抗生物質、植物由来抗がん剤、抗がん性白金配位化合物、抗がん性カンプトテシン誘導体、抗がん性チロシンキナーゼ阻害剤、抗がん性セリンスレオニンキナーゼ阻害剤、抗がん性リン脂質キナーゼ阻害剤、抗がん性モノクローナル抗体、インターフェロン、生物学的応答調節剤、ホルモン製剤、血管新生阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、エピジェネティクス関連分子阻害剤、タンパク質翻訳後修飾阻害剤、プロテアソーム阻害剤、及びその他抗腫瘍剤からなる群から選択される少なくとも1種以上である、化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【発明の効果】
【0038】
本発明により、光学活性な架橋型環状2級アミン誘導体又はそれらの製薬学的に許容される塩を含む、meninとMLL融合タンパクとの結合阻害剤が提供される。本発明の化合物は、meninとMLLとの結合が関与する疾患に対する治療薬として有用であり、具体的には、MLL急性白血病、NPM変異急性白血病、前立腺がん、乳がん、ユーイング肉腫、肝がん、p53機能獲得型変異がん等の患者に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書における用語について、以下に説明する。
【0040】
「ハロゲン原子」とは、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。好ましくはフッ素原子である。置換基としてのフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子は、それぞれフルオロ基、クロロ基、ブロモ基又はヨード基を意味する。
【0041】
「C1-6アルキル」とは、炭素原子数が1~6のアルキルを意味し、「C6アルキル」とは、炭素原子数が6のアルキルを意味する。他の数字の場合も同様である。
【0042】
「C1-6アルキル」とは、炭素原子数が1~6の直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味する。C1-6アルキルとして、好ましくは「C1-4アルキル」が挙げられ、より好ましくは「C1-3アルキル」が挙げられる。「C1-3アルキル」の具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル等が挙げられる。「C1-4アルキル」の具体例としては、例えば、前記「C1-3アルキル」の具体例として挙げたものに加え、ブチル、1、1-ジメチルエチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル等が挙げられる。「C1-6アルキル」の具体例としては、例えば、前記「C1-4アルキル」の具体例として挙げたものに加え、ペンチル、1、1-ジメチルプロピル、1、2-ジメチルプロピル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-メチルペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0043】
「C2-6アルケニル」とは、炭素原子数2~6個を有し、1~3個の二重結合を含む直鎖状又は分枝鎖状の不飽和炭化水素基を意味する。「C2-6アルケニル」として好ましくは、「C2-4アルケニル」が挙げられる。「C2-4アルケニル」の具体例として、例えば、ビニル、プロペニル、メチルプロペニル、ブテニル等が挙げられる。「C2-6アルケニル」の具体例として、例えば、前記「C2-4アルケニル」の具体例として挙げたものに加え、ペンテニル、ヘキセニル等が挙げられる。
【0044】
「C2-6アルキニル」とは、炭素原子数2~6個を有し、三重結合を1個含む直鎖状又は分枝鎖状の不飽和炭化水素基を意味する。「C2-6アルキニル」として、好ましくは「C2-4アルキニル」が挙げられる。「C2-4アルキニル」の具体例としては、例えば、プロピニル、メチルプロピニル、ブチニル等が挙げられる。「C2-6アルキニル」の具体例として、例えば、前記「C2-4アルキニル」の具体例として挙げたものに加え、メチルブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等が挙げられる。
【0045】
「C1-6アルキレン」とは、炭素原子数1~6個を有し、直鎖状又は分枝鎖状の結合価数が2価の飽和炭化水素基を意味する。「C1-6アルキレン」として、好ましくは「C1-3アルキレン」が挙げられる。「C1-3アルキレン」の具体例としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、又は1-メチルエチレン等が挙げられる。
【0046】
「C
3-10シクロアルキル」とは、炭素原子数3~10の環状の飽和炭化水素基を意味し、一部不飽和結合を有するもの及び架橋された構造のものも含まれる。「C
3-10シクロアルキル」として、好ましくは「C
3-7シクロアルキル」が挙げられる。「C
3-7シクロアルキル」の具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられる。「C
3-10シクロアルキル」の具体例としては、例えば、前記「C
3-7シクロアルキル」の具体例として挙げたものに加え、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル等が挙げられる。
また、「C
3-10シクロアルキル」には、芳香族炭化水素環と縮環した化合物も包含される。当該縮環した化合物の具体例としては、例えば、下記で表される構造等が挙げられる。
【化3】
【0047】
「3~10員の飽和複素環基」とは、炭素原子以外に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から独立して選択される1~2個の原子を含む、3~10個の原子で構成される飽和複素環の環状基を意味し、一部不飽和結合を有するもの及び架橋された構造のものも含まれる。「3~10員の飽和複素環基」として、好ましくは、「4~7員の単環式の飽和複素環基」であり、より好ましくは、「5員又は6員の単環式の飽和複素環基」が挙げられる。「5員又は6員の単環式の飽和複素環基」の具体例としては、例えば、テトラヒドロフリル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジオキソチオモルホリニル、ヘキサメチレンイミニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、オキソイミダゾリジニル、ジオキソイミダゾリジニル、オキソオキサゾリジニル、ジオキソオキサゾリジニル、ジオキソチアゾリジニル、テトラヒドロフラニルテトラヒドロピラニル等が挙げられる。「4~7員の単環式の飽和複素環基」としては、例えば、前記「5員又は6員の単環式の飽和複素環基」の具体例として挙げたものに加え、オキセタニル、アゼチジン等が挙げられる。「3~10員の飽和複素環基」としては、例えば、前記「4~7員の単環式の飽和複素環」の具体例として挙げたものに加え、エポキシ、アジリジン等が挙げられる。
また、「3~10員の飽和複素環基」には、6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環と縮合環を形成した二環式の環状基も含まれる。縮合環を形成している6員の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環等が挙げられる。縮合環を形成している6員の芳香族複素環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環等が挙げられる。縮合環を形成している二環式の「3~10員の飽和複素環基」の具体例としては、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロプリニル、ジヒドロチアゾロピリミジニル、ジヒドロベンゾジオキサニル、イソインドリル、インダゾリル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロナフチリジニル等が挙げられる。
【0048】
「C
6-10アリール」は、炭素原子数が6~10の芳香族炭化水素環基を意味する。「C
6-10アリール」の具体例としては、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル等が挙げられる。好ましくは、フェニルが挙げられる。
また、「C
6-10アリール」には、C
4-6シクロアルキル又は5若しくは6員の飽和複素環と縮合環を形成した二環式の炭化水素環基も含まれる。縮合環を形成している二環式の「C
6-10アリール」具体例としては、例えば、下記で表される基等が挙げられる。
【化4】
【0049】
「芳香族炭化水素環」とは、上記「C6-10アリール」の環部分を意味する。
【0050】
「5~12員のヘテロアリール」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から独立して選択される1~4個の原子を含む、単環式の5~7員の芳香族複素環の環状基、又は二環式の8~12員の芳香族複素環の環状基を意味する。好ましくは、「5~7員の単環式のヘテロアリール」である。より好ましくは、ピリジル、ピリミジニル、キノリル、又はイソキノリルである。さらに好ましくは、ピリジルである。「5~7員の単環式のヘテロアリール」の具体例としては、例えば、ピリジル、ピリダジニル、イソチアゾリル、ピロリル、フリル、チエニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピリミジニル、チアジアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、等が挙げられる。「5~12員のヘテロアリール」の具体例としては、前記「5~7員の単環式のヘテロアリール」の具体例として挙げたものに加え、インドリル、インダゾリル、クロメニル、キノリル、イソキノリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル等が挙げられる。
【0051】
「芳香族複素環」とは、上記「5~12員のヘテロアリール」の環部分を意味する。
【0052】
「がん」及び「腫瘍」は、本発明においては同義で、共に悪性腫瘍を意味し、癌、肉腫及び血液悪性腫瘍を包含する。「がん」又は「腫瘍」の具体例としては、例えば、急性白血病(MLL急性白血病、MLL部分縦列重複急性白血病、NPM変異急性白血病、MOZ急性白血病、NUP98急性白血病、CALM急性白血病を含む)、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、真性多血症、悪性リンパ腫(B細胞性リンパ腫を含む)、骨髄腫(多発性骨髄腫を含む)、脳腫瘍、頭頸部がん、食道がん、甲状腺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、胃がん、胆のう・胆管がん、肝がん、肝細胞がん、膵がん、結腸がん、直腸がん、肛門がん、絨毛上皮がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、膀胱がん、尿路上皮がん、腎がん、腎細胞がん、前立腺がん、睾丸腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、ウイルムス腫瘍、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉種、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、軟部肉腫、皮膚がん等が挙げられる。また、上記の腫瘍は、特定の遺伝子の発現上昇、あるいは変異を伴うこともある。遺伝子発現上昇を伴う腫瘍としては、例えば、HOXa遺伝子群の高発現を伴う腫瘍、MEIS遺伝子群の高発現を伴う腫瘍等が挙げられる。また、遺伝子変異を伴う腫瘍としては、p53機能獲得型変異を伴う腫瘍等が挙げられる。
【0053】
本明細書において、「抗腫瘍剤」とは、抗腫瘍作用を有する治療剤、及び再発予防剤を包含する。抗腫瘍剤は、腫瘍細胞を死滅させること、腫瘍細胞の増殖を抑えること、腫瘍の転移や再発を抑えることを目的に使用される。治療剤は腫瘍を発症した患者に対して治療を行うために用いられる薬剤を意味し、再発予防剤は腫瘍が寛解した後の患者に対して腫瘍の再発を防ぐために用いられる薬剤を意味する。
【0054】
式(1)で表される本発明の化合物において、p、R1、R2a、R2b、R3a、R3b、R4及びXの好ましいものは以下のとおりであるが、本発明の技術的範囲は下記に挙げる化合物の範囲に限定されるものではない。
【0055】
pの1つの態様としては、1が挙げられる。また、pの1つの態様としては、2が挙げられる。
【0056】
R1として、好ましくは-CF3である。
【0057】
R2aとして、好ましくは水素原子、フッ素原子、C1-6アルキル、又は-OR4が挙げられ、より好ましくは水素原子、フッ素原子、又は-OR4が挙げられる。さらに好ましくは水素原子である。
【0058】
R2bとして、好ましくは水素原子、フッ素原子、C1-6アルキル、又は-OR4が挙げられ、より好ましくは水素原子、フッ素原子、又は-OR4が挙げられる。さらに好ましくは水素原子である。
【0059】
R3aとして、好ましくは水素原子若しくはフッ素原子、又はR3bと一緒になって=Oを形成する態様が挙げられる。より好ましくは水素原子又はフッ素原子が挙げられ、さらに好ましくは水素原子である。
【0060】
R3bとして、好ましくは水素原子若しくはフッ素原子、又はR3aと一緒になって=Oを形成する態様が挙げられる。より好ましくは水素原子又はフッ素原子が挙げられ、さらに好ましくはフッ素原子である。
【0061】
R4として、好ましくは水素原子、C6-10アリールで置換されてもよいC1-6アルキル、又はC2-6アルケニルが挙げられる。より好ましくは水素原子、フェニルで置換されてもよいC1-3アルキル、又はC2-4アルケニルが挙げられる。さらに好ましくはアリル、又はベンジルが挙げられる。R4の1つの態様としては、アリルが挙げられ、別の態様としては、ベンジルが挙げられる。
【0062】
Xとして、好ましくは―C(=O)-である。
【0063】
式(1-A)で表される本発明の化合物において、p、R2a、R2b、R3a、R3b及びR4の好ましいものは以下のとおりであるが、本発明の技術的範囲は下記に挙げる化合物の範囲に限定されるものではない。
【0064】
pの1つの態様としては、1が挙げられる。また、pの1つの態様としては、2が挙げられる。
【0065】
R2aとして、好ましくは水素原子、又はフッ素原子が挙げられ、より好ましくは水素原子である。
【0066】
R2bとして、好ましくは水素原子、又はフッ素原子が挙げられ、より好ましくは水素原子である。
【0067】
R3aとして、好ましくは水素原子又はフッ素原子が挙げられ、より好ましくは水素原子である。R3aの1つの態様としては、水素原子が挙げられ、別の態様としてはフッ素原子が挙げられる。
【0068】
R3bとして、好ましくは水素原子又はフッ素原子が挙げられ、より好ましくはフッ素原子である。R3bの1つの態様としては、水素原子が挙げられ、別の態様としてはフッ素原子が挙げられる。
【0069】
R4として、好ましくは水素原子、フェニルで置換されてもよいC1-3アルキル、又はC2-4アルケニルが挙げられる。さらに好ましくはアリル、又はベンジルが挙げられる。R4の1つの態様としては、アリルが挙げられ、別の態様としては、ベンジルが挙げられる。
【0070】
R2a、R2b、R3a及びR3bの1つの態様としては、R2a、R2b及びR3aが全て水素原子であり、R3bがフッ素原子である場合が挙げられ、別の態様としては、R2a、R2b及びR3bが全て水素原子であり、R3aがフッ素原子である場合が挙げられ、また別の態様としては、R2a及びR2bが共に水素原子であり、R3a及びR3bが共にフッ素原子である場合が挙げられる。
【0071】
式(1)で表される本発明の化合物の1つの態様としては、以下の(A)が挙げられる。
(A)
pは、1又は2であり、
R1が、-CF3であり、
R2a及びR2bが、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又は-OR4であり、
R3a及びR3bが、それぞれ独立して、水素原子若しくはフッ素原子である、又はR3a及びR3bが、一緒になって=Oを形成してもよく、
R4が、複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、C2-4アルケニル、又はフェニルで置換されてもよいC1-3アルキルであり、
Xが、―C(=O)-である、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0072】
式(1)で表される本発明の化合物の1つの態様としては、以下の(B)が挙げられる。
(B)
pは、1又は2であり、
R1が、-CF3であり、
R2a及びR2bが、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又は-OR4であり、
R3a及びR3bが、それぞれ独立して、水素原子若しくはフッ素原子である、又はR3a及びR3bが、一緒になって=Oを形成してもよく、
R4が、複数ある場合はそれぞれ独立して、アリル、又はベンジルであり、
Xが、―C(=O)-である、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0073】
式(1)で表される本発明の化合物の1つの態様としては、以下の(C)が挙げられる。
(C)
pは、1又は2であり、
R1が、-CF3であり、
R2a及びR2bが、共に水素原子であり、
R3a及びR3bが、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子であり、
Xが、―C(=O)-である、
化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0074】
以下に、式(1)で表される本発明の化合物の製造方法について、例を挙げて説明するが、本発明の化合物の製造法は、これらに限定されるものではない。下記の製造法で用いられる化合物は、反応に支障を来たさない限り、塩を形成していてもよい。
【0075】
本発明の化合物は、公知化合物を出発原料として、例えば以下に示す製造法若しくはそれらに準じた方法又は当業者に周知の合成方法を適宜組み合わせて製造することができる。
【0076】
製造法1
式(1)で表される本発明の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化5】
[式中、p、R
1、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びXは項1と同義であり、LG
1は脱離基を意味し、P
1はアミノの保護基を意味する。LG
1としては、例えば、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、フェノキシ、トリフルオロフェノキシ、テトラフルオロフェノキシ、ペンタフルオロフェノキシ、ニトロフェノキシ等が挙げられる。P
1としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられる。]
【0077】
[工程1]
化合物(1c)は、下記の製造法により得られる化合物(1a)と下記の製造法により得られる化合物(1b)を、適当な塩基の存在下又は非存在下、適当な溶媒中で反応させることにより製造することができる。
化合物(1b)としては、下記の製造法3により得られる化合物(3d)、製造法4により得られる化合物(4c)等を用いることができる。
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ピコリン、N-メチルモルホリン(NMM)等の有機塩基類、又は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類が挙げられる。塩基として、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が挙げられる。
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、アニソール、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;又はこれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくはテトラヒドロフラン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
反応温度は、通常、-80℃~加熱還流下であり、好ましくは25℃~90℃である。
反応時間は、通常、30分~48時間であり、好ましくは6~12時間である。
【0078】
その他の方法として、適当な金属触媒の存在下、適当な溶媒中で化合物(1a)と化合物(1b)のカップリング反応を行ってもよい。これらの反応条件としては、例えば、Ulmann型条件(例えば、DMF等の非プロトン性溶媒中、酢酸銅(II)等の金属触媒を用いて、加熱還流する方法等)、Buchwald型条件(例えば、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩等;BINAP;Pd2(dba)3、Pd(OAc)2等のパラジウム触媒;及びdppf、Xantphos等のリガンドを用いて、トルエン等の当該反応条件に不活性な溶媒中、加熱還流する方法等)等が挙げられる。
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、tert-ブタノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、アニソール、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;水;又はこれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくはテトラヒドロフラン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
反応温度は、通常、-80℃~加熱還流下であり、好ましくは25℃~90℃である。
反応時間は、通常、30分~48時間であり、好ましくは6~12時間である。
【0079】
[工程2]
化合物(1)は、化合物(1c)の保護基P1を脱保護することにより製造することができる。本工程は、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載されている方法等に準じて行うことができる。
【0080】
製造法2
化合物(1a)は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化6】
[式中、Yは水素原子又はエステル等を意味し、R
1は項1と同義であり、LG
1は製造法1の記載と同義である。]
【0081】
化合物(2a)は、国際公開第2014/164543号等に記載の方法又はそれらに準じた方法によって製造することができる。
【0082】
[工程1]
化合物(2b)は、Tetrahedron Letters, 49(48): 6850-6852 (2008)、 J. Med. Chem., 48(18): 5794-5804 (2005)、Journal of Heterocyclic Chemistry, 28(8): 1953-1955 (1991)等に記載の方法又はそれらに準じた方法によって、化合物(2a)より製造することができる。
【0083】
[工程2]
化合物(1a)は、Comprehensive Organic Transformation 2nd Edition (Larock R. C.著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1989年)等に記載の方法又はそれらに準じた方法によって化合物(2b)より製造することができる。
【0084】
製造法3
化合物(3d)は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化7】
[式中、p、R
2a、R
2b、R
3a及びR
3bは項1と同義であり、LG
2は脱離基を意味し、P
2及びP
3はアミノの保護基を意味する。LG
2としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。P
2及びP
3としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載のアミノの保護基等が挙げられる。]
【0085】
化合物(3a)は、Organic Letters, 2008, 10(16), 3525-3526等に記載の方法若しくはそれらに準じた方法によって合成可能であるか、又は市販品として入手可能である。
【0086】
化合物(3b)は、特表2007-510619号、Comprehensive Organic Transformation 2nd Edition (Larock R. C.著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1989年)等に記載の方法若しくはそれらに準じた方法によって合成可能であるか、又は市販品として入手可能である。
【0087】
[工程1]
化合物(3c)は、化合物(3a)を、適当な縮合剤及び/又は適当な塩基存在下又は非存在下で、適当な溶媒中、カルボン酸、酸クロライド等である化合物(3b)と反応させることにより製造することができる。
塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等のアミン類;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。塩基として、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン又はピリジンが挙げられる。
縮合剤としては、有機合成化学で常用される縮合剤から適宜選択されるが、好ましくは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
溶媒としては、本工程の反応条件下で反応しない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、アニソール、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系溶媒;又はそれらの混合物が挙げられる。溶媒として、好ましくはテトラヒドロフラン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
反応時間は、通常、5分~72時間であり、好ましくは30分~24時間である。
反応温度は、通常、-78℃~200℃であり、好ましくは-78℃~80℃である。
【0088】
[工程2]
化合物(3d)は、化合物(3c)の保護基P2を脱保護することにより製造することができる。本工程は、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載されている方法等に準じて行うことができる。
【0089】
製造法4
化合物(4c)は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化8】
[式中、p、R
2a、R
2b、R
3a及びR
3bは項1と同義であり、P
2及びP
3は製造法3の記載と同義である。]
【0090】
化合物(4a)は、特表2007-510619号、Comprehensive Organic Transformation 2nd Edition (Larock R. C.著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1989年)等に記載の方法又はそれらに準じた方法によって合成可能である。
【0091】
[工程1]
化合物(4b)は、J. Am. Chem. Soc., 93(12): 2897-2904 (1971)、J. Org. Chem., 37(10): 1673-1674 (1972)、J. Org. Chem., 61(11): 3849-3862 (1996)、Tetrahedron, 60: 7899-7906 (2004)等に記載の方法又はそれらに準じた方法によって、化合物(3a)と化合物(4a)により製造することができる。
【0092】
[工程2]
化合物(4c)は、化合物(4b)の保護基P2を脱保護することにより製造することができる。本工程は、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載されている方法等に準じて行うことができる。
【0093】
製造法5
式(5d)で表される本発明の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化9】
[式中、p、R
1、R
2a、R
2b、R
3a及びR
3bは項1と同義であり、LG
1は製造法2の記載と同義であり、LG
2は製造法3の記載と同義であり、P
2及びP
3は製造法3の記載と同義である。]
【0094】
[工程1]
化合物(5a)は、製造法1の工程1に記載の方法又はそれらに準じた方法により、化合物(1a)と化合物(3a)より製造することができる。
【0095】
[工程2]
化合物(5b)は、化合物(5a)の保護基P2を脱保護することにより製造することができる。本工程は、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載されている方法等に準じて行うことができる。
【0096】
[工程3]
化合物(5c)は、製造法3の工程1に記載の方法又はそれらに準じた方法により、化合物(5b)と化合物(3b)より製造することができる。
【0097】
[工程4]
化合物(5d)は、化合物(5c)の保護基P3を脱保護することにより製造することができる。本工程は、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載されている方法等に準じて行うことができる。
【0098】
製造法6
式(6b)で表される本発明の化合物は、例えば、次の方法により製造することができる。
【化10】
[式中、p、R
1、R
2a、R
2b、R
3a及びR
3bは項1と同義であり、P
3は製造法4の記載と同義である。]
【0099】
[工程1]
化合物(6a)は、製造法4の工程1に記載の方法又はそれらに準じた方法により、化合物(5b)と化合物(4a)より製造することができる。
【0100】
[工程2]
化合物(6b)は、化合物(6a)の保護基P3を脱保護することにより製造することができる。本工程は、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)に記載されている方法等に準じて行うことができる。
【0101】
上記で説明した製造法において、出発原料又は中間体の製造法を記載しなかったものは、市販品として入手可能であるか、又は市販化合物から当業者に公知の方法若しくはそれらに準じた方法によって合成することができる。
【0102】
上記で説明した製造法の各反応において、具体的に保護基の使用を明示した場合以外でも、必要に応じて保護基を用いることができる。例えば、反応点以外の何れかの官能基が説明した反応条件下で変化する、又は説明した方法を実施するのに保護基が無い状態では不適切な場合、反応点以外を必要に応じて保護し、反応終了後又は一連の反応を行った後に脱保護することにより目的化合物を得ることができる。
保護基としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年)等に記載されている保護基等を用いることができる。アミノの保護基の具体例としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、アセチル、ベンジル等が挙げられる。また、ヒドロキシの保護基の具体例としては、例えば、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル等のトリアルキルシリル、アセチル、ベンジル等が挙げられる。
保護基の導入及び脱離は、有機合成化学で常用される方法(例えば、前述のProtective Groups in Organic Synthesis参照)又はそれらに準じた方法で行うことができる。
【0103】
本明細書中では、保護基、縮合剤等は、この技術分野において慣用されているIUPAC-IUB(生化学命名委員会)による略号で表わすこともある。なお、本明細書中で用いる化合物名は、必ずしもIUPAC命名法に従うものではない。
【0104】
上記で説明した製造方法における中間体又は目的化合物は、その官能基を適宜変換すること(例えば、必要に応じて官能基の保護、脱保護を行い、アミノ、水酸基、カルボニル、ハロゲン原子等を足がかりに種々の変換をおこなうこと)によって、本発明に含まれる別の化合物へ導く事もできる。官能基の変換は、通常行われる一般的方法(例えば、Comprehensive Organic Transformations,R.C.Larock,John Wiley & Sons Inc.(1999)等を参照)によって行うことができる。
【0105】
上記で説明した製造方法における中間体及び目的化合物は、有機合成化学で常用される精製方法(例えば、中和、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等)により単離精製することができる。また、中間体においては、特に精製することなく次の反応に用いることも可能である。
【0106】
「製薬学的に許容される塩」としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。例えば、酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、又はクエン酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。また、塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩等の無機塩基塩、又はトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジベンジルエチルアミン等の有機塩基塩が挙げられる。さらに、「製薬学的に許容される塩」としては、アルギニン、リジン、オルニチン、アスパラギン酸、又はグルタミン酸等の塩基性アミノ酸又は酸性アミノ酸とのアミノ酸塩も挙げられる。
【0107】
出発原料及び中間体の好適な塩並びに医薬品原料として許容しうる塩は、慣用の塩である。これらとしては、例えば、有機酸塩(例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、蟻酸塩、トルエンスルホン酸塩等)及び無機酸塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩等)のような酸付加塩、アミノ酸(例えばアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)との塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)等の金属塩、アンモニウム塩、有機塩基塩(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩等)等の他、当業者が適宜選択することができる。
【0108】
本発明において、式(1)で表される化合物のいずれか1つ又は2つ以上の1Hを2H(D)に変換した重水素変換体も、式(1)で表される化合物に包含される。
【0109】
本発明には、式(1)で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩が含まれる。また、本発明の化合物は、水和物及び/又は各種溶媒との溶媒和物(エタノール和物等)の形で存在することもあるので、これらの水和物及び/又は溶媒和物も本発明の化合物に含まれる。
【0110】
さらに、本発明の化合物には、光学活性中心に基づく光学異性体、分子内回転の束縛により生じた軸性又は面性キラリティーに基づくアトロプ異性体、その他の立体異性体、互変異性体、幾何異性体等の存在可能な全ての異性体、及びあらゆる様態の結晶形のもの、さらにこれらの混合物も含まれる。
【0111】
特に、光学異性体やアトロプ異性体は、ラセミ体として、又は光学活性の出発原料や中間体が用いられた場合には光学活性体として、それぞれ得ることができる。また、必要であれば、前記製造法の適切な段階で、対応する原料、中間体又は最終品のラセミ体を、光学活性カラムを用いた方法、分別結晶化法等の公知の分離方法によって、物理的に又は化学的にそれらの光学対掌体に分割することができる。これらの分割方法としては、例えば、ラセミ体を光学活性分割剤と反応させ、2種のジアステレオマーを合成し、物理的性質が異なることを利用し、分別結晶化等の方法によって分割するジアステレオマー法等が挙げられる。
【0112】
本発明の化合物の製薬学的に許容される塩を取得したいときは、式(1)で表される化合物が製薬学的に許容される塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解若しくは懸濁させ、酸又は塩基を加えて通常の方法により塩を形成させればよい。
【0113】
本発明の化合物と併用又は組み合わせることができる他の薬剤としては、例えば、抗がん性アルキル化剤、抗がん性代謝拮抗剤、抗がん性抗生物質、植物由来抗がん剤、抗がん性白金配位化合物、抗がん性カンプトテシン誘導体、抗がん性チロシンキナーゼ阻害剤、抗がん性セリンスレオニンキナーゼ阻害剤、抗がん性リン脂質キナーゼ阻害剤、抗がん性モノクローナル抗体、インターフェロン、生物学的応答調節剤、ホルモン製剤、血管新生阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、エピジェネティクス関連分子阻害剤、タンパク質翻訳後修飾阻害剤、プロテアソーム阻害剤、及びその他抗がん剤からなる群から選択される少なくとも1種以上の抗がん剤が挙げられる。併用又は組み合わせることができる他の薬剤の具体例としては、例えば、アザシチジン、ボリノスタット、デシタビン、ロミデプシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エノシタビン、シタラビン、ミトキサントロン、チオグアニン、エトポシド、イホスファミド、シクロフォスファミド、ダカルバジン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、プロカルバジン、メルファラン、ラニムスチン、オールトランス型レチノイン酸、タミバロテン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、イリノテカン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、メトトレキサート、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、タモキシフェン、チオテパ、テガフール、フルオロウラシル、エベロリムス、テムシロリムス、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イマチニブ、クリゾチニブ、オシメルチニブ、アファチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、バンデタニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、レンバチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、イブルチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、トファシチニブ、バリシチニブ、ルキソリチニブ、オラパリブ、ソラフェニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、パルボシクリブ、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、リツキシマブ、セツキシマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブ、パニツムマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、モガムリズマブ、アレムツズマブ、オファツムマブ、イピリムマブ、ラムシルマブ、ブレンツキシマブ ベドチン、ゲムツズマブ オゾガマイシン、イノツズマブ オゾガマイシン等が挙げられる。また、上記併用できる他の薬物としては、細胞医薬であってもよい。本明細書において、本発明の化合物と併用することができる細胞医薬としては、例えば、CAR-T細胞等が挙げられる。より具体的には、チサゲンレクロイセル、アキシカブタジン シロルーセル等が挙げられる。
【0114】
本発明の化合物の投与経路としては、経口投与、非経口投与、直腸内投与又は点眼投与のいずれでもよく、その一日投与量は、化合物の種類、投与方法、患者の症状・年齢等により異なる。例えば、経口投与の場合は、通常、ヒト又は哺乳動物1kg体重当たり約0.01~1000mg、より好ましくは約0.1~500mgを1~数回に分けて投与することができる。静注等の非経口投与の場合は、通常、例えば、ヒト又は哺乳動物1kg体重当たり約0.01~300mg、より好ましくは約1~100mgを投与することができる。
【0115】
本発明の化合物は、経口投与又は非経口投与により、直接又は適当な剤形を用いて製剤にし、投与することができる。剤形は、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤、注射剤、貼付剤、ハップ剤等が挙げられるがこれに限らない。製剤は、薬学的に許容される添加剤を用いて、公知の方法で製造される。
【0116】
添加剤としては、目的に応じて、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、コーティング剤、溶解剤、溶解補助剤、増粘剤、分散剤、安定化剤、甘味剤、香料等を用いることができる。添加剤の具体例としては、例えば、乳糖、マンニトール、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、部分α化デンプン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、酸化チタン、タルク等が挙げられる。
【0117】
本明細書中、下記式(W)で表されるような環を横切る結合手は、「基」が該基における置換可能な位置で結合することを意味する。
例えば、下記式(W):
【化11】
で表される場合、下記式(W-1)、(W-2)又は(W-3):
【化12】
であることを意味する。
【0118】
本明細書中、式(1)で表される化合物及び実施例に記載の化合物において、その置換基の立体化学は、例えば、以下のように図示する。
【化13】
ここにおいて、くさび形に表記された結合は紙面手前側の置換基を表し、破線で表記された結合は紙面奥側の置換基を表す。環から外側に伸びる結合が直線で表記された場合は紙面手前側又は紙面奥側のどちらか一方の置換基であることを表す。
【実施例】
【0119】
以下に本発明を、参考例、実施例及び試験例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0120】
本明細書において、以下の略語を使用することがある。
THF:テトラヒドロフラン
TFA:トリフルオロ酢酸
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
MeCN:アセトニトリル
WSCI・HCl:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド 塩酸塩
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
Me:メチル
Et:エチル
Ph:フェニル
Boc:tert-ブトキシカルボニル
BINAP:2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル
Pd2(dba)3:トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
Ac:アセチル
dppf:1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
Xantphos:4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン
【0121】
化合物同定に用いたLC/MS分析条件は以下の通りである。観察された質量分析の値[MS(m/z)]を[M+H]+あるいは[M+2H]2+で、保持時間をRt(分)で示す。
【0122】
LC/MS 測定法:
検出機器:ACQUITY(登録商標)SQ detector(Waters社)
HPLC:ACQUITY UPLC(登録商標)system
Column:Waters ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18(1.7μm,2.1mm×30mm)
Solvent:A液:0.06%ギ酸/H2O,B液:0.06%ギ酸/MeCN
Gradient condition:0.0-1.3min Linear gradient from B 2% to 96%
Flow rate:0.8mL/min
UV:220nm and 254nm
【0123】
参考例1:
4-(2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン
【化14】
【0124】
a)4-ヒドロキシ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸の製造
エチル 4-ヒドロキシ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(40g)をTHF(200mL)、メタノール(100mL)及び水(200mL)の混合液に懸濁させ、4mol/L水酸化ナトリウム水溶液(90mL)を室温で加え、室温から40℃で5日間攪拌した。反応液を5mol/L塩酸水溶液で弱酸性化し、析出した固体をろ取後、減圧下70℃で乾燥し、表題化合物(36.9g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 278.1/Rt(分) 0.64
【0125】
b)2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-オールの製造
4-ヒドロキシ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸(18g)のキノリン(100mL)溶液に銅(0.83g)を加え、190℃で3時間攪拌した。冷却後、反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチルで溶出後、クロロホルム/メタノールで溶出)により精製し、表題化合物(15.2g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 234.1/Rt(分) 0.54
【0126】
c)5-ヨード-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-オールの製造
2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-オール(30g)のアセトニトリル(322mL)懸濁液に、N-ヨードスクシンイミド(32g)を室温下加え、加熱還流下2時間攪拌した。0℃に冷却後、析出した固体をろ取し、アセトニトリル、次いでヘキサンで洗浄することで、表題化合物(46.2g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 360.0/Rt(分) 0.65
【0127】
d)4-クロロ-5-ヨード-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジンの製造
5-ヨード-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-オール(46g)を室温下塩化ホスホリル(179mL)に加え、DMF(0.5mL)を加えて、70℃で2時間攪拌した。放冷後、反応液を減圧濃縮し、残渣を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加えクエンチした。得られた水溶液を酢酸エチルで2回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濾去し溶媒を減圧留去した。残渣をメタノールで洗浄することで、表題化合物(33.2g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 378.0/Rt(分) 1.19
【0128】
e)4-クロロ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジンの製造
4-クロロ-5-ヨード-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン(37g)のDMF(420mL)溶液に(1,10-フェナントロリン)(トリフルオロメチル)銅(I)(77g)を加え、80℃で3時間攪拌した。放冷後、不溶物をセライトろ過により除去し、セライトを酢酸エチルで洗浄した。ろ液にトルエン及び酢酸エチルを加えて、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(16.9g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 320.0/Rt(分) 1.19
【0129】
f)tert-ブチル 6-{2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル}-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボキシレートの製造
4-クロロ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン(16g)のアセトニトリル(100mL)溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(52mL)及びtert-ブチル 2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボキシレート 1/2シュウ酸塩(24g)を加え、加熱還流下4時間攪拌した。放冷後、溶媒の半量を減圧留去し、酢酸エチルを加えて水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(21.2g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 482.3/Rt(分) 1.16
【0130】
g)4-(2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン(参考例1)の製造
tert-ブチル 6-{2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル}-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボキシレート(20g)をTFA(50mL)に加え、0℃で1時間攪拌した。反応液に水を加え、4mol/L水酸化ナトリウム水溶液で塩基性化した後、クロロホルムで2回抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチルで洗浄することで、参考例1の粗生成物(9.1g)を得た。さらに、濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチルで溶出後、クロロホルム/メタノールで溶出)により精製し、参考例1の化合物(5.3g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6)δ: 8.33 (1H, s) , 7.72 (1H, s) , 4.64 (4H, br s) , 4.04 (2H, d, J = 23.6, 9.0 Hz), 3.68 (4H, br s).
LC-MS;[M+H]+ 382.2/Rt(分) 0.63
【0131】
参考例2:
4-クロロ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル
【化15】
【0132】
a)4-ヒドロキシ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキサミドの製造
エチル 4-ヒドロキシ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキシレート(1.0g)を8mol/Lアンモニアメタノール溶液(10mL)に加え、マイクロウェーブ装置を用いて100℃で5時間攪拌した。得られた反応液を減圧濃縮することにより、表題化合物(915mg)を得た。得られた化合物は精製を行わず、次の反応に用いた。
LC-MS;[M+H]+ 277.1/Rt(分) 0.60
【0133】
b)4-クロロ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(参考例2)の製造
粗生成物として得た4-ヒドロキシ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボキサミド(915mg)のクロロホルム(10mL)溶液に塩化ホスホリル(15.4mL)を0℃にて加え、100℃にて2時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、参考例2の化合物(1.02g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 277.0/Rt(分) 0.97
【0134】
参考例3:
4-(2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル
【化16】
【0135】
a)tert-ブチル 6-[5-シアノ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボキシレートの製造
4-クロロ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(1.02g)のアセトニトリル(20mL)溶液に2,6-ジアザスピロ[3,3]ヘプタン-2-カルボン酸tert-ブチルエステル ヘミシュウ酸塩(1.79g)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.22mL)を加えて、3時間加熱還流した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、濾去後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、表題化合物(1.18g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 439.3/Rt(分) 1.03
【0136】
b)4-(2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(参考例3)の製造
tert-ブチル 6-[5-シアノ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボキシレート(1.18g)のクロロホルム(18mL)溶液にトリフルオロ酢酸(3.11mL)を0℃にて加え、室温で3時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)にて精製し、参考例3の化合物(866mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6)δ: 8.27 (1H, s), 7.59 (1H, s), 4.71 (4H, br s), 4.05 (2H, d, J = 22.8, 11.6 Hz), 3.63 (4H, br s).
LC-MS;[M+H]+ 339.2/Rt(分) 0.65
【0137】
参考例4:
4-(2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル)-5-(ジフルオロメチル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン
【化17】
【0138】
a)4-クロロ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボアルデヒドの製造
4-クロロ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボニトリル(1.50g)のジクロロメタン(20mL)溶液に1mol/Lジイソブチルアルミニウムヒドリド(6.0mL)を-78℃にて加え、0℃にて2時間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、濾去後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(1.0g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 280.0/Rt(分) 0.97
【0139】
b)4-クロロ-5-(ジフルオロメチル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジンの製造
4-クロロ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-5-カルボアルデヒド(910mg)のジクロロメタン(10mL)溶液に、三フッ化N,N-ジエチルアミノ硫黄(0.43mL)を0℃で滴下して加え、0℃から室温で終夜攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に0℃で滴下して加え、得られた水溶液をクロロホルムで2回抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(730mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 302.2/Rt(分) 1.12
【0140】
c)tert-ブチル 6-{5-(ジフルオロメチル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル}-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボキシレートの製造
4-クロロ-5-(ジフルオロメチル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン(730mg)のアセトニトリル(10mL)溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.2mL)及びtert-ブチル 2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボキシレート 1/2シュウ酸塩(1.78g)を加え、加熱還流下2日間攪拌した。放冷後、溶媒の半量を減圧留去し、酢酸エチルを加えて水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(610mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 464.3/Rt(分) 1.03
【0141】
d)4-(2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル)-5-(ジフルオロメチル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン(参考例4)の製造
tert-ブチル 6-{5-(ジフルオロメチル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル}-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボキシレート(610mg)のジクロロメタン(9.0mL)溶液に、TFA(1.0mL)に加え、0℃で1時間攪拌した。反応液に水を加え、4mol/L水酸化ナトリウム水溶液で塩基性化した後、クロロホルムで2回抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をアミンシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)により精製し、参考例4の化合物(350mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 364.2/Rt(分) 0.66
【0142】
参考例5:
(1S,3S,4S,5R)-2-(tert-ブトキシカルボニル)-5-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボン酸
参考例6:
(1S,3S,4R,6S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)-6-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボン酸
【化18】
【0143】
a)エチル (2E)-{[(1R)-1-フェニルエチル]イミノ}アセテートの製造
(R)-1-フェニルエチルアミン(63mL)にオキソ酢酸エチル(100mL)を加え、室温で1時間攪拌したのち、減圧濃縮することで、表題化合物を得た。得られた生成物は精製を行わず次の反応に用いた。
【0144】
b)エチル (1S,3S,4R)-2-[(1R)-1-フェニルエチル]-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-3-カルボキシレートの製造
上記工程で得られたエチル (2E)-{[(1R)-1-フェニルエチル]イミノ}アセテートのジクロロメタン(475mL)溶液にモレキュラーシーブ4A(粉末、10g)を加え、反応液を-70℃に冷却した。トリフルオロ酢酸(32mL)と三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(53mL)を滴下して15分攪拌した後、1,3-シクロヘキサジエン(42mL)を滴下した。反応液を室温まで昇温し、終夜攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、濾去後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、表題化合物(59.4g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 286.2/Rt(分) 0.533
【0145】
c)エチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-2-[(1R)-1-フェニルエチル]-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボキシレート及びエチル (1S,3S,4R,6S)-6-ヒドロキシ-2-[(1R)-1-フェニルエチル]-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボキシレートとの混合物の製造
エチル (1S,3S,4R)-2-[(1R)-1-フェニルエチル]-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-3-カルボキシレート(85.5g)のTHF(500mL)溶液に1.0mol/Lボラン-THF錯体(300mL)を0~5℃にて滴下し、室温で終夜攪拌した。反応液に3mol/L水酸化ナトリウム水溶液(62mL)と30%過酸化水素水(62mL)を氷冷下で加え、30分攪拌したのち、チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて1時間攪拌した。反応液に酢酸エチル/クロロホルムを加えて抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、濾去後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、表題化合物(51.7g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 304.2/Rt(分) 0.532
【0146】
d)エチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボキシレート及びエチル (1S,3S,4R,6S)-6-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボキシレートの製造
上記生成物(51.7g)のエタノール(500mL)溶液に10%水酸化パラジウム(10.2g)を加え、加圧水素ガス雰囲気下(0.3-0.4MPa)、室温で6時間攪拌した。反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)により精製し、表題化合物であるエチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボキシレート(19.0g)及びエチル (1S,3S,4R,6S)-6-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボキシレート(5.05g)をそれぞれ得た。
エチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボキシレート
LC-MS;[M+H]+ 200.2/Rt(分) 0.265
エチル (1S,3S,4R,6S)-6-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボキシレート
LC-MS;[M+H]+ 200.1/Rt(分) 0.361
【0147】
e)(1S,3S,4S,5R)-2-(tert-ブトキシカルボニル)-5-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボン酸(参考例5)の製造
エチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボキシレート(10.48g)の1,4-ジオキサン(153mL)溶液に1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(238mL)を加え、室温で1時間攪拌した後、反応液を0℃に冷却し、二炭酸ジ-tert-ブチル(11.48g)を加えた。1時間攪拌したのち、1mol/L塩酸を加えて反応液を酸性にし、飽和食塩水を加え、10%エタノール/クロロホルム混合溶媒にて抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。濾去後、溶媒を減圧留去した。残渣をジイソプロピルエーテルで洗浄し、濾取し、乾燥することで、参考例5の化合物(8.40g)を得た。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.55 (1H, br s), 4.86 (1H, br s), 3.96-3.81 (3H, m), 2.09-1.69 (4H, m), 1.59-1.49 (1H, m), 1.36 (3H, s), 1.31 (6H, s), 1.29-1.17 (2H, m).
【0148】
f)(1S,3S,4R,6S)-2-(tert-ブトキシカルボニル)-6-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボン酸(参考例6)の製造
エチル (1S,3S,4R,6S)-6-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボキシレートを用い、工程e)と同様の方法にて、参考例6の化合物(1.60g)を得た。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 4.09-4.05 (3H, m), 2.28-2.20 (1H, m), 2.18-2.05 (2H, m), 1.91-1.80 (1H, m), 1.63-1.50 (3H, m), 1.45 (3H, s), 1.40 (6H, s).
【0149】
参考例7:
(1S,3S,4S,5R)-2-(tert-ブトキシカルボニル)-5-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-カルボン酸
【化19】
【0150】
a)エチル (1S,3S,4R)-2-[(1R)-1-フェニルエチル]-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-3-カルボキシレートの製造
エチル (2E)-{[(1R)-1-フェニルエチル]イミノ}アセテート(12.0g)とシクロペンタジエン(4.92mL)を用い、参考例5、参考例6の工程b)に記載の方法と同様の方法により、表題化合物(10.8g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 272.2/Rt(分) 0.540
【0151】
b)エチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-2-[(1R)-1-フェニルエチル]-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-カルボキシレートの製造
エチル (1S,3S,4R)-2-[(1R)-1-フェニルエチル]-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-3-カルボキシレート(10.8g)を用い、参考例5、参考例6の工程c)に記載の方法と同様の方法により、表題化合物(7.49g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 290.2/Rt(分) 0.461
【0152】
c)エチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-カルボキシレートの製造
エチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-2-[(1R)-1-フェニルエチル]-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-カルボキシレート(7.49g)を用い、参考例5、参考例6の工程d)に記載の方法と同様の方法により、表題化合物(2.89g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 186.1/Rt(分) 0.267
【0153】
d)(1S,3S,4S,5R)-2-(tert-ブトキシカルボニル)-5-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-カルボン酸(参考例7)の製造
エチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-カルボキシレート(2.88g)を用い、参考例5、参考例6の工程e)に記載の方法と同様の方法により、参考例7の化合物(980mg)を得た。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 4.99 (1H, br s), 4.11-3.95 (1H, m), 3.95-3.82 (1H, m), 3.48-3.40 (1H, m), 2.41-2.31 (1H, m), 1.90-1.75 (1H, m), 1.69-1.49 (2H, m), 1.45-1.19 (10H, m).
【0154】
参考例8:
tert-ブチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート
参考例9:
tert-ブチル (1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート
【化20】
【0155】
a)tert-ブチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート(参考例8)の製造
参考例1で得られた4-(2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン(1.52g)のDMF(10mL)溶液に参考例5で得られた(1S,3S,4S,5R)-2-(tert-ブトキシカルボニル)-5-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボン酸(1.30g)、WSCI・HCl(0.92g)、HOBt(0.65g)及びトリエチルアミン(0.67mL)を加えて、室温で2時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をクロロホルム/ジエチルエーテル/ヘキサン(1/1/1)により洗浄し、参考例8の化合物(2.51g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 635.4/Rt(分) 0.95
【0156】
b)tert-ブチル (1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート(参考例9)の製造
tert-ブチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート(6g)のジクロロメタン(63mL)溶液に、三フッ化N,N-ジエチルアミノ硫黄(2.5mL)を0℃で滴下して加え、0℃から室温で終夜攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に0℃で滴下して加え、得られた水溶液をクロロホルムで2回抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル)により精製することで、参考例9の化合物(1.45g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6)δ: 8.35 and 8.31 (total 1H, each s), 7.71 (1H, s), 4.96 (1H, m), 4.79-4.69 (4H, m), 4.44 (0.5H, m), 4.36 (1.5H, br s), 4.22 (1H, br s), 4.18-3.99 (5H, m), 2.38 (0.3H, br s), 2.31 (0.7H, m), 2.05 (1H, m), 1.83 (1H, m), 1.76-1.50 (2H, m), 1.38 (3.5H, br s), 1.35 (6.5H, br s), 1.23 (1H, m).,
LC-MS;[M+H]+ 637.4/Rt(分) 1.12
【0157】
参考例10:
tert-ブチル (1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート
【化21】
【0158】
a)tert-ブチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレートの製造
参考例1で得られた4-(2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン(300mg)と参考例7で得られた(1S,3S,4S,5R)-2-(tert-ブトキシカルボニル)-5-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-カルボン酸(202mg)を用い、参考例9の工程a)に記載の方法と同様の方法により、表題化合物(470mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 621.4/Rt(分) 0.95
【0159】
b)tert-ブチル (1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(参考例10)の製造
tert-ブチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(200mg)を用い、参考例9の工程b)に記載の方法と同様の方法により、参考例10の化合物(112mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 623.5/Rt(分) 1.04
【0160】
参考例11:
tert-ブチル (1S,3S,4S)-5-オキソ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート
参考例12:
tert-ブチル (1S,3S,4S)-5,5-ジフルオロ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート
【化22】
【0161】
a)tert-ブチル (1S,3S,4S)-5-オキソ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート(参考例11)の製造
参考例8で得られたtert-ブチル (1S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート(0.14g)のジクロロメタン(2.1mL)溶液に、デス-マーチン試薬(0.14g)を加え、室温で終夜攪拌した。反応液中の不溶物をセライトろ過により除去し、セライトをクロロホルムで洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)により精製することで、参考例11の化合物(0.12g)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 633.4/Rt(分) 1.02
【0162】
b)tert-ブチル (1S,3S,4S)-5,5-ジフルオロ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート(参考例12)の製造
参考例11(65mg)のジクロロメタン(1mL)溶液に、三フッ化N,N-ジエチルアミノ硫黄(41μL)を0℃で滴下して加え、0℃から室温で終夜攪拌した。さらに三フッ化N,N-ジエチルアミノ硫黄(122μL)を0℃で滴下して加え、0℃から室温で終夜攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に滴下して加え、得られた水溶液をクロロホルムで2回抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)により精製することで、参考例12の化合物(56mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 655.4/Rt(分) 1.16
【0163】
参考例13:
tert-ブチル (1S,3S,4R,6S)-6-[(プロポ-2-エン-1-イル)オキシ]-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート
参考例14:
tert-ブチル (1S,3R,4R,6S)-6-[(プロポ-2-エン-1-イル)オキシ]-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート
【化23】
【0164】
a)2-tert-ブチル 3-エチル (1S,3S,4R,6S)-6-[(プロポ-2-エン-1-イル)オキシ]-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジカルボキシレートの製造
エチル (1S,3S,4R,6S)-6-ヒドロキシ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-カルボキシレート(400mg)のTHF(10mL)溶液に、二炭酸ジ-tert-ブチル(1.00g)、炭酸ナトリウム(700mg)を加え、室温で1時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣のTHF(10mL)溶液を0℃に冷却後、水素化ナトリウム(88mg)とアリルブロミド(233uL)を加えた。室温で24時間攪拌した後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液と酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、表題化合物(120mg)を得た。
LC-MS;[M+H]+ 340.4/Rt(分) 1.21
【0165】
b)tert-ブチル (1S,3S,4R,6S)-6-[(プロポ-2-エン-1-イル)オキシ]-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート(参考例13)及びtert-ブチル (1S,3R,4R,6S)-6-[(プロポ-2-エン-1-イル)オキシ]-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート(参考例14)の製造
2-tert-ブチル 3-エチル(1S,3S,4R,6S)-6-[(プロポ-2-エン-1-イル)オキシ]-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジカルボキシレート(120mg)のTHF(5mL)と水(1mL)の混合溶液に、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(1mL)を0℃で加え、12時間加熱還流した。0℃から室温で終夜攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液と酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣のジクロロメタン(10mL)溶液を0℃に冷却後、参考例1で得られた4-(2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン(129mg)、WSCI・HCl(200mg)、HOBt(150mg)及びトリエチルアミン(0.30mL)を加えて、室温で2時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え、水で2回、飽和食塩水で1回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、これを濾去し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、参考例13の化合物(88mg)と参考例14の化合物(43mg)を得た。
参考例13
LC-MS;[M+H]+ 675.5/Rt(分) 1.25
参考例14
LC-MS;[M+H]+ 675.5/Rt(分) 1.25
【0166】
参考例15~35:
対応する原料化合物を用いて参考例8から参考例14に記載の方法と同様の方法により、下記表に示す参考例15~35の化合物を得た。
【化24】
【表1-1】
【表1-2】
【0167】
実施例1:
{(1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル}{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}メタノン
【化25】
参考例9で得られたtert-ブチル (1S,3S,4S,5S)-5-フルオロ-3-{6-[2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-5-(トリフルオロメチル)チエノ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボニル}-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボキシレート (3.8g)のジクロロメタン(20mL)溶液に、TFA(9.3mL)を室温で加え、室温下3時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残渣をアミンシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)にて精製し実施例1の化合物(3.0g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6)δ: 8.32 (1H, s), 7.66 (1H, s), 4.92 (1H, m), 4.72 (4H, dd, J = 26.1, 11.9 Hz), 4.38 (2H, dd, J = 40.1, 9.4 Hz), 4.13 (2H, dd, 25.0, 10.8 Hz), 4.05 (2H, dd, J = 22.2, 11.2 Hz), 2.87 (1H, s), 2.76 (1H, s), 2.11-2.00 (2H, m), 1.72 (1H, dd, J = 37.6, 13.8 Hz), 1.59-1.48 (2H, m), 1.35-1.23 (2H, m).
LC-MS;[M+2H]
2+ 269.4/Rt(分) 0.76
【0168】
実施例2~27:
対応する原料化合物を用いて、実施例1と同様にして、下記表に示す実施例2~27の化合物を得た。
【化26】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0169】
試験例
試験例1:Menin-MLL結合阻害実験
N末端に6xHisタグとHAタグを挿入し、C末端にmycタグを挿入したMenin1-615(以下His-Menin1-615)を、終濃度30nmol/Lとなるようにアッセイバッファー(25mmol/L HEPES、150mmol/L NaCl、1mmol/Lジチオトレイトール、0.5%(w/v) Tween 80、0.3%(w/v) BSA、0.3%(w/v) Skim milk)で希釈した。また評価化合物を、評価化合物濃度が0.005~5μmol/Lとなるようにアッセイバッファーで希釈した。調製したHis-Menin1-615を、2μL/ウェル、また評価化合物を6μL/ウェルで遮光用の384ウェルローボリュームプレート(Corning、#4514)に添加し、遮光用の蓋(Corning、#3935)をして、室温で3時間インキュベートした。インキュベート後、別途、C末端にFLAGタグを挿入したMLL1-172(MLL1-172-FLAG)を、終濃度50nmol/Lとなるようにアッセイバッファーで希釈した。調製したMLL1-172-FLAGを2μL/ウェルで先のプレートに添加し、遮光用の蓋をして、室温で1時間インキュベートした。
次に、抗6HIS-d2抗体(cisbio、61HISDLA)及び抗FLAGM2-K抗体(cisbio、61FG2KLA)を、終濃度1.4μg/mLになるように抗体希釈バッファー(50mmol/L Tris、150mmol/L NaCl、800mmol/L KF、pH7.4)で希釈し抗体混合液を調製した。調製した抗体混合液を10μL/ウェルで先のプレートに添加し、蓋をして、4℃で17~24時間インキュベートした。インキュベート後、RUBYstar(BMG LABTECH)により、シグナルを検出した。評価化合物各濃度での結合阻害率(%)を下に示す計算式を用いて求め、結合阻害率が50%を示す評価化合物の濃度に相当するIC50値を算出した。
【0170】
結合阻害率(%)={1-(A-C)/(B-C)}×100
A:評価化合物存在下におけるシグナル
B:ネガティブコントロール(評価化合物非存在下)におけるシグナル
C:ポジティブコントロール(阻害率100%の濃度の既知化合物存在下)におけるシグナル
【0171】
【0172】
上表に表すように、実施例1、2、3、6、9、11、20、21、22、23、25、26及び27の化合物は,特に強力なMenin-MLL結合阻害作用を有する。
【0173】
試験例2:細胞増殖抑制実験
RS4;11細胞をアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)より入手した。本細胞は、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有RPMI1640培地にて、37℃、5%CO
2存在下で培養した。別に、MOLM-13細胞をDSMZより入手した。本細胞は、20%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有RPMI1640培地にて、37℃、5%CO
2存在下で培養した。
96ウェルプレートに1ウェルあたり2000個の細胞を播種して、DMSOの終濃度が0.1%となるように評価化合物を添加し、7日間培養した。培養終了後、PrestoBlue
TM Cell Viability Reagent(Invitrogen、A13261)を用いて、細胞生存率を計算した。生存率曲線より、細胞増殖の抑制率が50%を示す評価化合物の濃度に相当するIC
50値を算出した。試験例2の評価結果を下表に示す。
【表4】
【0174】
上表に表すように、実施例1、2、3、4、6、8、9、10、11、13、20、21、22、23、25、26及び27の化合物は良好な細胞増殖抑制効果を示した。中でも、実施例1、2、3、9、20、21、22及び23の化合物は、特に強い細胞増殖抑制を示した。
【0175】
試験例3:被験物質によるmRNA転写制御実験
MV4;11細胞をアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)より入手した。本細胞は、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有RPMI1640培地にて、37℃、5%CO2存在下で培養した。MV4;11細胞に評価化合物を終濃度1μmol/Lで添加後、37℃、5% CO2存在下で20~24時間培養した。培養終了後、RNeasyTM Mini Kit(QIAGEN、74106)を用いて細胞よりtotal RNAを抽出し、SuperscriptTM VILOTM cDNA Synthesis Kit(Invitrogen、#11754250)を用いてcDNAを合成した。TaqManTM Gene Expression Master Mix(Applied Biosystems、4369016)及びTaqManTM プローブ(Applied Biosystems)を用いて、7900HT(Applied Biosystems)により、得られたcDNAからmRNA発現量を定量した。得られた各遺伝子のmRNA発現量は、GAPDHのmRNA発現量により補正した。
【0176】
【0177】
上表に表すように、実施例1、2、3、4、6、8、9、10、11、13、20、21、22、23、26及び27の化合物は、MeninとMLLとの結合阻害に由来するmRNA転写制御を示した。
【0178】
試験例4.薬物動態試験
0.5%メチルセルロースに懸濁させた被験化合物を7週齢、雄のSDラットに10mg/kgで経口投与し、無麻酔下にて頚静脈より投与後24時間まで経時的に血液を採取した。血液を遠心分離して得られた血漿をメタノール抽出法により前処理し、LC-MS/MSを用いて被験化合物の濃度を定量した。投与後0時間から血漿中被験化合物濃度を定量できた時点(t)までについて、AUCを台形法にて算出した。試験例4の評価結果を下表に示す。
【表6】
【0179】
上表に表すように、実施例1、2、3及び9の化合物は、血漿中で特に良好な化合物曝露が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明の化合物は、MLL融合タンパクとmeninの結合を阻害することにより抗腫瘍作用を発揮することができる。