(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】光照射型美容装置の操作を支援するシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
(21)【出願番号】P 2020529917
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2018026335
(87)【国際公開番号】W WO2020012603
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 岩男
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-218824(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186651(WO,A1)
【文献】特表2017-506533(JP,A)
【文献】特表2017-514613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光脱毛器と携帯端末とを有し、
前記光脱毛器は、
ユーザによって操作された当該光脱毛器の動きを検出する検出手段と、
前記光脱毛器の動きおよび発光が行われたか否かに関する情報を前記携帯端末に無線送信する送信手段と、
を有し、
前記携帯端末は、
前記情報を前記光脱毛器から無線受信する受信手段と、
前記光脱毛器による光照射に先立ち、
前記受信手段によって受信された前記光脱毛器の動きを示す情報に基づいてユーザの身体の部位のサイズを計測し、該計測されたユーザの身体の部位のサイズと前記光脱毛器の光照射部の開口部のサイズとに基づいて、照射対象の部位を区分した複数の領域を設定する設定手段と、
前記受信手段によって受信された、前記光脱毛器の動きおよび発光が行われたか否かに関する情報に基づいて、該設定された領域ごとに照射が実行されたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて前記光脱毛器によって照射された皮膚の領域を表示する表示手段と
を有する、
操作支援システム。
【請求項2】
前記表示手段は、照射が実行された領域と照射されなかった領域とを区別して表示する
請求項1に記載の操作支援システム。
【請求項3】
前記判定手段は、各領域について、照射が複数回実行されたか否かの判定を実行し、
前記表示手段は、照射された回数に対応する表示を行う
請求項1または2に記載の操作支援システム。
【請求項4】
前記携帯端末は、前記光脱毛器が移動する速度が所定範囲外である場合に通知を行う通
知手段を更に有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の操作支援システム。
【請求項5】
前記光脱毛器によって照射された領域および照射が行われた時点を記憶する記憶手段を
更に備え、
前記表示手段は、前記光脱毛器の使用の頻度に応じて、使用を促す通知を表示する
請求項1~4のいずれか一項に記載の操作支援システム。
【請求項6】
前記検出手段は、前記光脱毛器が前記皮膚の上において移動を開始する位置を特定する
請求項1~5のいずれか一項に記載の操作支援システム。
【請求項7】
前記検出手段は、前記光脱毛器の1以上の方向の動きを検知するセンサを有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の操作支援システム。
【請求項8】
携帯端末のコンピュータに、
光脱毛器による光照射に先立ち、
当該光脱毛器から受信した当該光脱毛器の動きを示す情報に基づいてユーザの身体の部位のサイズを計測し、該計測されたユーザの身体の部位のサイズと前記光脱毛器の光照射部の開口部のサイズとに基づいて、照射対象の部位を区分した複数の領域を設定するステップと、
前記光脱毛器の動きおよび発光が行われたか否かに関する情報を前記光脱毛器から無線受信するステップと、
前記光脱毛器から受信した、前記光脱毛器の動きおよび発光が行われたか否かに関する情報に基づいて、該設定された領域ごとに照射が実行されたか否かを判定するステップと、
前記判定するステップの結果に基づいて、前記光脱毛器によって照射された皮膚の領域
を表示するステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に光を照射する美容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ユーザの体毛を肌面上から目立たなくさせる処理(除毛処理)を行うため、肌に光を照射する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この光照射型美容装置では、フラッシュランプの光によって体毛を部分的に焼いたり、毛根にダメージを与えたりすることができる。焼かれた体毛は、脆くなり肌面上から簡単に取り除くことができる。毛根にダメージを与えることで、体毛が再び生えるスピードを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一般のユーザが上記の美容装置を用いてスキンケアを行う場合、美容装置を適切に操作しないと、想定する効果が得られない可能性がある。例えば、操作が雑だとローラが照射されない皮膚領域(ムラ)がでることがありえる。逆に、操作が過剰に丁寧だと、同一箇所に想定以上の量の照射(オーバートリートメント)が行われてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、ユーザによる光照射型美容装置の操作を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一の態様において、ユーザによって操作された光脱毛器の動きを検出する検出手段と、前記光脱毛器によって照射された皮膚の領域を表示する表示手段とを有する操作支援システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】携帯端末300および美容機器100の機能図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は支援システム10の概要を示す。支援システム10は、美容機器100と携帯端末300とを含む。
【0010】
図2は美容機器100の構造の概要。支援システム10は、装置本体30と照射ヘッド20とを含む。照射ヘッド20は、装置本体30に着脱自在に取り付けられる。ユーザは装置本体30を掴み、自分の体のうち照射したい部位へ照射ヘッド20をあてがう。取り付けられた状態でユーザが美容機器100を皮膚にあてがう位置を変えると、照射ヘッド20と装置本体30とは一体となって移動する。
【0011】
装置本体30は、操作部112と制御基板130とを含む。操作部112は、ユーザによって操作されるスイッチであって装置本体30の表面に設けられ、美容機器100のメイン電源のON/OFF、光照射部の作動のON/OFF、動作モードの設定や変更を行うためのものである。
【0012】
図3は照射ヘッド20の構造の概要を示す。筐体210は、肌接触面、開口210b、タッチセンサ部210d、および撮影部240を備える。筐体210は、キセノン管212、透過ガラス214、補助ローラ290、およびメインローラ220を収容する。
【0013】
撮影部240は、カメラやレンズなどの光学系と、受光素子や画像処理プロセッサなど解析系とを備える。撮影部240は、肌接触面を撮影して画像データを取得し、必要に応じて画像処理(例えば肌の色味や状態などを示す特徴情報の生成)を行い、画像処理の結果を出力する。なお、撮影部240の機能は省略されも構わない。
【0014】
肌接触面は、筐体210の正面であって、除毛処理時にユーザの肌面と接触する。肌接触面の表面は、ユーザの肌面上を滑らかに移動可能なように、ガラスやプラスチックなどでコーティングされることが望ましい。
【0015】
開口210bは、肌接触面から筐体210内部に向かって設けられ、略長方形状を有し、開口210bからキセノン管212にて発光された光を通過させて肌へ導く。開口210bの長辺は、第1の面から一部を露出させて回転可能に設けられたメインローラ220の回転軸方向に沿っている。開口210bの短辺は、メインローラ220が回転する方向(照射ヘッド20の移動方向)に沿っている。
【0016】
タッチセンサ部210dは、肌接触面における開口210bの周囲の部位である。タッチセンサ部210dは、例えば静電容量方式のタッチセンサを備える。静電容量方式のタッチセンサは、表面型でも投影型でもどちらでもよい。タッチセンサは、制御基板130と電気的に接続される。タッチセンサ部210dは、静電容量方式に替えて、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式のタッチセンサを設けてもよい。また、タッチセンサ部210dは、開口210b内の照度を検知する照度センサを備えることもできる。照度センサは、例えば、ユーザの肌によって開口210bが塞がれることで変化する開口210b内の照度を検知する。検知された照度によって、ユーザの肌面がタッチセンサ部210dに接触しているか否かを検知できる。
【0017】
ユーザの肌面がタッチセンサ部210dに接触することによって、タッチセンサと制御基板130の間に電流や電圧の変化が生じる。制御基板130は、この電流や電圧を検知して、照射ヘッドがユーザの肌面が接触しているか否かを検知する。
【0018】
通風孔210eは、筐体210の表面から裏面にかけて貫通する。通風孔210eから流入した空気は、キセノン管212を冷却する。通風孔210eから流入した空気は、装置本体30内部に流れる。
【0019】
キセノン管212は、開口210bに配置される。透過ガラス214は開口210bに嵌め込まれる。従って、光が照射される皮膚上の領域は略矩形状となり、その領域の大きさは開口210bの大きさにほぼ一致する。透過ガラス214は、キセノン管212の光に含まれる紫外線をカットする。
【0020】
補助ローラ290は、中央よりも両端の径が小さい細長の樽型形状のローラであって、ユーザが照射ヘッド20を肌に当てた状態で動かすと、同紙面左右方向に配置された軸を中心として回転する。補助ローラ290が回転することで、照射ヘッド20がスムーズに肌接触面を移動することができる。なお、補助ローラ290の形状は、樽型に限らず円筒でもよい。
【0021】
好ましい態様において、特定方向(この例では紙面上下方向)への動きを安定化させるものであればよい。なお、補助ローラ290の回転軸は、メインローラ220の回転軸と同一であることが好ましい。すなわち、補助ローラ290の回転軸は、開口210bの長手方向と平行に設けられることが好ましい。また、好ましい態様において、補助ローラ290には凹凸加工等が施されず、平滑である。これにより、ユーザが照射ヘッド20を肌に当てた状態で動かす際、動かす方向を変えることが容易になる。
【0022】
図3に示すように、メインローラ220は、開口210bを挟んで補助ローラ290の反対側に設けられる。メインローラ220は、筐体210に固定される中央部226-3と、その両側に配置された左ローラ226-1と右ローラ226-2とを有する。左ローラ226-1および右ローラ226-2は、表面にすべり止め加工が施されることが好ましい。
【0023】
メインローラ220は、少なくともその一部が肌と接し、中心部と端部とで径が異なっている。より具体的には、回転軸上の中心部によりも外側にいくに従って、徐々に径が大きくなっている。この結果、直進安定性が増す。
【0024】
メインローラ220および補助ローラ290の形状や配置は、一例に過ぎない。要するに、機能や役割が異なる2つのローラが肌と接触し得ることにより、操作性が向上する。210には、メインローラ220の回転軸の回転状態を検知するためのセンサ(図示省略)が埋設されている。
【0025】
図4は、携帯端末300および美容機器100の機能を示す。美容機器100は、動作検出部110と制御部120と照射部150と通信部140とを含む。なお、同図では、照射領域の特定とは直接関係がない、撮影部240に対応する機能部等については捨象している。
動作検出部110は、照射ヘッド20の所定方向(例えばメインローラ220の回転方向)の動きの量(位置の相対的変化)を検出するセンサ、あるいは照射ヘッド20の任意方向の絶対位置や位置の変化を検出する磁気センサや加速度センサとして実現され、照射ヘッド20の動きを検知する。動作検出部110は、少なくとも1以上の方向の照射ヘッド20の動きを検出できるセンサを備えていればよい。
【0026】
加えて、動作検出部110は、タッチセンサ部210dとして実現され、照射ヘッド20が皮膚と接触しているか否かを判定する。照射ヘッド20が皮膚に接触しつつ移動していることは、ユーザが処置を行っている状態であることを意味する。照射ヘッド20が皮膚に接触したということは、ユーザが処置を開始したあるいは中断していた処置を再開したと推定できる。逆に、皮膚と接触していた照射ヘッド20が皮膚から離れたということは、ユーザが処置を終了ないし一時中断したと推定できる。ユーザによる美容機器100の操作が反映された、照射ヘッド20の動きに関する情報および接触状態に関する情報は、制御部120に供給される。
後述するように、ユーザは携帯端末300に表示される案内に従って美容機器100を動かすと推定されるので、動作検出部110は、ユーザが処置を開始または終了(または中断)する位置とそのタイミングとを特定するための情報を生成しているといえる。
【0027】
制御部120は、プロセッサであって、動作検出部110から供給された照射ヘッド20の動きについての情報に基づいて、照射部150に制御信号を供給する。例えば、所定距離だけ照射ヘッド20が動いたことを検知するたびに、発光実行命令が制御部120から照射部150に供給される。なお、制御信号には、撮影部240にて撮像された皮膚の色に基づいて発光強度を指示する情報が含まれてもよい。
制御部120は、照射ヘッド20の動きに関する情報を、逐次、通信部140を介して携帯端末300へ送信する。携帯端末300に送信される情報には、発光が実行されたことを示す情報が含まれていてもよい。
【0028】
照射部150は、例えばキセノン管などの光源や発光機構であって、制御部120の制御の下、除毛に適した周波数および強度の光パルスを照射する。
【0029】
通信部140は、IEEEやBluetooth(登録商標)の等の無線通信規格に従って通信部310と情報の授受を行うためのインタフェースである。
【0030】
携帯端末300は、通信部310と制御部320と入力部330と記憶部340と表示部350と通知部360とを含む。携帯端末300は、ユーザによって使用されるデバイスであって、例えばスマートフォンである。携帯端末300は、の汎用的な情報処理機能を有するほか、美容機器100との連携に関する機能を有する。以下、美容機器100との連携に関する機能に絞って説明する。
【0031】
通信部310は、IEEEやBluetooth(登録商標)等の無線通信規格に従って通信部310と情報の授受を行うための通信インタフェースである。
【0032】
制御部320は、汎用又は専用のプロセッサであって、携帯端末300の各部を制御して、後述の機能を実現するためのアプリケーションプログラムを実行する。具体的には、美容機器100から供給された情報に基づいて、表示部350の描画内容を決定し、決定された描画内容に基づく描画命令を表示部350に供給される。美容機器100から提供される情報には、照射ヘッド20の動きに関する情報が少なくとも含まれ、照射ヘッド20と皮膚が接触しているか否かの情報および発光が実行されたか否かの情報が更に含まれてもよい。
【0033】
より詳細には、制御部320は、機能モジュールとして、判定部321と設定部322とを含む。設定部322は、照射対象の部位に対し複数の領域を設定する。各領域は、好ましくは、照射窓(開口部210b)のサイズと照射対象の部位(例えば、右前腕)のサイズ(長さ、太さ等)に対応して設定される。一例としては、各領域のサイズは、開口部210bと略同一の大きさおよびサイズと設定する。各領域は、例えば、その対象部位内の一点を基準点(例えば、腕の先端部)として座標系において、その領域内部の代表点(例えば中心点)と、その領域の短辺および長辺の長さによって定義される。
なお、照射領域をユーザの操作によってまたは自動的に変更する機能を美容機器100が有している場合は、変更後の照射領域に対応する形状およびサイズに各領域を設定してもよい。また、一つの照射対象部位を構成する複数の領域は、全て同一の形状・同一のサイズである必要はない。
【0034】
判定部321は、設定部322にて設定された領域ごとに、照射が実行されたか否かを判定する。具体的には、発光が実行されたときに照射ヘッド20が当接している皮膚の位置を含む一つの領域を特定し、特定された領域は照射済みであると判定する。すなわち、この領域内は照射が行われたとみなす。好ましくは、各領域について、照射が複数回実行されたか否かの判定が実行される。
【0035】
加えて、制御部320は、記憶部340から美容機器100の使用状況に関する情報を読み出して、あるいは判定部321における照射ヘッド20の動きの情報に基づいて、通知の要否を判定し、必要に応じて通知部360に通知の実行命令とともに通知すべき情報を出力する。
【0036】
入力部330は、タッチパネル等であって、ユーザが情報や命令の入力を行う。
【0037】
表示部350は、液晶ディスプレイであって、制御部320の指示の下、照射が実行された皮膚の領域を表示する。好ましくは、照射が実行された領域と実行されなかった領域とが区別して表示される。さらに好ましくは、照射された回数に対応した表示が行われる。
【0038】
通知部360は、表示部350と共用される液晶ディスプレイ等の画像表示デバイス、スピーカなどの音声出力デバイス、バイブレータなどの振動デバイス、またはLEDなどの発光デバイスとして実現され、制御部320の制御の下、画像、音声、振動、光等によって、照射ヘッド20が移動する速度が所定範囲外である場合に、通知を行う。
ここで、発光間隔には物理的制約があるから、照射ヘッド20の移動速度が速すぎると、肌面を連続的に移動させたとしても結果的に照射されない領域(ムラ)が発生してしまう。よって、通知部360は、「動かすのが早すぎますゆっくりと動かしてください」などのメッセージを画面表示しあるいは音や光で報知を行う。
【0039】
一方、照射ヘッド20を動かす速度が遅すぎる場合はムラの発生の問題は生じないが、処置に無駄に時間を掛けているという意味では好ましくない。よって、この場合は、例えば「もう少しスムーズに動かしましょう」といった案内メッセージを表示する。
これらのメッセージの表示は、速度が所定範囲よりも逸脱していることを検知した各時点にて行うことが好ましい。
【0040】
加えて、通知部360は、ユーザごとに美容機器100の使用の頻度に応じて、使用を促す通知を行う。この通知は、例えば、携帯端末300にてアプリケーションを起動して最初に表示される画面に表示される。
【0041】
あるいは、通知部360は、表示部350に予め記憶された消耗品(キセノン管等)の耐用年数と、美容機器100の使用実績(回数や合計使用時間など)とに基づいて、消耗品の交換を推奨するメッセージを通知してもよい。
【0042】
記憶部340は、半導体メモリ等であって、美容機器100によって照射された領域および照射が行われたタイミングを記憶する。後述の機能を携帯端末300にて実現させるためのアプリケーションプログラムのほか、該アプリケーションプログラムによって参照される情報が記述されたデータベースDB1とデータベースDB2が格納される。加えて、各部位の画像データ、開口部210bのサイズや美容機器100の制御内容についての情報など、領域の策定や照射状況の表示を行うために必要な情報が記憶される。
【0043】
図5は、データベースDB1に記憶される情報の例を示す。データベースDB1には、各ユーザを識別するユーザIDに対応付けて、身体情報、部位、スケジュール情報が記憶される。
身体情報は、部位、測定項目、値のデータ項目からなり、各項目はそれぞれ、測定対象の体の部位、部位の形状や大きさを特徴づける項目、各項目の値を示す。身体情報によって、一つの部位(例えば右手前腕)全体の領域が特定される。
ここで、部位とは、必ずしも身体部位の名称に対応している必要はなく、ユーザが皮膚面の任意の領域を部位(例えば右太もも前側の中央付近など)として定義できる。また、ユーザが別途取得した数値を入力してもよいし、後述のように、美容機器100のセンサ機能を利用して計測を行ってもよい。あるいは、デフォルトの値(例えば成人女性の平均値等)が記憶され、領域の策定の際に適用されてもよい。
スケジュール情報は、美容機器100を使用すべきタイミングを示す。スケジュールは、使用予定日や頻度として規定される。スケジュール情報は、ユーザが任意に策定や修正することができる。スケジュール情報は部位ごとに予め定められてもよい。
【0044】
図6はデータベースDB2に記憶される情報の例である。美容機器100を用いた1回の処置が行われる度に、一つのレコードが生成される。各レコードには、美容機器100を使用したユーザのユーザID、その使用がなされたタイミング(使用開始時間、使用終了時間、使用期間等)、処置対象の部位、使用の詳細な状況、が対応付けられている。使用の詳細な状況を示す情報は、制御部320にて生成される。例えば、制御部320は、所定の基準(例えば、対象部位の全ての領域が過不足なく照射された、対象部位についての処置は実施されたがものの照射が過不足の領域がある、その対象部位について処置が実施していない、の三段階)を満たしたか否かに基づいて、使用の詳細な状況を規定する。
【0045】
図7は支援システム10の動作例である。ユーザが所定の操作を行って、美容機器100と携帯端末300とを無線接続する(S501)。そして、アプリケーションプログラムを起動し、ログインを行って美容機器100を使用する予定のユーザを携帯端末300に認識させると、まず
図8に示すような画面が携帯端末300に表示される。この画面には、ログインしているユーザ、美容機器100との接続状態に加えて、このユーザに係るデータベースDB1のスケジュール情報に基づいて生成された情報(オブジェクトOB2)や美容機器100の使用タイミングに関する情報(オブジェクトOB1)が表示される。
また、ユーザは、この画面においてオブジェクトOB3Aを選択することで、身体情報を計測・登録することができる。
【0046】
図9は、オブジェクトOB3Aが選択された後に表示部350に表示される画面の例である。この例では、ユーザが照射対象領域として右前腕部を指定した場合のものである。ユーザの右前腕部を模した画像とともに、右前腕部について予め定められた3カ所の計測箇所についての計測を促す案内メッセージが表示されている(オブジェクトOB4)。ユーザは、携帯端末300を机等におき、案内に従って、美容機器100を使って計測を行う。動作検出部110にて計測された移動距離の情報に基づいて、判定部321が各サイズを決定する。決定した各サイズは、データベースDB1に書き込まれる。
【0047】
計測が完了すると、判定部321は、当該部位(右前腕部)全体のサイズと、記憶部340に記憶された開口部210bのサイズの情報とに基づき、右前腕部を複数の領域に区分する。この結果、表示部350には
図10に示すような画像が表示される。
すなわち、照射対象部位に設定された複数の領域Rを示す画像が、照射対象部位の画像に重ねて表示される(オブジェクトOB5)。なお、同図では、説明の便宜上、領域を二次元領域として表現しているが、各領域は皮膚表面上の3次元領域(曲面)であると定義されてもよい。その場合、前腕部の形状の立体データを有し、ユーザが指定した視点や角度に応じた前腕部の画像と対応する領域の画像とが重ねて表示されることが好ましい。なお、照射対象領域が事実上平面であるとみなせる場合は(例えば前腕部手の片面側のみなど)、二次元領域として定義されてもよい。
【0048】
要するに、ユーザが、照射対象を、照射が行われた否かを判定する最少の単位として設定された各領域の、照射対象の全体に対する各領域の位置関係がユーザに把握できるように表示が行われればよい。
【0049】
図7に戻り、ユーザがオブジェクトOB3Bを選択して対象部位(以下、右前腕部とする)と、
図11に示す画面を表示し、処置の開始位置(照射ヘッド20を最初にあてがう位置)を指示する(オブジェクトOB6)。以後、携帯端末300は、美容機器100の動きの監視を開始する(S601)。ユーザは、携帯端末300を、机の上等、美容機器100を操作しながら画面を見ることができるような位置におき、
図11に示す案内に従って開始位置に照射ヘッド20をあてがい、そこから美容機器100を掴んで皮膚の上を滑らすように連続的に照射ヘッド20を動かす。美容機器100は、予め定められた発光制御アルゴリズムに従って、発光が行われる(S602)。
【0050】
具体的には、所定距離の移動を検知することに1回の発光が行われる。所定距離とは、好ましくは、開口部210b(一回の照射で照射されるエリアに相当)の照射ヘッド20の移動方向に沿った長さ(この場合は、開口部210bの短辺の長さ)である。
発光が行われると、発光が実行されたことを示す信号と、発光したときの位置(処置開始位置を基準とする位置、あるいは発光が2回目以降の場合は前回発光が行われた位置を基準とする位置)を示す情報を携帯端末300に送信する(S603)。設定部322は、受信した位置情報に基づいて、照射が実行された領域を特定(S604)し、表示部350は特定結果に基づいて表示を更新する(S605)。
なお、制御部320は、S603で取得した情報で移動速度が許容範囲に収まっていないかを判定し(S606)、収まっていない場合は警告を行う(S607)。
以下、S602~S607の動作を繰り返す。
【0051】
図12は、処置の途中において携帯端末300に画面に表示される例である(オブジェクトOB7)。
R1は、1回の照射が行われた領域、R3は2回以上照射が行われた領域、R2は照射が行われていない領域を示す。R1、R2、R3は、例えば色や点滅の有無などによって、照射の状況の違いが一目でわかるように、表示の態様が異なっている。
ユーザは、画面を見ながら、当初が各領域に1回の照射を行う意図であるのに対し、操作が適切でなかったために、照射ヘッド20が通過しなかった領域や誤って同じ場所を2回以上照射した領域を容易に確認することができる。ユーザは、携帯端末300の画面を見ながら美容機器100を操作して、R2だけを狙って再度処置を行うことも可能である。
【0052】
この場合、皮膚に接触しながら照射ヘッド20を目的の領域まで動かすと、当該領域へ到達するまでの意図しない箇所において照射がなされてしまう可能性があるので、ユーザは一旦照射ヘッド20を皮膚から離し、再度目的の領域へあてがうという操作をすることになる。この場合、3次元加速度センサ等の、接触状態とは無関係に位置を計測する手段を美容機器100が備えている場合は、当該計測した位置情報に基づいて、再度接触した位置がどの領域に属するのかを特定することができる。そして特定した位置の情報を携帯端末300へ送信すれば、携帯端末300が処置途中の美容機器100の位置を見失うことはない。
【0053】
ユーザによる電源OFF操作等によって、あるいは一定期間が接触検知されないことを契機として、美容機器100は処置が終了したと判定すると(S701)、終了を示す信号が携帯端末300へ送信される(S702)。この信号を受信すると、携帯端末300は、処置の使用状況(対象部位、領域ごとの照射事実の有無)を含む使用履歴を生成してデータベースDB2を更新する(S703)。
【0054】
上記実施例によれば、ユーザが設定した処置対象部位のうち、照射が行われた領域が表示内容にリアルタイムに反映されるので、適宜画面を見ながらユーザは処置を行いつつ、目視では確認が難しい照射の状況を把握することができる。具体的には、照射が過剰である領域、照射が不足している領域、照射の均一性(ムラ)などを確認することができる。加えて、取扱いについてリアルタイムでユーザに警告することができる。
この結果、ユーザは自分の処置(美容機器100の取扱い操作)が適格であるのか否かを理解でき、必要に応じて処置の追加・やり直し等ができるように支援される。
<変形例>
【0055】
発光した事実を美容機器100から携帯端末300に送信する必要はない。例えば、美容機器100が、所定距離(例えば主な移動方向として想定されている方向に平行な開口部210bの短辺の長さサイズに相当)ごとに発光する制御となっていて、その制御内容が記憶部340に記憶されている場合は、美容機器100は、位置ないし動き情報のみを所定のサンプリング間隔で送信する。携帯端末300は、当該所定距離だけ移動した場合に発光したとみなす。ここで、ユーザの動かす速度が早すぎる場合は、移動した距離と実際の(発光タイミング)照射領域との間にずれが生じ得るが、最短照射間隔よりも早く速度で操作を検知したら、その期間は当該最短照射間隔で発光されたとみなしてもよい。
要するに、美容機器100における照射制御の内容を携帯端末300にて予め取得しておけば、少なくとも照射ヘッド20の位置または位置の変化についての情報を取得するだけで、照射が行われた領域を推定することができる。
【0056】
照射状況の提示はリアルタイムでなくてもよい。例えば、ある対象部位についての処置について、操作開始から終了までの照射ヘッド20の軌跡を記憶し、処置の終了時に領域ごとの照射の実行状況を表示してもよい。換言すると、ユーザが適切に美容機器100を操作しているか否かを確認するタイミングは任意である。
【0057】
図11に替えて
図13に示す画像(オブジェクトOB8)を表示してもよい。すなわち、操作位置だけでなく、動かす経路(領域を通過する順序)を案内する。例えば、美容機器100は、接触センサと、一方向の移動量のみ検知できるセンサしかなく、また、照射ヘッド20が事実上直線的しか動かせない場合において有効である。このような美容機器の場合、ユーザはまず同図の横方向へ移動させ、一旦皮膚から美容機器100を離し、異なる位置にあてがい再度横方向へ動かす、という動作を繰り返すことが想定される。
そこで、そのような操作を画面表示によって案内する。ユーザが案内の通りに操作すれば、美容機器100に3次元加速度センサ等が設けられていなくても、照射ヘッド20の皮膚との接触の有無の情報と、接触時に照射ヘッド20が移動した距離の情報とを携帯端末300に提供すれば、携帯端末300において照射が行われた領域を特定することが可能である。
【0058】
なお、上記実施例では、ユーザが画面の案内に従って美容機器100を操作することを前提としていたが、処置開始時あるいは処置中の照射ヘッド20の位置を直接特定してもよい。例えば、撮影部240の機能を用いて、あらかじめ処置を行う対象部位を3次元的に撮影し、例えば肌の色や毛穴の密度などの撮影対象を特徴づける情報とその位置を示す情報(例えば、対象部位が前腕の場合は、尺骨茎状突起の中心座標を原点とする3次元座標上の位置として定義される)とを対応付けて記憶しておく。そして、動作検出部110は、撮影部240によって撮影された画像を解析して特徴情報を抽出して、その特徴情報に基づいて位置を決定する。こうすれば、画面の案内に従わずにユーザが操作を行った場合であっても、照射ヘッド20の対象部位内の位置を確実に把握することができる。
【0059】
要するに、本件発明に係る端末において、光脱毛器から、光脱毛器の動きについての情報を受信するステップと、光脱毛器によって照射された皮膚の領域を表示するステップとが実行されればよい。
【符号の説明】
【0060】
100・・・美容機器、300・・・携帯端末、310・・・通信部、320・・・制御部、330・・・入力部、340・・・記憶部、350・・・表示部、360・・・通知部、321・・・判定部、322・・・設定部、140・・・通信部、110・・・動作検出部、120・・・制御部、150・・・照射部