(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】高温および高圧の再充電可能な電池で使用するためのナノコンポジット電極材料
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20230307BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230307BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230307BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230307BHJP
C01G 51/04 20060101ALI20230307BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20230307BHJP
C01B 21/064 20060101ALI20230307BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230307BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230307BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230307BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230307BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20230307BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20230307BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 A
H01M4/38 Z
H01M10/052
C01G51/04
C01B32/194
C01B21/064 M
H01M4/13
H01M4/58
H01M4/587
H01M4/62 Z
H01M4/133
H01M4/136
(21)【出願番号】P 2020537615
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(86)【国際出願番号】 IB2018056449
(87)【国際公開番号】W WO2019138271
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-08-20
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599130449
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アルサラン, ムハメッド
(72)【発明者】
【氏名】アルシャラエ, エドリース
(72)【発明者】
【氏名】ムーサ, ヤスミン
(72)【発明者】
【氏名】アーメッド, ファヒーム
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0141387(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0254528(US,A1)
【文献】特開2016-189320(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106654232(CN,A)
【文献】特表2017-521847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/052
C01G 51/04
C01B 32/194
C01B 21/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数の遷移金属酸化物ナノ粒子、(b)第1の二次元(2D)材料の複数の超薄シート、および(c)第2の2D材料の複数の超薄シートを含むナノコンポジットであって、前記第2の2D材料は前記第1の2D材料と種類が異な
り、
ここで、前記第2の2D材料が、六方晶窒化ホウ素、窒化ホウ素、および官能化された窒化ホウ素からなる群から選択されるメンバーである、ナノコンポジット。
【請求項2】
前記第1の2D材料が、2D炭素材料、2D窒化物、2D金属カルコゲナイド、2D酸化物、および2Dハイブリッド材料からなる群から選択されるメンバーである、請求項1に記載のナノコンポジット。
【請求項3】
前記第2の2D材料が、2D炭素材料、2D窒化物、2D金属カルコゲナイド、2D酸化物、および2Dハイブリッド材料からなる群から選択されるメンバーである、請求項1または請求項2に記載のナノコンポジット。
【請求項4】
前記第1の2D材料が、グラフェンまたは還元型酸化グラフェンである、請求項1~3のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項5】
前記第1の2D材料の複数の超薄シートの重量パーセントが、0.1%~20%の範囲である、請求項1~
4のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項6】
前記第2の2D材料の複数の超薄シートの重量パーセントが、0.1%~50%の範囲である、請求項1~
5のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項7】
成分の重量比(x:y:z)が、(1:0.001:0.001)から(1:0.67:1.67)
の範囲であり、ここで、xは前記複数の遷移金属酸化物ナノ粒子であり、yは前記第1の2D材料の前記複数の超薄シートであり、zは前記第2の2D材料の前記複数の超薄シートである、請求項1~
6のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項8】
前記複数の遷移金属ナノ粒子の
少なくとも一部の平均粒度が、300nm未満である、請求項1~
7のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項9】
前記複数の遷移金属ナノ粒子の
少なくとも一部の平均粒度が、30nm~45nmの範囲である、請求項1~
8のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項10】
前記複数の遷移金属ナノ粒子
の少なくとも一部が、標準偏差が2nmの粒度分布を有する、請求項1~
9のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項11】
前記複数の遷移金属ナノ粒子
の少なくとも一部が、ほぼ直方柱の形状である、請求項1~1
0のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項12】
前記複数の遷移金属酸化物ナノ粒子
の少なくとも一部が、酸化コバルトを含む、請求項1~1
1のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項13】
前記酸化コバルト
の少なくとも一部が、立方晶スピネル構造を有する、請求項1
2に記載のナノコンポジット。
【請求項14】
前記第1の2D材料の前記複数の超薄シートの少なくとも一部および前記第2の2D材料
の前記複数の超薄シート
の少なくとも一部の平均シート厚さが、20nm未満である、請求項1~1
3のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項15】
前記第1の2D材料の前記複数の超薄シートの少なくとも一部および前記第2の2D材料
の前記複数の超薄シート
の少なくとも一部の平均シート厚さが、5nm~20nmの範囲である、請求項1~1
4のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項16】
前記ナノコンポジットの比表面積が、10m
2/g~500m
2/gの範囲である、請求項1~1
5のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項17】
前記ナノコンポジットが、(i)結合剤、(ii)導電性添加剤、または(i)と(ii)の両方をさらに含む、請求項1から1
6のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項18】
前記ナノコンポジット中の前記結合剤および前記導電性添加剤の合計重量パーセントが、5%~20%の範囲である、請求項1
7に記載のナノコンポジット。
【請求項19】
前記ナノコンポジットが、50μm~200μmの範囲の厚さのフィルムである、請求項1
7または1
8に記載のナノコンポジット。
【請求項20】
硫黄をさらに含む、請求項1
7~
19のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
【請求項21】
前記硫黄の重量パーセントが、40%~80%の範囲である、請求項2
0に記載のナノコンポジット。
【請求項22】
アノードを含むリチウムイオン電池であって、前記アノードが、請求項1
7~2
1のいずれか一項に記載のナノコンポジットを含む、リチウムイオン電池。
【請求項23】
カソード、
電解質、および
前記アノードと前記カソードの間のセパレータ
をさらに含む、請求項2
2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項24】
i. 約25℃で、前記リチウムイオン電池の比容量が600mAh/g~少なくとも800mAh/gの範囲であり、
ii. 約100℃で、前記リチウムイオン電池の比容量が1~5mAh/gの範囲である、請求項2
2または請求項2
3に記載のリチウムイオン電池。
【請求項25】
約100℃で100回の充電/放電サイクルの後、約100℃での最初の充電サイクルの初期比充電容量と比較して、前記リチウムイオン電池が、その比容量の少なくとも90%を保持している、請求項2
2~2
4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項26】
約100℃で100回の充電/放電サイクルの後、前記リチウムイオン電池のクーロン効率が、100℃で90%またはそれを超える、請求項2
2~2
5のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項27】
カソードを含むリチウム硫黄電池であって、前記カソードが、請求項2
0または請求項2
1に記載の前記ナノコンポジットを含む、リチウム硫黄電池。
【請求項28】
アノード、
電解質、および
前記アノードと前記カソードの間のセパレータ
をさらに含む、請求項2
7に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項29】
ナノコンポジットを調製する方法であって、前記方法は、
遷移金属含有塩および酸化グラフェンを含む、所定の体積の第1の溶媒にマイクロ波照射を印加することにより、複数の遷移金属酸化物ナノ粒子および複数の超薄還元型酸化グラフェンシートを調製するステップと、
(i)所定の体積の第2の溶媒中で窒化ホウ素を酸化し、(ii)マイクロ波照射を前記体積の前記第2の溶媒に印加することにより、複数の超薄窒化ホウ素シートを調製するステップと、
(i)
前記複数の遷移金属酸化物ナノ粒子
の少なくとも一部、(ii)
前記複数の超薄還元型酸化グラフェンシート
の少なくとも一部、および(iii)
前記複数の超薄窒化ホウ素シート
の少なくとも一部を、所定の体積の第3の溶媒中で
一緒に接触させ、それによりナノコンポジット混合物を調製するステップと、
前記ナノコンポジット混合物を乾燥させ、それによりナノコンポジットを調製するステップとを含む、方法。
【請求項30】
前記ナノコンポジット混合物を乾燥させた後、前記ナノコンポジット混合物を
一緒に硫黄と接触させるステップを含む、請求項
29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2018年1月9日付で出願された米国特許出願第15/866,113の利益を主張し、その全内容は参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は一般に、ナノコンポジット、より詳細には、高温および高圧の条件での動作に耐えるように設計された再充電可能な電池(例えば、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、または両方)の電極材料に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
充電式電池は、電気自動車および携帯用電子デバイスなどの幅広い消費者向けデバイスに電力を供給するために使用される。しかし、これらの電池は、故障の影響を受けやすく、再充電可能なバッテリーが過充電、過放電、または高温および高圧で動作する場合などの「悪用条件」では安全ではない可能性がある。例えば、臨界温度よりも高い温度で動作すると、充電式電池は熱暴走を起こす可能性がある。熱暴走の間、高温が電池内で一連の発熱反応を引き起こし、電池の温度を急速に上昇させる。熱暴走は、電池の故障、デバイスの損傷、ユーザーへの害を引き起こす可能性がある。熱暴走の間、リチウム-イオン電池およびリチウム硫黄電池などの再充電可能な電池は、電極材料(例えば、アノードおよびカソード材料)は反応性が高く、不安定である可能性があるため、火災および爆発を起こす可能性がある。熱暴走が起こらない場合でも、再充電可能な電池で使用される電極材料は、高温で動作させると性能が低下する場合がある。例えば、リチウム系およびシリコン系のアノード材料は、高温で動作させると容量が低下する場合がある。したがって、熱暴走に耐性があり、高温および高圧の条件で操作された場合に、安全で、信頼性があり、安定している、改良された電極材料が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
本開示では、熱暴走に耐性があり、高温および高圧で動作する再充電可能な電池用の、安全で、信頼性があり、安定した電極材料として使用することができるナノコンポジットおよび再充電可能な電池が提示される。ナノコンポジットには、複数の遷移金属酸化物ナノ粒子、第1の二次元(2D)材料の複数の超薄シート、および第2の(そして異なる)2D材料の複数の超薄シートが含まれる。これらは相乗的に作用して、熱安定性の改良、表面積の増加、および電気化学特性の向上をナノコンポジットに提供する。例えば、ナノコンポジットを電極材料として含む再充電可能な電池は、室温から高温(例えば、約100℃)までの広い温度範囲にわたって、性能および安定性が向上している。これらの電池は、石油産業で使用されるダウンホール機器などの高温および高圧で動作するデバイスに安全で信頼性の高い電源を提供することにより、重要なニーズを満たす可能性がある。
【0005】
本開示は、第2の熱的に安定した二次元(2D)材料(例えば、六方晶窒化ホウ素)をナノコンポジットに含めることが、ナノコンポジットの熱安定性を改善するだけでなく、電極材料として使用した場合にナノコンポジットの電気化学的性能も改善する可能性があるという認識を包含する。よって、本開示に記載されるナノコンポジットを使用して、熱暴走イベントを同時に防止し、電池の全体的な電気化学的性能を向上させることができる。2D材料には、2D炭素材料(例えば、グラフェン、酸化グラフェン、または還元型酸化グラフェン)、2D窒化物(例えば、六方晶窒化ホウ素)、2D金属カルコゲナイド(例えば、MoS2、SnS2、TiS2、WS2、MoSe2、またはWSe2)、2D酸化物(例えば、TiO2、ZnO、MnO2、またはペルブスカイト)、2Dハイブリッド材料(例えば、MoS2/グラフェンまたはMoSe2/MnO2)、またはこれらの組合せを挙げることができる。
【0006】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、特定の実施形態では、第2の熱的に安定した2D材料(例えば、六方晶窒化ホウ素)は、ナノコンポジット中の他の2D材料(例えば、還元型酸化グラフェン)および複数の遷移金属酸化物ナノ粒子と相乗的に作用して、対応する電極材料の(i)熱安定性、(ii)機械的性質(例えば、強度)、(iii)物理的特性(例えば、比表面積)、(iv)および電気化学特性(例えば、比容量、クーロン効率、およびサイクル性能)を向上させると考えられる。例えば、第1の2D材料は、広い温度範囲にわたって、高圧で第2の(そして異なる)2D材料の存在下での動作中に、再積層および活性表面積の損失の影響を受けにくい可能性がある。これにより、動作寿命が長くなり、高温および高圧に対する耐性が向上する。さらに、特定の理論に縛られることを望むものではないが、第2の2D材料は、第1の2D材料の「基板」として機能し、そのキャリア移動度を効果的に増加させ、それにより幅広い温度範囲および高圧の条件下での電極材料としてのその電気化学特性を向上させることができると考えられる。
【0007】
特定の実施形態では、本開示に記載されるナノコンポジットは、従来の電極材料よりも、性能がよく、より安定しており、コストが低い場合がある。例えば、本開示に記載されるナノコンポジットは、高温(約100℃またはそれ超の)で安定していることができ、約100℃での1000回またはそれを超える充電/放電サイクルの後でさえ一貫した電気化学的性質を有し得る。例えば、本開示に記載されるナノコンポジットは、高温での数回の充電/放電サイクル後に、シリコンベースのアノードの特徴的な容量減衰の影響を受けない可能性がある。例えば、本開示に記載される方法は、熱水マイクロ波照射(hydrothermal microwave irradiation)に基づいているため、従来の電極材料を調製する既存の方法よりも費用がかからない可能性がある。
【0008】
特定の実施形態では、本開示に記載される再充電可能な電池(例えば、リチウムイオン電池およびリチウム硫黄電池)は、高温で動作する場合、従来の電池よりも安全である。例えば、従来のアノード材料での熱暴走イベントの主原因であるデンドライト状リチウムは、本開示に記載されるナノコンポジットでは形成されない。例えば、本開示に記載される電池では、1または複数の短絡が約100℃またはそれ超の温度で発生しない可能性があり、電池が高温で熱暴走しない可能性がある。したがって、本開示に記載されるナノコンポジットおよび再充電可能な電池は、安全なエネルギー蓄積デバイスおよび高温および高圧で動作するデバイスで使用することができる。例えば、本開示に記載される再充電可能な電池は、石油産業において、高温および高圧に直面する油井およびその他の石油関連用途の状態(例えば、温度および圧力)を監視するために使用されるようなダウンホール機器に電力を供給するために使用され得る。
【0009】
一態様では、本開示は、(a)複数の遷移金属酸化物(例えば、酸化コバルト)ナノ粒子、(b)第1の二次元(2D)材料の複数の超薄シート、および(c)第2の2D材料の複数の超薄シートを含むナノコンポジットに関する。第2の2D材料は、第1の2D材料とは種類が異なる。
【0010】
特定の実施形態では、第1の2D材料は、2D炭素材料(例えば、グラフェン、酸化グラフェン、または還元型酸化グラフェン)、2D窒化物(例えば、官能化された窒化ホウ素または六方晶窒化ホウ素)、2D金属カルコゲナイド(例えば、MoS2、SnS2、TiS2、WS2、MoSe2、またはWSe2)、2D酸化物(例えば、TiO2、ZnO、MnO2、またはペルブスカイト(perovskitee))、および2Dハイブリッド材料(例えば、MoS2/グラフェンまたはMoSe2/MnO2)からなる群から選択されるメンバーである。
【0011】
特定の実施形態では、第2の2D材料は、2D炭素材料(例えば、グラフェン、酸化グラフェン、または還元型酸化グラフェン)、2D窒化物(例えば、官能化された窒化ホウ素または六方晶窒化ホウ素)、2D金属カルコゲナイド(例えば、MoS2、SnS2、TiS2、WS2、MoSe2、またはWSe2)、2D酸化物(例えば、TiO2、ZnO、MnO2、またはペルブスカイト)、および2Dハイブリッド材料(例えば、MoS2/グラフェンまたはMoSe2/MnO2)からなる群から選択されるメンバーである。
【0012】
特定の実施形態では、第1の2D材料は、グラフェンまたは還元型酸化グラフェンである。
【0013】
特定の実施形態では、第2の2D材料は、六方晶窒化ホウ素、窒化ホウ素、および官能化された窒化ホウ素からなる群から選択されるメンバーである。例えば、窒化ホウ素は、化学酸化によって官能化されてもよいし、熱水マイクロ波照射によって官能化されてもよいし、両方であってもよい。
【0014】
特定の実施形態では、第1の2D材料の複数の超薄シートの重量パーセントは、0.1%~20%の範囲である。この重量パーセントは、複数の遷移金属酸化物ナノ粒子、第1の2D材料の複数の超薄シート、および第2の2D材料の複数の超薄シートの総重量に基づく。
【0015】
特定の実施形態では、第2の2D材料の複数の超薄シートの重量パーセントは、0.1%~50%の範囲である。この重量パーセントは、複数の遷移金属酸化物ナノ粒子、第1の2D材料の複数の超薄シート、および第2の2D材料の複数の超薄シートの総重量に基づく。
【0016】
特定の実施形態では、ナノコンポジットは、成分の重量比(x:y:z)が、(1:0.001:0.001)から(1:0.67:1.67)の範囲であり、ここで、xは複数の遷移金属酸化物ナノ粒子であり、yは第1の2D材料の複数の超薄シートであり、zは第2の2D材料の複数の超薄シートである。
【0017】
特定の実施形態では、複数の遷移金属ナノ粒子の少なくとも一部の平均粒度は300ナノメートル(nm)未満である。例えば、遷移金属ナノ粒子のサイズは、走査型電子顕微鏡法を使用して決定することができる。
【0018】
特定の実施形態では、複数の遷移金属ナノ粒子の少なくとも一部の平均粒度は、30nm~45nmの範囲である。
【0019】
特定の実施形態では、複数の遷移金属ナノ粒子の少なくとも一部は、標準偏差が2nmの粒度分布を有する。
【0020】
特定の実施形態では、複数の遷移金属ナノ粒子の少なくとも一部は、ほぼ直方柱の形状である。例えば、遷移金属ナノ粒子の形状は、走査型電子顕微鏡法を使用して決定することができる。
【0021】
特定の実施形態では、複数の遷移金属酸化物ナノ粒子の少なくとも一部は、酸化コバルト(例えば、Co3O4)を含む。
【0022】
特定の実施形態では、酸化コバルトの少なくとも一部は、立方晶スピネル結晶構造を有する。例えば、結晶構造は、複数の遷移金属酸化物ナノ粒子のX線回折(XRD)パターンのピークの強度または相対強度に基づいて決定することができる。例えば、結晶構造は、選択領域電子回折(SAED)分析で測定した面間隔に基づいて決定することができる。
【0023】
特定の実施形態では、第1の2D材料の複数の超薄シートの少なくとも一部および第2の2D材料の複数の超薄シートの少なくとも一部の平均シート厚さは、20nm未満である。例えば、超薄シートの厚さは、走査型電子顕微鏡法を使用して決定することができる。
【0024】
特定の実施形態では、第1の2D材料の複数の超薄シートの少なくとも一部および第2の2D材料の複数の超薄シートの少なくとも一部の平均シート厚さは、5nm~20nmの範囲である。
【0025】
特定の実施形態では、第1の2D材料の複数の超薄シートの少なくとも一部および第2の2D材料の複数の超薄シートの少なくとも一部の平均シート厚さは、5nm~10nmの範囲である。
【0026】
特定の実施形態では、ナノコンポジットの比表面積は、10平方メートル/グラム(m2/g)から500m2/gの範囲である。例えば、比表面積は、窒素吸着/脱着等温線を介して測定されたブルナウアー-エメット-テラー(BET)の比表面積であってよい。特定の実施形態では、ナノコンポジットの比表面積は、10m2/gから200m2/gの範囲である。
【0027】
特定の実施形態では、ナノコンポジットは、(i)結合剤(例えば、ポリフッ化ビニリデン)、(ii)導電性添加剤(例えば、カーボンブラック)、または(i)と(ii)の両方をさらに含む。
【0028】
特定の実施形態では、ナノコンポジット中の結合剤と導電性添加剤の合計重量パーセントは、5%~20%の範囲である。例えば、結合剤と導電性添加剤の合計重量パーセントは、約10%であってよい。合計重量パーセントは、(i)複数の遷移金属酸化物ナノ粒子、(ii)第1の2D材料の複数の超薄シート、(iii)第2の2D材料の複数の超薄シート、および(iv)ナノコンポジット中に存在する結合剤、導電性添加剤、または両方の総重量に基づく。例えば、ナノコンポジット中の結合剤の量はゼロであってよい;または、ナノコンポジット中の導電性添加剤の量はゼロであってよい;またはナノコンポジットは、結合剤と導電性添加剤の両方を含んでよい。
【0029】
特定の実施形態では、ナノコンポジットは、50マイクロメートル(μm)~200μmの範囲の厚さのフィルムである。例えば、フィルム厚さは、プロフィロメトリーまたは走査型電子顕微鏡法を使用して決定することができる。
【0030】
特定の実施形態では、ナノコンポジットは、10μm~20μmの範囲の厚さのフィルムである。
【0031】
特定の実施形態では、ナノコンポジットは、硫黄も含む。例えば、ナノコンポジットは、硫黄元素、硫黄含有塩、硫黄を含有しリチウムを含有する塩、硫黄/グラフェンコンポジット、またはこれらの組合せも含む。
【0032】
特定の実施形態では、硫黄の重量パーセントは40%~80%の範囲である。例えば、硫黄の重量パーセントは、60%~80%または70%~80%であってよい。重量パーセントは、(i)複数の遷移金属酸化物ナノ粒子、(ii)第1の2D材料の複数の超薄シート、(iii)第2の2D材料の複数の超薄シート、(iv)ナノコンポジット中に存在する結合剤、導電性添加剤、または両方、および(v)硫黄の総重量に基づく。
【0033】
一態様では、本開示は、アノードを含むリチウムイオン電池に関する。アノードには、前述のナノコンポジットが含まれる。
【0034】
特定の実施形態では、リチウムイオン電池には、カソード(例えば、リチウム金属またはリチウム金属酸化物)、電解質[例えば、1またはそれを超える有機溶媒(例えば、エチレンカーボネートまたはジメチルカーボネート)に溶解した1またはそれを超えるリチウム塩(例えば、六フッ化リン酸リチウム)]、およびアノードとカソードとの間のセパレータ(例えば、ポリプロピレン膜)も含まれる。
【0035】
特定の実施形態では、約25℃で、リチウムイオン電池の比容量(例えば、比充電/放電容量)は、600ミリアンペア時/グラム(mAh/g)(例えば、651.4mAh/g)から少なくとも800mAh/g(例えば、816.5mAh/g)の範囲である。例えば、比容量は、約200ミリアンペア/グラム(mA/g)の電流密度で測定することができる。約100℃で、リチウムイオン電池の比容量(例えば、充電/放電容量)は、1~5mAh/gの範囲である(例えば、比電荷容量が1mAh/g、比放電容量が2mAh/g)。例えば、比容量は、約100mA/gの電流密度で測定することができる。
【0036】
特定の実施形態では、約100℃で100回の充電/放電サイクルの後または約100℃で1000回の充電/放電サイクルの後、約100℃での最初の充電サイクルの初期比充電容量と比較して、リチウムイオン電池が、その比容量の少なくとも90%を保持している。
【0037】
特定の実施形態では、約100℃で100回の充電/放電サイクルの後または約100℃で1000回の充電/放電サイクルの後、リチウムイオン電池のクーロン効率が、100℃で90%またはそれを超える。
【0038】
一態様では、本開示は、カソードを含むリチウム硫黄電池に関する。カソードには、前述のナノコンポジットが含まれる。
【0039】
特定の実施形態では、リチウム硫黄電池(batter)には、アノード(例えば、リチウム金属)、電解質[例えば、有機溶媒(例えば、1,2-ジメトキシエタン(DME)または1,3-ジオキソラン(DOL))中の1またはそれを超えるリチウム塩(例えば、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩(LiTFSI))]、およびアノードとカソードとの間のセパレータ(例えば、ポリプロピレン膜)も含まれる。
【0040】
一態様では、本開示は、ナノコンポジットを調製する方法に関する。この方法には、遷移金属含有塩[例えば、酢酸コバルト(II)四水和物(Co(C2H3O2)2)、硝酸コバルト、または塩化コバルト]および酸化グラフェンを含む、所定の体積の第1の溶媒にマイクロ波照射を印加することによって、複数の遷移金属酸化物ナノ粒子および複数の超薄還元型酸化グラフェンシートを調製することが含まれる。例えば、マイクロ波照射は、少なくとも140℃の温度で印加されてよい。マイクロ波照射は、140℃~220℃の範囲の温度で印加されてよい。マイクロ波照射は、例えば、180℃で印加されてよい。マイクロ波照射は、例えば、少なくとも900ワット(W)のマイクロ波電力で印加されてよい。マイクロ波照射は、900W~1800Wの範囲のマイクロ波電力で印加されてよい。マイクロ波照射は、少なくとも150ポンド/平方インチ(psi)の圧力で、または例えば、150psi~350psiの範囲の圧力で印加されてよい。遷移金属含有塩の濃度は、0.01モル/リットル(mol/L)~0.5mol/Lの範囲である。この方法には、(i)窒化ホウ素を所定の体積の第2の溶媒(例えば、H2O2とH2SO4の混合物)で酸化し、(ii)マイクロ波照射をその体積の第2の溶媒に印加すること(例えば、120℃~180℃の範囲の温度で15分間、マイクロ波電力900W、圧力150psi)によって、複数の超薄窒化ホウ素シートを調製することが含まれる。この方法には、(i)複数の遷移金属酸化物ナノ粒子の少なくとも一部、(ii)複数の超薄還元型酸化グラフェンシートの少なくとも一部、および(iii)複数の超薄窒化ホウ素シートの少なくとも一部を所定の体積の第3の溶媒中でともに接触させ、それによりナノコンポジット混合物を調製することが含まれる。この方法には、ナノコンポジット混合物を乾燥させ(例えば、60℃で約12時間)、それによりナノコンポジットを調製することが含まれる。
【0041】
特定の実施形態では、この方法には、ナノコンポジット混合物を乾燥させた後に、ナノコンポジット混合物と硫黄(例えば、硫黄元素、硫黄を含有する塩、硫黄を含有しリチウムを含有する塩、硫黄/グラフェンコンポジット、またはこれらの組合せ)をともに接触させることが含まれる。例えば、硫黄の重量パーセントは、50%~80%の範囲、60%~80%、または70%~80%であってよい。重量パーセントは、ナノコンポジットの総重量に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本開示の前述およびその他の目的、実施態様、特徴、および利点は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することにより、より明らかになり、よりよく理解されるであろう。
【
図1A】
図1Aは、例示的な実施形態によるナノコンポジットを調製するための方法を示すブロック図である。
【
図1B】
図1Bは、例示的な実施形態による酸化グラフェンを調製するための方法を示すブロック図である。
【
図1C】
図1Cは、例示的な実施形態による遷移金属酸化物/第1の2D材料サンプルを調製するための方法を示すブロック図である。
【
図1D】
図1Dは、例示的な実施形態による第2の2D材料を調製するための方法を示すブロック図である。
【
図1E】
図1Eは、例示的な実施形態による遷移金属酸化物/第1の2D材料サンプルと第2の2D材料を組み合わせるための方法を示すブロック図である。
【
図2】
図2Aは、例示的な実施形態によるナノコンポジットを示すブロック図である。
図2Bは、例示的な実施形態による複数の超薄還元型酸化グラフェンシート、複数の酸化コバルトナノ粒子、および複数の超薄窒化ホウ素シートを含むナノコンポジットを示すブロック図である。
【
図3A】
図3Aは、例示的な実施形態によるリチウムイオン電池を示すブロック図である。
【
図3B】
図3Bは、例示的な実施形態によるリチウム硫黄電池を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、例示的な実施形態による、Co
3O
4ナノ粒子(曲線a)、Co
3O
4/RGOサンプルの例(曲線b)、Co
3O
4/h-BNサンプルの例(曲線c)、およびCo
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジットの例(曲線d)のX線回折(XRD)パターンのプロットである。
【
図5】
図5は、例示的な実施形態による、Co
3O
4ナノ粒子の例、Co
3O
4/RGOサンプルの例、Co
3O
4/h-BNサンプルの例、およびCo
3O
4/RGO/h-BNサンプルの例のラマンスペクトルのプロットである。
【
図6】
図6Aは、例示的な実施形態によるCo
3O
4ナノ粒子の例の走査型電子顕微鏡写真である。
図6Bは、例示的な実施形態によるCo
3O
4/RGOサンプルの例の走査型電子顕微鏡写真である。
図6Cは、例示的な実施形態によるCo
3O
4/h-BNサンプルの例の走査型電子顕微鏡写真である。
図6Dは、例示的な実施形態によるCo
3O
4/RGO/h-BNサンプルの例の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図7】
図7は、例示的な実施形態による異なるサンプルの例の熱重量分析(TGA)曲線のプロットである。
【
図8】
図8は、例示的な実施形態による異なるサンプルの例の、
図7に示されるTGA曲線の一次導関数プロット(DTG曲線)である。
【
図9】
図9Aは、例示的な実施形態によるCo
3O
4ナノ粒子の例の窒素吸着-脱着等温線のプロットである。
図9Bは、例示的な実施形態によるCo
3O
4/RGOサンプルの例の窒素吸着-脱着等温線のプロットである。
図9Cは、例示的な実施形態によるCo
3O
4/h-BNサンプルの例の窒素吸着-脱着等温線のプロットである。
図9Dは、例示的な実施形態によるCo
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジットの例の窒素吸着-脱着等温線のプロットである。
【
図10A】
図10Aは、例示的な実施形態による、異なるアノード材料で調製したリチウムイオン電池についての電圧と比容量の曲線のプロットである。
【
図10B】
図10Bは、例示的な実施形態による、異なるアノード材料で調製したリチウムイオン電池についての虚数インピーダンス(Z’’)と実数インピーダンス(Z)のナイキストプロットである。
【
図11】
図11は、例示的な実施形態による、室温(約25℃)で100回の充電/放電サイクルの、Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジットを含むアノードを備えた電池の例の比容量と充電/放電サイクル数のプロットである。
【
図12】
図12は、例示的な実施形態による、約100℃で100回の充電/放電サイクルの、Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジットを含むアノードを備えた電池の例の比容量と充電/放電サイクル数のプロットである。
【
図13】
図13は、例示的な実施形態による、約100℃で1,000回の充電/放電サイクルの、Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジットを含むアノードを備えた電池の例の比容量と充電/放電サイクル数のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示の特徴および利点は、同様の参照文字が全体を通して対応する要素を識別する図面と併せて解釈されると、以下に示される詳細な説明から、より明らかになるであろう。図面中、同様の参照番号は、一般に、同一要素、機能上類似する要素、または構造上類似する要素を示す。
【0044】
定義
約、およそ: 本開示で使用される、「約」または「およそ」という用語は、数字に関して、特に明記しない限り、または文脈から明白でない限り、数のいずれかの方向(大きい方向または小さい方向)に20%、10%、5%、1%、または0.5%の範囲内にある数を含むために使用される(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0045】
アノード: 本開示で使用される、「アノード」という用語は、電池のアノードを指す。酸化反応はアノードで起こる。
【0046】
キャリア移動度:本開示で使用される、「キャリア移動度」という用語は、電界の存在下で電子または正孔が材料を通って輸送され得る速さの測定基準を指す。例えば、キャリア移動度が増加した電極は、キャリア移動度が減少した電極と比較して、導電率が増加し、電気化学特性が改善されている傾向がある。
【0047】
カソード: 本開示で使用される、「カソード」という用語は、電池のカソードを指す。還元反応はカソードで起こる。
【0048】
容量、比容量、比充電容量: 本開示で使用される、「容量」という用語は、所与負荷での電池の放電電流(例えば、単位はアンペア(A)またはミリアンペア(mA))と放電時間(例えば、単位は時間(h))の積を意味する。例えば、「容量」はアンペア時(Ah)またはミリアンペア時(mAh)で表すことができる。本開示で使用される、「比容量」という用語は、所与重量の電極材料についての(例えば、電池のアノード材料として使用される所与重量のナノコンポジットについての)所与負荷の電池の放電電流と放電時間の積を意味する。例えば、「比容量」はアンペア時/グラム(Ah/g)またはミリアンペア時/グラム(mAh/g)で表すことができる。特定の実施形態では、「比容量」は、「比放電容量」とも呼ばれる。本開示で使用される、「比充電容量」という用語は、所与重量の電極材料についての(例えば、アノード材料として使用される所与重量のナノコンポジットについての)所与負荷の電池の充電電流と充電時間の積を意味する。例えば、「比充電容量」は、Ah/gまたはmAh/gで表すことができる。
【0049】
充電/放電サイクル、サイクル: 本開示で使用される、「充電/放電 サイクル」および「サイクル」という用語は、電池の充電、放電、またはその両方のプロセスを指す。例えば、単一の充電/放電サイクルには、電池を充電することと放電することが含まれる。特定の実施形態では、電池は、放電サイクル中に完全にまたは部分的に放電されてよい。例えば、充電サイクル中に、電池の容量の100%、90%、80%、70%、またはそれ未満が放電され得る。同様に、特定の実施形態では、電池は、充電サイクル中に完全にまたは部分的に充電されてよい。例えば、電池は、充電サイクル中にその全容量の100%、90%、80%、70%、またはそれ未満まで充電され得る。
【0050】
ダウンホール機器: 本開示で使用される、「ダウンホール機器」という用語は、油井の内部の状態を測定するために使用される装置を指す。例えば、ダウンホール機器 には、油井の内部の圧力を測定するための圧力センサ、または油井の内部の温度を測定するための温度センサが含まれ得る。本開示で使用される、「油井」という用語は、地下の炭化水素貯留層から地表に炭化水素(例えば、油)を運ぶように設計された、地球のボーリング(例えば、ドリル穴またはトンネル)を意味する。
【0051】
酸化グラフェン: 本開示で使用される、「酸化グラフェン」という用語は、炭素、酸素、および水素の化合物の超薄シートから実質的になる材料を指し、各シートの厚さは炭素環の単層によって定義される(例えば、炭素環の1層は、およそ1原子の厚さであり、炭素環の端部には、炭素環の面の上方、炭素環の面の下方、またはこれらの組合せに酸素含有部分が結合している)。特定の実施形態では、炭素、酸素、および水素は、さまざまな比率で存在し得る。酸化グラフェンは、例えば、グラファイトを強い酸化剤で処置することによって得ることができる。特定の実施形態では、酸化グラフェンにはドーパントが含まれてよい;特定の実施形態ではドーパントは存在しない。ドーパントの例には、ホウ素および窒素が挙げられる。
【0052】
高圧: 本開示で使用される、「高圧」という用語は、気圧(1気圧)よりも高い圧力を指す。例えば、油井は、一般に、油井の高い温度、坑井から含油層へと延びる水柱からの静水圧、貯油層にポンプで流体を注入および排出することによって起こる圧力、ならびに、貯油層内のガスおよび流体などからの内部圧力源のために、石油の回収中は高圧の条件下にある。高圧の例は、例えば、少なくとも1気圧、少なくとも10ポンド/平方インチゲージ(psig)、少なくとも50psig、少なくとも100psig、少なくとも200psig、少なくとも500psig、少なくとも1000psig、少なくとも2000psig、少なくとも3000psig、または少なくとも5000psigである。
【0053】
高温: 本開示で使用される、「高温」という用語は、約80℃~約100℃の温度を指す。例えば、貯油層は、掘削または石油の回収中に、80℃~100℃ またはそれを超える温度であり得る。
【0054】
改善、増加、低下、減少: 本開示で使用される、「改善」、「増加」、「低下」、「減少」という用語、またはそれらの文法的に同等の用語は、ベースラインまたは他の基準測定値に対する値を示す。特定の実施形態では、適切な基準測定値は、これらの条件の特定の変化(例えば、温度の変化)が存在しない(例えば、以前の)特定の基準条件下での(例えば、平均周囲温度に近い温度での)測定であるか、またはそれを含むことができる。
【0055】
安定した: 本開示で使用される、「安定した」という用語は、物理的性質が実質的に変化しないこと、または使用可能な寿命にわたって性能が実質的に低下しないことを指す。例えば、安定したナノコンポジットは、ナノコンポジットが使用される製品の所定の使用可能な寿命の間、実質的な物理的変化を受けない。例えば、充電式電池用の安定した電極は、繰り返し使用した後もその充電容量を実質的に保持する。
【0056】
実質的に: 本開示で使用される、「実質的に」という用語は、特徴または特性の合計またはほぼ合計の範囲または程度を示す定性的な状態を指し、ここで「ほぼ合計」とは、全体の20%、10%、5%、1%、または0.5%以内(いずれの方向も)を指す。
【0057】
二次元(2D)材料: 本開示で使用される、「2D材料」という用語は、およそ1原子の厚さの単層によって規定される厚さを有する超薄シートから実質的に構成される材料を指す。例えば、グラフェン、還元型酸化グラフェン、六方晶窒化ホウ素などは二次元材料である。特定の実施形態では、2D材料にはドーパントが含まれてよい;特定の実施形態ではドーパントは存在しない。ドーパントの例には、炭素、ホウ素および窒素が挙げられる。
熱安定性: 本開示で使用される、「熱安定性」という用語は、材料が高温で安定している程度の尺度を指す。例えば、熱安定性の優れた電極材料は、高温で安定したままであるが、熱安定性の劣った電極材料は、変化(例えば、化学的または構造的変換)を受けて、性能の低下を導く可能性がある。
【0058】
超薄: 本開示で使用される、「超薄」という用語は、単一原子の厚さの1桁または2桁の範囲内の単層によって定義される厚さを有することを指す。例えば、複数の超薄シートの平均シート厚さは、20nm以下、例えば、5nm~20nmの範囲であり得る。その他の実施形態では、超薄シートは、10原子以下、5原子以下、3原子以下、2原子以下、または約1原子の直径に等しい平均厚さを有してよい。例えば、超薄シートは、約0.3nm~1.5nmの厚さであってよい。
【0059】
詳細な説明
本開示に記載されるシステム、アーキテクチャ、デバイス、方法、およびプロセスは、本開示に記載される実施形態からの情報を用いて開発された変形形態および適応形態を包含することが企図される。本開示に記載されるシステム、アーキテクチャ、デバイス、方法、およびプロセスの適応、修正、または両方は、本明細書に企図されるように実行されてよい。
【0060】
本明細書を通して、物品、デバイス、システム、およびアーキテクチャが、特定の成分を有する、含む(including)、または含む(comprising)と記載されている場合か、またはプロセスおよび方法が特定のステップを有する、含む、または含むと記載されている場合には、列挙される成分から本質的に構成されるかまたは構成される本開示の物品、デバイス、システム、およびアーキテクチャが存在すること、ならびに、列挙されるプロセスステップから本質的に構成されるかまたは構成される本開示によるプロセスおよび方法が存在することがさらに企図される。
【0061】
ステップの順序または特定のアクションを実行するための順序は、本開示が使用可能である限り、重要ではないことを理解されたい。さらに、2またはそれを超えるステップまたはアクションは、同時に実行されてよい。
【0062】
本開示における、例えば背景技術の節における任意の刊行物への言及は、その刊行物が、本開示において提示される特許請求の範囲に関して先行技術として役立つことを認めるものではない。背景技術の節は、明確にするために提示されるものであり、特許請求の範囲に関する先行技術の説明を意味するものではない。
【0063】
ヘッダーは読者の便宜のために設けている。ヘッダーの存在、配置、またはその両方は、本開示に記載される主題の範囲を制限することを意図するものではない。
【0064】
本開示は、2つの異なる二次元(2D)材料を複数の遷移金属酸化物ナノ粒子を組み合わせることによる相乗効果の認識を包含している。例えば、複数の六方晶窒化ホウ素シート、複数の還元型酸化グラフェンシート、および複数のCo3O4ナノ粒子を含むナノコンポジットは、再充電可能な電池の電極材料と使用した場合に、改良された熱特性および改良された電気化学特性をもたらすことができる。例えば、複数の超薄還元型酸化グラフェンシートの重量パーセントが0.1%~20%の範囲であり、複数の超薄窒化ホウ素シートの重量パーセントが0.1%~50%の範囲であるナノコンポジットは、向上した比表面積、改良された比充電/放電容量、および室温(例えば、約25℃)でも高温(例えば、約100℃またはそれを超える温度)でも安定したサイクル性能を示すことができる。
【0065】
特定の実施形態では、本開示に記載される電池(例えば、リチウムイオン電池またはリチウム硫黄電池)は、油井内の状態を測定するか、その他の石油操作中、例えば石油の発見や回収中などに使用されるダウンホール機器に電力を供給するために使用することができる。例えば、ダウンホール機器には、掘削および石油の回収中の油井において、圧力および温度をそれぞれ測定するための圧力センサおよび温度センサが含まれる。例えば、油井の状態は、80℃~100℃またはそれを超える範囲の温度で変化する可能性がある。これらの状態をモニターする機能により、掘削および石油の回収をより効果的に行うことができ、潜在的な安全上の懸念(例えば、温度、圧力、または両方の急な上昇に起因)を早期に特定し、機器の損傷および人身への傷害のリスクを大幅に削減できる。本開示に記載される再充電可能な電池は、ダウンホール機器に電力を供給するために使用される従来の電池と比較して、改善された安全性、電気化学的性質、および安定性を有し得る。例えば、本開示に記載されるリチウムイオン電池およびリチウム硫黄電池は、従来の電極材料を採用した電池よりもエネルギー密度、サイクル寿命、および構造安定性が向上した軽量電源を提供する。
【0066】
特定の実施形態では、本開示に記載される再充電可能な電池は、そうでなければ熱暴走の可能性を制限する試みで使用され得る複雑な工学技術および安全装置の必要性を不要にする(または減少させる)。例えば、安全装置は、電池における高圧を緩和して熱暴走を防ぐのに役立つことがあるが、そのような装置は100%効果的ではないか、または完全に信頼できない。代わりに、本開示に記載される再充電可能な電池は、複雑な安全装置に頼らずに熱暴走を防止するための、より高い費用効果およびより安全な選択肢を提供する。
【0067】
ナノコンポジット
2D材料への前駆体の調製
図1Aは、例示的な実施形態による、ナノコンポジットを調製するための方法100の実例となる例を示す。特定の実施形態では、この方法は、必要に応じて、ステップ110で第1の2D材料への前駆体を調製することから始まる。このステップの実例となる例として、
図1Bは、グラファイトから酸化グラフェンを調製するための方法102の例を示す。
【0068】
図1Bの実例となる例に見られるように、グラファイトは硫酸中で酸化される(ステップ112)。グラファイトの濃度は、約5ミリグラム/ミリリットル(mg/mL)またはそれを超える。例えば、添加されたグラファイトの濃度は、約5mg/mL~約20mg/mLの範囲であり得る。硫酸の濃度は、少なくとも1モル/リットル(mol/L)である。例えば、硫酸の濃度は、1mol/L~3mol/Lの範囲であり得る。
【0069】
ステップ114では、過マンガン酸カリウムが、ステップ112で調製した混合物に添加される。過マンガン酸カリウムは、少なくとも1mol/Lの過マンガン酸カリウムの最終濃度を達成するために添加される。例えば、過マンガン酸カリウムの濃度は、1mol/L~2mol/Lの範囲であり得る。ステップ114では、過マンガン酸カリウムは、ステップ112で調製した混合物に、1:1の体積比(過マンガン酸カリウム溶液の体積:硫酸溶液の体積)で添加される。特定の実施形態では、ステップ112で調製した混合物は、過マンガン酸カリウムを添加する前に20℃またはそれ未満に冷却される場合がある。
【0070】
ステップ116では、ステップ114で調製した混合物は、撹拌または混合される。例えば、混合物は、5分(min)、10分、30分、1時間、12時間、または同様の期間で撹拌される場合がある。例えば、混合物は、機械的に撹拌されるか、磁気撹拌子で撹拌されるか、または超音波照射に曝される場合がある。撹拌の方法は、ステップ112およびステップ114において混合物を調製するために使用される容器のサイズに対応するように選択されてよい。ステップ116での混合または撹拌は、約30℃~40℃の範囲の温度で行われてよい。
【0071】
ステップ116の後、反応はステップ118で完了した。例えば、混合物中の固体は(例えば、遠心分離と上澄みの除去によって)液体から分離される。次に、固体を反応流体に再分散させて、酸化反応を完了する。特定の実施形態では、反応流体には、過酸化水素(H2O2)が含まれてよい。反応流体中の過酸化水素の濃度は、少なくとも0.1mol/Lである。例えば、過酸化水素の濃度は、0.1mol/L~0.3mol/Lの範囲であり得る。特定の実施形態では、反応流体は、過炭酸ナトリウムを含むことができる。酸化グラフェンは、ステップ118の後に生成される。
【0072】
ステップ118で反応が完了した後、固体生成物は反応流体から分離され、ステップ120で乾燥されて酸化グラフェン粉末が得られる。材料は、遠心分離、濾紙、真空濾過、またはこれらの組合せを用いて濾過することができる。例えば、酸化グラフェンの乾燥粉末を得るために、材料を室温または50℃、60℃、70℃、または80℃で乾燥させることができる。例えば、生成物は、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、または同様の期間、乾燥させることができる。
【0073】
特定の実施形態では、酸化グラフェンの調製が必要とされない場合がある。例えば、酸化グラフェンは、購入されてもよいし(例えば、乾燥粉末として、または流体に分散させて)、そのまま使用してもよい。特定の実施形態では、酸化グラフェンシートは、使用前に改質されてよい。例えば、さらなる使用の前に、酸化グラフェンの洗浄、精製、濾過、乾燥、またはこれらの組合せを行うことができる。
【0074】
遷移金属ナノ粒子/2D材料の調製
図1Aに戻ると、第1の2D材料の複数の遷移金属酸化物ナノ粒子(TMO NPs)および複数の超薄シートを含むサンプル(すなわち、TMO NPs/第1の2D材料サンプル)が、方法100の例のステップ130で調製される。第1の2D材料は、2D炭素材料(例えば、グラフェン、酸化グラフェン、または還元型酸化グラフェン)、2D窒化物(例えば、官能化された窒化ホウ素または六方晶窒化ホウ素)、2D金属カルコゲナイド(例えば、MoS
2、SnS
2、TiS
2、WS
2、MoSe
2、またはWSe
2)、2D酸化物(例えば、TiO
2、ZnO、MnO
2、またはペルブスカイト)、または2Dハイブリッド材料(例えば、MoS
2/グラフェンまたはMoSe
2/MnO
2)を挙げることができる。例えば、第1の2D材料は、グラフェンまたは還元型酸化グラフェンであってよい。
【0075】
図1Cは、TMO NPs/第1の2D材料サンプルを調製するための方法104の実例となる例を示す。方法104の例のステップ132では、酸化グラフェン(例えば、
図1Aに示される方法100のステップ104で調製されたかまたは別な方法で得たもの)が、コバルト含有塩を含む溶液に添加される。例えば、コバルト含有塩は、酢酸コバルト(II)四水和物(Co(C
2H
3O
2)
2)、硝酸コバルト、または塩化コバルトであってよい。溶液中のコバルト含有塩の濃度は、0.01mol/L~0.5mol/Lの範囲である。溶液中の酸化グラフェンの濃度は、1mg/mL~3mg/mLの範囲である。例えば、溶液中の酸化グラフェンの濃度は、2mg/mLであってよい。
【0076】
特定の実施形態では、ステップ132で得られた混合物は撹拌または混合されてよい。混合物は、5分、10分、30分、1時間、12時間、または同様の期間で撹拌される。例えば、混合物は、機械的に撹拌されるか、磁気撹拌子で撹拌されるか、または超音波照射に曝される。撹拌の方法は、ステップ132においてCo3O4/RGOサンプルを調製するために使用される容器のサイズに対応するように選択されてよい。
【0077】
方法104の例のステップ134には、ステップ132の混合物の熱水マイクロ波照射が含まれる。このステップでは、混合物は、高温高圧下でマイクロ波に曝露される。例えば、混合物は(例えば、オートクレーブ内で)少なくとも140℃の温度に加熱される。例えば、混合物は、140℃~220℃の範囲の温度に加熱されてよい。例えば、混合物は、180℃の温度に加熱されてよい。ステップ134の間、混合物は、少なくとも150psiの圧力で容器(例えば、オートクレーブ)内に保持される。例えば、混合物は、150psi~350psiの範囲の圧力で容器内に保持されることができる。ステップ134では、混合物は、900Wから1800Wの範囲の出力でマイクロ波を照射される。例えば、熱水マイクロ波照射は、30分から60分の範囲の反応時間の間、行われてよい。
【0078】
ステップ136では、混合物が洗浄される。例えば、混合物中の固体は密度に基づいて(例えば、遠心分離および上清の除去によって)液体から分離される。次に、固体を洗浄流体に再分散させて、固体生成物から残留材料を除去する。このプロセスは、複数回繰り返すことができる。洗浄流体には、蒸留水、別の溶媒(例えば、有機溶媒)、1またはそれを超える塩、酸(例えば、希塩酸)、またはこれらの組合せが含まれてよい。
【0079】
固体材料をステップ136で洗浄した後、それを洗浄液から分離し、ステップ138で乾燥させて、遷移金属ナノ粒子と第1の2D材料のナノコンポジットを得る。材料は、遠心分離、濾紙、真空濾過、またはこれらの組合せを用いて濾過することができる。材料を、室温でまたは30℃、40℃、50℃、または60℃の温度で乾燥させると、TMO NPs/2D材料の乾燥粉末が得られる。例えば、生成物は、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、または同様の期間、乾燥させることができる。
【0080】
遷移金属ナノ粒子の例の走査型電子顕微鏡写真が
図6Aに示される。この顕微鏡写真に示されるように、
複数の遷移金属ナノ粒子
の少なくとも一部の平均粒度は300nm未満である。例えば、
複数の遷移金属ナノ粒子
の少なくとも一部は、30nm~45nmの範囲の平均粒度を有し、標準偏差が2nmの粒度分布を有する。平均粒度は、例えば、走査型電子顕微鏡法を使用して評価することができる。
複数の遷移金属ナノ粒子
の少なくとも一部は、
図6Aに示されるもののようなほぼ直方柱の形状を有することがある。
【0081】
酸化コバルトの少なくとも一部は、立方晶スピネル結晶構造を有する。例えば、立方晶スピネル結晶構造は、複数の遷移金属ナノ粒子のX線回折(XRD)パターンの1またはそれを超えるピークの強度(または相対強度)に基づいて決定することができる。例えば、立方晶スピネル結晶構造は、選択領域電子回折(SAED)分析で測定した面間隔に基づいて決定することができる。
【0082】
第1の2D材料の複数の超薄シートの重量パーセントは0.1%~20%の範囲であり得、該重量パーセントは、ナノコンポジット中の複数の遷移金属酸化物ナノ粒子、第1の2D材料の複数の超薄シート、および第2の2D材料の複数の超薄シートの総重量に基づく。
【0083】
特定の実施形態では、第1の2D材料の複数の超薄シート(例えば、還元型酸化グラフェンシート)の少なくとも一部の平均シート厚さは20nm未満である。例えば、第1の2D材料の複数の超薄シート(例えば、還元型酸化グラフェンシート)の少なくとも一部の平均シート厚さは、5nm~20nmの範囲であり得る。例えば、第1の2D材料の複数の超薄シート(例えば、還元型酸化グラフェンシート)の少なくとも一部の平均シート厚さは、5nm~10nmの範囲であり得る。平均シート厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡法を使用して評価することができる。
【0084】
第2の2D材料の調製
図1Aに戻ると、第2の2D材料の複数の超薄シートがステップ150で調製される。このステップの実例となる例として、
図1Dは、複数の官能化された窒化ホウ素シートを調製するための方法106の例を示す。
【0085】
方法106のステップ152では、窒化ホウ素が酸化される。窒化ホウ素は、過酸化水素と硫酸の混合物中で酸化されてよい。過酸化水素と硫酸の混合物の過酸化水素と硫酸の体積比(H2O2:H2SO4)は、1:0.5~1:3の範囲であり得る。窒化ホウ素をこの溶液に添加して、0.5mg/mL~12mg/mLの範囲の濃度を達成する。
【0086】
ステップ152の後、混合物は撹拌または混合されてよい。例えば、混合物は、5分、10分、30分、1時間、12時間、または同様の期間で撹拌される場合がある。例えば、混合物は、機械的に撹拌されるか、磁気撹拌子で撹拌されるか、超音波照射に曝されるか、またはこれらの組合せで処理されてよい。撹拌の方法は、方法106において第2の2D材料の複数の超薄シートを調製するために使用される容器のサイズに対応するように選択されてよい。
【0087】
方法106の例のステップ154には、ステップ152の混合物の熱水マイクロ波照射が含まれる。ステップ154では、混合物は、高温高圧下でマイクロ波に曝露される。混合物は(例えば、オートクレーブ内で)少なくとも140℃の温度に加熱される。例えば、混合物は、140℃~220℃の範囲の温度に加熱されてよい。例えば、混合物は、180℃の温度に加熱されてよい。ステップ154の間、混合物は、少なくとも150psiの圧力で容器(例えば、オートクレーブ)内に保持される。例えば、混合物は、150psi~350psiの範囲の圧力で容器内に保持されることができる。ステップ154では、混合物は、900Wから1800Wの範囲の出力でマイクロ波を照射されてよい。ステップ154の熱水マイクロ波照射は、30分から60分またはそれを超える範囲の反応時間の間、行われてよい。
【0088】
ステップ156では、混合物が洗浄される。例えば、混合物中の固体は密度に基づいて(例えば、遠心分離および上清の除去によって)液体から分離され得る。次に、固体を洗浄流体に再分散させて、固体生成物から残留材料を除去し得る。このプロセスは、複数回繰り返すことができる。洗浄流体には、蒸留水、別の溶媒(例えば、有機溶媒)、1またはそれを超える塩、酸(例えば、希塩酸)、またはこれらの組合せが含まれてよい。
【0089】
固体材料をステップ156で洗浄した後、それを洗浄液から分離し、ステップ158で乾燥させて、官能化された窒化ホウ素粉末を得ることができる。材料は、遠心分離、濾紙、真空濾過、またはこれらの組合せを用いて濾過することができる。例えば、材料を、室温でまたは30℃、40℃、50℃、または60℃の温度で乾燥させて、2D材料の超薄シートの乾燥粉末を得ることができる。例えば、生成物は、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、または同様の期間、乾燥させることができる。
【0090】
第2の2D材料は、2D炭素材料(例えば、グラフェン、酸化グラフェン、または還元型酸化グラフェン)、2D窒化物(例えば、官能化された窒化ホウ素または六方晶窒化ホウ素)、2D金属カルコゲナイド(例えば、MoS
2、SnS
2、TiS
2、WS
2、MoSe
2、またはWSe
2)、2D酸化物(例えば、TiO
2、ZnO、MnO
2、またはペルブスカイト)、または2Dハイブリッド材料(例えば、MoS
2/グラフェンまたはMoSe
2/MnO
2)を挙げることができる。例えば、第2の2D材料は、六方晶窒化ホウ素、窒化ホウ素、または官能化された窒化ホウ素(例えば、
図1Dに示されるように、化学酸化(ステップ152)および熱水マイクロ波照射(ステップ154)を介して官能化されたもの)であってよい。ナノコンポジット中の第2の2D材料の複数の超薄シートの重量パーセントは0.1%~50%の範囲であり、該重量パーセントは、ナノコンポジット中の複数の遷移金属酸化物ナノ粒子、第1の2D材料の複数の超薄シート、および第2の2D材料の複数の超薄シートの総重量に基づく。
【0091】
第2の2D材料の複数の超薄シート(例えば、官能化された窒化ホウ素シート)の少なくとも一部の平均シート厚さは20nm未満である。例えば、第2の2D材料の複数の超薄シートの少なくとも一部の平均シート厚さは、5~20nmの範囲であり得る。例えば、第1の2D材料の第2の複数の超薄シートの少なくとも一部の平均シート厚さは、5~10nmの範囲であり得る。
【0092】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、第2の2D材料(例えば、六方晶窒化ホウ素)の熱特性、機械的性質、および化学特性は、本開示に記載されるナノコンポジットおよび電池に利益をもたらすと考えられる。例えば、六方晶窒化ホウ素の熱安定性は、一般的な炭素材料の熱安定性と比較して優れているため、熱暴走イベントの防止に役立つ可能性がある。例えば、六方晶窒化ホウ素および還元型酸化グラフェンの機械的性質は、充電および放電中の遷移金属酸化物ナノ粒子の体積変化にナノコンポジットがより適切に対応することを可能にし得る。第1の2D材料と第2の2D材料を組み合わせた場合、第2の2D材料(例えば、六方晶窒化ホウ素)化学的性質は、基板効果によって第1の2D材料(例えば、還元型酸化グラフェン)のキャリア移動度(例えば、電子移動度)を改善する可能性がある。例えば、第1の2D材料と第2の2D材料の両方を含むナノコンポジットは、第1の2D材料または第2の2D材料だけしか含まないナノコンポジットのキャリア移動度と比較して、キャリア移動度が増加する(したがって電気化学特性が向上する)ことがある。
【0093】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、2つの異なる2D材料(例えば、還元型酸化グラフェンと六方晶窒化ホウ素)をナノコンポジットで使用することは、ナノコンポジットがアノード材料として使用された場合に2D材料の再積層を防ぐ可能性があると考えられる。例えば、本開示に記載されているナノコンポジットは、充電および放電中に再積層する傾向が少なく、望ましい物理的性質および電気化学特性が保持される可能性がある。例えば、ナノコンポジットは、多数の(例えば、1,000またはそれを超える)充電/放電サイクル後でも、その大きい表面積と優れた比容量を保持する。
【0094】
材料の混合および乾燥
図1Aに戻ると、ステップ130のTMO NPs/第1の2D材料サンプルと、ステップ150の第2の2D材料は、方法100のステップ170においてともに接触する(例えば、溶媒に添加し、混合される)。例えば、
遷移金属酸化物ナノ粒子
の少なくとも一部と、ステップ130で調製した第1の2D材料の超薄シートの少なくとも一部は、ステップ150で調製した第2の2D材料の超薄シートの少なくとも一部とともに、所定の体積の溶媒に添加されてよい。このステップの実例となる例として、
図1Eは、ステップ130およびステップ150で調製した材料を組み合わせてナノコンポジットを形成するための方法108の例を示す。
【0095】
図1Eに示されるように、TMO NPs/第1の2D材料サンプルを溶媒に分散させる(ステップ172)。溶媒は、エタノール、蒸留水、イソプロピルアルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド、またはこれらの組合せであってよい。TMO NPs/第1の2D材料サンプルは、1mg/mL~3mg/mLの範囲の濃度で溶媒に添加される。ステップ172で得られた混合物は撹拌または混合されてよい。例えば、混合物は、5分、10分、30分、1時間、12時間、または同様の期間で撹拌される場合がある。混合物は、機械的に撹拌されるか、磁気撹拌子で撹拌されるか、超音波照射に曝されるか、またはこれらの組合せで処理されてよい。撹拌の方法は、ステップ172でTMO NPs/第1の2D材料が溶媒に添加された容器のサイズに対応するように選択されてよい。
【0096】
ステップ174では、(例えば、
図1Aのステップ150からの)第2の2D材料の複数のシートを、ステップ172で調製した混合物に添加する。第2の2D材料(例えば、六方晶窒化ホウ素)を、流体(例えば、水、塩溶液、または溶媒)に分散させ、この混合物をステップ172の混合物に添加してよい。あるいは、第2の2D材料の乾燥粉末をステップ172の混合物に添加してよい。第2の2D材料は、混合物中の第2の2D材料の少なくとも1mg/mLの濃度を達成するために添加される。例えば、ステップ174で調製した混合物中の第2の2D材料の濃度は、1mg/mL~3mg/mLの範囲であり得る。
【0097】
方法108の例のステップ176には、ステップ174の混合物の熱水マイクロ波照射が含まれる。ステップ174からの混合物は、高温高圧下でマイクロ波に曝露される。混合物は(例えば、オートクレーブ内で)少なくとも140℃の温度に加熱される。例えば、混合物は、140℃~220℃の範囲の温度に加熱されてよい。例えば、混合物は、180℃の温度に加熱されてよい。混合物は、少なくとも150psiの圧力で容器(例えば、オートクレーブ)内に保持される。例えば、混合物は、150psi~350psiの範囲の圧力で容器内に保持されることができる。混合物は、900Wから1800Wの範囲の出力でマイクロ波を照射される。熱水マイクロ波照射は、30分から60分またはそれを超える範囲の反応時間の間、行われてよい。
【0098】
ステップ178では、混合物が洗浄される。混合物中の固体は密度に基づいて(例えば、遠心分離および上清の除去によって)液体から分離される。次に、固体を洗浄流体に分散させて、固体生成物から残留材料を除去する。このプロセスは、複数回繰り返すことができる。洗浄流体には、蒸留水、別の溶媒(例えば、有機溶媒)、1またはそれを超える塩、酸(例えば、希塩酸)、またはこれらの組合せが含まれてよい。
【0099】
固体材料をステップ178で洗浄した後、それを洗浄液から分離し、ステップ180で乾燥させて、最終ナノコンポジットの粉末を得ることができる。材料は、遠心分離、濾紙、真空濾過、またはこれらの組合せを用いて濾過することができる。例えば、材料を、室温でまたは30℃、40℃、50℃、または60℃の温度で乾燥させて、ナノコンポジットの乾燥粉末を得ることができる。例えば、生成物は、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、または同様の期間、乾燥させることができる。
【0100】
図2Aは、例示的な実施形態によるナノコンポジット200を示すブロック図である。例えば、ナノコンポジット200には、複数の遷移金属酸化物ナノ粒子210、第1の二次元(2D)材料の複数の超薄シート220、および第2の二次元(2D)材料の複数の超薄シート230が含まれる、第2の2D材料は第1の2D材料と種類が異なる。ナノコンポジット201の実例となる例は
図2Bに示される。
図2Bに示されるように、ナノコンポジット201の例には、複数の還元型酸化グラフェンシート240、複数の遷移金属酸化物ナノ粒子250、および複数の六方晶窒化ホウ素シート260が含まれる。
【0101】
ナノコンポジット(例えば、
図1Eのステップ180のナノコンポジット)の成分の重量比(x:y:z)は、(1:0.001:0.001)から(1:0.67:1.67)の範囲であり得る。ここで、xは複数の遷移金属酸化物ナノ粒子であり、yは第1の2D材料の複数の超薄シートであり、zは第2の2D材料の複数の超薄シートである。
【0102】
ナノコンポジット(例えば、
図1Eのステップ180で得られたもの)の比表面積は、10m
2/gから500m
2/gの範囲であり得る。例えば、ナノコンポジットの比表面積は、10m
2/gから200m
2/gの範囲であり得る。例えば、比表面積は、(例えば、
図9Dの実例となる例に示されるような)窒素吸着-脱着等温線を介して測定されたブルナウアー-エメット-テラー(BET)に対応し得る。
【0103】
リチウムイオン電池およびリチウム硫黄電池
前述のナノコンポジットは、高温および高圧での動作に耐えるように設計された再充電可能な電池(例えば、リチウムイオンおよびリチウム硫黄電池)の電極材料として使用することができる。
図3Aは、この目的のために設計されたリチウムイオン電池300の例のブロック図である。リチウムイオン電池300には、アノード材料320、電解質330、セパレータ340、およびカソード350も含まれる。アノードには、アノード材料301が含まれ、これにはTMO NPs/第1の2D材料/第2の2D材料ナノコンポジット305(例えば、
図1Eのステップ180で得たもの)と、その他の1または複数の添加剤310が含まれる。例えば、1または複数の添加剤310には、結合剤、導電性添加剤、または両方が含まれ得る。例えば、結合剤は、ポリフッ化ビニリデンまたはスチレンブタジエンであってよい。導電性添加剤は、例えば、カーボンブラックまたはカーボンナノチューブ系の導電材料であってよい。溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドンまたはテトラヒドロフランであってよい。
【0104】
ナノコンポジット中の1または複数の添加剤310(例えば、結合剤および導電性添加剤)の合計重量パーセントは、5%~20%の範囲であり、この重量パーセントは、(i)複数の遷移金属酸化物ナノ粒子、(ii)第1の2D材料の複数の超薄シート、(iii)第2の2D材料の複数の超薄シート、および(iv)ナノコンポジットに存在する1または複数の添加剤310の総重量に基づく。例えば、ナノコンポジット中の結合剤の量はゼロであってよい;または、ナノコンポジット中の導電性添加剤の量はゼロであってよい。あるいは、ナノコンポジットは、結合剤と導電性添加剤の両方を含んでよい。ナノコンポジット中の結合剤と導電性添加剤の合計重量パーセントは、約10%であってもよい。
【0105】
リチウムイオン電池300について、リチウムイオン電池に関して、カソード350は、例えば、リチウム金属またはリチウム金属酸化物であってよい。リチウムイオン電池300に関して、電解質330は、例えば、1またはそれを超える有機溶媒に溶解した1またはそれを超えるリチウム塩であってよい。例えば、1またはそれを超えるリチウム塩には、六フッ化リン酸リチウムが含まれ得る。有機溶媒には、例えば、エチレンカーボネートまたはジメチルカーボネートが含まれ得る。アノードとカソードの間に置かれているセパレータ340はポリプロピレン膜であり得る。
【0106】
特定の実施形態では、リチウムイオン電池は、室温(例えば、約25℃)と高温(例えば、100℃またはそれを超える温度)の両方で改良された電気化学的性能を示すことができる。例えば、リチウムイオン電池の比容量(例えば、比充電/放電容量)は、約25℃で60mAh/g~800mAh/gまたはそれを超える範囲であり得る。例えば、リチウムイオン電池の比容量(例えば、比充電/放電容量)は、約100℃で1mAh/g~5mAh/gまたはそれを超える範囲であり得る。
【0107】
本開示に記載されるナノコンポジットを含むリチウムイオン電池は、室温(例えば、約25℃)と高温(例えば、100℃またはそれを超える温度)の両方で複数回の充電/放電サイクル後に有益な電気化学的特徴を保持することができる。例えば、約25℃または100℃での100回の充電/放電サイクルの後、リチウムイオン電池は、同じ温度での最初の充電サイクルで測定された初期比容量と比較して、その比容量の少なくとも90%を保持し得る。例えば、約25℃または100℃での1,000回の充電/放電サイクルの後、リチウムイオン電池は、同じ温度での第1の充電サイクルで測定された初期比充電容量と比較して、その比容量の少なくとも90%を保持し得る。例えば、約25℃または100℃での100回の充電/放電サイクルの後、リチウムイオン電池のクーロン効率は、90%であるかまたはそれを超え得る。例えば、約25℃または100℃での1,000回の充電/放電サイクルの後、リチウムイオン電池のクーロン効率は、90%であるかまたはそれを超え得る。
【0108】
特定の実施形態では、本開示に記載されるナノコンポジットは、リチウム硫黄電池のカソード材料として使用することができる。
図3Bは、リチウム硫黄電池303の実例となる例を示す。リチウム硫黄電池303には、カソード325、電解質335、セパレータ345、およびアノード355が含まれる。カソード325には、TMO NPs/第1の2D材料/第2の2D材料ナノコンポジット305(例えば、
図1Eのステップ180で得たもの)と、その他の1または複数の添加剤315が含まれる。リチウム硫黄電池のカソード材料を調製するため、ナノコンポジット302は、例えば、1または複数の添加剤315の1つとして硫黄をさらに含んでよい。ナノコンポジット302には、硫黄元素、硫黄含有塩、硫黄とリチウムを含有する塩、硫黄/グラフェンコンポジット、またはその組合せの形態で硫黄が含まれてよい。
【0109】
硫黄を含むナノコンポジットに関して、ナノコンポジット中の硫黄の重量パーセントは、40%~80%の範囲であり、この重量パーセントは、(i)複数の遷移金属酸化物ナノ粒子、(ii)第1の2D材料の複数の超薄シート、(iii)第2の2D材料の複数の超薄シート、(iv)ナノコンポジット中に存在する結合剤、導電性添加剤、または両方、および(v)硫黄の総重量に基づく。例えば、ナノコンポジット中の硫黄の重量パーセントは、60%~80%の範囲であってよい。例えば、ナノコンポジット中の硫黄の重量パーセントは、70%~80%の範囲であってよい。
【0110】
リチウム硫黄電池303に関して、カソード355は、例えば、リチウム金属であってよい。リチウム硫黄電池303に関して、電解質335は、例えば、1またはそれを超える有機溶媒に溶解した1またはそれを超えるリチウム塩であってよい。例えば、リチウム塩は、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩(LiTFSI)を含み得る。例えば、有機溶媒は、1,2-ジメトキシエタン(DME)または1,3-ジオキソラン(DOL)を含み得る。アノードとカソードの間に置かれているセパレータ345はポリプロピレン膜であり得る。
【0111】
特定の実施形態では、ナノコンポジットは、50μm~200μmの範囲の厚さのフィルムである。例えば、ナノコンポジットは、10μm~20μmの範囲の厚さのフィルムであってよい。ナノコンポジットのフィルムは、銅箔などの集電体の上に作製されてよい。例えば、溶媒中のナノコンポジットの均一なスラリー(例えば、複数の遷移金属酸化物ナノ粒子、第1の2D材料の複数の超薄シート、第2の2D材料の複数の超薄シート、ナノコンポジットに存在する結合剤、導電性添加剤または両方、およびナノコンポジットに存在する硫黄)を、銅箔の上に広げ、乾燥させてよい。
【0112】
実験例
実施例1:ナノコンポジットのX線回折およびラマン分光法
成分の相乗的特性を確認するために、ナノコンポジットの例(Co3O4/RGO/h-BN‐サンプルd)の特性を、遷移金属ナノ粒子のみ(Co3O4‐サンプルa)、遷移金属酸化物ナノ粒子と第1の2D材料のコンポジット(Co3O4/RGO‐サンプルb)、および遷移金属ナノ粒子と第2の2D材料のコンポジット(Co3O4/h-BN‐サンプルc)の特性と比較した。表1は、調査したナノコンポジットとその組成の概要を示す。
【0113】
【0114】
30キロボルト(kV)および40ミリアンペア(mA)でCuKα放射線(1.54430オングストローム(Å))を使用して、Rigaku miniflex 600
X線回折計(日本)でこれらのサンプルのX線回折研究を行った。X線回折研究を最初に実行して、Co3O4、還元型酸化グラフェン(RGO)、および六方晶窒化ホウ素(h-BN)の特徴的なピークを特定した。
【0115】
Co
3O
4の回折ピークは、立方晶スピネル構造をもつ純粋なCo
3O
4のピークにインデックス付けされた(粉末回折標準に関する合同委員会(JCPDS)カード番号76-1802)。
図4ではCo
3O
4の存在に関連するピークにアスタリスク(
*)が付けられている(
図4の凡例に示される通り)。還元型酸化グラフェン(RGO)シートは、(002)RGOに起因する約2θ=23°にピークを示した(
図4の凡例に示される通り)。h-BNシートの場合、ピークは、(002)h-BNに起因する2θ=26°付近に観察された(
図4の凡例に示される通り)。
【0116】
サンプルa、b、c、およびdのX線回折パターン(表1参照)を、
図4に示す。これらの結果によれば、サンプルの各々には、対応するサンプルに存在する成分の適切なピークが含まれていた。Co
3O
4ナノ粒子(サンプルa)とCo
3O
4/RGOナノコンポジット(サンプルb)の両方が、
図4に示されるようにRGOの存在を示す(002)に対応する、2θ=23°付近に幅広い回折ピークを示した。
【0117】
I-RAMAN(登録商標)plus Raman spectrometer(USA)を使用してラマン分光法を実行して、さまざまなサンプルの結晶構造を決定した。サンプルa、b、c、およびdのラマンスペクトルを
図5に示す。Co
3O
4(サンプルa)のラマンスペクトルには、約478cm
-1(Eg)、521cm
-1(F
2g)、611cm
-1(F
2g)、および689cm
-1(A
1g)のバンドが含まれており、Co
3O
4の立方晶スピネル構造が確認された。689cm
-1(A
1g)のピークは、Co
3O
4の八面体部位に対応し、478cm
-1(Eg)、521cm
-1(F
2g)、および611cm
-1(F
2g)のピークは、Co
3O
4の四面体サイトの振動と八面体の酸素の動きとの組合せに起因した。
【0118】
RGOを含有するナノコンポジット(サンプルbおよびd)は、それぞれグラフェンのDバンドおよびGバンドに対応する1327cm-1および1584cm-1にピークを示した。Dバンドは、A1g対称性をもつk点フォノンの呼吸モードに関連付けられている可能性がある。Gバンドは、RGOのsp2炭素原子からのE2gフォノンに関連付けられている可能性がある。h-BNを含有するサンプル(サンプルc)の場合、面内振動(E2g)に対応する1365cm-1に単一のピークが観察された。
【0119】
実施例2:ナノコンポジットの微細構造
サンプルa、b、c、およびdのマイクロスケールの形態を走査型電子顕微鏡法を使用して観察した(JEOL SEM(USA)およびZEISS FESEM(ドイツ))。
図6Aは、Co
3O
4ナノ粒子の例(サンプルa)の走査型電子顕微鏡写真である。
図6Aに示されるように、Co
3O
4ナノ粒子は、直方柱の形状を示した。
【0120】
図6Bおよび
図6Cは、それぞれ、Co
3O
4/RGOサンプルの例(サンプルb)およびCo
3O
4/h-BNサンプルの例(サンプルc)の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図6Bに示されるように、Co
3O
4/RGOナノコンポジットは、直方柱の形状のCo
3O
4ナノ粒子をRGOシートの表面に含んでいた。これらの粒子は、非多孔性で非球形であった。同様に、
図6Cに示されるように、直方柱の形状のCo
3O
4ナノ粒子が、Co
3O
4/h-BNサンプルのh-BNシートの表面で観察された。
【0121】
図6Dは、Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジットの例(サンプルd)の走査型電子顕微鏡写真である。Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジットは、透明なh-BNシートとRGOシートの間に固定された直方柱の形状のCo
3O
4ナノ粒子を示した。したがって、Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジット中のCo
3O
4ナノ粒子は、シートの再積層を効果的に防止し、最終の電極材料に電解質およびイオンの輸送のためのスペースを提供し、複数回の充電/放電サイクルの後、対応する電極の大きい表面積が電解質にアクセス可能な状態を維持することを可能にする。
【0122】
実施例3:熱特性
熱重量分析(TGA)を実行して、サンプルa、b、c、およびdの熱安定性を25℃~550℃の温度で測定した。重量(開始温度での初期重量のパーセントで表す)と温度のプロットである、得られるTGA曲線を
図7に示す。サンプルa、b、c、およびdは、それぞれ、調査した温度範囲で、初期重量の約3.5%、10%、4%、および5%を失った。TGA曲線は、重量減少の程度に基づいて3つの温度領域に分割することができる。第1の領域(100℃未満)では、サンプルb(Co
3O
4/RGO)には1%の分解しか観察されなかった。この重量減少は、吸着した水の除去が原因であった。
【0123】
第2の温度領域(100℃~300℃)では、サンプルc(Co3O4/h-BN)は、約225℃で約2%だけ重量減少を示した。一方、サンプルb(Co3O4/RGO)は、約250℃で約4%の重量減少を示した。温度領域2でのこれらのサンプルの重量減少は、RGO中のエポキシおよびヒドロキシル基と、h-BN中のヒドロキシル基の分解が原因であった。これらの結果は、元の酸化グラフェンの酸素含有基の大部分がRGOシートの合成中にRGOに還元されたことを裏付けた。一方、サンプルa(Co3O4)は、約300℃で約3%だけ重量減少を示し、サンプルd(Co3O4/RGO/h-BN)は、550℃でも比較的安定したままであり、合計で5%減少した。サンプルdの分解にはピークは観察されなかった。これらの結果は、官能化プロセス中にh-BNシートに導入された酸素含有基が、高温では残っていないことを示した。
【0124】
図7のTGA曲線(DTG曲線)の微分プロットを
図8に示す。これらのプロットは、サンプルa、b、c、およびdの温度変化に対する重量変化(dW/dT)を温度に対して示す。
図8に示されるように、サンプルa(Co
3O
4)の分解は約300℃で始まった。サンプルb(Co
3O
4/RGO)の場合、2つの分解ピークが約250℃および約325℃で観察された。サンプルc(Co
3O
4/h-BN)の場合、単一の分解ピークが約240℃の中間の温度で観察された。対照的に、サンプルd(Co
3O
4/RGO/h-BN)は、はっきりとした分解ピークを示さなかった。代わりに、サンプルdは、約350℃で始まる低い強度のピークのみを示し、Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジットの熱安定性が他のサンプル(a、b、およびc)に比べて優れていることを示す。他のサンプルと比較してCo
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジットの熱安定性が強化されたことは、RGOとh-BNの相乗効果によるものであった。
【0125】
実施例4:ナノコンポジットの表面積
サンプルの比表面積は、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)法を使用して測定された。
図9Aは、サンプルa(Co
3O
4)の窒素吸着-脱着等温線を示す。Co
3O
4ナノ粒子のBET比表面積は約41m
2/gであった。
図9Bは、サンプルb(Co
3O
4/RGO)の窒素吸着-脱着等温線を示す。Co
3O
4/RGOサンプルのBET比表面積は約54m
2/gであり、Co
3O
4ナノ粒子のみの比表面積よりも大きかった。
図9Cは、サンプルc(Co
3O
4/h-BN)の窒素吸着-脱着等温線を示す。Co
3O
4/h-BNサンプル(12m
2/g)のBET比表面積は、他のすべてのサンプルのBET比表面積よりも小さかった。
図9Dは、サンプルd(Co
3O
4/RGO/h-BN)の窒素吸着-脱着等温線を示す。Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジット(約191m
2/g)のBET比表面積は、他のサンプルのものよりも大きかった。したがって、Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジットは、材料の重量あたりの利用可能な表面積が最大であった。この増大した表面積は、例えば、リチウムイオン電池またはリチウム硫黄電池用の電極材料における電荷移動を促進することができる。
【0126】
サンプルa、b、c、およびdの各々のBET比表面積は、表2に、比較のためにそれらの電気化学特性の横にも示されている。
【0127】
【0128】
実施例5:室温でのナノコンポジットの電気化学特性
アノード材料をサンプルa、b、c、およびdの各々から調製した。電気化学的研究のために、これらのアノード材料を使用して電池を組み立てた。この実験例では、100mg/10mLの濃度のN-メチル-2-ピロリドン溶媒中で90重量パーセント(重量%)のサンプル(a、b、c、またはd)、5重量%の導電剤カーボンブラック、および5重量%の結合剤ポリフッ化ビニリデンを混合することによって作用電極を作製した。この混合物の均一なスラリーを得、集電体として機能する銅箔基板上にフィルムとして広げた。次に、このフィルムを真空下60℃で乾燥させた。各作用電極は、約1mgの対応するサンプル(a、b、c、またはd)を含んでいた。次に、作用電極を、それぞれの直径が約14ミリメートル(mm)である円盤に打ち抜いた。
【0129】
ポリプロピレン膜(Celgard 2325、Celgard、Inc.、USA)を、電池のセパレータとして、リチウム金属(純度99.9%)対電極とともに使用した。電解質は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の体積で1:1の混合物中の1mol/Lヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)であった。
【0130】
組み立てたコインセルリチウムイオン電池の電気化学的性能を、室温(約25℃)と高温(約100℃)の両方で試験した。定電流充電/放電測定は、組み立てた電池を1回のサイクルに200mA/gの電流密度で使用して行った。
図10Aは、これらの測定の結果を、サンプルa、b、c、およびdをアノード材料として含んでいたリチウムイオン電池の電圧と比容量のプロットとして示す。Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジット(サンプルd)を含む電池は、それぞれ651mAh/gと817mAh/gの増加した充電容量と放電容量を示した。Co
3O
4/RGO(サンプルb)を含む電池は、それぞれ300mAh/gと280mAh/gの2番目に大きい充電容量と放電容量を有した。一方、Co
3O
4/h-BN(サンプルc)を含む電池の充電容量および放電容量は、それぞれ19mAh/gおよび5mAh/gしかなく、Co
3O
4アノード材料を含む電池は、それぞれ6mAh/gおよび4mAh/gの最低の充電容量および放電容量を有した。これらの電気化学特性は表2に示されている。
【0131】
図10Bは、サンプルa、b、c、およびdをアノード材料として含んでいたリチウムイオン電池についての虚数インピーダンス(Z’’)と実数インピーダンス(Z)のナイキストプロットである。
図10Bのプロットは、これらの電池の第1の充電サイクルに対応している。各プロットでは、高周波領域(例えば、x軸のZの値が小さい領域)で、固体電解質界面(SEI)層(R
SEI)の抵抗に起因する低下した半円が観察された。中周波領域(例えば、x軸のZの値が中間の領域)では、電極/電解質界面でのLi
+の電荷移動抵抗(R
ct)に起因する広いアークが観察された。低周波領域(例えば、x軸のZの値が大きい領域)では、ワールブルク抵抗(R
W)に起因する傾いた直線が観察された。
図10Bに示した結果によると、Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジットを含むアノード材料を備える電池は、抵抗が最も低かった。
【0132】
実施例6:100℃でのナノコンポジットの電気化学特性
Co3O4/RGO/h-BNナノコンポジットを含むアノードを備えるコインセルリチウムイオン電池のサイクル性能を、室温(約25℃)と約100℃の高温の両方で試験した。
【0133】
図11は、約25℃で100サイクルの、Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジット(サンプルd)を含むアノードを備える電池の比容量と充電/放電サイクルのプロットである。電池は、25℃で安定したサイクル性能と、約100%のクーロン効率を示した。
【0134】
図12および
図13は、約100℃で、それぞれ100回および1,000回の充電/放電サイクルの、Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジット(サンプルd)を含むアノードを備えた電池の比容量と充電/放電サイクル数のプロットである。電池は、100℃で安定したサイクル性能と、約100%のクーロン効率を示した。これらの結果は、
図7および
図8にそれぞれ示されるTGAプロットおよびDTGプロットから決定されたサンプルdの熱安定性の向上に一致していた。
【0135】
したがって、
図11、
図12、および
図13に示される結果により、Co
3O
4/RGO/h-BNナノコンポジットが、室温(約25℃)と高温(約100℃)の両方で使用するための安定したアノード材料であることが確認された。
【0136】
本開示に記載されるさまざまな実施の要素は、以前に具体的に明記されていないその他の実施を形成するために組み合わせることができる。要素は、その動作に悪影響を与えることなく、本開示に記載されるプロセスから除外されてもよい。さらに、図に示された論理フローは、望ましい結果を達成するために、必ずしも示された特定の順序または順番を必要としない。さまざまな別個の要素を1またはそれを超える個々の要素に組み合わせて、本開示に記載される機能を実行することができる。
【0137】
本明細書を通して、ナノコンポジット、材料、およびシステムが、特定の成分を有する、含む(including)、または含む(comprising)と記載されている場合か、またはプロセスおよび方法が特定のステップを有する、含む、または含むと記載されている場合には、列挙される成分から本質的に構成されるかまたは構成される本開示の装置およびシステムが存在すること、ならびに、列挙されるプロセスステップから本質的に構成されるかまたは構成される本開示によるプロセスおよび方法が存在することがさらに企図される。
【0138】
ステップの順序または特定のアクションを実行するための順序は、本開示に記載されるアプローチが使用可能である限り、重要ではないことを理解されたい。さらに、2またはそれを超えるステップまたはアクションは、同時に実行されてよい。
【0139】
本開示に記載されるアプローチは、特定の好ましい実施形態に関して特に示され、記載されているが、添付される特許請求の範囲により定義される本開示の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細におけるさまざまな変更がそこで行われ得ることは、当業者に当然理解される。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
(a)複数の遷移金属酸化物ナノ粒子、(b)第1の二次元(2D)材料の複数の超薄シート、および(c)第2の2D材料の複数の超薄シートを含むナノコンポジットであって、前記第2の2D材料は前記第1の2D材料と種類が異なる、ナノコンポジット。
(項2)
前記第1の2D材料が、2D炭素材料、2D窒化物、2D金属カルコゲナイド、2D酸化物、および2Dハイブリッド材料からなる群から選択されるメンバーである、上記項1に記載のナノコンポジット。
(項3)
前記第2の2D材料が、2D炭素材料、2D窒化物、2D金属カルコゲナイド、2D酸化物、および2Dハイブリッド材料からなる群から選択されるメンバーである、上記項1または上記項2に記載のナノコンポジット。
(項4)
前記第1の2D材料が、グラフェンまたは還元型酸化グラフェンである、上記項1~3のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項5)
前記第2の2D材料が、六方晶窒化ホウ素、窒化ホウ素、および官能化された窒化ホウ素からなる群から選択されるメンバーである、上記項1~4のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項6)
前記第1の2D材料の複数の超薄シートの重量パーセントが、0.1%~20%の範囲である、上記項1~5のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項7)
前記第2の2D材料の複数の超薄シートの重量パーセントが、0.1%~50%の範囲である、上記項1~6のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項8)
成分の重量比(x:y:z)が、(1:0.001:0.001)から(1:0.67:1.67)の範囲であり、ここで、xは前記複数の遷移金属酸化物ナノ粒子であり、yは前記第1の2D材料の前記複数の超薄シートであり、zは前記第2の2D材料の前記複数の超薄シートである、上記項1~7のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項9)
前記複数の遷移金属ナノ粒子の少なくとも一部の平均粒度が、300nm未満である、上記項1~8のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項10)
前記複数の遷移金属ナノ粒子の少なくとも一部の平均粒度が、30nm~45nmの範囲である、上記項1~9のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項11)
前記複数の遷移金属ナノ粒子の少なくとも一部が、標準偏差が2nmの粒度分布を有する、上記項1~10のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項12)
前記複数の遷移金属ナノ粒子の少なくとも一部が、ほぼ直方柱の形状である、上記項1~11のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項13)
前記複数の遷移金属酸化物ナノ粒子の少なくとも一部が、酸化コバルトを含む、上記項1~12のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項14)
前記酸化コバルトの少なくとも一部が、立方晶スピネル構造を有する、上記項13に記載のナノコンポジット。
(項15)
前記第1の2D材料の前記複数の超薄シートの少なくとも一部および前記第2の2D材料の前記複数の超薄シートの少なくとも一部の平均シート厚さが、20nm未満である、上記項1~14のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項16)
前記第1の2D材料の前記複数の超薄シートの少なくとも一部および前記第2の2D材料の前記複数の超薄シートの少なくとも一部の平均シート厚さが、5nm~20nmの範囲である、上記項1~15のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項17)
前記ナノコンポジットの比表面積が、10m
2
/g~500m
2
/gの範囲である、上記項1~16のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項18)
前記ナノコンポジットが、(i)結合剤、(ii)導電性添加剤、または(i)と(ii)の両方をさらに含む、上記項1から17のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項19)
前記ナノコンポジット中の前記結合剤および前記導電性添加剤の合計重量パーセントが、5%~20%の範囲である、上記項18に記載のナノコンポジット。
(項20)
前記ナノコンポジットが、50μm~200μmの範囲の厚さのフィルムである、上記項18または19に記載のナノコンポジット。
(項21)
硫黄をさらに含む、上記項18~20のいずれか一項に記載のナノコンポジット。
(項22)
前記硫黄の重量パーセントが、40%~80%の範囲である、上記項21に記載のナノコンポジット。
(項23)
アノードを含むリチウムイオン電池であって、前記アノードが、上記項18~22のいずれか一項に記載のナノコンポジットを含む、リチウムイオン電池。
(項24)
カソード、
電解質、および
前記アノードと前記カソードの間のセパレータ
をさらに含む、上記項23に記載のリチウムイオン電池。
(項25)
i. 約25℃で、前記リチウムイオン電池の比容量が600mAh/g~少なくとも800mAh/gの範囲であり、
ii. 約100℃で、前記リチウムイオン電池の比容量が1~5mAh/gの範囲である、上記項23または上記項24に記載のリチウムイオン電池。
(項26)
約100℃で100回の充電/放電サイクルの後、約100℃での最初の充電サイクルの初期比充電容量と比較して、前記リチウムイオン電池が、その比容量の少なくとも90%を保持している、上記項23~25のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
(項27)
約100℃で100回の充電/放電サイクルの後、前記リチウムイオン電池のクーロン効率が、100℃で90%またはそれを超える、上記項23~26のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
(項28)
カソードを含むリチウム硫黄電池であって、前記カソードが、上記項21または上記項22に記載の前記ナノコンポジットを含む、リチウム硫黄電池。
(項29)
アノード、
電解質、および
前記アノードと前記カソードの間のセパレータ
をさらに含む、上記項28に記載のリチウム硫黄電池。
(項30)
ナノコンポジットを調製する方法であって、前記方法は、
遷移金属含有塩および酸化グラフェンを含む、所定の体積の第1の溶媒にマイクロ波照射を印加することにより、複数の遷移金属酸化物ナノ粒子および複数の超薄還元型酸化グラフェンシートを調製するステップと、
(i)所定の体積の第2の溶媒中で窒化ホウ素を酸化し、(ii)マイクロ波照射を前記体積の前記第2の溶媒に印加することにより、複数の超薄窒化ホウ素シートを調製するステップと、
(i)前記複数の遷移金属酸化物ナノ粒子の少なくとも一部、(ii)前記複数の超薄還元型酸化グラフェンシートの少なくとも一部、および(iii)前記複数の超薄窒化ホウ素シートの少なくとも一部を、所定の体積の第3の溶媒中で一緒に接触させ、それによりナノコンポジット混合物を調製するステップと、
前記ナノコンポジット混合物を乾燥させ、それによりナノコンポジットを調製するステップとを含む、方法。
(項31)
前記ナノコンポジット混合物を乾燥させた後、前記ナノコンポジット混合物を一緒に硫黄と接触させるステップを含む、上記項33に記載の方法。