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特許7239604甲状腺ホルモンを含む吸入用の薬学的乾燥粉末組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】甲状腺ホルモンを含む吸入用の薬学的乾燥粉末組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20230307BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230307BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230307BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230307BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K9/14
A61K9/72
A61K47/26
A61P5/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020555154
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2019059123
(87)【国際公開番号】W WO2019201712
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】18167617.2
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19386017.8
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520386992
【氏名又は名称】ツェティ,ユリア
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】ツェティ,ユリア
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-507881(JP,A)
【文献】米国特許第08333192(US,B2)
【文献】特表2004-502708(JP,A)
【文献】特表平08-512027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/198
A61K 9/14
A61K 9/72
A61K 47/26
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入に適した、20~400マイクロメートルの範囲のサイズの固体キャリア粒子で希釈された、平均粒子サイズが1~10マイクロメートルである甲状腺ホルモンの微粒化された粉末からなる薬学的乾燥粉末組成物であって、前記甲状腺ホルモン剤がレボチロキシン、リオチロニン、又はこれらの塩のうちの1種であり、単一のキャリアとして非還元糖又は非還元糖アルコールを含み、かつ、他の賦形剤、酸化防止剤、又は保存料が存在しないものであることを特徴とする薬学的乾燥粉末組成物。
【請求項2】
前記非還元糖がスクロース、トレハロース、ラフィノース、スタキオース、及びベルバスコースから選ばれるものであり、かつ、前記非還元糖アルコールがマンニトール及びイソマルチトールから選ばれるものであることを特徴とする請求項1に記載の薬学的乾燥粉末組成物。
【請求項3】
前記組成物が前記甲状腺ホルモン剤を0.005~0.5%(w/w)含むものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薬学的乾燥粉末組成物。
【請求項4】
前記組成物が前記キャリアを99.500~99.995%(w/w)含むものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の薬学的乾燥粉末組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレハロース、ラフィノース、マンニトール及びイソマルチトールから選ばれる非還元糖又は非還元糖アルコールを単一のキャリアとして有し、他の賦形剤を含まず、乾燥粉末状であり、適切な吸入機器による吸入に適した、安定な甲状腺ホルモン剤組成物に関する。本発明の製剤は、乾燥粉末製剤に一般的に用いられるキャリアであるラクトース一水和物を有する対応製剤よりも高い安定性を示す。
【背景技術】
【0002】
先行技術調査で、本件と関連すると考えられるいくつかの文献が発見された。しかし、これらの文献をより詳細に調査したところ、以下に述べるようにこれらの文献は関連性のないものであることが明らかとなった。
【0003】
JP H05 306235 Aには、有効量の糖及び塩化ナトリウムとともに有効成分として副甲状腺ホルモンを含む凍結乾燥組成物が開示されている。上記糖はマンニトール又はトレハロースであってもよい。しかし副甲状腺ホルモンは、レボチロキシン、リオチロニンのような甲状腺ホルモンとは構造的にも機能的にも異なるものである。副甲状腺ホルモンは細胞外のカルシウム恒常性を整える84アミノ酸長ポリペプチドである。その上、この特許出願では、糖類と塩化ナトリウムを組み合わせて用いる場合にのみ、この凍結乾燥組成物の適切な安定性が得られる可能性があることが明確に指摘されている。この文献ではさらに、糖単独では安定性の低下が観察されることが指摘されている。いずれにしても、この文献は吸入には間接的にすら関連していない。この文献に開示されているような凍結乾燥組成物を、水媒体中で再構成することで注入可能な製剤を作製することが意図されている。このような凍結乾燥組成物は、吸入を意図しておらず、吸入に適してもいない。
【0004】
US 8,333,192 B2の中で引用されているUS 2004/0033259 A1は、貯蔵安定性のよい、チロキシン活性剤組成物の剤形に関する。レボチロキシンナトリウムが好ましい活性剤物質であり、マンニトールが組成物中に存在する好ましいアルジトールであり、スクロースが好ましい糖類である。いずれにせよ、好ましい製剤は圧縮錠剤である。もしくは、上記製剤を用いてカプセルを充填してもよい(本文献の[0033]段落)。しかし、吸入用の粉末として有用又は用いられてもよい製剤については触れられていない。この文献で粉末について唯一触れられていることは、錠剤又は密に充填されたカプセルのような剤形の製造についてである。
【0005】
US 2016/0143855 A1は、甲状腺ホルモン剤を含む薬学的組成物に関する。この薬学的組成物はさらに、少なくとも1種の炭水化物(特には糖類)、及び1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい(請求項1を参照)。この文献は固体剤形として粉末に言及しているが、吸入用製剤には何も触れられていない。しかし当業者は、いかなる粉体も呼吸器系への吸入に適しているというわけではないことは十分に理解している。吸入のために提案される粉末の性能は、これら粉体の粒子サイズ、形態、及び形状のような、キャリア粒子の物理的特性に強く依存する。
【0006】
US 8,333,192 B2は、安定な乾燥粉末混合物の投与に適した吸入器を含む装置に関し、上記装置は、甲状腺ホルモン剤(特にはレボチロキシンナトリウム)、及びラクトース粒子、デンブングリコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、及び珪化タルクのようなその他の添加剤を含む混合物を含む。
【0007】
この米国特許の実施例14では、マンニトール、スクロース、微結晶性のセルロース、及びステアリン酸マグネシウムを含む乾燥粉末組成物に言及している。まず、これは明らかに吸入に適した組成物ではない。微結晶性のセルロース、FD&Cの黄色アルミニウムレーキ、及びステアリン酸マグネシウムのような成分は、疑いなく、吸入に適していないし吸入を意図してもいない。さらに、実施例14は上記有効成分の粒子サイズに関して何の情報も与えていない。さらに、固体キャリアについて何の言及もない。それゆえ、実施例14の組成物を吸入に適した薬学的乾燥粉末組成物として考慮することはできない。
【0008】
要約すると、これらの文献の教示は、吸入を目的とした乾燥粉末の甲状腺ホルモン剤、及び単一キャリアとしての非還元糖又は非還元糖アルコールに関する製剤と全く関連しない。
【0009】
約60~80%のレボチロキシンが経口投与後に主に空腸及び回腸で吸収されることはよく知られている。吸収は空腹時に最大となる。それゆえ、食事又はその他の薬物治療の少なくとも30分から1時間前に空腹の状態でレボチロキシンを飲むことを患者に求めるのが標準実務である。吸入投与によってレボチロキシンと他の薬剤又は食物との望ましくない相互作用が起こる可能性が最も低くなると考えられ、これにより、その生物学的利用性を高めている。Calu-3細胞についての生体外での浸透性の研究で、レボチロキシンは呼吸器粘膜から効果的に吸収され得ることが示されている。さらに、レボチロキシンはマイクログラム域で高い効能を示し、かつ治療的に効果があり、それゆえに経口投与剤と比べて肺吸収に適している。肺経路の利点には、吸収表面積が非常に大きいこと(約80-140m)、経口経路と比べて代謝及び排出トランスポーターの活性が低いこと、初回通過効果の回避、及び作用の早期開始の可能性があることも挙げられる。
【0010】
ラクトースは結晶性が高く十分な流動特性を有するために、吸入用の乾燥粉末に一般的に用いられる。しかしラクトースは還元糖であり、このことがラクトースを甲状腺ホルモン(即ち、レボチロキシン、リオチロニン)のような一級アミン部分を有する薬剤と不適合にする。したがって、高い均一性と安定性を示し、吸入に適した、上記の障害を克服する乾燥粉末組成物を開発することが必要である。驚くべきことに、甲状腺ホルモン剤、及び非還元糖/糖アルコールであるトレハロース、ラフィノース、マンニトール、イソマルチトールのうちの単一のキャリアを含む乾燥粉末化された組成物が、他の賦形剤、酸化防止剤、又は保存料の不存在下で、ラクトース一水和物に基づく対応組成物よりも優れた安定性を示すことが見出された。
【発明の概要】
【0011】
本発明によると、甲状腺ホルモン剤を固体キャリアで希釈して、乾燥粉体混合物を作製する。この混合物は、被験者(患者)が吸入する際に流動化されるものである。甲状腺ホルモン剤は、レボチロキシン、リオチロニン、これらの塩、またはこれらの混合物のうちの一種である。固体キャリアは、非還元糖/糖アルコールであるトレハロース、ラフィノース、マンニトール、及び/又はイソマルチトールのうちから選択される。
【0012】
本発明によると、上記甲状腺ホルモン剤は平均粒子サイズが1~10マイクロメートル、又は2~5マイクロメートルである微粒化された粉末状である。吸入に適切となるようにするため、上記有効成分の粒子サイズを上述の程度にまで低減することによって、上記乾燥粉末組成物の全体的な性能を向上させる。より大きい粒子は通常口腔や咽頭の中に残り、これらは簡便に取り除かれる。これに対してより小さい粒子は全く残らないこともあり、そうでなければ、非常にゆっくりと堆積する。したがって、肺への上記有効成分の輸送の間、流動性を高め、凝集を減らすために、キャリア粒子のサイズは、20~400マイクロメートル、又は40~200マイクロメートルの範囲になるように選択される。
【0013】
本発明で要求されるような粒子サイズ(例えば、平均粒子サイズ)の測定方法は、当業者によく知られたものである。典型例として、上記粒子サイズ分析はレーザー回折粒子サイズ分析装置(例えば、Fritsch GmbH製のAnalysette 22 Laser-Particle Sizer)を用いて行った。体積平均径及び他の粒子サイズパラメータ(D10%、D50%、及びD90%)は付属のソフトウェアを用いて自動的に計算される。約200~300mgのサンプルを精製水に分散させ、測定セルに入れた。実験中、粒子サイズの測定は撹拌条件下で行った。結果は5回の測定の平均及び標準偏差である。
【0014】
このように、本発明は、吸入に適した、20~400マイクロメートルの範囲のサイズの固体キャリア粒子で希釈された、平均粒子サイズが1~10マイクロメートルである甲状腺ホルモンの微粒化された粉末からなる薬学的乾燥粉末組成物であって、上記甲状腺ホルモン剤がレボチロキシン、リオチロニン、又はこれらの塩のうちの1種であり、単一のキャリアとして非還元糖又は非還元糖アルコールを含み、かつ、他の賦形剤、酸化防止剤、又は保存料が存在しないものである薬学的乾燥粉末組成物に関する。
【0015】
本発明の特定の側面によれば、薬学的乾燥粉末組成物は平均粒子サイズが1~10マイクロメートルである甲状腺ホルモンの微粒化された粉末、及び20~400マイクロメートルの範囲のサイズの固体キャリア粒子を含み、ここで上記キャリア粒子は非還元糖又は非還元糖アルコールから成る。好ましくは、本薬学的乾燥粉末組成物は、必ず、又は任意の場合にのみ、上記甲状腺ホルモンの微粒化された粉末、及び上記固体キャリア粒子からなる。好ましい具体例において、上記甲状腺剤ホルモンはレボチロキシン、リオチロニン、又は、薬学的に許容されるこれらの塩である。上記非還元糖はスクロース、トレハロース、ラフィノース、スタキオース、及びベルバスコースから選ばれてもよい。上記非還元糖アルコールはマンニトール及びイソマルチトールから選ばれてもよい。
【0016】
本発明によれば、上記製剤は5~500又は10~400マイクログラムの上記甲状腺ホルモン剤、及び99.995~99.950、又は99.990~99.600mgの上記固体キャリアを含む。したがって、上記甲状腺ホルモン剤の量は上記乾燥粉末組成物の0.005~0.5%又は0.01~0.4%であり、上記固体キャリアの量は上記乾燥粉末組成物の99.500~99.995%又は99.600~99.990%である。
【0017】
本発明によれば、本乾燥粉末組成物は幾何学的希釈工程に従って調製される。まず、上記微粒化された甲状腺ホルモン剤をアイソレーターの中に配置する。ここで、必要量を乗せて、同量の上記固体キャリアと混合する。2種粉体の混合物を、完全に混合するまですりつぶして細かく砕く。その後、ペストルの中の量と同量の残りのキャリアを加え、この粉砕工程を繰り返す。この工程は、キャリアの全量が混合物に加わるまで繰り返す。最終的な乾燥混合物は琥珀色ガラスの密封された瓶の中に保管し、その均質性及びレボチロキシンアッセイによって分析する。
【実施例
【0018】
以下の非限定的な代表例によって、本発明をさらに説明する。
【0019】
実施例1
以下の実施例は、レボチロキシンナトリウム、及びトレハロースを含む乾燥粉末組成物の調製工程について言及する。上記乾燥粉末組成物の調製はアイソレーターの中に設置された回転ビンの中で行った。レボチロキシンナトリウム水和物0.100mgとトレハロース0.100mgを上記ビンの中に入れ、15rpmで10分間混合した。次に、キャリア0.200mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、トレハロース0.400mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、トレハロース0.800mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、トレハロース1.600mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、トレハロース3.200mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、トレハロース13.333mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、トレハロース33.333mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、トレハロース46.934mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。最終的な乾燥混合物を琥珀色ガラスの密封された瓶の中に保管し、その均質性(混合均一性)及びレボチロキシンアッセイによって分析した。上記混合物の均一性は、上記ビンの異なる場所10点から採取したサンプルにおいて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の支援によりレボチロキシンアッセイを評価することによって決定した。安定性試験は、6か月時間インターバルの試験プロトコルに従って、通常条件(25±2℃/60±5%RH)下で長期間保管(18ヵ月)した後に行った。
【0020】
実施例2
以下の実施例は、レボチロキシンナトリウム、及びラフィノースを含む乾燥粉末組成物の調製工程について言及する。上記乾燥粉末組成物の調製はアイソレーターの中に設置された回転ビンの中で行った。レボチロキシンナトリウム水和物0.100mgとラフィノース0.100mgを上記ビンの中に入れ、15rpmで10分間混合した。次に、キャリア0.200mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラフィノース0.400mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラフィノース0.800mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラフィノース1.600mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラフィノース3.200mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラフィノース13.333mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラフィノース33.333mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラフィノース46.934mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。最終的な乾燥混合物を琥珀色ガラスの密封された瓶の中に保管し、その均質性(混合均一性)及びレボチロキシンアッセイによって分析した。上記混合物の均一性は、上記ビンの異なる場所10点から採取したサンプルにおいて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の支援によりレボチロキシンアッセイを評価することによって決定した。安定性試験は、6か月時間インターバルの試験プロトコルに従って、通常条件(25±2℃/60±5%RH)下で長期間保管(18ヵ月)した後に行った。
【0021】
実施例3
以下の実施例は、レボチロキシンナトリウム、及びマンニトールを含む乾燥粉末組成物の調製工程について言及する。上記乾燥粉末組成物の調製はアイソレーターの中に設置された回転ビンの中で行った。レボチロキシンナトリウム水和物0.100mgとマンニトール0.100mgを上記ビンの中に入れ、15rpmで10分間混合した。次に、キャリア0.200mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、マンニトール0.400mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、マンニトール0.800mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、マンニトール1.600mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、マンニトール3.200mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、マンニトール13.333mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、マンニトール33.333mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、マンニトール46.934mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。最終的な乾燥混合物を琥珀色ガラスの密封された瓶の中に保管し、その均質性(混合均一性)及びレボチロキシンアッセイによって分析した。上記混合物の均一性は、上記ビンの異なる場所10点から採取したサンプルにおいて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の支援によりレボチロキシンアッセイを評価することによって決定した。安定性試験は、6か月時間インターバルの試験プロトコルに従って、通常条件(25±2℃/60±5%RH)下で長期間保管(18ヵ月)した後に行った。
【0022】
実施例4
以下の実施例は、レボチロキシンナトリウム、及びイソマルチトールを含む乾燥粉末組成物の調製工程について言及する。上記乾燥粉末組成物の調製はアイソレーターの中に設置された回転ビンの中で行った。レボチロキシンナトリウム水和物0.100mgとイソマルチトール0.100mgを上記ビンの中に入れ、15rpmで10分間混合した。次に、キャリア0.200mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、イソマルチトール0.400mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、イソマルチトール0.800mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、イソマルチトール1.600mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、イソマルチトール3.200mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、イソマルチトール13.333mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、イソマルチトール33.333mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、イソマルチトール46.934mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。最終的な乾燥混合物を琥珀色ガラスの密封された瓶の中に保管し、その均質性(混合均一性)及びレボチロキシンアッセイによって分析した。上記混合物の均一性は、上記ビンの異なる場所10点から採取したサンプルにおいて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の支援によりレボチロキシンアッセイを評価することによって決定した。安定性試験は、6か月時間インターバルの試験プロトコルに従って、通常条件(25±2℃/60±5%RH)下で長期間保管(18ヵ月)した後に行った。
【0023】
比較例(実施例5)では、本発明の方法に従い、一般的に用いられる吸入キャリアであるラクトース一水和物を有するレボチロキシンナトリウムの乾燥粉末組成物の調製を行った。ここで、上記乾燥粉末組成物の調製はアイソレーターの中に設置された回転ビンの中で行った。レボチロキシンナトリウム水和物0.100mgとラクトース一水和物0.100mgを上記ビンの中に入れ、15rpmで10分間混合した。次に、キャリア0.200mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラクトース一水和物0.400mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラクトース一水和物0.800mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラクトース一水和物1.600mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラクトース一水和物3.200mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラクトース一水和物13.333mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラクトース一水和物33.333mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。次に、ラクトース一水和物46.934mgを上記ビンに加え、その混合物を15rpmで10分間混合した。最終的な乾燥混合物を琥珀色ガラスの密封された瓶の中に保管し、その均質性(混合均一性)及びレボチロキシンアッセイによって分析した。上記混合物の均一性は、上記ビンの異なる場所10点から採取したサンプルにおいて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の支援によりレボチロキシンアッセイを評価することによって決定した。安定性試験は、6か月時間インターバルの試験プロトコルに従って、通常条件(25±2℃/60±5%RH)下で長期間保管(18ヵ月)した後に行った。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例1~4に記載の手順に従い適切な量の選択されたキャリアを混合することによって甲状腺ホルモン剤の様々な強さの乾燥粉体混合物の調製を行うことは、当業者の能力の範囲内である。
【0026】
混合物の均一性は、上記ビンの異なる場所10点から採取したサンプルにおいて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の支援によりレボチロキシンアッセイを評価することによって決定した。全ての組成物が高い均質性を示し、これらの組成物が吸入に用いられるのに適していることを示唆している。
【0027】
【表2】
【0028】
実施例1~4のレボチロキシンナトリウム乾燥粉末組成物を密封された琥珀色ガラス瓶の中で18ヵ月間、通常条件下、即ち25±2℃、及び相対湿度60±5%で保管し、これら乾燥粉体の安定性をレボチロキシンアッセイ(%)、及び不純物プロファイルの見地から調べた。これらの安定性の結果を、同じ温度及び相対湿度条件下で保管した対応するラクトース一水和物を有するレボチロキシンナトリウムの乾燥粉末組成物(比較実施例5)から得られた結果と比較した。
【0029】
25±2℃/相対湿度60±5%下で18ヵ月間保管した後、トレハロースを有するレボチロキシンナトリウムの乾燥粉末組成物は3.2%のレボチロキシンナトリウムの効能(potency)低下を示した。これはラクトース一水和物を有するレボチロキシン乾燥粉末のレボチロキシンアッセイの効能低下13.6%に比べて非常に優れている。
【0030】
【表3】
【0031】
25±2℃/60±5%RH下で18ヵ月間保管した後の本発明のレボチロキシン乾燥粉末組成物の不純物プロファイルは、トレハロース、ラフィノース、マンニトール、及びイソマルチトールのキャリアを有する乾燥粉末レボチロキシンナトリウム組成物がラクトース一水和物に比べて優れていることを証明している。ラクトース一水和物を有する組成物は、高い不特定不純物の比率(4.4%)を示している。この不特定不純物は、おそらくはレボチロキシンとラクトースの付加体生成によるものである。
【0032】
【表4】