(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】電気接続部を壁に接続するための挿入具、挿入具のための分解工具および位置合わせ工具、および挿入具の修理方法
(51)【国際特許分類】
F16B 3/06 20060101AFI20230307BHJP
B25B 27/02 20060101ALI20230307BHJP
F16B 9/02 20060101ALI20230307BHJP
F16B 35/06 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
F16B3/06 Z
B25B27/02 Z
F16B9/02 H
F16B35/06 Z
(21)【出願番号】P 2020564878
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2019057279
(87)【国際公開番号】W WO2020015867
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】102018117366.0
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518462307
【氏名又は名称】フェアチャイルド ファスナーズ オイローパ ― カムロック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】FAIRCHILD FASTENERS EUROPE - CAMLOC GMBH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 6, 65779 Kelkheim(Taunus),Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ゼバスチャン・ダッハ
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・ユリング
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06257939(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 3/06
B25B 27/02
F16B 9/02
F16B 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続部を壁(10)に接続するための挿入具であって、
ボルト(1、1”)を受け入れるための貫通開口部(6、6’、6”)を有する導電性のリング(2、2’、2”)と、
ヘッド(3、3”)と少なくとも1つの接続手段(5、5”)とを有するボルト(1、1”)とを有し、
前記リング(2、2’、2”)がその外面にアンダーカット(9、9’、9”)を有
し、
前記アンダーカットは、円錐形の外側幾何学的形状(9’)、または溝(9)によって実現されることを特徴とする、挿入具。
【請求項2】
前記ボルト(1、1”)は、前記少なくとも1つの接続手段(5)が配置される軸(4)を有し、および/または、前記少なくとも1つの接続手段(5”)が配置される穴を有することを特徴とする、請求項1に記載の挿入具。
【請求項3】
前記リング(2、2’、2”)が、リング(2、2’、2”)の残りの部分に対して、より大きな寸法、特に、より大きな外径を有する肩部(8、8’、8”)を備え、前記アンダーカット(9、9’、9”)が、前記肩部(8、8’、8”)上に配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の挿入具。
【請求項4】
前記アンダーカットは、第1の肩部(8”)の縁部に対して軸方向にオフセットされてさらなる広がりを表す第2の肩部(9”)によって形成されることを特徴とする、請求項3に記載の挿入具。
【請求項5】
前記リング(2、2’、2”)の貫通開口部(6、6’、6”)が、
前記リングの軸方向において前記アンダーカットが設けられている側に向かって先細りになっていることを特徴とする、請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の挿入具。
【請求項6】
前記ヘッド(3、3”)は、その外径が前記リング(2、2’、2”)の領域の内径よりも大きい領域を有することを特徴とする、請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の挿入具。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の挿入具のボルト(1)を取り外すための分解工具(20、20’、20”)であって、
挿入具のアンダーカット(9、9’、9”)と係合するための突起(26、26’、26”)をそれぞれ有する少なくとも2つのクランプジョー(25、25’、25”)を備えたクランプユニット(22、22’、22”)であって、前記クランプジョー(25、25’、25”)が、クランプジョー(25、25’、25”)の突起(26、26’、26”)同士が第1の距離を有する開位置と、クランプジョー(25、25’、25”)の突起(26、26’、26”)同士が前記第1の距離より小さい第2の距離を有する閉位置との間で移動可能である、クランプユニット(22、22’、22”)と、
前記クランプユニット(22、22’、22”)内に配置された押出ボルト(23、23’、23”)であって、ボルト(1、1”)を挿入具から押し出すためにクランプジョー(25、25’、25”)に対して軸方向に移動可能である押出ボルト(23、23’、23”)と、
を有することを特徴とする、分解工具。
【請求項8】
クランプリング(21、21’、21”)であって、該クランプリング(21、21’、21”)が
前記クランプユニットに対し相対的
に回転するときに該クランプリング(21、21’、21”)がクランプジョー(25、25’、25”)上を摺動し、その結果、クランプジョー(25、25’、25”)が開位置から閉位置に移動するように、ねじを介して前記クランプユニット(22、22’、22”)に接続されたクランプリング(21、21’、21”)が備えられていることを特徴とする、請求項
7に記載の分解工具(20、20’、20”)。
【請求項9】
前記押出ボルト(23、23’、23”)は、
ねじを介して前記クランプユニット(22、22’、22”)に接続されており、
前記押出ボルト(23、23’、23”)を回転させるためのグリップ(24)を有することを特徴とする、請求項
7または
8に記載の分解工具(20、20’、20”)。
【請求項10】
請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の挿入具の、壁(10)に挿入されたリング(2、2’、2”)を調整するための位置合わせ工具(30)であって、
位置合わせボルト(31)であって、第1の接続手段、特に雄ねじを備えてリング(2、2’、2”)の貫通開口部(6、6’、6”)を通るための中心軸(33)と、壁(10)上で支持するための壁接触面(35)を備えた幅広ヘッド(34)とを有する、位置合わせボルト(31)と、
対応部品(32)であって、内側要素(37)と外側要素(38)とを備え、内側要素(37)は、外側要素(38)に対して軸方向に変位可能であり、内側要素は、前記第1の接続手段に接続するための第2の接続手段、特に雌ねじを有し、外側要素(38)は、リング(2、2’)上で支持するためのリング接触面(39)を有する、対応部品(32)と、
を備えることを特徴とする、位置合わせ工具(30)。
【請求項11】
前記幅広ヘッド(34)が、壁(10)から突出するリング(2、2’、2”)の領域を受け入れるための凹部(36)を有することを特徴とする、請求項
10に記載の位置合わせ工具(30)。
【請求項12】
壁(10)に挿入された、請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の挿入具を修理する方法であって、
請求項
7ないし
9のいずれか1項に記載の分解工具(20、20’、20”)が、クランプジョー(25、25’、25”)が開位置にある状態で挿入具のリング(2、2’、2”)上を摺動し、
クランプジョー(25、25’、25”)がその閉位置に移動し、それによってクランプジョー(25、25’、25”)の突起(26、26’、26”)がリング(2、2’、2”)のアンダーカット(9、9’、9”)に係合し、
分解工具(20、20’、20”)の押出ボルト(23、23’、23”)が、該押出ボルトが挿入具のボルト(1、1”)を押して該ボルトを挿入具のリング(2、2’、2”)から押し出すように、軸方向に移動し、
リング(2、2’、2”)に新しいボルト(1、1”)が挿入されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記新しいボルト(1、1”)は、押し出されたボルト(1、1”)よりも大きな幅を有するヘッド(3、3”)を有することを特徴とする、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
新しいボルト(1、1”)を挿入する前に、位置合わせボルト(31)の壁接触面(35)が壁(10)に当接し、特に、壁(10)から突出するリング(2、2’、2”)の領域が位置合わせボルト(31)の凹部(36)内に受け入れられるように、請求項
10に記載の位置合わせ工具(30)の位置合わせボルト(31)がリング(2、2’、2”)の貫通開口部(6、6’、6”)内に挿入され、
対応部品(32)の外側要素(38)のリング接触面(39)がリング(2、2’、2”)に当接するように、位置合わせ工具(30)の対応部品(32)が内側要素(37)の第2の接続手段によって中心軸(33)の第1の接続手段に接続され、
位置合わせボルト(31)が壁接触面(35)によって壁(10)を押し、対応部品(32)がリング接触面(39)によってリング(2、2’、2”)を押し、それによってリング(2、2’、2”)が壁(10)に対して位置合わせされるように、内側要素(37)が外側要素(38)に対して移動することを特徴とする、請求項
12または
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁、例えば薄い板金に電気接続部を接続するための挿入具であって、ヘッドおよび接続手段を有するボルト、特にテンションボルトと、テンションボルトを受け入れるための貫通開口部を有する導電性のリングとを有する挿入具に関する。本発明はまた、テンションボルトを押し出すための、挿入具のための分解工具、壁内のリングを調整するための位置合わせ工具、および、挿入具を修理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルと板金との間に導電性を確立するために、変形可能なスリーブによって板金にボルト(素地ボルトまたは接地ボルト)を固定することが知られている。この目的のために、接続部は、例えば、ケーブルラグがねじ付きボルトに固定されるときに、ナットによって生成され得るトルクだけでなく、引っ張り力にも耐えることができなければならない。これは、シートの領域における半径方向の拡大および増大した表面圧力によって達成される。さらに、スリーブは、板金の外側で拡大し、その結果、増大した張力を達成することができる。電流は、板金の穴の壁に伝達される。スリーブの取り付けおよび変形は、この領域における接触抵抗ができるだけ低いことを保証しなければならない。ボルトは、導電性であってもよいが、電流が、ケーブルラグと導電性のリングとの接触を介して、リングを通って壁に直接流れることができるので、導電性であることは必須ではない。
【0003】
この目的のために、EP 0 880 199 B1には、ボルトと導電性のリングとを有する上述のタイプの挿入具が開示されている。ボルトは、第1の長手方向軸に沿って延びるヘッド部分と、少なくとも1つの接続手段を備えた軸とを有する。導電性のリングには、第2の長手方向軸に沿って延びるボルトを受け入れるための貫通開口部が設けられている。この場合、ボルトのヘッドは、円錐台として形成され、ヘッドがリング内に引っ張られると、ヘッドは、円筒形に形成されたリングの貫通開口部を拡大する。
【0004】
このような挿入具の取り付け中または使用中に、挿入具、例えばボルトの固定手段に損傷が生じることがある。したがって、このようなボルトを交換する必要がある。また、取り付け中にすでにリングを壁に斜めに挿入することも可能である。リングを修正するためにも、第1のステップにおいて、ボルトを取り外さなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、後の修理を可能にする改良された挿入具を提供すること、修理のための対応する工具および修理方法を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する挿入具によって達成される。本発明によれば、電気接続部を壁に接続するための挿入具は、ヘッドと少なくとも1つの接続手段とを有するボルトを有する。この接続手段に、導電体を例えばケーブルラグによって固定することができる。接続手段として、例えば、ねじ、差し込みロック、またはクロスピンを設けることができる。本発明による挿入具はまた、ボルトを受け入れるための貫通開口部を有する導電性のリングを有する。貫通開口部は、第1の側から第2の側まで延在する。リングは、塑性変形可能な材料で作ることができ、壁に固定するために壁の対応する開口部に挿入される。あるいは、リングは、弾性的に変形可能であってもよく、それによって、リングを数回使用することができる。次に、ボルトを第1の側からリング内に挿入し、ボルトのヘッドをリングの貫通開口部内に押し込み、リングを変形させる。変形によって、リングを壁の開口部に保持し、ボルトをリングに保持する。本発明によれば、リングは、第2の側の方向において、その外面にアンダーカットを有する。このアンダーカットは、リング上に工具を支持するために、特にリングに張力を加えるために、第2の側から、対応する工具でリングを打撃することを可能にする。これによって、ボルトを、制御された方法でリングから押し出すことができる。
【0007】
本発明の好ましい実施形態では、ボルトは、接続手段が配置される軸を有することができる。この場合、ボルトの軸は、貫通開口部の第2の側から突出することができ、これは、したがって、軸側とも呼ばれる。第1の側はヘッド側と呼ばれる。あるいは、ボルトは、ナットのように設計することができ、ヘッドの内側に接続手段、例えばねじ穴を有することができる。ヘッド側および軸側という用語は、この実施形態についても以下で使用される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、リングには、リングの残りの部分のスリーブ部分よりも大きな外径を有する肩部が設けられている。肩部は、特に軸側または第2の側に配置される。アンダーカットは、肩部、特に肩部の外側輪郭に配置される。例えば、リングは、2つの円筒形部分を有する外側輪郭を有することができ、そのより大きな外径を有する部分が肩部を形成する。肩部によって、リングは、壁の貫通開口部を取り囲む領域において、電気接続部に接続される壁の一方の側に当接することができる。これによって、リングは壁に対して特に良好に位置合わせされる。アンダーカットは、肩部に配置されているので、対応する工具で特に容易に把持することができる。
【0009】
本発明の特に好ましい実施形態では、アンダーカットは、第1の肩部の縁部に対して軸方向にオフセットされてさらなる拡大を表す、第2の肩部によって形成される。このようなアンダーカットは、製造が特に簡単で安価である。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、アンダーカットは溝によって実施される。溝は、両方向にアンダーカットを形成し、したがって、両方向に工具を支持することができる。溝は、好ましくは、リングの中心軸に対して垂直に、特に、リングの外側輪郭の周りに円周方向に位置合わせされる。代替的に、アンダーカットは、円錐形の外側幾何学的形状によって簡単に形成することができる。円錐の狭い方の端部は、リングのヘッド側の方向を向いている。特に、肩部は、狭い側がスリーブ部分の方向を向いてそれゆえ軸側の方向にアンダーカットを形成する、円錐形の外側幾何学的形状を有することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、ヘッドは、その外径がリングの領域の内径よりも大きい領域を有する。その結果、リングは、ヘッドが押し込まれたときに拡大し、その結果、リングが壁に押し込まれる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、リングの貫通開口部は、特にリングのヘッド側から軸側に向かって先細りになっている。これによって、リングを壁に固定するために、リングの特に均一な拡大が達成される。
【0013】
本発明はまた、上述の挿入具からボルトを取り外すための分解工具に関する。これは、少なくとも2つのクランプジョーを有するクランプユニットを有し、各クランプジョーは、挿入具のアンダーカットに係合するための突起を有し、クランプジョーは、クランプジョーの突起同士が第1の距離を有する開位置と、クランプジョーの突起同士が第1の距離より小さい第2の距離を有する閉位置との間で移動可能である。分解工具はまた、クランプユニット内に配置されて挿入具からボルトを押し出すためにクランプジョーに対して軸方向に移動可能な押出ボルトを有する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、分解工具は、ねじを介してクランプユニットに接続されたクランプリングを有し、クランプリングがクランプユニットに対して回転するとき、クランプリングがクランプジョー上を摺動し、その結果、クランプジョーが開位置から閉位置に移動するようになっている。これによって、クランプジョーを閉位置に特に簡単かつ確実にラッチすることができる。したがって、分解工具を挿入具にしっかりとクランプすることができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、分解工具の押出ボルトは、ねじを介してクランプユニットに接続される。押出ボルトを軸方向に変位させるために、押出ボルトをグリップ上で簡単に回すことができる。グリップは、例えば、ハンドルまたはレバーとすることができる。あるいは、グリップは、工具、例えばレンチを取り付けるように形成することができる。
【0016】
本発明はまた、壁に挿入されて本質的に位置合わせボルトおよび対応部品を有する、挿入具のリングを調整するための位置合わせ工具に関する。位置合わせボルトは、リングの貫通開口部を通るための中心軸を有し、この中心軸は、第1の接続手段、特に雄ねじを有する。壁上で支持するための壁接触面を有する幅広ヘッドが、この中心軸上に配置される。対応部品は、内側要素および外側要素を有し、内側要素は、外側要素に対して軸方向に変位可能である。内側要素は、位置合わせボルトの第1の接続手段に接続するための第2の接続手段、特に雌ねじを有する。外側要素は、リング上に対応部品を支持するためのリング接触面を有する。位置合わせボルトをその接続手段で対応部品に固定するときに、内側要素を外側要素に対して軸方向に変位させることによって、壁接触面をリング接触面に対して移動させることができる。これによって、リングを壁に押し込んで位置合わせすることができる。ここでも、ねじ、差し込みロック、クロスピン、または他の固定技術を接続手段として使用することができる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、位置合わせ工具は、壁から突出するリングの領域を受け入れるために、幅広ヘッドに凹部を有する。これによって、壁接触面を壁に確実に支持することができる。
【0018】
また、本発明は、壁に挿入される挿入具を修理する方法に関し、分解工具が、クランプジョーが開位置にある状態で挿入具のリング上を摺動し、特にクランプリングを回転させることによってクランプジョーがその閉位置に移動し、クランプジョーの突起がリングのアンダーカットに係合する。その結果、分解工具は、挿入具のリングにしっかりと接続される。次に、特に押出ボルトのグリップを回すことによって、分解工具の押出ボルトを軸方向に移動させる。その結果、押出ボルトは、挿入具のボルトを押し、それを挿入具のリングから押し出す。次に、新しいボルトをリングに挿入することができる。したがって、この方法は、リングまたは壁に損傷を与えることなく、欠陥のあるボルトの制御された交換を可能にする。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、新しいボルトは、押し出されたボルトよりも幅の広いヘッドを有する。新しいボルトが挿入されると、それはリング内にしっかりと押し戻され、したがって安定に保持される。おそらく、緩んだリングでさえも、再び完全に固定される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、リングは、新しいボルトが挿入される前に、壁内で調整される。この目的のために、位置合わせボルトの壁接触面が壁に当接するように、特に、壁から突出するリングの領域が位置合わせボルトの凹部に受け入れられるように、位置合わせ工具の位置合わせボルトがリングの貫通開口部に挿入される。
【0021】
位置合わせボルトの軸は、リングの他方の側でその接続手段と共に突出し、そこで対応部品に接続することができる。この目的のために、位置合わせ工具の対応部品は、内側要素の第2の接続手段によって中心軸の第1の接続手段に接続され、その結果、対応部品の外側要素のリング接触面がリングに当接する。ここで、位置合わせボルトが壁接触面によって壁を押し、対応部品がリング接触面によってリングを押し、それによってリングが壁に対して位置合わせされるように、内側要素を外側要素に対して移動させることができる。内側要素は、外側要素に対して、例えば手動で、油圧で、空気圧で、または電磁的に移動させることができる。
【0022】
本発明のさらなる特徴、利点、および可能な用途は、例示的な実施形態の以下の説明および図面を参照して見出すこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】組み立て前の本発明による挿入具のボルトの概略的な断面図である。
【
図2】組み立て前の本発明による挿入具のリングの概略的な平面図である。
【
図3】壁に組み立てた後の本発明による挿入具の概略的な断面図である。
【
図4】組み立て前の第2の実施形態の本発明による挿入具のリングの概略的な断面図である。
【
図5】組み立て前の第3の実施形態の本発明による挿入具のリングの概略的な断面図である。
【
図6】本発明による分解工具の概略的な平面図である。
【
図7】組み立てられた挿入具に取り付けられた本発明による分解工具の概略的な断面図である。
【
図8】組み立てられた挿入具に取り付けられた第2の実施形態における本発明による分解工具の概略的な断面図である。
【
図9】組み立てられた挿入具に取り付けられた本発明による位置合わせ工具の概略的な断面図である。
【
図10】ナットとして設計されたボルトを用いて壁に組み立てた後の本発明による挿入具の概略的な断面図である。
【
図11】組み立てられた挿入具に取り付けられた第3の実施形態における本発明による分解工具の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明による挿入具の導電性ボルト1を示す。これは、ヘッド3と、中心軸に沿って延びる軸4とを有する。軸4の外面には、軸4、したがって本発明による挿入具を、例えばケーブルラグを介して導電体に接続するための接続手段として機能する雄ねじ5が設けられている。
【0025】
図2は、壁10の開口部に挿入することができる本発明による挿入具のリング2を示す。リング2は貫通開口部6を有し、その中にボルト1がその軸4によって挿入されることができる。この場合、貫通開口部6は、ボルト1のヘッド3の外径よりも僅かに小さくなるように選択される。リング2は、本質的に円筒形に形成されたスリーブ部分7を有する。リング2の別の円筒形領域は、より大きな外径を有し、肩部8として形成されている。肩部8の外側輪郭には、リング2を完全に取り囲む溝9が設けられている。工具、例えば分解工具20を使用して溝9に係合させ、工具をリング2上に支持することができる。
【0026】
図3は、壁10に既に固定された本発明による挿入具を示す。この目的のために、リング2が壁10の開口部に挿入され、次に、ボルト1が、その軸4の端部によってスリーブ部分7の側のリング2に挿入されている。ボルト1は、力を加えることによって、そのヘッド3によってリング2に押し込まれる。その結果、リング2は拡大し、したがって、壁10の開口部に押し込まれ、その結果、固定される。
【0027】
リング2’の代替的な実施形態が
図4に示されている。
図2に示すリング2と同様に、リング2’は、スリーブ部分7’と、スリーブ部分7’と比較してより大きな外径を有する肩部8’とを有する。
図2の実施例とは対照的に、肩部8’の外側輪郭には溝9は設けられておらず、アンダーカットは円錐形の外側幾何学的形状9’によって形成されている。したがって、肩部8’の外側輪郭は、リング2’の中心軸に対して角度を形成する。
【0028】
リング2”の別の代替実施形態が
図5に示されている。
図2に示すリング2と同様に、リング2”は、スリーブ部分7”と、スリーブ部分7”と比較してより大きな外径を有する肩部8”とを有する。
図2の実施形態とは対照的に、肩部8”の外側輪郭には溝9は設けられておらず、アンダーカットは追加の肩部9”によって形成されている。肩部8”から出発して、追加の肩部9”は追加の拡大を表し、その外径は肩部8”の外径よりもさらに大きい。
【0029】
図6は、壁10に挿入された挿入具からボルト1を取り外すことができる分解工具20を示す。分解工具20は、挿入具のアンダーカット、例えば溝9と係合させることができるクランプジョー25を有する。クランプジョー25は、クランプリング21がねじ込まれる雄ねじを有するクランプユニット22上に配置される。クランプリング21を回転させることにより、クランプリング21がクランプジョー25上を軸方向に摺動し、その結果、クランプジョー25が分解工具20の中心軸の方向に内側へ曲げられるようになっている。これによって、クランプジョーはその閉位置に移動する。クランプユニット22の内側には、押出ボルト23がねじ込まれる雌ねじが配置されている。押出ボルト23の回転運動のために、押出ボルト23はグリップ24を有し、グリップ24は、手で回すことができる。押出ボルト23がクランプユニット22とねじ係合する結果、回転運動は軸方向運動に変換される。
【0030】
分解工具20の動作モードは、
図7の断面図に見ることができる。これは、壁10に挿入された、ボルト1とリング2とを有する挿入具を示す。分解工具20は、そのクランプジョー25によって、リング2上を、特にリング2の溝9上を摺動する。クランプジョー25は、クランプユニット22の弾性領域によって開位置に保持される。開位置では、突起26は依然として溝9の外側に配置されている。クランプジョー25は、挿入具または分解工具の中心軸に対して、それらの外側にわずかな斜面を有する。これに対応して、クランプリング21は、そのクランプジョー25と接触する前縁に、対応する斜面を有する。クランプリング21が回転すると、クランプリング21は、クランプユニット22とのねじ係合によって、クランプユニット22、ひいてはクランプジョー25に対して軸方向に変位する。したがって、クランプリング21は、
図6において、クランプジョー25上を上方に摺動し、クランプジョー25は、斜面によって、それぞれ中心軸の方向に内側へ傾くことになる。その結果、クランプジョー25の突起26がリング2の溝9内に押し込まれ、それによって分解工具20が挿入具に固定される。
図6はまた、クランプユニット22内に配置された押出ボルト23の上端を示す。図示の位置では、この上端はボルト1の軸4から依然として離れている。押出ボルト23のグリップ24を回すことにより、この上端は、クランプユニット22とのねじ係合により、クランプユニット22に対して、したがって、保持された挿入具に対して、軸方向に動かされる。これによって、押出ボルト23は、ボルト1の軸4の端部と接触し、さらなる軸方向移動でボルト1をリング2から押し出す。分解工具はリング2の溝9に固定されているので、力はボルト1とリング2との間にのみ及ぼされる。これによって、ボルトが押し出されたときに壁10に変形等の損傷が生じることが防止される。
【0031】
分解工具20’の代替的な実施形態が
図8に示されている。これは、
図1のリング2’の代替実施形態に適合される。クランプリング21’および押出ボルト23’の構成要素および機能は、
図5および
図6の対応する部分の構成要素および機能に対応する。しかしながら、クランプユニット22’は、リング2’の円錐形の外形9’に適合された突起26’を有するクランプジョー25’を有する。したがって、突起26’は、リングの円錐形の外形9’に本質的に対応する斜面を有する。その結果、分解工具20’をリング2に強固に固定することができる。
【0032】
本発明による位置合わせ工具30が
図9に示されている。位置合わせ工具30は、本質的に、2つの要素、すなわち、位置合わせボルト31および対応部品32からなる。対応部品32は、互いに対して軸方向に変位可能な内側要素37および外側要素38から構成される。内側要素の内側には、位置合わせボルト31への接続手段として働く雌ねじが配置されている。位置合わせボルト31は、幅広ヘッド34と、内側要素37の雌ねじにねじ込むために雄ねじが切られた中心軸33とを有する。
【0033】
壁10に固定された挿入具を位置合わせするために、ボルト1は、上述したように、第1のステップでリング2から押し出されなければならない。次に、位置合わせボルト31は、その中心軸33によって、壁10に固定されたままのリング2の貫通開口部6を通って押される。次に、位置合わせボルト31は、その壁接触面35によって、リングを取り囲む壁10の領域において、壁10に当接する。このとき、壁10から突出するリング2の領域は、位置合わせボルト31の凹部36に受け入れられる。次に、対応部品32は、対応部品32が外側要素38のリング接触面39によってリング2に当接するまで、その内側要素37によって位置合わせボルト31の軸33にねじ止めされる。ここで、内側要素37は、例えば油圧の作用によって、
図8の図面の右側に引っ張られる。その結果、位置合わせボルト31は対応部品32の外側要素38の方向に移動し、壁接触面35はリング接触面39に対して変位し、その結果、リング2は壁10内で位置合わせされる。
【0034】
図10は、ボルト1”が軸4を有しておらず、ナットのように設計されている、本発明による挿入具を示している。ボルト1”は、本質的に、貫通孔とその中に配置された接続手段としての雌ねじ5”とを有する、ヘッド3”を有する。その他の点では、
図10の実施形態は、
図3に示す実施形態に対応する。
【0035】
図11は、
図2の実施形態のリング2に係合し、軸4の無いボルト1”を押し出すように設定された分解工具20”の第3の実施形態を示す。分解工具20”は、
図7の記載された実施形態に本質的に対応し、クランプユニット22”のクランプジョー25”を開閉するためのクランプリング21”を備え、その結果、クランプジョー25”はリング2の溝9内の突起26”と係合する。
図7とは異なり、分解工具20”は、より長く、より細く設計されている、押出ボルト23”を有する。したがって、押出ボルト23”は、ボルト1”を押し出すためにリング2の貫通孔6に挿入されることができる。
【符号の説明】
【0036】
1、1” ボルト
2、2’、2” リング
3、3” ヘッド
4 軸
5、5” 雄ねじ
6、6’、6” 貫通開口部
7、7’、7” スリーブ部分
8、8’、8” 肩部
9 溝
9’ 円錐形の外側幾何学的形状
9” 追加の肩部
10 壁
20、20’、20” 分解工具
21、21’、21” クランプリング
22、22’、22” クランプユニット
23、23’、23” 押出ボルト
24 グリップ
25、25’、25” クランプジョー
26、26’、26” 突起
30 位置合わせ工具
31 位置合わせボルト
32 対応部品
33 中心軸
34 幅広ヘッド
35 壁接触面
36 凹部
37 内側要素
38 外側要素
39 リング接触面