(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】硫黄架橋可能なゴム混合物、加硫物及び車両タイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20230307BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230307BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20230307BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/36
C08K5/548
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2020569947
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019065128
(87)【国際公開番号】W WO2020011463
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-15
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シェッフェル・ユリア
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー・ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】レッカー・カルラ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェーケンディーク・キルステン
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-514978(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0191270(US,A1)
【文献】国際公開第2017/220764(WO,A1)
【文献】特開2015-218167(JP,A)
【文献】特開2015-218169(JP,A)
【文献】特開2015-218168(JP,A)
【文献】特開2001-040143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
B60C 1/00 - 19/12
B29B 7/00 - 71/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄架橋可能なゴム混合物であって、少なくとも以下の成分:
- 少なくとも1つのジエンゴム、及び
- 少なくとも1つのシリカ、及び
- 一般実験式
I)[(R
1)
oSi-(R
3-)
pX-(R
4-)
p]
mS
n(R
2)
2-m
(式中、oは3で
あり、及びR
1基は、同一であるか又は異なり得、且つC
1~C
10アルコキシ基、C
6~C
20フェノキシ基、C
2~C
10環状ジアルコキシ基、C
2~C
10ジアルコキシ基、及びC
4~C
10シクロアルコキシ基から選択され、及び
R
3基及びR
4基は、独立して、同一であるか又は異なり得、且つ分岐状又は非分岐状、飽和又は不飽和、脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族のC
1~C
30炭化水素基であり、ここで、指数pは、独立して、1の値を
取り、
Xは、ウレタン及びアミド基から選択される少なくとも1つの極性基を含む基であり、
mは、2の値を取り、nは、1~10の整数である)を有する少なくとも1つのシラン
を含む硫黄架橋可能なゴム混合物。
【請求項2】
少なくとも1つのR
1は、C
1~C
10アルコキシ基であることを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項3】
R
3
基及びR
4
基が、独立して、同一であるか又は異なり得、且つ分岐状又は非分岐状、飽和又は不飽和、脂肪族のC
1
~C
30
炭化水素基であり、及びnが2~4の整数である、請求項2に記載のゴム混合物。
【請求項4】
前記式I)のシランは、以下の式II):
【化1】
の構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項5】
前記式I)のシランは、以下の式III):
【化2】
の構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項6】
5~500phrの少なくとも1つのシリカを含有することを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項7】
前記ジエンゴムは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)及びエマルション重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのゴム混合物の硫黄加硫によって得られる加硫物。
【請求項9】
少なくとも1つの構成要素中において、請求項
8に記載の少なくとも1つの加硫物を含むことを特徴とする車両タイヤ。
【請求項10】
トレッド中において、請求項
8に記載の少なくとも1つの加硫物を含むことを特徴とする、請求項
9に記載の車両タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄架橋可能なゴム混合物、加硫物及び車両タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)は、シリル基と硫黄基との間に極性の尿素含有スペーサー基を有するシランカップリング剤を含むゴム混合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/172915A1号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第2589619A1号明細書
【文献】国際公開第2010/049216A2号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2003/0191270A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術から進歩して、転がり抵抗性と濡れ時におけるグリップ性との間のトレードオフの改善を有すると共に、他の性質、例えば特に硬度及び剛性が少なくとも同等の同じレベルに維持されるか又はさらに同様に改善された硫黄架橋可能なゴム混合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、硫黄架橋可能なゴム混合物が、少なくとも以下の成分:
- 少なくとも1つのジエンゴム、及び
- 少なくとも1つのシリカ、及び
- 一般実験式
I)[(R1)oSi-(R3-)pX-(R4-)p]mSn(R2)2-m
(式中、oは、1、又は2、又は3であり得、及びR1基は、同一であるか又は異なり得、且つC1~C10アルコキシ基、C6~C20フェノキシ基、C2~C10環状ジアルコキシ基、C2~C10ジアルコキシ基、C4~C10シクロアルコキシ基、C6~C20アリール基、C1~C10アルキル基、C2~C20アルケニル基、C2~C20アルキニル基、C7~C20アラルキル基、ハライド又はアルキルポリエーテル基-O-(R6-O)r-R7から選択され、ここで、R6基は、同一であるか又は異なり、且つ分岐状又は非分岐状、飽和又は不飽和、脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族の二価のC1~C30炭化水素基であり、rは、1~30の整数であり、及びR7基は、非置換又は置換、分岐状又は非分岐状の一価のアルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル基であるか、又は
2つのR1は、2~10の炭素原子を有するジアルコキシ基に対応し、この場合、oは、3未満であるか、又は
式I)の2つ以上のシランは、R1基を介するか又は縮合によって架橋され得、及び
式I)において、上述の選択肢から選択される少なくとも1つのR1が存在することを条件とし、ここで、R1は、それぞれの(R1)oSi-基中において、i)酸素原子を介してケイ素原子に結合されているか、又はii)ハライドであり、及び
R3基及びR4基は、独立して、同一であるか又は異なり得、且つ分岐状又は非分岐状、飽和又は不飽和、脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族のC1~C30炭化水素基であり、ここで、指数pは、独立して、0又は1の値を取り得、
Xは、ウレタン、アミド、エステル、アミン、チオ尿素、チオアミド、O-オルガニルチオカルバメート、S-オルガニルチオカルバメート、アミジン、グアニジン、ピペリジン、無水マレイン酸、スルホンアミド、カーボネート、イミダゾリン、チアゾリジン、チアゾリジノン、ピロリジン、ピラゾール、ベンゾイミダゾール、インドール、プリン、チアジン、スルホネート及びホスホネート基から選択される少なくとも1つの極性基を含む基であり、
mは、1又は2の値を取り、nは、1~10の整数であり、R2は、水素原子又は-C(=O)-R8基であり、ここで、R8は、水素、C1~C20アルキル基、C6~C20アリール基、C2~C20アルケニル基及びC7~C20アラルキル基から選択される)
を有する少なくとも1つのシラン
を含む、本発明に従って達成される。
【0006】
驚くべきことに、上述の成分を組み合わせることにより、転がり抵抗性と濡れ時におけるグリップ性との間のトレードオフの改善を有すると共に、他の性質、例えば特に硬度及び剛性が少なくとも同等の同じレベルに維持されるか又はさらに同様に改善され、その具体的な結果として、車両タイヤで使用した場合に操縦特性が同等であるか又はさらに改善されることが見出された。
【0007】
本発明は、本発明の少なくとも1つのゴム混合物の加硫物をさらに提供する。
【0008】
本発明は、少なくとも1つの構成要素中において、本発明のゴム混合物の本発明の少なくとも1つの加硫物を含む車両タイヤをさらに提供する。車両タイヤは、好ましくは、少なくともトレッド中において、少なくとも1つの加硫物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の加硫物及び本発明の車両タイヤは、転がり抵抗性と濡れ時におけるグリップ性との間のトレードオフの改善の点で注目に値する。同時に、それらは、極めて良好な操縦特性を有する。
【0010】
二部構成のトレッド(上側:キャップ及び下側:ベース)の場合、本発明のゴム混合物をキャップ及びベースの両方に使用することができる。少なくともキャップ若しくは少なくともベース又は少なくともキャップ及びベースは、本発明のゴム混合物の本発明の少なくとも1つの加硫物を含むことが好ましい。
【0011】
加えて、本発明のゴム混合物は、互いに並行して配列され、且つ/又は相互に重ね合わせて配列された各種のトレッド混合物(多成分トレッド)からなるトレッドにも好適である。
【0012】
本発明に関連して、「車両タイヤ」は、産業用車両及び建築現場車両、トラック、乗用車のためのタイヤ並びに二輪車のタイヤを含む車両用空気タイヤ及びゴムソリッドタイヤを意味すると理解されたい。
【0013】
さらに、本発明のゴム混合物は、車両タイヤの他の構成要素、特に例えばフランジプロファイル、さらにインナータイヤの構成要素にも適している。さらに、本発明のゴム混合物は、例えば、ベローズ、コンベア用ベルト、空気バネ、ベルト、伝動ベルト又はホース、さらに靴底などの他の産業用ゴム物品にも適している。
【0014】
以下では、本発明の硫黄架橋可能なゴム混合物の成分について詳細に説明する。すべての観察は、少なくとも1つの構成要素中における本発明のゴム混合物の本発明の少なくとも1つの加硫物を含む、本発明の加硫物及び本発明の車両タイヤに同等に適用可能である。
【0015】
本明細書で使用される、「phr」(重量でゴム100部あたりの部数)という単位は、ゴム工業における混合物の配合での標準的な量の単位である。本明細書では、個々の置換物の量は、混合物中に存在する、20,000g/molよりも大きい分子量Mw(GPCによる)を有するすべてのゴムの合計質量100重量部を基準とする。
【0016】
本明細書で使用されるphf(重量で充填剤100部あたりの部数)という表現は、ゴム工業で充填剤に対するカップリング剤の量として慣用される単位である。
【0017】
本出願に関連して、phfは、存在するシリカに関し、それは、存在する各種の他の充填剤、例えばカーボンブラックなどがシランの量の計算に含まれないことを意味する。
【0018】
本発明では、ゴム混合物は、硫黄架橋可能であり、その目的のために少なくとも1つのジエンゴムを含む。
【0019】
ジエンゴムとは、ジエン及び/又はシクロアルケンを重合又は共重合させることによって形成され、そのため、主鎖又は側基のいずれかにC=C二重結合を有するゴムである。
【0020】
この場合、ジエンゴムは、好ましくは、以下からなる群から選択される:天然ポリイソプレン、及び/又は合成ポリイソプレン、及び/又はエポキシ化ポリイソプレン、及び/又はブタジエンゴム、及び/又はブタジエン-イソプレンゴム、及び/又は溶液重合スチレン-ブタジエンゴム、及び/又はエマルション重合スチレン-ブタジエンゴム、及び/又はスチレン-イソプレンゴム、及び/又は20,000g/molより大きい分子量Mwを有する液状ゴム、及び/又はハロブチルゴム、及び/又はポリノルボルネン、及び/又はイソプレン-イソブチレンコポリマー、及び/又はエチレン-プロピレン-ジエンゴム、及び/又はニトリルゴム、及び/又はクロロプレンゴム、及び/又はアクリレートゴム、及び/又はフルオロゴム、及び/又はシリコーンゴム、及び/又はポリスルフィドゴム、及び/又はエピクロロヒドリンゴム、及び/又はスチレン-イソプレン-ブタジエンターポリマー、及び/又は水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、及び/又は水素化スチレン-ブタジエンゴム。
【0021】
ニトリルゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム又はエチレン-プロピレン-ジエンゴムは、特に産業用ゴム物品、例えばベルト、伝動ベルト及びホース並びに/又は靴底の製造で使用される。これらのゴムのための当業者に公知の混合組成物(具体的には充填剤、可塑剤、加硫系及び添加剤と呼ばれる)を採用することが好ましい。
【0022】
ゴム混合物は、車両タイヤに特に適し、原理的にはいずれの構成要素、例えば特にトレッド、サイドウォール、フランジプロファイル、さらに他のいわゆるボディ構成要素でも使用することができる。
【0023】
ジエンゴムは、好ましくは、以下からなる群から選択される:天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、エマルション重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴム。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態において、ジエンゴムは、以下からなる群から選択される:天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)及びエマルション重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)。このタイプのゴム混合物は、車両タイヤのトレッドに特に適している。
【0025】
本発明の特に有利な実施形態において、ゴム混合物は、好ましくは、2~100phr及び本発明の1つの特に有利な実施形態において5~30phr、極めて好ましくは5~15phrの量で少なくとも1つの天然ポリイソプレンを含む。本発明のゴム混合物の特に良好な加工性及び最適化された引張性能は、このように達成される。
【0026】
本発明の特に有利な実施形態において、ゴム混合物は、好ましくは、2~100phr及び本発明の特に有利な実施形態において5~50phr、極めて好ましくは10~25phrの量で少なくとも1つのポリブタジエン(ブタジエンゴム)を含む。この方法により、本発明のゴム混合物の特に良好な摩耗及び引張性能並びに良好な加工性と組み合わされて低いヒステリシス損失が達成される。
【0027】
本発明の特に有利な実施形態において、ゴム混合物は、好ましくは、2~100phr及び本発明の特に有利な実施形態において25~90phr、極めて好ましくは65~90phrの量で少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を含む。この方法により、本発明のゴム混合物において、良好な加工性と組み合わされたヒステリシス損失、さらに良好な摩耗及び引張性能が達成される。
【0028】
この場合におけるSBRは、SSBRであることが好ましく、最適化されたヒステリシス性能が得られる。
【0029】
本発明の特に有利な実施形態において、ゴム混合物は、前述のゴムのNR、BR及びSBR、好ましくはSSBRの2つ以上のポリマーブレンド物を含み、且ついかなる認識可能な組合せでもそれを含み得、存在するゴムをすべて合計したものは、100phrになる。
【0030】
特に有利な実施形態において、ゴム混合物は、5~20phrの少なくとも1つの天然ポリイソプレン及び/又は少なくとも1つの合成ポリイソプレンと、50~95phrの少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴムとを含む。これは、以下の場合を含む:その総合計が100phrであり、さらなるゴムが存在する場合、定義により、すべてのソリッドゴムの量を総合計したものが100phrである。
【0031】
すべての実施形態における天然及び/又は合成のポリイソプレンは、cis-1,4-ポリイソプレン又は3,4-ポリイソプレンのいずれかである。しかしながら、90重量%を超えるcis-1,4比率を有するcis-1,4-ポリイソプレンを使用することが好ましい。そのようなポリイソプレンは、第一に、Ziegler-Natta触媒を用いて溶液中で立体特異性重合させるか、又は微細に分散させたリチウムアルキルを使用することによって得ることができる。第二に、天然ゴム(NR)は、そのようなcis-1,4-ポリイソプレンの1つであり、天然ゴム中のcis-1,4含量は、99重量%よりも高い。
【0032】
さらに、1つ又は複数の天然ポリイソプレンと1つ又は複数の合成ポリイソプレンとの混合物も考えられる。
【0033】
本発明のゴム混合物がブタジエンゴム(すなわちBR、ポリブタジエン)を含有する場合、これは、当業者に公知の各種のタイプであり得る。これらは、とりわけ、いわゆる高cisタイプと低cisタイプとを含み、90重量%以上のcis含量を有するポリブタジエンが高cisタイプと呼ばれ、90重量%未満のcis含量を有するポリブタジエンが低cisタイプと呼ばれる。低cisポリブタジエンの一例は、20重量%~50重量%のcis含量を有するLi-BR(リチウム触媒によるブタジエンゴム)である。ゴム混合物の特に良好な摩耗性能及び低ヒステリシスは、高cisBRを用いて達成される。
【0034】
採用されるポリブタジエンは、変性及び官能化を用いて末端基変性され得、且つ/又はポリマー鎖に沿って官能化され得る。その変性は、ヒドロキシル基、及び/又はエトキシ基、及び/又はエポキシ基、及び/又はシロキサン基、及び/又はアミノ基、及び/又はアミノシロキサン、及び/又はカルボキシル基、及び/又はフタロシアニン基、及び/又はシラン-スルフィド基を用いた変性から選択される。しかしながら、官能化剤としても知られる、当業者に公知の他の変性も好適である。金属原子は、そのような官能化の成分であり得る。
【0035】
ゴム混合物中に少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴム(スチレン-ブタジエンコポリマー)が存在する場合、これは、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)及びエマルション重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)から選択され得、少なくとも1つのSSBRと少なくとも1つのESBRとの混合物を採用することも可能である。「スチレン-ブタジエンゴム」及び「スチレン-ブタジエンコポリマー」という用語は、本発明に関連して同義語として使用される。
【0036】
使用されるスチレン-ブタジエンコポリマーは、先にポリブタジエンについて引用した変性及び官能化を用いて末端基変性され、且つ/又はポリマー鎖に沿って官能化され得る。
【0037】
本発明では、ゴム混合物は、少なくとも1つのシリカを含む。
【0038】
シリカは、タイヤゴム混合物のための充填剤として好適である、当業者に公知の各種のタイプのシリカであり得る。しかしながら、35~400m2/g、好ましくは35~350m2/g、より好ましくは85~320m2/g、最も好ましくは120~235m2/gの窒素表面積(BET表面積)(DIN ISO 9277及びDIN 66132による)及び30~400m2/g、好ましくは30~330m2/g、より好ましくは80~300m2/g、最も好ましくは115~200m2/gのCTAB表面積(ASTM D 3765による)を有する微粉砕された沈降シリカを使用することが特に好ましい。そのようなシリカは、例えば、タイヤトレッドのためのゴム混合物において特に良好な加硫物の物理的性質を与える。この場合、同じ製品性能が保持しながら、混合加工における混合時間の短縮という利点を得ることが可能であり、それにより生産性が改善される。使用されるシリカは、従って、例えばEvonik製のUltrasil(登録商標)VN3タイプ(商品名)又はHDシリカとして知られる高分散性シリカ(例えば、Solvay製のZeosil(登録商標)1165MP)のいずれかであり得る。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のゴム混合物は、3~500phr、好ましくは3~400phr、好ましくは5~300phrの少なくとも1つのシリカを含有する。
【0040】
好ましい実施形態において、ゴム混合物は、10~200phr、最も好ましくは20~180phrの少なくとも1つのシリカを含有する。
【0041】
特に、500phr、又は400phr、又は300phr、又は200phr、又は180phrの比較的高い量のシリカと、本発明において存在する、以下で詳細に説明するシランとを組み合わせて用いると、ゴム混合物及びそれからの加硫物のタイヤの性質、特に最適化された転がり抵抗性及び濡れ時におけるグリップ性の予測値に関連して特に有利な性質がもたらされる。
【0042】
本発明のゴム混合物中において、例えばBET表面積の点で異なる少なくとも2つの異なるシリカが存在する場合、記述した量の数字は、常に、存在するすべてのシリカを合計した量を指す。
【0043】
「ケイ酸」及び「シリカ」という用語は、本発明に関連して同義語として使用される。
【0044】
本発明のゴム混合物は、少なくとも1つのカーボンブラック、特に産業用カーボンブラックも含み得る。
【0045】
カーボンブラックとしては、当業者であれば知っているすべてのタイプのカーボンブラックが可能である。
【0046】
1つの実施形態において、カーボンブラックは、30~250g/kg、好ましくは30~180g/kg、より好ましくは40~180g/kg、最も好ましくは40~130g/kgの、ASTM D 1510に従ったヨウ素価(ヨウ素吸着量とも呼ばれる)と、30~200mL/100g、好ましくは70~200mL/100g、より好ましくは90~200mL/100gの、ASTM D 2414に従ったDBP価とを有する。
【0047】
ASTM D 2414に従ったDBP価は、フタル酸ジブチルによるカーボンブラック又は淡色の充填剤の比吸収体積を規定する。
【0048】
ゴム混合物、特に車両タイヤにおいてそのようなタイプのカーボンブラックを使用することにより、摩耗抵抗性と蓄熱性との間で最善の折り合いが付けられ、その結果、エコロジー的に関連のある転がり抵抗性にも好影響が出る。この場合、それぞれのゴム混合物において1つのみのタイプのカーボンブラックを使用することが好ましいが、ゴム混合物中に各種のタイプのカーボンブラックを混ぜ込むことも可能である。存在するカーボンブラックの合計量は、0.1~250phrであり得る。
【0049】
本発明の有利な実施形態において、ゴム混合物は、0又は0.1~20phr、好ましくは0又は0.1~10phrの少なくとも1つのカーボンブラック及び30~500phr、好ましくは30~200phrの少なくとも1つのシリカを含有する。
【0050】
本発明のさらなる有利な実施形態において、ゴム混合物は、30~150phrの少なくとも1つのカーボンブラック及び10~50phrの少なくとも1つのシリカを含有し、従って部分シリカ混合物である。
【0051】
本発明のゴム混合物は、例えば、0.1~50phrの量でさらなる充填剤を含有し得る。本発明に関連して、さらなる(非補強性の)充填剤としては、以下が挙げられる:アルミノシリケート、カオリン、チョーク、デンプン、酸化マグネシウム、二酸化チタン又はゴムゲル、さらに繊維類(例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維)。
【0052】
さらに、任意選択的に補強性のある充填剤は、例えば、以下である:カーボンナノチューブ(CNT、離散CNT、いわゆる中空炭素繊維(HCF)及び1つ又は複数の官能基、例えばヒドロキシ、カルボキシ及びカルボニル基を有する変性CNTを含有する)、グラファイト及びグラフェン並びに「炭素-シリカ二相)充填剤」として知られているもの。
【0053】
本発明に関連して、酸化亜鉛は、充填剤中に含まれない。
【0054】
本発明のゴム混合物は、一般実験式I):
I)[(R1)oSi-(R3-)pX-(R4-)p]mSn(R2)2-m
(式中、oは、1、又は2、又は3であり得、及びR1基は、同一であるか又は異なり得、且つC1~C10アルコキシ基、C6~C20フェノキシ基、C2~C10環状ジアルコキシ基、C2~C10ジアルコキシ基、C4~C10シクロアルコキシ基、C6~C20アリール基、C1~C10アルキル基、C2~C20アルケニル基、C2~C20アルキニル基、C7~C20アラルキル基、ハライド又はアルキルポリエーテル基-O-(R6-O)r-R7から選択され、ここで、R6基は、同一であるか又は異なり、且つ分岐状又は非分岐状、飽和又は不飽和、脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族の二価のC1~C30炭化水素基であり、rは、1~30の整数であり、及びR7基は、非置換又は置換、分岐状又は非分岐状の一価のアルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル基であるか、又は
2つのR1は、2~10の炭素原子を有するジアルコキシ基に対応し、この場合、oは、3未満であるか、又は
式I)の2つ以上のシランは、R1基を介するか又は縮合によって架橋され得、及び
式I)において、上述の選択肢から選択される少なくとも1つのR1が存在することを条件とし、ここで、R1は、それぞれの(R1)oSi-基中において、i)酸素原子を介してケイ素原子に結合されているか、又はii)ハライドであり、及び
R3基及びR4基は、独立して、同一であるか又は異なり得、且つ分岐状又は非分岐状、飽和又は不飽和、脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族のC1~C30炭化水素基であり、ここで、指数pは、独立して、0又は1の値を取り得、
Xは、ウレタン、アミド、エステル、アミン、チオ尿素、チオアミド、O-オルガニルチオカルバメート、S-オルガニルチオカルバメート、アミジン、グアニジン、ピペリジン、無水マレイン酸、スルホンアミド、カーボネート、イミダゾリン、チアゾリジン、チアゾリジノン、ピロリジン、ピラゾール、ベンゾイミダゾール、インドール、プリン、チアジン、スルホネート及びホスホネート基から選択される少なくとも1つの極性基を含む基であり、
mは、1又は2の値を取り、nは、1~10の整数であり、R2は、水素原子又は-C(=O)-R8基であり、ここで、R8は、水素、C1~C20アルキル基、C6~C20アリール基、C2~C20アルケニル基及びC7~C20アラルキル基から選択される)
を有する少なくとも1つのシランを含有する。
【0055】
この式I)のシランは、本発明のゴム混合物中において、
a)ゴム混合物中に存在するシリカをジエンゴムのポリマー鎖に結合させるためのカップリング剤として、及び/又は
b)ポリマー鎖に結合するのではなく、シリカ粒子に結合することにより、シリカを表面変性させる
ように機能する。
【0056】
シランカップリング剤は、常識的なものであり、ゴムの混合中、又はゴム混合物の混合中(インサイチュー)、又は充填剤をゴムに実際に添加する前の予備処理(予備変性)の方式でシリカの表面のシラノール基又は他の極性基と反応する。いくつかのシランは、ゴムのポリマー鎖にさらに結合することができる。
【0057】
上述の実験式I)を有するシランは、先に詳細に特定したような極性基を含むX基を有することが本発明で不可欠である。この極性基は、ケイ素原子をSn残基の硫黄原子につなぐスペーサー基、-(R3)p-X-(R4)p-の一部である。当技術分野では、そのような結合基は、スペーサーとも呼ばれ、なぜなら、それは、ケイ素(充填剤に結合)と硫黄(ジエンゴムに結合)との間の距離を決めるからである。
【0058】
本発明では、極性基は、以下から選択される:ウレタン、アミド、エステル、アミン、チオ尿素、チオアミド、O-オルガニルチオカルバメート、S-オルガニルチオカルバメート、アミジン、グアニジン、ピペリジン、無水マレイン酸、スルホンアミド、カーボネート、イミダゾリン、チアゾリジン、チアゾリジノン、ピロリジン、ピラゾール、ベンゾイミダゾール、インドール、プリン、チアジン、スルホネート及びホスホネート基。
【0059】
驚くべきことに、本発明において存在する式I)のシランは、他の極性基を有するシランと比較して、例えばより具体的には極性の尿素基と比較して、ケイ素と硫黄との間のスペーサー基中で転がり抵抗性及び濡れ時におけるグリップ性のための指標の改善を達成し、特にさらに上述の性質のトレードオフの改善を達成する。従って、式I)の少なくとも1つのシランを含む本発明のゴム混合物は、特に転がり抵抗性及び濡れ時におけるグリップ性の予測値に関連してより高い性能レベルにある。
【0060】
「少なくとも1つの極性基を有するX基」が意味することは、このX基が、本発明において詳細に説明したような少なくとも1つの極性の官能基を有することであるが、任意選択的にさらなる官能価又は炭化水素残基を追加的に有し得る。後者は、特に複雑な構造の分岐状のX基、特に二級の基の場合に特に存在する可能性がある。
【0061】
上述の極性基は、この場合、その構造に組み入れられ、これは、その命名が、公式には特定したものと異なる名称となる可能性があることを意味する。
【0062】
R3及びR4基は、この場合、追加の炭化水素残基であり、これらは、以下で説明するように存在しても又は存在しなくてもよい。
【0063】
極性の官能基のヘテロ原子は、ヘテロ原子を欠くスペーサー基、例えばアルキル基と比較して分子の内部での極性を高め、それにより本発明に関連して「極性」という用語が用いられる。ヘテロ原子を有さないヒドロカルビル基は、一般的に当技術分野で非極性と分類される。
【0064】
「極性」という表現は、X基の追加の記述とみなすべきであり、本発明にとって本質的な特徴は、その基の化学的な仕様である。
【0065】
本発明のゴム混合物では、上述の式I)のシランは、スペーサー基として典型的にプロピレン基のみを有する非極性のシランと全体的又は部分的に置き換えられ得、それらは、当業者に比較的周知であり、例えば以下が挙げられる:TESPD(3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)、又はTESPT(3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)、又はオクチルトリエトキシシラン(例えば、Si208(登録商標)、Evonik製)、又はメルカプトシラン例えば、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(例えば、Si263(登録商標)、Evonik製)、又はブロックされたメルカプトシラン、例えば3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン(例えば、NXTシラン、Momentive製)。それらは、剛性の増大及びより良好な加工性、例えば完全加硫時間t90の短縮を同時にもたらす。
【0066】
式I)の少なくとも1つのシランの量は、好ましくは、1~30phf、好ましくは1~22phf、より好ましくは2~18.5phf、最も好ましくは2~10phfである。
【0067】
ゴム混合物が式I)の2つ以上の異なるシランを含有する場合、記述された量は、存在する式I)のシランの合計量に関連する。
【0068】
本発明に関連して、上述の一般実験式I)を有するシランを従来技術からの1つ又は複数のシランと組み合わせて使用することも考えられる。
【0069】
特に有利な実施形態において、Xは、ウレタン、アミド、エステル、エーテル、アミン、チオ尿素、チオアミド、O-オルガニルチオカルバメート、S-オルガニルチオカルバメート、アミジン、グアニジン、ピペリジン、無水マレイン酸、スルホンアミド、カーボネート基から選択される少なくとも1つの極性基を含む基である。
【0070】
この方法により、ゴム混合物の特に良好な性質、特に改善された転がり抵抗性指標が同等の又はさらに改善された他の性質と共に達成される。
【0071】
特に有利な実施形態において、Xは、ウレタン及びアミド基から選択される少なくとも1つの極性基を含む基である。
【0072】
この方法により、ゴム混合物の特に良好な性質、特に改善された転がり抵抗性指標が同等の又はさらに改善された硬度及び剛性と共に達成される。
【0073】
好ましい実施形態において、nは、2~10、より好ましくは2~8の整数である。ここでもまた好ましくは、2~6、最も好ましくは2~4である。nが2以上である式I)のシランは、加硫が硫黄-硫黄結合を開くことが可能であり、それにより、シランが硫黄加硫に関与して、ポリマーに結合することができるというさらなる利点も有する。
【0074】
本発明の特に有利な実施形態において、nは、2である。これは、転がり抵抗性、濡れ時におけるグリップ性及び他の性質、例えば剛性の予測値に関して特に良好な性質をもたらす。
【0075】
1つの混合物中において、異なるnの値を有する、式I)の2つ以上のシランが存在することも可能であり、それによりnを平均した割合での結果が得られる。
【0076】
硫黄含量(nの値)は、1H NMRによって求める。
【0077】
指数mは、1又は2の値を取ることができる。従って、基
V)[(R1)oSi-(R3-)pX-(R4-)p]
は、分子1つあたり1つ又は2つ存在し得る。
【0078】
本発明の有利な実施形態において、mは、2であり、これは、硫黄が2つの基V)に結合され、それにより、この場合、分子中にR2基が存在しないことを意味する。2つの基V)は、次いで、Sn残基(n=1~10)、すなわち1つの硫黄原子又は2~10の硫黄原子の鎖を介して結合される。この場合、nは、2~10、より好ましくは2~8の整数であることが好ましい。ここでもまた好ましくは、2~6、最も好ましくは2~4である。
【0079】
本発明のさらなる有利な実施形態において、mは、1であり、及び好ましくは同時に、nは、1である。
【0080】
m=1である場合、これは、R2基が、シリル基から最も遠い硫黄原子に結合されていることを意味する。
【0081】
R2は、水素原子又は-C(=O)-R8基であり、ここで、R8は、水素、C1~C20アルキル基、C6~C20アリール基、C2~C20アルケニル基及びC7~C20アラルキル基から選択される。
【0082】
この場合の残基-C(=O)-R8基は、保護基であり、そのように得られたシランは、保護又はブロックされたメルカプトシランとも呼ばれる。
【0083】
R2が水素原子である場合、これは、ブロックされていない(保護されていない)メルカプトシランである。
【0084】
混合物中において、R2に各種の選択肢を有する各種のシランが存在する可能性もある。
【0085】
R2は、-C(=O)-R8基であることが好ましく、この場合、より好ましくは、R8は、C1~C20アルキル基であり、従って、この場合、R2は、アルカノイル基である。
【0086】
有利な実施形態において、アルカノイル基は、合計で1~3つ、特に2つの炭素原子を有する。
【0087】
さらに有利な実施形態において、アルカノイル基は、合計で7~9つ、特に8つの炭素原子を有する。
【0088】
本発明に関連して、シリル基は、残基
IV)(R1)oSi-
を意味すると理解される。
【0089】
R1基及びR1基を介した1つ又は複数のシランからの架橋は、すべてシリル基の内部で相互に結合され得る。
【0090】
2つのR1が、2~10の炭素原子を有するジアルコキシ基に対応し、o<3(oが3未満である)である場合、ケイ素原子は、環構造の一部である。
【0091】
式I)の2つのシランが相互に架橋されている場合、それらは、R1基を共有するか、又は2つのSi-R1-基が組み合わさることによって酸素原子を介して相互に結合されている。このように、2つを超えるシランは、相互に結合されていることも可能である。式I)のシランの合成に続けて、式I)の2つのシランを、酸素原子又はR1基を介して相互に架橋することも考えられる。このように、2つを超えるシランを、例えばジアルコキシ基を介して相互に結合させることも可能である。
【0092】
従って、本発明のゴム混合物は、加水分解及び縮合によるか、又は式I)のシランのR1としてのジアルコキシ基によって形成されるオリゴマーも含有し得る。
【0093】
式I)では、それぞれの(R1)oSi-基において、このR1がi)酸素原子を介してケイ素原子に結合されるか、又はii)ハライドである、上述の選択肢から選択される少なくとも1つのR1が存在するという条件のため、式I)のシランは、それぞれの場合に脱離基として機能することが可能な少なくとも1つのR1基を含む。
【0094】
より具体的には、それらは、従って、アルコキシ基、フェノキシ基又は酸素原子若しくはハライドによってケイ素原子に結合されているすべての他の基である。
【0095】
R1基は、好ましくは、以下を含む:1~10の炭素原子を有するアルキル基(C1~C10アルキル基)、又は1~10の炭素原子を有するアルコキシ基(C1~C10アルコキシ基)、又はハライド、より好ましくは1~10の炭素原子を有するアルコキシ基(C1~C10アルコキシ基)。
【0096】
好ましい実施形態において、それぞれのシリル基IV)中の少なくとも1つのR1は、C1~C10アルコキシ基、好ましくはC1~C6アルコキシ基である。
【0097】
本発明の特に有利な実施形態において、シリル基(R1)oSi-中のR1基は、同一であり、且つ1つ又は2つの炭素原子を有するアルコキシ基、すなわちメトキシ基又はエトキシ基、最も好ましくはエトキシ基であり、ここで、oは、3である。
【0098】
しかしながら、オリゴマーの場合を含めて又は2つのR1がジアルコキシ基を形成する場合、残りのR1基は、好ましくは、1~10の炭素原子を有するアルキル基、又はハライド、又は1~10の炭素原子、好ましくは1つ又は2つの炭素原子を有するアルコキシ基、すなわちメトキシ基又はエトキシ基、最も好ましくはエトキシ基である。
【0099】
本発明に関連して、シランの式におけるエトキシ基は、EtO又はOEtと略される。これらの2つの表現は、アルコキシ基、例えばエトキシ基が酸素原子Oを介してケイ素原子Siに結合されていることを表す。
【0100】
しかしながら、原理的には、略記OEt又はEtOは、本発明に関連して同義語として使用することができる。
【0101】
R3及びR4基は、有利な実施形態において、1~30、好ましくは1~10の炭素原子を有するアルキレン基であることが好ましい。
【0102】
特に好ましい実施形態において、R3基は、2つ又は3つの炭素原子を有するアルキレン基、特にn-プロピレン基である。
【0103】
R4基は、特に好ましい実施形態において、1~3つ、好ましくは1つ又は2つの炭素原子を有するアルキレン基である。
【0104】
指数pは、独立して、0又は1の値を取り得、これは、R3及びR4基が、それぞれ独立して、分子中に存在するか又は不在であることを意味する。
【0105】
本発明におけるX基中に包含される極性基とシリル基又はSn基との間に炭素原子が存在しない場合、それぞれのR3基又はR4基は、存在せず、従って、pは、0である。
【0106】
本発明の好ましい実施形態において、シランは、以下の式II):
【化1】
の構造を有する。
【0107】
この場合、mが2であり、nが2であり、oが3であり、すべてのR1がエトキシであり、すべてのpが1であり、両側のR3がプロピレン基であり、両側のR4がエチレン基であり、及びXがウレタン基である。従って、この場合のX基は、極性の官能基以外に追加の基を一切含まない。
【0108】
式II)のシランは、転がり抵抗性と濡れ時におけるグリップ性との間のトレードオフを特に高いレベルで解消し、すなわち、ゴム混合物は、特に高いレベルの性質を有する。同時に、式II)のシランを含むゴム混合物は、特に高温時及び運転操作時に起こり得る温度で同等の又はさらに高い剛性を有する。これらも、改善された操縦特性の指標である。
【0109】
本発明の好ましい実施形態において、シランは、以下の式III):
【化2】
の構造を有する。
【0110】
この場合、mが2であり、nが2であり、oが3であり、すべてのR1がエトキシであり、すべてのpが1であり、両側のR3がプロピレン基であり、両側のR4がメチレン基であり、及びXがアミド基である。従って、この場合のX基は、極性の官能基以外に追加の基を一切含まない。
【0111】
式III)のシランは、転がり抵抗性と濡れ時におけるグリップ性との間のトレードオフを高いレベルで解消し、すなわち、ゴム混合物は、特に高いレベルの性質、特に極めて良好な転がり抵抗性指標を有する。さらに、式III)のシランを含有するゴム混合物は、同等の又はさらに高い剛性、従って改善された操縦性指標を有する。さらに、式III)の少なくとも1つのシランを含むゴム混合物は、短縮された完全加硫時間t90を有し、その結果、ゴム混合物又はそれからの加硫物の製造においてエネルギー、時間、従ってコストの節約になる。
【0112】
本発明のゴム混合物は、式II)及びIII)のシランの混合物を含有することも考えられる。
【0113】
さらに、本発明のゴム混合物は、式II)及びIII)のシランの混合物をさらなる親の式I)の少なくとも1つのシランと共に含有することも考えられる。
【0114】
存在する、式I)によって包含されるシランの合計量は、それぞれの場合に1~30phf、好ましくは1~22phf、より好ましくは2~18.5phf、最も好ましくは2~10phfである。
【0115】
本発明の有利な展開形態では、存在する式I)のシランの量は、少なくとも2.5phfである。
【0116】
本発明のさらに有利な展開形態では、存在する式I)のシランの量は、少なくとも3phfである。
【0117】
本発明のさらに有利な展開形態では、存在する式I)のシランの量は、少なくとも3.5phfである。
【0118】
特に、好ましい及び特に好ましい量及び上述の展開又は実施形態により、極めて良好な転がり抵抗性指標と共に、転がり抵抗性と濡れ時におけるグリップ性との間のトレードオフの指標における同時の改善及び極めて良好な操縦性の予測値が得られる。
【0119】
本発明において存在する式I)のシランを支持体、例えばワックス、ポリマー又はカーボンブラックに適用し、その形態でゴム混合物に適用し得る。本発明において存在する式I)のシランをシリカに適用し得、その場合、その適用は、物理的又は化学的であり得る。本発明において存在するシランをシリカに適用することにより、例えば揮発性の副生物、例えばエトキシ置換されたシラン(R1=エトキシ)の使用の場合におけるエタノールの放出が低減される。
【0120】
ゴム混合物は、さらなる活性剤及び/又は充填剤、特にカーボンブラックを接着させるための薬剤も含有し得る。それは、例えば、(特許文献2)に開示されている化合物のS-(3-アミノプロピル)チオ硫酸及び/又はそれらの金属塩であり得、それにより特に充填剤としての少なくとも1つのカーボンブラックと組み合わせた場合、ゴム混合物の極めて良好な物理的性質が達成される。
【0121】
ゴム混合物は、慣用される添加剤を慣用される重量部でさらに含有し得、それらは、前記混合物を製造する際、好ましくは少なくとも1段のベース混合ステージで添加される。そのような添加剤としては、以下が挙げられる:
a)老化安定剤、例えば以下のもの:PPD(フェニレンジアミン)のファミリー、この場合、例えばN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、
b)活性剤、例えば酸化亜鉛及び脂肪酸(例えば、ステアリン酸)及び/又は他の活性剤、例えば亜鉛錯体、例えば亜鉛エチルヘキサノエート、
c)ワックス、
d)炭化水素樹脂、例えば任意選択的に特に粘着付与剤樹脂、
e)混練助剤、例えば2,2’-ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)、及び
f)加工助剤、例えば特に脂肪酸エステル及び金属石鹸、例えば亜鉛石鹸及び/又はカルシウム石鹸、
g)可塑剤。
【0122】
本発明に関連して使用される可塑剤は、当業者に公知のすべての可塑剤を含み、それらの例としては、例えば、以下が挙げられる:芳香族系、ナフテン系又はパラフィン系の鉱油性可塑剤、例えばMES(軽度抽出溶媒和物)、若しくはRAE(残留芳香族抽出物)、若しくはTDAE(処理済み蒸留物芳香族抽出物)又はゴム-液体オイル(RTL)若しくはバイオマス-液体オイル(BTL)、好ましくはIP 346法に従って測定して3重量%未満の多環式芳香族化合物を有するもの又はトリグリセリド、例えばナタネ油、又はファクチス、又は炭化水素樹脂、又は500~20,000g/molの平均分子量(BS ISO 11344:2004に従ってGPC=ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定)を有する液状ポリマー。本発明のゴム混合物において、可塑剤として追加の液状ポリマーを使用する場合、それらは、ポリマーマトリックスの組成の計算でゴムとしてカウントしない。
【0123】
可塑剤は、上述の可塑剤からなる群から選択されることが好ましい。
【0124】
可塑剤は、炭化水素樹脂、液状ポリマー及び鉱油からなる群から選択されることが特に好ましい。
【0125】
鉱油を使用する場合、これは、以下からなる群から選択されることが好ましい:DAE(蒸留芳香族抽出物)、及び/又はRAE(残留芳香族抽出物)、及び/又はTDAE(処理済み蒸留物芳香族抽出物)、及び/又はMES(軽度抽出溶媒和物)、及び/又はナフテン系オイル。
【0126】
本発明の好ましい実施形態において、ゴム混合物は、可塑剤として少なくとも1つの鉱油可塑剤、好ましくは少なくともTDAE及び/又はRAEを含有する。その結果、特に良好な加工特性、特にゴム混合物の良好な混和性が得られる。
【0127】
本発明の好ましい実施形態において、ゴム混合物は、可塑剤として少なくとも1つの液状ポリマーを含む。
【0128】
本発明の好ましい実施形態において、ゴム混合物は、可塑剤として少なくとも1つの炭化水素樹脂を含む。
【0129】
当業者に自明であろうが、炭化水素樹脂は、モノマーから構成されたポリマーであり、ここで、炭化水素樹脂は、形式上、モノマーを相互に結合させることによるモノマーの誘導体から構成される。しかしながら、本発明に関連して、それらの炭化水素樹脂は、ゴムとしてカウントしない。本出願に関連して、「炭化水素樹脂」という用語は、炭素原子及び水素原子並びに任意選択的にヘテロ原子、例えば特に酸素原子を含む樹脂を含む。炭化水素樹脂は、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。本出願では、「ホモポリマー」という用語は、Roempp Online Version 3.28によれば、「1つのみのタイプのモノマーから形成された」ポリマーを意味すると理解されたい。それらのモノマーは、当業者に公知の炭化水素樹脂の各種のモノマーであり得、例えば以下である:脂肪族C5モノマー、さらに芳香族化合物、並びに/又はテルペン、及び/若しくはアルケン、及び/若しくはシクロアルケンを含有する、カチオン重合させることが可能な不飽和化合物。
【0130】
本発明の好ましい実施形態において、炭化水素樹脂は、脂肪族C5樹脂及びアルファ-メチルスチレンとスチレンとから形成された炭化水素樹脂からなる群から選択される。
【0131】
炭化水素樹脂は、好ましくは、10℃~180℃、特に好ましくは60℃~150℃、極めて特に好ましくは80℃~99℃のASTM E 28(環球法)軟化点を有する。さらに、炭化水素樹脂は、好ましくは、500~4000g/mol、好ましくは1300~2500g/molの分子量Mwを有する。
【0132】
さらなる添加剤の合計量は、3~150phr、好ましくは3~100phr、特に好ましくは5~80phrである。
【0133】
さらなる添加剤の全体の比率に酸化亜鉛(ZnO)が含まれ得る。
【0134】
それは、当業者に公知の各種のタイプの酸化亜鉛、例えばZnOの顆粒又は粉体であり得る。慣用される酸化亜鉛は、一般的には、10m2/g未満のBET表面積を有する。しかしながら、10~100m2/gのBET表面積を有する酸化亜鉛、例えばいわゆる「ナノ酸化亜鉛」を使用することも可能である。
【0135】
特に、本発明のゴム混合物が、タイヤ又は産業用ゴム物品のための、それに存在する強化要素と直接接触する内部構成要素として使用される場合、一般的には、適切な結合系、多くの場合に粘着性付与樹脂の形態のものをゴム混合物にさらに添加する。
【0136】
加硫は、好ましくは、硫黄及び/又は硫黄供与体の存在下で加硫促進剤も併用して実施され、いくつかの加硫促進剤は、硫黄供与体として同時に作用することも可能である。
【0137】
硫黄及び/又はさらなる硫黄供与体並びにまた1つ又は複数の加硫促進剤が最後の混合工程でゴム混合物に添加される。加硫促進剤は、以下からなる群から選択される:チアゾール系加硫促進剤、及び/又はメルカプト系加硫促進剤、及び/又はスルフェンアミド系加硫促進剤、及び/又はチオカルバメート系加硫促進剤、及び/又はチウラム系加硫促進剤、及び/又はチオホスフェート系加硫促進剤、及び/又はチオ尿素系加硫促進剤、及び/又はキサントゲネート系加硫促進剤、及び/又はグアニジン系加硫促進剤、及び/又はポリエーテルアミン系加硫促進剤。
【0138】
以下からなる群から選択される少なくとも1つのスルフェンアミド加硫促進剤を使用することが好ましい:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、及び/又はN,N-ジシクロヘキシルベンソチアゾール-2-スルフェンアミド(DCBS)、及び/又はベンゾチアジル-2-スルフェノモルホリド(MBS)、及び/又はN-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)。
【0139】
使用される硫黄供与性物質は、当業者に公知の各種の硫黄供与性物質であり得る。ゴム混合物が硫黄供与性物質を含む場合、それは、例えば、以下を含む群から選択されることが好ましい:チウラムジスルフィド、例えばテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、及び/又はテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、及び/又はテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、及び/又はチウラムテトラスルフィド、例えばジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、及び/又はジチオホスフェート、例えばDipDis(ビス(ジイソプロピル)チオホスホリルジスルフィド)、及び/又はビス(O,O-2-エチルヘキシルチオホスホリル)ポリスルフィド(例えば、Rhenocure SDT 50(登録商標)、Rheinchemie GmbH製)、及び/又は亜鉛ジクロリルジチオホスフェート(例えば、Rhenocure ZDT/S(登録商標)、Rheinchemie GmbH製)、及び/又は亜鉛アルキルジチオホスフェート、及び/又は1,6-ビス(N,N-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン、及び/又はジアリールポリスルフィド、及び/又はジアルキルポリスルフィド。
【0140】
例えば、商品名Vulkuren(登録商標)、Duralink(登録商標)若しくはPerkalink(登録商標)として得ることが可能なさらなるネットワーク形成系又は(特許文献3)に記載されているようなネットワーク形成系もゴム混合物において使用することができる。この系は、4超の官能価を用いて架橋される加硫剤及び少なくとも1つの加硫促進剤を含有する。
【0141】
元素状硫黄及び/又はさらなる硫黄供与体の形態のさらなる硫黄の必要量は、それぞれのゴム混合物の使用分野に依存する。添加されるそれぞれの量は、当業者に公知である。元素状硫黄を添加する場合、車両タイヤのビードのためのゴム混合物の場合、その量は、例えば、0~5phrである。ビードよりも硫黄含量が一般的に低い車両タイヤのトレッドの場合、添加される元素状硫黄の量は、0~4phrであることが好ましい。
【0142】
本発明の有利な展開形態では、複数の加硫促進剤が使用される。
【0143】
本発明の有利な実施形態において、スルフェンアミド系加硫促進剤、より好ましくはCBSは、グアニジン系加硫促進剤のDPG(ジフェニルグアニジン)と組み合わせて使用される。DPGの量は、0~5phr、好ましくは0.1~3phr、より好ましくは0.5~2.5phr、最も好ましくは1~2.5phrである。
【0144】
本発明のさらなる有利な実施形態において、スルフェンアミド系加硫促進剤、より好ましくはCBSは、ポリエーテルアミン系加硫促進剤(例えば、Jeffamine(登録商標)D230)と組み合わせて使用される。この場合のポリエーテルアミン系加硫促進剤(例えば、Jeffamine(登録商標)D230)の量は、0.1~5phr、好ましくは0.1~3phr、より好ましくは0.5~2.5phr、最も好ましくは1~2.5phrである。
【0145】
ゴム混合物中に加硫遅延剤も存在し得る。
【0146】
「加硫された」及び「架橋された」という用語は、本発明に関連して同義語として使用される。
【0147】
上述の本発明のゴム混合物は、車両タイヤ、特に車両用空気タイヤで使用するのに特に適している。ここで、原理的に考え得るのは、既に先に述べたように、すべてのタイヤ構成要素での適用、特にトレッド、より特にキャップ/ベース構成を有するトレッドのキャップでの適用である。
【0148】
車両タイヤで使用するために、加硫前の仕上げ混合物としての混合物を好ましくはトレッドの形状にし、未硬化の車両タイヤを製造する際に公知の方法で適用する。
【0149】
車両タイヤにおけるサイドウォール又は他のボディ混合物として使用するための本発明のゴム混合物の製造は、既に述べたように実施される。押出し操作/カレンダリング後の混合物の成形には、違いがある。1つ又は複数の異なるボディ混合物のためにそのように得られた依然として未加硫のゴム混合物成形物を、未硬化のタイヤを構成するために次いで使用する。
【0150】
「ボディ混合物」という用語は、この場合、タイヤの他の構成要素のためのゴム混合物を指し、そのようなものとしては、例えば、以下が挙げられる:基本分離プレート、インナーライナー(内部層)、コアプロファイル、ブレーカーベルト、ショルダー、ブレーカーベルトプロファイル、カーカス、ビード補強材、ビードプロファイル、フランジプロファイル及びバンデージ。本発明のゴム混合物を伝動ベルト及び他のベルト、特にコンベア用ベルトで使用するために、押出成形した依然として未加硫の混合物を適切な形状にし、且つ多くの場合、同時に又は続けて補強部材、例えば合成繊維又はスチールコードを加える。これは、通常、1つのプライ及び/又は複数のプライのゴム混合物、1つのプライ及び/又は複数のプライの同一の且つ/又は異なる補強部材並びに1つのプライ及び/又はより多くのプライの同じ及び/又は別のゴム混合物からなるマルチプライ構成を与える。
【実施例】
【0151】
ここで、以下の表にまとめた比較例及び実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0152】
比較例の混合物にVを付け、本発明の混合物にEを付けて識別する。シランの量(phf単位)は、95phrのシリカを基準とする。本発明のゴム混合物は、式II)のシラン(ウレタンシランd))又は式III)のシラン(アミドシランe))を含有する。
【0153】
式II)のウレタンシランd)は、(特許文献4)においてそこで実施例1として引用されているものに従って調製した。
【0154】
式III)のアミドシランe)は、以下のように調製した。
【0155】
第一ステージ:
最初に、184.2gのチオグリコール酸を600gの水中に仕込んだ。160gの50%水酸化ナトリウム溶液を徐々に計量仕込みした。15±5℃で98.1gの35%過酸化水素を徐々に計量仕込みした(顕著な発熱)。次いで、214gの32%塩酸を用いて、pHを2.0に調節した。
【0156】
次いで、メチルtert-ブチルエーテルを用いて、混合物を繰り返し抽出し、有機相を濃縮した。164gのビス(カルボキシメチル)ジスルフィド(102℃の融点を有する)が得られた。
【0157】
第二ステージ:
最初に、第一ステージからの136.65gのビス(カルボキシメチル)ジスルフィドを仕込んだ。267.8gの塩化チオニルを添加し、加熱した。反応は、56℃で始まり、ガスが発生した。70℃で1時間すべてをかけてガスの発生が終了した。
【0158】
混合物を70℃でさらに1時間撹拌した。
【0159】
次いで、過剰の塩化チオニルを50mbar、最高80℃で蒸留除去した。酸塩化物が油状物として得られた。それを370gのジクロロメタン中に溶解させた。
【0160】
第三ステージ:
第二の反応器内で334.3gのアミノプロピルトリエトキシシラン及び158.5gのトリエチルアミンを370gのジクロロメタン中に溶解させた。40℃で約2時間かけて、第二ステージからの酸塩化物溶液を計量仕込みした。自発的に開始された反応の過程で塩化トリエチルアンモニウムが沈殿析出した。40℃で一晩かけてさらなる反応を行わせた。沈殿した塩化トリエチルアンモニウムを濾過分離し、ジクロロメタンを用いて洗浄した。
【0161】
反応生成物の溶液を穏やかな窒素気流下において20mbar、最高140℃で蒸留した。
【0162】
得られた反応生成物は、440gの褐色の油状物であり、以下の1H NMRデータを有した:CDCl3溶媒、δ 3.80ppm(s,CH2,チオグリコール)、3.78ppm(q,CH2,エトキシ)、3.70ppm(m,CH2)、1.64ppm(m,CH2)、1.19ppm(t,CH3,エトキシ)、0.63ppm(t,CH2)。
【0163】
それらの混合物は、ゴム工業において慣用されるプロセスにより、300ミリリットル~3リットルの容積を有する実験室ミキサー内において、標準条件下において3ステージで他に調製し、この場合、第一混合ステージ(ベース混合ステージ)では、最初に加硫系(硫黄及び加硫に影響を与える物質)以外の成分をすべて145~165℃(目標温度152~157℃)で200~600秒かけて混合した。第二ステージでは、第一の混合ステージからの混合物をもう一度混合した。第三ステージ(最終混合ステージ)において、加硫系を添加すると、最終混合物が得られ、混合は、90℃~120℃で180~300秒かけて実施した。すべての混合物を使用して、160℃で加圧下において、t95(ASTM D 5289-12/ISO 6502に従い、ムービングダイレオメーターで測定)になるまで加硫することによって試験片を調製し、それらの試験片を用いて物性測定を行い、測定は、ゴム工業で典型的なものであり、試験法については、以下で規定する。
・300%伸びのときの応力値(300モジュラス、M300)(室温(RT)又は70℃)(ISO 37準拠)
・レジリエンス(RT又は70℃)(ISO 4662準拠)
・コンディショニング後のショアーA硬度(RT又は70℃)(DIN ISO 7619-1に準拠、5MPaで10回予備コンディショニングをしてから、ISO 868に従って測定)
・最大損失係数tanδ(タンジェントデルタ)(DIN 53 513に従った55℃での動的機械試験からの歪みスイープにおける最大値)(Tan d max 55℃)
・損失係数tanδ(10%)(ASTM D6601に従ったRPA(ゴムプロセスアナライザー)から、1Hz、70℃での第二歪みスイープから)(Tan d(10%)RPA)
・損失係数tanδ(70℃)(DIN 53 513に従い、一定加重での温度スイープから)(Tan d(70℃))
【0164】
使用された物質
a)SSBR
b)VN 3シリカ、Evonik製
c)極性のある比較例のシラン((特許文献1)を参照されたい)
【化3】
d)式II)のウレタンシラン(調製法については、前の記述を参照されたい)
e)式III)のアミドシラン(調製法については、前の記述を参照されたい)
f)DPG及びCBS。
【0165】
【0166】
【0167】
表1から推論できるように、本発明の式I)のシラン(実施例:式IIのシラン)は、転がり抵抗性と濡れ時におけるグリップ性との間のトレードオフを特に高いレベルで解決し、すなわち、ゴム混合物は、特に高いレベルの物性を有する。これは、具体的には、レジリエンス間の差(70℃でのレジリエンス-RTでのレジリエンス)が大きいことからも明らかである。
【0168】
その差は、スペーサー基中に尿素基を有するシランを含有するゴム混合物の場合よりも明らかに大きい。
【0169】
同時に、式II)のシランを含有するゴム混合物は、同じ量のシランを含む対応する比較例の混合物と比較して、特に高温且つ運転操作で到達する可能性がある温度で同等の又はさらに高い剛性を有し、それは、M300値並びにRT及び70℃でのコンディショニング後のショアー硬度からも明らかである。
【0170】
表2から推論できるように、式III)のシランも、同様に、転がり抵抗性と濡れ時におけるグリップ性との間のトレードオフを特に高いレベルで解決し、すなわち、ゴム混合物は、特に高いレベルの物性、特に極めて良好な転がり抵抗性の指標を有する。さらに、式III)のシランを含有するゴム混合物は、同等の又はさらに高い剛性、従って改善された操縦性指標を有する(M300値を参照されたい)。さらに、式III)の少なくとも1つのシランを含むゴム混合物は、短縮された完全加硫時間t90を有し、その結果、ゴム混合物又はそれからの加硫物の製造においてエネルギー、時間、従ってコストの節約になる。
【0171】
従って、本発明の車両タイヤは、転がり抵抗性、濡れ時におけるグリップ性及び操縦特性の点で高いレベルの物性を有し、さらにかなりの程度まで少ないエネルギーで製造することができる。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
硫黄架橋可能なゴム混合物であって、少なくとも以下の成分:
- 少なくとも1つのジエンゴム、及び
- 少なくとも1つのシリカ、及び
- 一般実験式
I)[(R
1
)
o
Si-(R
3
-)
p
X-(R
4
-)
p
]
m
S
n
(R
2
)
2-m
(式中、oは、1、又は2、又は3であり得、及びR
1
基は、同一であるか又は異なり得、且つC
1
~C
10
アルコキシ基、C
6
~C
20
フェノキシ基、C
2
~C
10
環状ジアルコキシ基、C
2
~C
10
ジアルコキシ基、C
4
~C
10
シクロアルコキシ基、C
6
~C
20
アリール基、C
1
~C
10
アルキル基、C
2
~C
20
アルケニル基、C
2
~C
20
アルキニル基、C
7
~C
20
アラルキル基、ハライド又はアルキルポリエーテル基-O-(R
6
-O)
r
-R
7
から選択され、ここで、R
6
基は、同一であるか又は異なり、且つ分岐状又は非分岐状、飽和又は不飽和、脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族の二価のC
1
~C
30
炭化水素基であり、rは、1~30の整数であり、及びR
7
基は、非置換又は置換、分岐状又は非分岐状の一価のアルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル基であるか、又は
2つのR
1
は、2~10の炭素原子を有するジアルコキシ基に対応し、この場合、oは、3未満であるか、又は
式I)の2つ以上のシランは、R
1
基を介するか又は縮合によって架橋され得、及び
式I)において、上述の選択肢から選択される少なくとも1つのR
1
が存在することを条件とし、ここで、前記R
1
は、それぞれの(R
1
)
o
Si-基中において、i)酸素原子を介してケイ素原子に結合されているか、又はii)ハライドであり、及び
R
3
基及びR
4
基は、独立して、同一であるか又は異なり得、且つ分岐状又は非分岐状、飽和又は不飽和、脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族のC
1
~C
30
炭化水素基であり、ここで、指数pは、独立して、0又は1の値を取り得、
Xは、ウレタン、アミド、エステル、アミン、チオ尿素、チオアミド、O-オルガニルチオカルバメート、S-オルガニルチオカルバメート、アミジン、グアニジン、ピペリジン、無水マレイン酸、スルホンアミド、カーボネート、イミダゾリン、チアゾリジン、チアゾリジノン、ピロリジン、ピラゾール、ベンゾイミダゾール、インドール、プリン、チアジン、スルホネート及びホスホネート基から選択される少なくとも1つの極性基を含む基であり、
mは、1又は2の値を取り、nは、1~10の整数であり、R
2
は、水素原子又は-C(=O)-R
8
基であり、ここで、R
8
は、水素、C
1
~C
20
アルキル基、C
6
~C
20
アリール基、C
2
~C
20
アルケニル基及びC
7
~C
20
アラルキル基から選択される)を有する少なくとも1つのシラン
を含む硫黄架橋可能なゴム混合物。
2.
Xは、ウレタン、アミド、エステル、エーテル、アミン、チオ尿素、チオアミド、O-オルガニルチオカルバメート、S-オルガニルチオカルバメート、アミジン、グアニジン、ピペリジン、無水マレイン酸、スルホンアミド、カーボネート基から選択される少なくとも1つの極性基を含む基であることを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
3.
Xは、ウレタン及びアミド基から選択される少なくとも1つの極性基を含む基であることを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
4.
mは、2であることを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
5.
mは、1であり、及びnは、1であることを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
6.
少なくとも1つのR
1
は、C
1
~C
10
アルコキシ基であることを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
7.
前記式I)のシランは、以下の式II):
【化4】
の構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
8.
前記式I)のシランは、以下の式III):
【化5】
の構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
9.
5~500phrの少なくとも1つのシリカを含有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のゴム混合物。
10.
前記ジエンゴムは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)及びエマルション重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のゴム混合物。
11.
請求項1~10のいずれか一項に記載の少なくとも1つのゴム混合物の硫黄加硫によって得られる加硫物。
12.
少なくとも1つの構成要素中において、請求項11に記載の少なくとも1つの加硫物を含むことを特徴とする車両タイヤ。
13.
トレッド中において、請求項11に記載の少なくとも1つの加硫物を含むことを特徴とする、請求項12に記載の車両タイヤ。