(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】船舶用の燃料供給システム及び燃料供給方法
(51)【国際特許分類】
B63H 21/38 20060101AFI20230307BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20230307BHJP
F02B 43/00 20060101ALI20230307BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20230307BHJP
F02M 31/16 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B63H21/38 C
B63B25/16 D
F02B43/00 A
F02M21/02 L
F02M21/02 M
F02M31/16 F
(21)【出願番号】P 2020570028
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 KR2019015579
(87)【国際公開番号】W WO2020101405
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2018-0139630
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】デウ シップビルディング アンド マリン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヘ ミン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ソン イル
(72)【発明者】
【氏名】リー,スン チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン ジン
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1732554(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0002638(KR,A)
【文献】特開2012-176672(JP,A)
【文献】特開2014-122630(JP,A)
【文献】特表2015-505941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/38,
B63B 25/16,
F02B 43/00,
F02M 21/02,31/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵タンクから排出された液化ガスをエンジンの要求圧力まで加圧するポンプ;と、
前記ポンプによって加圧された液化ガスを前記エンジンの要求温度まで熱交換により加熱する熱交換器;と、
前記貯蔵タンクから排出されて前記ポンプ及び前記熱交換器を通過した液化ガスを一時貯蔵して前記エンジンに供給するバッファタンク;とを備え、
前記エンジンは非圧縮性流体が供給されるエンジンであり、
気体を気体供給ラインを介して前記バッファタンクに供給することで、前記バッファタンクの内部圧力を調節し、
前記エンジンで必要とされる量の液化ガスを前記バッファタンクから前記エンジンに供給することを特徴とする、船舶用の燃料供給システム。
【請求項2】
前記バッファタンクの内部の液化ガスの水位を測定する水位センサ;と
前記バッファタンクの内部の液化ガスの水位が上昇することで、前記バッファタンクの内部の液化ガスが前記貯蔵タンクに戻されるリターンライン
;と、
前記リターンライン上に設置される第3バルブ;とをさらに備え、
前記第3バルブは、平常時に閉鎖状態であり、前記水位センサで測定された水位値が予め設定された設定値以上になると開放されることを特徴とする、請求項1に記載の船舶用の燃料供給システム。
【請求項3】
前記バッファタンクの内部のガスを前記貯蔵タンクに送るベントラインをさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の船舶用の燃料供給システム。
【請求項4】
前記第3バルブは、前記水位センサで測定された水位値に応じて前記バッファタンクから排出される液化ガスの流量を調節することを特徴とする、請求項2又は3記載の船舶用の燃料供給システム。
【請求項5】
前記バッファタンクの内部圧力を測定する第3圧力センサをさらに備えることを特徴とする、請求項3記載の船舶用の燃料供給システム。
【請求項6】
前記気体供給ライン上に設置される第5バルブをさらに備え、
前記第5バルブは、前記第3圧力センサで測定された圧力値に応じて流体の流量を調節することを特徴とする、請求項
5記載の船舶用の燃料供給システム。
【請求項7】
前記ベントライン上に設置される第4バルブをさらに備え、
前記第4バルブは、前記第3圧力センサで測定された圧力値に応じて流体の流量を調節することを特徴とする、請求項
5記載の船舶用の燃料供給システム。
【請求項8】
前記エンジンに供給される液化ガスに含まれる不純物をろ過する第1フィルタをさらに備えることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の船舶用の燃料供給システム。
【請求項9】
前記第1フィルタは、前記熱交換器と前記バッファタンクとの間に設置されることを特徴とする、請求項
8記載の船舶用の燃料供給システム。
【請求項10】
非圧縮性流体である液化ガスを
、エンジンの要求圧力及び要求温度に圧縮及び加熱した後
、前記エンジンに供給する船舶用の燃料供給方法において、
前記エンジンの要求圧力及び要求温度に圧縮及び加熱された液化ガスをバッファタンクに一時貯蔵するステップと、
前記エンジンで必要とされる量の液化ガスを前記バッファタンクから前記エンジンに供給するステップと、
前記バッファタンクの内部の液化ガスの水位が
予め設定された設定値未満である平常時には、前記バッファタンクの内部の液化ガスを貯蔵タンクに戻さず、前記バッファタンクの内部の液化ガスの水位が前記設定値まで上昇
した場合に、前記バッファタンクの内部の液化ガスが貯蔵タンクに戻されるステップとを含むことを特徴とする、船舶用の燃料供給方法。
【請求項11】
前記バッファタンクの内部のガスを前記貯蔵タンクに送るステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1
0記載の船舶用の燃料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非圧縮性流体をエンジンの燃料として使用する船舶における燃料供給システム及び燃料供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、石油ガスは生産地で低温液化した液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas、以下、LPGという)の状態で製造した後、LPG運搬船によって目的地まで遠距離輸送される。
【0003】
従来のLPG運搬船におけるエンジン用燃料としては、HFO(Heavy Fuel Oil)またはMDO(Marine Diesel Oil)などのオイル燃料が使用される。また、従来のLPG運搬船は、貨物としてのLPGを貯蔵タンクで貯蔵して運搬するが、貯蔵タンクで発生したBOG(Boil Off Gas、ボイルオフガス)は再液化プラントで再液化された後、再び貯蔵タンクに移送されて貯蔵される。
【0004】
このように、従来のLPG運搬船では、燃料と貨物とが2つのシステムで使用または処理され、貨物として貯蔵タンクに貯蔵されるLPGを燃料として使用できるエンジンなどの手段は存在しなかった。近年、貨物として貯蔵タンクに貯蔵されるLPGをエンジンの燃料として供給する方案に対する関心が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、非圧縮性流体をエンジンの燃料として供給しつつ、エンジンから排出された余剰液化ガスを貯蔵タンクに戻す際に、多量のフラッシュガスが発生する現象を防止する、船舶用の燃料供給システム及び燃料供給方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明の一実施形態では、貯蔵タンクから排出された液化ガスをエンジンの要求圧力まで加圧するポンプと、前記ポンプによって加圧された液化ガスを前記エンジンの要求温度まで熱交換により加熱する熱交換器と、前記貯蔵タンクから排出されて前記ポンプ及び前記熱交換器を通過した液化ガスを一時貯蔵して前記エンジンに供給するバッファタンクとを備え、気体を気体供給ラインを介して前記バッファタンクに供給することで、前記バッファタンクの内部圧力を調節し、前記エンジンで必要とされる量
の液化ガスを前記バッファタンクから前記エンジンに供給することを特徴とする、船舶用の燃料供給システムが提供される。
【0008】
前記バッファタンクの内部の液化ガスの水位が上昇することで、前記バッファタンクの内部の液化ガスが前記貯蔵タンクに戻されるリターンラインをさらに備えることが好ましい。
【0009】
前記バッファタンクの内部のガスを前記貯蔵タンクに送るベントラインをさらに備えることが好ましい。
【0010】
前記バッファタンクの内部のガスをベントマスターに送るベントラインをさらに備えることが好ましい。
【0011】
前記船舶用の燃料供給システムは、前記バッファタンクの内部の液化ガスの水位を測定する水位センサと前記リターンライン上に設置される第3バルブとをさらに備え、前記第3バルブは、前記水位センサで測定された水位値に応じて前記バッファタンクから排出される液化ガスの流量を調節することが好ましい。
【0012】
前記第3バルブは、平常時には閉鎖状態であり、前記水位センサで測定された水位値が第2設定値以上になると開放されることが好ましい。
【0013】
前記船舶用の燃料供給システムは、前記バッファタンクの内部圧力を測定する第3圧力センサをさらに備えることが好ましい。
【0014】
前記船舶用の燃料供給システムは、前記気体供給ライン上に設置される第5バルブをさらに備え、前記第5バルブは、前記第3圧力センサで測定された圧力値に応じて流体の流量を調節することが好ましい。
【0015】
前記船舶用の燃料供給システムは、前記ベントライン上に設置される第4バルブをさらに備え、前記第4バルブは、前記第3圧力センサで測定された圧力値に応じて流体の流量を調節することが好ましい。
【0016】
前記船舶用の燃料供給システムは、前記エンジンに供給される液化ガスに含まれる不純物をろ過する第1フィルタをさらに備えることが好ましい。
【0017】
前記第1フィルタは、前記熱交換器と前記バッファタンクとの間に設置されることが好ましい。
【0018】
前記目的を達成するため本発明の他の一実施形態では、液化ガスを圧縮及び加熱した後でエンジンに供給する船舶用の燃料供給方法において、圧縮及び加熱された液化ガスをバッファタンクに一時貯蔵するステップと、前記エンジンで必要とされる量の液化ガスを前記バッファタンクから前記エンジンに供給するステップと、前記バッファタンクの内部の液化ガスの水位が上昇することで、前記バッファタンクの内部の液化ガスが貯蔵タンクに戻されるステップとを含むことを特徴とする、船舶用の燃料供給方法が提供される。
【0019】
前記バッファタンクの内部のガスを前記貯蔵タンクに送るステップをさらに含むことが好ましい。
【0020】
前記バッファタンクの内部のガスをベントマスターに送るステップをさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、液体状態の非圧縮性流体をエンジンの燃料として供給する場合でも、エンジンに燃料を安定的に供給することができる。
【0022】
本発明の一実施形態では、エンジンの上流にバッファタンクを設置することで、多量のフラッシュガス(flash gas)が発生する現象を防止することができる。これにより、多量のフラッシュガスを処理するための装置の追設や制御システムの設置を省略することができ、また、フラッシュガスを収容する貯蔵タンクの体積を大きく設計する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の
参考例に係る船舶用の燃料供給システムの概略図である。
【
図2】本発明の第
1実施形態に係る船舶用の燃料供給システムの概略図である。
【
図3】本発明の第
2実施形態に係る船舶用の燃料供給システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の構成と作用を詳細に説明する。下記の実施形態は、他の様々な形態に変更することができ、本発明の技術思想の範囲は下記の実施形態によって限定されない。
【0025】
図1は、本発明の
参考例に係る船舶用の燃料供給システムの概略図である。
図1を参照して、本
参考例の船舶用の燃料供給システムは、ポンプ(10)、熱交換器(20)、第1圧力センサ(P1)、第1バルブ(V1)、第2圧力センサ(P2)及び第2バルブ(V2)を備える。
【0026】
貯蔵タンク(T)は液化ガスを貯蔵し、貯蔵タンク(T)から排出された液化ガスはエンジン(E)に燃料として供給される。エンジン(E)は、液化石油ガス(LPG)とディーゼル(Diesel)とを燃料として使用するDF(Dual Fuel)エンジンである。
【0027】
ポンプ(10)は、貯蔵タンク(T)から排出された液化ガスをエンジン(E)の要求圧力まで加圧する。熱交換器(20)は、ポンプ(10)によって加圧された液化ガスをエンジン(E)の要求温度まで熱交換により加熱する。
【0028】
第1圧力センサ(P1)は、熱交換器(20)によって加熱された液化ガスをエンジン(E)に供給する燃料供給ライン(F1)上に設置されて、燃料供給ライン(F1)の圧力を測定する。第1バルブ(V1)は、燃料供給ライン(F1)上に設置されて、第1圧力センサ(P1)で測定された圧力値に応じて開閉されることで液化ガスの流量を調節する。
【0029】
エンジン(E)の負荷が低下してエンジン(E)で必要とされる燃料の量が減少すると、消費される液化ガスの量が減少することで燃料供給ライン(F1)の圧力が上昇する。第1圧力センサ(P1)は、燃料供給ライン(F1)で上昇した圧力値を第1バルブ(V1)に送信し、第1バルブ(V1)が第1圧力センサ(P1)から燃料供給ライン(F1)で上昇した圧力値を受信すると、第1バルブ(V1)は開度を下げて液化ガスの流量を減少させる。
【0030】
また、エンジン(E)の負荷が上昇してエンジン(E)で必要とされる燃料の量が増加すると、消費される液化ガスの量が増加することで燃料供給ライン(F1)の圧力が低下する。第1圧力センサ(P1)は、燃料供給ライン(F1)で低下した圧力値を第1バルブ(V1)に送信し、第1バルブ(V1)が第1圧力センサ(P1)から燃料供給ライン(F1)で低下した圧力値を受信すると、第1バルブ(V1)は開度を上げて液化ガスの
流量を増加させる。
【0031】
エンジン(E)の上流には、エンジン(E)に供給される液化ガスに含まれる不純物をろ過する第1フィルタ(31)が設置される。第1フィルタ(31)は、熱交換器(20)と第1バルブ(V1)との間に設置されることが好ましい。
【0032】
エンジン(E)に供給される液化ガスのうち、エンジン(E)で使用されずに残った余剰液化ガスは、再び貯蔵タンク(T)に送られる。本参考例では、エンジン(E)で必要とされる量を超える量の液化ガスをエンジン(E)に供給した後、エンジン(E)で使用されずに残った液化ガスをエンジン(E)から排出させて貯蔵タンク(T)に戻す。
【0033】
気体状態の圧縮性流体(Compressible Fluid)をエンジン(E)の燃料として供給する場合、燃料供給ライン(F1)をエンジン(E)で要求される量よりも少し高い圧力で満しておくことで、圧縮性流体である燃料がある程度圧縮された状態で燃料供給ライン(F1)に存在する。これにより、エンジン(E)が急に大量の燃料を必要とする場合でも、燃料を直ぐに供給することができるため、エンジン(E)の負荷が変動しても安定的に燃料を供給することができる。
【0034】
しかし、液体状態の非圧縮性流体(Incompressible Fluid)をエンジン(E)の燃料として供給する場合、非圧縮性流体は圧力を加えても体積の変化が微々たるものであるため、燃料供給ライン(F1)をエンジン(E)で要求される量よりも少し高い圧力で満たしておく方法を使用することができない。
【0035】
さらに、エンジン(E)で急に大量の燃料を必要とする場合、エンジン(E)が必要とする量の燃料を供給することができなくなり、エンジン(E)においてキャビテーション(Cavitation)などが発生する虞がある。
【0036】
したがって、本発明の発明者らは、エンジン(E)に供給される燃料が不足する場合を発生させるよりも、エンジンで必要な量よりも多量の燃料を供給する方がより良いと判断した。
【0037】
本参考例では、エンジン(E)で要求される量の液化ガスのみをエンジン(E)に供給するのではなく、エンジン(E)の負荷変動に対応できる十分な量の液化ガスをエンジン(E)に供給し、エンジン(E)で使用されずに残った余剰液化ガスをエンジン(E)から排出させる。
【0038】
したがって、本発明では、液体状態の非圧縮性流体をエンジンの燃料として供給する場合でも、エンジンに燃料を安定的に供給することができる。
【0039】
本参考例では、エンジン(E)の要求量の約100%~120%の液化ガスをエンジン(E)に供給し、好ましくは、エンジン(E)の要求量の約110%の液化ガスをエンジン(E)に供給する。
【0040】
第2圧力センサ(P2)は、エンジン(E)から排出された余剰液化ガスを貯蔵タンク(T)に送る燃料排出ライン(F2)上に設置されて、燃料排出ライン(F2)の圧力を測定する。第2バルブ(V2)は、燃料排出ライン(F2)上に設置されて、第2圧力センサ(P2)で測定された圧力値が第1設定値以下になるように液化ガスの流量を調節する。エンジン(E)の要求圧力まで加圧された高圧の余剰液化ガスは、貯蔵タンク(T)に戻される際に第2バルブ(V2)によって圧力が低下する。
【0041】
エンジン(E)の下流には、エンジン(E)から排出された余剰液化ガスに含まれる不純物をろ過する第2フィルタ(32)が設置される。第2フィルタ(32)は、第2バルブ(V2)と貯蔵タンク(T)との間に設置されることが好ましい。
【0042】
エンジン(E)と第2バルブ(V2)との間には、第1ノックアウトドラム(41)が設置される。第2バルブ(V2)と貯蔵タンク(T)との間には、第2ノックアウトドラム(42)が設置される。
【0043】
ノックアウトドラム(Knock Out Drum、KO Drum)は、非常事態により燃料を排出する必要がある場合に、ノックアウトドラムを介して気体状態の燃料のみを排出して、その他の燃料を貯蔵するか貯蔵タンク(T)に戻すバッファ(Buffer)の役割を担う。
【0044】
第1ノックアウトドラム(41)と第2ノックアウトドラム(42)とから排出されたガスは、ベントマスター(Vent Master)に送られる。
【0045】
一方、エンジン(E)から排出された余剰液化ガスが第2バルブ(V2)によって減圧されることで発生するフラッシュガスを、再液化システムに供給して再液化することもできる。
【0046】
図2は、本発明の第
1実施形態に係る船舶用の燃料供給システムの概略図である。
【0047】
図2を参照して、本実施形態の船舶用の燃料供給システムは、
上記参考例と同様に、貯蔵タンク(T)から排出された液化ガスをエンジン(E)の要求圧力まで加圧するポンプ(10)と、ポンプ(10)によって加圧された液化ガスをエンジン(E)の要求温度まで熱交換により加熱する熱交換器(20)とを備える。熱交換器(20)によって加熱された液化ガスはエンジン(E)に供給される。また、エンジン(E)の上流には、
上記参考例と同様に、エンジン(E)に供給される液化ガスに含まれる不純物をろ過する第1フィルタ(31)が設置される。
【0048】
ただし、本実施形態の船舶用の燃料供給システムは、上記参考例と比較して、バッファタンク(50)をさらに備え、第1圧力センサ(P1)及び第1バルブ(V1)を設けない点で相違する。
【0049】
バッファタンク(50)は、貯蔵タンク(T)から排出されてポンプ(10)及び熱交換器(20)を通過した液化ガスを一時貯蔵してエンジン(E)に供給する。上記参考例では、エンジン(E)の負荷変動に対応できる十分な量の液化ガスをエンジン(E)に供給し、エンジン(E)で使用されずに残った余剰液化ガスをエンジン(E)から排出するのに対して、本実施形態では、エンジン(E)で必要とされる量の液化ガスをバッファタンク(50)からエンジン(E)に供給し、エンジン(E)の負荷が減少し続けてバッファタンク(50)の内部の水位が上昇することで、バッファタンク(50)の内部の液化ガスはリターンライン(F4)によって貯蔵タンク(T)に戻される。
【0050】
バッファタンク(50)には、バッファタンク(50)の内部の液化ガスの水位を測定する水位センサ(L)が設置される。エンジン(E)で使用されずに残った余剰液化ガスをバッファタンク(50)から貯蔵タンク(T)に戻すリターンライン(F4)上には、その開閉により流体の流量を調節する第3バルブ(V3)が設置される。
【0051】
第3バルブ(V3)は、水位センサ(L)で測定されたバッファタンク(50)の内部の水位値に応じて開閉されることで、バッファタンク(50)から排出される液化ガスの流量を調節する。第3バルブ(V3)は平常時(Normal Operation)には閉鎖状態で維持
される。水位センサ(L)で測定されるバッファタンク(50)の内部の水位値が第2設定値以上になると、第3バルブ(V3)が開放されて、バッファタンク(50)の内部の液化ガスが貯蔵タンク(T)に送られる。
【0052】
バッファタンク(50)は、その内部に窒素(N2)などの気体を供給することで、バッファタンク(50)の内部圧力が維持及び調節される。バッファタンク(50)の内部圧力を維持及び調節することで、エンジン(E)で必要とされる圧力の液化ガスを燃料として供給することができるため、上記参考例のように第1圧力センサ(P1)及び第1バルブ(V1)によってエンジン(E)に送られる液化ガスの圧力を調整する必要がない。したがって、本実施形態では、上記参考例で設置される第1圧力センサ(P1)及び第1バルブ(V1)を設置しなくても良い。
【0053】
バッファタンク(50)には、バッファタンク(50)の内部圧力を測定する第3圧力センサ(P3)が設置される。バッファタンク(50)の内部のガス(内部圧力を維持及び調節するために供給される窒素などのガス、蒸発ガス及びフラッシュガスを含む。)を排出するベントライン(F5)上には、その開閉により流体の流量を調節する第4バルブ(V4)が設置される。バッファタンク(50)に窒素などの気体を供給する気体供給ライン(F3)上には、その開閉により流体の流量を調節する第5バルブ(V5)が設置される。
【0054】
第4バルブ(V4)及び第5バルブ(V5)は、バッファタンク(50)の内部圧力が一定範囲で維持されるように、第3圧力センサ(P3)で測定したバッファタンク(50)の内部圧力値に応じて開閉されることで流体の流量を調節する。第4バルブ(V4)の開閉度を調節することで、バッファタンク(50)の内部のガスをベントライン(F5)によって貯蔵タンク(T)に送ることができ、第5バルブ(V5)の開閉度を調節することで、窒素などの気体をバッファタンク(50)に供給することができる。第5バルブ(V5)は、平常時には開放した状態で維持され、開閉度が調節される。
【0055】
本実施形態の船舶用の燃料供給システムが第1フィルタ(31)を備える場合、第1フィルタ(31)は熱交換器(20)とバッファタンク(50)との間に設置されることが好ましい。
【0056】
上記参考例では、エンジン(E)の要求圧力まで加圧された高圧の余剰液化ガスを貯蔵タンク(T)に戻す際に、液化ガスの圧力が貯蔵タンク(T)の内部圧力まで急激に減少することで、多量のフラッシュガスが発生するという問題がある。多量のフラッシュガスが発生する場合、貯蔵タンク(T)、ノックアウトドラム(41,42)、ベントマスターなどの各体積をフラッシュガスを収容できるように大きく設計する必要があり、また、多量のフラッシュガスを処理するための装置の追設や制御システムが必要になる。
【0057】
本実施形態では、バッファタンク(50)を設置して、バッファタンク(50)からエンジン(E)で必要とされる量の液化ガスを供給するため、エンジン(E)の要求圧力まで加圧された液化ガスを貯蔵タンク(T)に送る状況が発生せず、多量のフラッシュガスが発生する現象を防止することができる。
【0058】
したがって、本実施形態は、多量のフラッシュガスを処理するためにノックアウトドラム(41,42)、ベントマスターなどの追加装置や制御システムの設置を省略することができ、フラッシュガスを収容するために貯蔵タンク(T)の体積を大きく設計する必要がないという長所がある。
【0059】
図3は、本発明の第
2実施形態に係る船舶用の燃料供給システムの概略図である。
【0060】
図3を参照して、本実施形態の船舶用の燃料供給システムは、
図2で示す第
1実施形態の船舶用の燃料供給システムと比較して、バッファタンク(50)から排出されたガスをベントライン(F5)を介して貯蔵タンク(T)に送るのではなく、ベントマスターに送るという点で相違し、その他の部材の役割とそれに伴う効果は
上記第
1実施形態と同様である。
【0061】
本実施形態は、バッファタンク(50)から排出されたガスを貯蔵タンク(T)に送らないため、上記第1実施形態に比べて貯蔵タンク(T)の体積を小さく設計することができるという長所がある。
【0062】
本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を超えない範囲内で多様に変形または変更して実施できることは、本発明の属する技術分野における当業者にとって自明である。