(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】系統連系システム
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20230307BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
H02P9/04 A
H02J3/38 160
(21)【出願番号】P 2021071513
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】山根 敏則
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-193513(JP,A)
【文献】特開2006-050880(JP,A)
【文献】特開平10-056762(JP,A)
【文献】特開平07-245885(JP,A)
【文献】特開2014-209831(JP,A)
【文献】特開2018-023226(JP,A)
【文献】特開2014-176166(JP,A)
【文献】特開平11-086162(JP,A)
【文献】特開2009-106151(JP,A)
【文献】特開2018-128768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
H02P 9/14
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転エネルギーを電気エネルギーに変換
し、生成された交流電力を直流電力に変換する整流器を内蔵する車載用発電機と、
前記車載用発電機の負荷を調整して前記回転体の回転数を制御
し、系統に連系可能な交流電力に変換するパワーコンディショナに対し前記車載用発電機から出力される直流電力に基づいて生成された直流電力を出力する発電制御コントローラと
を備え、
前記発電制御コントローラは、前記車載用発電機から出力される直流電力を用いて所定の電圧に変換する制御電源を有し、前記制御電源から出力される変換後の電力によって駆動する
系統連系システム。
【請求項2】
前記パワーコンディショナは、太陽光発電用の系統連系向け汎用品である
請求項1に記載の系統連系システム。
【請求項3】
前記発電制御コントローラは、前記
車載用発電機の励磁をオフすることにより、前記パワーコンディショナの過電圧を防止する
請求項1または2に記載の系統連系システム。
【請求項4】
前記
車載用発電機は、前記パワーコンディショナの入力電圧範囲に合うように、複数個カスケード接続することにより構成されている
請求項1から3のいずれか1項に記載の系統連系システム。
【請求項5】
前記複数個カスケード接続された
車載用発電機は、直列接続された
2台以上であるN台の
車載用発電機からなる単位ユニットを
2個以上であるM個カスケード接続されることで構成され、
前記発電制御コントローラは、前記単位ユニットの数に対応してM個設けられており、
M個の前記発電制御コントローラのそれぞれは、対応する単位ユニット内のN台の
車載用発電機のうちのいずれかが故障した場合には、故障した
車載用発電機を特定できる機能を備える
請求項4に記載の系統連系システム。
【請求項6】
M個の前記発電制御コントローラのそれぞれは、対応する単位ユニット内のN台の
車載用発電機のうちのいずれかが故障した場合には、前記単位ユニット内のN台の
車載用発電機の運転を停止させる
請求項5に記載の系統連系システム。
【請求項7】
1台の
車載用発電機に対応して1個設けられ、前記
車載用発電機の電圧値を検出する電圧検出手段と、
1台の
車載用発電機に対応して1個設けられ、前記
車載用発電機の電流値を検出する電流検出手段と、
1台の
車載用発電機に対応して1個設けられ、前記
車載用発電機の回転数を検出する回転数検出手段と
をさらに備え、
前記発電制御コントローラは、前記電圧検出手段、前記電流検出手段、および前記回転数検出手段による検出結果に基づいて検出対象である
車載用発電機が故障しているか否かを特定する
請求項1から6のいずれか1項に記載の系統連系システム。
【請求項8】
前記発電制御コントローラは、前記電圧検出手段による検出結果に基づいて、前記パワーコンディショナの入力電圧が規定電圧範囲内に保持されるように、前記検出対象である
車載用発電機の励磁dutyを制御する
請求項7に記載の系統連系システム。
【請求項9】
前記パワーコンディショナは、運転開始、運転停止、異常信号を含む通信信号を送信し、
前記発電制御コントローラは、受信した前記通信信号に基づいてあらかじめ決められたフェイルセーフ条件を満たすか否かを判定し、前記フェイルセーフ条件を満たすと判定した場合には、
車載用発電機の励磁を一定期間オフして、前記
車載用発電機をフリー回転させる
請求項1から8のいずれか1項に記載の系統連系システム。
【請求項10】
前記回転体による発電により得られた電力を利用し、遠隔監視に必要な情報を通信する遠隔通信手段をさらに備える
請求項1から9のいずれか1項に記載の系統連系システム。
【請求項11】
前記発電制御コントローラは、
前記
車載用発電機の設置環境における水位を検出するために設置された水位センサを介して前記水位を取得し、
前記
車載用発電機の設置環境状態を監視するために設置された監視カメラを介して監視情報を取得し、
前記水位および前記監視情報に基づいて、前記設置環境が非常事態に至ったか否かを判定し、
前記非常事態に至ったと判定した場合には、前記
車載用発電機の運転を停止させる
請求項1から10のいずれか1項に記載の系統連系システム。
【請求項12】
前記発電制御コントローラは、
前記水位センサから取得した前記水位が、あらかじめ設定した水位閾値に到達したか否かを判定し、
前記水位が前記水位閾値に到達したと判定した場合には、前記監視カメラを動作させ、前記監視情報を取得する
請求項11に記載の系統連系システム。
【請求項13】
前記車載用発電機は、オルタネータである
請求項1から12のいずれか1項に記載の系統連系システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電機による発電電力を系統に連系する系統連系システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の系統連系システムの構成は、回転体と、発電機と、パワーコンディショナと、制御コントローラとを備えているものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。ここで、発電機は、回転することにより発電する回転体の回転エネルギーを、電気エネルギーに変換する。
【0003】
パワーコンディショナは、発電機で発電した直流電力を系統に連系可能な交流電力に変換する。制御コントローラは、発電機の負荷を調整して回転体の回転数を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には以下のような課題がある。
従来の発電機は、永久磁石を使ったものが一般的である。このような永久磁石式の発電機では、多数の永久磁石を使用している。従って、永久磁石としてネオジム磁石等の強力な磁力のものを使用する場合には、コスト高となる。さらに、磁石同士が強力に引き合うため、製造には注意が必要となる。
【0006】
また、従来のパワーコンディショナは、一般的な太陽光発電用を除くと、専用設計のパワーコンディショナを使う場合が多い。この場合には、専用設計となるため、コスト高となり、さらに、枠の大きさを他の装置に合わせようとした結果、サイズが大型化してしまう。
【0007】
上述したように、従来の系統連系システムの構成では、制御装置内に整流器、消費抵抗装置等が内蔵されている。このため、制御装置のサイズが大きくなり、コスト、質量、消費電力もUPすることとなる。
【0008】
本開示は、上記課題を解決するものであり、高品質を確保しながら、コスト削減が図れるとともに、質量および消費電力の削減も図ることができる系統連系システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の系統連系システムは、回転体の回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、生成された交流電力を直流電力に変換する整流器を内蔵する車載用発電機と、車載用発電機の負荷を調整して回転体の回転数を制御し、系統に連系可能な交流電力に変換するパワーコンディショナに対し車載用発電機から出力される直流電力に基づいて生成された直流電力を出力する発電制御コントローラとを備え、発電制御コントローラは、車載用発電機から出力される直流電力を用いて所定の電圧に変換する制御電源を有し、制御電源から出力される変換後の電力によって駆動するものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示の系統連系システムによれば、高品質を確保しながら、コスト削減が図れるとともに、質量および消費電力の削減も図ることができる系統連系システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る系統連系システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】本開示の実施の形態2に係る系統連系システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図3】本開示の実施の形態2に係る系統連系システムで用いられる発電機コントローラの内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示による系統連系システムについて、実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る系統連系システムの全体構成を示すブロック図である。本実施の形態1では、水力発電装置を具体例として挙げる。また、この具体例は、プロペラ型の水力発電装置の例である。
【0014】
図1に示した本実施の形態1に係る系統連系システムでは、水の運動エネルギーによりプロペラである回転体1が回転し、回転軸2を介して車載用界磁巻線型三相同期発電機3を回転させる。
【0015】
車載用界磁巻線型三相同期発電機3は、回転体1の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機であり、制御コントローラ4およびパワーコンディショナ5を介して系統6に接続されている。系統6は、交流商用の電力系統であり、例えば、交流電圧が100Vまたは200Vで、周波数が50Hzまたは60Hzの低電圧配線である。
【0016】
ここで、本実施の形態1において、制御コントローラ4は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の負荷を調整して回転体1の回転数を制御し、車載用界磁巻線型三相同期発電機3による発電電力に基づいて適切な直流電力をパワーコンディショナ5に供給するように制御する発電制御コントローラに相当する。
【0017】
車載用界磁巻線型三相同期発電機3としては、例えば、車載用オルタネータが適用できる。図示を省略しているが、車載用界磁巻線型三相同期発電機3は、ロータコイル部、ステータコイル部、および整流部を備えて構成されている。
【0018】
ロータコイル部は、回転軸2に結合された増速機7を経由して回転するロータ側の励磁用のコイル部である。ステータコイル部は、ロータコイル部と近接して配置され、ロータコイル部の磁界の変化により発電するステータ側の発電用のコイル部である。また、整流部は、ステータコイル部からの交流の発電電力を直流電力に変換する機能を有している。
【0019】
このように、車載用界磁巻線型三相同期発電機3には整流器が内蔵されている。このため、永久磁石式の発電機を用いた従来の系統連系システムに対して、大幅なコスト削減が可能となる。
【0020】
また、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁をオフすることにより、車載用界磁巻線型三相同期発電機3は発電しなくなり、パワーコンディショナ5の過電圧を防止することができる。さらに、車載用界磁巻線型三相同期発電機3は、車載用として大量生産されているため、信頼性が高く、高品質である。
【0021】
回転軸2と車載用界磁巻線型三相同期発電機3との間には、
図1に示したように、増速機7が設けられている。増速機7の具体例としては、例えば、遊星ギヤ、ウォームギヤ等が挙げられる。
【0022】
次に、本実施の形態1に係る制御コントローラ4の内部構成について、詳細に説明する。
図1に示した制御コントローラ4は、制御電源8、発電制御手段9、励磁制御手段10、ブレーキ制御手段11、電磁ブレーキ12、DC/DCコンバータ13、電流計(電流検出手段)14、電圧計(電圧検出手段)15、回転数検出手段16、および遠隔通信手段28を備えて構成されている。
【0023】
制御電源8は、制御コントローラ4を動作させる電源である。例えば、車載用界磁巻線型三相同期発電機3として車載用オルタネータを使用する場合には、制御電源8は、車載用オルタネータが発電する直流電力を、ある一定の電圧に変換して供給する。制御電源8は、低消費電力化のため、車載用界磁巻線型三相同期発電機3が回転しているときのみ電源が入り、制御コントローラ4に電源が供給される。
【0024】
なお、制御電源8は、コンデンサ等の蓄電効果により、一定期間は電源電圧が保持される。制御電源8の代わりに、バッテリ、電池等の別電源を使用してもよい。
【0025】
発電制御手段9は、フェイルセーフ制御を含む全体の発電を制御する。発電制御手段9は、例えば、マイクロコンピュータ、メモリ等で構成され、電流計(電流検出手段)14、電圧計(電圧検出手段)15、回転数検出手段16の信号を監視する。
【0026】
そして、発電制御手段9は、監視の結果、過電流、過電圧、過回転等の異常信号を受信した場合には、あらかじめ決められたフェイルセーフ条件に基づいて、フェイルセーフ条件を満たすか否かを判定する。さらに、発電制御手段9は、フェイルセーフ条件を満たすと判定した場合には、励磁制御手段10、ブレーキ制御手段11に制御信号を伝達し、そのときの状態に応じて適切な励磁制御、ブレーキ制御を行う。
【0027】
また、発電制御手段9に対しては、制御コントローラ4の外部に接続される太陽光発電用パワーコンディショナ5から、シリアル通信、LAN通信等により、運転開始、運転停止、各種異常信号等を含む通信信号が送信される。
【0028】
従って、発電制御手段9は、太陽光発電用パワーコンディショナ5からの通信信号の受信結果により、故障発生時にはフェイルセーフ条件に基づいて判断を行い、励磁制御手段10、ブレーキ制御手段11に制御信号を伝達し、そのときの状態に応じて適切な励磁制御、ブレーキ制御を行うことができる。
【0029】
発電制御手段9は、例えば、過電圧時には、パワーコンディショナ5の保護のために、パワーコンディショナ5の入力電圧を規定電圧範囲内に保持するように、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁dutyを制御する。それでも過電圧になる場合には、発電制御手段9は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁を一定期間オフして車載用界磁巻線型三相同期発電機3をフリー回転させる。
【0030】
その後、発電制御手段9は、再度過電圧にならないようであれば、励磁をオンし、また、再度過電圧になるようであれば、もう一度励磁をオフさせる。さらに、発電制御手段9は、励磁オフにより車載用界磁巻線型三相同期発電機3が過回転になるようであれば、電磁ブレーキ12をオンさせる。
【0031】
励磁制御手段10は、制御電源8を電源として、励磁電力を車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁端子に送り、励磁制御を開始する。ブレーキ制御手段11は、電磁ブレーキ12を、例えば、回転数に応じて制御する。
【0032】
DC/DCコンバータ13は、直流入力電圧をパワーコンディショナ5の最低入力電圧まで昇圧させる。電流計(電流検出手段)14は、DC/DCコンバータ13により昇圧され、パワーコンディショナ5に入力される電流値を検出する。
【0033】
電圧計(電圧検出手段)15は、DC/DCコンバータ13により昇圧され、パワーコンディショナ5に入力される電圧値を検出する。回転数検出手段16は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3のロータから回転数に比例した周波数の矩形波相当の波形が出力されることにより、回転数を検出できる。
【0034】
次に、パワーコンディショナ5および系統6について説明する。パワーコンディショナ5は、DC/DCコンバータ13で昇圧された直流電力の電圧を、系統6の電圧に対応させることで、系統6に連系可能な交流電力に変換する。正確には、パワーコンディショナ5は、系統6の電圧よりも少し高い電圧に対応させる。
【0035】
本実施の形態1におけるパワーコンディショナ5としては、一般的な太陽光発電用の系統連系向け汎用品が適用できる。このようなパワーコンディショナ5の主な内蔵物としては、図示はしないが、DC/DCコンバータ、DC/ACインバータ、制御手段がある。
【0036】
パワーコンディショナ5に汎用品である太陽光発電用の系統連系向け汎用品を使用することにより、専用設計品に比べて安価で高品質なパワーコンディショナ5を提供することができる。
【0037】
なお、制御コントローラ4には、
図1に示したように、遠隔通信手段28を設けてもよい。遠隔通信手段28は、例えば、4G無線通信モジュール等を搭載しており、回転体1による発電により得られた電力を用いて、公共のインターネット等の通信手段を利用して、遠隔監視側に対してリアルタイムで、遠隔監視に必要な情報として、発電状態、回転数、温度等を提供することができる。
【0038】
一方、遠隔監視側は、パソコン等のモニタ手段を置くことにより、遠隔通信手段28からリアルタイムで提供される情報に基づいて、遠隔監視ができるようになる。
【0039】
また、
図1に示したように、制御コントローラ4には、洪水等の非常事態時に備え、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の設置環境における水位を検出する水位センサ31、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の設置環境状態を監視する監視カメラ32等を設置してもよい。
【0040】
水位センサ31、監視カメラ32等を設置することにより、発電制御手段9は、リアルタイムに監視情報を取得でき、取得した監視情報に基づいて、設置環境が非常事態に至ったか否かを判定することができる。
【0041】
そのとき、発電制御手段9は、消費電力をできる限り抑制するために、水位センサ31から取得した水位があらかじめ設定した水位閾値に到達するまでは、監視カメラ32を動作させないようにすることができる。
【0042】
以上のように、実施の形態1によれば、発電機に車載用界磁巻線型三相同期発電機を使用し、回転体の回転数が上昇し、過電圧になろうとする際には車載用界磁巻線型三相同期発電機の励磁をオフすることにより、パワーコンディショナにかかる過電圧を防止する構成を備えている。
【0043】
また、大量生産された車載用界磁巻線型三相同期発電機を発電機として使用する構成を備えている。また、パワーコンディショナとして太陽光発電用の系統連系向け汎用品を使用する構成をさらに採用することもできる。この結果、高品質を確保しながら、コスト削減が図れるとともに、質量および消費電力の削減も図ることができる系統連系システムを得ることができる。
【0044】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、車載用界磁巻線型三相同期発電機3内の整流器から出力される電力に基づいてDC/DCコンバータ13により昇圧して生成された直流電力をパワーコンディショナ5に供給する系統連系システムについて説明した。
【0045】
これに対して、本実施の形態2では、車載用界磁巻線型三相同期発電機3を複数個カスケード接続することにより、出力電力をUPし、かつDC/DCコンバータ(昇圧回路)なしでもパワーコンディショナ5の入力電圧に対応する直流電力を生成できるようにした系統連系システムについて説明する。
【0046】
図2は、本開示の実施の形態2に係る系統連系システムの全体構成を示すブロック図である。本実施の形態2では、先の実施の形態1と同様に、プロペラ型の水力発電装置を具体例として、説明する。
【0047】
図2に示した本実施の形態2に係る系統連系システムでは、水の運動エネルギーにより複数個のプロペラである回転体1が回転し、複数個の回転軸2のそれぞれを介して複数個の車載用界磁巻線型三相同期発電機3のそれぞれを回転させる。
【0048】
複数個の車載用界磁巻線型三相同期発電機3は、複数個の発電機コントローラ17を介して制御コントローラ4に接続されるとともに、パワーコンディショナ5を介して系統6に接続される。系統6は、交流商用の電力系統であり、例えば、交流電圧が100Vまたは200Vで、周波数が50Hzまたは60Hzの低電圧配線である。
【0049】
図2の構成をより具体的に説明すると、複数個の車載用界磁巻線型三相同期発電機3は、直列接続されたN台の車載用界磁巻線型三相同期発電機3からなる単位ユニットをM個カスケード接続されることで構成されている。そして、発電機コントローラ17は、単位ユニットの数に対応してM個設けられている。ここで、M、Nは、2以上の整数である。
【0050】
図2の例では、M=3とした場合を例示している。そして、それぞれの単位ユニットは、対応する1台の発電機コントローラ17によって制御され、それぞれの発電機コントローラ17は、制御コントローラ4と相互通信可能な構成となっている。
【0051】
ここで、本実施の形態2において、1台の制御コントローラ4およびM台の発電機コントローラ17は、カスケード接続されたそれぞれの車載用界磁巻線型三相同期発電機3の負荷を調整して回転体1の回転数を制御し、それぞれの車載用界磁巻線型三相同期発電機3による発電電力に基づいて適切な直流電力をパワーコンディショナ5に供給するように制御する発電制御コントローラに相当する。
【0052】
複数個の車載用界磁巻線型三相同期発電機3としては、先の実施の形態1と同様に、例えば、車載用オルタネータが適用できる。車載用オルタネータの詳細構成は、先の実施の形態1で説明済みであり、ここでは省略する。
【0053】
車載用界磁巻線型三相同期発電機3には整流器が内蔵されている。このため、永久磁石式の発電機を用いた従来の系統連系システムに対して、大幅なコスト削減が可能となる。また、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁をオフすることにより、車載用界磁巻線型三相同期発電機3は発電しなくなり、パワーコンディショナ5の過電圧を防止することができる。さらに、車載用界磁巻線型三相同期発電機3は、車載用として大量生産されているため、信頼性が高く、高品質である。
【0054】
回転軸2と車載用界磁巻線型三相同期発電機3との間のそれぞれには、
図2に示したように、増速機7が設けられている。増速機7の具体例としては、例えば、遊星ギヤ、ウォームギヤ等が挙げられる。
【0055】
次に、発電機コントローラ17の内部構成について、詳細に説明する。
図3は、本開示の実施の形態2に係る系統連系システムで用いられる発電機コントローラ17の内部構成を示すブロック図である。
【0056】
図3に示した発電機コントローラ17は、制御電源18、発電制御手段19、励磁制御手段20、ブレーキ制御手段21、電磁ブレーキ22、電流計23、電圧計24、回転数検出手段25、およびシリアル通信手段26を備えて構成されている。
【0057】
制御電源18は、発電機コントローラ17を動作させる電源である。例えば、車載用界磁巻線型三相同期発電機3として車載用オルタネータを使用する場合には、制御電源18は、車載用オルタネータが発電する直流電力を、ある一定の電圧に変換して供給する。制御電源18は、低消費電力化のため、車載用界磁巻線型三相同期発電機3が回転しているときのみ電源が入り、発電機コントローラ17に電源が供給される。
【0058】
なお、制御電源18は、コンデンサ等の蓄電効果により、一定期間は電源電圧が保持される。制御電源18の代わりに、バッテリ、電池等の別電源を使用してもよい。
【0059】
発電制御手段19は、フェイルセーフ制御を含む全体の発電を制御する。発電制御手段9は、例えば、マイクロコンピュータ、メモリ等で構成され、電流計23、電圧計24、回転数検出手段25の信号を監視する。
【0060】
そして、発電制御手段19は、監視の結果、過電流、過電圧、過回転等の異常信号を受信した場合には、フェイルセーフ条件に基づいて、励磁制御手段20、ブレーキ制御手段21に制御信号を伝達し、そのときの状態に応じて適切な励磁制御、ブレーキ制御を行う。
【0061】
励磁制御手段20は、制御電源18を電源として、励磁電力を車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁端子に送り、励磁制御を開始する。ブレーキ制御手段21は、電磁ブレーキ22を、例えば、回転数に応じて制御する。
【0062】
電流計23は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の電流値を検出し、電圧計24は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の電圧値を検出する。回転数検出手段25は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3のロータから回転数に比例した周波数の矩形波相当の波形が出力されることにより、回転数を検出できる。
【0063】
シリアル通信手段26は、発電機コントローラ17と制御コントローラ4との間の通信を行う。
【0064】
次に、
図2に戻り、パワーコンディショナ5および系統6について説明する。本実施の形態2におけるパワーコンディショナ5としては、一般的な太陽光発電用の系統連系向け汎用品が適用できる。このようなパワーコンディショナ5の主な内蔵物としては、図示はしないが、DC/DCコンバータ、DC/ACインバータ、制御手段がある。
【0065】
パワーコンディショナ5に汎用品である太陽光発電用の系統連系向け汎用品を使用することにより、専用設計品に比べて安価で高品質なパワーコンディショナ5を提供することができる。
【0066】
また、発電機コントローラ17内の発電制御手段19は、故障の検出対象である複数個カスケード接続された車載用界磁巻線型三相同期発電機3のうちの一個が故障したことを検出した場合には、検出結果に基づいて故障した車載用界磁巻線型三相同期発電機3を特定できる機能を有している。
【0067】
例えば、発電制御手段19は、一例としてマイクロコンピュータにて構成され、電流計23、電圧計24、回転数検出手段25の信号を監視する。そして、発電制御手段19は、監視結果に基づいて、励磁オンかつ車載用界磁巻線型三相同期発電機3が回転しているにもかかわらず発電していないもの(他は発電している)を特定することができる。
【0068】
また、発電機コントローラ17内の発電制御手段19は、故障の検出対象である複数個カスケード接続された車載用界磁巻線型三相同期発電機3のうち、故障した車載用界磁巻線型三相同期発電機3があることを検出した場合には、検出結果に基づいて故障した車載用界磁巻線型三相同期発電機3を含む直列接続部の基本ユニットだけの運転を停止し、メンテナンスができる機能を有している。このような機能を有することにより、発電停止部を最小限に抑えることができる。
【0069】
また、
図3に示したように、カスケード接続部には、洪水等の非常事態時に備え、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の設置環境における水位を検出する水位センサ31、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の設置環境状態を監視する監視カメラ32等を設置してもよい。
【0070】
水位センサ31、監視カメラ32等を設置することにより、発電制御手段19は、リアルタイムに監視情報を取得でき、取得した監視情報に基づいて、設置環境が非常事態に至ったか否かを判定することができる。
【0071】
そのとき、発電制御手段19は、消費電力をできる限り抑制するために、水位センサ31から取得した水位があらかじめ設定した水位閾値に到達するまでは、監視カメラ32を動作させないようにすることができる。
【0072】
次に、本実施の形態2に係る制御コントローラ4の内部構成について、詳細に説明する。
図2に示した制御コントローラ4は、制御電源8、電圧計(電圧検出手段)15、統括制御手段27、遠隔通信手段28、複数個のヒューズ29、および複数個のダイオード30を備えて構成されている。
【0073】
制御電源8は、制御コントローラ4を動作させる電源である。
【0074】
統括制御手段27は、例えば、マイクロコンピュータ、メモリ等で構成される。統括制御手段27は、制御の一例を挙げると、電圧計(電圧検出手段)15で測定された実発電電圧と、シリアル通信を介して太陽光発電用パワーコンディショナ5から取得した電圧値とで差がある場合には、フィードバック制御を行い、差を一定値以下にするように実発電電圧を調整する。
【0075】
また、統括制御手段27は、電圧計(電圧検出手段)15の信号を監視しておき、過電圧等の異常信号が出た際には、発電機コントローラ17内のシリアル通信手段26との間で通信を行う。
【0076】
この結果、発電機コントローラ17内の発電制御手段19は、通信により得た情報から、フェイルセーフ条件に基づいて判断を行い、励磁制御手段20、ブレーキ制御手段21に制御信号を伝達し、そのときの状態に応じて適切な励磁制御、ブレーキ制御を行う。
【0077】
また、統括制御手段27に対しては、制御コントローラ4の外部に接続される太陽光発電用パワーコンディショナ5から、シリアル通信、LAN通信等により、運転開始、運転停止、各種異常信号等を含む通信信号が送信される。
【0078】
従って、統括制御手段27は、故障発生時には、発電機コントローラ17内のシリアル通信手段26との間で通信を行うことにより、太陽光発電用パワーコンディショナ5からの入力結果を発電機コントローラ17内の発電制御手段19に伝達することができる。
【0079】
この結果、発電制御手段19は、故障発生時にはフェイルセーフ条件に基づいて判断を行い、励磁制御手段20、ブレーキ制御手段21に制御信号を伝達し、そのときの状態に応じて適切な励磁制御、ブレーキ制御を行うことができる。
【0080】
発電制御手段19は、例えば、過電圧時には、パワーコンディショナ5の保護のために、パワーコンディショナ5の入力電圧を規定電圧範囲内に保持するように、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁dutyを制御する。それでも過電圧になる場合には、発電制御手段19は、車載用界磁巻線型三相同期発電機3の励磁を一定期間オフして車載用界磁巻線型三相同期発電機3をフリー回転させる。
【0081】
その後、発電制御手段19は、再度過電圧にならないようであれば、励磁をオンし、また、再度過電圧になるようであれば、もう一度励磁をオフさせる。さらに、発電制御手段19は、励磁オフにより車載用界磁巻線型三相同期発電機3が過回転になるようであれば、電磁ブレーキ22をオンさせる。
【0082】
なお、制御コントローラ4には、
図2に示したように、遠隔通信手段28を設けてもよい。遠隔通信手段28は、例えば、4G無線通信モジュール等を搭載しており、回転体1による発電により得られた電力を用いて、公共のインターネット等の通信手段を利用して、遠隔監視側に対してリアルタイムで、遠隔監視に必要な情報として、発電状態、回転数、温度等を提供することができる。
【0083】
一方、遠隔監視側は、パソコン等のモニタ手段を置くことにより、遠隔通信手段28からリアルタイムで提供される情報に基づいて、遠隔監視ができるようになる。
【0084】
複数個のヒューズ29は、過電流時の保護用としてコスト削減のために設けられている。ただし、ヒューズ29の代わりにシャント抵抗等の電流計(電流検出手段)を入れて統括制御手段27にて電流値を監視し、過電流時に電流遮断できるリレー等を設けてもよい。また、複数個のダイオード30は、逆流を防止するために設けられている。
【0085】
以上のように、実施の形態2によれば、発電機として車載用界磁巻線型三相同期発電機を使用し、かつ、車載用界磁巻線型三相同期発電機3を複数個カスケード接続する構成を備えている。ここで、発電機として使用される車載用界磁巻線型三相同期発電機は、パワーコンディショナの入力電圧範囲に合うように、複数個カスケード接続させることができる。
【0086】
この結果、先の実施の形態1と同様に、高品質を確保しながら、コスト削減が図れるとともに、質量および消費電力の削減も図ることができる系統連系システムを得ることができる。
【0087】
さらに、実施の形態2によれば、車載用界磁巻線型三相同期発電機を複数個カスケード接続する構成を採用している。この結果、先の実施の形態1の効果に加え、出力電力をUPし、かつDC/DCコンバータ(昇圧回路)なしでもパワーコンディショナ5の入力電圧に対応させられるようにした系統連系システムを得ることができるというさらなる効果を実現できる。
【0088】
以上、本開示の実施の形態1、2について説明したが、本開示は、上記実施の形態1、2に限定されるべきものではなく、当該開示の技術的思想に基づいて適宜変更が可能である。例えば、上記実施の形態1、2においては、再生可能エネルギーを利用した発電装置として水力発電装置の例を示したが、例えば、地熱発電装置、その他の発電装置等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 回転体、2 回転軸、3 発電機、4 制御コントローラ、5 パワーコンディショナ、6 系統、7 増速機、8 制御電源、9 発電制御手段、10 励磁制御手段、11 ブレーキ制御手段、12 電磁ブレーキ、13 DC/DCコンバータ、14 電流計(電流検出手段)、15 電圧計(電圧検出手段)、16 回転数検出手段、17 発電機コントローラ、18 制御電源(発電機コントローラ内)、19 発電制御手段(発電機コントローラ内)、20 励磁制御手段(発電機コントローラ内)、21 ブレーキ制御手段(発電機コントローラ内)、22 電磁ブレーキ(発電機コントローラ内)、23 電流計(発電機コントローラ内)、24 電圧計(発電機コントローラ内)、25 回転数検出手段(発電機コントローラ内)、26 シリアル通信手段、27 統括制御手段、28 遠隔通信手段、29 ヒューズ、30 ダイオード、31 水位センサ、32 監視カメラ。