(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】デジタル印刷プロセス
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
B41J2/01 101
B41J2/01 123
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2021185379
(22)【出願日】2021-11-15
(62)【分割の表示】P 2018213553の分割
【原出願日】2013-03-05
【審査請求日】2021-11-15
(32)【優先日】2012-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514210005
【氏名又は名称】ランダ コーポレイション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ランダ,ベンジオン
(72)【発明者】
【氏名】シェインマン,イェホシュア
(72)【発明者】
【氏名】アブラモヴィッチ,サギ
(72)【発明者】
【氏名】ゴロデッツ,ガリア
(72)【発明者】
【氏名】ナクマノヴィッチ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ソリア,メイア
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-190468(JP,A)
【文献】特開2008-255135(JP,A)
【文献】特開2010-005502(JP,A)
【文献】米国特許第04520048(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する中間転写部材を使用するように構成される印刷システムであって、前記印刷システムは、
複数の印刷ヘッドを保持するための画像形成機構であって、前記複数の印刷ヘッドは、前記画像形成機構内の中間転写部材が第1の温度範囲内にあるときに、画像を前記中間転写部材上に一時的に付着させるように構成される、画像形成機構と、
前記中間転写部材の温度を前記第1の温度範囲内の第1の温度から第2の温度範囲内の第2の温度まで増加させるように構成される乾燥機構であって、前記第2の温度は前記第1の温度よりも高い、乾燥機構と、
前記画像形成機構から離間されている印圧付与機構であって、前記印圧付与機構は、前記印圧付与機構内の中間転写部材が前記第2の温度範囲内にあるときに、一時的に付着させられた画像を前記中間転写部材から基材上に転写するように構成される、印圧付与機構と、
冷却剤を保持するための冷却機構であって、前記冷却機構は、前記印圧付与機構からかつ前記画像形成機構から離間されており、前記中間転写部材を前記冷却剤に曝すことによって前記中間転写部材を前記第1の温度範囲内の温度に戻し、それによって、前記第1の温度範囲内で、前記中間転写部材の前記画像形成機構への戻りを可能にするように構成される、冷却機構と、
前記複数の印刷ヘッドからのインク液滴が、前記中間転写部材の表面に衝突した後にフィルム状の形状を保持するのを助けるために、前記中間転写部材の表面上に前処理溶液を塗布するための処理機構であって、前記冷却機構
は、同じ液体
が前記中間転写部材を冷却することおよび処理することの両方のために用いられるように構成される、処理機構と、
を備える、印刷システム。
【請求項2】
前記冷却機構は、前記中間転写部材を40℃と160℃との間の第1の温度に戻させるように構成され、少なくとも1つの加熱器が、前記中間転写部材を80℃と220℃との間の第2の温度に到達させるように構成される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記冷却機構は、前記中間転写部材を60℃と90℃との間の第1の温度に戻させるように構成され、少なくとも1つの加熱器が、前記中間転写部材を100℃と160℃との間の第2の温度に到達させるように構成される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記冷却機構は、前記冷却剤の温度を40℃と90℃との間の範囲内にあるようにさせるように構成される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記第2の温度範囲は、前記中間転写部材に付着するよりもむしろ前記基材に接着する前記一時的に付着させられた画像の能力を増加させるように選択される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記冷却機構は、前記冷却剤を前記中間転写部材上に吹き付けるように構成される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記冷却機構は、前記中間転写部材を冷却剤の源に通過させるように構成される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記冷却機構は、冷却剤の貯蔵器内に部分的に浸り、冷却剤を前記中間転写部材に搬送するように構成される少なくとも1つのローラを含む、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記印刷システムは、前記画像形成機構への戻りの前に残留物を前記中間転写部材から除去するための洗浄機構をさらに備え、前記冷却機構
は、同じ液体
が前記中間転写部材を冷却することおよび洗浄することの両方のために用いられるように構成される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項10】
選択される手段によって前記前処理溶液を前記中間転写部材に塗布するための、コーティングローラ、流体源、散布器、およびエアナイフのうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項11】
前記前処理溶液の一部を前記中間転写部材から除去するための、ワイパーおよびエアジェットのうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項10に記載の印刷システム。
【請求項12】
前記処理
機構は、前記前処理溶液の塗布
が前記中間転写部材の極性を逆転させるように構成される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項13】
冷却することおよび処理することの両方のために用いられる液体は、線状、分岐および環式の、一級アミン、二級アミン、三級アミンおよび四級化アンモニウム基から選択されるアミン窒素原子を含有するポリマーからなる前処理剤を含み、前記ポリマーは、高電荷密度および少なくとも10,000g/モルの分子量を有する、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項14】
前記乾燥機構は、前記中間転写部材を150℃と250℃との間の範囲内の熱に曝すように構成される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項15】
前記中間転写部材が前記画像形成機構に戻る前に前記前処理溶液を乾燥させる外部加熱器をさらに備える、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項16】
乾燥させられた後の前記前処理溶液の平均厚さは50nmを下回る、請求項15に記載の印刷システム。
【請求項17】
前記冷却機構および前記処理機構は、互いに同一場所に配置される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項18】
印刷方法であって、
画像形成機構において、移動する中間転写部材が第1の温度範囲にあるときに、最初の画像を前記中間転写部材上に一時的に付着させることと、
一時的に付着させられた最初の画像を伴う中間転写部材を熱に曝すことと、
前記中間転写部材が、前記第1の温度範囲よりも高い第2の温度範囲内にあるときに、前記一時的に付着させられた最初の画像を前記中間転写部材から基材上に転写することと、
前記中間転写部材を液体冷却剤に曝すことによって前記中間転写部材を前記第1の温度範囲内の温度に戻し、それによって、前記第1の温度範囲内で、前記中間転写部材の前記画像形成機構への戻りを可能にすることと、
前記中間転写部材の温度を前記第1の温度範囲に戻した後に、前記中間転写部材の連続サイクル内で連続的な画像を前記移動する中間転写部材上に一時的に付着させることと、
インク液滴が、前記中間転写部材の表面に衝突した後にフィルム状の形状を保持するのを助けるために、前記中間転写部材の表面上に前処理溶液を塗布することであって、同じ液体が、前記中間転写部材を冷却することおよび処理することの両方のために用いられることと、
を備える、印刷方法。
【請求項19】
前記第1の温度範囲は60℃と90℃との間にあり、前記第2の温度範囲は100℃と160℃との間にある、請求項
18に記載の印刷方法。
【請求項20】
前記中間転写部材を前記液体冷却剤に曝すこと
によって前記中間転写部材を前記第1の温度範囲内の温度に戻すことは、前記
液体冷却剤を前記中間転写部材上に吹き付けること、前記中間転写部材を
前記液体冷却剤の源の上方に通過させること、および
前記液体冷却剤の貯蔵器内に少なくとも部分的に浸されるローラを用いて前記中間転写部材を移動させることのうちの少なくとも1つを含む、請求項
18に記載の印刷方法。
【請求項21】
前記画像形成機構への戻りの前に残留物を前記中間転写部材から除去することであって、同じ液体が、前記中間転写部材を冷却することおよび残留物を前記中間転写部材から除去することの両方のために用いられること
をさらに備える、請求項
18に記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル印刷プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷版を用意する必要なく、プリンタがコンピュータからの命令を直接受信できるようにするデジタル印刷技術が開発されてきた。これらの中には、乾式電子写真方式のプロセスを用いるカラーレーザプリンタがある。乾式トナーを用いるカラーレーザプリンタは、特定の用途には適しているが、雑誌などの出版物で許容される写真品質の画像を生成しない。
【0003】
ショートラン高品質デジタル印刷に適するプロセスは、HP-Indigoプリンタで用いられている。このプロセスでは、レーザ光に曝露することによって、静電像が、帯電した画像担持胴上に生成される。静電荷は、油性インクを引きつけて、画像担持胴上にカラーインク画像を形成する。次いで、インク画像は、ブランケット胴によって、紙または任意のその他の基材上に転写される。
【0004】
インクジェットおよびバブルジェット(登録商標)プロセスは、家庭用およびオフィス用プリンタでよく用いられる。これらのプロセスでは、インクの液滴は、画像パターンで最終基材上に吹き付けられる。一般に、インクによる紙基材内へのウィッキングのために、このようなプロセスの解像度には限界がある。したがって、基材は、一般に、使用する特定のインクジェット印刷構成の固有の特性に合うように選択される、または適合させる。紙などの線維性の基材は、一般に、調整されたやり方で液体インクを吸収するように、また、その基材の表面の下方への浸透を阻止するように設計された特別なコーティングを要する。しかしながら、特別にコーティングされた基材を用いることは、特定の印刷用途、特に商業印刷にとっては不適当な高価な選択である。さらに、基材の表面が濡れたままとなり、後で基材を取り扱う際、例えば、積み重ねたり、ロールに巻き付けたりする際に汚れないようにするためにインクを乾かすために、さらなる高価かつ時間のかかるステップを要するという点で、コーティングされた基材の使用は、それ自身問題を生み出す。その上、基材が過度に濡れていると、コックリングを生じ、基材の両面への印刷(両面印刷(perfecting or duplex printing)とも呼ばれる)を不可能ではないにしても難しくする。
【0005】
また、多孔性紙、またはその他の繊維性材料の上に直接インクジェット印刷すると画像品質が劣る。これは、印刷ヘッドおよび基材表面の間の距離の変動のためである。
【0006】
間接またはオフセット印刷技術を用いることで、基材上への直接インクジェット印刷に関する多くの問題が克服される。中間画像転写部材の表面とインクジェット印刷ヘッドとの間の距離を一定に維持することができ、また、インクは基材に塗布される前に中間画像部材上で乾燥し得ることから、基材の濡れを抑制する。その結果、基材上での最終的な画像品質は、基材の物理的特性による影響が少ない。
【0007】
インクまたはバブルジェット(登録商標)装置からインク液滴を受けて、インク画像を形成した後、その像を最終基材に転写する転写部材の使用が、特許文献で報告されている。これらのシステムのうちの様々なものが、水性キャリアを有するインク、非水性キャリア液を有するインク、またはキャリア液を全く持たないインク(固体インク)を利用している。
【0008】
水性インクの使用には多くの明らかな利点がある。非水性液体インクと比べると、キャリア液は、毒性がなく、画像が乾く際に蒸発する液体に対処する時に問題が無い。固体インクと比べると、印刷された画像上に残る材料の量を制御でき、印刷された画像をより薄く、より鮮やかな色にできる。
【0009】
一般に、最終基材の構造内への画像のブリードを回避するために、画像が最終基材に転写される前に、液体の相当な割合、またはすべてさえも中間転写部材上の画像から蒸発する。文献では、画像を加熱するステップと、転写部材上の画像粒子の凝集に続く、加熱、エアナイフまたはその他の手段による液体の除去の連携とが含まれる、液体を除去するための様々な方法が説明される。
【0010】
一般に、シリコーンでコーティングされた転写部材が好ましく、それは、これが乾燥した画像の最終基材への転写を容易にするためである。しかしながら、シリコーンは疎水性であり、このことは、インク液滴を転写部材上において球形にしてしまう。このことは、インク中の水の除去を困難にし、さらに、液滴およびブランケットの間の接触面積を減らし、これが、高速な動作中、インク画像を不安定な状態にしてしまう。
【0011】
それほど球形にならないようにするために、界面活性剤および塩が用いられて、インクの液滴の表面張力を抑制してきた。これらは、確かに、問題を部分的に軽減する助けにはなるが、解決するものではない。
【発明の概要】
【0012】
印刷プロセスが本明細書に開示され、印刷プロセスが、インク画像を形成するために、インクの液滴を中間転写部材上に向けるステップであって、インクが、有機ポリマー樹脂および着色剤を水性キャリア中に含み、転写部材が、疎水性の外面を有し、インク画像における各インク液滴が、衝突時に中間転写部材上で広がって、インクフィルムを形成する、インク画像を形成するために、インクの液滴を中間転写部材に向けるステップと、インク画像が中間転写部材により運ばれる間に、樹脂および着色剤の残留フィルムを残すように、水性キャリアをインク画像から蒸発させることによって、インクを乾燥するステップと、残留フィルムを基材に転写するステップとを備え、ここでは、インクおよび中間転写部材の表面の化学組成が選択されて、各液滴の外皮中の分子と中間転写部材の表面の分子との間の分子間引力が、中間転写部材の表面を濡らすことによって各液滴を広がらせることなく、水性キャリアの表面張力の作用下において、各液滴により生成されたインクフィルムが球形になる傾向を打ち消すようにする。
【0013】
本明細書において「球形になる(to bead)」という動詞は、パンケーキ状または円盤状のフィルムを径方向に収縮させ、かつ厚みを増さしめて、玉(bead)、つまり、略球形の小球を形成するような、表面張力の作用を表すのに用いられる。
【0014】
着色剤は、顔料、染料またはこれらの組み合わせであり得る。特に、着色剤は、少なくとも10nm、また最大で300nmの平均粒子径D50を有する顔料であり得るが、このような範囲は、各インクの色によって変化し得るものであり、一部の実施形態では、顔料は、最大で200nmまたは最大で100nmのD50を有し得る。
【0015】
中間転写部材上の疎水性の外面は、これが残留フィルムの基材への最終的な転写を助ける際には望ましい。しかしながら、このような疎水性の外面または剥離層は、インク画像形成の間には望ましくなく、それは、球状のインク液滴が高速に移動する中間転写部材によって安定に運ばれ得ないため、また、それらがより厚いフィルムになって、基材の表面の被覆率が低下するためである。本発明は、中間転写部材の表面の疎水性にもかかわらず、中間転写部材の表面への衝突の際におけるインク液滴の平坦化によって生じた、各インク液滴の薄いパンケーキ形を維持する、または凝固させることを目指す。
【0016】
この目的を達成するために、本発明は、インクにおける帯電した分子と、中間転写部材の外面における帯電した分子との間の分子間力に基づくものであり、これらの静電相互作用は、ファンデルワールス力としても知られている。インクにおける分子と、中間転写部材の外面における分子とは、互いに帯電可能であり、相互作用の際に反対に帯電され得、交差分極プロセスは誘導とも呼ばれ、あるいはこれらは、このような相互作用の前から反対の電荷であり得る。
【0017】
「仕事関数」または「表面エネルギー」は、表面から電子が放出され得る容易さの尺度である。シリコーンでコーティングされた表面などの従来型の疎水性表面は、容易に電子を与え、負に帯電しているとされる。水性キャリア中のポリマー樹脂は、同様に、一般に、負に帯電している。したがって、追加的なステップが採用されることがなければ、全分子間力は、中間転写部材にインクをはじかせ、液滴は、球状の小球へと球形になりやすい。
【0018】
本発明の一部の実施形態では、中間転写部材の表面の化学組成は、正電荷となるように改変される。例えば、1つまたは2つ以上のブレンステッド塩基官能基を有する中間転写部材分子の表面を含めること、また特別な窒素含有分子を含めることによって、このことは達成され得る。適切な正に帯電した、あるいは正帯電性の原子団には、第一級アミン、第二級アミン、および第三級アミンが含まれる。このような原子団は、ポリマー骨格に共有結合され得、例えば、中間転写部材の外面は、アミノシリコーンを備える。
【0019】
このような正帯電性の剥離層の分子の官能基は、インクの分子のブレンステッド酸官能基と相互作用し得る。適切な負に帯電した、または負帯電性の原子団には、例えば、カルボン酸基(-COOH)、アクリル酸基(-CH2=CH-COOH)、メタクリル酸基(-CH2=C(CH3)-COOH)を有するカルボキシル化された酸、および、例えば、スルホン酸基(-SO3H)を有するスルホン酸塩が含まれる。このような原子団は、ポリマー骨格に共有結合され得、好ましくは、水溶性または水分散性である。適切なインク分子は、例えば、カルボン酸官能基を有するアクリル重合体およびアクリル-スチレン共重合体などのアクリル系樹脂を備え得る。
【0020】
化合物を転写部材内に取り込ませて、各液滴の外皮を中間転写部材の表面に可逆的に付着させることは、明らかな利点を有するが、今日までに見出されている適切な化合物(例えば、アミノシリコーン)は、高い動作温度に耐えるのに限られた能力しか持ちえず、より低温で動作するように、あるいは高温の期間を短くした状態に印刷プロセスが改善されない限り、最終的に転写部材の寿命を短くする。
【0021】
本発明の一部の実施形態で導入される、中間転写部材の負に帯電した疎水性の表面によってインク液滴がはじかれないようにするための代替策は、中間転写部材の表面に調整/処理溶液を塗布して、その極性を正に反転することである。中間転写部材のこのような処理を、正電荷の非常に薄い層を塗布しているとみなすことができ、これは、それ自体が中間転写部材の表面内に吸収されるが、その反対側に、負に帯電したインクの分子が相互作用し得る正味の正電荷を呈する。
【0022】
このような調整溶液の調合に適する化学物質は、比較的高電荷密度であり、同じである必要はなく、組み合わせされ得る複数の官能基にアミン窒素原子を含有するポリマーであり得る(例えば、第一級、第二級、第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩)。分子量が数百から数千の巨大分子は、適切な調整剤であり得るが、10,000g/モルまたはそれ以上の高い分子量のポリマーは好ましいと考えられている。適切な調整剤には、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピル-トリモニウムクロリド、線状または分岐ポリエチレンイミン、改質ポリエチレンイミン、ビニルピロリドンジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体、ビニルカプロラクタムジメチルアミノプロピルメタクリルアミドヒドロキシエチルメタクリレート、四級化ビニルピロリドンジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリ(ジアリルジメチル-アンモニウムクロリド)、ポリ(4-ビニルピリジン)およびポリアリルアミンが含まれる。
【0023】
ポリエチレンイミン(PEI)などの高電荷密度の化学物質は、中間転写部材の表面に衝突した後にインク液滴が球形になるのを阻止するのに、特に有効であることが分かってきた。
【0024】
化学物質は、希薄溶液として、好ましくは、水溶液として塗布され得る。溶液は、インク液滴が実質的に乾燥した表面上に向けられるインク画像形成の前に、加熱されて溶媒を蒸発させる。
【0025】
単一の希薄PEI溶液の液滴が、疎水性の表面上に滴下された後、直ちに高圧空気流によって吹き飛ばされて蒸発させられる場合、インク液滴は、その後にのみ、このように短時間であっても、希薄PEI溶液と接触した表面の一部分上に球形になることなく付着することが実験的に判明している。このような塗布は、ごくわずかな分子の厚さを有する層のみを残すことができ(おそらく単分子層)、インクとの相互作用は、PEI層の質量とインク液滴の質量との間の著しい差を考慮すると、化学量論的な化学的相互作用では有り得ない。
【0026】
インク中の粒子をわずかな数以上に引きつけるには、転写部材上の電荷の量が少なすぎるため、液滴中の粒子の濃度および分布は実質的に変化しないと考えられる。さらに、このような相互作用が起こり得る期間は、比較的短く、最大で数秒であり、一般に1秒未満である。
【0027】
驚くべきことに、分子間引力が、安定後の液滴の形状に重大な影響を持つことが分かった。パンケーキ状または円盤状の形状から球形の小球に戻るには、表面張力は、インク液滴の外皮を、中間転写部材の表面から剥がさなければならない。しかしながら、こうして液滴の表皮を表面から分離することに分子間力が逆らい、その結果は、このような調整なしで同じ表面に付着させた同量の液滴よりも度合いの大きい、比較的平坦なインクの液滴となる。さらに、液滴が到達していない領域では転写部材の効果的な疎水性の性質が維持されることから、最初の衝突の際に達成された分を超える液滴の広がりは、ほとんどない、あるいはまったくなく、液滴の境界ははっきりしている、つまり、インク液滴による中間転写部材の表面の濡れはなく、したがって、定まった円形の輪郭を有する液滴が得られる。
【0028】
本発明による印刷プロセスおよびシステムに適する溶液の調整に関するさらなる詳細は、同時係属中のPCT国際出願第PCT/IB2013/000757号(代理人参照番号第LIP 12/001 PCT)に開示されている。
【0029】
本発明の一部の実施形態では、中間転写部材は、ブランケットであり、その外面は、インク画像が形成される疎水性の外面である。しかしながら、代替的に、中間転写部材をドラムとして構成することもできる。
【0030】
本発明の一部の実施形態の特徴によれば、残留フィルムを基材上に転写する前に、インク画像は、水性キャリアの蒸発後に残る樹脂および着色剤の残留フィルムが軟化する温度に加熱される。ポリマー樹脂を軟化することは、これを粘着性のあるものにし、その以前の転写部材に付着する能力と比べて、その基材に付着する能力を高め得る。
【0031】
中間転写部材上における粘着性の残留フィルムの温度は、基材の温度よりも高いものであり得、それにより、残留フィルムは、基材への付着の際に冷える。
【0032】
残留フィルムの熱レオロジー特性を適切に選択することによって、冷却の効果は、残留フィルムの凝集性を高めるものになり得、それにより、その凝集性がその転写部材への付着性を超えて、実質的にすべての残留フィルムが中間転写部材から分離され、フィルムとして基材上に押しつけられるようにする。このようにして、残留フィルムが、フィルムに覆われた領域やその厚さへの大幅な修正なしで、確実に基材上に押し付けられるようにすることができる。本発明の方法態様を実施するための印刷システムが本明細書にさらに開示される。
【0033】
水性インクを用いて印刷された基材が本明細書にさらに開示され、ここで、印刷された画像が、複数のインクドットで形成され、各インクドットが、実質的に一様な厚さのフィルムによって構成され、印刷された画像が、基材の表面粗さを超えて突き抜けることなく、基材の外面を覆う。平均フィルム厚さは、1500nm、1200nm、1000nm、800nmを超えないこともあり、500ナノメートルまたはそれ未満であり得、また、少なくとも50nm、少なくとも100nm、または少なくとも150nmであり得る。
【0034】
本発明の実施形態では、隣接するインクドットに融合しない画像中の各インクドットは、定まった円形の輪郭を有する。
【0035】
本発明の一部の実施形態の特徴は、インクの組成に関する。インクは、好ましくは水性キャリアを利用し、これは、揮発性の炭化水素キャリアを利用するインクで生じる安全に関する懸念および汚染問題を低減する。概して、インクは、転写部材上に非常に小さい液滴を密集して塗布するのに必要とされる物理的特性を有していなければならない。インクのその他の必要な性質は、以下のプロセスの説明において明らかになる。
【0036】
平坦化された構成に留まる液滴の形状に寄与し得るその他の効果には、液体の粘性を高めるための液滴の迅速な加熱、シリコーン層の疎水性効果を抑制するバリア(ポリマーコーティングまたは調整剤)およびインクの表面張力を抑制する界面活性剤がある。
【0037】
一般に、インクジェットプリンタは、色の純度、表面を完全に覆う能力およびインクジェットノズルの密度の間でトレードオフを要する。(球形になった後の)液滴が小さい場合、完全に覆うには、液滴を密集させる必要がある。しかしながら、液滴をピクセル間の距離よりも接近させるのは非常に問題含み(かつ高価)である。上述のようなやり方で、所定の位置に保持される、比較的平坦な液滴フィルムを形成することによって、液滴によってなされる被覆は完全に近づき得る。
【0038】
本発明の一部の実施形態の態様では、画像中のキャリア液は、転写部材上に形成された後に画像から蒸発させられる。液滴中の着色剤は、液滴内に分散または溶解されるため、この液体を除去するための好適な方法は、転写部材を加熱する、または転写部材上に形成された後、画像を外部から加熱する、あるいはこれらの組み合わせによって、画像を加熱することによる。
【0039】
本発明の一部の実施形態では、キャリアは、転写部材の表面上に加熱気体(例えば、空気)を吹きかけることによって、蒸発させられる。
【0040】
一部の実施形態では、異なるインクの色は、連続的に中間転写部材の表面に塗布され、加熱気体は、それらの付着後であるが、次のインクの色の中間転写部材上への付着前に各インクの色の液滴上に吹きかけられる。このようにして、異なる色のインク液滴が互いに混じりあうことが抑制される。
【0041】
本発明の好適な実施形態では、インク中のポリマー樹脂は、加熱される時に残留フィルムを形成するポリマーである(本明細書において、残留フィルムの語は、乾燥後のインク液滴を指すのに用いられる)。平均分子量約60,000g/モルのアクリル重合体およびアクリル-スチレン共重合体が適することが分かっている。本発明による印刷プロセスおよびシステムに適する非限定的なインク組成物の例に関するさらなる詳細は、同時係属中のPCT国際出願第PCT/IB2013/051755号(代理人参照番号第LIP 11/001 PCT)に開示されている。
【0042】
好ましくは、すべての液体が蒸発させられるが、フィルムの形成に干渉しない少量の液体が存在し得る。
【0043】
残留フィルムの形成には、多くの利点がある。これらのうちの1つ目は、画像が最終基材に転写される際、すべて、またはほとんどすべての画像が転写され得ることである。これにより、取り外せない方法で連結される、残留物を転写部材から除去するための洗浄機構のないシステムが可能になる。より重大な別の利点は、基材を覆う画像の厚さが一定の状態で、画像が基材に付着するのを可能にすることである。加えて、画像が基材の表面下に侵入するのを阻止する。
【0044】
一般に、画像が転写される、または基材上に形成される場合、液体のままでは、画像が基材の繊維内およびその表面下に侵入する。このことは、着色剤の一部が繊維に阻まれるために、色むらや色深度の低下を引き起こす。
【0045】
本発明の好適な実施形態によれば、残留フィルムは非常に薄く、好ましくは1500ナノメートル未満、より好ましくは10nmおよび800nmの間、より好ましくは50nmおよび500nmの間である。このような薄膜は、完全なままで基材に転写され、非常に薄いことから、基材の表面を、その凹凸に密接に追従することによって、再現する。このことは、印刷された領域と印刷されていない領域との間における基材の光沢の差がはるかに少ないという結果となる。
【0046】
残留フィルムが、中間転写部材から最終基材に転写される印圧付与機構に到達すると、好ましくは前もって基材に付着するために粘着性を生じる温度に加熱されて、基材に押し付けられる。
【0047】
好ましくは、基材は、一般に加熱されず、画像を冷却して、凝固させ、中間転写部材の表面に残留フィルムを一切残すことなく基材に転写する。この冷却を有効にするために、インク中のポリマーには追加的な制約が加えられる。
【0048】
キャリアを水性キャリアと称する事実は、インクにおける特定の有機材料、特に、無害な水混和性有機材料および共溶媒の両方、またはいずれか一方の存在を排除することを意図するものではないが、実質的にインクにおける揮発性材料のすべては、好ましくは水である。
【0049】
中間転写部材の外面は、疎水性であり、ひいては吸水しないため、シリコーンでコーティングされた転写部材および炭化水素キャリア液体を用いる市販製品の転写部材の表面を変形させることが分かった膨張は、実質的に存在し得ない。結果として、上に説明したプロセスは、従来技術の中間転写部材の表面に比べて、非常に滑らかな剥離面を達成し得る。
【0050】
画像転写面が疎水性であり、ひいては吸水しないため、基材が濡れないようにすべき場合、実質的にすべてのインク中の水が蒸発させられるはずである。
【0051】
ここで、例として、添付の図面を参照しながら、本発明はさらに説明され、図面に示される構成要素および特徴の寸法は、説明の簡便さおよび明確さのために選択されており、必ずしも原寸に比例していない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の実施形態によるプリンタの概略分解斜視図である。
【
図2】
図1のプリンタの概略縦断面図である。ここで、様々なプリンタの構成要素は、原寸に比例していない。
【
図3】本発明の実施形態による、ブランケットを取り外した状態のブランケット支持システムの斜視図である。
【
図4】その内部構成を示す
図3のブランケット支持システムの断面図である。
【
図5】本発明の実施形態による、連続的な巻取基材上に印刷するためのプリンタの概略斜視図である。
【
図6】覆いを取り外した状態の
図1の印刷システムの斜視図である。
【
図7】
図6の可動式ガントリのためのロック機構の概略図である。
【
図8】覆いおよび表示スクリーンが所定の位置にある状態の印刷システムの概略斜視図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態による、本発明の印刷システムの概略図である。
【
図10】ブランケットの端部間に不連続部内にローラを有する
図9の実施形態で用いられる加圧胴の斜視図である。
【
図11】ベルトが形成される条片の平面図である。条片が、その縁部に沿って、ベルトを案内する際に助けるための歯を有する。
【
図12】
図11のベルトの歯をその中に受ける案内部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
全体の概要
図1および
図2のプリンタは、3つの別個の、互いに作用するシステム、すなわち、ブランケットシステム100と、ブランケットシステム100の上方の画像形成システム300と、ブランケットシステム100の下方の基材搬送システム500とを基本的に備える。
【0054】
ブランケットシステム100は、中間転写部材として働き、2つのローラ104、106の上に案内されるエンドレスベルトまたはブランケット102を備える。水性インクのドットで作られる画像は、画像形成システム300によって、本明細書において画像形成機構と呼ばれる場所で、ブランケット102の上側走行面(run)に塗布される。下側走行面は、基材搬送システム500の2つの圧胴502および504と、2つの印圧付与機構において選択的に相互作用して、ブランケット102と、それぞれの圧胴502、504との間においてそれぞれの加圧ローラまたはニップローラ140、142の作用により、画像を基材上に押し付ける。後に説明するように、2つの圧胴502、504があることの目的は、両面印刷を可能にすることである。単純なプリンタの場合、1つの印圧付与機構のみが必要とされる。
図1および
図2のプリンタは、両面印刷物の印刷速さの2倍の速さで片面の印刷物を印刷できる。加えて、片面印刷物と両面印刷物とが混ざったロットもまた印刷できる。
【0055】
動作中、インク画像は、このそれぞれが、最終基材上に押し付けられる画像の鏡像であるのだが、画像形成システム300によってブランケット102の上側走行面上に印刷される。ここで、「走行面(run)」の語は、ブランケットが案内される任意の2つのローラ間のブランケットの長さまたは部分である。ブランケット102によって運ばれる間に、インクを加熱して、液体キャリアのすべてではないにしてもほとんどの蒸発により、これを乾燥する。インク画像は、さらに加熱されて、液体キャリアの蒸発後に残っているインク固形物のフィルムを粘着性にする。このフィルムは、各インク液滴から形成される液体フィルムと区別するために、残留フィルムと呼ばれる。圧胴502、504において、基材搬送システム500によって、入力スタック506から圧胴502、504を介して出力スタック508に搬送される個々の枚葉基材501に、画像が押し付けられる。
【0056】
図示されていないが、ブランケットシステムは、定期的に、または印刷ジョブの間にブランケットを「リフレッシュ」するのに用いられ得る洗浄機構をさらに備える。洗浄機構は、任意の残留インク画像または任意のその他の剥離層からの粒子の跡を穏やかに除去するように構成される1つまたは2つ以上の装置を備え得る。一実施形態では、洗浄機構は、転写部材の表面に洗浄液を塗布するように構成される装置、例えば、洗浄液をその周囲上に有するローラを備え得、これは、好ましくは交換可能であるべきである(例えば、パッドまたは一片の紙)。残留粒子は、オプションで、吸収性のローラによって、または1つまたは2つ以上の掻き取り刃によってさらに除去され得る。
【0057】
画像形成システム
図5に最もよく示されているように、画像形成システム300は、ブランケット102の表面に、一定の高さに位置するフレーム304上にそれぞれが取り付けられる印刷バー302を備える。各印刷バー302は、ブランケット102上の印刷領域と同じくらいの幅であり、個別に制御可能なプリントノズルを備える一片の印刷ヘッドを備え得る。画像形成システムは、任意の数のバー302を有することができ、これらのそれぞれは、異なる色の水性インクを収容し得る。
【0058】
一部の印刷バーは、特定の印刷ジョブの間には必要とされないこともあるため、ヘッドは、ブランケット102の上に横たわる作動位置と、非作動位置との間を移動し得る。印刷バー302を、それらの作動および非作動位置の間で移動するための機構が提供されるが、印刷プロセスに関係しないため、機構は図示されておらず、本明細書に説明する必要もない。なお、バーは、印刷中には、静止したままである。
【0059】
それらの非作動位置に移動した時、印刷バーは、保護のために、また印刷バーのノズルが乾燥したり動きが妨げられたりするのを防ぐために覆われる。本発明の実施形態では、印刷バーは、この作業を補助する液体槽(図示せず)の上方で停止される。別の実施形態では、例えば、ノズルリムを取り囲んで形成される残留インク付着物を除去することによって、印刷ヘッドは、洗浄される。このような印刷ヘッドのメンテナンスは、ノズルプレートの密着拭き取りから、離れた所からのノズルへの洗浄溶液の吹き付け、および陽圧または陰圧の空気による洗浄したインク付着物の除去にわたる任意の適切な方法で達成され得る。非作動位置にある印刷バーは、その他の印刷バーを用いて印刷ジョブが進行中であっても、メンテナンスのために容易に交換およびアクセスされ得る。
【0060】
各印刷バー内では、インクは、常に、再循環され、濾過され、脱気され、また所望の温度および圧力に維持される。印刷バーの設計は従来式であってもよく、あるいは少なくともその他のインクジェット印刷用途で用いられる印刷バーに類似であってもよいことから、それらの構成および動作は、より詳細な説明がなくとも当業者には明らかである。
【0061】
異なる印刷バー302がブランケットの長さに沿って互いに離間していることから、ブランケット102の動きと正確に同期されることがそれらの動作にとってもちろん重要である。
【0062】
所望の場合、
図9の本発明の実施形態に関連して以下に説明されるように、各印刷バー302に追従して、中間転写部材上に高温の気体流、好ましくは空気流を吹き出して、印刷バー302により付着させられたインク液滴の乾燥を開始する送風機を提供することもできる。このことは、各印刷バー302により付着させられた液滴を固定するのを助ける、つまり、それらの収縮に逆らい、中間転写部材上におけるそれらの移動を阻止し、引き続いてその他の印刷バー302により付着させられた液滴に混じりあうのを阻止する。
【0063】
ブランケットおよびブランケット支持システム
ブランケット102は、本発明の一実施形態では、継ぎ目を有する。特に、ブランケットは、最初は平坦な条片から形成され、この端部が取り外し可能または取り外し不可能に互いに留められて、連続的なループを形成する。取り外し可能な締結部は、ジッパーまたは面ファスナであり得、これは、ブランケットが案内されるローラ104および106の軸に対して実質的に平行に置かれる。取り外し不可能な締結部は、接着剤またはテープを用いることにより達成され得る。
【0064】
シーム部がこれらのローラ上を通過する時に、ブランケットの張力の急激な変化を避けるために、ブランケットの残りの部分と同じ厚さのシーム部を、可能な限り近づけて作ることが望ましい。ローラの軸に対してシーム部を傾斜させることもできるが、このことは、印刷不可能画像領域を拡大するという犠牲を伴う。
【0065】
あるいは、ブランケットは継ぎ目なしであり得、それ故、印刷システムからの特定の制約を緩和する(例えば、シーム部の位置の同期)。継ぎ目の有無によらず、ブランケットの主な目的は、インク画像を画像形成システムから受けて、乾燥しているが乱されていないその画像を印圧付与機構に転写することである。各印圧付与機構でインク画像を容易に転写できるように、ブランケットは、疎水性の薄い上側剥離層を有する。インクが塗布され得る転写部材の外面は、シリコーン材料を備え得る。適切な条件下で、シラノール、シリルまたはシラン修飾または終端処理されたポリジアルキルシロキサンシリコーン材料およびアミノシリコーンがよく機能することが分かっている。しかしながら、選択された材料が転写部材から最終基材への画像の剥離を可能とする限り、シリコーンの正確な配合は重要ではない。非限定的な剥離層および中間転写部材の例に関するさらなる詳細は、同時係属中のPCT国際出願第PCT/IB2013/051743号(代理人参照番号第LIP 10/002 PCT)および第PCT/IB2013/051751号(代理人参照番号第LIP 10/005 PCT)に開示されている。好適には、剥離層を形成する材料は、吸水しないようにすることができる。
【0066】
一部の実施形態では、シラノール終端処理ポリジアルキルシロキサンシリコーンは、次式で表され得る。
【化1】
ここで、R1からR6は、それぞれ独立に、飽和もしくは不飽和の、線状、分岐もしくは環式のC
1からC
6までのアルキル基であり、R7は、OH、Hまたは飽和もしくは不飽和の、線状、分岐もしくは環式のC
1からC
6までのアルキル基からなる群から選択され、nは、50から400までの整数である。
【0067】
硬化性シリコーンは、縮合硬化によって硬化され得る。
【0068】
好ましくは、剥離層の材料は、インクのキャリア液、またはその外面に塗布され得る任意のその他の流体のキャリア液によって、転写部材が膨張しない(または溶媒和されない)ように選択される。一部の実施形態では、剥離層の膨張は、最大で1.5重量%または最大で1%であり、膨張は、20時間100℃で評価された。
【0069】
ブランケットの強度は、支持層または補強層に由来し得る。一実施形態では、補強層は、生地から形成される。生地が織物の場合、生地の縦糸および横糸は、異なる組成または物理的構造を有して、ブランケットの弾性が、以下に説明される理由のために、好ましくは実質的に非伸縮性であるその長さ方向よりも、その幅方向(ローラ104および106の軸に対して平行)において大きくなるようにし得る。一実施形態では、補強層の長手方向の繊維は、実質的に印刷方向に合わせられ、高性能繊維で作られる(例えば、アラミド、カーボン、セラミック、ガラスファイバなど)。
【0070】
ブランケットは、補強層および剥離層の間に追加の層を備えて、例えば、基材の表面に対する剥離層のなじみ性および圧縮性を提供し得る。ブランケットの上に提供されるその他の層は、蓄熱部または部分的熱バリアとして、または剥離層に静電荷が付与されるのを可能にする、あるいはこれらの組み合わせとして作用する。その支持構造上で回転される際のブランケット上の摩擦抵抗を制御するために、内層がさらに提供され得る。前述の層を互いに付着または接続するために、またはそれぞれの間で分子の移動を阻止するために、その他の層が含まれ得る。
【0071】
図1の実施形態におけるブランケットを支持する構造が、
図3および
図4に示されている。2つの細長い張り出し部(outrigger)120は、複数の横梁122によって相互に連結されて、水平な梯子状のフレームを形成し、その上に残りの構成要素が取り付けられる。
【0072】
ローラ106は、張り出し部120上に直接取り付けられる軸受において軸支される。一方、反対側の端部では、ローラ104は、張り出し部120に対する摺動動作のために案内されるピローブロック124において軸支される。モータ126、例えば、電気モータは、ステッピングモータであってもよいのだが、適切なギアボックスを介して働いて、ローラ104および106の軸が互いに平行であるように保ちながら、それらの間の距離を変えるように、ピローブロック124を動かす。
【0073】
熱伝導性の支持板130は、横梁122の上に取り付けられて、支持フレームの上側および下側の両側に、連続する平坦な支持面フレームを形成する。個々の支持板130間の接合部は、ブランケット102の長さに平行に走る線が生じないように、互いに意図的にずらされる(例えば、ジグザグ形にされる)。電気加熱要素132は、板130の横孔内に挿入されて、板130に、さらに板130を介してブランケット102の上側走行面に熱を加える。その他の上側走行面を加熱手段が当業者には想到されるはずであり、下方から、上方から、または内部からの加熱を含み得る。板の加熱はまた、少なくとも転写が起こるまでは、ブランケットの下側走行面を加熱するように働き得る。
【0074】
また、ブランケット支持フレーム上には、2つの圧力またはニップローラ140、142が取り付けられる。加圧ローラは、支持フレームの下側、支持フレームを覆う支持板130間の隙間に配置される。加圧ローラ140、142は、
図2および
図5に最も明瞭に示されるように、基材搬送システムの圧胴502、504にそれぞれ位置合わせされる。各圧胴および対応する加圧ローラは、以下に説明するように連携させる場合、印圧付与機構を形成する。
【0075】
加圧ローラ140、142のそれぞれは、好ましくは、ブランケットの下側走行面から上下させ得るように取り付けられる。一実施形態では、各加圧ローラは、それぞれのアクチュエータ150、152によって回転可能な偏心器上に取り付けられる。そのアクチュエータによって支持フレーム内の上方位置に上昇させられると、各加圧ローラは、対向する圧胴から離間させられ、ブランケットが、圧胴自身とも圧胴によって搬送される基材とも接触することなく、圧胴のそばを通り過ぎることができるようにする。他方、そのアクチュエータによって下方に移動させられる場合、各加圧ローラ140、142は、隣接する支持板130の平面を超えて、下方に突出し、ブランケット102の一部分を変形させ、これを対向する圧胴502、504に対して押し付ける。この下方の位置において、これは、インプレッションローラ(または
図5の実施形態の巻取基材)上で搬送される最終基材に対して、ブランケットの下側走行面を押す。
【0076】
ローラ104および106は、それぞれの電気モータ160、162に接続される。モータ160は、より強力であり、ブランケットを
図3および
図4にみられるように、時計回りに駆動するように働く。モータ162は、トルク反作用を提供し、ブランケットの上側走行面における張力を調整するのに用いられ得る。ブランケットの上側および下側走行面において同じ張力が維持される実施形態では、モータは、同じ速度で動作し得る。
【0077】
本発明の代替的な実施形態では、モータ160および162は、インク画像が形成されるブランケットの上側走行面では、より高い張力を維持し、ブランケットの下側走行面では、より低い張力を維持するように操作される。下側走行面のより低い張力は、ブランケット102の圧胴502および504への突然の係合および係脱によって生じた急な摂動を吸収するのを助ける。
【0078】
当然のことながら、本発明の実施形態では、加圧ローラ140および142は、ローラの両方、どちらか一方または一方のみが、下方の位置にあり、そのそれぞれの圧胴およびその間を通過するブランケットに係合するように、独立に下降および上昇され得る。
【0079】
本発明の実施形態では、扇風機または送風機(図示せず)がフレームに取り付けられて、ブランケットおよびその支持フレームによって周囲を囲まれる体積166において大気圧より低い圧力を維持する。陰圧は、良好な熱的接触を達成するために、フレームの上側および下側の両側の支持板130に対して、ブランケットを平坦に保つように働く。ブランケットの下側走行面が、ややたるむように取り付けられる場合、陰圧はまた、加圧ローラ140、142が作動していない場合、ブランケットが、圧胴に接触しないようにするのを助ける。
【0080】
本発明の実施形態では、張り出し部120のそれぞれはまた、連続トラック180を支持し、これは、ブランケットの側縁部上の構造に係合して、ブランケットをその幅方向にピンと張った状態に保つ。構造は、片側をブランケットの側縁部に縫い付け、またはその他の方法で取り付けたジッパーの務歯などの間隔を空けた突出部であり得る。あるいは、構造は、ブランケットよりも厚みのある連続的な可撓性の玉であり得る。横方向トラック案内溝は、ブランケットの横方向構造を受けて保持し、ピンと張った状態を保つのに適する任意の断面を有し得る。摩擦を低減するために、案内溝は、転がり軸受要素を有して、突出部または玉を溝内に保持し得る。
【0081】
ブランケットをその支持フレーム上に取り付けるために、本発明の一実施形態によれば、トラック180に沿って入口点が提供される。ブランケットの一端が横方向に伸ばされ、その縁部上の構造が、入口点を通って、トラック180内に挿入される。ブランケットの縁部上の構造に係合する適切な器具を用いて、ブランケットを支持フレームを一周するまでトラック180に沿って前進させる。次いで、ブランケットの端部は、互いに締結されて、エンドレスループまたはベルトを形成する。次いで、ローラ104および106は離されて、ブランケットに張力をかけ、これを所望の長さに伸ばす。トラック180の部分は、伸縮自在に折り畳み可能であって、ローラ104および106の間の距離が変わるのに応じて、トラックの長さが変化できるようにする。
【0082】
一実施形態では、ブランケットの細長い条片の端部は、有利な形状にされて、据え付け時に、横方向トラックまたは溝を通るブランケットの案内を助ける。ブランケットを所定位置につけるための最初の案内は、例えば、横方向の溝180の間に最初に導かれるブランケット条片の前縁部を、ベルトを据え付けるために手動または自動で移動され得る紐に固定することによってなされ得る。例えば、一方または両方のブランケット前縁部の横方向の端部は、各溝内に存在する紐に取り外し可能に取り付けられる。紐(複数可)を前進させると、ブランケットが溝の経路に沿って前進する。代替的または追加的に、両方の縁部が互いに固定される際に、最終的にシーム部を形成する領域にあるベルトの縁部は、シーム部以外の領域よりも低い可撓性を有し得る。この局所的な「剛性」は、ブランケットの横方向突出部をそれらのそれぞれの溝内に挿入するのを容易にし得る。
【0083】
続く据え付けでは、ブランケット条片は、はんだ付け、糊付け、テーピング(例えば、結合条片が条片の両方の縁部に重なる状態で、Kapton(登録商標)テープ、RTV液体接着剤またはPTFE熱可塑性接着剤を用いる)、または任意のその他の一般に知られる方法によって、縁部と縁部とを合わせて接着されて、連続的なベルトループを形成し得る。ベルトの端部を接合するいかなる方法も、本明細書においてシーム部と呼ばれる不連続性を生じ得、厚さの増加、あるいはシーム部におけるベルトの化学的特性および機械的特性の両方、またはいずれか一方の不連続性を回避することが望ましい。
【0084】
本発明の印刷システム、ならびにこれを据え付ける方法において用いられ得るブランケットまたはベルトに適する構成の非限定的な例に関するさらなる詳細は、同時係属中のPCT国際出願第PCT/IB2013/051719号(代理人参照番号第LIP 7/005 PCT)に開示されている。
【0085】
画像がブランケット上に適切に形成され、最終基材に転写されるために、また、両面印刷における表面および裏面の画像の位置合わせを達成するために、多くの異なるシステムの要素が適切に同期しなければならない。画像をブランケット上に適切に配置するためには、ブランケットの位置および速度を把握かつ制御しなければならない。本発明の実施形態では、ブランケットは、その縁部またはその縁部付近に、ブランケットの移動方向に離間する1つまたは2つ以上のマーキングで印を付けられる。1つまたは2つ以上のセンサ107は、これらのマーキングがセンサを通過すると、そのタイミングを感知する。画像を転写ブランケットから基材に適切に転写するためには、ブランケットの速度と、インプレッションローラの表面の速度とは、同じでなければならない。センサ(複数可)107からの信号は、コントローラ109に送信される。コントローラはまた、例えば、インプレッションローラ(図示せず)の一方または両方の軸上のエンコーダから、インプレッションローラの回転速度および角度位置の示度をも受信する。センサ107、または別のセンサ(図示せず)はまた、ブランケットのシーム部がセンサを通過する時間を判定する。ブランケットの使用可能な長さを最大限に利用するためには、ブランケット上の画像は、シーム部にできる限り近づけて開始することが望ましい。
【0086】
コントローラは、電気モータ160および162を制御して、ブランケットの線速度が、インプレッションローラの表面の速度と確実に同じになるようにする。
【0087】
ブランケットは、シーム部に由来する使用できない領域を含むため、ブランケットの連続サイクルにおいて、この領域が確実に印刷された画像に対して常に同じ位置に保たれるようにすることが重要である。また、シーム部が圧胴を通過する時はいつでも、(以下に説明する基材把持部を収容する)圧胴の表面における不連続が確実に加圧ブランケットに面する時間と常に一致させることが好ましい。
【0088】
好ましくは、ブランケットの長さは、圧胴502、504の周囲の長さの整数倍となるように設定される。圧胴が2枚の基材を収容し得る実施形態では、ブランケットの長さは、圧胴の周囲の長さの半分の整数倍であり得る。ブランケット102の長さは時とともに変化するため、好ましくは、ブランケットの速度を瞬間的に変えることによって、インプレッションローラに対するシーム部の位置が変更される。同期が再び達成された場合、ブランケットの速度は、圧胴502、504に係合していない時に、インプレッションローラの速度に一致するように再び調整される。ブランケットの長さは、ブランケットが測定上完全に一周する間に、ローラ104、106のうちの一方の回転を測定するシャフトエンコーダにより決定され得る。
【0089】
コントローラはまた、印刷バーへのデータの流れのタイミングを制御し、印刷の技術分野における当業者に知られるような、印刷システムの任意のオプションのサブシステムの適切なタイミングを制御し得る。
【0090】
この速度、位置およびデータフローの制御は、画像形成システム300、基材搬送システム500およびブランケットシステム100の間の同期を確実にし、最終基材上の適切な位置のためのブランケット上の正しい位置で、画像が確実に形成されるようにする。ブランケットの位置は、ブランケットの長さに沿って異なる位置に取り付けられた複数のセンサ107によって検出される、ブランケットの表面上のマーキング手段によって監視される。これらのセンサの出力信号は、印刷バーに対して、画像転写面の位置を示すために用いられる。センサ107の出力信号の解析は、モータ160および162の速度を制御するためにさらに用いられて、これを圧胴502、504に一致させる。
【0091】
その長さが同期における要因であることから、ブランケットは、伸長およびクリープに耐えることが求められる。他方、横断方向においては、支持板130との摩擦に起因する過度な抵抗を生じることなく、ブランケットを平らに、ピンと張った状態に保つことだけが求められる。本発明の実施形態において、ブランケットの弾性が意図的に異方性にして作られるのは、このためである。
【0092】
ブランケットの前処理
図1は、本発明の実施形態による、ブランケットの外部で、ローラ106のすぐ手前に配置されたローラ190を概略的に示している。このようなローラ190は、オプションで用いられて、化学物質、例えば、帯電したポリマーの希薄溶液を含有する前処理溶液の薄膜を、ブランケットの表面に塗布し得る。フィルムは、好ましくは、画像形成システムの印刷バーに到達する時間には完全に乾いていて、ブランケットの表面上に非常に薄い層を残す。この層は、インク液滴が、ブランケットの表面に衝突した後、そのフィルム状の形状を維持するのを助ける。
【0093】
平坦なフィルムを塗布するのにローラが用いられ得る一方で、代替的な実施形態では、前処理または調整材料がブランケットの表面上に吹き付けられ、例えば、エアナイフからの噴流、散布による霧雨または流体源(fountain)からの振動の適用によって、より平らに広がる。前処理溶液は、そこに触れさせた後、すぐに転写部材から除去され得る(例えば、拭き取ることにより、またはエアフローを用いて)。オプションの調整溶液を塗布するのに用いた方法とは関係なく、必要に応じて、このようなプレプリント処理が行われ得る位置は、本明細書において調整機構と呼ばれ得る。
【0094】
塗布される化学物質の目的は、ブランケットの疎水性の剥離層との接触の際に、水性インクの表面張力の影響を打ち消すことである。このような前処理化学物質、例えば、ポリエチレンイミンなどのなんらかの帯電したポリマーは、転写部材のシリコーン表面に(少なくとも一時的に)結合して、正に帯電した層を形成すると考えられる。しかしながら、このような層に存在する電荷の量は、液滴自体の電荷の量よりもはるかに少ないと考えられる。発明者らは、非常に薄い層、おそらく分子の厚さの層でさえ十分であることを見出した。この転写部材の前処理の層は、非常に希薄な適切な化学物質の形態で塗布され得る。最終的に、この薄い層は、押し付けられる画像と共に基材上に転写される。
【0095】
液滴が転写部材上に衝突した時、液滴のモーメントが、それを比較的平坦な体積に広げる。従来技術においては、この液滴の平坦化は、液滴の表面張力と、転写部材の表面の疎水性の性質との組み合わせによって、ほとんど瞬時に打ち消される。
【0096】
本発明の実施形態では、インク液滴の形状は、「凝固され」て、衝突で生じた液滴の平坦化および水平方向への拡張の少なくとも一部、また好ましくは大部分が維持されるようにする。当然のことながら、衝突後の液滴の形状の復元は非常に速いため、従来技術の方法は、凝集、または凝固、または移動、あるいはこれらの組み合わせによる相変化をもたらさない。
【0097】
衝突の際、転写部材上の正電荷が、部材の表面にすぐ隣接する負に帯電したインク液滴のポリマー粒子を引きつけると考えられる。液滴が広がると、広がった液滴と転写部材との間の界面全体に沿って、この効果が起こる。
【0098】
粒子をわずかな数以上に引きつけるには、電荷の量が少なすぎるため、液滴中の粒子の濃度および分布は実質的に変化しないと考えられる。さらに、インクが水性であることから、正電荷の影響は、特に、液滴の形状を凝固させるのにかかる極短時間では、極めて局所的である。
【0099】
出願者らは、ローラを用いてポリマーで中間転写部材をコーティングすることが、液滴を凝固させるのに効果的な方法であることを見出したが、吹き付け、またはその他の方法で化学的に正電荷を中間転写部材に運ぶこともまた、はるかに複雑なプロセスであるが、可能であると考えられる。
【0100】
本発明の代替的な実施形態では、インク液滴が収縮する傾向は、液滴の外皮が剥離層の表面から剥がれ落ちるのに逆らうように働く分子間引力を確立するような、インクおよびブランケット上の剥離層のうちの一方または他方の化学組成の適切な選択によって打ち消される。
【0101】
選択される前処理溶液の平均厚さは、初期塗布、オプションの除去および乾燥した段階の間で変わり得、一般に、1000ナノメートル未満、800nm未満、600nm未満、400nm未満、200nm未満、100nm未満、50nm未満、20nm未満、10nm未満、5nm未満、または2nm未満である。
【0102】
インク画像の加熱
支持板130内に挿入される加熱器132は、インクキャリアの迅速な蒸発に適し、ブランケットの組成に適合する温度にブランケットを加熱するために用いられる。例えば、シラノール、シリル、またはシラン修飾または終端処理されたポリジアルキルシロキサンシリコーンを剥離層に備えるブランケットでは、加熱は、一般に、150℃のオーダーであるが、この温度は、インクおよび必要であれば整溶液の両方、またはいずれか一方の組成などの様々な要因に応じて120℃から180℃の範囲内で変わり得る。アミノシリコーンを備えるブランケットは、一般に、70℃から130℃の間の温度に加熱され得る。説明した転写部材の下方からの加熱を用いる場合、ブランケットは、比較的高い熱容量および低い熱伝導率を有して、オプションの前処理または調整機構と、画像形成機構と、印圧付与機構(複数可)との間で、ブランケット102の本体の温度が大幅に変化しないようにすることが望ましい。転写表面によって運ばれるインク画像を異なるレートで加熱するには、例えば、インク残留物を粘着性の状態にする印圧付与機構に到達する前、必要に応じて調整剤を乾燥する画像形成機構の前、およびブランケットの表面に衝突後できるだけ早くインク液滴からキャリアを蒸発させ始める画像形成機構の前に、外部加熱器またはエネルギー源(図示せず)が用いられ得る。
【0103】
外部加熱器は、例えば、(
図1に概略的に示されるような)高温気体または空気の送風機306、あるいは、例えば、赤外線放射をブランケットの表面に集中させる放射放熱器であり得、これは、175℃、190℃、200℃、210℃、または220℃さえ超える温度に到達し得る。
【0104】
紫外線に感光する成分を含有するインクの場合、インクがブランケットによって運ばれる際、インクの硬化を助けるために紫外線源が用いられ得る。
【0105】
基材搬送システム
基材搬送は、
図1および
図2の実施形態の場合、個々の枚葉基材を印圧付与機構に搬送するように、あるいは
図5に示されるように、連続的な巻取基材を搬送するように設計される。
【0106】
図1および
図2の場合、個々の枚葉紙は、例えば、往復動アームによって、入力スタック506の頂部から枚葉紙を第1の圧胴502に供給する第1の搬送ローラ520に送られる。
【0107】
図示されていないが、それ自体知られる、様々な搬送ローラおよび圧胴は、各枚葉基材の前縁部を持つために、カム操作されて、それらの回転に同期して適宜開閉する把持部を組み込み得る。本発明の実施形態では、少なくとも圧胴502および504の把持部の先端は、胴の外面を超えて突出しないように設計されて、ブランケット102に損傷を与えないようにする。
【0108】
圧胴502およびその上に載せられたブランケット102の間を通過する間に、加圧ローラ140によって、画像が基材枚葉紙の一方の側上に押しつけられた後、枚葉紙は、搬送ローラ522によって、周囲の長さが圧胴502、504の2倍である両面印刷胴524に供給される。枚葉紙の前縁部は、両面印刷胴により運ばれる枚葉紙の後縁部を把持部が捕捉するように、また枚葉紙を第2の圧胴504に供給して、第2の画像がその反対側上に押し付けられるように時間調節される搬送ローラ526を過ぎ、両面印刷胴によって搬送される。今やその両面に画像が印刷された枚葉紙は、ベルトコンベア530によって第2の圧胴504から出力スタック508に送られ得る。
【0109】
図示されていないが、さらなる実施形態では、印刷された枚葉紙は、出力スタックに送達される前(インライン仕上げ)、またはこのような出力送達の後(オフライン仕上げ)のいずれかにおいて、あるいは2つまたは3つ以上の仕上げステップが行われる場合には組み合わせて、1つまたは2つ以上の仕上げステップを受け得る。このような仕上げステップには、限定するものではないが、ラミネート、糊付け、シーティング(sheeting)、折り、グリッタリング(glittering)、箔押し、保護および化粧コーティング、断裁、化粧断ち、パンチング、エンボス、デボッシング、ミシン入れ、押し罫、印刷された枚葉紙のステッチングおよび綴じが含まれ、また、2つまたは3つ以上が組み合され得る。仕上げステップは、適切な従来型の装置、あるいは少なくとも類似の原理を用いて行われてもよいことから、それらのプロセスへの組み込み、および本発明のシステムにおけるそれぞれの仕上げ機構のそれらの組み込みは、より詳細な説明がなくとも当業者には明らかである。
【0110】
ブランケット上に印刷される画像は、圧胴の周囲の長さに対応する距離だけ常に互いに離間されるため、2つの圧胴502および504の間の距離は、圧胴502、504の周囲の長さに等しいか、この距離の倍数でなければならない。ブランケット上の画像の長さは、言うまでもなく、圧胴の寸法ではなく基材の寸法に依存する。
【0111】
図5の実施形態では、巻取基材560は、供給ロール(図示せず)から引き出され、巻取紙を単一の圧胴502を通り越して案内する、軸を固定されたいくつかのガイドローラ550および固定胴551の上を通過する。
【0112】
その上を巻取紙560が通過するローラのいくつかは、固定軸を有していない。特に、巻取紙560の給紙側では、垂直に動くことができるローラ552が提供される。それ自体の重さだけで、または必要に応じてその軸上に作用するばねの助けと共に、ローラ552は、巻取紙560に一定の張力を維持するように働く。何らかの理由により供給ローラの摩擦が一時的に大きくなると、ローラ552は上昇し、また反対にローラ552は自動的に下降して、供給ロールから引き出された巻取紙のたるみを取る。
【0113】
圧胴においては、巻取紙560は、ブランケットの表面と同じ速度で移動する必要がある。各枚葉紙がインプレッションローラに到達したならば確実に印刷されるようにする、インプレッションローラによって基材枚葉紙の位置が固定されている、上に説明した実施形態とは異なり、巻取紙560がブランケット102に圧胴502で持続的に係合される場合、印刷された画像の間に置かれる基材の多くは、浪費される。
【0114】
この問題を緩和するために、圧胴502の両側に、モータ駆動であり、互いに同期して反対方向に上下する2つのダンサー554および556が提供される。画像が巻取紙上に押し付けられた後、加圧ローラ140は、係脱されて、巻取紙560とブランケットとが互いに対して移動できるようにする。係脱の直後、ダンサー556が上昇させられるのと同時に、ダンサー554は、下降させられる。残りの巻取紙は、その通常の速度で前方に移動し続けるが、ダンサー554および556の動きは、圧胴502と、これが係脱したブランケット102との間の間隙を通して、短い長さの巻取紙560を後方に移動する効果がある。これは、圧胴502に追従する巻取紙の走行面からたるみを取り、圧胴に先行する走行面に移すことによってなされる。次いで、ダンサーの動きは、それらを図示の位置に戻すように反転されて、圧胴での巻取紙の部分が、再びブランケットの速度まで加速されるようにする。これで加圧ローラ140は再び係合して、次の画像を巻取紙に押し付け得るが、巻取紙上に印刷された画像の間に大きな空白領域を残すことはない。
【0115】
図5は、巻取紙の片面のみに印刷するため、単一のインプレッションローラのみを有するプリンタを示している。両面に印刷するために、2つのインプレッションローラを有するタンデムシステムが提供され得、インプレッションローラ間に巻取紙反転機構が提供されて、両面印刷のための巻取紙の反転を可能にし得る。あるいは、ブランケットの幅が巻取紙の幅の2倍を超える場合、同じブランケットを二等分にしたものと圧胴とを用いて、巻取紙の異なる部分の両面に同時に印刷することができる。
【0116】
ここで
図6から
図8を参照すると、メンテナンスのために印刷システムの様々な構成要素にアクセスできるようにするために、画像形成システム300およびブランケットシステム100は、基材搬送システム500を収容する基部910に対して垂直方向に移動可能な共通のガントリ900上に取り付けられ、ガントリは、持ち上げられているときは常に、圧胴(複数可)に対して水平かつ平行に保たれる。ガントリ900は、堅固な構造体であり、これに、個々の印刷バーフレーム304が固定される。印刷バーフレーム304は、印刷システムの基部910に張り出し、張り出している領域が、現在使用中ではない印刷バーを保持するように用いられる。モータ駆動の機構が各フレーム304内に提供されて、ブランケットシステム100を張り出すその作動位置と、張り出した停止位置との間で、関連する印刷バーを動かす。
【0117】
ガントリ900は、基部910の各角に1つずつ配置される4つの油圧ジャッキ930によって、印刷システムの基部910上に支持される。各油圧ジャッキ930は、円柱を有し、その上端部が、クランプ932によってガントリ900に固定され、下端部が、クランプ934によってブランケットシステム100に固定される。各油圧ジャッキ930のピストン棒は、印刷システムの基部910に移動可能に固定され、多少の相対的な動きが提供されて、印刷システムが動作中の場合、ブランケットシステム100の基材搬送システム500との正確な位置合わせを可能にする。
【0118】
各ジャッキのピストン棒は中空であり、またその下端に継手が提供されて、油圧作動液が油圧ジャッキの作動室から導入および排出され得るようにする。流体継手が定置の印刷システムの一部分に連結されるため、ジャッキ930の油圧回路において可撓性パイプに頼る必要はない。
【0119】
ガントリ900が印刷システムの基部910に張り出していることから、その重心は、昇降用ジャッキ930間に対して対称的に位置しない。昇降される時にガントリが傾く傾向に耐えるために、油圧ジャッキ930の油圧容量を不均等にすることもできる。例えば、
図6において、基部910の右手の油圧ジャッキ930が、左手の油圧ジャッキよりも大きな直径の作動室を有して形成される場合、昇降機の中心は右に移動して、ガントリ900の重心に非常に近づき得る。しかしながら、図示の実施形態は、ガントリ900の張り出し領域から床面まで延在する追加的な油圧ジャッキに頼る。
【0120】
ブランケットシステム100の動作位置では、基材搬送システム500と正確に位置合わせされ、これに固定される必要がある。これは、
図7に概略的に示される方法で達成され得、
図7は、射出成形機械の一対の金型部分を合わせてロックするのに用いられるものに類似のロック機構を示している。基部910の円錐形の陥凹部952内に受けられる、ブランケットシステム100上の円錐体950によって、位置合わせは達成される。円錐体950および陥凹部952の円錐角は、テーパロックの恐れを回避するために、比較的大きい(5°よりも大きい)。ロックは、油圧または機械的に格納式の舌状部分956によって達成され、これが、ブランケットシステム100に固定された留め具954の横方向のノッチに係合する。留め具954のノッチの形状は、舌状部分956のためのオーバーセンター位置を画定して、ブランケットシステムが、基材をブランケットに対して圧縮するニップ部にかかる圧力に耐え得るようにする。
【0121】
図5および
図6の印刷システムは、ブランケットシステム100が、基材搬送システム500に接触する位置に下げられた状態で示されている。この位置において、画像は、基材上に押し付けられ得、ブランケットシステム100と画像形成システム300との間に、インク画像が正確にブランケット上に置かれるための正確な間隔が達成される。動作中、
図8において半透明で示されるカバー960は、画像形成システム300およびブランケットシステム100を囲い、ガントリ900が上昇および下降させられると、カバーが、基部910に対して上下するように、ガントリ900に固定される。
【0122】
ガントリ900は、さらに摺動可能に表示スクリーン970を支持し、これは、印刷システムの正面に置かれ、実質的にブランケットシステムと同じ幅であるか、少なくともその幅の半分よりも大きい。この大画面表示スクリーン970は、オペレータに情報を表示するために用いられ得、またこれは、さらにタッチスクリーンとして設計されて、オペレータが印刷システムに命令を入力できるようにしてもよい。表示スクリーン970を摺動可能に支持するレール975は、
図6のように、ガントリ900上に直接取り付けられる。レール975は、ここでは、垂直方向に向けられ、それによって、表示スクリーンが上下に摺動し、印刷システムの内部部品へのアクセスを遮断したり、可能にしたりすることができるように図示されているが、そうせずに、レールが水平であってもよい。本明細書に開示されたものなどの印刷システムに関連する表示スクリーンの適切な取り付けおよび表示装置の使用方法のさらなる詳細は、同時係属中のPCT国際出願第PCT/IB2013/050245号(代理人参照番号第LIP 15/001 PCT)に提供されている。
【0123】
本発明のプロセスによって提供される利点
説明および図示される本発明の実施形態は、プロセス自体と、最終製品の品質との両方に関して、いくつかの利点を提供する。
【0124】
水性インク組成物は、印刷プロセスをより環境に優しい状態にする。
【0125】
中間転写部材に衝突するインク液滴を凝固することにより、従来用いられる印刷プロセスまたは技術から得られるものよりも薄い、一般に厚さが500nmまたは600nmまたは700nmまたは800nm未満である、乾燥したカラードットの形成が可能になる。インク使用量が少ないことに加えて、フィルムは非常に薄いので、基材の表面の凹凸へ密接に追従して、その表面の質感を変えない。したがって、光沢のある基材上に印刷すると、光沢のある画像が得られ、またマットな基材上に印刷する場合、印刷領域は、実質的に非印刷領域よりも光沢をもつことはない。
【0126】
各インク液滴がフィルムへと平坦化されると、画像の液体によって溶媒和されない疎水性の表面に置かれることから、表面張力は、液滴に滑らかな輪郭を与えるように作用する。その明瞭な定まった輪郭は、液滴が乾燥されると保持され、基材上に印刷された画像のインクドットの形状に反映される。さらに、より一様でない厚さの液滴から形成される乾燥した色要素よりも、平坦化された形状は一様な色を有する。
【0127】
これがインク中のポリマーのフィルム形成特性と組み合わされると、インク液滴およびそれらの一様な薄さは、高品質、高解像度の画像を形成するためのより理想的な媒剤を提供する。
【0128】
水性インクおよび疎水性の剥離層の組み合わせは、確実にブランケットの表面がキャリアを少しも吸収しないようにする。対照的に、特定の従来技術のプロセスでは、このような吸収は、ブランケットの膨張およびその表面の歪みをもたらし、その結果、インク残留物にざらつきのある、または粗い表面を生じ、最終的な印刷された画像の品質を損なう。
【0129】
これは、各インク液滴が、落下先の表面を濡らす状況、例えば、疎水性の転写部材を利用する有機キャリアを有する着色剤、あるいは水性インクと組み合わせて使用される液体を吸収する、または親水性の転写部材と対比される。このような望ましくない過剰な濡れは、転写部材の表面に存在するあらゆる凹凸に液滴をさらに広がらせ(そして、そのような凹凸を形成させ得る)、印刷された画像における各インクドットを、同じ面積の適切に円形のドットのものと比べて、触手や細流がその周縁を大幅に広げる蜘蛛の巣状にするという結果をもたらす。このような触手状部分のフィルムの厚さは、各ドットの中央よりも必然的に薄くなり、これらの影響の組み合わせにより、ぼやけた境界が不鮮明なインクドットが生じる。
【0130】
各液滴により作られたフィルムは、層が2つに割れて、その一部がブランケット上に残るリスクを低減するように、軟化した残留物のより厚い層よりも、基材により確実に押し付けされる。
【0131】
一般に、インクジェットプリンタは、色の純度、表面を完全に覆う能力およびインクジェットノズルの密度の間でトレードオフを要する。各インク液滴によって作られるドットが小さい場合、完全に覆うためには、密集したインクジェットノズルを有する必要がある。本発明のプロセスでは、完全に覆うためには、インクジェットノズルの間隔は、転写部材の表面に衝突することにより平坦化した後、または少なくともその寸法が安定した後、インク液滴によって作られ得る最も大きい画像ドットの寸法と同程度であれば十分である。
【0132】
インクドットは、明瞭であり、非常に短時間のうちにそれらの最終形態を取っているため、色同士のブリードおよび同じ色の液滴同士の相互作用の量は、低減される。
【0133】
基材枚葉紙上に印刷するための印刷システムが
図9に示され、これは、
図1のものと同じ原理で動作するが、別のアーキテクチャを有する。
図9の印刷システムは、エンドレスベルト210を備え、これは、画像形成機構212、乾燥機構214、および印圧付与機構216を循環する。
図9の画像形成機構212は、例えば、
図1に示した先述の画像形成システム300に類似する。
【0134】
画像形成機構212では、インクジェット技術を用いる1つまたは2つ以上の印刷ヘッドを組み込む、4つの別個の印刷バー222は、異なる色の水性インク液滴をベルト210の表面上に付着させる。図示の実施形態は4つの印刷バーを有し、それぞれが、典型的な4つの異なる色(すなわち、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K))のうちの1つを付着させ得るが、画像形成機構が、異なる数の印刷バーを有することができ、そして、印刷バーが、異なる色あいの同色(例えば、ブラックを含む様々な色合いのグレー)を付着させたり、2つまたは3つ以上の印刷バーが、同じ色(例えば、ブラック)を付着させたりすることができる。さらなる実施形態では、印刷バーは、顔料のない液体(例えば、化粧または保護ワニス)および特殊色(例えば、金属のような、きらめく、蛍光を発する、または光り輝く外見、あるいはさらに香りつき効果などの視覚効果を得る)の両方、またはいずれか一方に用いられ得る。画像形成機構の各印刷バー222の後に続いて、中間乾燥システム224が提供されて、高温気体(通常、空気)をベルト210の表面上に吹きかけて、インク液滴を部分的に乾燥する。この高温気体流は、インクジェットノズルの閉塞を阻止するのを助け、さらに、ベルト210上の異なる色インクの液滴が互いに混じりあうのも阻止する。乾燥機構214では、液体キャリアのすべてではなくとも大半を跳ね飛ばして、インクをより完全に乾燥し、粘着性の状態になる点まで加熱される樹脂および着色剤の層だけを残すために、ベルト210上のインク液滴は、放射および高温気体の両方、またはいずれか一方に曝される。
【0135】
印圧付与機構216では、ベルト210は、圧胴220と、圧縮性のブランケット219を担持する加圧胴218との間を通過する。ブランケット219の長さは、印刷が行われる枚葉基材226の最大長さと等しい、またはこれよりも大きい。圧胴220は、加圧胴218の2倍の直径を有し、同時に2枚の枚葉基材226を支持し得る。枚葉基材226は、適切な搬送機構(
図9に図示せず)によって、供給スタック228から、圧胴220および加圧胴218の間のニップを通って搬送される。ニップ内で、インク画像を担持するベルト220の表面は、加圧胴218のブランケット219によって、基材に対してしっかりと押圧されて、インク画像が基材上に押し付けられ、ベルトの表面からきれいに分離するようにする。次いで、基材は、出力スタック230に搬送される。
【0136】
一部の実施形態では、画像印圧付与機構の2つの胴218および220の間のニップの直前に、加熱器231が提供されて、転写基材に転写しやすくするためにインクフィルムを粘着性にするのを助け得る。
【0137】
その経路に沿って提供される加熱器同様に、異なる機構でのベルト210の最適温度は必ずしも同じではないため、例えば、冷気を吹きかけることによって、または冷却液をその表面上に塗布することによって、ベルトを冷却する手段を提供することができる。本発明の実施形態では、処理溶液がベルトの表面に塗布され、処理機構が、冷却機構として働く。
【0138】
処理溶液を塗布するのに特に有利な方法は、ベルトの表面上に溶液の噴霧を向け、次いで、エアナイフを用いて塗布された溶液のすべてではないにしても大半を除去して、分子の厚さのコーティングを残すことである。この場合、処理溶液の噴霧および余剰液体の除去の両方が、ベルトの表面上に冷却効果をもたらす。
【0139】
上記の
図9の実施形態の説明は、簡略化されており、本発明の理解を可能にする目的のためだけに提供されている。効果的な印刷システムには、インクの物理的および化学的特性、ベルト210の剥離面の化学組成および可能な処理、および印刷システムの様々な機構の制御のすべてが重要であるが、この文脈において詳細に検討する必要はない。
【0140】
インクがベルト210の表面からきれいに分離するためには、後者の表面が、疎水性の剥離層を有する必要がある。
図1の実施形態では、この疎水性の剥離層は、厚みのあるブランケットの一部として形成され、これはまた、印圧付与機構において剥離層および基材の間を確実に適切に接触させるのに必要な圧縮性のなじみ性のための層を含む。結果として得られるブランケットは、非常に重く高価な品であり、これは、これが果たす多くの機能のいずれかの故障の際、交換される必要がある。
【0141】
図9の実施形態では、疎水性の剥離層は、これを基材枚葉紙226に対して押圧するのに必要な厚みのあるブランケット219からの分離要素の一部分を形成する。
図9において、剥離層は、好ましくはその長手方向の大きさの引張強度を増すために繊維強化された、可撓性の薄い非伸長性のベルト210上に形成される。
図9の印刷システムは、同時係属中の特許出願第PCT/IB2013/051718号(代理人参照番号第LIP 5/006 PCT)にさらに詳しく説明されているのだが、エンドレスベルト210を備え、これは、画像形成機構212、乾燥機構214、および印圧付与機構216を循環する。
【0142】
図11および
図12に概略的に示されるように、本発明の一部の実施形態において、ベルトをその幅方向の大きさにピンと張った状態に保つために、ベルト210の横方向縁部が、両側がそれぞれの案内溝280(
図12に断面を、
図3-
図4にトラック180として示されている)に受けられる構造または突出部270と共に提供される。突出部270は、片側をベルトの側縁部に縫い付け、またはその他の方法で固定されたジッパーの務歯であり得る。間隔を空けた突出部の代わりに、ベルト210よりも厚みのある連続的な可撓性の玉が両側に沿って提供されてもよい。摩擦を低減するために、案内溝280は、
図12に示されるように、転がり軸受要素282を有して、突出部270または玉を溝280内に保持し得る。
【0143】
突出部は、ベルトの高速動作を含む、印刷システムの動作条件に耐え得る任意の材料から作られ得る。適切な材料は、約50℃から250℃までの範囲の高温に耐え得る。有利なことに、このような材料はまた、耐摩擦性であり、その動作寿命の間、ベルトの動きに負の影響を与えるサイズおよび量の両方、またはいずれか一方の破片を出さない。例えば、横方向突出部は、二硫化モリブデンで強化したポリアミドから作られ得る。
【0144】
画像形成機構の案内溝は、確実にインク液滴がベルト210上へ正確に配置されるようにする。乾燥機構214および印圧付与機構216内などのその他の場所では、横方向の案内溝は望ましいが、それほど重要ではない。ベルト210がたるんでいる領域では、案内溝は存在しない。
【0145】
ベルト210を案内するために取られるすべてのステップは、案内溝280がトラック180とも呼ばれる、
図1から
図8までの実施形態におけるブランケット102の案内に対して同様に適用可能である。
【0146】
いかなる一時的な中断や振動も異なる色のインク液滴の見当合わせに影響するため、画像形成機構212においては、ベルト210を一定の速度で動かすことが重要である。ベルトを円滑に案内するのを助けるためには、ベルトを静止した案内板の上を滑らせるのではなく、ベルトを各印刷バー222に隣接するローラ232の上に通過させることによって、摩擦は低減される。ローラ232は、それらのそれぞれの印刷バーに正確に位置合わせされる必要はない。それらは、印刷ヘッドの噴出位置のわずかに(例えば、数ミリメートル)下流に配置されてもよい。摩擦力は、ベルトをピンと張った状態に、かつ、印刷バーに対して実質的に平行に保つ。したがって、ベルトの裏面は、これが案内されるすべての表面に唯一転がり接触することから、高い摩擦性を有し得る。案内溝によって加えられる横方向の張力は、印刷バー222の下を通る際に、ベルト210を平坦に、ローラ232に接触させ続けるのに十分であればよい。非伸長性の強化/指示層、疎水性の剥離面の層および高摩擦の裏面に加えて、ベルト210は、いかなるその他の機能も果たす必要はない。したがって、破損した場合に取り外しおよび交換が容易な、薄い軽量の非伸張性のベルトであり得る。
【0147】
疎水性の剥離層および基材の間の密接な接触を達成するために、ベルト210は、圧胴および加圧胴220および218を備える印圧付与機構216通過する。加圧胴218の外面上に取り外し可能に固定される交換可能なブランケット219は、ベルト210の剥離層を基材枚葉紙226と接触するように促すのに必要とされるなじみ性を提供する。印圧付与機構の両側のローラ253は、印圧付与機構216の胴218および220の間のニップを通過する際に、ベルトが確実に所望の向きに維持されるようにする。
【0148】
上に説明したように、印刷された画像を高品質にする場合は、温度制御は、印刷システムに最も重要である。ベルトの熱容量が、
図1から
図8の実施形態におけるブランケット102のものよりもはるかに小さいという点で、このことは、
図9の実施形態ではかなり簡略化されている。
【0149】
さらに、厚みのあるブランケット102を用いる実施形態に関して、ブランケットが下方から加熱されるという観点から、ブランケットの熱容量に影響を与える追加の層を含めることが上に提案されている。
図9の実施形態において、ベルト210をブランケット219から分離することは、インク液滴の温度を、乾燥セクション214においてはるかに少ないエネルギーを用いて樹脂の軟化温度まで乾燥および加熱できるようにする。さらに、ベルトは画像形成機構に戻る前に冷え、このことは、インクジェットノズルの極めて近くを走行する高温の表面上にインク液滴を吹きかけようとすることによって生じる問題を軽減または回避する。代替的および追加的に、冷却機構が印刷システムに追加されて、ベルトが画像形成機構に入る前に、ベルトの温度を所望の値に低下させてもよい。冷却は、水または洗浄/処理溶液であり得る冷却剤に下半分が浸されたローラの上にベルト210を通すことによって、冷却剤をベルト上に吹きかけることによって、あるいはベルト210を冷却剤の源(fountain)上に通過させることによって達成され得る。
【0150】
説明したように、プロセスの様々な段階における温度は、使用される中間転写部材およびインクの実際の組成に応じて変わり得、さらに所与の機構に沿った様々な位置で変動し得るが、本発明の実施形態では、画像形成機構における転写部材の外面の温度の範囲は、40℃および160℃の間、または60℃および90℃の間である。本発明の一部の実施形態では、ドライヤー機構における温度の範囲は、90℃および300℃の間、または150℃および250℃の間、または200℃および225℃の間である。本発明の一部の実施形態では、印圧付与機構における温度の範囲は、80℃および220℃の間、または100℃および160℃の間、または約120℃、または約150℃である。冷却機構が、転写部材を画像形成機構に、そのような機構の動作範囲に適合する温度で侵入させることが望ましい場合、冷却温度の範囲は、40℃および90℃の間であり得る。
【0151】
本発明の一部の実施形態では、ベルト210の剥離層は、疎水性であって、印圧付与機構において、粘着性のインク残留物画像が、確実に剥離層からきれいに剥がれ去るようにする。しかしながら、画像形成機構では、同じ疎水性の特性は望ましくない。それは、疎水性の表面上で水性インク液滴が動き回り得、また衝突時に平坦化して、各液滴におけるインクの質量に応じて増加する直径を有する液滴を形成せずに、インクが球形の小球に丸まりやすいからである。疎水性の外面を有する剥離層を伴う実施形態では、したがって、まず、衝突時に平坦化して円盤になり、次いで、乾燥および転写段階の間、それらの平坦化した形状を維持するように、インク液滴に働きかける段階を経なければならない。
【0152】
この目的を達成するために、本発明のすべての実施形態において、液体インクが、ブレンステッド・ローリーのプロトン移動によって帯電可能な成分を備えて、プロトン移動によってベルトの外面との接触に引き続いて、液体インク液滴に電荷を獲得させて、帯電した液体インク液滴間で静電相互作用を生じるようにし、また、ベルトの外面上には、反対の電荷を獲得させることが望ましい。このような静電荷は、液滴をベルトの外面に固定し、球形の小球を形成しない。
【0153】
ブレンステッド・ローリーのプロトン移動によるファンデルワールス力は、アミノシリコーンなどの剥離層の化学組成の一部分を形成する成分、または、画像形成機構212に到達する前に、ベルト210の表面に塗布される高電荷密度PEIなどの処理溶液(例えば、処理されるべきベルトが、シラノール終端されたポリジアルキルシロキサンシリコーンを備える剥離層を有する場合)のいずれかを伴う、インクの相互作用に起因し得る。
【0154】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、インクキャリアの蒸発に際して、水を含む状態が縮小することにより、インクの成分および剥離層もしくはその処理溶液のそれぞれのプロトン化が減少し、これにより、その間の静電相互作用を弱め、基材に転写されると、乾燥したインク画像がベルトから剥がれ得るようにすると考えられる。
【0155】
ベルト210は、継ぎ目なし、すなわち、その長さに沿ってどこにも不連続部分がないようにし得る。このようなベルトは、印圧付与機構の2つの胴218および220の周速度と同じ表面速度で走行するように常に操作され得るため、印刷システムの制御を大幅に簡略化する。いかなる経年変化によるベルトの伸びも印刷システムの性能に影響せず、単に、後述の引張ローラ250および252によって加わったたるみをとるだけでよい。
【0156】
しかしながら、最初は平坦な条片としてベルトを形成すると、より廉価であり、例えば、ジッパーによって、または場合により面ファスナテープによって、または場合により縁部を合わせてはんだ付けすることによって、または場合によりテープ(例えば、結合条片が条片の両方の縁部に重なる状態での、Kapton(登録商標)テープ、RTV液体接着剤またはPTFE熱可塑性接着剤)を用いることによって、この条片の両端を互いに固定させる。このようなベルトの構成では、シーム部上では印刷が行われないようにすること、そして、印圧付与機構216においてシーム部が基材226に対して押し付けられないようにすることが重要である。
【0157】
印圧付与機構216の圧胴および加圧胴218および220は、従来型のオフセット平版印刷機のブランケットおよび圧胴と同じように構成されてもよい。このような胴では、加圧胴218の表面のブランケット219の2つの端部が固定される領域において、円周方向に不連続部分がある。圧胴の表面にも不連続部分があり、これは、基材枚葉紙の前縁部を把持して、ニップを通って搬送するのを助ける働きをする把持部を収容する。本発明の図示の実施形態では、圧胴の周囲の長さは、加圧胴の周囲の長さの2倍であり、圧胴は2セットの把持部を有するため、不連続部は、圧胴が一周するたびに2度現れる。
【0158】
ベルト210にシーム部がある場合、シーム部を、確実に印圧付与機構216の胴間の間隔と常に同期させる必要がある。このため、ベルト210の長さは、加圧胴218の周囲の長さの整数倍となることが望ましい。
【0159】
しかしながら、新品の際には、ベルトがそのような長さであったとしても、例えば、疲労または温度で、その長さは使用中に変わり得る。このことが起こると、それがニップを通過する際のシーム部の位相は、毎周変わる。
【0160】
ベルト210の長さにおけるこのような変化を補正するために、これは、印圧付与機構216の胴とはわずかに異なる速度で駆動され得る。ベルト210は、2つの別個に動力を供給されるローラ240および242によって駆動される。ベルトを駆動するローラ240および242を介して異なるトルクを与えることによって、画像形成機構を通過するベルトの走行面は、制御された張力の下に維持される。2つのローラ240および242の速度は、印圧付与機構216の胴218および220の表面の速度とは異なるように設定され得る。代替的または追加的に、ベルトは、円筒形でなくてもよい支持面によって駆動または移動され得る。例えば、回転するローラの代わりに、支持面は、平坦かつ動作可能であって、ベルトの一部を直線移動させる。ベルトの支持される部分に対して生みだされる動きの形状および種類によらず、このような案内または駆動手段は、支持面と総称され得る。
【0161】
2つの動力を供給される引張ローラ、またはダンサー、250および252は、印圧付与機構の胴間のニップの両側に1つずつ提供される。これらの2つのダンサー250、252は、ニップ前後において、ベルト210のたるみの長さを制御するように用いられ、それらの動きは、それぞれのダンサーに隣接する両矢印によって模式的に示されている。
【0162】
ベルト210が加圧胴の周囲の長さの整数倍よりもわずかに長い場合、
図1でのように、あるサイクルでシーム部が印圧付与機構の胴218および220の間の拡大した間隙に位置合わせされるならば、次のサイクルでシーム部は右に動くはずである。これを補正するために、ローラ240および242によってベルトはより速く駆動されて、たるみがニップに右側に築かれ、張力がニップの左側に築かれるようにする。ベルト210を正しい張力に維持するために、ダンサー252が上昇させられるのと同時に、ダンサー250は、下降させられる。印圧付与機構の胴の不連続部が互いに向き合い、その間に間隙ができる場合、ダンサー252は下降させられ、ダンサー250は上昇させられて、ニップを通るベルトの走行面を加速し、シーム部を間隙内に運ぶ。
【0163】
ニップを通って加速される際、ベルト210にかかる抵抗を減らすため、
図5に示されるように、加圧胴218には、ブランケットの端部間の不連続領域内に、ローラ290が提供される。
【0164】
この方法でベルトの位相を補正する必要性は、ベルト210の長さを測定すること、または、印圧付与機構の胴の位相に対するベルト上の1つまたは2つ以上のマーカの位相を監視することのいずれかによって感知され得る。マーカ(複数可)は、例えば、ベルトの表面に塗布され得、適切な検出器により磁気的または光学的に感知され得る。
あるいは、マーカは、ベルトを引っ張り、張力下に維持するのに用いられる横方向突出部の変則、例えば、歯を欠くなどの形態を取ることによって、機械的な位置指示器として働き得る。
【0165】
ベルトに電子回路、例えば、「チップ・アンド・ピン」方式のクレジットカードに見出されるものに似たマイクロチップを組み込むことがさらに可能であり、これにデータが記憶され得る。マイクロチップは、読み出し専用メモリのみを備えてもよく、その場合、ベルトが製造された場所と時、およびベルトの物理的または化学的特性の詳細などのデータを記録するために製造業者によって用いられ得る。データは、カタログ番号、バッチ番号および任意のその他の識別子に関し得、ベルトの使用およびそのユーザの両方、またはいずれか一方に関する情報を提供し得る。このデータは、据え付け時または動作時に印刷システムのコントローラによって読み出され、例えば、校正パラメータを決定するために使用される。代替的に、または追加的に、チップは、マイクロチップ上の印刷システムのコントローラによってデータを記録され得るようにするランダムアクセスメモリを含み得る。この場合、データは、ベルトを用いて印刷したページ数または巻取紙の長さなどの情報、または新しい印刷実行を開始する際に、印刷システムを再校正するのを助けるために、ベルト長さなどの先に測定したベルトパラメータを含み得る。マイクロチップ上の読み書きは、マイクロチップの端子と直接電気的に接触することによって、達成されてもよく、この場合、ベルトの表面上に接触導体が提供され得る。あるいは、データは、マイクロチップから無線信号を用いて読み出されてもよく、この場合、マイクロチップは、ベルトの表面上の電磁誘導式ループによって電力を供給され得る。
【0166】
図9の印刷システムは、個々の基材枚葉紙上への印刷を意図される。連続的な巻取紙上に印刷するために類似のシステムを用いることができ、この場合、加圧胴は、その周囲の一部の周りにブランケットを巻かれるのではなく、圧縮性連続外面を有する。さらに、圧胴に把持部を組み込む必要はない。
【0167】
本明細書に開示されたものなどの印刷システムに適する監視方法のさらなる詳細は、同時係属中のPCT国際出願第PCT/IB2013/051727号(代理人参照番号第LIP 14/001 PCT)に提供されている。
【0168】
本発明の実施形態の印刷システムのさらなる重要な利点は、これらが、既存の平版印刷機の修正によって生産され得ることである。既存の機器を適合させる能力は、既に存在するハードウェアの大半を保存する一方で、現在普通に使われている技術から変換するために必要な投資を大幅に削減する。特に、
図1の実施形態の場合では、タワーの修正には、版胴を一式の印刷バーに置き換えること、および加圧胴を疎水性の外面を有する、または適切なブランケットを担持する転写ドラムに置き換えることが含まれる。
図9の実施形態の場合、版胴は、一式の印刷バーおよび既存の版および加圧胴の間を通過するベルトによって置き換えられる。基材ハンドリングシステムがもしあっても、ほとんど修正を必要としない。カラー印刷機は、通常いくつかのタワーから形成され、タワーのすべてまたは一部のみをデジタル印刷タワーに変換できる。様々な利点を提供する種々の構成が可能である。例えば、2つの連続的なタワーは、両面印刷胴がその間に配置されるならば、両面印刷を可能にするマルチカラーデジタルプリンタとして構成され得る。あるいは、複数の同じ色の印刷バーが1つのタワーに提供されて、印刷機全体の速度を上げることができる。
【0169】
本出願人の上述の出願のすべての内容は、参照により、本明細書において完全に説明されたかのように、援用される。
【0170】
その実施形態の詳細な記述を用いて、本発明を説明してきたが、これらは、例として提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図されるものではない。説明された実施形態は、様々な特長を備えるが、これらすべてが、本発明のすべての実施形態において必要とされるのではない。本発明の一部の実施形態は、特徴の一部のみ、または特徴の実行可能な組み合わせを利用する。説明された本発明の実施形態の変形、および、説明された実施形態において言及された特徴の様々な組み合わせを備える本発明の実施形態を、本発明の属する技術分野の当業者であれば想到するはずである。
【0171】
本開示の説明および特許請求の範囲において、動詞「備える(comprise)」、「含む(include)」および「有する(have)」のそれぞれ、ならびにこれらの同根語は、動詞の目的語(object or objects)が、必ずしも動詞の主語(subject or subjects)の部材、構成要素、要素または部品の完全な列挙ではないことを示すために用いられる。本明細書で用いられる場合、単数形「ひとつの(a、an)」および「その(the)」は、文脈上例外が明記されていない限り、複数形の意味を含む。例えば、「印圧付与機構(an impression station)」または「少なくとも1つの印圧付与機構(at least one impression station)」の語は、複数の印圧付与機構(a plurality of impression stations)を含み得る。