(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】熱間圧延製品のコイル巻付け方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B21C 47/12 20060101AFI20230307BHJP
B21C 47/02 20060101ALI20230307BHJP
B65H 54/80 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B21C47/12
B21C47/02 A
B65H54/80 A
(21)【出願番号】P 2021501116
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 IB2019052340
(87)【国際公開番号】W WO2019186341
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】102018000004134
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520378953
【氏名又は名称】エスエムエス・グループ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】SMS GROUP S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ・サンドリ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ・ナルドゥッツィ
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第00334453(US,A)
【文献】特開昭60-244762(JP,A)
【文献】実開昭50-079726(JP,U)
【文献】実公昭49-008927(JP,Y1)
【文献】特開昭48-071702(JP,A)
【文献】実開昭52-126290(JP,U)
【文献】実開昭54-100935(JP,U)
【文献】特開昭63-140725(JP,A)
【文献】実公昭43-001219(JP,Y1)
【文献】実公昭48-037633(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0051649(US,A1)
【文献】中国実用新案第204173668(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 47/02
B65H 54/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延製品のコイル巻付けシステムであって、
垂直軸(Y)を有する回転コイラー(10)であって、外側ドラム(11)と、前記外側ドラム(12)と同軸の内側マンドレル(12)とを備え、前記外側ドラム(11)と前記内側マンドレル(12)とが、前記外側ドラム(11)及び/又は前記内側マンドレル(12)と一体化された底壁(14)によって底部が閉鎖された環状の間隙(13)を区画し、その内部に前記熱間圧延製品がリール状に巻くように配置されたコイラーと、
前記環状の間隙(13)に向けて前記コイラー(10)に進入する熱間圧延製品を搬送する手段(20)であって、前記コイラー(10)に対して回転可能に固定された支持フレーム(21)と関連付けられた搬送手段と、
を備え、
前記環状の間隙(13)内の前記熱間圧延製品を前記コイラー(10)の回転によって誘導される螺旋軌道からそらす転送手段(30)を更に備え、
前記転送手段(30)は、前記コイラー(10)内の前記熱間圧延製品の進入運動に対して前記搬送手段(20)の下流に配置され、前記環状の間隙(13)内の前記コイラーの垂直軸(Y)に対する前記熱間圧延製品の半径方向(R)の巻付け距離を設定するように構成され、
前記転送手段(30)は、使用時に前記熱間圧延製品と接触する転送部材(31)を備え、前記半径方向の巻付け距離(R)の設定を変えるように前記環状の間隙(13)内で前記転送部材の向きを調整可能であ
り、
前記支持フレーム(21)は、前記コイラー(10)に対して相対的に移動可能であり、
前記コイル巻付けシステム(1)は、前記支持フレーム(21)を前記コイラー(10)に対して相対的に移動させるための手段(50)を更に備え、
前記支持フレーム(21)は、前記コイラー(10)に対して同軸で移動可能であり、
前記支持フレーム(21)は、軸方向に中空であり、前記環状の間隙(13)内に少なくとも部分的に挿入され、前記内側マンドレル(12)を同軸に内部に受け入れるように構成され、
前記転送手段(30)は、使用時に前記環状の間隙(13)内に挿入することを意図した前記支持フレーム(21)の下側部分(21a)と関連付けられている、
コイル巻付けシステム。
【請求項2】
前記転送手段(30)は、前記支持フレーム(21)に関連付けられている、請求項1に記載のコイル巻付けシステム。
【請求項3】
前記転送部材(31)は、前記熱間圧延製品のための内部貫通座部(32)を区画し、当該内部貫通座部は、前記コイラーの垂直軸(Y)に対して半径方向の距離(R)において、使用時に前記環状の間隙(13)内に位置決めされる出口部分(33)で終わり、
前記転送部材(31)は、前記外側ドラム(11)と前記内側マンドレル(12)との間の前記環状の間隙(13)に対して相対的に配向可能であり、前記環状の間隙(13)内の前記出口部分(33)の半径方向の距離(R)を変化させるとともに、使用時に前記転送部材(31)から出る前記熱間圧延製品の半径方向の巻付け距離(R)を前記垂直軸(Y)に対して変化させて、前記熱間圧延製品を前記コイラー(10)の回転によって誘導される前記螺旋軌道からそらす、
請求項1
又は2に記載のコイル巻付けシステム。
【請求項4】
前記転送部材(31)は、前記支持フレーム(21)上に垂直旋回軸(Z)を中心として軸支され、前記出口部分(33)の半径方向の距離(R)を変化させるように前記垂直旋回軸(Z)を中心として回転可能で
ある、請求項
3に記載のコイル巻付けシステム。
【請求項5】
前記転送部材(31)は、垂直投影面上の水平基準面に対する前記底壁(14)に向かう傾斜角(β)を形成する環状の間隙(13)内の軌道を前記熱間圧延製品に課すように配向さ
れる、請求項1~
4のいずれか1つに記載のコイル巻付けシステム。
【請求項6】
前記環状の間隙(13)内の前記転送部材(31)の向きを調整する調整手段(40)を更に備える、請求項1~
5のいずれか1つに記載のコイル巻付けシステム。
【請求項7】
前記調整手段(40)は、伝達装置(42)を介して前記転送部材(31)に直接又は間接的に接続されたアクチュエータ(41)を備える、請求項
6に記載のコイル巻付けシステム。
【請求項8】
使用時は前記環状の間隙(13)の外部に留まることが意図されている前記支持フレーム(21)の上側部分(21b)には、アクチュエータ(41)が関連付けられている、請求項
7に記載のコイル巻付けシステム。
【請求項9】
前記調整手段(40)は、前記アクチュエータ(41)に接続され、前記転送部材(31)の向きの予め決められた調整ロジックに従って前記アクチュエータ(41)の介入を制御するようにプログラムされた電子制御ユニット(100)を備える、請求項
7又は8に記載のコイル巻付けシステム。
【請求項10】
前記予め決められた調整ロジックは、前記転送部材(31)の向きが、時間の経過とともに変化することを提供する、請求項
9に記載のコイル巻付けシステム。
【請求項11】
前記転送部材(31)は、管状、直線状、又は湾曲した本体で構成される、請求項1~
10のいずれか1つに記載のコイル巻付けシステム。
【請求項12】
前記転送部材(31)は、ローラガイドで構成される、請求項1~
10のいずれか1つに記載のコイル巻付けシステム。
【請求項13】
前記搬送手段(20)と前記転送手段(30)との間に配置された螺旋状ガイド(60)を備え、
前記螺旋状ガイド(60)は、予め決められた平均曲率半径を有する曲率を前記熱間圧延製品に課すように構成さ
れる、請求項1~
12のいずれか1つに記載のコイル巻付けシステム。
【請求項14】
前記転送部材(31)内の前記熱間圧延製品のための内部貫通座部(32)が、湾曲した軌道を区
画する、請求項
3に従属する請求項13に記載のコイル巻付けシステム。
【請求項15】
前記転送手段(30)は、螺旋状ガイドを介在させることなく、前記搬送手段(20)のすぐ下流に配置されている、請求項1~
12のいずれか1つに記載にコイル巻付けシステム。
【請求項16】
前記転送部材(31)内の前記熱間圧延製品のための内部貫通座部(32)が、曲線又は直線の軌道を区画する、請求項
3に従属する請求項15に記載のコイル巻付けシステム。
【請求項17】
請求項1~
16のいずれか1つに記載のコイル巻付けシステム(1)を介して熱間圧延製品をコイル巻付けする方法であって、
a)前記搬送手段(20)及び前記転送手段(30)を前記環状の間隙(13)内に位置決めするように前記支持フレーム(21)を前記コイラーに関連付ける工程と、
b)前記搬送手段(20)によって前記熱間圧延製品を前記環状の間隙(13)に向けて搬送する工程と、
c)前記b)の工程における搬送と同時に前記コイラー(10)をその垂直回転軸(Y)を中心として回転させ、前記熱間圧延製品に前記垂直回転軸(Y)を中心とする螺旋軌道を課して、前記底壁(14)から始まる前記環状の間隙(13)内に複数のコイルを有するリールの漸進的な形成を実行する工程と、
d)前記環状の間隙(13)内の前記コイラーの垂直軸(Y)に対する前記熱間圧延製品の半径方向の巻付け距離(R)を設定し、前記環状の間隙(13)内の前記転送部材(31)の向きを調整して、前記転送手段(30)によって前記環状の間隙(13)内の前記熱間圧延製品を前記コイラー(10)の回転によって誘導される螺旋軌道からそらし、前記環状の間隙(13)内でコイルの制御された分布を得る工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
前記d)の工程における設定において、前記環状の間隙(13)内の前記コイラーの垂直軸(Y)に対する前記熱間圧延製品の半径方向の巻付け距離(R)は、前記環状の間隙(13)内の前記転送部材(31)の向きを制御された方法で変化させることにより、時間の経過とともに変化する、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記c)の工程におけるコイラーの回転は、予め決められた一連の加速-減速サイクルで実行され、前記転送部材(31)の向きは、前記コイラー(10)の前記加速-減速サイクルに同期して時間の経過とともに変化する、請求項
18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、回転コイラーを用いた熱間圧延製品のコイル巻付けシステム及び方法である。
【背景技術】
【0002】
専門用語では、回転コイラーを用いたコイルの巻付けは、「ポーリングリール(pouring reel)」巻付けとして知られている。
【0003】
「熱間圧延製品」とは、例えば、青銅、黄銅、アルミニウム、鋼(ばね鋼、軸受鋼、ステンレス鋼など)などの金属材料で作成された棒、鉄筋、四角形、六角形、板、又は他の熱間成形多角形の外形を有する製品を意味する。
【0004】
具体的には、本発明に係るコイル巻付けシステム及び方法は、高速プロセスにおいて特に評価できる利点を有する3000mm2未満の断面を有する圧延製品のリールを形成するためのプロセスに適用可能である。
【0005】
リールは、連続的な熱間圧延プロセスから得られる一定の断面を有する熱間圧延製品の連続的な螺旋によって形成される。圧延製品は、圧延プロセスに応じて、一定の速度で直線的に移動し、最終的な断面が得られる。リールを作成するためには、圧延製品を円形に変形させなければならない。
【0006】
よく知られているように、回転コイラー(「ポーリングリール」)による巻付けは、熱間圧延製品に直線的な動きを付与する送り装置によって圧延製品を特定のコイラー内に押し込むことを含む。
【0007】
図1から
図4には、「ポーリングリール」用のコイラーの一例が示されている。コイラーはAで示され、送り装置はBで示されている。
【0008】
より具体的には、コイラーAは、外側ドラムA1と、ドラムA1の内側に同軸に配置され、リールの内径を区画するマンドレルA2とで構成されている。ドラムA1とマンドレルA2との間には、環状の断面を有する間隙A3が形成されており、この間隙A3に圧延製品が「注がれて」リールが形成される。コイラーAは、環状の間隙A3を閉鎖するとともに、環状の間隙A3内に「注がれた」圧延製品を収集する底部A4を備える。
【0009】
コイラーの外側ドラムA1の壁に圧延製品を押し付ける力は、圧延製品の方向を変えると同時に塑性変形を引き起こす半径方向の反力を発生させる。連続的な直線運動及び一定の推力を有する圧延製品は、間隙A3の形状に追従し、円筒状の螺旋の形態を取る。
【0010】
また、動作上、前記半径方向の力は、圧延製品とコイラーとの間に摩擦を生じさせる。この摩擦は、摺動及び関連する表面摩耗の形態で発生することがある。この現象を回避するか、又は少なくとも低減するために、コイラー1はそれ自体回転する。すなわち、ドラムA1、底部A4、及びマンドレルA2が一緒に回転する。
【0011】
一般に、コイラーAの回転軸は垂直であり、環状の間隙A3の充填は、圧延製品を上から「流し込む」ことによって漸進的に行われる。
【0012】
このタイプのコイラーは、通常、他のコイル巻付け技術では処理できないセクションを有する高品質の熱間圧延製品、又は巻付け後に熱処理を受けなければならない熱間圧延製品のために使用され、過度にコンパクトなコイルを有するリールに形成されてはならないが、逆に、コイル間に最小の自由空間を有していなければならない熱間圧延製品のために使用される。例を挙げれば、ワインダーリール(すなわち、圧延製品を引っ張るリール)で行われる巻付けは、実質的に自由空間を持たない非常にコンパクトなコイルを有するリールの形成につながる。
【0013】
しかしながら、「ポーリングリール」の巻付けでは、コイラーの回転だけでは、最終的なリールの品質は保証されない。リールに巻かれた最終製品は、実際には、特に小断面の熱間圧延製品の場合には、摺動によって生じた表面欠陥が残っていたり、不定形の変形(エルボー曲線)を有していたりすることがある。
【0014】
摺動現象を更に制限するために、特に圧延製品の不均一な変形を避けるために、「ポーリングリール」のコイラーAは、一般に、ドラムA1とマンドレルA2との間の環状部A3の内側に適用される「螺旋状ガイド」と呼ばれる装置Cを備えている。
【0015】
より具体的には、特に
図3及び
図4に示すように、螺旋状ガイドCは、一般的にマンドレルA2と同軸に関連する管状体で作製される支持フレームDを備えている。支持フレームDには、一連の管状体又はローラガイドC1が、垂直な螺旋状の外形に従って固定されている。支持フレームDは、マンドレルと共に回転するのではなく、
図1及び
図2に示すように、同じマンドレルに対して軸方向に相対的に移動可能である。
【0016】
動作上、螺旋状ガイドC(非回転)内に押し込まれる圧延製品は、予め成形されており、このガイドから出てくるコイルは、回転コイラーの底部A4上に緩やかに載せられる。また、この場合も、ドラム、マンドレル、及び底部の回転は、摩擦を抑え、圧延製品が螺旋状ガイドC内で引っ掛からないようにするために必要である。コイルが形成されると、螺旋状ガイドCは、徐々に上昇し、リールQが環状の間隙A3内で高さを増すための空間を残す。螺旋状ガイドの上流にある圧延製品の送り装置Bは、(
図1と
図2とを比較することでわかるように)それに応じて移動する。
【0017】
特に
図3に示すように、送り装置Bと螺旋状ガイドCとの間のずれを補償するために、螺旋状ガイドは、一連の管状体又はローラガイドC1に進入する圧延製品を搬送する漏斗状のガイド部材Eを備えなければならない。
【0018】
リールの充填は、リールの実際の体積とリールの理論上の体積との間の比として定義される。理論上の体積は、コイル間の隙間が0に等しいリールの体積として定義される。
【0019】
リールの充填は、結束前のリール自体の高さに影響を与える特性である。高過ぎるリールは、取り扱いが困難であり、非常に安定しない。また、充填は、熱処理されるリールの能力を定義する。コイル間の自由空間は、実際には温度の均一な分布を確保するとともに、空気や冷却水が流れるための通路を確保する。
【0020】
リールに巻かれた材料の表面品質を向上させ、リールの充填に対する制御性を高めるために、以下に説明するように、(螺旋状ガイドの使用の有無にかかわらず)コイラーの回転速度を規制することが知られている。
【0021】
圧延製品は、一定の直線速度を有している。コイラーの回転速度は、以下に説明するように、圧延製品の螺旋状の巻き運動に追従するような速度でなければならず、圧延製品の直線速度に依存する。
ωcoiler=Vlam×60/(D×π)
ここで、ωcoilerはコイラーの回転角速度を1分当たりの回転数[rpm]で示すものであり、Vlamは圧延製品の直線速度[m/s]であり、Dは環状部A3の直径(可変)[m]である。
【0022】
環状部A3は、マンドレルA2で区画された最内周部[Dmin×π]とドラムA1で区画された外周部[Dmax×π]との間に構成されている。このため、充填したい円周に応じて回転速度が変化する。
【0023】
典型的には、環状部A3の平均直径Dmed上の接線速度は、圧延製品の直線速度に対応する。
【0024】
平均直径Dmedは、次のように計算される。
Dmed=Dmin+(Dmax-Dmin)/2
【0025】
したがって、平均直径に対するコイラーの平均回転速度ωmedは、次のように計算される。
ωmed=Vlam×60/(Dmed×π)
【0026】
充填量を増やすために、人は環状部A3の全体を均一にカバーしようとする。
【0027】
これを行うためには、コイルを前のものよりも大きい又はより小さい直径に配置するために、コイラーAの回転速度をターンごとに増加又は減少させることが必要である。
【0028】
上述した加速又は減速によって生じるランプ(ramp)は、
図15に示すように、各充填層毎に、すなわち最大又は最小の限界速度に達する度に、方向を変える周期的なコースに従う。このサイクルを専門用語で”ウォブリング”と呼ぶ。回転速度ωcoilerが最大であるとき、コイルはマンドレルA2に巻かれ、逆に最小であるとき、コイルはドラムA1上に置かれる。
【0029】
コイルの巻付けにウォブリングサイクルを採用することで、コイルの形成を制御することができ、結果としてリールの充填量を増加させることができる。
【0030】
しかしながら、ウォブリングサイクルによってこの結果を得ることは、理論上であり、単なる幾何学的な規則に基づいている。実際には、コイルの位置に影響を与えるいくつかの変数があり、それは制御することが困難である。
【0031】
まず第一に、圧延製品は湾曲した軌道上を移動しているため、遠心力を受ける。更に、螺旋状ガイドが設けられている場合には、圧延製品は螺旋状ガイドCの平均曲げ半径に厳密に拘束されない。ローラガイド又は管状体C1は、典型的には、圧延製品の断面よりも大きい貫通部を有する。実際には、過剰な精度と起こり得る位置ずれとの組み合わせは、圧延製品を不規則な方法で変形させ、その結果、圧延製品が同じガイドの中に嵌り込み、プロセスを妨害する可能性がある。更に、発生する摩擦は、螺旋状ガイドの早期の摩耗の原因となる。最後に、産業分野で適用するためには、螺旋状ガイドCは、圧延製品の特定のセクションに対して専用にすることはできない。熱間圧延システムは、典型的には異なるセクションを処理し、あるセクションから別のセクションへの変更は非常に頻繁に発生する可能性がある。このような場合には、機械のセットアップ時間を最小限に抑えなければならない。この理由から、人は、同じ螺旋状ガイドを使用して、広範囲の異なるセクションをカバーしようとする。
【0032】
動作上、コイルの不安定性は、圧延製品のセクションが減少して速度が高くなるほど、より顕著になる。より具体的には、コイルは、空間に厳密に拘束されていないので、螺旋状ガイドCの平均曲げ半径に対して相対的に広がる傾向があり、その結果、環状部A3の外側、すなわちドラムA1に近い部分に堆積する。更に、そのプロセスで、螺旋状ガイドCが徐々に上昇していくため、新しいコイルが前のコイルの内側に堆積するのではなく、上に堆積してリールの高さが増加する。
【0033】
また、コイラーの回転速度が平均速度ωmedを超えた場合にも、問題となる現象が発生する(
図15参照)。熱間圧延製品は高温で変形しやすいため、回転速度の超過によりマンドレルA2に巻かざるを得ず、この場合も環状部A3の中央部にコイルが堆積しない。
【0034】
その結果、外側Dmax及び内側Dminでは非常に密集しているが、中央部では実質的に空であり、非常に低い充填率を有する、高いリールが得られる。
【0035】
従って、「ポーリングリール」のコイル巻付けの適用では、リールの充填を更に改善する必要がある。
【発明の概要】
【0036】
従って、本発明の目的は、前記先行技術の欠点の全部又は一部を除去するために、リールの充填をより良好に制御することができる回転コイラーによる熱間圧延製品のためのコイル巻付けシステムを提供することにある。
【0037】
本発明の更なる目的は、動作上の観点から容易に管理することができる回転コイラーによる熱間圧延製品のためのコイル巻付けシステムを提供することにある。
【0038】
本発明の更なる目的は、実施するのが簡単で経済的である回転コイラーによる熱間圧延製品のためのコイル巻付けシステムを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
前述した目的に係る本発明の技術的特徴は、以下に提供される特許請求の範囲の内容から明らかであり、その利点は、単に例示的で非限定的な1以上の実施形態を表す添付図面を参照して行われる以下の詳細な説明で、より明らかになるであろう。
【
図1】
図1は、螺旋状ガイドが上昇された動作状態で示される回転コイラーを有する従来のコイル巻付けシステムの全体的な斜視図である。
【
図2】
図2は、螺旋状ガイドが下降された動作状態で示される
図1のコイル巻付けシステムを示す図である。
【
図3】
図3は、使用時の内部をよりよく強調するために部分的に切断して示された回転コイラーに関する
図2のコイル巻付けシステムの詳細な斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3のコイラーを上方から見た平面図であって、他の部分をより良く強調するために、いくつかの部品を取り外した状態を示す図である。
【
図5】
図5は、螺旋状ガイドを備えた本発明の好適な実施形態に係る回転コイラーを有する従来のコイル巻付けシステムの全体斜視図であって、螺旋状ガイドが上昇された動作状態で示される図である。
【
図6】
図6は、螺旋状ガイドが下降された動作状態で示される、
図5のコイル巻付けシステムを示す図である。
【
図7】
図7は、使用時の内部をより良く強調するために部分的に切断して示された回転コイラーに関する
図6のコイル巻付けシステムの詳細な透視図である。
【
図8】
図8は、
図7のコイラーの上方から見た平面図であって、他の部分をより良く強調するためにいくつかの部品を取り外した状態を示す図である。
【
図9】
図9は、圧延製品の螺旋状ガイド及び圧延製品の転送装置(diverter device)のための、圧延製品のガイド部材用の支持フレームに対する、
図7のコイラーの構成要素の相対的な直交側面図である。
【
図10】
図10は、
図9に示す転送装置のいくつかの動作位置を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、転送装置及び当該装置のアクチュエータに関する
図10の拡大図であって、アクチュエータによって想定されるいくつかの角度位置を示す図である。
【
図12】
図12は、転送装置及びそのアクチュエータに関する
図9の詳細を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、圧延製品のガイド部材及び圧延製品の転送装置のための支持フレームに対する、螺旋状ガイドのない本発明の代替的な実施形態に係るコイラーの構成要素の相対的な直交側面図である。
【
図14】
図14は、本発明の特定の実施形態に係る回転コイラーを備えたコイル巻付けシステムの制御図である。
【
図15】
図15は、ウォブリングサイクルに係るコイラーの角速度の時間推移と、転送装置及びそのアクチュエータの位置の時間推移とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
添付の図面を参照して、本発明に係る熱間圧延製品のためのコイル巻付けシステムは、1にまとめて示されている。
【0041】
簡単にするために、本発明に係るコイル巻付け方法は、コイル巻付けシステムの後に記載され、コイル巻付けシステムを参照しながら説明される。
【0042】
後続の本明細書及び特許請求の範囲では、使用状態のコイル巻付けシステム1を参照する。従って、下側もしくは上側の位置、又は、水平方向もしくは垂直方向のあらゆる言及は、そのような意味で、理解されるべきである。
【0043】
本発明の一般的な実施形態によれば、コイル巻付けシステム1は、
-垂直軸Yを有する回転コイラー10と、
-回転コイラー10に進入する熱間圧延製品を搬送するための手段20と、
を備えている。
【0044】
特に
図5から
図8に示すように、回転コイラー10は、外側ドラム11と、外側ドラムと同軸の内側マンドレル12とを備えている。外側ドラム11と内側マンドレル12とは、ドラム11及び/又はマンドレル12と一体の底壁14によって底部で閉鎖された環状の間隙13を区画している。
【0045】
動作上、以下に続けるように、使用時、熱間圧延製品は、環状の間隙13内に堆積され(注がれ)て、リールの形態で巻付けられる。
【0046】
マンドレル12は、外側ドラム11に回転可能に取り付けられていてもよいし、ドラム自体とは独立して回転可能に移動されてもよい。好ましくは、底壁14は、内側マンドレル12に回転可能に一体的に取り付けられる。
【0047】
図1、
図2、及び
図14に模式的に示されているように、回転コイラー10は、コイラー10を回転させるように構成された電動手段15を備えている。
【0048】
回転コイラー10は、当業者にはよく知られている。したがって、それは、より詳細には説明されない。
【0049】
図5及び
図6に示すように、コイル巻付けシステム1の上流には、送り装置2が提供される。送り装置2は、圧延機(図示せず)から出てきて、通常はローラガイド3で構成される搬送ラインに沿って走行する熱間圧延製品を、コイラー10に向かって引き寄せるように設計されている。
【0050】
機能的には、前述した搬送手段20は、回転コイラー10に入った熱間圧延製品を前述した環状の間隙13に向けて搬送するように構成されている。
【0051】
好ましくは、前述した搬送手段は、前述した送り装置2とコイラー10の環状の間隙13との間のずれを補償するように意図された漏斗状のガイド部材20で構成されている。
【0052】
具体的には、前述した漏斗状のガイド部材20は、水平基準面に対して底壁14に向かって所定の傾斜角を形成する環状の間隙13に向かう軌道を熱間圧延製品に課すように構成されている。
【0053】
添付の図面に示すように、搬送手段20は、コイラー10に対して回転可能に固定された支持フレーム21と関連付けられている。
【0054】
有利には、支持フレーム21は、コイラー10に対して移動可能であり、特に、コイラー10から離れるように移動して、圧延製品を巻取る動作の終了時にリールを環状の間隙13から取り出すことが可能である。この目的のために、コイル巻付けシステム1は、前述した支持フレーム21をコイラー10に対して相対的に移動させるための手段50を備える。
【0055】
有利には、前述した支持フレーム21は、
図5及び
図6に示すように、コイラー10に対して垂直方向の回転軸Yに沿って同軸で移動可能である。
【0056】
特に
図7に示すように、前述した支持フレーム21は、軸方向に中空であり、少なくとも部分的に前述した環状の間隙13の内側にそれ自身を挿入するように構成されており、コイラー10の内側マンドレル12を同軸に受けて、前述した軸Yを中心として自由に回転可能である。
【0057】
支持フレーム21において、使用時に環状の間隙13内に挿入することを意図した下側部分21aと、使用時に環状の間隙13の外側に留まることを意図した上側部分21bとを識別することができる。
【0058】
本発明によれば、コイル巻付けシステム1は、コイラー10の回転によって誘導される螺旋軌道から前述した環状の間隙13内に熱間圧延製品を転送させるための手段30を備える。
【0059】
このような転送手段30は、コイラー1内に進入する圧延製品の移動に関して、前述した搬送手段20の下流側に配置されており、環状の間隙13内のコイラーの垂直軸Yに対する熱間圧延製品の半径方向の巻付け距離Rを設定するように構成されている。
【0060】
より具体的には、添付の図面に示すように、転送手段30は、使用時に熱間圧延製品と接触する転送部材31を備え、環状の間隙13内でのその向きは、半径方向の巻付け距離Rの設定を変化させるように調整可能である。
【0061】
本発明によれば、熱間圧延製品を制御可能な方法で環状の間隙内に誘導し、必要に応じてコイラー10の回転によって誘導される螺旋軌道に影響を与えて修正することができる。動作上、実際には、転送部材31の向きは、少なくとも同じ転送部材31の近くで、コイラーの垂直回転軸Yに対して予め決められた半径方向の距離Rを取るように熱間圧延製品を強制する。それにより、螺旋軌道を調整して、リールQのコイルSの形成を調整する。
【0062】
転送部材31は、環状の間隙13内でその向きを調整可能であるため、回転コイラー10内でのリールQの形成中の充填をより良く制御することができる。
【0063】
好ましくは、以下に続けるように、転送部材31の向きは、リール形成中に時間の経過とともに変化し、それにより、コイラー10内のコイルSのリアルタイム制御が実施される。このようなリアルタイム制御モードは、自動制御システムを介して実施される。
【0064】
より具体的には、このリアルタイム制御モードは、ウォブリングサイクルを介したリールの形成の制御ロジックに関連付けられてもよい。この場合、
図15に示すように、ウォブリングサイクルによって設定された巻付け機10の加速-減速サイクルに同期して時間的に変化するように、転送部材31の向きを制御ロジックが提供してもよい。これにより、コイルの位置に影響を与えるとともに単純なウォブリングサイクルを介した制御から逃れる動作変数を-少なくとも部分的に-制御することができるので、コイルの形成に対する制御を増加させることが可能である。より具体的には、リールのコイルの形成に対する遠心力の影響を打ち消すことが可能である。
【0065】
前述したリアルタイム調整モードは、ウォブリングサイクルの制御ロジックの実施とは独立して実施されてもよい。言い換えれば、転送部材31のリアルタイム制御は、ウォブリングサイクルの実装に取って代わられてもよい。本発明によれば、形成される各コイルSについて、環状の間隙13内で、コイラーの垂直軸Yに対する熱間圧延製品の半径方向の巻付け距離Rを設定することが可能である。
【0066】
或いは、転送部材31は、リール形成中に固定された向きで調整されてもよい。この向きは、例えば、環状の間隙13の中央領域における圧延製品の充填を容易にするのに適した折衷位置として選択されてもよく、これにより、少なくとも部分的に、主に外側ドラム11に向かって充填されるとともに、内側マンドレル12にも向かって充填されるという自然な傾向が修正されてもよい。このような固定された向きは、動作条件が変化したときに、例えば、コイラーの回転がマンドレル又はドラムに向かう充填を避ける傾向がある場合に、マンドレル又はドラムに向かう充填を容易にするように変更されてもよい。この固定設定調整モードは、動作的に実施しやすく、コイル巻付けプロセスの前又はプロセス中にオペレータによって手動で実施されてもよい。
【0067】
動作上、この固定設定調整モードは、特に低速で、具体的には10m/sを超えない速度で、より低い遠心力を受けるように、熱間圧延製品に適用されてもよい。
【0068】
好ましくは、特に
図5、
図7、
図9、及び
図13に示すように、前述した転送手段30は、支持フレーム21に関連付けられている。
【0069】
より具体的には、前述した転送手段30は、支持フレーム21の前述した下側部分21aに関連付けられている。下側部分21aは、使用時に環状の間隙13内に挿入されることが意図されている。
【0070】
好ましくは、特に
図8、
図9、
図10、及び
図13に示すように、前述した転送部材31は、熱間圧延製品のための内部貫通座部32を区画しており、内部貫通座部は、使用時にコイラー10の垂直軸Yに対して半径方向の距離Rで、環状の間隙13内に配置される出口部分33で終わる。
【0071】
特に
図10及び
図11に示すように、前述した転送部材31は、外側ドラム11と内側マンドレル12との間の環状の間隙13に対して配向されて、環状の間隙13内の前述した出口部分33の半径方向の距離Rを変化させ、その結果、使用時に転送部材31から出る熱間圧延製品Lの半径方向の巻付け距離Rを垂直軸Yに対して変化させることができる。これにより、コイラー10の回転によって誘導される螺旋軌道から熱間圧延製品Lをそらすことが可能であり、個々のコイルSの形成を調整することができる。
【0072】
動作上、転送部材31は、熱間圧延製品Lを変形させる機能を有していない。この機能は、実際には、コイラー10と、可能な螺旋状ガイド(以下に示すように、設けられている場合)とによって実行される。既に述べたように、転送部材31の主な機能は、コイラー10の回転によって誘導される螺旋軌道から熱間圧延製品Lを局所的にそらすことである。したがって、この機能を実行するために、転送部材31に熱間圧延製品を長い距離(螺旋状ガイドがしなければならないように)係合させる必要はない。逆に、熱間圧延製品Lの摺動によって誘導される調整上の干渉を避けて、環状の間隙13内の転送部材31の向きをより容易に調整するために、転送部材31の構造的な要件と互換性があるように、転送部材31が熱間圧延製品に可能な限り小さな距離だけ係合することが好ましい。
【0073】
好ましくは、巻付けられる熱間圧延製品の特性に応じて、転送部材31は、5°と45°との間の角度に対応する円周の円弧に相当する延長部を有してもよく、更に好ましくは、その角度は5°と20°との間である。
【0074】
有利なことに、螺旋状ガイドと比較して転送部材31のサイズが小さく、それにより発生する摩擦が小さいので、処理される熱間圧延製品Lの断面により適した内部貫通座部32を有する転送部材31の使用が可能となる。これにより、熱間圧延製品Lをより正確に方向付けて、コイルが環状の間隙13内でより正確な半径方向の位置を取るように強制することが可能である。
【0075】
有利なことに、螺旋状ガイドに対する転送部材31のサイズが小さいため、摩耗の場合、或いは、リールに巻かれる熱間圧延製品のフォーマットを変更する場合に、転送部材31を交換することが容易になる。
【0076】
好ましくは、前述した転送部材31は、直線状又は曲線状の管状体で構成される。管状体の中空の内部セクションは、熱間圧延製品のための前述した内部貫通座部32を形成する。
【0077】
或いは、前述した転送部材は、ローラガイドで構成されてもよい。ローラ間の貫通開口部は、熱間圧延製品のための前述した内部貫通座部32を形成する。
【0078】
図5から
図10に示す好適な実施形態によれば、コイル巻付けシステム1は、搬送手段20の下流側で、支持フレーム21に関連付けられた螺旋状ガイド60を備えてもよい。
【0079】
機能的には、この螺旋状ガイド60(一連の静的ガイド又はローラガイドを含む)は、好ましくは、前述した環状の間隙13の中央円周部の半径に相当する予め決められた平均曲率半径を有する曲率を、熱間圧延製品に付与するのに適している。螺旋状ガイド60は、熱間圧延製品に円筒状の螺旋軌道を課す。したがって、螺旋状ガイド60は、水平基準面に対する底壁14に対する予め決められた傾斜角を形成する軌道を熱間圧延製品に課す。
【0080】
この場合、転送手段30は、前述した螺旋状ガイド60の下流側に配置され、熱間圧延製品を螺旋状ガイド60の外部で受け止め、既に変形した熱間圧延製品を制御された方法で転送するようになっている。
【0081】
言い換えれば、螺旋状ガイド60は、搬送手段20と転送手段30との間に配置されている。
【0082】
好ましくは、転送手段の上流側の螺旋状ガイド60の存在下では、転送部材31内の熱間圧延製品のための内部貫通座部32は、熱間圧延製品が螺旋状ガイドを出るときに熱間圧延製品によって既に想定される曲率に従うように湾曲した軌道を定義する。より具体的には、転送部材31によって定義される湾曲した軌道は、前述した螺旋状ガイド60の予め定義された平均曲率半径と実質的に同等の曲率半径を有する円周の円弧である。
【0083】
有利には、特に
図7及び
図9に示すように、螺旋状ガイド60は、上側部分21bと下側部分21aとの間の支持フレーム21の高さ全体にわたって延在している。
【0084】
動作上、螺旋状ガイド60は、熱間圧延製品が環状の間隙13内に堆積される際に、熱間圧延製品に付随する機能を有している。この目的のために、支持フレーム21によって移動される螺旋状ガイド60は、最初は底壁14の近くまで環状の間隙13内に完全に挿入され、その後、リールが高さ方向に伸展することができるように徐々に上方に上昇される。螺旋状ガイド60を徐々に上昇させることにより、螺旋状ガイド60の出口部分と成形リールに堆積された最後のコイルとの間に一定の距離が維持される。転送部材31は、支持フレーム21及び関連する螺旋状ガイド60と一体であり、形成されるリールの近傍での新しいコイルの堆積を制御することを可能にする。
【0085】
好ましくは、螺旋状ガイドの解決策は、1,300mm2未満(直径40mmのロッドに相当)の断面を有する熱間圧延製品に使用される。
【0086】
図13に示す別の実施形態によれば、コイル巻付けシステム1は、螺旋状ガイド60を備えていない場合がある。
【0087】
この場合、前述した転送手段30は、螺旋状ガイドを介在させることなく、搬送手段20のすぐ下流に配置される。
【0088】
機能的には、螺旋状ガイドがない場合、熱間圧延製品の曲率は、回転運動によって決定されるコイラーの作用に完全に委ねられる。転送部材31は、熱間圧延製品が変形する前に、熱間圧延製品を正確な半径方向の位置に強制的に移動させることにより、螺旋軌道を修正する。
【0089】
螺旋状ガイドがない場合、転送部材31の熱間圧延製品のための内部貫通座部32は、湾曲した軌道又は直線軌道を定義してもよい。
【0090】
螺旋状ガイドが設けられている場合に対して、螺旋状ガイドがない場合であってコイラー10の高さが等しい場合、支持フレーム21は、底壁14の近くに到達することなく環状の間隙13に部分的に進入するのに十分であるので、高さ方向において低い延長部を有してもよい。
【0091】
好ましくは、螺旋状ガイドなしの解決策は、1,300mm2を下回らない断面を有する熱間圧延製品のために適用される。
【0092】
図7、
図8、
図9、
図12、及び
図13に示す実施形態によれば、転送部材31は、垂直旋回軸Zを中心として支持フレーム21に軸支されるとともに、出口部分33の半径方向の距離Rを変化させるように、この垂直旋回軸Zを中心として回転されてもよい。
【0093】
好ましくは、前述した垂直旋回軸Zは、環状の間隙13、特に環状の間隙13の中央部の円周上を通過する。
【0094】
特に
図9及び
図13に示すように、転送部材31は、垂直投影面上の水平基準面に関する底壁14に向かう傾斜角βを形成する環状の間隙13内の軌道を熱間圧延製品に課すように方向付けられている。
【0095】
好ましくは、前述した傾斜角βは、搬送手段20及び螺旋状ガイド60(設けられている場合)によって熱間圧延製品Lに課される傾斜角に対応する。
【0096】
有利には、前述した転送部材31は、前述した傾斜角βを変化させるために水平旋回軸Xを中心に回転させることができるように、支持フレーム21と関連付けられてもよい。傾斜角βの調整は、手動又は自動でされてもよい。
【0097】
有利には、コイル巻付けシステム1は、環状の間隙13内の転送部材31の向きを調整するための手段40を備えている。
【0098】
具体的には、前述した調整手段40は、伝達装置42を介して前述した転送部材31に直接又は間接的に接続されたアクチュエータ41を備えている。
【0099】
アクチュエータ41は、目的に適した任意のタイプのものであってもよい。より具体的には、(添付の図に示すように)電動モータで構成されてもよいし、空気圧式、油圧式、電気式のリニアアクチュエータで構成されてもよい。或いは、アクチュエータは、オペレータが手動で操作することができるレバーで構成されてもよい。
【0100】
好ましくは、アクチュエータ41は、使用時には環状の間隙13の外側に留まることが意図されている支持フレーム21の上側部分21bに関連付けられており、伝達装置42を介して(支持フレーム21の下側部分21aに関連付けられた)転送部材31に接続されている。これにより、アクチュエータ41の健全性が維持され、環状の間隙13内に放出される熱から保護される。
【0101】
図7及び
図12に特に示された好適な実施形態によれば、転送部材31(特に管状体で構成される)は、支持構造体34を介して支持フレーム21と間接的に関連付けられている。支持構造体34は、前述した垂直旋回軸Zを中心として回転するようにフレーム21の下側部分21aに軸支されている。転送部材31は、傾斜角βを変化させるように、前述した水平旋回軸Xを中心として回転するように支持構造体34に軸支されてもよい。
【0102】
より具体的には、支持構造体34は、接続ロッド35を介して直接又は間接的に偏心軸36に接続されている。偏心軸36は、好ましくは電動モータで構成される前述したアクチュエータ41によって回転駆動されてもよい。特定の例においては、偏心軸36と接続ロッド35(もしあれば)とが前述した伝達装置42を形成する。
【0103】
動作上、
図11及び
図15に示すように、アクチュエータ41によって偏心軸36の角度位置を制御することによって、軸Zに対する転送部材31の角度位置を制御することが可能である。軸Zに対する転送部材31の各角度位置は、出口部分33の異なる半径方向の距離R(R0,R1,R2)に対応するとともに、環状の間隙13内における転送部材31の異なる向きに対応する。
【0104】
特に
図14に示す本発明の好適な実施形態によれば、調整手段40は、電子制御ユニット100を備えている。電子制御ユニット100は、前述したアクチュエータ41に接続され、転送部材31の配向のために予め決められた調整ロジックに従ってアクチュエータ41の介入を制御するようにプログラムされている。電子制御ユニット100は、ユーザインタフェース102を備えている。
【0105】
有利には、前述した予め決められた調整ロジックは、転送部材31の向きが時間の経過とともに変化することを提供する。
【0106】
好ましくは、
図15に示すように、前述した予め決められた調整ロジックは、転送部材31の向きが時間の経過とともに周期的に変化することを提供する。
【0107】
より具体的には、転送部材31(出口部分33の半径方向の距離Rによって定義される)の向きは、最小の半径方向の距離R2(内側マンドレル12に近い巻付け軌道に対応)と最大の半径方向の距離R1(外側ドラム11に近い巻付け軌道に対応)との間で、中間の半径方向の距離R0(好ましくは、環状の間隙13の中央部の円周に対応する巻付け軌道に対応)を通過しながら、時間の経過とともに周期的に変化する。時間経過に伴う転送部材31の向きの周期的変化は、形成されるコイルが、環状の間隙13の半径方向の幅の全て又は予め決められた部分にわたって分布することを可能にする。
【0108】
有利には、前述した予め決められた調整ロジックは、転送部材31の向きが、コイラー10の加速-減速サイクル(例えば、ウォブリングサイクルによって課される)と同期した方法で時間の経過とともに周期的に変化することを提供してもよい。
【0109】
より具体的には、
図14に示すように、前述した電子制御ユニット100は、コイラー10の前述した電動手段15に接続され、リール形成の予め決められた制御ロジックに従って、特にコイラー10の回転速度を制御するように構成されている。特に、電子制御ユニット100は、いわゆるウォブリングサイクルを実施するために、加速-減速サイクルの予め決められたシーケンスをコイラー10に課すようにプログラムされてもよい。この目的のために、コイラー10の回転角速度は、前述した電動手段15に関連付けられるとともに電子制御ユニット100に接続された位置センサ又はエンコーダ103によって検出されてもよい。
【0110】
有利には、軸Zに対する転送部材31の角度位置の変動の振幅(及び半径方向の距離R)は、巻かれる熱間圧延製品の断面に反比例する。
【0111】
有利には、
図14に示すように、転送部材31の向きは、アクチュエータ41(又はキネマティックチェーン42に直接的)に適用されるとともに電子制御ユニット100に接続された位置センサ又はエンコーダ101を介して検出することができる。
【0112】
ここで、本発明に係るコイル巻付けシステム1を用いた熱間圧延製品のコイル巻付け方法を説明する。
【0113】
本発明に係る方法は、以下の動作工程を含む。
a)搬送手段20と転送手段30とを環状の間隙13内に位置決めするように、支持フレーム21をコイラーに関連付ける工程。
b)前述した搬送手段20によって熱間圧延製品を環状の間隙13に向けて搬送する工程。
c)前述したb)の工程における搬送と同時にコイラー10をその垂直回転軸Yを中心として回転させ、熱間圧延製品Lに垂直回転軸Yを中心とする巻付け軌道を課し、底壁14から始まる環状の間隙13内に複数のコイルを有するリールの漸進的な形成を実行する工程。
【0114】
本発明によれば、本方法は、環状の間隙13内のコイラーの垂直軸Yに対する熱間圧延製品の半径方向の巻付け距離Rを設定し、環状の間隙13内の転送部材31の向きを調整し、転送手段30を介して環状の間隙13内の熱間圧延製品をコイラー10の回転によって誘導される螺旋軌道から転送させ、環状の間隙13内でコイルの制御された分布を得るd)の工程を含む。
【0115】
好ましくは、前述したd)の工程における設定において、環状の間隙13内のコイラーの垂直軸Yに対する熱間圧延製品の半径方向の巻付け距離Rは、制御された方法で環状の間隙13内の転送部材31の向きを変化させることによって、時間の経過とともに変化する。
【0116】
有利には、コイラーの前述したc)の工程における回転は、予め決められたシーケンスの加速-減速サイクルで実施される。転送部材31の向きは、コイラー10の前述した加速-減速サイクルに同期して時間の経過とともに変化する。
【0117】
コイル巻付けシステム1を説明する際に既に上で強調した本発明によって提供される利点は、コイル巻付け方法にも適用されるので、説明の簡潔さのためにここでは繰り返さない。
【0118】
本発明により、既に部分的に説明した多くの利点が得られる。
【0119】
本発明により、必要に応じて、コイラーの回転によって誘導される螺旋軌道を修正するように影響を与えながら、熱間圧延製品を環状の間隙内で制御可能な方法で方向付けることが可能である。動作上、転送部材の向きは、熱間圧延製品に、少なくとも同じ転送部材の近くで、コイラーの垂直回転軸に対して予め決められた半径方向の距離を取ることを強制し、その結果、螺旋軌道を調整し、リールQのコイルSの形成を調整する。
【0120】
転送部材は、環状の間隙内でその向きを調整可能であるので、回転コイラー内でのリールQの形成中に、リールQの充填をより良く制御することができる。
【0121】
本発明に係る回転コイラーによる熱間圧延製品のコイル巻付けシステムは、転送部材の向きを時間の経過とともに周期的に変更する場合には電子制御ユニットによって自動的に、又は転送部材の向きの固定された設定が提供される場合には手動で、動作上の観点から容易に管理することができる。
【0122】
自動制御の場合、本発明に係るコイル巻付けシステムは、コイルの形成のリアルタイム制御をコイラー内で実施することができる。
【0123】
転送部材を介したコイルの形成のリアルタイム制御は、単一の制御システムとして実施されてもよいし、ウォブリングサイクルと組み合わせて実施されてもよい。
【0124】
本発明に係るコイル巻付けシステムは、従来の巻付けシステムと比較して、転送部材とその調整手段の設置のみを必要とするので、実施するのが簡単で経済的である。記載されているように、そのような構成要素は、機械的に非常に簡単な方法で製造され、設置されてもよい。
【0125】
有利には、螺旋状ガイドに対する転送部材の小型化により、転送部材を加工された熱間圧延製品Lの断面に適合させることが可能となり、摩耗時にも、リールに巻かれる熱間圧延製品の形式が変更された場合にも、その迅速な交換を提供することが可能となる。
【0126】
従って、このようにして考え出された本発明は、前述した目的を達成するものである。
【0127】
明らかに、その実用的な実施形態において、本発明は、現在の保護範囲から逸脱することなく、前述したもの以外の実施形態及び構成を取ることを想定することができる。
【0128】
更に、全ての詳細は、技術的に等価な要素で置き換えられてもよく、使用される寸法、形状、及び材料は、必要に応じて任意の種類のものであってもよい。