(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ストッパーロッド、並びに、ストッパーロッドの周りに一様なガスカーテンを設けるための方法
(51)【国際特許分類】
B22D 41/18 20060101AFI20230307BHJP
B22D 11/10 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B22D41/18
B22D11/10 310P
(21)【出願番号】P 2021550194
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020052020
(87)【国際公開番号】W WO2020182362
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-08-27
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503069193
【氏名又は名称】リフラクトリー・インテレクチュアル・プロパティー・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゲルノト・ハックル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・フェルナー
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-110430(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106513653(CN,A)
【文献】特開平03-110048(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02067549(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 33/00-47/02
B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属の流れを制御し、かつ、溶融金属を鋳造している間、ガスを供給するためのストッパーロッド(100)において、
1.1 棒状のストッパーボディー(101)であって、
1.1.1 縦方向の中心軸(L)に沿って第1の端部(105)から第2の端部(107)まで延びており、
1.1.2 該棒状のストッパーボディー(101)が前記第2の端部(107)に隣接するノーズ(103)を画定し、
1.1.3 前記ノーズ(103)が外部表面を提供する、
棒状のストッパーボディー(101)と、
1.2 チャンバー(109)であって、
1.2.1 前記縦方向の中心軸(L)に沿って、前記第1の端部(105)から前記第2の端部(107)へ向かって前記ストッパーボディー(101)の中へ延びて、前記第2の端部(107)から一定の距離を置いた手前で終端している、
チャンバー(109)と、
1.3 通路(111)であって、
1.3.1 前記ノーズ(103)の前記外部表面に設けられ、
1.3.2 前記縦方向の軸(L)の周りを延在している、
通路(111)と、
1.4 ガス供給手段(123)であって、
1.4.1 前記チャンバー(109)から前記棒状のストッパーボディー(101)を通って前記通路(111)に通じている、
ガス供給手段(123)と
を含んでなることを特徴とする、ストッパーロッド(100)。
【請求項2】
前記通路(111)がリングを形成していることを特徴とする、請求項1に記載のストッパーロッド(100)。
【請求項3】
前記ノーズ(103)の前記外部表面が前記縦方向の軸(L)に対して回転対称であることを特徴とする、
請求項1に記載のストッパーロッド(100)。
【請求項4】
前記通路(111)が、前記第1の端部(105)に向かう方向に前記通路(111)を制限する第1の通路壁(113)を備え、前記第1の通路壁(113)および前記ノーズ(103)の前記外部表面が第1の縁(119)を形成し、前記第1の縁(119)が鋭い縁の形を有していることを特徴とする、
請求項1に記載のストッパーロッド(100)。
【請求項5】
前記第1の縁(119)が1mm以下の半径を有していることを特徴とする、請求項4に記載のストッパーロッド(100)。
【請求項6】
前記通路(111)が、前記第2の端部(107)に向かう方向に前記通路(111)を制限する第2の通路壁(115)を備え、前記第2の通路壁(115)および前記ノーズ(103)の前記外部表面が第2の縁(121)を形成し、前記第1の縁(119)と前記第2の縁(121)の間の距離が2mmから30mmまでの範囲であることを特徴とする、請求項4または5に記載のストッパーロッド(100)。
【請求項7】
前記通路(111)が4mmから15mmまでの範囲である深さを有していることを特徴とする、
請求項1に記載のストッパーロッド(100)。
【請求項8】
前記通路(111)が6mmから12mmまでの範囲である深さを有していることを特徴とする、
請求項1に記載のストッパーロッド(100)。
【請求項9】
前記通路(111)が2mm
2から225mm
2までの範囲である断面積を有して
おり、前記通路(111)の断面積は、前記通路(111)の長手方向の進路に対して直角の方向にあることを特徴とする、
請求項1に記載のストッパーロッド(100)。
【請求項10】
前記ガス供給手段(123)が複数のガス供給ライン(123)であり、前記ガス供給ライン(123)の各々がある領域で前記通路(111)に通じており、前記領域が互いに間隔を隔てていることを特徴とする、
請求項1に記載のストッパーロッド(100)。
【請求項11】
前記領域が対称的に互いに間隔を隔てていることを特徴とする、請求項10に記載のストッパーロッド(100)。
【請求項12】
前記ガス供給ライン(123)の総数が2本から10本までの範囲であることを特徴とする、
請求項10に記載のストッパーロッド(100)。
【請求項13】
前記チャンバー(109)が断面積を有し、前記ガス供給ライン(123)の各々が断面積を有し、前記チャンバー(109)の断面積が前記ガス供給ライン(123)の断面積のすべての総面積より広
く、前記チャンバー(109)の断面積は、前記縦方向の中心軸に対して直角に測定されることを特徴とする、
請求項10に記載のストッパーロッド(100)。
【請求項14】
前記ストッパーボディー(101)が耐火セラミック材料でできていることを特徴とする、
請求項1に記載のストッパーロッド(100)。
【請求項15】
ストッパーロッドの周りに一様なガスカーテンを設けるための方法であって、
A.
請求項1に記載のストッパーロッド(100)を提供するステップと、
B.ガスを前記チャンバー(109)の中に導入するステップと
を含んでなることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストッパーロッド、並びに、ストッパーロッドの周りに一様なガスカーテンを設けるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属の連続鋳造、詳細には連続鋳造工場における溶融鋼の連続鋳造では、溶融金属は、容器、詳細にはとりべまたはタンディッシュの形態の容器の中に提供される。
【0003】
出口は、溶融金属が提供される容器の底に設けられており、この出口を介して、容器の中の溶融金属を容器の下方に集合配置されている下流側に注ぐことができる。
【0004】
タンディッシュの底には、タンディッシュノズルの形態のこのような出口が設けられている。このようなタンディッシュノズルは、水没入力ノズル(submerged entry nozzle、SEN)または水没入力シュラウド(submerged entry shroud、SES)の形態で提供することができる。タンディッシュからの溶融金属は、タンディッシュノズルを介して型の中に注ぐことができる。ストッパーロッドは、出口、詳細にはタンディッシュノズルを通って流れる溶融金属の量を制御するために設けられている。
【0005】
これらのストッパーロッドは、棒状のストッパーボディーを有しており、このストッパーボディーは、出口の上方、例えばタンディッシュノズルの上方に、垂直方向に整列されている。ストッパーロッドの上端では、金属ロッドがストッパーロッドに取り付けられており、それにより金属ロッドは、今度は持上げデバイスに接続されており、この持上げデバイスを介してストッパーロッドを垂直方向に上げ下げすることができる。ストッパーロッドの下端では、ストッパーロッドは、「ストッパーノーズ」として同じく知られているノーズを有している。ストッパーロッドを下げることにより、ノーズによって出口を完全に閉じることができ、したがって溶融金属が出口を通って流れることができない方法でノーズを出口に対して案内することができる。
【0006】
さらに、ストッパーロッドは、出口を開放して溶融金属が出口を通って流れることができるよう、垂直方向に持ち上げることができる。したがって出口、例えばタンディッシュノズルを通る溶融金属の流量は、ストッパーロッドによって制御することができる。
【0007】
鋳造している間、溶融金属中に存在している粒子が、耐火材料の上、詳細にはストッパーロッド、出口、またはタンディッシュノズルの下流側の浸入ノズルの上に堆積することがある。これらの粒子は、とりわけ、溶融金属中に存在するアルミナ粒子であり得る。この堆積は、「詰まり」として同じく知られている。詰まりを抑制するために、不活性ガス、とりわけアルゴンまたは窒素がストッパーロッドのノーズの領域の溶融金属中に導入され、それにより詰まりを抑制することができることが知られている。
【0008】
例えばノーズ領域にガス出口を有する一般的なストッパーロッドが欧州特許出願公開第2067549号明細書(特許文献1)、欧州特許出願公開第2189231号明細書(特許文献2)または欧州特許出願公開第2233227号明細書(特許文献3)に記載されている。
【0009】
しかしながらストッパーロッドのノーズの領域における溶融金属中にガスを導入することは、鋳造している間、方向が交互に変化する、ストッパーロッドの混沌とした非一様な偏向をもたらすことになり得る(以下、「偏向」と呼ばれる)。鋳造中におけるこの偏向は、鋳造金属の品質に対する負の影響を有し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第2067549号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2189231号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2233227号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、溶融金属の流れを制御し、かつ、溶融金属を鋳造している間、供給ガスを供給するためのストッパーロッドを提供する目的に基づいており、最新技術によるストッパーロッドの偏向と比較すると、鋳造プロセスの間、およびストッパーロッドを介してガスを溶融金属中に同時に導入している間、ストッパーロッドの偏向が低減される。
【0012】
本発明のさらなる目的は、このようなストッパーロッドを使用するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の問題を解決するために、本発明は、溶融金属の流れを制御し、かつ、溶融金属を鋳造している間、ガスを供給するためのストッパーロッドを提供し、前記ストッパーロッドは、
棒状のストッパーボディーであって、縦方向の中心軸に沿って第1の端部から第2の端部まで延びており、前記第2の端部に隣接するノーズを画定し、前記ノーズが外部表面を提供する、棒状のストッパーボディーと、
チャンバーであって、前記縦方向の中心軸に沿って、前記第1の端部から前記第2の端部へ向かって前記ストッパーボディーの中へ延びて、前記第2の端部から一定の距離を置いた手前で終端している、チャンバーと、
通路であって、前記ノーズの前記外部表面に設けられ、前記縦方向の軸の周りを延在している、通路と、
ガス供給手段であって、前記チャンバーから前記棒状のストッパーボディーを通って前記通路に通じている、ガス供給手段と
を備えている。
【0014】
本発明は、鋳造プロセスの間、およびストッパーロッドを介してガスを溶融金属中に同時に供給している間のストッパーロッドの偏向は、ガスがストッパーロッドのノーズから溶融金属中に一様に解放されないことによるものであることの基本的な発見に基づいている。と言うよりも、本発明によれば、最新技術によるストッパーロッドの場合、ストッパーノーズから溶融金属中に導入されるガスは、溶融金属中のストッパーロッドの周りで上に向かって非一様に立ち上がり、したがってストッパーロッドの前記偏向をトリガすることが分かった。
【0015】
驚くべきことには、本発明によれば、ストッパーロッドのこの偏向は、ガスをストッパーロッドから溶融金属中に一様に導入することによって著しく小さくすることができることが分かった。詳細には、本発明は、ストッパーロッドの偏向は、ストッパーロッドの周りに一様なガスカーテンが形成される方法でガスをストッパーロッドから溶融金属中に導入することによって著しく小さくすることができることを示した。したがって本発明によれば、ガスをストッパーロッドから溶融金属中に一様に導入することができる手段が本発明によるストッパーロッドの上に提供される。詳細には、ストッパーロッドの周りに一様なガスカーテンを形成することができる手段が設けられる。
【0016】
したがって本発明によるストッパーロッドの特徴は、ガスを本発明によるストッパーロッドを介して溶融金属中に一様に導入することができる方法で設計されており、詳細には、ストッパーロッドの周りに一様なガスカーテンを設けることができる方法で設計されている。
【0017】
ガスをストッパーロッドから溶融金属中に一様に導入するためのこれらの手段の本質的な要素は、ノーズの外部表面に提供され、ストッパーボディーの縦方向の軸の周りを走っている、ストッパーロッドの通路である。ガス供給手段を使用して、ガスがストッパーロッドの前記チャンバーから前記通路中に導入される。通路はガス分配チャンバーとしても作用し、ガス供給手段によって通路に導入されたガスをこの中に集めて分配することができる。通路はストッパーノーズの外部表面に配置され、縦方向の軸の周りを完全に走っているため、通路中に集められ、かつ、分配されたガスを、ストッパーノーズの円周表面全体に沿って溶融金属中に一様に導入することができる。この点に関して、通路は、ガスをガス供給から受け取り、かつ、通路全体に一様に分配するように設計されている。
【0018】
したがって通路から解放されたガスは、それを溶融金属中に一様に導入することができるだけでなく、ストッパーロッドの周りに一様なガスカーテンを形成することができる。
【0019】
通路の外側に向かう方向、すなわち通路の、ストッパーボディーから見て外側に向いている側では、通路は完全に開いていることが好ましい。これには、ガスを通路の長さ全体にわたって溶融金属中に導入することができ、したがってガスを溶融金属中に極めて一様に導入することができる利点がある。
【0020】
通路は、壁によって境界が定められる(通路の、ストッパーボディーから見て外側に向いている側を除く)。これには、ガス供給手段から通路に導入されたガスを通路に集めることができる利点がある。
【0021】
基本的には通路の断面積、すなわち通路の長手方向の進路に対して直角の方向における通路の断面積は、例えば概ね円形の断面積(すなわちC字形断面積)、半円形の通路底部および真っ直ぐな側壁を有する断面積(すなわちU字形断面積)、または平らな通路底部および真っ直ぐな側壁を有する断面積(すなわち正方形、例えば長方形または正方形の断面積)である任意の形を有することができる。
【0022】
通路はV字形断面積を有していることがとりわけ好ましい。したがって通路は、通路の側壁が共通領域(通路底部を構築している)からノーズの外部表面に向かって(したがって縦方向の軸から離れる1つの方向に)発散し、最終的に側壁がノーズの外部表面中に没入している形を有している。本発明によれば、通路がこのようなV字形断面積を有している場合、ガスを通路からとりわけ一様に溶融金属中に導入することができることが分かった。
【0023】
好ましい実施形態によれば、通路は一様な断面積を有している。したがって通路の断面積は、通路の進路全体にわたって変化しない。これは、ガスを通路の中に極めて一様に集めることができ、したがって通路のこのような一様な断面積には、延いてはガスを通路から極めて一様に解放することができ、また、溶融金属中に導入することができる利点があることを意味している。
【0024】
とりわけ好ましい実施形態によれば、通路は連続的に設計されており、すなわち縦方向の軸の周りを連続的に走っている。言い換えると通路は、開始および終わりを有することなく、縦方向の軸の周りを継目なしに、すなわち「無限に」延在している。さらに、通路は、通路に沿ったガスの流れを妨害し得る障害物または中断を有していない。このような連続通路には多くの利点がある。このような連続通路の1つの利点は、通路に沿ったガス圧を平衡させることができ、したがって通路に沿ったガス圧が等しくなり、また、ガスを通路から溶融金属中に同じ圧力で解放することができ、したがって通路の長さ全体にわたって同じ量のガスを解放することができることである。さらに、このような連続通路には、例えばガス供給手段の一部が阻止されることによってガス供給手段の一部を介して通路にガスを供給することができない場合であっても、そのガス供給手段を介して通路にガスを供給することができる利点がある。すべてのこれらの利点は、延いては通路にガスを一様に、かつ、完全に満たすことができ、したがってガスを通路から溶融金属中に一様に導入することができることを意味している。
【0025】
基本的には、通路は、縦方向の軸の周りに例えばジグザグの形または波のような形の任意の進路を有することができる。好ましい実施形態によれば、通路は、リングの形であるか、または円形のリングの形を有するリングを形成している。本発明によれば、このようなリングの形の通路により、ガスを通路から溶融金属中にとりわけ一様に導入することができることが分かった。
【0026】
とりわけ好ましい実施形態によれば、通路は、とりわけそれがリングの形である場合、縦方向の軸に対して回転対称である。
【0027】
本発明によれば、驚くべきことには、通路をストッパーボディーの第1の端部に向かって制限している通路の壁がストッパーノーズの外部表面中に没入している領域によって画定される縁(すなわちストッパーの機能位置における通路の「上側の」縁)の形は、ガスが通路から溶融金属中に解放される方法に対して高い影響力を有していることが分かった。この点に関して、本発明によれば、驚くべきことには、とりわけこの縁が可能な限り鋭い場合、ガスを通路から溶融金属中にとりわけ一様な方法で導入することができることが分かった。したがって好ましい実施形態によれば、通路は、前記第1の端部に向かう方向に通路を制限する第1の通路壁を備え、前記第1の通路壁および前記ノーズの前記外部表面は第1の縁を形成し、また、前記第1の縁は鋭い縁の形を有していることが実現される。
【0028】
本発明による着想の特殊な実施形態によれば、この第1の縁は1mm以下の半径を有している。第1の縁は0.5mm以下の半径を有していることがより一層好ましい。
【0029】
本発明によれば、ガスが通路から溶融金属中に解放される方法は、通路口の幅、すなわち通路がノーズの外部表面中に没入する領域における通路の幅に同じく依存することが同じく分かった。通路口は、通路(すなわち通路の壁)がノーズの外部表面中に没入する領域では、2mmから30mmまでの範囲の幅を有していることが好ましい。
【0030】
この特徴のとりわけ好ましい実施形態によれば、通路は、通路を前記第2の端部に向かう方向に制限している第2の通路壁を備えており、前記第2の通路壁および前記ノーズの前記外部表面は第2の縁を形成しており、また、前記第1の縁と前記第2の縁の間の距離は、2mmから30mmまでの範囲にある。
【0031】
通路は、その口の領域、すなわち通路がノーズの外部表面中に没入する領域では、一定の幅を有していることが好ましい。この点に関して、この実施形態によれば、第1の縁および第2の縁は、場合によっては互いに平行に走っていることが好ましい。
【0032】
本発明によれば、通路の深さも、ガスを通路から溶融金属中に導入することができる方法に対する影響力を同じく有していることが分かった。通路は、4mmから15mmまでの範囲の深さを有していることが好ましい。
【0033】
本発明によれば、通路が4mmから15mmまでの範囲の深さを有している場合、通路からのガスを溶融金属中にとりわけ一様に導入することができることが分かった。通路から溶融金属中へのガス吐出の一様性は、6mmから12mmまでの範囲の深さを有する通路によってさらに増すことができる。通路の「深さ」は、その上端における通路の2つの縁の間(すなわち通路の壁がノーズの外部表面中に没入する通路の2つの縁の間)を延びている仮想平面の最も短い距離、および通路の最も低い点、すなわち通路の底として定義される。
【0034】
さらに、本発明によれば、通路の断面積の広さも、ガスを通路から溶融金属中に導入することができる方法に対する影響力を同じく有していることが分かった。通路は、2mm2から225mm2までの範囲の断面積を有していることが好ましい。本発明によれば、通路がこのような断面積を有している場合、ガスを通路から溶融金属中にとりわけ一様に導入することができることが分かった。通路から溶融金属中へのガスの解放の一様性は、8mm2から70mm2までの範囲の断面積を有する通路によってさらに改善することができる。
【0035】
棒状のストッパーボディー、および縦方向の中心軸に沿ってストッパーボディーの中へ延びているチャンバーは、最新技術に従って設計することができる。この点に関して、棒状のストッパーボディーは、場合によっては耐火材料、とりわけセラミック耐火材料でできていることが好ましい。詳細には、棒状のストッパーボディーは、アルミナ(Al2O3)および炭素をベースとする耐火材料、すなわちいわゆるアルミナ-炭素材料で構築することができる。
【0036】
棒状のストッパーボディーは、場合によっては、縦方向の中心軸に対して回転対称である外部円周表面を有していることが好ましい。これは、通路から解放されるガスの、ストッパーボディーに沿った一様な流れを促進し、延いてはストッパーロッドの周りの一様なガスカーテンの形成を促進する。
【0037】
ストッパーロッドの機能位置、すなわち縦方向の中心軸が垂直方向に整列する機能位置におけるストッパーボディーの上端を形成する第1の端部の領域では、ストッパーロッドを垂直方向に上げ下げするためのデバイスにストッパーボディーを取り付けることができる手段をストッパーボディーの上に提供することができる。これらの手段は、最新技術に従って設計することができる。例えば雄ねじを有する金属ロッドをねじ込むことができる雌ねじを有するファスナーを提供することができる。この金属ロッド自体は、その金属ロッドを介してストッパーロッドを上げ下げすることができる方法で持上げデバイスと相互作用することができる。
【0038】
第1の端部の反対側であり、また、ストッパーロッドの機能位置におけるストッパーボディーの下端であるその第2の端部の領域では、ストッパーボディーの外部表面(すなわち外部輪郭)は、最新技術で知られているノーズすなわちストッパーノーズの形を有している。ノーズの外部表面は、縦方向の軸に対して回転対称であることが好ましい。
【0039】
ノーズの外部表面は、第2の端部から第1の端部に向かって広がっていることが好ましい。好ましい実施形態によれば、ノーズの外部表面は、第2の端部から第1の端部に向かう方向に円錐状に広がっているか、あるいは円錐として形成されている。とりわけ好ましい設計によれば、ノーズの外部表面は半球形である。
【0040】
通路はノーズの外部表面に設けられる。
【0041】
最新技術で知られているように、ストッパーロッドは、縦方向の中心軸に沿って、第1の端部から前記第2の端部に向かって前記ストッパーボディー中へ延びて、第2の端部から一定の距離をおいた手前のストッパーボディーの中で終わっているチャンバーを有している。このチャンバーは、場合によっては縦方向の中心軸に対して回転対称であることが好ましく、例えば円形-円筒状の形を有している。本発明によるストッパーロッドは、前記チャンバーから前記棒状のストッパーボディーを通って前記通路に通じているガス供給手段を備えている。したがってチャンバーの中に導入されたガス、詳細にはアルゴンまたは窒素などの不活性ガスは、ガス供給手段を介して通路中に引き渡すことができる。
【0042】
チャンバーにガスを供給するために、チャンバーをガス供給に接続することができる。このガス供給は、最新技術で知られているように、とりわけストッパーボディーの第1の端部の領域に設けることができる。
【0043】
ガス供給手段は、ガスをチャンバーからストッパーボディーを介して通路中に引き渡すことができる方法で設計される。
【0044】
一実施形態によれば、ガス供給手段は少なくとも1つの多孔性要素であってもよい。この少なくとも1つの多孔性要素は、ガスを少なくとも1つの多孔性要素を介してチャンバーから通路へ引き渡すことができる多孔性を有している。少なくとも1つの多孔性要素は、例えばとりべの中の溶融金属をガス浄化するための多孔性浄化プラグで知られている多孔性を有することができる。
【0045】
とりわけ好ましい実施形態によれば、ガス供給手段は複数のガス供給ラインである。これらのガス供給ラインは自由な断面積を有しており、この断面積を介してガスをチャンバーから通路の中へ導くことができる。
【0046】
好ましい実施形態によれば、前記ガス供給手段は複数のガス供給ラインであり、前記ガス供給ラインの各々は、ある領域で前記通路に通じており、前記領域は互いに間隔を隔てていることが実現されている。
【0047】
本発明によれば、ガス供給ラインが互いに間隔を隔てた領域でダクトに通じている場合、ガス供給ラインを介したチャンバーからのガスは、とりわけ一様に通路中に導くことができ、また、通路から溶融金属中に解放することができることが分かった。2本から10本の数のガス供給ラインが好ましく、3本から6本のガス供給ラインがより一層好ましい。したがってこれらのガス供給ラインは、互いに間隔を隔てた2個から10個、または3個から6個の領域で通路に通じている。本発明によれば、ガスがこのような数のガス供給ラインを介して通路中に導かれ、これらのガス供給ラインが互いに間隔を隔てた対応する数の領域を有するダクトに通じている場合、ガスはとりわけ一様に通路中に導かれ、また、一様に通路から溶融金属中に導かれることが分かった。
【0048】
ガス供給ラインがダクトに通じている領域は、底すなわち通路の最も低い点に配置されることが好ましい。本発明によれば、この設計により、通路中に供給されたガスを、通路に均等に分配される長い時間にわたって通路に留めることができ、次に通路から溶融金属中に一様に導入することができることが分かった。
【0049】
好ましい実施形態によれば、ガス供給ラインが通路に通じている領域は均等に間隔を隔てている。領域は互いに対称的に間隔を隔てていることがとりわけ好ましい。領域は、縦方向の軸に対して対称的に提供されることがより一層好ましい。これには、ガス供給ラインを介してとりわけ一様な方法でガスを通路中に導くことができ、また、通路から溶融金属中に一様に導入することができる利点がある。
【0050】
一実施形態によれば、ガス供給手段は、ガス供給ラインと少なくとも1つの多孔性要素の組合せとして設けられる。
【0051】
本発明によれば、チャンバーの断面積に対するガス供給ラインの断面積の比率は、ガスがガス供給ラインを介してチャンバーから通路中に導かれる一様性に対する影響力を有している。
【0052】
好ましい実施形態によれば、チャンバーは断面積を有しており、ガス供給ラインの各々は断面積を有しており、前記チャンバーの前記断面積は前記ガス供給ラインの前記断面積のすべての総面積より広いことが実現される。チャンバーの断面積は縦方向の中心軸に対して直角に測定され、また、ガス供給ラインの各々の断面積は、それぞれのガス供給ラインの長手方向の軸に対して直角に測定される。チャンバーが可変断面積を有している限り、チャンバーの断面積は有効断面積、すなわち最も狭い断面積であり、ガスをチャンバーを介してガス供給ラインに案内することができる。ガス供給ラインが可変断面積を有している限り、ガス供給ラインの断面積は有効断面積、すなわち最も狭い断面積であり、ガスをガス供給ラインを介して通路に案内することができる。
【0053】
本発明による着想の好ましい特殊な実施形態によれば、チャンバーの断面積は、前記ガス供給ラインの前記領域の断面積のすべての総面積より10倍から400倍の範囲で広く、30倍から200倍の範囲で広いことがより一層好ましい。
【0054】
ガス供給ラインは任意の形を有することができる。ガス供給ラインは、真っ直ぐ、すなわち直線であることが好ましい。本発明による着想の特殊な実施形態によれば、ガス供給ラインは、断面積が円形の真っ直ぐな進路を有している。これには、例えばストッパーボディー中にガス供給ラインを穿孔することによって容易にガス供給ラインを製造することができる明確な利点がある。
【0055】
好ましい実施形態によれば、ガス供給ラインは、縦方向の中心軸に対して対称に配置される。上で示したように、ストッパーボディーのノーズは、溶融金属のための容器中の出口、詳細にはタンディッシュ中のタンディッシュノズルの形態の出口を閉じることができる方法で設計される。閉じた位置では、すなわちストッパーボディーのノーズによってタンディッシュノズルが閉じられる方法で、ストッパーロッドのノーズがタンディッシュノズルに対して案内されると、ノーズの外部表面のノーズの周りを走っている連続線に沿って、タンディッシュノズルの表面がストッパーボディーのノーズの外部表面に接触する。この仮想線は、「スロットル点」として同じく知られている。本発明によるストッパーロッドの場合、通路が、このスロットル点の下方を完全に走っているノーズの外部表面のこのような領域に提供されることが実現されることが好ましい。言い換えると、通路が提供されるノーズの外部表面の領域は、ストッパーロッドの機能位置におけるスロットル点の下方、すなわちストッパーボディーの第1の端部が頂部に配置され、また、ストッパーボディーの第2の端部(したがって同じくノーズ)が底に配置される、縦方向の中心軸の垂直方向の位置に配置される。閉じた位置におけるスロットル点の下方のノーズは、溶融金属によって囲まれていないため、閉じた位置における通路も溶融金属によって囲まれていない。
【0056】
本発明によるストッパーロッドは、ストッパーロッド生産のための最先端技術を使用して製造することができる。この点に関して、ストッパーロッドは、一体鋳造ストッパーの形態で製造することができる。ストッパーボディーは、最新技術で知られている均衡加圧によって製造されることが好ましい。均衡加圧に加えて、ガス供給ラインは、例えば穿孔によって製造することができる。通路は、例えばノーズの表面から粉砕することができる。
【0057】
本発明の1つの目的は、溶融金属を保持するための容器の準備であり、容器は底を備え、溶融金属を前記容器から吐出するための出口が前記底に設けられており、また、本発明によるストッパーロッドにより、前記出口を通って流れる溶融金属の量が制御される。溶融金属を保持するための容器はタンディッシュであることが好ましく、溶融金属を受け取るためのタンディッシュであることが好ましく、とりわけ連続鋳造工場における溶融鋼を受け取るためのタンディッシュであることがより一層好ましい。出口はタンディッシュノズルであることが好ましい。
【0058】
本発明のさらなる目的は、ストッパーロッドの周りに一様なガスカーテンを設ける方法であり、方法は、
本明細書において開示されるストッパーロッドを提供するステップと、
ガスを前記チャンバーの中に導入するステップと
を含む。
【0059】
チャンバーの中に導入されたガスは、ガス供給手段を介して通路へ導かれる。本発明による特徴のため、通路は、ガス供給手段を介して通路の中に導かれたガスが通路から一様に解放されて、ストッパーロッドの周りに一様なガスカーテンを形成する方法で設計される。
【0060】
したがって方法は、ガスを前記チャンバーの中に導入するステップの後に、以下のさらなるステップを含むことができる。
前記チャンバーの中に導入されている前記ガスを前記ガス供給手段によって前記通路に導くステップ。
前記ガスを前記通路から解放するステップであって、それによりストッパーロッドの周りに一様なガスカーテンを形成する、ステップ。
【0061】
溶融金属を鋳造している間、ストッパーロッドの偏向を著しく小さくすることができ、それにより鋳造鋼の品質を改善することができる。
【0062】
上で言及したように、ガスは、好ましくは最新技術による手段によって、例えば第1の端部でチャンバーの中に導入することができる。
【0063】
不活性ガス、とりわけアルゴンまたは窒素がチャンバーの中に導入されることが好ましい。
【0064】
上で言及したように、ストッパーロッドは、垂直方向に整列されているその縦方向の軸を備え、第1の端部がストッパーボディーの上端であり、また、第2の端部がストッパーボディーの下端である。
【0065】
本発明のさらなる目的は、溶融金属の流れを制御するため、および溶融金属を鋳造している間、ガスを供給するための方法であり、前記方法は、
溶融金属を保持するための容器を提供するステップであって、前記容器は底を備え、溶融金属を前記容器から吐出するための出口が前記底に設けられる、ステップと、
本明細書において開示されるストッパーロッドを提供するステップであって、縦方向の軸が垂直方向に整列され、第1の端部がストッパーボディーの上端であり、また、第2の端部がストッパーボディーの下端である、ステップと、
第1の位置および第2の位置において、前記ストッパーロッドを前記縦方向の軸に沿って垂直方向に移動させるステップであって、
前記第1の位置では、前記ストッパーロッドによって前記出口が閉じられ、また、前記第2の位置では、前記ストッパーロッドによって前記出口が閉じられない、
ステップと、
ガスを前記チャンバーの中に導入するステップと
を含む。
【0066】
方法は、前記第1の端部でガスを前記チャンバーの中に導入するステップの後に、以下のさらなるステップを含むことができる。
前記チャンバーの中に導入されている前記ガスを前記ガス供給手段によって前記通路に導くステップ。
ガスを通路から前記溶融金属中に解放するステップであって、それによりストッパーロッドの周りに一様なガスカーテンを形成する、ステップ。
【0067】
この方法は、上で説明したように、ストッパーロッドの周りに一様なガスカーテンを設けるための方法のさらなるステップを含むことができる。
【0068】
上で説明したように、前記容器はタンディッシュであることが好ましく、前記出口はタンディッシュノズルであることが好ましい。前記タンディッシュは、好ましくは鋼を鋳造するための連続鋳造ラインの一部であることが好ましい。
【0069】
ストッパーロッドは出口の上方に設けられることが好ましく、縦方向の軸は出口を通って走っていることが好ましい。
【0070】
前記第1の位置および第2の位置において前記ストッパーロッドを移動させ、したがって前記出口を閉じ、かつ、開くことにより、前記出口を通る、前記容器からの溶融金属の流れを制御することができる。上で説明したように、第1の位置では、ストッパーロッドのノーズは、出口を閉じる方法で出口に対して案内される。
【0071】
上で説明したように、ストッパーロッドを垂直方向に移動させるステップは、持上げデバイスによって実施されることが好ましい。したがって前記第1の位置におけるストッパーロッドの移動は、前記持上げデバイスによって、前記縦方向の軸に沿ってストッパーロッドを下げることによって実施され、また、前記第2の位置におけるストッパーロッドの移動は、前記持上げデバイスによって、前記縦方向の軸に沿ってストッパーロッドを持ち上げることによって実施される。
【0072】
さらに、上で説明したように、好ましくはストッパーボディーの第1の端部においてガスを前記チャンバーの中に導入するステップにより、このガスは、チャンバーからガス供給手段を介して通路へ導かれ、集められて、通路内に一様に分配され、最後に前記通路から溶融した金属中に導入され、それによりストッパーロッドの周りに一様なガスカーテンを形成する。前記ガスカーテンの一様性により、鋳造中のストッパーロッドの偏向を小さくすることができる。
【0073】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲、図ならびに以下の図説明によって明らかになる。
【0074】
本発明のすべての特徴は、個別に結合することができ、あるいは組合せて結合することも可能である。
【0075】
それぞれ極端に図式化されている図は、本発明の例示的実施形態を示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1a】本発明によるストッパーロッドを備えたタンディッシュの断面図であり、タンディッシュの底には、水没入力ノズルの形態の出口が設けられている。
【
図1b】本発明によるストッパーロッドを備えたタンディッシュの代替実施形態の断面図であり、タンディッシュの底には、水没入力シュラウドの形態の出口が設けられている。
【
図2】
図1aおよび
図1bによるストッパーロッドの斜視図である。
【
図3】
図1aおよび
図1bに示されているストッパーロッドの縦方向の軸に沿った縦断面の斜視図である。
【
図4】ノーズ領域における
図1aおよび
図1bに示されているストッパーロッドの縦方向の軸に沿った縦断面図である。
【
図5】
図4に示されている断面平面A-Aに沿った、
図1aおよび
図1bに示されているストッパーロッドの縦方向の軸に対して直角の断面図である。
【
図6】通路の領域における
図4による詳細図である。
【
図7】代替設計の通路を有する
図4による図である。
【
図8】さらなる代替設計の通路を有する
図4による図である。
【
図9】
図1~
図6に示されている設計によるストッパーロッド、およびガスがストッパーロッドを通過する技術によるストッパーロッドの偏向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図面に示されている実施形態の特徴をより良好に示すために、図面は、実際の実施形態に基づく比率を反映していない。
【0078】
図1aは、参照符号1によってその全体が識別されているタンディッシュを示したものであり、このタンディッシュは、鋼を鋳造するための連続鋳造工場の一部である。タンディッシュ1は、最新技術で知られているように金属容器3を備えており、その内側は耐火材料5で裏打ちされている。溶融金属は、耐火材料5によって取り囲まれた空間に提供することができる。タンディッシュ1の底7には、水没入力ノズル(SEN)の形態のタンディッシュノズル9が提供されており、このタンディッシュノズル9を介してタンディッシュ1内の溶融金属を型(図示せず)の中に注ぐことができる。垂直方向に整列した縦方向の軸Lは、タンディッシュノズル9を通って走っている。
【0079】
ストッパーロッド100は、縦方向の軸Lに沿ってその機能位置に配置されている。ストッパーロッド100は最新技術の持上げデバイス(図示せず)に接続されており、この持上げデバイスによってストッパーロッド100を縦方向の軸Lに沿って上げ下げすることができる。ストッパーロッド100は、その下端にストッパーノーズ103を画定しているストッパーボディー101を備えている。持上げデバイスにより、
図1aに示されている第2の位置の中へストッパーロッド100を持ち上げることができ、この位置ではタンディッシュノズル9が開き、したがってタンディッシュ1内に提供された溶融金属をタンディッシュノズル9を介して水没入力ノズルの中に注ぐことができる。さらにストッパーロッド100は、持上げデバイスによって第1の位置(
図1aには示されていない)の中へ下げることができ、この位置ではストッパーノーズ103は、ストッパーロッド100によってストッパーノーズ103が閉じられる方法でタンディッシュノズル9にもたれかかる。したがってタンディッシュノズル9は、ストッパーロッド100によって閉じ、かつ、開くことができ、それによりタンディッシュノズル9を通って流れる溶融金属の量を制御することができる。
【0080】
図1bに示されているタンディッシュ1は、
図1aに示されているタンディッシュと概ね全く同じであり、
図1aによるタンディッシュ1が
図1bによるタンディッシュ1と全く同じである限り、同じ参照符号を使用して示される。
図1aによるタンディッシュ1と
図1bによるタンディッシュ1の間の唯一の相違は、
図1bによるタンディッシュ1の底7には、水没入力シュラウド(SES)の形態のタンディッシュノズル10が提供されていることにある。当技術分野で知られているように、水没入力シュラウド10は、タンディッシュ1の底7に配置された上部部分10.1、および上部部分10.1の下方に取り付けられた下部部分10.2からなっており、下部部分10.2は、上部部分10.1および下部部分10.2が水没入力シュラウド10の縦方向の中心軸に沿った連続チャンバーを形成するように取り付けられている。
【0081】
図2は、
図1に示されているストッパーロッド100を上方からの斜視図で示したものである。ストッパーロッド100は、棒状のストッパーボディー101を備えており、ストッパーボディー101の外部円周表面は、ストッパーロッド100の縦方向の中心軸Lに対して回転対称である。
図1に示されている例では、縦方向の軸Lおよびストッパーロッド100の縦方向の中心軸Lは、互いに同軸で走っているか、あるいはそれらはそれぞれ全く同じである。ストッパーボディー101は、縦方向の中心軸Lに沿って、
図1による機能位置におけるその第1の上端105から、
図1による機能位置におけるその第2の下端107まで延びている。ストッパーボディー101は、第2の端部107から始まるノーズ103を画定しており、第2の端部107から始まるノーズ103は半球の形を有している。ノーズ103の外部表面は、縦方向の軸Lに対して回転対称である。
【0082】
第1の端部105から延びているストッパーボディー101の外部表面は、縦方向の中心軸Lに対して回転対称である円形円筒状外部輪郭を有している。
【0083】
ストッパーボディー101はチャンバー109を有しており、このチャンバー109は、
図3に示されているように縦方向の中心軸Lに沿って、第1の端部105から第2の端部107に向かう方向にストッパーボディー101の中へ延びて、第2の端部107から一定の距離をおいた手前のストッパーボディーの中で終端している。
【0084】
ストッパーボディー101は、アルミナ炭素材料(Al2O3-C材料)の形態の耐火材料でできている。
【0085】
ガス供給(図示せず)は第1の端部105の領域に提供され、このガス供給を介して、アルゴンまたは窒素などの不活性ガスをチャンバー109の中に供給することができる。
【0086】
通路111は、ノーズ103の外部表面に配置されている。通路111は、縦方向の軸Lの周りを連続的に走っており、また、縦方向の軸Lに対して回転対称であり、したがって通路111は、全体として円形リングの形を有している。とりわけ
図4および
図6に示されているように、通路111は、一様である、すなわち通路111の進路に沿って変化しないV字形断面積を有している。通路111は、外側、すなわち通路111の、ストッパーボディー101から見て外側に向いている側に対して完全に開いており、また、そのV字形断面積に従って、通路111の通路底を形成している共通の線形領域117から始まる第1の壁113および第2の壁115によって制限されている。第1の壁および第2の壁113、115は、ノーズ103の外部表面に向かって発散し、最終的にノーズ103の外部表面中に没入している。第1の通路壁113は、通路111を第1の端部105に向かう方向に制限し、また、ノーズ103の外部表面と共に第1の縁119を形成している。第2の通路壁115は、通路111を第2の端部107に向かう方向に制限し、また、ノーズ103の外部表面と共に第2の縁121を形成している。第1の縁119および第2の縁121は、それぞれ半径が優に0.5mm未満の鋭い縁を形成している。
【0087】
第1の縁および第2の縁119および121は、互いに等間隔で走っており、また、通路111の均一な進路に対応する縦方向の軸Lの周りに回転対称である。第1の縁と第2の縁119、121の間の距離は、通路口の幅、すなわち通路111がノーズ103の外部表面中に没入する領域における通路111の幅を画定しており、実施形態では10mmである。第1の縁と第2の縁119、121の間を延びている仮想平面と、通路111の深さを画定している通路底117の間の最も短い距離は、実施形態では8mmである。これは、通路111の40mm2の断面積をもたらす。
【0088】
4本のガス供給ライン123の形態のガス供給手段は、チャンバー109から、ストッパーボディー101の耐火材料を貫通して通路111に通じている。4本のガス供給ライン123は、それぞれ断面積が円形である真っ直ぐな進路を有しており、また、縦方向の軸Lに対して対称に配置され、かつ、互いに一様に間隔を隔てている。したがって4本のガス供給ライン123は、縦方向の軸Lに対して90°の回転角だけ互いに間隔を隔てている。縦方向の軸Lに対するそれらの対称性に従って、ガス供給ライン123は、とりわけ
図5から明確に分かるように、縦方向の軸Lに対して90°の回転角で同じく間隔を隔てている4つの一様に間隔を隔てた領域で通路111に通じている。
【0089】
ガス供給ライン123は、それぞれ長手方向の軸に沿って延びており、ガス供給ライン123の4つの長手方向の軸は、縦方向の軸L上の共通点で交わっている。ガス供給ライン123の4つの長手方向の軸は、それぞれストッパーボディー101の縦方向の中心軸Lに対してほぼ45°の角度で配置されており、この角度は、ガス供給ライン123を通っている、ガス供給ライン123の長手方向の軸の断面と、ストッパーボディー101の第2の端部107を通っているストッパーボディー101の縦方向の中心軸Lの断面の間に含まれている。
【0090】
チャンバー109は1,300mm2の断面積を有しており、また、ガス供給ラインの各々は3mm2の断面積を有している。したがってチャンバー109の断面積は、ガス供給ライン123の断面積の総面積より108倍広い。
【0091】
第1の端部105の領域では、ストッパーボディー101は、ストッパーロッド100を上げ下げするための持上げデバイスにストッパーボディー109を固着するための最新技術のファスナーを有している。
【0092】
ストッパーロッド100を製造するために、最初に、耐火材料の均衡加圧によってストッパーボディー101が形成され、それによりストッパーボディー101を持上げデバイスに固着するためのファスナーが耐火材料中に形成された(図には示されていない)。次に4本のガス供給ライン123が均衡加圧された耐火材料中に穿孔された。
【0093】
ストッパーロッド100は、ストッパーロッド100の周りに一様なガスカーテンを形成するように設計されている。この目的のために、
図1に示されているタンディッシュ1の中でストッパーロッド100を使用している間、不活性ガスがガス供給を介してチャンバー109の中に導入され、ストッパーボディー101を通って通路111の中へ、4本のガス供給ライン123を通過する。通路111の中では、ガスを集めて分配し、次に通路111から吐出して、ストッパーロッド100の周りに一様なガスカーテンを形成することができる。これは、タンディッシュ1からの溶融金属を鋳造している間、ストッパーロッド100の偏向を著しく小さくすることができ、したがって鋳造金属の品質を改善することができる。
【0094】
本発明によるストッパーロッドの通路の設計に依存する偏向低減を決定するために、
図1~
図6によるストッパーロッド100の偏向、および
図1~
図6によるストッパーロッドに基づいているが、通路の断面の形がそれぞれ若干異なる2つの代替ストッパーロッドの偏向が、水モデリングによって測定された。通路の2つの代替断面形状は、
図7および
図8に示されている。
【0095】
図7に示されている通路211の断面形状は、第1の端部105に面している通路の第1の側壁が、鋭い縁の形態ではあるが、約5mmの半径を有する丸い縁の形態であるノーズ103の表面中に没入していない点を除き、通路111の断面形状に対応している。
【0096】
図8による通路311は、本質的に通路111の形に対応しているが、通路の深さはより浅く、3mmにすぎない。
【0097】
偏向の程度を決定するために、記録された画像シーケンスの光学評価によってストッパーロッドの偏向が決定された。ストッパーロッドが水平方向に移動するとピクセルの色が変化し、この変化から、色が変化したピクセルの数が時間の関数として決定された。当技術分野によるストッパーロッドに対して得られた値に対して100%に正規化された、変化したピクセルの標準偏差値として偏向指数が計算された。この偏向指数に基づいて、
図1~
図6によるストッパーロッドに対する偏向の程度が測定され、かつ、計算された。
【0098】
当技術分野によるストッパーロッドは、
図1~
図6によるストッパーロッドと概ね全く同じであるが、当技術分野によるストッパーロッドには、通路111およびガス供給ライン123を備える代わりに、欧州特許出願公開第2067549号明細書、欧州特許出願公開第2189231号明細書または欧州特許出願公開第2233227号明細書に記載されているように、縦方向の中心軸に沿ったガス出口をノーズ領域に備えているという相違がある。
【0099】
図9は、対応する測定の結果を示したものである。
図9では、参照番号1は、当技術分野によるストッパーロッドに対する測定の結果を示しており、偏向指数は、100%に正規化された、変化したピクセルの標準偏差値として計算されている。さらに、参照番号2は、
図1~
図6によるストッパーロッドに対する測定の結果を示している。
【0100】
図9から分かるように、
図1~
図6によるストッパーロッドの偏向は、約45%の偏向指数にすぎず、したがって
図1~
図6によるストッパーロッドの偏向は、当技術分野によるストッパーロッドの偏向より著しく小さい。
【符号の説明】
【0101】
1 タンディッシュ
3 金属容器
5 耐火材料
7 タンディッシュ1の底
9 タンディッシュノズル
10 タンディッシュノズル(水没入力シュラウド)
L 縦方向の軸(縦方向の中心軸)
100 ストッパーロッド
101 ストッパーボディー
103 ストッパーノーズ
105 ストッパーボディーの第1の上端(第1の端部)
107 ストッパーボディーの第2の下端(第2の端部)
109 チャンバー
111 通路
113 第1の壁
115 第2の壁
117 共通の線形領域(通路底)
119 第1の縁
121 第2の縁
123 ガス供給ライン
211 通路
311 通路