(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】乗用型草刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 43/063 20060101AFI20230307BHJP
A01D 34/64 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A01D43/063 115
A01D34/64 A
(21)【出願番号】P 2022003694
(22)【出願日】2022-01-13
(62)【分割の表示】P 2018191768の分割
【原出願日】2018-10-10
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】永井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】三原 明人
(72)【発明者】
【氏名】山下 信行
(72)【発明者】
【氏名】籠 樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】赤井 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】辻森 佐知子
【審査官】小笠原 かれん
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220552(JP,A)
【文献】特開2018-134055(JP,A)
【文献】特開2002-101722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00-34/90
A01D 43/00-43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の下部に備えたモアー装置と、
前記走行機体の後端部に立設されたロプスと、
前記ロプスに対して脱着可能に支持される集草容器と、を備えた乗用型草刈機であって、
前記走行機体の後部に、前記ロプスを取付支持するためのロプスベースを備え、
前記ロプスベースに、ハイダンプ仕様の集草容器を取り付けるハイダンプ用ロプスと、ローダンプ仕様の集草容器を取り付けるローダンプ用ロプスと、のいずれをも、択一的に脱着可能なロプス取付部が形成さ
れ、
前記ロプスは、前後方向視で門形に形成されているとともに、左右両側に備える柱状脚部の上下方向での中間部同士を連結する中間連結材を備え、
前記ロプスベースに、前記走行機体の前後方向に沿う機体フレームに対して連結され、かつ前記機体フレームの前後方向で上下方向に沿う面を有した板状ベース部と、その板状ベース部の横外側面から横外方へ延出された横張出し部と、が備えられ、
前記ロプス取付部に、前記横張出し部の延出端部で、前記ロプスの下部を下方から支持する上向き面を有したロプス下連結部と、前記板状ベース部の上部で、前記ロプス下連結部よりも高い位置において前記中間連結材を支持するロプス中間連結部と、が備えられている乗用型草刈機。
【請求項2】
前記ハイダンプ用ロプスには、前記ロプスベースへの連結部が備えられるとともに、ハイダンプ仕様の集草容器を支持するリンクの取付部と、昇降用シリンダの支持部と、が備えられている請求項1記載の乗用型草刈機。
【請求項3】
前記ローダンプ用ロプスには、当該ロプスの下端部で前記ロプスベースへの連結部が備えられるとともに、ローダンプ用の集草容器を支持する支持枠が備えられ、この支持枠に、前記ロプスの下端部における前記ロプスベースへの連結部よりも機体左右方向での内方側位置で、前記ロプスベースへ連結可能な別の連結部が備えられている請求項1記載の乗用型草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モアー装置を備える走行機体にロプス、及び脱着可能な集草容器を備えた乗用型草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型草刈機では、集草容器の排出仕様として、ハイダンプ式の集草容器を用いる仕様と、ローダンプ式の集草容器を用いる仕様と、がある。つまり、ハイダンプ式では、集草容器の全体を高く持ち上げてから排出姿勢に姿勢変更して、刈草を集草容器の後方側の開閉口から放出するように構成されている。ローダンプ式では、集草容器の全体を持ち上げるのではなく、集草容器の前端側上部を回動支点にして後部側を持ち上げ、前下がりの傾姿勢に傾けることにより、集草容器の前方側の取り入れ口から排出するように構成されている。
この種の乗用型草刈機において、機体フレームの後部に備えたロプスとして、ローダンプ式の仕様で用いる集草容器の前部を支持する支持フレームと、その支持フレームの上部に一体に設けたロプス部分とを用いて、ハイダンプ式、及びローダンプ式、の何れの仕様でもロプスを備えられるようにした技術が存在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-220552公報(段落番号「0027」、「0029」、
図1、
図14参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、ハイダンプ式、及びローダンプ式、の何れの仕様でもロプスを備えることにより、ロプスによる搭乗者の保護を図り得る点で有用である。しかしながら、この構造では、ハイダンプ式、及びローダンプ式、の何れの仕様でも集草容器の排出姿勢への姿勢変更を行えるようにするために、ロプス自体に対して、集草容器の姿勢変更関連機器を取り付けるようにしているので、次のような問題がある。
このように構成すると、ロプスに作用する集草容器側の重量の作用位置が、ハイダンプ式の場合とローダンプ式の場合とで、前後に大きく異なる傾向がある。これにも関わらず一定の位置のロプスで支持するため、ロプス自体の強度や取付強度を、予測される最大値に設定しておく必要がある。
つまり、ローダンプ式の仕様では、ロプスに作用する集草容器側の重量はそれほど大きなものではないのに関わらず、強大なロプスを用いることになるので、このローダンプ式の集草容器を用いての作業を行う場合には、オーバースペックのロプスが採用されている状態であり、その分、機体重量も大きくなる傾向がある。また、ロプス自体の構造も複雑化してコスト増に繋がる可能性があり、これらの点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、集草容器がハイダンプ式、及びローダンプ式、の何れの仕様であっても、比較的簡単な構造でロプスを備えられるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
走行機体の下部に備えたモアー装置と、
前記走行機体の後端部に立設されたロプスと、
前記ロプスに対して脱着可能に支持される集草容器と、を備えた乗用型草刈機であって、
前記走行機体の後部に、前記ロプスを取付支持するためのロプスベースを備え、
前記ロプスベースに、ハイダンプ仕様の集草容器を取り付けるハイダンプ用ロプスと、ローダンプ仕様の集草容器を取り付けるローダンプ用ロプスと、のいずれをも、択一的に脱着可能なロプス取付部が形成され、
前記ロプスは、前後方向視で門形に形成されているとともに、左右両側に備える柱状脚部の上下方向での中間部同士を連結する中間連結材を備え、
前記ロプスベースに、前記走行機体の前後方向に沿う機体フレームに対して連結され、かつ前記機体フレームの前後方向で上下方向に沿う面を有した板状ベース部と、その板状ベース部の横外側面から横外方へ延出された横張出し部と、が備えられ、
前記ロプス取付部に、前記横張出し部の延出端部で、前記ロプスの下部を下方から支持する上向き面を有したロプス下連結部と、前記板状ベース部の上部で、前記ロプス下連結部よりも高い位置において前記中間連結材を支持するロプス中間連結部と、が備えられている、という特徴構成を有している。
【0007】
本発明によれば、ロプスに、ハイダンプ式仕様の構造と、ローダンプ式仕様の構造と、の両者に対する取付構造を採用するのではなく、ロプスを取り付けるために、走行機体の後部に備えたロプスベースに、ハイダンプ用ロプスと、ローダンプ用ロプスと、のいずれをも、択一的に脱着可能なロプス取付部を備えたものである。
これにより、乗用型草刈機にハイダンプ式仕様の集草容器を装備する場合には、ハイダンプ仕様のロプスをロプス取付部に装着し、ローダンプ式仕様の集草容器を装備する場合には、ローダンプ仕様のロプスをロプス取付部に装着することができる。
したがって、ロプスベースに取り付けられるロプス自体に、ハイダンプ式仕様とローダンプ式仕様の両仕様の集草容器を取付可能な機能を備えさせる必要がなく、ロプスとしては簡素な構造を採用し易い。そして、もともと強度メンバーであるロプスベースに、各仕様の集草容器に対応するロプスを各別に備えさせられるようにすることによって、各別な補強構造の付加などを要することなく、簡単な構造で両仕様の兼用化を図ることができる。
これにより、単一構造のロプスベースを備えた単一機種を採用しながらも、ハイダンプ式仕様とローダンプ式仕様の両仕様の集草容器を、択一的に取り付け可能な機能を備えさせることができる。
【0008】
上記構成において、前記ハイダンプ用ロプスには、前記ロプスベースへの連結部が備えられるとともに、ハイダンプ仕様の集草容器を支持するリンクの取付部と、昇降用シリンダの支持部と、が備えられていると好適である。
【0009】
本構成によれば、ハイダンプ用ロプスをロプスベースへ連結するための連結部や、昇降用シリンダの支持部などを、ロプスベース側にではなく、ハイダンプ用ロプス側に設けたので、ロプスベース自体の構造を簡略化し易い。
【0010】
上記構成において、前記ローダンプ用ロプスには、当該ロプスの下端部で前記ロプスベースへの連結部が備えられるとともに、ローダンプ用の集草容器を支持する支持枠が備えられ、この支持枠に、前記ロプスの下端部における前記ロプスベースへの連結部よりも機体左右方向での内方側位置で、前記ロプスベースへ連結可能な別の連結部が備えられていると好適である。
【0011】
本構成によれば、ローダンプ用の集草容器を支持する支持枠に、ロプスベースへの連結部よりも機体左右方向での内方側位置で、ロプスベースへ連結可能が別の連結部を設けたので、ロプスベースに対する支持枠の取付強度を向上し得る。また、このような別の連結部をロプスベース自体に設ける場合に比べて、ロプスベースを簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ハイダンプ式の集草装置を備えた場合の乗用型草刈機を示す全体側面図である。
【
図2】ハイダンプ式の集草装置を備えた場合の乗用型草刈機を示す全体平面図である。
【
図3】ローダンプ式の集草装置を備えた場合の乗用型草刈機を示す全体側面図である。
【
図4】ローダンプ式の集草装置を備えた場合の乗用型草刈機を示す全体平面図である。
【
図5】機体フレームとロプスベースの取り付け状態を示す平面図である。
【
図6】機体フレームとロプスベースの取り付け状態を示す側面図である。
【
図7】機体フレームとロプスベースを示す分解斜視図である。
【
図8】ロプスベースにハイダンプ用のロプスを取り付ける場合を示す分解斜視図である。
【
図9】ハイダンプ用のロプスに対する集草装置の取付構造を示す側面視での説明図である。
【
図10】ロプスベースとローダンプ用のロプスと集草装置とを示す分解斜視図である。
【
図11】ロプスベースとローダンプ用の集草装置の取付構造を示す分解斜視図である。
【
図12】ローダンプ用のロプスに対する集草装置の取付構造を示す側面視での説明図である。
【
図13】ローダンプ用のロプスに対する集草装置の取付構造を示す側面視での説明図である。
【
図15】集草容器の底面における補強フレームの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明を適用した乗用型草刈機の作業走行時における前進側の進行方向(
図1及び
図3における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(
図1及び
図3における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(
図2及び
図4における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(
図2及び
図4における矢印L参照)が「左」である。
【0014】
〔乗用型草刈機の全体構成〕
図1及び3には作業機の一例である乗用型草刈機の全体側面が示されている。この乗用型草刈機は、走行機体1における機体フレーム10の前側に左右一対の操向操作自在な前輪11,11を備え、後側に左右一対の駆動自在な後輪12,12を備えて自走するよう構成されている。
機体フレーム10の下方で、前後方向における前輪11と後輪12の間に、リヤディスチャージ型式のモアー装置4が昇降操作可能に吊り下げ装着されている。その走行機体1の後方側に、モアー装置4で刈り取られた刈草を収容する集草装置5が設けられている。
図1及び
図2に示す乗用型草刈機が、ハイダンプ式の集草装置5を装備させたハイダンプ型式の乗用型草刈機であり、
図3及び
図4に示す乗用型草刈機が、ローダンプ式の集草装置5を装備させたローダンプ型式の乗用型草刈機である。集草装置5を装備させる走行機体1としては、ハイダンプ型式の場合も、ローダンプ型式の場合も、同一の走行機体1が用いられている。
【0015】
図1乃至
図4に示すように、走行機体1の機体フレーム10上には、その前部に原動部2が設けられ、原動部2の後部側に搭乗運転部3が設けられている。
原動部2では、エンジン20が、エンジンボンネット21に内装された状態で機体フレーム10に搭載されている。エンジン20の後方側から取り出された動力が主伝動軸22を介して後方位置のミッションケース23に入力され、ミッションケース23内で変速された動力が後輪12の駆動系等へ出力される。
【0016】
エンジン20の前方側からは、作業用の動力が取り出し可能に構成されている。つまり、エンジン20の前側に、ベルト伝動機構によって構成された動力取り出し機構25が設けられ、この動力取り出し機構25に備えたPTO軸26を介して、エンジン20の動力がモアー装置4の駆動部に伝達されている。
【0017】
機体フレーム10の前部には、機体前部の保護部材となるガードフレーム10Aが設けられている。
このガードフレーム10Aには、複数個のバランスウェイトを装着可能な、バランスウェイト取付部14が、設けられている。
【0018】
原動部2の後方側における搭乗運転部3には、エンジンボンネット21の後方側に連なる操縦パネル30、及びステアリングホイール31等を備えた操縦部3Aが設けられている。そして、操縦部3Aの後方側には、足元に位置する搭乗ステップ32の上側に運転座席33が設置されている。その運転座席33の後部箇所に、
図1,2では、ハイダンプ用ロプス34が立設され、
図3,4では、ローダンプ用ロプス35が立設されている。
これらのハイダンプ用のロプス34、及びローダンプ用のロプス35は、機体フレーム10の後端部に取り付けられたロプスベース6に装着されている。そのロプスベース6、及びロプスベース6に装着されるハイダンプ用ロプス34、及びローダンプ用ロプス35については後述する。
【0019】
〔モアー装置〕
モアー装置4は、前リンク13a及び後リンク13bの対を左右両側に備えたリンク機構13を介して、機体フレーム10に対して昇降可能に吊り下げ支持されたブレードハウジング40を備えている。
リンク機構13のうち、前リンク13aの上端部には、モアー昇降シリンダ43が連結されている。このモアー昇降シリンダ43の伸縮作動に伴ってブレードハウジング40の機体フレーム10に対する上下高さ位置を変更することができる。
【0020】
ブレードハウジング40の上部に、PTO軸26から伝達される動力が入力される駆動部4Aが設けられている。この駆動部4A内には、図示はしないが、PTO軸26から伝達された動力を、左右の回転ブレード41,41へ分岐伝達するためのギヤ連動機構が内装されている。
【0021】
ブレードハウジング40内には、左右一対の回転ブレード41,41が配設されている。各回転ブレード41は、上下軸心回りに回転し、その回転軌跡の一部が互いに重複した状態で、等速回転駆動されることにより、草類の刈り取りを行うとともに、その回転運動で生起される搬送風によって、ブレードハウジング40の後部に形成された排出口42から刈草を後方へ向けて排出するように構成されている。
【0022】
〔ハイダンプ型式の集草装置に関して〕
ハイダンプ式の集草装置5を備える乗用型草刈機では、
図1,2、及び
図8,9に示すハイダンプ用ロプス34を備えている。
このハイダンプ用ロプス34は前後方向視で門形に形成され、機体フレーム10の後端部に一体に備えた左右一対のロプスベース6に取り付けられている。このロプスベース6は、機体フレーム10に対して面接触するように板状に形成されている板状ベース部60と、その板状ベース部60から、板状ベース部60の横外方側へ向けて延出された角筒状の横張出し部61と、を備えている。
【0023】
ハイダンプ用ロプス34は、ロプスベース6のうち、横張出し部61の延出端部に対して、左右両側における柱状脚部34a,34aの下端部が連結固定されている。
左右両側の柱状脚部34a,34aは、その中間部に相当する高さ位置で左右の柱状脚部34a,34a同士を連結するように設けられた中間連結材34cで、上下方向での中間部同士が一体的に連結固定されている。そして、中間連結材34cが、
図8に示すように、連結ブラケット36を介して左右の板状ベース部60の上部に連結されている。これによって、ハイダンプ用ロプス34は、下端部と中間部がロプスベース6に支持された状態となる。
左右の柱状脚部34a,34aの上端部は門形の上部枠34bで連結され、運転座席33の上方側を覆う状態に設けられている。
【0024】
ハイダンプ式の集草装置5は、
図1及び
図9に示されるように、刈草を収容するハイダンプ用の集草容器50Hと、その集草容器50Hを走行機体1に対して昇降作動及び刈草排出作動が可能であるように操作する昇降駆動機構51とを備えている。
集草容器50Hは、モアー装置4側から搬送ダクト(図示せず)を介して供給される刈草を受け入れる受入口(図示せず)を前端側に備え、後端側に排出用の排出口50aと、その排出口50aを覆う開閉蓋50bとを備えている。
【0025】
昇降駆動機構51は、走行機体1の後方側に設けられたロプス34に対して集草容器50Hを連結する昇降リンク52と、その昇降リンク52をロプス34に対して昇降作動させるリフトシリンダ53(昇降用シリンダに相当する)と、昇降リンク52に対する集草容器50の姿勢を、水平に近い回収姿勢の状態から後下がりの後傾姿勢に変更して、集草容器50Hの開閉蓋50bを開閉作動させるためのダンプシリンダ54とを備えている。
【0026】
昇降リンク52は、左右一対のアッパーリンク52aと、左右一対のロアーリンク52bとを備え、各アッパーリンク52aとロアーリンク52bの前端側がロプス34の上部に着脱可能に連結され、後部側が集草容器50Hの後端側近くの下部に連結されている。
油圧シリンダで構成されているリフトシリンダ53の上端部はロアーリンク52bに対して連結され、下端部はロプス34の下端部に備えた支持部34dに揺動可能に支持されている。そして、リフトシリンダ53の伸縮作動によって、昇降リンク52が揺動し、集草容器50Hの昇降作動が行われる。
【0027】
油圧シリンダで構成されたダンプシリンダ54は、集草容器50Hの後端側の下方に配置されている。このダンプシリンダ54の伸縮作動によって、集草容器50をひっくり返すように後傾させた排出姿勢と、水平に近い状態の回収姿勢と、に切り換え操作することが可能であるように、ダンプシリンダ54の一端部を周知のダンプ操作機構(図示せず)に連結させてある。
上記のリフトシリンダ53及びダンプシリンダ54は左右一対備えられていて、左右で同時作動するように、図示しない油圧制御回路に配備されている。
【0028】
〔ローダンプ型式の集草装置に関して〕
ローダンプ式の集草装置5を備える乗用型草刈機では、
図3,4、及び
図12,13に示すローダンプ用ロプス35を備えている。
ローダンプ用ロプス35は、
図4及び
図10に示すように前後方向視で門形に形成され、機体フレーム10の後端部に一体に備えた左右一対のロプスベース6に取り付けられている。
ローダンプ用のロプス35は、ロプスベース6のうち、板状ベース部60の横外方側へ向けて延出された角筒状の横張出し部61に対して、左右両側における柱状脚部35a,35aの下端部が連結固定されている。左右の柱状脚部35a,35aの上端部側は門形の上部枠35bで連結され、運転座席33の上方側を覆う状態に設けられている。
【0029】
左右両側の柱状脚部35a,35aにおける上下方向での中間部は、その中間部に相当する高さ位置で左右の柱状脚部35a,35a同士を連結するように設けた中間連結材35cで一体的に連結固定されている。
そして、中間連結材35cが、
図9に示すように、ローダンプ用の集草容器50Lを支持するための支持枠55を介して、ロプスベース6の板状ベース部60に連結されている。これによって、ローダンプ用ロプス35は、柱状脚部35a,35aの下端部(連結部に相当する)と、中間連結材35cを備えた位置の中間部と、がロプスベース6に支持された状態となる。
中間連結材35cは、ローダンプ用ロプス35の柱状脚部35a,35aよりも機体内方側に位置する板状ベース部60に連結される。したがって、この中間連結材35cと板状ベース部60との連結箇所が、ローダンプ用ロプス35の下端部におけるロプスベース6への連結部よりも機体左右方向での内方側位置でロプスベース6へ連結可能な別の連結部に相当する。
【0030】
ローダンプ式の集草装置5は、
図10乃至
図13に示されるように、刈草を収容するローダンプ用の集草容器50Lと、その集草容器50Lを支持枠55に対して、左右向きの横軸56回りに揺動作動させて刈草排出が可能であるように操作する揺動駆動機構57と、を備えている。
集草容器50Lは、前面側が開放された箱状の容器本体5Aと、その容器本体5Aの前面側開放部を蓋する蓋状部5Bとを備え、蓋状部5Bが支持枠55と一体に構成されている。
【0031】
ローダンプ用の集草容器50Lを支持するための支持枠55は、
図10及び
図11に示すように、前後方向かつ上下方向に沿う面を備えた左右一対の板状片部55a,55aを備えている。この板状片部55a,55aは、後述するロプスベース6のうちの、機体フレーム10の内面側に面接触する状態で取り付けられた板状ベース部60に対して、さらに機体内方側から面接触する状態で取り付けられる。
また、板状片部55a,55aは、ローダンプ用ロプス35における柱状脚部35a,35aの下端部が、ロプスベース6の横張出し部61に連結された位置よりも、機体左右方向での内方側に位置している。したがって、支持枠55は、ロプスベース6に対して、機体左右方向での内外に距離を隔てた状態で連結固定されることになる。
【0032】
そして、左右の板状片部55a,55aの後端縁部分には、
図11に示すように上下方向に沿う左右一対の縦フレーム55b,55bが一体に溶接固定されている。この左右の縦フレーム55b,55bの上部には、左右の柱状脚部35a,35a同士を連結する中間連結材35cに対して連結固定可能な支え腕55c,55cが、前方上方向きに延出されており、その支え腕55c,55cの上端部に中間連結材35cがボルト連結される。
また、左右の板状片部55a,55aの上部は、前方側へ向けて延出され、その延出端部同士が上部連結材55dで連結されている。
【0033】
左右の縦フレーム55b,55bの上端部が、左右の縦フレーム55b,55bよりも横外方へ突出する横架部材58で連結されている。横架部材58の下側に、左右の縦フレーム55b,55bの横外側に位置して、容器本体5Aの前面側開放部と対向する状態で遮蔽板59,59が設けられている。この遮蔽板59,59及び横架部材58が支持枠55と組み合わされて、容器本体5Aの前面側開放部を閉塞する蓋状部5Bが構成されている。
蓋状部5Bの左右方向での中央箇所には、モアー装置4側から送り込まれる刈草の、集草装置5への投入用開口5Cが形成されている。
【0034】
横架部材58には、容器本体5Aの揺動支点となる横軸56が回動可能に支持されている。横軸56には、その横軸56の両横端部から径方向に突出させて設けたブラケット(図示せず)を介して容器本体5Aが連結されている。
横軸56の左右方向中央部から径方向に突出する操作アーム56aに、油圧操作式の伸縮シリンダ57aの上端側が連結されている。伸縮シリンダ57aの下端側は、板状片部55a,55aの上部に設けた上部連結材55dに受け止め支持されている。
この構造により、伸縮シリンダ57aの伸縮作動に伴って、容器本体5Aを横軸56の軸心周りで揺動操作する揺動駆動機構57が構成されている。
【0035】
上記の揺動駆動機構57を用いることにより、集草装置5は、機体フレーム10に連結された蓋状部5Bに対して、左右向きの横軸56回りに揺動作動する。つまり、
図3に示すように、伸縮シリンダ57aを収縮させて容器本体5Aを実線で示す状態にした下降集草位置(取付姿勢)と、伸縮シリンダ57aを伸長させて仮想線で示す状態にした上昇排出位置(離間姿勢)と、に揺動して姿勢変更される。
上記のように、ローダンプ用ロプス35にローダンプ用の集草容器50L、及び揺動駆動機構57を組み込んだ状態のものを、
図12に示す取り外し状態から、
図13に示す装着状態に組上げることにより、ローダンプ用ロプス35、及びローダンプ用の集草装置5を備えた乗用型草刈機が出来上がる。
【0036】
〔ロプスベース〕
図5乃至
図7に示すように、ロプスベース6は、機体フレーム10に対して面接触するように板状に形成された左右一対の板状ベース部60と、板状ベース部60から横外方側へ延出された角筒状の横張出し部61と、を備えている。
左右の横張出し部61の延出端部には、それぞれ、ハイダンプ用ロプス34における柱状脚部34a,34aの下端部、及び、ローダンプ用ロプス35における柱状脚部35a,35aの下端部に対する共通のボルト連結用のボルト孔61a(ロプス取付部に相当する)が形成されている。
この左右の横張出し部61の延出端部において、前記ボルト孔61aとともに上向き面が形成されている箇所が、ロプスの下端部を下方から支持するロプス下連結部61b(ロプス取付部に相当する)である。そして、左右のロプス下連結部61bに対して、ハイダンプ用ロプス34における柱状脚部34a,34aの下端部に下向き面を備えた支持部34d,34d、又は、ローダンプ用ロプス35における柱状脚部35a,35aの下端部に下向き面を備えた支持部35d,35d、が択一的に脱着可能に構成されている(図8及び図10参照)。
【0037】
板状ベース部60には、機体フレーム10の後端部に対するボルト連結用の複数の機体フレーム連結孔60aと、機体フレーム10にフェンダ15を取り付けるためのフェンダ取付パイプ16の後端部がボルト連結されるフェンダ連結孔60bと、が形成されている。
これにより、機体フレーム10の後端部に形成されているボルト連結孔(図示せず)に機体フレーム連結孔60aを合致させてボルト連結することにより、板状ベース部60が機体フレーム10に固定された状態となる。そして、フェンダ取付パイプ16の後端に形成されているボルト連結孔(図示せず)を、フェンダ連結孔60bに合致させてボルト連結することにより、フェンダ取付パイプ16が機体フレーム10と板状ベース部60とにわたって連結固定される。
【0038】
さらに板状ベース部60には、ハイダンプ用ロプス34の中間連結材34cと連結される連結ブラケット36を連結固定するための連結孔60c(ロプス取付部に相当する)と、ローダンプ用ロプス35における支持枠55を連結固定するための取付孔60d(ロプス取付部に相当する)と、が形成されている。
この構造では、ハイダンプ用ロプス34における連結ブラケット36を連結固定するための連結孔60cに、連結ブラケット36の連結孔(図示せず)を合致させてボルト連結することにより、ハイダンプ用ロプス34における柱状脚部34a,34aの上下方向中間位置が、中間連結材34cを介して板状ベース部60に連結固定される。
つまり、ハイダンプ用ロプス34の中間連結材34cと連結される連結ブラケット36を連結固定するための連結孔60cが、ハイダンプ用ロプス34の中間連結材34cを支持するロプス中間連結部に相当する(図7及び図8参照)。
そして、ローダンプ用ロプス35における支持枠55を連結固定するための取付孔60dが、ローダンプ用ロプス35の中間連結材35
cを支持するロプス中間連結部に相当する(図7及び図10参照)。
【0039】
この構造において、ローダンプ用ロプス35を板状ベース部60に連結固定する場合には、まず、支持枠55における板状片部55aの機体外方側の面を板状ベース部60の機体内方側の面に接触させる。その状態で、板状片部55aに形成されているボルト孔55eを板状ベース部60に形成した取付孔60dに合致させてボルト連結することにより、支持枠55が板状ベース部60に連結固定される。
このとき、板状ベース部60に形成された最上方位置の取付孔60dは、ハイダンプ用ロプス34における連結ブラケット36を連結固定するための連結孔60cのうち、最前方位置の連結孔60cと同一位置にあり、その連結孔60cによって兼用される。
そして、支持枠55には、前方上方向きに支え腕55c,55cが延出されているので、その支え腕55c,55cの上端部に中間連結材35cをボルト連結することができる。これにより、板状ベース部60に対して支持枠55及び中間連結材35cを介して、左右の柱状脚部35a,35aの上下方向中間位置も連結固定されることになる。
【0040】
〔集草容器底面〕
集草装置5における集草容器50H及び集草容器50Lの底部分は、
図14及び
図15に示すように構成されている。
つまり、集草容器50H及び集草容器50Lの底部分は、刈取作業中における水平に近い状態の回収姿勢で、箱状の容器本体5Aの底面に相当する部位であり、平板状の底板62を備える。そして、底板62の下面側に、前後方向に沿う断面L字状の縦桟63及び左右方向に沿う断面L字状の横桟64が設けられている。
【0041】
このとき、縦桟63と横桟64は、夫々のL字状断面の一辺が底板62の下面に当接する状態で、つまり、L字状断面の一辺が同一平面上に並ぶ状態で設けられている。そして、L字状断面のうち、底板62の下面に当接していない他の一辺は、底板62の下面に交差するように起立する姿勢に位置している。この状態で縦桟63と横桟64の交差部分が互いに溶接固定されて、全体として格子枠状に形成されている。
この格子枠状に形成された縦桟63と横桟64を、前記L字状断面の一辺が底板62の下面に当接する状態でボルト連結することにより、底板62と縦桟63及び横桟64によって、容器本体5Aの底面が構成される。
【0042】
このように、格子枠状に形成された縦桟63と横桟64が底板62の下面に当接状態で固定されていることにより、底板62対して縦桟63及び横桟64が隙間なく密着し易い。その結果、容器本体5Aに投入された刈草の重量が作用する底板62を、その重量の作用する鉛直方向に抗する下方側から縦桟63及び横桟64の両者で支えて効果的に補強することができる。
したがって、例えば、縦桟63と横桟64が交差部分で上下に重複した状態で格子枠状に形成された場合のように、縦桟63又は横桟64の一方だけが底板62の下面に当接状態で固定され、他方の横桟64又は縦桟63が底板62から離れて、底板62に対する補強部材としての役割を果たせない状態となることを避けられる。
【0043】
〔別実施形態の1〕
実施の形態では、ロプスベース6として、左右一対の板状ベース部60と、板状ベース部60から横外方側へ延出された角筒状の横張出し部61と、を備えた構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限られるものではない。
例えば、左右の板状ベース部60が、上部で一連に連なる門形などの適宜形状に形成されたものであってもよい。また、横張出し部61をロプスベース6には備えずに、ハイダンプ用ロプス34及びローダンプ用ロプス35に備えさせたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0044】
〔別実施形態の2〕
実施の形態では、ローダンプ式の集草装置5に備える揺動駆動機構57として、油圧操作式の伸縮シリンダ57aを備えた構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限られるものではない。
例えば、揺動駆動機構57として、電動シリンダや、手動操作式のジャッキ機構を採用するものであったり、横軸56を回動操作可能な長尺の操作レバーを取り付けるなどして、人為操作力によるレバー操作で揺動させるようにしたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の乗用型草刈機は、大型機から小型機に至る各種の草刈機に適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 走行機体
4 モアー装置
6 ロプスベース
34 ハイダンプ用ロプス
34d 支持部
35 ローダンプ用ロプス
50H 集草容器
50L 集草容器
53 昇降用シリンダ
55 支持枠
61a,60c,60d ロプス取付