(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】見当ずれ検出装置、印刷機、印刷物の製造方法、及び見当ずれ検出プログラム
(51)【国際特許分類】
B41F 33/00 20060101AFI20230307BHJP
B41F 33/06 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B41F33/00 290
B41F33/06 S
(21)【出願番号】P 2022110631
(22)【出願日】2022-07-08
【審査請求日】2022-09-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143880
【氏名又は名称】株式会社細川洋行
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】荒井 弘之
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-023879(JP,A)
【文献】特開2012-240400(JP,A)
【文献】特開平07-209207(JP,A)
【文献】特開2013-202841(JP,A)
【文献】特開2016-155329(JP,A)
【文献】特開2011-110886(JP,A)
【文献】特開平10-86343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 31/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の版胴を用いて4色以上の印刷を行う印刷機が備える見当ずれ検出装置であって、
被印刷物に印刷される各色のレジマークの位置を検出する検出手段と、
基準色の前記レジマークと複数の他色の前記レジマークとの
第1ずれ量を算出する第1ずれ量算出手段と、
前記複数の他色の前記レジマークのうちの1色と、これとは異なる残りの前記他色の前記レジマークとの
第2ずれ量を総当たりで算出する第2ずれ量算出手段と、
前記
第1ずれ量
及び第2ずれ量が所定の許容値以上であるか否かを判定する判定手段と、
を備える見当ずれ検出装置。
【請求項2】
前記許容値以上となる前記
第1ずれ量
及び第2ずれ量の少なくとも一方が発生した前記被印刷物の位置及び色を記憶手段に記憶させる記憶制御手段を備える、請求項1に記載の見当ずれ検出装置。
【請求項3】
前記許容値以上となった前記
第1ずれ量
及び第2ずれ量が前記許容値未満となるように前記印刷機を制御する印刷機制御手段を備える、請求項1又は請求項2に記載の見当ずれ検出装置。
【請求項4】
前記基準色は、前記被印刷物の搬送方向に対して最上流側の前記版胴によって印刷される色であり、
前記印刷機制御手段は、
前記基準色と前記他色とで前記許容値以上の前記
第1ずれ量が発生した場合、前記
第1ずれ量が前記許容値未満となるように前記他色の印刷に要する被制御部を制御し、
前記他色間で前記許容値以上の前記
第2ずれ量が発生した場合、前記被印刷物の搬送方向下流側における前記他色の印刷に要する被制御部を制御する、
請求項3に記載の見当ずれ検出装置。
【請求項5】
前記
第1ずれ量
又は前記第2ずれ量が前記許容値以上となった前記被印刷物の位置、及び前記許容値以上の前記
第1ずれ量
又は前記第2ずれ量が前記許容値未満となった前記被印刷物の位置に目印を貼り付ける目印貼付装置を備える、請求項1又は請求項2に記載の見当ずれ検出装置。
【請求項6】
前記基準色の前記レジマークと前記他色の前記レジマークとは交互に前記被印刷物の搬送方向に向かって前記被印刷物に印刷され、
前記第1ずれ量算出手段は、前記他色の前記レジマークとこれの前方に印刷された前記基準色の前記レジマークとの
前記第1ずれ量を算出する、請求項1又は請求項2に記載の見当ずれ検出装置。
【請求項7】
複数の版胴によって4色以上で被印刷物に印刷を行う印刷機であって、
請求項1又は請求項2に記載の見当ずれ検出装置を備える印刷機。
【請求項8】
複数の版胴を用いて4色以上の印刷を行う印刷機で行われる印刷物の製造方法であって、
被印刷物に印刷される各色のレジマークの位置を検出手段によって検出する第1工程と、
基準色の前記レジマークと複数の他色の前記レジマークとの
第1ずれ量を第1ずれ量算出手段によって算出する第2工程と、
前記複数の他色の前記レジマークのうちの1色と、これとは異なる残りの前記他色の前記レジマークとの
第2ずれ量を第2ずれ量算出手段によって総当たりで算出する第3工程と、
前記
第1ずれ量
及び前記第2ずれ量が所定の許容値以上であるか否かを判定手段によって判定する第4工程と、を有する印刷物の製造方法。
【請求項9】
複数の版胴を用いた4色以上の印刷における見当ずれ検出装置が備えるコンピュータに、
被印刷物に印刷される各色のレジマークの位置を検出手段によって検出させる第1工程と、
基準色の前記レジマークと複数の他色の前記レジマークとの
第1ずれ量を第1ずれ量算出手段によって算出する第2工程と、
前記複数の他色の前記レジマークのうちの1色と、これとは異なる残りの前記他色の前記レジマークとの
第2ずれ量を第2ずれ量算出手段によって総当たりで算出する第3工程と、
前記
第1ずれ量
及び前記第2ずれ量が所定の許容値以上であるか否かを判定手段によって判定する第4工程と、を実行させるための見当ずれ検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見当ずれ検出装置、印刷機、印刷物の製造方法、及び見当ずれ検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の版胴を用いる多色印刷は、各色の印刷図柄を被印刷物上で重ね合わされることで行われる。このため、各色がずれることなく印刷されることで合格品の印刷図柄となる。一方で、何れか一色でもずれると合格品とはならず、ずれ量が許容値を超えると不適合扱いとなり、被印刷物は廃棄されることとなる。
【0003】
このようなずれ量の許容値は必要に応じて適宜設定されるものであるが、近年、印刷技術の高まりと共に市場が求める許容値はより小さくなっている。このため、ずれ量を検出するための技術開発が行われている。
【0004】
例えば特許文献1には、印刷物における所定の位置に配置された基準色の印刷見当マークとその近傍に配置された他色の印刷見当マークとの相対的な位置により印刷見当ずれ量を検出し、検出したずれ量を入力して各印刷ユニットにおける見当修正モータ等の修正駆動部を操作する多色印刷機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、基準色の印刷見当マークと他色の印刷見当マークとの見当ずれ量を独立して検出して制御をするのみで、他色の相互間のずれ量を検出することに関しては記載も示唆もされていない。
【0007】
例えば、基準色に対して或る他色の印刷見当マークが右に0.5mmずれ、さらに異なる他色の印刷見当マークが基準色に対して左に0.5mmずれた場合、これら他色の相互間のずれは、左右方向に1.0mmとなる。ずれ量の許容値が仮に0.6mmであった場合、これら他色の相互間のずれ量は許容値を超えている。しかしながら、基準色と他色とのずれ量のみを検出する特許文献1に記載の方法では、この様な他色の相互間のずれ量は許容値を超えているとは認識されない。
【0008】
また、例えば、基準色を設けずに、前後方向に連続する2つの印刷見当マークのずれ量を算出する場合であっても同様である。すなわち、連続する2つの他色の印刷見当マーク相互間のずれ量は許容値を満たしているものの、連続しない他色の印刷見当マークの相互間のずれ量は許容値を満たしていない場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、多色印刷においてより精度高く見当ずれを検出できる、見当ずれ検出装置、印刷機、見当ずれ検出方法、及び見当ずれ検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様である見当ずれ検出装置は、複数の版胴を用いて三色以上の印刷を行う印刷機が備える見当ずれ検出装置であって、被印刷物に印刷される各色のレジマークの位置を検出する検出手段と、基準色の前記レジマークと他色の前記レジマークとのずれ量を算出する第1ずれ量算出手段と、前記他色の前記レジマークと異なる前記他色の前記レジマークとのずれ量を算出する第2ずれ量算出手段と、前記ずれ量が所定の許容値以上であるか否かを判定する判定手段と、を備える。
【0011】
本構成によれば、被印刷物に印刷される三色以上の色に対して、基準色との見当ずれ量の検出、及び他色の相互間での見当ずれ量をレジマークの印刷位置に基づいて検出する。従って、本構成は、基準色だけでなく他色との総当たりで二色間のずれ量を検出することとなり、多色印刷においてより精度高く見当ずれを検出できる。
【0012】
第2態様の見当ずれ検出装置は第1態様の見当ずれ検出装置において、記許容値以上となる前記ずれ量が発生した前記被印刷物の位置及び色を記憶手段に記憶させる記憶制御手段を備えてもよい。本構成によれば、印刷完了後に見当ずれが発生した位置を確認できる。
【0013】
第3態様の見当ずれ検出装置は第1態様又は第2態様の見当ずれ検出装置において、前記許容値以上となった前記ずれ量が前記許容値未満となるように前記印刷機を制御する印刷機制御手段を備えてもよい。本構成によれば、被印刷物への印刷の実行中に見当ずれを解消できる。
【0014】
第4態様の見当ずれ検出装置は第3態様の見当ずれ検出装置において、前記基準色は、前記被印刷物の搬送方向に対して最上流側の前記版胴によって印刷される色であり、前記印刷機制御手段は、前記基準色と前記他色とで前記許容値以上の前記ずれ量が発生した場合、前記ずれ量が前記許容値未満となるように前記他色の印刷に要する被制御部を制御し、前記他色間で前記許容値以上の前記ずれ量が発生した場合、前記被印刷物の搬送方向下流側における前記他色の印刷に要する被制御部を制御してもよい。
【0015】
本構成によれば、二色間に見当ずれが発生した場合における制御対象は、被印刷物の搬送方向下流側の色に対応する被制御部となる。これにより、見当ずれが発生した色にかかわらず、最上流側の基準色を原点として、常に搬送方向下流側の被制御部が制御されることとなる。従って、本構成は、制御のコンフリクトを生じさせることなく、印刷の実行中に見当ずれを解消できる。
【0016】
第5態様の見当ずれ検出装置は第1態様から第4態様の何れか一つの見当ずれ検出装置において、前記ずれ量が前記許容値以上となった前記被印刷物の位置、及び前記許容値以上の前記ずれ量が前記許容値未満となった前記被印刷物の位置に目印を貼り付ける目印貼付装置を備えてもよい。本構成によれば、見当ずれが発生した被印刷物の領域を作業者が直接的に確認できる。
【0017】
第6態様の見当ずれ検出装置は第1態様から第5態様の何れか一つの見当ずれ検出装置において、前記基準色の前記レジマークと前記他色の前記レジマークとは交互に前記被印刷物の搬送方向に向かって前記被印刷物に印刷され、前記第1ずれ量算出手段は、前記他色の前記レジマークとこれの前方に印刷された前記基準色の前記レジマークとのずれ量を算出してもよい。本構成によれば、基準色と他色とのずれ量をより精度高く検出できる。
【0018】
第7態様の印刷機は、複数の版胴によって三色以上で被印刷物に印刷を行う印刷機であって、第1態様から第6態様の何れか一つの見当ずれ検出装置を備える。
【0019】
第8態様の見当ずれ検出方法は、複数の版胴を用いて三色以上の印刷を行う印刷機で行われる見当ずれ検出方法であって、被印刷物に印刷される各色のレジマークの位置を検出手段によって検出する第1工程と、基準色の前記レジマークと他色の前記レジマークとのずれ量を第1ずれ量算出手段によって算出する第2工程と、前記他色の前記レジマークと異なる前記他色の前記レジマークとのずれ量を第2ずれ量算出手段によって算出する第3工程と、前記ずれ量が所定の許容値以上であるか否かを判定手段によって判定する第4工程と、を有する。
【0020】
第9態様の見当ずれ検出プログラムは、複数の版胴を用いた三色以上の印刷における見当ずれ検出装置が備えるコンピュータに、被印刷物に印刷される各色のレジマークの位置を検出手段によって検出させる第1工程と、基準色の前記レジマークと他色の前記レジマークとのずれ量を第1ずれ量算出手段によって算出する第2工程と、前記他色の前記レジマークと異なる前記他色の前記レジマークとのずれ量を第2ずれ量算出手段によって算出する第3工程と、前記ずれ量が所定の許容値以上であるか否かを判定手段によって判定する第4工程と、を実行させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、多色印刷においてより精度高く見当ずれを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】本実施形態の見当ずれ検出センサ及びレジマークの概略図である。
【
図3】本実施形態のレジマークの検出信号を示す模式図である。
【
図4】本実施形態の見当ずれが生じたレジマークの検出信号を示す模式図である。
【
図5】本実施形態の見当ずれ検出装置の機能ブロック図である。
【
図6】本実施形態の見当ずれが生じた場合に制御が行われる印刷ユニットの組み合わせを示した図である。
【
図7】本実施形態の見当ずれ判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態の見当ずれ判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0024】
図1は、本実施形態の印刷機10の概略構成図である。本実施形態の印刷機10は、複数の版胴12を用いて三色以上の複数色で被印刷物14に印刷を行う。本実施形態の印刷機10は、一例として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の4色のインクで被印刷物14にグラビア印刷を行うが、これは一例であり、印刷機10は、三色以上で多色印刷を行うものであればよく、色も上記の色に限られず、ホワイト、ブルー、グリーン等が含まれてもよい。また、印刷機10は、版胴12によって印刷するものであれば、グラビア印刷でなくてもよい。
【0025】
本実施形態の印刷機10は、繰出し部20、印刷ユニット22、乾燥部24、及び巻取り部26を被印刷物14の搬送方向に上流側からこの順番で備えている。なお、印刷ユニット22及び乾燥部24は、色毎に設けられている。すなわち、本実施形態の印刷ユニット22及び乾燥部24は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)のインク毎に設けられている。また、印刷機10は、被印刷物14を搬送するための搬送ローラー28が適宜設けられる。なお、搬送ローラー28には、従動ローラーや後述するニップローラー29やコンペンセータロール(
図1では不図示)が含まれる。
【0026】
本実施形態では、後述する見当ずれ検出のための基準色を被印刷物14の搬送方向に対して最上流側の版胴12(印刷ユニット22)によって印刷される色とする。本実施形態の基準色はブラックである。
【0027】
繰出し部20は、被印刷物14を連続的に繰り出すローラーである。本実施形態の印刷機10は、一例として、駆動するニップローラー29によって被印刷物14を搬送し、繰出し部20は被印刷物14の搬送に従動して回転する。本実施形態の被印刷物14は、一例として、印刷後に製袋される透明のフィルム材であるが、これに限らず、繰出し部20によって連続的に繰出すことができる被印刷物14であればよい。
【0028】
印刷ユニット22は、被印刷物14に各色を印刷するための装置である。本実施形態の印刷機10は、被印刷物14の搬送方向上流側から印刷ユニット22K、印刷ユニット22C、印刷ユニット22M、及び印刷ユニット22Yを備える。印刷ユニット22Kは、ブラックを被印刷物14に印刷し、印刷ユニット22Cはシアンを被印刷物14に印刷し、印刷ユニット22Mはマゼンタを被印刷物14に印刷し、印刷ユニット22Yはイエローを被印刷物14に印刷する。なお、以下の説明において、符号の後に記すKはブラックに対応することを示し、Cはシアンに対応することを示し、Mはマゼンタに対応することを示し、Yはイエローに対応することを示す。
【0029】
本実施形態の印刷ユニット22は、バケット30、インクローラー32、版胴12、圧胴34、及びドクター刃36によって構成される。
【0030】
バケット30には、各色のインクが貯留されており、回転するインクローラー32によって版胴12へインクが供給される。版胴12にインクが供給されることで表面にインク膜が形成される。なお、版胴12の表面に付着した余分なインクはドクター刃36によって除去される。そして、印刷ユニット22に搬送された被印刷物14は、回転する版胴12と圧胴34とによって加圧されながら搬送されることで、インク膜が転写されて印刷が行われる。
【0031】
乾燥部24は、被印刷物14に転写されたインクを定着させるために、被印刷物14を乾燥させる。
【0032】
巻取り部26は、印刷機10の最下流に設けられ、印刷が完了した被印刷物14を巻き取る。
【0033】
また、本実施形態の印刷機10は、見当ずれ検出装置40を備える。見当ずれ検出装置40は、複数の見当ずれ検出センサ42、見当ずれ制御装置44、及び目印貼付装置46を備える。
【0034】
見当ずれ検出センサ42は、被印刷物14に印刷された各色のレジマーク50(
図2参照)の位置を検出するためのセンサである。なお、レジマーク50はカラコンマークともいわれ、見当ずれを検出するために被印刷物14に対して色毎に連続して印刷されるマークである(カラコンは登録商標)。
【0035】
本実施形態の見当ずれ検出センサ42は、印刷ユニット22と乾燥部24との間に一つずつ設けられる。すなわち、印刷ユニット22Cの下流側には見当ずれ検出センサ42Cが備えられ、印刷ユニット22Mの下流側には見当ずれ検出センサ42Mが備えられ、印刷ユニット22Yの下流側には見当ずれ検出センサ42Yが備えられる。見当ずれ検出センサ42による検出信号は、見当ずれ制御装置44へ出力される。
【0036】
目印貼付装置46は、見当ずれのずれ量が許容値以上となった被印刷物14の位置、及び許容値以上のずれ量が許容値未満となった被印刷物14の位置に目印を貼り付ける。
【0037】
図2は、見当ずれ検出センサ42及びレジマーク50の概略図である。レジマーク50は、被印刷物14の左端及び右端の少なくとも一方に一定の間隔で直線状に連続して形成される。
【0038】
本実施形態では、基準色(ブラック)のレジマーク50Kと他色(シアン、マゼンタ、イエロー)のレジマーク50C,50M,50Yとが交互に被印刷物14の搬送方向に向かって印刷される。すなわち、レジマーク50K1、レジマーク50C、レジマーク50K2、レジマーク50M、レジマーク50K3、レジマーク50Yの順に被印刷物14に連続して印刷される。なお、レジマーク50K1~50K3は印刷ユニット22Kによって印刷され、レジマーク50Cは印刷ユニット22Cによって印刷され、レジマーク50Mは印刷ユニット22Mによって印刷され、レジマーク50Yは印刷ユニット22Yによって印刷される。なお、ブラックのレジマーク50Kは、基準色のレジマーク50であり、後述する見当ずれを解消するための制御の原点として用いられる。
【0039】
本実施形態のレジマーク50は、一例として、被印刷物14の搬送方向と搬送方向に対して直交する方向とに各々辺を有する直角二等辺三角形であるが、これに限らず見当ずれを検出可能な形状であればレジマーク50は台形等、他の形状でもよい。
【0040】
本実施形態の見当ずれ検出センサ42は、一例として、発光部52と受光部54とを備える。発光部52は、被印刷物14におけるレジマーク50の印刷位置へ光を照射する。受光部54は、被印刷物14を挟んで発光部52に対向して備えられ、発光部52からの光を受光する。発光部52は継続して被印刷物14へ光を照射するので、光の照射線上をレジマーク50のない領域が通過すると光は被印刷物14を透過して受光部54で検出される。一方、光の照射線上をレジマーク50が通過すると、レジマーク50によって光が遮られて受光部54は光を検出しない。見当ずれ検出センサ42の他の形態としては、発光部52と受光部54とが隣接して配置され、反射板が被印刷物14を挟んで発光部52と受光部54とに対向して配置されてもよい。この形態の場合、発光部52からの光が反射板によって反射されて受光部54によって受光される。
【0041】
図3は、レジマーク50の検出信号を示す模式図である。なお、
図3は一例として見当ずれ検出センサ42Yで検出されるレジマーク50の列を示している。
図3に示すように、本実施形態では、二等辺三角形であるレジマーク50Kの上辺の中心とレジマーク50Kの斜辺の中心を結ぶ直線L上で光が照射されるように、発光部52及び受光部54が配置される。
【0042】
そして、発光部52の光の照射線上をレジマーク50が通過すると、受光部54の検出信号(光量)が低下する一方、レジマーク50が通過しないと検出信号(光量)は上昇する。このような受光部54によるレジマーク50の検出信号は見当ずれ制御装置44へ送信される。
【0043】
本実施形態の見当ずれ制御装置44は、レジマーク50の検出開始時間S、及びレジマーク50の検出終了時間Eを認識し、前後方向で隣接する二つのレジマーク50の検出開始時間差をΔSSとし、検出終了時間差をΔEEとする。なお、
図3に示される縦軸である時間は、レジマーク50の検出位置に相当する。このため、検出開始時間差ΔSSと検出終了時間差ΔEEは、差分を算出した2つのレジマーク50の位置のずれ量を反映した値となる。そして、検出開始時間差ΔSSは縦方向(被印刷物14の搬送方向)の見当ずれを反映し、検出終了時間差ΔEEは左右方向(搬送方向に対して直交する方向)の見当ずれを反映する。
【0044】
次に
図4を参照して見当ずれについて説明する。
図4は、見当ずれが生じたレジマーク50の検出信号を示す模式図である。
図4において、破線で示されたレジマーク50の位置は見当ずれが生じていない場合におけるレジマーク50の位置である。また、
図4の例では、前後する二つのレジマーク50間でずれが生じていない場合における検出開始時間差ΔSSは、商業印刷速度においてはマイクロ秒のレベルであるが、ここでは説明のため仮に5秒(以下「標準時間差ΔSS
n」という。nは各色を意味し、CMYの記号であらわされる。)であるものとする。また、見当ずれが±0.6mmであると不適合とし、これを時間換算すると±3秒となるものとする。このため、ずれ量が±3秒以上となると見当ずれの許容値を超えることとなる。
【0045】
より具体的には、
図4のレジマーク50Cとこれに先行するレジマーク50K1との検出開始時間差ΔSS
K1Cは5秒であり、検出終了時間差ΔEE
K1Cは3秒である。そして、標準時間差ΔSS
C-ΔSS
K1C=5秒-5秒=0秒であるため、レジマーク50Cとレジマーク50K1との縦方向に対する見当ずれは発生していない。一方、ΔEE
K1C-ΔSS
K1C=3秒-5秒=-2秒であるため、レジマーク50Cは本来の位置に対して図示左側へずれていることとなる。この見当ずれは、ずれ量が-2秒であるため、許容値は越えていない。
【0046】
また、
図4のレジマーク50Mとこれに先行するレジマーク50K2との検出開始時間差ΔSS
K2Mは7秒であり、検出終了時間差ΔEE
K2Mは9秒である。そして、標準時間差ΔSS
M-ΔSS
K2M=5秒-7秒=-2秒であり、ΔEE
K2M-ΔSS
K2M=9秒-7秒=+2秒であるため、レジマーク50Mは本来の位置に対して後方及び右側にずれていることとなる。これらの見当ずれは、それぞれのずれ量が-2と+2秒であるため、許容値は越えていない。
【0047】
また、
図4のレジマーク50Yとこれに先行するレジマーク50K3との検出開始時間差ΔSS
K3Yは3秒であり、検出終了時間差ΔEE
K3Yは5秒である。そして、標準時間差ΔSS
Y-ΔSS
K3Y=5秒-3秒=+2秒であり、ΔEE
K3Y-ΔSS
K3Y=5秒-3秒=+2秒であるため、レジマーク50Yは本来の位置に対して前方及び右側にずれていることとなる。これらの見当ずれは、それぞれのずれ量が+2秒であるため、許容値は越えていない。ここまでが、基準色のレジマーク50Kと他色のレジマーク50C,50M,50Yとのずれ量を算出する第1ずれ量算出の説明である。
【0048】
ここから、他色のレジマーク50と異なる他色のレジマーク50とのずれ量を算出する第2ずれ量算出の説明をする。まず、レジマーク50Mとレジマーク50Cとのずれ量を算出する。レジマーク50Mとレジマーク50Cとの縦方向のずれ量はΔSSK2M-ΔSSK1C=7秒-5秒=+2秒である。すなわち、レジマーク50Mはレジマーク50Cに対して2秒後方にずれている。また、レジマーク50Mとレジマーク50Cとの左右方向のずれ量は(ΔEEK2M-ΔSSK2M)-(ΔEEK1C-ΔSSK1C)=(9秒-7秒)-(3秒-5秒)=+4秒である。すなわち、レジマーク50Mはレジマーク50Cに対して4秒右側にずれており、この見当ずれは許容値を超えている。
【0049】
次に、レジマーク50Yとレジマーク50Cとのずれ量を算出する。レジマーク50Yとレジマーク50Cとの縦方向のずれ量はΔSSK3Y-ΔSSK1C=3秒-5秒=-2秒である。すなわち、レジマーク50Yはレジマーク50Cに対して2秒前方にずれている。また、レジマーク50Yとレジマーク50Cとの左右方向のずれ量は(ΔEEK3Y-ΔSSK3Y)-(ΔEEK1C-ΔSSK1C)=(5秒-3秒)-(3秒-5秒)=+4秒である。すなわち、レジマーク50Yはレジマーク50Cに対して4秒右側にずれており、この見当ずれは許容値を超えている。
【0050】
次に、レジマーク50Yとレジマーク50Mとのずれ量を算出する。レジマーク50Yとレジマーク50Mとの縦方向のずれ量はΔSSK3Y-ΔSSK2M=3秒-7秒=-4秒である。すなわち、レジマーク50Yはレジマーク50Mに対して4秒前方にずれており、これは見当ずれの許容値を超えている。また、レジマーク50Yとレジマーク50Mとの左右方向のずれ量は(ΔEEK3Y-ΔSSK3Y)-(ΔEEK2M-ΔSSK2M)=(5秒-3秒)-(9秒-7秒)=0秒である。
【0051】
図4を参照して説明したように、基準色のレジマーク50と他色のレジマーク50とのずれ量では許容値を満たしているものの、他色のレジマーク50間のずれ量は許容値を満たさない場合がある。そこで、本実施形態の見当ずれ検出装置40は、基準色と他色とのずれ量だけでなく、他色間のずれ量も検出する。すなわち、三色以上の複数色のずれ量を総当たりで検出する。
【0052】
図5は、本実施形態の見当ずれ検出装置40の機能ブロック図である。見当ずれ検出装置40は、上述のように、見当ずれ検出センサ42、見当ずれ制御装置44、及び目印貼付装置46を備える。
【0053】
見当ずれ制御装置44は、第1ずれ量算出部60、第2ずれ量算出部62、見当ずれ判定部64、記憶制御部66、印刷機制御部68、及び記憶部70を備える。
【0054】
第1ずれ量算出部60は、基準色であるブラックのレジマーク50Kと他色であるシアン、マゼンタ、イエローのレジマーク50C,50M,50Yとのずれ量を算出する。なお、本実施形態の第1ずれ量算出部60は、他色のレジマーク50C,50M,50Yとこれらの前方に印刷された基準色のレジマーク50Kとのずれ量を算出する。
【0055】
第2ずれ量算出部62は、他色のレジマーク50と異なる他色のレジマーク50とのずれ量を算出する。すなわち、本実施形態の第2ずれ量算出部62は、他色のレジマーク50の相互間のずれ量を算出する。具体的には、レジマーク50Cとレジマーク50Mとのずれ量、レジマーク50Cとレジマーク50Yとのずれ量、レジマーク50Mとレジマーク50Yとのずれ量が算出される。
【0056】
見当ずれ判定部64は、第1ずれ量算出部60及び第2ずれ量算出部62によって算出されたずれ量が所定の許容値以上であるか否かを判定する。
【0057】
記憶制御部66は、許容値以上となるずれ量が発生した被印刷物14の位置及び色を記憶部70に記憶させる。被印刷物14の位置とは、ずれ量が許容値以上となったレジマーク50によって特定される被印刷物14の長尺方向(縦方向)の位置である。
【0058】
印刷機制御部68は、許容値以上となったずれ量が許容値未満となるように印刷機10を制御する。本実施形態の印刷機制御部68は、基準色と他色とで許容値以上のずれ量が発生した場合、ずれ量が許容値未満となるように他色の印刷に要する被制御部を制御する。また、他色間で許容値以上のずれ量が発生した場合、印刷機制御部68は、被印刷物14の搬送方向下流側における他色の印刷に要する被制御部を制御する。
【0059】
本実施形態の印刷機制御部68によって制御される被制御部は、一例として、コンペンセータロール72及びサイドレー74である。以下の説明では、被制御部であるコンペンセータロール72及びサイドレー74も印刷ユニット22の一部であるとして説明する。
【0060】
コンペンセータロール72は、搬送ローラー28の一種であり、印刷ユニット22C,22M,22Y毎に被印刷物14の搬送方向上流側に一つずつ備えられる。コンペンセータロール72が上下方向に移動することで、被印刷物14のパス長が変化する。印刷機制御部68は、縦方向(搬送方向)にずれが発生している色に対応したコンペンセータロール72を上下方向に移動させる制御を行なうことで、縦方向の見当ずれを解消させる。
【0061】
サイドレー74は、印刷ユニット22C,22M,22Y毎に備えられ、版胴12を回転軸方向に移動させる。印刷機制御部68は、左右方向にずれが発生している色に対応したサイドレー74を制御することで、左右方向の見当ずれを解消させる。
【0062】
ここで、
図6は、見当ずれが生じた場合に制御が行われる印刷ユニット22の組み合わせを示した図である。
【0063】
図6に示すように、基準色であるブラックの印刷ユニット22は制御対象とはならない。シアンの印刷ユニット22は、ブラックとシアンとの比較によって見当ずれが生じた場合に制御対象となる。また、マゼンタの印刷ユニット22は、ブラックとマゼンタ、及びシアンとマゼンタとの比較によって見当ずれが生じた場合に制御対象となる。さらに、イエローの印刷ユニット22は、ブラックとイエロー、シアンとイエロー、及びマゼンタとイエローとの比較によって見当ずれが生じた場合に制御対象となる。すなわち、見当ずれが発生した場合に制御対象となる印刷ユニット22は、被印刷物14の搬送方向の下流側の印刷ユニット22となる。
【0064】
このように、本実施形態の印刷機制御部68は、二色間に見当ずれが発生した場合における制御対象を、被印刷物14の搬送方向下流側の色に対応する印刷ユニット22とする。これにより、見当ずれが発生した色にかかわらず、最上流側の基準色(ブラック)を原点として、常に搬送方向下流側の印刷ユニット22が制御されることとなる。また、後述するように、基準色と他色との見当ずれを解消する制御の後に、他色間の見当ずれを解消するように制御が行われる。従って、本実施形態の見当ずれ検出装置40は、制御のコンフリクトを生じさせることなく、印刷の実行中に見当ずれを解消できる。
【0065】
次に、印刷機10の制御も含めた見当ずれ判定処理について
図7,8を参照して説明する。
【0066】
図7は、基準色と他色との間における見当ずれ判定処理の流れを示すフローチャートである。見当ずれ判定処理は、印刷機10による被印刷物14への印刷開始と共に、見当ずれ検出装置40によって実行される。
【0067】
まず、ステップ100では、基準色であるブラックとの見当ずれの判定対象とするn色のレジマーク50を第1ずれ量算出部60が選択する。n色は、シアン、マゼンタ、及びイエローの何れかである。なお、選択される色(レジマーク50)には順番があり、被印刷物14の搬送方向上流側の印刷ユニット22で印刷される順番に選択される。すなわち、本実施形態のステップ100は、ブラックと比較するn色として、シアン、マゼンタ、イエローの順番で繰り返し選択したり、各n色の印刷ユニット22に被印刷物14が到達する順に基準色であるブラックとそのn色のレジマーク50とを比較する。
【0068】
次のステップ102では、第1ずれ量算出部60が基準色であるブラックのレジマーク50とn色のレジマーク50とのずれ量を算出する。具体的には、n色がシアンの場合には、見当ずれ検出センサ42Cで検出されたレジマーク50K1とレジマーク50Cとのずれ量を第1ずれ量算出部60が算出する。また、n色がマゼンタの場合には、見当ずれ検出センサ42Mで検出されたレジマーク50K2とレジマーク50Mとのずれ量を第1ずれ量算出部60が算出する。n色がイエローの場合には、見当ずれ検出センサ42Yで検出されたレジマーク50K3とレジマーク50Yとのずれ量を第1ずれ量算出部60が算出する。
【0069】
次のステップ104では、基準色とn色とのずれ量のうち検出開始時間差ΔSSが許容値以上であるか否かを見当ずれ判定部64が判定し、否定判定の場合はステップ106へ移行し、肯定判定の場合はステップ116へ移行する。すなわち、肯定判定の場合は、許容値以上となる見当ずれが発生していない場合である。
【0070】
ステップ106では、検出開始時間差ΔSSが許容値以上となった位置と色とを記憶制御部66が記憶部70に記憶させる。
【0071】
次のステップ108では、検出開始時間差ΔSSが許容値未満となるように、コンペンセータロール72を印刷機制御部68が制御し、ステップ116へ移行する。なお、制御対象となるコンペンセータロール72は、検出開始時間差ΔSSが許容値以上となった色を印刷した印刷ユニット22の上流側に配置されたコンペンセータロール72である。
【0072】
具体的には、色が搬送方向の前方にずれている場合、この色を印刷した印刷ユニット22の直前のコンペンセータロール72を動かすことで、当該印刷ユニット22に至るまでの被印刷物14のパス長を長くする。これにより、被印刷物14を当該印刷ユニット22の版胴12へそれまでよりも遅く到達させ、見当ずれを解消させる。一方で、色が搬送方向の後方にずれている場合、この色を印刷した印刷ユニット22の直前のコンペンセータロール72を動かすことで、当該印刷ユニット22に至るまでの被印刷物14のパス長を短くする。これにより、被印刷物14を当該印刷ユニット22の版胴12へそれまでよりも早く到達させ、見当ずれを解消させる。
【0073】
ステップ102から移行するステップ110では、基準色とn色とのずれ量のうち検出終了時間差ΔEEが許容値以上であるか否かを見当ずれ判定部64が判定し、否定判定の場合はステップ112へ移行し、肯定判定の場合はステップ116へ移行する。
【0074】
ステップ112では、検出終了時間差ΔEEが許容値以上となった位置と色とを記憶制御部66が記憶部70に記憶させる。なお、検出開始時間差ΔSSや検出終了時間差ΔEEが許容値以上となった位置と色とを記憶部70に記憶させることで、作業者は、被印刷物14の印刷完了後に見当ずれが発生した位置を確認できる。
【0075】
次のステップ114では、検出終了時間差ΔEEが許容値未満となるように、サイドレー74を印刷機制御部68が制御し、ステップ116へ移行する。なお、制御対象となるサイドレー74は、検出終了時間差ΔEEが許容値以上となった色を印刷した印刷ユニット22のサイドレー74である。
【0076】
ステップ116では、印刷機10の停止信号が出力されたか否かを第1ずれ量算出部60が判定し、肯定判定の場合は見当ずれ判定処理を終了する。一方で、否定判定の場合はステップ100へ戻り、n色の選択及び基準色とn色とのずれ量の算出を繰り返す。
【0077】
図8は、他色と異なる他色との間における見当ずれ判定処理の流れを示すフローチャートである。見当ずれ判定処理は、印刷機10による被印刷物14への印刷開始と共に、見当ずれ検出装置40によって実行される。
【0078】
まず、ステップ200では、見当ずれの判定対象とするn色とm色とを第2ずれ量算出部62が選択する。n色及びm色は、シアン、マゼンタ、イエローの何れかである。判定対象とする色(レジマーク50)は、基準色との比較が終了し、かつ被印刷物14の搬送方向上流側に存在する他色との比較が終了している色である。なお、比較の終了とは、見当ずれを解消するための印刷機10の制御も行われている状態をいう。
【0079】
本実施形態では、n色としてマゼンタが選択された後に、n色としてイエローが選択される(
図6も参照)。そして、n色がマゼンタの場合、m色はシアンであり、既にブラックとの比較は終了していなければならない。また、n色がイエローの場合、既にブラックとの比較は終了しており、m色としてシアンが先に選択され、シアンとの比較が終了した後にm色としてマゼンタが選択される。このように、本実施形態のステップ200は、相互に比較するn色とm色と上記の順番で繰り返し選択する。
【0080】
次のステップ202では、第2ずれ量算出部62がn色のレジマーク50とm色のレジマーク50とのずれ量を算出する。
【0081】
具体的には、例えば、n色がマゼンタでありm色がシアンの場合には、見当ずれ検出センサ42Mで検出されたレジマーク50Mと、見当ずれ検出センサ42C又は見当ずれ検出センサ42Mで検出されたレジマーク50Cとのずれ量を第2ずれ量算出部62が算出する。
【0082】
また、n色がイエローでありm色がシアンの場合には、見当ずれ検出センサ42Yで検出されたレジマーク50Yと、見当ずれ検出センサ42C又は見当ずれ検出センサ42Yで検出されたレジマーク50Cとのずれ量を第2ずれ量算出部62が算出する。
【0083】
また、n色がイエローでありm色がマゼンタの場合には、見当ずれ検出センサ42Yで検出されたレジマーク50Yと、見当ずれ検出センサ42M又は見当ずれ検出センサ42Yで検出されたレジマーク50Mとのずれ量を第2ずれ量算出部62が算出する。
【0084】
次のステップ204では、n色とm色とのずれ量のうち検出開始時間差ΔSSが許容値以上であるか否かを見当ずれ判定部64が判定し、否定判定の場合はステップ206へ移行し、肯定判定の場合はステップ216へ移行する。すなわち、肯定判定の場合は、許容値以上となる見当ずれが発生していない場合である。
【0085】
ステップ206では、検出開始時間差ΔSSが許容値以上となった位置と色とを記憶制御部66が記憶部70に記憶させる。
【0086】
次のステップ208では、検出開始時間差ΔSSが許容値未満となるように、コンペンセータロール72を印刷機制御部68が制御し、ステップ216へ移行する。なお、制御対象となるコンペンセータロール72は、検出開始時間差ΔSSが許容値以上となった色すなわちn色を印刷した印刷ユニット22の上流側に配置されたコンペンセータロール72である。
【0087】
ステップ202から移行するステップ210では、n色とm色とのずれ量のうち検出終了時間差ΔEEが許容値以上であるか否かを見当ずれ判定部64が判定し、肯定判定の場合はステップ212へ移行し、否定判定の場合はステップ216へ移行する。
【0088】
ステップ212では、検出終了時間差ΔEEが許容値以上となった位置と色とを記憶制御部66が記憶部70に記憶させる。
【0089】
次のステップ214では、検出終了時間差ΔEEが許容値未満となるように、サイドレー74を印刷機制御部68が制御し、ステップ216へ移行する。なお、制御対象となるサイドレー74は、検出終了時間差ΔEEが許容値以上となった色、すなわちn色を印刷した印刷ユニット22のサイドレー74である。
【0090】
ステップ216では、印刷機10の停止信号が出力されたか否かを第1ずれ量算出部60が判定し、肯定判定の場合は見当ずれ判定処理を終了する。一方で、否定判定の場合はステップ100へ戻り、n色及びm色の選択及びn色とm色とのずれ量の算出を繰り返す。
【0091】
このように、本実施形態の見当ずれ検出装置40は、被印刷物14に印刷される三色以上の色に対して、基準色との見当ずれ量の検出、及び他色の相互間での見当ずれ量をレジマーク50の印刷位置に基づいて検出する。従って、本実施形態の見当ずれ検出装置40は、基準色だけでなく他色との総当たりで二色間のずれ量を検出することとなり、多色印刷においてより精度高く見当ずれを検出できる。
【0092】
なお、印刷機10は、駆動モータによって各版胴12を個別に回転させることができる版胴位相可変式印刷機(いわゆるセクショナルドライブ印刷機)とされてもよい。この印刷機10における被制御部は、縦方向(搬送方向)に見当ずれが発生している色の版胴12及び当該版胴12より下流側の各版胴12の駆動速度を制御するモータ制御部となる。モータ制御部は、これら各版胴12間の同期性を維持して同一操作量をもって変化させて位相修正を行う。このため、縦方向の見当ずれが発生した場合には、印刷機制御部68がモータ制御部を介して版胴12間の位相制御を行なうことで、見当ずれを解消する。
【0093】
次に、目印貼付装置46の動作について説明する。目印貼付装置46は、上述のように、ずれ量が許容値以上となった被印刷物14の位置及び許容値となったずれが解消した被印刷物14の位置に目印を貼り付ける。これにより、作業者は、見当ずれが発生した被印刷物14の領域を直接的に確認でき、必要に応じて見当ずれが生じた個所を被印刷物14から除去できる。
【0094】
このため、見当ずれ判定部64は、ずれ量が許容値以上となった位置(目印を貼り付けるタイミング)を示す見当ずれ発生信号を目印貼付装置46へ送信する。目印貼付装置46は、受信した見当ずれ開始信号に基づいて、被印刷物14に目印を貼り付ける。
【0095】
見当ずれ判定部64は、ずれ量が許容値以上となるとこのずれ量が許容値未満となるまで、見当ずれ発生信号を連続して送信することとなるが、目印貼付装置46は、連続した見当ずれ発生信号を受信しても、最初に受信した見当ずれ発生信号に対応する位置にのみ目印を貼り付ける。そして、目印貼付装置46は、連続した見当ずれ発生信号の受信が終わったタイミングで見当ずれが解消したことを示す目印を被印刷物14に貼り付ける。なお、目印貼付装置46は、最後の見当ずれ発生信号が示す位置よりも所定長さ後方に見当ずれが解消したことを示す目印を貼り付けてもよい。
【0096】
なお、これに限らず、見当ずれ判定部64は、許容値以上となったずれ量が許容値未満になった場合に見当ずれ解消信号を目印貼付装置46に送信してもよい。すなわち、目印貼付装置46は、見当ずれ解消信号を受信した場合に見当ずれ解消信号が示す位置に目印を貼り付けるように目印貼付装置46を制御する。なお、見当ずれ判定部64が見当ずれ解消信号を送信するタイミングは、例えば、ずれ量が許容値未満となった状態が所定秒以上経過した後でもよい。また、このような目印の貼付については、第2ずれ量算出手段のない見当ずれ検出装置においても有用である。
【0097】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0098】
上記実施形態では、印刷機10が各色に対応して複数の見当ずれ検出センサ42を備える形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、見当ずれ検出センサ42は最後の印刷ユニット22の下流側に一つだけ備えられてもよい。この形態の場合、一つだけ備えられた見当ずれ検出センサ42が全てのレジマーク50を検出し、各色の見当ずれ量が判定される。
【0099】
上記実施形態では、見当ずれ検出センサ42は受光部54と発光部52とを備える形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、見当ずれ検出センサ42はレジマーク50を撮影するカメラでもよい。この形態の場合、カメラで撮影した画像からレジマーク50を認識し、各色の見当ずれ量が判定される。
【0100】
上記実施形態では、見当ずれが許容値以上となった場合に見当ずれが解消するように印刷機10を制御する形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、印刷機10の制御を行なわずに、見当ずれの位置及び色を記憶部70に記憶させるだけでもよい。また、許容値以上の見当ずれが発生した場合には印刷機10を停止させてもよい。
【符号の説明】
【0101】
10 印刷機
12 版胴
40 見当ずれ検出装置
42 見当ずれ検出センサ(検出手段)
46 目印貼付装置
50 レジマーク
60 第1ずれ量算出部(第1ずれ量算出手段)
62 第2ずれ量算出部(第2ずれ量算出手段)
64 見当ずれ判定部(判定手段)
66 記憶制御部(記憶制御手段)
68 印刷機制御部(印刷機制御手段)
70 記憶部(記憶手段)
72 コンペンセータロール(被制御部)
74 サイドレー(被制御部)
【要約】
【課題】 多色印刷においてより精度高く見当ずれを検出できる、見当ずれ検出装置、印刷機、見当ずれ検出方法、及び見当ずれ検出プログラムを提供する。
【解決手段】 複数の版胴12を用いた三色以上の印刷を行う印刷機10は、見当ずれ検出装置40を備える。見当ずれ検出装置40は、被印刷物14に印刷される各色のレジマーク50の位置を見当ずれ検出センサ42によって検出する。そして、見当ずれ検出装置40は、基準色のレジマーク50と他色のレジマーク50とのずれ量を算出し、他色のレジマーク50と異なる他色のレジマーク50とのずれ量を算出し、ずれ量が所定の許容値以上であるか否かを判定する。
【選択図】
図5