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特許7239783マルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】マルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/18 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
C12P7/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022523973
(86)(22)【出願日】2021-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 CN2021075694
(87)【国際公開番号】W WO2021160052
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】202010087372.8
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520401745
【氏名又は名称】浙江▲華▼康葯▲業▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG HUAKANG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛 宝▲興▼
(72)【発明者】
【氏名】汪 秀秀
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 徳水
(72)【発明者】
【氏名】▲羅▼ 家星
(72)【発明者】
【氏名】程 新平
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104177229(CN,A)
【文献】特開平07-123994(JP,A)
【文献】特開平09-143191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴ糖アルコール20~30%と、ソルビトール20~30%と、マルチトール30~40%とを含むマルチトールラフィネートにグルコースグルコアミラーゼを添加して糖化し、糖化液を得る第1のステップと、
上記糖化液に乾燥酵母を添加して発酵させ、発酵液を得る第2のステップと、
上記発酵液に脱色濾過及び膜分離処理を行った後、それぞれソルビトール液と液体ポリオールを得る第3のステップとを含む、ことを特徴とするマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法。
【請求項2】
マルチトールラフィネートにグルコースグルコアミラーゼを添加し、55~65℃で22~25時間糖化し、糖化液を得るステップ1と、
上記糖化液に乾燥酵母を添加して、30~40℃で60~65時間発酵させ、発酵液を得るステップ2と、
上記発酵液に脱色濾過及び膜分離処理を行った後、ソルビトール液の希液と液体ポリオールの濃液をそれぞれ得るステップ3とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法。
【請求項3】
ステップ1において、グルコースグルコアミラーゼの添加量は、マルチトールラフィネートの質量の0.04~0.16%である、ことを特徴とする請求項2に記載のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法。
【請求項4】
ステップ1において、糖化液中のオリゴ糖アルコールの含有量が40~45%低減したことが測定された、ことを特徴とする請求項2に記載のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法。
【請求項5】
ステップ2において、乾燥酵母の添加量は、マルチトール抽出液の質量の0.4~0.6%である、ことを特徴とする請求項2に記載のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法。
【請求項6】
ステップ2において、発酵液中の還元糖が0.2%以下に低減したことが測定された、ことを特徴とする請求項2に記載のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法。
【請求項7】
1kgのマルチトールラフィネートに、0.4gのグルコースグルコアミラーゼを添加し、60℃で恒温24時間糖化し、糖化液を得、糖化液中のオリゴ糖アルコールの含有量が40%低減したことが測定されたステップ11と、
上記糖化液に4gの乾燥酵母を添加して、30℃で65時間発酵させ、発酵液を得るステップ12と、
脱色濾過により発酵液中の酵母を除去した後、膜分離処理して、ソルビトール液の希液と液体ポリオールの濃液をそれぞれ得るステップ13とを含む、ことを特徴とする請求項2に記載のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法。
【請求項8】
1kgのマルチトールラフィネートに、1gのグルコースグルコアミラーゼを添加し、55℃で25時間恒温糖化し、糖化液を得、糖化液中のオリゴ糖アルコールの含有量が45%低減したことが測定されたステップ21と、
上記糖化液に5gの乾燥酵母を添加して、40℃で60時間発酵させ、発酵液を得るステップ22と、
脱色濾過により発酵液中の酵母を除去した後、膜分離処理して、ソルビトール液の希液と液体ポリオールの濃液をそれぞれ得るステップ23とを含む、ことを特徴とする請求項2に記載のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法。
【請求項9】
1kgのマルチトールラフィネートに、1.6gのグルコースグルコアミラーゼを添加し、65℃で22時間恒温糖化し、糖化液を得、糖化液中のオリゴ糖アルコールの含有量が43%低減したことが測定されたステップ31と、
上記糖化液に6gの乾燥酵母を添加して、35℃で63時間発酵させ、発酵液を得るステップ32と、
脱色濾過により発酵液中の酵母を除去した後、膜分離処理して、ソルビトール液の希液と液体ポリオールの濃液をそれぞれ得るステップ33とを含む、ことを特徴とする請求項2に記載のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチトールラフィネートの再利用の技術分野に属し、特にマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチトールは、マルトースを水素化還元して得られる二糖アルコールである。クロマトグラフィー技術の出現と発展に伴い、クロマトグラフィー分離を利用して結晶マルチトールを調製する方法は人々の広範な興味を引き起こす。
【0003】
クロマトグラフィー分離を利用して高純度のマルチトール成分を得るときに所定量のクロマトグラフィーラフィネート副生成物を生成し、該クロマトグラフィーラフィネート副生成物は、現在、特に高い付加価値がなく、成分は主にオリゴ糖アルコール(20~30%)、ソルビトール(20~30%)、マルチトール(30~40%)である。マルチトールの主なプロセスフローは以下のとおりである。
【0004】
ラフィネートの付加価値を向上させ、公開番号がCN104177229Bの特許には、固体オリゴ糖アルコール及び固体ソルビトールの調製プロセスが開示され、マルチトールクロマトグラフィー分離残液を使用して固体のオリゴ糖アルコール及び固体のソルビトールを調製し、マルチトールクロマトグラフィー分離残液を高付加価値で利用する。しかし、該方法は、クロマトグラフィー分離技術を使用して残液を分離精製し、複数種の成分を得、システムの複雑性を増加させ、操作しにくい。また、クロマトグラフィーを配置する必要があり、投資が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術課題は、マルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法を提供し、マルチトールラフィネートを効果的に使用し、付加価値を高め、また、方法が簡単で実用的で、コストが低い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のように実現される。
【0007】
マルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法であって、
マルチトールラフィネートにグルコースグルコアミラーゼを添加して糖化し、糖化液を得る第1のステップと、
上記糖化液に乾燥酵母を添加して発酵させ、発酵液を得る第2のステップと、
上記発酵液に脱色濾過及び膜分離処理を行った後、それぞれソルビトール液及び液体ポリオールを得る第3のステップとを含む、方法を提供する。
【0008】
さらに、該方法は、
マルチトールラフィネートにグルコースグルコアミラーゼを添加し、55~65℃で22~25時間糖化し、糖化液を得るステップ1と、
上記糖化液に乾燥酵母を添加して、30~40℃で60~65時間発酵させ、発酵液を得るステップ2と、
上記発酵液に脱色濾過及び膜分離処理を行った後、ソルビトール液の希液と液体ポリオールの濃液をそれぞれ得るステップ3とを含む。
【発明の効果】
【0009】
従来技術に比べて、本発明のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法は、以下の特徴を有する。
【0010】
1)、マルチトールラフィネート成分を十分に利用し、製品付加価値を向上させる。
2)、膜分離前に所定量のグルコースグルコアミラーゼを添加して糖化し、次に酵母を添加して発酵させ、後続の製品中の糖の合計含有量及び還元糖の含有量を低減させ、ソルビトール液及び液体ポリオールの純度を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明が解決しようとする技術課題、技術的解決手段、および有益な効果をより明確にするために、本発明は、実施形態と併せて以下でさらに詳細に説明される。本明細書に記載の特定の実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0012】
本発明においてマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法の好ましい実施例は、第1のステップ~第3のステップを含む。
【0013】
第1のステップにおいて、マルチトールラフィネートにグルコースグルコアミラーゼ(glucoamylase)を添加して糖化し、糖化液を得た。
【0014】
第2のステップにおいて、上記糖化液に乾燥酵母を添加して発酵させ、発酵液を得た。
【0015】
第3のステップにおいて、上記発酵液に脱色濾過及び膜分離処理を行った後、それぞれソルビトール液及び液体ポリオールを得た。
【0016】
具体的には、本発明のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法の好ましい実施例は、ステップ1~ステップ3を含む。
【0017】
ステップ1において、マルチトールラフィネートにマルチトールラフィネートの質量の0.04~0.16%のグルコースグルコアミラーゼを添加し、55~65℃で22~25時間糖化し、糖化液を得、オリゴ糖アルコールを加水分解し、糖化液中のオリゴ糖アルコールの含有量が40~45%低減したことが測定された。
【0018】
ステップ2において、上記糖化液にマルチトール抽出液の質量の0.4~0.6%の乾燥酵母を添加して、30~40℃で60~65時間発酵させ、発酵液を得、発酵液中の還元糖が0.2%以下まで低減したことが測定された。
【0019】
ステップ3において、上記発酵液に脱色濾過及び膜分離処理を行った後、ソルビトール液の希液と液体ポリオールの濃液をそれぞれ得た。
【0020】
希液及び濃液で測定された成分は次のとおりであった。
【0021】
【表1】
【0022】
希液の成分はソルビトール液の国家基準を満たし、ソルビトール液として製品に直接使用できた。濃液の成分は、還元糖の含有量が低いため、大量のマルチトール及びオリゴ糖アルコールを含み、多成分の液体のポリ糖アルコールとして食品加工に使用でき、保湿、賞味期限の延長、甘味増加などの効果を果たし、糖アルコール製品なので、カロリー低減効果を果たすことができた。
【0023】
以下の特定の実施例を併せて、本発明のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法についてさらに説明した。
【0024】
(実施例1)
本発明のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法の実施例1は、ステップ11~ステップ13を含む。
【0025】
ステップ11において、1kgのマルチトールラフィネートに、0.4gのグルコースグルコアミラーゼを添加し、60℃で24時間恒温糖化し、糖化液を得、糖化液中のオリゴ糖アルコールの含有量が40%低減したことが測定された。
【0026】
ステップ12において、上記糖化液に4gの乾燥酵母を添加して、30℃で65時間発酵させ、発酵液を得、還元糖の含有量が0.15%であることが測定された。
【0027】
ステップ13において、脱色濾過により発酵液中の酵母を除去した後、そして膜分離処理して、ソルビトール液の希液と液体ポリオールの濃液をそれぞれ得た。
【0028】
希液及び濃液で測定される成分は次のとおりであった。
【0029】
【表2】
【0030】
(実施例2)
本発明のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法の実施例2は、ステップ21~ステップ23を含む。
【0031】
ステップ21において、1kgのマルチトールラフィネートに1gのグルコースグルコアミラーゼを添加し、55℃で25時間恒温糖化し、糖化液を得、糖化液中のオリゴ糖アルコールの含有量が45%低減したことが測定された。
【0032】
ステップ22において、上記糖化液に5gの乾燥酵母を添加して、40℃で60時間発酵させ、発酵液を得、還元糖の含有量が0.12%であることが測定された。
【0033】
ステップ23において、脱色濾過により発酵液中の酵母を除去した後、膜分離処理して、ソルビトール液の希液と液体ポリオールの濃液をそれぞれ得た。
【0034】
希液及び濃液で測定される成分は次のとおりであった。
【0035】
【表3】
【0036】
(実施例3)
本発明のマルチトールラフィネートを使用してソルビトール液及び液体ポリオールを調製する方法の実施例3は、ステップ31~ステップ33を含む。
【0037】
ステップ31において、1kgのマルチトールラフィネートに、1.6gのグルコースグルコアミラーゼを添加し、65℃で22時間恒温糖化し、糖化液を得、糖化液中のオリゴ糖アルコールの含有量が43%低減したことが測定された。
【0038】
ステップ32において、上記糖化液に6gの乾燥酵母を添加して、35℃で63時間発酵させ、発酵液を得、還元糖の含有量が0.14%であることが測定された。
【0039】
ステップ33において、脱色濾過により発酵液中の酵母を除去した後、膜分離処理して、ソルビトール液の希液と液体ポリオールの濃液をそれぞれ得た。
【0040】
希液及び濃液で測定される成分は次のとおりであった。
【0041】
【表4】
【0042】
以上述べたのは本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び原則の内に行った任意の修正、均等な置換や改良などは、本発明の保護範囲に含まれるべきである。