(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】路面標示用施工装置
(51)【国際特許分類】
E01C 23/22 20060101AFI20230308BHJP
E01F 9/518 20160101ALI20230308BHJP
【FI】
E01C23/22
E01F9/518
(21)【出願番号】P 2019083969
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000101477
【氏名又は名称】アトミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【氏名又は名称】吉川 雅也
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】淵上 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】東 弘一朗
(72)【発明者】
【氏名】小川 博巳
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-001746(JP,A)
【文献】特開2008-068827(JP,A)
【文献】特開2003-063273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 21/00-23/24
E01F 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を走行する車両に搭載されて、当該路面上に標示を施工する路面標示用施工装置であって、
前記車両の側方に設けられ、前記路面上に塗料を塗布して線状の標示を塗装する塗装部と、
前記塗料を塗布する塗布予定位置が予め前記路面に示された基準線のうち前記車両の前側の路面に示された当該基準線を撮像する前方撮像部と、
前記前方撮像部で撮像される路面より後側の路面に示された前記基準線
と、前記塗装部と、を撮像する後方撮像部と、
前記前方撮像部で撮像された画像が表示される前方画像表示部と、
前記後方撮像部で撮像された画像が表示される後方画像表示部と、を備え、
前記車両の前側に、前記塗装部により前記路面上に塗料が塗布される前記車両の幅方向の予測位置を指示するための前方のガイド棒を備えておらず、
前記塗装部により前記路面上に塗料が塗布される塗布位置の直前に、当該塗布位置を指示するための後方のガイド棒を備えておらず、
前記車両の進行方向と前記基準線とが平行な状態の場合に前記前方画像表示部に表示される当該基準線に対して平行な案内線を予め当該前方画像表示部に表示して
おき、
前記塗布位置を予め前記後方画像表示部に表示しておくことを特徴とする路面標示用施工装置。
【請求項2】
前記後方撮像部及び前記塗装部は、前記車両の運転席側の側方、又は/及び、前記車両の運転席とは反対側の側方に設けられていることを特徴とする請求項
1に記載の路面標示用施工装置。
【請求項3】
前記後方撮像部は、前記車両の外部後写鏡の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1
または2に記載の路面標示用施工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面を走行する車両に搭載されて、当該路面上に標示を施工する路面標示用施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車道中央線、車線境界線、車道外側線等の区画線や追越し禁止線等の標示を路面上に施工する場合、路面上に標示を施工する位置を示す基準線を予め作図しておき、塗料を放出する塗装装置を搭載した施工車両を走行させながら、基準線の上に塗料を吹き付けて標示を施工している(特許文献1参照)。
【0003】
この施工車両には、塗装装置が右側に設けられた運転席とは反対側の左側に設けられており、塗装装置から放出される塗料が路面上に吹き付けられる位置を指示するガイド棒が前方側に設けられている。そして、このような施工車両で直線道路の路面上に標示を施工する場合、基準線とガイド棒が示す位置とを目視し、これらの位置が一致するように運転者が施工車両の向きを調整しながら運転して基準線の上に塗料を吹き付けている。
【0004】
また、曲線の道路の路面上に標示を施工する場合には、運転者は外部後写鏡を目視し、塗料が吹き付けられる位置が基準線を通過するように運転者が施工車両を運転して基準線の上に塗料を吹き付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の施工車両は、基準線とガイド棒が示す位置とを目視して塗料を吹き付けているため、運転者の視線が変化すると、目視では基準線とガイド棒が示す位置が一致しているように見えても実際は一致せず、基準線から外れた位置に塗料が吹き付けられる場合があった。
【0007】
同様に、基準線と塗料が吹き付けられる位置を後写鏡で目視している際、運転者の視線が変化すると基準線から外れた位置に塗料が吹き付けられる場合があり、路面上に標示を施工する施工精度が低下するおそれがあった。
【0008】
また、道路運送車両の保安基準により、ガイド棒を施工車両に取り付けるためには、構造変更の手続きを行う必要があった。さらに、今後、車両の安全性を高めるため衝突被害軽減ブレーキに使用されるセンサ等が追加されると、センサがガイド棒によって阻害されてしまうおそれがあるため、ガイド棒の取り付けが困難になる場合があった。そして、このガイド棒は施工車両から前方へ長く延びているため、通常の車両よりも全長が長くなり、ガイド棒に注意しながら施工車両を運転しなければならず、施工車両を運転する運転者の負担になるおそれがあった。
【0009】
そこで、右側の運転席とは別に塗装装置が設けられている左側に作業用運転席を設け、この作業用運転席から基準線とガイド棒が一致する位置を直接目視して路面上に標示を施工する場合があった。しかしながら、作業用運転席を設けるための車両の改造には多大な費用と時間がかかる場合があった。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガイド棒を設けることなく、また、運転席と反対側に作業用運転席を設けることなく、施工精度の向上を図ることが可能な路面標示用施工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る路面標示用施工装置は、路面を走行する車両に搭載されて、当該路面上に標示を施工する路面標示用施工装置であって、前記車両の側方に設けられ、前記路面上に塗料を塗布して線状の標示を塗装する塗装部と、前記塗料を塗布する塗布予定位置が予め前記路面に示された基準線のうち前記車両の前側の路面に示された当該基準線を撮像する前方撮像部と、前記前方撮像部で撮像される路面より後側の路面に示された前記基準線を撮像する後方撮像部と、前記前方撮像部で撮像された画像が表示される前方画像表示部と、前記後方撮像部で撮像された画像が表示される後方画像表示部と、を備え、前記車両の進行方向と前記基準線とが平行な状態の場合に前記前方画像表示部に表示される当該基準線に対して平行な案内線を予め当該前方画像表示部に表示しておくことを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記後方撮像部は、前記塗装部を撮像し、前記塗装部により前記路面上に塗料が塗布される塗布位置を予め前記後方画像表示部に表示しておくことが好ましい。
【0013】
本発明において、前記後方撮像部及び前記塗装部は、前記車両の運転席側の側方、又は/及び、前記車両の運転席とは反対側の側方に設けられていてもよい。
【0014】
本発明において、前記後方撮像部は、前記車両の外部後写鏡の近傍に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る路面標示用施工装置によれば、ガイド棒を設けることなく、また、運転席と反対側に作業用運転席を設けることなく、施工精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る路面標示用施工装置の構造を概略的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る路面標示用施工装置の塗装部の構造を概略的に示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る路面標示用施工装置の塗装装置の機能ブロックの構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る路面標示用施工装置の表示部の表示例を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る路面標示用施工装置の撮像画像表示制御部の機能ブロックの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
はじめに、
図1乃至
図5を参照して、本発明の路面標示用施工装置10の構造について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る路面標示用施工装置10及び施工車両1の構造を概略的に示す斜視図である。
図2は、路面標示用施工装置10の塗装部12の構造を概略的に示す斜視図である。
図3は、路面標示用施工装置10の塗装部12の機能ブロックの構成を示す図である。
図4(a)は路面標示用施工装置10の前方画像表示部15の表示例を示す図であり、
図4(b)は路面標示用施工装置10の後方画像表示部16の表示例を示す図である。
図5は、撮像画像表示制御部19の機能ブロックの構成を示す図である。
【0019】
以下、説明の便宜上、路面標示用施工装置10が搭載される施工車両1の長手方向において矢印a方向を前側aとし、矢印b方向を後側bとする。また、施工車両1の長手方向に直交する幅方向において矢印c方向を右側cとし、矢印d方向を左側dとする。さらに、施工車両1の高さ方向において矢印e方向を上側eとし、矢印f方向を下側fとする。
【0020】
本発明の実施の形態に係る路面標示用施工装置10は、施工車両1に搭載されて、路面Rに塗料を塗布して車道中央線、車線境界線、車道外側線等の区画線や追越し禁止線等の標示を施工、又は、既存の標示を再施工する装置である。
【0021】
施工車両1は、キャビン2内に路面Rを走行するためのステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダル等の運転装置(図示省略)を備え、運転装置を操作するための運転席が施工車両1の右側cに設けられた所謂右ハンドルの車両である。
【0022】
図1乃至
図5に示すように、路面標示用施工装置10は、施工車両1の荷台3に載置された塗料供給部11と、塗料を路面Rに塗布する塗装部12と、施工車両1のキャビン2の上に設けられた前方撮像部13と、外部後写鏡4に設けられた後方撮像部14と、キャビン2内に設けられた前方画像表示部15及び後方画像表示部16と、塗装部12の制御状態を切り替えるスイッチ17と、所定の操作の入力が行われる入力部18と、前方画像表示部15及び後方画像表示部16の表示を制御する撮像画像表示制御部19と、を備えている。
【0023】
図1に示すように、塗料供給部11は、空気を圧縮するコンプレッサ112と、塗料を加熱するためのヒーター113と、塗料を圧送するためのポンプ114と、路面Rに塗布する塗料を貯留する塗料タンク115と、ビーズを貯留するビーズタンク116と、を有している。
【0024】
塗装部12は、施工車両1の運転席側の側方、又は/及び、運転席とは反対側の側方に設けられている。なお、以下の本発明の実施の形態では、塗装部12は、施工車両1の運転席とは反対側、すなわち左側dの前輪5aと後輪5bとの間で施工車両1の荷台3の下側fに取り付けられている場合について説明する。しかし、塗装部12は、運転席側(右側c)の荷台3の下側fに取り付けられていてもよいし、運転席側(右側c)と、運転席側とは反対側(左側d)と、の両方に取り付けられていてもよい。
【0025】
図2及び
図3に示すように、塗装部12は、塗装部12を施工車両1の右側c及び左側dへ移動させる左右移動装置22と、塗料を放出するスプレー装置23と、を有している。
【0026】
左右移動装置22は、油圧シリンダ221の油圧状態により、右側c又は左側dへ移動する。油圧シリンダ221は、スイッチ17の左右移動装置スイッチ711によって、左右移動装置22を右側cへ移動さる油圧状態と、左右移動装置22を左側dへ移動させる油圧状態と、に切り替えられる。そして、左右移動装置スイッチ711により、スプレー装置23を右側cに移動して施工車両1の荷台3の下側に収容する収容位置、又は、左側dへ移動して路面Rに塗料を塗布して標示を施工する施工位置の何れかが選択される。
【0027】
スプレー装置23は、施工車両1の走行に伴い路面Rに追従して回転するキャスター24に支持されており、塗料タンク115から供給される塗料を路面Rに放出する塗料ガン231と、ビーズタンク116から供給されるビーズを放出するビーズガン232と、塗料ガン231及びビーズガン232の上下位置を調整するガン調整装置233と、を有している。
【0028】
塗料ガン231は、スイッチ17の塗料ガンスイッチ712によって路面Rに塗料を放出する放出状態と、放出が停止される遮断状態と、に切り替えられ、放出状態とされた場合には、放出口231aから路面Rに向かって塗料が出射される。
【0029】
ビーズガン232は、スイッチ17のビーズガンスイッチ713によってビーズを放出する放出状態と、放出が停止される遮断状態と、に切り替えられ、放出状態とされた場合には、放出口232aからビーズを放出し、塗料ガン231により路面Rに塗布された直後の塗料の上にビーズを吹き付ける。なお、ビーズガン232からのビーズの放出は、塗料ガン231から塗料が放出されるたびに行ってもよいし、毎回行わなくてもよい。
【0030】
ガン調整装置233は、油圧シリンダ235の油圧状態により、上側e又は下側fへ移動する。油圧シリンダ235は、スイッチ17のガン調整装置スイッチ714によってガン調整装置233を上側eへ移動させる油圧状態と、ガン調整装置233を下側fへ移動させる油圧状態と、に切り替えられる。そして、ガン調整装置スイッチ714により、塗料ガン231とビーズガン232を上側e又は下側fに移動させて塗料ガン231及びビーズガン232の位置を調整する。なお、塗料ガン231及びビーズガン232は、ハンドル等の調整装置(図示省略)により上下位置及び左右位置を選択可能であってもよい。
【0031】
前方撮像部13は、路面R上の撮像領域S1を上側eから撮像する、例えばカラーカメラである。具体的には、塗料を塗布する塗布予定位置が予め路面Rに示された基準線Lのうち施工車両1の前側aの路面Rに示された基準線Lを撮像する。基準線Lは、線状の標示を施工する前に塗料で塗布する予定の位置を予め路面R上に墨出し形成された作図線である。なお、基準線Lは、道路面Rにある摩耗等により一部の塗装が剥がれた既存の標示であってもよい。
【0032】
前方撮像部13の光軸は、施工車両1の直進時の進行方向(施工車両1の長手方向)と平行になるようにキャビン2の上に設置されている。なお、施工車両1からの車両姿勢に関する映像信号に基づいて、光軸が施工車両1の直進時の進行方向と平行になるように前方撮像部13の向きが変更可能であってもよい。
【0033】
後方撮像部14は、施工車両1の運転席側の側方、又は/及び、運転席とは反対側の側方に設けられている。なお、以下の本発明の実施の形態では、後方撮像部14は、施工車両1の運転席とは反対側、すなわち左側dの外部後写鏡4に取り付けられている場合について説明する。しかし、後方撮像部14は、運転席側(右側c)の外部後写鏡4に取り付けられていてもよいし、運転席側(右側c)と、運転席側とは反対側(左側d)と、の両方に取り付けられていてもよい。この後方撮像部14は、路面R上の撮像領域S2を上側eから撮像する、例えばカラーカメラである。具体的には、前方撮像部13で撮像される路面Rより後側bの路面Rに示された基準線Lを撮像する。
【0034】
後方撮像部14の光軸は、施工車両1の長手方向に平行になるように設置されている。また、後方撮像部14は、運転席とは反対側、すなわち左側dの外部後写鏡4に設置されている。なお、施工車両1からの車両姿勢に関する映像信号に基づいて、光軸が施工車両1の直進時の進行方向と平行になるように後方撮像部14の向きが変更可能であってもよい。
【0035】
前方画像表示部15及び後方画像表示部16は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等であり、施工車両1のダッシュボード又はダッシュボードの上等に設置されている。
【0036】
前方画像表示部15には、前方撮像部13で撮像された画像が表示される。例えば、
図4(a)に示すように、前方画像表示部15の画面511上の表示領域512には、前方撮像部13で撮像された撮像領域S1の前方画像513が表示される。
【0037】
そして、施工車両1の進行方向(矢印a方向)と基準線Lとが平行な状態の場合に、表示領域512に表示される基準線Laに対して平行な案内線G1を予め前方画像表示部15に表示しておく。なお、以下の本発明の実施の形態では、
図4(a)に示す表示例のように、案内線G1を基準線Laに重ならないように基準線Laに対して平行に案内線G1を表示しておく場合について説明する。しかし、案内線G1を基準線La上に重ねて表示しておいてもよい。また、基準線Laと案内線G1とを平行に表示しておく場合、基準線Laと案内線G1との距離が所定の距離未満(例えば3cm未満)となるように、基準線Laの近傍に案内線G1を表示しておくことが好ましい。
【0038】
基準線Laは、塗料を塗布する塗布予定位置が予め路面R上に示された基準線Lのうち、施工車両1の前側aの路面Rに示された基準線Lを前方撮像部13で撮像することにより前方画像表示部15に表示された基準線Lの画像である。
【0039】
施工車両1の進行方向(矢印a方向)と基準線Lとが平行な状態とは、施工車両1の長手方向と基準線Lとが平行な状態であり、例えば施工車両1を予め走行させて進行方向と基準線Lとが平行な状態になると施工車両1を停止させて施工車両1の進行方向と基準線Lとを平行な状態にした上で、基準線Laに対して平行に案内線G1を表示しておく。
【0040】
案内線G1は、例えば画面511上に貼るテープやシール等であり、表示領域512に表示されている基準線Laに対して平行に画面511上に貼ることにより、基準線Laを認識可能な状態で案内線G1を表示しておく。案内線G1は、直線道路の路面Rに塗料を塗布して標示Mを施工する際、施工車両1が基準線Laに対して平行に走行させるための指標となる線である。
【0041】
後方画像表示部16には、後方撮像部14で撮像された画像が表示される。例えば、
図4(b)に示すように、後方画像表示部16の画面611上の表示領域612には、後方撮像部14で撮像された撮像領域S2の後方画像613が表示される。
【0042】
そして、塗装部12により路面R上に塗料が塗布される塗布位置G2を予め後方画像表示部16に表示しておく。
【0043】
塗布位置G2は、スプレー装置23の塗料ガン231から放出された塗料が路面Rに塗布される位置である。塗布位置G2は、画面611上に貼る矢印又は線状のテープやシール等であり、表示領域612に表示されている基準線Lbに重ねて貼ることにより基準線Lbを認識可能な状態で塗布位置G2を表示しておく。塗布位置G2は、曲線道路の路面Rに塗料を塗布して標示Mを施工する際、基準線Lbに塗料が塗布されるように施工車両1を走行させるための指標となる表示である。
【0044】
基準線Lbは、塗料を塗布する塗布予定位置が予め路面R上に示された基準線Lのうち、施工車両1の後側bの路面Rに示された基準線Lを後方撮像部14で撮像することにより前方画像表示部15に表示された基準線Lの画像である。
【0045】
図5に示すように、撮像画像表示制御部19は、前方撮像制御部921と、後方撮像制御部922と、前方画像表示制御部923と、後方画像表示制御部924と、を有している。
【0046】
前方撮像制御部921は、前方撮像部13の動作を制御する機能部である。前方撮像制御部921は、通信インターフェース(図示省略)を介して前方撮像部13へ撮像を開始するための撮像開始信号を出力する。撮像開始信号の出力は、入力部18で受け付けた操作入力に基づいて出力する。
【0047】
後方撮像制御部922は、後方撮像部14の動作を制御する機能部である。後方撮像制御部922は、通信インターフェース(図示省略)を介して後方撮像部14へ撮像を開始するための撮像開始信号を出力する。撮像開始信号の出力は、入力部18で受け付けた操作入力に基づいて出力する。また、前方撮像部13及び後方撮像部14による撮像は、同時に開始してもよいし、個別に開始してもよい。
【0048】
前方画像表示制御部923は、前方画像表示部15を制御して、前方画像表示部15の画面511上に画像を表示させる機能部である。具体的には、前方画像表示制御部923は、前方撮像部13で撮像された画像データに基づいて画面511の表示領域512に前方画像513を表示する。
【0049】
後方画像表示制御部924は、後方画像表示部16を制御して、後方画像表示部16の画面611上に画像を表示させる機能部である。具体的には、後方画像表示制御部924は、後方撮像部14で撮像された画像データに基づいて画面611の表示領域612に後方画像613を表示する。
【0050】
なお、上述した前方撮像部13及び後方撮像部14で撮像された画像データは、撮像画像表示制御部19を介せずに、直接、前方画像表示部15又は後方画像表示部16に出力されることにより、前方画像表示部15又は後方画像表示部16に画像が表示されてもよい。
【0051】
次いで、路面標示用施工装置10による標示の施工方法について説明する。
【0052】
はじめに、新規に標示を施工する場合には、路面Rに塗料を塗布する塗布予定位置を示す基準線Lを予め手作業で作図する。なお、基準線Lは、路面Rに摩耗等により一部塗装が剥がれた既存の標示であってもよい。
【0053】
次に、前方撮像部13及び後方撮像部14による撮像を開始する。撮像が開始されると、前方画像表示部15には前方画像513、後方画像表示部16には後方画像613が表示される。
【0054】
次に、施工車両1を走行させ、施工車両1の進行方向(矢印a方向)と基準線Lとが平行な状態にする。具体的には、前方画像表示部15に表示された前方画像513を目視することにより、施工車両1の進行方向(矢印a方向)と基準線Lとが平行となるような状態に施工車両1を移動する。
【0055】
また、後方画像表示部16に表示された後方画像613を目視することにより、塗装部12から放出される塗料が表示領域612に表示された基準線Lb上に塗布されるように施工車両1を移動する。
【0056】
そして、基準線Lに対して施工車両1を位置付けした状態で、前方画像表示部15の表示領域512に表示されている前方画像513の基準線Laに対して平行になるようにテープやシール等を画面511上に貼ることにより案内線G1を表示しておく。
【0057】
また、後方画像表示部16の表示領域612に表示されている後方画像613の基準線Lb上であって、塗装部12により路面R上に塗料が塗布される位置を示す矢印又は線状のテープやシール等の塗布位置G2を画面611上に貼ることにより塗布位置G2を表示しておく。
【0058】
以上のようにして、予め、前方画像513の基準線Laに対して平行な案内線G1を表示しておき、後方画像613の基準線Lb上には塗布位置G2を表示しておく。
【0059】
次に、左右移動装置スイッチ711を操作することにより左右移動装置22を左側dへ移動する。なお、左右移動装置22の移動は、例えば案内線G1や塗布位置G2を表示しておく前に行ってもよい。
【0060】
そして、施工車両1を走行させつつ、塗料ガン231からの塗料の放出、及び、ビーズガン232からのビーズの放出を開始することにより、路面Rに塗料を塗布して線状の標示Mを施工する。
【0061】
具体的には、直線道路の路面Rに塗料を塗布して標示Mを施工する際、前方画像表示部15の画面511上に貼り付けた案内線G1が基準線Laに対して平行な状態を維持するように、画面511に表示された前方画像513を目視しながら施工車両1を走行させる。この時、案内線G1と基準線Laとの間が、一定の距離を保つように施工車両1を走行させる。なお、案内線G1を基準線La上に重ねて表示しておいた場合には、案内線G1が基準線La上に重なった状態を維持するように施工車両1を走行させる。
【0062】
また、曲線道路の路面Rに塗料を塗布して標示Mを施工する際、後方画像表示部16の画面611上に貼り付けた塗布位置G2が基準線Lb上に重なった状態を維持するように、画面611に表示された後方画像613を目視しながら施工車両1を走行させる。
【0063】
このように、標示を施工する前に前方画像表示部15の画面511上に予め案内線G1を貼り付け、案内線G1が基準線Laに対して平行な状態を維持するように画面511に表示された前方画像513を目視しながら施工車両1を走行させる。このため、施工車両1の運転者の視線が変化したとしても、前方画像表示部15に表示されている基準線Laに対して案内線G1が平行な状態を維持している場合には塗料が塗布される位置と基準線Laとが一致しているため、標示の施工精度を向上することができる。また、案内線G1を画面511に標示された基準線Laに対して平行に貼ることにより、従来の施工車両のように、前方へ長く延びたガイド棒が不要となり、施工車両1の運転席と反対側に作業用運転席を設ける必要がない。このため、施工車両1の前方に設置された衝突被害軽減ブレーキのセンサ等の設置や作動を阻害することがなく、これらの機能を有効に活用することができる。
【0064】
また、後方画像表示部16の画面611上に予め塗布位置G2を貼り付け、曲線道路の路面Rに標示を施工する際には、塗布位置G2が基準線Lb上に重ねられた状態を維持するように画面611に表示された後方画像613を目視しながら施工車両1を走行させる。このため、曲線道路の路面Rに標示を施工する際の施工精度を向上させることができる。また、曲線道路の路面Rに標示を施工するために、施工車両1の運転席と反対側に作業用運転席を設ける必要がない。
【0065】
さらに、後方撮像部14を施工車両1の外部後写鏡4の近傍に設けることにより、従来、外部後写鏡越しに目視していた基準線L及び塗装部12と同様の角度で基準線Lb及び塗装部12が後方画像表示部16の画面611に表示される。このため、後方画像表示部16の画面611を目視して施工を行う施工方法の変更に伴う施工速度の低下を抑制することができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態においては、案内線G1は画面511上に貼るテープやシール等である場合について説明したが、前方画像表示部15に予め案内線を画像として表示してもよい。この場合においても、案内線G1が基準線Laに対して平行又は重なるように施工車両1を走行して標示を施工する。
【0067】
また、上述した実施の形態においては、塗布位置G2は、画面611上に貼る矢印又は線状のテープやシール等である場合について説明したが、後方画像表示部16に予め塗布位置を画像として表示してもよい。また、塗料ガン231の放出口231aの近傍に路面Rに光を出射するスポットライトを設け、当該スポットライトが照らす光のスポットにより予め後方画像表示部16の塗装位置を表示しておいてもよい。
【0068】
なお、案内線G1や塗布位置G2の表示は、塗装作業のたびに行ってもよいし、車両の特性は一定なので、一度、最初に案内線G1や塗布位置G2を表示しておき、当該表示したものをその後の塗布作業に用いてもよい。
【0069】
また、上述した実施の形態においては、前方撮像部13で撮像された前方画像513は前方画像表示部15、後方撮像部14で撮像された後方画像613は後方画像表示部16にそれぞれ表示する場合について説明したが、1つの表示部に前方画像513と後方画像613とを表示したり、一定時間で或いは切替操作により相互に表示が切り替わるようにしたりしてもよい。さらに、施工車両1の前方に設けられた透明な板状部品であるコンバイナや直接フロントガラスに前方画像513及び後方画像613を表示してもよい。この場合、前方画像513と後方画像613とを並べて表示してもよいし、前方画像513を運転席側、後方画像613を外部後写鏡4側に表示してもよい。
【0070】
また、上述した実施の形態においては、塗装部12及び後方撮像部14は、運転席と反対側、すなわち左側dに設けられている場合について説明したが、施工車両1の運転席が左側dに設けられた所謂左ハンドルの車両であるときには、塗装部12及び後方撮像部14が右側cに設けられてもよい。
【0071】
また、上述した実施の形態においては、後方撮像部14は、施工車両1の外部後写鏡4に設けられている場合について説明したが、外部後写鏡の近傍に設けられていてもよい。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係る路面標示用施工装置10に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0073】
1…施工車両、2…キャビン、3…荷台、4…外部後写鏡、5a…前輪、5b…後輪、10…路面標示用施工装置、11…塗料供給部、12…塗装部、13…前方撮像部、14…後方撮像部、15…前方画像表示部、16…後方画像表示部、17…スイッチ、18…入力部、19…撮像画像表示制御部、22…左右移動装置、23…スプレー装置、24…キャスター、112…コンプレッサ、113…ヒーター、114…ポンプ、115…塗料タンク、116…ビーズタンク、221…油圧シリンダ、231…塗料ガン、231a…放出口、232…ビーズガン、232a…放出口、233…ガン調整装置、235…油圧シリンダ、511…画面、512…表示領域、513…前方画像、611…画面、612…表示領域、613…後方画像、711…左右移動装置スイッチ、712…塗料ガンスイッチ、713…ビーズガンスイッチ、714…ガン調整装置スイッチ、921…前方撮像制御部、922…後方撮像制御部、923…前方画像表示制御部、924…後方画像表示制御部、a…前側、b…後側、c…右側、d…左側、e…上側、f…下側