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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
B60N2/427
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018010768
(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公開番号】P2019127187
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】石塚 喬
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-058527(JP,A)
【文献】特開2002-046513(JP,A)
【文献】国際公開第2009/069339(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/047176(WO,A1)
【文献】米国特許第05284381(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 -2/90
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを備えた乗物用シートであって、
前記シートクッションは、前記乗物用シートの幅方向に離間して設けられた一対のサイドフレームと、
前記一対のサイドフレームに連結された第1パンフレームと、
前記第1パンフレームに連結された第2パンフレームと、
前記第1パンフレームと前記第2パンフレームを連結する連結ブラケットを備え、
前記連結ブラケットは、前記第1パンフレームに対する第1取付部と、
前記第2パンフレームに対する第2取付部と、を有し、
前記第2パンフレームは、前記乗物用シートの幅方向において長尺状に形成されており、
前記連結ブラケットは、前記一対のサイドフレームの前方部分で前記第2パンフレームの両端部に取り付けられており、
前記連結ブラケットの前記第1取付部と前記第2取付部は平行に形成されており、
前記連結ブラケットは、シート幅方向において、
前記第1取付部が外側に位置し、前記第2取付部が内側に位置するように配置されており、
前記第1取付部は、前記第1パンフレームの側面に取付けられ、
前記第2取付部は、前記第2パンフレームの側面に取付けられていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記第2パンフレームは、前記第1パンフレームよりも後方に位置するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記連結ブラケットの前記第1取付部と前記第2取付部には取付穴が設けられており、前記第1取付部には前記取付穴が複数設けられていることを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記第2取付部に取り付けられる締結部材の先端は、前記第2取付部と連続する屈曲部には届かない位置にあることを特徴とする請求項又はに記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第2パンフレームには受圧部材を係止する係止部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第2パンフレームには、前記連結ブラケットよりも前方に延出する延出部が設けられていることを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記連結ブラケットは、前記第2パンフレームのフランジ部と対向する位置に取り付けられていることを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記係止部は、前記乗物用シートの幅方向において前記フランジ部に挟まれる位置に形成されていることを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記延出部は、前記乗物用シートの幅方向において前記フランジ部に挟まれる位置に形成されていることを特徴とする請求項又はの何れか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に衝突などの衝撃発生時に着座者の沈み込みを抑制することが可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両が前突した際には、シートに着座した着座者(乗員)の体が、シートベルトに拘束された状態でシートの表面上を前下方に滑り落ちるサブマリン現象が発生することがある。サブマリン現象を抑制するための対策として、例えば特許文献1に記載されているように、シートクッションの横幅方向にクロス部材をかけ渡し、クロス部材に上方からの押圧力が作用すると下方に倒伏する可倒部を設けた車両用シートが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-46513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の車両用シートにおいては、前突時に乗員が沈み込んだ際の荷重を十分に吸収するためには、パンフレームを大型化する必要があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、パンフレームを大型化することなく、衝突などの衝撃発生時に着座者に生じる衝撃を適切に吸収し、着座者の脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことを抑制することが可能な乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートクッションを備えた乗物用シートであって、前記シートクッションは、前記乗物用シートの幅方向に離間して設けられた一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームに連結された第1パンフレームと、前記第1パンフレームに連結された第2パンフレームと、前記第1パンフレームと前記第2パンフレームを連結する連結ブラケットを備え、前記連結ブラケットは、前記第1パンフレームに対する第1取付部と、前記第2パンフレームに対する第2取付部と、を有し、前記第2パンフレームは、前記乗物用シートの幅方向において長尺状に形成されており、前記連結ブラケットは、前記一対のサイドフレームの前方部分で前記第2パンフレームの両端部に取り付けられており、前記連結ブラケットの前記第1取付部と前記第2取付部は平行に形成されており、前記連結ブラケットは、シート幅方向において、前記第1取付部が外側に位置し、前記第2取付部が内側に位置するように配置されており、前記第1取付部は、前記第1パンフレームの側面に取付けられ、前記第2取付部は、前記第2パンフレームの側面に取付けられていることにより解決される。
【0007】
上記のように構成された本発明の乗物用シートでは、前突時に着座者が沈み込んだ際に、連結ブラケットが変形することで、着座者に生じる衝撃の吸収に寄与する。また、第2パンフレームが下方へと変位可能となるため、限られたスペースにおいて着座者に生じる衝撃の吸収を行うことが可能となる。したがって、パンフレームを大型化することなく、着座者の脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことが抑制される。
【0008】
また、上記の構成において、前記第2パンフレームは、前記第1パンフレームよりも後方に位置するように構成されているとよい
【0010】
また、上記の構成において、前記連結ブラケットの前記第1取付部と前記第2取付部には取付穴が設けられており、前記第1取付部には前記取付穴が複数設けられているとよい。
【0011】
また、上記の構成において、前記第2取付部に取り付けられる締結部材の先端は、前記第2取付部と連続する屈曲部には届かない位置にあるとよい
【0012】
また、上記の構成において前記第2パンフレームには受圧部材を係止する係止部が設けられているとよい
【0013】
また、上記の構成において、前記第2パンフレームには、前記連結ブラケットよりも前方に延出する延出部が設けられているとよい
【0014】
また、上記の構成において、前記連結ブラケットは、前記第2パンフレームのフランジ部と対向する位置に取り付けられているとよい
【0015】
また、上記の構成において、前記係止部は、前記乗物用シートの幅方向において前記フランジ部に挟まれる位置に形成されているとよい
【0016】
また、前記延出部は、前記乗物用シートの幅方向において前記フランジ部に挟まれる位置に形成されているとよい
【発明の効果】
【0017】
本発明の乗物用シートによれば、前突時に着座者が沈み込んだ際に、連結ブラケットが変形することで、着座者に生じる衝撃の吸収に寄与する。また、第2パンフレームが下方へと変位可能となるため、限られたスペースにおいて着座者に生じる衝撃の吸収を行うことが可能となる。したがって、パンフレームを大型化することなく、着座者の脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことが抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、サイドフレームに連結された第1パンフレームの内側に第2パンフレームが配置されるため、パンフレームを小型化することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、連結ブラケットが屈曲部において変形しやすくなるため、着座者に生じる衝撃を適切に吸収することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、連結ブラケットに屈曲部が複数設けられていることにより、着座者に生じる衝撃をより一層吸収することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、屈曲部が前後方向に延在しているため、着座者に生じる衝撃をより一層吸収することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、第1パンフレーム及び第2パンフレームよりも変形しやすい連結ブラケットを優先的に変形させることで、前突時に着座者が沈み込んだ際の衝撃の吸収を適切に制御することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、第1パンフレームよりも変形しやすい第2パンフレームにより、前突時に着座者が沈み込んだ際の衝撃を適切に吸収することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、前突時に着座者が沈み込んだ際に、連結ブラケットが脆弱部において変形しやすくなるため、衝撃を適切に吸収することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、前突時に着座者が沈み込んだ際に、衝撃吸収に寄与する連結ブラケットの数が複数設けられることで、着座者に生じる衝撃をより一層抑制することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、前突時に着座者が沈み込んだときに、まず第2パンフレームに下方への荷重が生じて、連結ブラケットに荷重が伝達されるため、着座者に生じる衝撃が適切に吸収される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両用シートのシートクッションフレームの斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る第1パンフレームの斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る第2パンフレームの斜視図である。
図5A】本発明の一実施形態に係る連結ブラケットの斜視図である。
図5B】本発明の一実施形態に係る連結ブラケットの斜視図である。
図6A】衝撃が加わる前の連結ブラケットの形状を示す模式図である。
図6B】衝撃が加わって変形した後の連結ブラケットの形状を示す模式図である。
図7A】衝撃が加わった初期における第1パンフレームと第2パンフレームの位置関係を示す模式図である。
図7B】衝撃が加わった後における第1パンフレームと第2パンフレームの位置関係を示す模式図である。
図8】本発明の変形例に係る車両用シートのシートクッションフレームの斜視図である。
図9図8におけるA-A断面図である。
図10】パンフレームに設けられた脆弱部を説明するための模式的断面図である。
図11】サイドフレームに設けられた脆弱部を説明するための模式的断面図である。
図12】サイドフレームに設けられた脆弱部を説明するための模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1乃至図12を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係る乗物用シートについて説明する。本実施形態に係る乗物用シートとして、車両に搭載される車両用シートを例に挙げて説明することとするが、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートであってもよい。
【0020】
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0021】
本明細書における方向を示す用語に関し、図1のように各方向を定義する。具体的には、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの着座者から見たときの前後方向を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向を意味し、車両用シートの着座者から見たときの左右方向と一致する。また、「上下方向」とは、車両用シートの高さ方向を意味し、車両用シートを正面から見たときの上下方向と一致している。
【0022】
[1.車両用シートSの構成]
本実施形態に係る車両用シートSは、図1に図示した外観を有している。なお、図1中、車両用シートSの一部(具体的には、シートクッションS1の前端角部)については、図示の都合上、トリムカバー1aを外した構成にて図示している。
【0023】
車両用シートSは、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッションS1、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバックS2、及び、シートバックS2の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレストS3を主な構成要素として有する。
【0024】
シートクッションS1は、図2に示す骨格となるシートクッションフレーム10にクッションパッド1bを載置し、更にクッションパッド1bをトリムカバー1aで覆うことで構成されている。シートバックS2は不図示のシートバックフレームに不図示のクッションパッドを載置して、トリムカバー1aで覆うことで構成されている。ヘッドレストS3は、不図示の芯材に不図示のパッド材を配して、トリムカバー1aで被覆して形成されている。
【0025】
シートクッションS1やシートバックS2のクッションパッドはウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材である。シートクッションS1のトリムカバー1aには、シートクッション右側に設けられ前後方向に延在する第一の吊りこみ部2a(右側吊りこみ部)、シートクッション左側に設けられ前後方向に延在する第二の吊りこみ部2b(左側吊りこみ部)、シートクッション前側に設けられシート幅方向に延在する第三の吊りこみ部2c(前側吊りこみ部)、シートクッション後側に設けられシート幅方向に延在する第四の吊りこみ部2d(後側吊りこみ部)がそれぞれ設けられている。また、後述するように、クッションパッド1bの各吊りこみ部2a~2dに対応する位置には、厚みが周囲よりも薄く形成された薄肉部がそれぞれ設けられている。
【0026】
[2.シートクッションフレームの概要]
図2を参照しながら、本実施形態に係るシートクッションフレーム10の構成について説明する。シートクッションフレーム10は、シートクッションS1の骨格を形成するものであり、シートクッションフレーム10の後端部は、不図示のリクライニング機構を介して不図示のシートバックフレームに連結されている。
【0027】
図2に示すように、シートクッションフレーム10は、上方から見たときに略方形枠状の外形形状をなす。そして、シートクッションフレーム10は、シート幅方向左右の端部をそれぞれ構成する一対のサイドフレーム11と、シートクッションフレーム10の前端部を構成する第1パンフレーム20と、連結ブラケット40を介して第1パンフレーム20と連結された第2パンフレーム30と、左右のサイドフレーム11を後端部において連結するフレーム連結部材12と、を主たる構成要素とする。
【0028】
サイドフレーム11は、前後方向に延出する板金部材からなり、左側のサイドフレーム11と、右側のサイドフレーム11とは、互いに平行な状態で左右方向に離間している。サイドフレーム11の後方部分の左右内側面には、左右方向(シート幅方向)に延出するフレーム連結部材12が連結固定されている。フレーム連結部材12は、縦断面略円形状のパイプ部材からなり、左右のサイドフレーム11の上下方向の略中央を貫通して構成される。
【0029】
第1パンフレーム20は、金属製の板材から形成されたフレームであって、一対のサイドフレーム11の前方側に固着接合されており、第1パンフレーム20によって左右のサイドフレーム11が前方側で連結される。より詳細には、第1パンフレーム20左右方向の端部は、それぞれ、溶接などの方法によってサイドフレーム11に設けられたフランジ11aに固着接合されている。
【0030】
第2パンフレーム30は、金属製の板材から形成されたフレームであって、後述する連結ブラケット40を介して第1パンフレーム20と連結されている。第2パンフレーム30は、第1パンフレーム20の後方かつ、フレーム連結部材12の前方の位置に配置されている。ここで、第2パンフレーム30は、シート前後方向において、フレーム連結部材12よりも第1パンフレーム20に近い位置に配置されている。また、第2パンフレーム30は、左右のサイドフレーム11や第1パンフレーム20に対してシート幅方向内側に配置されている。さらに、第2パンフレーム30は、シート上下方向において、第1パンフレーム20よりも上方に配置されている。
【0031】
本実施形態においてパンフレームは、上記のように、第1パンフレーム20と第2パンフレーム30に分割されて構成されている。第1パンフレーム20及び第2パンフレーム30は、主として着座者(乗員)の大腿部を支持するためのものである。
【0032】
[3.第1パンフレーム20]
本実施形態に係る第1パンフレーム20は、図3に示すように、左右の端部に設けられた右側部21及び左側部22と、右側部21と左側部22とを接続し、シート幅方向に延在する前方部23と、右側部21、左側部22、前方部23よりも下方に配置された下方部24を備えている。
【0033】
[4.第2パンフレーム30]
本実施形態に係る第2パンフレーム30は、図4に示すように、シート幅方向に延在するベース部31と、ベース部31の右側の端部を折り曲げて形成された右フランジ部32と、ベース部31の左側の端部を折り曲げて形成された左フランジ部33と、ベース部31の前側の端部を折り曲げて形成された折曲部34と、折曲部34から前側に延出する延出部35を備えている。
【0034】
また、ベース部31には、左右方向に配列された4つの突出片36a,37a,38a,39aが設けされている。各突出片は、ベース部31を構成する金属製の板材に切込みを入れて、切込みの内側部分を上方に持ち上げることで形成されている。したがって、各突出片の基端にはそれぞれ開口36b,37b,38b,39bが形成されている。左右方向(シート幅方向)における外側の突出片36aと突出片39aは、前後の端部がベース部31に接続されている。左右方向(シート幅方向)における内側の突出片37aと突出片38aは、後端部のみがベース部31に接続されている。突出片36a,37a,38a,39aは不図示の受圧部材(例えばSバネ)の端部を係止するために用いられる。
【0035】
[5.連結ブラケット40]
本実施形態に係る連結ブラケット40は、図5A及び5Bに示すように、第1取付部41と、第2取付部42と、第1取付部41と第2取付部42とを連結する屈曲部43を備えている。第1取付部41には一対の孔41aが穿設され、第2取付部42には1つの孔42aが穿設されている。連結ブラケット40は、金属製の部材を折り曲げることで屈曲部43が形成されている。
【0036】
第1取付部41は、孔41aに挿通される不図示のボルトとナット等の締結部材によって第1パンフレーム20やサイドフレーム11に対して取り付けられる。第2取付部42は、孔42aに相通される不図示のボルトとナット等の締結部材によって第2パンフレーム30の左右両端に設けられた右フランジ部32及び左フランジ部33に取り付けられる。
【0037】
連結ブラケット40はシート幅方向において、第1取付部41が外側に位置し、第2取付部42が内側に位置するように配置される。つまり、連結ブラケット40は、第2取付部42及び屈曲部43がシート幅方向の内側に向かうように配置される。換言すると、車両用シートSの幅方向において、第2取付部42は、第1取付部41の内側に配置されている。したがって、第1取付部41に取り付けられた第1パンフレーム20に対して、第2取付部42に取り付けられた第2パンフレーム30がシート幅方向内側に配置されることになる。
【0038】
[6.シートクッションフレーム10における衝撃の吸収]
前突などの衝撃発生時には、着座者が沈み込み、着座者の脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことがある。本実施形態の車両用シートSのシートクッションフレーム10は、一対のサイドフレーム11に連結された第1パンフレーム20と、第1パンフレーム20に連結された第2パンフレーム30と、第1パンフレーム20と第2パンフレーム30を連結する連結ブラケット40を備えており、前突などの衝撃発生時に、着座者の沈み込みに伴って生じる衝撃を抑制することが可能となっている。具体的には、前突時に、着座者が沈み込んだ際に、第1パンフレーム20と第2パンフレーム30を連結する連結ブラケット40が屈曲部43で変形することで、着座者に生じる衝撃の吸収に寄与する。したがって、着座者の脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことが抑制される。以下、本実施形態に係るシートクッションフレーム10における衝撃の吸収について説明をする。
【0039】
図6A及び6Bを参照して、連結ブラケット40による衝撃の吸収について説明をする。図6Aは衝撃が加わる前の連結ブラケットの形状を示す模式図であり、図6Bは衝撃が加わって変形した後の連結ブラケットの形状を示す模式図である。
【0040】
前突時に着座者が沈み込むと、第2パンフレーム30が下方へと変位する。第2パンフレーム30は連結ブラケット40の第2取付部42に取り付けられているため、第2取付部42に下方へと変位する力が伝達される。第2取付部42に伝達された下方へと変位する力により、屈曲部43において連結ブラケット40が変形することで、着座者に生じる衝撃が吸収される。したがって、着座者の脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことが抑制される。ここで、屈曲部43は、シート前後方向に延在して配置されているため、下方へと生じる衝撃を適切に吸収することが可能となっている。
【0041】
図7A及び7Bを参照して、第1パンフレーム20及び第2パンフレーム30による衝撃の吸収について説明をする。図7Aは衝撃が加わった初期における第1パンフレーム20と第2パンフレーム30の位置関係を示す模式図であり、図7Bは衝撃が加わった後における第1パンフレーム20と第2パンフレーム30の位置関係を示す模式図である。
【0042】
前突時に着座者が沈み込むと、第2パンフレーム30が下方へと変位する。第2パンフレーム30が下方へと変位する過程において、第2パンフレーム30が不図示の車体や他の部材と接触することで、着座者に生じる衝撃が吸収される。また、着座者の沈み込みに伴って、第1パンフレーム20や第2パンフレーム30の形状が変形することによっても着座者に生じる衝撃が吸収される。したがって、着座者の脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことが抑制される。
【0043】
本実施形態のシートクッションフレーム10では、第2パンフレーム30が、シート上下方向において第1パンフレーム20よりも上方に配置されているため、前突時に着座者が沈み込んだときに、まず第2パンフレーム30に下方への荷重が生じて、連結ブラケット40に荷重が伝達されるため、着座者に生じる衝撃が適切に吸収される。
【0044】
ここで、第2パンフレーム30の下方に、不図示のパイプ部材、板状部材、弾性部材などを配置すると、第2パンフレーム30の変形を規制することが可能となり、より一層の衝撃吸収効果を奏するため好適である。
【0045】
また、第1パンフレーム20や第2パンフレーム30には、図2乃至4に示すように、開口が穿設されており、脆弱部が形成されている。本実施形態に係るシートクッションフレーム10では、第1パンフレーム20や第2パンフレーム30が脆弱部において変形することによっても、衝撃の吸収が生じることとなり、より一層の衝撃吸収効果を奏するため好適である。
【0046】
ここで、第2パンフレーム30が衝突に伴って変位した際に広範囲において衝撃を伝達するように構成されていると、衝撃が効果的に吸収されるため好ましい。例えば、図2に示すように、第2パンフレーム30が第1パンフレーム20よりも後方に位置するように構成されていると、衝突に伴って着座者が沈み込んだ際に、シート前後方向における広い範囲で効果的に衝撃を吸収することが可能となる。したがって、着座者の脊椎に生じる圧縮荷重を適切に抑制することが可能となる。
【0047】
[7.変形例]
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。以下においては、本実施形態に係るシートクッションフレームの変形例について説明する。
【0048】
上記実施形態では、第1パンフレーム20と第2パンフレーム30が別体として構成された例を示したが、第1パンフレーム20と第2パンフレーム30を一体的に形成して、スリットや折曲部などの脆弱部を設ける構成としてもよい。
【0049】
図8は、本実施形態の変形例に係る車両用シートのシートクッションフレーム10Xを示す斜視図である。シートクッションフレーム10Xは、サイドフレーム11Xの前方の第1パンフレーム部20Xと、第1パンフレーム部20Xと一体的に形成された第2パンフレーム部30Xを備えたパンフレームとなっている。ここで、図8において左右のサイドフレーム11Xの前方は、パイプ部材13Xによって連結されている。
【0050】
図8に示すように、第1パンフレーム部20Xの前方には、シート幅方向に複数のスリット25Xが形成されている。また、第1パンフレーム部20Xの側方部分には、シート前後方向に複数のスリット26Xが形成されている。これらスリット25X,26Xは、前突時に着座者が沈み込んだ際に衝撃を吸収する脆弱部として機能する。
【0051】
図9は、図8のA-A断面図であり、第1パンフレーム部20Xにスリット26Xが設けられた状態を示している。このとき、スリット26Xの近傍にパイプ部材13Xが設けられていると、衝撃を吸収してスリット26Xにおいて変形して下方に変位した第1パンフレーム部20Xがパイプ部材13Xに接触し、衝撃をパイプ部材13Xへと伝達することが可能となり好ましい。
【0052】
また、図10に示すように、スリット26Xの代わりに第1パンフレーム部20Xの一部を折り曲げて形成した折曲部26Yを脆弱部として第1パンフレーム部20Xに設けることも可能である。また、脆弱部を設ける対象は第1パンフレーム部20Xに限定されるものではなく、サイドフレーム11Xにスリット16Xを設けたり(図11)サイドフレーム11Xに折曲部16Yを設けたりすることも可能である。なお、第1パンフレーム部20Xとサイドフレーム11Xの両方にスリットや折曲部の形態の脆弱部を適宜組み合わせて設けてもよい。
【0053】
上記実施形態では、連結ブラケット40が、屈曲部43を1つ備える例を示したが、屈曲部の数は1つに限定されるものではなく、屈曲部を複数備える構成としてもよい。
【0054】
上記実施形態では、サイドフレーム11の片側に連結ブラケット40を1つ設けた例を示したが、連結ブラケットの数は片側に1つずつ設ける構成に限定されるものではなく、連結ブラケットを、一対のサイドフレーム11の片側にそれぞれ複数設ける構成としてもよい。
【0055】
上記実施形態では、第1パンフレーム20、第2パンフレーム30、連結ブラケット40を構成する材料として金属を用いる例を示したが、金属以外の材料を用いてもよく、例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)等のカーボン樹脂など樹脂材料を用いることも可能である。
【0056】
また、第1パンフレーム20、第2パンフレーム30、連結ブラケット40を構成する材料として、強度の異なる金属(例えば、鋼やアルミニウム)や、CFRPなどの材料を適宜選択して組み合わせることで、各部材が変形する順番を制御して、衝撃の吸収を制御することも可能である。
【0057】
例えば、連結ブラケット40の材料や形状を適宜選択することで、第1パンフレーム20及び第2パンフレーム30よりも変形しやすい構成としてもよい。第1パンフレーム20及び第2パンフレーム30よりも変形しやすい連結ブラケット40を優先的に変形させることで、前突時に着座者が沈み込んだ際の衝撃の吸収を適切に制御することが可能となる。
【0058】
また、第1パンフレーム20と第2パンフレーム30の材料や形状をそれぞれ適宜選択することで、第2パンフレーム30を、第1パンフレーム20よりも変形しやすい構成としてもよい。第1パンフレーム20よりも変形しやすい第2パンフレーム30により、前突時に着座者が沈み込んだ際の衝撃を適切に吸収することが可能となる。
【0059】
また、上記実施形態における第1パンフレーム20を支持する一対のサイドフレーム11や、連結ブラケット40に脆弱部を設けることも可能である。脆弱部は、切込み(スリット)や凹部、切欠きを設けたり、肉厚を薄くしたり、材質をその周囲よりも柔らかくしたりして形成すればよい。
【0060】
また、連結ブラケット40をサイドフレーム11に取り付けることで、連結ブラケット40をサイドフレーム11に取り付けられた第1パンフレーム20と連結するように構成することも可能である。
【0061】
また、連結ブラケット40と第1パンフレーム20の締結、連結ブラケット40と第2パンフレーム30の締結は、締結部材としてボルトとナット等を用いる以外に、溶接による締結や、かしめピンによる締結を採用することも可能である。
【0062】
以上、本実施形態に係るシートクッションを車両に搭載される車両用シートのシートクッションを例として説明した。本実施形態に係るシートクッションは、車両用シートのシートクッションに限定されるものではなく、着座者に衝撃が発生しうるシート、特に、衝撃発生時に着座者の腰部に対して沈み込みが発生し得るシートのシートクッションであれば、特に用途についての制限はない。例えば、本発明のシートクッションは、車両以外の乗物内で使用される乗物用シートのシートクッションとしても利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
S 車両用シート(乗物用シート)
S1 シートクッション
1a トリムカバー
1b クッションパッド
2a 第一の吊りこみ部(右側吊りこみ部)
2b 第二の吊りこみ部(左側吊りこみ部)
2c 第三の吊りこみ部(前側吊りこみ部)
2d 第四の吊りこみ部(後側吊りこみ部)
S2 シートバック
S3 ヘッドレスト
10 シートクッションフレーム
11 サイドフレーム
11a フランジ
12 フレーム連結部材
20 第1パンフレーム
21 右側部
22 左側部
23 前方部
24 下方部
30 第2パンフレーム
31 ベース部
32 右フランジ部
33 左フランジ部
34 折曲部
35 延出部
36a,37a,38a,39a 突出片
36b,37b,38b,39b 開口
40 連結ブラケット
41 第1取付部
41a 孔
42 第2取付部
42a 孔
43 屈曲部
10X シートクッションフレーム
11X サイドフレーム
16X スリット(脆弱部)
16Y 折曲部(脆弱部)
13X パイプ部材
20X 第1パンフレーム部
25X,26X スリット(脆弱部)
26Y 折曲部(脆弱部)
30X 第2パンフレーム部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12