(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】車両窓用ガラスアッセンブリー
(51)【国際特許分類】
H01R 4/02 20060101AFI20230308BHJP
H01R 4/18 20060101ALI20230308BHJP
B23K 35/26 20060101ALI20230308BHJP
C22C 13/00 20060101ALI20230308BHJP
C22C 13/02 20060101ALI20230308BHJP
C22C 28/00 20060101ALI20230308BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
H01R4/02 Z
H01R4/02 C
H01R4/18 A
B23K35/26 310D
B23K35/26 310A
C22C13/00
C22C13/02
C22C28/00 B
B23K1/00 330D
(21)【出願番号】P 2019551888
(86)(22)【出願日】2018-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2018030762
(87)【国際公開番号】W WO2019092947
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2017214862
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】関 康平
(72)【発明者】
【氏名】濱田 潤
(72)【発明者】
【氏名】古橋 一範
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/096248(WO,A1)
【文献】実開平01-158662(JP,U)
【文献】特表2016-527689(JP,A)
【文献】特表2013-530916(JP,A)
【文献】特開2016-222524(JP,A)
【文献】実開平06-058557(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02
H01R 4/18
B23K 35/26
C22C 13/00
C22C 13/02
C22C 28/00
B23K 1/00
B60S 1/02
H05B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定パターンの導電体層がガラス板主面に形成された車両窓用ガラス板と、
前記導電体層に、インジウム含有の無鉛ハンダからなる、第一ハンダ層と第二ハンダ層からなる一対の接合部を介して接続された接続端子と、
前記接続端子に固定された電力線と、を備える、車両窓用ガラスアッセンブリーであって、
前記接続端子は、
前記導電体層に前記第一ハンダ層を介して接合する、金属板からなる第一接合部と、
前記導電体層に前記第二ハンダ層を介して接合する、金属板からなる第二接合部と、
前記第一接合部と前記第二接合部とに連結し、前記導電体層から離隔する、金属板からなるブリッジ部と、
前記ブリッジ部主面に前記電力線を固定する、固定部と、
を備え、
前記電力線は、
前記第一接合部の中心部と前記第二接合部の中心部とを結ぶ仮想線と直交するように前記固定部から前記ガラス板主面に沿って延伸し、
前記固定部から延伸する電力線の始点が、前記第一接合部の中心部と前記第二接合部の中心部とを結ぶ
前記仮想線の
中点の上方にある、
車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項2】
所定パターンの導電体層がガラス板主面に形成された車両窓用ガラス板と、
前記導電体層に、インジウム含有の無鉛ハンダからなる、第一ハンダ層と第二ハンダ層からなる一対の接合部を介して接続された接続端子と、
前記接続端子に固定された電力線と、を備える、車両窓用ガラスアッセンブリーであって、
前記接続端子は、
前記導電体層に前記第一ハンダ層を介して接合する、金属板からなる第一接合部と、
前記導電体層に前記第二ハンダ層を介して接合する、金属板からなる第二接合部と、
前記第一接合部と前記第二接合部とに連結し、前記導電体層から離隔する、金属板からなるブリッジ部と、
前記ブリッジ部主面に前記電力線を固定する、固定部と、
を備え、
前記電力線は、前記固定部から前記ガラス板主面に沿って延伸し、
前記固定部から延伸する電力線の始点が、前記第一接合部の中心部と前記第二接合部の中心部とを結ぶ仮想線の上方にあり、
前記ブリッジ部は、前記第一接合部と前記第二接合部との間において前記電力線の延伸方向となる側が切り欠かれた形状をなしており、
前記固定部はこのブリッジ部の裏側主面に設けられている、
車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項3】
所定パターンの導電体層がガラス板主面に形成された車両窓用ガラス板と、
前記導電体層に、インジウム含有の無鉛ハンダからなる、第一ハンダ層と第二ハンダ層からなる一対の接合部を介して接続された接続端子と、
前記接続端子に固定された電力線と、を備える、車両窓用ガラスアッセンブリーであって、
前記接続端子は、
前記導電体層に前記第一ハンダ層を介して接合する、金属板からなる第一接合部と、
前記導電体層に前記第二ハンダ層を介して接合する、金属板からなる第二接合部と、
前記第一接合部と前記第二接合部とに連結し、前記導電体層から離隔する、金属板からなるブリッジ部と、
前記ブリッジ部主面に前記電力線を固定する、固定部と、
を備え、
前記電力線は、前記固定部から前記ガラス板主面に沿って延伸し、
前記固定部から延伸する電力線の始点が、前記第一接合部の中心部と前記第二接合部の中心部とを結ぶ仮想線の上方にあり、
前記ブリッジ部は、前記ブリッジ部主面を備える天井部と、前記第一接合部および前記第二接合部と連結する傾斜構造の橋脚部と、を備え、
前記天井部の前記電力線の延伸方向となる側が切り欠かれた形状をなして
おり、
前記固定部は前記ブリッジ部の裏側主面に設けられている、
車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項4】
前記電力線は、固定部において、加締め、ロウ接、又は溶接で固定されている、請求項1
~3のいずれかに記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項5】
前記始点が、前記第一接合部の中心部と、前記第二接合部の中心部とを結ぶ仮想線の中点の上方にある、請求項
2~4のいずれかに記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項6】
前記第一、二接合部、前記ブリッジ部の各部位の厚みが0.3mm~2.0mmである、請求項1~
5のいずれかに記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項7】
前記無鉛ハンダが、インジウム:5~95質量%、スズ:5~95質量%、銀:0~10質量%、アンチモン:0~10質量%、銅:0~10質量%、亜鉛:0~10質量%、ニッケル:0~10質量%の合金からなる、請求項1~
6のいずれかに記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項8】
前記ガラス板が、非強化ガラスからなる、請求項1~
7のいずれかに記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項9】
前記電力線は、前記仮想線と直交する方向に延伸している、請求項
2又は3に記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項10】
前記上方は、前記ガラス板主面から垂直方向に離隔する方向である、請求項1~
9のいずれかに記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項11】
前記ブリッジ部は、前記第一接合部と前記第二接合部との間において前記電力線の延伸方向となる側が切り欠かれた形状をなしている、請求項
1に記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項12】
前記電力線は、前記固定部に加締めにより固定され、
前記固定部の長尺方向が前記ブリッジ部の長尺方向に対して垂直の関係にある、請求項1~11のいずれかに記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項13】
前記仮想線は4mmの幅を有する、請求項1~12のいずれかに記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項14】
前記中点は直径2mmの大きさを有する、請求項
1に記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項15】
前記電力線の径は、1.25sq(AWG:16)~2.0sq(AWG:14)である、請求項1~14のいずれかに記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項16】
前記第一接合部と前記第二接合部との間隔が、16mm~4mmである、請求項1~15のいずれかに記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項17】
前記ブリッジ部主面の面積が、96mm
2~8mm
2である、請求項1~16のいずれかに記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【請求項18】
前記第一接合部と前記第二接合部の各主面の面積が、12mm
2~48mm
2である、請求項1~17のいずれかに記載の車両窓用ガラスアッセンブリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定パターンの導電体層が主面に形成された車両窓用ガラス板の前記導電体層を、無鉛ハンダ層を介して、接続端子に接合させてなる、車両窓用ガラスアッセンブリーに関する
【背景技術】
【0002】
車両窓用ガラス板の主面には、アンテナ線や、ガラスの曇りを除去するための熱線を形成するため、銀プリントなどによる導電体層が形成される。前記導電体層は、接続端子の端子座にハンダ付けされ、前記接続端子は電力線によりハーネスを介して、各種素子や電源と接続される。近年では、ハンダ付けに使用されるハンダ材料の無鉛化が求められており、ガラス板に与える応力の影響が少ない、有鉛ハンダと同等の柔軟性を備える、インジウムを有する無鉛ハンダの使用が提案されており、当ハンダ材料を使用し、間隔を設けた一対のハンダ層からなる接合部で接続端子を導電体層に接続した車両窓用ガラスアッセンブリーが提案されている(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-096198号公報
【文献】特表2014-509944号公報
【文献】特表2016-500575号公報
【文献】特開2016-052684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インジウムを有する無鉛ハンダは柔軟性を備えることから、前記導電体層に、前記接続端子をはんだ付けした後や、車両窓用ガラスアッセンブリーを熱サイクル試験にかけたときに、ガラス板や、前記導電体層にクラック等の不良は発生しづらい。他方で、ハンダ接合部に電力線などにより引張応力がかかった場合の接合強度は十分ではない。車両窓用ガラスアッセンブリーは、前記熱サイクル試験だけでなく、「DIN EN ISO16750-4-K セクション5.1.2.2」に準拠したヒートソーク試験を合格する品質を備える必要がある。中でも、ドイツ自動車工業会(VDA)に定められた、ヒートソーク試験を合格することが好ましい。VDAに定められたヒートソーク試験とは、前記ハンダ接合部を105℃の温度環境下におき、前記導電体層に14Vの電圧を印加しながら、前記接続端子に接続した電力線を10Nの荷重で、96時間、ガラス板の主面に対して垂直方向に引っ張る、というもので、規格化されたヒートソーク試験の中でも条件の厳しいものである。
【0005】
しかしながら、インジウムを有する無鉛ハンダによるハンダ接合部を備える車両窓用ガラスアッセンブリーでは、前記VDAによるヒートソーク試験を合格することが難しい。それは、インジウムを有する無鉛ハンダは、融点が130℃程度と低く、105℃という温度環境で、ハンダ接合部にハンダ層に対して垂直方向に引張荷重をかけると、ハンダ層のクリープ疲労(物体に一定の荷重を加えることで、時間とともに物体が変形していく現象)により、ハンダ接合部の接合強度が劣化することが原因であると考えられる。
本発明は、電力線に接続した接続端子とガラス板主面に形成された導電体層とを接合するインジウムを有する無鉛ハンダによるハンダ接合部を備える車両窓用ガラスアッセンブリーにおいて、接続端子のハンダ接合部にかかる引張応力を軽減することによって、VDAに定められたヒートソーク試験を合格できるものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両窓用ガラスアッセンブリーは、
所定パターンの導電体層がガラス板主面に形成された車両窓用ガラス板と、
前記導電体層に、インジウム含有の無鉛ハンダからなる、第一ハンダ層と第二ハンダ層からなる一対の接合部を介して接続された接続端子と、
前記接続端子に固定された電力線と、を備える、車両窓用ガラスアッセンブリーであって、
前記接続端子は、
前記導電体層と、前記第一ハンダ層を介して接合する、金属板からなる第一接合部と、
前記導電体層と、前記第二ハンダ層を介して接合する、金属板からなる第二接合部と、
前記第一接合部と、前記第二接合部とに連結し、前記導電体層から離隔する、金属板からなるブリッジ部と
前記ブリッジ部主面に前記電力線を固定する、固定部と、を備え、
前記電力線は、前記固定部から前記ガラス板主面に沿って延伸し、
前記固定部から延伸する電力線の始点(すなわち、前記固定部から延伸する電力線の固定されていない部分(非固定部)の先端)が、前記第一接合部の中心部と、前記第二接合部の中心部とを結ぶ仮想線の上方にある、ものである。
【0007】
前記電力線は、前記固定部から延伸する部位は、前記接続端子から開放された構造となっているので、前記電力線を前記ブリッジ部に対して垂直の方向から引っ張るモードが発生しうる。このモードは、引張のモードの中では、前記第一ハンダ層、前記第二ハンダ層に対して最も強い引張応力を発生させるモードである。VDAによるヒートソーク試験は、前記電力線を前記ブリッジ部に対して垂直の方向から引っ張るモードも含む。本発明の車両窓用ガラスアッセンブリーは、上記構造を備えることで、VDAによるヒートソーク試験を合格するものとすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力線がガラス板の主面に対して垂直方向に引っ張られる状態となったときに、接続端子にかかる応力が分散されて、局所的に強い応力が発生することを抑制できるので、インジウムを有する無鉛ハンダによるハンダ接合部を備える車両窓用ガラスアッセンブリーにて、VDAに定められたヒートソーク試験を合格できるものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の車両窓用ガラスアッセンブリーの典型例の要部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の車両窓用ガラスアッセンブリーを、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の車両窓用ガラスアッセンブリー1の典型例の電力線を接続端子に固定した要部を説明する図、
図2は、前記ガラスアッセンブリー1で使用される、接続端子の典型例を、詳細に説明する図である。
図3、
図4、
図5は、それぞれ、本発明の範疇にある、接続端子の第一、第二、第三派生例を説明する図である。
【0011】
車両窓用ガラスアッセンブリー1は、所定パターンの導電体層3がガラス板主面21に形成された車両窓用ガラス板2と、前記導電体層3に、インジウム含有の無鉛ハンダからなる、第一ハンダ層41と第二ハンダ層42からなる一対の接合部を介して接続された接続端子5と、前記接続端子に固定された電力線6と、を備える。
前記接続端子5は、前記導電体層3と、前記第一ハンダ層41を介して接合する、金属板からなる第一接合部51と、
前記導電体層3と、前記第二ハンダ層42を介して接合する、金属板からなる第二接合部52と、
前記第一接合部51と、前記第二接合部52とに連結し、前記導電体層3から離隔する、金属板からなるブリッジ部53と
前記ブリッジ部主面531に前記電力線を固定する、固定部54と、を備える。
前記電力線6は、前記固定部54から前記ガラス板主面21に沿って延伸し、
前記固定部54から延伸する電力線6の始点60が、前記第一接合部の中心部71と、前記第二接合部の中心部72とを結ぶ仮想線7の上方にある。
【0012】
ここで、上方とは、ガラス板主面21から垂直方向に離隔する方向のことで、その垂直方向と、前記仮想線7とが交わるものとする。接続端子5では、前記仮想線7の幅は、4mmとして、前記始点60の位置が設定される。
【0013】
また、VDAによるヒートソーク試験を合格しやすい構成とするために、前記始点60は、前記前記第一接合部の中心部71と、前記第二接合部の中心部72とを結ぶ仮想線7の中点73の上方にあるものとしてもよい。この場合、中点73の大きさは、Φ2mmとして、前記始点60の位置が設定される。中点73は、仮想線7の中央にあり、
図2~
図5では、中点73を起点とし、始点60に向かう方向に表示されている矢印が描かれている。前記ヒートソーク試験では、この矢印の方向に電線6が引っ張られる。
【0014】
前記ガラス板2は、ガラス板主面21と、ガラス板端面22とを備える。車両窓として用いることができるように、前記ガラス板21は、湾曲形状を備えていてもよい。また、車両の形状に応じた面積を備えていてもよい。その厚みは、特に限定されるものではないが、0.3mm~6mmの範囲で適宜選ばれる。前記ガラス板2を形成する材料としては、ISO16293-1で定義できるソーダライムガラスを使用することができる。本発明のガラスアッセンブリー1では、前記ガラス板2が非強化ガラスであっても、VDAに定められたヒートソーク試験、以下実施例にて検証されたような熱サイクル試験を満足する。よって、前記ガラス板2として、非強化ガラスを使用してもよい。また、前記ガラス板2として、前記非強化ガラスを含む合せガラスであってもよい。また、前記ガラス板2として、非強化ガラスだけではなく、風冷強化ガラス、化学強化ガラス等が使用されても良い。尚、本発明で言う非強化ガラスとは、炉内での加熱によって曲げ加工されたガラス板が炉内での温度プロファイルに従って冷却されることで、ガラス板の表面に50MPa以下の圧縮応力を備えることになったもの、又は表面に圧縮応力を備えないガラス板のことを言う。
【0015】
前記熱サイクル試験は、「DIN EN ISO16750-4-H セクション5.3.1.2」に準拠した、ドイツ自動車工業会(VDA)に定められた、熱サイクル試験を合格することが好ましい。VDAに定められた熱サイクル試験とは、前記ハンダ接合部を-40℃~105℃の温度サイクル環境下(全60サイクル)におき、昇温及び105℃保持ステップにおいて、前記導電体層に14Vの電圧を印加させる、というものである。
【0016】
前記導電体層3は、アンテナや電熱素子等の目的に応じた配線パターンを備え、前記接続端子5と電気的に接続されるバスバーや、接続端子部を備える。前記導電体層3は、好適には、銀や銀合金と、ガラスフリットの焼結体からなるものである。その焼結体は、例えば、銀や銀合金の粒子と、ガラスフリットと、有機オイルを含む、所謂銀ペーストを、スクリーン印刷等の方法でガラス板主面21に塗布し、500~700℃の加熱過程を経て形成することができる。また、車両窓用ガラスアッセンブリー1は、前記導電体3と、ガラス板表面21との間に、付加的に黒色などのカラーセラミックス層を備えていてもよい。カラーセラミック層は、好適には、顔料と、ガラスフリットとの焼結体からなるものである。その焼結体は、例えば、顔料の粒子と、ガラスフリットと、有機オイルを含む、所謂カラーセラミックペーストを、スクリーン印刷等の方法でガラス板主面21に塗布し、500~700℃の加熱過程を経て形成することができる。
【0017】
第一ハンダ層41、及び第二ハンダ層42は、インジウム含有の無鉛ハンダからなる。当該ハンダは、融点が115℃~155℃と低いので、ガラス板2が合せガラスの場合に、特に好ましいものとなる。なぜなら、接続端子5を導電体層3にハンダ付けする際の加熱温度を、合せガラスの中間膜として使用されている、PVB等の熱可塑性樹脂を熱破壊することがないように設定しやすくなるからである。これを考慮すると、前記無鉛ハンダとしては、融点が120℃~140℃、さらに好ましくは125℃~135℃のものが使用されてもよい。記無鉛はんだの例として、インジウム:5~95質量%、スズ:5~95質量%、銀:0~10質量%、アンチモン:0~10質量%、銅:0~10質量%、亜鉛:0~10質量%、ニッケル:0~10質量%の合金からなるものが挙げられる。また、より好ましい例としてインジウム:65~95質量%、スズ:5~35質量%、銀:0~10質量%、アンチモン:0~3質量%、銅:0~5質量%、亜鉛:0~5質量%、ニッケル:0~5質量%の合金からなるものが挙げられる。
【0018】
前記導電体層3と、前記接続端子5との接合をより確実なものとするために、前記導電体層3と、前記第一、第二ハンダ層41、42との、それぞれの接合面積は、12mm2~48mm2、好ましくは、18mm2~36mm2としてもよい。また、第一接合部51、第二接合部52の各主面の面積は、12mm2~48mm2、好ましくは、18mm2~36mm2としてもよい。また、その形状は、矩形状、又は必要なハンダ接合面積を確保していれば、楕円状、円形状、多角形状としてもよい。前記第一、第二ハンダ層41、42、導電体層3、第一、第二接合部の接合は、様々な熱源から発生する熱をハンダ接合部近傍に供給することで達成される。熱源としては、従来から知られる半田鏝や熱風、抵抗溶接が挙げられる。具体的には、予め、接続端子5の第一、第二接合部の前記ガラス板主面21に相対する側に無鉛ハンダを溶融、付着させる。その後、接続端子5をガラス板主面に押し付けつけた状態で、第一、第二接合部のガラス板主面に相対する側の反対側に対して、鏝先温度を200~300℃に設定した半田鏝を接触、保持させることによって、接合は達成される。
【0019】
第一接合部51、第二接合部52、ブリッジ部53の各部位は、金属板からなる。前記金属板としては、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、クロム、コバルト、又はクロムが挙げられ、2つ以上の元素が含まれた合金からなる金属板でもよい。しかしながら、一般的に導電性と加工の容易性の点から、銅又は黄銅(真鍮)のような導電性物質が良好で、機械加工が容易な材料であることが望ましい。第一接合部51、第二接合部52、ブリッジ部53の各部位は、一枚の金属板から加工されて形成されたものでもよい。また、前記接続端子5は、実質的に、第一接合部51、第二接合部52、ブリッジ部53の部位からなるものとしてもよい。さらには、前記接続端子5は、第一接合部51、第二接合部52、ブリッジ部53の部位だけからなるものとしてもよい。
【0020】
また、前記ブリッジ部53において、ブリッジ部主面とは、ガラス板主面21と平行、又は略平行となる部位を指し、ガラス板主面21と相対する側をブリッジ部裏側主面、前記ブリッジ部裏側主面と反対側をブリッジ部表側主面531とする。ここで、各主面の面積は、96mm2~8mm2、好ましくは、72mm2~12mm2としてもよい。また、その形状は、矩形状もしくは略矩形状としてもよい。また、第一接合部51と、第二接合部52との間隔は、16mm~4mm、好ましくは、12mm~6mmとしてもよい。
【0021】
前記ブリッジ部53は、前記ブリッジ部主面を備える天井部530と、前記第一、第二接合部51、52と連結する橋脚部532とを備える。
図1~
図5で例示された接続端子5の橋脚部532は、第一、第二接合部51、52から、前記天井部530に向かって斜め方向にむかう傾斜構造となっている(すなわち、ガラス板2の主面とは平行ではない構造)。この他に、前記橋脚部532は、第一、第二接合部51、52からガラス板2の主面に対して垂直方向に向かう構造であってもよい。またさらには、前記ブリッジ部53は、前記橋脚部532を省いた構造としてもよい。この場合、固定部54は、ブリッジ部表側主面531に設けられることが好ましい。
【0022】
第一接合部51、第二接合部52、ブリッジ部53の各部位の厚みは、ヒートソーク試験に影響することがある。これを考慮すると、各部位の厚みは、0.3mm~2.0mm、好ましくは、0.5mm~1.0mmとしてもよく、さらには、各部位の厚みを、同一としてもよい。
【0023】
電力線6を固定する、固定部54は、ブリッジ部53の天井部530のブリッジ部表側主面531、または、ブリッジ部表側主面531の反対側のブリッジ部裏側主面にいずれかに設けられる。ここでは、固定部54がブリッジ部表側主面531に設けられる場合を詳述する。固定部54が、ブリッジ部裏側主面に設けられる態様について、別途詳述する。固定部54は、電力線6の始点60より前方部分(以下[先端部分]という)を固定できる程度の大きさを備えていればよい。固定部54の構造は、
図1~
図4に示すような、電力線6の先端部分を加締めることができる構造の他に、ロウ材を用いたロウ接、抵抗溶接のような溶接で電力線6の先端部分を固定する構造としてもよい。
【0024】
電力線6の先端部分を加締めることができる構造の代表的な例としては、Bクリンプが挙げられる。電力線6は、ガラス板主面21に沿って延伸する。電力線6が延伸する方向は、ガラス板端面22の方向で、仮想線7と直交する方向とすることが好ましい。電力線6の材質としては、電気抵抗率の低い銅やアルミニウムが挙げられるが、より電気伝導性が優れ、安価な銅が好ましい。また、被覆絶縁体の例としては、想定される使用温度以上の耐熱性を有しているものであればよく、塩化ビニルや耐熱ビニルが挙げられる。電力線の径については、車両窓用ガラス板の主面に形成された熱線に対して流れると想定される電流値が、電力線の許容電流以下になるように設定されればよい。しかしながら、電力線の柔軟性の観点から、電力線の径は1.25sq(AWG:16)~2.0sq(AWG:14)であることが好ましい。
【0025】
車両窓用ガラスアッセンブリー1では、電力線6に起因して、前記接続端子5と、接続端子5と導電体層3とのハンダ接合部に引張応力がかかることがある。本発明のガラスアッセンブリー1では、電力線6の始点60が、前記第一接合部の中心部71と、前記第二接合部の中心部72とを結ぶ仮想線7の上方にあり、さらには、電力線6において、前記ガラス板主面21と相対する側の反対側61は前記ブリッジ部53から開放されていため、前記引張応力が始点60周囲に発生する。そのため、接続端子5にかかる応力が分散されて、局所的に強い応力が発生することを抑制できる。かくして、本発明のガラスアッセンブリー1は、接続端子5と導電体層3とのハンダ接合部の、前記引張応力に対する耐久性が良好なものとなる。
【0026】
次に本発明の範疇にある、接続端子の派生例を説明する。
図3は、接続端子5の第一派生例を示す図である。
図2の接続端子5の典型例との差異は、ブリッジ部53が、接続端子5の上方からの観察において、切り欠いた構造を備えている点である。この接続端子5も、前段落で説明した作用が生じるので、この接続端子5を使用したガラスアッセンブリー1は、接続端子5と導電体層3とのハンダ接合部の、前記引張応力に対する耐久性が良好なものとなる。
【0027】
図4は、接続端子5の第二派生例を示す図である。
図3の接続端子5の第一派生例との差異は、固定部54が、ブリッジ部裏側主面に備えている点である。電力線6において、ガラス板主面21と相対する側の反対側61はブリッジ部53に面しておらず、開放されたものである。この接続端子5も、前途のように説明した作用が生じるので、この接続端子5を使用したガラスアッセンブリー1は、接続端子5と導電体層3とのハンダ接合部の、前記引張応力に対する耐久性が良好なものとなる。
【0028】
図5は、接続端子5の第三派生例を示す図である。
図4の接続端子5の第二派生例との差異は、接続端子5の上方からの観察において、ブリッジ部主面にのみ切り欠いた構造を備えている点である。したがって、電力線6において、ガラス板主面21と相対する側の反対側61はブリッジ部53に面しておらず、開放されたものである。この接続端子5も、前途のように説明した作用が生じるので、この接続端子5を使用したガラスアッセンブリー1は、接続端子5と導電体層3とのハンダ接合部の、前記引張応力に対する耐久性が良好なものとなる。
【0029】
図4、
図5で例示された、前記第二、第三派生例は、固定部54として、電力線6の先端部分を加締めることができる構造のものを備えている。加締めることができる構造の他に、前記第二、第三派生例は、固定部54として、ロウ材を用いたロウ接、抵抗溶接のような溶接で電力線6の先端部分を固定する構造としてもよい。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明を実施例にて、より詳細に説明する。
【0031】
実施例1
フロート法で製造された、ソーダライムガラスからなるガラス板21(一般的な車両窓サイズ、2mm厚さ;非強化ガラス)の主面に、先ず、黒色セラミックペーストをスクリーン印刷にて塗工、乾燥された後、その上に銀ペーストがスクリーン印刷で所定の熱線回路パターン形状に塗布、乾燥された。次いで、黒色セラミックペースト及び銀ペーストが塗布されたガラス板21が加熱処理され、導電体層3が形成されたガラス板2が準備された。
【0032】
図2に示す形状を有する、ニッケルメッキ処理を施された銅金属板から加工された接続端子5を準備された。この接続端子5では、第一接合部51、第二接合部52、ブリッジ部53の各部位の厚みは、同一で0.8mmであった。また、各部位は、矩形状で、第一接合部51と、第二接合部52との間隔は、12mm、ブリッジ部表側主面531の面積は、36mm
2、第一接合部51と第二接合部52の各主面の面積は、24mm
2であった。第一接合部51と第二接合部52のガラス板主面と面する側の主面を裏面とすると、両裏面は同じ水準にあり、前記ブリッジ部表側主面531は、前記水準と平行関係にあり、前記主面531は、前記水準から高さ2mmの位置するものであった。
【0033】
前記主面531上には、Bクリンプ型の固定部54が備え付けられており、固定部54の長尺方向はブリッジ部53の長尺方向に対して垂直の関係にあり、固定部54の長尺方向の始点はブリッジ部53の側辺が始点で、ブリッジ部53の幅方向の真ん中の位置が終点となるものであった。尚、その真ん中の位置とは、前記第一接合部の中心部71と、前記第二接合部の中心部72とを結ぶ仮想線7の中点73の上方にあるものでもある。
【0034】
2.1mmφの塩化ビニルで被覆された銅線からなる電力線6の銅線が剥き出しにされた部位が前記固定部54に固定され、接続端子5が導電体層3にハンダ付けされた際には、固定部54の長尺方向はブリッジ部53の長尺方向に対して垂直の関係にあり、前記電力線6がガラス板主面21に沿って延伸するように、加締められた。前記電力線6の始点60は、前記の固定部54の長尺方向の終点に相当するものであった。また、前記電力線6において、前記ガラス板主面21と相対する側の反対側61は前記ブリッジ部53から開放されている。
【0035】
第一接合部51と、第二接合部52の両方の裏面側の主面のそれぞれに、<インジウム75質量%、スズ:15質量%、銀:6質量%、アンチモン:1質量%、銅:1質量%、亜鉛:1質量%、ニッケル:1質量%>の合金からなる無鉛ハンダが、0.2g量、ハンダ付けされた。
【0036】
接続端子5にハンダ付けされたハンダが、接続端子5と、導電体層3と間に配置されるように、ベースガラス上に、接続端子5が配置された。次いで、接続端子5の通電加熱による前記ハンダの再溶融を経て、第一ハンダ層41、第二ハンダ層42が形成され、第一ハンダ層と第二ハンダ層からなる一対の接合部を介して接続された接続端子を有する車両窓用ガラスアッセンブリー1を模擬する、試料が得られた。
【0037】
本実施例で得られた試料は、VDAに定められたヒートソーク試験及び熱サイクル試験を満足するものであった。
【0038】
実施例2
接続端子5を、
図3に形状を有するものとした以外は、実施例1と同じ手順で、車両窓用ガラスアッセンブリー1を模擬する、試料が得られた。本実施例での接続端子5は、接続端子の5の上方からの観察において、切り欠いた構造を備え、固定部54の長尺方向の始点と終点がブリッジ部53の両側辺に位置する以外は、実施例1の接続端子5の各部位の大きさや位置関係を踏襲するものであった。本実施例で得られた試料は、VDAに定められたヒートソーク試験及び熱サイクル試験を満足するものであった。
【0039】
実施例3
接続端子5を、
図4に形状を有するものとした以外は、実施例1と同じ手順で、車両窓用ガラスアッセンブリー1を模擬する、試料が得られた。本実施例での接続端子5は、固定部54がブリッジ部裏側主面に備えている以外は、実施例2の接続端子5の各部位の大きさや位置関係を踏襲するものであった。本実施例で得られた試料は、VDAに定められたヒートソーク試験及び熱サイクル試験を満足するものであった。
【0040】
実施例4
接続端子5を、
図2に形状を有するものとした以外は、実施例1と同じ手順で、車両窓用ガラスアッセンブリー1を模擬する、試料が得られた。
本実施例での接続端子5は、接続端子の5の上方からの観察において、固定部54から延伸する電力線6の始点60が、前記第一接合部の中心部71と、前記第二接合部の中心部72とを結ぶ仮想線7の上方にあり、かつ仮想線7の線幅の最端部に位置する以外は、実施例1の接続端子5の各部位の大きさや位置関係を踏襲するものであった。
本実施例で得られた試料は、VDAに定められたヒートソーク試験及び熱サイクル試験を満足するものであった。
【0041】
比較例1
固定部54の長尺方向の始点と終点がブリッジ部53の両側辺に位置するものとし、始点60が、ブリッジ部53の側辺に位置するものとなる以外は、実施例1の接続端子5の各部位の大きさや位置関係を踏襲する、接続端子5が準備された。そして、実施例1と同じ手順で、車両窓用ガラスアッセンブリー1を模擬する、試料が得られた。本比較例で得られた試料は、VDAに定められたヒートソーク試験を満足するものではなかった。
【0042】
比較例2
固定部54をブリッジ部裏側主面に備えている以外は、実施例1の接続端子5の各部位の大きさや位置関係を踏襲する、接続端子5が準備された。そして、実施例1と同じ手順で、車両窓用ガラスアッセンブリー1を模擬する、試料が得られた。本比較例では、前記電力線6において、前記ガラス板主面21と相対する側の反対側61は前記ブリッジ部53に面しており、開放されたものではなかった。本比較例で得られた試料は、VDAに定められたヒートソーク試験を満足するものではなかった。
【符号の説明】
【0043】
1 車両窓用ガラスアッセンブリー
2 車両用窓ガラス板
21 ガラス板主面
22 ガラス板端面
3 導電体層
41 第一ハンダ層
42 第二ハンダ層
5 接続端子
51 第一接合部
52 第二接合部
53 ブリッジ部
530 ブリッジ部の天井部
531 ブリッジ部表側主面
532 ブリッジの橋脚部
54 固定部
6 電力線
60 電力線の始点
61 電力線6の、ガラス板主面21と相対する側の反対側
7 仮想線
71 第一接合部の中心部
72 第二接合部の中心部
73 仮想線7の中点