(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】ガラス繊維製造用のブッシング、及び、ガラス繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/083 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
C03B37/083
(21)【出願番号】P 2020538341
(86)(22)【出願日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 JP2019032035
(87)【国際公開番号】W WO2020040033
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2018154014
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019092939
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】藤井 剛
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 真規
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-226579(JP,A)
【文献】特開平06-234540(JP,A)
【文献】特開2010-163342(JP,A)
【文献】特開平07-126033(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159469(WO,A1)
【文献】特許第5622164(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第102515505(CN,A)
【文献】特許第4186202(JP,B2)
【文献】国際公開第2017/221471(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3590900(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/083
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、前記ベースプレート上に複数個配列された、ガラス融液を排出するノズルとを備える、ガラス繊維製造用のブッシングであって、
前記ベースプレートは、水平断面が扁平状のベース孔を備え、
前記ノズルは、前記ベース孔の輪郭に沿って前記ベースプレートから突出するノズル壁と、前記ベース孔から前記ノズル壁の先端へ向かって、前記ベース孔の形状を維持して貫通するノズル孔とを備え、
前記ノズル壁は、前記ベースプレートから突出していない一対の切り欠きを有し、
前記一対の切り欠きは、前記ノズル孔の長手方向の中心軸を介して相対して対向し、
前記切り欠きの幅は、前記ノズル孔の長手方向の中心軸の長さの10%以上、95%以下である、ガラス繊維製造用のブッシング。
【請求項2】
ベースプレートと、前記ベースプレート上に複数個配列された、ガラス融液を排出するノズルとを備える、ガラス繊維製造用のブッシングであって、
前記ベースプレートは、水平断面が扁平状のベース孔を備え、
前記ノズルは、前記ベース孔の輪郭に沿って前記ベースプレートから突出するノズル壁と、前記ベース孔から前記ノズル壁の先端へ向かって、前記ベース孔の形状を維持して貫通するノズル孔とを備え、
前記ノズル壁は、先端に一対の切り欠きを有し、
前記一対の切り欠きは、前記ノズル孔の長手方向の中心軸を介して相対して対向し、
前記切り欠きの幅は、前記ノズル孔の長手方向の中心軸の長さの10%以上、95%以下であり、
前記切り欠きの高さは、前記ベースプレートから前記ノズル壁の先端までの距離の80%を超え、100%未満である、ガラス繊維製造用のブッシング。
【請求項3】
前記一対の切り欠きは、前記ノズル孔の長手方向の中心軸の中央で相対する、請求項1又は2に記載のブッシング。
【請求項4】
前記ノズル壁の内周面側にある前記一対の切り欠きの面積の総和が、前記一対の切り欠きの面積を含む前記ノズル壁の内周面の総面積の1%以上、80%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のブッシング。
【請求項5】
前記切り欠きの形状は、矩形状である、請求項1~4のいずれか1項に記載のブッシング。
【請求項6】
前記ノズル孔の、(長手方向の中心軸の長さ)/(短手方向の最長部の長さ)の比が2以上、12以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のブッシング。
【請求項7】
前記ベースプレートの厚みをA、前記ベースプレートから前記ノズル壁の先端までの距離をBとしたとき、B/Aの比が0.2以上、4以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のブッシング。
【請求項8】
B/Aの比が0.2以上、1以下である、請求項7に記載のブッシング。
【請求項9】
前記ベース孔の断面積と、前記ノズル孔の先端部の断面積とが同一である、請求項1~8のいずれか1項に記載のブッシング。
【請求項10】
前記ベース孔の断面形状と、前記ノズル孔の断面形状とが同一である、請求項1~9のいずれか1項に記載のブッシング。
【請求項11】
長手方向の中心軸を対称軸として対称である扁平状の断面を有するガラス繊維の製造方法であって、
請求項1~10のいずれか1項に記載のブッシングの各ノズルからガラス融液を引き出して、該ガラス融液を急冷し繊維化する工程を備える、ガラス繊維の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法によりガラス繊維を得る工程と、
前記ガラス繊維を複数本集束する工程とを備える、ガラス繊維束の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス繊維製造用のブッシング、及び、ガラス繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
断面が扁平形状などの非円形のガラス繊維は、樹脂等との複合化で、断面が円形のガラス繊維よりも強度向上が望めること、樹脂との複合成形品のそりを防止することができることから、フィラー材料として広範に使用されている。これは、非円形であればガラス繊維同士が重なりやすく、樹脂と混合して成形する場合の樹脂の流動性が向上し、ガラス繊維の含有率が高くてもガラス繊維の分散性が良好であるためと考えられている。非円形のガラス繊維の作製プロセスは、円形のガラス繊維と同様の作製プロセスではあるが、断面を非円形とするために、ガラス融液をガラス繊維として引き出すための、特殊な構造を有するノズルが複数個配列されたガラス繊維製造用のブッシング(以下、ノズルプレートともいう)が必要である。
【0003】
例えば、特許文献1~3には、断面が扁平形状のガラス繊維を製造するためのノズルであって、長辺壁と短辺壁からなるノズル壁の長辺壁側の先端部に切り欠きを設けたノズルチップ、及び、該ノズルチップが複数個配列されたノズルプレートが開示されている。断面が扁平形状のガラス繊維を製造するためには、ガラス融液を排出する端部の断面が扁平形状のノズルから、ガラス融液を引き出して排出し、ガラス融液を急冷し繊維化する必要がある。ガラス融液の繊維化の際には、ガラス融液の表面張力が高く、融液が丸くなろうとすることから、これに対抗することが、断面が扁平形状のガラス繊維を製造するポイントとなる。
【0004】
特許文献1では、ガラス融液を排出する端部の断面が楕円形状のノズルが長辺壁の片側の先端に切り欠きを備えることで、切り欠き構造の無い側で、ガラス融液を保温して、流動するガラス融液の形を維持しつつ、切り欠き構造を備えた側のガラス融液の粘度を高くして、ガラスが丸くなろうとする力に対抗している。特許文献2では、ノズルの長辺壁の片側の先端に切り欠きを備えたノズルを切り欠きが向かい合うようにプレートに挿入している。特許文献3では、扁平形状ノズルの長辺壁の片側又は両側に、広範な切り欠きを設け、その切り欠きを通じて、冷却気体でノズル内の長辺側のガラス融液の粘度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第99/028543号
【文献】特開2003-048742号公報
【文献】特開2010-163342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガラス繊維を多量に製造するためには、ベースプレート上に多数のノズルを備えたブッシングを用いることが有効である。多数のノズルを備えるブッシングでは、ベースプレートの面積を大きくする必要がある。ベースプレートの面積が大きい場合、ベースプレートに温度ムラが生じやすくなるため、ガラス繊維の扁平率や断面積にばらつきが生じてしまい、ガラス繊維の断面形状のばらつきが大きくなるおそれがある。その理由として、ベースプレートに温度ムラが生じると、ノズル毎に内部を通るガラス融液の粘度が異なるため、ノズル出口にてガラスが丸くなろうとする力(表面張力)に対抗する力の大きさが異なり、ひいては得られるガラス繊維の扁平率にばらつきが生じると考えられる。さらには、比較的温度の低いノズル内ではガラス融液の流れが脈動しやすく、揃った断面形状のガラス繊維が得られないといった不具合が発生しやすい。
【0007】
また、ベースプレートの面積が大きい場合、引き出したガラス融液をベースプレートの中心部で集束するように紡糸すると、ベースプレートの中心部にあるノズルと端部にあるノズルとでは、各ノズルから引き出されるガラス融液の角度(以下、ガラス繊維の引っ張り角度ともいう)が異なるため、ガラス繊維の扁平率や断面積にばらつきが生じてしまい、ガラス繊維の断面形状のばらつきが大きくなるおそれがある。
【0008】
特許文献1~3に開示された既存のノズル形状では、上述したベースプレートの温度ムラ、及び、ガラス繊維の引っ張り角度の違いに起因してガラス繊維の扁平率や断面積にばらつきが生じてしまい、ガラス繊維の断面形状のばらつきが大きくなるおそれがある。
【0009】
本開示は、以上を鑑み、断面が扁平状のガラス繊維の製造において、多数のノズルから同時に紡糸する際に、ベースプレートの温度ムラ、及び、ガラス繊維の引っ張り角度の違いに起因するガラス繊維の断面形状のばらつきが小さいガラス繊維を製造することが可能なガラス繊維製造用のブッシングを提供することを目的とする。本開示はまた、該ブッシングを用いて、長手方向の中心軸を対称軸として対称である扁平状の断面を有するガラス繊維を製造する方法を提供することを目的とする。本開示はさらに、上記製造方法により得られたガラス繊維を複数本集束してガラス繊維束を製造する方法、及び、断面形状のばらつきが小さいガラス繊維が複数本集束されたガラス繊維束を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のガラス繊維製造用のブッシングは、第1実施形態において、ベースプレートと、上記ベースプレート上に複数個配列された、ガラス融液を排出するノズルとを備える、ガラス繊維製造用のブッシングであって、上記ベースプレートは、水平断面が扁平状のベース孔を備え、上記ノズルは、上記ベース孔の輪郭に沿って上記ベースプレートから突出するノズル壁と、上記ベース孔から上記ノズル壁の先端へ向かって、上記ベース孔の形状を維持して貫通するノズル孔とを備え、上記ノズル壁は、上記ベースプレートから突出していない一対の切り欠きを有し、上記一対の切り欠きは、上記ノズル孔の長手方向の中心軸を介して相対して対向し、上記切り欠きの幅は、上記ノズル孔の長手方向の中心軸の長さの10%以上、95%以下である。
【0011】
本開示のガラス繊維製造用のブッシングは、第2実施形態において、ベースプレートと、上記ベースプレート上に複数個配列された、ガラス融液を排出するノズルとを備える、ガラス繊維製造用のブッシングであって、上記ベースプレートは、水平断面が扁平状のベース孔を備え、上記ノズルは、上記ベース孔の輪郭に沿って上記ベースプレートから突出するノズル壁と、上記ベース孔から上記ノズル壁の先端へ向かって、上記ベース孔の形状を維持して貫通するノズル孔とを備え、上記ノズル壁は、先端に一対の切り欠きを有し、上記一対の切り欠きは、上記ノズル孔の長手方向の中心軸を介して相対して対向し、上記切り欠きの幅は、上記ノズル孔の長手方向の中心軸の長さの10%以上、95%以下であり、上記切り欠きの高さは、上記ベースプレートから上記ノズル壁の先端までの距離の80%を超え、100%未満である。
【0012】
以下、本開示のガラス繊維製造用のブッシングの第1実施形態及び第2実施形態を特に区別しない場合、単に「本開示のガラス繊維製造用のブッシング」又は「本開示のブッシング」という。
【0013】
本開示のブッシングでは、従来のようにノズル壁の片側に切り欠きを設けるのではなく、ノズル壁に一対の切り欠きを設け、切り欠きの幅を、ノズル孔の長手方向の中心軸の長さの10%以上、95%以下としている。これにより、断面が扁平状のガラス繊維を製造することができる。
【0014】
さらに、第1実施形態では、ノズル壁にベースプレートから突出していない一対の切り欠きを設けている。一方、第2実施形態では、ノズル壁の先端に一対の切り欠きを設け、切り欠きの高さを、ベースプレートからノズル壁の先端までの距離の80%を超え、100%未満としている。これにより、ベースプレートの温度ムラ、及び、ガラス繊維の引っ張り角度の違いに起因するガラス繊維の断面形状(扁平率、断面積)のばらつきを小さくすることができる。
【0015】
本開示のブッシングにおいて、上記一対の切り欠きは、上記ノズル孔の長手方向の中心軸の中央で相対することが好ましい。
この場合、切り欠きによる効果が生じやすくなるため、断面形状が扁平状のガラス繊維を容易に製造することができる。
【0016】
本開示のブッシングにおいては、上記ノズル壁の内周面側にある上記一対の切り欠きの面積の総和が、上記一対の切り欠きの面積を含む上記ノズル壁の内周面の総面積の1%以上、80%以下であることが好ましい。
上記切り欠きの面積比を1%以上、80%以下とすることで、切り欠きによる効果が生じやすくなる。切り欠きの面積比が1%未満である場合、切り欠きによる効果が生じにくくなり、一方、切り欠きの面積比が80%を超える場合、ノズル孔内のガラス融液の流れの安定性が低下し、ガラスの流出時に脈動などが発生しやすくなる。
【0017】
本開示のブッシングにおいて、上記切り欠きの形状は、矩形状であることが好ましい。
切り欠きの形状を矩形状とすることで、ノズルの加工が容易になる。また、切り欠きの形状を矩形状とすることで、切り欠きによるガラス融液の冷却効果を最大化することができる。さらには、ガラス融液の流れを安定化させることができるため、ガラス流出時に脈動などの不具合が発生しにくくなる。
【0018】
本開示のブッシングにおいては、上記ノズル孔の、(長手方向の中心軸の長さ)/(短手方向の最長部の長さ)の比が通常、2以上であることが好ましく、具体的には2以上、12以下であることが好ましい。
上記の比を2以上、12以下とすることで、長軸の長さと短軸の長さが異なる扁平状のガラス繊維を容易に製造することができる。上記の比が2未満である場合、ノズル孔の形状が円形に近くなるため、扁平状のガラス繊維を製造することが難しくなる。一方、上記の比が12を超える場合、長軸が長くなりすぎるため、同じ面積内に配置できるノズルの数が少なくなる。
【0019】
本開示のブッシングにおいては、上記ベースプレートの厚みをA、上記ベースプレートから上記ノズル壁の先端までの距離をBとしたとき、B/Aの比が0.2以上、4以下であることが好ましく、0.2以上、3以下であることがより好ましく、0.2以上、1以下であることがさらに好ましい。
B/Aの比を0.2以上、4以下とすることで、ガラス融液の流れを安定化させることができ、ガラス流出時に脈動などの不具合が発生しにくくなる。
【0020】
本開示のブッシングにおいては、上記ベース孔の断面積と、上記ノズル孔の先端部の断面積とが同一であることが好ましい。
ベース孔の断面積とノズル孔の先端部の断面積とを同一にすることで、ノズルの加工が容易になる。また、ベース孔の断面積とノズル孔の先端部の断面積とを同一にすることで、扁平状のガラス繊維を容易に製造することができる。
【0021】
本開示のブッシングにおいては、上記ベース孔の断面形状と、上記ノズル孔の断面形状とが同一であることが好ましい。
ベース孔の断面形状とノズル孔の断面形状とを同一にすることで、ノズルの加工が容易になる。また、ベース孔の断面形状とノズル孔の断面形状とを同一にすることで、扁平状のガラス繊維を容易に製造することができる。
【0022】
本開示のガラス繊維の製造方法は、長手方向の中心軸を対称軸として対称である扁平状の断面を有するガラス繊維の製造方法であって、本開示のブッシングの各ノズルからガラス融液を引き出して、該ガラス融液を急冷し繊維化する工程を備える。
【0023】
本開示のガラス繊維の製造方法により、断面形状が扁平状で、長手方向の中心軸を対称軸として対称であるガラス繊維を効率的に製造することができる。
【0024】
本開示のガラス繊維束の製造方法は、本開示のガラス繊維の製造方法によりガラス繊維を得る工程と、上記ガラス繊維を複数本集束する工程とを備える。
【0025】
本開示のガラス繊維束の製造方法により、断面形状の揃ったガラス繊維が複数本集束されたガラス繊維束を製造することができる。
【0026】
本開示のガラス繊維束は、第1の態様において、長手方向の中心軸を対称軸として対称である扁平状の断面を有するガラス繊維が複数本集束されたガラス繊維束であって、上記複数本のガラス繊維の断面形状の扁平率の平均値が2以上、8以下である。また、上記各ガラス繊維の断面形状の扁平率の標準偏差は14%以下であり、好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下である。
【0027】
本開示のガラス繊維束は、第2の態様において、長手方向の中心軸を対称軸として対称である扁平状の断面を有するガラス繊維が複数本集束されたガラス繊維束であって、上記各ガラス繊維の繊維断面積の標準偏差が14%以下であり、好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下である。
【0028】
第2の態様においては、上記複数本のガラス繊維の断面形状の扁平率の平均値が2以上、8以下であることが好ましい。
【0029】
本開示のガラス繊維束では、ガラス繊維の扁平率又は断面積のばらつきを小さくすることにより、ガラス繊維の断面形状のばらつきを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、断面が扁平状であり、扁平率や断面積といった断面形状のばらつきが小さいガラス繊維を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1(a)は、ガラス繊維製造装置の一実施形態を模式的に示す側面図である。
図1(b)は、
図1(a)に示すガラス繊維製造装置を構成するブッシング周辺の拡大図である。
【
図2】
図2は、ガラス繊維製造装置を構成するブッシングのノズル及び冷却フィンの配置の一例を模式的に示す底面図である。
【
図3】
図3は、ガラス繊維製造装置を構成するブッシングのノズル及び冷却フィンの配置の別の一例を模式的に示す底面図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態に係るブッシングの一例の要部を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、
図4に示すブッシングの長手方向の断面図であり、
図5(b)は、
図4に示すブッシングを構成するノズルの底面図であり、
図5(c)は、
図4に示すブッシングの短手方向の断面図である。
【
図6】
図6(a)、
図6(b)及び
図6(c)は、本開示の第1実施形態に係るブッシングの別の例を構成するノズルの底面図である。
【
図7】
図7は、本開示の第2実施形態に係るブッシングの一例の要部を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8(a)は、
図7に示すブッシングの長手方向の断面図であり、
図8(b)は、
図7に示すブッシングを構成するノズルの底面図であり、
図8(c)は、
図7に示すブッシングの短手方向の断面図である。
【
図9】
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)は、本開示の第2実施形態に係るブッシングの別の例を構成するノズルの底面図である。
図9(d)、
図9(e)及び
図9(f)は、それぞれ、
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)に示すノズルを備えるブッシングの短手方向の断面図である。
【
図11】
図11は、実施例1で得られたガラス繊維の断面形状を電界放出形走査電子顕微鏡によって観察した写真である。
【
図12】
図12は、実施例3で得られたガラス繊維の断面形状を電界放出形走査電子顕微鏡によって観察した写真である。
【
図13】
図13は、実施例4で得られたガラス繊維の断面形状を電界放出形走査電子顕微鏡によって観察した写真である。
【
図14】
図14は、実施例5で得られたガラス繊維の断面形状を電界放出形走査電子顕微鏡によって観察した写真である。
【
図15】
図15は、実施例19で得られたガラス繊維の断面形状を電界放出形走査電子顕微鏡によって観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本開示の実施形態について具体的に説明する。
しかしながら、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載する本開示の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせてもよい。
【0033】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2実施形態以降では、第1実施形態と共通の事項についての記述は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎には逐次言及しない。
【0034】
[ガラス繊維製造装置]
まず、本開示のガラス繊維製造用のブッシングを備えるガラス繊維製造装置について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
図1(a)は、ガラス繊維製造装置の一実施形態を模式的に示す側面図である。
図1(a)に示すガラス繊維製造装置100は、ガラス繊維GF製造用のブッシング1と、複数本のガラス繊維GFに集束剤を塗布するためのアプリケーター51と、複数本のガラス繊維GFを集束してガラス繊維束GSを得るためのギャザリングシュー52と、ガラス繊維束GSを巻取るための巻取り機50とを備えている。
【0036】
図1(b)は、
図1(a)に示すガラス繊維製造装置を構成するブッシング周辺の拡大図である。
ブッシング1は、ベースプレート10と、ガラス融液GMを排出するノズル20とを備えている。ベースプレート10は、ガラス融液GMが貯留される貯留槽の底面部であり、ベース孔11を備えている。ノズル20は、ベースプレート10上に複数個配列されており、ノズル壁21とノズル孔22とを備えている。ベースプレート10のベース孔11及びノズル20のノズル孔22を通じて、ガラス融液GMが引き出され、ガラス繊維GFが作製される。
【0037】
図1(b)に示すように、ガラス繊維GFの冷却を促すための冷却フィン30が配置されていることが好ましい。冷却フィン30として、ガラス繊維を紡糸する際に使用される既知の冷却フィンを使用することができる。冷却フィンの材料としては、例えば、銅、銀、金、鉄、ニッケル、クロム、白金、ロジウム、パラジウム、及び、これらの合金からなる熱伝導率の高い金属などが挙げられる。冷却フィンによる冷却だけでは冷却が不充分である場合においては、冷却フィンの中に水などの液体を流すことで、さらに冷却を促すことができる。冷却フィンの配置場所は特に限定されず、例えば、冷却フィンの上端がノズルと対向するように配置されてもよい。
【0038】
図2は、ガラス繊維製造装置を構成するブッシングのノズル及び冷却フィンの配置の一例を模式的に示す底面図である。
図2に示すブッシング1Aは、ベースプレート10と、ベースプレート10上に複数個配列されたノズル20と、ベースプレート10の長手方向の両端に設けられた、加熱のための電流を供給するターミナル40とを備えている。
図2に示すブッシング1Aでは、ノズル20及び冷却フィン30が、ターミナル40に直交するように配置されている。
【0039】
図3は、ガラス繊維製造装置を構成するブッシングのノズル及び冷却フィンの配置の別の一例を模式的に示す底面図である。
図3に示すブッシング1Bでは、ノズル20及び冷却フィン30が、ターミナル40に平行に配置されている。
【0040】
[ガラス繊維製造用のブッシング]
以下、本開示のブッシングについて説明する。
本開示のブッシングは、ベースプレートと、上記ベースプレート上に複数個配列された、ガラス融液を排出するノズルとを備えている。
【0041】
本開示のブッシングにおいて、ベースプレート上に配列されるノズルの数は特に限定されないが、ノズルの数が多くなれば、同時に製造できるガラス繊維の本数が多くなる。一方、ノズルの数が多すぎると、各ノズルに均等に熱がかかりにくくなるなどの不具合が生じるおそれがある。これらを考慮すると、ノズルの数は、30個以上、5000個以下であることが好ましく、50個以上、5000個以下であることがより好ましい。
【0042】
本開示のブッシングにおいて、ベースプレートは、水平断面が扁平状のベース孔を備え、ノズルは、上記ベース孔の輪郭に沿って上記ベースプレートから突出するノズル壁と、上記ベース孔から上記ノズル壁の先端へ向かって、上記ベース孔の形状を維持して貫通するノズル孔とを備えている。
【0043】
以下の説明においては、ベース孔及びノズル孔の断面形状が長円形状である場合について説明する。しかしながら、本開示のブッシングにおいて、ベース孔及びノズル孔の断面形状は長円形状に限定されず、例えば、矩形状、楕円形状、台形状の他、ひょうたん形状、ダンベル形状、三角形状などの形状が挙げられ、これらに類する形状も含まれる。
本明細書において、「ノズル孔の長手方向の中心軸」は、断面が長円形状である場合、長軸に相当する。
【0044】
本開示のブッシングにおいて、ベースプレートからノズル壁が突出する方向は特に限定されない。例えば、ベースプレートに対して垂直な方向にノズル壁が突出してもよいし、ベースプレートに対して斜め方向にノズル壁が突出してもよい。本開示のブッシングは、ベースプレートからノズル壁が突出する方向が同じノズルのみを備えてもよいし、ベースプレートからノズル壁が突出する方向が異なるノズルを組み合わせて備えてもよい。
【0045】
本開示のブッシングにおいては、全てのノズルでノズル壁の高さが同じであってもよいし、ノズル壁の高さが異なるノズルが含まれていてもよい。なお、ノズル壁の高さとは、ベースプレートからノズル壁の先端までの最大距離を意味する。また、ある1個のノズルに着目したとき、ベースプレートからノズル壁の先端までの距離は、そのノズルにおいて一定であってもよいし、一定でなくてもよい。
【0046】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に係るブッシングでは、ノズル壁は、ベースプレートから突出していない一対の切り欠きを有する。
【0047】
図4は、本開示の第1実施形態に係るブッシングの一例の要部を模式的に示す斜視図である。
図5(a)は、
図4に示すブッシングの長手方向の断面図であり、
図5(b)は、
図4に示すブッシングを構成するノズルの底面図であり、
図5(c)は、
図4に示すブッシングの短手方向の断面図である。
【0048】
図4、
図5(a)、
図5(b)及び
図5(c)に示すように、ベースプレート10は、水平断面が扁平状のベース孔11を備え、ノズル20は、ベース孔11の輪郭に沿ってベースプレート10から突出するノズル壁21と、ベース孔11からノズル壁21の先端へ向かって、ベース孔11の形状を維持して貫通するノズル孔22とを備えている。
【0049】
ノズル壁21は、ベースプレート10から突出していない一対の切り欠き23を有している。一対の切り欠き23は、ノズル孔22の長手方向の中心軸を介して相対して対向している。切り欠き23の形状は、ノズル作製時の加工の容易さから矩形状であることが好ましい。
【0050】
本開示の第1実施形態に係るブッシングにおいて、切り欠きの幅(
図5(a)中、Wで示す距離)は、ノズル孔の長手方向の中心軸の長さ(
図5(b)中、X
1で示す距離)の10%以上、95%以下であり、好ましくは15%以上、95%以下、より好ましくは20%以上、90%以下、さらに好ましくは25%以上、90%以下である。上記切り欠きの幅は、上記ノズル孔の長手方向の中心軸の長さの80%以下であってもよい。
なお、切り欠きの幅とは、水平方向における切り欠きの最大距離を意味する。
【0051】
本開示の第1実施形態に係るブッシングにおいて、切り欠きの高さ(
図5(a)中、Hで示す距離)は、ベースプレートからノズル壁の先端までの距離(
図5(a)中、Bで示す距離)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
なお、切り欠きの高さとは、鉛直方向における切り欠きの最大距離を意味する。また、ベースプレートからノズル壁の先端までの距離とは、鉛直方向におけるベースプレートからノズル壁の先端までの最大距離を意味する。
【0053】
例えば、
図5(a)において左右のノズル壁21の高さが異なる場合、又は、ベースプレート10に対して斜め方向にノズル壁21が突出する場合であっても、ノズル壁がベースプレートから突出していない一対の切り欠きを有していれば、本開示の第1実施形態に含まれる。
【0054】
本開示の第1実施形態に係るブッシングでは、ノズル壁にベースプレートから突出していない一対の切り欠きを設けることで、ベースプレート表面を流れる空気が、切り欠き部分を流れるガラスに直接当たるようになり、気流による冷却効果を最大化することができる。また、切り欠きの面積が大きくなることで、冷却フィンによる冷却効果を高めることができる点からも好ましい。
【0055】
本開示の第1実施形態に係るブッシングにおいて、ノズル壁の端面は、ノズルの底面側から見て、ノズル壁の厚みが切り欠き側へ向かって減少する勾配面を有してもよい。
【0056】
図6(a)、
図6(b)及び
図6(c)は、本開示の第1実施形態に係るブッシングの別の例を構成するノズルの底面図である。
図6(a)においては、切り欠き23側へ向かって、すなわち矢印で示す方向へ向かってノズル壁21の厚みが減少するように、ノズル壁21の端面に勾配面24が設けられている。
図6(b)及び
図6(c)においても同様に、切り欠き23側へ向かってノズル壁21の厚みが減少するように、ノズル壁21の端面に勾配面24が設けられている。
【0057】
ノズル壁の端面が勾配面を有する場合、勾配面は、ノズルの高さ方向全体にわたって設けられていてもよいし、一部に設けられていてもよい。勾配面は、平面、曲面、多面的表面の何れかの面を有していればよいが、加工の容易さから平面が好ましい。
【0058】
(第2実施形態)
本開示の第2実施形態に係るブッシングでは、ノズル壁は、先端に一対の切り欠きを有し、切り欠きの高さは、ベースプレートからノズル壁の先端までの距離の80%を超え、100%未満である。
【0059】
図7は、本開示の第2実施形態に係るブッシングの一例の要部を模式的に示す斜視図である。
図8(a)は、
図7に示すブッシングの長手方向の断面図であり、
図8(b)は、
図7に示すブッシングを構成するノズルの底面図であり、
図8(c)は、
図7に示すブッシングの短手方向の断面図である。
【0060】
図7、
図8(a)、
図8(b)及び
図8(c)に示すように、ベースプレート10は、水平断面が扁平状のベース孔11を備え、ノズル20は、ベース孔11の輪郭に沿ってベースプレート10から突出するノズル壁21と、ベース孔11からノズル壁21の先端へ向かって、ベース孔11の形状を維持して貫通するノズル孔22とを備えている。
【0061】
ノズル壁21は、先端に一対の切り欠き23を有している。一対の切り欠き23は、ノズル孔22の長手方向の中心軸を介して相対して対向している。切り欠き23の形状は、ノズル作製時の加工の容易さから矩形状であることが好ましい。
【0062】
本開示の第2実施形態に係るブッシングにおいて、切り欠きの幅(
図8(a)中、Wで示す距離)は、ノズル孔の長手方向の中心軸の長さ(
図8(b)中、X
1で示す距離)の10%以上、95%以下であり、好ましくは15%以上、95%以下、より好ましくは20%以上、90%以下、さらに好ましくは25%以上、90%以下である。上記切り欠きの幅は、上記ノズル孔の長手方向の中心軸の長さの80%以下であってもよい。
【0063】
本開示の第2実施形態に係るブッシングにおいて、切り欠きの高さ(
図8(a)中、Hで示す距離)は、ベースプレートからノズル壁の先端までの距離(
図8(a)中、Bで示す距離)の80%を超え、100%未満であり、好ましくは90%を超え、100%未満であり、より好ましくは95%を超え、100%未満であり、さらに好ましくは98%を超え、100%未満である。
【0064】
例えば、
図8(a)において左右のノズル壁21の高さが異なる場合、又は、ベースプレート10に対して斜め方向にノズル壁21が突出する場合であっても、上記で定義する切り欠き23の高さが、ベースプレート10からノズル壁21の先端までの距離の80%を超え、100%未満であれば、本開示の第2実施形態に含まれる。
【0065】
本開示の第2実施形態に係るブッシングでは、ベースプレート面においてノズル孔が全周にわたってノズル壁に囲まれているため、ガラス融液がベースプレートに広がって汚れるといった問題が発生しにくくなる。また、ベースプレート面においてノズル孔が全周にわたってノズル壁に囲まれていると、後述する勾配面をノズルに加工しやすい点からも好ましい。
【0066】
本開示の第2実施形態に係るブッシングにおいて、ノズル壁の端面は、ノズルの底面側から見て、ノズル壁の厚みが切り欠き側へ向かって減少する勾配面を有してもよい。この場合、ベース孔からノズル孔へ向かってノズル壁の厚みが減少するように勾配面が設けられていることが好ましい。
【0067】
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)は、本開示の第2実施形態に係るブッシングの別の例を構成するノズルの底面図である。
図9(a)においては、切り欠き23側へ向かって、すなわち矢印で示す方向へ向かってノズル壁21の厚みが減少するように、ノズル壁21の端面に勾配面24が設けられている。
図9(b)及び
図9(c)においても同様に、切り欠き23側へ向かってノズル壁21の厚みが減少するように、ノズル壁21の端面に勾配面24が設けられている。
【0068】
図9(d)、
図9(e)及び
図9(f)は、それぞれ、
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)に示すノズルを備えるブッシングの短手方向の断面図である。
図9(d)においては、ベース孔11からノズル孔22へ向かって、すなわち矢印で示す方向へ向かってノズル壁21の厚みが減少するように勾配面24が設けられている。
図9(e)及び
図9(f)においても同様に、ベース孔11からノズル孔22へ向かってノズル壁21の厚みが減少するように勾配面24が設けられている。
【0069】
ノズル壁の端面が勾配面を有する場合、勾配面は、ノズルの高さ方向全体にわたって設けられていてもよいし、一部に設けられていてもよい。勾配面は、平面、曲面、多面的表面の何れかの面を有していればよいが、加工の容易さから平面が好ましい。
【0070】
図10(a)、
図10(b)及び
図10(c)は、本開示のブッシングを構成するノズルの別の例の底面図である。
図10(a)では、ノズル孔22の形状が矩形状であり、
図10(b)では、ノズル孔22の形状が楕円形状であり、
図10(c)では、ノズル孔22の形状が台形状である。
図10(a)及び
図10(c)では、各辺が丸みを帯びていてもよいし、角張っていてもよい。また、
図10(c)の変形例として、ひょうたん形状、ダンベル形状、三角形状などの形状が挙げられる。
【0071】
本開示のブッシングにおいて、ベース孔及びノズル孔の形状は、ノズル製作の容易さと、長手方向の中心軸を対称軸として対称であるガラス繊維の得やすさを考慮すると、断面が長円形状又は矩形状であることが好ましく、長円形状であることが特に好ましい。
【0072】
本開示のブッシングにおいて、ベースプレートからノズル壁の先端までの距離(
図5(a)及び
図8(a)中、Bで示す距離)/ベースプレートの厚み(
図5(a)及び
図8(a)中、Aで示す距離)の比は、0.2以上、4以下であることが好ましく、0.2以上、3以下であることがより好ましく、0.2以上、1以下であることがさらに好ましい。
【0073】
本開示のブッシングにおいて、ベースプレートの厚みは、例えば0.5mm以上、2mm以下であり、好ましくは0.8mm以上、1.8mm以下である。
【0074】
本開示のブッシングにおいて、ノズル壁の厚みは、例えば0.05mm以上、5mm以下であり、好ましくは0.1mm以上、3mm以下である。
【0075】
本開示のブッシングにおいて、ベースプレートからノズル壁の先端までの距離は、ノズルからガラス融液を引き出す量を考慮して決定され、例えば0.1mm以上、7mm以下であり、好ましくは0.2mm以上、5mm以下である。ノズルの容積は、ノズル孔の断面積と、ベースプレートからノズル壁の先端までの距離とから計算され、例えば0.3mm3以上、140mm3以下であり、好ましくは0.5mm3以上、80mm3以下である。
【0076】
本開示のブッシングにおいて、ノズル孔の長手方向の中心軸の長さ(
図5(b)及び
図8(b)中、X
1で示す距離)/ノズル孔の短手方向の最長部の長さ(
図5(b)及び
図8(b)中、X
2で示す距離)の比は、通常、2以上であることが好ましく、具体的には2以上、12以下であることが好ましく、3以上、12以下であることがより好ましく、3以上、10以下であることが極めて好ましい。上記比は、8以下であってもよいし、6以下であってもよい。
なお、ノズル孔の断面が長円形状である場合、ノズル孔の長手方向の中心軸の長さは長軸の長さであり、ノズル孔の短手方向の最長部の長さは短軸の長さである。
【0077】
本開示のブッシングにおいて、ノズル孔の長手方向の中心軸の長さ、及び、ノズル孔の短手方向の最長部の長さは、所望するガラス繊維の繊維径により選択される。ノズル孔の長手方向の中心軸の長さは、例えば2mm以上、10mm以下であり、好ましくは2mm以上、8mm以下である。ノズル孔の短手方向の最長部の長さは、例えば0.3mm以上、2mm以下であり、好ましくは0.5mm以上、2mm以下である。特に、ノズル孔の断面が長円形状である場合、長軸の長さは、例えば2mm以上、10mm以下であり、好ましくは2mm以上、8mm以下である。短軸の長さは、例えば0.3mm以上、2mm以下であり、好ましくは0.5mm以上、2mm以下である。
【0078】
本開示のブッシングにおいては、ベース孔の断面積と、ノズル孔の先端部の断面積とが同一であることが好ましい。特に、ベース孔の断面形状と、ノズル孔の断面形状とが同一であることが好ましい。
【0079】
本開示のブッシングにおいて、ベース孔の長手方向の中心軸の長さ、及び、ベース孔の短手方向の最長部の長さは、所望するガラス繊維の繊維径により選択される。ベース孔の長手方向の中心軸の長さは、例えば2mm以上、10mm以下であり、好ましくは2mm以上、8mm以下である。ベース孔の短手方向の最長部の長さは、例えば0.3mm以上、2mm以下であり、好ましくは0.5mm以上、2mm以下である。特に、ベース孔の断面が長円形状である場合、長軸の長さは、例えば2mm以上、10mm以下であり、好ましくは2mm以上、8mm以下である。短軸の長さは、例えば0.3mm以上、2mm以下であり、好ましくは0.5mm以上、2mm以下である。
【0080】
本開示のブッシングにおいて、ノズル壁の内周面側にある一対の切り欠きの面積の総和は、一対の切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の1%以上、80%以下であることが好ましく、3%以上、80%以下であることがより好ましく、5%以上、75%以下であることがより好ましく、10%以上、70%以下であることがさらに好ましい。
【0081】
本開示のブッシングにおいて、一対の切り欠きは、ノズル孔の長手方向の中心軸の中央で相対することが好ましく、切り欠きの形状が矩形状であることがより好ましい。
【0082】
本開示のブッシングにおいて、ベースプレートは、白金、又は、白金合金からなることが好ましい。白金合金の例として、白金をベースとして、ロジウム、金、パラジウム、銀などの貴金属との組み合わせによる合金、又は、上記貴金属や合金にジルコニアなどの微粒子が分散された強化金属などが挙げられる。ベースプレートの強度を勘案すると、白金にロジウムが5~30重量%含まれた白金ロジウム合金、及び、白金ロジウム合金にジルコニア微粒子が分散された強化白金ロジウム合金が好ましい。
【0083】
本開示のブッシングにおいて、ノズル壁は、ベースプレートと同様、白金、又は、白金合金からなることが好ましい。ノズル壁の強度を勘案すると、白金にロジウムが5~30重量%含まれた白金ロジウム合金、及び、白金ロジウム合金にジルコニア微粒子が分散された強化白金ロジウム合金が好ましい。ノズル壁を構成する材料は、ベースプレートを構成する材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0084】
本開示のブッシングにおいては、切削加工、鋳造加工、パイプ潰し加工、引き延ばし加工などによりノズルを作製した後、穴あけ加工されたベースプレートに挿入、溶接加工してもよいし、ベースプレートを直接切削加工してベースプレートと一体型のノズルを作製してもよい。
【0085】
[ガラス繊維の製造方法、及び、ガラス繊維束の製造方法]
本開示のガラス繊維の製造方法は、長手方向の中心軸を対称軸として対称である扁平状の断面を有するガラス繊維の製造方法であって、本開示のブッシングの各ノズルからガラス融液を引き出して、該ガラス融液を急冷し繊維化する工程を備える。
【0086】
また、本開示のガラス繊維束の製造方法は、本開示のガラス繊維の製造方法によりガラス繊維を得る工程と、上記ガラス繊維を複数本集束する工程とを備える。
【0087】
以下、本開示のガラス繊維の製造方法、及び、本開示のガラス繊維束の製造方法の一実施形態として、
図1(a)及び
図1(b)に示すガラス繊維製造装置100を用いたガラス繊維GF及びガラス繊維束GSの製造方法について説明する。
【0088】
まず、貯留槽に貯留されたガラス融液GMが、ベースプレート10のベース孔11及びノズル20のノズル孔22を通じて各ノズル20から引き出される。
【0089】
各ノズル20から引き出されたガラス融液GMは、冷却過程を経て、ガラス繊維化されて、ガラス繊維GFが作製される。引き出されたガラス融液GMは、巻取り機50などを用いて引っ張ることで、繊維化が促進される。
【0090】
ガラス繊維GFを構成するガラスとしては、既知のガラス組成を有するものを用いることができる。既知のガラス組成としては、Eガラス、Cガラス、Sガラス、Dガラス、ECRガラス、Aガラス、ARガラスなどが挙げられる。これらの中でも、Eガラスはガラス中のアルカリ成分が少なく、耐水性にも優れる組成であるため、アルカリの溶出が発生しにくく、樹脂と複合化した場合に樹脂材料への影響が少ないので好ましい。ガラス融液GMの温度はガラス組成によっても異なるが、Eガラスである場合はノズルを通る時の温度が1100℃以上、1350℃以下となるように調整することが好ましい。
【0091】
各ノズル20から引き出されたガラス融液GMは、コレットを備えた巻取り機50などにより高速で引っ張られることが好ましい。引っ張り速度は適宜調整することができ、好ましくは100m/分以上、5000m/分以下である。引っ張り速度が速くなればガラス繊維GFは細くなり、一方、引っ張り速度が遅くなればガラス繊維GFは太くなるため、引っ張り速度はガラス繊維GFの形状設計の観点から決められる。ガラス繊維GFは、コレットを備えた巻取り機50の他に、種々の方法で引っ張ることができる。例えば、ガラス繊維GFを引っ張りながら切断を行うダイレクトチョッパーを用いれば、チョップドストランドを好適に作製することができる。
【0092】
各ノズル20から引き出されたガラス融液GMは、ブッシング1と巻取り機50との間に配置したギャザリングシュー52によって集束されて、ガラス繊維束GSが作製される。ガラス繊維束GSは、巻取り機50のコレットに巻き取られる。したがって、ベースプレート10の中央に位置するノズル20以外のノズル20からは、ガラス融液GMを引き出す際に角度が生じる。この角度は、ノズル20がベースプレート10の端に位置するほど大きくなる。
【0093】
なお、ガラス繊維GFが巻取り機50などで巻取られる前に、アプリケーター51などを用いて、適宜集束剤をガラス繊維GFに塗布してもよい。集束剤としては、界面活性剤、シランカップリング剤、pH調整剤、及び樹脂などから形成される既知の集束剤を用いることができる。粉砕などの加工を行う場合においては、集束剤を用いない場合もあるが、集束剤塗布の有無はガラス繊維の用途に従って適宜設計される。
【0094】
本開示のガラス繊維の製造方法において、各ノズルから引き出されるガラス融液の角度(ガラス繊維の引っ張り角度)は特に限定されないが、ノズル間でガラス繊維の引っ張り角度のばらつきが大きすぎると、本開示のブッシングを用いてもガラス繊維の断面形状のばらつきが大きくなるおそれがある。そのため、ガラス繊維の引っ張り角度は、0°以上、10°以下であることが好ましく、0°以上、7°以下であることがより好ましい。
なお、ガラス繊維の引っ張り角度には、ノズル孔の直下を基準として、ノズルの長手方向に引っ張るガラス繊維の角度、及び、ノズルの短手方向に引っ張るガラス繊維の角度があるが、特に断りがない場合はノズルの長手方向に引っ張るガラス繊維の角度を意味する。
【0095】
ノズル孔の直下を基準として、ノズルの短手方向に引っ張るガラス繊維の角度は、ノズルの長手方向に引っ張るガラス繊維の角度よりも、ガラス繊維の断面形状のばらつきに対する影響は小さい。しかし、ノズルの短手方向に引っ張るガラス繊維の角度も大きくなりすぎると、断面形状のばらつきが大きくなるおそれがある。そのため、ノズルの短手方向に引っ張るガラス繊維の角度は、0°以上、45°以下であることが好ましく、0°以上、30°以下であることがより好ましい。
【0096】
以上により、長手方向の中心軸を対称軸として対称である扁平状の断面を有するガラス繊維を得ることができる。ガラス繊維の断面の大きさは、ベース孔及びノズル孔の大きさ、ガラス融液及びノズルの温度、並びに、巻取り機の引っ張り速度などによって適宜設計される。ガラス繊維の長手方向の中心軸の長さは、例えば4~80μmであり、好ましくは10~60μmである。ガラス繊維の短手方向の中心軸の長さは、例えば1~20μmであり、好ましくは2.5~15μmである。また、ガラス繊維の扁平率は、例えば2~10などである。
【0097】
得られたガラス繊維が複数本集束されたガラス繊維束において、上記複数本のガラス繊維の断面形状の扁平率の平均値は、2以上であることが好ましい。一方、上記複数本のガラス繊維の断面形状の扁平率の平均値は、8以下であることが好ましく、6.5以下であることがより好ましい。
【0098】
得られたガラス繊維が複数本集束されたガラス繊維束において、各ガラス繊維の断面形状の扁平率の標準偏差は、0%以上、14%以下であることが好ましく、0%以上、12%以下であることがより好ましく、0%以上、10%以下であることがさらに好ましい。
本明細書において、扁平率の標準偏差とは、扁平率の平均に対する扁平率の標準偏差の割合を百分率で表したものである。
【0099】
得られたガラス繊維が複数本集束されたガラス繊維束において、各ガラス繊維の繊維断面積の標準偏差は、0%以上、14%以下であることが好ましく、0%以上、12%以下であることがより好ましく、0%以上、10%以下であることがさらに好ましい。
本明細書において、繊維断面積の標準偏差とは、繊維断面積の平均に対する繊維断面積の標準偏差の割合を百分率で表したものである。
【0100】
なお、扁平率及び繊維断面積は、繊維や繊維束をある断面で切断し、その断面を観察することで求めることができる。扁平率とは各繊維の断面の長軸を短軸で除した値を指し、繊維断面積とは各繊維の断面の面積のことを指す。繊維や繊維束をある断面で切断し、その断面を観察する場合は、樹脂等に埋め込んで(包埋)、切断、研磨して観察してもよいし、繊維や繊維束をそのまま切断し、観察してもよい。
【0101】
得られたガラス繊維やガラス繊維束には、切断や粉砕、加熱、織物化、抄紙化、撚りをかけるなどの加工を適宜加えることができる。これらの加工により、チョップドストランドやチョップドストランドマット、ミルドファイバー、サーフェイスマット、ガラスペーパー、ガラス繊維織物、ロービングクロスなどの形状とすることができる。また、ガラス繊維束同士を合わせる(合糸)ことで、より本数の多いガラス繊維束を作ることもできる。
【0102】
本開示のブッシングを用いて製造されるガラス繊維、本開示のガラス繊維の製造方法により得られるガラス繊維、及び、本開示のガラス繊維束の製造方法により得られるガラス繊維束は、樹脂と複合化されることで、繊維強化樹脂物品とすることができる。ガラス繊維と複合化される樹脂として、既知の樹脂を用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ABS樹脂、メタロセン樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂、ゴム、エラストマーなどが挙げられる。繊維強化樹脂物品中には、ガラス繊維が0.01~80重量%含まれていてもよい。扁平状の断面を有するガラス繊維は、ガラス繊維同士が重なり合いやすくなっているので、繊維強化樹脂物品中のガラス繊維の含有量を増やすことで強度の改善に寄与し、かつ射出成形などの成形時に発生しやすい反りも抑制することが可能である。
【0103】
ガラス繊維と樹脂との複合化には、複合化する樹脂の特性に合わせて、既知の混練方法及び装置を用いることができる。熱可塑性樹脂であれば、加熱溶融式の混練機を用いることが好ましく、単軸混練機、二軸混練機、単軸混練押出機、二軸混練押出機、加熱装置を備えたニーダーやミキサーなどを用いることができる。
【0104】
また、ガラス繊維と樹脂とが混練された繊維強化樹脂物品に対しては、複合体の特性や形状に合わせて、既知の成形方法を用いることができる。熱可塑性樹脂であれば射出成形法やブロー成形法、熱硬化性樹脂であればハンドレイアップ法、スプレーアップ法、引抜成形法、SMC法、BMC法、トランスファー成形法などが挙げられる。扁平状の断面を有するガラス繊維は、ガラス繊維同士が重なり合いやすくなっているので、射出成形法を用いる場合においても成形品の反りを防止することができるので好ましい。成形された複合体(ガラス繊維を含む繊維強化樹脂物品)は、強度や耐熱性、耐薬品性が要求される自動車、電子機器などの部品や筐体として用いることができる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例及び比較例を示して本開示をより具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。各実施例及び比較例で得られたガラス繊維は、以下に述べる方法にて評価された。
【0106】
〔ガラス繊維の評価方法〕
作製されたガラス繊維を冷間埋込樹脂(丸本ストルアス、エポフィックス)で固め、切断面を研磨した。その後、得られた研磨面を電界放出形走査電子顕微鏡(S―4500、日立製作所)により観察し、繊維断面から長手方向の中心軸(長軸)および短手方向の中心軸(短軸)を対称軸として対称である形状か判定した。また、実施例1~18及び比較例では、繊維断面10箇所の長軸、及び短軸を測長し、長軸の平均値、短軸の平均値、および、扁平率として長軸を短軸で除した値の平均値を算出した。さらに、扁平率については平均に対する標準偏差の百分率を計算し、扁平率の標準偏差(%)とした。実施例19では、36本のガラス繊維からなる繊維束を数束切断し、その断面を観察した。得られた写真から50本のガラス繊維を選び出し、各繊維の長軸、及び短軸を測長し、長軸の平均値、短軸の平均値、断面積の平均値、及び扁平率として長軸を短軸で除した値の平均値を算出した。さらに、扁平率については平均に対する標準偏差の百分率を計算し、扁平率の標準偏差(%)とした。また、断面積については平均に対する標準偏差の百分率を計算し、断面積の標準偏差(%)とした。実施例20、及び21では、192本のガラス繊維からなる繊維束を数束切断し、その断面を観察した。得られた写真から、実施例20では256本、実施例21では20本のガラス繊維をそれぞれ選び出し、各繊維の測長を行い、上記と同様の評価を行った。
【0107】
実施例1
ガラス貯留槽の底面(ベースプレート:厚み1.0mm)にノズルチップを設置し、上記ガラス貯留槽内で、溶融されたEガラス組成のガラス融液を、1200℃にてノズル孔を通じて引き出し、引き出されたガラスを958m/分で巻き取って、ガラス繊維を得た。
使用したノズルチップは、ノズル壁の部材の厚みが0.5mmで、ノズル孔の水平断面の長軸が4.8mm、短軸が1.2mm、ベースプレートからノズル壁の先端までの距離が0.6mm、切り欠きの幅が2.4mm(ノズル孔の長軸に対して50%)、切り欠きの高さが0.6mmであり、切り欠きの形状が矩形状の構造を備えるものであった。切り欠きの面積の総和は2.9mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の44%であった。
【0108】
図11は、実施例1で得られたガラス繊維の断面形状を電界放出形走査電子顕微鏡によって観察した写真である。
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、ベースプレートからノズル壁の先端までの距離が極めて短いノズルを用いたにもかかわらず、得られた繊維は長円形の断面を有し、長手方向の中心軸(長軸)および短手方向の中心軸(短軸)を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは30.0μm、短軸の長さは9.4μmであり、扁平率は3.2であった。また、扁平率の標準偏差は2.9%と扁平率のばらつきが小さいものであった。
【0109】
実施例2
紡糸温度を1180℃とした以外は、実施例1と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは25.6μm、短軸の長さは7.4μmであり、扁平率は3.5であった。また、扁平率の標準偏差は6.4%と扁平率のばらつきが小さいものであった。
【0110】
実施例3
ノズルチップの切り欠きの幅を2.0mm(ノズル孔の長軸の長さに対して42%)とした以外は、実施例1と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。切り欠きの面積の総和は2.4mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の36%であった。
【0111】
図12は、実施例3で得られたガラス繊維の断面形状を電界放出形走査電子顕微鏡によって観察した写真である。
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは28.2μm、短軸の長さは7.7μmであり、扁平率は3.7であった。また、扁平率の標準偏差は3.8%と扁平率のばらつきが小さいものであった。
【0112】
実施例4
ノズル孔の直下を基準として、ノズルの長手方向に2.5°の引っ張り角度を付けて、ガラス繊維を紡糸した。それ以外は、実施例1と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。
【0113】
図13は、実施例4で得られたガラス繊維の断面形状を電界放出形走査電子顕微鏡によって観察した写真である。
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、ノズルの長手方向に角度を付けてガラス繊維を引っ張ったにもかかわらず、得られた繊維は長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは27.7μm、短軸の長さは8.1μmであり、扁平率は3.4であった。また、扁平率の標準偏差は5.5%と扁平率のばらつきが小さいものであった。
【0114】
実施例5
ガラス繊維の引っ張り角度を、ノズル孔の直下を基準として、ノズルの長手方向に5°とした以外は、実施例4と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。
【0115】
図14は、実施例5で得られたガラス繊維の断面形状を電界放出形走査電子顕微鏡によって観察した写真である。
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、実施例4よりも大きな引っ張り角度としたにもかかわらず、得られた繊維は長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは24.3μm、短軸の長さは8.1μmであり、扁平率は3.0であった。また、扁平率の標準偏差は7.5%と扁平率のばらつきが小さいものであった。
【0116】
実施例1、4および5は、ガラス繊維の引っ張り角度のみを変更して紡糸を行ったものである。ガラス繊維の引っ張り角度を0°、2.5°、5°と大きくしたとき、ガラス繊維の扁平率はそれぞれ3.2、3.4、3.0であり、ガラス繊維の引っ張り角度に起因する有意な差は認められなかった。したがって、実施例1のノズル形状は、ブッシングから揃った断面形状の繊維束を作製する目的に適したものであることが確認された。
【0117】
実施例6
紡糸温度を1210℃とした以外は、実施例1と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは28.8μm、短軸の長さは9.4μmであり、扁平率は3.1であった。また、扁平率の標準偏差は5.4%と扁平率のばらつきが小さいものであった。
【0118】
実施例7
紡糸温度を1210℃とした以外は、実施例3と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは26.9μm、短軸の長さは8.8μmであり、扁平率は3.1であった。また、扁平率の標準偏差は3.2%と扁平率のばらつきが小さいものであった。
【0119】
実施例8
紡糸温度を1180℃とした以外は、実施例3と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは24.2μm、短軸の長さは7.6μmであり、扁平率は3.2であった。また、扁平率の標準偏差は5.7%と扁平率のばらつきが小さいものであった。
【0120】
実施例1、2および6は、ガラス繊維の紡糸温度のみを変更して紡糸を行ったものである。ガラス繊維の紡糸温度を1180℃、1200℃、1210℃としたとき、ガラス繊維の扁平率はそれぞれ3.5、3.2、3.1であり、ガラス繊維の紡糸温度に起因する有意な差は認められなかった。したがって、実施例1のノズル形状は、ブッシングから揃った断面形状の繊維束を作製する目的に適したものであることが確認された。
【0121】
実施例3、7および8は、ガラス繊維の紡糸温度のみを変更して紡糸を行ったものである。ガラス繊維の紡糸温度を1180℃、1200℃、1210℃としたとき、ガラス繊維の扁平率はそれぞれ3.2、3.7、3.1であり、ガラス繊維の紡糸温度に起因する有意な差は認められなかった。したがって、実施例3のノズル形状は、ブッシングから揃った断面形状の繊維束を作製する目的に適したものであることが確認された。
【0122】
実施例9
ノズルチップのベースプレートからノズル壁の先端までの距離を0.9mm、切り欠きの高さを0.9mmとした以外は、実施例3と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。切り欠きの面積の総和は3.6mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の36%であった。
【0123】
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは25.4μm、短軸の長さは8.8μmであり、扁平率は2.9であった。また、扁平率の標準偏差は5.9%と扁平率のばらつきが小さいものであった。
【0124】
実施例10
ノズル孔の水平断面の長軸を6.0mm、短軸を1.2mm、ベースプレートからノズル壁の先端までの距離を0.6mm、切り欠きの幅を3.6mm(ノズル孔の長軸に対して60%)、切り欠きの高さを0.6mmとしたノズルを用いて紡糸を行った。切り欠き面積の総和は4.3mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の54%であった。紡糸温度は1200℃とし、それ以外の条件は実施例1と同じとした。
【0125】
上記の条件にて、ガラス繊維の引っ張り角度を0°、2.5°、5°と変更して、それぞれガラス繊維を得た。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、上記の引っ張り角度の条件すべてにおいて、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。引っ張り角度を0°、2.5°、5°と大きくしたとき、ガラス繊維の扁平率はそれぞれ4.1(長軸の長さ/短軸の長さ=39.4μm/9.6μm)、4.3(同44.0μm/10.2μm)、4.3(同44.5μm/10.3μm)であり、ガラス繊維の引っ張り角度に起因する有意な差は認められなかった。したがって、実施例10のノズル形状は、ブッシングから揃った断面形状の繊維束を作製する目的に適したものであることが確認された。
【0126】
実施例11
ノズルチップの切り欠き幅を3.2mm(ノズル孔の長軸に対して53%)とし、紡糸温度を1160℃とした以外は実施例10と同じ条件で、ガラス繊維の引っ張り角度を0°、2.5°、5°と変更して、それぞれガラス繊維を得た。切り欠き面積の総和は3.8mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の48%であった。
【0127】
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、上記の引っ張り角度の条件すべてにおいて、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。引っ張り角度を0°、2.5°、5°と大きくしたとき、ガラス繊維の扁平率はそれぞれ4.4(長軸の長さ/短軸の長さ=39.0μm/8.9μm)、4.4(同40.0μm/9.0μm)、4.2(同36.6μm/8.8μm)であり、ガラス繊維の引っ張り角度に起因する有意な差は認められなかった。したがって、実施例11のノズル形状は、ブッシングから揃った断面形状の繊維束を作製する目的に適したものであることが確認された。
【0128】
実施例12
実施例10に記載のノズルチップを使用して、紡糸温度を1160℃、1180℃、1200℃と変更して、それぞれガラス繊維を得た。その他の条件は、すべて実施例10と同じとした。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、上記のすべての温度条件において、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。紡糸温度を1160℃、1180℃、1200℃と高くしたとき、ガラス繊維の扁平率はそれぞれ4.1(長軸の長さ/短軸の長さ=35.1μm/8.7μm)、4.4(同40.6μm/9.2μm)、4.1(同39.4μm/9.6μm)であり、紡糸温度が上昇しても高い扁平率を保っていた。したがって、実施例10のノズル形状は、ベースプレートに温度ムラが生じても、扁平率の揃った繊維束を作製することができるものであると考えられる。
【0129】
実施例13
実施例11に記載のノズルチップを使用して、紡糸温度を1140℃、1160℃、1180℃、1200℃と変更して、それぞれガラス繊維を得た。その他の条件は、すべて実施例11と同じとした。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、上記のすべての温度条件において、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。紡糸温度を1140℃、1160℃、1180℃、1200℃と高くしたとき、ガラス繊維の扁平率はそれぞれ3.9(長軸の長さ/短軸の長さ=35.3μm/9.1μm)、4.4(同39.0μm/8.9μm)、4.0(同40.7μm/10.1μm)、3.6(同42.0μm/11.7μm)であり、紡糸温度が上昇しても高い扁平率を保っていた。したがって、実施例11のノズル形状は、ベースプレートに温度ムラが生じても、扁平率の揃った繊維束を作製することができるものであると考えられる。
【0130】
実施例14
ノズルチップの切り欠き幅を2.8mm(ノズル孔の長軸に対して47%)とし、紡糸温度を1180℃とした以外は実施例10と同じ条件で、繊維の引っ張り角度を0、2.5、5°と変更して、それぞれガラス繊維を得た。切り欠き面積の総和は3.4mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の42%であった。
【0131】
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、上記の引っ張り角度の条件すべてにおいて、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。引っ張り角度を0°、2.5°、5°と大きくしたとき、ガラス繊維の扁平率はそれぞれ4.0(長軸の長さ/短軸の長さ=39.6μm/10.0μm)、3.9(同40.4μm/10.3μm)、3.4(同35.6μm/10.5μm)であり、ガラス繊維の引っ張り角度に起因する有意な差は認められなかった。したがって、実施例14のノズル形状は、ブッシングから揃った断面形状の繊維束を作製する目的に適したものであることが確認された。
【0132】
実施例15
ノズルチップの切り欠き幅を2.4mm(ノズル孔の長軸に対して40%)とした以外は実施例14と同じ条件で、ガラス繊維の引っ張り角度を0°、2.5°、5°と変更して、それぞれガラス繊維を得た。切り欠き面積の総和は2.9mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の36%であった。
【0133】
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、上記の引っ張り角度の条件すべてにおいて、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。引っ張り角度を0°、2.5°、5°と大きくしたとき、ガラス繊維の扁平率はそれぞれ3.8(長軸の長さ/短軸の長さ=40.6μm/10.7μm)、3.7(同41.6μm/11.3μm)、3.8(同43.1μm/11.4μm)であり、ガラス繊維の引っ張り角度に起因する有意な差は認められなかった。したがって、実施例15のノズル形状は、ブッシングから揃った断面形状の繊維束を作製する目的に適したものであることが確認された。
【0134】
実施例16
実施例14に記載のノズルチップを使用して、紡糸温度を1160℃、1180℃、1200℃と変更して、それぞれガラス繊維を得た。その他の条件は、すべて実施例14と同じとした。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、上記のすべての温度条件において、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。紡糸温度を1160℃、1180℃、1200℃と高くしたとき、ガラス繊維の扁平率はそれぞれ4.3(長軸の長さ/短軸の長さ=38.7μm/9.0μm)、4.0(同39.6μm/10.0μm)、3.8(同40.7μm/10.8μm)であり、紡糸温度が上昇しても高い扁平率を保っていた。したがって、実施例14のノズル形状は、ベースプレートに温度ムラが生じても、扁平率の揃った繊維束を作製することができるものであると考えられる。
【0135】
実施例17
ノズルチップの切り欠き幅を3.2mm(ノズル孔の長軸に対して67%)とした以外は、実施例9と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。切り欠きの面積の総和は5.8mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の58%であった。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは31.2μm、短軸の長さは8.6μmであり、扁平率は3.7であった。
【0136】
実施例18
ノズルチップの切り欠き幅を2.8mm(ノズル孔の長軸に対して58%)とした以外は、実施例1と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。切り欠きの面積の総和は3.4mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の51%であった。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは32.4μm、短軸の長さは9.0μmであり、扁平率は3.6であった。
【0137】
実施例19
100×70mmのベースプレート内に、実施例10に記載のノズルチップを、10mmの間隔で矩形状に36本(6行×6列)並べたブッシングを使用して、紡糸温度1190℃、巻き取り速度1629m/分にてガラス繊維を紡糸した。
【0138】
図15は、実施例19で得られたガラス繊維の断面形状を電界放出形走査電子顕微鏡によって観察した写真である。
得られたガラス繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られたガラス繊維の長軸の長さは28.2μm、短軸の長さは7.4μm、扁平率は3.8であり、断面積は199.5μm
2であった。また、扁平率の標準偏差は9.2%、断面積の標準偏差は8.7%であり、断面形状のばらつきの少ないガラス繊維束であった。さらに、得られたガラス繊維束の異なる場所を測定したところ、充分な再現性が得られることを確認した。
【0139】
実施例20
426×91mmのベースプレート内に、実施例10に記載のノズルチップを、10mmの間隔で矩形状に192本(6行×32列)並べたブッシングを使用して、紡糸温度1170℃、巻き取り速度2108m/分にてガラス繊維を紡糸した。
【0140】
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られたガラス繊維の長軸の長さは26.1μm、短軸の長さは6.6μm、扁平率は4.1であり、断面積は163.8μm2であった。また、扁平率の標準偏差は12.7%、断面積の標準偏差は12.0%であり、断面形状のばらつきの少ないガラス繊維束であった。
【0141】
実施例21
巻き取り速度を2683m/分とした以外は、実施例20と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られたガラス繊維の長軸の長さは22.3μm、短軸の長さは5.4μm、扁平率は4.2であり、断面積は133.9μm2であった。また、扁平率の標準偏差は10.5%、断面積の標準偏差は13.7%であり、断面形状のばらつきの少ないガラス繊維束であった。
【0142】
以上、実施例19、20、及び21の結果から、実施例10のノズル形状は、多数のノズルを備えるブッシングから揃った断面形状のガラス繊維束を作製する目的に適したものであることが確認された。
【0143】
本実施例からもわかるように、本開示により得られるガラス繊維束は、各ガラス繊維の均質性が良いものである。各ガラス繊維の均質性が良いので、各ガラス繊維は、束として引き揃え易くなり、まとまり易くなる。
【0144】
実施例22
切り欠きの幅を4.8mm(ノズル孔の長軸に対して80%)とし、紡糸温度を1190℃とした以外は、実施例10と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。切り欠きの面積の総和は5.8mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の72%であった。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは35.0μm、短軸の長さは11.7μmであり、扁平率は3.0であった。
【0145】
実施例23
ノズルチップのベースプレートからノズル壁の先端までの距離を0.9mm、切り欠きの高さを0.9mmとした以外は、実施例22と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。切り欠きの面積の総和は8.6mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の72%であった。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは38.4μm、短軸の長さは11.4μmであり、扁平率は3.4であった。
【0146】
実施例24
ノズルチップのベースプレートからノズル壁の先端までの距離を1.2mm、切り欠きの高さを1.2mmとした以外は、実施例22と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。切り欠きの面積の総和は11.5mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の72%であった。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは38.1μm、短軸の長さは10.9μmであり、扁平率は3.5であった。
【0147】
実施例25
ノズル孔の水平断面の長軸を7.2mm、短軸を1.2mm、ベースプレートからノズル壁の先端までの距離を0.6mm、切り欠きの幅を4.4mm(ノズル孔の長軸に対して61%)、切り欠きの高さを0.6mmとしたノズルを用いて、紡糸温度を1190℃としてガラス繊維を紡糸した。切り欠きの面積の総和は5.3mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の56%であった。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは45.6μm、短軸の長さは12.3μmであり、扁平率は3.7であった。
【0148】
実施例26
ノズルチップの切り欠き幅を5.4mm(ノズル孔の長軸に対して75%)とした以外は、実施例25と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。切り欠きの面積の総和は6.5mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の68%であった。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは48.2μm、短軸の長さは13.8μmであり、扁平率は3.5であった。
【0149】
実施例27
ノズル孔の水平断面の長軸を8.4mm、短軸を1.2mm、切り欠きの幅を6.0mm(ノズル孔の長軸に対して71%)とした以外は、実施例25と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。切り欠きの面積の総和は7.2mm2であり、切り欠きの面積を含むノズル壁の内周面の総面積の66%であった。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは53.2μm、短軸の長さは12.9μmであり、扁平率は4.1であった。
【0150】
実施例28
紡糸温度を1160℃とした以外は、実施例25と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは37.7μm、短軸の長さは9.5μmであり、扁平率は4.0であった。
【0151】
実施例29
紡糸温度を1160℃とした以外は、実施例26と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは41.8μm、短軸の長さは10.1μmであり、扁平率は4.1であった。
【0152】
実施例30
紡糸温度を1160℃とした以外は、実施例27と同じ条件でガラス繊維を紡糸した。得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長円形の断面を有し、長軸および短軸を対称軸として対称であるガラス繊維であることが確認された。得られた繊維の長軸の長さは43.4μm、短軸の長さは9.2μmであり、扁平率は4.7であった。
【0153】
比較例1
ノズルチップのベースプレートからノズル壁の先端までの距離を3.0mm、切り欠きの幅を2.0mm(ノズル孔の長軸の長さに対して42%)、切り欠きの高さを1.8mm(ベースプレートからノズル壁の先端までの距離の60%)としたノズルを用いて、1190℃にてガラス繊維を紡糸した。ガラス繊維の引っ張り角度が0°においては、扁平率4.1の長円形の断面を有するガラス繊維が得られたが、ノズルの長手方向に対して1.5°の角度を付けて紡糸したところ、扁平率が10%低下し、短軸を対称軸として非対称な繊維となった。さらに、ノズルの長手方向に対して6°の角度を付けて紡糸したところ、扁平率がさらに17%低下した。このノズル形状は、ノズルの長手方向に角度を付けて繊維を引っ張った際に繊維の扁平率が低下しやすく、繊維の断面形状がばらつきやすいものであった。
【0154】
比較例2
ノズルチップのベースプレートからノズル壁の先端までの距離を1.0mm、切り欠きの幅を2.0mm(ノズル孔の長軸の長さに対して42%)、切り欠きの高さを0.6mm(ベースプレートからノズル壁の先端までの距離の60%)としたノズルを用いた以外は、実施例1と同じ条件にてガラス繊維を紡糸した。
得られた繊維を上記ガラス繊維の評価方法に沿って評価したところ、長軸の長さは20.1μm、短軸の長さは8.8μm、扁平率は2.3であり、充分に扁平化した繊維を得ることができなかった。
【0155】
比較例3
比較例1に記載のノズルチップを使用して、紡糸温度を1170℃、1190℃、1210℃、1230℃と変更して、それぞれガラス繊維を得た。紡糸温度が1190℃においては、扁平率が4.2と高扁平率のガラス繊維が得られたが、紡糸温度を1210℃まで高くしたところ、ガラス繊維の扁平率は3.6と、若干の低下がみられた。さらに紡糸温度を1230℃まで高くしたところ、ガラス繊維の扁平率は2.1と大幅に低下した。また、紡糸温度が1170℃においては、ガラス繊維が切れて紡糸することができなかった。このノズル形状は、高扁平率のガラス繊維が得られる温度範囲が狭く、ベースプレートの温度ムラの影響で繊維の断面形状がばらつきやすいものであった。
【0156】
各実施例及び比較例の結果を以下の表1~表17にまとめて示す。
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【符号の説明】
【0174】
1,1A,1B ブッシング
10 ベースプレート
11 ベース孔
20 ノズル
21 ノズル壁
22 ノズル孔
23 切り欠き
24 勾配面
30 冷却フィン
40 ターミナル
50 巻取り機
51 アプリケーター
52 ギャザリングシュー
100 ガラス繊維製造装置
GF ガラス繊維
GM ガラス融液
GS ガラス繊維束
A ベースプレートの厚み
B ベースプレートからノズル壁の先端までの距離
H 切り欠きの高さ
W 切り欠きの幅
X1 ノズル孔の長手方向の中心軸の長さ
X2 ノズル孔の短手方向の最長部の長さ