(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】電極材料の乾燥装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20230308BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20230308BHJP
F26B 13/14 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
B05C9/14
F26B13/14
(21)【出願番号】P 2019223543
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐良
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-228898(JP,A)
【文献】特開2014-116141(JP,A)
【文献】特開2014-139896(JP,A)
【文献】特開2014-086172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
B05C 9/14
F26B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の集電体の第1面に活物質合剤が塗工された電極材料が、前記第1面が上面となるように内部で長手方向に搬送される乾燥炉と、
前記乾燥炉の内部において前記電極材料の搬送方向に複数配置され、前記活物質合剤に向けて送風する送風部と、
を備えた電極材料の乾燥装置であって、
前記送風部が第1の温度で送風する第1乾燥領域と、前記搬送方向において前記第1乾燥領域よりも下流側の領域であり、前記送風部が前記第1の温度よりも高い第2の温度で送風する第2乾燥領域とを有し、
前記第1乾燥領域において前記電極材料を前記集電体の前記第1面とは反対側の第2面側から支持しながら回転する第1支持ロールと、
前記第2乾燥領域において前記電極材料を前記第2面側から支持しながら回転する第2支持ロールと、
を備え、
前記第2支持ロールは、当該第2支持ロールの軸方向の中央から両端に向かうにつれて外径が拡径する一対の拡径部を有することを特徴とする電極材料の乾燥装置。
【請求項2】
前記第2支持ロールは、軸部材と、前記軸部材に対し、前記軸部材の軸方向にスライド可能に取り付けられた前記一対の拡径部とを有し、
前記軸部材の軸方向に沿った前記拡径部の位置は、調整可能である請求項1に記載の電極材料の乾燥装置。
【請求項3】
前記軸部材の軸方向に沿った前記拡径部の位置は、前記電極材料の蛇行量が大きいほど、前記電極材料の短手方向において前記拡径部に接触する部分の寸法が増大するように調整される請求項2に記載の電極材料の乾燥装置。
【請求項4】
前記第2支持ロールは、軸部材と、前記軸部材に取り付けられた前記一対の拡径部とを有し、
前記拡径部は、前記軸部材の周方向に配置された複数本の棒材から構成され、
前記棒材の第1端部は、前記軸部材に取り付けられた固定端であり、前記棒材の前記第1端部とは反対側の端部である第2端部は、自由端である請求項1に記載の電極材料の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺帯状の集電体に活物質合剤が塗工された電極材料の活物質合剤を乾燥させる電極材料の乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長尺帯状の集電体に活物質合剤が塗工された電極材料の活物質合剤を乾燥させる電極材料の乾燥装置が開示されている。乾燥装置は、電極材料が内部で長手方向に搬送される乾燥炉と、乾燥炉の内部において電極材料の搬送方向に複数配置され、活物質合剤に向けて送風する送風部とを備える。乾燥装置により活物質合剤が乾燥された後の電極材料は、巻取ロールによって巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電極材料の乾燥装置では、送風部から送られた風により乾燥炉内で乱流が生じることで、電極材料が短手方向に揺動するように蛇行することがある。この場合、乾燥炉から出てきた電極材料は、蛇行した状態のまま巻取ロールに巻き取られるため、電極材料の短手方向の端部が巻取ロールの軸線方向にずれる、いわゆる巻きずれが生じる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電極材料の短手方向への蛇行を補正できる電極材料の乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための電極材料の乾燥装置は、長尺帯状の集電体の第1面に活物質合剤が塗工された電極材料が、前記第1面が上面となるように内部で長手方向に搬送される乾燥炉と、前記乾燥炉の内部において前記電極材料の搬送方向に複数配置され、前記活物質合剤に向けて送風する送風部と、を備えた電極材料の乾燥装置であって、前記送風部が第1の温度で送風する第1乾燥領域と、前記搬送方向において前記第1乾燥領域よりも下流側の領域であり、前記送風部が前記第1の温度よりも高い第2の温度で送風する第2乾燥領域とを有し、前記第1乾燥領域において前記電極材料を前記集電体の前記第1面とは反対側の第2面側から支持しながら回転する第1支持ロールと、前記第2乾燥領域において前記電極材料を前記第2面側から支持しながら回転する第2支持ロールと、を備え、前記第2支持ロールは、当該第2支持ロールの軸方向の中央から両端に向かうにつれて外径が拡径する一対の拡径部を有することを要旨とする。
【0007】
これによれば、第2乾燥領域では、電極材料は、第2支持ロールにより、短手方向の中央部が凹むように傾斜した状態で支持される。電極材料が短手方向の第1端側に向けて蛇行する際には、第2支持ロールの軸方向の第1端側に位置する拡径部によって、電極材料は短手方向の第2端側に戻される。電極材料が短手方向の第2端側に向けて蛇行する際には、第2支持ロールの軸方向の第2端側に位置する拡径部によって、電極材料は短手方向の第1端側に戻される。よって、電極材料の短手方向への蛇行を補正できる。なお、活物質合剤は、第1乾燥領域により、流動性の低い状態まで乾燥されているため、第2乾燥領域において電極材料が傾斜した状態で支持されても、活物質合剤が短手方向の中央に向けて流れることが回避される。
【0008】
また、上記電極材料の乾燥装置について、前記第2支持ロールは、軸部材と、前記軸部材に対し、前記軸部材の軸方向にスライド可能に取り付けられた前記一対の拡径部とを有し、前記軸部材の軸方向に沿った前記拡径部の位置は、調整可能であるのが好ましい。
【0009】
これによれば、軸部材の軸方向に沿った拡径部の位置を調整することにより、電極材料の短手方向の寸法の変更に対応できる。
また、上記電極材料の乾燥装置について、前記軸部材の軸方向に沿った前記拡径部の位置は、前記電極材料の蛇行量が大きいほど、前記電極材料の短手方向において前記拡径部に接触する部分の寸法が増大するように調整されるのが好ましい。
【0010】
これによれば、電極材料の短手方向において拡径部に接触する部分の寸法が増大するほど、電極材料の蛇行を補正する効果が大きくなる。よって、電極材料の蛇行量が大きくなるほど、電極材料の短手方向において拡径部に接触する部分の寸法が増大するように、軸部材の軸方向に沿った拡径部の位置が調整されることで、電極材料の蛇行をより効果的に補正できる。
【0011】
また、上記電極材料の乾燥装置について、前記第2支持ロールは、軸部材と、前記軸部材に取り付けられた前記一対の拡径部とを有し、前記拡径部は、前記軸部材の周方向に配置された複数本の棒材から構成され、前記棒材の第1端部は、前記軸部材に取り付けられた固定端であり、前記棒材の前記第1端部とは反対側の端部である第2端部は、自由端であるのが好ましい。
【0012】
一般に、電極材料の搬送速度が速いほど、電極材料の蛇行量は大きくなる傾向がある。また、電極材料の搬送速度を速くする際には、第2支持ロールの回転速度も速くする。第2支持ロールの回転速度が速くなると、棒材に作用する遠心力が増大することで、拡径部は、外径が大きくなるように広がる。これにより、電極材料における拡径部に支持された部分について、軸部材の軸方向に対する傾斜角度が大きくなるため、電極材料の蛇行を補正する効果は大きくなる。つまり、電極材料の蛇行量が大きくなり易いときほど、拡径部が広がることで、電極材料の蛇行をより効果的に補正できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電極材料の短手方向への蛇行を補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】第1実施形態の電極シートの製造装置の一部を示す模式図。
【
図15】別例の第2支持ロール及び挿入部材の側面図。
【
図16】別例の第2支持ロール及び挿入部材の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、電極材料の乾燥装置を具体化した第1実施形態を
図1~
図6にしたがって説明する。
【0016】
まず、電極材料の乾燥装置を用いて製造された電極シートについて説明する。
図1に示すように、電極シート10は、長尺帯状の集電体としての金属箔11と、金属箔11の第1面11aに存在する第1活物質層12aと、金属箔11の第1面11aとは反対側の第2面11bに存在する第2活物質層12bとを備える。本実施形態の第1活物質層12a及び第2活物質層12bは、金属箔11の長手方向全体に亘って存在するとともに、金属箔11の短手方向の中央に一定幅で存在する。
【0017】
次に、電極シートの製造方法について説明する。
図2に示すように、電極シートの製造方法は、長尺帯状の金属箔11の第1面11aに第1活物質層12aの前駆体である活物質合剤Sを塗工する第1塗工工程と、第1面11aに塗工された活物質合剤Sを乾燥させる第1乾燥工程とを有する。活物質合剤Sは、活物質、導電剤、バインダ、及び溶媒を混合したペーストである。以下では、金属箔11の第1面11aに活物質合剤Sが塗工されたものを電極材料10aという。
【0018】
図示しないが、電極シートの製造方法は、金属箔11の第2面11bに第2活物質層12bの前駆体である活物質合剤Sを塗工する第2塗工工程と、第2面11bに塗工された活物質合剤Sを乾燥させる第2乾燥工程とを有する。電極シートの製造方法は、第1面11a及び第2面11bに活物質合剤Sが塗工された金属箔11をプレスすることにより、活物質合剤Sにおける活物質密度を上げるプレス工程を有する。プレス工程により、第1面11aに塗工された活物質合剤Sから第1活物質層12aが形成され、第2面11bに塗工された活物質合剤Sから第2活物質層12bが形成される。よって、電極シート10が完成する。
【0019】
次に、電極シートの製造装置20について説明する。
図2に示すように、電極シートの製造装置20は、長尺帯状の金属箔11を長手方向に搬送する搬送装置21を備える。搬送装置21は、金属箔11を供給する供給ロール22と、電極材料10aを巻き取る巻取ロール23とを備える。金属箔11は、巻取ロール23が回転することにより供給ロール22から繰り出される。金属箔11が搬送される方向を搬送方向とする。搬送方向は、金属箔11の長手方向と一致している。
【0020】
電極シートの製造装置20は、第1塗工工程を行う塗工装置24と、第1乾燥工程を行う電極材料の乾燥装置25(以下、単に乾燥装置25という)とを備える。塗工装置24は、搬送方向において供給ロール22よりも下流側、かつ巻取ロール23よりも上流側に配置される。乾燥装置25は、搬送方向において塗工装置24よりも下流側に配置される。
【0021】
本実施形態の塗工装置24は、ダイ26と、ダイ26と間隔を空けて配置されたバックアップロール27とを備える。金属箔11は、ダイ26とバックアップロール27との間を搬送される。このとき、金属箔11の第1面11aは、ダイ26の吐出口26aと対向し、金属箔11の第2面11bは、バックアップロール27の外周面に対し摺動する。吐出口26aから吐出された活物質合剤Sは、金属箔11の第1面11aに塗工される。これにより、金属箔11の第1面11aに活物質合剤Sが塗工された電極材料10aが形成される。
【0022】
図3に示すように、乾燥装置25は、乾燥炉31を備える。乾燥炉31は、四角筒状の周壁31aと、周壁31aの軸方向の両端を覆う一対の端壁31bとを有する箱状である。乾燥炉31は、一対の端壁31bのうち、一方の端壁31bに入口311を有し、他方の端壁31bに出口312を有する。電極材料10aは、入口311から乾燥炉31内に搬送され、乾燥炉31内にて活物質合剤Sが乾燥された後、出口312から乾燥炉31外に搬送される。巻取ロール23は、乾燥炉31外に出てきた電極材料10aを巻き取る。電極材料10aは、乾燥炉31内において、金属箔11の第1面11aが上面となり、金属箔11の第2面11bが下面となるように水平方向に搬送される。
【0023】
乾燥装置25は、複数の送風部としての第1送風部32a及び第2送風部32bを備える。本実施形態の乾燥装置25は、6つの第1送風部32aと、2つの第2送風部32bとを備える。第1送風部32a及び第2送風部32bは、乾燥炉31内において搬送方向に等間隔を空けて配置されている。複数の第1送風部32aは、複数の第2送風部32bよりも搬送方向の上流側に配置されている。各第1送風部32a及び各第2送風部32bは、電極材料10aの上方に配置されている。
【0024】
第1送風部32a及び第2送風部32bは、金属箔11の第1面11aに塗工された活物質合剤Sに向けて送風する。このとき、第1送風部32aは、第1の温度で送風し、第2送風部32bは、第1の温度よりも高い第2の温度で送風する。乾燥炉31内において、第1送風部32aにより乾燥が行われる領域を第1乾燥領域A1とし、第2送風部32bにより乾燥が行われる領域を第2乾燥領域A2とする。第2乾燥領域A2は、搬送方向において第1乾燥領域A1よりも下流側に位置する領域である。本実施形態の第1乾燥領域A1の長さは、第2乾燥領域A2の約3倍である。
【0025】
第1乾燥領域A1では、活物質合剤Sの表面から一定の速度で溶媒を蒸発させることを目的とする。第1乾燥領域A1を通過した後の電極材料10aにおける活物質合剤Sの流動性は、第1乾燥領域A1を通過する前の電極材料10aにおける活物質合剤Sの流動性よりも低下する。第2乾燥領域A2は、活物質合剤Sを急速に乾燥することにより、活物質合剤Sの内部に残存している溶媒を除去することを目的とする。電極材料10aが第2乾燥領域A2を通過することにより、活物質合剤Sは完全に乾燥される。
【0026】
乾燥装置25は、複数の第1支持ロール33aと、複数の第2支持ロール33bとを備える。本実施形態の乾燥装置25は、12本の第1支持ロール33aと、4本の第2支持ロール33bとを備える。第1支持ロール33a及び第2支持ロール33bは、乾燥炉31内において搬送方向に等間隔を空けて配置されている。複数の第1支持ロール33aは、第1乾燥領域A1に配置され、複数の第2支持ロール33bは、第2乾燥領域A2に配置されている。よって、複数の第1支持ロール33aは、複数の第2支持ロール33bよりも搬送方向の上流側に配置されている。各第1支持ロール33a及び各第2支持ロール33bは、電極材料10aの下方に配置されている。
【0027】
各第1支持ロール33a及び各第2支持ロール33bは、電極材料10aを下側から支持する。言い換えると、各第1支持ロール33a及び各第2支持ロール33bは、電極材料10aを金属箔11の第2面11b側から支持する。金属箔11の第2面11bは、各第1支持ロール33a及び各第2支持ロール33bの外周面に接触する。
【0028】
図4に示すように、第1支持ロール33aは、第1回転軸41と、第1回転軸41に軸支された第1ロール本体42とを有する。第1ロール本体42の外径は、軸方向全体において一定である。
【0029】
第1回転軸41の軸線L1が延びる方向は、電極材料10aの短手方向と一致している。図示しない駆動部により第1回転軸41を回転させることで、第1ロール本体42は、第1回転軸41と一体回転する。第1支持ロール33aの回転速度は、電極材料10aの搬送速度に応じて設定される。電極材料10aの搬送速度を速くする際には、第1支持ロール33aの回転速度も速くする。
【0030】
図5に示すように、第2支持ロール33bは、軸部材51を有する。軸部材51は、第2回転軸52と、第2回転軸52に軸支された第2ロール本体53とを有する。第2ロール本体53の内径及び外径は、軸方向全体において一定である。また、第2支持ロール33bは、軸部材51に取り付けられた一対の取付部材54を有する。本実施形態の一対の取付部材54は、第2ロール本体53の両端部に対し、着脱可能に取り付けられている。
【0031】
第2回転軸52の軸線L2は、第1支持ロール33aに支持された電極材料10aの短手方向に沿うように延びている。図示しない駆動部により第2回転軸52を回転させることで、第2ロール本体53は、第2回転軸52と一体回転し、一対の取付部材54は、第2ロール本体53と一体回転する。第2支持ロール33bの回転速度は、電極材料10aの搬送速度に応じて設定される。電極材料10aの搬送速度を速くする際には、第2支持ロール33bの回転速度も速くする。
【0032】
各取付部材54は、円錐台状である。各取付部材54は、円形状の第1端面54aと、第1端面54aよりも面積の大きい円形状の第2端面54bと、第1端面54aと第2端面54bとを繋ぐ外周面54cとを有する。各取付部材54の外径は、第1端面54aから第2端面54bに向かうにつれて拡径する。また、取付部材54は、取付部材54を軸方向に貫通する挿通孔54hを有する。
【0033】
第2ロール本体53の一端部は、一方の取付部材54の挿通孔54hに挿通され、第2ロール本体53の他端部は、他方の取付部材54の挿通孔54hに挿通される。一方の取付部材54の外径は、軸部材51の軸方向の中央から一端側に向かうにつれて大きくなり、他方の取付部材54の外径は、軸部材51の軸方向の中央から他端側に向かうにつれて大きくなる。一対の取付部材54は、第2支持ロール33bにおいて、軸部材51の軸方向の中央から両端に向かうにつれて外径が拡径する一対の拡径部を構成している。一対の取付部材54により、第2支持ロール33bは、中央部が細く、両端部が太い所謂コンケーブ形状を有している。よって、第2支持ロール33bの上端部の高さは、軸部材51の軸方向の中央から両端に向かうにつれて高くなっている。
【0034】
図6に示すように、本実施形態では、各取付部材54は、軸部材51に対し、軸部材51の軸方向にスライド可能に取り付けられている。このため、軸部材51に対して各取付部材54がスライドされることにより、軸部材51の軸方向に沿った各取付部材54の位置は調整可能である。軸部材51の軸方向において一方の取付部材54の第1端面54aと他方の取付部材54の第1端面54aとの距離を、軸方向に沿った一対の取付部材54間の間隔Wとする。取付部材54間の間隔Wは、一対の取付部材54が互いに近付くようにスライドされることで狭くなり、一対の取付部材54が互いに遠ざかるようにスライドされることで広くなる。
【0035】
電極材料10aの短手方向において取付部材54に接触する部分の寸法が増大するほど、電極材料10aの蛇行を補正する効果は大きくなる。このため、軸部材51の軸方向に沿った取付部材54の位置は、電極材料10aの蛇行量が大きいほど、電極材料10aの短手方向において取付部材54に接触する部分の寸法が増大するように調整される。本実施形態では、取付部材54間の間隔Wを狭くすることで、電極材料10aの短手方向において取付部材54に接触する部分の寸法は増大する。
【0036】
図3に示すように、本実施形態の乾燥装置25は、位置調整部34と、検出部35と、制御部36とを有する。位置調整部34は、軸部材51の軸方向に沿った一対の取付部材54の位置を調整する。検出部35は、電極材料10aの短手方向の第1端側に位置する端である第1端E1と、電極材料10aの短手方向の第2端側に位置する端である第2端E2とを検出する。制御部36は、検出部35が検出した電極材料10aの第1端E1及び第2端E2の位置に基づいて位置調整部34を制御する。
【0037】
図5及び
図6に示すように、本実施形態の位置調整部34は、軸部材51に対し、一方の取付部材54をスライドさせる第1シリンダ61と、軸部材51に対し、他方の取付部材54をスライドさせる第2シリンダ62とを有する。つまり、第1シリンダ61は、軸部材51の軸方向に沿った一方の取付部材54の位置を調整し、第2シリンダ62は、軸部材51の軸方向に沿った他方の取付部材54の位置を調整する。第1シリンダ61及び第2シリンダ62はそれぞれ、シリンダチューブ63と、シリンダチューブ63から出没可能なピストンロッド64とを有する。一方の取付部材54の第2端面54bには、第1シリンダ61のピストンロッド64の先端に接続され、他方の取付部材54の第2端面54bには、第2シリンダ62のピストンロッド64の先端が接続されている。
【0038】
第1シリンダ61及び第2シリンダ62がシリンダチューブ63からのピストンロッド64の突出量を増大させると、一対の取付部材54は、互いに近付くように、軸部材51の軸方向の両側から中央に向けてスライドされる。これにより、取付部材54間の間隔Wは狭くなる。一方、第1シリンダ61及び第2シリンダ62がシリンダチューブ63からのピストンロッド64の突出量を減少させると、一対の取付部材54は、互いに遠ざかるように、軸部材51の軸方向の中央から両側に向けてスライドされる。これにより、取付部材54間の間隔Wは広くなる。
【0039】
検出部35は、搬送方向において乾燥炉31よりも下流側に配置されている。検出部35は、乾燥炉31の出口312から出てきた電極材料10aを撮影し、撮影した画像から電極材料10aの短手方向の第1端E1及び第2端E2の位置を検出する。電極材料10aが短手方向の第1端側に蛇行しているときの電極材料10aの第1端E1は、電極材料10aが蛇行していないときの電極材料10aの第1端E1よりも外側に位置する。また、電極材料10aが短手方向の第1端側に蛇行しているときの電極材料10aの第2端E2は、電極材料10aが蛇行していないときの電極材料10aの第2端E2よりも内側に位置する。電極材料10aが短手方向の第2端側に蛇行しているときの電極材料10aの第1端E1は、電極材料10aが蛇行していないときの電極材料10aの第1端E1よりも内側に位置する。電極材料10aが短手方向の第2端側に蛇行しているときの電極材料10aの第2端E2は、電極材料10aが蛇行していないときの電極材料10aの第2端E2よりも外側に位置する。検出部35は、検出した電極材料10aの第1端E1及び第2端E2の位置を制御部36に送信する。
【0040】
制御部36は、検出部35が検出した電極材料10aの第1端E1及び第2端E2の位置から、電極材料10aの蛇行量を把握する。具体的には、制御部36は、検出部35が検出した電極材料10aの第1端E1の位置と、予め記憶している、蛇行していない状態の電極材料10aの第1端E1の位置との差を第1蛇行量として把握する。また、制御部36は、検出部35が検出した電極材料10aの第2端E2の位置と、予め記憶している、蛇行していない状態の電極材料10aの第2端E2の位置との差を第2蛇行量として把握する。
【0041】
制御部36は、第1蛇行量及び第2蛇行量と、所定の判定用蛇行量とを比較する。ここで、判定用蛇行量とは、例えば、巻取ロール23に対する電極材料10aの巻きずれ量を考慮した際に許容される電極材料10aの蛇行量である。制御部36は、第1蛇行量及び第2蛇行量の両方が判定用蛇行量よりも小さいとき、現状の各取付部材54の位置で電極材料10aの蛇行が補正されているとして、現状の取付部材54の間隔Wが維持されるように位置調整部34を制御する。一方、制御部36は、第1蛇行量及び第2蛇行量の少なくとも一方が判定用蛇行量以上であるとき、現状の取付部材54の位置では電極材料10aの蛇行補正が不十分であるとして、一対の取付部材54の間隔Wが狭くなるように位置調整部34を制御する。
【0042】
本実施形態の作用について説明する。
第1乾燥領域A1では、電極材料10aは、第1支持ロール33aにより、平坦状に支持される。第2乾燥領域A2では、電極材料10aの短手方向の両端部は、一対の取付部材54によって支持される。これにより、第2乾燥領域A2では、電極材料10aは、第2支持ロール33bにより、短手方向の中央部が凹むように傾斜した状態で支持される。
【0043】
第1送風部32a及び第2送風部32bから送られた風により、乾燥炉31内で乱流が発生し、電極材料10aが短手方向の第1端側に向けて蛇行する際には、第2支持ロール33bの軸方向の第1端側に位置する取付部材54によって、電極材料10aは短手方向の第2端側に戻される。反対に、電極材料10aが短手方向の第2端側に向けて蛇行する際には、第2支持ロール33bの軸方向の第2端側に位置する取付部材54によって、電極材料10aは短手方向の第1端側に戻される。よって、電極材料10aの短手方向への蛇行が補正される。
【0044】
ところで、電極材料10aの短手方向において取付部材54に接触する部分の寸法が大きいほど、電極材料10aの蛇行を補正する効果は大きくなる。このため、軸部材51の軸方向に沿った取付部材54の位置は、電極材料10aの蛇行量が大きくなるほど、電極材料10aの短手方向において取付部材54に接触する部分の寸法が増大するように調整される。本実施形態では、電極材料10aの短手方向において取付部材54に接触する部分の寸法は、取付部材54間の間隔Wを狭くすることにより増大する。制御部36は、第1蛇行量及び第2蛇行量の少なくとも一方が判定用蛇行量以上であるときには、取付部材54間の間隔Wが狭くなるように位置調整部34を制御する。よって、電極材料10aの蛇行をより効果的に補正できる。
【0045】
なお、活物質合剤Sは、第1乾燥領域A1により、流動性の低い状態まで乾燥されているため、第2乾燥領域A2において電極材料10aが傾斜した状態で支持されても、活物質合剤Sが短手方向の中央に向けて流れることが回避される。
【0046】
第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)第2乾燥領域A2では、電極材料10aは、第2支持ロール33bにより、短手方向の中央部が凹むように傾斜した状態で支持されるため、電極材料10aの短手方向への蛇行を補正できる。なお、活物質合剤Sは、第1乾燥領域A1により、流動性の低い状態まで乾燥されているため、活物質合剤Sが電極材料10aの短手方向の中央に向けて流れることが回避される。
【0047】
(1-2)軸部材51の軸方向に沿った取付部材54の位置は調整可能であるため、電極材料10aの短手方向の寸法の変更に対応できる。
(1-3)電極材料10aの短手方向において取付部材54に接触する部分の寸法が増大するほど、電極材料10aの蛇行を補正する効果は大きくなる。よって、電極材料10aの蛇行量が大きくなるほど、電極材料10aの短手方向において取付部材54に接触する部分の寸法が増大するように、軸部材51の軸方向に沿った取付部材54の位置が調整されることで、電極材料10aの蛇行をより効果的に補正できる。
【0048】
(1-4)一対の取付部材54は、軸部材51に対して着脱可能である。よって、軸部材51から一対の取付部材54を取り外せば、軸部材51を第1支持ロール33aとして使用できる。反対に、第1支持ロール33aの第1ロール本体42に一対の取付部材54を取り付ければ、第2支持ロール33bとして使用できる。
【0049】
(第2実施形態)
以下、電極材料の乾燥装置を具体化した第2実施形態を
図7~
図10にしたがって説明する。
【0050】
第2実施形態の乾燥装置25は、乾燥炉31と、第1送風部32aと、第2送風部32bと、第1支持ロール33aと、第2支持ロール33bとを備える。なお、乾燥炉31、第1送風部32a、第2送風部32b、第1支持ロール33aについては、第1実施形態と同じ構成であるため、説明を省略する。
【0051】
図7~
図10に示すように、第2支持ロール33bは、第2回転軸52と、第2回転軸52に取り付けられた一対の傘部材55とを有する。第2回転軸52の軸線L2は、第1支持ロール33aに支持された電極材料10aの短手方向に沿うように延びている。一対の傘部材55は、第2回転軸52の軸方向に間隔を空けて取り付けられている。一対の傘部材55のうちの一方は、第2回転軸52の軸方向の中央よりも第1端側に取り付けられ、一対の傘部材55のうちの他方は、第2回転軸52の軸方向の中央よりも第2端側に取り付けられている。
【0052】
図7及び
図9に示すように、各傘部材55は、円筒状の固定部71と、円筒状のスライド部72と、コイルばね73と、複数本の棒材としての主軸74と、主軸74と同じ本数の副軸75と、シート76とを有する。
図8及び
図10に示すように、本実施形態の各傘部材55は、8本の主軸74と、8本の副軸75とを有する。なお、
図7及び
図9において紙面右側に位置する傘部材55では、シート76を二点鎖線で図示し、固定部71、スライド部72、コイルばね73、主軸74、及び副軸75を実線で図示している。
【0053】
固定部71及びスライド部72には、第2回転軸52が挿通されている。固定部71は、スライド部72よりも第2回転軸52の軸方向の中心に近い。言い換えると、スライド部72は、固定部71よりも第2回転軸52の軸方向の端側に位置している。固定部71は、第2回転軸52に対して固定されている。一方、スライド部72は、第2回転軸52に対し、第2回転軸52の軸方向にスライド可能に取り付けられている。コイルばね73は、第2回転軸52に巻きつけられている。コイルばね73は、第2回転軸52の軸方向において固定部71とスライド部72との間に配置されている。コイルばね73の一端は、固定部71に接続され、コイルばね73の他端は、スライド部72に接続されている。
【0054】
8本の主軸74は、第2回転軸52におけるコイルばね73が巻き付けられた部分を取り囲むように、第2回転軸52の周方向において等間隔に配置されている。各主軸74の両端部のうち、第2回転軸52の軸方向の中央に近い方の第1端部74aは、固定部71に接続された固定端であり、第1端部74aとは反対側の端部である第2端部74bは、自由端である。第2回転軸52の径方向における各主軸74と第2回転軸52との距離は、第2回転軸52の軸方向の中央から端に向かうにつれて長くなっている。各主軸74の軸線は、第2回転軸52の軸線L2に対して傾斜している。
【0055】
8本の副軸75は、第2回転軸52におけるコイルばね73が巻き付けられた部分を取り囲むように、第2回転軸52の周方向において等間隔に配置されている。第2回転軸52の周方向において、各主軸74は、各副軸75と同じ位置に配置されている。第2回転軸52の径方向において、8本の副軸75は、コイルばね73の外側、かつ主軸74の内側に位置する。各副軸75の両端部のうち、第2回転軸52の軸方向の中央に近い方の第1端部75aは、各主軸74の軸方向の途中の部分に対し、図示しない接続部材を介して回動可能に接続され、第1端部75aとは反対側の端部である第2端部75bは、スライド部72に接続されている。
【0056】
シート76は、第2回転軸52の径方向外側から複数本の主軸74を覆う筒状である。シート76の軸方向の両端部のうち、第2回転軸52の軸方向の中央に近い方の第1端部76aは、固定部71に接続され、第1端部76aとは反対側の端部である第2端部76bは、各主軸74の第2端部74bに接続されている。各主軸74は、シート76の内周面に沿う状態で配置されている。シート76の外径は、第1端部76aから第2端部76bに向かうにつれて拡径する。すなわち、シート76の外径は、第2回転軸52の軸方向の中央から端側に向かうにつれて拡径する。
【0057】
シート76は、シリコーンゴムからなり、伸縮可能である。具体的には、本実施形態のシート76は、硬度(デューロメータ タイプA)53、切断時伸び300%、引張り強さ7.7MPa、伸び50~500%のシリコーンシートである。シート76の外周面には、図示しないDLCコートが施されている。なお、本実施形態のDLC構造には、α-C/H(水素含有アモルファスカーボン)、硬さ60~100HV、膜厚0.5~2μm、処理温度60~80℃で、ドライ環境でのSUJ2と膜との摩擦係数0.1~0.2のものが用いられる。
【0058】
傘部材55の外径は、シート76の外径に対応する。よって、傘部材55の外径は、第2回転軸52の軸方向の中央から端に向かうにつれて拡径する。一対の傘部材55は、第2支持ロール33bにおいて、第2回転軸52の軸方向の中央から両端に向かうにつれて外径が拡径するように広がる一対の拡径部を構成している。一対の傘部材55により、第2支持ロール33bは、中央部が細く、両端部が太い所謂コンケーブ形状を有している。よって、第2支持ロール33bの上端部の高さは、第2回転軸52の軸方向の中央から両端に向かうにつれて高くなっている。
【0059】
図7及び
図8では、電極材料10aの搬送停止時の第2支持ロール33bを図示している。つまり、第2支持ロール33bは、回転していない。このとき、コイルばね73は、伸び縮みしていない状態である。
【0060】
図9及び
図10では、電極材料10aの搬送時の第2支持ロール33bを図示している。つまり、第2支持ロール33bは、回転している。このとき、各傘部材55は、遠心力を受けて広がる。詳しくは、各主軸74に第2回転軸52の径方向外側への力が作用することにより、8本の主軸74は、第2端部74b同士が離れるように第2回転軸52の径方向外側に広がる。これに伴い、主軸74が接続されたシート76も、外径が拡径するように広がる。このとき、各主軸74に接続された各副軸75は、各主軸74に対して回動するとともに、副軸75に接続されたスライド部72は、コイルばね73を縮めながら固定部71に近付くようにスライドされる。第2支持ロール33bが回転しているときの第2回転軸52の軸線L2に対する主軸74の軸線の傾斜角度は、第2支持ロール33bが回転していないときの第2回転軸52の軸線L2に対する主軸74の軸線の傾斜角度よりも大きくなる。
【0061】
なお、電極材料10aの搬送速度を速くするのに伴って第2支持ロール33bの回転速度を速くすると、各傘部材55に作用する遠心力も大きくなる。すると、第2回転軸52の軸線L2に対する各主軸74の軸線の傾斜角度が大きくなることで、シート76における第2端部76b側の外径も大きくなる。つまり、各傘部材55の広がりは、第2支持ロール33bの回転速度が速いほど大きくなり、第2支持ロール33bの回転速度が遅いほど小さくなる。
【0062】
本実施形態の作用について説明する。
第2乾燥領域A2では、電極材料10aの短手方向の両端部は、一対の傘部材55によって支持される。これにより、第2乾燥領域A2では、電極材料10aは、第2支持ロール33bにより、短手方向の中央部が凹むように傾斜した状態で支持される。
【0063】
第1送風部32a及び第2送風部32bから送られた風により、乾燥炉31内で乱流が発生し、電極材料10aが短手方向の第1端側に向けて蛇行する際には、第2支持ロール33bの軸方向の第1端側に位置する傘部材55によって、電極材料10aは短手方向の第2端側に戻される。反対に、電極材料10aが短手方向の第2端側に向けて蛇行する際には、第2支持ロール33bの軸方向の第2端側に位置する傘部材55によって、電極材料10aは短手方向の第1端側に戻される。よって、電極材料10aの短手方向への蛇行が補正される。
【0064】
ところで、一般に、電極材料10aの搬送速度を速くするほど、電極材料10aの蛇行量は大きくなる傾向がある。また、電極材料10aの搬送速度を速くする際には、第2支持ロール33bの回転速度も速くする。本実施形態では、第2支持ロール33bの回転速度が速くなると、各傘部材55に作用する遠心力が増大することで、各傘部材55の広がりは大きくなる。これにより、電極材料10aにおける各傘部材55に支持された部分について、第2回転軸52の軸線L2に対する傾斜角度が大きくなるため、電極材料10aの蛇行を補正する効果は大きくなる。つまり、電極材料10aの蛇行量が大きくなり易いときほど、傘部材55が広がることで、電極材料10aの蛇行を補正する効果が大きくなる。
【0065】
第2実施形態の効果について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態の効果(1-1)に加えて、次の効果が得られる。
(2-1)一般に、電極材料10aの搬送速度が速いほど、電極材料10aの蛇行量は大きくなる傾向がある。また、電極材料10aの搬送速度を速くする際には、第2支持ロール33bの回転速度も速くする。本実施形態では、第2支持ロール33bの回転速度に応じて傘部材55が広がることにより、電極材料10aの蛇行をより効果的に補正できる。
【0066】
(2-2)傘部材55は、遠心力により広がるため、傘部材55を広げるための機構を別途設ける必要がない。よって、乾燥装置25の構成を簡素化できる。
(2-3)電極材料10aは、第2回転軸52の周方向全周に亘って存在する筒状のシート76によって支持されるため、後述する第3実施形態と比較して、電極材料10aを安定的に支持できる。
【0067】
(第3実施形態)
以下、電極材料の乾燥装置を具体化した第3実施形態を
図11~
図14にしたがって説明する。
【0068】
第3実施形態の乾燥装置25は、乾燥炉31と、第1送風部32aと、第2送風部32bと、第1支持ロール33aと、第2支持ロール33bとを備える。なお、乾燥炉31、第1送風部32a、第2送風部32b、第1支持ロール33aについては、第1実施形態と同じ構成であるため、説明を省略する。
【0069】
図11~
図14に示すように、第2支持ロール33bは、軸部材51と、軸部材51に取り付けられた一対のささら部材56とを備える。軸部材51は、第2回転軸52と、第2回転軸52に軸支された第2ロール本体53とを有する。第2回転軸52の軸線L2は、第1支持ロール33aに支持された電極材料10aの短手方向に沿うように延びている。本実施形態の一対のささら部材56は、第2ロール本体53の軸方向の両端面53aに取り付けられている。各ささら部材56は、複数本の棒材としてのささら片57から構成されている。本実施形態の各ささら部材56は、24本のささら片57から構成されている。
【0070】
ささら片57は、シリコーンゴムからなる。具体的には、本実施形態のささら片57は、硬度(デューロメータ タイプA)53、切断時伸び300%、引張り強さ7.7MPa、伸び50~500%のシリコーンゴムからなる。ささら片57の表面には、図示しないDLCコートが施されている。なお、本実施形態のDLC構造には、α-C/H(水素含有アモルファスカーボン)、硬さ60~100HV、膜厚0.5~2μm、処理温度60~80℃で、ドライ環境でのSUJ2と膜との摩擦係数0.1~0.2のものが用いられる。
【0071】
図11に示すように、第2ロール本体53は、軸方向の両端面53aから凹む複数の嵌合溝53bを有する。
図12及び
図14に示すように、複数の嵌合溝53bは、各端面53aの周縁部に対し、軸部材51の周方向に並べて配置されている。ささら部材56は、各ささら片57が各嵌合溝53bに嵌合されることにより、軸部材51に取り付けられている。各ささら片57の軸方向の第1端部57aは、第2ロール本体53の各嵌合溝53bに嵌合された固定端であり、各ささら片57の軸方向の第1端部57aとは反対側の第2端部57bは、自由端である。一対のささら部材56は、軸部材51の軸方向の両外側に開口している。すなわち、一対のささら部材56は、軸部材51の軸方向の両側に開口する開口部56aを有する。
【0072】
図11及び
図12に示すように、電極材料10aの搬送停止時、すなわち第2支持ロール33bの回転停止時には、軸部材51の径方向における第2回転軸52と各ささら片57との距離は、軸部材51の軸方向の中央から端に向かうにつれて長くなっている。各ささら片57の軸線は、第2回転軸52の軸線L2に対して僅かに傾斜している。このため、ささら部材56の外径は、ささら片57の第1端部57aから第2端部57bに向かうにつれて拡径する。すなわち、ささら部材56の外径は、軸部材51の軸方向の中央から端側に向かうにつれて拡径する。
【0073】
図13及び
図14に示すように、電極材料10aの搬送時、すなわち第2支持ロール33bの回転時には、各ささら部材56は、遠心力を受けて広がる。詳しくは、各ささら片57に軸部材51の径方向外側への力が作用することにより、各ささら部材56は、各ささら片57の第2端部57b同士が離れるように軸部材51の径方向外側に広がる。このため、第2回転軸52の軸線L2に対する各ささら片57の軸線の傾斜角度は、第2支持ロール33bの回転停止時と比較して大きくなる。
【0074】
一対のささら部材56は、第2支持ロール33bにおいて、軸部材51の軸方向の中央から両端に向かうにつれて外径が拡径するように広がる一対の拡径部を構成している。一対のささら部材56により、第2支持ロール33bは、中央部が細く、両端部が太い所謂コンケーブ形状を有している。よって、第2支持ロール33bの上端部の高さは、軸部材51の軸方向の中央から両端に向かうにつれて高くなっている。
【0075】
なお、電極材料10aの搬送速度を速くするのに伴って第2支持ロール33bの回転速度を速くすると、各ささら部材56に作用する遠心力も大きくなる。すると、第2回転軸52の軸線L2に対する各ささら片57の軸線の傾斜角度が大きくなることで、ささら部材56の外径も大きくなる。つまり、各ささら部材56の広がりは、第2支持ロール33bの回転速度が速いほど大きくなり、第2支持ロール33bの回転速度が遅いほど小さくなる。
【0076】
本実施形態の作用について説明する。
第2乾燥領域A2では、電極材料10aの短手方向の両端部は、一対のささら部材56によって支持される。すなわち、第2乾燥領域A2では、電極材料10aは、第2支持ロール33bにより、短手方向の中央部が凹むように傾斜した状態で支持される。
【0077】
第1送風部32a及び第2送風部32bから送られた風により、乾燥炉31内で乱流が発生し、電極材料10aが短手方向の第1端側に向けて蛇行する際には、第2支持ロール33bの軸方向の第1端側に位置するささら部材56によって、電極材料10aは短手方向の第2端側に戻される。反対に、電極材料10aが短手方向の第2端側に向けて蛇行する際には、第2支持ロール33bの軸方向の第2端側に位置するささら部材56によって、電極材料10aは短手方向の第1端側に戻される。よって、電極材料10aの短手方向への蛇行を補正できる。
【0078】
ところで、一般に、電極材料10aの搬送速度を速くするほど、電極材料10aの蛇行量は大きくなる傾向がある。また、電極材料10aの搬送速度を速くする際には、第2支持ロール33bの回転速度も速くする。本実施形態では、第2支持ロール33bの回転速度が速くなると、各ささら部材56に作用する遠心力が増大することで、各ささら部材56の広がりは大きくなる。これにより、電極材料10aにおける各ささら部材56に支持された部分について、第2回転軸52の軸線L2に対する傾斜角度が大きくなるため、電極材料10aの蛇行を補正する効果は大きくなる。つまり、電極材料10aの蛇行量が大きくなり易いときほど、ささら部材56が広がることで、電極材料10aの蛇行を補正する効果が大きくなる。
【0079】
第3実施形態の効果について説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態の効果(1-1)に加えて、次の効果が得られる。
(3-1)一般に、電極材料10aの搬送速度が速いほど、電極材料10aの蛇行量は大きくなる傾向がある。また、電極材料10aの搬送速度を速くする際には、第2支持ロール33bの回転速度も速くする。本実施形態では、第2支持ロール33bの回転速度に応じてささら部材56が広がることにより、電極材料10aの蛇行をより効果的に補正できる。
【0080】
(3-2)ささら部材56は、遠心力により広がるため、ささら部材56を広げるための機構を別途設ける必要がない。よって、乾燥装置25の構成を簡素化できる。
(3-3)本実施形態では、一対の拡径部は、複数本のささら片57から構成されるささら部材56であるため、第2実施形態と比較して、第2支持ロール33bの構成を簡素化できる。
【0081】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ 第1~第3実施形態において、集電体は、金属箔11に限定されず、例えば、織物状や網状でもよい。
【0082】
○ 第1~第3実施形態において、電極材料10aは、金属箔11と、金属箔11の第1面11aに塗工後、完全に乾燥された活物質合剤Sと、金属箔11の第2面11bに塗工された活物質合剤Sとから構成されていてもよい。この場合、第1送風部32a及び第2送風部32bは、金属箔11の第2面11bに塗工された活物質合剤Sに向けて送風し、第1支持ロール33a及び第2支持ロール33bは、金属箔11の第1面11a側から電極材料10aを支持する。つまり、「金属箔11の第2面11b」が請求項の「集電体の第1面」に相当し、「金属箔11の第1面11a」が請求項の「集電体の第2面」に相当する。
【0083】
○ 第1~第3実施形態において、1つの乾燥炉31において、第1乾燥領域A1及び第2乾燥領域A2の両方が設けられていなくてもよい。例えば、乾燥装置25は、第1乾燥領域A1を有する第1の乾燥炉と、第2乾燥領域A2を有する第2の乾燥炉とを別体で有していてもよい。なお、第1の乾燥炉及び第2の乾燥炉はそれぞれ、複数の炉から構成されていてもよい。
【0084】
○ 第1~第3実施形態において、第1乾燥領域A1及び第2乾燥領域A2の長さは適宜変更してよい。
○ 第1~第3実施形態において、第1送風部32aの数は、適宜変更してよい。
【0085】
○ 第1~第3実施形態において、第2送風部32bの数は、適宜変更してよい。
○ 第1~第3実施形態において、第1支持ロール33aの数は、適宜変更してよい。
○ 第1~第3実施形態において、第2支持ロール33bの数は、適宜変更してよい。
【0086】
○ 第1~第3実施形態において、第2乾燥領域A2には、第1支持ロール33aも配置されていてもよい。例えば、第2乾燥領域A2に配置される4つの支持ロールのうち、搬送方向の上流側に位置する2つの支持ロールを第1支持ロール33aとし、搬送方向の下流側に位置する2つの支持ロールを第2支持ロール33bとしてもよい。第2乾燥領域A2に配置される支持ロールについて、巻取ロール23に近い支持ロールを第2支持ロール33bとすることで、巻取ロール23に対する電極材料10aの巻きずれをより抑制できる。
【0087】
○ 第1実施形態において、軸部材51は、第2回転軸52のみから構成されていてもよい。この場合、一対の取付部材54は、第2回転軸52に取り付けられる。
○ 第2実施形態において、第2支持ロール33bは、第2回転軸52と、第2回転軸52に軸支された第2ロール本体53とからなる軸部材51を備えていてもよい。この場合、一対の傘部材55は、第2ロール本体53に取り付けられる。
【0088】
○ 第3実施形態において、軸部材51は、第2回転軸52のみから構成されていてもよい。この場合、一対のささら部材56は、第2回転軸52に取り付けられる。
○ 第1~第3実施形態において、第2支持ロール33bの一対の拡径部は、第2回転軸52又は第2ロール本体53の外径が軸方向の中央から両端に向かうにつれて拡径することにより構成されていてもよい。つまり、一対の拡径部は、一対の取付部材54、一対の傘部材55、又は一対のささら部材56によって構成されていなくてもよい。
【0089】
○ 第1実施形態において、一対の取付部材54は、軸部材51に対してスライド不能に固定されていてもよい。この場合、軸部材51の軸方向に沿った取付部材54の位置は調整されない。
【0090】
○ 第1実施形態において、位置調整部34、検出部35、及び制御部36を省略してもよい。
○ 第1実施形態において、一対の取付部材54のうちの何れか一方のみの位置を軸部材51の軸方向に沿って調整してもよい。
【0091】
○ 第1実施形態において、軸部材51の軸方向に沿った取付部材54の位置は、手動で調整されてもよい。
○ 第1実施形態において、軸部材51の軸方向に沿った取付部材54の位置を調整できるのであれば、位置調整部34の構成は適宜変更してよい。
【0092】
○ 第1実施形態において、軸部材51の軸方向に沿った取付部材54の位置は、電極材料10aの短手方向の寸法の変更に対応するために調整されてもよい。
○ 第1実施形態において、乾燥装置25が、第1乾燥領域A1を有する第1の乾燥炉と、第2乾燥領域A2を有する第2の乾燥炉とを別体で有している場合、検出部35は、第1の乾燥炉と第2の乾燥炉との間に配置されていてもよい。検出部35は、第1の乾燥炉の通過後、かつ第2の乾燥炉の通過前の電極材料10aの第1端E1及び第2端E2の位置を検出する。
【0093】
○ 第1実施形態において、例えば、赤外線センサ等により、電極材料10aが蛇行しているか否かを把握してもよい。
○ 第2実施形態において、傘部材55が有する主軸74の本数は適宜変更してよい。
【0094】
○ 第3実施形態において、ささら部材56は、挿入部材58が開口部56aに挿入されることにより広げられてもよい。
図15及び
図16に示すように、乾燥装置25は、第2支持ロール33bの軸方向の両側に配置された略円錐台状の一対の挿入部材58を備える。各挿入部材58の軸線L3は、第2支持ロール33bの軸線L2と一致している。各挿入部材58の小径側の端部は、第2支持ロール33bに近い側に位置し、各挿入部材58の大径側の端部は、第2支持ロール33bから遠い側に位置する。各挿入部材58の小径側の端部の直径は、広げられる前のささら部材56の開口部56aの開口量よりも小さく、各挿入部材58の大径側の端部の直径は、広げられる前のささら部材56の開口部56aの開口量よりも大きい。
【0095】
図17に示すように、各挿入部材58は、挿入部材58を軸方向に貫通する貫通孔58hを有する。貫通孔58hには、第2回転軸52が挿通されている。なお、貫通孔58hの内周面と第2回転軸52の外周面との間には間隙が設けられている。
【0096】
図15に示すように、各挿入部材58が各ささら部材56の開口部56aに挿入されていない状態では、軸部材51の径方向における第2回転軸52と各ささら片57との距離は、軸部材51の軸方向の中央から端に向かうにつれて長くなっている。各ささら片57の軸線は、第2回転軸52の軸線L2に対して僅かに傾斜している。このため、ささら部材56の外径は、ささら片57の第1端部57aから第2端部57bに向かうにつれて拡径する。すなわち、ささら部材56の外径は、軸部材51の軸方向の中央から端側に向かうにつれて拡径する。
【0097】
図16及び
図17に示すように、各挿入部材58が小径側の端部からささら部材56の開口部56aに挿入されることにより、各ささら部材56は、各ささら片57の第2端部57b同士が離れるように、軸部材51の径方向外側に広がる。このため、第2回転軸52の軸線L2に対する各ささら片57の軸線の傾斜角度は、挿入部材58がささら部材56の開口部56aに挿入されていないときと比較して大きくなる。
【0098】
この構成では、第2支持ロール33bの回転速度に依らず、ささら部材56を広げることができる。
なお、上記変更例では、各ささら部材56の開口部56aに対する各挿入部材58の挿入量を調整することによって、各ささら部材56において各挿入部材58により広げられる部分を増減させてもよい。具体的には、各ささら部材56の開口部56aに対する各挿入部材58の挿入量を増大させるほど、各ささら部材56において各挿入部材58により広げられる部分は増大する。すると、電極材料10aの短手方向において各ささら部材56に接触する部分の寸法も増大するため、電極材料10aの蛇行を補正する効果が大きくなる。つまり、電極材料10aの蛇行量に応じて、各ささら部材56の開口部56aに対する各挿入部材58の挿入量が調整されることにより、電極材料10aの蛇行をより効果的に補正できる。
【0099】
また、上記変更例では、各挿入部材58の大径側の端部の直径を変更することにより、各ささら部材56の広がりを調整してもよい。具体的には、各挿入部材58の大径側の端部の直径が大きいほど、第2回転軸52の軸線L2に対する各ささら片57の軸方向の傾斜角度も大きくなるため、各ささら部材56の広がりは大きくなる。
【0100】
○ 第3実施形態において、ささら部材56を構成するささら片57の太さや本数は適宜変更してよい。例えば、ささら部材56は、第3実施形態のささら片57よりも細く、かつ第3実施形態のささら片57の本数よりも多い、複数本のささら片57から構成されたブラシ状であってもよい。具体的には、ささら片57が嵌合される嵌合溝53bは、第2ロール本体53の軸方向の各端面53aに対し、円環状に設けられる。嵌合溝53bには、軸部材51の径方向及び周方向それぞれに、複数本のささら片57が嵌合される。
【0101】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記第2支持ロールは、軸部材と、前記軸部材に取り付けられた前記一対の拡径部とを有し、前記拡径部は、前記軸部材の周方向に配置された複数本の棒材から構成され、前記棒材の第1端部は、前記軸部材に取り付けられた固定端であり、前記棒材の前記第1端部とは反対側の端部である第2端部は、自由端であり、前記拡径部は、前記第2支持ロールの軸方向の両側に配置された一対の挿入部材が、前記棒材の前記第2端部によって形成された開口部に挿入されることにより、外径が拡径するように広がる請求項1に記載の電極材料の乾燥装置。
【符号の説明】
【0102】
10a…電極材料、11…集電体としての金属箔、11a…第1面、11b…第2面、25…電極材料の乾燥装置、31…乾燥炉、32a…送風部としての第1送風部、32b…送風部としての第2送風部、33a…第1支持ロール、33b…第2支持ロール、51…軸部材、54…拡径部としての取付部材、55…拡径部としての傘部材、56…拡径部としてのささら部材、57…棒材としてのささら片、74…棒材としての主軸、A1…第1乾燥領域、A2…第2乾燥領域、S…活物質合剤。