(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】治療剤、ならびに腫瘍および/またはがんの治療のための薬物のためのその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/761 20150101AFI20230308BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230308BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230308BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230308BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
A61K35/761 ZMD
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019536062
(86)(22)【出願日】2018-01-03
(86)【国際出願番号】 CN2018070166
(87)【国際公開番号】W WO2018127052
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】201710003954.1
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519232611
【氏名又は名称】ハンジョウ・コンバード・カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANGZHOU CONVERD CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】7th Floor,Building #4,2959 Yuhangtang Road,Yuhang District,Hangzhou,Zhejiang Province 311121,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】フ、ファン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、リン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ、ロンファ
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/164370(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/008976(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0339066(US,A1)
【文献】国際公開第2016/009017(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0077231(US,A1)
【文献】BIO Clinica ,2016年,31(1),55-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/17
A61K 35/76
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の薬学的に許容される担体中に腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の医薬組成物と、
(b)第2の薬学的に許容される担体中にNK細胞を含む第2の医薬組成物と
を含む治療剤であって、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができ、
前記NK細胞が改変されておらず、
前記腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍溶解性アデノウイルスであ
り、
前記第1の医薬組成物の投与の18~72時間後に前記第2の医薬組成物を投与する、
腫瘍および/またはがんの治療のための治療剤。
【請求項2】
前記腫瘍および/またはがんが、肺がん、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病を含む、請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
前記第1の医薬組成物の活性成分が、前記腫瘍溶解性ウイルスであり、かつ、前記第2の医薬組成物の活性成分が、前記NK細胞である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項4】
前記第1の医薬組成物が、治療有効用量の前記腫瘍溶解性ウイルスを含み、前記第2の医薬組成物が、1×10
7~1×10
10細胞/日の範囲の用量の前記NK細胞を含む、請求項1に記載の治療剤。
【請求項5】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解能力を有する遺伝子変異型ウイルスおよび腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスから選択される、請求項1に記載の治療剤。
【請求項6】
前記NK細胞が、自家NK細胞および同種NK細胞から選択される、請求項1に記載の治療剤。
【請求項7】
前記NK細胞が、インビトロで増殖させた自家NK細胞またはインビトロで増殖させた同種NK細胞である、請求項6に記載の治療剤。
【請求項8】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍内注入を介して投与されるかまたは静脈内投与されるように製剤化され、かつ、前記NK細胞が、静脈内投与されるように製剤化される、請求項1に記載の治療剤。
【請求項9】
前記腫瘍溶解性アデノウイルスのE1領域および/またはE3領域が、遺伝子修飾されている、請求項1に記載の治療剤。
【請求項10】
前記腫瘍溶解性アデノウイルスが、Onyx-015、H101、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、CG0070、DNX-2401、OBP-301、ONCOS-102、ColoAd1、VCN-01、および/またはProstAtak(商標)から選択される、請求項1に記載の治療剤。
【請求項11】
前記第1の医薬組成物の活性成分が、5×10
7~5×10
12VP/日の範囲の用量の腫瘍溶解性アデノウイルスを含み、かつ、前記第2の医薬組成物の活性成分が、1×10
7~1×10
10細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含む、請求項1に記載の治療剤。
【請求項12】
前記第1の医薬組成物および前記第2の医薬組成物からなる、請求項1に記載の治療剤。
【請求項13】
腫瘍および/またはがんの治療のための薬物の調製のための請求項1~12の何れか1項に記載の治療剤の使用
であって、
前記治療剤の第1の医薬組成物の投与の18~72時間後に前記治療剤の第2の医薬組成物を投与する、使用。
【請求項14】
前記腫瘍および/またはがんが、肺がん、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病を含む、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
腫瘍および/またはがんの治療のための相乗作用を有する組合せ薬物のキットであって、腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の容器と、NK細胞を含む第2の容器と、投与のタイミングおよび経路を示す説明書とを含み、前記第1の容器が、前記第2の容器とは別個であり、前記腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができ、前記NK細胞が改変されておらず、前記腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍溶解性アデノウイルスであ
り、前記腫瘍溶解性アデノウイルスの投与のタイミングは、前記NK細胞の投与のタイミングの18~72時間前である、キット。
【請求項16】
前記第1の容器が、治療有効用量の前記腫瘍溶解性ウイルスを含み、前記第2の容器が、1×10
7~1×10
10細胞/日の範囲の用量の前記NK細胞を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解能力を有する遺伝子変異型ウイルスおよび腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスから選択される、請求項15に記載のキット。
【請求項18】
前記NK細胞が、自家NK細胞および同種NK細胞から選択される、請求項15に記載のキット。
【請求項19】
前記NK細胞が、インビトロで増殖させた自家NK細胞またはインビトロで増殖させた同種NK細胞である、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記腫瘍および/またはがんが、肺がん、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項21】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍内注入を介して投与されるかまたは静脈内投与されるように製剤化され、かつ、前記NK細胞が、静脈内投与されるように製剤化される、請求項15に記載のキット。
【請求項22】
前記腫瘍溶解性アデノウイルスのE1領域および/またはE3領域が、遺伝子修飾されている、請求項15に記載のキット。
【請求項23】
前記腫瘍溶解性アデノウイルスが、Onyx-015、H101、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、CG0070、DNX-2401、OBP-301、ONCOS-102、ColoAd1、VCN-01、および/またはProstAtak(商標)から選択される、請求項15に記載のキット。
【請求項24】
前記第1の容器が、5×10
7~5×10
12VP/日の範囲の用量の腫瘍溶解性アデノウイルスを含み、かつ、前記第2の容器が、1×10
7~1×10
10細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含む、請求項15に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関し、特に、治療剤、ならびに腫瘍および/またはがんの治療のための薬物のためのその使用に関する。
【発明の背景】
【0002】
悪性腫瘍は、ヒト疾患における主要な死因の1つであり、その主な治療方法は、外科手術、放射線療法、および化学療法である。腫瘍の生物学的療法が、近年開発されており、悪性腫瘍治療の第4のモダリティと呼ばれ、これには、腫瘍ワクチン療法、非特異的腫瘍免疫療法、モノクローナル抗体を用いた標的化免疫療法、サイトカイン療法、養子細胞免疫療法、腫瘍遺伝子療法などが含まれる。がんウイルス療法もまた、生物学的療法に属し、過去20年間で急速に進化している。現時点では、ウイルス療法における最も有意な進歩の1つは、幾つかのウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製し、最終的に腫瘍細胞を殺滅することができるように、幾つかのウイルスを正常細胞とがん細胞との間の差異に基づいて構造的に修飾することができることである。これらの修飾されたウイルスは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルスなどを起源とし、それらの機能に基づいて、集合的に「腫瘍溶解性ウイルス」と呼ばれている。幾つかの野生型ウイルスもまた、腫瘍細胞において選択的に複製し、それらを溶解することができることが、発見されている。
【0003】
中国において販売が承認されている腫瘍溶解性ウイルス注射薬であるH101の成分は、腫瘍細胞において優先的に複製することができる遺伝子修飾されたアデノウイルス5型である。H101については、E1B 55KD遺伝子およびE3領域を、主として、ヒトアデノウイルス5型から欠失させており、これによって、H101は、腫瘍細胞において選択的に複製し、最終的にそれを溶解する能力を達成している。その作用機序の1つは、p53遺伝子によるアデノウイルスのクリアランスが阻害されるように、野生型アデノウイルスのE1B領域においてコードされる55KDタンパク質を、p53タンパク質と組み合わせることができることである。腫瘍溶解性ウイルスは、E1B-55KDタンパク質を発現することができないため、機能性p53遺伝子を有する細胞においては複製することができない。しかしながら、p53遺伝子の阻害性機能を有さないp53遺伝子変異を有する腫瘍細胞では、このウイルスは、大規模に複製することができる。加えて、E3領域の欠失により、ウイルスが、免疫系(たとえば、NK細胞)によって認識され、排除されることが可能となり、これにより、臨床適用に関するウイルスの安全性が増加する。p53遺伝子の変異だけでなく、p53経路における任意の欠損もまた、H101の選択的な複製を促進することができるというのが、現在の見解である。腫瘍内投与によって、H101は、腫瘍細胞において大規模に複製し、最終的に腫瘍細胞の溶解および死滅を引き起こすことができる。
【0004】
米国においてFDAによって販売が承認されている腫瘍溶解性ウイルスであるT-Vecの成分は、遺伝子修飾された単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)である。ICP34.5遺伝子およびICP47遺伝子を、T-Vecから欠失させており、一方で、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、すなわち、ヒト免疫刺激タンパク質の遺伝子が、T-Vecに挿入されているため、このウイルスは、腫瘍細胞において複製し、GM-CSFを発現することができる。黒色腫の病変部に注入された後、このウイルスは、腫瘍細胞を溶解し、それらの破裂を引き起こすことができ、同時に、腫瘍関連抗原およびGM-CSFを放出し、これにより、抗腫瘍免疫応答を促進することができるが、その機序は、Amgen Incによってまだ解明されていない。2015年10月27日、FDAは、初期外科手術後に黒色腫を再発した患者において、切除不能な黒色腫病変部の局所治療に関して、T-Vecを承認した。
【0005】
ワクシニアウイルスは、比較的サイズが大きく、野生型の遺伝子修飾によって得られる腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、有意に増加した選択性で腫瘍細胞において複製することができる。これらの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの幾つかにおいて、腫瘍溶解性ウイルスが正常細胞において複製することも増殖することもできなくなるように、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子を、ウイルスDNAから欠失させた。正常細胞とは異なり、腫瘍細胞は、チミジンキナーゼを合成することができ、それが、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスに、その複製のために提供されるため、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞において大規模に複製することができる。加えて、ある特定の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスにおいて、それらの腫瘍特異的増殖を増加させ、最終的に、腫瘍細胞の溶解および死滅を引き起こすように、血管増殖因子(VGF)遺伝子を欠失させた。さらに、TK遺伝子とVGF遺伝子の両方を、ある特定の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスにおいて欠失させた。これまでのところ、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスで、販売が承認されているものはない。アデノウイルスまたはヘルペスウイルスに基づく腫瘍溶解性ウイルスと比較して、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、静脈内注入によって全身投与して、腫瘍部位に到達させることができるという利点を有する。さらに、ワクシニアウイルスは、大きなゲノムを有し、そのため、その腫瘍殺滅作用の増加を目的とする遺伝子修飾が可能である。
【0006】
しかしながら、腫瘍の単剤療法として使用した場合、腫瘍溶解性ウイルスは、満足できる有効性を示さないことが時々あり;腫瘍溶解性ウイルスを、腫瘍の治療のための化学療法剤と組み合わせた場合、化学療法剤が正常細胞も損傷するため、重大な副作用が生じ得る。
【0007】
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、骨髄において産生される非特異的先天免疫細胞の一種であり、ヒトの身体のほぼすべての器官に存在する。それらは、CD3-/CD56+として一様に特定され、2つのサブタイプ、すなわち、CD16-/CD56brightおよびCD16+/CD56dimに分類することができ、これらは、それぞれ、免疫調節および腫瘍殺滅のインビボ機能を有する。NK細胞は、MHCクラスI抗原決定基を有さないため、宿主の正常細胞に対する免疫応答(GvHD)の危険性がほとんどないかまたはまったくない。インビトロで増殖させたNK細胞は、品質検査の実施が容易であり、細胞を同種間で使用することができるという利点を有する。ヒトの身体におけるNK細胞の数は、T細胞の数よりも少ないが、NK細胞は、応答がより迅速であり、監視役として機能し、がん細胞、特に、転移の源および再発の原因となり得る比較的小さながん病巣を直接的に殺滅することができる。NK細胞はまた、循環器系における腫瘍細胞を殺滅することもできる。NK細胞はまた、ウイルス、たとえば、B型肝炎ウイルスおよび子宮頸がんを引き起こすヘルペスウイルスを阻害することができ、加齢細胞も同様に除去することができる。しかしながら、NK細胞は、がん細胞およびウイルスを非特異的な様式で殺滅するため、がんを治療するのにNK細胞を用いた単剤療法の有効性は、まだ改善の余地がある。現在のところ、NK細胞およびモノクローナル抗体の様々な組合せ療法が開発されており、治療効果を示しているが、そのような組合せ療法の適用は、モノクローナル抗体のオフターゲット作用のために限定されている。
【0008】
したがって、腫瘍および/またはがんの免疫療法において、より有効な治療レジメンおよび薬物の開発が、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
当該技術分野における上述の問題を解決するために、本開示は、治療剤、医薬組成物、キット、腫瘍および/またはがんの治療のための薬物のためのその使用、ならびに腫瘍および/またはがんの治療のための方法を提供する。治療剤、組成物、方法、およびキットは、様々な方法で具現化され得る。
【0010】
ある態様において、(a)第1の薬学的に許容される担体中に腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の医薬組成物と、(b)第2の薬学的に許容される担体中にNK細胞を含む第2の医薬組成物とを含む、治療剤または医薬組成物であって、腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができる、治療剤または医薬組成物が提供される。
【0011】
別の態様において、腫瘍および/またはがんの治療のための薬物の調製のための治療剤または医薬組成物の使用が提供される。
【0012】
さらに別の態様において、腫瘍および/またはがんの治療のための相乗作用を有する組合せ薬物のキットであって、腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の容器と、NK細胞を含む第2の容器と、投与のタイミングおよび経路を示す説明書とを含み、第1の容器が、第2の容器とは別個であり、腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができる、キットが提供される。
【0013】
なおも別の態様において、腫瘍および/またはがんを治療するための方法であって、逐次的な様式で、1)腫瘍溶解性ウイルスを、腫瘍および/またはがん患者に投与する工程であって、腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができる工程と、2)腫瘍溶解性ウイルスの投与の18~72時間後に、NK細胞を、腫瘍および/またはがん患者に投与する工程とを含む方法が提供される。
【0014】
具体的には、本開示は、以下のものを提供する。
【0015】
ある側面において、医薬組成物であって、医薬組成物の活性成分が、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞を含み、腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができる医薬組成物が提供される。好ましくは、医薬組成物の活性成分は、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞からなる。
【0016】
幾つかの例において、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞は、一緒に混合されることなく、医薬組成物中に別々に存在している。
【0017】
ある特定の態様において、医薬組成物は、治療有効用量の腫瘍溶解性ウイルスを含んでいてもよく、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含んでいてもよい。
【0018】
幾つかの態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解能力を有する遺伝子変異型ウイルスおよび腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスから選択される。好ましくは、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、セムリキ森林ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、セネカバレーウイルス、エコーエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびマラバウイルスから選択される。
【0019】
幾つかの態様において、NK細胞は、自家NK細胞および同種NK細胞から選択される。好ましくは、NK細胞は、インビトロで増殖させた自家NK細胞またはインビトロで増殖させた同種NK細胞である。
【0020】
医薬組成物の腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍内注入を介して投与され得るか、または静脈内投与され得、NK細胞は、静脈内投与され得る。
【0021】
ある特定の態様において、医薬組成物の腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルスである。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスのE1領域および/またはE3領域は、遺伝子修飾されている。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスは、Onyx-015、H101、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、CG0070、DNX-2401、OBP-301、ONCOS-102、ColoAd1、VCN-01、および/またはProstAtak(商標)から選択される。
【0022】
ある特定の態様において、医薬組成物の活性成分は、5×107~5×1012VP/日の範囲の用量の腫瘍溶解性アデノウイルス、および1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含む。好ましくは、医薬組成物の活性成分は、5×107~5×1012VP/日の範囲の用量の腫瘍溶解性アデノウイルス、および1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量のNK細胞からなる。
【0023】
ある特定の態様において、医薬組成物の活性成分は、腫瘍溶解性ウイルスH101、および1×109~3×109細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含む。好ましくは、医薬組成物の活性成分は、腫瘍溶解性ウイルスH101、および1×109~3×109細胞/日の範囲の用量のNK細胞からなる。
【0024】
別の側面において、腫瘍および/またはがんの治療のための薬物の調製のための医薬組成物の使用が提供される。
【0025】
腫瘍および/またはがんには、肺がん、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病が含まれ得る。
【0026】
治療剤もまた、提供される。ある態様において、治療剤は、(a)第1の薬学的に許容される担体中に腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の医薬組成物と、(b)第2の薬学的に許容される担体中にNK細胞を含む第2の医薬組成物とを含んでいてもよく、ここで、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞において選択的に複製することができる。
【0027】
第1の薬学的に許容される担体は、第2の薬学的に許容される担体と同じであるか、またはそれとは異なるかのいずれかであり得る。
【0028】
幾つかの態様において、第1の医薬組成物および第2の医薬組成物は、一緒に混合されることなく、治療剤中に別々に存在する。ある態様において、第1の医薬組成物の活性成分は、腫瘍溶解性ウイルスであり、第2の医薬組成物の活性成分は、NK細胞である。
【0029】
様々な用量レベルが、適宜適用され得る。ある特定の態様において、第1の医薬組成物は、治療有効用量の腫瘍溶解性ウイルスを含み、第2の医薬組成物は、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含む。
【0030】
様々な腫瘍溶解性ウイルスが、適宜適用され得る。ある特定の態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解能力を有する遺伝子変異型ウイルスおよび腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスから選択される。たとえば、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、セムリキ森林ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、セネカバレーウイルス、エコーエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびマラバウイルスから選択され得る。
【0031】
様々なNK細胞が、適宜適用され得る。ある特定の態様において、NK細胞は、自家NK細胞および同種NK細胞から選択される。好ましくは、NK細胞は、インビトロで増殖させた自家NK細胞またはインビトロで増殖させた同種NK細胞である。
【0032】
様々な投与経路が、適宜適用され得る。たとえば、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍内注入を介して投与されるかまたは静脈内投与されるように製剤化され、NK細胞は、静脈内投与されるように製剤化される。
【0033】
治療剤の特定の態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルスである。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスのE1領域および/またはE3領域は、遺伝子修飾されている。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスは、Onyx-015、H101、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、CG0070、DNX-2401、OBP-301、ONCOS-102、ColoAd1、VCN-01、および/またはProstAtak(商標)から選択される。
【0034】
治療剤の特定の態様において、第1の医薬組成物の活性成分は、5×107~5×1012VP/日の範囲の用量の腫瘍溶解性アデノウイルスを含み、第2の医薬組成物の活性成分は、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含む。他の特定の態様において、第1の医薬組成物の活性成分は、5×107~5×1012VP/日の範囲の用量の腫瘍溶解性アデノウイルスからなり、第2の医薬組成物の活性成分は、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量のNK細胞からなる。他の特定の態様において、治療剤は、第1の医薬組成物および第2の医薬組成物からなる。
【0035】
幾つかの態様において、治療剤は、腫瘍および/またはがんの治療のための薬物を調製するために使用され得る。腫瘍および/またはがんには、肺がん、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
本開示はまた、腫瘍および/またはがんの治療のための相乗作用を有する組合せ薬物のキットも提供する。ある特定の態様において、キットには、それぞれが腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞を含む独立した容器、ならびに投与のタイミングおよび経路を示す説明書が含まれ、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞において選択的に複製することができる。
【0037】
キットの幾つかの態様において、腫瘍溶解性ウイルスを含む独立した容器(第1の容器)は、治療有効用量の腫瘍溶解性ウイルスを含み、NK細胞を含む独立した容器(第2の容器)は、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含む。
【0038】
幾つかの態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解能力を有する遺伝子変異型ウイルスおよび腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスから選択される。好ましくは、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、セムリキ森林ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、セネカバレーウイルス、エコーエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびマラバウイルスから選択される。
【0039】
キットに含まれるNK細胞は、自家NK細胞および同種NK細胞から選択され得る。好ましくは、NK細胞は、インビトロで増殖させた自家NK細胞またはインビトロで増殖させた同種NK細胞である。
【0040】
腫瘍および/またはがんには、肺がん、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病が含まれ得る。
【0041】
幾つかの態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍内注入を介して投与されるかまたは静脈内投与されるように製剤化され、NK細胞は、静脈内投与されるように製剤化される。
【0042】
特定の態様において、キットに含まれる腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルスである。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスのE1領域および/またはE3領域は、遺伝子修飾されている。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスは、Onyx-015、H101、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、CG0070、DNX-2401、OBP-301、ONCOS-102、ColoAd1、VCN-01、および/またはProstAtak(商標)から選択される。
【0043】
特定の態様において、第1の容器は、5×107~5×1012VP/日の範囲の用量の腫瘍溶解性アデノウイルスを含み、第2の容器は、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含む。
【0044】
本開示は、腫瘍および/またはがんを治療するための方法であって、逐次的な様式で、以下の工程:
1)腫瘍溶解性ウイルスを、腫瘍および/またはがん患者に投与する工程であって、腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができる工程と、
2)腫瘍溶解性ウイルスの投与の18~72時間後に、NK細胞を、腫瘍および/またはがん患者に投与する工程と
を含む方法をさらに提供する。
【0045】
幾つかの態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解能力を有する遺伝子変異型ウイルスおよび腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスから選択される。好ましくは、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、セムリキ森林ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、セネカバレーウイルス、エコーエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびマラバウイルスから選択される。
【0046】
幾つかの態様において、NK細胞は、自家NK細胞および同種NK細胞から選択される。好ましくは、NK細胞は、インビトロで増殖させた自家NK細胞またはインビトロで増殖させた同種NK細胞である。
【0047】
幾つかの態様において、腫瘍および/またはがんには、肺がん、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病が含まれる。
【0048】
ある特定の態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、治療有効用量で、1日1回、1~6日間連続で投与され、NK細胞は、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量レベルで、1日1回、1~6日間連続で投与される。あるいは、腫瘍溶解性ウイルスは、治療有効用量で、1日おきに、2~6日間連続で投与され、NK細胞は、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量レベルで、1日おきに、2~6日間連続で投与される。
【0049】
様々な投与経路が、適宜適用され得る。幾つかの態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍内注入を介して投与されるかまたは静脈内投与され、NK細胞は、静脈内投与される。
【0050】
本方法の特定の態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルスである。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスのE1領域および/またはE3領域は、遺伝子修飾されている。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスは、Onyx-015、H101、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、CG0070、DNX-2401、OBP-301、ONCOS-102、ColoAd1、VCN-01、および/またはProstAtak(商標)から選択される。
【0051】
本方法の特定の態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルスであり、その投薬量は、5×107~5×1012VP/日の範囲に及ぶ。
【0052】
他の態様を、以下に記載する。
【0053】
本開示は、先行技術と比較して、以下の利点および優れた作用を有する。
【0054】
本開示により、腫瘍および/またはがんの治療のために腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞を組み合わせるという考えが初めて提供され、この考えに基づく医薬組成物およびその方法により、腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞における選択的な複製およびこれらの腫瘍細胞の溶解、ならびに免疫応答のさらなる誘導という役割を完全に果たすことが可能となり;一方で、NK細胞が、腫瘍細胞の殺滅という役割を完全に果たすことが可能となり;また、腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞において選択的に複製することができるという利点を巧妙に利用し、それによって、腫瘍溶解性ウイルスに感染した腫瘍細胞が、NK細胞の特異的な標的となり、これによって、NK細胞の腫瘍殺滅機能がさらに改善される。本開示により、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞の単純な組合せが、相乗作用をもたらし得ることが、発見された。加えて、腫瘍溶解性ウイルスとNK細胞の両方とも、腫瘍細胞を認識することができ、基本的には正常細胞に対して有害とならないため、これらの2つの組合せは、安全性および有効性の点で、有意な利点を示すことができる。
【0055】
さらに、理論の探求および実験的研究が、本開示に従って実行され、腫瘍および/またはがんの有効な治療を提供するため、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞のそれぞれの用量レベル、それらの投与順序、ならびに投与間隔が、アンタゴニスト作用を回避しながら組合せ療法で最良の相乗作用を達成するように提供された。
【定義】
【0056】
ここで使用されるとき、「腫瘍」、「がん」、「腫瘍細胞」、および「がん細胞」という用語は、当該技術分野において一般に認識されている意味を包含する。
【0057】
ここで使用されるとき、「腫瘍溶解性ウイルス」という用語は、腫瘍細胞において選択的に複製し、腫瘍細胞を溶解することができる、ウイルスを指す。腫瘍溶解性ウイルスは、遺伝子修飾型ウイルスであってもよく、または野生型ウイルスであってもよい。
【0058】
ここで使用されるとき、「治療有効用量」という用語は、検出可能な治療的もしくは阻害的作用を示すか、または抗腫瘍応答を誘起するのに有用な、機能性薬剤または医薬組成物の量を指す。作用は、当該技術分野において公知の任意のアッセイ方法によって検出することができる。たとえば、治療有効用量のうちのいくつかを、表1において、「臨床実践における用量範囲または最良の用量レベル」という見出しの列に列挙する。
【0059】
ここで使用されるとき、「投与する」または「投与」という用語は、化合物、複合物、または組成物(ウイルスおよび細胞を含む)を対象に提供することを指す。
【0060】
ここで使用されるとき、「患者」という用語は、ヒトまたは非ヒト生物を指す。したがって、ここに記載される方法および組成物は、ヒトと獣医学の両方の疾患に適用可能である。ある特定の態様において、患者は、腫瘍を有する。幾つかの事例において、患者は、1種以上のがんを同時に患っている場合がある。
【0061】
ここで使用されるとき、「相乗作用」という用語は、2つ以上の薬剤間で生じる、それぞれの作用の合計を上回る作用をもたらす作用を指す。
【0062】
ここで使用されるとき、「pfu」または「プラーク形成単位」という用語は、プラークを形成するウイルスの数を指す。
【0063】
ここで使用されるとき、「VP」という用語は、ウイルス粒子の数を指す。
【0064】
ここで使用されるとき、「VP/kg」という用語は、患者の体重1キログラム当たりのウイルス粒子の数を指す。
【0065】
ここで使用されるとき、「TCID50」という用語は、組織培養物感染用量の中央値を表し、組織培養物の50%に感染をもたらし、細胞変性作用を引き起こす、ウイルス用量を指す。
【0066】
ここで使用されるとき、「MOI」または「感染多重度」という用語は、ウイルスの数と細胞の数との比、すなわち、ウイルス感染を開始するのに使用される、細胞当たりのウイルス粒子の数を指す。MOI=pfu/細胞であり、すなわち、細胞の数×MOI=総PFUである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】
図1は、本開示による実験例A1におけるA549細胞に対するNK細胞の用量応答実験の結果を示す。
【
図2】
図2は、本開示による実験例A2におけるA549細胞に対する腫瘍溶解性ウイルスH101の用量応答実験の結果を示す。
【
図3】
図3は、本開示による例A4におけるH101およびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果を示す。
【
図4】
図4は、本開示による比較例A5におけるH101およびNK細胞の組合せ同時投与の結果を示す。
【
図5】
図5は、本開示による例A4におけるH101およびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果と、比較例A5におけるH101およびNK細胞の組合せ同時投与の結果との比較を示す。
【
図6】
図6は、本開示による比較例A6におけるH101およびNK細胞の順序逆転様式での組合せ投与の結果を示す。
【
図7】
図7は、本開示による比較例A7におけるH101およびNK細胞の組合せ投与の正常細胞に対する殺滅作用を示す。
【
図8】
図8は、本開示による例A8における組合せ投与の用量漸増研究の結果を示す。四角形が連なった曲線は、H101を最初に投与し、NK細胞を後から投与した場合のA549細胞に対する殺滅作用を表し、三角形が連なった曲線は、H101およびNK細胞を同時に投与した場合のA549細胞に対する殺滅作用を表し、円形が連なった曲線は、NK細胞を最初に投与し、H101を後から投与した場合のA549細胞に対する殺滅作用を表す。
【
図9】
図9は、本開示による実験例B1におけるHepG2細胞に対するNK細胞の用量応答実験の結果を示す。
【
図10】
図10は、本開示による実験例B2におけるHepG2細胞に対するH101の用量応答実験の結果を示す。
【
図11】
図11は、本開示による例B3におけるH101およびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果を示す。
【
図12】
図12は、本開示による比較例B4におけるH101およびNK細胞の組合せ同時投与の結果を示す。
【
図13】
図13は、本開示による例B3におけるH101およびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果と、比較例B4におけるH101およびNK細胞の組合せ同時投与の結果との比較を示す。
【
図14】
図14は、本開示による比較例B5におけるH101およびNK細胞の順序逆転様式での組合せ投与の結果を示す。
【
図15】
図15は、本開示による例B6における組合せ投与の用量漸増研究の結果を示す。四角形が連なった曲線は、H101を最初に投与し、NK細胞を後から投与した場合のHepG2細胞に対する殺滅作用を表し、三角形が連なった曲線は、H101およびNK細胞を同時に投与した場合のHepG2細胞に対する殺滅作用を表し、円形が連なった曲線は、NK細胞を最初に投与し、H101を後から投与した場合のHepG2細胞に対する殺滅作用を表す。
【
図16】
図16は、本開示による実験例C1におけるHT29細胞に対するNK細胞の用量応答実験の結果を示す。
【
図17】
図17は、本開示による実験例C2におけるHT29細胞に対するH101の用量応答実験の結果を示す。
【
図18】
図18は、本開示による例C3における24時間間隔で投与したH101およびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果を示す。
【
図19】
図19は、本開示による比較例C5におけるH101およびNK細胞の組合せ同時投与の結果を示す。
【
図20】
図20は、本開示による例C3におけるH101およびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果と、比較例C5におけるH101およびNK細胞の組合せ同時投与の結果との比較を示す。
【
図21】
図21は、本開示による比較例C7における24時間間隔でのH101およびNK細胞の順序逆転様式での組合せ投与の結果を示す。
【
図22】
図22は、本開示による例C9における組合せ投与の用量漸増研究の結果を示す。四角形が連なった曲線は、H101を最初に投与し、NK細胞を後から投与した場合のHT29細胞に対する殺滅作用を表し、三角形が連なった曲線は、H101およびNK細胞を同時に投与した場合のHT29細胞に対する殺滅作用を表し、円形が連なった曲線は、NK細胞を最初に投与し、H101を後から投与した場合のHT29細胞に対する殺滅作用を表す。
【
図23】
図23は、本開示による例C4における48時間間隔で投与したH101およびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果を示す。
【
図24】
図24は、本開示による比較例C6におけるH101およびNK細胞の組合せ同時投与の結果を示す。
【
図25】
図25は、本開示による例C4におけるH101およびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果と、比較例C6におけるH101およびNK細胞の組合せ同時投与の結果との比較を示す。
【
図26】
図26は、本開示による比較例C8における48時間間隔でのH101およびNK細胞の順序逆転様式での組合せ投与の結果を示す。
【
図27】
図27は、本開示による例C10における組合せ投与の用量漸増研究の結果を示す。四角形が連なった曲線は、H101を最初に投与し、NK細胞を後から投与した場合のHT29細胞に対する殺滅作用を表し、三角形が連なった曲線は、H101およびNK細胞を同時に投与した場合のHT29細胞に対する殺滅作用を表し、円形が連なった曲線は、NK細胞を最初に投与し、H101を後から投与した場合のHT29細胞に対する殺滅作用を表す。
【
図28】
図28は、本開示による実験例C11における、HT29細胞をH101に感染させ24時間培養した後の細胞表面上のNKG2Dリガンドの変化の結果を示す。
【
図29】
図29は、本開示による実験例C12における、HT29細胞をH101に感染させ48時間培養した後の細胞表面上のNKG2Dリガンドの変化の結果を示す。
【
図30】
図30は、本開示による実験例D1におけるA549細胞に対するNK細胞の用量応答実験の結果を示す。
【
図31】
図31は、本開示による実験例D2におけるA549細胞に対するddvv-RFPの用量応答実験の結果を示す。
【
図32】
図32は、本開示による例D3におけるddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果を示す。
【
図33】
図33は、本開示による比較例D4におけるddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ同時投与の結果を示す。
【
図34】
図34は、本開示による比較例D5におけるddvv-RFPおよびNK細胞の順序逆転様式での組合せ投与の結果を示す。
【
図35】
図35は、本開示による実験例E1におけるHepG2細胞に対するddvv-RFPの用量応答実験の結果を示す。
【
図36】
図36は、本開示による例E2における24時間間隔で投与したddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果を示す。
【
図37】
図37は、本開示による比較例E4におけるddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ同時投与の結果を示す。
【
図38】
図38は、本開示による比較例E6における24時間間隔でのddvv-RFPおよびNK細胞の順序逆転様式での組合せ投与の結果を示す。
【
図39】
図39は、本開示による例E3における48時間間隔で投与したddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果を示す。
【
図40】
図40は、本開示による比較例E5におけるddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ同時投与の結果を示す。
【
図41】
図41は、本開示による比較例E7における48時間間隔でのddvv-RFPおよびNK細胞の順序逆転様式での組合せ投与の結果を示す。
【
図42】
図42は、本開示による実験例F1におけるHT29細胞に対するddvv-RFPの用量応答実験の結果を示す。
【
図43】
図43は、本開示による例F2における24時間間隔で投与したddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果を示す。
【
図44】
図44は、本開示による比較例F4におけるddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ同時投与の結果を示す。
【
図45】
図45は、本開示による比較例F6における24時間間隔でのddvv-RFPおよびNK細胞の順序逆転様式での組合せ投与の結果を示す。
【
図46】
図46は、本開示による例F3における48時間間隔で投与したddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果を示す。
【
図47】
図47は、本開示による比較例F5におけるddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ同時投与の結果を示す。
【
図48】
図48は、本開示による比較例F7における48時間間隔でのddvv-RFPおよびNK細胞の順序逆転様式での組合せ投与の結果を示す。
【
図49】
図49は、本開示による実験例G1におけるHCT116細胞に対するNK細胞の組合せ投与の用量応答実験の結果を示す。
【
図50】
図50は、本開示による実験例G2におけるHCT116細胞に対するddvv-RFPの用量応答実験の結果を示す。
【
図51】
図51は、本開示による例G3におけるddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果を示す。
【
図52】
図52は、本開示による比較例G4におけるddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ同時投与の結果を示す。
【
図53】
図53は、本開示による比較例G5におけるddvv-RFPおよびNK細胞の順序逆転様式での組合せ投与の結果を示す。
【
図54】
図54は、本開示による実験例H1におけるFaDu細胞に対するNK細胞の用量応答実験の結果を示す。
【
図55】
図55は、本開示による実験例H2におけるFaDu細胞に対するddvv-RFPの用量応答実験の結果を示す。
【
図56】
図56は、本開示による例H3におけるddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果を示す。
【
図57】
図57は、本開示による比較例H4におけるddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ同時投与の結果を示す。
【
図58】
図58は、本開示による比較例H5におけるddvv-RFPおよびNK細胞の順序逆転様式での組合せ投与の結果を示す。
【
図59】
図59は、本開示による実験例I1におけるSK-HEP-1に対するNK細胞の用量応答実験の結果を示す。
【
図60】
図60は、本開示による実験例I2におけるSK-HEP-1細胞に対するddvv-RFPの用量応答実験の結果を示す。
【
図61】
図61は、本開示による例I3におけるddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果を示す。
【
図62】
図62は、本開示による比較例I4におけるddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ同時投与の結果を示す。
【
図63】
図63は、本開示による比較例I5におけるddvv-RFPおよびNK細胞の順序逆転様式での組合せ投与の結果を示す。
【
図64】
図64は、本開示による実験例J1におけるPANC-1細胞に対するNK細胞の用量応答実験の結果を示す。
【
図65】
図65は、本開示による実験例J2におけるPANC-1細胞に対するddvv-RFPの用量応答実験の結果を示す。
【
図66】
図66は、本開示による例J3における48時間間隔で投与したddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ殺滅実験の結果を示す。
【
図67】
図67は、本開示による比較例J4におけるddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ同時投与の結果を示す。
【
図68】
図68は、本開示による比較例J5における48時間間隔でのddvv-RFPおよびNK細胞の順序逆転様式での組合せ投与の結果を示す。
【詳細な説明】
【0068】
本開示は、添付の図面を参照して、以下の好ましい態様の詳細な説明によりさらに説明されるが、これは、限定的な意味と解釈されるものではなく、様々な修正または改善が本開示の趣旨から逸脱することなく適宜行われ得ること、したがってそれらが本開示の範囲内であることが当業者に明らかであろう。
【0069】
ヒトの身体は、呼吸器系、循環器系、消化器系などを含めた10個の系を含む複雑な生命体である。これらの系は、互いに調和し、それによってあらゆる種類の複雑な生命活動の正常な機能が可能となる。体系的思考は、統合した概念に基づき、薬物作用、疾患、系、およびヒト身体の間の相関性および相互作用を包括的に考慮するようなアプローチである。
【0070】
現在のところ、多くの非細胞傷害性抗腫瘍薬物は、化学療法と組み合わせた場合、腫瘍患者における長期生存を改善するものではない。これは、これらの組合せ療法における体系的思考の欠如に起因し得る。たとえば、腫瘍が発生すると、ヒトの身体は、細胞媒介性免疫および体液性免疫を含み、かつ様々な免疫エフェクター分子およびエフェクター細胞が関与する、複数の緊密に相関した免疫作用または機序を介して抗腫瘍応答を生じる。細胞媒介性免疫が、抗腫瘍プロセスにおいて主要な役割を果たし、体液性免疫が、幾つかの条件下において、より二次的な役割を果たすと一般に考えられている。しかしながら、従来的な化学療法は、主として、細胞周期のある特定の段階、たとえば、RNAまたはDNAの合成、および有糸分裂を妨害し、そのため、主に成長の速い細胞を標的としている。結果として、これらの化学療法は、腫瘍細胞を殺滅することができるが、免疫系の損傷も引き起こすこともでき;免疫系が弱くなると、腫瘍細胞の成長は、止めることができなくなる。したがって、標的化された非細胞傷害性抗腫瘍薬物を、化学療法または放射線療法と組み合わせる場合、化学療法または放射線療法の順序および投薬量は、免疫系を保護するために、適切にスケジューリングおよび決定を行わなければならず、これが、有効性を向上させる鍵である。
【0071】
上述の体系的思考に基づくと、免疫機能を向上させるために他のアプローチを利用し、本開示に従って様々な療法を体系的に組み合わせることによって、免疫系への損傷を最小限に抑えながら、有効性を最大限に引き出すことが可能である。したがって、本開示は、腫瘍および/またはがんの治療のための、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞を含む新規な組合せ療法を提供する。特に、本開示に従って腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞を組み合わせるだけで、相乗作用が達成され得る。
【0072】
したがって、本開示は、(a)第1の薬学的に許容される担体中に腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の医薬組成物と、(b)第2の薬学的に許容される担体中にNK細胞を含む第2の医薬組成物とを含む治療剤であって、腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができる治療剤を提供する。
【0073】
幾つかの事例において、治療剤は、薬物の組合せとして解釈することができる。
【0074】
幾つかの態様において、第1の医薬組成物の活性成分は、腫瘍溶解性ウイルスであり、第2の医薬組成物の活性成分は、NK細胞である。幾つかの態様において、第1の医薬組成物は、治療有効用量の腫瘍溶解性ウイルスを含み、第2の医薬組成物は、1×107~1×1010細胞/日(好ましくは1×108~5×109細胞/日、より好ましくは1×109~4×109細胞/日、およびさらにより好ましくは1×109~3×109細胞/日)の範囲の用量のNK細胞を含む。
【0075】
本開示はまた、医薬組成物であって、医薬組成物の活性成分が、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞を含み、腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができる、医薬組成物を提供する。好ましくは、医薬組成物の活性成分は、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞からなる。
【0076】
好ましくは、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞は、一緒に混合されることなく、医薬組成物中に別々に提供される。
【0077】
腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞を殺滅させる機序は、一般に類似している。様々な態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍内注入を介して投与されるかまたは静脈内投与され、腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞と接触すると、ウイルスが腫瘍細胞に感染し、腫瘍細胞に進入する。腫瘍溶解性ウイルスは、主に、腫瘍細胞において複製および繁殖し、正常細胞における複製はほとんどないかまったくないため、大量の腫瘍溶解性子孫ウイルスを、感染した腫瘍細胞において産生することができ、腫瘍細胞の溶解および死滅をもたらし得る。腫瘍細胞が溶解すると、多数の主要関連抗原および腫瘍溶解性子孫ウイルスを放出することができ、次いで、抗原が、インビボで免疫系をさらに活性化することができ、インビボでNK細胞およびT細胞を刺激して、残りの腫瘍細胞の攻撃を継続することができる。その一方で、腫瘍溶解性子孫ウイルスが、まだ感染していない腫瘍細胞に感染することができる。
【0078】
NK細胞は、広範な腫瘍細胞を殺滅させることができる免疫細胞であり、NK細胞は、腫瘍細胞と正常細胞とを区別することができる。NK細胞が、腫瘍細胞と接触すると、NK細胞は、腫瘍細胞を異常な細胞として認識し、複数の補助プロセス、たとえば、受容体認識、抗体による標的認識(ADCC)、ならびに腫瘍細胞を間接的に殺滅することができるグランザイム、パーフォリン、およびインターフェロンの放出を通じて、腫瘍細胞を殺滅させる。インビトロでの研究により、健常なNK細胞は、その寿命の間に、最大で27の腫瘍細胞を殺滅させることができる。
【0079】
NK細胞はまた、抗ウイルス機能も有する。正常細胞が、ウイルスに感染すると、ウイルスは、大規模に複製され、感染した細胞が老齢となり、その細胞膜におけるタンパク質クラスターの組成の変化を示す。このプロセスの間に、NK細胞は、感染した細胞を高感度かつ効果的に認識することができ、正常細胞におけるウイルスの複製および増殖を阻害するために、上述のように腫瘍細胞を殺滅させるのに使用するものと同様のアプローチを用いてこれらの細胞を殺滅させることができる。その後は、抗原の活性化およびインターフェロンなどの免疫因子の関与により、他の種類の免疫細胞が、ウイルスとの争いを継続することになる。
【0080】
本開示においては、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞の個々の特徴を考慮に入れ、それにより、これらをうまく組み合わせることができる。一緒に組み合わせる場合、NK細胞の抗ウイルス機序は、腫瘍溶解性ウイルスに感染した腫瘍細胞にも適用可能であり、これは、NK細胞の抗腫瘍機序を補足する。加えて、組合せ療法により、腫瘍溶解性ウイルスが感染した腫瘍細胞が、NK細胞の特異的な標的となることが可能となり、これにより、それらの腫瘍殺滅作用が向上し得る。腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞において選択的に複製し、がん細胞を内側から殺滅させるだけでなく、NK細胞ががん細胞を外側から攻撃することができるように、細胞膜のタンパク質受容体クラスターの変化を引き起こし、それによって、NK細胞によるがん細胞の認識を促進することもできる。したがって、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞は、がん細胞を相乗的に殺滅させ、有効性の向上を達成する。
【0081】
野生型ウイルスおよびNK細胞は、互いに阻害し得る。一方では、ウイルスが、NK細胞の表面上のKIR受容体の活性化を通じてNK細胞を不活性化し、NK細胞の抗ウイルス活性を回避し;他方では、NK細胞は、ウイルスの増殖を阻害できるように、ウイルスに感染した細胞を認識し、その細胞を殺滅させることができるだけでなく、インターフェロンの放出を介してウイルスを直接的に阻害することもできる。しかしながら、ほとんどの腫瘍溶解性ウイルスは、遺伝子修飾されているため、腫瘍特異性が改善されており、また、腫瘍溶解性ウイルスによるNK細胞などの免疫細胞の阻害は、弱まっている。
【0082】
本開示における腫瘍溶解性ウイルスには、腫瘍溶解能力を有する遺伝子変異型ウイルスおよび腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスが含まれる。腫瘍溶解能力を獲得するように遺伝子を変異させることができるウイルスとしては、アデノウイルス、ポックスウイルス(ワクシニアウイルスとしても知られている)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、麻疹ウイルス、セムリキ森林ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、およびレトロウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスとしては、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、セネカバレーウイルス、エコーエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびマラバウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
外因性遺伝子が、腫瘍溶解性ウイルスのゲノムに組み込まれていてもよい。外因性遺伝子の例としては、外因性免疫調節遺伝子、外因性スクリーニング遺伝子、外因性レポーター遺伝子などが挙げられる。外因性遺伝子は、腫瘍溶解性ウイルスのゲノムに組み込まれていなくてもよい。
【0084】
アデノウイルスとしては、ヒトアデノウイルス5型またはヒトキメラアデノウイルスが挙げられるがこれらに限定されず、具体的には、たとえば、例として、Onyx-015(Onyx Pharmaceuticalsから入手可能)、H101(Shanghai Sunway Biotech Companyから入手可能)、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12(Henry Ford Health Systemから入手可能)、CG0070(Cold Genesysから入手可能)、DNX-2401(DNAtrixから入手可能)、OBP-301(Oncolys BioPharmaから入手可能)、ONCOS-102(Targovax Oy/Oncos Therapeuticsから入手可能)、ColoAd1(PsiOxus Therapeuticsから入手可能)、VCN-01(VCN Biosciencesから入手可能)、ProstAtak(商標)(Advantageneから入手可能)などが挙げられる。
【0085】
好ましくは、アデノウイルスは、H101である。
【0086】
ワクシニアウイルスは、Wyeth株、WR株、Listeria株、Copenhagen株などであり得る。
【0087】
ワクシニアウイルスは、TK遺伝子が機能的に欠損していてもよく、VGF遺伝子が機能的に欠損していてもよく、またはTK遺伝子およびVGF遺伝子が機能的に欠損していてもよい。ワクシニアウイルスはまた、HA、F14.5L、およびF4Lを含むがこれらに限定されない他の遺伝子が機能的に欠損していてもよい。
【0088】
好ましくは、ワクシニアウイルスは、TK遺伝子およびVGF遺伝子が機能的に欠損している。
【0089】
ワクシニアウイルスとしては、Pexa-vac(Jennerex Biotherapeuticsから入手可能)、JX-963(Jennerex Biotherapeuticsから入手可能)、JX-929(Jennerex Biotherapeuticsから入手可能)、VSC20(その調製方法については、「McCart, JA, et al. Systemic cancer therapy with a tumor-selective vaccinia virus mutant lacking thymidine kinase and vaccinia growth factor genes. Cancer Res (2001) 61: 8751-8757」を参照されたい)、GL-ONC1(Geneluxから入手可能)、TG6002(Transgeneから入手可能)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
単純ヘルペスウイルスとしては、HSV-1、HSV-2が挙げられるがこれらに限定されず、具体的には、たとえば、例として、Imlygic(登録商標)(Amgenから入手可能)、G207(Medigeneから入手可能)、HF10(Takara Bioから入手可能)、Seprehvir(Virttu Biologicsから入手可能)、OrienX010(Beijing OrienGene Biotechnology Ltd.から入手可能)、NV1020(Catheraxから入手可能)などが挙げられる。
【0091】
上述の腫瘍溶解性ウイルスの具体的な例を、以下の表1に列挙する。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
本開示におけるNK細胞には、自家NK細胞および同種NK細胞が含まれる。NK細胞は、インビトロで増殖させたNK細胞であってもよい。NK細胞の大規模なインビトロ増殖の技術は、当該技術分野において公知であり、高度に発達している(たとえば、「Somanchi SS, Lee DA. Ex Vivo Expansion of Human NK Cells Using K562 Engineered to Express Membrane Bound IL21. Methods Mol Biol. 2016; 1441:175-93」または「Phan MT, Lee SH, Kim SK, Cho D. Expansion of NK Cells Using Genetically Engineered K562 Feeder Cells. Methods Mol Biol. 2016; 1441:167-74」を参照されたい)。自家NK細胞、半同種NK細胞(同種NK細胞に属する)、または臍帯血由来NK細胞を、ヒトの身体に注入した場合、毒性も長期依存性も観察されておらず、治療が安全かつ効果的であることが、臨床データにより示されている。
【0097】
治療に有用なNK細胞の純度は、自家NK細胞については85%以上であり得、同種NK細胞については90%以上であり得、そこに混入している細胞は、NK-T細胞および/またはγδ T細胞であり得る。好ましくは、NK細胞の活性(生存率)は、90%以上であり、NK細胞の殺滅活性は、80%以上である。
【0098】
本開示における組合せ戦略に基づいて、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞のそれぞれの用量レベル、その投与の順序、ならびに投与間の間隔に関して、さらなる探求および改善がなされるが、これは、腫瘍溶解性ウイルスの抗腫瘍有効性、NK細胞の抗腫瘍有効性、およびこれらの2つの組合せの腫瘍細胞に対する最良の相乗殺滅作用を判定するために必須である。
【0099】
したがって、好ましくは、医薬組成物または治療剤は、治療有効用量の腫瘍溶解性ウイルスを含み、1×107~1×1010細胞/日(好ましくは1×108~5×109細胞/日、より好ましくは1×109~4×109細胞/日、およびさらにより好ましくは1×109~3×109細胞/日)の範囲の用量のNK細胞を含む。様々な腫瘍溶解性ウイルスについて、臨床適用に好適な様々な好ましい用量範囲、たとえば、表1に列挙されるものが、選択され得る。
【0100】
腫瘍溶解性ウイルスは、それぞれ、当該技術分野において広く使用されている様々な経路を通じて投与することができ、たとえば、それらは、腫瘍内注入を介して投与され得るか、または静脈内投与され得る。
【0101】
NK細胞は、当該技術分野において広く使用されている様々な経路を通じて投与することができ、たとえば、それらは、静脈内投与され得る。
【0102】
特定の態様において、本開示による医薬組成物または治療剤における腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解能力を有するアデノウイルスである(これ以降、「腫瘍溶解性アデノウイルス」とも称される)。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスのE1領域および/またはE3領域は、遺伝子修飾されている。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスは、Onyx-015、H101、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、CG0070、DNX-2401、OBP-301、ONCOS-102、ColoAd1、VCN-01、および/またはProstAtak(商標)から選択される。
【0103】
ある特定の態様において、本開示による医薬組成物または治療剤の活性成分は、5×107~5×1012VP/日(たとえば、5×107~1.5×1012VP/日、5×108~1×1012VP/日、1×109~5×1011VP/日、3×1010~3×1011VP/日など)の範囲の用量の腫瘍溶解性アデノウイルス、および1×107~1×1010細胞/日(たとえば、1×108~5×109細胞/日、1×109~4×109細胞/日、1×109~3×109細胞/日など)の範囲の用量のNK細胞を含む。好ましくは、医薬組成物または治療剤の活性成分は、5×107~5×1012VP/日(たとえば、5×107~1.5×1012VP/日、5×108~1×1012VP/日、1×109~5×1011VP/日、3×1010~3×1011VP/日など)の範囲の用量の腫瘍溶解性アデノウイルス、および1×107~1×1010細胞/日(たとえば、1×108~5×109細胞/日、1×109~4×109細胞/日、1×109~3×109細胞/日など)の範囲の用量のNK細胞からなる。
【0104】
ある態様において、本開示による医薬組成物または治療剤の活性成分は、5×107~1.5×1012VP/日(たとえば、5×1011~1.5×1012VP/日など)の範囲の用量の腫瘍溶解性ウイルスH101、および1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含む。好ましくは、医薬組成物または治療剤の活性成分は、5×107~1.5×1012VP/日(たとえば、5×1011~1.5×1012VP/日など)の範囲の用量の腫瘍溶解性ウイルスH101、および1×107~1×1010細胞/日(たとえば、1×108~5×109細胞/日、1×109~4×109細胞/日、1×109~3×109細胞/日など)の範囲の用量のNK細胞からなる。
【0105】
特定の態様において、本開示による医薬組成物または治療剤における腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解能力を有するワクシニアウイルスである(これ以降、「腫瘍溶解性ワクシニアウイルス」とも称される)。幾つかの例において、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、腫瘍溶解能力を有する遺伝子変異型ウイルスおよび腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスから選択される。幾つかの例において、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、TK遺伝子および/またはVGF遺伝子が機能的に欠損している。幾つかの例において、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、Pexa-vac、JX-963、JX-929、VSC20、GL-ONC1、および/またはTG6002から選択される。
【0106】
ある特定の態様において、本開示による医薬組成物または治療剤の活性成分は、1×105~5×109pfu/日(たとえば、1×105~3×109pfu/日、1×105~1×108pfu/日など)の範囲の用量の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、および1×107~1×1010細胞/日(たとえば、1×108~5×109細胞/日、1×109~4×109細胞/日、1×109~3×109細胞/日など)の範囲の用量のNK細胞を含む。好ましくは、医薬組成物または治療剤の活性成分は、1×105~5×109pfu/日(たとえば、1×105~3×109pfu/日、1×105~1×108pfu/日など)の範囲の用量の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、および1×107~1×1010細胞/日(たとえば、1×108~5×109細胞/日、1×109~4×109細胞/日、1×109~3×109細胞/日など)の範囲の用量のNK細胞からなる。
【0107】
当業者であれば、本開示による医薬組成物または治療剤が、好適な薬学的賦形剤も含み得ることを理解することができる。
【0108】
本開示による医薬組成物または治療剤はまた、当該技術分野において公知の他の活性成分、たとえば、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)なども含み得る。
【0109】
好ましくは、本開示による医薬組成物または治療剤は、ボルテゾミブを含まない。
【0110】
幾つかの態様において、本開示の医薬組成物または治療剤は、1つ以上の薬学的に許容される担体を含む。医薬製剤は、当該技術分野において公知の手順によって調製することができる。たとえば、化合物などを含む活性成分を、一般的な賦形剤、希釈剤(たとえば、リン酸緩衝液または生理食塩水)、組織培養培地、および担体(たとえば、自家血漿またはヒト血清アルブミン)とともに製剤化し、懸濁液として投与することができる。他の担体としては、リポソーム、ミセル、ナノカプセル、ポリマーナノ粒子、固体脂質粒子を挙げることができる(たとえば、E. Koren and V. Torchilin, Life, 63:586-595, 2011を参照されたい)。ここで開示される医薬組成物または治療剤の製剤化のための技法の詳細は、科学文献および特許文献に十分に記載されており、たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Maack Publishing Co., Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照されたい。
【0111】
幾つかの態様において、本開示は、(a)第1の薬学的に許容される担体中に腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の医薬組成物と、(b)第2の薬学的に許容される担体中にNK細胞を含む第2の医薬組成物とを含む治療剤であって、腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができる治療剤を提供する。幾つかの態様において、第1および第2の薬学的に許容される担体は、同じである。他の態様において、第1および第2の薬学的に許容される担体は、異なる。
【0112】
本開示による医薬組成物または治療剤は、肺がん(たとえば、非小細胞肺がん)、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病などを含むがこれらに限定されない、様々な腫瘍および/またはがんを治療するために使用することができる。
【0113】
本開示の医薬組成物または治療剤の適用方法は、次の通りである:まず、腫瘍溶解性ウイルス(たとえば、腫瘍溶解性アデノウイルス、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、または腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス)を、腫瘍および/またはがんを有する患者に投与し、次いで、腫瘍溶解性ウイルスの投与の18~72時間後(たとえば、20~70時間後、22~48時間後、24~48時間後、30~48時間後など)に、NK細胞を、腫瘍および/またはがん患者に投与する。「腫瘍溶解性ウイルスの投与の18~72時間後(たとえば、20~70時間後、22~48時間後、24~48時間後、30~48時間後など)に、NK細胞を、腫瘍および/またはがん患者に投与する」という語句は、NK細胞の最初の投与と、腫瘍溶解性ウイルスの最初の投与との間の時間間隔が、18~72時間(たとえば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)の範囲であるか、またはNK細胞の最初の投与と、腫瘍溶解性ウイルスの直近の投与との間の時間間隔が、18~72時間(たとえば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)の範囲であることを意味する。好ましくは、NK細胞の最初の投与と、腫瘍溶解性ウイルスの直近の投与との間の時間間隔は、18~72時間(たとえば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)の範囲である。より好ましくは、NK細胞の最初の投与と、腫瘍溶解性ウイルスの直近の投与との間の時間間隔は、24~48時間の範囲である。
【0114】
本開示の好ましい態様において、腫瘍溶解性ウイルス(たとえば、腫瘍溶解性アデノウイルス、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、または腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス)は、治療有効用量で、1日1回、1~6日間連続で投与され、NK細胞は、1×107~1×1010細胞/日(たとえば、1×108~5×109細胞/日、1×109~4×109細胞/日、または1×109~3×109細胞/日)の範囲の用量レベルで、1日1回、1~6日間連続で投与される。本開示の別の好ましい態様において、腫瘍溶解性ウイルス(たとえば、腫瘍溶解性アデノウイルス、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、または腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス)は、治療有効用量で、1日おきに、2~6日間連続で投与され、NK細胞は、1×107~1×1010細胞/日(たとえば、1×108~5×109細胞/日、1×109~4×109細胞/日、または1×109~3×109細胞/日)の範囲の用量レベルで、1日おきに、2~6日間連続で投与される。NK細胞が、腫瘍溶解性ウイルス(たとえば、腫瘍溶解性アデノウイルス、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、または腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス)の投与の18~72時間後に腫瘍および/またはがん患者に投与される限り、上述の態様のうちの任意のもの、または任意の他の代替的な態様を、本開示に従って用いることができる。腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞は、交互に投与してもよく(たとえば、腫瘍溶解性ウイルスを1日目に投与し、NK細胞を2日目に投与し、腫瘍溶解性ウイルスを3日目に投与し、NK細胞を4日目に投与するなど)、または逐次的に投与してもよく(たとえば、腫瘍溶解性ウイルスを1日目に投与し、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞を逐次的な順序で2日目に投与し、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞を逐次的な順序で3日目に投与し、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞を逐次的な順序で4日目に投与するなど)、または他の投薬レジメンを使用して投与してもよい(たとえば、最初に、腫瘍溶解性ウイルスを、1日1回、1~6日間連続で投与し、18~72時間の間隔を空けた後に、NK細胞を、1日1回、1~6日間連続で投与する)。好ましくは、腫瘍溶解性ウイルスを、最初に投与し、NK細胞を、腫瘍溶解性ウイルスのすべての用量の投与が完了した18~72時間後に投与する。本開示の好ましい態様において、まず、腫瘍および/またはがん患者に、腫瘍溶解性ウイルスを投与し、腫瘍溶解性ウイルスは、治療有効用量で1回のみ投与され、腫瘍溶解性ウイルスの投与の18~72時間後に、腫瘍および/またはがん患者に、NK細胞を投与し、NK細胞は、1×107~1×1010細胞/日(たとえば、1×108~5×109細胞/日、1×109~4×109細胞/日、または1×109~3×109細胞/日)の範囲の用量レベルで1回のみ投与される。様々な腫瘍溶解性ウイルスについて、臨床適用に好適な様々な好ましい用量範囲、たとえば、表1に列挙されるものが、選択され得る。
【0115】
腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍またはがん細胞において選択的に複製することができ、その量は、ある特定の期間後に、ピークに達する。本開示の発明者らは、ウイルス複製期間の後に、腫瘍細胞中の腫瘍溶解性ウイルスが、NK細胞の腫瘍細胞に対する殺滅作用を促進し得ることを発見した。したがって、本開示において提案される腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞の投与間の間隔は、それらの機能のピーク値が重なることを可能にし得るものである。
【0116】
本開示はまた、腫瘍および/またはがんの治療のための薬物の調製のための本開示の医薬組成物または治療剤の使用を提供する。
【0117】
腫瘍および/またはがんには、肺がん(たとえば、非小細胞肺がん)、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病などが含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
本開示はまた、腫瘍および/またはがんの治療のための相乗作用を有する組合せ薬物のキットであって、本開示による腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の容器およびNK細胞を含む第2の容器を含み、第1の容器が、第2の容器とは別個である、キットを提供する。キットは、投与のタイミングおよび経路を示す説明書をさらに含み、ここで、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞において選択的に複製することができる。好ましくは、キットは、本開示による腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞をそれぞれ含む独立した容器、ならびに投与のタイミングおよび経路を示す説明書からなる。
【0119】
腫瘍および/またはがんには、肺がん(たとえば、非小細胞肺がん)、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病などが含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
好ましくは、キットに含まれる腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の容器は、治療有効用量の腫瘍溶解性ウイルスを含み、NK細胞を含む第2の容器は、1×107~1×1010細胞/日(たとえば、1×108~5×109細胞/日、1×109~4×109細胞/日、1×109~3×109細胞/日など)の範囲の用量を提供するのに十分な量のNK細胞を含む。様々な腫瘍溶解性ウイルスについて、臨床適用に好適な様々な好ましい用量範囲、たとえば、表1に列挙されるものが、選択され得る。
【0121】
腫瘍溶解性ウイルスは、当該技術分野において広く使用されているそれぞれの経路を通じて投与することができ、たとえば、それらは、腫瘍内注入を介して投与され得るか、または静脈内投与され得る。
【0122】
NK細胞は、当該技術分野において広く使用されている経路を通じて投与することができ、たとえば、それらは、静脈内投与され得る。
【0123】
本開示によるキットの特定の態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解能力を有するアデノウイルスである。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスのE1領域および/またはE3領域は、遺伝子修飾されている。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスは、Onyx-015、H101、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、CG0070、DNX-2401、OBP-301、ONCOS-102、ColoAd1、VCN-01、および/またはProstAtak(商標)から選択される。
【0124】
本開示によるキットの特定の態様において、第1の容器は、5×107~5×1012VP/日(たとえば、5×107~1.5×1012VP/日、5×108~1×1012VP/日、1×109~5×1011VP/日、3×1010~3×1011VP/日など)の範囲の用量の腫瘍溶解性アデノウイルスを含む。
【0125】
ある態様において、第1の容器は、5×107~1.5×1012VP/日(たとえば、5×1011~1.5×1012VP/日など)の範囲の用量の腫瘍溶解性ウイルスH101を含む。
【0126】
本開示によるキットの特定の態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスである。幾つかの例において、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、腫瘍溶解能力を有する遺伝子変異型ウイルスおよび腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスから選択される。幾つかの例において、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、TK遺伝子および/またはVGF遺伝子が機能的に欠損している。幾つかの例において、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、Pexa-vac、JX-963、JX-929、VSC20、GL-ONC1、および/またはTG6002から選択される。
【0127】
本開示によるキットの特定の態様において、第1の容器は、1×105~5×109pfu/日(たとえば、1×105~3×109pfu/日、1×105~1×108pfu/日など)の範囲の用量の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む。
【0128】
本開示はまた、腫瘍および/またはがんの治療のための方法であって、逐次的な様式で、以下の工程:
1)本開示による腫瘍溶解性ウイルスを、腫瘍および/またはがん患者に投与する工程であって、腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができる工程と、
2)腫瘍溶解性ウイルスの投与の18~72時間後(たとえば、20~70時間後、22~48時間後、24~48時間後、30~48時間後など)に、本開示によるNK細胞を、腫瘍および/またはがん患者に投与する工程と
を含む方法を提供する。
【0129】
「腫瘍溶解性ウイルスの投与の18~72時間後(たとえば、20~70時間後、22~48時間後、24~48時間後、30~48時間後など)に、本開示によるNK細胞を、腫瘍および/またはがん患者に投与する」という語句は、NK細胞の最初の投与と、腫瘍溶解性ウイルスの最初の投与との間の時間間隔が、18~72時間(たとえば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)の範囲であるか、またはNK細胞の最初の投与と、腫瘍溶解性ウイルスの直近の投与との間の時間間隔が、18~72時間(たとえば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)の範囲であることを意味する。好ましくは、NK細胞の最初の投与と、腫瘍溶解性ウイルスの直近の投与との間の時間間隔は、18~72時間(たとえば、20~70時間、22~48時間、24~48時間、30~48時間など)の範囲である。より好ましくは、NK細胞の最初の投与と、腫瘍溶解性ウイルスの直近の投与との間の時間間隔は、24~48時間の範囲である。
【0130】
腫瘍および/またはがんには、肺がん(たとえば、非小細胞肺がん)、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病などが含まれるが、これらに限定されない。
【0131】
本開示の好ましい態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、治療有効用量で、1日1回、1~6日間連続で投与され、NK細胞は、1×107~1×1010細胞/日(たとえば、1×108~5×109細胞/日、1×109~4×109細胞/日、または1×109~3×109細胞/日)の範囲の用量レベルで、1日1回、1~6日間連続で投与される。本開示の別の好ましい態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、治療有効用量で、1日おきに、2~6日間連続で投与され、NK細胞は、1×107~1×1010細胞/日(たとえば、1×108~5×109細胞/日、1×109~4×109細胞/日、または1×109~3×109細胞/日)の範囲の用量レベルで、1日おきに、2~6日間連続で投与される。NK細胞が、腫瘍溶解性ウイルスの投与の18~72時間後に腫瘍および/またはがん患者に投与される限り、上述の態様のうちの任意のもの、または任意の他の代替的な態様を、本開示に従って用いることができる。腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞は、交互に投与してもよく(たとえば、腫瘍溶解性ウイルスを1日目に投与し、NK細胞を2日目に投与し、腫瘍溶解性ウイルスを3日目に投与し、NK細胞を4日目に投与するなど)、または逐次的に投与してもよく(たとえば、腫瘍溶解性ウイルスを1日目に投与し、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞を逐次的な順序で2日目に投与し、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞を逐次的な順序で3日目に投与し、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞を逐次的な順序で4日目に投与するなど)、または他の投薬レジメンを使用して投与してもよい(たとえば、最初に、腫瘍溶解性ウイルスを、1日1回、1~6日間連続で投与し、18~72時間の間隔を空けた後に、NK細胞を、1日1回、1~6日間連続で投与する)。好ましくは、腫瘍溶解性ウイルスを、最初に投与し、NK細胞を、腫瘍溶解性ウイルスのすべての用量の投与が完了した18~72時間後に投与する。本開示の好ましい態様において、まず、腫瘍および/またはがん患者に、腫瘍溶解性ウイルスを投与し、腫瘍溶解性ウイルスは、治療有効用量で1回のみ投与され、腫瘍溶解性ウイルスの投与の18~72時間後に、腫瘍および/またはがん患者に、NK細胞を投与し、NK細胞は、1×107~1×1010細胞/日(たとえば、1×108~5×109細胞/日、1×109~4×109細胞/日、または1×109~3×109細胞/日)の範囲の用量レベルで1回のみ投与される。様々な腫瘍溶解性ウイルスについて、臨床適用に好適な様々な好ましい用量範囲、たとえば、表1に列挙されるものが、選択され得る。
【0132】
特定の状況および必要性に基づいて、本開示による腫瘍および/またはがんの治療のための方法は、1回または複数回、患者に適用することができる。
【0133】
腫瘍溶解性ウイルスは、当該技術分野において広く使用されているそれぞれの経路を通じて投与することができ、たとえば、それらは、腫瘍内注入を介して投与され得るか、または静脈内投与され得る。
【0134】
NK細胞は、当該技術分野において広く使用されている経路を通じて投与することができ、たとえば、それらは、静脈内投与され得る。
【0135】
本開示による方法の特定の態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解能力を有するアデノウイルスである。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスのE1領域および/またはE3領域は、遺伝子修飾されている。幾つかの例において、腫瘍溶解性アデノウイルスは、Onyx-015、H101、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、CG0070、DNX-2401、OBP-301、ONCOS-102、ColoAd1、VCN-01、および/またはProstAtak(商標)から選択される。
【0136】
本開示による方法のある特定の態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルスであり、その投薬量は、5×107~5×1012VP/日(たとえば、5×107~1.5×1012VP/日、5×108~1×1012VP/日、1×109~5×1011VP/日、3×1010~3×1011VP/日など)の範囲に及ぶ。
【0137】
ある態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスH101であり、その投薬量は、5×107~1.5×1012VP/日(たとえば、5×1011~1.5×1012VP/日など)の範囲に及ぶ。
【0138】
本開示による方法の特定の態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスである。幾つかの例において、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、腫瘍溶解能力を有する遺伝子変異型ウイルスおよび腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスから選択される。幾つかの例において、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、TK遺伝子および/またはVGF遺伝子が機能的に欠損している。幾つかの例において、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、Pexa-vac、JX-963、JX-929、VSC20、GL-ONC1、および/またはTG6002から選択される。
【0139】
本開示による方法のある特定の態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであり、その投薬量は、1×105~5×109pfu/日(たとえば、1×105~3×109pfu/日、1×105~1×108pfu/日など)の範囲に及ぶ。
【発明の例示的な態様】
【0140】
本発明の非限定的な態様の一覧を、以下に提供する。
【0141】
1.(a)第1の薬学的に許容される担体中に腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の医薬組成物と、
(b)第2の薬学的に許容される担体中にNK細胞を含む第2の医薬組成物と
を含む治療剤であって、
腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができる治療剤。
【0142】
2.第1の医薬組成物および第2の医薬組成物が、一緒に混合されることなく、治療剤中に別々に存在する、態様1に記載の治療剤。
【0143】
3.第1の医薬組成物の活性成分が、腫瘍溶解性ウイルスであり;第2の医薬組成物の活性成分が、NK細胞である、態様1に記載の治療剤。
【0144】
4.第1の医薬組成物が、治療有効用量の腫瘍溶解性ウイルスを含み、第2の医薬組成物が、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含む、態様1に記載の治療剤。
【0145】
5.腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解能力を有する遺伝子変異型ウイルスおよび腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスから選択される、態様1に記載の治療剤。
【0146】
6.腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性アデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、セムリキ森林ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、セネカバレーウイルス、エコーエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびマラバウイルスから選択される、態様1に記載の治療剤。
【0147】
7.NK細胞が、自家NK細胞および同種NK細胞から選択される、態様1に記載の治療剤。
【0148】
8.NK細胞が、インビトロで増殖させた自家NK細胞またはインビトロで増殖させた同種NK細胞である、態様7に記載の治療剤。
【0149】
9.腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍内注入を介して投与されるかまたは静脈内投与されるように製剤化され;NK細胞が、静脈内投与されるように製剤化される、態様1に記載の治療剤。
【0150】
10.腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性アデノウイルスである、態様1~9の何れか1つに記載の治療剤。
【0151】
11.腫瘍溶解性アデノウイルスのE1領域および/またはE3領域が、遺伝子修飾されている、態様10に記載の治療剤。
【0152】
12.腫瘍溶解性アデノウイルスが、Onyx-015、H101、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、CG0070、DNX-2401、OBP-301、ONCOS-102、ColoAd1、VCN-01、および/またはProstAtak(商標)から選択される、態様10に記載の治療剤。
【0153】
13.第1の医薬組成物の活性成分が、5×107~5×1012VP/日の範囲の用量の腫瘍溶解性アデノウイルスを含み;第2の医薬組成物の活性成分が、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含む、態様1に記載の治療剤。
【0154】
14.第1の医薬組成物および第2の医薬組成物からなる、態様1に記載の治療剤。
【0155】
15.腫瘍および/またはがんの治療のための薬物の調製のための態様1~14の何れか1つに記載の治療剤の使用。
【0156】
16.腫瘍および/またはがんが、肺がん、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病を含む、態様15に記載の使用。
【0157】
17.腫瘍および/またはがんの治療のための相乗作用を有する組合せ薬物のキットであって、腫瘍溶解性ウイルスを含む第1の容器と、NK細胞を含む第2の容器と、投与のタイミングおよび経路を示す説明書とを含み、第1の容器が、第2の容器とは別個であり、腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができる、キット。
【0158】
18.第1の容器が、治療有効用量の腫瘍溶解性ウイルスを含み、第2の容器が、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含む、態様17に記載のキット。
【0159】
19.腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解能力を有する遺伝子変異型ウイルスおよび腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスから選択される、態様17に記載のキット。
【0160】
20.腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性アデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、セムリキ森林ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、セネカバレーウイルス、エコーエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびマラバウイルスから選択される、態様17に記載のキット。
【0161】
21.NK細胞が、自家NK細胞および同種NK細胞から選択される、態様17に記載のキット。
【0162】
22.NK細胞が、インビトロで増殖させた自家NK細胞またはインビトロで増殖させた同種NK細胞である、態様21に記載のキット。
【0163】
23.腫瘍および/またはがんが、肺がん、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病を含む、態様17に記載のキット。
【0164】
24.腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍内注入を介して投与されるかまたは静脈内投与されるように製剤化され;NK細胞が、静脈内投与されるように製剤化される、態様17に記載のキット。
【0165】
25.腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性アデノウイルスである、態様17~24の何れか1つに記載のキット。
【0166】
26.腫瘍溶解性アデノウイルスのE1領域および/またはE3領域が、遺伝子修飾されている、態様25に記載のキット。
【0167】
27.腫瘍溶解性アデノウイルスが、Onyx-015、H101、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、CG0070、DNX-2401、OBP-301、ONCOS-102、ColoAd1、VCN-01、および/またはProstAtak(商標)から選択される、態様25に記載のキット。
【0168】
28.第1の容器が、5×107~5×1012VP/日の範囲の用量の腫瘍溶解性アデノウイルスを含み、第2の容器が、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量のNK細胞を含む、態様17に記載のキット。
【0169】
29.腫瘍および/またはがんを治療するための方法であって、逐次的な様式で、以下の工程:
1)腫瘍溶解性ウイルスを、腫瘍および/またはがん患者に投与する工程であって、腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍細胞において選択的に複製することができる工程と、
2)腫瘍溶解性ウイルスの投与の18~72時間後に、NK細胞を、腫瘍および/またはがん患者に投与する工程と
を含む方法。
【0170】
30.腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解能力を有する遺伝子変異型ウイルスおよび腫瘍溶解能力を有する野生型ウイルスから選択される、態様29に記載の方法。
【0171】
31.腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性アデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、セムリキ森林ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、セネカバレーウイルス、エコーエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびマラバウイルスから選択される、態様29に記載の方法。
【0172】
32.NK細胞が、自家NK細胞および同種NK細胞から選択される、態様29に記載の方法。
【0173】
33.NK細胞が、インビトロで増殖させた自家NK細胞またはインビトロで増殖させた同種NK細胞である、態様32に記載の方法。
【0174】
34.腫瘍および/またはがんが、肺がん、黒色腫、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、リンパがん、胃がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、および白血病を含む、態様29に記載の方法。
【0175】
35.腫瘍溶解性ウイルスが、治療有効用量で、1日1回、1~6日間連続で投与される、態様29に記載の方法。
【0176】
36.NK細胞が、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量レベルで、1日1回、1~6日間連続で投与される、態様29に記載の方法。
【0177】
37.腫瘍溶解性ウイルスが、治療有効用量で、1日おきに、2~6日間連続で投与される、態様29に記載の方法。
【0178】
38.NK細胞が、1×107~1×1010細胞/日の範囲の用量レベルで、1日おきに、2~6日間連続で投与される、態様29に記載の方法。
【0179】
39.腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍内注入を介して投与されるかまたは静脈内投与され;NK細胞が、静脈内投与される、態様29に記載の方法。
【0180】
40.腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性アデノウイルスである、態様29~39の何れか1つに記載の方法。
【0181】
41.腫瘍溶解性アデノウイルスのE1領域および/またはE3領域が、遺伝子修飾されている、態様40に記載の方法。
【0182】
42.腫瘍溶解性アデノウイルスが、Onyx-015、H101、Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12、CG0070、DNX-2401、OBP-301、ONCOS-102、ColoAd1、VCN-01、および/またはProstAtak(商標)から選択される、態様40に記載の方法。
【0183】
43.腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性アデノウイルスであり、その投薬量が、5×107~5×1012VP/日の範囲に及ぶ、態様29に記載の方法。
【0184】
以下に、本開示を、例を用いてさらに説明または記載するが、これらの例は、本開示の保護の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0185】
別途指定されない限り、それぞれの薬剤の濃度割合(%)はすべて、体積を基準とした割合である(%(体積/体積))。
【0186】
以下の例において使用した材料を、以下に説明する。
【0187】
1.腫瘍細胞
A549(ヒト非小細胞肺がん細胞)、HepG2(ヒト肝細胞癌細胞)、HT29(ヒト結腸がん細胞)、HCT116(ヒト結腸直腸がん細胞)、FaDu(ヒト頭頸部がん細胞)、SK-HEP-1(ヒト肝細胞癌細胞)、PANC-1(ヒト膵臓がん細胞)などは、China National Infrastructure of Cell Line Resourceから入手した。細胞を、通常の環境において培養した:DMEM+10% FBS、DMEM:F12(1:1)+10% FBS、マッコイ5A+10% FBS、またはMEM+10% FBS。DMEM:F12(1:1)は、Hycloneから購入し、一方で、DMEM、マッコイ5A、およびMEMは、GIBCOから購入した。ウシ胎児血清(FBS)は、GIBCO Incから購入した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)およびその培養系は、両方とも、ALLCELLS LLC,Germanyから購入した。
【0188】
2.NK細胞
実験において使用したNK細胞の供給源は、次の通りである:
1)群Aのそれぞれの例において使用したNK細胞は、Hangzhou Ding Yun Biotech Co.,Ltdから購入した、サンプル番号0215111703のヒトNK細胞であった。
【0189】
2)群B、C、F、G、H、I、およびJのそれぞれの例において使用したNK細胞は、Hangzhou ConVerd Co.,Ltdによって培養および凍結保存されているヒトNK細胞であった。ヒトNK細胞は、以下のプロセスによって調製した。当該技術分野において広く使用されている技法として、免疫細胞PBMCの抽出のために、採血針を、尺骨静脈に挿入して、健常な人物の末梢静脈血を採取した。照射したK562フィーダー細胞(Hangzhou Ding Yun Biotech Co.,Ltd.から購入)を使用して、自家血漿培養によってNK細胞を増殖させ、NK細胞は、最大で90%の最終的な純度、最大で90%の生存率、および最大で85%のインビトロでの腫瘍細胞殺滅率を有した。
【0190】
3)群DおよびEのそれぞれの例において使用したNK細胞は、Hangzhou Ding Yun Biotech Co.,Ltdから購入した、サンプル番号0116010805のヒトNK細胞である。
【0191】
3.腫瘍溶解性ウイルス(OV)
腫瘍溶解性アデノウイルスH101は、Shanghai Sunway Biotech Co.,Ltdから入手した。
【0192】
腫瘍溶解性ワクシニアウイルスddvv-RFPは、公知であり、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスWR株に属する(たとえば、「X Song, et al. T-cell Engager-armed Oncolytic Vaccinia Virus Significantly Enhances Antitumor TherapyMolecular Therapy. (2014); 22 1, 102-111」を参照されたい)。腫瘍溶解性ワクシニアウイルスddvv-RFPは、TK遺伝子とVGF遺伝子の両方が機能的に欠損しており、外因性の赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子を有している。RFP遺伝子は、スクリーニング/報告の役割のみを果たすため、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスddvv-RFPの抗腫瘍機能は、TK遺伝子およびVGF遺伝子が機能的に欠損している腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと実質的に同等である。また、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスddvv-RFPは、当該技術分野における従来的な技法を使用したVSC20ワクシニアウイルスの遺伝子修飾によって得ることができる。VSC20ワクシニアウイルスは、VGF遺伝子が欠如したワクシニアウイルスである。VSC20ワクシニアウイルスの調製方法については、「McCart, JA, et al. Systemic cancer therapy with a tumor-selective vaccinia virus mutant lacking thymidine kinase and vaccinia growth factor genes. Cancer Res (2001) 61: 8751-8757」を参照されたい。遺伝子修飾は、外因性DsRed遺伝子(すなわち、RFP遺伝子)を調節するための人工合成ワクシニアウイルス初期/後期プロモーターpSELの使用、ならびにインビトロ細胞内組換え技法を使用したワクシニアウイルスVSC20株のTK遺伝子領域へのDsRed遺伝子の挿入を含み、それによって、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスddvv-RFPが構築される。
【0193】
4.培養プレート
24ウェルの細胞培養プレート(1ウェル当たり500μl、Corning Inc.)を、群A~Jのそれぞれの例において使用した(実験例C11およびC12を除く)。12ウェルの細胞培養プレート(1ウェル当たり1ml、Corning Inc.)を、実験例C11およびC12のそれぞれにおいて使用した。
【0194】
以下の例において使用した細胞計数方法を、以下に説明する。
【0195】
トリパンブルー染色法を使用した細胞計数:細胞を、PBSで洗浄し、トリプシンを使用して消化させた後、細胞を、PBS中に懸濁させた。懸濁液に、トリパンブルー溶液を、0.04%(重量/体積)の最終濃度まで添加した。次いで、顕微鏡下において細胞計数を行ったが、このとき、死細胞は、青色に染色され、生細胞は、何れの色もない透明に見えた。生細胞計数を、最終的なデータとして使用した。
【0196】
以下の例における腫瘍細胞に対する腫瘍溶解性ウイルスの用量応答実験および殺滅実験において、腫瘍細胞を、まず腫瘍溶解性ウイルスに感染させ、次いで、培養またはインキュベートする場合、腫瘍溶解性ウイルスを添加した時点を、0時間とした。
【0197】
A:腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞の組合せ適用のA549細胞に対する殺滅作用に関する研究
実験例A1:A549細胞に対するNK細胞の用量応答実験
A549細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、DMEM+10% FBS中で48時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を、以下のエフェクター対標的細胞の比(すなわち、E:T、細胞数の比)で添加した:NK:A549=それぞれ20:1、10:1、5:1、2.5:1、および1.25:1。それぞれのE:T比での殺滅プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、それぞれ、24時間および48時間行った。その後に、トリパンブルー染色法を、生存A549細胞の計数に使用し、NK細胞によるA549細胞の殺滅率を、NK細胞を添加しなかった対照群に対して計算した。用量応答曲線のX軸は、E:T比を表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す。殺滅時間(すなわち、NK細胞を腫瘍細胞培養物に導入した時間から、殺滅が検出された時間までの期間)が48時間であった実験の結果を、
図1に示すが、これは、E:T比が5:1のときに、約14%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するNK細胞の用量レベルとして採用した。殺滅作用は、殺滅時間が24時間であった場合には、殺滅時間が48時間であった場合のものと比較して、より弱かった。したがって、NK細胞の好適な殺滅時間の長さは、約48時間であった。
【0198】
実験例A2:A549細胞に対するH101の用量応答実験
A549細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しい無血清DMEMで置きかえ、H101を、それぞれ、340、170、85、42.5、および21.25のMOIで添加した。H101を添加した時点を、0時間とした(以下同様)。感染プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、6時間継続させ、次いで、培地を除去し、細胞を、PBSで洗浄した。次いで、新しいDMEM+10% FBSを添加し、細胞を、さらに72時間インキュベートした。その後に、トリパンブルー染色法を、生存A549細胞の計数に使用し、H101によるA549細胞の殺滅率を、H101を添加しなかった対照群に対して計算した。
図2は、用量応答曲線(X軸は、MOIを表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、A549細胞に対するH101の用量レベルが約85のMOIであるときに、約37%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するH101の用量レベルとして採用した。
【0199】
実験例A3:H101によるA549細胞の感染時間の長さの実験
好適な感染作用を達成するために、H101によるA549細胞の様々な長さの感染時間について試験した。A549細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEMまたはDMEM+10% FBSのいずれかで置きかえ、H101を添加した(MOI=85)。無血清DMEM環境の細胞については、感染プロセスを、それぞれ、2または6時間継続させた。DMEM+10% FBS環境の細胞については、感染プロセスを、24時間継続させた。すべての感染プロセスは、37℃で5% CO2において行った。ウイルスを洗い流した後、新しいDMEM+10% FBSを添加し、細胞を、37℃で5% CO2において、それぞれ、24時間、48時間、または72時間インキュベートした。その後に、生存A549細胞を、トリパンブルー染色法を使用して計数し、A549細胞の阻害率を比較した。
【0200】
結果は、H101によるA549細胞の感染に好適な時間の長さは、無血清環境では約6時間であり、H101の細胞内複製に好適な時間の長さは、約24時間であったことを示した。
【0201】
例A4:H101およびNKの組合せ殺滅実験
上述の実験例から、A549に対する殺滅に好適なH101の用量レベルは、約85のMOIであり、H101によるA549細胞の感染に好適な時間の長さは、約6時間であり、H101の細胞内複製に好適な時間の長さは、約24時間であり、A549細胞に対する殺滅に好適なNK細胞の用量レベルは、約5:1のE:T比(すなわち、NK:A549)であり、NK細胞による殺滅に好適な時間の長さは、約48時間であったと結論付けることができる。
【0202】
A549細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEMで置きかえ、H101を添加した(MOI=85)。6時間感染させた後、培地を、DMEM+10% FBSで置きかえ、細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加し(E:T比(NK:A549)=5:1)、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存A549細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もA549細胞に添加していないブランク対照群、H101をその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないH101群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、H101を添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0203】
図3に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、H101およびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)は、A549細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約78%であった。しかしながら、この実験において、H101の単独適用の阻害率は、約41%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約20%であった。
【0204】
H101の添加による感染の後、細胞を、24時間ではなく48時間インキュベートしたことを除き、上述のものと類似である別の実験において、H101およびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)が、A549細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約80%であったことも、結果により示された。
【0205】
比較例A5:薬物の組合せ同時投与
A549細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、H101(MOI=85)およびNK細胞(E:T比(NK:A549)=5:1)を、同時に添加した。細胞を、さらに72時間インキュベートし、次いで、死細胞および残屑を洗い流し、残っている生存A549細胞を、トリパンブルー染色法を使用して計数した。この実験には、ウイルスもNK細胞もA549細胞に添加していないブランク対照群、H101をその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないH101群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、H101を添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0206】
図4に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、H101の単独適用の阻害率は、約47%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約16%であった。これらの単独適用と比較して、NK細胞およびH101の組合せ使用の阻害率は、約55%であったため増加していたが、しかしながら、例A4と比較して有意な相乗作用は示されなかった(
図5に示される比較を参照されたく、ここで、X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)。
【0207】
上述の結果は、1)H101およびNK細胞の組合せ適用が、H101またはNK細胞のいずれかの単独適用よりも優れた有効性を有すること、ならびに2)投与のタイミングが、H101およびNK細胞の組合せ適用の有効性に有意に影響を及ぼすことができ、H101およびNK細胞を、実質的に同時に投与した場合、組合せ適用は相乗作用を示さなかったが、H101の投与の約24~48時間後にNK細胞を投与した場合には、組合せ適用は有意な相乗作用を示したことを示している。
【0208】
比較例A6:組合せ適用における異なる投与順序間での比較
A549細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:A549)=5:1)。細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。次いで、H101(MOI=85)を、培地を置きかえることなく添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存A549細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もA549細胞に添加していないブランク対照群、H101をその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないH101群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、H101を添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0209】
図6に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、順序逆転様式での組合せ適用(NK細胞を最初に投与し、H101を後から投与する)の阻害率は、約38%であり、H101の単独適用の阻害率は、約35%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約6%であった。A549細胞に対する72時間のNK細胞の単独適用の阻害率は、48時間のものよりも低かった。これは、A549細胞が、急速な成長率を有するが、NK細胞に対する感受性が比較的低く、NK細胞の殺滅作用が、短期間の特徴を有するためであり得る。したがって、NK細胞によって殺滅されなかったA549細胞が、急速に増殖し、72時間の殺滅の阻害率が、48時間のものよりも低くなる結果となった。順序逆転様式での組合せ適用は、相乗作用を示さなかった。
【0210】
比較例A7:正常細胞における薬物の組合せ適用
HUVEC細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞)を、30%のコンフルエンシーで、ゼラチンを有する培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、適切な完全培地(HUVEC細胞および完全培地は、ALLCELLS LLCから購入した品目番号H-003である)中で24時間培養した。次いで、培地を、新しい完全培地で置きかえ、H101(MOI=85)を添加し、感染プロセスを、6時間継続させた。次いで、培地を、新しい完全培地で置きかえ、細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。その後に、培地を、新しい完全培地で置きかえ、次いで、NK細胞を添加し(E:T比(NK:HUVEC)=5:1)、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HUVEC細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHUVEC細胞に添加していないブランク対照群、H101をその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないH101群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、H101を添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0211】
図7に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、NK細胞およびH101の組合せ適用は、正常ヒト初代細胞HUVECに対して殺滅作用を有さなかった。H101の単独適用またはNK細胞の単独適用も、正常ヒト初代HUVEC細胞に対して殺滅作用を有さなかった。
【0212】
例A8:組合せ投与の用量漸増研究
A549細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。第1の群において、培地を、無血清DMEMで置きかえ、次いで、H101(MOI=85)を添加し、感染プロセスを、6時間継続させた。培地を、次いで、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、細胞を、24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、様々な用量レベル(E:T=1:1、5:1、10:1、15:1、または20:1)のNK細胞を、それぞれ添加し、培養物を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存A549細胞の計数に使用した。第2の群において、培地を新しいDMEM+10% FBSで置きかえた後、H101(MOI=85)およびNK細胞を、それぞれE:T=1:1、5:1、10:1、15:1、または20:1のNK細胞の用量レベルで、同時に添加し、細胞を、さらに72時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存A549細胞の計数に使用した。第3の群において、培地を新しいDMEM+10% FBSで置きかえた後、様々な用量レベル(E:T=1:1、5:1、10:1、15:1、または20:1)のNK細胞を、それぞれ、最初に添加し、培養物を、24時間インキュベートした。次いで、同じ用量レベル(MOI=85)のH101を、培地を置きかえることなく添加し、培養物を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存A549細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もA549細胞に添加していないブランク対照群も、存在した。対照群には、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0213】
図8に示されるように(X軸は、E:T比を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、組合せ適用において、NK細胞の用量レベルと、その殺滅作用との間には正相関があり、H101およびNK細胞の用量レベルを、それぞれ変更しなかった場合には、H101を最初に投与し、NK細胞を後から投与した組合せの殺滅作用は、H101およびNK細胞を同時に投与した組合せの殺滅作用またはNK細胞を最初に投与し、H101を後から投与した組合せの殺滅作用よりも有意に高かった。
【0214】
B:腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞の組合せ適用のHepG2細胞に対する殺滅作用に関する研究
実験例B1:HepG2細胞に対するNK細胞の用量応答実験
HepG2細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、DMEM+10% FBS中で48時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を、以下のエフェクター対標的細胞の比(すなわち、E:T、細胞数の比)で添加した:NK:HepG2=それぞれ20:1、15:1、10:1、7:1、5:1、3:1、および1:1。それぞれのE:T比での殺滅プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、48時間継続させた。その後に、トリパンブルー染色法を、生存HepG2細胞の計数に使用し、NK細胞によるHepG2細胞の殺滅率を、NK細胞を添加しなかった対照群に対して計算した。
図9は、用量応答曲線(X軸は、E:T比を表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、E:T比が3:1であるときに、約18%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するNK細胞の用量レベルとして採用した。
【0215】
実験例B2:HepG2細胞に対するH101の用量応答実験
HepG2細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しい無血清DMEMで置きかえ、H101を、それぞれ、136、68、34、17、8.5、4.25、および1.7のMOIで添加した。感染プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、6時間継続させ、次いで、培地を除去し、細胞を、PBSで洗浄した。次いで、新しいDMEM+10% FBSを添加し、細胞を、さらに72時間インキュベートした。その後に、トリパンブルー染色法を、生存HepG2細胞の計数に使用し、H101によるHepG2細胞の殺滅率を、H101を添加しなかった対照群に対して計算した。
図10は、用量応答曲線(X軸は、MOIを表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、HepG2細胞に対するH101の用量レベルが約13.6のMOIであるときに、約27%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するH101の用量レベルとして採用した。
【0216】
例B3:H101およびNKの組合せ殺滅実験
上述の実験例から、HepG2細胞に対する殺滅に好適なH101の用量レベルは、約13.6のMOIであり、HepG2細胞に対する殺滅に好適なNK細胞の用量レベルは、約3:1のE:T比(すなわち、NK:HepG2)であったと結論付けることができる。
【0217】
HepG2細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEMで置きかえ、H101を添加した(MOI=13.6)。6時間感染させた後、培地を、DMEM+10% FBSで置きかえ、細胞を、37℃で5% CO2において、48時間インキュベートした。培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加し(E:T比(NK:HepG2)=3:1)、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HepG2細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHepG2細胞に添加していないブランク対照群、H101をその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないH101群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、H101を添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0218】
図11に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、H101およびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)は、HepG2細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約75%であった。しかしながら、この実験において、H101の単独適用の阻害率は、約44%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約24%であった。
【0219】
比較例B4:薬物の組合せ同時投与
HepG2細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEMで置きかえ、H101を添加した(MOI=13.6)。6時間感染させた後、培地を、DMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:HepG2)=3:1)。細胞を、さらに96時間インキュベートし、次いで、死細胞および残屑を洗い流し、残っている生存HepG2細胞を、トリパンブルー染色法を使用して計数した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHepG2細胞に添加していないブランク対照群、H101をその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないH101群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、H101を添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0220】
図12に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、H101の単独適用の阻害率は、約44%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約17%であった。これらの単独適用と比較して、NK細胞およびH101の組合せ使用の阻害率は、約54%であったため増加していたが、しかしながら、例B3と比較して有意な相乗作用は示されなかった(
図13に示される比較を参照されたく、ここで、X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)。
【0221】
上述の結果は、1)H101およびNK細胞の組合せ適用が、H101またはNK細胞のいずれかの単独適用よりも優れた有効性を有すること、ならびに2)投与のタイミングが、H101およびNK細胞の組合せ適用の有効性に有意に影響を及ぼすことができ、H101およびNK細胞を、実質的に同時に投与した場合、組合せ適用は相乗作用を示さなかったが、H101を最初に投与し、NK細胞を後から投与した場合には、組合せ適用は有意な相乗作用を示したことを示している。
【0222】
比較例B5:組合せ適用における異なる投与順序間での比較
HepG2細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:HepG2)=3:1)。細胞を、37℃で5% CO2において、48時間インキュベートした。次いで、H101(MOI=13.6)を、培地を置きかえることなく添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HepG2細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHepG2細胞に添加していないブランク対照群、H101をその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないH101群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、H101を添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0223】
図14に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、順序逆転様式での組合せ適用(NK細胞を最初に投与し、H101を後から投与する)の阻害率は、約32%であり、H101の単独適用の阻害率は、約18%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約26%であった。順序逆転様式での組合せ適用は、相乗作用を示さなかった。
【0224】
例B6:組合せ投与の用量漸増研究
HepG2細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。第1の群において、培地を、無血清DMEMで置きかえ、次いで、H101(MOI=13.6)を添加し、感染プロセスを、6時間継続させた。培地を、次いで、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、細胞を、48時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、様々な用量レベル(E:T=1:1、2:1、3:1、4:1、または5:1)のNK細胞を、それぞれ添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HepG2細胞の計数に使用した。第2の群において、培地を、無血清DMEMで置きかえ、H101(MOI=13.6)を添加し、感染プロセスを、6時間継続させた。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、様々な用量レベル(E:T=1:1、2:1、3:1、4:1、または5:1)のNK細胞を、それぞれ添加した。細胞を、さらに96時間インキュベートし、次いで、死細胞および残屑を洗い流し、残っている生存HepG2細胞を、トリパンブルー染色法を使用して計数した。第3の群において、培地を新しいDMEM+10% FBSで置きかえた後、様々な用量レベル(E:T=1:1、2:1、3:1、4:1、または5:1)のNK細胞を、それぞれ添加し、細胞を、48時間インキュベートした。次いで、同じ用量のH101(MOI=13.6)を、培地を置きかえることなく添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HepG2細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHepG2細胞に添加していないブランク対照群も、存在した。対照群には、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0225】
図15に示されるように(X軸は、E:T比を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、組合せ適用において、NK細胞の用量レベルと、その殺滅作用との間には正相関があり、H101およびNK細胞の用量レベルを、それぞれ変更しなかった場合には、H101を最初に投与し、NK細胞を後から投与した組合せの殺滅作用は、H101およびNK細胞を同時に投与した組合せの殺滅作用またはNK細胞を最初に投与し、H101を後から投与した組合せの殺滅作用よりも有意に高かった。
【0226】
C:腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞の組合せ適用のHT29細胞に対する殺滅作用に関する研究
実験例C1:HT29細胞に対するNK細胞の用量応答実験
HT29細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、DMEM+10% FBS中で48時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を、以下のエフェクター対標的細胞の比(すなわち、E:T、細胞数の比)で添加した:NK:HT29=それぞれ40:1、20:1、10:1、5:1、および1:1。それぞれのE:T比での殺滅プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、48時間継続させた。その後に、トリパンブルー染色法を、生存HT29細胞の計数に使用し、NK細胞によるHT29細胞の殺滅率を、NK細胞を添加しなかった対照群に対して計算した。
図16は、用量応答曲線(X軸は、E:T比を表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、E:T比が3:1であるときに、約17%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するNK細胞の用量レベルとして採用した。
【0227】
実験例C2:HT29細胞に対するH101の用量応答実験
HT29細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しい無血清DMEMで置きかえ、H101を、それぞれ、136、68、34、17、8.5、および1.7のMOIで添加した。感染プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、6時間継続させ、次いで、培地を除去し、細胞を、PBSで洗浄した。次いで、新しいDMEM+10% FBSを添加し、細胞を、さらに72時間インキュベートした。その後に、トリパンブルー染色法を、生存HT29細胞の計数に使用し、H101によるHT29細胞の殺滅率を、H101を添加しなかった対照群に対して計算し、比較した。
図17は、用量応答曲線(X軸は、MOIを表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、MOIが13.6であるときに、約40%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するH101の用量レベルとして採用した。
【0228】
例C3:H101およびNKの組合せ殺滅実験
上述の実験例から、HT29細胞に対する殺滅に好適なH101の用量レベルは、約13.6のMOIであり、HT29細胞に対する殺滅に好適なNK細胞の用量レベルは、約3:1のE:T比(すなわち、NK:HT29)であったと結論付けることができる。
【0229】
HT29細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEMで置きかえ、H101を添加した(MOI=13.6)。6時間感染させた後、培地を、DMEM+10% FBSで置きかえ、細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加し(E:T比(NK:HT29)=3:1)、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HT29細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHT29細胞に添加していないブランク対照群、H101をその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないH101群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、H101を添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0230】
図18に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、H101およびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)は、HT29細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約60%であった。しかしながら、この実験において、H101の単独適用の阻害率は、約37%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約16%であった。
【0231】
例C4:H101およびNKの組合せ殺滅実験
例C4は、H101の添加による感染の後、細胞を、24時間ではなく48時間インキュベートした後に、NK細胞を添加したことを除き、上述の例C3と類似であった。
図23に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、最終的な結果はまた、H101およびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)は、HT29細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約76%であったことを示した。しかしながら、この実験において、H101の単独適用の阻害率は、約54%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約14%であった。
【0232】
比較例C5:薬物の組合せ同時投与
HT29細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEMで置きかえ、H101を添加した(MOI=13.6)。6時間感染させた後、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:HT29)=3:1)。細胞を、さらに72時間インキュベートし、次いで、死細胞および残屑を洗い流し、残っている生存HT29細胞を、トリパンブルー染色法を使用して計数した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHT29細胞に添加していないブランク対照群、H101をその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないH101群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、H101を添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0233】
図19に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、H101の単独適用の阻害率は、約36%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約33%であった。これらの単独適用と比較して、NK細胞およびH101の組合せ使用の阻害率は、約52%であったため増加していたが、しかしながら、例C3と比較して有意な相乗作用は示されなかった(
図20に示される比較を参照されたく、ここで、X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)。
【0234】
比較例C6:薬物の組合せ同時投与
比較例C6は、H101およびNKを添加した後、細胞を、72時間ではなく96時間インキュベートしたことを除き、上述の比較例C5と類似であった。
図24に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、H101の単独適用の阻害率は、約46%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約23%であった。これらの単独適用と比較して、NK細胞およびH101の組合せ使用の阻害率は、約66%であったため増加していたが、しかしながら、
図23と比較して有意な相乗作用は示されなかった(
図25に示される比較を参照されたく、ここで、X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)。
【0235】
上述の結果は、1)H101およびNK細胞の組合せ適用が、H101またはNK細胞のいずれかの単独適用よりも優れた有効性を有すること、ならびに2)投与のタイミングが、H101およびNK細胞の組合せ適用の有効性に有意に影響を及ぼすことができ、H101およびNK細胞を、実質的に同時に投与した場合、組合せ適用は相乗作用を示さなかったが、H101の投与の約24~48時間後にNK細胞を投与した場合には、組合せ適用は有意な相乗作用を示したことを示している。
【0236】
比較例C7:組合せ適用における異なる投与順序間での比較
HT29細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:HT29)=3:1)。細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。次いで、H101(MOI=13.6)を、培地を置きかえることなく添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HT29細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHT29細胞に添加していないブランク対照群、H101をその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないH101群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、H101を添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0237】
図21に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、順序逆転様式での組合せ適用(NK細胞を最初に投与し、H101を後から投与する)の阻害率は、約42%であり、H101の単独適用の阻害率は、約20%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約26%であった。順序逆転様式での組合せ適用は、相乗作用を示さなかった。
【0238】
比較例C8:組合せ適用における異なる投与順序間での比較
比較例C8は、NKを添加した後、細胞を、24時間ではなく48時間インキュベートした後に、H101を添加したことを除き、上述の比較例C7と類似であった。
図26に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、順序逆転様式での組合せ適用(NK細胞を最初に投与し、H101を後から投与する)の阻害率は、約38%であり、H101の単独適用の阻害率は、約8%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約37%であった。順序逆転様式での組合せ適用は、相乗作用を示さなかった。
【0239】
例C9:組合せ投与の用量漸増研究
HT29細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。第1の群において、培地を、無血清DMEMで置きかえ、次いで、H101(MOI=13.6)を添加し、感染プロセスを、6時間継続させた。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえた。細胞を、24時間インキュベートした後、様々な用量レベル(E:T=1:1、2:1、3:1、4:1、または5:1)のNK細胞を、それぞれ添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HT29細胞の計数に使用した。第2の群において、培地を、無血清DMEMで置きかえ、H101(MOI=13.6)を添加した。6時間感染させた後、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、様々な用量レベル(E:T=1:1、2:1、3:1、4:1、または5:1)のNK細胞を、それぞれ添加した。細胞を、さらに72時間インキュベートし、次いで、死細胞および残屑を洗い流し、残っている生存HT29細胞を、トリパンブルー染色法を使用して計数した。第3の群において、培地を新しいDMEM+10% FBSで置きかえた後、様々な用量レベル(E:T=1:1、2:1、3:1、4:1、または5:1)のNK細胞を、それぞれ、最初に添加し、細胞を、24時間インキュベートした。次いで、同じ用量のH101(MOI=13.6)を、培地を置きかえることなく添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HT29細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHT29細胞に添加していないブランク対照群も、存在した。対照群には、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0240】
図22に示されるように(X軸は、E:T比を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、組合せ適用において、NK細胞の用量レベルと、その殺滅作用との間には正相関があり、H101およびNK細胞の用量レベルを、それぞれ変更しなかった場合には、H101を最初に投与し、NK細胞を後から投与した組合せの殺滅作用は、H101およびNK細胞を同時に投与した組合せの殺滅作用またはNK細胞を最初に投与し、H101を後から投与した組合せの殺滅作用よりも有意に高かった。
【0241】
例C10:組合せ投与の用量漸増研究
例C10は、実験群(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)では、H101を添加した後に、細胞を、24時間ではなく48時間インキュベートした後、NK細胞を添加し、組合せ同時投与群では、H101およびNKを同時に添加した後に、細胞を、72時間ではなく96時間インキュベートし、順序逆転様式での組合せ投与群では、NKを添加した後、細胞を、24時間ではなく48時間インキュベートした後に、H101を添加したことを除き、上述の例C9と類似であった。
図27に示されるように(X軸は、E:T比を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、組合せ適用において、NK細胞の用量レベルと、その殺滅作用との間には正相関があり、H101およびNK細胞の用量レベルを、それぞれ変更しなかった場合には、H101を最初に投与し、NK細胞を後から投与した組合せの殺滅作用は、H101およびNK細胞を同時に投与した組合せの殺滅作用またはNK細胞を最初に投与し、H101を後から投与した組合せの殺滅作用よりも有意に高かった。
【0242】
実験例C11:H101によるHT29細胞の感染後の細胞表面上のNKG2Dリガンドの検出
HT29細胞を、50%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、H101(MOI=17)を、培地を置きかえることなく添加した。感染プロセスは、細胞を37℃で5% CO2においてインキュベートした状態で、24時間継続させた。この実験には、ウイルスをHT29細胞に添加していないブランク対照群も、存在した。細胞を、トリプシン処理によって収集し、PBSで1回洗浄し、次いで、HT29細胞上のNKG2D関連リガンド(ULBP-1、ULBP-4、ULBP-2/5/6、およびMICA/MICB)を、検出した。H101に感染したHT29細胞の表面上のNKG2D関連リガンドの変化を、H101を添加していない対照群に対して計算した。以下の抗体を使用した:抗ヒトULBP-1 PE(R&D、品目番号FAB1380P)、抗ヒトULBP-4/RAET1E APC(R&D、品目番号FAB6285A)、抗ヒトULBP-2/5/6 APC(R&D、品目番号FAB1298A)、および抗ヒトMICA/MICB FITC(Miltenyi、品目番号130-106-100)。結果として得られたHT29細胞ペレットを、それぞれ、50μlの1% FBS+PBS中に再懸濁させた。対応する抗体(1~2μl)を、それぞれのサンプルに添加し、均一に混合した。4℃で30分間インキュベートした後、結果として得られたサンプルを、1% FBS+PBSで1回洗浄した。結果として得られたHT29細胞ペレットを、300μlの1% FBS+PBS中に再懸濁させ、均一に混合し、次いで、フローサイトメーターによって検出した。
【0243】
図28に示されるように(X軸は、様々なNKG2Dリガンド検出群を表し、Y軸は、対応する細胞数の百分率値を表す)、HT29細胞をH101に感染させ、24時間培養した後、ULBP-1およびULBP-4には有意な変化はなかったが、ULBP-2/5/6およびMICA/MICBの発現は、有意に増加した。
【0244】
実験例C12:H101によるHT29細胞の感染後の細胞表面上のNKG2Dリガンドの検出
実験例C12は、検出を、H101によるHT29細胞の感染を24時間ではなく48時間継続させた後に行ったことを除き、上述の実験例C11と類似であった。
図29に示されるように(X軸は、様々なNKG2Dリガンド検出群を表し、Y軸は、対応する細胞数の百分率値を表す)、HT29細胞をH101に48時間感染させた後、ULBP-1およびULBP-2/5/6には有意な変化はなかったが、ULBP-4およびMICA/MICBの発現は、有意に増加した。
【0245】
上述の結果は、1)HT29細胞をH101に感染させた後、細胞表面上の幾つかのNKG2Dリガンドが、有意に増加し、2)HT29細胞の表面上のNKG2Dリガンドの増加が、HT29細胞に対するNK細胞の認識および殺滅作用を促進し、3)H101およびNKの組合せ治療レジメンは、腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する場合に、最良の有効性を有することを示す。
【0246】
D:腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞の組合せ適用のA549細胞に対する殺滅作用に関する研究
実験例D1:A549細胞に対するNK細胞の用量応答実験
A549細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、DMEM:F12(1:1)+10% FBS中で48時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM:F12(1:1)+10% FBSで置きかえ、NK細胞を、以下のエフェクター対標的細胞の比(すなわち、E:T、細胞数の比)で添加した:NK:A549=それぞれ40:1、30:1、20:1、15:1、10:1、5:1、および1:1。それぞれのE:T比での殺滅プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、48時間継続させた。その後に、トリパンブルー染色法を、生存A549細胞の計数に使用し、NK細胞によるA549細胞の殺滅率を、NK細胞を添加しなかった対照群に対して計算した。用量応答曲線のX軸は、E:T比を表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す。殺滅時間が48時間であった実験の結果を、
図30に示すが、これは、E:T比が5:1のときに、約24%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するNK細胞の用量レベルとして採用した。
【0247】
実験例D2:A549細胞に対するddvv-RFPの用量応答実験
A549細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、DMEM:F12(1:1)+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しい無血清DMEM:F12(1:1)で置きかえ、ddvv-RFPを、それぞれ、0.135、0.027、0.0135、0.0054、0.0027、0.00135、および0.00054のMOIで添加した。ddvv-RFPを添加した時点を、0時間とした(以下同様)。感染プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、6時間継続させ、次いで、培地を除去し、細胞を、PBSで洗浄した。次いで、新しいDMEM:F12(1:1)+10% FBSを添加し、細胞を、さらに72時間インキュベートした。その後に、トリパンブルー染色法を、生存A549細胞の計数に使用し、ddvv-RFPによるA549細胞の殺滅率を、ddvv-RFPを添加しなかった対照群に対して計算した。
図31は、用量応答曲線(X軸は、MOIを表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、MOIが0.0027であるときに、約32%の阻害率を呈する。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するddvv-RFPの用量レベルとして採用した。
【0248】
例D3:ddvv-RFPおよびNKの組合せ殺滅実験
上述の実験例から、A549細胞に対する殺滅に好適なddvv-RFPの用量レベルは、約0.0027のMOIであり、A549細胞に対する殺滅に好適なNK細胞の用量レベルは、約5:1のE:T比(すなわち、NK:A549)であったと結論付けることができる。
【0249】
A549細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM:F12(1:1)+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEM:F12(1:1)で置きかえ、ddvv-RFP(MOI=0.0027)を添加した。6時間感染させた後、培地を、DMEM:F12(1:1)+10% FBSで置きかえ、細胞を、37℃で5% CO2において、48時間インキュベートした。次いで、NK細胞を、培地を置きかえることなく添加し(E:T比(NK:A549)=5:1)、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存A549細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もA549細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0250】
図32に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)は、A549細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約83%であった。しかしながら、この実験において、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約49%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約28%であった。
【0251】
比較例D4:薬物の組合せ同時投与
A549細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM:F12(1:1)+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEM:F12(1:1)で置きかえ、ddvv-RFPを添加した(MOI=0.0027)。6時間感染させた後、培地を、新しいDMEM:F12(1:1)+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:A549)=5:1)。細胞を、さらに96時間インキュベートし、次いで、死細胞および残屑を洗い流し、残っている生存A549細胞を、トリパンブルー染色法を使用して計数した。この実験には、ウイルスもNK細胞もA549細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0252】
図33に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約49%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約33%であった。これらの単独適用と比較して、NK細胞およびddvv-RFPの組合せ使用の阻害率は、約80%であったため増加していたが、しかしながら、有意な相乗作用は示されなかった。
【0253】
上述の結果は、1)ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用が、ddvv-RFPまたはNK細胞のいずれかの単独適用よりも優れた有効性を有すること、ならびに2)投与のタイミングが、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用の有効性に有意に影響を及ぼすことができ、ddvv-RFPおよびNK細胞を、実質的に同時に投与した場合、組合せ適用は相乗作用を示さなかったが、ddvv-RFPを最初に投与し、NK細胞を後から投与した場合には、組合せ適用は有意な相乗作用を示したことを示している。
【0254】
比較例D5:組合せ適用における異なる投与順序間での比較
A549細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM:F12(1:1)+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、NK細胞を、培地を置きかえることなく添加し(E:T比(NK:A549=5:1)、細胞を、37℃で5% CO2において、48時間インキュベートした。次いで、ddvv-RFP(MOI=0.0027)を、培地を置きかえることなく添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存A549細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もA549細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0255】
図34に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、順序逆転様式での組合せ適用(NK細胞を最初に投与し、ddvv-RFPを後から投与する)の阻害率は、約80%であり、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約33%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約48%であった。順序逆転様式での組合せ適用は、相乗作用を示さなかった。
【0256】
E:腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞の組合せ適用のHepG2細胞に対する殺滅作用に関する研究
実験例E1:HepG2細胞に対するddvv-RFPの用量応答実験
HepG2細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しい無血清DMEMで置きかえ、ddvv-RFPを、それぞれ、MOI=0.27、0.135、0.054、0.027、0.0135、および0.0027のMOIで添加した。感染プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、6時間継続させ、次いで、培地を除去し、細胞を、PBSで洗浄した。次いで、新しいDMEM+10% FBSを添加し、細胞を、さらに72時間インキュベートした。その後に、トリパンブルー染色法を、生存HepG2細胞の計数に使用し、ddvv-RFPによるHepG2の殺滅率を、ddvv-RFPを添加しなかった対照群に対して計算した。
図35は、用量応答曲線(X軸は、MOIを表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、HepG2細胞に対するddvv-RFPの用量レベルが約0.027のMOIであるときに、約42%の阻害率を呈し、用量レベルが約0.0135のMOIであるときに、約19%の阻害率を呈する。後続の組合せ殺滅実験において、ddvv-RFPおよびNK細胞の投与間の間隔が24時間であった場合には、使用するddvv-RFPの用量レベルとして、MOI=0.027を採用することが好適であったが、一方で、その間隔が48時間であった場合には、使用するddvv-RFPの用量レベルとして、MOI=0.0135を採用することが好適であった。
【0257】
例E2:ddvv-RFPおよびNKの組合せ殺滅実験
上述の実験例から、HepG2細胞に対する殺滅に好適なddvv-RFPの用量レベルは、約0.027のMOIであり、HepG2細胞に対する殺滅に好適なNK細胞の用量レベルは、約3:1のE:T比(すなわち、NK:HepG2)であったと結論付けることができる。
【0258】
HepG2細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEMで置きかえ、ddvv-RFPを添加した(MOI=0.027)。6時間感染させた後、培地を、DMEM+10% FBSで置きかえ、細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。次いで、NK細胞を、培地を置きかえることなく添加し(E:T比(NK:HepG2=3:1)、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HepG2細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHepG2細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0259】
図36に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)は、HepG2細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約85%であった。しかしながら、この実験において、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約51%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約23%であった。
【0260】
例E3:ddvv-RFPおよびNKの組合せ殺滅実験
例E3は、ddvv-RFPをMOI=0.0135の用量レベルで添加し、感染した細胞を、24時間ではなく48時間インキュベートした後に、NK細胞を添加したことを除き、上述の例E2と類似であった。
図39に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、最終的な結果はまた、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)は、HepG2細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約79%であったことを示した。しかしながら、この実験において、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約53%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約20%であった。
【0261】
比較例E4:薬物の組合せ同時投与
HepG2細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEMで置きかえ、ddvv-RFPを添加した(MOI=0.027)。6時間感染させた後、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:HepG2)=3:1)。細胞を、さらに72時間インキュベートし、次いで、死細胞および残屑を洗い流し、残っている生存HepG2細胞を、トリパンブルー染色法を使用して計数した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHepG2細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0262】
図37に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約52%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約36%であった。これらの単独適用と比較して、NK細胞およびddvv-RFPの組合せ使用の阻害率は、約80%であったため増加していたが、しかしながら、有意な相乗作用は示されなかった。
【0263】
比較例E5:薬物の組合せ同時投与
比較例E5は、ddvv-RFPをMOI=0.0135の用量レベルで添加し、細胞を、ddvv-RFPとNK細胞の両方とともに72時間ではなく96時間インキュベートしたことを除き、上述の比較例E4と類似であった。
図40に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約50%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約49%であった。これらの単独適用と比較して、NK細胞およびddvv-RFPの組合せ使用の阻害率は、約84%であったため増加していたが、しかしながら、有意な相乗作用は示されなかった。
【0264】
上述の結果は、1)ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用が、ddvv-RFPまたはNK細胞のいずれかの単独適用よりも優れた有効性を有すること、ならびに2)投与のタイミングが、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用の有効性に有意に影響を及ぼすことができ、ddvv-RFPおよびNK細胞を、実質的に同時に投与した場合、組合せ適用は相乗作用を示さなかったが、ddvv-RFPの投与の約24~48時間後にNK細胞を投与した場合には、組合せ適用は有意な相乗作用を示したことを示している。
【0265】
比較例E6:組合せ適用における異なる投与順序間での比較
HepG2細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:HepG2)=3:1)。細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。次いで、ddvv-RFP(MOI=0.0027)を、培地を置きかえることなく添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HepG2細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHepG2細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0266】
図38に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、順序逆転様式での組合せ適用(NK細胞を最初に投与し、ddvv-RFPを後から投与する)の阻害率は、約55%であり、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約28%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約35%であった。順序逆転様式での組合せ適用は、相乗作用を示さなかった。
【0267】
比較例E7:組合せ適用における異なる投与順序間での比較
比較例E7は、NKを添加した後、細胞を、24時間ではなく48時間インキュベートした後に、ddvv-RFPを添加したこと(MOI=0.0135)を除き、上述の比較例E6と類似であった。
図41に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、順序逆転様式での組合せ適用(NK細胞を最初に投与し、ddvv-RFPを後から投与する)の阻害率は、約56%であり、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約25%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約41%であった。順序逆転様式での組合せ適用は、相乗作用を示さなかった。
【0268】
F:腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞の組合せ適用のHT29細胞に対する殺滅作用に関する研究
実験例F1:HT29に対するddvv-RFPの用量応答実験
HT29細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しい無血清DMEMで置きかえ、ddvv-RFPを、それぞれ、MOI=2、1、0.5、0.25、0.1、および0.05のMOIで添加した。感染プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、6時間継続させ、次いで、培地を除去し、細胞を、PBSで洗浄した。次いで、新しいDMEM+10% FBSを添加し、細胞を、さらに72時間インキュベートした。その後に、トリパンブルー染色法を、生存HT29細胞の計数に使用し、ddvv-RFPによるHT29細胞の殺滅率を、ddvv-RFPを添加しなかった対照群に対して計算した。
図42は、用量応答曲線(X軸は、MOIを表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、HT29細胞に対するddvv-RFPの用量レベルが約0.2のMOIであるときに、約49%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量MOI=0.2を、組合せ殺滅実験において使用するddvv-RFPの用量レベルとして採用した。
【0269】
例F2:ddvv-RFPおよびNKの組合せ殺滅実験
上述の実験例から、HT29細胞に対する殺滅に好適なddvv-RFPの用量レベルは、約0.2のMOIであり、HT29細胞に対する殺滅に好適なNK細胞の用量レベルは、約3:1のE:T比(すなわち、NK:HT29)であったと結論付けることができる。
【0270】
HT29細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEMで置きかえ、ddvv-RFPを添加した(MOI=0.2)。6時間感染させた後、培地を、DMEM+10% FBSで置きかえ、細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加し(E:T比(NK:HT29)=3:1)、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HT29細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHT29細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0271】
図43に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)は、HT29細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約70%であった。しかしながら、この実験において、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約38%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約23%であった。
【0272】
例F3:ddvv-RFPおよびNKの組合せ殺滅実験
例F3は、ddvv-RFPの添加による感染の後、細胞を、24時間ではなく48時間インキュベートした後に、NK細胞を添加したことを除き、上述の例F2と類似であった。
図46に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、最終的な結果はまた、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)は、HT29細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約78%であったことを示した。しかしながら、この実験において、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約59%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約12%であった。
【0273】
比較例F4:薬物の組合せ同時投与
HT29細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEMで置きかえ、ddvv-RFPを添加した(MOI=0.2)。6時間感染させた後、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:HT29)=3:1)。細胞を、さらに72時間インキュベートし、次いで、死細胞および残屑を洗い流し、残っている生存HT29細胞を、トリパンブルー染色法を使用して計数した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHT29細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0274】
図44に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約38%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約30%であった。これらの単独適用と比較して、NK細胞およびddvv-RFPの組合せ使用の阻害率は、約61%であったため増加していたが、しかしながら、有意な相乗作用は示されなかった。
【0275】
比較例F5:薬物の組合せ同時投与
比較例F5は、ddvv-RFPおよびNKを添加した後、細胞を、72時間ではなく96時間インキュベートしたことを除き、上述の比較例F4と類似であった。
図47に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約64%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約19%であった。これらの単独適用と比較して、NK細胞およびddvv-RFPの組合せ使用の阻害率は、約77%であったため増加していたが、しかしながら、有意な相乗作用は示されなかった。
【0276】
上述の結果は、1)ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用が、ddvv-RFPまたはNK細胞のいずれかの単独適用よりも優れた有効性を有すること、ならびに2)投与のタイミングが、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用の有効性に有意に影響を及ぼすことができ、ddvv-RFPおよびNK細胞を、同時に投与した場合、組合せ適用は相乗作用を示さなかったが、ddvv-RFPの投与の約24~48時間後にNK細胞を投与した場合には、組合せ適用は相乗作用を示したことを示している。
【0277】
比較例F6:組合せ適用における異なる投与順序間での比較
HT29細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:HT29)=3:1)。細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。次いで、ddvv-RFP(MOI=0.2)を、培地を置きかえることなく添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HT29細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHT29細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0278】
図45に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、順序逆転様式での組合せ適用(NK細胞を最初に投与し、ddvv-RFPを後から投与する)の阻害率は、約43%であり、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約30%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約30%であった。順序逆転様式での組合せ適用は、相乗作用を示さなかった。
【0279】
比較例F7:組合せ適用における異なる投与順序間での比較
比較例F7は、NKを添加した後、細胞を、24時間ではなく48時間インキュベートした後に、ddvv-RFPを添加したことを除き、上述の比較例F6と類似であった。
図48に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、順序逆転様式での組合せ適用(NK細胞を最初に投与し、ddvv-RFPを後から投与する)の阻害率は、約34%であり、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約21%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約22%であった。順序逆転様式での組合せ適用は、相乗作用を示さなかった。
【0280】
G:腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞の組合せ適用のHCT116細胞に対する殺滅作用に関する研究
実験例G1:HCT116細胞に対するNK細胞の用量応答実験
HCT116細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、マッコイ5A+10% FBS中で48時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいマッコイ5A+10% FBSで置きかえ、NK細胞を、以下のエフェクター対標的細胞の比(すなわち、E:T、細胞数の比)で添加した:NK:HCT116=それぞれ40:1、20:1、10:1、および5:1。それぞれのE:T比での殺滅プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、48時間継続させた。その後に、トリパンブルー染色法を、生存HCT116細胞の計数に使用し、NK細胞によるHCT116細胞の殺滅率を、NK細胞を添加しなかった対照群に対して計算した。用量応答曲線を、
図49に示すが(X軸は、E:T比を表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)、これは、E:T比が10:1であるときに、約13%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するNK細胞の用量レベルとして採用した。
【0281】
実験例G2:HCT116細胞に対するddvv-RFPの用量応答実験
HCT116細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、マッコイ5A+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しい無血清マッコイ5Aで置きかえ、ddvv-RFPを、それぞれ、MOI=8、4、2、1、0.5、0.25、および0.125のMOIで添加した。感染プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、6時間継続させ、次いで、培地を除去し、細胞を、PBSで洗浄した。次いで、マッコイ5A+10% FBSを添加し、細胞を、さらに72時間インキュベートした。その後に、トリパンブルー染色法を、生存HCT116細胞の計数に使用し、ddvv-RFPによるHCT116細胞の殺滅率を、ddvv-RFPを添加しなかった対照群に対して計算した。
図50は、用量応答曲線(X軸は、MOIを表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、HCT116細胞に対するddvv-RFPの用量レベルが約0.7のMOIであるときに、約22%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するddvv-RFPの用量レベルとして採用した。
【0282】
例G3:ddvv-RFPおよびNKの組合せ殺滅実験
上述の実験例から、HCT116細胞に対する殺滅に好適なddvv-RFPの用量レベルは、約0.7のMOIであり、HCT116細胞に対する殺滅に好適なNK細胞の用量レベルは、約10:1のE:T比(すなわち、NK:HCT116)であったと結論付けることができる。
【0283】
HCT116細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、マッコイ5A+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清マッコイ5Aで置きかえ、ddvv-RFPを添加した(MOI=0.7)。6時間感染させた後、培地を、マッコイ5A+10% FBSで置きかえ、細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。次いで、NK細胞を、培地を置きかえることなく添加し(E:T比(NK:HCT116=10:1)、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HCT116細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHCT116細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0284】
図51に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)は、HCT116細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約71%であった。しかしながら、この実験において、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約37%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約25%であった。
【0285】
比較例G4:薬物の組合せ同時投与
HCT116細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、マッコイ5A+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清マッコイ5Aで置きかえ、ddvv-RFPを添加した(MOI=0.7)。6時間感染させた後、培地を、新しいマッコイ5A+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:HCT116)=10:1)。細胞を、さらに72時間インキュベートし、次いで、死細胞および残屑を洗い流し、残っている生存HCT116細胞を、トリパンブルー染色法を使用して計数した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHCT116細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0286】
図52に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約37%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約41%であった。これらの単独適用と比較して、NK細胞およびddvv-RFPの組合せ使用の阻害率は、約78%であったため増加していたが、しかしながら、有意な相乗作用は示されなかった。
【0287】
上述の結果は、1)ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用が、ddvv-RFPまたはNK細胞のいずれかの単独適用よりも優れた有効性を有すること、ならびに2)投与のタイミングが、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用の有効性に有意に影響を及ぼすことができ、ddvv-RFPおよびNK細胞を、実質的に同時に投与した場合、組合せ適用は相乗作用を示さなかったが、ddvv-RFPを最初に投与し、NK細胞を後から投与した場合には、組合せ適用は相乗作用を示したことを示している。
【0288】
比較例G5:組合せ適用における異なる投与順序間での比較
HCT116細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、マッコイ5A+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、NK細胞を、培地を置きかえることなく添加し(E:T比(NK:HCT116)=10:1)、細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。次いで、ddvv-RFP(MOI=0.7)を、培地を置きかえることなく添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存HCT116細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もHCT116細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0289】
図53に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、順序逆転様式での組合せ適用(NK細胞を最初に投与し、ddvv-RFPを後から投与する)の阻害率は、約58%であり、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約21%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約41%であった。順序逆転様式での組合せ適用は、相乗作用を示さなかった。
【0290】
H:腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞の組合せ適用のFaDu細胞に対する殺滅作用に関する研究
実験例H1:FaDu細胞に対するNK細胞の用量応答実験
FaDu細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、MEM+10% FBS中で48時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を、以下のエフェクター対標的細胞の比(すなわち、E:T、細胞数の比)で添加した:NK:FaDu=それぞれ40:1、30:1、20:1、15:1、10:1、および5:1。それぞれのE:T比での殺滅プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、48時間継続させた。その後に、トリパンブルー染色法を、生存FaDu細胞の計数に使用し、NK細胞によるFaDu細胞の殺滅率を、NK細胞を添加しなかった対照群に対して計算した。用量応答曲線を、
図54に示すが(X軸は、E:T比を表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)、これは、E:T比が10:1であるときに、約27%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するNK細胞の用量レベルとして採用した。
【0291】
実験例H2:FaDu細胞に対するddvv-RFPの用量応答実験
FaDu細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、MEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しい無血清MEMで置きかえ、ddvv-RFPを、それぞれ、MOI=2、1、0.5、0.25、0.125、0.0625、および0.03125のMOIで添加した。感染プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、6時間継続させ、次いで、培地を除去し、細胞を、PBSで洗浄した。次いで、MEM+10% FBSを添加し、細胞を、さらに72時間インキュベートした。その後に、トリパンブルー染色法を、生存FaDu細胞の計数に使用し、ddvv-RFPによるFaDuの殺滅率を、ddvv-RFPを添加しなかった対照群に対して計算した。
図55は、用量応答曲線(X軸は、MOIを表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、FaDu細胞に対するddvv-RFPの用量レベルが約0.2のMOIであるときに、約32%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するddvv-RFPの用量レベルとして採用した。
【0292】
例H3:ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ殺滅実験
上述の実験例から、FaDu細胞に対する殺滅に好適なddvv-RFPの用量レベルは、約0.2のMOIであり、FaDu細胞に対する殺滅に好適なNK細胞の用量レベルは、約10:1のE:T比(すなわち、NK:FaDu)であったと結論付けることができる。
【0293】
FaDu細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、MEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清MEMで置きかえ、ddvv-RFPを添加した(MOI=0.2)。6時間感染させた後、培地を、MEM+10% FBSで置きかえ、細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。次いで、NK細胞を、培地を置きかえることなく添加し(E:T比(NK:FaDu=10:1)、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存FaDu細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もFaDu細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0294】
図56に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)は、FaDu細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約82%であった。しかしながら、この実験において、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約38%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約26%であった。
【0295】
比較例H4:薬物の組合せ同時投与
FaDu細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、MEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清MEMで置きかえ、ddvv-RFPを添加した(MOI=0.2)。6時間感染させた後、培地を、新しいMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:FaDu)=10:1)。細胞を、さらに72時間インキュベートし、次いで、死細胞および残屑を洗い流し、残っている生存FaDu細胞を、トリパンブルー染色法を使用して計数した。この実験には、ウイルスもNK細胞もFaDu細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0296】
図57に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約38%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約41%であった。これらの単独適用と比較して、NK細胞およびddvv-RFPの組合せ使用の阻害率は、約72%であったため増加していたが、しかしながら、有意な相乗作用は示されなかった。
【0297】
上述の結果は、1)ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用が、ddvv-RFPまたはNK細胞のいずれかの単独適用よりも優れた有効性を有すること、ならびに2)投与のタイミングが、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用の有効性に有意に影響を及ぼすことができ、ddvv-RFPおよびNK細胞を、実質的に同時に投与した場合、組合せ適用は相乗作用を示さなかったが、ddvv-RFPを最初に投与し、NK細胞を後から投与した場合には、組合せ適用は有意な相乗作用を示したことを示している。
【0298】
比較例H5:組合せ適用における異なる投与順序間での比較
FaDu細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、MEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、NK細胞を、培地を置きかえることなく添加し(E:T比(NK:FaDu=10:1)、細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。次いで、ddvv-RFP(MOI=0.2)を、培地を置きかえることなく添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存FaDu細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もFaDu細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0299】
図58に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、順序逆転様式での組合せ適用(NK細胞を最初に投与し、ddvv-RFPを後から投与する)の阻害率は、約64%であり、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約22%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約41%であった。順序逆転様式での組合せ適用は、有意な相乗作用を示さなかった(P>0.8)。
【0300】
I:腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞の組合せ適用のSK-HEP-1細胞に対する殺滅作用に関する研究
実験例I1:SK-HEP-1細胞に対するNK細胞の用量応答実験
SK-HEP-1細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、MEM+10% FBS中で48時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を、以下のエフェクター対標的細胞の比(すなわち、E:T、細胞数の比)で添加した:NK:SK-HEP-1=それぞれ40:1、30:1、20:1、10:1、および5:1。それぞれのE:T比での殺滅プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、48時間継続させた。その後に、トリパンブルー染色法を、生存SK-HEP-1細胞の計数に使用し、NK細胞によるSK-HEP-1細胞の殺滅率を、NK細胞を添加しなかった対照群に対して計算した。
図59は、用量応答曲線(X軸は、E:T比を表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、E:T比が5:1であるときに、約17%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するNK細胞の用量レベルとして採用した。
【0301】
実験例I2:SK-HEP-1細胞に対するddvv-RFPの用量応答実験
SK-HEP-1細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、MEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しい無血清MEMで置きかえ、ddvv-RFPを、それぞれ、MOI=1、0.5、0.25、0.125、0.0625、0.03、および0.015のMOIで添加した。感染プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、6時間継続させ、次いで、培地を除去し、細胞を、PBSで洗浄した。次いで、MEM+10% FBSを添加し、細胞を、さらに72時間インキュベートした。その後に、トリパンブルー染色法を、生存SK-HEP-1細胞の計数に使用し、ddvv-RFPによるSK-HEP-1の殺滅率を、ddvv-RFPを添加しなかった対照群に対して計算した。
図60は、用量応答曲線(X軸は、MOIを表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、SK-HEP-1細胞に対するddvv-RFPの用量レベルが約0.15のMOIであるときに、約40%の阻害率を呈し、好適な用量レベルを示している。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するddvv-RFPの用量レベルとして採用した。
【0302】
例I3:ddvv-RFPおよびNKの組合せ殺滅実験
上述の実験例から、SK-HEP-1細胞に対する殺滅に好適なddvv-RFPの用量レベルは、約0.15のMOIであり、SK-HEP-1細胞に対する殺滅に好適なNK細胞の用量レベルは、約5:1のE:T比(すなわち、NK:SK-HEP-1)であったと結論付けることができる。
【0303】
SK-HEP-1細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、MEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清MEMで置きかえ、ddvv-RFPを添加した(MOI=0.15)。6時間感染させた後、培地を、MEM+10% FBSで置きかえ、細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。培地を、新しいMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加し(E:T比(NK:SK-HEP-1)=5:1)、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存SK-HEP-1細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もSK-HEP-1細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0304】
図61に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)は、SK-HEP-1細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約72%であった。しかしながら、この実験において、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約51%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約13%であった。
【0305】
比較例I4:薬物の組合せ同時投与
SK-HEP-1細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、MEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清MEMで置きかえ、ddvv-RFPを添加した(MOI=0.15)。6時間感染させた後、培地を、新しいMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:SK-HEP-1)=5:1)。細胞を、さらに72時間インキュベートし、次いで、死細胞および残屑を洗い流し、残っている生存SK-HEP-1細胞を、トリパンブルー染色法を使用して計数した。この実験には、ウイルスもNK細胞もSK-HEP-1細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0306】
図62に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約51%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約17%であった。これらの単独適用と比較して、NK細胞およびddvv-RFPの組合せ使用の阻害率は、約60%であったため増加していたが、しかしながら、有意な相乗作用は示されなかった。
【0307】
上述の結果は、1)ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用が、ddvv-RFPまたはNK細胞のいずれかの単独適用よりも優れた有効性を有すること、ならびに2)投与のタイミングが、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用の有効性に有意に影響を及ぼすことができ、ddvv-RFPおよびNK細胞を、実質的に同時に投与した場合、組合せ適用は相乗作用を示さなかったが、ddvv-RFPを最初に投与し、NK細胞を後から投与した場合には、組合せ適用は有意な相乗作用を示したことを示している。
【0308】
比較例I5:組合せ適用における異なる投与順序間での比較
SK-HEP-1細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、MEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:SK-HEP-1)=5:1)。細胞を、37℃で5% CO2において、24時間インキュベートした。次いで、ddvv-RFP(MOI=0.15)を、培地を置きかえることなく添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存SK-HEP-1細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もSK-HEP-1細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0309】
図63に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、順序逆転様式での組合せ適用(NK細胞を最初に投与し、ddvv-RFPを後から投与する)の阻害率は、約21%であり、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約11%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約17%であった。順序逆転様式での組合せ適用は、相乗作用を示さなかった。
【0310】
J:腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびNK細胞の組合せ適用のPANC-1細胞に対する殺滅作用に関する研究
実験例J1:PANC-1細胞に対するNK細胞の用量応答実験
PANC-1細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、DMEM+10% FBS中で48時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を、以下のエフェクター対標的細胞の比(すなわち、E:T、細胞数の比)で添加した:NK:PANC-1=それぞれ40:1、20:1、15:1、10:1、および5:1。それぞれのE:T比での殺滅プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、48時間継続させた。その後に、トリパンブルー染色法を、生存PANC-1細胞の計数に使用し、NK細胞によるPANC-1細胞の殺滅率を、NK細胞を添加しなかった対照群に対して計算した。
図64は、用量応答曲線(X軸は、E:T比を表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、E:T比が3:1であるときに、約10%の阻害率を呈する。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するNK細胞の用量レベルとして採用した。
【0311】
実験例J2:PANC-1細胞に対するddvv-RFPの用量応答実験
PANC-1細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO
2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しい無血清DMEMで置きかえ、ddvv-RFPを、それぞれ、MOI=0.5、0.25、0.125、0.0625、0.03、および0.015のMOIで添加した。感染プロセスは、細胞を37℃で5% CO
2においてインキュベートした状態で、6時間継続させ、次いで、培地を除去し、細胞を、PBSで洗浄した。次いで、DMEM+10% FBSを添加し、細胞を、さらに72時間インキュベートした。その後に、トリパンブルー染色法を、生存PANC-1細胞の計数に使用し、ddvv-RFPによるPANC-1の殺滅率を、ddvv-RFPを添加しなかった対照群に対して計算した。
図65は、用量応答曲線(X軸は、MOIを表し、Y軸は、阻害率(IR)の百分率値を表す)を示すが、これは、MOIが0.1であるときに、約58%の阻害率を呈する。この投薬量を、組合せ殺滅実験において使用するddvv-RFPの用量レベルとして採用した。
【0312】
例J3:ddvv-RFPおよびNKの組合せ殺滅実験
上述の実験例から、PANC-1細胞に対する殺滅に好適なddvv-RFPの用量レベルは、約0.1のMOIであり、PANC-1細胞に対する殺滅に好適なNK細胞の用量レベルは、約3:1のE:T比(すなわち、NK:PANC-1)であったと結論付けることができる。
【0313】
PANC-1細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEMで置きかえ、ddvv-RFPを添加した(MOI=0.1)。6時間感染させた後、培地を、DMEM+10% FBSで置きかえ、細胞を、37℃で5% CO2において、48時間インキュベートした。培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加し(E:T比(NK:PANC-1)=3:1)、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存PANC-1細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もPANC-1細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0314】
図66に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用(腫瘍溶解性ウイルスを最初に投与し、NK細胞を後から投与する)は、PANC-1細胞に対して有意な相乗殺滅作用を有し、相乗阻害率は、約85%であった。しかしながら、この実験において、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約59%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約13%であった。
【0315】
比較例J4:薬物の組合せ同時投与
PANC-1細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、無血清DMEMで置きかえ、ddvv-RFPを添加した(MOI=0.1)。6時間感染させた後、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:PANC-1)=3:1)。細胞を、さらに96時間インキュベートし、次いで、死細胞および残屑を洗い流し、残っている生存PANC-1細胞を、トリパンブルー染色法を使用して計数した。この実験には、ウイルスもNK細胞もPANC-1細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0316】
図67に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約59%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約19%であった。これらの単独適用と比較して、NK細胞およびddvv-RFPの組合せ使用の阻害率は、約80%であったため増加していたが、しかしながら、有意な相乗作用は示されなかった(P>0.3)。
【0317】
上述の結果は、1)ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用が、ddvv-RFPまたはNK細胞のいずれかの単独適用よりも優れた有効性を有すること、ならびに2)投与のタイミングが、ddvv-RFPおよびNK細胞の組合せ適用の有効性に有意に影響を及ぼすことができ、ddvv-RFPおよびNK細胞を、実質的に同時に投与した場合、組合せ適用は有意な相乗作用を示さなかったが、ddvv-RFPを最初に投与し、NK細胞を後から投与した場合には、組合せ適用は有意な相乗作用を示したことを示している。
【0318】
比較例J5:組合せ適用における異なる投与順序間での比較
PANC-1細胞を、30%のコンフルエンシーで培養プレートに播種し、37℃で5% CO2において、DMEM+10% FBS中で24時間インキュベートした。次いで、培地を、新しいDMEM+10% FBSで置きかえ、NK細胞を添加した(E:T比(NK:PANC-1)=3:1)。細胞を、37℃で5% CO2において、48時間インキュベートした。次いで、ddvv-RFP(MOI=0.1)を、培地を置きかえることなく添加し、細胞を、さらに48時間インキュベートした。死細胞および残屑を洗い流し、トリパンブルー染色法を、残っている生存PANC-1細胞の計数に使用した。この実験には、ウイルスもNK細胞もPANC-1細胞に添加していないブランク対照群、ddvv-RFPをその対応する時点で添加したが、NK細胞を添加していないddvv-RFP群、およびNK細胞をその対応する時点で添加したが、ddvv-RFPを添加していないNK群も、存在した。すべての対照群に、対応する時間において対応する培地置きかえ操作を行った。すべての実験を、3回にわたって繰り返し、平均を、統計学的分析に使用した。
【0319】
図68に示されるように(X軸は、様々な群を表し、Y軸は、対応する阻害率の百分率値を表す)、順序逆転様式での組合せ適用(NK細胞を最初に投与し、ddvv-RFPを後から投与する)の阻害率は、約28%であり、ddvv-RFPの単独適用の阻害率は、約21%であり、NK細胞の単独適用の阻害率は、約19%であった。順序逆転様式での組合せ適用は、相乗作用を示さなかった。