(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】空調衣服の服本体及び空調衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
A41D13/002 105
(21)【出願番号】P 2019090087
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519168594
【氏名又は名称】TBユニファッション株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592171005
【氏名又は名称】株式会社セフト研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】397035597
【氏名又は名称】山田辰株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 充
(72)【発明者】
【氏名】牧田 重之
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 弘司
(72)【発明者】
【氏名】山田 一人
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-2455(JP,A)
【文献】特開2006-307354(JP,A)
【文献】登録実用新案第3220715(JP,U)
【文献】特開2019-35178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/002-13/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性のない又は空気導入手段による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地を用いて形成され、
前記空気導入手段を取り付けるための取付部と、
前記空気導入手段によって導入された空気を排出する空気排出部と、
を備えた空調衣服の服本体であって、
前記取付部は、
前記空気導入手段を取り付けることができる取付孔が形成されたシート状部材と、
前記シート状部材よりも前記服本体の外面側に配置されたメッシュ状部材と、
を備え、
前記服本体の内面側に、前記メッシュ状部材と前記シート状部材との間の空間へと通じ、前記空気導入手段を通過させることができる開口部が形成されていることを特徴とする空調衣服の服本体。
【請求項2】
前記服本体の服地には、当該服地を貫通する孔部が形成され、
前記メッシュ状部材と、前記シート状部材とは、前記孔部を覆うようにして前記孔部周囲の前記服地に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の空調衣服の服本体。
【請求項3】
前記シート状部材は、前記服地に前記服本体の内面側から接合され、
前記シート状部材と前記服地とが接合されていない部分の前記シート状部材と前記服地との間に、前記開口部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の空調衣服の服本体。
【請求項4】
前記メッシュ状部材は、前記服本体の内面側から、前記服地に接合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体。
【請求項5】
前記シート状部材としての前記服地に、前記取付孔と、前記開口部と、が形成され、
前記メッシュ状部材は、前記取付孔と、前記開口部と、を前記服本体の外面側から覆うようにして、前記服地に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の空調衣服の服本体。
【請求項6】
前記開口部を開閉自在とする開閉手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体と、
前記空調衣服の服本体の内部に空気を導入する空気導入手段と、
前記空気導入手段に電力を供給する電源手段と、
を備えることを特徴とする空調衣服。
【請求項8】
前記空気導入手段は、前記取付孔に挿通された状態で、
前記空気導入手段のうち前記メッシュ状部材と前記シート状部材との間の空間に位置する部分と、前記空気導入手段と係合する所定の取付手段と、によって、前記シート状部材の前記取付孔の周囲の部分を挟むことで、
前記服本体に取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載の空調衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調衣服の服本体及び空調衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、身体を冷却する空調衣服が実用化され、急速に普及しつつある。従来の空調衣服は、通気性の低い素材で形成された服本体と、服本体の後側の下方に取り付けられた2つのファンと、2つのファンに電力を供給するための電源装置と、電源装置と2つのファンとを電気的に接続するための電源ケーブルと、を備える。
【0003】
ファンを作動させると、大量の空気がファンから服本体内に取り込まれ、取り込まれた空気の圧力により服本体と着用者の身体との間に空気流通路が自動的に形成される。取り込まれた空気は、形成された空気流通路を着用者の身体又は下着の表面に沿って流通し、例えば、襟部や袖部の開口部に形成された空気排出部から外部に排出される。
そして、取り込まれた空気が、服本体と着用者の身体又は下着との間の空気流通路を流通する間に、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体が冷却される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような空調衣服においては、服本体に設けられたファン取付孔を挿通するようにしてファンが取り付けられるところ、このようなファンが服本体の外面側へと落下することを防止する等のため、ファン取付孔を服本体の外面側から覆うようにしてメッシュ状部材が備えられた空調衣服が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】村上被服株式会社ホームページ、[平成31年4月15日検索]、インターネット<URL:https://hooh.jp/full-harness/>、フルハーネス対応快適ウェア
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
空調衣服においては、ファン取付孔を覆うメッシュ状部材が備えられた場合においても、ファンを着脱自在であることが求められる。そこで、非特許文献1に記載の発明においては、メッシュ状部材の脇に開口部を形成した上で、当該開口部を線ファスナーで開閉自在とすることで、当該開口部を用いてファンの着脱を可能としつつ、ファンの装着後には当該開口部を線ファスナーを用いて閉じることで、装着後のファンの落下防止を図っている。
しかしながら、このように服本体の外面側にメッシュ状部材の開口部が存在する構造では、空調衣服の着用中にメッシュ状部材がどこかに引っ掛かってしまった場合等に、当該開口部が開いてしまう可能性は否定できず、ファンの落下を防止する効果は十分ではなかった。
【0008】
本発明の課題は、ファンが落下し難い空調衣服の服本体及び空調衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
通気性のない又は空気導入手段による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地を用いて形成され、
前記空気導入手段を取り付けるための取付部と、
前記空気導入手段によって導入された空気を排出する空気排出部と、
を備えた空調衣服の服本体であって、
前記取付部は、
前記空気導入手段を取り付けることができる取付孔が形成されたシート状部材と、
前記シート状部材よりも前記服本体の外面側に配置されたメッシュ状部材と、
を備え、
前記服本体の内面側に、前記メッシュ状部材と前記シート状部材との間の空間へと通じ、前記空気導入手段を通過させることができる開口部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空調衣服の服本体であって、
前記服本体の服地には、当該服地を貫通する孔部が形成され、
前記メッシュ状部材と、前記シート状部材とは、前記孔部を覆うようにして前記孔部周囲の前記服地に接合されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の空調衣服の服本体であって、
前記シート状部材は、前記服地に前記服本体の内面側から接合され、
前記シート状部材と前記服地とが接合されていない部分の前記シート状部材と前記服地との間に、前記開口部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体であって、
前記メッシュ状部材は、前記服本体の内面側から、前記服地に接合されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の空調衣服の服本体であって、
前記シート状部材としての前記服地に、前記取付孔と、前記開口部と、が形成され、
前記メッシュ状部材は、前記取付孔と、前記開口部と、を前記服本体の外面側から覆うようにして、前記服地に取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体であって、
前記開口部を開閉自在とする開閉手段を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、空調衣服であって、
請求項1から6のいずれか一項に記載の空調衣服の服本体と、
前記空調衣服の服本体の内部に空気を導入する空気導入手段と、
前記空気導入手段に電力を供給する電源手段と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の空調衣服であって、
前記空気導入手段は、前記取付孔に挿通された状態で、
前記空気導入手段のうち前記メッシュ状部材と前記シート状部材との間の空間に位置する部分と、前記空気導入手段と係合する所定の取付手段と、によって、前記シート状部材の前記取付孔の周囲の部分を挟むことで、
前記服本体に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ファンが落下し難い空調衣服の服本体及び空調衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る空調衣服の正面図である。
【
図3】
図1のIII-III部における断面図である。
【
図4】(a)は第1実施形態に係る空調衣服の服本体のファン取付部を、服本体の内面側からみた概略図、(b)は第1実施形態に係る空調衣服の服本体のファン取付部を、服本体の外面側から見た概略図である。
【
図5】第1実施形態に係る空調衣服の、服本体に取り付けられた状態のファン及び取付リングの概略図である。
【
図6】(a)は第2実施形態に係る空調衣服の服本体のファン取付部を、服本体の内面側からみた概略図、(b)は第2実施形態に係る空調衣服の服本体のファン取付部を、服本体の外面側から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態である空調衣服について、
図1から
図6に基づいて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。なお、以下においては、着用者が空調衣服を着用した状態を基準として、着用者の前側を前、着用者の後側を後、着用者の上側を上、着用者の下側を下、着用者の右手側を右、着用者の左手側を左と定めて説明する。
【0020】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る空調衣服100について、
図1から
図5に基づいて説明する。
【0021】
{実施形態の構成}
第1実施形態に係る空調衣服100は、
図2及び
図3に示すように、服本体1と、服本体1内部に空気を導入するファン2と、ファン2を服本体1に取り付けるための取付リング3と、ファン2に電力を供給する電源部4と、電源部4とファン2とを接続する接続ケーブル5と、を備え、ファン2によって服本体1内に取り込まれた空気を、着用者の身体又は下着の表面に沿って流通させることで、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体を冷却するものである。
【0022】
(服本体)
服本体1は、
図1に示すように、通気性のない又はファン2による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地Cを用いて、着用者の身体を覆う形状に形成されている。
図1においては、服本体1を、上衣及び下衣が一体化されたつなぎ服型に形成しているが、服本体1の形状はこれに限られず、例えば、着用者の胴部及び腕部を覆うブルゾン型や、胴部のみを覆うベスト型に形成することも可能である。
なお、服地Cのうち、着用者の身体に向く側を内面I、その反対側の外部に向く側を外面Oとし、また、服地Cの内面Iが向く側を服本体1の内面側とし、服地Cの外面Oが向く側を服本体1の外面側とする。
【0023】
服本体1は、第一開閉手段11と、空気漏れ防止手段12と、ファン取付部13と、空気排出部14と、電源部保持手段15と、を備え、ファン取付部13からファン2によって取り込まれた空気が、空気排出部14から排出されるように構成されている。
【0024】
(第一開閉手段)
第一開閉手段11は、服本体1を前開きとし、空調衣服100を着用する際に、服本体1の前部を開閉するためのものであり、
図1及び
図3に示すように、服本体1の前身頃を左右に分割する分割部分の両側に備えられた線ファスナーである。なお、第一開閉手段11は服本体1の前身頃の分割部分を着脱自在とすることができるものであればよく、線ファスナーに限られないが、空気の漏れを防止する観点からは線ファスナーが望ましい。
【0025】
(空気漏れ防止手段)
空気漏れ防止手段12は、
図1及び
図2に示すように、服本体1の着用者の腹部に対応する位置に備えられた、ファン2によって導入された空気が服本体1と着用者の上半身との間の空間から、服本体1と着用者の下半身との間の空間へと流れることを防止するための手段である。空気漏れ防止手段12は、例えば、服本体1の着用者の腹部に対応する位置に、ゴム紐等の伸縮性のある部材を、着用者の身体を周回するように備えることによって形成される。
【0026】
空調衣服100の着用時においては、空気漏れ防止手段12によって、服本体1の着用者の腹部に対応する位置が絞り込まれて着用者の身体に密着することで、ファン2によって導入された空気が、服本体1と着用者の上半身との間の空間から、服本体1と着用者の下半身との間の空間へと流れることを防止する。これによって、襟部や袖部の空気排出部14からの空気の排出量を増やし、冷却効率のよい着用者の上半身への冷却効果を高めることができる。
【0027】
なお、空気漏れ防止手段12は必須の構成ではなく、例えば、空気漏れ防止手段12を備えず、ファン2によって導入された空気が、服本体1と着用者の上半身との間の空間から、服本体1と着用者の下半身との間の空間へも流れ、これが裾から排出されるようにしてもよい。この場合、着用者の全身を万遍なく冷却することが可能となる。
【0028】
(ファン取付部)
ファン取付部13は、
図1から
図3に示すように、服本体1の着用者の左右の脇の下方に対応する位置の2か所に形成された、服本体1にファン2を取り付けるための部分であり、
図4に示すように、服本体1の服地Cに形成された、これを貫通する孔部131と、孔部131を覆うメッシュ状部材132と、服本体1の服地Cの内面I側に備えられた裏地133と、裏地133に形成されたファン取付孔134と、裏地133の上部と服本体1の服地Cの内面Iとの間に形成された開口部135と、から構成されている。
【0029】
なお、ファン取付部13が形成される位置としては、空調衣服100の着用時に比較的蒸れやすい着用者の脇周辺を効果的に冷却する観点からは、上記の位置が好ましいが、これに限られず、例えば、服本体1の後面の着用者の腰に対応する位置に形成することも可能である。
また、ファン取付部13が形成される個数は、2個に限られず、これより少数又は多数のファン取付部13を形成し、これに対応した数のファン2を取り付けてもよい。例えば、上記位置に加えて、着用者の下半身の冷却効率を向上するために、着用者の足を覆う部分にも備えてもよい。
【0030】
(孔部)
孔部131は、服本体1の服地Cに形成された、内面I側と外面O側とを繋ぐ貫通部である。
図1及び
図4(b)においては矩形状に形成された場合につき図示しているが、孔部131の形状は、ファン取付孔134に取り付けられた状態のファン2の外面側に空気の取り込み口を形成できるものであれば任意であり、例えば、円形や三角形であってもよい。
【0031】
(メッシュ状部材)
メッシュ状部材132は、
図1及び
図4(b)に示すように、孔部131の全体を覆うように服本体1の服地Cに取り付けられた網状の部材であり、
図3に示すように、服地Cの内面I側に孔部131の全体を覆うようにして配置された上で、孔部131の周囲を囲むように、例えば縫合等の方法で、隙間なく服地Cに接合されている。
なお、孔部131の周囲と隙間なく接合されていることは必須ではなく、後述のファン2が通過できない程度の隙間であれば、メッシュ状部材132と服地Cの内面Iとの間に残っていても問題はない。したがって、例えば、メッシュ状部材132は、孔部131の周囲の服地Cに、ファン2が通過できない程度の一定間隔の隙間を空けて断続的に接合されていてもよい。
【0032】
メッシュ状部材132の具体的な形状は、メッシュの各開口部が、ファン2が通過できない大きさであると共に、ファン2からの換気を妨げない程度の開口度を有するものであれば任意である。また、材料も、ファン2の落下を防止できる程度の強度を有するものであれば任意の材料を用いることができる。
【0033】
(裏地)
裏地133は、
図2から
図4に示すように、服本体1の服地Cの内面I側に、孔部131を覆うように備えられた矩形状のシート状部材であり、
図4に示すように、中央部の孔部131と重なる位置に、ファン2を取り付けるためのファン取付孔134が形成されている。裏地133としては、孔部131の全体を覆い、さらにメッシュ状部材132の全体を覆うため、メッシュ状部材132よりもサイズの大きいものが用いられることが好ましい。
【0034】
裏地133に用いられる生地は、通気性を有しないか、又はファン2による空気の導入によって服本体1を膨らませる上で障害とならない程度の通気性を有するものであり、かつ、ファン取付孔134にファン2を取り付けることができる程度の強度を有するものであれば任意である。したがって、服地Cと同一であってもよいが、ファン2取り付け時の強度を高めるため、服地Cよりも厚手の生地を用いることが好ましい。
服地C全体を厚手の生地で製造すると、着用者が動き難くなる等の弊害が生じる可能性があるが、ファン取付孔134が形成される裏地133のみを厚手の生地とすることで、このような弊害を生じることなく、ファン2取り付け時の強度を向上することが可能となる。
【0035】
裏地133は、
図2及び
図4(a)に示すように、上辺を除いた三辺に沿って形成された接合部1331において、服地Cの内面Iの孔部131の周囲の部分に対して縫合等の方法によって接合されている。
【0036】
(ファン取付孔)
ファン取付孔134は、裏地133に形成された、ファン2が取り付けられる円形の孔部である。ファン取付孔134は、その直径が、後述のファン2の筒状部23の外径と同一か極僅かに大きくなるように形成されており、ファン2の筒状部23がファン取付孔134を挿通するようにして、後述のように取付リング3を用いてファン2を取り付けることができる。
【0037】
裏地133のファン取付孔134の周囲の部分は、シート状部材を折り返した上で縫合する、プラスチック等によって形成された扁平な環状の部材を取り付ける等の方法で補強されていることが、ファン2を取り付け易くし、また、取り付けられたファン2を外れ難くする上で好ましい。
【0038】
(開口部)
上記のように、裏地133は、上辺を除いた三辺に沿って形成された接合部1331において服地Cに接合されているが、裏地133の上辺は、当該辺の端部付近を除いて服地Cに接合されておらず、
図2及び
図4(a)に示すように、孔部131上方の服地Cの内面Iと裏地133との間に、ファン2を、その取り付け時にはメッシュ状部材132と裏地133との間の空間に差し入れ、また、その取り外し時にはメッシュ状部材132と裏地133との間の空間から取り出すための開口部135が形成されている。開口部135は、必ずしも裏地133上辺の全体に亘って形成されている必要はないが、少なくともファン2を通過させることができる大きさを有する必要がある。
【0039】
(第二開閉手段)
第二開閉手段136は、開口部135を開閉自在とするための手段であり、例えば面ファスナーを用い、
図4(a)に示すように、一方を裏地133上端部付近の服地Cに対向する面に備え、他方をこれと対向する位置の服地Cの内面Iに備えることで、裏地133の上端部付近を服地Cに着脱自在に接続可能とすることによって形成されている。
なお、第二開閉手段136は、面ファスナーには限られず、裏地133上端部付近と、これと対向する位置の服地Cの内面Iとを着脱自在に接続可能であれば任意の構成を採用可能であり、例えば、線ファスナーを用いてもよい。ただし、第二開閉手段136を閉じた際に、開口部135から孔部131を通じて外部へと空気が漏れることを防止できるものであることが好ましい。
【0040】
(空気排出部)
空気排出部14は、ファン取付部13に取り付けられたファン2によって服本体1内に導入された空気を、着用者の身体又は下着に沿って流通させた後に排出するための開口部であり、
図1から
図3に示すように、着用者の首と服本体1の襟部の端部との間の開口部と、着用者の腕と服本体1の袖部の端部との間の開口部と、に形成される。
なお、空気排出部14は、ファン2によって服本体1内に導入された空気を、着用者の身体又は下着に沿って流通させた後に排出できるものであればよく、その形成位置は、襟部及び袖部に限定されない。
【0041】
(電源部保持手段)
電源部保持手段15は、
図2及び
図3に示すように、服本体1の内面側に形成されたポケットであり、電源部4が収納される。
電源部保持手段15は、
図2及び
図3に示すように、服本体1の前身頃のファン取付部13のそれぞれと近接した位置の2か所に備えられている。これによって、ファン2のそれぞれに対して、近接した位置に電源部4を配置することで、接続ケーブル5を短くすることができることから、接続ケーブル5が空調衣服100の着用時に着用者の邪魔になり難くなる。
【0042】
電源部保持手段15は、
図2及び
図3に示すように、服本体1の内面側にポケットを形成しつつ、当該ポケットに対応する服地Cに孔部を設けた上で、
図1に示すように、例えば面ファスナー等を備える蓋151を用いて服本体1の外面側から当該孔部を開閉自在とすることで、服本体1の外面側から電源部4を出し入れすることができるように構成されている。
これによって、空調衣服100の着用者による電源部の着脱及び電源部の操作が容易となる。
【0043】
なお、電源部保持手段15の形成位置は上記のものが好ましいが、これに限られず、服本体1の内面側のその他の位置に備えることも可能である。また、形成数も二つに限られず、電源部保持手段15及びこれに収納された電源部4を一つしか備えず、一つの電源部4から二つのファン2に対して電力を供給するようにしてもよい。
また、電源部保持手段15としては、必ずしもポケットを用いる必要はなく、電源部4を服本体1に装着することが可能であれば、その他の構成を採用することも可能である。さらに、服本体1に電源部保持手段15を備えず、例えば着用者のズボンのベルト等に電源部4をクリップ等を用いて取り付けることにより、電源部4が服本体1に装着されないようにすることも可能である。
【0044】
(ファン)
ファン2は、服本体1と着用者の身体との間の空間に空気を導入する本発明における空気導入手段であり、
図2、
図3及び
図5に示すように、ファン取付部13の裏地133に形成されたファン取付孔134を挿通するようにして、服本体1に取り付けられる。
【0045】
ファン2は、内部にプロペラ(不図示)とプロペラを回転させるモーター(不図示)とを収納し、
図5に示すように、ファン2の使用時において空気が取り込まれる側を構成する空気取込部21と、ファン2の使用時において空気が送出される側を構成する空気送出部22と、空気取込部21と空気送出部22との間の筒状の連結部である筒状部23と、筒状部23の空気取込部21側の端部から筒状部23の側面と略垂直な方向に突出するフランジ部24とを有する。
筒状部23は、その中心軸に垂直な平面で切った際の断面の外形が円形となる円筒状に形成され、その外径は、ファン取付部13のファン取付孔134の直径と同一か極僅かに小さくなるように形成されている。
【0046】
また、ファン2は、空気送出部22側の所定の位置に、接続ケーブル5と接続される接続端子25を有する。接続端子25は、接続ケーブル5を接続し、電源部4から電力の供給を受けることができる端子であれば、その具体的な構成は任意である。
【0047】
(取付リング)
取付リング3は、ファン2をファン取付部13のファン取付孔134に取り付けるための、本発明における取付手段としてのリング状の部材である。取付リング3は、その内径が、ファン2の筒状部23の外形と同一か、極僅かに大きくなるように形成されており、
図5に示すように、筒状部23が取付リング3を挿通するようにして、ファン2に取り付けることができる。
【0048】
ファン2の筒状部23の外面と、取付リング3の内面と、には、例えば、取付リング3の内面側に凸部が形成され、筒状部23の外面側に当該凸部と係合する凹部を形成することにより、係止手段(不図示)が形成されている。
【0049】
(電源部)
電源部4は、ファン2に電力を供給するための部材であり、例えば、安全保護回路が付加されたリチウムイオン組電池が内蔵されている。また、電源部4は、
図2及び
図3に示すように、電源部保持手段15によって服本体1に装着され、接続ケーブル5を通じてファン2と接続される。
電源部4は、着用者の操作に対応して電源のオン・オフや、電源部4からファン2に供給される電力の強度の切り替えができるように、操作手段(不図示)を備える。
操作手段としては、着用者の操作に対応して電源のオン・オフや、電源部4からファン2に供給される電力の強度の切り替えができるものであれば、その具体的な構成は任意である。
【0050】
(接続ケーブル)
接続ケーブル5は、電源部4とファン2とを接続するケーブルであり、接続ケーブル5を通じて、電源部4からファン2に対して、ファン2の稼働に必要な電力が供給される。
接続ケーブル5は、電源部4からファン2に対して、ファン2の稼働に必要な電力を供給できるものであればよく、その具体的な構成は任意である。
【0051】
{ファンの取り付け方法}
服本体1のファン取付部13にファン2を取り付ける方法につき、以下説明する。
【0052】
1.ファン2から取付リング3を取り外す。
2.第二開閉手段136の接続を外して開口部135を開き、ファン2を、開口部135から、メッシュ状部材132と裏地133との間の空間に差し入れ、空気取込部21がメッシュ状部材132側に向き、空気送出部22が裏地133側に向くようにして、メッシュ状部材132と裏地133との間の空間に配置する。
3.ファン2の空気送出部22側をファン取付孔134に挿入して、フランジ部24が、裏地133のメッシュ状部材132と対向する側の、ファン取付孔134周囲の部分と接するようにする。
4.取付リング3を、裏地133の着用者の身体と対向する側(服本体1の内面側)からファン2の筒状部23の外側に差し込むことにより、フランジ部24と取付リング3とによって、裏地133のファン取付孔134周囲の部分を挟み込み、その状態で係止手段によって取付リング3をファン2に固定する。
【0053】
上記の過程を経ることによって、
図2、
図3及び
図5に示すように、本発明における空気導入手段であるファン2を、ファン取付孔134を挿通するようにして、服本体1に取り付けることができる。なお、ファン2の取り外し時には、上記と反対の過程を経ればよい。
【0054】
{実施形態の効果}
本実施形態に係る空調衣服100によれば、ファン2を服本体1に取り付けた状態で、服本体1の外面側において、ファン2はメッシュ状部材132に覆われている。さらに、上記のようにしてファン2を服本体1に着脱可能であることから、服本体1の外面側には、ファン2の着脱のために、メッシュ状部材132と裏地133との間の空間へと通じる、ファン2を通過させることができる開口部を設けることを要しない。
したがって、例えばメッシュ状部材132が着用者の周囲の障害物に引っ掛かってしまった場合等、空調衣服100の外部からの影響を受けた場合にも、このような開口部が予期せず開いてしまうおそれがない。
したがって、服本体1から、ファン2が、服本体1の外面側へと落下してしまうおそれを低減することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、ファン2は、服本体1の服地Cとは別個の裏地133に形成されたファン取付孔134に取り付けられるため、ファン2が取り付けられるファン取付孔134の周囲に、服地Cとは異なる生地を用いることが容易となる。これによって、例えば、服地Cにつき空調衣服100の着心地を重視して比較的柔らかい生地を用いつつ、ファン2が取り付けられる裏地133には、ファン2の取付強度を重視して比較的固い厚手の生地を用いることによって、空調衣服100の着心地と、服本体1に対するファン2の取付強度とを両立することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、メッシュ状部材132が、内面I側から服地Cに接合されていることから、当該接合部が空調衣服100の使用中に外部に引っ掛かってしまうことがなくなり、メッシュ状部材132が服本体1から外れ難くなる。
【0057】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について、
図6に基づいて説明する。
なお、ファン取付部13A以外の構成は、第1実施形態に係る空調衣服100と同様であることから、説明を省略する。
【0058】
ファン取付部13Aは、
図6に示すように、服本体の服地Cに直接形成されたファン2を取り付けるためのファン取付孔134Aと、ファン取付孔134Aの上方に形成された服地Cを貫通する切れ目である開口部135Aと、開口部135Aを服本体1の内面側から開閉自在とする第二開閉手段136Aとしての線ファスナーと、ファン取付孔134A及び開口部135Aの両者を服本体の外面側から覆うようにして、服地Cの外面Oに接合されたメッシュ状部材132Aと、からなる。
この場合、服本体の服地Cのうち、メッシュ状部材132Aと重なる部分が、本発明における、取付部を構成するシート状部材となる。
【0059】
メッシュ状部材132Aは、ファン取付孔134A及び開口部135Aの周囲を囲むようにして、隙間なく、又はファン2が通過できない程度の隙間のみを残して、縫合等の方法によって、服地Cと接合されている。
【0060】
本実施形態によっても、第二開閉手段136Aの接続を外して開口部135Aを開き、服本体1の内面側から、開口部135Aを介して、メッシュ状部材132Aと、本発明における取付部を構成するシート状部材としての服地Cとの間にファン2を差し入れた後に、ファン2と取付リング3とによってファン取付孔134Aの周囲の服地Cを挟むことによって、服本体1にファン2を取り付けることができる。また、取り付け時の反対の過程を経て、服本体1からファン2を取り外すことができる。したがって、服本体の外面側には、ファン2の着脱のために、メッシュ状部材132と服地Cとの間の空間に通じる、ファン2を通過させることができる開口部を設けることを要しない。
したがって、本実施形態によっても、ファン2が、服本体の外面側へと落下してしまうおそれを低減することができる。
【0061】
なお、本実施形態によっては、第1実施形態と異なり、ファン2が取り付けられるファン取付孔134Aの周囲に、服地Cとは別個の生地を用いることを容易とするといった効果や、メッシュ状部材132Aを服地Cの内面I側から接続することで、メッシュ状部材132Aを服本体1から外れ難くするといった効果は得られなくなる。したがって、機能の観点からは、第1実施形態の方がより好ましい。
しかしながら、第2実施形態によれば、裏地133を取り付ける必要がなくなるため、第1実施形態よりも製造効率を向上することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
100 空調衣服
1 服本体
13、13A ファン取付部(取付部)
131 孔部
132、132A メッシュ状部材
133 裏地(シート状部材)
134、134A ファン取付孔(取付孔)
135、135A 開口部
136、136A 第二開閉手段
14 空気排出部
2 ファン(空気導入手段)
3 取付リング(取付手段)
4 電源部(電源手段)
5 接続ケーブル(電源手段)
C 服地(シート状部材)