(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】土木構造物用面状材および該面状材を用いた護岸埋立土砂流出防止構造
(51)【国際特許分類】
E02B 3/12 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
E02B3/12
(21)【出願番号】P 2019232673
(22)【出願日】2019-12-24
(62)【分割の表示】P 2019153635の分割
【原出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】391047190
【氏名又は名称】岡三リビック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593033980
【氏名又は名称】トワロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】小浪 岳治
(72)【発明者】
【氏名】大城戸 秀人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和隆
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073964(JP,A)
【文献】特開2002-038446(JP,A)
【文献】特開昭62-005833(JP,A)
【文献】特開2019-023418(JP,A)
【文献】特開2005-256404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木構造物に使用する面状材であって、
芯材と、該芯材の表側および裏側のうち少なくとも何れか一方に重ね合わせる、外面材と、を少なくとも有し、
前記芯材と前記外面材とを、
面ファスナーおよび磁石のうち少なくとも何れか1つからなる接合手段で一体化してあ
り、
前記外面材が、菱形金網からなり、
前記面ファスナーのループ側またはフック側の何れか、あるいは前記磁石の一方の極側を、前記菱形金網を構成する線材の奥側と接するように斜めに配置してあることを特徴とする、
土木構造物用の面状材。
【請求項2】
土木構造物に使用する面状材であって、
芯材と、該芯材の表側および裏側のうち少なくとも何れか一方に重ね合わせる、外面材と、を少なくとも有し、
前記芯材と前記外面材とを、面ファスナーおよび磁石のうち少なくとも何れか1つからなる接合手段で一体化してあり、
前記外面材が、亀甲金網からなり、
前記面ファスナーのループ側またはフック側の何れか、あるいは前記磁石の一方の極側を、前記亀甲金網を構成する線材のねじり部分を除いた箇所と接するように斜めに配置してあることを特徴とする、
土木構造物用の面状材。
【請求項3】
前記接合手段が、面ファスナーであり、
前記芯材が、前記面ファスナー手段のループ側としても機能する不織布からなることを特徴とする、
請求項
1または2に記載の土木構造物用の面状材。
【請求項4】
前記芯材が、土砂流出防止用の防砂シートであり、
前記外面材が、前記防砂シートの損傷を防止するための保護材として少なくとも機能することを特徴とする、
請求項1乃至
3のうち何れか1項に記載の土木構造物用の面状材。
【請求項5】
護岸での埋立土砂の流出を防止するための構造であって、
海側と陸側とを区画する、ケーソンと、
前記ケーソンの陸側で裏込石を積み上げてなる、裏込石層部と、
前記裏込石層部の法面上に敷設する、請求項1乃至
4のうち何れか1項に記載の面状材と、
前記ケーソンの陸側で前記面状材上に埋立土砂を投入してなる、埋立土砂層部と、を少なくとも具備し、
前記面状材でもって、埋立土砂層部の埋立土砂が裏込石層部へと流出することを防止することを特徴とする、
護岸埋立土砂流出防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木構造物の安定化、補強、土砂の流出防止、遮水、排水等の用途で使用する面状材、および該面状材を用いた護岸埋立土砂流出防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
土木構造物の安定化、補強、遮水、排水、土砂の流出防止等の用途で使用する面状材には、ジオウォーブン、ジオノンウォーブン、ジオニットなどのジオテキスタイル(狭義)や、ジオグリッド、ジオネット、ジオメンブレン、ジオコンポジットなどのジオシンセティックス等の土木資材が使用されている。
【0003】
これらの土木資材を利用した例として、特許文献1に記載の埋立護岸の構築構造は、海側と陸側とを区画する防波堤などの構造物としてケーソンの陸側に形成した裏込石層部の法面上に防砂シートを配置することで、裏込石・捨石の隙間から埋立土砂が海側へ流出することを防止する技術が開示されている。
【0004】
この防砂シートは、通常、不織布や塩化ビニールなどの素材から形成されることから、水中で浮き上がって裏込石層部の法面上への敷設作業が面倒となったり、設置後にも埋立土砂の圧力によって裏込石層部の突起による局所的な引張り力が発生したり、繰り返し作用する浮力による変位でもって材料疲労が発生し、防砂シートが損傷する恐れがあった。
【0005】
そこで、出願人は、この防砂シートの損傷を防止すべく、防砂シートの片面または両面を、金網、または、ポーラス状あるいは簾状の板材などからなる網状材で覆うことで、防砂シートの損傷を防止したり、防砂シートの重量を増やして敷設作業の効率性を高めたりすることを可能とした技術を考案した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-141588号公報
【文献】特開2019-73964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した防砂シートと網状材との取付には、従来、コイルやクリップなどの取付具を想定していたところ、これらの取付具は、防砂シートを貫通させる態様で取りつけるため、防砂シートに生じた穴をきっかけに、防砂シートの損傷が発生する懸念があった。
【0008】
よって、本発明は、防砂シートなどの芯材の損傷要因をできる限り低下させた態様で、芯材と、該芯材に重ねて配置する外面材とを一体化することが可能な手段の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべくなされた本願発明は、土木構造物に使用する面状材であって、芯材と、該芯材の表側および裏側のうち少なくとも何れか一方に重ね合わせる、外面材と、を少なくとも有し、前記芯材と前記外面材とを、面ファスナーおよび磁石のうち少なくとも何れか1つからなる接合手段で一体化してあり、前記外面材が、菱形金網からなり、前記面ファスナーのループ側またはフック側の何れか、あるいは前記磁石の一方の極側を、前記菱形金網を構成する線材の奥側と接するように斜めに配置してあることを特徴とするものである。
また、本願発明は、土木構造物に使用する面状材であって、芯材と、該芯材の表側および裏側のうち少なくとも何れか一方に重ね合わせる、外面材と、を少なくとも有し、前記芯材と前記外面材とを、面ファスナーおよび磁石のうち少なくとも何れか1つからなる接合手段で一体化してあり、前記外面材が、亀甲金網からなり、前記面ファスナーのループ側またはフック側の何れか、あるいは前記磁石の一方の極側を、前記亀甲金網を構成する線材のねじり部分を除いた箇所と接するように斜めに配置してあることを特徴とするものである。
また、前記発明において、前記接合手段を面ファスナーとし、前記芯材を前記面ファスナー手段のループ側としても機能する不織布とすることができる。
また、前記発明において、前記芯材を、土砂流出防止用の防砂シートとし、前記外面材が、前記防砂シートの損傷を防止するための保護材として少なくとも機能させることもできる。
また、本願発明は、護岸での埋立土砂の流出を防止するための構造であって、海側と陸側とを区画する、ケーソンと、前記ケーソンの陸側で裏込石を積み上げてなる、裏込石層部と、前記裏込石層部の法面上に敷設する、前記発明に記載の面状材と、前記ケーソンの陸側で前記面状材上に埋立土砂を投入してなる、埋立土砂層部と、を少なくとも具備し、前記面状材でもって、埋立土砂層部の埋立土砂が裏込石層部へと流出することを防止することを特徴とする、護岸埋立土砂流出防止構造を提供することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)芯材への穴の形成を要しない接合手段(例えば、面ファスナー、磁石、接着剤など)でもって、芯材と外面材とを一体化することで、芯材の損傷要因をできる限り低下させた態様での使用が可能となる。
例えば、芯材として護岸埋立土砂流出防止構造における防砂シートを想定したとき、外面材として金網などと一体化する場合であっても、防砂シートの損傷のおそれが低下し、埋立土砂の吸い出し防止機能を失われるおそれが無くなる。
(2)接合手段を、外面材のうち芯材との対向面の反対側の面から取り付け可能とすることで、例えば芯材と外面材をそれぞれ吊り上げてから接合手段を後付けして両者を一体化することができる。また接合位置の修正作業等も簡単である。
(3)接合手段を、予め、外面材となる網状材の網目を縫うように挿通しておくことで、接合位置を予め規定しておくこともできる。
(4)接合手段を、予め、外面材となる菱形金網または亀甲金網を構成する線材の奥側と接するように配置することで、接合手段が外面材の厚さ方向に大きく蛇行することがなくなるため、接合手段の長さが最適化でき、また接合部分の連続性を向上させて、一体化の強度が増す。
(5)接合手段に面ファスナーを用いつつ、芯材を不織布で構成した場合,芯材が面ファスナーのループ側に相当するため、外面材側に面ファスナーのフック側のみを用いればよく、別途面ファスナーのループ側に相当する部材を用意する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0013】
<1>全体構成
図1を参照しながら、本発明に係る面状材10の全体構成について説明する。
本発明に係る面状材10は、全体として可撓性を備えたシート状部材であり、ロール状に巻き取った状態から展開するなどして、土木構造物内の対象面に敷設して使用する部材である。
この面状材10には、例えば以下の土木資材が該当する。
(1)護岸での埋立土砂を流出防止するにあたって敷設する防砂シートに保護用の金網などを重ね合わせた防砂構成体。
(2)排水機能を有する不織布シートに、補強用または保護用の面材を重ね合わせた盛土構造物用の敷設材。
(3)舗装路盤、路床の補強に用いられる不織布シートに保護用の面材を重ね合わせた路盤・路床の補強材。
【0014】
本発明に係る面状材10は、重ね合わせるように配置する芯材20および外面材30と、両者を一体化するための接合手段40とを少なくとも有して構成する。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0015】
<2>芯材
芯材20は、本発明に係る面状材10において、破損防止の対象となる部材である。
芯材20は、例えば以下の土木資材が該当する。
(1)護岸での埋立土砂の流出防止用に用いる、不織布、ゴム、塩化ビニール、ジオテキスタイルなどからなる、透水性を備えた防砂シート。
(2)盛土構造物用の敷設材に含まれる、不織布などからなる排水シート。
(3)路盤・路床の補強材。
【0016】
<3>外面材
外面材30は、本発明に係る面状材10において、少なくとも芯材20の表側および裏側の面のうち一方の面または両方の面に破損防止の対象となる部材である。
外面材30は、例えば以下の土木資材が該当する。
(1)防砂シートや排水シートに重ねあわせて配置する金属製、合成樹脂製、または繊維樹脂製の網状部材。
(2)盛土構造物内に敷設する排水シートに重ね合わせて配置する保護カバー。
【0017】
<3.1>外面材の配置態様
芯材20に対する外面材30の枚数は特段限定しない。
よって、芯材20の表側にのみ、外面材30を1枚または複数枚重ね合わせたり、芯材20の表側および裏側の両方に、外面材30を1枚または複数枚重ね合わせたりすることができる。
図1では、芯材20の表側にのみ、外面材30を1枚重ね合わせている。
【0018】
<4>接合手段
接合手段40は、前記芯材20と前記外面材30とを一体化するための手段である。
本発明において、接合手段40は、芯材20に差し込んで使用するクリップやフックなどの連結具は含まず、芯材20への穴の形成を要しない公知の接合構造を採用する。
本発明に係る接合手段40の例を以下に示す。
【0019】
<4.1>面ファスナー
面ファスナーは、面上に多数のフックを形成したフック面(雄面)と、面上に多数のループを形成したループ面(雌面)とを面接触させてループにフックを係合させることで、両者を強固に接合する部材である。
本発明では、テープ状を呈する面ファスナーを用いることができる。
【0020】
<4.1.1>芯材側の態様
本発明において、芯材20側にフック面およびループ面の何れを設けるかは特段限定しないが、このフック面またはループ面を設けるために芯材20へと面ファスナーを縫合して穴を形成することのないよう、接着剤による接着などを設ければよい。
また、芯材20が不織布のように芯材20そのものが面ファスナーのループ面を構成する場合もある。この場合、新たにループ面用の部材を用意する必要はない。
【0021】
<4.1.2>外面材側の態様
外面材30側に対する、フック面またはループ面の設置態様は如何なる態様を採用してもよい。
たとえば、外面材30が網状部材の場合には、外面材30の芯材20側の面とは反対側の面から面ファスナーの一方を配置し、網状材の面網目から面ファスナー表面を露出させて、対向する芯材20または芯材20に設けた面ファスナーの他方とに接触させればよい。
また、外面材30が網目を有しない部材の場合には、芯材20側の面にテープ状の面ファスナーを接着したり縫合したりしてもよい。
【0022】
<4.2>磁石
磁石は、磁力を用いて両者を強固に接合する部材である。
磁石による芯材20と外面材30との一体化には、芯材20側に一方の極性を有する磁石を配置し、外面材30側に他方の極性を有する磁石を配置する方法などが考えられる。
また、芯材20および外面材30の一方が磁性を有する場合には、相対する側にのみ磁石を設けることで両者を一体化することもできる。
その他の磁石の配置態様は、前記の面ファスナーで説明したものと同一の配置態様を用いることができる。
【0023】
<4.3>接着剤
接着剤は、芯材20と外面材30との間に介在して強固に接合する部材である。
接着剤は、芯材20や外面材30に塗布可能な公知の接着剤を用いればよく、詳細な説明を省略する。
【0024】
<4.4>接合箇所の態様
接合手段40による接合箇所は特段限定せず、面状材10の種々の平面方向に対し連続的に設けても良いし、間欠的に設けても良い。
また、面状材10の幅方向に設けた接合箇所を、面状材10の長さ方向に間隔をあけて複数配置してもよい。
【0025】
<5>各種接合例(
図2~
図7)
以下、
図2~
図7を参照しながら、芯材20と外面材30との接合例について説明する。
【0026】
<5.1>接合例1(
図2)[金網挿通型]
図2に示す面状材10では、1枚の芯材20の片面に、外面材30を1枚接合した構造を呈している。
外面材30には、厚さを有するように線材を編み込んでなる菱形金網を用いており、この菱形金網の両側縁方向に連通する挿通空間に、テープ状の一方の面ファスナー41aを挿通している。
芯材20側には、所定位置に別途他方の面ファスナー41bを幅方向に連続するように公知の方法で設けている。
上記構造により、外面材30の網目部分でもって一方の面ファスナー41aと他方の面ファスナー41bとが接触することにより、両者が一体化されている。
【0027】
なお、前記した面ファスナーを、磁石や接着剤に適宜置き換えて使用してもよい。また、芯材20や外面材30が面ファスナーや磁石に相当する機能を予め備えた素材で形成されている場合には、適宜接合手段40の一部の要素を省略してもよい。
【0028】
本例によれば、外面材30の所定の位置に予め接合手段40を設けておくことができるだけでなく、接合直前に外面材30に接合手段40を挿通して配置する使用方法も可能である。
また、菱形金網の挿通空間に接合手段40を挿通することで、菱形金網を構成する手前側の線材の影響を受けずに、奥側(芯材20側)の線材のみを跨いで接合するため、菱形金網の上から接合手段40を覆い被せる態様と比較して、接合領域の増加に繋げることができる。また、外面材30の厚さ方向に対する接合手段40の蛇行も小さくなるため、接合手段40の長さを最適化できる。
【0029】
<5.2>接合例2(
図3)[裏側貼付型]
図3に示す面状材10では、2枚の外面材30を用い、1枚の芯材20の両面に、それぞれ外面材30を接合した構造を呈している。
外面材30には、菱形金網を用いており、各菱形金網の裏側(芯材20側)の面に、テープ状の一方の面ファスナー41aを公知の方法で貼り付けている。
芯材20側には、別途他方の面ファスナー41bを設けている。
上記構造により、二枚の外面材30の芯材20側の面に設けた一方の面ファスナー41aと、芯材20に設けた他方の面ファスナー41bとが接触することにより、両者が一体化されている。
【0030】
前記接合例1と同様、面ファスナーを磁石や接着剤に適宜置き換えて使用してもよい。また、芯材20や外面材30が面ファスナーや磁石に相当する機能を予め備えた素材で形成されている場合には、適宜接合手段40の一部の要素を省略してもよい。
【0031】
本例によれば、外面材30の所定の位置に予め接合手段40を設けておくことで、両者の接合位置を目で確認しながら接合作業を行うことができる。
また、芯材20の両面に外面材30を設けているため、芯材20の保護機能に優れる。
【0032】
<5.3>接合例3(
図4)[覆い型]
図4に示す面状材10では、1枚の芯材20の片面に、外面材30を1枚接合した構造を呈している。
外面材30として使用する平織金網には、前記した菱形金網が有する挿通空間が形成されていない。そこで、平織金網の表側(芯材20と対向する面とは反対側の面)から一方の面ファスナー41aを、覆い被せるように配置している。
芯材20側には、別途他方の面ファスナー41bを設けている。
上記構造により、外面材30に覆い被せた一方の面ファスナー41aと、芯材20に設けた他方の面ファスナー41bとが接触することにより、両者が一体化されている。
【0033】
なお、前記した面ファスナーを、磁石や接着剤に適宜置き換えて使用してもよい。また、芯材20や外面材30が面ファスナーや磁石に相当する機能を予め備えた素材で形成されている場合には、適宜接合手段40の一部の要素を省略してもよい。
【0034】
本例によれば、外面材30の厚さ方向に対する接合手段40の蛇行がより小さくなるため、接合手段40の長さをより最適化できる。
【0035】
<5.4>接合例4(
図5)[斜め配置型]
図5に示す面状材10では、1枚の芯材20の片面に、外面材30を1枚接合した構造を呈している。
外面材30には、厚さを有するように線材を編み込んでなる菱形金網を用いており、この菱形金網の奥側の線材のみを跨ぐように、テープ状の一方の面ファスナー41を斜め方向に配置している。
なお、芯材20側には、前記一方の面ファスナー41aと対応する位置に他方の面ファスナー41b(図示せず)を設けておく。
上記構造により、外面材30の網目部分でもって一方の面ファスナー41aと他方の面ファスナー41bとが接触することで、両者が一体化されている。
【0036】
なお、前記した面ファスナーを、磁石や接着剤に適宜置き換えて使用してもよい。また、芯材20や外面材30が面ファスナーや磁石に相当する機能を予め備えた素材で形成されている場合には、適宜接合手段40の一部の要素を省略してもよい。
【0037】
本例によれば、前記した接合例よりも芯材20や外面材30の接合領域をより大きく確保することができるため、両者をより強固に一体化することができる。
【0038】
<5.5>接合例5(
図6)[クロス配置型]
図6に示す面状材10では、2枚の外面材30を用い、1枚の芯材20の両面に、それぞれ外面材30を接合した構造を呈している。
各外面材30には、厚さを有するように線材を編み込んでなる菱形金網を用いており、この菱形金網の奥側の線材のみを跨ぐように、テープ状の一方の面ファスナー41aを斜め方向に配置している。
なお、芯材20の両面には、一方の面ファスナー41aと対応する位置に他方の面ファスナー41b(図示せず)を設けておく。
そして、面状材10の両面にそれぞれ斜めに配置した各面ファスナー41aは、互いに重なり合って、投影視してクロス模様で接合した状態で両者が一体化されている。
【0039】
なお、前記した面ファスナーを、磁石や接着剤に適宜置き換えて使用してもよい。また、芯材20や外面材30が面ファスナー41や磁石に相当する機能を予め備えた素材で形成されている場合には、適宜接合手段40の一部の要素を省略してもよい。
【0040】
本例によれば、前記した接合例よりも芯材20や外面材30の接合領域をより大きく確保することができるため、両者をより強固に一体化することができる。
【0041】
<5.6>接合例6(
図7)[多列配置型]
図7に示す面状材10では、2枚の外面材30を用い、1枚の芯材20の両面に、それぞれ外面材30を接合した構造を呈している。
各外面材30には、厚さを有するように線材を編み込んでなる菱形金網を用いており、この菱形金網の両側縁方向に連通する挿通空間に、テープ状の一方の面ファスナー41aを挿通している。
なお、芯材20の両面には、一方の面ファスナー41aと対応する位置に他方の面ファスナー41b(図示せず)を設けておく。
そして、一方の外面材30と、他方の外面材30とで、面ファスナー41aによる接合位置を変えておくことで、各面ファスナー41aが投影視して他列配置した状態で接合され、両者が一体化されている。
【0042】
なお、前記した面ファスナーを、磁石や接着剤に適宜置き換えて使用してもよい。また、芯材20や外面材30が面ファスナーや磁石に相当する機能を予め備えた素材で形成されている場合には、適宜接合手段40の一部の要素を省略してもよい。
【0043】
本例によれば、芯材20や外面材30の接合領域をより大きく確保することができるため、両者をより強固に一体化することができる。
【実施例2】
【0044】
<1>全体構成(
図8)
図8を参照しながら、本発明に係る面状材10を使用した護岸埋立土砂流出防止構造について説明する。
図8に示す護岸埋立土砂流出防止構造は、捨石マウンドBと、ケーソンCと、裏込石層部Dと、本発明に係る面状材10に相当する防砂構成体Eと、埋立土砂層部Fと、を少なくとも備えている。
防砂構成体以外の各要素は、前記した特許文献2の記載に基づくものであり、詳細な説明は省略する。
【0045】
<2>防砂構成体
防砂構成体Eは、裏込石層部Dの法面上に敷設して、埋立土砂層部Fの構築のために投入される埋立土砂を受け止めて、埋立土砂が裏込石層部・捨石マウンドを通過して海側の裏込石層部D側に流出(吸い出し)するのを防止するための部材である。
本実施例では、防砂構成体Eを、前記芯材20に相当する一枚の防砂シートE1と、前記外面材30に相当し、前記芯材20を挟むように積層する二枚の網状部材とで構成している。
また、本実施例では、二枚の網状部材のうち、裏込石層部D側を、第1網状部材E21と定義し、埋立土砂層部F側を第2網状部材E22と定義している。
【0046】
<2.1>防砂シート
防砂シートE1は、本発明に係る面状材10の芯材20に相当する部材であり、例えば、不織布、ゴム、塩化ビニール、ジオテキスタイルなどの素材であって、透水性且つ高伸張特性がある素材からなる。
なお、防砂シートE1は、予め工場などの施設で製造されるものであって、幅及び長さが護岸の施工状況に合わせて所定に設定され、ロール状に巻き取られて保管することもできる。
【0047】
<2.2>網状部材
網状部材E2は、本発明に係る面状材10の外面材30に相当する部材であり、線材を所定の幅の編目の形状(例えば、ひし形)に編んで面状に構成された金網である。
なお、網状部材E2の編目は、ひし形、亀甲形などの各種形状にすることが可能であり、また、その大きさが変更可能である。
線材は、亜鉛メッキでコーティングされた所定の直径の金属芯材(亜鉛メッキ鉄線と、金属芯材を被覆する所定の厚さの特殊ポリエチレン(IR)とで形成されたIR被覆鋼線からなる。IR被覆鋼線からなる線材は、所定の摩擦力・耐摩耗性・引張強さを有することから、防砂シートE1の損傷を防止し、また、耐久性が高いものである。
網状部材E2は、例えば、予め工場などの施設で成形されるものであって幅及び長さが護岸の施工状況に合わせて所定に設定され、例えば、ロール状や、折り畳んで保管される。
なお、網状部材E2としては、防砂シートE1よりも硬い強化プラスチック(合成樹脂)、あるいは、繊維芯材と繊維芯材を被覆する樹脂材とからなる繊維樹脂などで成形することも可能である。
【0048】
<3>防砂構成体の構築方法
防砂構成体Eは、第1網状部材E21および第2網状部材E22でもって、防砂シートE1を覆うように狭持しつつ、図示しない接合手段40を介して、防砂シートE1に、別途穴の形成を要しない態様で両者を接合して構築している。
防砂構成体Eは、工場製作或いは現場製作することができ、例えば、ロール状や、折り畳んで保管可能に構成することもできる。
なお、第1網状部材E21と第2網状部材E22とは、防砂シートE1との摩擦抵抗を大きくするために、それぞれの網目の形状を異なるものとしておいてもよい。
【0049】
<4>使用例
裏込石層部Dの法面に防砂構成体Eを敷設するときには、予め防砂シートE1に第1網状部材E21および第2網状部材E22を接合して一体化した状態で水中に沈降させて、裏込石層部Dの法面上に敷設する。
このとき、防砂構成体Eは、防砂シート単体での沈降と比較して、第1網状部材E21および第2網状部材E22による自重増によって容易に沈降するため、防砂シートE1の捲り上がりなどが生じにくくなり、防砂シートE1の損傷を防止するとともに、防砂シートE1の敷設作業を簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
10 面状材
20 芯材
30 外面材
40 接合手段
41 面ファスナー
A 護岸埋立土砂流出防止構造
B 捨石マウンド
C ケーソン
D 裏込積層部
E 防砂構成体(面状材)
E1 防砂シート(芯材)
E2 網状部材(外面材)
E21 第1網状部材
E22 第2網状部材
F 埋立土砂層部