(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】3Dオブジェクトをプリントするためのプリンタ
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20230308BHJP
B29C 64/10 20170101ALI20230308BHJP
B29C 64/20 20170101ALI20230308BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230308BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230308BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20230308BHJP
G05B 19/4093 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/10
B29C64/20
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/00
G05B19/4093 J
(21)【出願番号】P 2020563817
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2019052727
(87)【国際公開番号】W WO2019149953
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-02-04
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】520286795
【氏名又は名称】クリエイト・イット・リアル・アンパルツセルスケープ
【氏名又は名称原語表記】CREATE IT REAL APS
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・ピエール・ゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ゾルターン・タマーシュ・ヴァイダ
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-084628(JP,A)
【文献】特表2016-517357(JP,A)
【文献】特表2016-531020(JP,A)
【文献】特開2017-165041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/118,64/20,64/30,
64/386,64/40
B33Y 10/00,30/00,40/00,50/00,70/00,
80/00
G05B 19/4093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータモデルに基づく3Dオブジェクトをプリントするプリンタであって、
-ツールコマンドに基づいて、活性状態と非活性状態とを変えるように構成されたツールであって、前記ツールは、前記活性状態のオブジェクトの層に追加位置へ材料を追加するように構成され、前記追加位置は、形状定義構造のツール位置によって決定される、ツールと、
-前記オブジェクトの層を支持するように配置されたステージと、
-動作コマンドを受信するように構成され、それに基づいて、前記形状定義構造の動作によって
前記オブジェクトの層の
形状を定義する、動作構造と、
前記ツール及び前記動作構造と通信するように構成され、前記オブジェクトの層の前記形状を定義する形状データを受信し、前記形状データに基づく経路を提供し、前記追加位置が前記経路をたどるように前記動作構造のための前記動作コマンドを提供し、前記経路に基づいて前記ツールコマンドを提供するようにプログラムされたコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
-前記形状データに基づいて、複数の線セグメントを定義するステップと、
-それぞれの前記線セグメントのための開始点と終了点を定義するステップと、
-前記線セグメントの順番を定義することによって、近接線セグメントのリストを定義するステップと、
-前記近接線セグメントのリストの少なくとも一対の2つの隣接線セグメントの間に遷移セグメントを定義するステップであって、それぞれの前記遷移セグメントは、次の前記線セグメントにおいて所望の最小速度と最大加速度に基づいて定義され、そのため、前記経路は、前記遷移セグメントによって分離された少なくとも一対の前記線セグメントを含む前記近接線セグメントによって定義される、遷移セグメントを定義するステップと、
によって,前記経路を定義するように構成され、
前記コントローラは、前記追加位置が前記線セグメント内にあるとき前記ツールが活性化され、前記追加位置が前記線セグメントの外にあるとき前記ツールが非活性化されるように前記ツールコマンドを提供するようにプログラムされ
、
前記コントローラは、少なくとも1つの安全領域の定義を含み、前記安全領域は、前記最小速度と前記最大加速度が満足される幾何学的な境界を形成する、プリンタ。
【請求項2】
前記遷移セグメントは、
-加速及び減速するように前記動作構造の能力を定義する動作構造プロファイルを受信するステップと、
-前記遷移セグメントに続く前記線セグメントにおいて、所望の最小速度と加速及び減速するための前記動作構造の能力を比較することによって、前記遷移セグメントの必要長さを定義するステップと、
-前記必要長さに基づいて前記遷移セグメントを定義するステップと、
によって所望の前記最小速度及び前記最大加速度に基づいて定義される、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記コントローラは、前記動作構造の動作を制限するリミットを定義し、前記リミットが前記経路に沿って前記形状定義構造の動作中に届けられるかどうか確認するように構成され、
前記コントローラは、届けられた前記リミットの確認に応答して、次の活動、
a)前記ツールと前記ステージの間の距離を変更するステップ
b)前記線セグメントの順番を変更するステップ
c)遷移セグメントを変更するステップ
の少なくとも1つを実行するように構成される、請求項1乃至2のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記コントローラは、前記プリンタの少なくとも一部の形状を定義するジオメトリデータを受信し、前記経路に沿った前記形状定義構造の動作が、前記形状データと前記ジオメトリデータを考慮しながらシミュレートされる衝突シミュレーションを実行することによって激しい衝突を予測するように構成され、
前記コントローラは、前記衝突シミュレーションに基づいて前記リミットを定義するように構成された、請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記コントローラは、前記動作構造の運動学的能力を定義する運動学的データを受信し、前記形状定義構造が前記形状データ及び前記運動学的データを考慮しながら前記経路に沿ってシミュレートされる、運動学的シミュレーションを実行することによって運動学的リミットを予測するように構成され、
前記コントローラは、前記運動学的シミュレーションに基づいて、前記リミットを定義するように構成された請求項3または4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記コントローラは、前記ツールが前記層に材料を追加するプロセスに関連するプロセス特性を定義するプロセスデータを受信し、前記経路に沿って前記形状定義構造の動作が前記プロセスデータと前記形状データを考慮しながらシミュレートされ、前記プロセス特性を考慮して前記形状定義構造の動作に関連する問題を確認するソフト衝突シミュレーションを実行することによってソフト衝突を予測するように構成され、
前記コントローラは、プロセスシミュレーションに基づいて前記リミットを定義するように構成される、請求項3乃至5のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記線セグメントの順番は、異なる線セグメントの順番のための前記経路をたどるために前記動作構造の期間を評価することによって及び最短の期間を提供する順番を選択することによって定義される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記ツールは、電源オン、スイッチオフにされ、
前記材料が加えられるまで前記ツールが電源オンされる時点から遅延を定義する特性を有し、
前記コントローラは前記遅延を定義するように構成される請求項1乃至7のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記コントローラは、前記追加位置が遷移セグメント内にある間に前記ツールが電源オンされるように、前記ツールコマンドを提供するように構成される、請求項8に記載のプリンタ。
【請求項10】
前記コントローラは、前記近接線セグメントのリストの1つの前記線セグメントの第1の方向と、前記近接線セグメントのリストの次の前記線セグメントの第2の方向を比較し、前記第1の方向と前記第2の方向の間の角度を提供し、前記角度が所定の角度値を超えるならば、前記線セグメントの間の前記遷移セグメントを定義するように構成される、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項11】
前記コントローラは、前記角度値を定義する設定データファイルを受信するように構成される、請求項10に記載のプリンタ。
【請求項12】
前記コントローラは、少なくとも前記遷移セグメントの加速領域と前記遷移セグメントの次の消失領域を定義することによって遷移領域を定義するように構成され、
前記コントローラは、前記動作構造が前記形状定義構造を加速または減速する領域として前記加速領域を定義し、前記動作構造が前記形状定義構造に一定速度を提供し、前の加速領域で加速または減速が前記形状定義構造の振動を引き起こすためにシミュレートされる、領域として前記消失領域を定義するように構成される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項13】
前記コントローラは、
前の前記線セグメント及び次の前記線セグメントの位置に基づいてまっすぐな前記遷移セグメントまたは曲がった前記遷移セグメントを定義する間を選択するステップと、
もしまっすぐな前記遷移セグメントが選択されたならば、まっすぐな前記遷移セグメントに長さを適用し、前記長さは、方程式:
【数1】
によって適用され、
ここで、Lは、まっすぐな前記遷移セグメントの長さが適用され、vは、前記コントローラに定義される安全領域速度であり、aは、前記コントローラに定義される加速度であり、d
a
は、加速領域で加速した後に必要とされる前記消失領域の長さである、長さが適用されるステップと
もしまがった前記遷移セグメントが選択されたならば、まがった前記遷移セグメントに曲率半径を適用し、前記曲率半径は、方程式:
【数2】
によって適用され、
R
min
は、最小曲率半径であり、V
s
は、前記コントローラで定義される安全領域速度であり、a
s
は、前記コントローラで定義される最大安全領域加速度である、曲率半径が適用されるステップと、
によって前記遷移セグメントを定義するように構成される、請求項12に記載のプリンタ。
【請求項14】
前記コントローラは、前記前の加速領域の加速または減速が、前記形状定義構造または前記形状定義構造に取り付けられる部品の固さを定義する構造データファイルと前記前の加速領域の加速または減速を比較することによって、前記形状定義構造の振動を引き起こすかどうかをシミュレートするように構成される、請求項12または13に記載のプリンタ。
【請求項15】
前記形状定義構造は、前記ツール及び前記ステージの少なくとも1つである、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項16】
前記コントローラは、前記経路の少なくとも1つの前記線セグメントにおいて上昇速度及び下降速度を定義するように構成され、
前記上昇速度及び前記下降速度は、前記コントローラで定義される安全領域加速リミット内で定義される、請求項1乃至15のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項17】
プリンタの使用によってコンピュータモデルに基づいて3Dオブジェクトをプリントする方法であって、
-ツールコマンドに基づいて、活性状態と非活性状態とを変えるように構成されたツールであって、前記ツールは、活性状態のオブジェクトの層の追加位置に材料を追加するように構成され、前記追加位置は、形状定義構造のツール位置によって決定される、ツールと、
-前記オブジェクトの層を支持するように配置されたステージと、
-動作コマンドを受信するように構成され、それに基づいて、前記形状定義構造の動作によって前記オブジェクトの層の形状を定義する、動作構造と、
前記ツール及び前記動作構造と通信するように構成され、前記オブジェクトの層の前記形状を定義する形状データを受信し、前記形状データに基づく経路を提供し、前記形状定義構造が前記経路をたどるように前記動作構造のための動作コマンドを提供し、前記経路に基づいて前記ツールコマンドを提供するようにプログラムされたコントローラと、を備え、
方法は、
-前記形状データに基づいて、複数の線セグメントを定義するステップと、
-それぞれの前記線セグメントのための開始点と終了点を定義するステップと、
-前記線セグメントの順番を定義することによって、近接線セグメントのリストを定義するステップと、
-前記近接線セグメントのリストの少なくとも一対の2つの隣接線セグメントの間に遷移セグメントを定義するステップであって、それぞれの前記遷移セグメントは、次の前記線セグメントにおいて所望の最小速度と最大加速度に基づいて定義され、そのため、前記経路は、前記遷移セグメントによって分離された少なくとも一対の前記線セグメントを含む前記近接線セグメントによって定義される、遷移セグメントを定義するステップと、
を備え、
方法はさらに、
前記形状定義構造が前記経路をたどるように、前記動作構造のための前記動作コマンドを提供するステップを備え、前記追加位置が前記線セグメント内にあるとき前記ツールが活性化され、前記追加位置が前記線セグメントの外にあるとき前記ツールが非活性化されるツールコマンドを提供し、
少なくとも1つの安全領域の定義し、前記安全領域は、前記最小速度と前記最大加速度が満足される幾何学的な境界を形成する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンピュータモデルに基づく3Dオブジェクトをプリントするプリンタ及び方法に関する。本開示が関するプリンタは、ツールコマンドに基づいて活性及び非活性状態の間を変わるように構成される。活性状態において、本明細書では追加位置と言われる、特定の位置に材料を追加する。追加位置は、オブジェクトの層の位置である。追加位置は、通常、ツールの統合部分である、形状定義構造のツール位置によって決定される。プリンタは、さらにオブジェクトの層を支持するように配置されつつ、ツールによって定義されるステージを備える。プリンタは、さらに動作コマンドを受信するように構成され、それに基づいて形状定義構造の動作によって層の形状を定義する動作構造を備える。プリンタは、さらにツール及び動作構造と通信するように構成され、ツール及び動作構造と通信することによってオブジェクトを作るようにプログラムされたコントローラを備える。コントローラは、オブジェクトの層の形状を定義する形状データを受信し、形状データに基づいて経路を提供し、経路に基づいて動作コマンドとツールコマンドを提供するようにプログラムされる。
【背景技術】
【0002】
一般に3Dプリントと呼ばれる、積層造形(Additive manufacturing(AM))は、コンピュータ3D図面からオブジェクトの創造ができる技術である。
【0003】
2Dのスライスを形成するためにソリッドモデルをスライスするステップと、それぞれスライスに対応する層を作ることによってオブジェクトをプリントするステップとを含む。1つずつ、1つの層が前の層の上部に配置されるように、層はプリンタによって作り出される。それぞれの層は、所定の厚さがあるので、実物のオブジェクトは、層が追加されるたびに体積を得る。様々なタイプの技術:押し出しベース、粒状ベース、光重合ベース、または積層ベースがある。技術のそれぞれは、様々なタイプの材料及び層を作る様々な方法を用いるが、それらは全て、ソリッドモデルのスライスから定義された経路に沿って、本明細書で形状定義構造と呼ばれる、ツールまたはツールの一部を案内する原理を適用する。プロセスの間、材料は、スライスの形状にしたがって配置される。材料は、通常、ポリマ、合金、石こう、またはフォトポリマである。
【0004】
この種類の既知のプリンタにおいて、オブジェクトは、ステージで作り出され、形状定義構造は、ステージに対して動かされる。しばしば、形状定義構造は、マニピュレータによって動かされる及び/またはステージは、アクチュエータによって動かされる。マニピュレータ及びアクチュエータの1つまたは両方は、デカルト空間のx、y、z方向に動く。
【0005】
AM技術に基づく最も一般的な押し出しは、溶融堆積モデリングである。この技術は、ときどきFDMと言われ、溶融フィラメント製造FFFという同等の名前を有する。この押し出し技術の原理は、溶融した材料、通常熱ポリマフィラメントを押し出しながら、スライスから定義された経路をたどることであり、オブジェクトの層は、それによって作り出される。米国特許第5,121,329号は、この技術の実施例を提供する。
【0006】
一般的な粒状ベースのAM技術は、レーザによって焼結される球状ポリマまたは金属粉要素に基づく選択的レーザ焼結(Selective Laser Sintering(SLS))である。粉の層が、塗布され、オブジェクトの層は、選択的に焼結される。その後、粉の新しい層が塗布され、プロセスは繰り返される。
【0007】
別の一般的な粒状ベースのAM技術は、高真空で電子ビームで金属粉を溶かすことによって、完全に高密度の金属部分を直接製造するために用いられる選択的レーザ溶融(Selective Laser Melting(SLM))のタイプである、電子ビーム溶融(Electron Beam Melting(EBM))である。原理は、一般にSLSのそれと同じであるが、金属粉は、焼結されるだけでなく、完全に溶融される。
【0008】
3Dプリントする粉状ベッド及びインクジェットヘッドは、例えば石こうなど、粉状のベッド上に結合材を選択的に配置するインクジェットプリントヘッドに基づく。
【0009】
最も一般的な光重合技術は、以下である。
【0010】
フォトポリマ液体樹脂は、UV光またはレーザによって硬化されるステレオリソグラフィ(SLA)。レーザは、スライスに基づいて定義される経路の形状を描き、それにより硬化層を作り出す。その後、フォトポリマ液体は、追加され、次のスライスの形状は、オブジェクトが作り出されるまでレーザによって描かれる。
【0011】
デジタル光処理(Digital Light Processing(DLP))は、積層造形背景において、DLPプロジェクタが層ごとにフォトポリマを硬化するために、UV光ビームまたはレーザの代わりに照射されるSLAと同様である。
【0012】
最も一般的な積層ベースのAM技術は、例えば紙、プラスチック、または金属など、材料のシートが、層ごとに接着接合され、その後オブジェクトの形状を定義するために切られる、積層造形物製造(Laminated Object Manufacturing(LOM))である。
【0013】
速度と品質の少なくとも1つが低いことが、3Dプリントの一般的な問題である。もし速度が上がれば、許容誤差は、容認できなくなり、狭い許容誤差を得るためには、速度を落とさなければならない。
【0014】
既存の装置は、しばしば一定の時間におけるシステムの行き過ぎと振動を引き起こす。これらの振動により、材料の堆積の間、ツールは指示された経路から外れ、特に例えば鋭いエッジなど動作の規模または方向の突然の変更後、結果として生じるオブジェクトは、視認できる欠陥を有する。これらの欠陥は、一般に「リンギング」(ringing)と言われる。これらの欠陥は、動作パラメータ(速度、加速度、及び加加速度)がプリント時間を節約するために増加するとき、さらに目立つ。そのためこの行動は、主なボトルネックとしての機能を果たし、この技術を用いる機械が速く高品質なプリントを達成することを阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【0016】
さらに速く及び/または正確に3Dオブジェクトをプリントするプリンタ及び方法を提供することが、本開示の実施形態の目的である。これら及びさらなる目的にしたがって、本開示は、第1の態様において、プリンタ、プリンタのためのコントローラ、及びプリントの方法を提供する。
【0017】
本開示によるプリンタにおいて、コントローラは、例えば言及された順番で、次のステップを実行することによって経路を定義するように構成される。
a)形状データに基づいて、複数の線セグメントを定義するステップ。実施例によって、325線セグメントは定義される。線セグメントのそれぞれは、追加位置が線セグメントに沿って動かされる、すなわち材料がツールによって追加される位置が、層の所望の形状を作り出すために線セグメントに沿って動かされるようにたどられるサブ経路の構成要素となる。
b)それぞれの線セグメントのための開始点と終了点を定義するステップ。これは、それぞれの線セグメントが、追加位置が開始点から終了点へ線セグメントに沿って動く方向を割り当てられることを意味する。
c)線セグメントの順番を定義し、それにより近接線セグメントのリストを定義するステップ。これは例えば、1が最初にたどられ、次に2番、その後3番、その後4番であることの1-2-3-4を規定することができる。
d)近接線セグメントのリストの少なくとも一対の2つの隣接線セグメントの間に、遷移セグメントを定義するステップであって、それぞれの遷移セグメントは、次の線セグメントにおいて、所望の最小速度と最大加速度に基づいて定義され、そのため経路は、遷移セグメントによって分離された少なくとも一対の線セグメントを含む近接線セグメントによって定義される。経路は、例として、遷移セグメントが線セグメント2と3の間に挿入され、遷移セグメントが線セグメント3と4の間に挿入されることを意味する1-2-t-3-t-4である。
【0018】
所望の最小速度と最大加速度は、本明細書の定義によって安全領域速度及び安全領域加速度と言われる。
【0019】
ステップa)-d)は、言及された順番または異なる順番で実行される。ステップb)は、例として、ステップc)の後に実行されてもよく、ステップa)-d)は、ステップの別の1つが実行された後に、ステップの1またはそれ以上が作り直される相互作用的なプロセスとして実行されることができる。
【0020】
さらに、コントローラは、追加位置が線セグメント内にあるときツールが活性化され、追加位置が線セグメントの外にあるときツールが非活性化されるように、ツールコマンドを提供するようにプログラムされる。
【0021】
遷移セグメントは、次の線セグメントの所望の最小速度と最大加速度に基づいて定義されるので、及びツールは、線セグメント内でのみ活性化されるので、不正確な動作特性及び望まれない加速度プロファイルによって引き起こされる品質が低下するリスクなく速度を上げることができる。
【0022】
本開示の装置は、ステージに対するツールの正確で速い位置決めが必要とされる全てのシステムに適用できるが、特にツールがオブジェクトの輪郭を定義するために、鋭い曲がりを備える複雑な二次元の経路をたどる場合において、特に、マシンの機構の制限のためにプリント動作の間、高速が許容されない低コストの積層造形システムに適用できる。
【0023】
コントローラは、コンピュータプロセスユニット及びプロセッサが定義されたステップを実行することができる適合するコンピュータプログラムソフトウェアによって構成されることができる。また、ステップを実行するようにハードコーディングされるコンピュータプロセスユニットであることもできる。
【0024】
3Dプリントは、材料が3次元オブジェクトを作り出すためにコンピュータ制御の下で接合されまたは固化されるプロセスである。本明細書での定義によって、材料を接合または固化するプロセスは、「追加」材料と言われる。
【0025】
追加位置は、形状定義構造のツール位置によって決定される。追加位置が線セグメント内にあるときツールが活性化されるようにツールコマンドを決定するために、コントローラは、形状定義構造の位置から追加位置を推定するように構成される。したがって、コントローラは、動作構造と双方向通信をするように構成され、その双方向通信において、コントローラは、形状定義構造の位置に関する位置情報を受信し、それに基づいて、追加位置を決定する。追加位置が線セグメント内にあるとき、ツールは活性化される。
【0026】
ツールは電源オン及びスイッチオフにされることができる。含まれるプロセスの特性によって、例えば材料の加熱または動作によって、ツールが電源を入れられてから材料が追加されるまで遅延があるであろう。本明細書での定義によって、活性状態は、材料が追加されるときに開始し、すなわち、ツールが電源を入れられた時間から材料が追加される時間までの遅延を考慮し、したがって、その状態は、ツールに電源を入れるステップの後である。通常、活性と非活性状態の間を変わるツールコマンドはツールを電源オンまたはスイッチオフするコマンドであり、したがって、そのコマンドは、活性または非活性の所望の時間の前に遅延時間を提供しなければならない。1つの実施形態において、コントローラは、遅延を規定する設定ファイルを読み、遅延に基づくツールコマンドを計算し、線セグメントの開始において活性化することと一致するためにスイッチオンを得るように構成される。
【0027】
1つの実施形態において、プリンタは、溶融堆積モデリングの押し出しベースのAM技術のために構成される。この実施形態においてツールは、フィラメントまたはプラスチックロッドがモータシステムによって運ばれる間に溶融される、押し出し機を形成する。この実施形態において、ツール位置は、押し出し機構造のノズルの位置であり、形状定義構造は、押し出し機のノズルであり、動作構造は、材料の追加が行われる位置にノズルを配置するプリンタのモータ構造である。
【0028】
1つの実施形態において、プリンタは、選択的レーザ焼結(SLS)または選択的レーザ溶融のために構成される。この実施形態において、ツールは、レーザ及び溶融されるまたは焼結される粉末上にレーザビームを案内するためのミラーを形成する。ミラーは、モータシステムによって動かされる。この実施形態において、ツール位置は、ミラーの位置であり、形状定義構造は、ミラーであり、追加位置は、レーザが粉末に影響を与える位置であり、動作構造は、ツール位置にミラーを配置するプリンタのモータ構造である。
【0029】
1つの実施形態において、プリンタは、電子ビーム溶融(EBM)のために構成される。この実施形態において、ツールは、電子放出構造及び溶融される粉末上に電子ビームを案内するためのアンテナ構造を形成する。アンテナは、電子システムによって制御される。この実施形態において、ツール位置は、アンテナの位置であり、追加位置は、電子ビームが粉末に影響を与える位置であり、動作構造は、アンテナを制御する電子システムである。
【0030】
1つの実施形態において、プリンタは、ステレオリソグラフィ(SLA)のために構成される。この実施形態において、ツールは、レーザと硬化される液体ポリマ上にレーザビームを案内するミラーを形成する。ミラーは、モータシステムによって動かされる。この実施形態において、ツール位置は、ミラーの位置であり、追加位置は、レーザが液体ポリマに影響を与える位置であり、動作構造は、ツール位置にミラーを配置するプリンタのモータ構造である。SLAプロセスがUV硬化に基づく場合、ツール位置は、UVランプの位置であり、追加位置は、ランプからの光が液体ポリマに影響を与える位置であり、動作構造は、ツール位置にUVランプを配置するプリンタのモータ構造である。
【0031】
安全領域速度及び安全領域加速度は、例えば、特定のプリンタで得られる最大速度及び加速度のパーセンテージとして表現されることができる。安全領域速度は、特に材料の追加の間許容できると考えられる最小速度であり、安全領域加速度は、特に材料の追加の間、許容できると考えられる最大加速度である。1つの実施例において、安全領域速度は、プリンタの最大速度の40から100%として表現されることができ、安全領域加速度は、プリンタの最大加速度の0-40%として表現されることができる。
【0032】
コントローラは、すくなくとも1つの安全領域の定義を含んでもよく、安全領域は、最小速度と最大加速度が満足される幾何学的な境界を形成する。安全領域は、再定義されることができるように、コントローラがアクセスできる設定ファイルで定義されることができる。安全領域の定義は、例えばプリンタの機械的条件、速度の必要性対加速度の必要性またはプロセスの他のパラメータに基づいて作られることができる。
【0033】
遷移セグメントは、特に組み合わされた速度及び加速度プロファイルを定義する。1つの実施例において、組み合わされた速度及び加速度プロファイルは、上昇または下降プロファイルによって構成される。上昇プロファイルによって、本明細書では、全ての種類の段階、線形、s曲線、または指数関数または正弦波の加速度プロファイルを意味する。
【0034】
遷移セグメントは、次によって所望の最小速度及び最大加速度に基づいて定義されることができる。
-加速または減速するための動作構造の能力を定義する動作構造プロファイルを受信するステップ、
-加速または減速するための動作構造の能力を遷移セグメントの後の線セグメントの所望の最小速度と比較することによって、遷移セグメントの必要長さを定義するステップ、
-必要長さに基づいて遷移セグメントを定義するステップ。
【0035】
したがって、コントローラは、形状定義構造が経路をたどるとき、許されると考えられる最小速度と最大加速度、すなわち追加位置が移動する速さを最初に考える。この最小速度と最大加速度の境界内の動作を得るために、コントローラは、追加位置に入る前に、動作構造を加速するために必要とされる遷移セグメントの長さを計算する。
【0036】
コントローラは動作構造の動作を制限するリミットを定義し、経路に沿って形状定義構造の動作の間リミットに到達するかどうかを確認するように構成されることができる。リミットは、プリンタの一部とプリントされるオブジェクトの間の物理衝突を意味する激しい衝突または動作構造のリミットとの「衝突」、すなわち支持構造において、リニアアクチュエータまたは同様の構造において、リミットに到達すると本明細書で言われるものによって引き起こされることができる。リミットは、また動作が態様に関するプロセスに基づいてプリントされるオブジェクトと衝突する、例えば既にプリントされた部分がツールによって溶かされまたは破壊されるなど、を意味するソフト衝突と本明細書で言われるものによって引き起こされることができる。
【0037】
この実施形態において、コントローラは、到達するリミットの確認に応じて、次の活動の少なくとも1つを実行するように構成される。
a)衝突は、経路に沿った動作の間、オブジェクトから離れるようにツールを持ち上げることによってツールとステージの間の距離を変えることによって避けられる。通常、これは、動作の間、ツール経路のz座標を操作することによってなされる。
b)衝突は、線セグメントの順番を変えることによって避けられる。短いまたは速い押し出しを得るために、線セグメントの順番は、1-2-3-t-4-5であり、この順番は、例えば4-5-2-1-t-3に変更でき、それにより衝突を避ける。
c)衝突は、遷移セグメントを変えることによって避けられる。これは、異なる形状の遷移セグメントを作り出すことに関する。
【0038】
コントローラは、プリンタの少なくとも一部の形状を定義するジオメトリデータを受信し、経路に沿った形状定義構造が形状データとジオメトリデータを考慮しながらシミュレートされた衝突シミュレーションを実行することによって激しい衝突を予測するように構成され、コントローラは、衝突シミュレーションに基づくリミットを定義するように構成される。衝突シミュレーションによって、本明細書では、潜在的な激しい衝突が観察されつつ、追加位置が経路の周りを実質的に移動することが考慮される。
【0039】
コントローラは、動作構造の運動学的能力を定義する運動学的データを受信し、形状定義構造が形状データ及び運動学的データを考慮しながら経路に沿ってシミュレートされる、運動学的シミュレーションを実行することによって運動学的リミットを予測するように構成されることができ、コントローラは、運動学的シミュレーションに基づいてリミットを定義するように構成される。運動学的シミュレーションによって、本明細書では、運動学的リミットの潜在的な到達が観察されつつ、追加位置が経路の周りを実質的に移動することが考慮される。
【0040】
コントローラは、ツールが材料を層に追加するプロセスに関するプロセス特性を定義するプロセスデータを受信し、経路に沿った形状定義構造の動作が、プロセスデータと形状データを考慮しながらシミュレートされ、プロセス特性を考慮しながら形状定義構造の動作に関する問題を確認する、ソフト衝突シミュレーションを実行することによってソフト衝突を予測するように構成されることができ、コントローラは、プロセスシミュレーションに基づいてリミットを定義するように構成される。
【0041】
線セグメントの順番は、動作構造が追加位置にさまざまな線セグメントの順番の経路をたどらせる時間の長さを評価することによって、及び最短の期間を提供する順番を選択することによって定義されることができる。この実施形態において、コントローラは、様々な順番を比較するように構成される。実施例によって、順番1-2-3-4は、実行するため5秒かかり、順番3-2-4-1は、3秒かかり、コントローラは、そのような比較可能な組み合わせを生成し、最終経路を実行するためのかかる時間を考慮する最も有望な解決法を提供する順番を選択するように構成されることができる。特に、コントローラは、最終経路の様々な順番、すなわち、遷移セグメントを含んで、成立させ、最も速い経路を選択するように構成されることができる。
【0042】
ツールは、電源オンされ、スイッチオフされ、通常、プロセスの特性は、ツールが電源オンされた時点から材料が追加されるまでの遅延を定義する。コントローラは、そのような遅延を定義し、ツール位置が遷移セグメント内にある間に、ツールが電源オンされるように、ツールコマンドを提供するように構成される。特に、コントローラは、実際の追加がまさに線セグメントの開始において始まる利点に、遅延を用いるように構成される。その目的のために、コントローラは、追加位置が線セグメントに到達する開始時間から遅延を引き、開始時間から遅延を引いたものに等しい時間において、ツールを電源オンするようにツールコマンドを提供する。
【0043】
コントローラは、近接線セグメントのリストの1つの線セグメントの第1の方向を、近接線セグメントのリストの次の線セグメントの第2の方向と比較し、第1の方向と第2の方向の間の角度を提供し、角度が所定の角度値を超えるならば、線セグメントの間に遷移セグメントを定義するように構成される。この目的のために、コントローラは、角度値を定義する設定データファイルを受信するように構成されることができる。
【0044】
コントローラは、少なくとも遷移セグメントの加速度領域と遷移領域の次の消失領域を定義することによって、遷移セグメントを定義するように構成され、コントローラは、動作構造が形状定義構造を加速または減速する領域として、加速領域を定義し、動作構造が形状定義構造に一定速度を提供し、前の加速領域の加速または減速が形状定義構造の振動を引き起こすことをシミュレートされる領域として消失領域を定義するように構成される。
【0045】
コントローラは、前の加速領域において加速または減速が、前の加速領域における加速または減速を形状定義構造または形状定義構造に取り付けられた部品の固さを定義する構造データファイルと比較することによって、形状定義構造の振動を引き起こすかどうかをシミュレートするように構成されることができる。
【0046】
第2の態様において、本開示は、次を備えるプリンタの使用によってコンピュータモデルに基づく3Dオブジェクトをプリントする方法を提供する。
-ツールコマンドに基づいて、活性状態と非活性状態とを変えるように構成されたツールであって、ツールは、活性状態のオブジェクトの層の追加位置に材料を追加するように構成され、追加位置は、形状定義構造のツール位置によって決定される、ツール、
-オブジェクトの層を支持するように配置されたステージ、
-動作コマンドを受信するように構成され、それに基づいて、形状定義構造の動作によって層の形状を定義する、動作構造、
ツール及び動作構造と通信するように構成され、オブジェクトの層の形状を定義する形状データを受信し、形状データに基づく経路を提供し、形状定義構造が経路をたどるように動作構造のための動作コマンドを提供し、経路に基づいてツールコマンドを提供するようにプログラムされたコントローラ。
方法は、
-形状データに基づいて、複数の線セグメントを定義するステップ、
-それぞれの線セグメントのための開始点と終了点を定義するステップ、
-線セグメントの順番を定義することによって、近接線セグメントのリストを定義するステップ、
-近接線セグメントのリストの少なくとも一対の2つの隣接線セグメントの間に遷移セグメントを定義するステップであって、それぞれの遷移セグメントは、次の線セグメントにおいて所望の最小速度と最大加速度に基づいて定義され、そのため、経路は、遷移セグメントによって分離された少なくとも一対の線セグメントを含む近接線セグメントによって定義される、遷移セグメントを定義するステップ、
を備える。
【0047】
方法はさらに、形状定義構造が経路をたどるように、動作構造のための動作コマンドを提供するステップを備え、追加位置が線セグメント内にあるときツールが活性化され、追加位置が線セグメントの外にあるときツールが非活性化されるツールコマンドを提供する。したがって、本発明の方法は、線セグメントと遷移セグメントの経路の区分けによって高速でオブジェクトを作製することをもたらす。
【0048】
本開示の第2の態様による本発明の方法は、おおよそ本開示の第1の態様によるプリンタの潜在的な全てのステップを含む。
【0049】
さらなる態様において、本発明は、プリンタのためのコントローラを提供し、第1の態様によるプリンタのコントローラにおいて記載された特徴を有する。
【0050】
以下では、本開示は、図を参照してさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図10】安全領域の間の追加加速度を追加するステップを描く。
【
図13】遷移セグメントの変更による衝突回避を描く。
【
図14】線セグメントの並べ替えによる衝突回避を描く。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び改良がこの詳細な記載から当業者に明らかになるので、詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の実施形態を示しているが、例示としてのみ与えられる。
【0053】
本開示の方法及び装置は、ステージに対するツールの正確で速い位置決めが必要とされる全てのシステムに適用できるが、特にツールがオブジェクトの輪郭を定義するために、鋭い曲がりを備える複雑な2次元の経路をたどる場合において、特に、マシンの機構の制限のためにプリント動作の間、高速が許容されない低コストの積層造形システムに適用できる。
【0054】
図1は、押し出しベースのプリンタ(FDM)を描く。描かれたプリンタは、一巻きの熱ポリマフィラメントの形態のフィラメント供給部1を備える。フィラメント2は、押し出し機3に供給モータ(図示せず)によって供給される。供給モータは、ツールコマンドによって制御される。押し出し機3は、ノズル4及び電気ヒータ(図示せず)を備える。ヒータは、またツールコマンドによって制御される。この実施形態において、ツールは、フィラメント供給部、及びノズル及びヒータを含む押し出し機によって構成され、形状定義構造はノズルである。押し出し機3は、矢印5によって描かれるデカルト空間の2つの方向に押し出し機、ヒータ、及びノズルを動かすことができる動作構造に固定される。ノズルがスライスから定義された経路にしたがって動かされるとき、ツールの形状定義構造、すなわちこの場合においてノズル4は、ツール位置を有し、ツール位置は、材料が添加され、したがって、ツールが活性状態にあるときオブジェクトの層を定義する対応する追加位置6を決定する。
【0055】
フィラメントの供給の暗黙である時間遅延と、加熱の暗黙である時間遅延により、供給モータとノズルヒータは、ツールが活性状態にしなければならならい時点より前に電源をオンされなければならない。この実施形態において、電源オンされたツールに言及することは、供給モータまたはヒータの少なくとも1つを電源オンすること意味する。高度な実施形態において、ヒータ及び供給モータの少なくとも1つは、様々な速度またはヒータ強度の間で制御され、それにより材料の堆積速度を制御する。
【0056】
1つの層が終えられたとき、ステージ7は、矢印8によって示されるように下に動かされる。
【0057】
図2は、球状ポリマまたは金属分がレーザからの光によって焼結されるSLSプリンタを描く。プリンタは、レーザ源またはランプ21、ポリマのプール23の追加位置25にレーザビームを導くミラー22を備える。ミラーは、ツールの一部、すなわち形状定義構造を構成し、ツール位置は、動作コマンドに基づく動作構造によって制御されるミラーの位置である。動作構造は、矢印24によって描かれる。
【0058】
ツール位置は、追加位置を定義する。ステージは、焼結される材料のプール23によって構成される。
【0059】
粉体層が焼結されたとき、ステージは、矢印26によって描かれるマニピュレータによって下に動かされ、プールの均等なレベルの粉体を提供し、レベルは、矢印27によって描かれる上に動くマニピュレータによって補償される。次に粉体の新しい層が焼結される。
【0060】
図3は、多くの方法がSLSプリンタに対応するSLAプリンタを描く。SLAプリンタは、レーザ源またはランプ31及び動作構造34によってツール位置を変更することによって追加位置35にレーザビームを導くミラー32を備える。フォトポリマ液体樹脂33は、レーザからのUV光によって硬化される。レーザは、スライスに基づいて定義された経路の形状を描き、それにより硬化層を作り出す。次に、フォトポリマ液体が追加され、次のスライスの輪郭は、オブジェクトが作り出されるまでレーザによって描かれる。ステージは、矢印37によって描かれるマニピュレータによって動作可能である支持プレート36によって構成される。
【0061】
SLA及びSLSプリンタのツールは、ランプ21,31のスイッチをオンまたはオフにすることによってまたは、ランプ及びミラーの間にシャッタを適用することによって活性状態から非活性状態に変える。
【0062】
この種類の典型的な装置は、米国特許5,121,329に記載されるようにツールが押し出しヘッドである低コスト三次元モデリングマシン(Weistek Ideawerk-Speed)であるが、当業者によって理解されるように、本発明は、本発明の本来の精神及び範囲から逸脱することなく、使用される特定のツールまたはマシンの値段にかかわらず、多数の積層造形マシン及び方法に適用できる。
【0063】
図4に本プリンタ41を描く。ツール42は、上述のように押し出しベースである。ツールは、押し出しヘッド、材料供給部及びインターフェースを備える。ツール位置、すなわち押し出しヘッドの位置決めは、軸43(X座標)の1つを提供する1つの方向にツールを動かし、他の2つの軸45,46(Y及びZ)を提供する2つの他の方向にステージ44を無関係に動かすことによって達成され、それにより全て任意の3次元経路の創造ができる3つの独立な次元にツールの相対位置を制御する能力を提供する。実際の位置決めは、開ループ形態で動作され、動作構造を構成するタイミングベルト、プーリ、及びステッピングモータを用いて完成される。
【0064】
この特定に実施例において、コントローラは、パーソナルコンピュータで動くスライスソフトウェア47及びプリンタに内蔵されるマイクロコントローラ48を備える。コントローラは、インターフェースによって動作コマンドを受信する動作構造に接続される。コマンドに基づいて、ツールに対してステージを動かし、それにより層の形状を定義する。
【0065】
所望の安全領域速度及び安全領域加速度リミットは、コントローラで定義される。
【0066】
図5は、時間の関数として速度を描く。安全領域速度51は、例えば最大押し出し率53など、マシンの他のリミットに基づく一方で、加速度リミットが実験的に見つけられ、マシン定数として考えられるまたはプリントの速度と品質の均衡を取る方法として使用者によって選択されるパラメータであることができる。たどられる線セグメントは、このリミット内で速度と加速度を備えてたどられるべきであり、それぞれの線セグメントのその安全領域速度と安全領域加速度を得るために、線セグメントの間の遷移セグメント52は、計画されなければならない。本明細書では、隣接線セグメントを接続するセグメントは、遷移セグメントと言われる。
【0067】
スライスソフトウェア(スライサ)は、供給されるオブジェクトの形状に基づくマイクロコントローラのための動作指示を生成する。
【0068】
モータの動作の同期は、スライサから受信された情報に基づくマイクロコントローラによって操作される。
【0069】
スライサは、オブジェクトを記載する三角形を含む3Dファイルフォーマット(例えば.stl)を用いて使用者によって供給される幾何形状61を取り、所定の高さにおいて3D形状の2Dスライス32を生成する。
【0070】
これらの2Dスライス62に基づいて、材料が所望の幾何形状を作り出すために堆積されるべき線セグメント71のセットが、描かれる。したがって、追加位置は、ツールが活性化される間に、全ての線セグメントをたどるべきである。
【0071】
その後、このプロセスは例えばオブジェクトの外面72またはオブジェクトの内面73を定義する。
図6は、それが形状データに定義されるとき層の形状を描く。
図7は、形状を複数の線セグメントに分けることによって得られる近接線セグメントの対応するリスト74を描く。
【0072】
速度偏差がリンギングを引き起こす隣接線セグメントの間の接合は、例えば得られる速度を定義された安全領域速度と比較することによって、または接合に接続される2つの線セグメントの間の角度を評価することによって、確認される。この状況が起きるときはいつでも、遷移セグメントは、速度及び加速度が前の及び次の線セグメントの安全領域速度及び加速度内にあることができるように、定義される。
【0073】
例えば、まっすぐな遷移セグメント及び線形加速度プロファイルの場合において、遷移セグメントの長さは、次のように加速度率及び安全領域速度に基づく。
【0074】
【数1】
ここでLは、遷移セグメントの長さであり、vは、安全領域速度であり、aは、選択される加速度であり、通常、マシンの最大可能加速度に近く、d
aは、加速度で加速した後に必要とされる消失領域の長さである。
【0075】
曲がった遷移セグメントの場合において、スプラインの最小曲率半径は次のように計算される。
【0076】
【数2】
R
minは、最小曲率半径であり、V
sは、所望の安全領域速度であり、a
sは、最大安全領域加速度である。
【0077】
このように半径を選択することによって次の経路の前に挿入される消失領域の必要性は、排除される。理由は、プリンタは、決して遷移の間の安全領域リミットを超えず、そのような材料堆積は加速が終了した後、即座に起きるからである。
【0078】
このステップの後、それぞれの線セグメントの2つの潜在的な始まり75は、確認され、記載される。
【0079】
その後、第1の点81と線セグメント82は、選択され、最初の遷移セグメント83は、第1の加速度及び消失領域と共に定義される。加速領域は、動作構造が安全領域速度に到達するまで加速する領域及び安全領域速度が到達してすぐに、加速度が安全領域加速度を超えないように減速される領域である。
【0080】
その後、スライサは、次の最適な点を見つけ続け、例えば次の所定のパラメータのセットに基づくスプラインを用いることによってそれを接続する。
-探索半径84
-最小曲率半径(または最大加速度)
-スプラインの開始と終了における接線制約
【0081】
探索半径84は、潜在的接続が評価される最大距離を定義する。これは、要求されるプロセスパワーを制限するためになされる。
【0082】
最小曲率は、遷移領域の間の最大求心加速度を定義し、必要とされる消失領域の長さを定義する。
【0083】
最後のパラメータは、スプラインの開始と終了における接線要求である。これは、追加の振動を引き起こすことなく、スプラインから次の線セグメントへ滑らかな遷移を確実にするために導入されることができる。
【0084】
これらのパラメータに基づいて、現在の線セグメントの終点から次の線セグメントの次の開始点に可能なルート85のセットは計画され、1つの線セグメントから次の線セグメントへの最短の道が選択される。
【0085】
ループは、層の全ての線セグメントが少なくとも、しかし1度だけアクセスされるまで、この方法で続けられる。結果は、必要である線セグメントの間に配置された遷移セグメントを含む近接線セグメントのリストである。材料が追加されるのみでありながら追加位置は線セグメント内であり、線セグメントの外にないという推定の下で、所望の量を超える振動を引き起こすことなく、所望の速度で結果の経路を完成する。
【0086】
図9は、近接線セグメントのリストと、4つの線セグメントの間に加えられる遷移セグメントを描く。これは近接線セグメントの経路と言われる。
【0087】
層91の終わりにおいて、異なる層の間の滑らかな遷移セグメントは、現在の層の最後の点と次の層の第1の点を接続するために同じ方法を用いることによって達成される、またはさらに層がプリントされる必要がないならば、減速領域92が挿入される。
【0088】
最後に、動作指示が生成されコントローラに送られる。このステップの間、さらなる加速と減速が、例えば線セグメントを構成する長いまっすぐな線の間に、挿入される。これはさらにプリントの速度を上げるためになされる。
図10は、この実施例を示す。一定速度を維持する代わりに、安全領域要求に合う小さい加速101と減速102が挿入される一方で、開始と終了速度を同じに維持する。これは、経路が再計算される必要がないが、追加のプリント速度が得られることを意味する。この方法を用いるとき、押し出しは、押し出し不足を避けるためにこの加速に一致するように制御される。
【0089】
図11は、現在の発明の実施の間、遭遇する可能性のある潜在的な議論を描く。
【0090】
遷移セグメント111は、オブジェクトの境界112の外に延在するように生成されるので、潜在的な衝突113を確認し、軽減する方法が実行される。そうでなければ生成された経路が軸移動制限114を超えるまたは他の、既にプリントされたオブジェクトの一部との衝突、または別のオブジェクト115との衝突を引き起こすリスクがある。
【0091】
ステップは、オブジェクトが作業空間の内側に設置されることができるまたはできない制限によって、潜在的な解決法が衝突を避けるために見つけることができない状況を避けるために取られる。
図12は、オブジェクトがリミットへどれだけ近づくかを制限するために用いられるオブジェクトの周りの安全領域を描く。線セグメントの終了における速度と、マシンが可能である最大速度を与えられると、マシンが任意の角度において曲げることができる速度へ速度を落とすために必要とされる距離121を計算する、またはマシンが全速で曲がることができる半径122計算することができる。これらの値の最小値を取ることによって、それぞれのオブジェクトの周りに「バッファ領域」123を生成できる。その後、オブジェクトが、軸リミットまたは別のオブジェクトへの距離より近くへ設置されることを防ぐ。これは、衝突前に安全に止まるまたはツールを向け直すことができる経路を作ることができない状況を防ぐためである。
【0092】
この第1の安全測定後、衝突は、プリンタの作業領域の外111へ行く全ての遷移セグメントスプラインを見つけることによって避けられる。次に、これらの遷移セグメントは、衝突を避けるために変更される。
図13は、これをするために1つの潜在的な方法を示す。この実施例において、スプラインのために鋭い最小のコーナ半径131を選択することによって、遷移セグメントの大きさは、減少し、高い加速度によって引き起こされる余分な振動は、次の線の消失領域132を延在することによって、補償される。
【0093】
衝突回避は、また線セグメントがプリントされるべき順番を決定するときパラメータの1つとして考慮されることができる。
図14は、本来計画されたもの142の代わりの次のセグメントの様々な開始点141を選択することによって、本来の遷移セグメント81を変更することだけでこれを達成することは不可能であったが、軸リミット114の外側を横切ることなく、全ての要求を満足する新しい遷移セグメント143を作ることができる実施例を示す。
【0094】
例えば我々の実施例の押し出し機など接触ベースの材料堆積技術の場合において、別の潜在的なタイプの衝突が、また考慮されるかもしれない。FDMプリントのような、技術の間、既にプリントされたオブジェクトの部分115を超えてまたは近くでツールを動かすことは望まれない。ツールからの放射熱により、既にプリントされた部分が再溶融及び変形し、それによりプリントオブジェクトの欠陥を作り出し、物理衝突が起きないかもしれないが、さらにプリント品質を妥協する、「ソフト」衝突を引き起こすかもしれない。
【0095】
図15は、この問題を緩和するための方法を示す。潜在的なソフト衝突が検知されたとき、ツールは、そのZ座標153を操作する(ツール42からステージ44を動かす)ことによって、遷移セグメント111の間、作業平面152から持ち上げられる151。
【0096】
本発明の実施の間、潜在的に遭遇する別の実際の問題は、線セグメントの開始及び終了の間、ツールを正確に活性及び非活性にする要件である。
【0097】
図16は、ツールの活性信号を変調することによってツールの活性化を線セグメントに一致させるための方法を描く。
【0098】
典型的な実施形態の場合において、ツールはフィラメント押し出し機である。このようなツールのために、活性化信号161が送信された後、圧力がノズルの内側に加えられる必要があるので、フィラメント押し出し163が開始するためにかなりの時間162がかかる。同じように、非活性の間、ノズルが物理的にブロックされないならば、フィラメントは重力の引っ張り、残圧、及び熱膨張により流れ出続ける。同様な遅延は、また異なる範囲に3Dプリントで用いられる他のタイプのツールで存在する。
【0099】
例えば遷移期間の間、フィラメントを引っ込める従来技術に記載されるような方法を改善する他の対応とは別に、これらの技術に加えて、遷移セグメントの形態の追加経路は、試みでわずかに早く活性化信号161を送信することを用いて、ツールの活性化を線セグメント164と同期することである。