IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イシダの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20230308BHJP
   B07C 5/346 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
G01N23/18
B07C5/346
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017241905
(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公開番号】P2019107605
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】万木 太
(72)【発明者】
【氏名】杉本 一幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 淳
(72)【発明者】
【氏名】福本 健二
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-048178(JP,A)
【文献】特開2013-088165(JP,A)
【文献】特開2017-138193(JP,A)
【文献】特開2002-162705(JP,A)
【文献】特開2016-137007(JP,A)
【文献】特開2004-357900(JP,A)
【文献】特開2016-200606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
G01V 5/00-5/14
B07C 5/00-5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品にX線を照射するX線照射部と、
前記X線に基づいて前記物品の画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部により生成された前記画像に基づいて前記物品における不良の有無を判断する判断部と、
作業員が異物の除去作業を行う作業部と、
前記判断部で不良と判断された前記物品である作業対象物を前記作業部に振り分ける振分機構と、
前記作業対象物が振り分けられた前記作業部において、前記作業員が視認可能に、当該作業対象物の前記画像を表示させる表示部と、
を備え、
前記表示部は、前記画像を、
前記物品のうち搬送されているときに上に向いていた第1面を利用する第1画像、
および
前記物品のうち搬送されているときに下に向いていた第2面を利用する第2画像、
いずれかに切り換える反転操作が可能であり、
さらに前記表示部は、前記作業員が異物の除去作業を行う際に、前記作業員による前記反転操作に応じて前記第1画像および前記第2画像のいずれかを表示させる、
検査装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記作業部ごとに設けられている、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記表示部は、複数の前記作業部に共通の1つの表示手段である、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記表示部は、作業対象の前記画像を固定して表示する、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記表示部は、1つの前記作業部に振り分けられた複数の前記作業対象物の画像を分割して表示する、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記作業対象物は、前記作業部で異物除去を行うために異物の有無が検査された食品である、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品への異物混入の有無を判定する手段として画像を用いた検査装置が利用されている。例えば、特許文献1(特願2016-55555号)に記載のX線検査装置は、異物位置特定用画像を生成し、作業員が商品における異物の位置を容易に特定することができるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、検査ラインでは、異物有りと判定された商品を振り分けて、作業員が異物の除去作業を行うが、除去作業に時間がかかり過ぎると、異物混入商品が滞留し生産効率が低下する。
【0004】
本発明の課題は、作業員による異物の除去作業を効率的に行うことができる検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る検査装置は、物品にX線を照射するX線照射部と、X線に基づいて物品の画像を生成する画像生成部と、画像生成部により生成された画像に基づいて物品における不良の有無を判断する判断部と、作業部と、振分機構と、表示部とを備えている。作業部では、作業員が異物の除去作業を行う。振分機構は、判断部で不良と判断された物品である作業対象物を作業部に振り分ける。表示部は、作業対象物が振り分けられた作業部において、作業員が視認可能に、当該作業対象物の画像を表示させる。表示部は、画像を、第1画像および第2画像のいずれかに切り換える反転操作が可能である。第1画像は、物品のうち搬送されているときに上に向いていた第1面を利用する画像である。第2画像は、物品のうち搬送されているときに下に向いていた第2面を利用する画像である。さらに表示部は、作業員が異物の除去作業を行う際に、作業員による反転操作に応じて第1画像および第2画像のいずれかを表示させる。
【0006】
この検査装置では、作業部に作業対象物の検査結果画像が表示されることによって、作業員による異物の除去作業がはかどる。
【0007】
また、この検査装置では、例えば、鶏肉のような商品は皮を上にして搬送されるが、作業部での異物除去の際には皮を下にしているので、作業対象物の異物の位置は、検査結果画像を反転させたときの位置と一致する。それゆえ、検査結果画像を反転させることによって、作業対象物の異物の位置と、画像に表示される異物の位置とが一致し、異物除去作業が容易になる。
【0008】
本発明の第観点に係る検査装置は、第1観点に係る検査装置であって、表示部が作業部ごとに設けられている。
【0009】
この検査装置では、複数の作業部が存在しても、作業部ごとに振り分けられた作業対象物の検査結果画像が表示されるので、作業員は割り当てられた作業部で必要な検査結果画像を見ることができる。
【0010】
本発明の第観点に係る検査装置は、第1観点に係る検査装置であって、表示部が、複数の作業部に共通の1つの表示手段である。
【0011】
この検査装置では、表示部を1つに集約することによって、除去作業が必要な作業対象物が振り分けられた作業部に対してのみ検査結果画面を表示すればよい。また、複数の作業部に対して検査結果画像を表示する必要があるときは、表示部に画面を必要な数だけ作成すれば足りる。したがって、表示部の過剰設置が防止される。
【0012】
本発明の第観点に係る検査装置は、第1観点から第観点のいずれか1つに係る検査装置であって、表示部が作業対象の画像を固定して表示する。
【0013】
この検査装置では、表示部が振り分けられたNG画像を作業の間固定する(次のNG画像があっても、表示を切り替えない)ことで、異物除去作業の効率が向上する。
【0014】
NG画像は所定の時間だけ表示させ続けるか、或いは、作業が完了した場合に手動で切替える。
【0015】
本発明の第観点に係る検査装置は、第1観点から第観点のいずれか1つに係る検査装置であって、表示部が、1つの作業部に振り分けられた複数の作業対象物の画像を分割して表示する。
【0016】
この検査装置では、1つの作業部に複数の作業対象物が振り分けられた場合でも、作業対象物ごとの検査結果画像を同時に表示することができるので、作業員はどの作業対象物に対してどの検査結果画像をみるべきかを把握し、作業対象物から異物の除去を効率良く行うことができる。
【0017】
本発明の第観点に係る検査装置は、第1観点から第観点のいずれか1つに係る検査装置であって、作業対象物は、作業部で異物除去を行うために異物の有無が検査された食品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る検査装置では、作業部に作業対象物の検査結果画像が表示されることによって、作業員による異物の除去作業がはかどる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るX線検査装置の外観斜視図。
図2】X線検査装置のシールドボックスの内部構成図。
図3】X線検査の原理を示す模式図。
図4】制御コンピュータのブロック構成図。
図5】画像生成部の機能ブロック図。
図6】X線検査装置の前後の工程構成図。
図7A】異物が検出された商品のX線透過画像の画像図。
図7B】異物位置特定用画像の画像図。
図8】異物位置特定用画像の自動生成制御のフローチャート。
図9】N番目の異物有り商品およびN+1番目の異物有り商品の異物位置特定用画像を同時に表示した表示部の画像図。
図10】N~N+4番目の異物有り商品の異物位置特定用画像を同時に表示した表示部の画像図。
図11】異物位置特定用画像とそれを反転させた画像を表示した表示部の画像図。
図12A】他の実施形態における異物が検出された商品のX線透過画像の画像図。
図12B】他の実施形態における異物抽出画像の画像図。
図12C】他の実施形態における輪郭抽出画像の画像図。
図12D】他の実施形態における異物位置特定用画像の画像図。
図13】他の実施形態における異物位置特定用画像の自動生成制御のフローチャート。
図14】他の実施形態における制御コンピュータのブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0021】
(1)X線検査装置10全体の構成
図1は、本発明の一実施形態に係るX線検査装置10の外観斜視図である。図1において、X線検査装置10は、食品等の商品Gの生産ライン(図6参照)に組み込まれて商品Gの品質検査を行う装置の1つであって、連続的に搬送されてくる商品Gに対してX線を照射することにより商品Gの良否判断を行う装置である。
【0022】
検査対象物である商品Gは、前段コンベア60(図6参照)によってX線検査装置10のところまで運ばれてくる。商品Gは、X線検査装置10において良品または不良品に分類される。このX線検査装置10での検査結果は、X線検査装置10の下流側に配置されている振分機構70に送られる。
【0023】
振分機構70(図6参照)は、X線検査装置10において良品と判断された商品Gを、正常品を排出するコンベア80へと送り、X線検査装置10において不良品と判断された商品Gを、不良排出方向91、不良排出方向92へと振り分ける。
【0024】
(2)詳細構成
図2は、X線検査装置のシールドボックスの内部構成図である。図1及び図2において、X線検査装置10は、シールドボックス11と、コンベア12と、X線照射器13と、X線ラインセンサ14と、タッチパネル機能付きのモニタ30(図1参照)と、制御コンピュータ20(図4参照)とから構成されている。
【0025】
(2-1)シールドボックス11
シールドボックス11の両側面には、商品Gをシールドボックス11の内外に搬入出させるための開口11aが形成されている。開口11aは、シールドボックス11の外部へのX線の漏洩を防止するために、遮蔽ノレン(図示せず)により塞がれている。この遮蔽ノレンは、鉛を含むゴムから成形されており、商品Gが開口11aを通過する際に商品Gによって押しのけられるようになっている。
【0026】
そして、シールドボックス11内には、コンベア12、X線照射器13、X線ラインセンサ14、制御コンピュータ20等が収容されている。また、シールドボックス11の正面上部には、モニタ30の他、キーの差し込み口および電源スイッチ等が配置されている。
【0027】
(2-2)コンベア12
コンベア12は、シールドボックス11内において商品Gを搬送するものであり、図1に示すように、シールドボックス11の両側面に形成された開口11aを貫通するように配置されている。そして、コンベア12は、コンベアモータ12a(図4参照)によって駆動される駆動ローラによって無端状のベルトを回転させながら、ベルト上に載置された商品Gを搬送する。
【0028】
コンベア12による搬送速度は、オペレータが入力した設定速度になるように、制御コンピュータ20によるコンベアモータ12aのインバータ制御によって細かく制御される。また、コンベアモータ12aには、コンベア12による搬送速度を検出して制御コンピュータ20に送るエンコーダ12b(図4参照)が装着されている。
【0029】
(2-3)X線照射器13
光照射部としてのX線照射器13は、図2に示すように、コンベア12の上方に配置されており、下方のX線ラインセンサ14に向けて扇状の照射範囲XにX線を照射する。
【0030】
(2-4)X線ラインセンサ14
図3は、X線検査の原理を示す模式図である。図3において、X線ラインセンサ14は、コンベア12の下方に配置されており、主として多数の画素センサ14aから構成されている。これらの画素センサ14aは、コンベア12による搬送方向に直交する向きに一直線に水平配置されている。また、各画素センサ14aは、商品Gやコンベア12を透過したX線を検出し、X線透視像信号を出力する。X線透視像信号は、X線の明るさ(濃度)を示すものである。
【0031】
(2-5)モニタ30
モニタ30は、フルドット表示の液晶ディスプレイであり、検査時に必要となる検査パラメータ等の入力をオペレータに促す画面を表示する。また、モニタ30は、タッチパネル機能も有しており、オペレータからの検査パラメータ等の入力を受け付ける。
【0032】
(2-6)制御コンピュータ20
図4は、制御コンピュータ20のブロック構成図である。図4において、制御コンピュータ20は、CPU(中央演算処理装置)21、ROM(リードオンリーメモリ)22、RAM(ランダムアクセスメモリ)23、HDD(ハードディスク)25および記憶メディア等を挿入するためのドライブ24を搭載している。
【0033】
CPU21では、ROM22やHDD25に格納されている各種プログラムが実行される。HDD25には、検査パラメータや検査結果が保存蓄積される。検査パラメータについては、モニタ30のタッチパネル機能を使ったオペレータからの入力によって設定及び変更が可能である。オペレータは、これらのデータがHDD25だけでなくドライブ24に挿入された記憶メディアにも保存蓄積されるように設定することができる。
【0034】
さらに、制御コンピュータ20は、モニタ30でのデータ表示を制御する表示制御回路(図示せず)、モニタ30のタッチパネルを介してオペレータにより入力されたキー入力データを取り込むキー入力回路(図示せず)、プリンタ(図示せず)等の外部機器やLAN等のネットワークとの接続を可能にする通信ポート(図示せず)なども備えている。
【0035】
そして、制御コンピュータ20の各部(21~25)は、アドレスバスやデータバス等のバスラインを介して相互に接続されている。
【0036】
また、制御コンピュータ20は、コンベアモータ12a、エンコーダ12b、光電センサ15、X線照射器13、X線ラインセンサ14等に接続されている。光電センサ15は、検体である商品Gが扇状のX線の照射範囲X(図2参照)を通過するタイミングを検知するための同期センサであり、主として、コンベア12を挟んで配置される一対の投光器および受光器から構成されている。
【0037】
(3)CPU21の構成
制御コンピュータ20のHDD25には、画像生成モジュール、領域特定モジュール、重量推定モジュール、重量診断モジュール、異物検査モジュールおよび総合診断モジュールを含む検査プログラムが格納されている。そして、制御コンピュータ20のCPU21は、これらのプログラムモジュールを読み出して実行することにより、画像生成部21a、領域判別部21b、異物検査部21cおよび総合診断部21d(図4参照)として動作する。
【0038】
(3-1)画像生成部21a
画像生成部21aは、X線ラインセンサ14から出力されるX線透視像信号に基づいて、商品GのX線透過画像を生成する。画像生成部21aは、商品Gが扇状のX線の照射範囲X(図2参照)を通過するときにX線ラインセンサ14の各画素センサ14aから出力されるX線透視像信号を細かい時間間隔で取得し、取得したX線透視像信号に基づいて商品GのX線透過画像を生成する。なお、商品Gが扇状のX線の照射範囲Xを通過するタイミングは、光電センサ15からの信号により判断される。すなわち、画像生成部21aは、X線ラインセンサ14の各画素センサ14aから得られるX線の明るさに関する細かい時間間隔毎のデータをマトリクス状に時系列につなぎ合わせることにより、商品Gを写すX線透過画像を生成する。
【0039】
画像生成部21aは、X線透過画像を生成する機能が主機能であるが、この主機能のほかに、異物位置を特定するために必要ないくつかの機能を有している(図5参照)。これらについては「(4)異物位置の特定動作」の段で説明する。
【0040】
(3-2)領域判別部21b
領域判別部21bは、画像生成部21aにより生成された商品Gを写すX線透過画像から、商品領域を判別する。
【0041】
(3-3)異物検査部21c
異物検査部21cは、画像生成部21aにより生成された商品GのX線透過画像に対して2値化処理を施すことにより、商品Gに含まれる異物を検出する。より具体的には、商品GのX線透過画像P上に予め設定した閾値よりも暗く現れる領域が存在する場合には、その商品Gに異物が混入していると判断し、その商品Gを異常と判断する。
【0042】
(3-4)総合診断部21d
異物検査部21cは商品Gを異常と判断すると、直ちにその旨を示す信号を総合診断部21dに送る。総合診断部21dは、商品Gを不良品であると診断すると、直ちに異物検査部21cによる検査を終了させる。
【0043】
また、総合診断部21dは、異物検査部21cから異常が検出されなかった旨を示す信号を受け取った場合には、商品Gを良品である診断する。そして、総合診断部21dは、診断結果を振分機構70へ送る。
【0044】
(4)異物位置の特定動作
図6は、X線検査装置10の前後の工程構成図である。図6において、X線検査装置10(具体的には、図4の異物検査部21c)によって異物が検出された商品Gは、振分機構70によってコンベア80から除外され、異物の除去作業が行われる。異物の除去作業では、商品G内に混入した異物の位置を事前に特定する必要であり、異物位置が特定されるまでの動作を、以下に説明する。
【0045】
(4-1)動作
図7Aは、異物が検出された商品GのX線透過画像P0の画像図である。図7Aにおいて、濃く写る領域Rgは商品Gのシルエットである。そのシルエット中に薄く写る領域Rfが異物と判定されたものである。
【0046】
なお、異物検査部21cによって異物が検出された商品GのX線透過画像P0は、ROM22に格納されているので、オペレータは、随時、元画像を画面に表示することができる。
【0047】
図7Bは、異物位置特定用画像の画像図である。図7Bにおいて、商品Gにおける異物の位置であるRf領域が、画像処理により濃く写されている。この異物位置特定用画像によって、視認性を良くし、作業効率の向上を図ることができる。
【0048】
図8は、図7Bの異物位置特定用画像の自動生成制御のフローチャートである。図8において、制御コンピュータ20は画像生成部21aを介して以下の制御を行う。
【0049】
(ステップS1)
先ず、制御コンピュータ20は、ステップS1で異物位置特定用画像の生成指令の有無を判定し、指令があったときはステップS2に進み、指令がないときは異物位置特定用画像の生成指令の有無の判定を継続する。
【0050】
(ステップS2)
次に、制御コンピュータ20は、ステップS2で対象となるX線データを読み込み、ステップS3に進む。
【0051】
(ステップS3)
次に、制御コンピュータ20は、ステップS3でX線透過画像P0を生成し、ステップS4に進む。
【0052】
(ステップS4)
そして、制御コンピュータ20は、ステップS4で画像処理をして異物位置特定用画像を生成し、制御を終了する。
【0053】
(5)異物除去工程
ここでは、図6を参照しながら異物位置特定用画像を用いた異物除去工程について説明する。図6に示すように、振分機構70は、X線検査装置10において不良品と判断された、すなわち、異物有りと判断された商品Gを、振分機構70によって不良排出方向91、不良排出方向92へと振り分ける。
【0054】
図6では、振分機構70として、商品Gをアームで振り分ける方式を記載しているが、これに限定されるものではなく、商品Gをプッシャーで押し出す方式であってもよい。
【0055】
不良排出方向91側は第1作業部101と接続されており、不良排出方向92側は第2作業部102と接続されている。第1作業部101には第1表示部111が設置されており、第2作業部102には第2表示部112が設置されている。第1表示部111及び第2表示部112は、X線検査装置10本体に付いているモニタ30とは別個のものである。
【0056】
本実施形態では、第1表示部111及び第2表示部112として液晶ディスプレイを採用しているが、これに限定されるものではなく、画像を表示できるモニタであれば良い。
【0057】
第1作業部101で異物除去作業を行う作業員Paは、第1表示部111と対峙する位置で異物除去作業を行う。同様に、第2作業部102で異物除去作業を行う作業員Pbは、第2表示部112と対峙する位置で異物除去作業を行う。
【0058】
異物有りと判断された商品Gaが不良排出方向91に排出され、第1作業部101で異物除去作業が行われている間に、他の商品Gbが異物有りと判定された場合には、当該商品Gbは不良排出方向92に排出され、第2作業部102で異物除去作業が行われる。
【0059】
第1作業部101では、第1表示部111にX線検査装置10本体から送られてくる商品Gaの異物位置特定用画像が表示されており、作業員Paは商品Gaの異物位置特定用画像を見ながら異物の位置を確認し、除去する。
【0060】
同様に、第2作業部102では、第2表示部112にX線検査装置10本体から送られてくる商品Gbの異物位置特定用画像が表示されており、作業員Pbは商品Gbの異物位置特定用画像を見ながら異物の位置を確認し、除去する。
【0061】
振分機構70による振分先と作業部とは紐付いているので、第1作業部101に振り分けられた商品Gaの異物位置特定用画像は自動的に第1表示部111に振り分けられ、第2作業部102に振り分けられた商品Gbの異物位置特定用画像は自動的に第2表示部112に振り分けられる。
【0062】
第1表示部111及び第2表示部112は、画面を2分割して複数の画像を同時に表示させることができる。例えば、2個の商品Gが振り分けられてきたら2個分の異物位置特定用画像が映る。
【0063】
具体的には、図9は、N番目の異物有り商品およびN+1番目の異物有り商品の異物位置特定用画像を同時に表示した表示部の画像図である。図9において、図9正面視で左側が先に検査されたN番目の商品の異物位置特定用画像である。このように、商品Gの不良排出が多い場合であっても、第1表示部111及び第2表示部112は時系列で分割表示して、除去作業が終わった商品Gの異物位置特定用画像を一方向(図9正面視で右から左)にスライドさせながら、順次、未作業の商品Gの異物位置特定用画像を同方向に送ることができる。
【0064】
また、図10は、N~N+4番目の異物有り商品の異物位置特定用画像を同時に表示した表示部の画像図である。図10において、商品Gの不良排出が多い場合であっても、第1表示部111及び第2表示部112は画面を4分割して、4つ商品Gの異物位置特定用画像を表示して対応することができる。この場合、画面の大きさがより小さくなるが、異物の大まかな場所がわかれば良いので、問題はない。
【0065】
さらに、図11は、異物位置特定用画像とそれを反転させた画像を表示した表示部の画像図である。図11において、第1表示部111及び第2表示部112は、表示されている異物位置特定用画像を反転させることができる。図11では、第1表示部111又は第2表示部112が異物位置特定用画像およびそれを反転させた反転画像の両方を表示しているが、反転画像のみを表示することができる。
【0066】
商品Gによっては、コンベア上を流れているときに上に向いていた面を、異物除去作業時には下向きにして異物を除去する場合がある。
【0067】
そのような場合、作業員によっては、異物除去する方向からみた商品Gの輪郭が当該商品Gの異物位置特定用画像と一致している方が、異物位置を探し易く、作業性の向上が図られる。
【0068】
例えば、鶏の腿肉は皮を上にしてコンベア上を流れる、異物有りとして排出された腿肉はひっくり返して異物が探される。この場合、当該腿肉の異物位置特定用画像と逆になるので、異物位置特定用画像を反転させた状態で表示する。
【0069】
なお、異物位置特定用画像の反転制御はオン・オフすることができる。また、異物位置特定用画像の反転操作は作業員自身が行なうことができる。
【0070】
(6)特徴
(6-1)
X線検査装置10では、作業員Pa(又は作業員Pb)が第1表示部111(又は第2表示部112)に表示された商品Ga(又はGb)の異物位置特定用画像を見ながら異物位置を特定することができるので、異物の除去作業がはかどる。
【0071】
(6-2)
X線検査装置10では、複数の作業部として、第1作業部101および第2作業部102が存在しても、第1作業部101および第2作業部102それぞれに振り分けられた商品G(商品Ga又は商品Gb)の異物位置特定用画像が表示されるので、作業員Paおよび作業員Pbは割り当てられた作業部(第1作業部101又は第2作業部102)で必要な異物位置特定用画像を見ることができる。
【0072】
(6-3)
X線検査装置10では、振り分けられた異物位置特定用画像を異物除去作業の間、固定する。つまり、次の異物位置特定用画像があっても、表示を切り替えない。これによって、異物除去作業の効率が向上する。
【0073】
なお、異物位置特定用画像は所定の時間、表示させ続けるか、作業が完了した場合に、手動で切替えるようにしてもよい。
【0074】
(6-4)
X線検査装置10では、1つの作業部に複数の異物有り商品Gが振り分けられた場合でも、商品Gごとの異物位置特定用画像を同時に表示することができるので、作業員はどの商品Gに対してどの異物位置特定用画像をみるべきかを把握し、商品から異物の除去を効率良く行うことができる。
【0075】
(6-5)
X線検査装置10では、鶏肉のような商品は皮を上にして搬送されるが、作業部での異物除去の際には皮を下にしているので、作業対象物の異物の位置は、異物位置特定用画像を反転させたときの位置と一致する。それゆえ、異物位置特定用画像を反転させることによって、商品の異物の位置と、異物位置特定用画像に表示される異物の位置とが一致し、異物除去作業が容易になる。
【0076】
(7)変形例
(7-1)
上記実施形態では、振分先が2つある場合を前提に説明したが、生産ラインの都合上、1つ振分先しか設けられない場合もある。このような場合、1つの異物除去用の作業テーブルに作業員Paと作業員Pbとを配置することによって、1つの振分先で複数の作業部を構成し、1つの画面を二つに分割して複数の表示部を構成してもよい。
【0077】
上記のように表示部を1つに集約することによって、表示部は、異物除去作業が必要な商品Gが振り分けられた作業部に対してのみ異物位置特定用画像を表示すればよい。
【0078】
また、複数の作業部に対して異物位置特定用画像を表示する必要があるときは、表示部に必要な数だけ画面を作成すれば足りる。したがって、表示部の過剰設置が防止される。
【0079】
(7-2)
上記実施形態では、作業員Pa(又は作業員Pb)が第1表示部111(又は第2表示部112)に映し出された商品Ga(又はGb)の異物位置特定用画像を見ながら異物位置を特定しているが、さらに特定作業を効率的に行うために、商品の異物位置にインクを噴射させる構成を採用してもよい。
【0080】
例えば、商品GがX線検査装置10を通過する経路の上方に複数(例えば8つ)の噴射口を有するインクジェットを配置する。つまり、異物検査部21cが商品Gに含まれる異物を検出すると同時に、その異物が存在する位置の商品表面にインクを噴射する。これによって、より素早く異物位置を特定することができるよう。
【0081】
(7-3)
また、X線検査装置10が検出している異物には、異物位置特定用画像に表しても作業員が見つけにくい異物もあり、異物除去作業に手間取ることがある。このようなときに、次の異物有り商品が排出されて流れて来た場合、事前に除去し易い異物であるか否かが分かれば、その商品から先に異物除去を行う方が効率的である。
【0082】
そこで、異物検査部21cが商品Gに含まれる異物を検出すると同時に、その異物のサイズが予め設定したサイズよりも大きいか否かを判定し、当該異物のサイズが予め設定したサイズよりも大きいと判定したときは、通知音を発して、作業員に当該商品Gの異物除去を先に行うように促してもよい。
【0083】
異物サイズの評価方法としては、予め設定したサイズとの比較評価の他、先に異物有りと判定された商品の異物と比較して異物が大きいか否かによって比較評価してもよい。また、商品Gが鶏肉であって、明らかに「骨」と分かる場合に、「食べると危険な骨」と「軟骨みたいな骨」とを区別して、「食べると危険な骨」と判定したときに通知音を発しても良い。
【0084】
(8)他の実施形態
(8-1)異物位置の特定動作
ここでは、異物位置が特定されるまでの動作であって、上記実施形態とは異なるものについて、以下に説明する。
【0085】
(8-1-1)動作1
図12Aは、異物が検出された商品GのX線透過画像P0の画像図である。図12Aにおいて、濃く写る領域Rgは商品Gのシルエットである。そのシルエット中に薄く写る領域Rfが異物と判定されたものである。
【0086】
なお、異物検査部21cによって異物が検出された商品GのX線透過画像P0は、ROM22に格納されているので、オペレータは、随時、元画像を画面に表示することができる。
【0087】
(8-1-2)動作2
図12Bは、異物抽出画像P1の画像図である。図12Bにおいて、異物抽出画像P1は、X線透過画像P0の異物と判定された領域Rfを抽出した画像である。画像生成部21aは、異物抽出画像P1を生成する機能(以後、第1機能という。)を有している。
【0088】
(8-1-3)動作3
図12Cは、輪郭抽出画像P2の画像図である。図12Cにおいて、輪郭抽出画像P2は、X線透過画像P0の領域Rgの輪郭のみを抽出した画像である。画像生成部21aは、輪郭抽出画像P2を生成する機能(以後、第2機能という。)を有している。
【0089】
なお、画像生成部21aは、輪郭を特定するため、X線透過画像P0における輝度の空間変化を輪郭として強調するエッジ処理の機能と、エッジ処理された画像において輪郭を膨張・縮小処理によって標準化する標準化機能とをさらに有している。
【0090】
(8-1-4)動作4
図12Dは、異物位置特定用画像P3の画像図である。図12Dにおいて、異物位置特定用画像P3は、輪郭抽出画像P2を異物抽出画像P1に合成し、商品Gにおける異物の位置を特定した画像である。画像生成部21aは、異物位置特定用画像P3を生成する機能(以後、第3機能という。)を有している。
【0091】
なお、付加機能として、モニタ30に異物位置特定用画像P3を表示させながら、検査感度の調整を行う調整部33をモニタ30側に備えてもよい。
【0092】
(8-1-5)動作5
画像生成部21aは、輪郭抽出画像P2及び異物位置特定用画像P3上の輪郭線を着色する、或いは輪郭線の内側を着色する着色機能をさらに有しているので、この機能によって、輪郭線を着色するか、或いは輪郭線の内側を着色することができ、視認性を良くし、作業効率の向上を図ることができる。
【0093】
(8-2)動作の制御フロー
図13は、他の実施形態における異物位置特定用画像P3の自動生成制御のフローチャートである。図13において、制御コンピュータ20は画像生成部21aを介して以下の制御を行う。
【0094】
(ステップS11)
先ず、制御コンピュータ20は、ステップS11で異物位置特定用画像P3の生成指令の有無を判定し、指令があったときはステップS12に進み、指令がないときは異物位置特定用画像P3の生成指令の有無の判定を継続する。
【0095】
(ステップS12)
次に、制御コンピュータ20は、ステップS12で対象となるX線データを読み込み、ステップS13に進む。
【0096】
(ステップS13)
次に、制御コンピュータ20は、ステップS13でX線透過画像P0を生成し、ステップS14に進む。
【0097】
(ステップS14)
次に、制御コンピュータ20は、ステップS14で異物抽出画像P1を生成し、ステップS15に進む。
【0098】
(ステップS15)
次に、制御コンピュータ20は、ステップS15で輪郭抽出画像P2を作成し、ステップS16に進む。
【0099】
(ステップS16)
次に、制御コンピュータ20は、ステップS16で異物抽出画像P1に輪郭抽出画像P2を合成して異物位置特定用画像P3を生成する。
【0100】
(ステップS17)
次に、制御コンピュータ20は、ステップS17で異物位置特定用画像P3の輪郭を着色する指令の有無を判定し、指令があったときはステップS18進み、指令がないときは制御を終了する。
【0101】
(ステップS18)
そして、制御コンピュータ20は、ステップS18で異物位置特定用画像P3の物品の輪郭を着色し、制御を終了する。
【0102】
(9)その他
ここでは、上記実施形態で説明しなかったCPU21の他の構成について説明する。図14は、他の実施形態における制御コンピュータのブロック構成図である。図14において、制御コンピュータ20のCPU21は、上記実施形態で説明した画像生成部21a、領域判別部21b、異物検査部21cおよび総合診断部21d(図4参照)以外に、重量推定部21e及び重量診断部21fを有している。
【0103】
(9-1)重量推定部21e
重量推定部21eは、領域判別部21bにより判別された商品領域に対して画像処理を施すことにより、商品Gの重量を推定する。当該重量推定処理は、X線透過画像P上においてはX線の照射方向に厚みのある物質ほど暗く写るという性質を利用し、以下の原理に基づいて行われる。
【0104】
X線透過画像P上の厚さtの物質を写す画素の明るさIは、物質の存在しない領域に含まれる画素の明るさをIとした場合、以下の式(1)によって表される。
【0105】
I/I=e-μt ・・・(1)
ここで、μは、X線のエネルギーと物質の種類とに応じて定まる線吸収係数である。式(1)を物質の厚さtについて解くと、以下の式(2)のようになる。
【0106】
t=-1/μ×ln(I/I) ・・・(2)
また、内容物の微小部位の重量は、当該微小部位の厚さに比例する。したがって、明るさIの画素の写す内容物の微小部位の重量mは、適当な定数αを用いて、以下の式(3)によって近似的に算出される。
【0107】
m=-αln(I/I) ・・・(3)
重量推定部21eは、商品Gを構成する全ての画素に対応する重量mを算出して足し合わせることにより、商品G全体の重量を推定する。
【0108】
(9-2)重量診断部21f
重量診断部21fは、商品Gの内容物の重量が所定の範囲内に収まっているか否かをチェックする。そして、重量が当該範囲内に収まっている場合には、その商品Gを正常と診断し、当該範囲内に収まっていない場合には、その商品Gを重量異常と診断する。
【0109】
なお、重量診断部21fによる処理は、重量推定部21eによる処理に遅れて並列に実行される。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、物品に光を照射する光照射部と、その光に基づいて物品の画像を生成する画像生成部と、画像生成部により生成された画像に基づいて前記物品における不良の有無を判断する判断部とを備える検査装置であれば、X線検査装置以外の検査装置にも有用である。
【符号の説明】
【0111】
10 X線検査装置(検査装置)
13 X線照射器(光照射部)
21a 画像生成部
21f 総合診断部(判断部)
101 第1作業部(作業部)
102 第2作業部(作業部)
111 第1表示部(表示部)
112 第2表示部(表示部)
P3 異物位置特定画像(画像)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【文献】特願2016-55555号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14